令和5(行ウ)2 賃料等履行請求(住民訴訟)事件

裁判年月日・裁判所
令和7年3月19日 熊本地方裁判所
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判決文本文14,970 文字)

主文 1 被告は、Aに対し、48万円を支払うよう請求せよ。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、これを5分し、その2を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は、Aに対し、81万6000円を支払うよう請求せよ。 第2 事案の概要 1 本件は、熊本県阿蘇郡南阿蘇村の副村長に就任したAが、平成31年4月1 日から令和5年3月31日まで、南阿蘇中学校教職員住宅(以下「本件住宅」という。)に賃料を支払うことなく入居したこと(以下「本件無償居住」という。)が違法であるとして、南阿蘇村の執行機関である被告に対し、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、不当利得返還請求として、A副村長に、上記の期間における本件住宅の賃料の合計額である81万6000円の支払を 請求するよう求める住民訴訟である。 2 関係法令の定め別紙「関係法令の定め」のとおりである(なお、同別紙における略称は、本文においても用いる)。 3 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨に より容易に認められる事実)⑴ 当事者等ア原告は、南阿蘇村の住民である。 イ被告は、南阿蘇村の執行機関である。 ⑵ 本件住宅について 本件住宅は、南阿蘇村ab番地所在の木造平屋建ての建物であり、建築年 月日は平成5年2月1日、延床面積は40㎡である。なお、公有財産台帳上、本件住宅の財産区分は「行政財産_公共用」、所属課は「教育委員会」と記載されている。(甲3、乙10)本件住宅管理条例においては、本件住宅が村立学校教職員を入居させる目的で設置された旨が定められている(本件住宅管理条例1、2条)。また、 令和4年3月 載されている。(甲3、乙10)本件住宅管理条例においては、本件住宅が村立学校教職員を入居させる目的で設置された旨が定められている(本件住宅管理条例1、2条)。また、 令和4年3月31日以前、本件住宅の賃料は月額2万円であった(本件住宅管理条例(令和4年条例第10号による改正前のもの)9条)。(甲3[30ないし34頁])⑶ A副村長が本件住宅に入居するまでの経緯等ア平成28年4月に発生した熊本地震により、南阿蘇村では31名が死亡 し、住宅699棟が全壊したほか、道路の寸断等のインフラ設備の被害も発生した。(乙18、19)イ平成28年4月以降、地方自治法252条の17の定め等に基づき、熊本地震に係る復旧・復興事業のため、他の地方公共団体の職員(以下「災害派遣職員」という。)が南阿蘇村に派遣された。平成28年から平成3 0年にかけて南阿蘇村に派遣された災害派遣職員の人数は、合計63名である。(乙5ないし7)ウ災害派遣職員として長崎県c町から南阿蘇村に派遣されたBは、平成28年10月3日、本件住宅への入居の申込みをし、南阿蘇村長は、Bの入居を許可するとともに、賃料及び敷金を免除する旨の決定をした。Bが本 件住宅を退去した後、2名の災害派遣職員が本件住宅へ順次入居し、賃料及び敷金を支払うことなく居住したが、南阿蘇村長はこれらの災害派遣職員の入居許可並びに家賃及び敷金の免除に係る手続を執らなかった。(甲1[4、5頁]、3[4~6、9、22、23頁])なお、災害派遣職員の中には、南阿蘇村が災害派遣職員のために借り上 げた民間住宅に賃料等を支払うことなく居住する者もいた。(乙8、9) エ平成28年6月20日以来、南阿蘇村の災害派遣職員として勤務していた熊本県職員の 派遣職員のために借り上 げた民間住宅に賃料等を支払うことなく居住する者もいた。(乙8、9) エ平成28年6月20日以来、南阿蘇村の災害派遣職員として勤務していた熊本県職員のCは、平成29年4月、南阿蘇村の副村長に就任し、平成31年3月に同副村長を退任するまでの間、南阿蘇村が借り上げた民間住宅に賃料等を支払うことなく居住した。(甲3[55~57頁]、乙5の3) オ平成31年4月、Cの後任として、熊本県職員を退職したA副村長が南阿蘇村の副村長に就任した。A副村長は、本件住宅に入居し、賃料及び敷金を支払うことなく居住していたが(本件無償居住)、南阿蘇村長は、A副村長の入居許可並びに家賃及び敷金の免除に係る手続を執らなかった。 A副村長は、南阿蘇村長に対し、本件住宅への入居当初、本件住宅の家賃 を支払う意思があることを伝えていた。(甲3[7ないし11頁])なお、令和4年4月1日における南阿蘇村の副村長の収入は給料月額が58万円であったほか、令和3年度における期末手当の支給割合は2.6月分などと定められていた。(甲5[7頁])⑷ A副村長の本件住宅入居後の経緯 ア熊本日日新聞は、令和4年3月2日、D南阿蘇村議会議員が同月開催予定の南阿蘇村議会において本件無償居住が条例違反ではないかとの質問をする予定である旨を村議会事務局に事前通告したところ、南阿蘇村長が同議員に対して同質問の取下げを打診したとする内容の報道をした。(甲1[12頁]、甲3[21頁]) イ南阿蘇村議会は、令和4年3月18日、本件住宅管理条例について、本件住宅の賃料を月額8000円とする内容に改正する旨の議案を可決し、同改正後の本件住宅管理条例は、同年4月1日に施行された。(甲3[30頁]) 令和4年3月18日、本件住宅管理条例について、本件住宅の賃料を月額8000円とする内容に改正する旨の議案を可決し、同改正後の本件住宅管理条例は、同年4月1日に施行された。(甲3[30頁])ウ南阿蘇村長は、令和4年3月24日付けで、入居可能日を同年4月1日 として、A副村長の本件住宅への入居許可(以下「令和4年度の入居許可」 という。)並びに賃料及び敷金の免除に係る決定(以下「令和4年度の賃料免除」という。 )をし、A副村長に通知した。また、南阿蘇村長は、令和4年度の入居許可及び令和4年度の賃料免除と併せて、同日付けで、入居可能日を令和3年4月1日として、本件住宅への入居許可(以下「令和3年度の入居許可」という。)並びに賃料及び敷金の免除に係る決定(以 下「令和3年度の賃料免除」という。)をし、A副村長に通知したところ、同通知に係る書面には、令和3年度の入居許可及び令和3年度の賃料免除を令和4年3月24日付けで行ったことについて、「事務手続きの遺漏により遡及して施行する」との説明が記載されている。(甲1[6ないし10頁]、3[15ないし20、24ないし29頁]) ⑸ 住民監査請求原告は、令和4年12月20日、南阿蘇村監査委員に対し、本件無償居住が違法であるなどとして、南阿蘇村長に対し、平成31年4月から令和5年3月までの本件住宅の賃料合計81万6000円の支払を請求することなどの必要な措置を講じることを求める旨の住民監査請求(以下「本件住民監査 請求」という。)をしたが、南阿蘇村監査委員は、同年2月17日付けで、原告に対し、本件住民監査請求につき合議不調となったことを通知した。 (甲1ないし4)⑹ 本件訴えの提起原告は、令和5年3月15日、本件訴えを提起した。 は、同年2月17日付けで、原告に対し、本件住民監査請求につき合議不調となったことを通知した。 (甲1ないし4)⑹ 本件訴えの提起原告は、令和5年3月15日、本件訴えを提起した。 3 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は、本件無償居住に係る南阿蘇村のA副村長に対する不当利得返還請求権の有無であり、争点に関する当事者の主張は以下のとおりである。 (原告らの主張)⑴ 入居資格の有無 本件住宅管理条例3条は、原則として、「南阿蘇村立小中学校に勤務する 学校教職員及び現に同居し、又は同居しようとする親族」に本件住宅への入居資格を認めているところ、A副村長はこれに当たらない。また、A副村長が南阿蘇村の副村長に就任した平成31年4月1日の時点で、既に熊本地震の発生から約3年経過していたことに照らすと、南阿蘇村長は本件住宅管理条例3条ただし書の「村長が認めた場合は、この限りではない。」との定め に基づきA副村長を入居させることもできない。 したがって、A副村長は本件住宅への入居資格を欠く。 ⑵ 賃料の免除の違法性本件住宅の賃料は、令和4年3月31日以前は月額2万円、同年4月1日以降は月額8000円であるところ(本件住宅管理条例9条)、本件住宅の 家賃の減免について定める本件住宅管理条例10条は、災害により、著しい損害を受けて、家賃の減免等を必要と認める者に対して、別に定める減免基準により家賃の減免等をすることができる旨が定められているが、かかる減免基準は定められていないから、南阿蘇村長が、A副村長の本件住居への入居に際し、同条に基づき賃料を免除することはできない。また、本件住宅管 理条例24条は、「この条例の施行に関し必要な事項 減免基準は定められていないから、南阿蘇村長が、A副村長の本件住居への入居に際し、同条に基づき賃料を免除することはできない。また、本件住宅管 理条例24条は、「この条例の施行に関し必要な事項は、村長が定める。」と規定するが、使用料条例主義に照らすと、南阿蘇村長が同条に基づきその意向により自由にA副村長の賃料を免除することはできない。 したがって、南阿蘇村長がA副村長の賃料を免除したことは違法である。 ⑶ 以上によれば、A副村長は、法律上の原因なく本件無償居住をしたもので あり、これにより南阿蘇村に平成31年4月1日から令和5年3月までの賃料合計81万6000円の損失が生じ、A副村長に同額の利得が生じたから、南阿蘇村長は、A副村長に対して、不当利得返還請求として、同額を請求することができる。それにもかかわらず、南阿蘇村は、正当な理由なく、同請求権の行使を怠っている。 (被告の主張) ⑴ 本件住宅の使用者南阿蘇村は、熊本地震からの復旧のための効率的な事務の一環として、A副村長に本件住宅を使用させた。したがって、本件住宅の使用者は、A副村長ではなく、南阿蘇村であるから、A副村長が南阿蘇村に対して不当利得返還義務を負う旨の原告の主張は前提を欠く。 ⑵ 入居資格及び賃料免除仮に本件住宅の使用者がA副村長であるとしても、以下の点に照らすと、南阿蘇村がA副村長に本件住宅へ入居させ、賃料を免除したことは適法であるから、A副村長は南阿蘇村に対して不当利得返還義務を負わない。 ア地方自治法149条6号等の定めに照らすと、公有財産の管理区分又は 用途の変更は村長の専権に属するところ、南阿蘇村長は、B等の災害派遣職員に本件住宅への入居を許可するに際し、本 。 ア地方自治法149条6号等の定めに照らすと、公有財産の管理区分又は 用途の変更は村長の専権に属するところ、南阿蘇村長は、B等の災害派遣職員に本件住宅への入居を許可するに際し、本件住宅の教職員住宅としての用途を廃止した。したがって、A副村長が本件住宅に入居した時点で、本件住宅の管理等について本件住宅管理条例は適用されないから、南阿蘇村は、A副村長に対して、南阿蘇村行政財産使用料条例3条1号の「国、 地方公共団体その他公共団体において公用又は公共用に供するとき」又は南阿蘇村財産の交換、剰余、無償貸与等に関する条例4条1号の「他の地方公共団体その他公共団体又は公共的団体において公用若しくは公共用又は公益事業の用に供するとき」に基づき本件無償居住をさせることができる。 イ仮に本件無償居住について本件住宅管理条例の適用があるとしても、南阿蘇村長は、本件住宅管理条例3条ただし書に基づきA副村長の本件住宅への入居を許可することができる。そして、本件住宅管理条例10条は「災害により著しい損害を受けたとき」の家賃の減免に係る規定であるところ、本件住宅管理条例がこれ以外に家賃の減免を認めない趣旨とは解さ れないから、南阿蘇村長は、A副村長に対し、南阿蘇村行政財産使用料条 例3条1号又は南阿蘇村財産の交換、剰余、無償貸与等に関する条例4条1号に基づき本件住宅の家賃の支払を免除することができる。 第3 当裁判所の判断 1 本件住宅の管理区分及び用途公有財産は、行政財産と普通財産に分類され、行政財産は、更に公用財産と 公共用財産に分類され、公用財産とは、普通地方公共団体がその事務又は事業を執行するため直接使用することをその本来の目的とする公有財産をいい、公共用財産とは、住民の一般的共同 は、更に公用財産と 公共用財産に分類され、公用財産とは、普通地方公共団体がその事務又は事業を執行するため直接使用することをその本来の目的とする公有財産をいい、公共用財産とは、住民の一般的共同利用に供することをその本来の目的とする公有財産をいう。公有財産のうち普通財産とは、行政財産以外の一切の公有財産をいう(地方自治法238条3、4項)。 本件住宅が行政財産のうち公共用財産に当たらないことは明らかであるところ、公有財産台帳上、本件住宅は行政財産である旨が記載されていること(前記前提事実⑵)、本件住宅の所在地は南阿蘇村立南阿蘇中学校の付近であることが窺われること(乙18[58頁])、本件住宅が村立小中学校の教職員の福利厚生を図る目的で提供されていることを窺わせる証拠は見当たらないこと 等の事情に照らすと、本件住宅は、行政財産のうち公用財産に当たると認められる。また、本件住宅管理条例2条、3条の定めに照らすと、本件住宅の用途は村立学校教職員及びその親族の居住であると認められる。 これに対し、被告は、南阿蘇村長は、B等の災害派遣職員に本件住宅への入居を許可するに際し、本件住宅の教職員住宅としての用途を廃止した旨を主張 する。しかしながら、行政財産の用途を廃止するためには、村長の決裁を受ける必要があるとされるところ(南阿蘇村財産規則14条)、令和3年3月31日時点における公有財産台帳上、本件住宅の所属課は「教育委員会」と記載されており(前提事実⑵)、本件全証拠を精査しても、南阿蘇村長において本件住宅の用途を村立学校教職員及びその親族の居住から災害派遣職員の居住に変 更する旨の決裁をしたことを窺わせる証拠は見当たらず、A副村長が本件住宅 に入居するまでに本件住宅の教職員住宅としての用途が廃止され 員及びその親族の居住から災害派遣職員の居住に変 更する旨の決裁をしたことを窺わせる証拠は見当たらず、A副村長が本件住宅 に入居するまでに本件住宅の教職員住宅としての用途が廃止されたとは認められないから、被告の上記主張は採用できない。 2 A副村長の本件住宅への入居の可否⑴ 上記のとおり、本件住宅は、行政財産のうち公用財産に当たるところ、令和3年度及び令和4年度の各入居許可は、南阿蘇村長が本件住宅管理条例3 条ただし書及び本件住宅管理条例施行規則2条4号又は地方自治法238条の4第7項及び南阿蘇村財産規則15条に基づき行ったものと認められる。 なお、南阿蘇村長が、令和4年3月24日付けで、令和3年4月1日に遡及して令和3年度の入居を許可したことは、令和3年度内にされたことに照らすと、直ちに違法であるとは認められない。 これに対し、原告は、A副村長が本件住宅に入居した時点において熊本地震の発生から約3年が経過していたことに鑑みA副村長は本件住宅への入居資格を欠く旨を主張する。しかしながら、本件住宅管理条例3条ただし書及び本件住宅管理条例施行規則2条4号又は地方自治法238条の4第7項及び南阿蘇村財産規則15条に基づく入居許可をするか否かは、諸般の事情を 総合考慮した南阿蘇村長の合理的な裁量に委ねられており、南阿蘇村長の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものと評価される場合でない限り、南阿蘇村長による入居許可が違法となるものではないと解されるところ、A副村長が本件住宅に入居していた期間において本件住宅への入居を希望していた村立学校教職員がいたことを窺わせる証拠はないこと、熊本地震 による南阿蘇村の被害状況(前提事実⑶ア)や証拠(乙19)上窺われる復興の経過等に照らせば、 において本件住宅への入居を希望していた村立学校教職員がいたことを窺わせる証拠はないこと、熊本地震 による南阿蘇村の被害状況(前提事実⑶ア)や証拠(乙19)上窺われる復興の経過等に照らせば、熊本県の幹部職員であったA副村長を南阿蘇村の副村長として招へいすることにつき、その合理性に欠けるところはなく、村外から副村長を招へいする場合には、村内所在の住居を確保する必要があること等に照らすと、南阿蘇村長がA副村長の本件住宅への入居を許可したこと が、南阿蘇村長の裁量権の範囲を逸脱し又は濫用したものであるとは認めら れない。したがって、原告の上記主張は採用できない。 ⑵ 他方、平成31年4月ないし令和2年3月31日までの期間に係るA副村長の本件住宅への入居につき、南阿蘇村長が本件住宅管理条例3条ただし書及び本件住宅管理条例施行規則2条4号又は地方自治法238条の4第7項及び南阿蘇村財産規則15条に基づき入居を許可した形跡は証拠上窺われな い。また、本件住宅管理条例4条、7条及び本件住宅管理条例施行規則3条、4条並びに南阿蘇村財産規則16条において入居許可又は目的外使用許可に係る手続が明確に定められており、実際に、Bが平成28年10月3日に本件住宅への入居の申込みをした際にも、南阿蘇村長がBの入居を許可するとともに、賃料及び敷金を免除する旨の決定をしたことに照らすと、南阿蘇村 長がA副村長に対して上記の期間の本件住宅への入居につき黙示の許可をしたなどと解するのも相当ではない。したがって、本件無償居住のうち上記の期間については、南阿蘇村長の適法な入居許可に基づくものであるとは認められない。 3 A副村長の本件住宅への入居に係る賃料免除の可否 ⑴ 普通地方公共団体は、行政財産の目的外使用の許可 については、南阿蘇村長の適法な入居許可に基づくものであるとは認められない。 3 A副村長の本件住宅への入居に係る賃料免除の可否 ⑴ 普通地方公共団体は、行政財産の目的外使用の許可を受けてする行政財産の使用につき使用料を徴収することができるところ(地方自治法225条)、本件住宅管理条例9条は、本件住宅の家賃につき、令和4年3月31日以前は月額2万円、同年4月1日以降は月額8000円と定めているから、A副村長が負担すべき本件住宅の家賃は、令和3年4月1日から令和4年3月3 1日までの期間は月額2万円、同年4月1日から令和5年3月31日までの期間は月額8000円となる。 なお、被告は、A副村長の本件住宅への入居は目的外使用に当たるから、本件住宅管理条例の家賃の定めは適用されない旨を主張するが、南阿蘇村行政財産使用料条例2条が目的外使用の場合の使用料の額につき、「条例で別 に定めるものを除くほか」と規定することに照らし、同主張は採用できない。 ⑵ もっとも、南阿蘇村長は、行政財産の目的外使用を許可する場合に、地方自治法225条及び南阿蘇村行政財産使用料条例3条に基づき当該行政財産の使用料を免除することができるものと解されるところ(南阿蘇村長がBの本件住居への入居の際に家賃月額及び敷金を免除した決定をしたこと〔前提事実⑶ウ〕も、そのような理解を前提としたものと考えられる。)、行政財 産の使用料を免除するか否かは、諸般の事情を総合考慮した南阿蘇村長の合理的な裁量に委ねられており、南阿蘇村長の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものと評価される場合でない限り、南阿蘇村長による使用料の免除が違法となるものではない。 南阿蘇村長は、令和3年度及び令和4年度の各賃料免除により、令和3年 の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものと評価される場合でない限り、南阿蘇村長による使用料の免除が違法となるものではない。 南阿蘇村長は、令和3年度及び令和4年度の各賃料免除により、令和3年 4月1日から令和4年3月31日までの期間及び同年4月1日から令和5年3月31日までの期間に係るA副村長の本件住宅の家賃の支払を免除している(前提事実⑷ウ)が、上記2⑴で述べたことに照らすと、南阿蘇村長は、村内に住居を有しないA副村長の南阿蘇村長の副村長としての職務を滞りなく円滑に遂行するためにA副村長の本件住宅に係る目的外使用を許可したも のであり、A副村長の本件住宅への入居は、南阿蘇村行政財産使用料条例3条1号の「国、地方公共団体その他公共団体において公用又は公共用に供するとき」に該当すると認められること、南阿蘇村における熊本地震による被害状況や南阿蘇村の復興の経過に照らし、南阿蘇村がA副村長の在任期間中においても未だ熊本地震による被害からの復興の途上にあり、熊本県の幹部 職員であったA副村長を南阿蘇村の副村長として招へいすることにつき、合理性に欠けるところはなく、村外から副村長を招へいする場合には、村内所在の住居を確保する必要があること等の事情によれば、A副村長が南阿蘇副村長として本件住宅の賃料を容易に支払い得る収入を得ており、本件住宅の賃料を支払う意思を有していた(前提事実⑶オ)との事情を考慮してもなお、 令和3年度及び令和4年度の各賃料免除が、南阿蘇村長の裁量権の範囲を逸 脱し又は濫用したものであるとは認められない。 したがって、令和3年度及び令和4年度の各賃料免除が違法であるとは認められない。 4 まとめ⑴ 上記認定判断によれば、平成31年4月1日から令和3年3月31日まで の期間に係 れない。 したがって、令和3年度及び令和4年度の各賃料免除が違法であるとは認められない。 4 まとめ⑴ 上記認定判断によれば、平成31年4月1日から令和3年3月31日まで の期間に係るA副村長の本件住宅への入居は、南阿蘇村長による入居許可に基づかないものであるから、A副村長は、法律上の原因なく、上記の期間における本件住宅の賃料相当額である48万円(賃料月額2万円の48か月分)を、南阿蘇村の損失により利得したと認められる。なお、被告は、本件無償居住による本件住宅の使用者がA副村長ではなく南阿蘇村自身であるから、 A副村長は南阿蘇村に対して不当利得返還義務を負わない旨を主張するが、本件全証拠を検討しても、これを採用することはできない。 ⑵ 他方、上記認定判断によれば、令和3年4月1日から令和5年3月31日までの期間に係るA副村長の本件住宅への入居については、南阿蘇村長による令和3年度及び令和4年度の各賃料免除に違法性が認められないから、A 副村長は、上記の期間における本件住宅に係る家賃につき南阿蘇村に対する不当利得返還義務を負うとは認められない。 ⑶ 以上によれば、南阿蘇村は、A副村長に対し、不当利得返還請求として、平成31年4月1日から令和3年3月31日までの期間に係る本件住宅の賃料相当額である48万円の支払を請求することができるところ、南阿蘇村は、 同請求権の行使を違法に怠っていると認められる。 第4 結論よって、原告の請求は、被告に対し、A副村長に対して48万円を支払うよう請求することを求める限度において理由があるからその限度で認容し、その余は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。なお、仮執 行宣言の申立てについては、性質上相当とはいえないから却下する。 いて理由があるからその限度で認容し、その余は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。なお、仮執 行宣言の申立てについては、性質上相当とはいえないから却下する。 熊本地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官品川英基 裁判官片岡甲斐 裁判官若松亮太 別紙関係法令の定め 1 南阿蘇村立学校教職員住宅管理条例(以下「本件住宅管理条例」という。)(趣旨) 1条この条例は、南阿蘇村学校教職員住宅(以下「住宅」という。)の設置及び管理に関し必要な事項を定めるものとする。 (設置)2条 1項村は、村立学校教職員を入居させるために住宅を設置する。 2項(略)(入居資格)3条住宅に入居することのできる者は、次の条件を具備するものでなければならない。 ⑴ 南阿蘇村立小中学校に勤務する学校教職員及び現に同居し、又は同居しようとする親族であること。ただし、村長が特に認めた場合は、この限りでない。 (入居の申込み)4条 1項前条に規定する入居資格のある者で、住宅に入居しようとするものは、入居申込書を村長に提出し、その許可を受けなければならない。 2項(略)(補充入居者)6条 1項村長は、明け渡された住宅の補充入居を行うために、毎年1回及びそ の他必要な時期に補充入居者を公募し、公開抽選により、入居順位を定めておかなければならない。 2項村長は、住宅の明渡しがあったときは、前項の補充入居者の入居順位により、入居者を決定する。 3項(略) (入居者の決定通知)7条 入居順位を定めておかなければならない。 2項村長は、住宅の明渡しがあったときは、前項の補充入居者の入居順位により、入居者を決定する。 3項(略) (入居者の決定通知)7条村長は、第5条及び前条第2項の規定により、入居者を決定したときは、速やかにその者に通知しなければならない。 (入居手続)8条 1項住宅の入居を許可された者は、許可のあった日から10日以内に次に掲げる手続をしなければならない。 ⑴ 村内に居住し、かつ、入居を許可された者と同程度の収入を有するもので、村長が適当と認める連帯保証人1人の連署する請書を提出すること。 ⑵ 第13条に規定する敷金を納付すること。 2項住宅の入居を許可された者が、やむを得ない事情により入居の手続を前項に定める期間内にすることができないときは、同項の規定にかかわらず、村長が別に指示する期間内に同項に規定する手続をしなければならない。 3項村長は、住宅の入居を許可された者が前2項に規定する期限内に第1項の手続をしないときは、住宅入居の許可を取り消すことができる。 4項村長は、住宅の入居を許可された者が第1項又は第2項の手続をしたときは、当該入居決定者に対して、速やかに当該住宅の入居可能日を通知しなければならない。 (家賃) 9条家賃は、別表のとおりとする(引用者注:令和4年条例第10号による改正前の本件住宅管理条例(令和4年4月1日施行)の別表においては、月額2万円、同改正後の本件住宅管理条例の別表においては月額8000円と定められていた。)。 (家賃の減免又は徴収猶予) 10条村長は、入居者が災害により、著しい損害を受けて、家賃の減免又は徴収の猶予を必要と認める者に対して、別に定める減免基 額8000円と定められていた。)。 (家賃の減免又は徴収猶予) 10条村長は、入居者が災害により、著しい損害を受けて、家賃の減免又は徴収の猶予を必要と認める者に対して、別に定める減免基準により当該家賃を減額し、若しくは免除し、又は徴収を猶予することができる。 (家賃の変更)11条村長は、次の各号のいずれかに該当する場合において、家賃を変更 することができる。 ⑴ 当該住宅の維持修繕の費用が増加し、又は減少したとき。 ⑵ 住宅相互間における家賃の均衡上必要があると認めるとき。 ⑶ 当該住宅について改良を施したとき。 (家賃の納付) 12条1項住宅の家賃は、第8条第4項の入居可能日の属する月分から、住宅を明け渡した日(第22条の明渡しの請求があったときは、その明渡し請求期限の到来日)の属する月分まで徴収する。ただし、その月の使用期間が15日を超えないときは、その月の家賃の額は、家賃の額の2分 の1に相当する額とする。 2項家賃は、毎月末日(月の途中に明け渡した場合は、明け渡した日)までにその月分を納付しなければならない。ただし、12月については、25日までに納付するものとする。 3項入居者が第21条に規定する手続を経ないで、住宅を立ち退いたと きは、第1項の規定にかかわらず、村長が明渡しの日を認定し、その日 までの家賃を徴収する。 (敷金)13条1項村長は、入居者から3箇月分の家賃(家賃が変更された場合は、当該家賃の額)に相当する金額の範囲内において敷金を徴収する。 2項前項に規定する敷金は、入居者が当該住宅を明け渡したとき、これを還付する。ただし、未納の家賃又は損害賠償金があるときは、敷金のうちからこれを控除する。 3項敷金には、利子 収する。 2項前項に規定する敷金は、入居者が当該住宅を明け渡したとき、これを還付する。ただし、未納の家賃又は損害賠償金があるときは、敷金のうちからこれを控除する。 3項敷金には、利子はつけない。 (委任) 24条この条例の施行に関し必要な事項は、村長が別に定める。 2 南阿蘇村立学校教職員住宅管理条例施行規則(以下「本件住宅管理条例施行規則」という。)(趣旨)1条この規則は、南阿蘇村立学校教職員住宅管理条例(平成17年南阿蘇 村条例第77号。以下「条例」という。)の施行に関し必要な事項は教育委員会が決定し定めるものとする。 (入居資格)2条条例第3条に規定する入居資格(村長が特に認めた場合)は臨時的入居を許可するものであり次の条件を具備するものでなければならない。 ⑴ 南阿蘇村営住宅管理条例第6条に準ずるもので村営公営住宅に入居希望を申し込んだ者のうちその抽選等から漏れたもの⑵ 住民税、年金、国民健康保険等を完納しているもの⑶ 入居期間は入居してから原則1年間とする。(ただし、期間内であっても教職員の入居希望者がある場合は入居許可を取り消すことが出 来る。) ⑷ 上記項目⑴に該当する以外の者で⑵・⑶を満たすことが出来るものかつ教職員住宅に空がある場合(入居申込書類等)3条条例第4条第1項に規定する入居の申込みは、村立学校教職員住宅入居申込書(中略)を提出しなければならない。ただし、教職員以外 (村長が特に認めた場合)については、次に掲げる書類を添えて行うものとする。 ⑴ 住民票の写し⑵ 収入を証する書類⑶ その他村長が必要 、教職員以外 (村長が特に認めた場合)については、次に掲げる書類を添えて行うものとする。 ⑴ 住民票の写し⑵ 収入を証する書類⑶ その他村長が必要と認める書類 (入居者の可否決定通知)4条条例第5条及び第6条第2項の規定による通知は、村立学校教職員住宅入居可否決定通知書(様式第2号)により行うものとする。 (家賃等の減免又は徴収猶予の申請)7条条例第10条の規定により、家賃又は敷金の減免を受けようとする 者は家賃・敷金減額・免除申請書(様式第4号)を、家賃又は敷金の徴収猶予を受けようとする者は家賃・敷金徴収猶予申請書(様式第5号)を村長に提出しなければならない。 3 南阿蘇村財産規則(趣旨) 1条村の財産管理に関する事務については、法令その他別に定めるものを除くほか、この規則の定めるところによる。 (公有財産の分類及び公有財産台帳)11条1項公有財産は、これを行政財産及び普通財産に大別し、行政財産に ついては公用財産及び公共用財産に、普通財産については収益財産及 び雑種財産に分類しなければならない。 2項総務課長は、公有財産台帳を備え、会計別に、かつ、前項の分類に従って整理しなければならない。 3項公有財産台帳には、次に掲げる事項を記載しなければならない。 ただし、財産の性質により、その記載事項の一部を省略することがで きる。 ⑴ 公有財産の種類⑵(略)⑶ 用途⑷~⑻(略) (公有財産の用途の開始、変更及び廃止等)14条総務課長は、普 ⑴ 公有財産の種類⑵(略)⑶ 用途⑷~⑻(略) (公有財産の用途の開始、変更及び廃止等)14条総務課長は、普通財産を行政財産にしようとするとき、又は行政財産の用途を開始し、変更し、若しくは廃止しようとするときは、次に掲げる事項を記載した伺書により村長の決裁を受けなければならない。 ⑴ 財産の明細(土地については地番、地目及び地積、建物については所在する位置、構造、種目及び床面積、その他の財産については数量等を記載すること。)⑵ 普通財産を行政財産にし、又は行政財産の用途を開始し、変更し、若しくは廃止しようとする理由及びその年月日 ⑶ その他参考となるべき事項(行政財産の使用の許可)15条1項村長は、次の各号のいずれかに該当する場合に限り、法第238条の4第7項の規定に基づき、その用途又は目的を妨げない限度にお いて、用途を指定し、行政財産の使用を許可することが出来る。 ⑴~⑷(略)⑸ 国、他の地方公共団体その他公共的団体において、公用若しくは公共用又は公共的活動の用に供するため特に必要と認められるとき。 ⑹ 本村の事務又は事業を推進することに効果があると認められるとき。 2項(略)(行政財産の使用許可の手続)16条総務課長は、前条の使用について使用の許可の申請があったときは、次に掲げる事項を記載した伺書にその申請書及び許可書案を添付し、村長の決裁を受けなければならない。 ⑴及び⑵(略)⑶ 使用を許可しようとする相手方の住所及び氏名 掲げる事項を記載した伺書にその申請書及び許可書案を添付し、村長の決裁を受けなければならない。 ⑴及び⑵(略)⑶ 使用を許可しようとする相手方の住所及び氏名⑷ 使用を許可しようとする理由⑸ 用途の指定⑹ 使用の期間 ⑺ 使用の条件⑻ 使用料の額及び算出の根拠⑼ 使用料の納付の方法及び時期⑽ 使用料を減免する場合は、その理由及び減免額⑾ その他参考となるべき事項 (普通財産の貸付手続)18条総務課長は、普通財産の貸付けをしようとするときは、次に掲げる事項を記載した伺書に契約書案及び申込みによる場合はその申込書を添付し、村長の決裁を受けなければならない。この場合において、議会の議決を要するものであるときは、その議案について、併せて決 裁を受けなければならない。 ⑴(略)⑵ 相手方の住所及び氏名⑶ 貸付けしようとする理由⑷ 貸付けの期間⑸ 貸付けの条件 ⑹ 貸付料の額及び算出の根拠⑺ 貸付料の納付の方法及び時期⑻及び⑼(略) 4 南阿蘇村行政財産使用料条例(趣旨) 1条地方自治法(昭和22年法律第67号)第225条の規定に基づいて徴収する行政財産の使用料に関し必要な事項は、この条例の定めるところによる。 (使用料の額)2条行政財産の使用料の額は、条例で別に定めるものを除くほか、別表 (引用者注:別表においては「行政財産の種類」として、「土地」及び「その他」が掲げら る。 (使用料の額)2条行政財産の使用料の額は、条例で別に定めるものを除くほか、別表 (引用者注:別表においては「行政財産の種類」として、「土地」及び「その他」が掲げられ、後者の「使用料の額(年額)」は、「土地に準じて村長が別に定める額」と記載されている。)のとおりとし、次に掲げるところにより算出する。 ⑴ 使用期日に、1月未満の端数があるときは、その端数については 日割計算⑵ 1件の使用料が100円に満たないものは、100円(使用料の減免)3条前条の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当するときは使用料を減額し、又は免除することができる。 ⑴ 国、地方公共団体その他公共団体において公用又は公共用に供す るとき⑵(略) 5 南阿蘇村財産の交換、譲与、無償貸与等に関する条例(趣旨)1条財産の交換、譲与、無償貸与等に関しては、この条例の定めるとこ ろによる。 (普通財産の無償貸付又は減額貸付)4条普通財産は、次の各号のいずれかに該当するときは、これを無償又は時価よりも低い価額で貸し付けることができる。 ⑴ 他の地方公共団体その他公共団体又は公共的団体において公用若 しくは公共用又は公益事業の用に供するとき。 ⑵ 地震、火災、水害等の災害により普通財産の貸付けを受けた者が、当該財産を使用の目的に供し難いと認めるとき。 以上

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