昭和49(行ウ)67 所得税更正処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和56年10月9日 大阪地方裁判所 租税
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【DRY-RUN】○ 主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の求める裁判 一 請求の趣旨 1 被告が昭和四七年二月一八日付でした、原告の昭和四四年分及び昭和四五年分

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判決文本文14,506 文字)

○ 主文原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実第一当事者の求める裁判一請求の趣旨 1 被告が昭和四七年二月一八日付でした、原告の昭和四四年分及び昭和四五年分の所有税についての更正処分(昭和四五年分については国税不服審判所長の裁決により一部取消されたもの)を取消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 二請求の趣旨に対する答弁主文と同旨。 第二当事者の主張一原告の請求原因 1 原告は大阪市<地名略>内において鉄工業を営む者であるが、昭和四四年及び昭和四五年分の所得税について被告に対し白色申告により別表(一)の確定申告欄記載のとおり確定申告をしたところ、被告は同表の更正欄記載のとおり更正処分(以下本件更正処分という)をした。そこで原告は被告に対し異議申立をしたがいずれも棄却されたので、国税不服審判所長に対し審査請求をしたところ、同所長は同表の裁決欄記載のとおり裁決をした。 2 被告のした本件更正処分には次の違法がある。 (一) 本件更正処分の通知書には理由の記載が全くない。 (二) 被告は、本件更正処分をするに際し原告の生活と営業を妨害するような方法による不当な調査をし、また原告が西淀商工会会員であるゆえをもつて他の納税者と差別し、かつ民主商工会の弱体化を企図して本件更正処分をしたもので、調査手続及び意図に違法がある。 (三) 本件更正処分(昭和四五年分については国税不服審判所長の裁決により一部取消されたもの)は、原告の確定申告額を超える部分について所得を過大に認定している。 3 よつて原告は被告に対し、本件更正処分(昭和四五年分については国税不服審判所長の裁決により一部取消されたもの)の取消しを求める。 二請求原因に対する被告の認否 1 請求原因1項はすべて認める。 2 同2項(一)の本件更正処分の 更正処分(昭和四五年分については国税不服審判所長の裁決により一部取消されたもの)の取消しを求める。 二請求原因に対する被告の認否 1 請求原因1項はすべて認める。 2 同2項(一)の本件更正処分の通知書に理由の記載がなかつたことは認めるが、白色申告者に対する更正処分の通知書には法律上理由の記載を必要としない。 (二) 、(三)はいずれも争う。 三被告の主張 1 原告の所得原告の昭和四四年及び昭和四五年分の所得は別表(二)記載のとおりであり、その範囲内でなされた本件更正処分(ただし、昭和四五年分については裁決により一部取消されたもの)には違法はない。 2 原告の事業所得の推計(一) 推計の必要性被告の調査担当者は、原告の昭和四四年及び昭和四五年分等の所得税の調査のために、原告方に五回臨場し、原告側すなわち原告の長男のA及びその妻に対し原告の申告にかかる所得金額の計算内容を明らかにするよう求め、所得計算に関する帳簿・資料の提示を求めたが、これを一切拒否されたため、被告は原告の所得金額を実額で把握できず、やむなく原告の取引先等の調査を行なつたところ、原告の申告額と異なつたので本件更正処分をした。 (二) 推計の基礎となる同業者(1) 抽出方法大阪国税局長は原告の係争年分の事業所得税を算出するため、被告に対し以下のイないしニの条件をすべて満たす同業者を抽出するよう通達指示し、被告が右抽出基準に従つて抽出しえた同業者はただ一名であつた。 イ本件係争各年分に鉄工業(切削)を営む者で、西淀川税署管内に事業所を有している者であること。 ロまた、年間を通じて事業を継続して営み、受注先より専ら原材料の支給を受け、かつ受注品の加工を専ら下請業者に委託している者であること。 ハ本件係争各年分について、継続して青色申告書を提出している者で、かつ本件係争 じて事業を継続して営み、受注先より専ら原材料の支給を受け、かつ受注品の加工を専ら下請業者に委託している者であること。 ハ本件係争各年分について、継続して青色申告書を提出している者で、かつ本件係争各年分の課税処分につき、不服申立又は訴訟を提起していない者であること。 二本件係争各年分における収入金額がいずれも二七、〇〇〇、〇〇〇円以上一七七、〇〇〇、〇〇〇円未満の範囲内にある者であること。 (2) 右同業者の経費率、外注費率等右同業者の収入金額、売上原価及び一般経費(原材料費、外注費、その他)、売上原価及び一般経費率、外注費率は別表(三) 記載のとおりである。 (三) 推計の合理性右同業者は、原告と営業地域、営業形態、営業規模、取扱商品等の点において類似性があるうえ共通する取引先もあるから、原告の所得を推計する基礎としては適当であり、また右同業者は青色申告者であるから、その金額等の算出根拠となる資料はすべて正確なものである。 また、抽出された同業者は右同業者一名のみであつたが、その抽出過程は大阪国税局長の発した前記通達指示(その抽出基準は十分合理性を有する)に基づき被告が調査したところ、結果的には右抽出基準に合致する同業者は一名しか存しなかつたものであつて、抽出にあたり課税当局の恣意が介入する余地は全くなかつたのであるから、右同業者一名との対比によつて推計することも許されるというべきである。 (四) 推計方法及び事業所得の明細原告の昭和四四年及び昭和四五年分の事業収入、必要経費、事業専従者控除及び事業所得は別表(四)記載のとおりである。 (主位的主張)原告の収入は別表(五)記載のとおりであり、右実額で把握しえた収入を基礎として売上原価及び一般経費を推計する。 すなわち各年の売上原価及び一般経費は、右各収入に前記同業者の各年の売上原価 位的主張)原告の収入は別表(五)記載のとおりであり、右実額で把握しえた収入を基礎として売上原価及び一般経費を推計する。 すなわち各年の売上原価及び一般経費は、右各収入に前記同業者の各年の売上原価及び一般経費率(別表(三)の(6))を乗じて算出する(別表(四)計算式(a)、(b))。 (予備的主張)主位的主張の推計方法が認められないときは、原告が主張する売上原価(外注費及び原材料費、別表(六)、(七)記載)を基礎として収入を推計し、さらにその収入を基礎として売上原価及び一般経費を推計する。 すなわち各年の収入は、右各売上原価を前記同業者の各年の売上原価率(別表(三)の(7))で除して算出し(別表(四)計算式(c)、(e))、各年の売上原価及び一般経費は、右各収入に前記同業者の各年の売上原価及び一般経費率(別表(三)の(6))を乗じて算出する(別表(四)計算式(d)、(f))。 四被告の主張に対する原告の認否 1 被告の主張1項のうち昭和四五年分の譲渡所得及び雑所得の収入額、必要経費及び所得の額については認めるが、その余はすべて争う。 2 同2項(一)は争う。 3 同2項(三)の推計の合理性については争う。 4 同2項(四)の主位的主張のうち収入、必要経費のうちの雇人費、減価償却費、地代、借入金利子及び割引料(以上昭和四四年及び昭和四五年分)及び事業専従者控除(昭和四四年分)の額は認めるが、その余はすべて争う。予備的主張のうち必要経費のうちの雇人費、減価償却費、地代、借入金利子及び割引料(以上昭和四四年及び昭和四五年分)及び事業専従者控除(昭和四四年分)の額は認めるが、その余はすべて争う。また、推計方法については主位的主張、予備的主張いずれもその合理性を争う。 五被告の主張に対する原告の反論 1 推計の合理性について被告が推計の基礎とする 分)の額は認めるが、その余はすべて争う。また、推計方法については主位的主張、予備的主張いずれもその合理性を争う。 五被告の主張に対する原告の反論 1 推計の合理性について被告が推計の基礎とする前記同業者はもつぱら下請業者に委託しているのに対し、原告は旋盤等五台の機械設備を備えて自己加工もしているもので条件が異なる。また原告の外注先は固定的、継続的なものではなく、一時的、臨時的に無理をして受注した場合、これをこなすため新規に外注に出すことが多く、差益は少ない。 右のように同業者の質が異なり、しかも一同業者の比率という母集団が多数でそれを平準化したものでないことを考慮すると、前記同業者との対比によつて原告の所得を推計することは、その合理性につき重大な疑問が存する。 2 主位的推計方法について(一) 被告は、必要経費の算出にあたつて売上原価及び一般経費率という一項目をもうけ、収入金額に同業者の売上原価及び一般経費率を乗じてその額を推計しているが、原告は本件訴訟において、個々の取引先ごとかつ各月ごとに売上原価(原材料費及び外注費)を具体的に主張し、それに沿う領収証及び請求書等の証拠を提出しているのであるから、売上原価及び一般経費を一括して推計する方法より、両者を分離して、売上原価(原材料費及び外注費)については実額で計算する方が合理的であることは明らかであり、その方法によるべきである。 (二) 売上原価(原材料費及び外注費)は別表(六)、(七)記載のとおりであり、その他の一般経費は、昭和四四年分八四五、三三〇円、昭和四五年分一、〇五五、一七五円である。 3 予備的推計方法について(一) 被告は、原告の係争年各年分の収入金額を最終的に各明細を明らかにして確定的に主張した。これに対し原告は、原告に不利な若干の微差があるが立証の関係からこれをす る。 3 予備的推計方法について(一) 被告は、原告の係争年各年分の収入金額を最終的に各明細を明らかにして確定的に主張した。これに対し原告は、原告に不利な若干の微差があるが立証の関係からこれをすべて認めた。したがつて係争各年分の収入金額は原被告間に争いのない事実となつたから、これは相手方が援用した自白と法的に同一のものと評価できる。 そこで被告が予備的主張にしろ収入金額の増額を主張することは自白の撤回にあたり、原告は右撤回に異議がある。 (二) 外注費及び原材料費を同業者の外注費率で除して収入金額を推計する方法は具体的根拠が明らかでなく、原告の反証が全く不可能なものであつて合理性を欠き、許されるべきではない。 六原告の反論に対する再反論 1 推計の合理性について前記同業者はもつぱら下請業者に委託しており、原告のように自己加工も行つていないが、自己加工の場合の所得率は外注の場合よりも高く、右同業者の比率を適用して所得金額を算出することはかえつて原告に有利となり、右差異は推計の合理性を妨げるものではない。 2 主位的推計方法について(一) 原告は異議申立及び審査請求の段階で帳簿書類等を全く提示せず、本訴提起後四年もの長期間の経過した昭和五三年九月二一日の第一六回口頭弁論期日において突然領収証及び請求書等を証拠として提出し、これらに基づき売上原価(外注費及原材料費)を実額で計算すべきである旨主張するに至つたもので、昭和四四年及び昭和四五年分の各確定申告時において既に当該年度分の領収証等が原告の手元にあつたのに、異議申立及び審査請求の段階であえて提示せず、当初から訴訟において被告の主張の推移を観察し自己に有利な時期に領収証等を証拠として提出しようと企図していたものである。 このような原告の態度は国民が等しく負担している納税義務に鑑み著しく不 示せず、当初から訴訟において被告の主張の推移を観察し自己に有利な時期に領収証等を証拠として提出しようと企図していたものである。 このような原告の態度は国民が等しく負担している納税義務に鑑み著しく不当なものであつて、信義則に反するものといわざるを得ず、右領収証等に基づく実額計算により売上原価(外注費及び原材料費)を認定することは相当でない。 (二) また、本件訴訟において原告が提出した領収証及び請求書等の証拠の内容を検討すると、これらは多数の領収証及び請求書であつて、取引をその都度記録して正確に把握することのできる正規の帳簿と異なり断片的な個別取引を不完全に示すのみであるから、原告のような複雑な事業の所得計算において、このような資料に基いて正確な実額計算をするためには、取引先の帳簿等との照合をし、あるいは対応する請求書と領収証の付き合わせをするなどの補完作業が必要不可欠であるところ、本件では取引後長期間を経た時期において、しかも大半は請求書又は領収証の片方だけが提出されたため右補完作業は不可能であり、その責はすべて原告にある。 さらに領収証のみが存在し、請求書が提出されていない場合は外注費の月別発生額がいくらなのかを把握しえない。 そのうえ、原告が提出した領収証等の証拠のうちには以下のような矛盾ないし疑問があるものが存在する。 (1) 作成年月日欄が空欄になつているため、いつの時点の必要経費に算入すべきか確定できないもの。 (2) 一般に請求に対し値引きが考えられるが、請求書のみ提出されている分についてはその額を知ることができない。 (3) 同一月分につき複数の領収証あるいは請求書が存在するため、外注費の月別発生額が不明となるもの。 (4) 原告以外の者宛の領収証ではないかとの疑いが存するもの。 (5) 原告は、外注先に対し、工賃の前払いない 分につき複数の領収証あるいは請求書が存在するため、外注費の月別発生額が不明となるもの。 (4) 原告以外の者宛の領収証ではないかとの疑いが存するもの。 (5) 原告は、外注先に対し、工賃の前払いないし内払いをしていることがあるが、これに対する領収証のないこともうかがえるのであつて、その処理が判然としない。 (6) 当該月分(前月請求分)の支払が未了の時点で発行された請求書に「先月入金過剰分」の記載があるなど不合理なものがある。 したがつて原告提出にかかる領収証等によつては、係争各年分の外注費及び原材料費を実額により算出することは不可能である。 3 予備的推計方法について(一) 自白とは、相手方が挙証責任を負う事実について不利益な陳述をすることをいうのであるが、収入金額については、被告側に挙証責任があると考えられるゆえに、被告が原告の収入金額について原告に不利になるように増加する主張をしたところで、当該被告の主張が訴訟法上自白の撤回となることはあり得ない。また、収入金額は主要事実ではなく、間接事実にすぎないことからも、これに関する主張を変更することは自由に許されるのである。 さらに、もともと被告の従来主張してきた収入金額は、原告の収入金額のすべてを十分に把握したうえのものではなく、原告側の税務調査に関しての不協力、不誠実な態度や、被告側の調査能力の限界等から、被告側で把握し得た収入金額はあくまでも真実の原告の収入金額の一部にすぎないということを前提とするものである。 すなわち、被告の主張する収入金額は実際にあるべき真実の金額を下回ることはあつても決して上回ることはない最低限の主張であつて、爾後の調査の進捗状況に応じて変動する余地を常に残した主張にすぎないのである。 (二) 所得金額算定の基礎となる収入と経費の間には、一般に相関関係、対応性が存 て上回ることはない最低限の主張であつて、爾後の調査の進捗状況に応じて変動する余地を常に残した主張にすぎないのである。 (二) 所得金額算定の基礎となる収入と経費の間には、一般に相関関係、対応性が存すると考えられるところ、経費のうちでも売上原価は収入が発生すべき販売活動に直接関連する経費であるから、その金額と収入金額との相関関係、対応性は極めて強いものといえる。したがつて、原告の主張する売上原価の金額が正確であるとすれば、その金額と対応する収入金額を類似同業者の売上原価率でもつて推計するのは、極めて合理的な方法である。 ○ 理由第三証拠(省略)一請求原因1項記載の事実はすべて当事者間に争いがない。 二本件更正処分の通知書に理由の記載がないことは当事者間に争いがないが、白色申告の場合には更正通知書に更正の理由附記が要求されているわけではないから(所得税法一五五条二項参照)、理由の附記を欠いたからといつて本件更正処分が違法となるものではない。 三次に、原告は被告が本件更正処分をするにあたり不当な調査を行ない、原告が民主商工会員であるとの理由で他の納税者と差別し、民主商工会の弱体化を企図した旨主張するが、本件の全証拠を検討してもその主張を認めることはできない。 四そこで原告の所得について検討する。 1 原告の昭和四五年分の譲渡所得及び雑所得の額が別表(二)記載のとおりであることは当事者間に争いがない。 2 原告の事業所得に関する必要経費のうち、雇人費、減価償却費、地代、借入金利子及び割引料(以上昭和四四年及び昭和四五年分)及び事業専従者控除(昭和四四年分)の額が別表(四)記載のとおりであることは当事者間に争いがない。 3 証人Bの証言及び弁論の全趣旨によれば、被告の調査担当者Cは原告の昭和四四年及び昭和四五年分等の所得税の調査のため原告方 四四年分)の額が別表(四)記載のとおりであることは当事者間に争いがない。 3 証人Bの証言及び弁論の全趣旨によれば、被告の調査担当者Cは原告の昭和四四年及び昭和四五年分等の所得税の調査のため原告方に五回臨場したが、原告にかわつて応待した原告の長男A及びその妻はCに対し、原告の申告にかかる所得金額の計算内容を明らかにせず、帳簿資料等を提示しなかつたことが認められ、右認定に反する証拠はない。 右事実によれば、被告において原告の収入を実額で把握することができないとして、取引先等の反面調査のうえ推計によりこれを算出したことはやむを得なかつたというべきである。 4 証人Bの証言及び同人の証言により成立が認められる乙第一ないし第三号証によれば、被告は大阪国税局長が発した一般通達に基づき、その管内で鉄工業(切削)を営む者で、受注先より専ら原材料の支給を受け、かつ受注品の加工を専ら下請業者に委託している者であること、昭和四四年及び同四五年分について継続して青色申告書を提出していること、各年分とも年間を通じ事業を継続して営んでいること、各年分における収入金額がいずれも二七〇〇万円以上一億七七〇〇万円未満の範囲内にあること、各年分の課税処分につき不服申立又は訴訟を提起していないことという条件を満す個人を抽出したところ、一名が存在し、その同業者の収入金額、売上原価及び一般経費等は別表(三)記載のとおりであることが認められる。 推計の基礎となる同業者の数は個別性を平均化するに足る件数が得られることが望ましいが、同業者の類似性が認められ、かつその同業者の提供する資料が正確なものであれば、同一地区で他に正確な資料を有する同業者のない場合には一同業者だけと対比することも許されると解するのが相当である。けだし、その者を推計の基礎とすることに合理性が認められる以上資料と なものであれば、同一地区で他に正確な資料を有する同業者のない場合には一同業者だけと対比することも許されると解するのが相当である。けだし、その者を推計の基礎とすることに合理性が認められる以上資料として利用することに何らの支障もなく、推計の基礎にする同業者が複数でなければならない論理的根拠はないからである。 ところで、大阪国税局長の発した右通達指示による同業者の抽出基準は、業種、事業所の近接、事業規模の近似等において同業者の類似性を判別する要件として合理的なものであり、また一定期間事業を継続する青色申告者であつて、その申告が確定していることから、その同業者の所得額等の算出根拠となる資料は正確性の高いものと認められるから右同業の一業者だけとの対比によつて原告の所得等を推計することは許されるものというべきである。 なお、右同業者はもつぱら外注(下請業者に委託)している者であることは抽出基準から明らかであり、原告は外注するほか一部自己加工をも行つているというのであるが、前掲乙第三号証及び弁論の全趣旨によれば、自己加工の場合の所得率は外注の場合より高いことが認められるから、右差異が原告に不利益を及ぼすことはなく、これをもつて右同業者の比率を適用することの妨げとすることはできない。 さらに、証人Aの証言によれば、原告の外注先(下請業者)は一時的、臨時的に発注したところが多いというのであるが、しかし別表(六)、(七)の記載に照らすと、原告の外注費全体に占める一時的・臨時的なものの金額的な割合はむしろ低いやに思われるうえ、そもそも一時的・臨時的な発注先に発注した場合に、固定的、継続的な発注先に発注した場合と比べてはたして差益率が低いか否か、仮に低いとしてその差がどの程度かについて必ずしも明らかではなく、右事情もまた前記同業者の比率を適用する妨げとはなら 場合に、固定的、継続的な発注先に発注した場合と比べてはたして差益率が低いか否か、仮に低いとしてその差がどの程度かについて必ずしも明らかではなく、右事情もまた前記同業者の比率を適用する妨げとはならない。 5 原告の事業所得の推計方法の当否につき判断する。 (主位的推計方法)(一) 原告の昭和四四年及び同四五年の事業所得に関する収入が別表(五)記載のとおりであることは当事者間に争いがない。 (二) 原告は、必要経費のうち大部分の割合を占める売上原価(原材料費及び外注費)について、係争年の各月すべてについて個々の取引先を明らかにして実額を主張し、それを立証するため領収証等の証拠を提出している。 被告主張のように収入に同業者の売上原価率を乗じて経費を算出するという間接的な方法は、実額計算をなし得る場合には採り得ないことはいうまでもないから、売上原価について実額が認められるならば、当然実額計算によるべきであると考えられる。 (三) 被告は原告の領収証等の提出方法について信義則違反を主張するが(事実摘示六2(一))、異議申立又は審査請求の制度上申立人の所持する資料等の提示が予定されているにしても、これを怠つた場合に原処分等を争う訴訟において右資料等を証拠として提出しえないとすることは司法による救済が保障されていることから考えて許されないし、時機に遅れた攻撃防禦方法であるとして却下すべき程の事情も認められない。 のみならず、右異議申立又は審査請求における資料等の提示を怠つた結果不利益を蒙るのは、自己の所持する資料に基づいて有利な判断を受ける機会を自ら失うという意味において原告であり、本訴において証拠としての提出が遅れたことによる不利益も後記のとおり必ずしも被告側にのみ存するものではないから、被告主張の事実をもつて原告の行為が信義則に反するということは う意味において原告であり、本訴において証拠としての提出が遅れたことによる不利益も後記のとおり必ずしも被告側にのみ存するものではないから、被告主張の事実をもつて原告の行為が信義則に反するということはできない。 (四) 被告は原告が提出した書証ではその主張の売上原価を算出し得ない旨主張するが(事実摘示六2(二))、しかし、原告の証拠(領収証等)の提出が時機に遅れたとか、信義則に反するということはできないことは前示のとおりであるから、右領収証等の個々的証拠価値の判断を経ることなくこれを採用しないとすることは許されないし、また、必要経費の実額を主張して処分の違法をいう原告としては、右経費の存在のみならず収入との個々的関連性についても立証する必要があるから、原告提出にかかる右領収証等の証明力を被告が争う本訴の場合、被告主張の補完作業は右証明力を補強する意味でむしろ原告に有利な作業ともいえ、時間の経過による右作業の困難性が被告にのみ不利に作用するものとは考えられない。 (五) そこで、被告が矛盾ないし疑問があると指摘する領収証及び請求書等について検討すると、以下のとおり考えられる。 (1) 作成日付が明らかにされていない甲第二号証の二四のA、B、二五のA、五八、六〇のB、六二、六六のA(別表(六)、(七)のうち○印がつけてあるものに対応する)については、他の証拠により作成日付が立証されないから売上原価の算入資料とはなしえない。 (2) 同一月分につき複数の領収証あるいは請求書が存在し、二重に請求されているようにみえるもの甲第二号証の二のB、三のA、六九のA、B及び同号証の七一、七二のうち甲第二号証の七一及び七二の分については、右各証拠及び弁論の全趣旨より、三器工業株式会社が昭和四五年一月分の支払いを原告より受けず、同年二月分に合わせて請求したものと認 及び同号証の七一、七二のうち甲第二号証の七一及び七二の分については、右各証拠及び弁論の全趣旨より、三器工業株式会社が昭和四五年一月分の支払いを原告より受けず、同年二月分に合わせて請求したものと認められ(ゆえに一月分の請求(甲第二号証の七一)は計算に入れるべきではない、これは別表(七)のうち□印がつけてあるものに対応する)、同六九のA、Bの分については、橋田製作所が六九のAを発行する時点で、原告において同年一一月分の一部を合わせて支払つたと考えられるから、同二のBと三のAの分について右各証拠のどちらかの日付が昭和四五年三月二〇日の誤記であることが認められ、いずれにせよ算定の資料とすることに問題はない。 (3) 原告以外の者宛の領収証ではないかとの疑いの存する甲第一号証の四六のA及び四八(別表(六)、(七)のうち△印がつけてあるものに対応する)については、原告宛の領収証であると認めるに足りる証拠がないので売上原価の算入資料とはなしえない。 (4) 原告が外注先に工賃の前払いないし内払いをしていることをうかがわせると被告が主張する甲第一号証の五二、甲第二号証の七一については、右各証拠及び証人Aの証言によればむしろ前月分(前回請求分)が過払いになつていると考えるのが合理的で、それに対する別個の領収証がないのは当然であると考えられる。 (5) 請求書のみ提出されており、これに対応する領収証がない甲第一号証の一のB、三のB、二八、三三、三八のA、B、四〇のB、四三のB、四六のA、四八、五二、甲第二号証の二二のA、二四のA、B、二五のA、B、二六、三三のA、四一のB、四二のA、B、五九のA、B、六八のB、七一、七二、七九のA、B、八〇のA、B、八一、八三のA、八六(以上別表(六)、(七)のうち※印がつけてあるものに対応する)もののうち前記作成日付のな 四一のB、四二のA、B、五九のA、B、六八のB、七一、七二、七九のA、B、八〇のA、B、八一、八三のA、八六(以上別表(六)、(七)のうち※印がつけてあるものに対応する)もののうち前記作成日付のない同号証の二四のA、B、二五のA、翌月分に合わせて請求されている同号証の七一、原告宛の領収証と認められない甲第一号証の四六のA、四八は算定資料とできないがその余については、現実に支払いをなした額が判然としない(請求書記載の額より値引されているものが存することは原告も認めている)ことは被告主張のとおりであるが、金額的にみると売上原価の一部(昭和四四年分は四、二二八、四四八円、昭和四五年分は一、〇九二、二五八円)に過ぎないから、被告主張の理由をもつて実額による計算を全く否定してしまうことは妥当ではなく、他の値引き例を勘案して、請求書の金額に相当な割引率を乗じて支払い額を算出すれば足りる。 (六) 以上を踏えて売上原価を算定すると、次のとおりである。 (1) 証人Aの証言及び同人の証言によつて成立が認められる(一部当事者間に成立に争いがないものが含まれる)甲第一号証、第二号証(いずれも枝番を含み、前記資料となしえないものを除く)によれば、原告は必要経費のうちの売上原価について、別表(六)、(七)支払欄記載のとおり支払い(支払い欄に△、○印がついているもの、あるいは対応する請求欄に※印がついているものを除く)、また同表請求欄記載のとおり請求を受けた(※印のついているものに限る。ただしそのうち※印とともに△、○、口印のついているものを除く)ことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。 (2) また右各証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告が請求を受けたもの(※印のついているもので、あわせてΔ、○、口印のついていないもの)についての平均値引率が三割を上 左右するに足りる証拠はない。 (2) また右各証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告が請求を受けたもの(※印のついているもので、あわせてΔ、○、口印のついていないもの)についての平均値引率が三割を上まわるということはあり得ないことが認められる。 (3) そこで右請求額から値引率三割を控除したものを支払額に加算して売上原価を算出すると、別表(八)の計算式のとおり、昭和四四年分は四六、四五一、二八三円、昭和四五年分は七八、八八九、七六一円となる。 (七) ところで、右売上原価を基礎として収入を推計する方法、すなわち右売上原価を前記同業者の各年の売上原価率(別表(三)の(7))で除して算出する方法によると(別表(九)計算式(a)、(b))、原告の収入は別表(九)記載のとおりとなり、被告が具体的に得意先(受注先)を明らかにして主張する収入(別表(五)記載)をはるかに上まわる。 売上原価を基礎として推計した収入と被告が具体的に得意先を明らかにして主張する収入との間に右のような差異が生ずる理由は、捕捉もれにより被告が原告の収入をすべて把握しえているわけではないからと考えられる。 すなわち、前記認定のとおり、原告が被告の税務調査担当者に対して所得金額の計算内容を明らかにせず、帳簿資料等も提示しなかつたため、被告として原告の得意先を捜し出したうえ収入を調査せざるをえなかつたところ、前掲乙第三号証、証人Aの証言及び弁論の全趣旨によれば、原告の得意先は少数に限られるものではなく、また変動が多いこと、得意先と外注先(下請先)との対応関係がはつきりしないこと等の事情から、原告の協力なくしてその収入を把握することは容易なことではないことが認められるうえ、前記同業者が原告の収入等を推計するに足る類似性及び正確性を有していることは前示のとおりであるから、原告の現実の収入が 告の協力なくしてその収入を把握することは容易なことではないことが認められるうえ、前記同業者が原告の収入等を推計するに足る類似性及び正確性を有していることは前示のとおりであるから、原告の現実の収入が右推計によつて得られた額を大幅に下まわる別表(五)記載の額のみにとどまるとは到底考えられない。 なお、証人Aは原告の収入は別表(五)記載のそれに尺きる旨述べるが、原告の収入に関する帳簿等の資料を明らかにしたうえでの証言でない以上、右供述は具体性、説得力を欠き、採用の限りではない。 (八) 以上のとおり、被告主張の別表(五)記載の収入を基礎として前記同業者の売上原価及び一般経費率により原告の所得を推計する算出方法、原告主張の別表(五)記載の収入から売上原価については別表(六)、(七)の実額を控除して計算する方法、そのいずれによつても原告の所得を認定するについて合理的でなく採り得ない(原告が飽くまで実額計算を主張するのであれば、すべからく別表(五)記載の収入とその主張にかかる売上原価等の関連性を立証すべきものと考えられる。)。 (予備的推計方法)(一) 原告は、被告の主張する予備的推計方法が主位的推計方法の段階で既に当事者間に争いがないとして確定された売上金額を上まわる収入を推計して主張することになるから、これは自白の撤回にあたり許されない旨主張する。 しかし、主位的主張における被告の収入に関する主張は原告の収入のすべてを把握したうえのものではないと考えられ、そのいうところは原告の収入の額が被告の把握した確実なものでこれを下まわることがないとの趣旨であると解され、したがつて新に別個の収入を付加して主張することは何等妨げなく、原告の右主張は理由がない。 (二) 推計方法が合理的であるには、まず推計の基礎事実が確実に把握されることが必要であるところ、 解され、したがつて新に別個の収入を付加して主張することは何等妨げなく、原告の右主張は理由がない。 (二) 推計方法が合理的であるには、まず推計の基礎事実が確実に把握されることが必要であるところ、本件の証拠によつて必要経費の大部分を占める原告の売上原価が認定でき、他方被告が把握した原告の収入に相当額の捕捉もれが存在すると認められる本件においては、売上原価の額を基礎として同業者の比率により原告の収入を計算する方法も合理性があり許されると考えられる。 すなわち、一般に収入と経費の間には対応性が存するが、経費のうちでも売上原価は収入の発生原因たる販売に直接関連する主要な経費であつて、その金額と収入金額との対応性は特に強いと考えられるから、売上原価を基礎としてその収入を推計することは十分合理性を有するというべきである。 なお、一般経費について、原告は同業者に比してかなり低い額を主張しているが、その内訳ないし根拠を一切明らかにしない。したがつて前記推計によつて得られた収入を基礎として更に同業者の比率によつて推計するのが合理的である。 (三) 収入の算出方法及びその金額は、理由中の主位的推計方法(七)項のとおりであり、右収入に前記同業者の各年の売上原価及び一般経費率(別表(三)の(6))を乗じて一般経費と売上原価の合計額を算出すると(別表(九)計算式(c)、(d))、原告の売上原価及び一般経費の合計は別表(九)の該当欄記載のとおりとなる。 (四) そこで原告の事業所得を、右収入より右売上原価及び一般経費、当事者間に争いがない別表(四)の雇人費、減価償却費、地代、借入金利及び割引料、事業専従者控除(昭和四四年分のみ)を減じて算出すると、その額は別表(九)の事業所得欄記載のとおりである。 さらに原告の総所得は、昭和四四年分は右事業所得のみで、昭和四五年分に 、借入金利及び割引料、事業専従者控除(昭和四四年分のみ)を減じて算出すると、その額は別表(九)の事業所得欄記載のとおりである。 さらに原告の総所得は、昭和四四年分は右事業所得のみで、昭和四五年分については右事業所得に当事者間に争いがない別表(二)の譲渡所得及び雑所得を加えることになり、その額は別表(九)の所得計欄記載のとおりである。 6 そうすると原告の昭和四四年及び昭和四五年分の所得はいずれも本件更正処分(昭和四五年分については国税不服審判所長の裁判により一部取消されたもの)における認定額(別表(一)記載)を越えるから、その範囲内でなされた本件更正処分(昭和四五年分については裁決により一部取消されたもの)に原告の所得を過大に認定した違法はない。 五よつて、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行訴法七条、民訴法八九条に従い主文のとおり判決する。 (裁判官志水義文宮岡章西野佳樹)別表(五)~(七)(省略)

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