- 1 - 主 文本件控訴を棄却する。 理 由本件控訴の趣意は、検察官山下裕之作成の控訴趣意書及び同小川卓爾作成の弁論要旨、これに対する答弁は、弁護人福島佳樹(主任)、同吉山裕及び同鈴木一郎共同作成の答弁書、答弁書補充書並びに弁論要旨に各記載のとおりであるから、これらを引用する。論旨は、被告人が本件各行為当時心神喪失状態であった合理的な疑いが残るとした原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるというものである。 そこで、記録を調査し、当審における事実取調べの結果も併せて検討する。 第1 事案の概要本件公訴事実の概要は、被告人が、平成29年7月16日午前5時13分頃から同日午前6時33分頃までの間に、いずれも殺意をもって、①被告人方で、祖母(当時83歳)の頭部等を金属製バットで殴打、後頸部等を文化包丁で突き刺すなどし、失血死させて殺害し、②被告人方及びその敷地内で、祖父(当時83歳)の頭部等を金属製バットで殴打、頸部等を文化包丁で突き刺すなどし、同人を失血死させて殺害し、③被告人方で、母(当時52歳)の頭部等を金属製バット及び合板等で殴打、頸部を手で絞め付けるなどして殺害しようとしたが加療約32日間の頭部挫創等の傷害を負わせたにとどまり、④近隣女性方敷地内に侵入し、同人(当時79歳)の頸部等を文化包丁で突き刺すなどし、失血死させて殺害し、⑤近くにあった小屋内に侵入し、同所で、別の近隣女性(当時65歳)の頭部等を文化包丁で突き刺すなどして殺害しようとしたが、全治約14日間を要する頭部刺創等の傷害を負わせたにとどまり、さらに、⑥同日午前6時33分頃、路上で、正当事由なく、文化包丁を携帯したというものである。 第2 本件の捜査・原審の審理等1 本件の捜査- 2 - 被告人 傷害を負わせたにとどまり、さらに、⑥同日午前6時33分頃、路上で、正当事由なく、文化包丁を携帯したというものである。 第2 本件の捜査・原審の審理等1 本件の捜査- 2 - 被告人は、本件当日午前6時34分頃、自宅付近の神社で公訴事実⑥の銃砲刀剣類所持等取締法違反により現行犯逮捕され、その翌日以降、②の殺人、①・③の殺人及び同未遂、④・⑤の殺人及び同未遂により、順次、逮捕・勾留が重ねられた。 そして、最後の勾留期間の途中で、鑑定留置(平成29年9月1日から平成30年1月22日)の上で甲医師による起訴前精神鑑定が行われ、さらに、2度目の鑑定留置(同年1月29日から5月7日)では乙医師の起訴前精神鑑定が行われた。 2 原審の整理・審理手続及び争点⑴ 被告人は、本件当日の警察官取調べ以降、被害者らを「哲学的ゾンビ」(人間と全く同じ姿形をしており、人間と全く同じ振る舞いをするが、自我や感情のない存在)と認識していた旨供述しており、原審公判でも同趣旨の供述をした。 原審では、本件の客観的な事実関係に特段の争いはなく、争点は責任能力とされ、原審弁護人は、被告人は本件当時、重度の統合失調症にり患しており、その妄想・幻聴の圧倒的な支配の下で本件各行為に及んだものであり、心神喪失の状態にあった疑いがあると主張した。これに対し、原審検察官は、妄想・幻聴の影響は圧倒的なものではなく、善悪判断能力及び行動制御能力は著しく低下していたが全くなかったわけではないので、心神耗弱にとどまると主張した。 ⑵ 原審の公判前整理手続では、起訴前鑑定人である甲医師と乙医師の証人尋問の実施が検討されたが、甲医師が海外に長期滞在していて、裁判員裁判の公判期日に合わせて帰国する見込みが立たず、同医師が一時帰国した際に公判前整理手続内で証人尋問が行われ(令和3年3 乙医師の証人尋問の実施が検討されたが、甲医師が海外に長期滞在していて、裁判員裁判の公判期日に合わせて帰国する見込みが立たず、同医師が一時帰国した際に公判前整理手続内で証人尋問が行われ(令和3年3月10日)、第22回公判前整理手続期日(同年10月8日)で、甲医師作成の鑑定書(原審弁1)が刑訴法321条4項により、同人の証人尋問調書(原審甲164)が同法321条1項1号により、それぞれ採用された。そして、これに加えて、乙医師と、原審弁護人の依頼で意見書を出していた丙医師の証人尋問を行う旨の立証計画が策定された。 原審公判では、上記計画に基づいて鑑定書及び証人尋問調書の取調べや証人尋問が行われた(なお、丙医師の証言内容は、甲鑑定を基本的に支持する、というもの- 3 - である。)。 3 各鑑定の概要甲鑑定(鑑定書及び証人尋問調書)被告人は、本件当時、妄想型統合失調症にり患しており、本件各行為は、その幻声、妄想及び身体的被影響体験の影響により動機づけられたものである。被告人が、「自分が近くの神社に行くまでの道中で出会った哲学的ゾンビを倒すこと」(手段)ができれば、「Aが結婚してくれる」(目的)と確信したことは、目的と手段の関係性も、目的及び手段自体も了解不能であり、二重の意味で動機が了解不能であるから、被告人は本件当時非常に重篤な精神状態にあり、被害者らを哲学的ゾンビと認識していて、人を殺害しているという認識はなかったのであって、本件各行為はその精神症状の圧倒的な影響を受けてなされたものである。 乙鑑定(原審証言)被告人には、妄想型統合失調症の疑いがあり、これによる幻覚・妄想の影響を受けて本件各行為に及んだものであるが、被告人の本件当時の言動等には被告人自身の思考や現実的な批判能力等の正常な精神構造が一定程度機能してい 妄想型統合失調症の疑いがあり、これによる幻覚・妄想の影響を受けて本件各行為に及んだものであるが、被告人の本件当時の言動等には被告人自身の思考や現実的な批判能力等の正常な精神構造が一定程度機能していたこと、被告人の元来の性格傾向等が妄想の受入れに関与していることなどからすると、被告人は、本件当時、少なくともAと結婚するためにAからのメッセージを信じて実行するか、信じるのをやめて犯行を思いとどまるのかを判断する能力を一定程度有していたと考えられるから、精神症状が犯行に及ぼした影響は圧倒的とまではいえない。 第3 原判決の概要原判決は、前提事実として、本件までの経過、本件各行為の際の事実経過(直後の警察署での言動を含む。)を認定した上(その内容は、「第5 当審における判断」の「2 前提事実」と矛盾するものではない。)、被告人の責任能力につき、要旨、次のとおり説示し、被告人が本件各行為当時、心神喪失状態にあった合理的疑いが残るとして、無罪の言渡しをした。 甲鑑定は、前提条件に格別誤りはなく、判断過程に合理性を欠く点も認められな- 4 - い一方、乙鑑定は、被告人とは約5分程度挨拶を交わす面会を1回実施したのみで、それ以後は原審弁護人の助言を受けた被告人から拒絶されたため一切面接できておらず、甲医師の鑑定面接記録を踏まえたとはいえその鑑定手法は結果的に不十分なものにとどまったといわざるを得ず、現に被告人公判供述を聞いて意見を少なからず修正するなどしているから、甲鑑定に比肩するだけの信用性は認められない。 被告人の責任能力の有無及び程度を判断するに当たっては、甲鑑定を基礎として判断すべきである。妄想への疑いや犯行へのためらいを表すとして原審検察官の指摘する被告人の本件各行為前後の言動、逮捕後の発言等については、被告人において相手が哲学 るに当たっては、甲鑑定を基礎として判断すべきである。妄想への疑いや犯行へのためらいを表すとして原審検察官の指摘する被告人の本件各行為前後の言動、逮捕後の発言等については、被告人において相手が哲学的ゾンビであると確信し、人である可能性を全く認識していなかったとしても成り立ち得るもので、被告人が本件後に警察官に対して相手が人であることを前提としていると解される言動をしたことについても、甲医師が説明するように、精神症状が本件各行為直前に悪化し、その後短時間のうちに改善したためであるという可能性も想定でき、これを排斥することは困難である。被告人の元来の性格傾向に一般人と異質の爆発性を見出すことはできず、当時被告人の置かれていた状況にも動機となり得るものは考えにくく、本件各行為との間には著しい乖離があるとの見方も成り立ち得る。甲鑑定の信用性は否定されず、被告人が、本件当時、正常な精神作用が機能しておらず、被告人とA以外が哲学的ゾンビであるとの妄想等の精神症状の圧倒的影響下で本件各行為に及んだとの疑いを払拭できない。 第4 所論の概要所論は、原判決の判断手法及び判断内容には誤りがあるとして、概要、以下の点を指摘し、原判決の事実認定は、論理則、経験則等に反して誤っており、これが判決に影響を及ぼすことは明らかである旨を主張する。 1 被害者らを哲学的ゾンビと確信していた可能性が否定できない旨の原判決の判示は不当である(所論1)原判決は、被告人に殺傷相手は哲学的ゾンビであるという、動機形成の一部に妄想に基づく確信があることを主な理由として責任無能力という結論を導いている- 5 - が、これは、犯行の意思決定が妄想に直接支配されているか否かに着目し、犯行動機の形成に揺るぎない妄想があっても、被告人の人格(性格)傾向を踏まえた主体的な判断が う結論を導いている- 5 - が、これは、犯行の意思決定が妄想に直接支配されているか否かに着目し、犯行動機の形成に揺るぎない妄想があっても、被告人の人格(性格)傾向を踏まえた主体的な判断が含まれていれば責任能力が肯定されるとする判例の判断枠組みに反している。本件において、犯行動機の形成に幻声が関与しているが、Aと結婚したいとの欲求や近くの神社に行くまでに会った相手を倒すとの判断などは、被告人の正常な精神作用によるものである。また、本件では、殺傷相手を人間でないゾンビと確信していたとすれば説明困難な事実関係が多数ある。Aの幻声やメッセージは被告人の行為を支配するような指示・命令性のものではなく、内容もそのとおりにしなければ被告人自身の生命が侵害されるというような切迫したものではない。被告人は実際にAの幻声やメッセージに逆らう行動ができ、妄想内容に拘束されず、自己の判断で異なる行動を取っており、被告人が本件各行為についても思いとどまることができたことを強く推認させる。 2 被告人の元来の性格傾向等との著しい乖離はない(所論2)原判決は、本件各行為と被告人の元来の性格傾向や当時被告人の置かれていた状況との間には著しい乖離があるとの見方も成り立ち得る旨説示するが、性格傾向に関連する幅広い事実を考慮に入れるというのが判例の判断方法であり、被告人の過去の暴力等を一般的にみてありふれた範疇のものであるとし、害獣をいたぶる行為や人を残酷に殺す動画の視聴も実際に人間を殺害することとは異なるとした原判決の判断は、不当な過小認定、過小評価である。超常現象に親和的で思い込みの激しい性格が責任能力の判断を左右しないとしたのは、前提事実の取捨選択に根本的な誤謬がある。 3 乙鑑定には高い信用性があり、甲鑑定は信用性に乏しい(所論3)原判決が、乙医 に親和的で思い込みの激しい性格が責任能力の判断を左右しないとしたのは、前提事実の取捨選択に根本的な誤謬がある。 3 乙鑑定には高い信用性があり、甲鑑定は信用性に乏しい(所論3)原判決が、乙医師が被告人との面接を十分実施できなかったことを理由に、その内容等に一切言及することなく、その鑑定手法は結果的に不十分なものにとどまったと評価し、乙医師が公判での被告人供述を聞いて意見を変えたことを、それが重要な部分でないことを看過して過大評価し、乙鑑定を判断の基礎とすることができ- 6 - ないとしたことは、内容の合理性を重視するという判例が示す鑑定意見の採否基準に違背している。また、甲鑑定は、責任能力を肯定する方向の重要な事実について具体的に検討せず、その評価も明らかにせずに、主として責任能力を否定する方向の事実のみを検討して導いた点で前提資料の取捨選択に重大な誤謬があり、本件当時妄想型統合失調症の精神症状が急激に悪化していて本件各行為後短期間で急激に改善したとの前提は司法精神医学の常識に反している点などに照らして、信用性に乏しい。他方、乙鑑定は、前提資料の選択や鑑定経過等において極めて合理的であり、被告人の精神症状が本件各犯行の前後に急激に悪化・改善したとは考えにくい旨司法精神医学の常識に沿った意見を述べていることからも、高い信用性を有しているといえる。 第5 当審における判断1 所論は、原判決が、甲鑑定を前提に責任能力を判断したことについて、前提となった鑑定の信用性判断の手法等に誤りがあると主張する(所論3)ので、まず、この点について、検討する。 原判決は、甲医師及び乙医師の双方とも精神科医としての知見・経験があるとしながら、乙医師が被告人との面会を十分実施できなかったことなどを理由に、鑑定手法が不十分であるとして、乙鑑定の 、検討する。 原判決は、甲医師及び乙医師の双方とも精神科医としての知見・経験があるとしながら、乙医師が被告人との面会を十分実施できなかったことなどを理由に、鑑定手法が不十分であるとして、乙鑑定の内容を検討することなく、甲鑑定に比肩するだけの信用性を認めることができないとしている。しかし、乙鑑定では、被告人の捜査段階での供述等とともに、甲医師による面接記録も鑑定資料として用いられているから、鑑定資料において甲鑑定と遜色があったとまではいえず、直接の面会が鑑定において必須であったといえる事情も指摘されているわけではないから、原判決の上記判断は、あまりに形式的であって、検察官の所論3はこの限度で一理ある。 しかしながら、所論3が甲鑑定の信用性について述べる点は、そのまま採用できるものではない。所論は、甲鑑定の前提資料の取捨選択が責任能力を否定する方向の事実関係に偏っている点で重大な誤謬があるというが、その実質は、乙鑑定の取捨選択と異なるというもので、偏頗とする根拠を示せているわけではない。また、- 7 - 甲鑑定は、精神症状の動揺の可能性を述べるだけで、疾患自体の一時的な回復を示唆するものではないから、司法精神医学の常識に反した判断をしている旨の論難は的を射たものではない。 他方、弁護人は、乙鑑定について公正さや能力及び鑑定の前提条件に問題がある旨を種々主張するが、その前提条件に問題は認められないし、その主張は実質的に鑑定内容に対する批判にほかならず、その内容に立ち入るまでもなく信用性を否定し得るほどの瑕疵が乙鑑定にあると認めるべき事情もない。 結局、本件においては、鑑定人の能力や鑑定の前提条件などについての外部的観察だけをもって信用性の優劣を判断することの困難な二つの精神鑑定が並列しているとみるべきで、いずれを採用するかについて い。 結局、本件においては、鑑定人の能力や鑑定の前提条件などについての外部的観察だけをもって信用性の優劣を判断することの困難な二つの精神鑑定が並列しているとみるべきで、いずれを採用するかについては、その内容に踏み込んで、推論過程の合理性等の観点から比較検討するのが妥当である。もっとも、甲鑑定が、被告人の供述と整合的で、その結論も被告人に有利なものである以上、より不利益な結論をとる乙鑑定の方が論理の合理性や明快性などにおいて確実に勝っているという事情がない場合には、疑わしきは被告人の利益との原理から、甲鑑定を基本において判断することとなる。 以下、そのような観点から、甲鑑定と乙鑑定の相違点やその根拠を中心に検討し、それを前提として、甲鑑定に依拠した原判決の責任能力の判断に不合理性があるかを検討した。 2 前提事実両鑑定の理解及び責任能力判断に有用な限度で、前提となる被告人の本件各行為前後の状況等に関する事実を提示すると、次のとおりとなる(月日は特に記載のない限り平成29年のそれを指す。当審における乙医師の証人尋問の際に「言動1」などと番号が付されたものについては、これを末尾に付記する。)。 被告人は、「東方シリーズ」の漫画やゲームに登場するキャラクター等に予言の暗号が含まれているとか、宝くじのCMにその当選番号の暗号が含まれていると考えており、平成29年になったころから、その暗号解読に没頭するようになった。 - 8 - 本件の4日前(7月12日)、被告人は、インターネット掲示板上の書き込みを見て、これを暗号と考えて、解読作業を行い、その結果、高専時代の同級生(女性)のAからの「自分を頼れ」というメッセージと考えた(言動8)。 本件の2日前(7月14日)に、被告人は、Aに会うため専門学校に行き、Aの幻声で「その人が私 行い、その結果、高専時代の同級生(女性)のAからの「自分を頼れ」というメッセージと考えた(言動8)。 本件の2日前(7月14日)に、被告人は、Aに会うため専門学校に行き、Aの幻声で「その人が私だよ」と言われたが、近づいて見るとAではなかった(言動17)。 本件の前日(7月15日)に、被告人は、Aの幻声で「今日は近所の神社に来てくれ」旨を言われてその神社に行ったが、Aに会えなかった。 同日の深夜から本件当日(7月16日)未明にかけても、被告人は、Aの幻声と語り合うなどしていたところ、Aから「この世界の人間は、君と私以外はみんな哲学的ゾンビなんだよ。」と言われた。この頃には、被告人は、Aのことを世界の裏事情に通じ、何度も輪廻転生を繰り返した半ば神のような存在であると考えるようになっていた。 本件当日の朝、被告人は、Aの幻声に礼服で神社に来るよう指示されたので、自室を出て自宅の各箇所でワイシャツを探しまわった。その途中、台所のカレンダーに乾布摩擦の日と書いてあるのを見て、祖父と一緒に乾布摩擦をするよう暗号で指示されていると考え、その場にいた祖父に「乾布摩擦」と言っても祖父が「へっ」と言ったことから、違ったんだと思った(言動18)。母の部屋では、「FREE」「YOUR MIND」のロゴの上に「LOCK」と文字の入ったTシャツを見つけ、自分の精神の自由が阻害されているとのAのメッセージと解釈し(言動9~10)、AからこのTシャツを着るように指示されていると考え、母に着たいと言ったが、サイズが合わないと言われ、暗号解読を間違えたと思い、そのまま自室に戻った。自室で、被告人の右手が勝手に拳銃のような形になったので、Aが拳銃を入れてくれたと思ってクローゼットを探したが、拳銃はなく、金属バットがあった。 これを見ると、被告人の右手に力が入っ ま自室に戻った。自室で、被告人の右手が勝手に拳銃のような形になったので、Aが拳銃を入れてくれたと思ってクローゼットを探したが、拳銃はなく、金属バットがあった。 これを見ると、被告人の右手に力が入ったので、Aとの結婚のための試練として「神社に行くまでに出会った哲学的ゾンビを倒せ(息の根を止めろ)」というAからの- 9 - サインであると解釈した(言動6)。これに躊躇を覚え、何回か「ほんまか」「ほんまやで」というやり取りをしても踏ん切れなかったものの、Aから、倒さなければ別れるとのサインが送られて来たので、嫌やと声に出して言うとともに、「信じるで」とも声に出して言った(言動5)。金属バットを取ると握り拳に力が入り、これで倒せという意味だと解釈し、倒してしまってよいのか、そうしないとAと結婚できないかについてAに確認すると、「そうや」とか「信じなさい」と言われた(言動11)。 そこで、被告人は、金属バットやその後に持ち出した文化包丁を用いて、祖母、祖父、母を襲って公訴事実①ないし③の各行為に及んだ。その際、被告人は、首を絞めて倒れた母に対し、「楽にしたるわな」と言った(公訴事実③。言動1)。 その後、被告人は、パジャマのまま、金属バットと文化包丁を持って自宅を出発し、小便を漏らしながら神社に向かい、近隣住民2名を襲って、公訴事実④及び⑤の各行為に及んだ。他の通行人2名も見かけ、いったんは追ったものの、距離から追いつくことはできないと考えてやめた。 被告人は、神社の近くで警察官らに遭遇すると、被告人を捕まえに来たと分かったし、拳銃を所持している警察官2名に太刀打ちするのは困難と考え、その指示どおり文化包丁をその場に置き、走って神社に向かったが、追い付かれて取り押さえられ、公訴事実⑥の事実により逮捕された。 本件当日の警察官に している警察官2名に太刀打ちするのは困難と考え、その指示どおり文化包丁をその場に置き、走って神社に向かったが、追い付かれて取り押さえられ、公訴事実⑥の事実により逮捕された。 本件当日の警察官による弁解録取手続において、被告人は、「人ってなかなか死なないもんですね」と、その後取調べが始まるまでの間に、「大変なことをしてしまいました」「僕はえらいことをしてしまいましたよね」「僕も死んだ方がいいですよね」「僕が生きとったらあかんですよね」と言った(言動2)。 本件当日午前9時8分開始の警察官の取調べにおいて、被告人は、「(Aさんと)結婚したいって、やりたいですけど、やっぱりおばあちゃんなんで」「おばあちゃんの姿なので・・・、やっぱり嫌じゃないですか、おばあちゃんを殴るなんて」(言動3)、「(おばあちゃんのときには)ためらいは・・・。ありましたね」「(祖父に対- 10 - する抵抗感は)おじいちゃんのことを嫌いなのもあるかもしれないですけど、少なくなってましたね」(言動4)、「(被告人の見た動画は近所の神社を舞台にしているわけではなく、そこに行ったらAに会えると)そう思い込んでいるんですよ」(言動12)、「(人の子として辛いことも今から出てくるだろうが)ちゃんと受け止めるという準備はできています」「(現実味はないのと聞かれ)いやもうやっぱり、ちゃんと覚悟をして」(言動14)と供述した。 本件の3日後(7月19日)の検察官の取調べにおいて、被告人は、「(哲学的ゾンビと聞いた)その辺の解釈がそもそも間違ってて、もしかしたら、もう本当のおじいちゃんだったのかもしれへんっていう気は、してます。」(言動15)、「僕は勝手に、多分思い込んでたのかもしれないですけど、・・殺人をしたのではなく、・・ゾンビを排除しただけで・・自分は無罪やと思い いちゃんだったのかもしれへんっていう気は、してます。」(言動15)、「僕は勝手に、多分思い込んでたのかもしれないですけど、・・殺人をしたのではなく、・・ゾンビを排除しただけで・・自分は無罪やと思い込んでた」(言動16)と供述した。 本件の4日後(7月20日)、被告人は、留置担当官に対し、「もしあの日、人がゾンビでなくて本物の人であったとしても殺ってたと思う。一度決心したことはやり通す、瞬時にカッとなる性格です」と言った(言動19)。 原審被告人質問(原審第4回公判・令和3年10月18日)において、被告人は、「(弁解録取時に祖父を殺したとは)ほんとは思ってないんですけど、・・祖父をほんと殺してしまったっていう認識になるんで、それで涙が出た・・(自分で認識をなくしたのかと尋ねられ)思わないようにしたという感じです。」とか、もし妹が本件当時に現場にいたとすれば、結婚したばかりで幸せそうにしていたので、哲学的ゾンビとはいえ襲うのは難しく、逃がしていたと思う旨を供述した。 3 両鑑定の相違点等甲鑑定が、「被告人が妄想型統合失調症にり患しており、本件各行為は、統合失調症の幻声、妄想及び身体的被影響体験の影響により動機づけられたもの」とする点に関して、乙医師は、妄想型統合失調症は病名が疑いに留まるとしながらも、おおむね同様の意見を表している。大きく相違するのは、幻声や妄想等の影響の程度- 11 - であって、甲鑑定が本件は精神症状の圧倒的な影響を受けたものであって、被告人に人を殺害している認識はなかったとしている点に対して、乙医師は、本件当時の被告人には妄想に対する批判力が残っており、殺害する相手が「哲学的ゾンビ」であるとの妄想を確信するには至っておらず、人である可能性を認識していたという。 乙医師は、甲鑑定との相違点の根拠等につい の被告人には妄想に対する批判力が残っており、殺害する相手が「哲学的ゾンビ」であるとの妄想を確信するには至っておらず、人である可能性を認識していたという。 乙医師は、甲鑑定との相違点の根拠等について、要旨、鑑定資料等に表れた被告人の言動を引用するなどしながら、次のように述べる。 被告人は、本件前に、Aのメッセージに対して、「ほんまか」と確かめ、「信じるで」と発言するなど、何度も疑義を呈しており(言動5、11)、本件中には攻撃対象が母であることを認識しているような発言をし(言動1)、被告人自身も攻撃をためらっていたことを認め(言動3、4)、本件直後には、現実的で適切な認識をうかがわせる発言をしている(言動2、14)。これらからすると、本件犯行動機の主要な部分を形成している妄想に対して、被告人には一定の批判力があり、妄想を確信していたのではないと考えられる。もともと、被告人の妄想構築は、外的事象から独自の解釈でメッセージを獲得するという形でなされているが(言動6、8~10)、同時にそれが間違いかもしれないとの認識も持ち合わせており(言動12、15、16)、間違いがあったと考えて修正することもでき(言動17、18)、その程度の批判力があった。被告人の妄想は、切迫性がないため、倫理的規範や共感性を乗り越えさせてしまうものとはいえない。 4 検討被告人の妄想には、主体的な解釈・判断が多く含まれていて、被告人は、妄想に誤りがあるとして修正できる程度の批判力を有しており、本件前にも妄想への疑義を呈していた旨の乙医師の見解に対して、甲医師は、被告人が妄想に解釈・判断をしているとしても、その解釈や判断自体に了解不可能性があるから、正常な精神機能の表れとはいえず、妄想の特徴とみるべきで、「信じるで」という本件前の被告人の発言についても、対話相手は妄 に解釈・判断をしているとしても、その解釈や判断自体に了解不可能性があるから、正常な精神機能の表れとはいえず、妄想の特徴とみるべきで、「信じるで」という本件前の被告人の発言についても、対話相手は妄想体系の中心のAであり、現実検討能力を失っていた点に変わりはないと反論している。すなわち、それまでに、妄想が屋根瓦方- 12 - 式に積みあがるように構築されている状況であったから、被告人が正常な精神機能を発揮できたとは思われず、むしろ、「信じるで」という発言で結婚するために哲学的ゾンビを殺すことをAが指示していることを確信する精神状態に至ったといえる、という。 このように、両医師の間では、「ほんまか」「信じるで」等という発言(言動5、11)が意味するところの解釈が大きく分かれているのであるが、この点に関連して甲医師の述べるところにもそれ相応の根拠があるように思われる。 例えば、言動6及び8でみられるような妄想構築の過程で示された被告人の解釈・判断は、語呂合わせ等の範疇を超えた突拍子もないものといえ、これは批判力の存在を示すというより、妄想の特徴にすぎない旨の甲医師の意見は説得的である。 被告人が幻声の主であるAの実存を確信している点は、乙医師も異論なく肯定している。Aのメッセージが誤っていたことを被告人が経験していると乙医師が指摘する言動もあるが、これらが上記のようなAの実存を疑わせるには至っていない。この点は、本件直前までの間に妄想構築が積みあがるようにして進行していたとの甲医師の意見に沿うとみることも可能である。 乙医師は、被告人が祖父母や母への攻撃の際にためらいを示していることをもって、相手が人である可能性を被告人が認識していた表れとみているが、甲医師は、姿形が家族であるものへの攻撃にためらいを感じることは、妄想の確信と矛盾しな や母への攻撃の際にためらいを示していることをもって、相手が人である可能性を被告人が認識していた表れとみているが、甲医師は、姿形が家族であるものへの攻撃にためらいを感じることは、妄想の確信と矛盾しないという。確かに、相手が哲学的ゾンビであると確信しているとしても、家族の姿形をしたものへの攻撃には感情として抵抗感があったとしても不思議はなく、乙医師の見方は唯一のものとはいえない。 また、甲医師は、被告人が逮捕直後に攻撃対象が人間であることを前提としたような発言をし(言動2)、行為の違法性・重大性にも言及している(言動14)点は、精神症状の動揺、幻声や妄想等の後景化で説明可能と述べる。すなわち、病的世界の体験が前景に出ている統合失調症患者が、現実世界からの働き掛けにより、現実世界での体験が前景に出てくることがあり、被告人逮捕後の取調べの様子から- 13 - も精神症状の動揺や変動がみられること、逮捕時に警察官に制圧され、警察署引致後も警察官らから集中的な働き掛けを受けていたことなどからすると、幻声や妄想等が後景に退いていた精神状態になり、元来の性格傾向として有する共感性の影響を受けた価値判断に基づいて受け答えができた、という。これに対し、乙医師は、精神症状が後景化した場合に生じる大きな混乱が被告人にはみられないとは述べながらも、後景化という現象自体に対して誤りであると指摘していない。その後留置場で祖父母に対して謝罪の弁を述べたり泣いたりを繰り返すようになったという被告人の言動の変化が後景化による混乱に該当すると甲医師が反論していることも併せると、被告人の逮捕直後の発言についても、甲医師の説明が不合理とはいえない。 こうした観点を加えて、「ほんまか」「信じるで」という発言についてみると、妄想全体に対する疑念を示すのではなく、単に、A ると、被告人の逮捕直後の発言についても、甲医師の説明が不合理とはいえない。 こうした観点を加えて、「ほんまか」「信じるで」という発言についてみると、妄想全体に対する疑念を示すのではなく、単に、Aと結婚するための試練の内容が合っているか(神社に行く前に出会った哲学的ゾンビを倒すことでよいか)を確認するためのものである(被告人はその旨供述している(原審第4回調書38頁)。)などと解釈することが不合理とまではいえない。被告人が哲学的ゾンビを倒すことに躊躇を覚えていると、倒さなければ別れるとのサインがAから送られてきたので、「嫌や」「信じるで」と発言したという事実経過(前記2)は、被告人とA以外は哲学的ゾンビであるという妄想に対する疑念を振り払おうとしてこうした発言をしたものとみることに整合的であるが、そうであるとしても、甲医師が指摘するように(当審甲調書43、70頁)、被告人は、当時、妄想型統合失調症の精神症状が急激に悪化していて妄想の影響の真っただ中で、妄想が積みあがるようにしてほぼ構築されているような状態であったとすれば、妄想を十分に批判するに至らず、これらの発言の後には疑念が消失してしまい、妄想の内容を確信するに至ったと説明することも可能である。そもそも、本件各行為は、家族を含め何の恨みもない5人もの人を殺傷するという、極めて重大で異常な犯罪行為であり、被告人とA以外は哲学的ゾンビであるという妄想に対する疑念があるのに、Aとの結婚の実現という- 14 - だけの目的でこれを敢行することに不自然さがあること、神社へは礼服で来るようAから指示され、当初はワイシャツを探し回ったのに、途中で別の事柄に関心を奪われ、結局パジャマのまま出発した点、トイレに行かずに小便を漏らしながら向かった点など、本件各行為の前後の行動に精神症状の急激な ら指示され、当初はワイシャツを探し回ったのに、途中で別の事柄に関心を奪われ、結局パジャマのまま出発した点、トイレに行かずに小便を漏らしながら向かった点など、本件各行為の前後の行動に精神症状の急激な悪化が強くうかがわれる異常な点が散見されることをも考慮すると、被告人が自身とA以外は哲学的ゾンビであるという妄想を確信していた疑いは払拭できない。してみると、乙医師が指摘する被告人の言動等をもって、「被害者が哲学的ゾンビである」ことについて被告人が疑念を持って本件各行為に及んだことを認定するに足るとはいえない。 以上によれば、甲鑑定が、動機の基盤となった「被告人とA以外は哲学的ゾンビである」「被害者らは哲学的ゾンビであって、人ではない」という妄想を被告人が確信していたとすることに対する乙医師の批判は、ある程度の傾聴に値するが、反論の余地を許すもので、これを覆すほどの根拠があるとはいえない。 他方、Aからの幻声又はメッセージは、被告人の行為を支配するような指示・命令性のものではなく、内容もそのとおりにしなければ被告人の生命等が侵害されるというような切迫したものではないとの乙医師の指摘には、合理性がある。しかし、この点は、妄想の確信と矛盾する事情ではない。 本件にあっては、被告人自身が原審公判で「被害者らが人ではなく哲学的ゾンビである」という認識に疑念を抱くことなく本件に及んだ旨を述べており、これに整合する甲鑑定の見解を覆す根拠がないと考えられる以上、責任能力を判断するに際しては、被告人がこの妄想を確信していたことを前提とすべきである。被告人において、被害者が人ではないと考えていたのであれば、被告人は、殺人の禁止という規範と直面していたとはいえない。善悪を判断する際の指標となる規範に直面していなかったとすれば、指示・命令性の幻声の有無や妄想内 、被害者が人ではないと考えていたのであれば、被告人は、殺人の禁止という規範と直面していたとはいえない。善悪を判断する際の指標となる規範に直面していなかったとすれば、指示・命令性の幻声の有無や妄想内容の切迫性の有無にかかわらず、善悪の判断能力に合理的な疑いが生じることに帰する。したがって、被告人が、本件各行為当時、心神喪失状態にあったとの疑いは、容易に否定できない。 5 所論1について- 15 - 所論は、最高裁判所平成20年4月25日第2小法廷判決(刑集62巻5号1559頁)及び同平成21年12月8日第1小法廷決定(刑集63巻11号2829頁)において、犯行動機の形成に揺るぎない妄想があっても、犯行の意思決定に被告人の人格(性格)傾向を踏まえた主体的な判断が含まれている場合には責任非難が可能であり、責任能力が肯定されるとする判断枠組みが示されているとした上で、原判決の判断手法はこれに反している、と主張する。 しかしながら、上記各判例が所論のいうような判断枠組みを示しているとの前提自体が相当ではない。上記各判例が判旨とするのは、鑑定意見の信用性の判断枠組みや鑑定意見を採用し得ない場合の責任能力の判断枠組みであって、所論がいうのはあくまで事例判断の部分にすぎない。各事案において、いずれも妄想によって形成された動機によって殺傷に及んだ被告人が限定責任能力であったと最終的に認定されたことはそのとおりであるが、それらの妄想の内容は、被害者らから執拗な嫌がらせを受けているとか、被害者の長男からテレパシーでおちょくられている、というようなもので、本件のように被害者が人ではないという妄想とは性質が大きく異なる。甲鑑定に依拠して生物学的要素や心理学的要素を認定して責任能力を判断した原判決の手法が、判例の示した判断枠組みに反するとはいえない。 本件のように被害者が人ではないという妄想とは性質が大きく異なる。甲鑑定に依拠して生物学的要素や心理学的要素を認定して責任能力を判断した原判決の手法が、判例の示した判断枠組みに反するとはいえない。 所論は、動機の形成に幻声が関与しているものの、被告人は幻声等に拘束されておらず、正常な精神作用に基づき、Aと結婚したいとの欲求から被害者らを倒す決意をしたもので、犯行を思いとどまる能力があったと主張するが、本件では、妄想の内容そのものが本件各行為の反規範性の認識を消失させる性質のものであるから、これがあることを前提に思いとどまる能力の有無を問うことはできない。 所論は、本件では、殺傷相手を人間でないゾンビと確信していたとすれば説明困難な事実関係が多数あるとも主張するが、その内容は、前項において検討した乙医師の見解と異なることはなく、これが採用できないのは上記のとおりといえる。 6 所論2について所論は、被告人には、過去に暴力的な行為、残酷な動画の視聴等があったことか- 16 - ら、暴力虐殺容認的な性格傾向があり、本件各行為は被告人の元来の性格傾向等と著しい乖離はないし、判例上、被告人の性格傾向に関連する事実は相当幅広い事実を考慮に入れられているのに、原判決はこれらの事情を不当に過小評価している旨主張する。 しかし、被告人の生活歴からすれば、幼少期から、むしろおとなしい性格との評価を受けてきた面が強く、高等専門学校在籍時や運輸会社勤務時の暴力的なエピソードは、被告人なりの理由があっての行動だったとうかがわれる上、暴力自体が苛烈であったとか、刑事手続が開始したというような事情は見当たらず、被告人自身が留置担当官に対して、自分が瞬時にカッとなる性格である旨説明していた(言動19)事実があるとしても、これを裏付けるエピソードが豊富にあ か、刑事手続が開始したというような事情は見当たらず、被告人自身が留置担当官に対して、自分が瞬時にカッとなる性格である旨説明していた(言動19)事実があるとしても、これを裏付けるエピソードが豊富にあるというわけではない。実際にいたぶるなどしたのは人間ではなく害獣であるとの原判決の説示は正当で、残酷な動画を視聴することと実際に被告人が人間を殺害することとは異なる旨の原判決の説示にも誤りはない。超常現象に親和的で思い込みの激しい被告人の性格が本件のような妄想を受け入れる素地になったことはうかがわれるものの、妄想が病前の好みを対象とすること自体十分にあることで(原審丙75頁)、これに特段強い攻撃性が含まれているわけでもないから、この性格が本件各行為に寄与しているとの評価も相当でない。 第6 結論原判決は、甲鑑定に依拠して、被害者らを哲学的ゾンビだと確信しており、人を殺害している認識はなかったと認定し、その上で、被告人の元来の性格傾向や当時被告人が置かれていた状況等につき原審検察官が指摘する点(内容は、所論2と同様)も検討し、被告人は、正常な精神作用が機能しておらず、妄想等の圧倒的影響下で本件各行為に及んだとの疑いを払拭することはできず、心神喪失状態にあったとの合理的な疑いが残るとした。原判決が甲鑑定を信用できるとした理由はともかく、同鑑定に基づいて、当時の病状、妄想の内容、当時の認識等を認定した結論は相当であるし、原判決が被告人の元来の性格傾向等や当時の状況と犯行との関連性- 17 - について述べる点は、第5の6において述べたとおり、誤りはない。原判決の責任能力の判断に不合理な点はなく、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認はない。論旨は理由がない。 よって、刑訴法396条により本件控訴を棄却することとし、同法181条3項 りはない。原判決の責任能力の判断に不合理な点はなく、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認はない。論旨は理由がない。 よって、刑訴法396条により本件控訴を棄却することとし、同法181条3項本文により当審における訴訟費用を被告人に負担させないこととして、主文のとおり判決する。 令和5年9月25日大阪高等裁判所第5刑事部 裁判長裁判官 坪井祐子 裁判官 武田 正 裁判官 奥山雅哉
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