主文 被告人を懲役23年に処する。 未決勾留日数中500日をその刑に算入する。 理由 (犯罪事実)被告人は、3人の育児をする中で、母親としての自信を失い、思い詰めて抑うつ状態に陥り、自責の念を強めて自殺を考えるとともに、自分のせいで子供たちにかわいそうな思いをさせたくない、子供たちを母親のいない世界に置いていくことはできないなどと無理心中することを決意し、令和4年2月10日午後1時49分頃から同日午後8時37分頃までの間に、愛知県一宮市(住所省略)当時の被告人方において、殺意をもって第1 長女(当時5歳)に対し、その頸部をUSBコード又はこれに類する索条物(以下、単に「コード」という。)で絞め付け、よって、その頃、同所において、同人を頸部圧迫により窒息死させて殺害し第2 次女(当時3歳)に対し、その頸部をコードで絞め付け、よって、その頃、同所において、同人を頸部圧迫により窒息死させて殺害し第3 三女(当時零歳)に対し、その頸部をコードで絞め付け、よって、その頃、同所において、同人を頸部圧迫により窒息死させて殺害したものである。 (弁護人の主張に対する判断) 1 争点と結論的判断被告人が判示のとおり幼い3人の子の首を絞めて死亡させたことは証拠上明らかであり、当事者間に争いはない。本件の争点は、被告人が当時どのような精神状態であったか、これを前提として、被告人の責任能力の有無・程度、殺意の有無である。 裁判所は、責任能力について、被告人が育児等による神経症性・状況反応型の葛藤状況(抑うつ状態)にあって心理的に追い詰められており、それが無理心中というべき本件犯行を決意する過程に一定の影響はしたものの、心神喪失・心神耗弱のいずれにも当たらず、完全責 症性・状況反応型の葛藤状況(抑うつ状態)にあって心理的に追い詰められており、それが無理心中というべき本件犯行を決意する過程に一定の影響はしたものの、心神喪失・心神耗弱のいずれにも当たらず、完全責任能力を有していたと判断した。 また、殺意について、被告人は、子どもたちに愛情を注いできたものであり、憎しみの感情から本件に及んだわけではないが、自らの判断で無理心中を決意し、無抵抗の幼い3人の首をコードで絞めつけたものであり、体と意識が分離しており自分の意思で決定したものではないなどとの弁護人の主張は採用できず、殺意があったことは明らかと判断した。 2 認定事実被告人の生活状況等、犯行に至る経緯、犯行状況及び犯行後の状況について、関係証拠によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 生活状況等被告人は、夫と結婚し、平成28年10月に長女を出産すると、産後うつと診断され、平成29年3月頃から同年7月にかけて通院治療をしたが、治療後は家族旅行ができる状態になるなど回復の様子をみせていた。 被告人は、平成30年12月に次女を、令和3年4月に三女を出産したが、いずれも長女出産後のような精神的な不安定さをみせることはなく、家事・育児について近くに住む義母による協力も得られていた。 一方、離乳食が始まった頃に次女には卵白などの食物アレルギーがあることが分かり、その頃以降、被告人は基本的に料理を手作りし、添加物を避けるようになった。調理師免許をもち、料理に関して自負心をもっていたとみえるが、その後も被告人は、令和3年11月頃に次女に肌荒れがみられたことから料理や食事に関する考えが一層厳しいものとなり、ウェブ上の多数の情報を集めてはそれらを実践しようとし、更に令和4年1月末頃になると、感染症の影響で長女の保育園が休園になり、健康に良いものを作ろう ら料理や食事に関する考えが一層厳しいものとなり、ウェブ上の多数の情報を集めてはそれらを実践しようとし、更に令和4年1月末頃になると、感染症の影響で長女の保育園が休園になり、健康に良いものを作ろうとする一方で、昼食を含む三 食の献立を考えることに難しさを感じるようになっていた。なお、この頃から2月7日までの被告人は、献立や無添加をキーワードとするウェブ検索・閲覧を数多くしているが、自殺関連のものは見当たらない。 ⑵ 犯行に至る経緯令和4年2月7日、被告人は、長女に都道府県パズルのピースを見せられて所在地を教えてやれなかったとして、自分には教養がないと声を出さずに泣き、翌8日朝には、夫がパソコンに取り込んだ知育教材の操作方法が分からず、それに困惑する夫の姿をみて更に落ち込むなど、一見すると些細なことにも自分を悲観するようになり、また、この日以降の被告人は、それまでの無添加に関するものに加え、親が無知であるとか、時間管理や計算ができないといった心配事のほか、希死念慮、自殺方法など自殺関連のものも多数回検索・閲覧するようになった。 犯行前日である2月9日午前、被告人は、実父に「心がしんどいなぁ」、「子供達を悲しませてしまう私のこと大好きでいてくれる旦那さん子供達のために頑張らないとと思う反面もう消えてしまいたいと思う」、「自分は母親になっちゃいけなかった人間だと思う。」、「私が居なくなったら○○くん(夫の愛称)と子供達が困るけれど子供に手をかける訳にはいかない」、「パパ、ママ私を育ててくれてありがとう。」、「しょうもない娘で何の取り柄もなくだらしない娘でごめんね。頑張れなくてごめん。生き抜くことができなくて死ぬ気で頑張ることができなくてごめん。昨日から泣いてばかりでどうやって死のうか頭によぎって」、「旦那さんや子供が煩わし もなくだらしない娘でごめんね。頑張れなくてごめん。生き抜くことができなくて死ぬ気で頑張ることができなくてごめん。昨日から泣いてばかりでどうやって死のうか頭によぎって」、「旦那さんや子供が煩わしい訳じゃないの。絶対違うの。大切だからこそ私がいたら不幸にしてしまう。」などと、自殺することを思わせるような長文のLINEメッセージを送信した上、異変に気付いて電話をかけてきた実父との間で、3時間弱にもわたって悩みを話した。電話の後、被告人は、いったんは実父に「パパに吐き出して話聞いてもらってめちゃくちゃ心軽くなったメンタル大事だね」とのメッセージを送信したが、翌10日早朝、「負けないようにコツコツ頑張ってこうと思うと昨日電話して思っていた矢先、、、私やっぱ り…無理かも絶望感増す。。」などとのメッセージを送信した。夫も被告人を心配し、義母に被告人の様子を見てほしいとお願いをして出勤した。 被告人は、自宅を訪れた義母に子供を預け、車でスーパーに買い物に行き、自殺をする前に、最後に子供たちの笑顔がみたいとの思いから、これまで避けていたキャラクターもののレトルトカレーやチョコレート、豆乳ドーナツなどを買って喜ばせ、昼食に子供たちとピザを作り、夫の夕食にカツとじを用意した後、更にマクドナルドのドライブスルーでパンケーキのハッピーセットを購入し、長女と次女に食べさせた。被告人は、2人が喜ぶ姿を撮影し、また、その頃、レシピや家計簿として使っていたノートに、夫に宛てて、葛藤しながらも無理心中を決意するに至る心情や家族への思いなどを綴った手紙を書き留めた。その際、被告人は、「死んだら楽になるよ。」「(子供たちを)置いていくな。」との声が聞こえたように思ったという。 ⑶ 犯行状況被告人は、最初に三女を殺そうと考えたが、長女と次女に殺すところを 。その際、被告人は、「死んだら楽になるよ。」「(子供たちを)置いていくな。」との声が聞こえたように思ったという。 ⑶ 犯行状況被告人は、最初に三女を殺そうと考えたが、長女と次女に殺すところを見せたくないと思い、三女を抱えて2階に移動し、マットの上に仰向けに寝かせ、コードを首に巻き付け、首の前側でコードを交差させ、苦しむ時間がなるべく短くなるようにと、力を込めて引っ張った。 次に、被告人は、1階にいた次女に「お話があるよ」などと声をかけて2階に呼び込み、あぐらをかくようにして座った足の上に次女を座らせると、最後に喜ぶ顔をみたいと思って携帯電話で次女が好きな写真を見せた上で、苦しむ顔をみなくて済むように、その背後からコードを一重に巻き付けて首の後ろ側で交差させ、両端を左右に強く引っ張り、更に力を加えるため、コードを上に持ち上げ、次女の体重がコードにかかるようにして首を絞め続けた。そして、次女がぐったりすると、顔を見なくても済むようにうつ伏せに寝かせた。 その直後、被告人は、三女が「すー」と音を立てて息をしたことに気付き、救急車を呼べば助かるかもしれないと頭をよぎったが、もう後には引けないし、長 い時間苦しませたくないと思い、改めてコードで首を強く絞めた。 さらに、被告人は、1階に降りて長女に「お話があるよ」と声をかけ、長女と連れ立って2階に上がり、髪の毛が巻き込まれないようにゴムで結び、苦しむ顔を見ないように、トランポリンの上にいた長女の背後から、その首にコードを一重に巻き付けて後ろ側で交差させた。長女が「苦しい」と声を出したため、首を絞めるのをやめようとも考えたが、もはや後に引けないと思い、せめて苦しくないようにと、コードの両端を左右に強く引っ張り首を絞め、ぐったりして動かなくなったところで、マットの上に寝かせた。 被告 を絞めるのをやめようとも考えたが、もはや後に引けないと思い、せめて苦しくないようにと、コードの両端を左右に強く引っ張り首を絞め、ぐったりして動かなくなったところで、マットの上に寝かせた。 被告人は、三女のからだが冷たくなったので、殺してしまったと思った。おむつが汚れていたので綺麗にしてあげようと思って交換した。長女が失禁したことに気付き、下着やズボンを履き替えさせた。長女、次女、三女の3人をマットの上に川の字に寝かせ、寒くないようにと毛布を掛けた。その上で、自身は種々の方法で自殺を試みたが、死ぬことはできなかった。 ⑷ 犯行後の状況被告人は、午後8時37分、夫に、「大好きだよ。ごめんね」とのメッセージを送信し、午後8時38分、実父に対し、「○○くん(夫の愛称)には感謝してもしきれないくらいの恩があるから責めないでね私がよわっちいだけだから!子供殺してしまった。ごめんね。私も死ぬね。いままでありがとう」とのメッセージを送信した。 3 前記認定の根拠となった被告人供述の信用性について被告人は、前記犯行状況について、弁護人からの質問の際には、体と意識が離れており、自分の体を後ろ斜め上から離れて見ており、体の動きをコントロールできず、ただ行動を見ることができるだけの状態であったなどと供述する。しかし、その後、検察官から捜査段階での上申書や供述調書の内容を確認されながら質問された際には、捜査段階でそのとおり供述をしたことや、前記のような犯行状況を涙ながらに供述し、それが自分の意思、判断、考えによるものであった と認めている。当時の状態について、「ふわふわした感じ」とか「現実感がない」といった表現も用いている。 こうした供述経過、供述態度や表現ぶり、さらには、犯行が自分の意思、判断、考えによるものであった旨自認していることなど について、「ふわふわした感じ」とか「現実感がない」といった表現も用いている。 こうした供述経過、供述態度や表現ぶり、さらには、犯行が自分の意思、判断、考えによるものであった旨自認していることなどによれば、質問者に対する迎合の可能性を十分慎重に考慮してもなお、検察官からの質問に対する前記供述は、被告人が辛い事実に向き合った上で供述したものと評価できる。また、供述内容をみても、首を絞めた際の子供たちの反応や体温変化、その際の被告人の心境、迷い、決断、子供たちへの思い、これらを踏まえてとった行動等が具体的に述べられており、自らの意思に基づくものであったからこそできる供述と認められる。 そうすると、本件犯行状況については、検察官からの反対質問及びこれと合致する捜査段階供述の信用性を肯定でき、他方、体と意識が離れており行動をコントロールすることができなかったとする被告人供述部分は、当時の現実感の乏しさを表現したにすぎないとみるのが相当であり、そのままの意味としては採用できない。 4 精神疾患の有無・程度に関する鑑定の信用性起訴前に検察官から依頼されて鑑定を行ったA医師は、被告人は、本件行為当時、うつ病、解離性障害などの精神疾患にり患しておらず、犯行当時の被告人の精神状態を考察すると、自身の性格、考え方、状況に悩んだ結果として、神経症性・状況反応型の葛藤状況(抑うつ状態)にあったと考えられる旨供述する。 他方、起訴後に弁護人から依頼され鑑定を行ったB医師は、本件行為時、双極症にり患しており、微小妄想ないし優格観念を伴ううつ病相にあり、それに解離症が重畳した状態にあった旨供述する。 両医師は、いずれも精神科医として十分な学識経験を有する上、その公正性に疑念を抱かせる事情も特段認められない。 もっとも、鑑定の基礎となる事実関係のうち犯行 症が重畳した状態にあった旨供述する。 両医師は、いずれも精神科医として十分な学識経験を有する上、その公正性に疑念を抱かせる事情も特段認められない。 もっとも、鑑定の基礎となる事実関係のうち犯行状況について、A医師は、前記のとおり信用性を肯定できる捜査段階供述(取調状況の録音録画記録媒体を含 む。)に基づいて検討を行っている一方、B医師は、体と意識が離れており行動をコントロールすることができなかったという前記のとおりそのままの意味としては採用できない供述に基づいており、信用性が認められる公判供述部分及びこれと合致する捜査段階供述によって認められる事実に基づく検討はなされていない。B医師の見解は、検討の基礎となる重要な事実関係が前記認定と異なっているなど、採用できない。 A医師の見解は、判断資料や鑑定手法に問題はなく、その内容をみても、本件行為に至る経過やその行為前後の被告人の行動等を適切に踏まえたものとなっており、そこから導かれる精神医学的判断は尊重できる。 また、うつ病ないし双極症の鑑別について、A医師は、長時間多数回にわたる面談や、多職種チームによる病院内での被告人の動静観察等を経ることで的確な診断ができるなどと説明しており、その鑑定手法に誤りがあるとはいえない。解離ないし解離性健忘がみられないことについても、被告人の性格や当時の精神状態、記憶が欠落している事柄の性質・内容や程度、被告人の供述経過等を踏まえている。 また、被告人の防衛機制として、すなわち、受け入れ難い現実から目をそらしたり、苦痛に満ちた心理状態に対応するために感情を知識から切り離して供述している可能性も考慮している。その上で、精神医学の見地から分析しており、その判断に至った根拠として述べるところも不合理とはいえず、A鑑定の信用性を損なわせるものではない。 知識から切り離して供述している可能性も考慮している。その上で、精神医学の見地から分析しており、その判断に至った根拠として述べるところも不合理とはいえず、A鑑定の信用性を損なわせるものではない。 5 責任能力の有無・程度について被告人は、元来、人に優しい反面、自責的で自分に対する評価が低く、真面目で責任感も強いが細部にこだわる傾向があるなどの性格の持ち主であり、子供の食事面での配慮について、アレルギーや添加物、献立のことなどが重なって行き詰まり、料理や食事に関しては頑張っていただけに落ち込みも大きく、悩んでいたところに、都道府県の知識不足やパソコン操作ができないといった、一見すると些細ではあるが当時の被告人にとっては母親としての自信を失うようなエピソードが 続き、また、これらに悩んで情緒不安定に陥っていること自体にもますます自己否定的になり、理想とする母親像に及ばない、子供や家族に申し訳ないなどとの思いから自殺を考え、さらに自殺後に子供がどうなるかについても思いを巡らせ、子供に手をかけるわけにはいかないとの思いがある一方、母親がいなくては子供達が可哀想との思いもあって葛藤する中で、最終的には、子供たちを自分のいない世界に置いていくことはできないなどと考え、無理心中を決意するに至ったと認められる。被告人は、このように悩み、自己否定的となり、自殺さらには無理心中を決意するまでの過程において、神経症性・状況反応型の葛藤状況(抑うつ状態)に陥っていた。パンケーキセットを食べた子供たちが喜んだというエピソードにしても、それまで食事面に気を遣って頑張ってきた被告人にとっては、単に笑顔を見て安心したというのにとどまらず、添加物を遠ざけて子供を我慢させてきたことが、果たして母親として相応しかったかなどとの自責の念を強める方向にも作用したとみ 頑張ってきた被告人にとっては、単に笑顔を見て安心したというのにとどまらず、添加物を遠ざけて子供を我慢させてきたことが、果たして母親として相応しかったかなどとの自責の念を強める方向にも作用したとみるのが相当である。 このように、被告人が自殺さらには無理心中を決意するに至った経緯をみると、子供を殺してよいかなど現実の状況を踏まえて葛藤している上、元来の被告人の性格や考え方を踏まえて思考の流れを追っていっても、その過程に大きな飛躍はない。抑うつ状態により、被告人が自責の念を一層強めたり、自殺以外の解決方法を模索するための思考が狭窄したりして、判断能力が一定程度低下したといえるものの、最後まで家事をこなし、車で買い物にいくことができるなど、日常生活に重大な支障を来していたともいえない。 犯行当時の状況をみても、犯行を思いとどまろうかという考えが何度か頭をよぎったものの後には引けないなどとの思いから犯行を完遂している上、愛する子供たちが苦しむ時間を短くするなどとの目的に沿った合理的な方法をとっているほか、これらの状況の記憶は当時の心情等とともに保たれている。犯行後には、夫や実父に対し、謝罪のメッセージを送っている。 一方、犯行前に「死んだら楽になるよ。(子供たちを)置いていくな。」など との声が聞こえたように思うという点は、A医師も証言するとおり、被告人自身の葛藤する心情と思考の一面が反映されたものであり、異質な心情や思考に支配されて犯行を決意したものではない。ふわふわした感じであるなどの被告人の説明も、抑うつ状態となって現実感が乏しくなったことの表現とみるのが相当であるが、自らの行動をコントロールできない状態にあったものではない。被告人がそのような体験をする抑うつ状態にあったとの限度では理解でき、その判断能力が一定程度減退していたこ との表現とみるのが相当であるが、自らの行動をコントロールできない状態にあったものではない。被告人がそのような体験をする抑うつ状態にあったとの限度では理解でき、その判断能力が一定程度減退していたことの表れとして評価できる部分もある。もっとも、これまでみてきたところからすれば、被告人は、本件犯行当時、事物の理非善悪を弁識し、それに従って行動を制御する能力はいずれも失われておらず、著しく減退していたともいえない。被告人は、本件犯行当時、心神喪失でも心神耗弱でもなく、完全責任能力を有していたものと認められる。 6 殺意の有無被告人は、子どもたちに愛情を注いできたものであり、憎しみの感情から本件に及んだわけではないが、前記のとおり、自らの判断で無理心中を決意し、無抵抗の幼い3人の首をコードで絞めつけたものである。体と意識が分離して自分の意思で決定したものではないなどとの弁護人の主張は採用できず、殺意があったと認められる。 (量刑の理由)本件により3名もの幼い命が失われたという犯行結果は誠に重大である。わが子が苦しまないようにとの思いから首を強く絞め付け、三女が一度息を吹き返したことに気付くと後には引けないなどと考えて再度絞め付けるなど、憎しみから出たものではないにせよ、殺意も強いものと認められる。幼い3人にとってみれば、被告人の無理心中に一方的に巻き込まれ、最愛の母親の手によって突如として将来を絶たれたのであり、その混乱や苦痛を思うと、言葉にはできないものがある。被害者遺族は、突如愛する3人の娘、孫の命を失った上、それが妻又は義理の娘による犯行でもあるという複雑な立場にあり、本件の衝撃、心痛、絶望感等は大きく、処罰感情を述 べることが難しい状況にある。 経緯・動機は、前記のとおり、母親としての自信を失い、思い詰めて抑うつ状 る犯行でもあるという複雑な立場にあり、本件の衝撃、心痛、絶望感等は大きく、処罰感情を述 べることが難しい状況にある。 経緯・動機は、前記のとおり、母親としての自信を失い、思い詰めて抑うつ状態に陥り、自責の念を強めて自殺を考えるとともに、自分のせいで子供たちにかわいそうな思いをさせたくない、子供たちを母親のいない世界に置いていくことはできないなどと考えたというものである。身勝手な犯行であり強い非難を免れないが、愛するわが子に手を掛けるという決意に至ったことなどからも、相当に思い詰めて抑うつ状態となっていたことは疑いのないところである。その結果、必要以上に自分を責め、視野が狭くなってしまうなど、当時の被告人にとってみれば、適切に対処することには難しさもあったといえるから、このことを量刑判断に当たっても斟酌する必要がある。もとより被告人は本件を後悔し、反省している。 そこで、以上の事情を考慮し、また、検察官の求刑も被告人の追い詰められた心境を十分考慮したものと認められるが、これを踏まえてもなお、主文の刑期が相当と判断した。 (検察官の求刑:懲役25年)令和6年6月14日名古屋地方裁判所刑事第3部 裁判長裁判官吉田智宏 裁判官須田健嗣 裁判官河合美月
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