平成2(行コ)13 名古屋市立小学校教員措置要求

裁判年月日・裁判所
平成4年3月31日 名古屋高等裁判所
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【DRY-RUN】主   文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。        事   実 第一 申立 (控訴人) 一 原判決を取り消す。 二 被控訴人の請求を棄却する。 三 訴訟費用は第一、二審とも

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判決文本文6,206 文字)

主   文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。        事   実 第一 申立 (控訴人) 一 原判決を取り消す。 二 被控訴人の請求を棄却する。 三 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。 (被控訴人) 主文同旨 第二 主張  当事者双方の事実上、法律上の主張は、左に付加するほかは原判決事実第二当事 者の主張(原判決二丁表三行目から九丁裏一行目まで)の記載と同一であるから、 ここにこれを引用する。 (控訴人の主張) 一 仮に、本件措置要求事項が、学校の管理運営事項であると同時に、何らかの形 で勤務条件にかかわるものであるとしても両者が密接に関連し、管理運営事項の処 理によって、被控訴人の勤務条件に影響が及ぶ場合には、管理運営事項の処理の結 果、影響を受けることがある勤務条件そのものにつき、これを切り離して措置要求 をすることができるものと解さざるを得ないが、本件のごとき事例においては、管 理運営事項という側面を離れて、勤務条件そのものを別個にとり出して措置要求の 対象とすることは元来なし得ないケースにあたる。即ち校長は不承認としたベトナ ム研修旅行期間中の日につき年次有給休暇扱いとしたのであるが、これにより被控 訴人が休暇を実質的に返上せざるを得ない結果になったものであるとしても、教特 法二〇条二項の研修は教員が自主的に行うものであって、教員の職務そのものでは ないから、被控訴人が返上した休暇を利用して自発的に研修を行うことは何ら不当 でなく、校長の右扱いを勤務条件に関するものとして別個に独立して措置要求の対 象とし得る方法はない。結局、管理運営事項にあたる研修承認を措置要求の対象と して掲げざるを得ないのであるから、本件はまさに管理運営事項を措置要求の対象 としていることとなる。 二 本件措置要求における職務専念義務免除の問題は、教特法二 営事項にあたる研修承認を措置要求の対象と して掲げざるを得ないのであるから、本件はまさに管理運営事項を措置要求の対象 としていることとなる。 二 本件措置要求における職務専念義務免除の問題は、教特法二〇条二項に基づく 研修承認の問題と一体不可分のものであって、これを分離して審査することができ ないものであるから、本件措置要求事項は管理運営事項そのものである。学校長及 び市教委の承認によって職務専念義務が免除されるのは、公務優先という基本原則 に対する限定的、例外的特例であり、かつ本属長の自由裁量に委ねられているのに 対し、休暇は、労働者の基本的権利であって、労働者の指定した日に与えられるも のであり、両者は根本的にその性質を異にする。このように性質や制度として相違 があるのに、自己の裁量をもって時間の使用が許されるとの事実だけに着目して、 職務専念義務免除の問題を、休暇と同様に勤務条件であるとすることは、著しい論 理の飛躍がある。 (被控訴人の反論) 一 基本的には管理運営事項といわれているものは、多かれ少なかれ勤務条件に影 響を与えるものというべきであるし、少なくとも勤務条件にかかわりをもつもので ある以上、管理運営事項としての側面を持っていても団体交渉の対象となり得るの であるから、措置要求の対象事項でもあり、これを峻別することはできない。 二 研修の承認により、当該教育公務員は職務専念義務から解放され、自己判断の 裁量の幅をもった時間使用が許されることになり、休暇の問題と同質性を有するこ とは明らかである。また実質的にみても、本属長による研修の承認乃至不承認が年 次有給休暇の問題と裏表の関係にあって、研修承認の問題は現実的には勤務条件に 他ならない。 第三 証拠(省略)        理   由 一 当事者間に争いのない事実は、原判決理由一に記載されたとおり(原判決九 暇の問題と裏表の関係にあって、研修承認の問題は現実的には勤務条件に 他ならない。 第三 証拠(省略)        理   由 一 当事者間に争いのない事実は、原判決理由一に記載されたとおり(原判決九丁 裏六行目から一〇丁表五行目まで)であるから、これを引用する。 二 そこで、地公法四六条により措置要求の対象となる「勤務条件」につき検討す る。 1 措置要求の性質  地公法四六条は、給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、人事委員会に対して 当局により適当な措置が執られるべきことを要求できる旨定めている。この措置要 求の性質は、地公法が職員に対し、労働組合法の適用を排除し、団体協約を締結す る権利を認めず、また争議行為を禁止し、労働委員会に対する救済申立ての途をと ざしたことに対応し、職員の勤務条件の適正を保障するために、職員の勤務条件に つき人事委員会の適法な判定を要求し得べきことを職員の権利乃至法的利益として 保障する趣旨のものと解される(最判三小、昭和三六年三月二八日判決、民集一五 巻三号五九五頁)。  即ち、勤務条件に関する措置要求の制度は、労働基本権を制限された代償とし て、職員たる地位に基づいて有する職員の経済上の権利の保障請求権であるという ことができる。 2 措置要求の対象  地公法四六条は、「勤務条件」として給与、勤務時間を例示しているが、これは 同法五五条一項の団体交渉の対象事項として定める勤務条件と同一用語であり、代 償措置として設けられている国家公務員法八六条の俸給、給料その他あらゆる勤務 条件に関する行政措置の要求の規定とも同義であると解されるので、職員が地方公 共団体に対し勤務を提供するについて有する諸条件で、職員が自己の勤務を提供 し、又はその提供を継続するか否かの決心をするにあたり、一般的に当然考慮の対 象となるべき利害関係事項であるものをさす が地方公 共団体に対し勤務を提供するについて有する諸条件で、職員が自己の勤務を提供 し、又はその提供を継続するか否かの決心をするにあたり、一般的に当然考慮の対 象となるべき利害関係事項であるものをさすと理解できる。そして具体的には、給 与、勤務時間、休暇以外に旅費の種類、金額、支給条件の改善、執務環境の改善、 採光、換気施設の改善、庁舎の拡充、地公法四五条一項、三項に定める以外の公務 災害補償に関する事項などがその対象として考えられる。 3 管理運営事項との関係  前記のように地公法四六条と五五条一項の「勤務条件」は同一内容と解せられる ところ、五五条三項が管理運営事項を団体交渉の対象から除外していることからす ると、労働基本権の制約に対する代償措置である措置要求についても、管理運営事 項を対象とすることは予定されていないものというべきである。従って、地方自治 体の当局が、法令に基づき自らの責任と判断において自主的に処理すべき予算執行 権、人事権等の管理運営事項は措置要求の対象とならない。  しかし、ある事項が管理運営事項に関するものであると同時に勤務条件と密接に 関連する場合がある。具体的には、管理運営事項の処理の結果、影響を受けること のある勤務条件がこれにあたるのであるが、このような場合に管理運営事項に属す るという理由だけから、措置要求の対象にならないとすると、前記の代償措置とし ての措置要求制度そのものの趣旨を没却してしまう結果となるので、勤務条件の側 面からの問題として、措置要求の対象とすることは制約されず、その結果、当局が 管理運営事項について何らかの措置を執らざるを得なくなったとしても、それは管 理運営事項自体を措置要求の対象としたわけではないから、右の原則に反するとは いえないのである。  このような例として、職員の定数の定めは、人事権の一態様であるから、 るを得なくなったとしても、それは管 理運営事項自体を措置要求の対象としたわけではないから、右の原則に反するとは いえないのである。  このような例として、職員の定数の定めは、人事権の一態様であるから、定数の 定めそのものを措置要求の対象とすることはできないが、これを勤務条件の側面か らの措置要求として、職員の定数配置が少ないため過重な時間外勤務を行わざるを 得ない勤務時間の問題として要求することはできるし、職員の服務に関する事項 は、一般的には対象とならないが、それが同時に勤務条件に関するものであれば、 措置要求をすることができる。例えば、職務専念義務の免除も勤務条件に関する結 果となる場合には、これに該当するものと理解できるのである。 三 右二で検討した結果から、被控訴人の措置要求の適否を考えてみる。 1 被控訴人は、大高北小学校校長及び名古屋市教育委員会が被控訴人の計画した 平成元年六月五日から一五日までのベトナム研修旅行を教特法二〇条二項に基づく 研修として承認せず、その結果職務専念義務の免除が与えられなかったことを不服 として措置要求をなしたものである。 2 教特法上の研修の特色  一般の地方公務員については、勤務能率の発揮及び増進のために研修の機会が与 えられるが(地公法三九条)、研修の実施は任命権者にあり、職員自身には研修す べき義務は明定されていない。  これに対し、教育公務員については、教育の本質から研究と人格の修養とが求め られ、教育公務員自身に研修義務が直接課せられ、かつその職責を遂行するために 研修は必須とされ、任免権者の企画実施する研修(職務命令研修)のほかにとくに 校長を除く教員個人の側からの自発的な研修(自主研修)として、職務専念義務免 除による教特法二〇条二項の研修、勤務時間外の完全な自主的研修が認められてい る。 3 教特法二〇条二項の研修 ほかにとくに 校長を除く教員個人の側からの自発的な研修(自主研修)として、職務専念義務免 除による教特法二〇条二項の研修、勤務時間外の完全な自主的研修が認められてい る。 3 教特法二〇条二項の研修  地方公共団体の職員は、服務規律に従って勤務する服務義務に関する面からみる と、地公法三五条により、勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職務遂行の ために用いなければならないとする職務専念義務を負っているのであるが、この義 務を免除するためには、法律又は条例の特別の定めが必要であり、各地方公共団体 では職専免条例を制定して、研修を受ける場合には同義務が免除されている。しか し、教育公務員については、この条例を俟つまでもなく、教特法二〇条二項の規定 が地公法三五条にいう法律の特別の定めに該当し、直接に同義務が免除される。  そして、給与上の取扱も、給与条例上「勤務しなかったことにつき承認があった 場合」として勤務していたのと同様有給の扱いとされる。  このように法律によって直接職務専念義務を免除し、服務義務から解放する例は 他に殆んどその例をみないが、一般論として職務専念義務免除が勤務条件に属する 勤務時間、休暇、休日と実質的に密接な関連を有することになるから、教特法二〇 条二項の研修は教員にとって、その遂行する職務に不可欠なかつ密接な服務義務で あると共に、本属長の承認によって職務専念義務を免除され、勤務場所を離れて自 発的研修に努めることができ、しかもこれに法律が特別の性格を付与していること は教員にとって大きな関心事項であり、事実上の利益であるということができるか ら、同項による本属長の承認、不承認は、自己の勤務の継続的提供の決意にあた り、考慮の対象となる利害関係事項に該当し、労務の提供に関連した勤務条件性を 有するものとして、端的に措置要求の対象となるものというべき による本属長の承認、不承認は、自己の勤務の継続的提供の決意にあた り、考慮の対象となる利害関係事項に該当し、労務の提供に関連した勤務条件性を 有するものとして、端的に措置要求の対象となるものというべきである。 4 管理運営事項の該当性  教特法二〇条二項の研修の承認は、教員の自主研修権を保障したものであるか ら、本属長は授業に支障のない限り、必らず承認しなければならないとする見解も あるが、同項が「授業に支障のない限り」との要件を特に規定していることを考え ると、授業に支障がある場合には承認をしないものとして、本属長の承認権を拘束 し、更に本属長の職務内容からみて、授業以外の校務運営上の支障の有無、研修の 日程及び内容が職務に関連し、教員の資質、人格の修養と向上に寄与するか等の事 情も考慮して、当否の判断を裁量的に行うべきものと考えられるので、右承認は、 本属長の自由裁量による、各学校の管理運営事項に該当するものというべきであ る。  右のように承認が管理運営事項にあたるとしても、前記説示のとおり同項の研修 の承認については、教員の勤務条件としての性格もあわせ有するものと認められる から、措置要求の対象事項に該当するものと解される。 5 なお、控訴人は、前記控訴人の主張一のとおり、影響を受けるべき勤務条件そ のものにつき、措置要求をすべきであるというが、本件については本属長の研修不 承認により職務専念義務が免除されず、旅行期間中の日について年休扱いとなった ことは当事者間に争いがないから、両者は表裏一体の関係となり、勤務条件の側面 からの措置要求のみを取り上げて、これを要求することは事実上困難という他はな い。しかも勤務専念義務免除の前提として、本属長が被控訴人の海外旅行を研修と して承認すべきものかどうかは、前記のとおり、教特法二〇条二項に定める授業、 校務などに支障のな ことは事実上困難という他はな い。しかも勤務専念義務免除の前提として、本属長が被控訴人の海外旅行を研修と して承認すべきものかどうかは、前記のとおり、教特法二〇条二項に定める授業、 校務などに支障のない場合に該当するか否かを考慮して決定される別個の問題であ る。  また控訴人は前記主張二のように、休暇と職務専念義務の免除とは、制度として の趣旨も法的性格も全く異にするものであるのに、被控訴人の裁量による自由な時 間使用という面にのみ着目して、右義務の免除を休暇と同一視することは不当であ るというが、前記2乃至4のとおり教特法二〇条二項の研修については法律が特別 の性格を付与し、その承認による職務専念義務の免除の問題は、それが管理運営事 項に属しても措置要求の対象となし得るとする当裁判所の前記判断からすれば、職 専免除と休暇との法律的な性格の峻別をする必要はなく、実質的な休暇の側面を持 つことがあることを指摘すれば足りる。  控訴人の右主張一、二は採用できない。 四 結論  以上の次第で、被控訴人の本訴請求は理由があるから、これを認容した原判決は 結局相当であって、本件控訴は理由がない。  よって、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき、行政事件訴訟法 七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官 土田勇 水野祐一 喜多村治雄)

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