平成13(ワ)1245 兵庫セクシュアル・ハラスメント

裁判年月日・裁判所
平成14年4月25日 神戸地方裁判所
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判決文本文6,292 文字)

判決平成14年4月25日神戸地方裁判所平成13年(ワ)第1245号慰謝料請求事件判決 主文 一被告は原告に対し,金200万円及びこれに対する平成13年6月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 二訴訟費用は被告の負担とする。 三この判決は,仮に執行することができる。 事実及び争点第一申立主文と同じ第二事案の概要本件は,慰謝料200万円を被告が原告に支払うとの両者間の合意に基づき,原告が被告に対し,同額の支払と遅延損害金の支払を求めた事件である。 一争いのない事実 1 原告は,臨床検査技師として,三田市に所在するA病院検査科に勤務していたところ,平成9年4月,被告はB病院からA病院検査科に室長として赴任してきた。被告は,技師長の資格を有する原告の上司であった。 2 平成9年10月頃,原告は,エコーの技術を習得するため,上司である原告からエコーの技術を教わることになった。 このエコー技術習得の過程で,原告が被告の男性器を手でしごいたり,原告の口にくわえてしごいたりし,被告が原告の陰部を触ったりした。 3 また,原告が通常の業務に従事中にも,被告は勃起した男性器を原告の背中や腰に衣服の上から押し付けるなどの行為をした。 4 原告と被告は,平成9年の10ないし12月頃以降複数回性交渉をもった。 5 平成12年3月頃,被告は原告に対し,慰謝料として金200万円を支払うことを約束した(以下,「本件合意」という。)。 6 被告代理人は原告に対し,平成13年3月28日に到達した内容証明郵便で,本件合意を強迫を理由として取り消す旨の意思表示をした。 二争点 1 原告と した(以下,「本件合意」という。)。 6 被告代理人は原告に対し,平成13年3月28日に到達した内容証明郵便で,本件合意を強迫を理由として取り消す旨の意思表示をした。 二争点 1 原告と被告との関係(原告)(1) 前記一の2,3の被告の行為は,エコー技術の教育等にかこつけたセクシュアル・ハラスメント(以下,「セクハラ」という。)であり,被告はこうしたセクハラ行為を日常的に行っていた。 (2) 平成9年暮れの忘年会終了後,原告は被告から求められ,上司であることから断れず,被告の求めに応じて男女関係を結ぶことになった。その後も被告は従前の行為を原告に対して続け,その間,原告と被告間の性交渉は5回位行われた。 (被告)(1) 原告と被告間の性交渉その他の性的交渉は,すべて両者の合意で行われたものであり,被告は,エコーを教えることを口実にするなどしてセクハラ行為を行ったりしたものではない。 (2) 原告と被告は互いに好意を抱くようになり,平成9年10月頃,自然と性交渉をもった。被告には妻があり,原告と被告との関係は不倫関係であるが,この関係は,平成10年11月頃から平成11年9月頃までは中断した。しかし,自然に原告と被告との性交渉は再開し,以後平成12年2月頃まで月2回程度関係をもった。 2 強迫(被告)(1) 平成10年11月下旬,原告と被告及び友人2名の合計4名で飲食した際,被告が原告とは別の女性をタクシーで送ったことに関して,その翌日,原告は被告に対し「慰謝料下さい。私はこのようなチャンスを待っていた。」と大変な剣幕で言った。以後原告は被告に対し,これまでの出来事を文書にして責任をとるよう求め,「文章を書けば,今までのことはなしにして,奥さんにも職場の人にも言わないから。」と ンスを待っていた。」と大変な剣幕で言った。以後原告は被告に対し,これまでの出来事を文書にして責任をとるよう求め,「文章を書けば,今までのことはなしにして,奥さんにも職場の人にも言わないから。」と連日の強迫を繰り返した。平成11年8月頃,被告はやむなく原告の要求に応じて,過去の経緯を文書にしたところ,原告は「この文章では責任を何でとるのか示されていない。」と指摘し,被告は以後何度も文書を書きなおした後,文書末尾に「慰謝料金100万円を転勤時に支払います。」と記載し,原告もようやくこの記載で納得した。 (2) その後原告と被告との性交渉が再開され,良好な関係が復活したが,平成12年3月15日,被告はC病院への転勤の内示を受け,これを原告に告げたところ,原告は被告に対し,「前の文章を妻や職場の人に見せるぞ。」と言って,以前に約束した100万円にさらに100万円を加えて合計200万円を支払う旨の文書を作成するよう強迫した。その結果,被告は同月31日,やむなく原告の求める趣旨の文書を作成し,原告に交付した。 (原告)原告が強迫し,その結果本件合意が成立したことは否認する。 3 解除条件(被告)(1) 2において被告が主張した経緯からすれば,本件合意は,原告が被告との関係を被告の妻や職場関係者に口外することを解除条件とするものである。 (2) 平成12年9月,被告の現住所に原告から200万円を請求する手紙が届き,同年12月20日,被告は200万円をA病院に持参した。そして,原告に200万円を支払う前提として,被告は原告に領収証及び前記の被告作成の文書の交付を求めたが,原告は応ぜず,その場で被告の妻に電話して,原告と被告との関係を伝えた。 (原告)上記(1)の事実は否認する。 告に領収証及び前記の被告作成の文書の交付を求めたが,原告は応ぜず,その場で被告の妻に電話して,原告と被告との関係を伝えた。 (原告)上記(1)の事実は否認する。 理由 一事実経過証拠(甲1ないし6,原告本人,被告本人)と弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 1 被告は昭和19年1月出生で,妻がいる。被告は昭和32年9月出生で,独身である。原告は被告が妻帯者であることを,被告の赴任直後から知っていた。 2 被告は,夕方6時頃から,原告に,腹部エコー検査から始めて,泌尿器科や婦人科関係の血流を教えたりした。その際,自己がモデルとなって,男性器の正常時と勃起時の血流の違いを教えると称して,原告に被告の男性器を手でしごかせたり,口にくわえてしごかせたりした。また,通常業務に就いている間も,原告と被告が2人きりになると,被告は原告に身体を押し付けたり,勃起した男性器を衣服の上から押し付けたり,顔をくっつけたりしてきた。 3 平成9年暮れの職場の忘年会の後,原告と被告は初めて性交渉をもった。以後,平成10年9月頃までの間に,原告と被告は5回程性交渉をもった。 4 平成10年6月頃,原告と被告と友人らで飲食した際,被告が原告とは別の女性をタクシーで送ったことがあったが,その直後から,原告は被告に対し慰謝料を請求するようになり,また,思い出になるからといって,これまでの原告と被告の関係の経緯を文書にするよう要求した。 5 被告は,原告の求めに応じて文書を作成したが,原告は謝罪の言葉がないとして書き直すよう要求し,被告は,何度か書き直した後,最終的に平成10年9月頃,甲1の文書を原告に作成,交付した。その内容は,エコー検査の教育の際の前記のような経緯,その後自然と男女関係が生じた として書き直すよう要求し,被告は,何度か書き直した後,最終的に平成10年9月頃,甲1の文書を原告に作成,交付した。その内容は,エコー検査の教育の際の前記のような経緯,その後自然と男女関係が生じた経緯,互いに好意を寄せ合っていたこと,6月の上記出来事で原告を傷つけたことに対する謝罪等を記した後,最後に,「…このへんで不倫をやめようと思ったに違いない。心身共に傷ついたので慰謝料を請求してきたと思うが,不倫は2人とも悪いと思う。私もサラリーマン,すぐに支払いますとはいえない。…100万円といったら超大金である。傷つけた代償はお金しかないと思います。慰謝料としてこの病院を出るときに100万円支払います。」と記したものである。 6 その後,平成10年11月頃から平成11年10月頃までの間,原告と被告の男女関係は中断されたが,同年11月頃再開された。 7 原告は,弁護士に相談していたところ,弁護士から被告に200万円は請求してもよいといわれて,平成12年初め頃からさらに100万円の慰謝料を上乗せするよう要求するようになった。 8 平成12年3月中頃に,被告にC病院への転勤の内示があり,同月末日頃,被告は「200万円は大金なので…分割にして下さい。100万円の件は…転勤先ですぐ申し込みますので4月下旬になると思います。もう100万円は私が定年までに支払します。借用金額が妻に分かったら大変なことになるので,それだけは避けたいと思いますが,もしこれが受け入れられなければ200万円借用して支払います。」等と記載した甲2の文書を,原告の職場の机の上に置き残した。 9 平成12年4月に被告はC病院に転勤して行った。被告はすぐには金銭の都合がつかなかったので,原告に連絡もしないまま約束した金銭を支払わなかった。 ところが,同年9月頃,原告から被告に手紙が た。 9 平成12年4月に被告はC病院に転勤して行った。被告はすぐには金銭の都合がつかなかったので,原告に連絡もしないまま約束した金銭を支払わなかった。 ところが,同年9月頃,原告から被告に手紙が届き,約束(本件合意)を履行するよう督促してきた。 10 そこで,被告は,200万円を用意して,平成12年12月20日,原告の勤務先であるA病院を訪れ,原告に200万円を支払い,原告から領収証の交付と甲1,2等の文書の返還を受けようとした。ところが,原告は,200万円を受領していいものかどうか分からなくなり,また,200万円は被告の妻の金でもあるので,妻に内緒で受け取っていいものかどうか確認する必要があると考えて,その場で被告の妻に電話して,受け取っていいかどうか尋ねた。 11 被告は,これに立腹して,200万円を支払わないまま舞鶴に戻り,すぐに妻に原告との関係を話した。 二強迫について以下の認定,説示によれば,原告が被告に違法な強迫をした結果本件合意が成立したとは認められない。 1 被告本人は,甲1を作成するまでの間,原告から,金額を文面に入れないと,それまで原告に渡した文書を妻や上司に見せると脅されたとか,平成12年1月か2月頃から200万円支払うという文書を書かないと妻や上司に前に書いた文書を見せると毎日のように言われたと供述しているが,原告はこのような事実を認めてはいない。 2 甲1の内容は前記認定のとおりであり,文章全体の調子は,原告に対する愛情を表現したものということもできるもので,原告の強迫によりやむなく記したものであるとは容易に認め難い。 また,甲2の冒頭には,「転勤は1年先かと思っていたが,別離は淋しいものがある。3年間どうもありがとうございました。君は成長したと思う。」などと記されており,同じく原告に対す 容易に認め難い。 また,甲2の冒頭には,「転勤は1年先かと思っていたが,別離は淋しいものがある。3年間どうもありがとうございました。君は成長したと思う。」などと記されており,同じく原告に対する愛情の表現がある。 原告がセクハラ行為がなされたことを理由とすることを明確にして,被告に慰謝料の請求をしていたことを認めるに足りる証拠はなく,被告本人によれば,被告は,平成10年6月の前記出来事の直後に請求があったことから,原告の嫉妬心が請求の動機であると考えていたことが認められる。そうとすれば,被告は原告から慰謝料を請求されたことにより,原告を疎ましく思うようなことはなかったと推認できる。 以上のような事実からすると,被告は,原告を傷つけたことを認めた上で,原告に慰謝料を支払うことにすることについて,自分自身でもある程度納得していたのではないかと疑われる。 3 原告,被告各本人と弁論の全趣旨によれば,原告は被告にセクハラ行為があったと考えていたが,被告はそのようには考えていなかったことが明らかである。 しかし,前記認定によれば,被告の認識はともかくとして,また,その後原告と被告の関係が肉体関係にまで発展したのは両者の愛情と合意に基づくものであったとしても,被告がセクハラと判断されてもやむを得ない行為をしたことは否定できず,原告は被告の行為が違法なセクハラであるとの前提に立って,弁護士とも相談して被告に慰謝料の請求をしていたものと推認される。 そうとすれば,原告にとって,被告との関係が職場の関係者や被告の妻の知るところとなるか否かは本質的な問題ではない(原告がそのように考えていたことは,平成12年12月に原告が被告の妻に電話したことからも推認できる。)というべきであるから,原告が上司や妻に原告と被告との関係を暴露すること かは本質的な問題ではない(原告がそのように考えていたことは,平成12年12月に原告が被告の妻に電話したことからも推認できる。)というべきであるから,原告が上司や妻に原告と被告との関係を暴露することを材料にして被告を脅すというのは,不自然である。 4 平成12年9月に原告が被告に送った手紙(甲4)には,被告が原告に交付した文書の内容が事実と少し異なり,自分の非を認める言葉がなかったのが残念であるとの記載,国家公務員のセクハラの防止基準を引用した上でのセクハラに該当する旨の記載がある。この事実及び前記一の5の事実(原告が謝罪の言葉がないとして文書の書き直しを要求したこと)からすると,原告は,慰謝料の支払自体よりも,被告がセクハラ行為をしたことを認めて謝罪することの方が重要であると考えていたことが窺える。 同年12月に原告が200万円を受領する前に被告の妻から確認をとろうとしたことも,原告が金銭支払に執着していたものでないことを窺わせるものである。 5 被告は,平成12年4月にC病院に転勤後,原告に連絡もしないまま本件合意に基づく支払をしなかったのは,前記認定のとおりである。 この事実は,被告は,原告が両者の関係を妻や職場関係者に暴露する行為に出る可能性が高いとは考えていなかったことを窺わせるものであり,もし,原告から執拗に強迫されていたとすれば,被告はもっと強い懸念をもってしかるべきではないかと考えられる。 6 以上の諸点を総合すると,被告本人の強迫に関する供述を採用することはできず,他に,被告主張の強迫の事実を認めるに足りる証拠もない。 二解除条件について甲2によれば,被告が両者の関係を妻に知られるのを恐れていたことは原告にも認識できたことは認められるが,同じく甲2によれば,被告は,妻に200万円支払のための借金の ない。 二解除条件について甲2によれば,被告が両者の関係を妻に知られるのを恐れていたことは原告にも認識できたことは認められるが,同じく甲2によれば,被告は,妻に200万円支払のための借金のことが判明するおそれはあっても,場合により200万円借用するとの記載のある文書を原告に残したことが認められ,この事実からすると,本件合意に被告主張の解除条件が付されていたとは認められない。他に,被告主張事実を認めるに足りる証拠もない。 三結論以上の次第で,原告の請求は理由がある。 神戸地方裁判所第5民事部裁判官前坂光雄

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