平成28年8月23日判決言渡し同日原本交付裁判所書記官平成27年(ワ)第6380号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成28年6月7日判決 原告アラオ株式会社 同訴訟代理人弁護士下垣和久同訴訟代理人弁理士福島三雄同補佐人弁理士塩田哲也 被告株式会社ケーマックス 同訴訟代理人弁護士真下博孝同補佐人弁理士大久保 恵主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,別紙物件目録記載の製品を生産し,譲渡し,輸入し,及び,譲渡の申し出をしてはならない。 2 被告は,その占有にかかる前項記載の製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,1000万円及びこれに対する平成27年7月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は,発明の名称を「コーナークッション」とする特許権を有する原告が,被告による別紙物件目録記載の製品(以下「被告製品」という。)の販売が原告の特許権を侵害すると主張して,被告に対し,特許法100条1項に基づき被告製品の製造販売等の差止め,同条2項に基づき同製品の廃棄を求めるとともに,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償として,損害金1000万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成27年7月8日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 判断の基礎となる事実(当事者間に争いがない)(1) 当事者原告は,工業用ゴム,プラスティック製品 送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 判断の基礎となる事実(当事者間に争いがない)(1) 当事者原告は,工業用ゴム,プラスティック製品の製造,販売を業とする株式会社である。 被告は,建築資材の設計・製造・販売などを業とする株式会社である。 (2) 原告の特許権原告は,以下の特許(以下,「本件特許」という。また,その特許出願の願書に添付された明細書及び図面を「本件明細書」といい,本件特許のうち請求項1に係る発明を「本件発明」という。)に係る特許権を有している。 特許番号特許第3409299号発明の名称コーナークッション出願日平成10年9月28日登録日平成15年3月20日特許請求の範囲【請求項1】「互いに若干の間隔をおいて長手方向に列設された複数の短尺クッション材と,これら複数の短尺クッション材の表面側を被覆する長尺表面側シート部とこれら複数の短尺クッション材の裏面側の幅方向両側部をそれぞれ一定幅で被覆する長尺裏面側シート部とからなる帯状被覆部材と,前記長尺表面側シート部の外面に設けら れ,明度差をもつ色彩が交互に反復してなる斜め方向縞模様と,前記長尺裏面側シート部の外面に設けられた粘着材層とを有してなり,全体として帯状をなすとともに危険箇所のコーナー部に装着されるコーナークッションであって,前記長尺裏面側シート部同士の間から,前記複数の短尺クッション材が露出していることを特徴とするコーナークッション。」(3) 本件発明の構成要件の分説本件発明の構成要件は,次のとおり分説することができる。 A 互いに若干の間隔をおいて長手方向に列設された複数の短尺クッション材と,B これら複数の短尺クッション材の表面側を被覆する 件の分説本件発明の構成要件は,次のとおり分説することができる。 A 互いに若干の間隔をおいて長手方向に列設された複数の短尺クッション材と,B これら複数の短尺クッション材の表面側を被覆する長尺表面側シート部とこれら複数の短尺クッション材の裏面側の幅方向両側部をそれぞれ一定幅で被覆する長尺裏面側シート部とからなる帯状被覆部材と,C 前記長尺表面側シート部の外面に設けられ,明度差をもつ色彩が交互に反復してなる斜め方向縞模様と,D 前記長尺裏面側シート部の外面に設けられた粘着材層とを有してなり,E 全体として帯状をなすとともに危険箇所のコーナー部に装着されるコーナークッションであって,F 前記長尺裏面側シート部同士の間から,前記複数の短尺クッション材が露出しているG ことを特徴とするコーナークッション。 (4) 被告の行為被告は,平成24年5月2日頃から被告製品を業として販売している。 (5) 被告製品の構成被告製品の構成は別紙物件目録記載のとおりであり,被告製品の裏面の構成は,より具体的には,長手方向中央部周辺において,短尺クッション材が長尺裏面側シート部に覆われておらず,同シート部の間から短尺クッション材が見える構成とな っており,本件発明の短尺クッション材に相当するスポンジの幅方向中央部周辺を含め,その裏面全面が粘着シール(粘着材層)で覆われているというものである。 2 争点被告製品が,本件発明の構成要件AないしE,Gを充足する構成を備えていることは当事者間に争いがないので,本件における争点は,被告製品が本件発明の構成要件Fを充足する構成を備えているか(争点(1))と,侵害と認められた場合の損害の額(争点(2))である。 3 争点に関する当事者の主張(1) 被告製品が本件発明の構成要件 製品が本件発明の構成要件Fを充足する構成を備えているか(争点(1))と,侵害と認められた場合の損害の額(争点(2))である。 3 争点に関する当事者の主張(1) 被告製品が本件発明の構成要件Fを充足する構成を備えているか。 (原告の主張)ア本件発明は,帯状裏面材が裏面全体にあると,折り曲げたときに,帯状裏面材には皺やたるみが生じ,装着作業に支障を来すとともに,コーナー部にコーナークッションを密着させることが困難である(本件明細書【0007】)ことを課題としており,これを解決するために,帯状裏材の中央部を切除したものであるが,この状態を言い換えると,本件発明の構成要件Fの「長尺裏面側シート部同士の間から,短尺クッション材が露出している」となる。 被告製品においては,裏面側シート部は,両側部を一定幅で被覆しているだけであり,短尺クッション材を完全に覆うものではなく,その覆っていない中央部分から,短尺クッション材が「露出」している。 したがって,被告製品は,本件発明の構成要件Fを充足している。 イ被告製品における短尺クッション材には粘着材が貼られているが,本件発明は,短尺クッション材の表面にどのような処理がなされているかについては触れていないことから,被告製品における短尺クッション材に粘着材が貼られていても,「露出」を充足する。 なお本件発明は,裏面シートがない裏面中央部から,空気が排出されることを効果としているところ,被告製品は,粘着材が貼られたクッション材のみなら ず,粘着材そのものに通気性が認められるし,被告製品の粘着材は,裏面シートに密着して貼られている部分とそうでない部分があり,裏面シートに密着していない部分(粘着材の浮き)を通って,裏面中央部から空気が排出され,裏面シートがない裏面中央部から空気が排出さ 材は,裏面シートに密着して貼られている部分とそうでない部分があり,裏面シートに密着していない部分(粘着材の浮き)を通って,裏面中央部から空気が排出され,裏面シートがない裏面中央部から空気が排出されるという効果は得られているから,粘着材は上記効果の妨げにならず,短尺クッションが「露出」していることに変わりはない。 ウ被告製品も,裏面中央部に裏面シートがないので,全面に裏面シートがある場合に生じていた皺やたるみは生じない。また裏面中央部にある粘着材層は,裏面シートより遙かに薄いので,全面に裏面シートがある場合に生じていた皺やたるみが生じないことに変わりはない。 この点,被告は,粘着材が全面に貼ってあれば,クッション材の厚み分だけ曲率半径が小さくなり,粘着材層には皺が寄り,粘着材同士がくっつくことは明白であると主張するが,本件発明は,全面に裏面シートがある場合に生じていた皺やたるみの解消を課題としているのであり,被告製品は,裏面中央部に裏面シートがないので,この課題を解決しており,短尺クッションに粘着材層があることは「露出」要件の充足の妨げとならない。 (被告の主張)ア国語辞典において「露出」とは,「あらわれでること,あらわしだすこと」と定義されている。 また,本件明細書【0030】の記載からすると,構成要件Fの「露出」の意味は,短尺クッション材が膨張した空気が放出され得る態様で外気と触れていることを示している。 しかし,被告製品は,裏面の全面を覆うようにして1枚の粘着シールが裏面の全体に貼られており,かつ,短尺クッション材はコーナークッション内部で密封されて外気と触れておらず,膨張する空気が放出されることはない。 したがって,被告製品の裏面は,「露出」には当たらず,また,本件発明の効果 を奏する構造にはなっていな ークッション内部で密封されて外気と触れておらず,膨張する空気が放出されることはない。 したがって,被告製品の裏面は,「露出」には当たらず,また,本件発明の効果 を奏する構造にはなっていないから,構成要件Fを充足しない。 イ帯状裏面材が裏面全体になかったとしても,裏面全体に粘着材(粘着シール)が貼られていれば,粘着材について曲率半径が小さくなるため,「皺やたるみによって粘着材(16)同士がくっつき」(【0007】)という課題が生じる旨の記載があるが,この記載を参酌しても,本件発明でいう露出とは,短尺クッション材の部分に粘着シールがあってはならないという構成が必須になる。このことは,本件明細書【0030】に「コーナー部には長尺裏面側シート部と粘着材層が位置しない」と開示されていることからも明らかである。 被告製品の裏面(両側部の長尺裏面側シート部と,短尺クッション材)には,この裏面の全面を覆うようにして1枚の粘着シールが裏面の全体に貼られているのであるから,被告製品は,この【0007】の課題を解決するものではなく,発明の効果も奏していない。 (2) 損害(原告の主張)被告は,平成24年5月2日から現在に至るまで,被告製品の販売を行っており,その受けた利益額は1000万円を下らないから,同額が原告の損害となる。 (被告の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(被告製品が本件発明の構成要件Fを充足する構成を備えているか)について(1) 本件明細書には,次の記載がある。 【発明の詳細な説明】【0001】【発明の属する技術分野】本発明はコーナークッションに関し,より詳しくは,長さ調節の際,カットした部分が開口せず,また夏場にコーナークッションが膨張せ ずこれによって帯状表面材や帯状 1】【発明の属する技術分野】本発明はコーナークッションに関し,より詳しくは,長さ調節の際,カットした部分が開口せず,また夏場にコーナークッションが膨張せ ずこれによって帯状表面材や帯状裏面材が破れるのを防止し,また折り曲げたときに帯状裏面材や粘着材に皺やたるみが生じずこれによってコーナー部への装着を容易かつ確実に行うことのできるコーナークッションに関する。 【0002】【従来の技術】建設現場におけるコーナー部や建物のコーナー部は,人や物が衝突すると危険である。このため,同コーナー部には,衝突したときのショックを和らげるためにクッション材が取り付けられることが多い。近年,クッション効果に加え,コーナー部の存在をアピールして注意を促すことができるものとして,図5および図6に示すようなコーナークッション(11)が提案されている。このコーナークッション(11)は,耐水性シート材料からなる帯状表面材(12)および帯状裏面材(13)と,これら帯状表面材(12)および帯状裏面材(13)の間に形成された閉じられた空間内に充填されたクッション材(14)と,帯状表面材(12)の外面に形成された斜め方向縞模様(15)と,帯状裏面材(13)の外面に塗布された粘着材(16)とを有してなり,全体として帯状をなすものである。 なお,クッション材(14)には,連続気泡型スポンジが用いられている。 【0003】このコーナークッション(11)は,コーナー部に沿って折り曲げられ,粘着材(16)によってコーナー部に装着される。このコーナークッション(11)は内部にクッション材(14)を有しており,しかも表面に斜め方向縞模様(15)を有しているので,周囲の人に注意を促すとともに人や物が衝突したときのショックを和らげることができ,コーナー部用安全具として優れたもの ション材(14)を有しており,しかも表面に斜め方向縞模様(15)を有しているので,周囲の人に注意を促すとともに人や物が衝突したときのショックを和らげることができ,コーナー部用安全具として優れたものであった。 【0004】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,前記したコーナークッション(11)には,以下のような課題が存在した。すなわち,このコーナークッション(11)は,その長手方向において区切りのない均一断面構造であったため,コーナー部の長さに応じてカットした場合,そのカット部分がぱっくりと開口し,雨天時に はその開口部分から雨水が浸入していた。また,その開口部からクッション材(14)が抜け落ちてしまうこともあった。さらに,クッション材(14)には連続気泡型スポンジが用いられていたため,コーナークッション(11)内に浸入した雨水はクッション材(14)全体に浸透し,コーナークッション(11)内を水浸しにすることがあった。こうなると,コーナークッション(11)から常に水がしたたって非常に見栄えが悪くなるとともに,人や物が衝突したときのショックを十分に吸収できなくなる恐れがあった。 【0005】また,クッション材(14)が帯状表面材(12)と帯状裏面材(13)の間に形成された閉じられた空間内に充填されているため,夏場にはその閉じられた空間内の空気が膨張してコーナークッション(11)全体が膨張し,人や物が衝突したときのショックで帯状表面材(12)や帯状裏面材(13)が破れてしまうことがあった。この場合,雨天時にはその破れた箇所から雨水が浸入し,上記したような水浸し状態となる恐れがあった。 【0006】また,このコーナークッション(11)においては,クッション材(14)が帯状表面材(12)や帯状裏面材(13)に接着されていな 水が浸入し,上記したような水浸し状態となる恐れがあった。 【0006】また,このコーナークッション(11)においては,クッション材(14)が帯状表面材(12)や帯状裏面材(13)に接着されていなかったため,コーナー部の長さに応じてカットした場合,そのカットによる開口部分からクッション材(14)が抜け落ちてしまい,コーナー部への装着作業に手間取ることがあった。 【0007】また,このコーナークッション(11)においては,コーナー部に装着するために長手方向に折り曲げたとき,帯状裏面材(13)は帯状表面材(12)に対し,クッション材(14)の厚み分だけ曲率半径が小さくなってしまう。このため,帯状裏面材(13)とこれに塗布された粘着材(16)に,皺やたるみが生じていた。この場合,皺やたるみによって粘着材(16)同士がくっつき,コーナー部への装着作業に支障をきたすとともに,コーナー部へコーナークッション(11)を密着させることが困難であった。 【0008】本発明はそのような実情に鑑みてなされたもので,長さ調節の際,カットしてもそのカット部分が開口せず,また夏場にコーナークッションが膨張せずこれによって帯状表面材や帯状裏面材が破れるのを防止し,また内部に雨水が浸入してもクッション材にその雨水が浸透せず,また折り曲げたときに帯状裏面材や粘着材に皺やたるみが生じずこれによってコーナー部への装着を容易かつ確実に行うことのできるコーナークッションの提供を目的とする。 【0009】【課題を解決するための手段】請求項1の発明は,互いに若干の間隔をおいて長手方向に列設された複数の短尺クッション材と,これら複数の短尺クッション材の表面側を被覆する長尺表面側シート部とこれら複数の短尺クッション材の裏面側の幅方向両側部をそれぞれ一定幅で被覆する長 いて長手方向に列設された複数の短尺クッション材と,これら複数の短尺クッション材の表面側を被覆する長尺表面側シート部とこれら複数の短尺クッション材の裏面側の幅方向両側部をそれぞれ一定幅で被覆する長尺裏面側シート部とからなる帯状被覆部材と,前記長尺表面側シート部の外面に設けられ,明度差をもつ色彩が交互に反復してなる斜め方向縞模様と,前記長尺裏面側シート部の外面に設けられた粘着材層とを有してなり,全体として帯状をなすとともに危険箇所のコーナー部に装着されるコーナークッションであって,前記長尺裏面側シート部同士の間から,前記複数の短尺クッション材が露出していることを特徴とするコーナークッションである。 【0030】【発明の効果】請求項1の発明は,互いに若干の間隔をおいて長手方向に列設された複数の短尺クッション材と,これら複数の短尺クッション材の表面側を被覆する長尺表面側シート部とこれら複数の短尺クッション材の裏面側の幅方向両側部をそれぞれ一定幅で被覆する長尺裏面側シート部とからなる帯状被覆部材と,前記長尺表面側シート部の外面に設けられ,明度差をもつ色彩が交互に反復してなる斜め方向縞模様と,前記長尺裏面側シート部の外面に設けられた粘着材層とを有してなり,全体として帯状をなすとともに危険箇所のコーナー部に装着されるコーナークッションであって,前記長尺裏面側シート部同士の間から,前記複数の短尺クッション材が露出していることを特徴とするコーナークッションであるから,以下の効果を 奏する。すなわち,長尺裏面側シート部が短尺クッション材の裏面側の幅方向両側部をそれぞれ一定幅で被覆している構造であるから,コーナークッションの裏面側はその幅方向中央部が長手方向に開放された状態となる。このため,夏場にコーナークッション内の温度が上昇し,これに応 方向両側部をそれぞれ一定幅で被覆している構造であるから,コーナークッションの裏面側はその幅方向中央部が長手方向に開放された状態となる。このため,夏場にコーナークッション内の温度が上昇し,これに応じて内部の空気が膨張しても,膨張した空気はコーナークッション裏面側の開放部分から放出される。従って,コーナークッションは膨張せず,人や物が衝突したショックで長尺表面側シート部や長尺裏面側シート部が破れることがない。また,コーナークッション内に雨水が浸入しても,その雨水は前記開放部分からすぐに排出される。また,複数の短尺クッション材は互いに若干の間隔をおいて列設されているから,人や物が衝突したときのショックにより或る短尺クッション材がずれたり外れたりしても,その影響は隣の短尺クッション材へ及ばない。従って,コーナークッションの劣化を最小限に止めることができ,その維持管理費用を低減することができる。また,短尺クッション材は裏面側において幅方向中央部分を帯状に露出した状態となるから,この帯状露出部分をコーナー部に合わせることにより,コーナー部には長尺裏面側シート部と粘着材層が位置しない。従って,コーナー部には短尺クッション材が密着し,長尺裏面側シート部や粘着材層には皺やたるみが生じない。これにより,コーナークッションをコーナー部へ密着状態で装着することができる。 (2) 「短尺クッション材が露出している」との用語の解釈についてア本件発明は,長手方向において区切りのない均一断面構造を持つシート材で閉じられた空間内にクッション材を充填した従来技術によるコーナークッションでは,①コーナー部の長さに応じてカットした場合,そのカット部分から雨水が浸入したり,クッション材が抜け落ちるという課題,②クッション材が閉じられた空間内に充填されているため,夏場に ナークッションでは,①コーナー部の長さに応じてカットした場合,そのカット部分から雨水が浸入したり,クッション材が抜け落ちるという課題,②クッション材が閉じられた空間内に充填されているため,夏場にはその閉じられた空間内の空気が膨張して,場合によっては外装のシートが破れてしまうという課題,③クッション材が外装のシートに接着されていないことから,カットによる開口部分からクッション材が抜け落ちてしまい,コーナー部への装着作業に手間取る課題,④コーナー部に装着するた めに長手方向に折り曲げたとき,裏面が表面に対し,クッション材の厚み分だけ曲率半径が小さくなってしまい,裏面材とこれに塗布された粘着材に,皺やたるみが生じ,皺やたるみによって粘着材同士がくっついてコーナー部への装着作業に支障をきたすなどの課題が生じていたことから,本件発明の構成要件を採用することにより,長さ調節の際,カットしてもそのカット部分が開口せず,また夏場にコーナークッションが膨張せずこれによって帯状表面材や帯状裏面材が破れるのを防止し,また内部に雨水が浸入してもクッション材にその雨水が浸透せず,また折り曲げたときに帯状裏面材や粘着材に皺やたるみが生じずこれによってコーナー部への装着を容易かつ確実に行うことのできるコーナークッションの提供を目的とするものというのである。 そして,その効果として,①コーナークッションの裏面側はその幅方向中央部が長手方向に開放された状態となるので,コーナークッション内部の空気が膨張しても,膨張した空気はコーナークッション裏面側の開放部分から放出され,②コーナークッション内に雨水が浸入しても,その雨水は前記開放部分からすぐに排出され,③複数の短尺クッション材は互いに若干の間隔をおいて列設されているから,人や物が衝突したときのショックによ され,②コーナークッション内に雨水が浸入しても,その雨水は前記開放部分からすぐに排出され,③複数の短尺クッション材は互いに若干の間隔をおいて列設されているから,人や物が衝突したときのショックによる影響は隣の短尺クッション材へ及ばず,④従って,コーナークッションの劣化を最小限に止めることができ,その維持管理費用を低減することができる。また,短尺クッション材は裏面側において幅方向中央部分を帯状に露出した状態となるから,この帯状露出部分をコーナー部に合わせることにより,コーナー部には長尺裏面側シート部と粘着材層が位置しない。従って,コーナー部には短尺クッション材が密着し,長尺裏面側シート部や粘着材層には皺やたるみが生じない。これにより,コーナークッションをコーナー部へ密着状態で装着することができるというのである。 イところで「露出」とは,「あらわに,むき出しになること」(広辞苑第6版)を意味するが,上記認定した本件発明の課題及び効果に照らせば,本件発明におけるその技術的意義は,コーナークッション内を通気性,透湿性が制限された状態か ら解放してその弊害を除去するというだけでなく,製品を長手方向に折り曲げても,クッション裏面の幅方向中央部周辺に裏面シート部と粘着材層がないことで,裏面シートと粘着材に皺やたるみが生じず,粘着材同士がくっつかず,その結果,製品をコーナー部に密着させやすくするという点にもあるものと解される。 そうすると,構成要件Fの「前記長尺裏面側シート部同士の間から,前記複数の短尺クッション材が露出している」とは,コーナークッション裏面において,複数の短尺クッション材の幅方向中央部周辺が長尺裏面側シートに覆われておらず,長尺裏面側シートの間から見える構成となっていることを指すのみならず,長尺裏面側シートに覆われてい ッション裏面において,複数の短尺クッション材の幅方向中央部周辺が長尺裏面側シートに覆われておらず,長尺裏面側シートの間から見える構成となっていることを指すのみならず,長尺裏面側シートに覆われていない幅方向中央部周辺の短尺クッション材が粘着材にも覆われていないことを指すと解するのが相当である。 これに対し被告製品は,長手方向中央部周辺において,短尺クッション材が長尺裏面側シート部に覆われておらず,同シート部の間から短尺クッション材が見える構成となっており,本件発明の短尺クッション材に相当するスポンジの幅方向中央部周辺を含め,その裏面全面が粘着シール(粘着材層)で覆われているというものであるから,上記技術的意義を有する「短尺クッション材が露出している」という要件を充たすということはできない。 したがって,被告製品の構成は,構成要件Fを充足しないというべきである。 ウなお原告は,被告製品の裏面は粘着シールで覆われているが,粘着シールの透湿度はクッション材そのものよりも高く,粘着シールが貼られていない製品よりも貼られている製品の方が水分,空気をよく通すとし,それを裏付ける実験結果として一般財団法人化学物資評価研究機構作成に係る試験報告書(甲6)を提出するところ,この実験結果そのものは,技術常識に照らし受け入れられないが,これをそのまま受け入れたとしても,それでは本件発明の四つの課題のうち上記ア①,②の二つが解決され,その効果がもたらされるだけである。被告製品は,コーナークッションの裏面幅方向中央部付近に粘着シールが存在することにより,長手方向への折り曲げ時にその部分の粘着シールに皺やたるみが生じる結果,本件発明が解決 しようとした四つのうち最後の一つの課題(上記ア④)が解決されず,またそれに対応する効果も奏しないことになるので の折り曲げ時にその部分の粘着シールに皺やたるみが生じる結果,本件発明が解決 しようとした四つのうち最後の一つの課題(上記ア④)が解決されず,またそれに対応する効果も奏しないことになるのであるから,これでは被告製品が構成要件Fを充足すると認めることはできず,前記非充足の判断は左右されないというべきである。 2 以上によれば,原告の被告に対する請求は,その余の争点につき検討するまでもなく理由がないことが明らかであるので,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条により主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官森崎英二 裁判官田原美奈子 裁判官大川潤子 (別紙)物件目録被告における商品名 「反射コーナークッション」全体の長さ(長辺) 約196㎝全体の幅(短辺) 約26.5㎝スポンジの枚数 4枚スポンジの長さ約45.5㎝スポンジの幅約20㎝スポンジ同士の位置関係長手方向に4枚並んでいる。 スポンジ同士の間隔約1~1.7㎝長尺裏面シートの長さ約196㎝長尺裏面シートの幅約8.5~10㎝長尺裏面シート同士の間隔約6.0~9.3㎝長尺裏面シートが存在する場所全体の長辺と平行に,互いに約6.0~9.3㎝の間隔を空けて左右両側に存在する。裏面シート及びスポンジ上には粘着材層がある。 スポンジが存在する場所両長辺と平行に表面シートと左右の裏面シート 体の長辺と平行に,互いに約6.0~9.3㎝の間隔を空けて左右両側に存在する。裏面シート及びスポンジ上には粘着材層がある。 スポンジが存在する場所両長辺と平行に表面シートと左右の裏面シートとをそれぞれ溶着し(溶着の開始は両長辺からの距離で0㎝),短辺と平行に,短辺から0㎝と約50. 5㎝で表面シートと裏面シートを溶着し(反対短辺からも同様),両短辺からの中央(短辺からの距離約98.5㎝)で表面シートと裏面シートを溶着することにより4カ所にできた表面シートと裏面シートの間の空間(それぞれの空間の大きさ縦45㎝,横21㎝)内に存在する。上記空間は4カ所あり,4カ所すべてにスポンジが存在する。
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