主文 1 1審被告(控訴人)らの控訴に基づき、原判決中、1審被告(控訴人)ら敗訴部分を取り消す。 2 上記部分につき、1審原告(控訴人・被控訴人)ら及び1審原告(被控訴人)らの請求をいずれも棄却する。 3 1審原告(控訴人・被控訴人)ら及び1審原告(控訴人)らの控訴をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、1審原告(控訴人・被控訴人)ら及び1審原告(被控訴人)らと1審被告(控訴人)らとの間では、第1、2審とも1審原告(控訴人・被控訴人)ら及び1審原告(被控訴人)らの負担とし、1審原告(控訴人・被控訴人)ら及び1審原告(控訴人)らと1審被告国との間では、控訴費用を1審原告(控訴人・被控訴人)ら及び1審原告(控訴人)らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 1審原告(控訴人・被控訴人)ら及び1審原告(控訴人)ら⑴ 原判決中、1審原告(控訴人・被控訴人)ら及び1審原告(控訴人)らの敗訴部分を取り消す。 ⑵ 1審被告国は、1審原告(控訴人・被控訴人)ら及び1審原告(控訴人)らに対し、それぞれ1万円及びこれに対する平成27年1月30日(ただし、控訴人・被控訴人 X52 及び控訴人・被控訴人 X53 については、平成28年5月3日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 1審被告(控訴人)ら主文1項及び2項同旨第2 事案の概要(以下、略称は、特記しない限り別紙2「略称・定義一覧」による。) 1 本件は、大阪府内に居住して生活保護法に基づく生活扶助の支給を受けてい る1審原告ら(ただし、1審原告(控訴人)らは、その各夫が支給を受けている。)が、保護基準を改定する本件改定に基づき生活扶助の支給額を減額する本件各決定を受けたため、本件改定が憲法25条、法8条等に違反する違憲、 ただし、1審原告(控訴人)らは、その各夫が支給を受けている。)が、保護基準を改定する本件改定に基づき生活扶助の支給額を減額する本件各決定を受けたため、本件改定が憲法25条、法8条等に違反する違憲、違法なもので、これに基づく本件各決定も違法であるとし、また、本件各決定には理由提示の不備の違法があるとして、①1審原告(控訴人・被控訴人)ら及び1審原告(被控訴人)らが、1審被告(控訴人)らを相手に、本件各決定の取消しを求めるとともに、②1審原告(控訴人・被控訴人)ら及び1審原告(控訴人)らが、1審被告国に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として、慰謝料各1万円及びこれに対する訴状送達日の翌日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は、上記①の請求をいずれも認容し、上記②の請求をいずれも棄却したため、敗訴部分を不服とする1審原告(控訴人・被控訴人)ら及び1審原告(控訴人)ら並びに1審被告(控訴人)らが、それぞれ控訴した。なお、1審原告(被控訴人)らは、原審において、①に加えて、1審被告国に対する国家賠償請求を求めていたが、その棄却判決に対して不服申立てをしていない。 2 関係法令の定め関係法令の定めは、原判決「事実及び理由」第2の1のとおりであるから、これを引用する。 3 前提事実(以下、証拠番号は、特記しない限り枝番を含む。)前提事実は、原判決「事実及び理由」第2の2のとおりであるから、これを引用する。 4 本件改定に至る判断過程当審において1審被告らが説明する本件改定に関する厚生労働大臣の判断過程の要旨は、別紙3「1審被告らが説明する本件改定に関する厚生労働大臣の判断過程」のとおりである。 5 主な争点⑴ 本件改 いて1審被告らが説明する本件改定に関する厚生労働大臣の判断過程の要旨は、別紙3「1審被告らが説明する本件改定に関する厚生労働大臣の判断過程」のとおりである。 5 主な争点⑴ 本件改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるかア判断枠組みイゆがみ調整に係る判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるか(ア) 生活扶助基準と第1・十分位の消費支出との比較をゆがみ調整の基礎としたことについて(イ) 比較対象のサンプル世帯から生活保護受給世帯を除外しなかったことについて(ウ) 回帰分析による消費支出額の推計をゆがみ調整の基礎としたことについてウデフレ調整に係る判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるか(ア) デフレ調整をすることとした判断についてa 物価を考慮して保護基準を改定したことについてb ゆがみ調整と併せてデフレ調整をしたことについてc 専門家(基準部会)による検証等を経ずにデフレ調整をしたことについてd 平成20年以降の物価下落率によりデフレ調整をしたことについてe デフレ調整の幅を一律としたことについて(イ) 生活扶助相当CPIの算定方法についてa 社会保障生計調査ではなく家計調査の統計に基づいてウエイトを算出したことについてb 家計調査の第1・十分位又は第1・五分位の世帯のデータではなく全世帯のデータに基づいてウエイトを算出したことについてc 家計調査の統計から生活扶助による支出が想定されない品目を除外してウエイトを算出したことについて d 物価変動率を算定するために平成22年基準のウエイトを用いたことについてエ激変緩和措置(2分の1処理)に係る判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるかオ本件改 て d 物価変動率を算定するために平成22年基準のウエイトを用いたことについてエ激変緩和措置(2分の1処理)に係る判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるかオ本件改定後の保護基準が健康で文化的な生活水準を維持するのに十分ではないか、また、被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点から見て裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるかカ動機の不正(不当性)により裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるか⑵ 本件各決定が行政手続法14条1項本文の規定する理由の提示を欠くものか⑶ 国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権が成立するか 6 主な争点に関する当事者の主張主な争点に関する当事者の主張は、次の7のとおり当審における当事者の主張の要旨を加えるほかは、原判決「事実及び理由」第2の4のとおりであるから、これを引用する。 7 当審における当事者の主張の要旨当審における1審原告X12 を除く1審原告らの主張の要旨は、別紙4「当審における1審原告X12 を除く1審原告らの主張の要旨」のとおりであり、当審における1審被告らの主張の要旨は、別紙5「当審における1審被告らの主張の要旨」のとおりである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、1審原告らの請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は、以下のとおりである。 2 認定事実次のとおり原判決を補正するほかは、原判決「事実及び理由」第3の1のとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正)⑴ 原判決69頁9行目の末尾に、行を改め、次のとおり加える。 「⑻ 本件各決定の通知1審被告(控訴人)らの各処分行政庁は、前記前提事実⑷のとおり本件各決定をした。本件各決定の通知書には、保護変更は基準改定を理 改め、次のとおり加える。 「⑻ 本件各決定の通知1審被告(控訴人)らの各処分行政庁は、前記前提事実⑷のとおり本件各決定をした。本件各決定の通知書には、保護変更は基準改定を理由とすることが記載されている。(乙B1、2、4、5、7~11、14、26、27、39~43、45、46、48~51、弁論の全趣旨)」⑵ 原判決69頁10行目の「⑻」を「⑼」に改める。 3 争点⑴(本件改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるか)について⑴ 判断枠組みア憲法25条と生活保護法の関係憲法25条は、全ての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言する。しかし、かかる抽象的な概念を具体化する立法をするためには、国の財政事情を無視することができず、多方面にわたる高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであるから、具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量に委ねられているといえる。そして、個々の国民に対しては、同条の趣旨を実現するために制定された生活保護法が具体的な権利を賦与している。(以上について、朝日訴訟最高裁判決及び堀木訴訟最高裁判決参照)憲法25条に規定する理念に基づき制定された生活保護法は、国が、生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とし(1条)、同法により保障される最低限度の生活は、健 康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならないとする(3条)。また、要保護者に対して開始される保護(7条)は、厚生労働大臣が定める基準により測定した要保護者の需要を基として 康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならないとする(3条)。また、要保護者に対して開始される保護(7条)は、厚生労働大臣が定める基準により測定した要保護者の需要を基として行われるものとして(8条1項)、厚生労働大臣に具体的な保護基準を定める権限が付与されている。 イ厚生労働大臣の裁量権等(ア) ゆがみ調整についてa 生活保護法上、厚生労働大臣による保護基準の決定を規律する規定としては8条2項に定めがあり、同項によれば、保護基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、且つ、これをこえないものでなければならない。 b 同項の規定により、厚生労働大臣は、保護基準を決定するに当たって、要保護者の年齢、性別等の類型ごとに事情を考慮し、最低限度の生活の需要を満たすに十分で、かつ、これを超えないものであることが求められるが、一方では憲法14条により要保護者は生活保護法の下で実質的に平等な取扱いを受ける権利を有しているから、保護基準は、要保護者の年齢、性別等の類型ごとの事情に考慮しつつ、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域等によって実質的な不平等が生じることがないように定めることが法的に要請されていると解される。そうすると、仮に、一般国民における世帯構成別の需要の比率と対比して、現行の保護基準が単身者の世帯に比して多人数の世帯に不利に定められているのであれば、これを是正することは同項の規定に沿うところであるということができる。もっとも、これらの規定にいう最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生 活の状況等との相 ということができる。もっとも、これらの規定にいう最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生 活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである(堀木訴訟最高裁判決参照)。したがって、ゆがみ調整のように、年齢階級別、世帯人員別及び級地別の各基準額の水準の較差が、同一区分別での消費実態の水準の較差とかい離しているとされたことを踏まえ、上記かい離を解消するために保護基準を改定する(生活保護の実務でいう「展開」の改定に該当する場合)に際し、かかるかい離が存在するといえるか否か及び当該改定後の保護基準が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かを判断するに当たっては、厚生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである。 c また、前記かい離が認められ、したがってゆがみ調整の必要性が認められる場合であっても、生活扶助基準の改定は、生活扶助費が現行の水準で支給されることを前提として生活設計を立てていた被保護者に関しては、生活扶助基準によって具体化されていたその期待的利益の喪失を来す側面があることも否定し得ないところである。そうすると、前記のような場合においても、厚生労働大臣は、前記かい離によって不利な扱いを受けている者との公平を図る必要性や国の財政事情といった見地に基づく改定の必要性を踏まえつつ、被保護者のこのような期待的利益についても可及的に配慮するため、ゆがみ調整の具体的な方法等について、激変緩和措置の要否等を含め、上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量 必要性を踏まえつつ、被保護者のこのような期待的利益についても可及的に配慮するため、ゆがみ調整の具体的な方法等について、激変緩和措置の要否等を含め、上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているというべきである。 d そして、ゆがみ調整の前提となる前記かい離の有無やその程度、かい離があるとした場合の解消の要否や程度については、前記b及びc のような専門技術的な考察に基づいた政策的判断であって、上記のうち、かい離の有無やその程度については、専門家で構成された基準部会による平成25年報告書が提出されたところである。これらの経緯等に鑑みると、ゆがみ調整を内容とする保護基準の改定は、①年齢階級別、世帯人員別及び級地別の各基準額の水準の較差が、同一区分別での一般国民の消費実態の水準の較差とかい離が認められるため是正の必要があり、ゆがみ調整実施後の生活扶助基準の内容が対象となる被保護者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであるとした厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、あるいは、②ゆがみ調整に際し激変緩和等の措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に、生活保護法3条、8条2項の規定に違反し、違法となるものというべきである。 (イ) デフレ調整についてa 前記(ア)のとおり、生活保護法8条2項の規定により、保護基準は、要保護者の年齢、性別等の類型ごとの事情に考慮しつつ、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域等に イ) デフレ調整についてa 前記(ア)のとおり、生活保護法8条2項の規定により、保護基準は、要保護者の年齢、性別等の類型ごとの事情に考慮しつつ、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域等によって実質的な不平等が生じることがないように定めることが法的に要請されていると解される一方で、厚生労働大臣が、デフレ調整のように、生活保護法の適用を受けていない一般国民の生活水準との相対的な関係を考慮して、同法8条2項が挙げる諸事情を検討する前提として標準世帯における保護基準を改定する場合(生活保護の実務でいう「水準」の改定に該当する場合)については、「最低限度の生活の需要を満たすに十分なもの」 との抽象的な要件が存するのみである。そして、前記(ア)のとおり、同項等にいう最低限度の生活を保護基準において具体化するに当たっては、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする。したがって、デフレ調整に際し、改定の必要性及び程度並びに当該改定後の保護基準が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かを判断するに当たっては、上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの広い裁量が厚生労働大臣に認められるというべきである。 b また、前記aで述べた改定の必要性が認められる場合であっても、生活扶助基準の改定は、期待的利益の喪失を来す側面があることは、ゆがみ調整の場合と同様である。そうすると、デフレ調整の必要が認められる場合においても、厚生労働大臣は、当該改定の必要性や国の財政事情等を踏まえつつ、被保護者のこのような期待的利益についても可及的に配慮するため、デフレ調整の具体的な方法等について、激変緩和措置の要否等を含め、上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているというべきである。 c そして 利益についても可及的に配慮するため、デフレ調整の具体的な方法等について、激変緩和措置の要否等を含め、上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているというべきである。 c そして、デフレ調整の前提となる物価の下落や一般国民の生活水準の悪化の有無やその程度については、前記a及びbのような専門技術的な考察に基づいた政策的判断であって、生活保護法は抽象的な要件を定めるのみで厚生労働大臣に権限を付与していることに加えて、デフレ調整について専門家による検証がなされてきた経緯等は存在しない。これらの事情に鑑みると、デフレ調整を内容とする保護基準の改定は、①物価の下落や一般国民の生活水準の悪化等から保護基準の改定が必要であり、デフレ調整実施後の生活扶助基準の内容が対象となる被保護者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであるとした厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の 過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、あるいは、②デフレ調整に際し激変緩和等の措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に、生活保護法3条、8条2項の規定に違反し、違法となるものというべきである。 (ウ) ゆがみ調整及びデフレ調整の判断の過程に関する司法審査保護基準の改定の前提となる最低限度の生活の需要に係る評価が前記のような専門技術的な考察に基づいた政策的判断であることや、ゆがみ調整については平成25年検証において基準部会の検証がなされた経緯等に鑑みると、厚生労働大臣の上記(ア)dの①の裁量 に係る評価が前記のような専門技術的な考察に基づいた政策的判断であることや、ゆがみ調整については平成25年検証において基準部会の検証がなされた経緯等に鑑みると、厚生労働大臣の上記(ア)dの①の裁量判断の適否に係る裁判所の審理においては、主として保護基準の改定に至る判断の過程及び手続に過誤、欠落があるか否か等の観点から、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところがないかについて審査されるべきものと解される。 また、厚生労働大臣の上記(イ)cの①の裁量判断の適否に係る裁判所の審理においては、主として保護基準の改定に至る判断の過程及び手続に過誤、欠落があるか否か等の観点から、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところがないかについて審査されるべきものと解される。(以上について、老齢加算訴訟最高裁判決参照)ウ基準部会の位置付け本件改定については、前記イ(ウ)で述べた専門的知見との整合性に欠けるところがないかを審査するに当たって、特に2分の1処理やデフレ調整については基準部会の検証がなされていないことから、これをどのように 扱うべきかが問題となる。 そこで検討するに、保護基準の改定に関する厚生労働大臣の判断は、前述のとおり専門技術的な考察に基づくものであり、専門家によって構成される生活扶助基準に関する検討会や基準部会等による検証は、その合理性を担保するための手段として重要な役割を果たしてきたと考えられる。 しかし、基準部会は、生活扶助基準について、学識経験による専門的かつ客観的な検証を行うため、社会保障審議会の下に常設部会として設置されたものであり(乙A7)、生活保護法は、厚生労働大臣が保護基準を改定するために基準部会その他の外部専門家による検証を要件とし 的かつ客観的な検証を行うため、社会保障審議会の下に常設部会として設置されたものであり(乙A7)、生活保護法は、厚生労働大臣が保護基準を改定するために基準部会その他の外部専門家による検証を要件としているわけではないから、厚生労働大臣の判断の合理性ひいては適法性を審査する上で、あくまで厚生労働大臣による判断の合理性を担保する手段と解するのが相当である。 したがって、厚生労働大臣による保護基準の改定に先立って基準部会による検証が行われていない場合であっても、その他の手段により判断の合理性が証明された場合には、当該判断は適法と評価することが可能であり、確立した専門的知見との矛盾が認められる場合に、専門的知見との整合性に欠くところがあると評価すべきと解される。 エ制度後退禁止原則等(ア) 1審原告らは、生存権に関する施策を実施した後に廃止又は削減することは、憲法25条及びこれを具体化した生活保護法1条、3条、8条及び56条の立法趣旨から導かれる制度後退禁止原則に反すると主張する。 しかし、前記のとおり、憲法25条1項は、個々の国民に具体的な権利を賦与するものではなく、「最低限度の生活」に係る具体的な権利は、憲法の規定の趣旨を実現するために制定された生活保護法によって賦与されると解される。そして、同項にいう「健康で文化的な最低限度の生 活」は、極めて抽象的・相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、同条の規定の趣旨を現実の立法として具体化するに当たっては、国の財政事情等を無視することができないから、憲法25条1項及び2項も、一旦立法により上記最低限度の生活に係る権利が具体化された場合で に、同条の規定の趣旨を現実の立法として具体化するに当たっては、国の財政事情等を無視することができないから、憲法25条1項及び2項も、一旦立法により上記最低限度の生活に係る権利が具体化された場合であっても、上記の諸事情やこれに対する評価の変更に伴い、当該具体的な権利の内容が権利者に不利益に変更される場合があることも、当然に予定されているというべきである。したがって、同条が制度後退禁止原則を定めたものと解することはできない。1審原告らの主張は採用できない。 また、生活保護法は、8条2項において、保護基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすのに十分なものであって、且つ、これをこえないものでなければならないとしており、保護基準が上記の諸要素を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものを超えるに至った場合には、これが引き下げられる場合があることを予定しているというべきであって、同法が1審原告らの主張する制度後退禁止原則を定めたものと解することはできない。 (イ) 次に、1審原告らは、社会権規約は、9条、11条において締約国がすべての者について社会保障の権利を認めることを定めているところ、同規約2条1項の規定から、同規約の締約国の採った措置によって権利の実現がそれ以前よりも後退してはならないという権利後退禁止原則が導かれると主張する。 そこで検討すると、社会権規約は、9条において、締約国は、社会保険その他の社会保障についてのすべての者の権利を認める旨規定し、1 1条1項において、①締約国は、自己及びその家族のための相当な食糧、衣類及び住居を内容とする相当な生活水準についての並びに生活条件の不断の改善についてのすべての者の権利を認める、② 、1 1条1項において、①締約国は、自己及びその家族のための相当な食糧、衣類及び住居を内容とする相当な生活水準についての並びに生活条件の不断の改善についてのすべての者の権利を認める、②締約国は、この権利の実現を確保するために適当な措置をとり、このためには、自由な合意に基づく国際協力が極めて重要であることを認める旨を規定しているが、他方、2条1項において、各締約国は、立法措置その他のすべての適当な方法により同規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成するため、自国における利用可能な手段を最大限に用いることにより、個々に又は国際的な援助及び協力、特に、経済上及び技術上の援助及び協力を通じて、行動をとることを約束する旨を規定している。以上のような社会権規約における各規定の内容に照らせば、同規約2条1項は、同規約11条1項を始めとする各規定が定める権利が各締結国の社会政策による保護に値するものであることを確認し、各締結国がその実現に向けて積極的に社会政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明するものであると解するのが相当であり、同規約2条1項が、1審原告らが主張するような権利後退禁止原則を定めたものと解することはできない。 以上によれば、社会権規約が1 審原告らのいう権利後退禁止原則を定めていると解することはできないから、同規約が保護基準の設定及び改定に係る厚生労働大臣の裁量を制約するものであるということはできない。 ⑵ ゆがみ調整に係る判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるかア生活扶助基準と第1・十分位の消費支出との比較をゆがみ調整の基礎としたことについて1審原告らは、水準均衡方式の比較対象は「一般国民生活における消費水準」であり、第1・十分位の世帯では、社会的必需品が普及しておら 出との比較をゆがみ調整の基礎としたことについて1審原告らは、水準均衡方式の比較対象は「一般国民生活における消費水準」であり、第1・十分位の世帯では、社会的必需品が普及しておら ず、その大部分が経済協力開発機構(OECD)の基準では相対的貧困層にあることなどからすると、第1・十分位の世帯の消費水準(生活扶助相当支出額)との比較に基づいてゆがみ調整をすべきではなかった旨主張する。 しかし、平成25年報告書(乙A7)では、①過去の検証に倣って生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが現実的であると判断したこと、②第1・十分位の平均消費水準は、中位所得階層の約6割に達していること、③国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べておおむね遜色なく充足されている状況にあること、④全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向ではあるものの、特に第1・十分位のみが減少しているわけではないこと、⑤第1・十分位に属する世帯の大部分はOECDの基準では相対的貧困層以下にあること、⑥分散分析等の統計的手法による検証からは、第1・十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化しており、ほかの十分位の世帯に比べて消費の動向が大きく異なるものと考えられることを理由に、比較対象として第1・十分位の世帯を用いている。そして、上記の各理由については、いずれも相応の根拠に基づき専門家である基準部会の委員が確認した上で検証を実施しているのであり、上記の判断に不合理な点は認められない。 したがって、第1・十分位の世帯を用いて一般低所得世帯の消費実態を把握した平成25年報告書に 部会の委員が確認した上で検証を実施しているのであり、上記の判断に不合理な点は認められない。 したがって、第1・十分位の世帯を用いて一般低所得世帯の消費実態を把握した平成25年報告書に基づいてゆがみ調整を行った点において厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえない。1審原告らの上記主張は、採用できない。 イ比較対象のサンプル世帯から生活保護受給世帯を除外しなかったことに ついて1審原告らは、生活保護受給世帯と対比したサンプル世帯から生活保護受給世帯を除外していないことは、確立した専門的知見である統計学上の原則に反し、手続の適正も著しく欠いている旨主張する。 しかし、平成25年検証は、生活扶助基準額に一般低所得世帯の消費実態が適切に反映されているかを検証するため、平成21年全国消費実態調査の第1・十分位のデータを使用し、その消費実態の年齢階級、世帯人員、級地別の指数と、それらの各世帯が実際に当時の基準により生活保護を受給するとした場合の生活扶助基準額の年齢階級、世帯人員、級地別の指数を比較したものである(乙A7)。指数化した上で「第1・十分位世帯の消費支出」と比較している対象は、同じ「第1・十分位世帯」が法及び告示で定められた当時の基準により受給するとした場合の「生活扶助基準額」であって、実際の生活保護受給世帯の消費支出額を比較対象としたものではない。したがって、平成25年検証においてサンプル世帯から生活保護受給世帯を除去しなかったことに関する厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえない。1審原告らの上記主張は前提を欠いており、理由がない。 ウ回帰分析による消費支出額の推計をゆがみ調整の基礎としたことについて(ア) 1審原告らの主張1審原 に過誤、欠落があるとはいえない。1審原告らの上記主張は前提を欠いており、理由がない。 ウ回帰分析による消費支出額の推計をゆがみ調整の基礎としたことについて(ア) 1審原告らの主張1審原告らは、平成25年検証においてなされた回帰分析について、①決定係数が0.3程度であり、このような低い決定係数の回帰モデルに基づく推計値(予測値)に基づいてゆがみ調整を行うことには合理性がない、②回帰係数のt検定の結果(乙A7〔13頁〕)を重回帰分析に全く反映させておらず、統計学的に問題があるなどと主張し、上藤一郎教授の意見書(甲A248)等を提出する。 (イ) 決定係数(上記①)について確かに、平成25年検証においては、全国消費実態調査には10代以下の単身世帯のデータがほとんどなく、平成19年検証の考え方(年代別に消費をみる。甲A13の1〔7頁等〕。)を適用しても10代以下の者の消費を計測できないため(乙A7〔12頁〕)、回帰分析を用いて算出された指数のうち、年齢階級別(第1類費)の指数(乙A7〔8頁の4つの表のうち左上の表の指数〕)が基準額に反映されたことが認められる(乙A7〔11頁以下〕、弁論の全趣旨)。そして、上記①について、決定係数が0.3前後であることは、回帰分析により極めて良好な推計ができたことを意味するわけではない(乙A86参照)。 しかし、決定係数が0.3程度では推計として不十分であるとする確立した専門的知見があると認めるに足りる証拠はない。そして、証拠(乙A87)によれば、決定係数のみを基準としてモデルがうまく推計できたか否かを判断するのは必ずしも適当ではないとされている上に、クロス・セクションデータの分析では0.3くらいしか得られない場合も多いとされている。加えて、専門家により構成されている基準部会が できたか否かを判断するのは必ずしも適当ではないとされている上に、クロス・セクションデータの分析では0.3くらいしか得られない場合も多いとされている。加えて、専門家により構成されている基準部会が平成25年検証に採用していることを考慮すれば、上記意見書を踏まえても、決定係数が0.3前後である推計を採用したことから、厚生労働大臣の判断が直ちに統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠いているとはいえない。 そうすると、一部の指数を回帰分析により消費支出額の推計をして算出した平成25年検証をゆがみ調整の基礎としたことについて、厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。 (ウ) t検定(上記②)について次に、上記②について、確かに、平成25年検証における回帰分析に おいては、一部の説明変数につき10%の有意水準でも帰無仮説を棄却できなかったものがあると認められる(乙A7〔13、16、18、21頁〕)。 しかし、帰無仮説を棄却できなかった説明変数を除かずに回帰モデルの推定を採用することが致命的な欠陥であるとする確立した専門的知見があると認めるに足りる証拠はない。そして、t検定において帰無仮説を棄却できなかったことは、帰無仮説が「真」であることを意味するものではなく、帰無仮説と矛盾しないという意味にとどまり(乙A80、88)、その説明変数が除去されなければ、その回帰分析が統計的に誤っているということにはならない。なお、前記説示のとおり、回帰式による推計を実際に指数の算出に用いたのは、データの不足から回帰式による推計を用いる必要性が生じた年齢体系(第1類費)のみである。 そうすると、回帰係数に対するt検定の結果を回帰分析に反映させていないことについて、厚生労働大臣の判断に は、データの不足から回帰式による推計を用いる必要性が生じた年齢体系(第1類費)のみである。 そうすると、回帰係数に対するt検定の結果を回帰分析に反映させていないことについて、厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。 (エ) 1審原告らのその余の主張について平成25年検証が採用した回帰分析に関する1審原告らのその余の主張も、専門家による検証である平成25年検証についてその合理性を否定するものではなく、厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。 以上によれば、ゆがみ調整に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。 ⑶ デフレ調整に係る判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるかアデフレ調整をすることとした判断について(ア) 物価を考慮して保護基準を改定したことについてa 1審被告らの説明 1審被告らは、厚生労働大臣が物価を考慮して保護基準を改定することとした理由について、①平成19年報告書において、生活扶助基準の水準は一般低所得世帯との比較において実質的に高い状態にあるとの趣旨の指摘があったこと、②平成20年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機の影響で、同年以降、賃金、物価、家計消費等がいずれも下落する経済情勢にあったにもかかわらず、このような経済動向が生活扶助基準に反映されてこなかった結果、デフレ傾向によって生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加しており、生活保護受給世帯と一般国民との間の均衡はより一層崩れる状態となったこと、③平成25年検証では、生活扶助基準の展開のための指数についての評価・検討が行われたものの、生活扶助基準の水準についての評価・検討は行われなかったこと、④ 間の均衡はより一層崩れる状態となったこと、③平成25年検証では、生活扶助基準の展開のための指数についての評価・検討が行われたものの、生活扶助基準の水準についての評価・検討は行われなかったこと、④リーマンショック後の賃金、物価、家計消費等が下落している状況下では、例えば、収入の不安定さを勘案して消費を減らすことなどが考えられ、消費を基礎として生活扶助基準を改定する場合には減額幅が必要以上に大きくなることが想定される状況にあり、現に、平成16年から平成21年にかけて、夫婦子1人世帯を含む二人以上世帯の消費支出は約6.0パーセント下落するなどしていた(乙A119)こと、⑤従前の水準均衡方式においても、消費が唯一で絶対的な基準であると考えられていたものではなく、専門委員会による平成15年中間取りまとめにおいては、改定の指標として消費を用いることについての課題や改定の指標の在り方について検討する必要性が示されており、改定の指標として物価を用いることも選択肢の一つとして指摘されていたこと及び⑥平成24年6月の自由民主党、公明党及び民主党の三党の合意に基づき国会に提出され、平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法附則2条1項により、生活扶助基準の適正化を早急に行うことが明 記されていたことなどを踏まえて、平成20年以降のデフレによる生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)により生じた同世帯と一般国民との間の不均衡を是正するため、平成20年から平成23年までの間の生活扶助による支出が想定され得る品目の物価変動率を算定して、当該数値に基づき生活扶助基準の「水準」を減額改定することによって、その適正化を図ったものであると説明する。 上記説明に照らせば、厚生労働大臣が、平成20年以降 され得る品目の物価変動率を算定して、当該数値に基づき生活扶助基準の「水準」を減額改定することによって、その適正化を図ったものであると説明する。 上記説明に照らせば、厚生労働大臣が、平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加に着目し、これについて物価を指標として生活扶助基準を反映させるデフレ調整を行うこととした判断は、一応合理的なものということができる。 b 平成25年検証(上記③)についてこれに対し、1審原告らは、上記③(平成25年検証)について、基準部会(当時)の部会長代理である岩田正美教授の名古屋地裁における証言(甲A259の1)を引用するなどして、基準部会による平成25年検証は、体系の検証と水準の検証を一体的に行うことで水準均衡方式を徹底して行ったものと評価し得るものであり、全国消費実態調査に基づく生活扶助基準の水準に係る検証を行ったものであると主張する。 しかし、平成25年報告書の内容は前記引用に係る原判決「事実及び理由」第3の1⑷のとおりであり、前記⑵イにおいて説示したとおり、平成25年検証で行われたのは、第1・十分位のサンプル世帯全てが当時の基準により生活保護を受けたと仮定した場合の生活扶助基準額と、同じ集団の実際の生活扶助相当支出額を、平均を不変とした上で、それぞれを年齢階級別・世帯人員別・級地別に指数化して比較することにより、生活扶助基準の展開が一般低所得世帯の消費実態を 適切に反映しているかを確認するという作業であって、生活保護受給世帯に支払われている生活扶助費と一般低所得世帯の消費支出の水準を比較して生活扶助基準の絶対的な水準が適切であるかを検証しているわけではない(乙A7)。 また、1審原告らが引用する名古屋地裁における岩田正美教授の証言の該当箇所(甲A259の1 消費支出の水準を比較して生活扶助基準の絶対的な水準が適切であるかを検証しているわけではない(乙A7)。 また、1審原告らが引用する名古屋地裁における岩田正美教授の証言の該当箇所(甲A259の1〔21頁〕)は、基準部会が平成25年検証において何を目指していたか(この点については当事者間に争いがない。)について述べたものであって、実際に提出された平成25年報告書(乙A7)の内容を説明したものではないから、平成25年検証において生活扶助基準の水準についての検証は行なわれていないとする上記認定を覆すものではない。 したがって、上記③に関する1審原告らの主張は、採用できない。 c 消費支出の下落(上記④)について1審原告らは、上記④(消費支出の下落)について、本件改定に当たって被告が説明する内容の検討が行われた事実はなく、後付けの理由にすぎないし、被保護世帯の4分の3を占める単身世帯のデータで見れば異なる結果となる可能性も高く、証拠(甲A428、429)を引用して、平成20年から平成23年までの単身世帯の第1・五分位や年間収入階級200万円未満のデータでは消費支出がむしろ増えていると主張する。 確かに、1審原告らが引用する上記証拠によれば、消費支出に関する統計が全て支出額の低下を指しているわけではないことが認められる。また、本件改定に当たって厚生労働大臣がリーマンショック後の消費支出に関して具体的にいかなる統計に基づいて事実を認定したかを示す証拠はない。 しかし、平成20年頃から平成23年頃にかけての時期は、世界的 な金融危機が我が国の実体経済に深刻な影響を及ぼし、物価が下落していただけでなく、日本経済がマイナス成長に陥り、失業率・賃金・家計消費支出等も全体として急速に悪化していたことは動かしがたい事実であり、当該事 が我が国の実体経済に深刻な影響を及ぼし、物価が下落していただけでなく、日本経済がマイナス成長に陥り、失業率・賃金・家計消費支出等も全体として急速に悪化していたことは動かしがたい事実であり、当該事実は広く認識されていたと認められる(以上について、乙A12、98〔10、11頁〕、108、119、120、公知の事実)。 したがって、厚生労働大臣が、本件改定に係る判断の前提として、生活保護法の適用を受けていない一般国民の生活水準が急速に悪化しているとの認識を有していたことは容易に理解できるし、かかる厚生労働大臣の事実認定に過誤があるとはいえない。そして、一般勤労者の世帯において賃金が下落し、失業率が上昇している一方、減額改定がなされていなかった生活保護受給世帯においては収入が変わらないため、上記の認識を前提に、生活保護受給世帯においては、相対的かつ実質的にみて物価の下落分だけ可処分所得が増加しているとの判断に至った過程には一定の合理性が認められる。 また、上記の経済情勢に鑑みれば、毎年行われていた消費支出を基礎とした生活扶助基準の見直しにおいて社会経済情勢等を考慮して据え置くこととしたことを踏まえ、経済の急激な変動に対応して、物価の下落分すなわち実質的な可処分所得の増加分を保護基準に反映させることした判断には、一定の合理性が認められ、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところがあるとはいえないから、判断の過程及び手続における過誤、欠落等があるとはいえない。 なお、世界的な金融危機が我が国の実体経済(経済成長率、一般国民の消費支出等)に与えた影響の深刻さを厚生労働大臣が把握し得るまでには時間差があるため、毎年の保護基準見直しにおいて据置きが 決定されたからといって、数年に1回の専門家による検 、一般国民の消費支出等)に与えた影響の深刻さを厚生労働大臣が把握し得るまでには時間差があるため、毎年の保護基準見直しにおいて据置きが 決定されたからといって、数年に1回の専門家による検証(本件改定にあっては平成25年検証)に併せて行われた本件改定の機会に上記影響を再評価し、将来に向けた保護基準の変更に反映させることが許されないわけではない。 d 従前の基準との整合性(上記⑤)について1審原告らは、物価を指標とすることは、昭和58年意見具申以来採用されている水準均衡方式の本質と矛盾し、平成16年報告書の趣旨と一致せず、平成25年報告書でも議論されておらず、専門的知見と整合性が認められない旨主張する。 しかし、平成15年中間取りまとめにおいて、改定の指標の在り方についても検討が必要とされ、消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることも考えられると指摘されるなど(乙A14〔2頁〕)、従前から消費を改定の指標とすることが唯一絶対的な方法として考えられてきたとはいえない。平成25年報告書においても、厚生労働省において、生活扶助基準の見直しを検討する際に、他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合があり得ることが指摘されており(乙A7〔8頁〕)、物価変動を考慮することを除外していない。したがって、物価変動を考慮することが上記専門的知見との整合性を欠くということはできず、1審原告らの上記主張は採用できない。 (イ) ゆがみ調整と併せてデフレ調整をしたことについてデフレ調整は生活扶助基準の水準(高さ)の設定を改定するものであり、ゆがみ調整は所定の水準を前提に、当該水準の展開を改定するためのものであるから、各見直しに重複するところはない。前記のとおり、平成25年検証では、第1・十分位のサン さ)の設定を改定するものであり、ゆがみ調整は所定の水準を前提に、当該水準の展開を改定するためのものであるから、各見直しに重複するところはない。前記のとおり、平成25年検証では、第1・十分位のサンプル世帯が全て生活保護を受給するとした場合の生活扶助基準額の平均とサンプル世帯の実 際の生活扶助相当消費支出の平均を同額となるようにすることにより、生活扶助基準額と第1・十分位の生活扶助相当消費支出の金額の高低差が検証結果に反映されないよう考慮されており、ゆがみ調整により水準の見直しはされていない。したがって、ゆがみ調整と併せてデフレ調整をすることとした厚生労働大臣の判断に不合理な点はない。 (ウ) 専門家(基準部会)による検証等を経ずにデフレ調整をしたことについて前記⑴ウで述べたとおり、生活保護法その他の法令は、厚生労働大臣が保護基準を改定するために基準部会その他の外部専門家による検証等を要件としているわけではないから、外部専門家による検証等は、厚生労働大臣の判断の合理性を担保する手段と解される。そして、基準部会は、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会に置かれた常設の部会であるが(厚生労働省設置法7条、社会保障審議会令6条1項)、その設置の趣旨及び審議事項は、生活保護基準の定期的な評価・検証を行うことであり(乙A23)、デフレ調整の実施といった専門技術的知見を踏まえた政策判断の当否について、意見を聴取しその取りまとめを依頼するのが適切であるとは必ずしもいえない。他に、このような意見聴取を行うべき適切な専門家機関が存在することを認めるに足りる証拠もない。そうであれば、厚生労働大臣が、基準部会又はその他の専門家機関による検証等を経ずにデフレ調整をすると判断したことを手続の過誤ということはできない。 (エ) 存在することを認めるに足りる証拠もない。そうであれば、厚生労働大臣が、基準部会又はその他の専門家機関による検証等を経ずにデフレ調整をすると判断したことを手続の過誤ということはできない。 (エ) 平成20年以降の物価下落率によりデフレ調整をしたことについてa 1審被告らの説明1審被告らは、厚生労働大臣が平成20年を始期とする物価下落率によりデフレ調整を行った理由について、平成19年検証の結果、生活保護受給世帯の基準額が一般低所得世帯の消費実態と比較して高い とされていたにもかかわらず、平成19年検証に基づく減額改定が行われず、生活保護受給世帯の基準額の水準が一般低所得世帯の消費実態の水準より高い状況にあり、平成20年以降も生活扶助基準が据え置かれていた状況の中で、同年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機が我が国の実体経済に大きな影響を与え、デフレ傾向により生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加による一般国民との不均衡を是正する観点から、平成20年以降の物価変動を指標にデフレ調整を行うこととした旨説明するところ、前記のとおり、厚生労働大臣が、リーマンショックがあった平成20年以降一般国民の生活水準が急速に悪化しているとの認識を有していたことは容易に理解できるところであり、一般勤労者の世帯において賃金が下落し、失業率が上昇している一方、減額改定がなされていなかった生活保護受給世帯においては収入が変わらないため、物価の下落分だけ実質的な可処分所得が増加したとの判断に至った過程には一定の合理性が認められ、平成20年を始期とする物価下落率により生活扶助基準を改定するとした判断に過誤、欠落等があるとはいえない。 b これに対し、1審原告らは、平成19年報告書は、デフレ調整を行う根拠にはな 認められ、平成20年を始期とする物価下落率により生活扶助基準を改定するとした判断に過誤、欠落等があるとはいえない。 b これに対し、1審原告らは、平成19年報告書は、デフレ調整を行う根拠にはならず、平成16年の全国消費実態調査の結果に基づいたものであるから、平成19年報告書に基づくならデフレ調整の始期を平成16年とする根拠にはなり得るが、平成20年とする根拠にはなり得ない旨主張する。 しかし、平成19年報告書では、生活保護基準額が一般低所得世帯の生活扶助相当支出額より高いとされているにもかかわらず(甲A13の1)、その後も減額改定は行われていなかったのであるから(乙A16、甲A270)、厚生労働大臣において、デフレ調整の前提として、平成20年度までの生活扶助基準は、一般低所得世帯の生活扶 助相当支出額を十分充足する水準にあったと判断したことには一定の合理性が認められる。 また、全国消費実態調査が行われた平成16年を始期とする物価変動率に基づいて生活扶助基準の改定を行う政策上の選択肢があるからといって、平成20年を始期とするデフレ調整が不合理と判断されるものではない。全国消費実態調査が行われた平成16年を始期とする物価変動率に基づいて改定を行うか、リーマンショックによる急激な経済変動が始まった平成20年を始期とする物価変動率による改定を行うかは、正に厚生労働大臣の政策判断であって、上記のとおり、平成20年を始期とする物価変動率によるデフレ調整に一定の合理性が認められる以上、厚生労働大臣の上記判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用は認められない。 c 次に、1審原告らは、平成20年を始期とすることは、平成19年から平成20年にかけて物価が1パーセントを超える上昇をしていたことの影響が考慮さ 裁量権の範囲の逸脱又はその濫用は認められない。 c 次に、1審原告らは、平成20年を始期とすることは、平成19年から平成20年にかけて物価が1パーセントを超える上昇をしていたことの影響が考慮されず、生活保護法8条2項の要求する「要保護者」の最低限度の生活の「需要」の減少を正しく算定しているとはいえない旨主張する。 しかし、平成19年検証においては、夫婦子1人世帯において生活扶助基準額が生活扶助相当支出額より約1.1パーセント高く、単身高齢世帯(60歳以上)の同基準額が同支出額より約13.3パーセント高いとされており(甲A13の1〔5頁〕)、平成19年から平成20年にかけての物価上昇を考慮しても、平成20年度の生活扶助基準は一般低所得世帯の生活扶助相当支出額を十分充足する水準にあるとの理解が可能であって、平成20年を始期とするデフレ調整が、要保護者の最低限度の生活の需要を正しく測定するものではないということはできない。 d さらに、1審原告らは、デフレ調整の始期を平成20年とする根拠となる「統計等の客観的数値」や「専門的知見」は存在しない旨主張する。 しかし、前記のとおり、厚生労働大臣が平成20年を始期とするデフレ調整を行うこととしたのは、平成20年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機が我が国の実体経済に大きな影響を与え、デフレ傾向により生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加による一般国民との不均衡を是正するためであって、上記のような実体経済や生活扶助基準の水準の認識は、生活保護行政を担う厚生労働大臣の専門的知見に基づくものであり、不合理な点はない。 e 以上のとおり、平成20年を始期とすることを理由にデフレ調整の違法をいう1審原告らの主張は採用することはできず 生活保護行政を担う厚生労働大臣の専門的知見に基づくものであり、不合理な点はない。 e 以上のとおり、平成20年を始期とすることを理由にデフレ調整の違法をいう1審原告らの主張は採用することはできず、平成20年を始期とするデフレ調整を行うこととした厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用は認められない。 (オ) デフレ調整の幅を一律としたことについて1審原告らは、物価変動による消費支出への影響は生活保護法8条2項の定める「年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別」ごとに異なり、生活扶助相当CPIが下落したことをもって、上記区分別を問わず一律に要保護者の最低限度の生活の需要が減少したと判断したことは違法である旨主張する。 しかし、現行の保護基準は、標準世帯における保護の水準を定めた上、これを上記区分別に展開して実施しているところ、このように水準を設定した上で区分別に展開する方法は長年にわたって定着してきた実務であることが認められる(弁論の全趣旨)。そして、デフレ調整は上記水準を改定するものであって、上記区分別の違いは展開に係るゆがみ調整で改定しているものであるから、デフレ調整において上記区 分別の調整がなされていないからといってデフレ調整自体が不合理なものになるわけではない。厚生労働大臣は、デフレ調整において、生活扶助相当CPIの下落分だけ一律に需要が減少したなどとは判断しておらず、上記1審原告らの主張は採用できない。 イ生活扶助相当CPIの算定方法について(ア) 社会保障生計調査ではなく家計調査の統計に基づいてウエイトを算出したことについてa 1審被告らは、社会保障生計調査ではなく家計調査の統計に基づいてウエイトを算出した理由について、大要、次のように説明する。 ( 調査の統計に基づいてウエイトを算出したことについてa 1審被告らは、社会保障生計調査ではなく家計調査の統計に基づいてウエイトを算出した理由について、大要、次のように説明する。 (a) 家計調査は、総務省統計局が、国民生活における家計収支の実態を把握するために、一般国民の家計上の支出、収入、貯蓄等を調査する基幹統計の一つであり、詳細な品目別の支出額が調査の対象となっている。そして、その調査対象世帯の選定は、居住地域等による偏りを避け、国民全体の支出等が推計できるように統計上配慮されており、このように選定された約9000世帯を対象に調査票を配布してそれを回収、集計することによって行われている。家計調査の結果は、一般国民の消費等の分析に広く用いられている。統計法上の基幹統計である家計調査は、調査対象世帯の選定方法も含め、統計資料としての精度が高いだけではなく、家計上の支出(詳細な品目ごとの支出額)等の把握を目的とした調査であるから、総務省CPI又は生活扶助相当CPIの算定に用いられる各品目のウエイト(品目ごとの消費支出の割合)を把握するのに最も適したデータである(以上につき、乙A91、92)。 さらに、生活扶助基準の水準は、これまでも、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に立脚して改定が行われてきており、一般国民の消費を表す家計 調査により算出された消費者物価指数のウエイトデータを用いることは、従来の改定の考え方とも整合する。 (b) 一方、厚生労働省が実施している社会保障生計調査は、被保護世帯の生活実態を明らかにし、保護基準改定等の生活保護制度の企画運営等のために必要な基礎資料を得る目的で、被保護世帯の家計収支の状況を調査する一般統計調査である。そし いる社会保障生計調査は、被保護世帯の生活実態を明らかにし、保護基準改定等の生活保護制度の企画運営等のために必要な基礎資料を得る目的で、被保護世帯の家計収支の状況を調査する一般統計調査である。そして、その調査対象世帯の選定は、全国を10ブロックに分け、ブロックごとに都道府県、指定都市、中核市から1~3自治体を選定し、その選定された自治体から合計約1100世帯を抽出することによって行われている。 また、家計収支の状況は、被保護者の生活実態を明らかにする観点から、食料費、住居費等の支出金額、割合として集計される。(以上につき、乙A54、93)このような社会保障生計調査は、保護基準の改定等に用いられる統計資料ではあるものの、調査世帯の選定において地域等による偏りが生じる可能性があることや、サンプル数が必ずしも多くないことなどを踏まえると、生活保護受給世帯全体の家計支出の状況を推測する精度に一定の限界があることは否定できない。 その上、社会保障生計調査は、生活保護受給世帯の「生活実態」を把握する調査であって、生活保護受給世帯の詳細な支出先や支出額を把握するものではないから、調査の手法としても、個別品目の消費支出の割合等を正確かつ詳細に記載させるための措置が講じられておらず、その調査結果を分析しても、おおまかなウエイトは把握できるものの、家計調査のように詳細な品目ごとのウエイトは把握できない。 (c) 以上のとおり、厚生労働大臣は、社会保障生計調査の結果を分析したウエイトを用いて物価変動率を算出することが可能であったと しても、家計調査の統計資料としての精度や適格性、従来の改定の考え方との整合性等を総合的に勘案し、家計調査により算出された消費者物価指数のウエイトデータを用いる判断をした。 b 上記説明に係る厚生 しても、家計調査の統計資料としての精度や適格性、従来の改定の考え方との整合性等を総合的に勘案し、家計調査により算出された消費者物価指数のウエイトデータを用いる判断をした。 b 上記説明に係る厚生労働大臣の判断は、家計調査の統計としての性格を踏まえ、その精度等を考慮したもので、一応合理的なものということができる。 c これに対して、1審原告らは、家計調査が一般世帯を対象としたものであるのに対し、社会保障生計調査は、被保護世帯の家計収支の実態を明らかにするためのものであることに照らすと、生活保護受給世帯の消費構造を把握する上では、一般世帯を対象とする家計調査ではなく社会保障生計調査が適しており、社会保障生計調査によれば、物価下落率が大きい教養娯楽費が家計に占める割合(平成22年)は、一般世帯(11.5%)に比して生活保護受給世帯(単身5.6%、複数6.4%)は相当低く、特に物価下落率が大きいテレビ等を含む「PC・AV機器」費が占める割合も一般世帯(1.39%)に比して生活保護受給世帯(0.43%)は相当低いという顕著な特徴が見いだせる以上、生活保護受給世帯の消費構造を把握するデータとして家計調査を用いることに統計等の客観的数値等との合理的関連性は認められない旨主張する。 d しかし、デフレ調整は、物価変動率(貨幣価値の変化)を把握して生活扶助基準を改定しようとするものであって、生活保護受給世帯の消費構造を把握して改定するものではない。生活保護受給世帯の消費構造に則した物価変動率を把握することは、生活扶助相当CPIを算定するに当たって考慮要素となり得るものであるが、そこには当然一定の限界があり、統計数値の精度や信頼性も勘案した上で、生活保護受給世帯の消費構造を考慮するかどうか、考慮するとしてどの程度考 慮するかは、専門 要素となり得るものであるが、そこには当然一定の限界があり、統計数値の精度や信頼性も勘案した上で、生活保護受給世帯の消費構造を考慮するかどうか、考慮するとしてどの程度考 慮するかは、専門技術的知見に基づく厚生労働大臣の裁量に委ねられているというべきである。そして、社会保障生計調査は、地域等による偏りが生じる可能性があり、サンプル数からも精度に一定の限界があり、消費者物価指数の詳細な品目ごとのウエイトが把握できないことを考えれば、物価変動率を算定するに当たり、社会保障生計調査ではなく家計調査の統計に基づいてウエイトを算出した厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。 (イ) 家計調査の第1・十分位又は第1・五分位の世帯のデータではなく全世帯のデータに基づいてウエイトを算出したことについてa 1審被告らは、家計調査の第1・十分位又は第1・五分位の世帯のデータではなく全世帯のデータに基づいてウエイトを算出した理由について、家計調査の収入階層別のウエイトのデータは、いくつかの品目をまとめた「類」レベルでのウエイトのデータのみが存在し、品目別のウエイトのデータは存在しないため、家計調査の収入階層別のウエイトを用いた場合にも、消費者物価指数の詳細な品目ごとの消費の支出の割合を反映した物価指数を算出することができなくなると予想された旨説明する。 b これに対し、1審原告らは、家計調査の統計に基づいてウエイトを算出するとしても、第1・五分位の消費実態を把握できるデータは公表され、第1・十分位についても厚生労働省から取り寄せることが可能であり、平成20年から23年までの生活扶助相当CPIの変化率は、総世帯の平均ウエイトを使用した場合が4.78%であるのに対して、第1・五分位の平均ウエイトを使用した 労働省から取り寄せることが可能であり、平成20年から23年までの生活扶助相当CPIの変化率は、総世帯の平均ウエイトを使用した場合が4.78%であるのに対して、第1・五分位の平均ウエイトを使用した場合は2.81%、公表されている範囲で第1・十分位の世帯のウエイトを求めて使用した場合は2.34%となると主張する。 そして、弁論の全趣旨によれば、第1・五分位の品目別ウエイトの データは公表されており、これを使用して物価変動率を算出することは可能であったと認めることができる。 c しかし、前記のとおり、物価変動率を算定するに当たって、統計数値の精度や信頼性との関連で生活保護受給世帯の消費構造を考慮するか、考慮するとしてどの程度考慮するかは、専門技術的知見に基づく厚生労働大臣の裁量に委ねられている。そして、平成20年以降の急激な経済変動によって生じた生活保護受給世帯と一般国民との間の不均衡を是正するというデフレ調整の目的に照らして、生活保護受給世帯ではなく一般国民の消費構造を前提とするウエイトを基準として物価変動率を算定することが、確立した専門的知見に反する不合理なものと言うことはできない。そうすると、収入階層別のサンプル数等による統計数値の精度やデフレ調整の目的との整合性等を考慮して、家計調査の収入階層別のウエイトのデータを使用せず、全世帯のデータに基づいてウエイトを算出した厚生労働大臣の判断が不合理とまで言うことはできず、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用は認められない。 (ウ) 家計調査の統計から生活扶助による支出が想定されない品目を除外してウエイトを算出したことa 1審被告らは、生活扶助による支出が想定されない品目を除外し、生活扶助による支出が想定される品目を対象としてウエイトを算出する理由について、総務省CPIの指 を除外してウエイトを算出したことa 1審被告らは、生活扶助による支出が想定されない品目を除外し、生活扶助による支出が想定される品目を対象としてウエイトを算出する理由について、総務省CPIの指数品目には、家賃、教育費、医療費、自動車関係費、NHK受信料等の生活扶助による支出がおよそ想定されない品目が多数含まれており、生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加の程度を正確に把握するためには、上記のような品目を含めて算定することは相当ではないと考えられ、「生活扶助において捕捉され得るか否か」という客観的かつ明確な基準に従って選定された生活扶助相当品目を用いるという手法は、従前から行わ れており、かつ、専門家においても是認されていた旨説明する。 そして、上記説明に係る厚生労働大臣の判断は、物価変動による生活保護受給世帯の可処分所得の増加の程度を正確に把握するために合理的なものということができる。 b これに対して、1審原告らは、特定の品目を除外することにより除外されなかった品目のウエイトが相対的に上昇し、物価下落率の大きい教養娯楽費(特にテレビ等)のウエイトが家計調査以上に増幅され、全体としての物価下落率が大きくなったため、生活扶助相当CPIには、教養娯楽費(特にテレビ等)の物価の下落を大きく反映してしまう点で、要保護者の需要を正しく算定できないという重大な欠陥がある旨主張する。 しかし、テレビ等の教養娯楽費は生活扶助により捕捉され得る品目であり、このような品目を物価下落率が高いことを理由に生活扶助相当品目から除外し、又は、このような物価下落率が高い品目があることを理由に生活扶助により捕捉されない品目を生活扶助相当品目から除外することをやめるのは、正に恣意的な取扱いによる統計的処理であって合理性がなく、生活扶 又は、このような物価下落率が高い品目があることを理由に生活扶助により捕捉されない品目を生活扶助相当品目から除外することをやめるのは、正に恣意的な取扱いによる統計的処理であって合理性がなく、生活扶助による支出が想定されない品目を除外してウエイトを算出することとした厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用は認められない。 (エ) 物価変動率を算定するために平成22年基準のウエイトを用いたことa 1審被告らは、平成22年基準のウエイトを用いた理由について、国民の消費の内容は経時的に変化することから、現実の消費実態を反映した物価指数を算定するためには、物価指数の算定時点に可能な限り近接した時点の消費の構造を示すデータを用いるのが相当であると説明する。 平成20年から平成23年までの物価変動率を算定するに当たって、平成17年基準と平成22年基準のウエイトを用いることが考えられたところ、上記説明に係る厚生労働大臣の判断は、算定時点に近接した時点の消費構造を示すデータを用いることで、現実の消費実態を反映した物価指数を算定しようとするもので、それなりの合理性を認めることができる。 b これに対し、1審原告らは、平成22年は、家電エコポイント制度の開始や地デジ化により一般世帯のテレビ買い替え需要が膨らむ一方、生活保護受給世帯にはチューナーの無料配布がなされたため、一般世帯と生活保護受給世帯のテレビ等に対する支出割合のかい離が平常時以上に増幅され、平成22年基準を用いることで、生活保護受給世帯の現実の消費実態からより一層かけ離れることとなった旨主張する。 しかし、経時的な消費構造の変化はテレビに限られないのであり、テレビを含む全ての品目を平均して現実の消費実態を反映した物価指数を算定するために、算定時点に近接した時点 れることとなった旨主張する。 しかし、経時的な消費構造の変化はテレビに限られないのであり、テレビを含む全ての品目を平均して現実の消費実態を反映した物価指数を算定するために、算定時点に近接した時点の消費の構造を示すデータを用いるのが相当であるとする厚生労働大臣の判断を不合理ということはできず、上記1審原告らの主張は採用できない。 c また、1審原告らは、ラスパイレス式を用いるのが国際標準であり、我が国において統計を所管する専門官庁である総務省統計局も一貫してラスパイレス式を用いている中で、平成22年基準のウエイトを用いた結果、平成20年から平成22年にかけては下方バイアスが生じるパーシェ式と同様の計算方式を採用することとなり、生活扶助相当CPIの下落率は、総務省の消費者物価指数と比較して合理的な説明ができないほど著しく大きくなっているが、保護基準は、「最低限度の生活の需要を満たすに十分なもの」でなければならないことからすれば、保護基準を設定する場面においては、下方バイアスが生じる計 算方法を採用することは原則として許されない旨主張する。 しかし、経時的に物価の変動状況を把握するための消費者物価指数の算出方法としてラスパイレス式に統一されているとしても、個別に基準時点と比較時点の物価変動率を算出するために、ラスパイレス式以外の方法を用いることが不合理であるとする専門的知見を認めるに足りる証拠はない。厚生労働大臣が採用した、中間年のウエイトを基準として用いる算出方法は、ロウ指数として消費者物価指数マニュアル上も承認されており(甲A277、乙A67)、これを不合理ということはできない。また、平成20年から平成22年にかけてはパーシェ式と同様の下方バイアスが生じるが、バイアスが生じること自体は、ウエイト参照時点と比較時点が異 277、乙A67)、これを不合理ということはできない。また、平成20年から平成22年にかけてはパーシェ式と同様の下方バイアスが生じるが、バイアスが生じること自体は、ウエイト参照時点と比較時点が異なる以上当然のことであり、その時点の間が長ければその分バイアスも拡大するのであるから、現実の消費実態を反映した物価指数を算定するために算定時点に近接した時点のウエイトを参照するのが相当であるとする厚生労働大臣の判断を不合理とする理由にはならない。さらに、1審原告らが主張する保護基準を設定する場面においては下方バイアスが生じる計算方法を採用することは原則として許されないとする専門的知見を認めるに足りる証拠もなく、1審原告らの上記主張は採用できない。 ウ小括以上によれば、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。 ⑷ 激変緩和措置(2分の1処理)に係る判断に裁量権の逸脱又はその濫用があるかア 1審被告らは、激変緩和措置について、①平成25年検証では、特に子どもがいる世帯の減額率が高いため、貧困の世代間連鎖を防ぐなどの観点を実現しつつ、生活扶助基準の展開部分の適正化というゆがみ調整の本質 的部分を改変しないようにするため、平成25年検証の結果を反映する程度を一律2分の1とするとともに(2分の1処理)、②ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことによって大幅な減額となる世帯に配慮する観点から、ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことによる減額幅の上限を10パーセントとした上で、③その結果の反映を3年にわたる期間で段階的に実施することとした旨説明する。 上記説明に係る厚生労働大臣の判断は、急激な保護費の減額等による被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点に配慮したものとして、合 反映を3年にわたる期間で段階的に実施することとした旨説明する。 上記説明に係る厚生労働大臣の判断は、急激な保護費の減額等による被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点に配慮したものとして、合理的なものということができる。 イこれに対し、1審原告らは、2分の1処理について、①基準部会等の専門家に諮ることなく、②ゆがみ調整の趣旨を半減させ、③本来増額となる高齢世帯の増額幅を半減させる不利益を与え、④90億円余りの財政削減効果を生じさせたもので、ゆがみ調整の本質的部分に改編を加えた措置で、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものである旨主張する。 しかし、①専門家からの意見聴取等は、判断の合理性を担保するためのものであって、これがないとしても手続上の瑕疵とはいえないことは、前記で述べたとおりである。さらに、平成25年報告書には、留意事項として、貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある旨明記されており(乙A7〔9~10頁〕)、平成25年検証自体が激変緩和措置を講じることを予定していたということができる。 また、②2分の1処理は、平成25年検証の結果として明らかとなったかい離の程度に比例して一定の割合でかい離を解消するもので、生活保護受給世帯間の公平を図るため生活扶助基準の展開部分を改定するというゆがみ調整の本質的部分に沿う措置ということができる。 さらに、③増額分の2分の1処理は、結果的に改定前より支給額が増額するのであって、増額分の2分の1処理が、直ちに最低限度の生活を下回るものということはできない。 加えて、④2分の1処理による財政削減効果については、証拠上、必ずしも機序が明らかではないが、平成25年検証は、第1・十分位を対象に、生活扶助基 最低限度の生活を下回るものということはできない。 加えて、④2分の1処理による財政削減効果については、証拠上、必ずしも機序が明らかではないが、平成25年検証は、第1・十分位を対象に、生活扶助基準額及び生活扶助相当支出額を指数化することにより展開の検証を行っており、実際の年齢階級、世帯人員、級地別の生活保護受給世帯の数等を考慮しているわけではないから、水準に影響を与えずに展開の合理化を図った結果、結果的に財政削減効果(又は財政拡大効果)が生じることはあり得るところ、仮に1審原告らが主張する財政削減効果があったとしても、上記に述べた2分の1処理の合理性に照らせば、財政削減効果を理由に2分の1処理に関する厚生労働大臣の判断が不合理なものということはできない。 ウ以上によれば、2分の1処理を含む激変緩和措置に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。 ⑸ 本件改定後の保護基準が健康で文化的な生活水準を維持するのに十分ではないか、また、被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点から見て裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるかア前記のとおり、ゆがみ調整及びデフレ調整に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用は認められず、被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点から配慮した激変緩和措置が採られている。さらに、基準部会による平成29年検証では、夫婦子1人世帯の第1・十分位の生活扶助相当支出と生活扶助基準額が概ね均衡することが確認され、デフレ調整における水準が妥当であると評価されている。これらの点を考慮すれば、本件改定後の生活扶助基準が、健康で文化的な生活水準を維持するのに十分ではないということはできず、また、被保護者の期待的利益や生活 への影響等の観点から見て裁量権の範囲 の点を考慮すれば、本件改定後の生活扶助基準が、健康で文化的な生活水準を維持するのに十分ではないということはできず、また、被保護者の期待的利益や生活 への影響等の観点から見て裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということもできない。 イこれに対し、1審原告らは、平成29年検証では、夫婦子1人世帯以外の世帯類型の水準均衡は何ら確認されておらず、高齢夫婦世帯の生活扶助基準が下げられ過ぎたことを示しており、平成29年検証の終盤、高齢夫婦世帯のモデルによる検証が不合理な理由で突然放棄された旨主張する。 しかし、夫婦子1人世帯以外の世帯類型の水準均衡が確認されていないからといって、生活保護基準が下げられ過ぎているということはできない。また、高齢夫婦世帯については、消費支出の分析結果にかい離が見られ、貯蓄を年収換算する方法等に何らかの課題があることに起因するものと考えられ、高齢夫婦世帯の年収階級別の分析の評価については課題が残るとされて、比較対象とすべき所得階層を設定することができず、生活扶助基準の水準の評価に至らなかったのであり(乙A78)、生活扶助基準が下げられ過ぎたと評価できるものではない。高齢夫婦世帯についての水準の検証は上記により終了しており、不合理に放棄されたと評価できるものでもない。 ウまた、1審原告らは、平成29年検証で、多くの世帯類型において展開後の生活扶助基準額があるべき水準に満たない第3・五分位の消費水準の5割台へと落ち込んでいる旨主張する。 しかし、第3・五分位の消費水準の6割があるべき水準とする専門的知見を示す証拠はなく、上記6割を下回ることで、健康で文化的な生活水準を維持するのに十分ではないと認めることはできず、また、被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点から見て裁量権の範囲の逸脱又はその濫 示す証拠はなく、上記6割を下回ることで、健康で文化的な生活水準を維持するのに十分ではないと認めることはできず、また、被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点から見て裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認めることはできない。 エさらに、1審原告らは、本件改定に基づく本件各決定により、生活上様々な困難に陥り、多大な苦痛を感じている旨主張し、その旨供述等する (甲B2、5~9、14~16、18、20、22、23、26、28、32~34、38、41、45、50、52~57、原審及び当審1審原告ら各本人)。そして、1審原告らが生活保護により最低限度の生活の需要に応じた保護費を受給するものであり、少額の保護費の減額であっても生活に対する影響は極めて大きく、本件各決定による減額改定で、不便な生活をせざるを得ない状況に追い込まれ、親族や知人との交流を断念せざるを得ないなどの窮状に陥り、多大な苦痛を感じていることは容易に理解することができる。 しかし、上記のような生活環境の悪化による苦痛は、リーマンショック後の経済状況の悪化の中で消費及び賃金等が減少した(乙A78)国民の多くが感じた苦痛と同質のものであって、これを理由に本件改定後の保護基準が健康で文化的な生活水準を維持するのに十分なものではないと認めることはできず、また、被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点から見て裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認めることはできない。 オ他に上記を認めるに足りる証拠はなく、1審原告らの上記主張は採用できない。 ⑹ 動機の不正(不当性)により裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるといえるか1審原告らは、デフレ調整及び2分の1処理は、生活扶助費の1割削減という自由民主党の政権公約を実現する政治的意図によるもので、動機に不正(不当 より裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるといえるか1審原告らは、デフレ調整及び2分の1処理は、生活扶助費の1割削減という自由民主党の政権公約を実現する政治的意図によるもので、動機に不正(不当性)があるから、厚生労働大臣の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用が認められるべきと主張する。 確かに、平成24年12月16日の総選挙により政権与党に戻った自由民主党が、生活保護給付水準の10%引下げを選挙公約としていたこと(甲A15、212)、同年12月27日及び28日の記者会見において、当時の 田村憲久厚生労働大臣が生活扶助費の1割削減という選挙公約に一定の制約を受ける旨発言していること(甲A225~227)などから、政治的判断が本件改定の契機の一部であったことが認められる。 しかし、選挙公約や政治的判断が契機となったからといって、本件改定の動機が不正なものであることが推認されるものではない。前記のとおり、本件改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められず、本件改定の内容から本件改定の動機が不正なものということはできない。他に、これを認めるに足りる証拠はなく、1審原告らの上記主張は採用できない。 ⑺ まとめ以上によれば、本件改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえない。 4 争点⑵(本件各決定が行政手続法14条1項本文の規定する理由の提示を欠くものか)について行政手続法14条が行政処分における理由の提示を定める趣旨は、処分行政庁の判断における慎重さを担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせることで不服申立ての機会を実質的に保障するところにあると解される。 そして、本件各決定の通知書は、本件改定により変更された保護基準により機械的 恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせることで不服申立ての機会を実質的に保障するところにあると解される。 そして、本件各決定の通知書は、本件改定により変更された保護基準により機械的に定まる扶助決定額等を被保護者に通知するものであるから、処分行政庁が恣意的に裁量権を行使する余地はない。また、保護基準の改定により具体的な保護(支給額等)が変更されたことが理解できる内容であれば、これを受領した被保護者は、官報等で本件各告示を確認するなどの方法により、自らに適用される保護基準の変更すなわち本件改定について了知し、不服申立てをすることができる。1審原告(控訴人・被控訴人)ら及び1審原告(被控訴人)ら並びに1審原告(控訴人)らの夫に送付された本件各決定の通知書には、保 護変更は基準改定を理由とすることが明示されている(前記認定事実⑻)のであるから、上記の趣旨は満たされており、本件各決定について理由の提示はなされていると評価できる。 したがって、本件各決定が、行政手続法14条1項本文の規定する理由の提示を欠くものであるとはいえない。 5 争点⑶(国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権が成立するか)について上記のとおり、本件改定に違法な点はないから、本件改定に係る厚生労働大臣の判断について職務上の義務違反があるとは認められない。 したがって、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権は成立しない。 6 結論以上によれば、1審原告らの請求はいずれも理由がないから棄却すべきところ、これと一部異なる原判決はその限度で相当でないから、1審被告(控訴人)らの控訴に基づき、原判決中1審被告(控訴人)ら敗訴部分を取り消し、上記部分につき、1審原告(控訴人・被控訴人)ら及び1審原告(被控訴人)らの請求をい はその限度で相当でないから、1審被告(控訴人)らの控訴に基づき、原判決中1審被告(控訴人)ら敗訴部分を取り消し、上記部分につき、1審原告(控訴人・被控訴人)ら及び1審原告(被控訴人)らの請求をいずれも棄却し、1審原告(控訴人・被控訴人)ら及び1審原告(控訴人)らの控訴はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第1民事部 裁判長裁判官 山田明 裁判官 柴田義人 裁判官川畑公美は、転補のため、署名押印することができない。 裁判長裁判官 山田明 (別紙1)当事者目録(42頁から53頁)は、記載省略法生活保護法保護基準生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生労働省告示第158号)生活扶助基準保護基準のうち生活扶助に関する基準第1類費生活扶助基準(別表第1)の基準生活費(第1章)のうち、世帯を構成する個人ごとに算出される第1類の額第2類費生活扶助基準(別表第1)の基準生活費(第1章)のうち、世帯ごとに算出される第2類の額社会保障生計調査厚生労働省が、被保護者世帯の生活実態を明らかにすることによって、保護基準の改定等生活保護制度の企画運営のために必要な基礎資料を得ることを目的として、被保護者世帯の家計収支の状況、消費品目の種類、購入数量等について毎年実施している調査家計調査総務省が、国民生活における家計収支の実態を把握し、国の経済政策・社会政策の立案の基礎資料を提供することを目的として、毎年実施している調査ウエイト家計の消費支出額に占める個々 いる調査家計調査総務省が、国民生活における家計収支の実態を把握し、国の経済政策・社会政策の立案の基礎資料を提供することを目的として、毎年実施している調査ウエイト家計の消費支出額に占める個々の品目の支出額の構成比第1・十分位年間収入階級第1・十分位(収入の低い世帯から順番に並べ、世帯数が等しくなるよう10等分した場合における、収入の最も低い層)第1・五分位年間収入階級第1・五分位(収入の低い世帯から順番に並べ、世帯数が等しくなるよう5等分した場合における、収入の最も低い層)生活扶助相当支出(額)(生活保護を受給していない世帯における)生活扶助費による支出が想定されている品目への支出(額)昭和58年意見具申厚生省(当時)の審議会である中央社会福祉審議会が、昭和58年12月に発表した「生活扶助基準及び加算のあり方について(意見具申)」専門委員会厚生労働省の審議会である社会保障審議会(厚生労働省設置法7条1項に定める厚生労働大臣の諮問機関)が、平成15年7月、その福祉部会内に設置した生活保護制度の在り方に関する専門委員会平成16年検証平成16年の専門委員会における検証平成16年報告書平成16年12月に専門委員会が平成16年検証の結果を取りまとめた報告書生活扶助基準検討会生活扶助基準の見直しの分析・検討を行うため、平成19年に厚生労働省社会・援護局に置かれた学識経験者等による検討会平成19年検証生活扶助基準検討会における検証(別紙2)略称・定義一覧 平成19年報告書平成19年検証の結果をまとめた平成19年11月の「生活扶助基準検討会報告書」基準部会保護基準の検証等を行う機関として社会保障審議会の下に設置された学識経験者による部会平成25年検証基準部会が平成21年全国消費実態調査の個票デ 9年11月の「生活扶助基準検討会報告書」基準部会保護基準の検証等を行う機関として社会保障審議会の下に設置された学識経験者による部会平成25年検証基準部会が平成21年全国消費実態調査の個票データを用いて実施した検証平成25年報告書平成25年検証の結果をまとめた平成25年1月の「生活保護基準部会報告書」平成29年検証基準部会が平成28年5月から平成29年12月までの間に実施した検証平成25年告示平成25年厚生労働省告示第174号平成26年告示平成26年厚生労働省告示第136号平成27年告示平成27年厚生労働省告示第227号本件各告示平成25年告示、平成26年告示及び平成27年告示本件改定本件各告示による保護基準の改定本件各決定1審原告ら(ただし、1審原告(控訴人)らについてはその各夫)が、それぞれ所轄の福祉事務所長らから受けた、本件改定に基づいて生活扶助の支給額を減額する旨の保護変更決定ゆがみ調整本件改定のうち、社会保障審議会(厚生労働大臣の諮問機関)に設置された生活保護基準部会の検証結果に基づき、第1・十分位の消費実態と生活扶助基準の年齢、世帯人員、居住地域別の較差を是正した調整2分の1処理厚生労働大臣が、ゆがみ調整をするに当たり、平成25年報告書に記載された生活扶助相当支出額の指数ではなく、これと平成25年報告書に記載された生活扶助基準額の指数を合計して2で除した数値を用いて改定率を算出して実施した処理総務省CPI総務省統計局が公表している消費者物価指数生活扶助相当CPI生活扶助による支出が想定される品目を対象として本件改定のために算定された消費者物価指数デフレ調整本件改定のうち、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの下落率により生活扶助基準を調整した部分社会権規約 定される品目を対象として本件改定のために算定された消費者物価指数デフレ調整本件改定のうち、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの下落率により生活扶助基準を調整した部分社会権規約経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)朝日訴訟最高裁判決最高裁判所昭和42年5月24日大法廷判決・民集21巻5号1043頁堀木訴訟最高裁判決最高裁判所昭和57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁老齢加算東京訴訟最高裁判決最高裁判所平成24年2月28日第三小法廷判決・民集66巻3号1240頁 老齢加算福岡訴訟最高裁判決最高裁判所平成24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁老齢加算訴訟最高裁判決老齢加算東京訴訟最高裁判決及び老齢加算福岡訴訟最高裁判決呉市公立学校施設使用不許可訴訟最高裁判決最高裁判所平成18年2月7日第三小法廷判決・民集60巻2号401頁 (別紙3)1審被告らが説明する本件改定に至る厚生労働大臣の判断過程 1 ゆがみ調整が必要となった背景及び厚生労働大臣がゆがみ調整に係る判断に至る経緯⑴ ゆがみ調整が必要となった背景生活扶助基準は、標準世帯の最低生活費を生活扶助基準の「水準」(高さ)として設定し、その最低生活費を第1類費と第2類費に分解した上、年齢階級別、世帯人員別、級地別に、標準世帯との最低生活費の差を踏まえて設定された指数を適用して「展開」することによってあらゆる世帯に適用可能な基準として設定されるところ(下図参照)、その「展開のための指数」は、栄養所要量を参考として個人的経費(第1類費)の指数が設定されるなど、標準世帯との比較において、最低限度の生活に要する費用を示すものとしては必ずしも適切なものとなっていなかった。 の指数」は、栄養所要量を参考として個人的経費(第1類費)の指数が設定されるなど、標準世帯との比較において、最低限度の生活に要する費用を示すものとしては必ずしも適切なものとなっていなかった。 また、後記⑵のとおり、平成16年検証において、生活扶助基準の展開部分に関して見直しを検討する必要がある旨指摘されており、平成19年検証においても、年齢階級別、世帯人員別、級地別の展開部分について、一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていないことが指摘されていたが、平成19年検証を踏まえた改定は行われなかった。 さらに、平成23年2月に設置された基準部会において、平成21年全国消費実態調査のデータを用いて、一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態がどの程度異なるか(例えば、一般低所得世帯の「70歳~」と「20~40歳」の年齢階級間において消費実態がどの程度異なるか)について評価・検討したところ、生活扶助基準の「展開のための指数」は、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっておらず、その結果、生活保護受給世帯間の公平を欠く状態になっていることが判明した(仮に、前掲の表において、本件改定前の「20~40歳」の世帯の展開のための指数「100.0」と「70歳~」の世帯の展開のための指数「80.3」がそれらの世帯間の最低生活に要する費用(第1類費)を示すものとして適正さを欠く場合、これらの年齢階級間における公平を欠くことになる。)。 以上の経緯を踏まえ、厚生労働大臣は、生活保護受給世帯間の公平を確保するため、本件改定におけるゆがみ調整を行うことによって、基準部会の検証によって判明した一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態を生活扶助基準の「展開のための指数」に反映し、生活扶助基準 ため、本件改定におけるゆがみ調整を行うことによって、基準部会の検証によって判明した一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態を生活扶助基準の「展開のための指数」に反映し、生活扶助基準の展開部分の適正化を図ったものである。 ⑵ 厚生労働大臣がゆがみ調整に係る判断に至る経緯ア平成25年検証に至る経緯(ア) 平成16年検証平成16年検証では、生活扶助基準の展開部分に関して、「現行の生活扶助基準の設定は3人世帯を基軸としており、また、算定については、 世帯人員数分を単純に足し上げて算定される第1類費(個人消費部分)と、世帯規模の経済性、いわゆるスケールメリットを考慮し、世帯人員数に応じて設定されている第2類費(世帯共同消費部分)とを合算する仕組みとされているため、世帯人員別に見ると、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていない」との指摘がされた(乙A第5号証4頁)。厚生労働大臣は、かかる指摘を踏まえて、平成17年度以降、第1類費について4人世帯の場合に「0.95」、5人以上世帯の場合に「0.90」の各逓減率を導入し、第2類費については4人以上世帯の生活扶助基準を抑制するとの見直しを行った(乙A第8号証の3・14頁)。 また、平成16年検証では、「今後、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要がある」(乙A第5号証3頁)との指摘もされた。 (イ) 平成19年検証平成19年検証では、平成16年検証と同様に、生活扶助基準の評価・検証の方法として、「国民の消費実態を詳細に分析する必要があり、そのためには、全国消費実態調査を基本とし、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別、地域別 は、平成16年検証と同様に、生活扶助基準の評価・検証の方法として、「国民の消費実態を詳細に分析する必要があり、そのためには、全国消費実態調査を基本とし、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別、地域別などの様々な角度から詳細に分析することが適当である」(乙A第6号証3頁)との考え方が示されるとともに、「水準の妥当性」(生活扶助基準の水準と一般低所得世帯における消費実態との均衡が適切に図られているかどうか)のほか、年齢階級別、世帯人員別及び級地別の展開部分である「体系の妥当性」(第1類費と第2類費との合算によって定められている生活扶助基準額が消費実態を適切に反映しているか。具体的には、年齢階級別、世帯人員別の基準額が妥当かどうか。)、「地域差の妥当性」(現行の級地制度が級地間における生活 水準の差を反映しているかどうか)についても評価・検討が行われた(同号証2頁)。 そして、平成19年検証では、生活扶助基準の展開部分について、「生活扶助基準の体系に関する評価・検証に当たっては、世帯構成などが異なる生活保護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から行い、その上で、必要な見直しを行っていくことが必要である」(同号証5頁)との基本的な考え方が示されるとともに、一般低所得世帯と比較して、年齢階級別に見ると、20歳~39歳及び40歳~59歳では生活扶助基準額が相対的にやや低めであるのに対し、70歳以上では相対的にやや高めであるなど消費実態からかい離していること(同号証7頁)、世帯人員別に見ると、世帯人員4人以上の多人数世帯に有利であるのに対し、世帯人員が少ない世帯に不利である実態が見られること(同号証6頁)のほか、地域別に見ると、現行の級地制度における地域差を設定した当時と比較して、地域間の消費 人以上の多人数世帯に有利であるのに対し、世帯人員が少ない世帯に不利である実態が見られること(同号証6頁)のほか、地域別に見ると、現行の級地制度における地域差を設定した当時と比較して、地域間の消費水準の差が縮小していること(同号証9頁)などが明らかになった。 そのため、平成19年検証を踏まえて、年齢階級別、世帯人員別及び級地別の展開部分について見直しを行うことが考えられたものの、厚生労働大臣は、平成20年度の予算が編成された平成19年12月当時、原油価格の高騰等が消費に与える影響等の当時の社会経済情勢を見極める必要性等を勘案し、平成19年検証に基づく展開部分の見直しは見送ることとした(乙A第103号証)。 イ平成25年検証(ア) 平成25年検証の目的前記アのとおり、平成16年検証を踏まえて生活扶助基準の展開部分の見直しが行われ、平成19年検証において年齢階級別、世帯人員別、 級地別の展開部分の見直しの必要性が指摘されたが、平成19年検証の結果を踏まえた展開部分の見直しは行われなかった。そこで、平成25年検証においては、平成19年検証の「世帯構成などが異なる生活保護受給者の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から行い、その上で、必要な見直しを行っていくことが必要」であるとの指摘を踏まえ、生活保護受給世帯間の実質的な公平を図る観点から、年齢階級別、世帯人員別、級地別の「展開のための指数」について、評価・検証が行われることとなった。 (イ) 平成25年検証の方法基準部会は、平成19年検証における「生活扶助基準の評価・検証を適切に行うためには、国民の消費実態を詳細に分析する必要があり、そのためには、全国消費実態調査を基本とし、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別、地域別などの様々 証における「生活扶助基準の評価・検証を適切に行うためには、国民の消費実態を詳細に分析する必要があり、そのためには、全国消費実態調査を基本とし、収入階級別、世帯人員別、年齢階級別、地域別などの様々な角度から詳細に分析することが適当である」(乙A第6号証3頁)との指摘を踏まえ、平成21年全国消費実態調査を用いて、一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態の違いを把握し、その世帯構成による消費実態の相違によって生活扶助基準の展開部分の検証を行うこととした。具体的には、全国消費実態調査を用いて、一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態の相違を示す「一般低所得世帯の消費実態による指数」を把握し、それと「生活扶助基準額による指数」とを比較することとした。 そして、基準部会は、①平成25年検証においても、過去の検証に倣って生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが現実的であると判断されたこと、②第1・十分位の平均消費水準は、中位所得階層の約6割に達していること、③国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べておおむね遜色なく充足され ている状況にあること、④全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向ではあるものの、特に第1・十分位のみが減少しているわけではないこと、⑤第1・十分位に属する世帯の大部分はOECDの基準では相対的貧困線以下にあること、⑥分散分析等の統計的手法(乙A第89号証)による検証からは、各十分位間の中で、第1・十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化しており、ほかの十分位の世帯に比べて消費の動向が大きく異なるものと考えられること 的手法(乙A第89号証)による検証からは、各十分位間の中で、第1・十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化しており、ほかの十分位の世帯に比べて消費の動向が大きく異なるものと考えられること(乙A第7号証4及び5頁)から、生活保護受給世帯の比較対象としての一般低所得世帯として、第1・十分位の世帯を用いることとしたものである。 (ウ) 平成25年検証の結果(平成25年報告書・乙A第7号証)a 基準部会での検証の結果、以下の表(同号証8頁)のとおり、年齢階級別(左上の表)、世帯人員別(右上及び左下の表)及び級地別(右下の表)のいずれにおいても、生活扶助基準額による各指数の分布(以下の表における青線)と一般低所得世帯の消費実態による各指数の分布(以下の表における赤線)との間にかい離が認められた。 b また、平成25年報告書においては、前記aの検証結果に関する留意事項として、「今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を考慮しつつも、同時に検証方法について一定の限界があることに留意する必要がある」、「今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯、とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある」とされた(乙A第7号証9及び10頁)。 ウ本件改定におけるゆがみ調整の実施以上の経緯を踏まえて、厚生労働大臣は、基準部会による平成25年検証の結果に基づき、生活保護受給世帯間の公平を図るため、本件改定におけるゆがみ調整を行うことによって、一般低所得世帯の消費実態を「展開のための指数」に反映させて、生活扶助基準の展開部分の適正化を図ることにしたものである(ただし、後記のとおり、平成25 本件改定におけるゆがみ調整を行うことによって、一般低所得世帯の消費実態を「展開のための指数」に反映させて、生活扶助基準の展開部分の適正化を図ることにしたものである(ただし、後記のとおり、平成25年検証を反映する程度を2分の1とするなどの措置を講じた。)。 なお、平成25年検証においては、「仮に第1・十分位の全ての世帯が生活保護を受給した場合の1世帯当たりの平均受給額が不変となるようにして、年齢、世帯人員体系及び級地の基準額の水準への影響を評価する方法」が用いられ(乙A第7号証3頁)、ゆがみ調整においては、このような検証により算出された年齢階級別、世帯人員別及び級地別の各区分ごとの指数によって算出した改定率(展開のための指数の改定率)を、本件改定前の年齢階級別、世帯人員別、級地別の各第1類費及び第2類費の額に直接乗じるという改定手法が用いられた。すなわち、ゆがみ調整は、このような改定手法により、平成25年検証において平均受給額が不変となるようにして算出された指数を基準額に反映させ、その結果として、これら 第1類費及び第2類費を積み上げることによって算出される各世帯(標準世帯を含む。)の生活扶助費が変更されることになる。そのため、毎年度の改定において採用されていた消費を基礎とする水準均衡方式のように、標準世帯の生活扶助基準額に改定率を乗じた上で生活扶助基準全体の水準(高さ)として設定し、当該標準世帯の基準額を基軸としてこれを他の世帯類型に展開させるという改定手法は、そもそも用いられていない。 2 デフレ調整が必要となった背景及び厚生労働大臣がデフレ調整に係る判断に至る経緯⑴ デフレ調整が必要となった背景生活扶助基準の水準は、平成19年検証によって一般低所得世帯の消費実態と比較して高いという結果が得られており、生活保 生労働大臣がデフレ調整に係る判断に至る経緯⑴ デフレ調整が必要となった背景生活扶助基準の水準は、平成19年検証によって一般低所得世帯の消費実態と比較して高いという結果が得られており、生活保護受給世帯と一般国民との均衡が崩れた状態(生活扶助基準の水準が実質的に高い状態)にあった。 その後、平成20年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機の影響で、同年以降、賃金、物価、家計消費等がいずれも下落する経済情勢にあったにもかかわらず、このような経済動向(生活扶助基準の水準の減額改定を根拠づける事情)が生活扶助基準に反映されてこなかった結果、デフレ傾向によって生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加した(生活扶助基準の水準が実質的に引き上げられた)と評価することができる状態にあり、生活保護受給世帯と一般国民との間の均衡はより一層崩れる状態となった。 このように、平成25年検証の時点では、生活扶助基準の水準を引き下げて不均衡を是正すべき状況にあった中、平成25年検証では、生活扶助基準の「展開のための指数」についての評価・検討が行われたものの、生活扶助基準の「水準」についての評価・検討は行われなかった。そして、上記のような経済状況において、特に、「百年に一度」とも評される世界金融危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼすとともに、国民の将来不安が高まっている状 況にあった。消費の動向は、物価のほか、賃金の動向やこれらを踏まえた主観的な要素を含む将来の予測等の様々な要素にも影響されるものであるが、リーマンショック後の賃金、物価、家計消費等が下落している状況下では、例えば、収入の不安定さを勘案して消費を減らすことなどが考えられ、消費を基礎として生活扶助基準を改定する場合には減額幅が必要以上に大きくなることが想定される状況に 計消費等が下落している状況下では、例えば、収入の不安定さを勘案して消費を減らすことなどが考えられ、消費を基礎として生活扶助基準を改定する場合には減額幅が必要以上に大きくなることが想定される状況にあり、現に、平成16年から平成21年にかけて、夫婦子1人世帯を含む二人以上世帯の消費支出は約6.0パーセント下落するなどしていた(乙A第119号証)。その上、専門委員会による平成15年中間取りまとめにおいては、改定の指標として消費を用いることについての課題や改定の指標の在り方について検討する必要性が示されており、改定の指標として物価を用いることも選択肢の一つとして指摘されていたところでもあった。 以上の経緯を踏まえ、厚生労働大臣は、平成20年以降のデフレによる生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)により生じた同世帯と一般国民との間の不均衡を是正するため、平成20年から平成23年までの間の生活扶助による支出が想定され得る品目の物価変動率(マイナス4.78パーセント)を算定して、当該数値に基づき生活扶助基準の「水準」を減額改定することによって、その適正化を図ったものである。 ⑵ 生活扶助基準の「水準」に係る改定が必要となった背景ア昭和58年意見具申を踏まえた水準均衡方式の採用(ア) 昭和58年意見具申前保護基準の設定及び改定については、厚生労働大臣の広範な裁量権に委ねられており、法令上、改定の方法には特段の定めはない。厚生労働大臣は、毎年度の生活扶助基準の改定に当たり、その方法を個別的に検討するのではなく、一定の改定の方式を採用して改定の指標としてきた。 すなわち、厚生労働大臣は、従前、生活扶助基準の改定の方式として、その時々の社会情勢等も踏まえ、生活保護において保障 討するのではなく、一定の改定の方式を採用して改定の指標としてきた。 すなわち、厚生労働大臣は、従前、生活扶助基準の改定の方式として、その時々の社会情勢等も踏まえ、生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般的な国民生活の状況等との相関関係において捉えられるべきものであるという考え方に立脚し、一般国民の生活水準との均衡を図るなどの観点から、①マーケットバスケット方式(最低生活を営むために必要な飲食物費や衣類、家具什器、入浴料といった個々の品目を一つ一つ積み上げて最低生活費を算出する方式)、②エンゲル方式(栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満たし得る食品を理論的に積み上げて計算し、別に低所得世帯の実態調査から、この飲食物費を支出している世帯のエンゲル係数の理論値を求め、これから逆算して総生活費を算出する方式)、③格差縮小方式(一般国民の消費水準の伸び率以上に生活扶助基準を引き上げ、結果的に一般国民と被保護世帯との消費水準の格差を縮小させようとする方式)を順次採用してきた(乙A第8号証の2・10頁)。 (イ) 昭和58年意見具申後a 厚生労働大臣は、昭和58年意見具申を踏まえ、昭和59年度以降は、その当時の生活扶助基準が一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当であったとの評価を前提に、一般国民の生活水準との均衡を図る観点から、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費実態との調整を図る水準均衡方式を採用しており、これに基づき毎年度の改定を行ってきた(乙A第8号証の2・10頁)。 具体的には、生活扶助基準は、年度ごとに、予算編成時(12月頃)に翌年度のものが設定されるところ、水準均衡方式による改定についても、X年度の予算編成時((X-1)年12月頃)において、X年度の民 具体的には、生活扶助基準は、年度ごとに、予算編成時(12月頃)に翌年度のものが設定されるところ、水準均衡方式による改定についても、X年度の予算編成時((X-1)年12月頃)において、X年度の民間最終消費支出の伸び(X年度の消費動向の予測値及び(X- 1)年度の消費動向の実績値)を考慮して改定率を算出することによって行われてきた(改定率は、乙A第11号証参照)。 b このように、消費を基礎とする水準均衡方式は、従前の生活扶助基準の改定方式と同様に、生活保護において保障すべき最低生活の水準は一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に立脚し、一般国民の生活水準との均衡を図る観点から採用されたものであって、昭和59年度以降、毎年度の改定に当たっては、一般国民の消費の動向(民間最終消費支出の伸びの予測値及び実績値)を改定の指標としてきたところである。 もっとも、一般国民の生活水準との均衡を見る際に基礎とすべき指標としては、消費のほかに賃金や物価も考えられるところであり、前記のとおり、格差縮小方式が採用される前に採用されていたマーケットバスケット方式やエンゲル方式においては、消費そのものが改定の指標とされていたわけではない。そのため、消費を基礎として改定した結果、賃金や物価等の指標も併せて考慮して見ると一般国民の生活水準とかけ離れてしまうという事態も想定し得るものであり、そのような場合にまで消費以外の指標を用いないとしていたものではなかった。例えば、消費を基礎とする水準均衡方式においても、消費は下落しているものの賃金や物価は上昇しているような経済状況においては、消費を一応の指標としつつも、消費以外の指標を考慮して生活扶助基準を改定することもあり得たところであり、消費が唯一で絶対的な基準で しているものの賃金や物価は上昇しているような経済状況においては、消費を一応の指標としつつも、消費以外の指標を考慮して生活扶助基準を改定することもあり得たところであり、消費が唯一で絶対的な基準であると考えられていたものではない。 実際に、厚生労働大臣は、水準均衡方式による改定においても、一般国民の消費の動向(民間最終消費支出の伸びの予測値及び実績値)のみをもって改定率を算定するわけではなく、消費の動向以外の要素も含めた経済動向や社会情勢等を総合的に勘案して生活扶助基準の水 準を改定してきた。そのため、一般国民の消費の動向を指標としつつも、当該年度の社会経済情勢等を勘案し、当該年度の消費の動向が生活扶助基準の水準に反映されない場合もあることから、民間最終消費支出の伸び(予測値及び実績値)と生活扶助基準の改定率とは、必ずしも一致するものではない(乙A第76号証2頁)。 イ専門委員会の中間取りまとめにおいて、一般国民の消費の動向を改定の指標とすることの課題等が指摘されていたこと(平成16年検証)(ア) 平成16年検証前水準均衡方式が採用された昭和59年以降の我が国の社会経済情勢は、昭和61年12月から始まった平成景気(いわゆるバブル景気)が平成2年10月頃に終えんし、その後遺症から、複合不況といわれる長期間の景気低迷期からなかなか脱却できず、賃金、物価及び家計消費がいずれも継続的に下落するデフレ状況にあった(乙A第12号証18、24及び25頁参照)。 このような社会経済情勢の中で、平成12年5月の社会福祉事業法等一部改正法案に対する衆議院及び参議院の附帯決議により、生活保護制度の在り方について十分検討を行うこととされ(乙A第13号証の2・2枚目)、平成15年6月の社会保障審議会意見及び財政制度等審議会建議におい 法案に対する衆議院及び参議院の附帯決議により、生活保護制度の在り方について十分検討を行うこととされ(乙A第13号証の2・2枚目)、平成15年6月の社会保障審議会意見及び財政制度等審議会建議においても、同様に、生活保護制度の在り方の検討の必要性が指摘された(同号証の2・2及び3枚目)。また、同月27日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」において、「生活保護においても、物価、賃金動向、社会経済情勢の変化、年金制度改革などとの関係を踏まえ、老齢加算等の扶助基準など制度、運営の両面にわたる見直しが必要である」とされた(同号証の2・2枚目)。 こうした中、厚生労働大臣は、水準均衡方式に基づき、一般国民の消費の動向(民間最終消費支出の伸び)を踏まえながらも、その時々の社 会経済情勢等を総合的に勘案の上、生活扶助基準について、昭和59年度から平成12年度までは増額改定(ただし、平成2年度以降は改定率を暫時縮小)をし、平成13年度及び平成14年度は据え置き、平成15年度及び平成16年度は減額改定をしてきた(乙A第10号証)。 (イ) 平成15年中間取りまとめ(乙A第14号証)平成15年に厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会の福祉部会の下に設置された専門委員会は、同年12月の中間取りまとめにおいて、「生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連においてとらえられるべき相対的なものであり、具体的には、年間収入階級第1/10分位の世帯の消費水準に着目することが適当である」とされ、「第1/10分位の勤労者3人世帯の消費水準について詳細に分析して3人世帯(勤労)の生活扶助基準額と比較した結果」について、「第1/10分位の消費水準と生活扶助基準額とを比較すると、後者が高い」と指摘 1/10分位の勤労者3人世帯の消費水準について詳細に分析して3人世帯(勤労)の生活扶助基準額と比較した結果」について、「第1/10分位の消費水準と生活扶助基準額とを比較すると、後者が高い」と指摘していた(乙A第14号証1頁)。 また、昭和59年度以降の改定において、一貫して、一般国民の消費の動向(民間最終消費支出の伸びの予測値及び実績値)を指標としてきたが、この点について、専門委員会は、「最近の経済情勢はこの方式を採用した当時と異なることから、例えば5年間に一度の頻度で、生活扶助基準の水準について定期的に検証を行うことが必要である。」、「近年、民間最終消費支出の伸びの見通しがプラス、実績がマイナスとなるなど安定しておらず、また、実績の確定も遅いため、これによる被保護世帯への影響が懸念されることから、改定の指標の在り方についても検討が必要である。」として、改定の指標として消費を用いることについての課題や改定の指標の在り方について検討する必要性を示していた(同号証2頁)。 さらに、専門委員会は、「この場合、国民にとってわかりやすいもの とすることが必要なので、例えば、年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられる。」と、水準均衡方式における改定の指標として物価を用いることについても選択肢の一つとして指摘されていた(同号証2頁)。 (ウ) 平成16年報告書(乙A第5号証)その後、専門委員会は、平成16年12月、平成16年報告書(乙A第5号証)を取りまとめた。同報告書は、生活扶助基準の水準について、一般低所得世帯(第1・十分位)の勤労3人世帯(夫婦子1人)の消費支出と生活扶助基準とを比較した結果、「勤労3人世帯の生活扶助基準について、低所得世帯の消費支出額との比較において検 の水準について、一般低所得世帯(第1・十分位)の勤労3人世帯(夫婦子1人)の消費支出と生活扶助基準とを比較した結果、「勤労3人世帯の生活扶助基準について、低所得世帯の消費支出額との比較において検証・評価した結果、その水準は基本的に妥当であった」(同号証3頁)との結論を示した。 そこで、厚生労働大臣は、平成16年検証の結果も踏まえた上で、平成17年度の生活扶助基準を据え置き、その後の平成18年度及び平成19年度の生活扶助基準の各改定においても、当該年度の民間最終消費支出の伸び率を基礎とし、前年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果、その水準を据え置いてきた(乙A第100~102号証)。 ウ平成19年報告書において生活扶助基準額が高い旨の指摘がされていたが、その後も減額改定が行われなかったこと(平成19年検証)(ア) 平成19年検証a 平成15年中間取りまとめによる前記イ(イ)の指摘を受け、生活扶助基準は、その後、専門機関において、約5年に一度の頻度で検証が行われてきた。そこでは、生活扶助基準の水準だけでなく、展開部分も含めた生活扶助基準全体の妥当性等が検証される。そして、厚生労働大臣は、水準均衡方式による毎年度の改定とは別に、専門機関による検証の結果を踏まえた生活扶助基準の改定の要否及びその内容を検 討してきた。 具体的には、まず、生活扶助基準の見直しの分析・検討を行うため、平成19年に、厚生労働省社会・援護局に「生活扶助基準に関する検討会」(生活扶助基準検討会)が置かれ、同検討会において同年11月、「生活扶助基準に関する検討会報告書」(平成19年報告書・乙A第6号証)が取りまとめられた。 b 平成19年報告書においては、平成16年全国消費実態調査のデータに基づいて、水準、体系、地域差の各妥当性を 扶助基準に関する検討会報告書」(平成19年報告書・乙A第6号証)が取りまとめられた。 b 平成19年報告書においては、平成16年全国消費実態調査のデータに基づいて、水準、体系、地域差の各妥当性を検討し(乙A第6号証2頁)、夫婦子1人世帯及び単身高齢世帯(60歳以上)の生活扶助基準額が各世帯の第1・十分位における生活扶助相当支出額よりも高めとなっている(夫婦子1人世帯の基準額が15万0408円、生活扶助相当支出額が14万8781円であり、基準額が約1.1パーセント高い。また、単身高齢世帯(60歳以上)の基準額が7万1209円、生活扶助相当支出額が6万2831円であり、基準額が約13.3パーセント高い。)との結論が得られた(同号証5頁)。 (イ) 平成20年度以降の生活扶助基準の据置きa 平成19年検証の結果を踏まえると、平成20年度の生活扶助基準については、一般低所得世帯の消費実態との均衡を図るため、減額改定を行うことも十分考えられる状況にあった。 しかし、厚生労働大臣は、平成20年度の予算が編成された平成19年12月当時、原油価格の高騰等が消費に与える影響等の社会経済情勢を見極める必要性等を考慮し、生活扶助基準について、減額改定を行わずにこれを据え置くこととし、平成20年度の消費等の動向を基礎とした改定を行わなかった(乙A第103号証)。 なお、生活扶助基準額は、平成17年度から平成24年度に至るまでの間、改定率100パーセントの改定、すなわち前年度の基準額を 据え置く改定がされているが(乙A第11号証)、この据置きには、当該年度の消費や物価等の動向を基礎とした上で据え置くもの、つまり「各年度の政府経済見通しにおける民間最終消費支出の伸び率を基礎とし、前年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果、据え置 、当該年度の消費や物価等の動向を基礎とした上で据え置くもの、つまり「各年度の政府経済見通しにおける民間最終消費支出の伸び率を基礎とし、前年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果、据え置く」(乙A第100~102号証参照)ものと、消費や物価等の動向を基礎とせず据え置くもの(乙A第103~107号証参照)がある。前者(平成17年度~平成19年度)における「据置き」とは、当該年度の消費や物価等の経済動向を生活扶助基準の水準に反映する趣旨であるのに対し、後者(平成20年度~平成24年度)における「据置き」とは、当該年度の経済動向を生活扶助基準に反映しなかったという趣旨である。 b また、厚生労働大臣は、平成21年度の予算が編成された平成20年12月当時、同年2月以降の生活関連物資を中心とした物価上昇が国民の家計へ大きな影響を与えていたことに加え、同年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼし、国民の将来不安が高まっている状況にあったことを踏まえて、平成21年度の生活扶助基準についても、消費等の動向を基礎とした改定を行わず、これを据え置いた(乙A第104号証)。 c そして、厚生労働大臣は、平成22年度の生活扶助基準についても、完全失業率が高水準で推移するなど、現下の厳しい経済・雇用状況を踏まえ、国民生活の安心が確保されるべき状況にあることに鑑み、消費等の動向を基礎とした改定を行わずに据え置くこととした。同様に、厚生労働大臣は、平成23年度及び平成24年度の生活扶助基準についても、その時々の経済、雇用情勢等を総合的に勘案した上で、消費等の動向を基礎とした改定を行わず、据え置くこととした(以上につき、乙A第105~107号証)。 エ平成19年検証後の社会経済情勢等(ア) こ 情勢等を総合的に勘案した上で、消費等の動向を基礎とした改定を行わず、据え置くこととした(以上につき、乙A第105~107号証)。 エ平成19年検証後の社会経済情勢等(ア) この間、平成20年9月のリーマンショックに端を発した「百年に一度」とも評される世界金融危機は、我が国の消費等の実体経済に大きな影響を与えていた(乙A第108号証の1及び2)。 以下の表は、平成20年から平成23年までの完全失業率(乙A第12号証8頁)、一般勤労世帯の賃金(事業者規模5人以上の調査産業計の1人平均月間現金給与総額。同号証18頁)、消費者物価上昇率(同号証24頁)及び全国勤労者世帯家計収支のうちの家計消費支出の推移(同号証25頁)における前年度比の割合をまとめたものである。 完全失業率一般勤労世帯の賃金消費者物価上昇率家計消費支出の推移平成20年 4.0%-0.3%1.4%0.5%平成21年 5.1%-3.9%-1.4%-1.8%平成22年 5.0%0.5%-0.7%-0.2%平成23年 4.6%-0.2%-0.3%-3.0% この表のとおり、完全失業率は平成21年から急激に悪化し、一般勤労世帯の賃金は、平成21年に3.9パーセントの減少となり、平成22年には微増したものの、平成23年には再び減少に転じている。消費者物価上昇率は平成21年から平成23年まで3年連続で対前年比がマイナスとなり、家計消費支出も平成21年から平成23年まで名目値で3年連続の減少となるなど、賃金、物価、家計消費等がいずれも大きく下落する状況となった。 このような社会経済情勢を背景として、生活保護受給者数は急激に増加し、平成23年7月には過去最高の205万人となり、その後も なるなど、賃金、物価、家計消費等がいずれも大きく下落する状況となった。 このような社会経済情勢を背景として、生活保護受給者数は急激に増加し、平成23年7月には過去最高の205万人となり、その後も引き続き増加していった(乙A第7号証1頁)。 また、平成21年全国消費実態調査においては平成16年全国消費実態調査に比べ、夫婦子1人世帯を含む二人以上世帯における消費支出が約6.0パーセント下落していた(その後、平成21年全国消費実態調査における夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額は約13万1500円であり(乙A第120号証)、平成16年から平成21年にかけて、夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額、すなわち消費が約11.6パーセント下落していたことが判明している*1。)。そして、上記の経済動向を踏まえるならば、平成21年以降の消費支出額が増加することは考えにくい状況にあった。 (イ) 以上のような状況を受け、平成24年6月に自由民主党、公明党及び民主党の三党で確認書が合意され、それに基づき、三党の提案で国会に提出され、平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法(平成24年法律第64号)附則2条1号には、政府は、「生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化、保護を受けている世帯に属する者の就労の促進その他の必要な見直しを早急に行うこと」と明記された(乙A第7号証2頁)。 オ平成25年検証において生活扶助基準の「水準」の検証が行われなかったことこの間、平成23年2月には、保護基準について専門的かつ客観的に評価、検証することを目的として、社会保障審議会令6条1項、社会保障審 *1 平成16年全国消費実態調査に 的に評価、検証することを目的として、社会保障審議会令6条1項、社会保障審 *1 平成16年全国消費実態調査における夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額は約14万8781円であったのに対し(乙A第8号証5頁)、平成21年全国消費実態調査における夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額は約13万1500円であり(乙A第120号証)、以下の計算式のとおり、平成16年から平成21年にかけて約11.6パーセント下落していた。 計算式:(131,500-148,781)/148,781=-0.1161(≒△11.6%) 議会運営規則2条に基づき、社会保障審議会の下に常設部会として基準部会(生活保護基準部会)が新たに設置された(乙A第23号証)。そして、基準部会は、平成25年1月、「社会保障審議会生活保護基準部会報告書」(平成25年報告書・乙A第7号証)を取りまとめた(平成25年検証)。 平成25年報告書は、生活扶助基準について、平成21年の全国消費実態調査のデータに基づき、年齢階級別、世帯人員別、級地別に基準額と一般低所得世帯の消費実態のかい離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数を評価・検証したものであり(同号証2頁)、厚生労働大臣は、平成25年検証の結果を踏まえて、生活扶助基準の展開部分の適正化を図るべくゆがみ調整を行った。 他方、基準部会においては、平成25年報告書において取りまとめられているとおり、生活扶助基準の「展開」部分の検証が行われたものの、「水準」(高さ)の検証は行われなかった。 ⑶ 厚生労働大臣がデフレ調整に係る判断に至る経緯アデフレ調整の実施を判断した理由前記のとおり、平成16年 準の「展開」部分の検証が行われたものの、「水準」(高さ)の検証は行われなかった。 ⑶ 厚生労働大臣がデフレ調整に係る判断に至る経緯アデフレ調整の実施を判断した理由前記のとおり、平成16年全国消費実態調査に基づく平成19年検証の結果、一般低所得世帯の消費実態と比較して高いとされながら、生活扶助基準について減額改定が行われなかったことによって、平成20年当時、生活扶助基準の水準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が崩れ、生活扶助基準の水準が一般低所得世帯の消費実態に比較して高くなっていた。このような状況の中、同年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機によって、賃金、物価、家計消費等が落ち込み、一般国民の消費水準等が下落する一方、生活扶助基準については、その間の経済動向を踏まえた減額改定が行われずに据え置かれてきた結果、生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加した(平成20年以降の据置きによって、生活扶助基準の水準が実質的に引き上げられた)と評価することができる状 況にあり、生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との不均衡は、より一層顕著となっていた。そして、平成24年6月の自由民主党、公明党及び民主党の三党の合意に基づき国会に提出され、平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法附則2条1項により、生活扶助基準の適正化を早急に行うことが明記されていた。 このように、本件改定前における生活扶助基準の水準は、一般国民の生活水準との均衡が大きく崩れた状態(生活扶助基準の水準が高い状態)となっており、その後、上記のような経済状況において、特に、「百年に一度」とも評される世界金融危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼすとともに、国民の将来不安が高まっている状況にあったが、平成21年全国消費実態調査に基づく平成2 のような経済状況において、特に、「百年に一度」とも評される世界金融危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼすとともに、国民の将来不安が高まっている状況にあったが、平成21年全国消費実態調査に基づく平成25年検証では展開部分に関する評価・検証が行われる一方、生活扶助基準の水準が妥当か否かの評価・検証は行われなかった。 ここで、消費の動向は、物価のほか、賃金の動向やこれらを踏まえた主観的な要素を含む将来の予測等の様々な要素にも影響されるものであるが、リーマンショック後の賃金、物価、家計消費等が下落している状況下では、例えば、収入の不安定さを勘案して消費を減らすことなどが考えられ、消費を基礎として生活扶助基準を改定する場合には減額幅が必要以上に大きくなることが想定される状況にあり、現に、全国消費実態調査によれば、平成16年から平成21年にかけて、夫婦子1人世帯を含む二人以上世帯の消費支出が約6.0パーセント下落するなどしていた(乙A第119号証)。 そもそも水準均衡方式が採用された昭和58年当時は、我が国の経済が右肩上がりに成長を続けていた時期であり、一般国民の消費支出の増加に伴い、生活扶助基準も増額改定がされることが見込まれる状況であったところ、その後、社会経済情勢が大きく変化し、専門委員会による平成15年中間取りまとめにおいては、「昭和59年度以降、(中略)毎年度の政 府経済見通しの民間消費支出の伸びを基礎とする改定方式がとられて(中略)きたが、最近の経済情勢はこの方式を採用した当時と異なる」との指摘もされていた(乙A第14号証2頁)。 水準均衡方式は、消費を基礎としているものの、同方式の考え方の下においては、消費支出のほかに、物価や賃金等の経済指標を基礎として生活扶助基準を改定することも十分考えられるといえるのであって、上記の 水準均衡方式は、消費を基礎としているものの、同方式の考え方の下においては、消費支出のほかに、物価や賃金等の経済指標を基礎として生活扶助基準を改定することも十分考えられるといえるのであって、上記の中間取りまとめにおいても、「最近の経済情勢」を踏まえた場合に、改定の指標として消費を用いることについての課題や改定の指標の在り方について検討する必要性が示されており、改定の指標として物価を用いることも選択肢の一つとして指摘されていたことなどを踏まえると、生活扶助基準の水準を調整するに当たり、デフレ傾向に伴う「生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加」に着目し、これを表す指標として物価を用いることにも合理性があるものと認められた。 以上の経緯等を踏まえ、厚生労働大臣は、平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)により生じた生活保護受給世帯と一般国民との間の不均衡の是正を図るため、同年以降の物価変動を生活扶助基準に反映させる改定(デフレ調整)を行うこととした。 イ生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(物価変動)を指標とした改定を行うこととした理由前記アのとおり、厚生労働大臣がデフレ調整を行うに当たって物価変動率を基に改定を行うこととしたのは、デフレ調整が平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加に着目し、これを生活扶助基準に反映させることを目的としていたからである。ふえんすると、生活扶助基準は、生活保護受給世帯における収入額(可処分所得)、すなわち購買力として捉えることができるところ、収入額(可処分所得)が変 化せずに物価が変動する場合には購買力が変動することになることから、物価は生活保護受給世帯における購買力ひいては実質的な わち購買力として捉えることができるところ、収入額(可処分所得)が変 化せずに物価が変動する場合には購買力が変動することになることから、物価は生活保護受給世帯における購買力ひいては実質的な可処分所得の変化を測定する指標となり得るといえる。 ここで、厚生労働大臣が生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(物価変動)を指標とした改定を行うこととした理由を改めて整理すると、次のとおりである。 (ア) 本件改定に際し、従前の水準均衡方式による改定を行わなかった経緯等a 基準部会において、消費(平成21年全国消費実態調査)に基づく生活扶助基準の水準に係る検証が行われなかったこと基準部会は、平成25年検証において、消費(平成21年全国消費実態調査)に基づき、生活扶助基準の水準の検証と一体的な展開部分(体系及び級地)の検証を行うことを検討していたが、結果的に、生活扶助基準の展開部分(体系及び級地)に関する評価・検証のみが行われ、生活扶助基準の水準の評価・検証は行われなかった。 すなわち、平成24年10月5日開催の第10回基準部会では、水準の検証と一体的な体系及び級地の検証を行うことが議論され、これを踏まえて、同年11月9日の第11回基準部会では、かかる検証の方法として、「ある特定の世帯類型を考えて現行の基準額の水準について検証する場合、まずは当該世帯類型(第1十分位)が現行の生活扶助基準額で受給した場合の平均基準額を求めることとなる。しかし、仮に体系及び級地の検証の結果、基準額の体系や級地間較差が低所得世帯の消費の実態と合っていなかったとすれば、その世帯類型が受給した場合の平均基準額の水準には、基準額の体系や級地間較差が低所得世帯の消費の実態と合っていないことの影響が含まれている。」として、「ある特定の世帯類型の っていなかったとすれば、その世帯類型が受給した場合の平均基準額の水準には、基準額の体系や級地間較差が低所得世帯の消費の実態と合っていないことの影響が含まれている。」として、「ある特定の世帯類型の基準額の水準を考える際に、①現行の 基準額の年齢体系が消費の実態に合っていないことの影響、②現行の基準額の人員数体系が消費の実態に合っていないことの影響、③現行の基準額の級地間較差が消費の実態に合っていないことの影響をそれぞれ定量的に評価することが必要になる。」と整理された(乙A第41号証2頁)。つまり、世帯類型別の生活扶助基準の水準の検証に際しては、まず、㋐現行の基準額の年齢別、世帯人員別、級地別の体系が消費の実態に合っているか否かを定量的に評価した上で、㋑その結果を踏まえて水準の検証を行うという検証方法が確認された。 もっとも、平成25年1月18日に公表された平成25年報告書において、結果的に、上記㋐についての検証は行われたものの、上記㋑についての検証を行うには至らなかった。平成25年報告書においても、「今回、本部会としては、年齢階級別、世帯人員別、級地別に基準額と消費実態の乖離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数について検証を行った。」(乙A第7号証2頁)と記載されているとおり、上記㋐についての検証結果を取りまとめたものとされており、上記㋑については言及がない。 以上のとおり、基準部会は、もともと平成25年検証において、消費(平成21年全国消費実態調査)に基づく生活扶助基準の「水準」についても検証を行うことを検討しており、かかる検証が行われていれば、厚生労働大臣においてその検証結果に基づいて生活扶助基準の「水準」を改定することが考えられたところであるが、結果的に、平成25年検証においては、生活扶助基準の「 ており、かかる検証が行われていれば、厚生労働大臣においてその検証結果に基づいて生活扶助基準の「水準」を改定することが考えられたところであるが、結果的に、平成25年検証においては、生活扶助基準の「水準」についての検証が行われないこととなったのである。 b 平成25年改定に当たり、消費を基礎とする改定を行った場合には減額幅が必要以上に大きくなることが想定されたこと前記aのとおり、平成25年検証においては生活扶助基準の「水準」 についての検証は行われなかったものの、殊に、平成20年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機が我が国の実体経済に大きな影響を与え、賃金、物価、家計消費等がいずれも大きく下落するなど、一般国民の生活水準が大きく低下していた状況にありながら生活扶助基準が据え置かれてきたことを踏まえるならば、一般国民の生活水準との均衡が大きく崩れていたことは明らかであるから、平成25年改定において、何らかの経済指標を用いて生活扶助基準の「水準」の調整を図る必要があることは明らかであった。 ここで、消費の動向は、物価や賃金の動向やこれらを踏まえた主観的な要素を含む将来の予測等の様々な要素にも影響されるものであるが、平成20年以降の経済状況、特に「百年に一度」とも評される世界金融危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼすとともに、国民の将来不安が高まっており、賃金、物価、家計消費等が下落している状況下では、例えば、収入の不安定さを勘案して消費を減らすことなどが考えられ、消費を基礎として生活扶助基準を改定する場合には減額幅が必要以上に大きくなることが想定された。現に、平成19年検証及び平成25年検証において用いられた全国消費実態調査のデータによれば、平成16年から平成21年にかけて、夫婦子1人世帯を含む二人以上世帯の消費 上に大きくなることが想定された。現に、平成19年検証及び平成25年検証において用いられた全国消費実態調査のデータによれば、平成16年から平成21年にかけて、夫婦子1人世帯を含む二人以上世帯の消費支出が約6.0パーセント下落するなどしていた(乙A第119号証)。 なお、その後に判明した事情ではあるが、全国消費実態調査のデータによれば、平成16年から平成21年にかけて、夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額が約11.6パーセント下落していた(前記脚注1参照)。しかも、平成19年検証において、平成16年全国消費実態調査のデータとの比較で生活扶助基準額が「やや高め」又は「高め」とされていたことを考慮すれば、消費を基礎と する改定を行った場合、デフレ調整における減額率を大きく上回っていた可能性も否定できない。 c 保護基準の改定の方式について法令上の定めはないことこのように、消費を基礎として生活扶助基準を改定する場合には減額幅が必要以上に大きくなることが想定されたところ、厚生労働大臣には、保護基準の改定について専門技術的かつ政策的な見地からの広範な裁量権が認められており、もとより改定の方式について法令上の定めはなく、具体的な改定の手法は特定の方法に限られるものではない。 そして、消費を基礎とする水準均衡方式についても、法令上定められたものではなく、厚生労働大臣が昭和58年意見具申以降採用している事実上の改定指針の一つにすぎないものである。 d デフレ調整は、消費を基礎とする水準均衡方式が用いられてきた場面と異なる場面で行われたものであったことさらに、消費を基礎とする水準均衡方式が採用された経緯やその後の社会経済情勢等について見ると、以下に述べるとおり、デフレ調整が行われた当時の社会経済情勢等は、昭和58年 で行われたものであったことさらに、消費を基礎とする水準均衡方式が採用された経緯やその後の社会経済情勢等について見ると、以下に述べるとおり、デフレ調整が行われた当時の社会経済情勢等は、昭和58年意見具申以降の消費を基礎とする水準均衡方式が用いられてきた際の社会経済情勢等とは異なっていた上、デフレ調整は、約5年に一度行われる専門機関による検証に併せて行われたものであって、毎年度行われる改定とは異なるものである。 (a) すなわち、前記のとおり、厚生労働大臣は、従前、生活扶助基準の改定の方式として、その時々の社会情勢等も踏まえ、生活保護において保障すべき最低生活の水準につき、一般的な国民生活の状況等との相関関係において捉えられるべきものであるという考え方に立脚し、一般国民の生活水準との均衡を図るなどの観点から、①マ ーケットバスケット方式、②エンゲル方式、③格差縮小方式を順次採用してきた。そして、昭和59年度以降は、その当時の生活扶助基準が一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当であったとの評価を前提に、一般国民の生活水準との均衡を図る観点から、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費実態との調整を図る水準均衡方式を採用しており、これに基づき毎年度の改定を行ってきた(乙A第8号証の2・10頁)。 このように、消費を基礎とする水準均衡方式は、生活保護において保障すべき最低生活の水準が一般的な国民生活の状況等との相関関係において捉えられるべきものであるという考え方に立脚しつつ、一般国民の生活水準との比較において妥当と評価された生活扶助基準を基に、毎年度、比較対象である一般国民の消費水準の伸び(変化)を指標として、妥当とされた生活扶助基準の水準を将来に向かって維持しようとするもの 生活水準との比較において妥当と評価された生活扶助基準を基に、毎年度、比較対象である一般国民の消費水準の伸び(変化)を指標として、妥当とされた生活扶助基準の水準を将来に向かって維持しようとするものであって、昭和59年以降、基本的には毎年度の生活扶助基準の改定において用いられてきた考え方である。 また、水準均衡方式が採用された昭和59年当時は、我が国の経済が右肩上がりに成長を続けていた時期であり、一般国民の消費支出の増加に伴い、生活扶助基準も増額改定がされることが見込まれる状況であった(実際、昭和59年から平成12年までの間、生活扶助基準の額は毎年増額されている(乙A第11号証)。)。 (b) ところが、その後、かかる社会経済情勢に変化が生じ、専門委員会による平成15年中間取りまとめは、「昭和59年度以降、(中略)毎年度の政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びを基礎とする改定方式が採られて(中略)きた」が、「最近の経済情勢はこの方式を採用した当時と異なる」と明確に指摘していた(乙A第14 号証2頁)。 また、同取りまとめは、「近年、民間最終消費支出の伸びの見通しがプラス、実績がマイナスとなるなど安定しておらず、また、実績の確定も遅いため、これによる被保護世帯への影響が懸念されることから、改定の指標の在り方についても検討が必要である。この場合、国民にとってわかりやすいものとすることが必要なので、例えば、年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられる。」として、消費者物価指数を生活扶助基準の改定の指標とする可能性に言及し、最近の経済情勢を踏まえて、消費を指標とする改定の在り方についての課題や改定の指標の在り方について検討する必要性を示していた(乙A第14号証2頁)*2。 さ 基準の改定の指標とする可能性に言及し、最近の経済情勢を踏まえて、消費を指標とする改定の在り方についての課題や改定の指標の在り方について検討する必要性を示していた(乙A第14号証2頁)*2。 さらに、平成16年全国消費実態調査に基づく平成19年検証の結果、一般低所得世帯の消費実態と比較して高いとされながら、生活扶助基準について減額改定が行われなかったことによって、平成20年当時、生活扶助基準の水準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が崩れ、生活扶助基準の水準が一般低所得世帯の消費実態に比較して高くなっていた。このような状況の中、同年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機によって、賃金、物価、家計消費等が落ち込み、一般国民の消費水準等が下落する一方、生活扶助基準については、その間の経済動向(民間最終消費支出の伸び)を踏まえた減額改定が行われずに据え置かれてきた結果、本件改定時においては、生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との不均衡 *2 本件改定後の事情ではあるが、基準部会の平成29年検証においても、結論において見送られたものの、物価も含めた経済指標の動向を生活扶助基準に反映させるかの検討が行われている(乙A第98号証10及び11頁)。 は、より一層顕著となっていた。 このように、デフレ調整は、平成20年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機によって、賃金、物価、家計消費等が落ち込むという経済状況にあり、生活扶助基準と一般国民との間の不均衡が存在しているという前提で、これを是正するために行われたものである。 (c) また、前記のとおり、専門委員会において、「例えば5年間に一回の頻度で、生活扶助水準の妥当性につい 民との間の不均衡が存在しているという前提で、これを是正するために行われたものである。 (c) また、前記のとおり、専門委員会において、「例えば5年間に一回の頻度で、生活扶助水準の妥当性について定期的に検証を行うことが必要である」と指摘されていたところ、デフレ調整は、かかる指摘を受けて約5年に一度行われる専門機関による保護基準の検証(平成25年検証)に併せて実施されたものであり、消費を基礎とする水準均衡方式のように生活扶助基準の毎年度の改定として行われたものではない。 (d) 以上のとおり、消費を基礎とする水準均衡方式は、①我が国の経済が右肩上がりに成長を続けているという社会経済情勢を背景に、②生活扶助基準が一般国民の生活水準との比較において妥当であるとの評価を前提に、妥当とされた生活扶助基準の水準を将来に向かって維持しようとするものであって、③基本的には毎年度の生活扶助基準の改定において用いられてきたものである。これに対し、デフレ調整は、①平成20年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機によって、賃金、物価、家計消費等が落ち込むという経済状況にあり、②生活扶助基準と一般国民との間の不均衡が存在しているという前提でこれを是正するために行われたものであって、③生活扶助基準の毎年度の改定として行われたものでもない。 このように、デフレ調整は、消費を基礎とする水準均衡方式が用いられてきた場面とは全く異なる場面で行われたものである(ただ し、デフレ調整も、消費を基礎とする水準均衡方式も、一般国民の生活水準との均衡を図ろうとする点では共通する。)。 (イ) 物価変動(生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加)を考慮することとした経緯等a 生活扶助の改定において、消費を改定の指標とすることが唯 うとする点では共通する。)。 (イ) 物価変動(生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加)を考慮することとした経緯等a 生活扶助の改定において、消費を改定の指標とすることが唯一で絶対的な方法として考えられてきたものではないこと前記のとおり、生活扶助基準の改定に当たっては、生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方が一貫して採られてきた。一般国民の生活水準との均衡を図るという水準均衡方式においても、均衡を評価するための指標としては、消費のほかに賃金や物価も考えられるところであって、過去にマーケットバスケット方式やエンゲル方式が採用されていたことからも明らかなとおり、消費そのものを改定の指標とすることが唯一で絶対的な方法として考えられてきたものではない。 また、一般国民の生活水準と生活扶助基準との均衡を図るとした場合に着目すべき指標としては、従前の水準均衡方式に基づく改定において指標とされていた消費のほか、物価や賃金が考えられるところ、前記のとおり、専門委員会の中間取りまとめは消費者物価指数を生活扶助基準改定の指標とする可能性に言及していた(乙A第14号証2頁)。 b 一般国民と生活保護受給世帯との間の不均衡を是正するために、その原因となった平成20年以降のデフレ傾向による生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加(物価変動)に着目した調整を行うのは直裁的かつ相当であると考えられたことここで、平成20年以降の一般国民と生活保護受給世帯との間の不 均衡が拡大した要因の一つとして、物価が下落するデフレ状況にありながら生活扶助基準が据え置かれたことにより、生活保護受 ここで、平成20年以降の一般国民と生活保護受給世帯との間の不 均衡が拡大した要因の一つとして、物価が下落するデフレ状況にありながら生活扶助基準が据え置かれたことにより、生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したと評価することができた。この点、生活扶助基準については、生活保護受給世帯における購買力(可処分所得)として捉えることができるから、貨幣の購買力を示す物価を指標として生活扶助基準の改定を行うことによって、物価変動率を算定する期間の始期(平成20年)における実質的な可処分所得を維持しつつ、その後のデフレ状況による可処分所得の相対的、実質的な増加分について調整することが可能となる。そして、上述した一般国民と生活保護受給世帯との間の不均衡を是正するために、その原因となった平成20年以降のデフレ傾向による生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加に着目した調整を行うのは直裁的かつ相当であると考えられた。 c 物価を考慮した生活扶助基準の改定が行われた実績があったことなお、生活扶助のうち各種加算については、これまでも物価の伸び率を基礎とした改定が行われてきた(乙A第77号証)。 また、生活扶助基準の毎年度の改定においても、消費税が導入された平成元年度や、消費税率が引き上げられた平成9年度には、これら消費税の導入や消費税率の引上げを踏まえた生活扶助基準の増額改定が行われている(乙A第11号証)*3。これらは、上記消費税の導入等の事情を民間最終消費支出の伸びを予測する際の考慮要素としたものであり、消費を基礎とした水準均衡方式に基づく改定とし *3 消費税が導入された平成元年度は4 慮要素としたものであり、消費を基礎とした水準均衡方式に基づく改定とし *3 消費税が導入された平成元年度は4.2パーセントの増額改定(前年は1.4パーセント、翌年が3.1パーセントの各増額改定であった。)、消費税率が引き上げられた平成9年度は2.2パーセントの増額改定(前年は0.7パーセント、翌年は0.9パーセントの各増額改定であった。)がされている。 て実施されたものであるものの、生活保護受給世帯における実質的な可処分所得を維持するために財やサービスの価格を考慮して生活扶助基準を改定したものであり、本件改定以前の生活扶助基準の改定においても財やサービスの価格(物価)の変動に着目した改定が行われていたといえる*4。 (ウ) まとめ(本件改定に当たり、消費を基礎とする水準均衡方式による改定を行わず、物価変動を考慮するデフレ調整を行った理由)以上のとおり、毎年度の生活扶助基準の改定は、従前、消費を基礎とする水準均衡方式に基づいて行われてきたところであるが、法令上定められたものではなく、厚生労働大臣が昭和58年意見具申以降採用している事実上の改定指針にすぎないものであり、保護基準の改定に係る同大臣の判断を拘束するものではないところ、水準均衡方式が採用された当時とは社会経済情勢が大きく変化しており、平成15年中間取りまとめにおいてもその旨の指摘がされていた。そして、本件改定に際し、仮に消費を基礎とする改定を行った場合、減額幅が必要以上に大きくなることが想定されたのに対し、一般国民の生活水準との均衡を図るという水準均衡方式の前提とする考え方の下においては、消費支出のほかに、物価や賃金等の経済指標を基礎として生活扶助基準を改定することも十 ることが想定されたのに対し、一般国民の生活水準との均衡を図るという水準均衡方式の前提とする考え方の下においては、消費支出のほかに、物価や賃金等の経済指標を基礎として生活扶助基準を改定することも十分考えられるといえる。 そこで、厚生労働大臣は、生活扶助基準の「水準」の改定について、 *4 さらに、消費税率が引き上げられた令和元年10月には、消費税率の引上げと同時に軽減税率が適用されることも踏まえ、生活扶助相当支出に係る平均的な価格の上昇分を算定した上で、生活扶助基準の増額改定が行われている(乙A第121号証)。すなわち、令和元年10月の消費税率の引上げ率は1.9パーセント(110%÷108%)であったが、一般世帯における生活扶助相当支出に占める軽減税率の対象品目(酒類・外食を除く飲食料品等)の支出割合(28.4パーセント)を加味して、生活扶助基準は1.4パーセント(1.9%×(100%-28.4%))を加えた改定が行われた。 それまで行われてきた消費を基礎とする水準均衡方式の考え方(一般国民の生活水準との均衡を図る観点)を堅持しつつも、平成20年以降のデフレ傾向によって生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したことにより、生活保護受給世帯と一般国民との間の不均衡が生じていることから、上述した生活保護受給世帯と一般国民との間の不均衡を是正するためには、その原因の一つである平成20年以降のデフレ傾向による生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加に着目した生活扶助基準の「水準」の見直しを行うのが直裁的かつ相当であると判断し、客観的な経済指標の一つである物価を基にして生活扶助基準の「水準」の検討、見直しを行うことと 得の相対的、実質的な増加に着目した生活扶助基準の「水準」の見直しを行うのが直裁的かつ相当であると判断し、客観的な経済指標の一つである物価を基にして生活扶助基準の「水準」の検討、見直しを行うこととしたものである。 ウ平成20年以降の生活保護受給世帯の相対的、実質的な可処分所得の増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)の程度の把握前記アのとおり、厚生労働大臣は、本件改定におけるデフレ調整を行うことによって、平成20年以降のデフレ傾向による生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加(物価動向)を生活扶助基準に反映させて、その水準の適正化を図ったものである。 具体的には、厚生労働大臣は、平成20年以降の物価の動きを把握するに当たり、総務省統計局が公表している消費者物価指数(総務省CPI)のうち生活扶助による支出が想定され得る品目のデータを用いて、平成20年から平成23年までの物価変動率(4.78パーセント)を算定し、本件改定におけるデフレ調整において、当該数値相当分を減額改定した。 以下においては、厚生労働大臣が、生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)により生じた同世帯と一般国民との間の不均衡の程度を把握するに当たり、総務省CPIのうち生活扶助による支出が想定される品目のデータを用いて物価変動率を算定することとした理由(後記(ア))、物価変動率を算定する期間 を平成20年から平成23年までとした理由(後記(イ))、家計調査により算出されたウエイトを用いた理由(後記(ウ))、平成22年基準のウエイト(消費の構造)を用いた理由(後記(エ))及び特定の品目について他の品目と異なる取扱いをすることの可否について(後記(オ))を述べ、具体的な物価変動率(4.78パー ウ))、平成22年基準のウエイト(消費の構造)を用いた理由(後記(エ))及び特定の品目について他の品目と異なる取扱いをすることの可否について(後記(オ))を述べ、具体的な物価変動率(4.78パーセント)の算定過程(後記(カ))を明らかにした上で、当該物価変動率の数値相当分が平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)により生じた同世帯と一般国民との間の不均衡を是正するのに相当なものと評価した理由(後記(キ))を述べる。 (ア) 総務省CPIのうち生活扶助による支出が想定される品目のデータを用いて物価変動率を算定することとした理由物価及びその変動率を算定するためには、指数品目を選定し、その品目の価格指数及びウエイトを把握する必要があるところ、本件改定が行われた平成25年当時、生活扶助による支出が想定される品目の価格指数及びウエイトを網羅した信頼性の高い客観的なデータとしては、総務省CPIのデータが存在した一方、そのほかに信頼性等が担保された適切なデータは見当たらなかった。 もっとも、総務省CPIの指数品目には、家賃、教育費、医療費、自動車関係費、NHK受信料等の生活扶助による支出がおよそ想定されない品目が多数含まれており*5、生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加の程度を正確に把握するためには、上記のような品目を含めて算定することは相当ではないと考えられた。 しかも、被保護者の需要の有無及び程度を判断する手法として、一般低所得者が支出する品目のうち生活扶助相当品目を用いるという手法は、 *5 家賃は住宅扶助、教育費は教育扶助、医療費は医療扶助によって、それぞれ賄われる。 目を用いるという手法は、 *5 家賃は住宅扶助、教育費は教育扶助、医療費は医療扶助によって、それぞれ賄われる。 従前から行われており、かつ、専門家においても是認されていたものである。例えば、老齢加算の廃止を提言した専門委員会は、「生活扶助相当消費支出額」に基づき被保護者の需要の有無等について検討しているところ、「生活扶助相当消費支出額」とは、一般低所得者層の消費支出全体から、生活扶助による支出がおよそ想定されない品目を除くことによって算出したものである。 そして、かかる品目の選定については、「生活扶助において捕捉され得るか否か」という客観的かつ明確な基準に従って判断されたものである。このような客観的かつ明確な基準に従って判断されたということは、取りも直さず、当該判断においては恣意的判断が入り込む余地がなかったことを意味する。このように、生活扶助相当CPIの設定における指数品目の選択は、恣意性を排除した客観的かつ明確な条件設定に基づいて行われたものであり、このような客観的かつ明確な基準に従って判断すること自体、恣意的判断が入り込む余地がないという意味において十分な合理性があると考えられた。 以上の理由から、厚生労働大臣は、総務省CPIの指数品目のうち、生活扶助による支出が想定される品目(生活扶助による支出がおよそ想定されない品目を除いた品目)の価格指数及びウエイトのデータを用いて、物価変動率を算定することとした(生活扶助相当CPI)。 (イ) 物価変動率を算定する期間を平成20年から平成23年までとした理由a 厚生労働大臣が物価変動率を算定する期間の始期を平成20年としたのは、デフレ調整の目的が、平成20年以降のデフレ傾向によ イ) 物価変動率を算定する期間を平成20年から平成23年までとした理由a 厚生労働大臣が物価変動率を算定する期間の始期を平成20年としたのは、デフレ調整の目的が、平成20年以降のデフレ傾向による生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加による同世帯と一般国民と間の不均衡を是正することにあったためである。 すなわち、前記アのとおり、平成19年検証において生活扶助基準 が一般低所得世帯の消費実態と比較して高いという見解が現に示され、生活扶助基準の水準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が崩れていたと評価できる状況にあったが、平成20年時点では上記検証に基づく減額改定が行われず、その後、同年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機が我が国の消費等の実体経済に大きな影響を与え、賃金、物価、家計消費等がいずれも大きく下落する状況に至ったところ、厚生労働大臣は、このような平成20年以降のデフレ傾向により生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加した(生活扶助基準の水準が実質的に引き上げられた)と評価することができる状況にあり、生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との不均衡はより一層顕著となっていたことから、かかる平成20年以降のデフレ傾向によって拡大した生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との不均衡を是正するためにデフレ調整を行ったものである。 なお、消費者物価指数は、平成19年から平成20年にかけて1パーセントを超える上昇をしていたが、上記のとおり、既に平成19年検証において、生活扶助基準と一般低所得世帯との不均衡(夫婦子1人世帯において約1.1パーセント、単身高齢世帯において約13パーセント)が確認されていたところであり、平成20年を始点とすることによって平成19年から平成20年にかけての 世帯との不均衡(夫婦子1人世帯において約1.1パーセント、単身高齢世帯において約13パーセント)が確認されていたところであり、平成20年を始点とすることによって平成19年から平成20年にかけての物価変動が反映されないこととなったとしても、これによってデフレ調整後の生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との均衡を図ることができなくなると評価できるものではない。 そこで、厚生労働大臣は、このようなデフレ調整の目的を踏まえて、物価変動率の算定の始期を平成20年とした。 b 一方で、厚生労働大臣は、平成25年改定当時の最新の総務省CPIのデータは平成23年のものであったため(平成24年1月27日 公表。乙A第55号証)、物価変動率の算定の終期を平成23年とした。 (ウ) 家計調査により算出されたウエイトを用いた理由(社会保障生計調査により算出されるウエイトを用いなかった理由)a 物価指数は、現実の消費実態を反映させるため、指数品目の価格指数に各品目のウエイト(消費の構造)を乗じて加重平均することで算定されるところ、総務省CPIの算定において用いられていたのが家計調査により算出されたウエイトであった。 家計調査は、総務省統計局が、国民生活における家計収支の実態を把握するために、一般国民の家計上の支出、収入、貯蓄等を調査する基幹統計の一つであり、詳細な品目別の支出額が調査の対象となっている。そして、その調査対象世帯の選定は、居住地域等による偏りを避け、国民全体の支出等が推計できるように統計上配慮されており、このように選定された約9000世帯を対象に調査票を配布してそれを回収、集計することによって行われている(以上につき、乙A第91号証)。 この家計調査の結果は、一般国民の消費等の分析に広く用いられており、 された約9000世帯を対象に調査票を配布してそれを回収、集計することによって行われている(以上につき、乙A第91号証)。 この家計調査の結果は、一般国民の消費等の分析に広く用いられており、総務省CPIはもとより、内閣府の「国民経済計算」、「景気動向指数」、経済産業省の「通商白書」等のほか、会社、研究所、労働組合等の民間においても広く利用されている(乙A第92号証)。 このように、統計法上の基幹統計である家計調査は、調査対象世帯の選定方法も含め、統計資料としての精度が高いだけではなく、家計上の支出(詳細な品目ごとの支出額)等の把握を目的とした調査であるから、総務省CPI又は生活扶助相当CPIの算定に用いられる各品目のウエイト(品目ごとの消費支出の割合)を把握するのに最も適したデータといえる。 さらに、生活扶助基準の水準は、これまでも、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に立脚して改定が行われてきており、一般国民の消費を表す家計調査により算出された消費者物価指数のウエイトデータを用いることは、従来の改定の考え方とも整合するものである。 b 一方、厚生労働省が実施している社会保障生計調査は、被保護世帯の生活実態を明らかにし、保護基準改定等の生活保護制度の企画運営等のために必要な基礎資料を得る目的で、被保護世帯者の家計収支の状況を調査する一般統計調査である。そして、その調査対象世帯の選定は、全国を10ブロックに分け、ブロックごとに都道府県、指定都市、中核市から1~3自治体を選定し(例えば、東北ブロックの青森県、岩手県、秋田市というように選定する。)、その選定された自治体から合計約1100世帯を抽出することによって行われている。また、家計収支の状況は、被保護者の生活実 定し(例えば、東北ブロックの青森県、岩手県、秋田市というように選定する。)、その選定された自治体から合計約1100世帯を抽出することによって行われている。また、家計収支の状況は、被保護者の生活実態を明らかにする観点から、食料費、住居費等の支出金額、割合として集計される(以上につき、乙A第93号証)。 このような社会保障生計調査は、保護基準の改定等に用いられる統計資料ではあるものの、調査世帯の選定において地域等による偏りが生じる可能性があることや、サンプル数が必ずしも多くないことなどを踏まえると、生活保護受給世帯全体の家計支出の状況を推測する精度に一定の限界があることは否定できない。 その上、社会保障生計調査は、生活保護受給世帯の「生活実態」を把握する調査であって、生活保護受給世帯の詳細な支出先や支出額を把握するものではないから、調査の手法としても、個別品目の消費支出の割合等を正確かつ詳細に記載させるための措置が講じられておらず、その調査結果を分析しても、おおまかなウエイトは把握できても、 家計調査のように詳細な品目ごとのウエイトは把握できない(例えば、食料(外食)のウエイトは把握できても、食料(一般外食(うどん))のウエイトは把握できない。)。そのため、社会保障生計調査のウエイトを用いた場合には、消費者物価指数の詳細な品目ごとの価格データが存在するにもかかわらず、その詳細な品目ごとの消費の支出の割合を反映した物価指数を算出することができなくなると予想されるところである。 c なお、家計調査には、収入階層別のウエイトのデータもあるが、これについては、いくつかの品目をまとめた「類」レベルでのウエイトのデータのみが存在し、品目別のウエイトのデータは存在しない(乙A第129号証)。そのため、家計調査の収入階層別の のデータもあるが、これについては、いくつかの品目をまとめた「類」レベルでのウエイトのデータのみが存在し、品目別のウエイトのデータは存在しない(乙A第129号証)。そのため、家計調査の収入階層別のウエイトを用いた場合にも、消費者物価指数の詳細な品目ごとの消費の支出の割合を反映した物価指数を算出することができなくなると予想された。 例えば、平成23年の消費者物価指数の「類」としての「保健医療サービス」は、診療代、出産入院料、マッサージ料金、人間ドック受診料、予防接種料の5品目で構成されているところ、家計調査の第1・十分位のウエイトデータでは、類としての「保健医療サービス」のウエイトは把握できても、これを構成する診療代等の5品目のウエイトデータは把握できない。ここで、マッサージ料金、人間ドック受診料及び予防接種料は生活扶助相当品目であるが、診療代及び出産入院料については、生活扶助による支出が想定されていない品目であり*6、類(保健医療サービス)が同一でも生活扶助相当品目とそうでない品目が混在している。生活扶助相当CPIの算定においては、総務省CPIの指数品目のうち、生活扶助による支出が想定され得る品目 *6 診療代は医療扶助、出産入院料は出産扶助によってそれぞれ賄われる。 (生活扶助による支出がおよそ想定されない品目を除いた品目)の価格指数及びウエイトのデータを用いて、物価変動率を算定することとしたが、家計調査の第1・十分位のウエイトを用いた場合には、消費者物価指数の詳細な品目ごとのウエイトを反映した物価指数を算出することはできない。 d 以上のとおり、厚生労働大臣は、社会保障生計調査の結果を分析したウエイトを用いて物価変動率を算 場合には、消費者物価指数の詳細な品目ごとのウエイトを反映した物価指数を算出することはできない。 d 以上のとおり、厚生労働大臣は、社会保障生計調査の結果を分析したウエイトを用いて物価変動率を算出することが可能であったとしても、家計調査の統計資料としての精度や適格性、従来の改定の考え方との整合性等を総合的に勘案し、家計調査により算出された消費者物価指数のウエイトデータを用いる判断をしたものである。 (エ) 平成22年基準のウエイト(消費の構造)を用いた理由本件改定が行われた平成25年当時、家計調査(総務省CPI)のウエイトのデータとしては、平成17年以前の基準によるものと、平成22年基準によるものが存在した。 この点、国民の消費の内容は経時的に変化することから、現実の消費実態を反映した物価指数を算定するためには、物価指数の算定時点に可能な限り近接した時点の消費の構造を示すデータを用いるのが相当と考えられた。このような観点から見ると、仮に、平成17年基準によるウエイトのデータを用いた場合には、平成17年以降の消費構造の変化が反映されず(平成20年の指数は3年間、平成23年の指数は6年間の消費構造の変化が反映されないこととなる。)、物価変動率の算定期間における消費実態を正確に反映しないものとなることが予想された。これに対して、平成22年基準によるウエイトのデータは、物価変動率を算定する期間に接着したものであり(平成20年の指数は2年、平成23年の指数は僅か1年しか離れていない。)、現実の消費実態を反映したものとして相当と考えられた。 そこで、厚生労働大臣は、平成20年から平成23年までの物価変動率を算定するに当たり、平成22年基準によるウエイトを用いることとした。そして、以下に述べるとおり、かかる厚生労働大臣の判 そこで、厚生労働大臣は、平成20年から平成23年までの物価変動率を算定するに当たり、平成22年基準によるウエイトを用いることとした。そして、以下に述べるとおり、かかる厚生労働大臣の判断は、消費者物価指数マニュアル等の記載に照らしても適切なものといえる。 a 物価指数の算定時点とウエイト参照時点とは、できるだけ近接させることが望ましいといえること我が国を含む多くの国では、消費者物価指数を算出する際、ウエイトを指数算出の対象期間の期首に設定するラスパイレス指数を用いているが、これは、直近時点の取引ウエイトを知ることが困難であるとの実務上の理由によるものにすぎず(乙A第27号証3頁の注釈4)、消費者物価指数を算出するための指数としてラスパイレス指数のみが正しく、他の指数が誤っていることを意味するものではない。このことは、消費者物価指数の選択に関し、消費者物価指数マニュアルにおいて、「過去2世紀にわたり、多くの様々な種類の数学的算式が提案されてきた。あらゆる状況に向いている算式は1つもないのかも知れない。」などと説明されていることからも明らかである(甲A第234号証(1.13)3頁)。 また、総務省CPI等では、ウエイトは、家計調査の結果を踏まえて5年ごとに改定されており、5年間は同じウエイトを用い続けているが、これは、「ウェイトの更新は、特に、世帯支出調査を新たに実施しなければならないとしたら、時間が掛かるし費用も高くなる。」ことから、「時間と費用の双方の節約」という「実際上の長所」によるものと認められるから(甲A第234号証(9.79)291頁)、5年間同じウエイトを用い続けなければ消費者物価指数の算出方法として合理性を欠くわけでもない。 むしろ、消費者物価指数マニュアルにおいて、「現在の消費パター 証(9.79)291頁)、5年間同じウエイトを用い続けなければ消費者物価指数の算出方法として合理性を欠くわけでもない。 むしろ、消費者物価指数マニュアルにおいて、「現在の消費パター ンにできるだけ近づけるため」に「各年の初めにウェイトを更新する国もある。」とされていることに照らすと(同頁)、「現在の消費パターンにできるだけ近づける」ためには、なるべく直近のウエイトを用いる方が望ましいと考えられる。また、「価格参照時点より早い時点で得られた数量を使うロウ指数は、ラスパイレスを上回り勝ちであり、その程度はウェイト参照時点が時間的に早く戻れば戻るほど、大きくなる。」*7、「どんな買い物かご指数でも、関係する時点が時間的に過去に戻れば戻るほど、数量はますます時代遅れになり、適切さを欠くことになるのは避けられない。引き起こされるバイアスを最小にするために、ウェイトはできる限り頻繁に更新されるべきである。」(同号証(9.90)294頁)と説明されていることからも、ウエイト参照時点を物価指数の算定時点にできるだけ近接させることが望ましいといえる。 このように、物価指数の算定時点にできるだけ近接した時点のウエイトのデータを用いることが望ましいといえる*8。 b 平成22年をウエイト参照時点とする生活扶助相当CPIの方法は、 *7 1審原告らが主張するような、「平成20年から平成22年までの変化率を、平成17年基準の品目(分類)別の価格指数とウェイトにもとづいて算出した指数」を用いて算出する方法(古賀意見書(甲A第379号証)7及び8頁)は、これに該当するといえる。 *8 なお、古賀意見書(甲A第379号証)においても、ウエイトデータの基準年の選択に いて算出した指数」を用いて算出する方法(古賀意見書(甲A第379号証)7及び8頁)は、これに該当するといえる。 *8 なお、古賀意見書(甲A第379号証)においても、ウエイトデータの基準年の選択に関する1審被告らの説明について、「確かに、生活扶助相当CPIは、平成20年の物価指数の算出に平成22年のウェイトを利用したので、消費構造の乖離は2年分となる。一方、通常の方法では、これに平成17年のウェイトを利用するので消費構造の乖離は3年分となり、1年分ではあるが長くなる。」(同号証5頁)と述べられており、上記説明自体が不合理であるとはされていない。 消費者物価指数マニュアルにおいて「中間年指数」として紹介されている方法であることまた、生活扶助相当CPIは、平成22年をウエイト参照時点として平成20年及び平成23年の物価指数を算出しているところ、このように対象期間の間の任意の時点でウエイトを採る方法は、消費者物価指数マニュアルにおいて「中間年指数」と紹介される方法である(乙A第67号証(15.49)459及び460頁)。そして、このような中間年指数は、「パーシェ指数とラスパイレス指数のほぼ中間に来るロウ指数が得られ」、「それは0月とt月の間の理想的な目標指数に非常に近い」と説明される算定方式である(甲A第277号証(15.51)460及び461頁)。 なお、宇南山意見書においても、「生活扶助相当CPIは、平成20年を0時点、平成23年をt時点、平成22年をウエイト参照時点とした「ロウ指数」そのものである。言い換えれば、生活扶助相当CPIに使われている指数算式は「CPIマニュアル」に掲載されている指数算式である。」(乙A第94号証4頁)と述べられている。 (オ) 特定の品目について他の品目と異なる取扱いをすることの可否 当CPIに使われている指数算式は「CPIマニュアル」に掲載されている指数算式である。」(乙A第94号証4頁)と述べられている。 (オ) 特定の品目について他の品目と異なる取扱いをすることの可否についてa 多数ある指数品目のうち教養娯楽費等の特定の品目に限って他の品目と異なる取扱いをする必要性及び合理性を的確に説明することは必ずしも容易でないこと生活扶助相当CPIの設定に係る厚生労働大臣の判断過程は以上のとおりであるが、ここで、仮に、多数ある指数品目のうちある特定の品目(例えば、教養娯楽費)に限って生活扶助相当CPIの算定から除外し又はウエイトを調整するのであれば、その必要性や合理性について統計等の根拠に基づいて的確に説明することが厚生労働大臣には 求められたといえる。 しかるに、生活扶助相当CPIで用いられた家計調査のウエイトのデータ(乙A第28号証40頁以下)と社会保障生計調査に基づくウエイトのデータ(甲A第253号証及び同第255号証)を比較すると、両者のウエイトの違いは特定の品目(例えば、教養娯楽費)に限られるものではなく、その違いの程度も一様ではない。 また、厚生労働省が平成22年に実施した「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」によれば、例えば、生活保護受給世帯のパソコンの普及率は約4割、ビデオレコーダーは約7割、電子レンジや洗濯機は約9割、カラーテレビや冷蔵庫はほぼ10割となっている(乙A第37号証)。これらの事情に照らせば、生活保護受給世帯においても、テレビやパソコン等の教養娯楽用耐久財は一般世帯と同様に普及しているということができ、生活保護受給世帯において教養娯楽用耐久財を生活扶助で購入することも十分予想されるところ、生活保護費のうちどの程度をテレビやパソコン等の教養娯楽用耐久財に充てる 同様に普及しているということができ、生活保護受給世帯において教養娯楽用耐久財を生活扶助で購入することも十分予想されるところ、生活保護費のうちどの程度をテレビやパソコン等の教養娯楽用耐久財に充てるかは当該世帯ごとの個別の事情によるものであって、この点は教養娯楽用耐久財以外の生活扶助相当品目と変わりがない。 このように、仮に、多数ある指数品目のうち特定の品目(例えば、教養娯楽費)に限って生活扶助相当CPIの算定から除外し又はウエイトを調整することを検討したとしても、その必要性や合理性について統計等の根拠に基づいて的確に説明することは必ずしも容易ではなかったといえる。 b 生活扶助基準の改定に当たっては、恣意的な判断が介在しないという意味での合理性や、国民に対する説明可能性(説明の分かり易さという意味での簡便さ)も考慮要素となり得ることなお、念のため付言すると、厚生労働大臣は、生活扶助相当CPI の設定に当たり、これによって平成20年以降の生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加の程度をより正確に把握することを一つの重要な考慮要素として斟酌しているものの、考慮すべき要素はそれに限られるわけではなく、前記のとおり、恣意的な判断が介在しないという意味での合理性や、生活保護受給世帯を含む国民に対する説明可能性(説明の分かり易さという意味での簡便さ)も考慮したものである。 すなわち、平成20年以降における生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加の程度を統計等の資料によって正確に把握するとしても、そこにはおのずから限界がある。例えば、本件改定が行われた平成25年の時点においては、平成24年以降の総務省CPIが公表されていなかったから、平成23年から平成25年までの物価変動率(可処分所得の相対 にはおのずから限界がある。例えば、本件改定が行われた平成25年の時点においては、平成24年以降の総務省CPIが公表されていなかったから、平成23年から平成25年までの物価変動率(可処分所得の相対的、実質的な増加の程度)を算定することはできない。また、ウエイトのデータの選択についていえば、前記のとおり家計調査のウエイトのデータや社会保障生計調査が存したものの、生活保護受給世帯又は一般低所得世帯における詳細な品目ごとのウエイトを把握できるデータは存しない。さらに、家計調査のウエイトのデータについても、平成20年基準及び平成23年基準のデータは存しないから、近接する他の年のウエイトのデータを用いるほかなく、また、バイアスが生ずることも避けられない。このように、統計等の資料を用いるとしても、平成20年以降の生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加の程度を正確に把握するには限界がある。 そして、基準部会による検証結果が保護基準の改定における考慮要素にとどまるのと同様、生活扶助相当CPIの変動率も、本件改定における考慮要素の一つにすぎない。すなわち、厚生労働大臣は、デフ レ調整を行うに当たり、生活扶助相当CPIの変動率(マイナス4. 78パーセント)を前提に、これが生活保護受給世帯と一般国民との不均衡を是正するのに相当なものかという観点からの検討を行っており(後記(キ)参照)、さらに、本件改定における激変緩和措置として、ゆがみ調整において平成25年検証の結果を生活扶助基準に反映させる比率を一律2分の1とした上で(2分の1処理)、ゆがみ調整とデフレ調整を併せた本件改定による減額幅の上限を10パーセントとしており、最終的には、このような激変緩和措置後の生活扶助基準額をもって法3条、8条2項にいう「最低限度の生活」を 処理)、ゆがみ調整とデフレ調整を併せた本件改定による減額幅の上限を10パーセントとしており、最終的には、このような激変緩和措置後の生活扶助基準額をもって法3条、8条2項にいう「最低限度の生活」を下回るものではないとの判断をしたものである。 他方、基準部会の行う評価及び検証が、その時点における保護基準について専門技術的な見地から客観的に評価するものであり、そこに政策的な判断は介在しないのに対し、生活扶助相当CPIの設定は、平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加により生じた生活保護受給世帯と一般国民との間の不均衡の是正を図るため、同年以降の物価変動を生活扶助基準に反映させる改定(デフレ調整)を行うという政策的判断があり、かかる判断に基づいて設定されるものである。そのため、生活扶助相当CPIの設定に当たっては、厚生労働大臣の合目的的な裁量が認められるというべきである。 そうすると、生活扶助相当CPIの設定に当たっては、これにより算出される物価変動率の正確性が重要な考慮要素の一つであるものの、唯一絶対のものとはいえない。恣意的な判断が介在しないという意味での合理性や、国民に対する説明可能性(説明の分かり易さという意味での簡便さ)も考慮要素となり得るものである。この点、平成15年中間取りまとめにおいても、改定の指標の在り方について「国民に とってわかりやすいものとすることが必要」とされており(乙A第14号証2頁)、また、平成25年報告書においても、「生活扶助基準の見直しを検討する際には(中略)他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい」とされているところである(乙A第7号証8頁)。 (カ) 具体的な物価変動率(4.78パーセント)の算定 説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい」とされているところである(乙A第7号証8頁)。 (カ) 具体的な物価変動率(4.78パーセント)の算定過程以上のとおり、厚生労働大臣は、総務省CPIのデータ(生活扶助による支出が想定され得る品目の平成20年と平成23年の各価格指数のデータ及び平成22年基準によるウエイトのデータ)を用いて、平成20年から平成23年までの物価変動率を算定することとした。その具体的な算定過程は、以下のとおりである。 まず、総務省統計局のホームページで公表されている平成22年基準消費者物価指数に係る年報の「第7表-1 品目別価格指数(全国)」から、生活扶助による支出が想定され得る平成20年及び平成23年の各品目の価格指数及び平成22年基準によるウエイト(乙A第30号証の黄色塗りした箇所)を抜き出し、表にまとめる(まとめた表が乙A第31号証である。)。 次に、同号証の表中の「②CPI」欄に記載されている各品目別の価格指数に、「ウエイト」欄記載のウエイトの値を乗じる(それが同号証の「①×②」欄の数値である。)。 さらに、「①×②」欄の数値を合計する(その結果が、同号証18頁の欄外の水色塗りした箇所に記載した数値(平成20年が「646627.9」、平成23年が「635973.1」)である。)。 これらの数値を、生活扶助相当品目のウエイトの合計である6189(平成20年)及び6393(平成23年)でそれぞれ除する。 そうすると、以下の計算式のとおり、平成20年の生活扶助相当CP Iは「104.5」、平成23年の生活扶助相当CPIは「99.5」となる。 平成20年:646627.9÷6189=104.5平成23年:635973.1÷6393=99. 当CP Iは「104.5」、平成23年の生活扶助相当CPIは「99.5」となる。 平成20年:646627.9÷6189=104.5平成23年:635973.1÷6393=99.5そして、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率は、次の計算式のとおり、マイナス4.78パーセントと算定される。 {(99.5-104.5)÷104.5}×100=-4.78%(キ) 平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変動率(マイナス4.78パーセント)は、平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)により生じた同世帯と一般国民との間の不均衡を是正するのに相当なものと評価した理由厚生労働大臣は、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変動率をマイナス4.78パーセントと算定したことについて、前記(カ)のとおり、その算定過程が適切であり、平成20年以降の物価変動による生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)の程度を表していると判断した。そして、厚生労働大臣は、前記のとおり、既に平成19年検証において生活扶助基準額と一般低所得世帯の消費実態との不均衡(夫婦子1人世帯において約1.1パーセント、単身高齢世帯において約13.3パーセント)が確認されていたことに加え、平成20年以降の物価下落が同年9月のリーマンショックに端を発する百年に一度とも評される世界金融危機による実体経済への影響を反映したものであり、物価のみならず、賃金や消費等の経済指標も大きく下落していること(一般勤労世帯の賃金は平成21年に3.9パーセントの減少となり、平成22年には微増したものの、平成23年には再び減少に転じ のであり、物価のみならず、賃金や消費等の経済指標も大きく下落していること(一般勤労世帯の賃金は平成21年に3.9パーセントの減少となり、平成22年には微増したものの、平成23年には再び減少に転じ、家計消費支出も平成21 年から平成23年まで3年連続でマイナスとなった。)などに照らして、平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)による同世帯と一般国民との間の不均衡を是正する改定をするに当たっては、その改定率を、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変動率と同じマイナス4.78パーセントとするのが相当と判断した。 エデフレ調整について、基準部会等の専門機関に意見を求めなかった理由なお、厚生労働大臣が、デフレ調整を行うに当たり、基準部会等の専門機関に意見を求めなかった理由は、次のとおりである。 (ア) 平成25年検証において生活扶助基準の「水準」についての検証が行われなかったこと前記イ(ア)aのとおり、基準部会において、平成24年11月までは、消費(平成21年全国消費実態調査)に基づく生活扶助基準の「水準」についても検証を行うことが検討されており、厚生労働大臣としては、このような基準部会による検証結果に基づいて生活扶助基準の「水準」を改定することも想定していたところであるが、結果的に、基準部会において生活扶助基準の「水準」については検証が行われなかった。 (イ) 厚生労働大臣は生活保護基準改定に係る専門技術的知見を有していること前記(ア)のとおり、平成25年検証においては生活扶助基準の「水準」についての検証が行われず、基準部会による検証結果を踏まえて生活扶助基準の「水準」を改定することは事実上断念せざるを得なかった。しかしながら、 とおり、平成25年検証においては生活扶助基準の「水準」についての検証が行われず、基準部会による検証結果を踏まえて生活扶助基準の「水準」を改定することは事実上断念せざるを得なかった。しかしながら、前記のとおり一般国民の生活水準が大きく低下していた状況を踏まえるならば、平成25年改定において、何らかの経済指標を用いて生活扶助基準の「水準」の調整を図る必要があることは明らかであ った。そして、厚生労働大臣が、本件改定を行うに当たり、消費ではなく、生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(物価変動)に着目して生活扶助基準の「水準」を改定することとした理由は前記のとおりである。 ここで、前記のとおり、厚生労働省は、法を所管しており(厚生労働省設置法4条1項)、厚生労働大臣はその長として(同法2条2項)、生活保護行政(同法4条1項82号)の責任者たる立場にあり、各種の統計調査や現場において生活保護行政を担う地方自治体からの情報収集等を通じて生活保護受給世帯の生活実態を把握するとともに、専門機関から累次にわたり保護基準に関する分析及び検証の結果を聴取するなどしている。このように、厚生労働大臣は、生活保護行政の責任者として必要となる専門技術的知見を有しており、保護基準の改定に係る同大臣の判断は、このようにして蓄積されてきた専門技術的知見を踏まえた考察に基づくものである。デフレ調整を行うこととした厚生労働大臣の判断もまた、同大臣の専門技術的知見を踏まえた考察に基づくものであった。 (ウ) デフレ調整の内容はそれまでの生活扶助基準の改定の基本的な考え方や専門機関による検証の考え方と齟齬するものではなかったことまた、デフレ調整は、平成20年以降の社会経済情勢や一般低所得世帯(第1・十分位)の消費の実態を前提として行われた の改定の基本的な考え方や専門機関による検証の考え方と齟齬するものではなかったことまた、デフレ調整は、平成20年以降の社会経済情勢や一般低所得世帯(第1・十分位)の消費の実態を前提として行われたものであって、殊に、平成20年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機が我が国の実体経済に大きな影響を与え、賃金、物価、家計消費等がいずれも大きく下落するなど、一般国民の生活水準が大きく低下していた状況を踏まえるならば、何らかの経済指標を用いて生活扶助基準の「水準」の調整を図る必要があることは明らかであった。 ここで、これまでの生活扶助基準の改定は、一貫して、生活保護にお いて保障されるべき最低生活の水準が一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に立脚して行われてきたところ、デフレ調整もこのような考え方に基づくものである。他方、昭和59年度以降、水準均衡方式の下において消費の動向を用いた毎年度の改定が行われてきた実情があったものの、専門委員会による平成15年中間取りまとめにおいて、最近の経済情勢を踏まえた場合に、生活保護受給世帯への影響という観点から消費を用いることについての課題や改定の在り方について検討する必要性が示されており、改定の指標として物価を用いることも選択肢の一つとして指摘されていたところであった。 また、被保護者の需要の有無及び程度を判断する手法として、一般低所得者が支出する品目のうち、生活扶助相当品目だけを用いるという手法は、従前から行われており、かつ、専門家においても是認していたものである。すなわち、老齢加算の廃止を提言した専門委員会は、「生活扶助相当消費支出額」に基づき被保護者の需要の有無等について検討しているところ、「生活扶助相当消費支出額」とは、一般低所得 していたものである。すなわち、老齢加算の廃止を提言した専門委員会は、「生活扶助相当消費支出額」に基づき被保護者の需要の有無等について検討しているところ、「生活扶助相当消費支出額」とは、一般低所得者層の消費支出全体から、生活扶助による支出がおよそ想定されない品目を除くことによって算出したものである(岡田最高裁調査官解説269及び270頁参照)。 以上のとおり、デフレ調整の内容はそれまでの生活扶助基準の改定に当たっての基本的な考え方や専門機関による検証の考え方と齟齬するものではなかった。 (エ) 社会保障制度改革推進法の附則により、生活扶助基準について必要な見直しを早急に行うことが求められていたことさらに、平成24年6月、社会保障制度改革推進法案が、自由民主党、公明党及び民主党の三党の合意に基づき国会に提出され、平成24年8 月に同法(平成24年法律第64号)が成立したところ、その附則2条1号には、政府は、「生活扶助、医療扶助等の給付水準の適正化、保護を受けている世帯に属する者の就労の促進その他の必要な見直しを早急に行うこと」と明記されており(乙A第7号証2頁)、生活扶助基準について必要な見直しを早急に行うことが厚生労働大臣には求められていた。生活保護については予算措置を伴うことから、保護基準の改定内容を平成25年度予算案に盛り込むための時間的制約もあった*9 。 (オ) 基準部会等の専門機関に意見を求めなければ保護基準の改定が行えないものではないこと他方で、保護基準の改定は、厚生労働大臣の広範な裁量権に基づく政策判断に委ねられており、厚生労働大臣が保護基準を改定するに当たり、基準部会等の専門機関に諮問し又はその意見を求めることなどを定める法令上の規定はなく、法及び関連法規には、保護基準の改定に当たり専門 判断に委ねられており、厚生労働大臣が保護基準を改定するに当たり、基準部会等の専門機関に諮問し又はその意見を求めることなどを定める法令上の規定はなく、法及び関連法規には、保護基準の改定に当たり専門機関からの意見聴取が必要である旨の規定は見当たらない。そのため、そもそも、基準部会等の専門機関に意見を求めなければ保護基準の改定が行えないものではなかった。 (カ) 厚生労働大臣が行おうとする保護基準の改定の当否等について意見を述べることは、基準部会の設置の趣旨及び審議事項ではないことさらに、基準部会は、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会に置かれる常設の部会であるが(厚生労働省設置法7条、社会保障審議会令6条1項)、その設置の趣旨及び審議事項は、「生活保護基準の定期的な評価・検証」である(乙A第23号証)。すなわち、基準部会の *9 各年度の政府予算案は、通常、前年12月に閣議決定され、翌年1月の通常国会に提出される。平成25年度予算案は、平成25年1月29日に閣議決定され、国会審議を経て、同年5月15日に成立した。平成25年告示がされたのはその翌日(同月16日)である。 設置の趣旨及び審議事項は、飽くまで、現在の生活扶助基準の定期的な評価及び検証であって、厚生労働大臣が行おうとする保護基準の改定の当否等について審議検討することは、基準部会の設置の趣旨及び審議事項ではなかった。 また、基準部会の委員は飽くまでも保護基準の評価・検証のために選任された各種学問分野の専門家であって、基準部会は、個々の専門的知見を活用した多角的視点に基づいた各種分析方法の提案、情報収集、分析や提言を行うことはできても、経済的・社会的条件を通じた政策的判 選任された各種学問分野の専門家であって、基準部会は、個々の専門的知見を活用した多角的視点に基づいた各種分析方法の提案、情報収集、分析や提言を行うことはできても、経済的・社会的条件を通じた政策的判断をすることは基準部会の設置の趣旨及び審議事項ではない。つまり、基準部会は、厚生労働大臣の判断における考慮要素の一つとして、専門的知見を集約して得られた事実の説明やその事実に係る分析、評価に関する意見を提供することが求められるものの、それを踏まえた政策的判断を求められているものではない。 この点については、平成24年10月5日の第10回基準部会において、駒村部会長の「この部会の役割というのは検証するということでございますので、それをどう反映させるかというのは政策判断であろうと思います」との発言に端的に表れている(乙A第24号証13頁)。また、平成25年1月16日の第12回基準部会において、山田委員が、「この後にこの報告書(引用者注:平成25年報告書の意。)を考慮していただきながら具体的な政策のプロセスに入っていくと思うのですけれども」との発言も同趣旨と理解できる(乙A第26号証30頁)。 そのため、仮にデフレ調整の当否等について専門家からの意見を聴取しようとすれば、いかなる専門家に対して意見を求めるか(専門家個人にするか合議性の専門機関にするか、仮に合議性の専門機関にするとした場合に基準部会にするか新たな機関を立ち上げるかなどを含む。)についての検討が必要となり、専門家による検討に必要な期間も併せれば、 専門家からの意見聴取には相当の期間を要することが見込まれたといえる。 (キ) まとめ以上のとおり、平成19年検証結果及び同検証以降の社会経済情勢等に照らし生活扶助基準の「水準」を改定する必要性が認められたものの、平 の期間を要することが見込まれたといえる。 (キ) まとめ以上のとおり、平成19年検証結果及び同検証以降の社会経済情勢等に照らし生活扶助基準の「水準」を改定する必要性が認められたものの、平成25年検証においては生活扶助基準の「水準」についての検証が行われず、基準部会による検証結果を踏まえた生活扶助基準の「水準」の改定は事実上断念せざるを得なかった。そこで、厚生労働大臣は、自らの専門技術的知見を踏まえてデフレ調整を行うという判断をしたものであるところ、このデフレ調整の内容は、生活扶助基準の改定に当たっての基本的な考え方に立脚したものであり、また、それまでの専門機関による検証の考え方と齟齬するものでもない。そして、平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法の附則において、生活扶助基準について必要な見直しを早急に行うことが厚生労働大臣には求められていたところ、もとより保護基準の改定に当たり専門機関から意見聴取を求める旨の法令上の規定はない上、厚生労働大臣が行おうとするデフレ調整の当否等について審議検討することは基準部会の設置の趣旨及び審議事項ではなかった(仮に専門家から意見を聴取しようとすれば、相当の期間を要することが見込まれたといえる。)。 厚生労働大臣は、以上のような事実関係等に照らし、デフレ調整について基準部会等の専門機関に意見を求めなかったものである。 オ本件改定におけるデフレ調整の実施以上のとおり、厚生労働大臣は、平成20年以降の物価を用いて生活扶助基準の「水準」の適正化を図ることとし、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変動率(マイナス4.78パーセント)を算定の上、当該数値相当分を減額することが平成20年以降の生活保護 受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水 生活扶助相当CPIの変動率(マイナス4.78パーセント)を算定の上、当該数値相当分を減額することが平成20年以降の生活保護 受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)による同世帯と一般国民との間の不均衡を是正するのに相当であると評価・判断して、本件改定におけるデフレ調整(生活扶助基準の「水準」の見直し)を行うに至ったものである。 3 激変緩和措置の概要及び厚生労働大臣が激変緩和措置に係る判断に至る経緯⑴ 本件改定における激変緩和措置の概要本件改定における激変緩和措置の概要は、①子どもがいる世帯に配慮して貧困の世代間連鎖を防ぐなどの観点を実現しつつ、「生活扶助基準の展開部分の適正化」というゆがみ調整の本質的部分を改変しないようにするため、平成25年検証の結果を反映する程度を一律2分の1とするとともに(2分の1処理)、②ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことによって大幅な減額となる世帯に配慮する観点から、ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことによる減額幅の上限を10パーセントとした上で、③その結果の反映を3年にわたる期間で段階的に実施するというものである。 ⑵ 厚生労働大臣が2分の1処理を講じた経緯ア前記⑴①の2分の1処理についてふえんすると、平成25年検証は、生活扶助基準の「展開のための指数」について初めて詳細な分析を行ったところ、その手法は、専門的議論の結果得られた透明性の高い合理的なものであると評価することができるものの、当該手法が唯一のものであるということはできないし、特定のサンプル世帯に限定して分析する際にサンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界も認められた(乙A7〔9頁〕)。 現に、生活扶助基準については、専門機関による検証が定期的に行われており、 のサンプル世帯に限定して分析する際にサンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界も認められた(乙A7〔9頁〕)。 現に、生活扶助基準については、専門機関による検証が定期的に行われており、展開部分についても、平成25年検証の結果等を前提に更なる検証が行われることが予定されていた。 また、平成25年検証は、前記のとおり、年齢階級別、世帯人員別、級地別の「展開のための指数」について検証を行ったものであるところ、その影響は、世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の組合せによって様々であると見込まれた。しかも、平成25年報告書に記載されたとおり、平成25年検証の結果をそのまま反映させた場合、子どものいる世帯では、夫婦子1人世帯(子は18歳未満) 8.5パーセント夫婦子2人世帯(子は18歳未満) 14.2パーセント母子世帯(18歳未満の子1人) 5.2パーセントとの減額率となることから、子どものいる世帯への影響が大きくなることが予想された(乙A第7号証7及び8頁)。この点、平成25年報告書には、平成25年検証の結果に関する留意事項として、「今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には(中略)とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある」と明記されており(同号証9及び10頁)、平成25年検証自体が上記の観点から激変緩和措置を講じることを予定していたということができる。 イなお、2分の1処理を講じるに当たっては、個別の指数ごとに減額幅(減額の改定比率)については2分の1とし、増額幅(増額の改定比率)についてはそのまま反映させるといったように、部分的に反映程度を変えることは、理論的にはあり得たところである。 もっとも、平成25年検証の結果から明らかとなった生 の1とし、増額幅(増額の改定比率)についてはそのまま反映させるといったように、部分的に反映程度を変えることは、理論的にはあり得たところである。 もっとも、平成25年検証の結果から明らかとなった生活扶助基準の展開部分と一般低所得世帯の消費実態とのかい離を解消して、生活扶助基準を適正化し生活保護受給世帯間の公平を図るとするゆがみ調整の目的等からすれば、基準部会の検証結果を部分的に生活扶助基準に反映させる場合には、ゆがみ調整による影響の内容・程度にかかわらず一定の割合でこれを反映させることがゆがみ調整の目的に沿う合理的な措置であるといえる。 つまり、平成25年検証の結果を反映させる比率を一律2分の1とした場 合であっても、平成25年検証の結果明らかとなった年齢階級別、世帯人員別、級地別の生活扶助基準額と一般低所得世帯の消費実態のかい離が、そのかい離の程度に比例してバランスよく一定の割合で解消されることに変わりはなく、生活保護受給世帯間の公平を図るために生活扶助基準の展開部分を適正化するというゆがみ調整の本質的部分の趣旨に沿う改定を実現するものである。 これに対し、減額幅のみ2分の1の比率で反映させ、増額幅については平成25年検証の結果を全て反映させるとした場合、生活保護受給世帯間における不公平を生じさせることになるから、生活保護受給世帯間の公平を図るために生活扶助基準の展開部分を適正化するというゆがみ調整の本質的部分を改変することになる。 そこで、厚生労働大臣は、平成25年検証によって判明した年齢階級別、世帯人員別及び級地別のゆがみを公平に解消させる観点等から、減額幅のみ2分の1の比率で反映させるのは適当ではないと考え、減額幅・増額幅にかかわらず一律の改定比率としたのである。 ウ以上から、ゆがみ調整においては、「生活扶 みを公平に解消させる観点等から、減額幅のみ2分の1の比率で反映させるのは適当ではないと考え、減額幅・増額幅にかかわらず一律の改定比率としたのである。 ウ以上から、ゆがみ調整においては、「生活扶助基準の展開部分の適正化」というゆがみ調整の本質的部分を改変しないようにしつつ、次回の検証までの激変緩和措置として、平成25年検証の結果を反映する比率が一律2分の1とされた。 以上 (別紙4)当審における1審原告X12 を除く1審原告らの主張の要旨 1 1審原告(控訴人・被控訴人)ら及び1審原告(控訴人)らの控訴理由の要旨⑴ 原判決の誤り原判決が、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求を棄却した理由は、①原判決が確定すれば、本件各決定が取り消されるほか、本件改定がされた当時法に基づく生活扶助の支給を受けていた者は本件改定により減額された生活扶助の額に相当する額の支給を受けることになると考えられ、②さらに、原判決において本件改定が違法であると判断されることによっても1審原告らの精神的損害が回復されることも考慮すると、なお慰謝すべき精神的苦痛が控訴人らに生じているものとまでは認め難いというものであった。 しかしながら、かかる判断は、1審原告らに現実に生じた精神的苦痛を不当に矮小化するものであり、明らかな誤謬といわざるを得ない。 ⑵ 損害ア 1審原告らに一般的に生じた損害(ア) 総論法3条及び8条によれば、厚生労働大臣が定める生活保護基準は、要保護者の需要を基とし、健康で文化的な最低限度の生活を維持できるものでなければならない。本件改定は、これらの規定に違反して生活保護基準を違法に引き下げたものであり、これによって1審原告らは、本件各決定がなされた平成25年7月以降、今 最低限度の生活を維持できるものでなければならない。本件改定は、これらの規定に違反して生活保護基準を違法に引き下げたものであり、これによって1審原告らは、本件各決定がなされた平成25年7月以降、今日に至るまで、本来保障されるべき最低限度の生活を下回る水準での生活を余儀なくされ続けている。 すなわち、1審原告らは、長年にわたって基本的人権である生存権を侵害され続けてきたのであり、これによって生じた精神的苦痛は甚大なものである。 精神的損害は、財産的損害とは性質の異なる損害なのであるから、事後 的に財産的損害が回復されることによって当然に回復されるようなものではない。そして、1審原告らが被った精神的損害は、原判決が指摘する事情によっても償われ得ない性質のものである。 (イ) 参照すべき裁判例本件国家賠償請求に関し、大いに参考になる近時の裁判例として、東京地裁令和3年3月26日判決(令和2年(ワ)第12684号国家賠償請求事件)(甲A337)がある。健康で文化的な最低限度の生活を営む上で不可欠な生活保護給付を受けられず、生活基盤を脅かされたことによる精神的苦痛を、財産的損害の填補があってもなお慰謝されないものと評価した上記判決の判断は、至当なものである。上記判決の事案と比較しても、本件では当然に慰謝料が支払われるべきである。 イ 1審原告らに生じた弊害の具体例本件改定により1審原告らに生じた生活上の不利益は多様であるが、生活の質が人間らしからぬ水準にまで落ち込んだことは、1審原告らに共通する事情であるため、本訴訟において包括一律請求を行っている。例えば、高齢の母親と面会できる機会が半減し、姪の結婚式に出席できなかった、経営していたカラオケ店のお客さんとの付合いが絶たれた、親族の墓参 事情であるため、本訴訟において包括一律請求を行っている。例えば、高齢の母親と面会できる機会が半減し、姪の結婚式に出席できなかった、経営していたカラオケ店のお客さんとの付合いが絶たれた、親族の墓参りに行けなくなった、飼い猫の病院代を諦めさせられた、洗濯機のない生活を強いられた、冬の寒さをしのぐ衣類を購入できなかった、親しい人の葬儀に出られなかったなど、1審原告らの損害は、原判決が述べた理由で回復される性質のものではない。 2 当審における1審原告X12 を除く1審原告らの補充主張の要旨⑴ 判断枠組みについてア堀木訴訟最高裁判決の射程が及ばないことについて(ア) 本件改定は、法8条1項により委任を受けて厚生労働大臣が法規命令を定める場面であるから、憲法25条の規定を具体化するためにどのよう な措置を講ずるべきかを白地の状態から判断する場面ではない。そのため、厚生労働大臣の裁量は、直接的には法により限定されることになる(行政手続法38条1項)。 法8条1項が厚生労働大臣に授権したのは、あくまでも「要保護者の需要」を測定する基準を定める権限である。厚生労働大臣の裁量権を限定する同条2項も、必要な事情を考慮した「最低限度の生活の需要」を満たすに十分なものであつて、かつ、これを超えないものでなければならないとして、「要保護者」の最低限度の生活の「需要」を基礎とすべきことを明確にしている。 したがって、厚生労働大臣に裁量権が認められるとしても、それはあくまでも法により限定された裁量にすぎず、堀木訴訟最高裁判決が立法府に認めたような「広い裁量」であることはあり得ない。 (イ) 次に、本件改定は、憲法25条1項で保障された憲法上の権利そのものを直接具体化する生活保護制度(法1条)に関 訴訟最高裁判決が立法府に認めたような「広い裁量」であることはあり得ない。 (イ) 次に、本件改定は、憲法25条1項で保障された憲法上の権利そのものを直接具体化する生活保護制度(法1条)に関するものである。 憲法25条1項に基づく生活保護制度における老齢加算の廃止が問題となった老齢加算東京訴訟最高裁判決は、堀木訴訟最高裁判決を参照してはいるが、法3条及び8条2項にいう「最低限度の生活は、抽象的相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである」と述べるだけであり、「国の財政事情」を考慮事項とする説示や厚生労働大臣の「広い裁量」を認める説示、「著しく合理性を欠く明らかに裁量の逸脱・濫用とみざるをえないような場合」という判断枠組みを注意深く削除している。 (ウ) 以上のとおり、本件は、法による限定のもとで委任された法規命令を定 める事案であるから、老齢加算訴訟最高裁判決の射程は及ぶとしても、堀木訴訟最高裁判決の射程は及ばない。 なお、1審被告らは、生活扶助基準の適法性が問題となった朝日訴訟最高裁判決が「現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等」でなければ違法とならないとしている点を援用して主張するが、同判決の当該部分は傍論にとどまり、先例としての拘束性を持たない。老齢加算訴訟最高裁判決も、当該箇所を引き継いでいない。 イ判断過程審査について(ア) 判断過程審査は、裁判所が、行政機関の判断過程について、具体的な審査基準として、「社会観念」を用いることなく、 高裁判決も、当該箇所を引き継いでいない。 イ判断過程審査について(ア) 判断過程審査は、裁判所が、行政機関の判断過程について、具体的な審査基準として、「社会観念」を用いることなく、憲法又は法律の解釈に合致しているのかを審査するという点で、社会観念審査とは大きく異なる。 (イ) 老齢加算福岡訴訟最高裁判決に関する調査官解説が、同訴訟控訴審の福岡高裁判決について問題としたのは、あくまでも「老齢加算の廃止に代わる代替的手段の導入」という考慮事項が優先的価値を有するという判断に「法の裏付け」がないことであった。したがって、仮に上記調査官解説の立場を前提としても、反対に「法の裏付け」がある事項ならば、これを考慮事項に含めることは、当然許されるばかりでなく、むしろ法的に要請されることになる。 さらに、裁判所は、「各種の統計や専門家の作成した資料等に基づいて高齢者の特別な需要に係る推計や加算対象世帯と一般世帯との消費構造の比較検討等がされてきた経緯等」がある場合ならば、「統計等の客観的な数値等との合理的関連性」がない場合や、「専門的知見との整合性」がない場合には、厚生労働大臣の裁量権の行使を違法と判断しなければならない。 また、これまでの経緯等や従前の運用については、呉市公立学校施設使 用不許可訴訟最高裁判決が、「これと異なる取扱いの動機の不当性を推認させることがあったり、比例原則ないし平等原則の観点から、裁量権濫用に当たるか否かの判断において考慮すべき要素」となると判断しているところである。 (ウ) そして、生活扶助相当CPIが法8条2項の要求する要保護者の需要を測定する数値といえるかを審査するに当たっては、厚生労働大臣がデフレ調整をするに当たって依拠した生活扶助相当CPIだけ (ウ) そして、生活扶助相当CPIが法8条2項の要求する要保護者の需要を測定する数値といえるかを審査するに当たっては、厚生労働大臣がデフレ調整をするに当たって依拠した生活扶助相当CPIだけでなく、それ以外の統計等の客観的な数値や専門的知見との関係で、合理的関連性や整合性を問わなければ、判断過程の「過誤」を認定することはできない。 そのため、裁判所が、本件改定の適法性を審査するに当たって、厚生労働大臣が依拠した根拠以外の統計等の客観的な数値や専門的知見との関係で、厚生労働大臣が「適切な指標を選択して合理的に検証」したのかを審査することができるのは当然である。とりわけ、裁判所は、国(総務省統計局等)が統計法等に基づいて調査・作成している統計等の客観的数値や、これまで生活扶助基準の改定に用いられていた資料、生活保護基準の改定等生活保護制度の企画運営のために必要な基礎資料については、その合理的関連性や整合性を問わなければならない。 以上の論証過程審査で用いる資料の範囲については、巽意見書(甲A392〔21~23頁〕)及び深澤意見書(甲A396〔10、11頁〕)でも指摘しているところである。 なお、裁判所が「合理的関連性」や「整合性」の有無を審査できる資料は厚生労働大臣が判断の過程において用いた資料に限定されるとする1審被告らの主張を前提としても、厚生労働大臣は消費者物価指数や家計調査を用いているから、これらの資料との合理的関連性がないことを理由に違法とした原判決に何らの瑕疵はない。 (エ) 原判決は、あくまでも、1審被告らも審査することを認めている「厚生 労働大臣がデフレ調整において生活扶助相当CPIを選択した判断の過程が一応納得し得るものといえるかどうか」につき、厚生労働大臣が法 あくまでも、1審被告らも審査することを認めている「厚生 労働大臣がデフレ調整において生活扶助相当CPIを選択した判断の過程が一応納得し得るものといえるかどうか」につき、厚生労働大臣が法8条2項の求める要保護者の需要を測定するために「適切な指標を選択して合理的に検証」したのかといった観点から、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を審査し、生活扶助相当CPIが消費者物価指数(総務省CPI)や社会保障生計調査等の「客観的な数値等」との合理的関連性がないと判断したものにすぎない。原判決は、判断代置審査のように、「最後に生活扶助基準が行われた平成16年を始期とする」とか、「民間最終消費支出の伸びに準拠すべきである」とか、「社会保障生計調査をウエイトとすべきである」といったような、裁判所があたかも行政機関の立場に立って判断をやり直し、裁判所の判断と処分とを置き換えるといったような判断代置的な判断は一切していない。 ウ厚生労働大臣の判断が違法となるのは「明らかに不合理な点があった場合」に限られず、法という法規範に違反したときであることについて(ア) 繰り返し述べてきたとおり、本件改定は、法8条1項により厚生労働大臣に委任された「基準」を定める権限に基づき、法規命令を定める場面であるから、堀木訴訟最高裁判決の射程は及ばない。 厚生労働大臣の定める「基準」は、これを定める根拠となる法令である法8条の趣旨に適合するものとなるようにならなければならない(行政手続法38条1項)という意味で、厚生労働大臣の裁量権は限定されている。 (イ) その上で、法8条1項2項、3条、11条1項1号、12条の規定を読み解くと、法8条1項が厚生労働大臣に授権をしたのは、「要保護者」の「需要」を「測定」す の裁量権は限定されている。 (イ) その上で、法8条1項2項、3条、11条1項1号、12条の規定を読み解くと、法8条1項が厚生労働大臣に授権をしたのは、「要保護者」の「需要」を「測定」するための基準を定める権限だけである。これを受けて、同条2項は、この基準が「要保護者」の年齢別、性別、世帯構 成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の「需要」を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものであることを求めている。 このように、厚生労働大臣が定める「基準」は、あくまでも「要保護者の需要」を測定するものでなければならない。 この点、老齢加算東京訴訟最高裁判決も、「最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念」であるとしながらも、老齢加算の廃止の適法性を審査するに当たり、あくまでも「要保護者の需要」の有無につき司法審査を行っている。 (ウ) したがって、厚生労働大臣がその裁量権を行使して判断しなければならないのは、原判決が判示したとおり、生活扶助基準の引下げに見合う「要保護者」の最低限度の生活の「需要」を満たすために必要な生活費の減少が認められるか否か及び「改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否か」の2点に限定される。 そして、裁判所は、厚生労働大臣の判断に「統計等の客観的な数値等との合理的関連性」がない場合や、「専門的知見との整合性」がない場合には、裁量権の逸脱・濫用として違法と判断しなければならない。 エ本件に適用されるべき司法審査の判断枠組みについて(ア) 司法審査の手法について原判決のように老齢加算訴訟最高裁判決を参照し、判断過程審査を適用するのであれば、裁 。 エ本件に適用されるべき司法審査の判断枠組みについて(ア) 司法審査の手法について原判決のように老齢加算訴訟最高裁判決を参照し、判断過程審査を適用するのであれば、裁判所は、厚生労働大臣の判断が法に適合するか否かを審査することとなる。 このとき、裁判所は、厚生労働大臣が依拠した根拠以外の統計等の客観的な数値や専門的知見であっても、当然、その合理的関連性や整合性を審査することができ、従前の運用は、「これと異なる取扱いの動機の不 当性を推認させることがあったり、比例原則ないし平等原則の観点から、裁量権濫用に当たるか否かの判断において考慮すべき要素」となる。 法8条2項によれば、厚生労働大臣に授権された権限は、生活扶助基準の引下げに見合う「要保護者」の最低限度の生活の「需要」を満たすために必要な生活費の減少が認められるか否かと、「改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否か」の判断の2点に限定される。 そのため、裁判所は、厚生労働大臣がデフレ調整において生活扶助相当CPIを選択したことにつき、厚生労働大臣が、法8条2項の求める要保護者の需要を測定するために「適切な指標を選択して合理的に検証」したのかといった観点から、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を審査することができる(原判決76~77頁)。 (イ) 司法審査の密度について本件は、法による限定のもとで委任された法規命令を定める事案であるから、堀木訴訟最高裁判決の射程は及ばず、厚生労働大臣の裁量権は、堀木訴訟最高裁判決に基づく「広い裁量」ではない。 そのため、司法審査の密度も、1審被告らが主張するような「当該判断に明 から、堀木訴訟最高裁判決の射程は及ばず、厚生労働大臣の裁量権は、堀木訴訟最高裁判決に基づく「広い裁量」ではない。 そのため、司法審査の密度も、1審被告らが主張するような「当該判断に明らかに不合理な点があった場合に、初めて裁量権の範囲の逸脱・濫用があると判断する」とする最小限審査ではない。 裁判所は、厚生労働大臣による-4.78%のデフレ調整に引下げに見合う「要保護者」の最低限度の生活の「需要」を満たすために必要な生活費の減少(=生活保護受給世帯の可処分所得の実質的な増加)が認められるか否かにつき、「統計等の客観的な数値等との合理的関連性」がない場合や、「専門的知見との整合性」がない場合には、裁量権の逸脱・濫用として違法としなければならない。 ⑵ 「ゆがみ調整の2分の1処理」と「ゆがみ調整と併せてデフレ調整を行った こと」の違法性についてアゆがみ調整の2分の1処理の違法性について本件改定にあたり、厚生労働大臣は、基準部会が平成25年検証において検証したゆがみ調整の指数について、基準部会等の専門家に一切諮ることなく独断で一律2分の1にした(2分の1処理)。その結果、平成25年検証の結果によれば、本来増額となるはずであった高齢単身世帯及び高齢夫婦世帯の増額幅を半減することとなり、総額91億2100万円の削減効果が生じることとなった。 この2分の1処理は、①「ゆがみ」を徹底的に是正するというゆがみ調整の趣旨を半減させる点、②本来増額となるはずであった高齢世帯の増額幅を半減させる不利益を与える点、③「財政的にニュートラル(プラスマイナスゼロ)」であるはずなのに90億円もの財政削減効果を生ぜしめた点において、ゆがみ調整の本質的部分に改変を加える措置であり、統計等の客観的数値等 益を与える点、③「財政的にニュートラル(プラスマイナスゼロ)」であるはずなのに90億円もの財政削減効果を生ぜしめた点において、ゆがみ調整の本質的部分に改変を加える措置であり、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものである。 イゆがみ調整と併せてデフレ調整を行ったことの違法性について平成25年検証においては、「体系の検証」と「水準の検証」が一体的に行われ、年齢別・世帯人員別・地域別の生活扶助基準と一般低所得世帯の消費支出を比較して作成した指数を用いて、これを基準額表に直接反映させることによって、個々の生活保護受給世帯の生活扶助基準の「水準」に影響を及ぼすことが前提とされていた。 そして、消費支出のデータにはデフレの影響が当然含まれており、これとは別に物価を考慮することは物価の影響を重複考慮する可能性がある(甲A247・19頁、甲A259・13頁)。そのため、本来、厚生労働大臣は、ゆがみ調整に併せてデフレ調整を行うことの是非やその影響等について、基準部会等の専門家の分析・検証を踏まえるべきであったが、これを怠った点においても、本件改定は、統計等との客観的数値等との合理的関連性や専門 的知見との整合性を欠き違法である。 ⑶ デフレ調整の違法性についてア物価考慮自体の問題点について(ア) 消費者物価指指数を改定の指標とすることについて本件改定までは、物価指数を用いた生活扶助基準の改定が行われたことはなく、昭和58年意見具申以来、現在に至るまで採用されている水準均衡方式は、生活保護基準と一般国民の消費水準の均衡を図ろうとする方式であり、物価の本格的考慮は、この方式の本質と矛盾する。 基準部会においても物価指数を用いた生活扶助基準の改定 いる水準均衡方式は、生活保護基準と一般国民の消費水準の均衡を図ろうとする方式であり、物価の本格的考慮は、この方式の本質と矛盾する。 基準部会においても物価指数を用いた生活扶助基準の改定については議論されておらず、かえって、基準部会の委員からは、消費品目によって物価指数が異なるにもかかわらず、全国一律の物価指数によって生活扶助基準を改定することには非常に慎重であるべきであるなどの意見が出されていた。 このように、消費者物価指数の伸びを改定の指標とする厚生労働大臣の判断は、専門家による検証が行われていないばかりでなく、「専門的知見」である中央社会福祉審議会による昭和58年意見具申にも合致しない。また、平成15年中間取りまとめ前の事務局案にあった「消費者物価指数の伸びを用いる(中略)ことが適当」という表現については、委員らからの強い異論を踏まえ、平成16年報告書で当該箇所が削除されていることからすると、全体として平成16年報告書の趣旨と一致しない。さらに、平成25年報告書でも、部会では物価指数については何も議論されていないことから、全体として平成25年報告書の趣旨とも一致しない。このような判断は、「従前の運用」と「異なる取扱い」であるから、「動機の不当性が推認」されてしかるべきである。 したがって、消費者物価指数の伸びを改定の指標とする厚生労働大臣の判断では、生活扶助基準の引下げに見合う「要保護者」の最低限度の生 活の「需要」を満たすために必要な生活費の減少が認められないから、本件改定は違法である。 (イ) 一律に4.78%減少したと判断したことについて一律「-4.78%」という生活扶助相当CPIの下落幅が、法8条2項が定める「要保護者」の最低限度の生活の「需要」の減少( (イ) 一律に4.78%減少したと判断したことについて一律「-4.78%」という生活扶助相当CPIの下落幅が、法8条2項が定める「要保護者」の最低限度の生活の「需要」の減少(=生活保護受給世帯の可処分所得の実質的な増加)の程度と同じであることはあり得ない。このことは、物価変動による消費支出への影響は、法8条2項の定める「年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別」ごとに区々であり、全国一律に決めることができないことからも明らかである。 それにもかかわらず、厚生労働大臣が、生活扶助相当CPIが4.78%下落したことをもって、直ちに、「要保護者」の最低限度の生活の「需要」を満たすために必要な生活費が、年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別を問わず、一律に4.78%減少したと判断したことは、「専門的知見との整合性」も認められないから、本件改定は違法である。 イデフレ調整の始期を平成20年としたことについて(ア) 平成19年報告書が根拠にならないことについて平成19年報告書は、単に生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態を比較したものにすぎないから、仮に、平成19年報告書が提出された翌年である平成20年度以降、生活扶助基準を見直すべきであったとしても、デフレ調整を行う根拠にはならない。 ましてや、原判決(78頁)が指摘するとおり、平成19年報告書は、平成16年の全国消費実態調査の結果に基づいたものであるから、これに基づくならば、デフレ調整の始期を平成16年とする根拠にはなり得るが、平成20年とする根拠にはなり得ない。 (イ) 平成19年から平成20年にかけての物価上昇が反映されていないことについて 平成20年を始期とすることは、平成19年から平成2 0年とする根拠にはなり得ない。 (イ) 平成19年から平成20年にかけての物価上昇が反映されていないことについて 平成20年を始期とすることは、平成19年から平成20年にかけての物価上昇の影響が考慮されず、平成21年以降の物価下落の影響のみが考慮されることからも、法8条2項の要求する「要保護者」の最低限度の生活の「需要」の減少(=生活保護受給世帯の可処分所得の実質的な増加)を正しく測定しているとはいえない。 原判決(78頁)も、「平成20年は、世界的な原油価格や穀物価格の高騰を受けて、石油製品を始め、多くの食料品目の物価が上昇したことにより、消費者物価指数(総合指数)が11年ぶりに1%を超える上昇となった年」であったことから、「平成20年からの物価の下落を考慮するならば、同年における特異な物価上昇が織り込まれて物価の下落率が大きくなることは、本件改定が始まった平成25年には明らかであった」ことを指摘している。 (ウ) デフレ調整の始期として平成20年を選択したことが違法であることについて1審被告らは、デフレ調整の始期を平成20年としたのは、「平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加による一般国民との間の不均衡を是正する」ためであると主張するが、本件で問題とされているのは、「なぜデフレ調整の始期を平成20年としたのか」を裏付ける根拠となる「統計等の客観的数値」や「専門的知見」が存在するか否かである。 上記の1審被告らの主張は、問をもって問に答えるトートロジーであって、厚生労働大臣がデフレ調整の始期として平成20年を選択したことに「統計等の客観的数値」や「専門的知見」の裏付けがないことを露呈するものである。 ウ生活扶助相当CP えるトートロジーであって、厚生労働大臣がデフレ調整の始期として平成20年を選択したことに「統計等の客観的数値」や「専門的知見」の裏付けがないことを露呈するものである。 ウ生活扶助相当CPI採用の問題点について(ア) 原判決は-4.78%ものデフレ調整に根拠がないことを問題としてい ることについて原判決が問題としているのは、「生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したと評価することができる」か否かではなく、生活扶助相当CPIは要保護者の需要を正しく測定できていないため、これに基づき-4.78%ものデフレ調整を行った厚生労働大臣の判断には合理性がないということである。 そして、生活扶助相当CPIには、以下に述べるとおり、要保護者の需要を正しく測定できない問題点がある。 (イ) 社会保障生計調査ではなく家計調査に基づくウエイトを用いた点について厚生労働大臣が採用した生活扶助相当CPIで用いられた消費構造が「生活保護世帯の実質的な可処分所得」の増減を図るに適したものでなければならず、裁判所にはこの点に関する審査が求められている。 1審被告らが、社会保障生計調査ではなく家計調査を使用した理由として縷々主張するところは、家計調査と社会保障生計調査の一般的抽象的な精度や信頼性を論じるにすぎないものであって、デフレ調整の根拠とされた生活扶助相当CPIの合理性を根拠付ける観点からは意味をなさない。 家計調査が一般世帯を対象としたものであるのに対し、社会保障生計調査が「被保護世帯の家計収支の実態を明らかにすることによって、生活保護基準の改定等生活保護制度の企画運営のために必要な基礎資料を得るとともに、厚生労働行政の企画運営に必要な基礎資料を得る 保障生計調査が「被保護世帯の家計収支の実態を明らかにすることによって、生活保護基準の改定等生活保護制度の企画運営のために必要な基礎資料を得るとともに、厚生労働行政の企画運営に必要な基礎資料を得ること」を目的としたものであることに照らすと、生活保護受給世帯の消費構造を把握する上では、一般世帯を対象とする家計調査よりも、社会保障生計調査の方が適していることは明らかである。 そして、社会保障生計調査によれば、物価下落率が大きい教養娯楽費が 家計に占める割合(平成22年)は、一般世帯(11.5%)に比して生活保護世帯(単身5.6%、複数6.4%)は相当低く、特に物価下落率が大きいテレビ等を含む「PC・AV機器」費が占める割合も一般世帯(1.39%)に比して生活保護世帯(0.43%)は相当低いという顕著な特徴が見い出せる以上、生活保護世帯の消費構造を把握するデータとして家計調査を用いることに「統計等の客観的数値等との合理的関連性」が認められないことは明らかである。 また、仮に社会保障生計調査ではなく家計調査の統計に基づいてウエイトを算出することとしても、少なくとも第1・五分位の消費実態を把握できるデータは公表されており、第1・十分位についても厚労省から取り寄せることは可能だった。 第1・五分位の世帯のウエイトを使用した場合、公表されている資料から生活扶助相当CPIの平成20年から23年までの変化率を計算すると、総世帯の平均ウエイトを使用した場合が4.78%であるのに対して、「第Ⅰ階級ウエイト」(第1・五分位の平均ウエイト)を使用した場合は2.81%であり(甲A461〔6頁〕)、データが公表されている範囲で第1・十分位の世帯のウエイトを求めて使用した場合は2. 34%となる(甲A462)。 分位の平均ウエイト)を使用した場合は2.81%であり(甲A461〔6頁〕)、データが公表されている範囲で第1・十分位の世帯のウエイトを求めて使用した場合は2. 34%となる(甲A462)。 (ウ) 一定の品目が除外されたことにより教養娯楽費のウエイトが増幅された点について原判決(79~80頁)が判示するとおり、品目の除外によりウエイトが相対的に上昇し、平成20年であれば1.62倍、平成23年であれば1.56倍となる。そのため、生活扶助相当CPIのウエイトにおいては、上記のとおり物価下落率の大きい教養娯楽費(特にテレビ等)のウエイトが家計調査以上に増幅されることとなった。 品目を除外することでウエイトの相対的な上昇が発生すること、これに より価格が下落した品目の影響が増幅されて一般世帯よりも変化率が大きくなること自体は、1審被告らも認めるところである。 除外されなかった品目全てについてウエイトの相対的な上昇が発生したとしても、下落率の大きな品目のウエイトが上昇することによって、全体としての物価下落率が大きくなるという形で、その影響が増幅され得ることは明らかである。 したがって、生活扶助相当CPIには、教養娯楽費(特にテレビ等)の物価の下落を大きく反映してしまう点で、要保護者の需要を正しく測定できないという重大な欠陥がある。 (エ) 平成22年のウエイトを用いた点についてa まず、「デフレによる生活保護受給世帯の可処分所得の実質的増加」の程度を測定するためには、「生活保護受給世帯の現実の消費実態」を反映させることが必要不可欠である。 しかし、現実には、厚生労働大臣が「一般世帯のウエイト」を用いた点において、既に「生活保護受給世帯の現実の消費実 生活保護受給世帯の現実の消費実態」を反映させることが必要不可欠である。 しかし、現実には、厚生労働大臣が「一般世帯のウエイト」を用いた点において、既に「生活保護受給世帯の現実の消費実態」からかい離していることが明らかである。 そして、特に平成22年は、家電エコポイント制度の開始やテレビの地デジ化により一般世帯の買い替え需要が膨らむ一方、生活保護受給世帯にはチューナーの無料配布がなされたという特殊事情のあった年であることから(甲A327の1~3)、一般世帯と生活保護受給世帯のテレビ等に対する支出割合のかい離が平常時以上に増幅されている。 1審被告らは、「近接した時点の消費の構造を示すデータ」を用いることが「現実の消費構造」を把握する上で適切である旨主張するが、実際には、平成22年の家計調査のデータを用いることによって、「生活保護受給世帯の現実の消費実態」からより一層かけ離れてしま う結果となったのである(甲A264(白井意見書)〔36~40頁〕、甲430〔20~21頁〕(白井証人調書)、甲A379(古賀意見書)〔11、12頁〕等)。 b また、上方バイアスが生じるラスパイレス式を用いるのが国際標準であり、我が国において統計を所管する専門官庁である総務省統計局も一貫してラスパイレス式を用いている中で、厚生労働大臣は、上記のとおりの理由にならない理由で平成22年の家計調査のウエイトを用い、その帰結として、平成20年から平成22年にかけては下方バイアスが生じるパーシェ式と同様の計算方式を採用した。こうしたことも相まって、生活扶助相当CPIの下落率は、総務省の消費者物価指数と比較して合理的な説明ができないほど著しく大きくなっている。 生活保護基準は、憲法25条1項が を採用した。こうしたことも相まって、生活扶助相当CPIの下落率は、総務省の消費者物価指数と比較して合理的な説明ができないほど著しく大きくなっている。 生活保護基準は、憲法25条1項が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の基準を具体化したものであり、法8条2項が、保護の基準は、「最低限度の生活の需要を満たすに十分なもの」でなければならないと定めていることからすれば、生活保護基準を設定する場面においては、上方バイアスが生じる計算方法を採用することは許容され得る一方で、下方バイアスが生じる計算方法を採用することは原則として許されないものと解される。 にもかかわらず、1審被告らは、あえて下方バイアスが生じる計算方法を採用した理由として、「近接した時点の消費の構造を示すデータを用いるのが相当」という合理性を欠く説明しかなし得ていないのであるから、総務省統計局が通常採用している算式と異なる算式を用いたことについて、「統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性」が認められないことは明らかである。 (オ) 生活扶助相当CPIに基づき行われたデフレ調整が違法であることについて 以上のとおり、生活扶助相当CPIに基づき-4.78%ものデフレ調整を行った厚生労働大臣の判断には、法8条2項が要求する要保護者の需要を正しく測定してなされたことの裏付けがない。 したがって、デフレ調整をした厚生労働大臣の判断には、統計等の客観的な数値である消費者物価指数や社会保障生計調査との合理的関連性が認められず、かつ、これまでの審議過程や指数の計算方法といった専門的知見との整合性も認められないから、本件改定は違法である。 ⑷ 平成29年検証についてア事後的な検証によって 的関連性が認められず、かつ、これまでの審議過程や指数の計算方法といった専門的知見との整合性も認められないから、本件改定は違法である。 ⑷ 平成29年検証についてア事後的な検証によって判断過程の過誤、欠落が治癒されることにはならないことについてそもそも、取消訴訟における処分の違法性判断の基準時は、処分時であることから、処分後に作成された資料等によって処分の適法性を基礎付けることはできない。 深澤龍一郎教授も、行政機関による調査に懈怠があったと認められる以上は、法治主義の要請に基づき、最終的な行政決定を取り消すのが原則であるから、行政機関の判断について客観的には過誤がなかったとの事後的な判定は厳格に行われるべきであり、当該事案を行政過程に差し戻したときに行政決定の内容が変更される可能性が皆無でない限り、当該行政決定は取り消されるべきである旨述べているとおりである(甲A396〔15~16頁〕)。 イ年齢・世帯人員・級地別の各世帯類型の水準均衡が確認されるべきなのに、夫婦子1人世帯以外の世帯類型の水準均衡は何ら確認されていないことについて本件改定全体が「事後的に」正当であると評価されるためには、65歳未満夫婦と18歳以下の子の3人世帯だけでなく、平成25年改定後の年齢・世帯人員・級地別の少なくとも主要な世帯類型の生活扶助基準額が一般低所得世帯の消費支出と均衡しているという事実が証明されることが必要である。 ところが、平成29年検証は、「夫婦子1人世帯の年収階級第1・十分位の生活扶助相当支出と生活扶助基準額が概ね均衡する」としているにすぎず、その他の世帯類型について(ただし、後述する高齢夫婦世帯を除く。)、本件改定後の生活扶助基準額が一般低所得世帯の消費支出と均衡してい 活扶助相当支出と生活扶助基準額が概ね均衡する」としているにすぎず、その他の世帯類型について(ただし、後述する高齢夫婦世帯を除く。)、本件改定後の生活扶助基準額が一般低所得世帯の消費支出と均衡していることは一切確認していない。 したがって、平成29年検証によって、本件改定全体の結果の正当性が裏付けられたなどと評価できないことは明らかである。 ウ平成29年検証は、本件改定の結果、高齢夫婦世帯の生活扶助基準が下げられ過ぎたことを示していることについて平成29年検証(平成26年全国消費実態調査の個票データの分析)の結果、高齢夫婦世帯については、生活扶助基準額が一般低所得世帯(第1・十分位層の少し上である第6~7・五十分位層)の生活扶助相当支出額から相当額(7410円、6.8%)下方かい離していたことが明らかとなった。 これは、高齢夫婦世帯については、平成25年検証(ゆがみ調整)の結果を無視したデフレ調整と一律2分の1処理によって、生活扶助基準が下げられ過ぎたことを示す極めて重要な事実である。 このように、本件改定により、高齢夫婦世帯の生活扶助基準額が一般低所得世帯の生活扶助相当支出額よりも大幅に低くなっていたということが、平成29年検証から明確に裏付けられる。平成29年検証は、平成25年検証の結果をゆがめた本件改定によって、高齢夫婦世帯の生活扶助基準が低くなり過ぎていたことを示しているのである。 なお、1審被告らは、平成29年検証において、高齢夫婦世帯の生活扶助基準額が消費支出階級第6~7・五十分位層における生活扶助相当支出額よりも低いとされたことを指摘する1審原告らの主張は、比較対象とすべき所得階層が消費支出階級第6~7・五十分位世帯であることを前提とする点において誤っていると主張する。しかしな る生活扶助相当支出額よりも低いとされたことを指摘する1審原告らの主張は、比較対象とすべき所得階層が消費支出階級第6~7・五十分位世帯であることを前提とする点において誤っていると主張する。しかしながら、かかる1審被告らの主張は、 消費支出階級別の固定的経費の支出割合が有意に上昇している点(変曲点)を見出すことによって、生活扶助基準と比較すべき所得階層を設定するという、平成29年検証の根幹を否定するものである。 エ平成29年検証の結果によって本件改定の合理性・正当性が根拠付けられたとする1審被告らの主張には理由がないことについて上記論点の他に、1審原告らは、平成29年検証の終盤、高齢夫婦世帯のモデルによる検証が不合理な理由で突然放棄されたこと、夫婦子1人世帯の水準の均衡は、本件改定が正当であったことを根拠付けるものではないこと、1人世帯を基軸として展開した結果においても、展開後の生活扶助基準額が多くの世帯類型において第3・五分位の消費水準の5割台へと大きく落ち込んでいることについて主張している。 これらのことからすると、平成29年検証の結果、本件改定の合理性・正当性が根拠付けられた旨の1審被告らの主張に全く理由がないことは明らかである。 なお、この点、1審被告らも、「平成29年検証の結果をもって本件改定の結果全体が正当であったと主張するものではない」、「平成29年検証の結果においてゆがみ調整が妥当であることまで裏付けられているとはいえない」と自認するに至っているところである。 ⑸ 1審原告らの損害について1審原告らは、当審において原審の誤りを指摘し、専門家の意見書及び調査報告等に基づいて主張立証した。 以上によれば、1審原告らには、減額された保護費が事後的に支払われたと 損害について1審原告らは、当審において原審の誤りを指摘し、専門家の意見書及び調査報告等に基づいて主張立証した。 以上によれば、1審原告らには、減額された保護費が事後的に支払われたとしても償われ得ない損害が発生しているから、国家賠償請求を棄却した原判決は変更がなされる必要がある。 以上 (別紙5)当審における1審被告らの主張の要旨 1 1審被告(控訴人)らの控訴理由の要旨⑴ デフレ調整に対する司法審査の在り方ア原判決の判示した判断枠組みは、堀木訴訟最高裁判決及び老齢加算訴訟最高裁判決に依拠するものであると解されるところ、これらの判決の判断枠組みは、厚生労働大臣の論証過程を追試的に検証することによってその判断の過程及び手続に過誤、欠落があるか否かを判断すべきであるとするものである。 すなわち、憲法25条、法3条及び法8条2項にいう最低限度の生活とは、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする(堀木訴訟最高裁判決参照)。そして、基準生活費の減額をその内容に含む保護基準の改定は、①当該改定後の生活扶助基準の内容が被保護者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであるとした厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、あるいは、②基準生活費の減額に際し、激変緩和等の措 断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、あるいは、②基準生活費の減額に際し、激変緩和等の措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点から、裁量権の逸脱又はその濫用があると認められる場合に、法3条、8条2項の規定に違反し、違法となる(老齢加算訴訟最高裁判決参照)。 イ原判決が違法とした本件デフレ調整に係る判断は、最低限度の生活の具体 化として生活扶助基準の水準(高さ)を問題とするものであり、上記①の判断に関するものである。 ところで、老齢加算東京訴訟最高裁判決は、上記①について、厚生労働大臣の当該判断が、専門委員会が平成15年中間的取りまとめにおいて示した意見に沿って行われたものであり、同意見が特別集計等の統計や資料等に基づくものであることを踏まえ、同意見の取りまとめに至る専門委員会の具体的な検討内容が、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見等との整合性に欠けるところはないかを審査し、これに欠けるところはないことから、その判断の過程及び手続に過誤、欠落があると解すべき事情はうかがわれないとした(なお、老齢加算東京訴訟最高裁判決に係る岡田最高裁調査官解説280及び281頁参照)。 最低限度の生活は抽象的かつ相対的な概念であり、その具体的な内容はその時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、異質かつ多元的な諸利益を評価して比較衡量するという、多方面にわたる複雑多岐な、しかも高度の 生活の状況等との相関関係において判断決定されるものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、異質かつ多元的な諸利益を評価して比較衡量するという、多方面にわたる複雑多岐な、しかも高度の専門技術的考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである以上、本来、当該判断が著しく合理性を欠くような場合でなければ、その判断は違法とはなり得ないが(堀木訴訟最高裁判決参照)、裁判所は、当該判断の過程に着目して、行政庁による裁量権行使の内容面、実体面の事柄の判断に立ち入ることなく、その外側から適否を判断することが可能である(上記岡田最高裁調査官解説293及び294頁参照)。 本件改定は、平成25年報告書によって明らかにされた、一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態を「展開のための指数」に反映することで、生活扶助基準の展開部分の適正化を行い(ゆがみ調整)、平成19年生活扶助基準に関する検討会における検証(平成19年報告書)に おいて、標準世帯である夫婦子1人世帯の生活扶助基準が第1・十分位における生活扶助相当支出額よりも高めになっているとの報告がされたことや、平成20年以降のデフレ傾向を生活扶助基準の水準に反映させてこなかった結果、生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増額したと評価できる状況を踏まえ、平成20年から平成23年までの物価の下落を生活扶助基準に反映させるものとして、生活扶助相当CPIを用いて生活扶助基準の水準について適正化を図り(デフレ調整)、さらに、生活保護受給世帯及び一般低所得世帯に及ぼす影響を考慮して激変緩和措置を講じたものであるが、本件デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断についても、平成19年報告書、平成25年報告書、消費者物価指数や生活扶助相当CPI等の各種統計や専 帯に及ぼす影響を考慮して激変緩和措置を講じたものであるが、本件デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断についても、平成19年報告書、平成25年報告書、消費者物価指数や生活扶助相当CPI等の各種統計や専門家の作成した資料等に基づいた比較検討が行われている。 そうすると、裁判所がデフレ調整に係る判断について司法審査をするに当たっては、まずもって、1審被告らが主張するところの当該判断の過程を検討すべきであって、厚生労働大臣が当該判断をするに当たって依拠した根拠に基づいて、1審原告らの主張をも踏まえる形で、当該判断をすることが導かれるか否か、1審被告らが主張する説明が一応納得し得るものといえるかどうかという観点から審査し、当該判断に明らかに不合理な点があった場合に、初めて裁量権の範囲の逸脱・濫用があると判断するのが相当というべきである(前記岡田最高裁調査官解説296頁参照)。 ウ以上で述べたところからすれば、本件の厚生労働大臣のデフレ調整に係る判断における裁量権の逸脱・濫用の有無は、1審被告らが挙げる理由から当該判断が導かれ得るか、1審被告らの理由に論理の飛躍や連関を欠くことがあるか否かという観点から判断すべきである。そして、「統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性」の有無についても、厚生労働大臣が選択した統計や資料等が保護者の需要を測定するのに合理的なものであり、これらの統計等に基づき行った具体的な検討内容について、一応 納得できるものか、論理の飛躍や連関を欠くことがないかどうかという観点から判断すべきである。 ⑵ 物価指数を比較する年の選択に係る原判決の指摘を踏まえても、厚生労働大臣の判断の過程に過誤、欠落があるとはいえないことア原判決の指摘原判決は、デフレ調整の物価変 である。 ⑵ 物価指数を比較する年の選択に係る原判決の指摘を踏まえても、厚生労働大臣の判断の過程に過誤、欠落があるとはいえないことア原判決の指摘原判決は、デフレ調整の物価変動を算定する期間の始期を平成20年としたことについて、①平成19年報告書は、夫婦子1人(有業者あり)世帯と単身世帯(60歳以上)のみについて評価、検証したものにとどまる上、生活扶助基準を見直すべきである旨の具体的な提案を示したものではないから、平成19年報告書が取りまとめられたことは、直ちに平成20年からの物価の下落を考慮する根拠とはならない、②平成20年は消費者物価指数が11年ぶりに1パーセントを超える上昇となった年であり、平成20年からの物価の下落を考慮するならば、同年における特異な物価上昇が織り込まれて物価下落率が大きくなることは明らかであった、③平成20年を始期とすべき根拠が見当たらない(平成19年報告書は平成16年の全国消費実態調査の結果に、ゆがみ調整は平成21年の全国消費実態調査の結果にそれぞれ基づいており、いずれにおいても平成20年という時点が現れていないことを指摘し、始期を平成20年とした点において、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものというべきである)と判示する。 イ平成19年報告書について(①)しかしながら、前記のとおり、厚生労働大臣は、平成19年報告書のみを根拠にして、始期を平成20年としたわけではない。厚生労働大臣が平成19年報告書のみを根拠に物価変動を算定する期間の始期を平成20年として物価下落を考慮したかのような上記①の指摘は、その判断過程を正解しないものである。 上記①の指摘について、原判決は、生活扶助基準の設定方法(水準と展開)や、 平成20年として物価下落を考慮したかのような上記①の指摘は、その判断過程を正解しないものである。 上記①の指摘について、原判決は、生活扶助基準の設定方法(水準と展開)や、平成19年報告書が夫婦子1人世帯(単身高齢世帯)を検証対象としていることの趣旨、意義等を根本的に誤って理解している。すなわち、生活扶助基準は、前記のとおり、まず、標準世帯の生活扶助基準「額」(生活扶助基準の水準)を設定した上で、その額をあらかじめ定めた「指数」を適用して年齢階級別、世帯人員別等に分解(展開)することによって設定されるため、標準世帯の最低生活費の額を示す生活扶助基準の水準の検証は、一般低所得世帯のうち標準世帯に相当する夫婦子1人世帯を検証、分析することによって行われるものである(標準世帯との年齢階級、世帯人員、級地別の最低生活費の相違は、展開のための指数において考慮され、最終的な具体的な生活扶助基準の額に反映されるものである。)。平成19年報告書も*1、上記の生活扶助基準の設定方法に基づき、夫婦子1人(有業者あり)世帯と単身世帯(60歳以上)を検証、分析の対象としているのであって、平成19年報告書が上記の各世帯以外の世帯を検討の対象としていないのは、むしろ当然のことである(なお、単身高齢者世帯〔60歳以上〕の分析、検証が行われた趣旨は、生活保護受給世帯に単身高齢者が比較的多いという実態があることから、標準世帯による検証、分析を補足するものとして、念のため対象としたものである〔乙A第6号証4頁〕)。そうすると、標準世帯である夫婦子1人世帯の一般低所得世帯の生活扶助相当支出額が当該世帯の生活扶助基準額よりもやや高めになっているとの平成19年検証の検証結果は、標準世帯の最低生活費を示す生活扶助基準の水準を適正化(減額改定)する上で 帯の一般低所得世帯の生活扶助相当支出額が当該世帯の生活扶助基準額よりもやや高めになっているとの平成19年検証の検証結果は、標準世帯の最低生活費を示す生活扶助基準の水準を適正化(減額改定)する上で、十分な根拠となる(乙A第6号証2、4及び5頁参照)。 *1 平成16年検証、平成29年検証においても、標準世帯(夫婦子1人世帯)同士の一般低所得世帯の生活扶助相当支出と生活扶助受給額を比較する方法で、生活扶助基準の水準の検証が行われている。 保護の基準は、法8条に基づき厚生労働大臣が定めるものとされており、基準部会等の専門機関による検証が行われた場合であっても、その検証結果は、広範な裁量権を有する厚生労働大臣の考慮要素の一つに位置づけられるにすぎない。平成19年検証を含む専門機関による定期的な検証では、生活扶助基準の客観的な分析、評価がされ、生活扶助基準を見直すべきであるか否かという結論が示されるわけではない。平成19年報告書は、検討項目として、「生活扶助基準の水準が保護を受給していない低所得世帯における消費実態との均衡が適切に図れているどうかについて評価、検証」が挙げられており、当然ながら、生活扶助基準の水準を見直すべきかどうかについては検証の対象となっていない(乙A第6号証2頁)。報告書に、「厚生労働大臣において生活扶助基準の見直しを行う場合には、本報告書の評価・検証の結果を参考とされるよう期待するものである」(同3頁)とある記載は、平成19年報告書が飽くまで専門技術的考察に基づく政策判断の前提となる一資料であることを端的に表しているものである。 平成19年検証における生活扶助基準の水準の検証において、標準世帯の生活 成19年報告書が飽くまで専門技術的考察に基づく政策判断の前提となる一資料であることを端的に表しているものである。 平成19年検証における生活扶助基準の水準の検証において、標準世帯の生活扶助相当支出額と生活扶助基準額とを客観的に比較するにとどめているのは、かかる理由によるものであって、原判決が指摘するような瑕疵はない。 上記のとおり、平成19年検証を含む専門機関の法的位置づけからみて、平成19年検証において生活扶助基準の水準の見直しの具体的な提案がされていないことは、むしろ当然である。したがって、平成19年検証において生活扶助基準の水準の見直しについて具体的な提案がされていないことは、平成19年検証の結果を根拠にして厚生労働大臣が生活扶助基準の水準の減額改定を行ったことを何ら不合理ならしめるものではない。 原判決が、デフレ調整において、平成20年からの物価の下落を考慮した厚生労働大臣の判断について、いかなる専門的知見との整合性を欠いた(78頁)とするのか必ずしも判然としないが、平成19年報告書において生活 扶助基準の水準の見直しについて具体的な提案がされていないことを指しているとすれば(同頁)、上記のとおり、平成19年報告書においては生活扶助基準の見直しをすべきかどうかを検証の対象としているものではないのであるから、同報告書の検証の対象に関する理解を欠いたものといわざるを得ないし、少なくとも同報告書との整合性を欠くなどと評価されるものでもない。 ウ平成20年の物価上昇について(②)次に、厚生労働大臣がデフレ調整を行うに当たって、物価変動を算定する期間の始期を平成20年とした理由は前記のとおりであり、その設定は、平成19年検証の結果に加え、平成20年までの生活扶助基準の改定経緯や 、厚生労働大臣がデフレ調整を行うに当たって、物価変動を算定する期間の始期を平成20年とした理由は前記のとおりであり、その設定は、平成19年検証の結果に加え、平成20年までの生活扶助基準の改定経緯や平成20年以降にデフレの状況となった当時の経済動向を踏まえた合理的なものである。すなわち、厚生労働大臣は、平成19年検証の結果、生活保護受給世帯の基準額が一般低所得世帯の消費実態と比較して高いとされていたにもかかわらず、平成19年検証に基づく減額改定を行わなかったことによって生活保護受給世帯の基準額と一般低所得世帯の消費実態との均衡が崩れた(生活扶助基準基準額の水準の方が高い)状況にあった中で、平成20年以降、生活扶助基準が据え置かれていたこと等に鑑み、生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加による一般国民との不均衡を是正する観点から、物価変動を算定する期間の始期を平成20年としたものである。しかも、平成16年検証の結果、「勤労3人世帯の生活扶助基準について、低所得世帯の消費支出額との比較において検証・評価した結果、その水準は基本的に妥当であった」とされ、同年の時点で生活扶助基準を改定する必要は指摘されていなかったこと(前記に加え、平成16年から平成19年までの消費者物価指数(総務省CPI)の上昇率がほぼ横ばいの状態であったこと(乙A第12号証24頁))からすれば、平成19年までは物価下落による生活扶助基準の改定を要するような状況になかったと評価することができる。 確かに、消費者物価指数は、平成19年から平成20年にかけて1パーセントを超える上昇をしているものの、仮に平成19年を始期として物価下落率を評価したとしても、生活扶助相当CPIの下落率は、マイナス4.60パーセントであって、デフレ調整率であるマイナ かけて1パーセントを超える上昇をしているものの、仮に平成19年を始期として物価下落率を評価したとしても、生活扶助相当CPIの下落率は、マイナス4.60パーセントであって、デフレ調整率であるマイナス4.78パーセントと0. 18パーセントの差があるだけで、平成20年を始期とした場合と比較して有意な差はない。 したがって、平成20年からの物価の下落を考慮するならば特異な物価上昇が織り込まれて物価下落が有意に大きくなる旨の原判決の判断は、誤りというほかない。 エ物価変動の算定期間の始期を平成20年とした根拠(③)についてデフレ調整を行うに当たって物価変動を算定する期間の始期を平成20年とした根拠は、上記で述べたとおりであるところ、そもそも、上記始期をいつにするかは厚生労働大臣の合目的的裁量に委ねられるべき事柄であり、前記のとおり、厚生労働大臣は合理的な根拠に基づきこの始期を平成20年と決定したものである。また、平成19年を始期として算定した生活扶助相当CPIの下落率は、マイナス4.60パーセント(デフレ調整率であるマイナス4.78パーセントと0.18パーセントの差しかない)であって、平成20年を始期とした場合と比較して有意な差はないことは前記のとおりである。 デフレ調整とゆがみ調整とは目的を異にするものであり、その検証方法もおのずと異なる。すなわち、デフレ調整とは、標準世帯における生活扶助基準の水準(高さ)を調整するものであり、ゆがみ調整とは、標準世帯における生活扶助基準を「展開」するに当たって、年齢別、世帯人員別及び級地別というそれぞれの観点から、一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態の各指数の分布と生活扶助基準額による各指数の分布の均衡を図ることによって、世帯構成等が異なる様々な生活保護受給者相 員別及び級地別というそれぞれの観点から、一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態の各指数の分布と生活扶助基準額による各指数の分布の均衡を図ることによって、世帯構成等が異なる様々な生活保護受給者相互間における均衡を図るこ とを目的とするものであり、その目的は異なるのであるから、ゆがみ調整で用いられた統計資料とデフレ調整で用いる統計資料が同じでなければならないという理由はない。デフレ調整では、平成19年現在における生活扶助相当額と生活扶助基準との均衡状況を検証することから、直前の平成16年全国消費実態調査が用いられたのに対し、平成25年報告書における生活保護基準部会の検証結果を受けて行われたゆがみ調整では、デフレ調整により定まった標準世帯の生活扶助基準の水準を基に、年齢階級別、世帯人員別、級地別の生活扶助基準に展開するために用いられている比率(=指数)と、一般低所得世帯の生活扶助相当支出についての年齢階級別、世帯人員別、級地別の比率(=指数)との較差を是正する上で、直前の平成21年全国消費実態調査が用いられたのであって、デフレ調整、ゆがみ調整それぞれの目的に照らし時点の異なる統計資料が用いられたことには、合理的な理由がある。 なお、全国消費実態調査は、総務省において5年に1度行われる(最近では、平成16年、平成21年、平成26年、令和元年に行われた〔ただし、令和元年は「全国家計構造調査」として調査名等を見直した上で実施された。〕。)基幹統計調査であり、平成20年には行われていない。したがって、平成19年報告書が平成16年の全国消費実態調査に基づくものであることや、ゆがみ調整で用いられた資料に平成20年を基準とするものがないことをもって、デフレ調整に当たって物価変動を算定する期間の始期を平成20年とする根拠がないとの原判決の 態調査に基づくものであることや、ゆがみ調整で用いられた資料に平成20年を基準とするものがないことをもって、デフレ調整に当たって物価変動を算定する期間の始期を平成20年とする根拠がないとの原判決の判断も、誤っているというほかない。 ⑶ 改定率の設定に係る原判決の指摘を踏まえても、厚生労働大臣の判断の過程に過誤、欠落があるとはいえないことア原判決の指摘原判決は、厚生労働大臣が、消費者物価指数(総務省CPI)ではなく生活扶助相当CPIに基づく下落率を選択するためには、「一般的世帯の消費構造よりも被保護者世帯のそれの方が物価の下落による実質的な可処分所得 の増加という影響を受けていること(最低限度の生活を営むのに要する費用の減少割合が一般的世帯の消費支出の減少割合よりも大きいこと)」を前提とすべきであるところ、これを裏付ける資料はなく、そのような前提が認められない以上、デフレ調整は、消費者物価指数の下落率よりも著しく大きい下落率を基に改定率を設定した点において、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものというべきであると判示する。 イ生活扶助相当CPIを選択した厚生労働大臣の判断の過程に過誤、欠落はないこと(ア) もとより、法は、生活扶助基準の改定に当たって生活扶助相当CPIではなく消費者物価指数(総務省CPI)を用いるべきことを求めるものでもない(なお、消費者物価数値を指数として用いることが法定されているものとして、国民年金法(昭和34年法律第141号)27条の2等、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)43条の2等参照)。 したがって、デフレ調整を伴う生活扶助基準の改定に当たって、消費者物価指数を統計資料として用い、その資料によって導かれた下落率を生活扶 厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)43条の2等参照)。 したがって、デフレ調整を伴う生活扶助基準の改定に当たって、消費者物価指数を統計資料として用い、その資料によって導かれた下落率を生活扶助基準の改定に反映させなければ、当該生活扶助基準の改定が厚生労働大臣の裁量権行使として違法と評価されるべき根拠はない。 (イ) そもそも、厚生労働大臣がデフレ調整における改定率を算定するに当たっていかなる統計資料を用いるかは、本来、合目的的な裁量判断に委ねられていることは、前記のとおりである。 前述のとおり、消費者物価指数の構成品目には、生活扶助基準以外の他の扶助で賄われる品目や生活保護受給世帯において支出することが想定されていない品目が含まれている。本件改定において行われたデフレ調整が生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加分に応じて生活扶助基準を見直すものであることからすれば、これら生活扶助基準ではおよそ捕捉され得ない品目を除外し、生活扶助基準において支出が 想定される品目について物価下落率を算出し、これを生活扶助基準に反映させることは、デフレ調整の目的に十分かなっており、合目的的といえる。 かかる品目の選定については、「生活扶助基準において捕捉され得るか否か」という客観的かつ明確な基準に従って判断されたものである。そして、このような客観的かつ明確な基準に従って判断されたということは、取りも直さず、当該判断においては恣意的判断が入り込む余地がなかったことを意味するのであって、このような意味においても生活扶助相当CPIの算定には合理性がある。 (ウ) これに対し、原判決は、生活扶助相当CPIの下落率(マイナス4.78パーセント)と消費者物価指数の下落率(マイナス2.35パーセント ても生活扶助相当CPIの算定には合理性がある。 (ウ) これに対し、原判決は、生活扶助相当CPIの下落率(マイナス4.78パーセント)と消費者物価指数の下落率(マイナス2.35パーセント)とでは下落率に「著しい」かい離が生じているとした上、そのようなかい離の要因は、「被保護者世帯においては一般的世帯よりも支出の割合が相当低いことがうかがわれる教養娯楽に属する品目についての物価下落の影響が増幅されたこと」が重要であるとし(原判決81頁)、「被保護者世帯の消費実態に沿わない生活扶助相当CPIを用いたことに合理性が乏しい」(84頁)と指摘する。 a しかしながら、消費者物価指数は、生活扶助の対象となり得ない品目をも包含するものであるから、生活扶助の対象におよそなり得ない品目群の物価下落率を生活扶助基準の改定に用いることは、デフレによる被保護者の所得の実質的増加分を生活扶助基準の改定に反映させるとするデフレ調整の目的に適合するものとはいえない。しかも、今般のデフレ調整は、生活扶助基準の水準を一般世帯の消費実態と均衡させることを目的とするもの、換言すれば、一般世帯の消費実態の動向(下落率)を前提に、それを生活扶助基準の水準に反映させることにより、一般世帯と生活保護世帯との不均衡状態を是正することを目的 とする措置であって、比較の対象とする品目を生活扶助基準において支出が想定される品目に限定する必要があるところ、かかる目的からすれば、明らかに対象品目とすることが相当でないものを除いて生活扶助基準において支出が想定される品目を比較の対象とすれば足りるのであって、それ以上に生活保護受給世帯の消費構造を忠実に再現した統計資料を用いなければならないというわけではない。 b 確かに、特定の品目を除外することにより 目を比較の対象とすれば足りるのであって、それ以上に生活保護受給世帯の消費構造を忠実に再現した統計資料を用いなければならないというわけではない。 b 確かに、特定の品目を除外することにより、除外されなかった品目(教養娯楽費を含む。)のウエイトが相対的に上昇し、その意味において教養娯楽費についての物価下落の影響が「増幅」されること(原判決81頁)は否定できない。しかし、かかるウエイトの相対的な上昇は、除外されなかった品目全てについて同じ割合で発生するのであるから、殊更に教養娯楽費のみを取り上げてその「増幅」を強調するのは相当でない。 なお、原判決は、「被保護者世帯においては、教養娯楽に属する品目に対する支出の割合が一般的世帯よりも相当低いことがうかがわれる」、「被保護者世帯がテレビ、ビデオレコーダー、パソコン等の教養娯楽用耐久財を頻繁に購入するとは考え難い」とも述べるが(原判決81頁)、そもそも生活保護者世帯においてこのような教養娯楽用耐久財を購入することが制限されているわけではなく、生活保護費のうちどの程度を教養娯楽に充てるかは当該保護者の個別の事情によるのであって、「被保護者世帯がテレビ…等の教養娯楽用耐久財を頻繁に購入するとは考え難い」というのも原判決の推測の域を出ないものである。デフレ調整における改定率の設定について、本来的に厚生労働大臣の専門技術的かつ政策的裁量に委ねられている事柄について、推測の域を出ないような曖昧な根拠に基づいて、その適否を判断することは、司法審査の在り方からみても相当でない。 c また、原判決は、「生活扶助相当CPIの下落率が消費者物価指数のそれよりも著しく大きくなった要因として」、「生活扶助相当CPIの算出の基礎とされたウエイトが、平成22年の消費者物価 c また、原判決は、「生活扶助相当CPIの下落率が消費者物価指数のそれよりも著しく大きくなった要因として」、「生活扶助相当CPIの算出の基礎とされたウエイトが、平成22年の消費者物価指数の算出の基礎とされたものであったことから(引用者注:括弧内略)、平成20年から平成22年にかけての消費構造の変化を反映して、同期間に価格が下落した品目のウエイトが相対的に大きくなったことも影響したものと考えられる」とする(原判決81、82頁)。 しかしながら、生活扶助相当CPIを算定するに当たり平成22年のウエイトを用いたのは、平成25年当時、消費者物価指数のウエイトのデータとして平成17年以前のものと平成22年のものが存在していたところ、物価指数の算定時点とできるだけ近接した時点の消費の構造を示すデータを用いるのが相当であるとの考慮に基づくものであって、その選定に不合理な点はない。原判決の上記指摘は、ウエイトに基づいて生活扶助相当CPIを算定することに伴いバイアスが生じることをいうものと解されるが、このようなバイアスは生活扶助相当CPIの算定において不可避的に生じるものであって、原判決は平成22年のウエイトを基礎とすることによる当然の帰結を指摘するものにすぎない。そうすると、原判決の上記指摘を踏まえても、平成22年のウエイトを基礎として生活扶助相当CPIを算定することが合理的であることが覆されるものではない。 d 結局のところ、物価下落率の算出において、一定の品目が除外され、除外されなかった品目の物価の下落率が高いために、総務省CPIに比べて生活扶助相当CPIの方が下落率が高くなるとしても、それは、合理的な指数品目の選択を行った結果であって、かかる結果に拘泥して厚生労働大臣が生活扶助相当CPIを選択したことが に、総務省CPIに比べて生活扶助相当CPIの方が下落率が高くなるとしても、それは、合理的な指数品目の選択を行った結果であって、かかる結果に拘泥して厚生労働大臣が生活扶助相当CPIを選択したことが不合理であるということはできない。仮に、原判決のような考え方に立ってみたと しても、生活保護受給世帯の消費構造に着目した統計資料(例えば、社会保障生計調査等)は、世帯の選定等が統計理論に基づいて行われるものではなく、品目の内訳も生活扶助相当CPIで用いられた家計調査と比較しても、概括的、大まかなものであり、統計的な信頼性や品目ごとの再現性という観点からみて劣り、生活扶助相当CPIの方が統計的な信頼性が高いということができる。 (エ) そもそも、原判決は、消費者物価指数と生活扶助相当CPIの値を比較した結果、「一般的世帯の消費構造よりも被保護者世帯のそれの方が物価の下落による実質的な可処分所得の増加という影響を強く受けていることを前提とするものというべき」との理解に基づくものであるが、かかる前提が当然に導かれるわけではない。原判決は、これをあたかも公理のように述べているが、そのような前提を置くことが自明であるわけではない。消費者物価指数と生活扶助相当CPIとでは、その基となる品目及びウエイト*2の基準時を異にするのであるから、このような前提の異なる統計によって算出された下落率を比較し、その要因を裁判所独自 *2 一般に、物価とは、商品の価格を総合的・平均的に見たものであり、その変動は、基準となる時点を100とした指数(物価指数)で表される。そして、物価指数は、通常、指数品目の価格(指数)に各品目の「ウエイト」(家計の消費支出全体に占める 的・平均的に見たものであり、その変動は、基準となる時点を100とした指数(物価指数)で表される。そして、物価指数は、通常、指数品目の価格(指数)に各品目の「ウエイト」(家計の消費支出全体に占める各品目の支出金額の割合)を乗じて平均(加重平均)することで算出される。総務省CPIも、指数品目の価格指数にウエイトを乗じて加重平均することによって算定されている。この総務省CPIでは、5年間は同じ指数品目及びウエイトが使用されるが、現実の消費の構造を反映したものとするため、5年に一度(西暦年の末尾が「0」、「5」の年。近年では、平成17年、平成22年、平成27年など)、指数品目及びウエイトの見直し(基準改定)が行われている。 に分析すること自体、当を得ないものである。 すなわち、ウエイトの基準時を例にとれば(下図参照)、まず原判決が指摘する消費者物価指数におけるマイナス2.35パーセントについて見ると、平成20年の消費者物価指数については平成17年に見直されたウエイトに基づくものであり、平成23年の消費者物価指数については平成22年に見直されたウエイトに基づくものである。これに対して、生活扶助相当CPIにおけるマイナス4.78パーセントについて見ると、平成20年及び平成23年の生活扶助相当CPIは、いずれも平成22年に見直されたウエイトに基づくものである。したがって、平成20年の消費者物価指数と同年の生活扶助相当CPIはウエイトの基準時が異なっている。 さらにいえば、平成20年の消費者物価指数は平成17年に見直されたウエイトに基づくものであるところ、これは、ラスパイレス式(基準 とする時点の品目等を固定して、それ以後の物価を算定する方式)とい ば、平成20年の消費者物価指数は平成17年に見直されたウエイトに基づくものであるところ、これは、ラスパイレス式(基準 とする時点の品目等を固定して、それ以後の物価を算定する方式)という算定方式に該当し、指数の上昇率が高くなる(上方バイアスが生ずる)という特徴がある。これに対し、平成20年の生活扶助相当CPIは、平成22年に見直されたウエイトに基づくものであるところ、これは、パーシェ式(比較する時点の品目等を固定して、それ以前の物価を算定する方式)という算定方式に該当し、下方バイアスが生ずるという特徴がある。 このように、平成20年の消費者物価指数と同年の生活扶助相当CPIとではウエイトの基準時を異にしている上、ウエイトを異にすることに起因して相互に真逆のバイアスが働く関係にある。そうすると、原判決のように消費者物価指数と生活扶助相当CPIの下落率の差を単純に比較して後者が前者よりも著しく大きいことが不合理であると即断することは誤りであり、このような誤った分析を根拠にデフレ調整が統計等の客観的な数値等との合理的関連性を欠くと評価されるべきものではない。 また、原判決は、消費者物価指数の下落率よりも著しく大きい下落率を基に改定率を設定した点において、デフレ調整にかかる厚生労働大臣の判断が専門的知見との整合性を欠くとするが(82頁)、いかなる専門的知見と整合性を欠くとするのか必ずしも判然としない。仮に、「一般的世帯の消費構造よりも被保護者世帯のそれの方が物価の下落による実質的な可処分所得の増加という影響を強く受けていることを前提とするものというべき」との原判決の指摘する点について、専門家の作成した資料等があるとは認められない点や平成25年報告書の取りまとめに当たりそのような議論がされていないとする点 受けていることを前提とするものというべき」との原判決の指摘する点について、専門家の作成した資料等があるとは認められない点や平成25年報告書の取りまとめに当たりそのような議論がされていないとする点を捉えているとすれば(79頁)、上記のとおり、そのような前提を置くこと自体が求められるものでないのであるから、そのような専門家の作成した資料等がないのも 当然であって、これが作成されていないからといってデフレ調整に係る厚生労働大臣の判断が専門的知見との整合性を欠くなどと評価されるものではない。 ⑷ 原判決は、厚生労働大臣の裁量判断に対する司法審査の判断枠組みを誤っているア原判決の判示原判決は、老齢加算訴訟最高裁判決等の判断枠組みを前提とするとしながら、生活扶助基準の全体としての水準(高さ)を調整するに当たっては、併せてゆがみ調整がされることなどを踏まえると、「適切な指標を選択して合理的に検証することが必要」であるとした上で、以上の観点から、「本件改定に当たり、平成20年度から平成23年度までの生活扶助相当CPIを用いたデフレ調整を行ったことが、統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を有するものであったといえるか否かを検討する」とした(なお、「平成20年度」及び「平成23年度」とあるのは「平成20年」及び「平成23年」が正しい。)。その上で、厚生労働大臣がデフレ調整をするに当たって、平成20年からの物価の下落を考慮したことのほか、改定率の設定について、消費者物価指数ではなく生活扶助相当CPIを選択するには、「一般的世帯の消費構造よりも被保護者世帯のそれの方が物価の下落による実質的な可処分所得の増加という影響を受けていること」を前提にしなければならないにもかかわらず、このような前提が認め 択するには、「一般的世帯の消費構造よりも被保護者世帯のそれの方が物価の下落による実質的な可処分所得の増加という影響を受けていること」を前提にしなければならないにもかかわらず、このような前提が認められないことを理由に、厚生労働大臣の判断には過誤、欠落があると判断した。 イ原判決は、厚生労働大臣の裁量判断に対する司法審査の判断枠組みを逸脱していること(ア) しかしながら、原判決の上記判示は、厚生労働大臣がデフレ調整において生活扶助相当CPIを選択した判断の過程が一応納得し得るものといえるかどうかや、改定率と生活扶助相当CPIとの合理的関連性に欠け ることはないかを追試的に検証するのではなく、裁判所自らが、デフレ調整に当たっての物価の下落を考慮する時機や複数の統計等の指標を比較検討して最も適切なものを選択するというものである。このように、原判決の判断内容は、その論証過程を追試的に論証することによってその判断の過程及び手続に過誤、欠落があるか否かを判断すべきとして述べた厚生労働大臣の裁量判断に対する司法審査の判断枠組みに沿ったものとはいえない。 (イ) また、原判決は、前記の述べた「適切な指標を選択して合理的に検証することが必要」であるとの価値判断に基づきデフレ調整の合理性を検証しているところ、そこで検証されている内容は、厚生労働大臣が、生活扶助基準の改定において、生活扶助相当CPIを策定するに当たり、その始期を平成20年としたことの当否、あるいは、消費者物価指数よりも下落率の低いものと算出された生活扶助相当CPIを改定率に用いるについて、一般消費構造よりも被保護者世帯のそれの方が物価の下落による実質的可処分所得の増加という影響を考慮しなかったことの当否である。しかし、これらは、本来、生活扶助基準策定 PIを改定率に用いるについて、一般消費構造よりも被保護者世帯のそれの方が物価の下落による実質的可処分所得の増加という影響を考慮しなかったことの当否である。しかし、これらは、本来、生活扶助基準策定の政策決定に係る価値判断、いわば、裁量権行使の内容面、実体的な事柄に関わる事項である。そもそも、老齢加算訴訟最高裁判決の判断枠組みは、裁判所が行政庁による裁量権行使の内容面、実体的な事柄の判断に立ち入らずとも、その外側から適否を判断することができる場合を想定している(岡田最高裁調査官解説294頁参照)。しかるところ、厚生労働大臣が自ら用いる統計資料において生活保護受給世帯の消費構造を反映させるべきかどうかやデフレ調整としていつを起算すべきかといった、いわば政策決定に係る価値判断にまで関わる事項に立ち入る原判決の判断手法は、一見すると同判決の判断枠組みに依拠しているように見えるものの、その 実は、これから逸脱している*3。 (ウ) 原判決は、前記のとおり、生活扶助基準の全体としての水準(高さ)を調整するに当たっては、併せてゆがみ調整がされることなどを踏まえ、適切な指標を選択して合理的に検証することが必要であるというべきであると判示している。しかし、これは、「ゆがみ調整」と「デフレ調整」とが別次元の調整であることを正解しないものである(原判決76及び77頁)。 すなわち、「ゆがみ調整」とは、標準世帯における生活扶助基準を「展開」するに当たって、年齢別、世帯人員別及び級地別というそれぞれの観点から、一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態の各指数の分布と生活扶助基準額による各指数の分布の均衡を図ることによって、世帯構成等が異なる様々な生活保護受給者相互間における均衡を図ることを目的とするものである(その検証におい 分位)の消費実態の各指数の分布と生活扶助基準額による各指数の分布の均衡を図ることによって、世帯構成等が異なる様々な生活保護受給者相互間における均衡を図ることを目的とするものである(その検証においては、第1・十分位のサンプル世帯が全て生活保護を受給した場合の生活扶助基準額の平均とサンプル世帯の実際の生活扶助相当消費支出の平均を同額となるようにすることにより、生活扶助基準額と第1・十分位の生活扶助相当消費支出の金額 *3 老齢加算東京訴訟最高裁判決では、特別需要がないという厚生労働大臣の判断との関係で統計等の数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性が検討されているが、統計相互を比較したり、政策判断に関わる判断の適否に立ち入った検討はされていない。 なお、その原審である東京高裁平成22年5月27日判決(判例タイムズ1348号110頁)においては、「『生活扶助相当消費支出額』を算定する際、どのような支出をどのような根拠で除外するかは、厚生労働大臣の合目的的裁量に委ねられた事項」であるとして、いかなる支出項目を考慮するか等は厚生労働大臣の合理的的裁量に属するべき事柄とされている。 の高低差が検証結果に反映されないよう考慮される。)。このように、「ゆがみ調整」は、被保護者によってはこれにより生活扶助額が減額されることになるものの、生活扶助基準の相対的な「水準」が調整されるものではなく、またそのような調整を目的とするものでもない。その点で、正に生活扶助基準の「水準」の調整を内容とする「デフレ調整」とはその趣旨・目的を異にする。 原判決は、基準部会資料の記載において、「現行基準額の体系及び級地を全て消費の実態並みにしてもなお、基準 扶助基準の「水準」の調整を内容とする「デフレ調整」とはその趣旨・目的を異にする。 原判決は、基準部会資料の記載において、「現行基準額の体系及び級地を全て消費の実態並みにしてもなお、基準額の水準と消費水準には残差がある可能性がある」と記載されていることに着目するようであるが(原判決53頁)、これは、平成25年検証の結果に基づいて、年齢や世帯人員数の体系や級地の較差についてのゆがみを是正する改定(ゆがみ調整)において用いられた、分析対象のサンプル世帯(収入階級第1・十分位)が生活扶助を受給したと仮定した場合に、その基準額の平均が維持されるようにする手法によって得られた「基準額の水準」と、「消費水準」(分析対象のサンプル世帯の平均的な消費水準)との間に水準差が生ずることを「残差」と表現したものにすぎず、「ゆがみ調整」によって生活扶助基準の「水準」が調整されることを要する趣旨を述べたものではない。 このように、「ゆがみ調整」と「デフレ調整」とはその趣旨・目的を異にしているのであり、基準部会資料の「現行基準額の体系及び級地を全て消費の実態並みにしてもなお、基準額の水準と消費水準には残差がある可能性がある」との記載も、生活扶助基準の水準の調整を要する趣旨を述べるものでもない。本来、ゆがみ調整とデフレ調整については、これら調整に係る各判断における裁量権の逸脱・濫用の有無がそれぞれ審査されるべきではあるが、両者が併せて実施されることによって上記審査の手法に何らかの変化が生じると解すべき理由は何ら存しない。した がって、デフレ調整について、ゆがみ調整が併せて実施されることを踏まえて、「適切な指標を選択して合理的に検証することが必要というべきである」とする原判決の判示は、「デフレ調整」が生活扶助基準の水準(これは デフレ調整について、ゆがみ調整が併せて実施されることを踏まえて、「適切な指標を選択して合理的に検証することが必要というべきである」とする原判決の判示は、「デフレ調整」が生活扶助基準の水準(これは、標準世帯の最低生活費として設定されるものである。)を調整するものであることを理解せず、「生活扶助基準の全体としての水準(高さ)」を調整するものと捉えている点で、厚生労働大臣が採用している生活保護基準の段階的な設定方法から離れた独自の手法を提示しようとするものであって、上記の判断枠組みから逸脱している。 2 1審被告らの当審における補充主張の要旨⑴ 激変緩和措置に係る判断に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるとは認められないア厚生労働大臣は、ゆがみ調整の前提となる平成25年検証における「展開のための指数」の分析手法の持つ統計上の限界が指摘されていたことや平成25年検証の結果等を前提に更なる評価、検証が行われることが予定されていたことなどに加えて、平成25年検証の結果をそのまま反映させた場合、子どもがいる世帯への影響が大きくなることが見込まれたことから、貧困の世代間連鎖を防ぐなどの観点を実現しつつ、「生活扶助基準の展開部分の適正化」というゆがみ調整の本質的部分を改変しないようにするため、平成25年検証の結果の反映の比率を一律2分の1とするとともに、ゆがみ調整及びデフレ調整を併せて行った場合、生活扶助基準額が大幅な引下げとなる世帯が生じることが想定されたため、その負担を軽減するとの観点から減額幅の上限を10パーセントとし、その結果の反映を平成25年8月以降3年にわたって段階的に実施することとしたものである。 以上のとおり、厚生労働大臣は、「展開のための指数」の分析手法の持つ統計上の限界や更なる検証が予定されていたことなども踏 25年8月以降3年にわたって段階的に実施することとしたものである。 以上のとおり、厚生労働大臣は、「展開のための指数」の分析手法の持つ統計上の限界や更なる検証が予定されていたことなども踏まえ、貧困の世代間連鎖を防ぐとともに、生活扶助基準額が大幅な引下げとなる世帯の負担を 軽減する観点を実現しつつ、ゆがみ調整の本質的部分を改変しないために、上記のような一連の激変緩和措置を講じることとしたものであり、その判断に著しい過誤、欠落がある、あるいは当該判断が明らかに合理性を欠くとは認められず、裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるとはいえない。 イ激変緩和措置のうち2分の1処理について、更にふえんする。 (ア) ゆがみ調整については、平成25年検証の結果に関し、例えば、個別の指数ごとに、減額幅(減額の改定比率)については2分の1とし、増額幅(増額の改定比率)についてはそのまま反映させるといったように、反映の程度を部分的に変えるということは理論的にはあり得るものの、このようなことは生活保護受給世帯間の公平を図るために「生活扶助基準の展開部分の適正化」を図るというゆがみ調整の本質的部分を改変することになるものであり相当ではない。すなわち、ゆがみ調整は、生活保護受給世帯間の公平を図るためのものであるところ、本来減額すべきものについては改定比率を2分の1にとどめ、増額についてはそのままの比率とするとすれば、展開部分の不公平を解消させる観点等から適当ではないといえ、生活扶助基準の展開部分の適正化というゆがみ調整の本質的部分に沿わないと考えられた。加えて、前記のとおり、平成25年検証には一定の限界も認められ、生活扶助基準の展開部分については今後更なる検証が予定されていた。 厚生労働大臣は、これらの事情を踏まえ、平 いと考えられた。加えて、前記のとおり、平成25年検証には一定の限界も認められ、生活扶助基準の展開部分については今後更なる検証が予定されていた。 厚生労働大臣は、これらの事情を踏まえ、平成25年検証の結果の反映の程度を、減額幅か増額幅かを問わず、一律に2分の1としたものである。 (イ) 以上からすると、ゆがみ調整時に基準部会の平成25年検証の結果の反映の比率を一律に2分の1とする措置を講じた厚生労働大臣の判断に著しい過誤、欠落がある、あるいは当該判断が明らかに合理性を欠くとは認められないから、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえな い。 ⑵ 平成29年検証の結果等によっても本件改定におけるデフレ調整に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があったとは認められないことが裏付けられているア本件改定後に実施された平成29年検証では、平成26年度以降の経済指標(消費、物価及び賃金)の変化を生活扶助基準の水準に反映させるべきかについても議論が行われたが、その際の議論の基礎とされた統計資料(乙A第98号証10及び11頁)によれば、本件改定におけるデフレ調整において検討対象とされた期間(平成20年から平成23年までの間)における経済指標については、下表のとおり、全ての変化率がマイナスを示しており、収入及び生活維持に必要な金額は、実質的に減少しているものと評価される状況にあった。 経済指標変化率(%)消費 二人以上世帯の消費支出(全体)-4.7二人以上世帯の消費支出(第1・十分位)-5.0二人以上世帯の生活扶助相当支出(全体)-5.2二人以上世帯の生活扶助相当支出(第1・十分位)-5.2物価消費者物価指数-2.3生活扶助相当 支出(第1・十分位)-5.0二人以上世帯の生活扶助相当支出(全体)-5.2二人以上世帯の生活扶助相当支出(第1・十分位)-5.2物価消費者物価指数-2.3生活扶助相当CPI(ウエイト参照時点は平成27年)*11 -4.4賃金 一般労働者(事業者規模5人以上)-2.6パートタイム労働者(同上)-0.2イまた、平成29年検証では、本件改定後の生活扶助基準の水準が妥当なものか否かについても評価・検証が行われたところ、そこでは、本件改定 *11 デフレ調整率(マイナス4.78パーセント)と異なる理由は、平成22年をウエイト参照時点とせず、機械的に消費者物価指数に基準を合わせて平成27年をウエイト参照時点としたことによる。 後の生活扶助基準の水準が一般低所得世帯(第1・十分位世帯)の消費実態とおおむね均衡することが確認されたと評価されており(乙A第78号証17、23頁)、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところはない。 ウそして、前記のとおり、平成16年以降、生活扶助基準額が基本的に据え置かれてきた状況下において、全国消費実態調査によれば、夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額が平成16年から平成21年にかけて約11.6パーセントも下落していたことや、本件改定後の平成26年全国消費実態調査においても、夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額が平成16年に比べて約8.2パーセント低下していたことに照らせば、本件改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がおよそ認められないことがより一層明らかとなる。 エ 支出額が平成16年に比べて約8.2パーセント低下していたことに照らせば、本件改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がおよそ認められないことがより一層明らかとなる。 エ以上のとおり、平成29年検証の結果等によっても、本件改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があったとは認められないことが裏付けられているということができる。 ⑶ ゆがみ調整の適法性に関する1審原告らの主張に対する反論ア第1・十分位の消費支出との比較に合理性がないとする1審原告らの主張は理由がないこと(ア) 1審原告らの主張1審原告らは、第1・十分位の世帯では、社会的必需品が普及しておらず、その大部分が経済協力開発機構(OECD)の基準では相対的貧困層にあることなどからすると、第1・十分位の世帯の消費水準(生活扶助相当支出額)との比較に基づいてゆがみ調整をすべきではなかったと主張する(原判決23頁)。 (イ) 1審被告らの反論しかしながら、基準部会が生活保護受給世帯の比較対象として第1・十 分位世帯を用いることとした理由は、①平成25年検証においても、過去の検証に倣って生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが現実的であると判断されたこと、②第1・十分位の平均消費水準は、中位所得階層の約6割に達していること、③国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位に属する世帯における普及状況は、中位所得階層と比べておおむね遜色なく充足されている状況にあること、④全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向ではあるものの、特に第1・十分位のみが減少しているわけではないこと 遜色なく充足されている状況にあること、④全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向ではあるものの、特に第1・十分位のみが減少しているわけではないこと、⑤第1・十分位に属する世帯の大部分はOECDの基準では相対的貧困線以下にあること、⑥分散分析等の統計的手法(乙A第89号証)による検証からは、各十分位間の中で、第1・十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化しており、ほかの十分位の世帯に比べて消費の動向が大きく異なるものと考えられることにある(乙A第7号証4及び5頁)。そして、上記の各理由については、いずれも相応の根拠があるものであり、また、専門家である基準部会の委員も確認した上で、生活保護受給世帯と消費構造が近い世帯として第1・十分位世帯を用いることに問題はないとして検証を実施している。 したがって、第1・十分位世帯を用いて一般低所得世帯の消費実態を把握した平成25年報告書に基づいてゆがみ調整を行った厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえず、1審原告らの前記主張は理由がない。 イ平成25年検証においてサンプル世帯から生活保護受給世帯を除去しなかったことに合理性がないとする1審原告らの主張は理由がないこと(ア) 1審原告らの主張1審原告らは、平成25年検証の方法が「生活扶助費と第1・十分位層 の消費支出の乖離を検証する」ものであることを前提に、これが「比較する2つの集団が比較の対象とする要因に関しては厳密に区別されなければならないという統計学上の大原則に違反するもので、明らかに不合理である。」として、仮に第1・十分位の世帯の消費水準との比較に基づいてゆがみ調整をするとしても、比較対象の世帯から被保護世帯を除 ればならないという統計学上の大原則に違反するもので、明らかに不合理である。」として、仮に第1・十分位の世帯の消費水準との比較に基づいてゆがみ調整をするとしても、比較対象の世帯から被保護世帯を除外すべきであったなどと主張する(原判決24頁)。 (イ) 1審被告らの主張しかしながら、1審原告らの前記主張は、平成25年検証の方法を正解しないものである。 すなわち、1審原告らの前記主張は、平成25年検証の方法について、「比較する2つの集団が比較の対象とする要因に関しては厳密に区別されなければならない」という統計学上の原則に反することを指摘するものであると解されるが、かかる主張は、平成25年検証の方法が、第1・十分位世帯(ないし同世帯における消費実態)と生活保護受給世帯(ないし同世帯における消費実態)とを比較する場合に成り立つものである。 これに対し、平成25年検証は、生活扶助基準額に一般低所得世帯の消費実態が適切に反映されているかを検証するため、平成21年全国消費実態調査(平成21年全消調査)の第1・十分位のデータを使用し、その消費実態の年齢階級、世帯人員、級地別の指数と、それらの各世帯が実際に当時の基準により生活保護を受給した場合の生活扶助基準額の年齢階級、世帯人員、級地別の指数を比較したものである。すなわち、ここで「第1・十分位世帯の消費支出」と比較している対象は、同じ「第1・十分位世帯」が法及び告示で定められた当時の基準により受給するとした場合の「生活扶助基準額」であり、実際の生活保護受給世帯の消費支出額を比較対象としたものではない。このように、平成25年検証 は、第1・十分位世帯と生活保護受給世帯という「2つの集団」又は2つの集団におけるそれぞれの「消費支出」を比較したもの 費支出額を比較対象としたものではない。このように、平成25年検証 は、第1・十分位世帯と生活保護受給世帯という「2つの集団」又は2つの集団におけるそれぞれの「消費支出」を比較したものではない。したがって、1審原告らが主張するような、「比較する2つの集団が比較の対象とする要因に関しては厳密に区別されなければならない」といった点を考慮する必要はない。 以上のとおり、1審原告らの前記主張は、平成25年検証の方法を正解せず、第1・十分位世帯(平成21年全消調査)と生活保護受給世帯という「2つの集団」及び2つの集団におけるそれぞれの「消費支出」を比較するという前提において誤っている。したがって、平成25年検証においてサンプル世帯から生活保護受給世帯を除去しなかったことに関する厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえず、1審原告らの前記主張は理由がない。 ウ 1審原告らの主張は、ゆがみ調整や平成25年検証を正解せずにするものであること(ア) 1審原告らの主張1審原告らは、平成25年検証の具体的方法に関し、年齢階級別の分析結果をまとめたとする以下の表を挙げた上で、「被告国は、(引用者注:平成25年)報告書におけるA~D行の指標値に基づいた「ゆがみ調整」につき、「相対的な水準」に基づく生活保護給付水準の適正化であると主張し」ているとし、「A~D行の指標値が算出された時点で、1類費の乖離率による「ゆがみ調整」は、必然的に全体の予算が減額になるという結論になる」などと指摘している。 (イ) 1審被告らの反論a 1審原告らが指摘する上記表のうちA~D行については、平成25年報告書(乙A第7号証)14頁掲載の表と同じものである。そして、1審原告 (イ) 1審被告らの反論a 1審原告らが指摘する上記表のうちA~D行については、平成25年報告書(乙A第7号証)14頁掲載の表と同じものである。そして、1審原告らが、「A~D行の指標値に基づいた「ゆがみ調整」」と述べることからすると、1審原告らは、同表に記載された指数を前提として、ゆがみ調整が行われたことを前提とするようである。 しかしながら、ゆがみ調整は、平成25年報告書(乙A第7号証)8頁のグラフ中の、青色の折れ線(「現行の基準」:当時の生活扶助基準を指す。)を赤色の折れ線(「消費の実態」:第1・十分位世帯の消費の実態を指す。)に近づける調整を施したものである。そのため、ゆがみ調整に用いられた実際の指数は、同グラフに記載された指数である。 したがって、1審原告らの前記主張は、前提を誤るものである。 b なお、平成25年報告書(乙A第7号証)14頁の表(前記表5のA~D行)について説明すると、A行は、当時の生活扶助基準額*4につい *4 ただし、年収階級別第1・十分位が生活保護を受給したと仮定した場合の各年齢階級の当時の生活扶助基準額(第一類費) て、60代を1とした場合の他の年齢階級別の指数を算出したものである。B行及びC行は、平成21年全国消費実態調査データに基づき、「世帯の年間収入」第1・十分位の第一類費相当消費支出額の推計値(B行)及び「世帯員1人当たりの年間収入」第1・十分位の第一類費相当消費支出額の推計値(C行)を算出した上、A行と同様に、60代を1とした場合の他の年齢階級別の指数を算出したものである(乙A第7号証11~14頁)。 同表 」第1・十分位の第一類費相当消費支出額の推計値(C行)を算出した上、A行と同様に、60代を1とした場合の他の年齢階級別の指数を算出したものである(乙A第7号証11~14頁)。 同表を作成したのは、「年齢階級別指数間」を比較することにより、それぞれの年齢階級間の差の傾向にどのような違いがあるかを見ることを目的としたものである(表5で例えると、A行の横並びの指数同士を比較したものである)。 当然のことながら、60代の欄の指数は全て「1」となるが、A行~C行について、上記のとおり、元となるデータや計算方法等が異なることから、実際の金額は異なることになる。そのため、A行、B行及びC行の指数がもつ意味が異なり、これらを直接比較することが困難であった。 そこで、平成25年検証においては、A行の指数とB行及びC行の指数を直接比較することができるようにするため、A行を算出する前提となった世帯の生活扶助基準額の総額と生活扶助相当消費支出の総額が同額となるよう調整した(乙A第7号証3頁12~17行目)。かかる調整の結果作成されたのが、平成25年報告書(乙A第7号証)8頁のグラフであり、同グラフに示された指数のかい離を解消すべく生活扶助基準に反映したのがゆがみ調整である。 エ平成25年検証における回帰分析の手法に問題があるとする1審原告らの主張に理由がないこと(ア) 回帰モデルの決定係数が極めて低い値であるとの1審原告らの主張は理 由がないことa 1審原告らの主張1審原告らは、回帰分析における決定係数は、回帰モデルと現実のデータとの適合の良さ、すなわち、回帰モデルから得られる予測値の良さ(精度)を示すものであるところ、平成25年検証における回帰モデルの決定 審原告らは、回帰分析における決定係数は、回帰モデルと現実のデータとの適合の良さ、すなわち、回帰モデルから得られる予測値の良さ(精度)を示すものであるところ、平成25年検証における回帰モデルの決定係数が低いとし、ゆがみ調整は、このような「現実の消費実態を殆ど反映できていない推計値(予測値)」に基づいて行ったものであり、合理性を見いだすことができない旨主張する。 b 1審被告らの反論しかしながら、決定係数は、回帰分析における当てはまりの良さ、すなわちその回帰分析が実態を近似する程度を示す指標であり、決定係数の値が「0」(説明変数Xが被説明変数Yの変動を説明するのに全く役に立たない場合)であればともかく、どの程度の決定係数の値であれば実態を近似したものとして妥当と評価されるか(どの程度の決定係数の値であれば、無理のある近似であって妥当でないと評価されるか)については一般的な基準は存在せず、特定の決定係数の値以上でなければ採用し得ないといった統計的知見は存在しない。そして、平成25年検証における回帰分析の決定係数の値は、被説明変数の性質等を考慮すれば決して低いものではなく、妥当な数値というべきである。すなわち、既に述べたとおり、平成25年検証においては、平成21年の全消調査の個票データを用いており、このような個々の家計のデータはクロス・セクション(横断面)データと呼ばれるものであるところ(乙A第86号証16頁)、クロス・セクションデータを用いた世帯の消費を被説明変数とする回帰分析については、その決定係数は0.3くらいしか得られない場合も多いとされ(乙A第87号証43頁)、0.5でも極めて良い評価とされている(乙A第86号 証31頁)。そうすると、平成25年検証の回帰分析(年齢体系の第1類費)における 得られない場合も多いとされ(乙A第87号証43頁)、0.5でも極めて良い評価とされている(乙A第86号 証31頁)。そうすると、平成25年検証の回帰分析(年齢体系の第1類費)における決定係数の値(データ①については0.28、データ②については0.36)は低いと評価されるようなものではなく、まして、その採用が統計的に誤りといえるような極端に低いものではない。 以上のとおり、平成25年検証の決定係数の値のみをもって、その回帰分析が不合理であると指摘する1審原告らの上記主張は、統計的分析の当不当を指摘するものにすぎず、厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があることを基礎づけ得るものではない。また、統計的手法の当不当の問題として見ても、平成25年検証の決定係数の値は、被説明変数の性質を考慮すれば決して低いものではなく、消費実態を近似するものとして、妥当な数値と評価できるものである。 したがって、1審原告らの上記主張は、理由がない。 なお、平成25年検証において、回帰分析を用いて算出された指数のうち、基準額に反映されたのは、年齢階級別(第1類費)の指数(乙A第7号証8頁の4つの表のうち左上の表の指数)のみである。年齢体系以外の世帯人員(第1類費、第2類費)及び級地差の検証については、平成21年の全消調査の実データに基づき平均消費水準を指数化しており、回帰分析はその検証結果の妥当性を確認したにとどまり(乙A第7号証3頁)、回帰分析を用いて算出された指数はゆがみ調整に用いられなかった(平成25年報告書において、「一部」統計的手法である回帰分析を採用したとあるのは、以上のような趣旨である。)。 したがって、1審原告らの前記主張は、年齢階級別以外の指数についてはそもそも当てはまるも において、「一部」統計的手法である回帰分析を採用したとあるのは、以上のような趣旨である。)。 したがって、1審原告らの前記主張は、年齢階級別以外の指数についてはそもそも当てはまるものではない。 (イ) 平成25年検証のt検定の採用方法に誤りがあるとする1審原告らの主 張は理由がないことa 1審原告らの主張1審原告らは、平成25年検証の回帰分析においては、「回帰係数のt検定」により「不要」であると判断された説明変数が多数存在したにもかかわらず、これら説明変数を除外せずに検証結果を求めており、このようなt検定の結果を全く反映させていない回帰分析に基づく消費支出額の予測について、現実の消費構造を反映したものということは困難である旨主張する。 b 1審被告らの反論しかしながら、t検定において、帰無仮説を「採択」すること、すなわち「棄却しない」ことの意味は、当該帰無仮説を積極的に支持すること(すなわち、帰無仮説が「真」であって、説明変数に効果がないことを積極的に支持すること)を意味するとはいえない。したがって、有意水準を5パーセントとした場合に帰無仮説を棄却できないとしても、その説明変数を除外しなければ、回帰分析の結果を採用できないというものではない。これを1審原告らが指摘する「級地」を説明変数とするt検定についていえば、「級地ダミーの係数が0(すなわち、当該級地の説明変数が被説明変数に及ぼす真の効果(有意性)が0)」という帰無仮説を検定したものであるが、t検定の結果、上記帰無仮説が有意水準5パーセントの場合に「採択」されたことの統計的な意味は、「帰無仮説(級地ダミーの係数が0)が正しい」というものではなく、「帰無仮説と矛盾しない」(乙A第88号証237頁 果、上記帰無仮説が有意水準5パーセントの場合に「採択」されたことの統計的な意味は、「帰無仮説(級地ダミーの係数が0)が正しい」というものではなく、「帰無仮説と矛盾しない」(乙A第88号証237頁)、「(帰無仮説が)誤っているとは考えにくい」(乙A第80号証24頁参照)というものにすぎない。 したがって、有意水準を5パーセントとした場合にt検定によって帰無仮説が棄却されなかったとしても、その説明変数について、その有 意性が0であるといえるものではなく、これが除去されなければ、その回帰分析が統計的に誤っているということにはならない。 以上のとおり、1審原告らの上記主張は、t検定によって帰無仮説が棄却できない場合の統計的解釈を誤るものであるから、厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があることを基礎づけ得るものではない。 なお、1審原告らの上記主張が、年齢階級別(第1類費)以外の指数に当てはまるものではないことは、前記のとおりである。 (ウ) 平成25年検証では誤差項の分散均一性等の統計的方法に課せられる仮定を満たしているか否かの検討がされておらず、そのデータの精度には大きな疑問があるとの1審原告らの主張は理由がないことa 1審原告らの主張1審原告らは、回帰分析の結果を適切に評価するためには、①誤差項の分散均一性、②正規性、③説明変数間の多重共線性など、統計的方法に課せられている仮定を満たしておく必要があるにもかかわらず、平成25年検証において、これらの仮定を満たしているか否か触れられておらず、上記①~③を行っていない平成25年検証のデータの精度には疑問がある旨主張する。 b 1審被告らの反論しかしながら、1審原告ら らの仮定を満たしているか否か触れられておらず、上記①~③を行っていない平成25年検証のデータの精度には疑問がある旨主張する。 b 1審被告らの反論しかしながら、1審原告らの指摘する前記①~③の「仮定を満たしているか否か」といった検討は、t検定と同様、回帰分析結果について、事後的にその精度を検証するための統計的検定の手法ではあるものの、上記各手法を用いなければ回帰分析の結果を採用し得ないといったような統計的知見は全く存在しない(例えば、回帰分析についての基本的な教材である乙A第80号証にもその趣旨の記載はない。)。 これは、回帰分析は、実証的分析における実態(この場合は消費実態) の「近似」にすぎないものであり(同号証26頁)、1審原告らの指摘する上記各手法の仮定を満たしているかといった検討手法によったとしても、その「近似」の程度を検証ないし追究することには、統計学上、おのずから限界があることによるものである。 以上のとおり、上記各手法を採用しなければ回帰分析の結果を採用し得ないといったような統計的知見が存在しない以上、上記各手法を採用していないことは、厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があることを基礎づけ得るものではない。 (エ) 最小二乗法による回帰分析についてa 1審原告らの主張1審原告らは、第11回社会保障審議会生活保護基準部会・資料2「これまでの部会における議論を踏まえた具体的な検証方法等について」(乙A第41号証)の4頁の資料(以下、本書面において「部会資料2」という。)のイメージ図について、これは最小二乗法による回帰分析のものではなく、直交回帰又は主成分回帰による回帰分析のものであるから、通常行われるべき最小 の資料(以下、本書面において「部会資料2」という。)のイメージ図について、これは最小二乗法による回帰分析のものではなく、直交回帰又は主成分回帰による回帰分析のものであるから、通常行われるべき最小二乗法による回帰分析は採用せず、直交回帰又は主成分回帰と呼ばれる特殊な方法を採用した疑いがある旨主張する。 b 1審被告らの反論しかしながら、平成25年検証においては、最小二乗法による重回帰分析を行っているものである(なお、そもそも、1審原告らの指摘する部会資料2のイメージ図は、「回帰分析」について簡略に説明するために単回帰分析のイメージ図を用いたものであって、実際の平成25年検証は重回帰分析であるから、このイメージ図がそのまま妥当するものではないが、この点はここではおく。)。このことは、部会資料2のイメージ図中に「データの平均的傾向を最も偏りなく反映する という条件から、aとbが求まる。(最小二乗法の考え方)」と明確に併記されていることからも明らかである。 1審原告らが指摘する部会資料2のイメージ図(単回帰分析のイメージ図)では、散布図上の点(被説明変数)からの最短距離の線が回帰直線(被説明変数を点として表示した散布図において、全ての点から最も距離の短いところに引く直線。以下、本書面において同じ。)に対し直角に交わるよう示されているところ、正しくは被説明変数の点から回帰直線に対し真下(若しくは真上)に引かれた線と交わるように示されるべきであるから、その限りで、単回帰分析のイメージ図として誤解を招くものではある。しかし、上記併記されている文言からも分かるように、基準部会の委員に対して誤った説明をしたものではない。 ⑷ デフレ調整の適法性に関する1審原告らの主張に対する反論ア基 くものではある。しかし、上記併記されている文言からも分かるように、基準部会の委員に対して誤った説明をしたものではない。 ⑷ デフレ調整の適法性に関する1審原告らの主張に対する反論ア基準部会等の専門機関による検討を経ていないことをもってデフレ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとする1審原告らの主張は理由がないこと(ア) 1審原告らの主張1審原告らは、法の立法過程では、専門家による審議会等の慎重な検討に基づいて保護基準を決定することが前提とされており、それが厚生労働大臣の裁量判断の正当性を根拠づけるものとされていたが、デフレ調整については、専門家(基準部会)による検討を経ていないことから、厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があるなどと主張する(原判決25及び26頁)。 (イ) 1審被告らの反論a デフレ調整について基準部会等の専門機関に意見を求めなかった点に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落はないこと デフレ調整について、基準部会等の専門機関に意見を求めなかった理由は、①平成25年検証において生活扶助基準の「水準」についての検証が行われなかったこと、②厚生労働大臣は生活保護基準改定に係る専門技術的知見を有していること、③デフレ調整の内容はそれまでの生活扶助基準の改定の基本的な考え方や専門機関による検証の考え方と齟齬するものではなかったこと、④社会保障制度改革推進法の附則により、生活扶助基準について必要な見直しを早急に行うことが求められていたこと、⑤基準部会等の専門機関に意見を求めなければ保護基準の改定が行えないものではないこと、⑥厚生労働大臣が行おうとする保護基準の改定の当否等について意見を述べることは、基 行うことが求められていたこと、⑤基準部会等の専門機関に意見を求めなければ保護基準の改定が行えないものではないこと、⑥厚生労働大臣が行おうとする保護基準の改定の当否等について意見を述べることは、基準部会の設置の趣旨及び審議事項ではないことによる。 これによれば、基準部会等の専門機関による検討を経ていないことをもって、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえない。 b 1審原告らの前記主張が厚生労働大臣の裁量権の範囲を狭く解していることの誤り1審原告らの前記主張は、保護基準の改定が基準部会等の専門機関による検討を経ていない場合には違法となる旨を述べるものであり、これは、保護基準の改定に係る厚生労働大臣の裁量権について、少なくとも手続的に覊束するものであり、同大臣の裁量権の範囲を狭く解するものといえる。 しかしながら、堀木訴訟最高裁判決及び老齢加算訴訟最高裁判決が判示するとおり、憲法25条並びに法3条及び8条2項の規定にいう最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、これを保 護基準において具体化するに当たっては、国の財政事情を含めた多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであり、保護基準の改定については厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められる。 そして、保護基準の改定について厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められることからすれば、その裁量権の範囲はおのずから広範なものと解すべきである。こ められる。 そして、保護基準の改定について厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められることからすれば、その裁量権の範囲はおのずから広範なものと解すべきである。この点については、老齢加算福岡訴訟最高裁判決について、「本件改定を行った厚生労働大臣の判断については、異質かつ多元的な諸利益を評価して比較衡量するという優れて専門技術的かつ政策的な判断であることは否めないために、その裁量の幅は広いものといわざるを得ない」(最高裁判所判例解説民事篇平成24年度(下)469及び470頁)と指摘されているところである。 したがって、保護基準の改定に係る厚生労働大臣の裁量権の範囲を殊更に狭く解する1審原告らの前記主張は、同大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの広範な裁量権が認められることと整合しないものである。 そもそも、保護基準の改定に係る厚生労働大臣の裁量権に対して1審原告らが主張するような制約が存するか否かは、保護基準の改定の根拠法規(生活保護法)の解釈問題である。 そこで、保護基準の改定に当たり基準部会等の専門機関による検討を経る必要があるといえるかという観点から法の規定について検討するに、厚生労働大臣が保護基準の改定に当たり基準部会等の専門機関に諮問し又はその意見を求めることなどを定める法令上の規定はなく、法やその関連法規には、保護基準の改定に当たり専門機関による検討 が必要である旨の規定は見当たらない。 また、基準部会は、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会に置かれる常設の部会であるが(厚生労働省設置法7条、社会保障審議会令6条1項)、その設置の趣旨及び審議事項は、「生活保護基準の定期的な評価・検証」を行うことである(乙A第23号証 る社会保障審議会に置かれる常設の部会であるが(厚生労働省設置法7条、社会保障審議会令6条1項)、その設置の趣旨及び審議事項は、「生活保護基準の定期的な評価・検証」を行うことである(乙A第23号証)。すなわち、基準部会の設置の趣旨及び審議事項は、飽くまで、現在の生活保護基準の定期的な評価・検証に限られるのであって、厚生労働大臣が行おうとする保護基準の改定についての当否等について検討することは、基準部会の設置の趣旨及び審議事項とされていない。 他方、厚生労働大臣は、生活保護行政の責任者として法を所管しており(厚生労働省設置法4条1項)、各種の統計調査や現場において生活保護行政を担う地方自治体からの情報収集等を通じて生活保護受給世帯の生活実態を把握するとともに、専門機関から累次にわたり保護基準に関する分析及び検証の結果を聴取するなどしている。このように、厚生労働大臣には、生活保護行政の責任者として必要となる専門技術的知見が蓄積されており、保護基準の改定に係る同大臣の判断は、このようにして蓄積されてきた専門技術的知見を踏まえた考察に基づくものである。 以上からすると、法が、保護基準の設定及び改定について、8条において抽象的に規定するのみで、基準部会等の専門機関の意見を聴取することを求めていないのは、高度に専門技術的かつ政策的な判断を要する保護基準の設定及び改定については、厚生労働大臣(所部の職員を含む。)が専門技術的知見を有することを前提に、終局的には厚生労働大臣の政策判断に委ねる趣旨であると解される。 したがって、基準部会等の専門機関に諮らなければ保護基準の改定が行えないものではないし、また、その検証結果をそのまま保護基準に 反映させなければならないものでもなく、かつ、これらの手続を したがって、基準部会等の専門機関に諮らなければ保護基準の改定が行えないものではないし、また、その検証結果をそのまま保護基準に 反映させなければならないものでもなく、かつ、これらの手続を採らないことが厚生労働大臣の判断に係る裁量権の範囲を制約することを正当化する根拠にはならない。 この点、老齢加算福岡訴訟最高裁判決は、保護基準の改定における専門委員会の意見の位置づけについて、「そもそも専門委員会の意見は、厚生労働大臣の判断を法的に拘束するものではなく、その意見は保護基準の改定に当たっての考慮要素として位置付けられるべきものである」ことを明確に判示している。 c 1審原告らが主張する前記判断枠組みは、保護基準の改定の適法性を判断するための判断過程審査としては採用し得ないものであるまた、一般に、行政裁量が認められる行政処分の適否が問題となる場合における判断過程審査とは、裁判所が、「原告」が納得できないと主張する点について、行政機関(「被告」)の説明する判断過程が一応の説得力を持つか否かを審査する形で、いわば行政機関の説明する判断過程をできるだけ生かす審査方法であると解されており(山本隆司「行政裁量の判断過程審査の理論と実務」司法研修所論集2019(第129号)1頁(上記引用箇所は6頁))、同審査では、「被告」が説明する論証過程を追試的に検証し、それが一応納得できるものか否かという観点から、その適否が判断されることになる(岡田最高裁調査官解説297頁参照)。 これに対し、1審原告らの前記主張は、行政機関の説明する判断過程が一応の説得力を持つか否かを問わず、基準部会等の専門機関による審議検討を経ているか否かという観点から審査するものであり、本来の判断過程審査の手法を逸脱するもの 記主張は、行政機関の説明する判断過程が一応の説得力を持つか否かを問わず、基準部会等の専門機関による審議検討を経ているか否かという観点から審査するものであり、本来の判断過程審査の手法を逸脱するものである。 そもそも、判断過程審査によって行政機関の判断過程の一部に瑕疵があると判明しても、その瑕疵が判断の結論に影響する可能性がおよそ ない場合には、行政機関の判断を違法としない、判断過程の瑕疵により結論がおよそ左右されないにもかかわらず処分を違法として取り消すことは難しいとされている(山本・前掲「行政裁量の判断過程審査の理論と実務」7及び8頁)。そのため、論証過程の統制による審査においては、保護基準の改定に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があり、そのために判断が左右されたといえるかどうかが審査されることになる(岡田最高裁調査官解説297頁)。 前記のとおり、保護基準の改定について厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるため、保護基準の改定に係る同大臣の判断に違法の問題が生じるのは、朝日訴訟最高裁判決がいうように「現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し」たと評価できるときであり(岡田最高裁調査官解説288及び302頁参照)、保護基準の改定に係る厚生労働大臣の判断については、上記判断の過程及び手続に過誤、欠落があり、そのために上記判断が「現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し」たと評価できるほど明らかに合理性を欠くと認められるときでなければ、違法とはならないというべきである。 そして、単に基準部会等の専門機関による検討を経ていないことのみをもって保護基 し」たと評価できるほど明らかに合理性を欠くと認められるときでなければ、違法とはならないというべきである。 そして、単に基準部会等の専門機関による検討を経ていないことのみをもって保護基準の改定に係る判断の結論が著しく合理性を欠き明らかに裁量権の範囲を逸脱し又は濫用したものということはできないから、1審原告らの前記主張は、この点においても誤りである。 d 老齢加算訴訟最高裁判決は厚生労働大臣の裁量権の範囲を狭く解する根拠とならないことさらに、老齢加算東京訴訟最高裁判決は、判断過程審査を採用するに当たって、「老齢加算の減額又は廃止の要否の前提となる最低限度の 生活の需要に係る評価や被保護者の期待的利益についての可及的な配慮は、(中略)専門技術的な考察に基づいた政策的判断であって、老齢加算の支給根拠及びその額等については、それまでも各種の統計や専門家の作成した資料等に基づいて高齢者の特別な需要に係る推計や加算対象世帯と一般世帯との消費構造の比較検討がされてきたところである。」と述べ、「これらの経緯等に鑑みると」として、判断過程審査を採用する旨を判示している(老齢加算福岡訴訟最高裁判決も同旨)。 このように、老齢加算訴訟最高裁判決は、老齢加算の減額又は廃止の要否の前提となる最低限度の生活の需要に係る評価等が専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断であることや、老齢加算の支給根拠等に関する検討の経緯等を理由に判断過程審査を採用しており、これらの事情については、生活扶助基準の「水準」の見直しであるデフレ調整にも当てはまるといえる。そのため、このような老齢加算訴訟最高裁判決の判示からは、保護基準の改定について基準部会等の専門機関の判断を経ていない場合に同判決の採用した判断過程審査( しであるデフレ調整にも当てはまるといえる。そのため、このような老齢加算訴訟最高裁判決の判示からは、保護基準の改定について基準部会等の専門機関の判断を経ていない場合に同判決の採用した判断過程審査(判断過程合理性審査)が妥当しないことになるとはいえない。 したがって、1審原告らの前記主張は老齢加算訴訟最高裁判決を正解しないものである。 なお、老齢加算東京訴訟最高裁判決は、前記のとおり、「老齢加算の支給根拠及びその額等については、それまでも各種の統計や専門家の作成した資料等に基づいて高齢者の特別な需要に係る推計や加算対象世帯と一般世帯との消費構造の比較検討がされてきた」と述べ、判断過程審査を採用する理由の一つとして、このような老齢加算の支給根拠等に関する専門委員会における検討の経緯を挙げている。 もっとも、専門機関による検討の結果は、保護基準の改定に当たって の考慮要素の一つであり、現に、厚生労働大臣は、専門機関による検証の有無を問わず、その当時の社会経済情勢等の諸般の事情を総合的に勘案し、その専門技術的かつ政策的な見地からの裁量判断に従って保護基準の改定を行っているのであるから、本件改定以前の保護基準の改定の経緯をみても、専門機関による検討を経ていない場合に厚生労働大臣の裁量権が制約を受けると解することにはならない。 すなわち、厚生労働大臣は、専門機関による定期的な生活扶助基準の検証が行われた場合(平成16年検証、平成19年検証、平成25年検証及び平成29年検証)には、その検証結果を踏まえた改定を行っているが、例えば、平成19年検証においては、生活扶助基準額の水準が一般低所得者の生活扶助相当支出額の水準に比べて「やや高め」(単身世帯については「高め」)となっていると指摘 果を踏まえた改定を行っているが、例えば、平成19年検証においては、生活扶助基準額の水準が一般低所得者の生活扶助相当支出額の水準に比べて「やや高め」(単身世帯については「高め」)となっていると指摘されていたものの(乙A第6号証5頁)、厚生労働大臣は、原油価格の高騰等が消費に与える影響等の社会経済情勢を見極める必要性等を勘案して、平成19年検証の結果を踏まえた改定を行わないこととした(乙A第103号証)。 また、水準均衡方式に基づく毎年度の改定においても、消費の動向(民間最終消費支出の伸び率)を生活扶助基準の水準に反映させる趣旨の改定が常に行われてきたわけではない。例えば、平成20年度から平成24年度の改定においては、その当時の社会経済情勢等を考慮して、消費の動向を基礎とした改定を行わずに生活扶助基準を据え置くという判断がされている(乙A第103号証~同第107号証)。 さらに、その余の保護基準の改定については、専門機関に諮ることなく行われてきた。 以上のとおり、厚生労働大臣は、専門機関による検証の有無を問わず、その当時の社会経済情勢等の諸般の事情を総合的に勘案し、その専門 技術的かつ政策的な見地からの裁量判断に従って保護基準の改定を行っている(そして、厚生労働大臣の同判断の結果は、平成16年検証、平成19年検証及び平成29年検証によって、いずれも妥当(又は生活扶助基準額の方が高い)と評価されてきた。)。このような保護基準の改定に係るこれまでの経緯をみても、保護基準の改定を行うに当たり基準部会等による審議検討を経ていない場合に厚生労働大臣の裁量権が制約を受けるなどと解することはできない。 イデフレ調整に当たり物価の動向を考慮したことに関する1審原告らの主張に対する反論 部会等による審議検討を経ていない場合に厚生労働大臣の裁量権が制約を受けるなどと解することはできない。 イデフレ調整に当たり物価の動向を考慮したことに関する1審原告らの主張に対する反論(ア) 1審原告らの主張1審原告らは、「生活扶助基準の改定に物価を用いること自体、昭和58年意見具申や平成16年報告書、平成25年報告書といった「専門的知見」と「整合性」が認められない」と主張する。 (イ) 1審被告らの反論a デフレ調整において物価変動を指標とした改定を行うこととした点に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落がないことしかしながら、厚生労働大臣がデフレ調整に当たり物価変動(生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加分)を指標とした改定を行うこととした理由は、これまで述べてきたとおりであり、このような厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえない。 b デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程において昭和58年意見具申、平成16年報告書及び平成25年報告書がどのように用いられたかを踏まえない1審原告らの主張は当を得ないものであることこれに対し、1審原告らは前記のとおり主張するが、老齢加算訴訟最高裁判決の採用した判断枠組みを踏まえれば、厚生労働大臣の行った 本件改定の判断における「統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性」の有無についての裁判所の審査は、1審被告らが挙げる理由から本件改定の判断が導かれ得るか、1審被告らが掲げる理由に論理の飛躍や連関を欠くところがあるか否かという観点から行われなければならない。 そして、1審原告らの指摘する昭和58年意見具申、平成16年報告書及 れ得るか、1審被告らが掲げる理由に論理の飛躍や連関を欠くところがあるか否かという観点から行われなければならない。 そして、1審原告らの指摘する昭和58年意見具申、平成16年報告書及び平成25年報告書は、いずれもデフレ調整との関連の乏しいものであるから、デフレ調整を行うこととした厚生労働大臣の判断の過程において上記各報告書等がどのように用いられたかを踏まえることのないまま、デフレ調整が上記各報告書と整合するかどうかを問題とする1審原告らの主張は、そもそも当を得ないものである。 c デフレ調整において物価変動を考慮したことが昭和58年意見具申、平成16年報告書及び平成25年報告書との整合性を欠くものではないことこの点をおくとしても、以下に述べるとおり、デフレ調整において物価変動を考慮したことが昭和58年意見具申、平成16年報告書及び平成25年報告書との整合性を欠くとはいえない。 厚生省(当時)の審議会である中央社会福祉審議会が取りまとめた昭和58年意見具申は、「生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民生活における消費水準との比較における相対的なものとして設定すべきものであり、生活扶助基準の改定に当たっては、(中略)民間最終消費支出の伸びに準拠することが妥当である」としたものである(乙A第9号証1及び2頁)。そして、この昭和58年意見具申を踏まえ、昭和59年度以降、毎年度の生活扶助基準の改定方式として水準均衡方式が採用されてきた。 もっとも、厚生労働大臣は生活保護行政の責任者として専門技術的知 見を有しており、保護基準の設定及び改定については、同大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの広範な裁量権が認められている。そして、改定の方式についても法令上の 責任者として専門技術的知 見を有しており、保護基準の設定及び改定については、同大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの広範な裁量権が認められている。そして、改定の方式についても法令上の定めはなく、具体的な改定の手法は特定の方法に限られるものではない。 また、生活扶助基準の改定に当たっては、生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方が一貫してとられている。一般国民の生活水準との均衡を図るという水準均衡方式においても、均衡を評価するための指標としては消費のほかに賃金や物価も考えられるところであって、過去にマーケットバスケット方式やエンゲル方式が採用されていたことからも明らかなとおり、消費そのものを改定の指標とすることが唯一で絶対的な方法として考えられてきたものではない。そして、消費を基礎とする水準均衡方式についても、法令上定められたものではなく、厚生労働大臣が昭和58年意見具申以降採用している事実上の改定指針の一つにすぎないのであるから、保護基準の改定に係る同大臣の判断を拘束するものではない。 さらに、そもそも、消費を基礎とする水準均衡方式は、一般国民の生活水準との比較において妥当と評価された生活扶助基準を基に、毎年度、比較対象である一般国民の消費水準の伸び(変化)を指標として、妥当とされた生活扶助基準の水準を将来に向かって維持しようとするものであって、基本的には毎年度の生活扶助基準の改定において用いられてきた考え方である。そして、水準均衡方式が採用された昭和58年当時は、我が国の経済が右肩上がりに成長を続けていた時期であり、一般国民の消費支出の増加に伴い、生活扶助基準も増額改定がされることが見込まれる状況であった( して、水準均衡方式が採用された昭和58年当時は、我が国の経済が右肩上がりに成長を続けていた時期であり、一般国民の消費支出の増加に伴い、生活扶助基準も増額改定がされることが見込まれる状況であった(実際、昭和59年から平成12年までの間、生活扶助基準の額は毎年増額されている。乙A第11号 証)。 これに対し、デフレ調整は、生活扶助基準の毎年度の改定として行われたものではない上、平成20年9月のリーマンショックに端を発する世界金融危機によって、賃金、物価、家計消費等が落ち込むという経済状況にあり、生活扶助基準と一般国民との間の不均衡が存在しているという前提でこれを是正するために行われたものである。昭和58年意見具申当時の社会経済動向がそれ以降に変化したことについては、専門委員会による平成15年中間取りまとめにおいても、「昭和59年度以降、(中略)毎年度の政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びを基礎とする改定方式が採られて(中略)きたが、最近の経済情勢はこの方式を採用した当時と異なる」旨、明確に指摘されていたところである(乙A第14号証2頁)。 このように、デフレ調整が行われた状況は、これまで水準均衡方式が用いられてきた場面とは異なっている(ただし、デフレ調整についても、従前の水準均衡方式と同様、一般国民の生活水準との均衡を図ろうとするものであり、この点は共通する。)。したがって、デフレ調整において物価変動を考慮したことが昭和58年意見具申との整合性を欠くとはいえない。 1審原告らは、デフレ調整において物価変動を考慮したことが平成16年報告書と整合しないと主張するが、同報告書に生活扶助基準の水準の改定について物価変動を考慮することを除外する趣旨の記載は見当たらない。むしろ、専門委員会 整において物価変動を考慮したことが平成16年報告書と整合しないと主張するが、同報告書に生活扶助基準の水準の改定について物価変動を考慮することを除外する趣旨の記載は見当たらない。むしろ、専門委員会は、平成16年報告書に先立つ平成15年中間取りまとめにおいて、生活扶助基準の水準の改定について、「例えば、年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられる。」と指摘していた(乙A第14号証2頁)。 したがって、デフレ調整において物価変動を考慮したことが平成16年報告書との整合性を欠くとはいえない。 さらに、1審原告らは、デフレ調整において物価変動を考慮したことが平成25年報告書とも整合しないと主張するが、平成25年報告書には、「厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。」(乙A第7号証8頁)とされる一方で、物価変動を考慮することを除外する趣旨の記載は見当たらない。 したがって、デフレ調整において物価変動を考慮したことが平成25年報告書との整合性を欠くとはいえない。 ウデフレ調整において物価変動率を算定する期間の始期を平成20年とした点に関する1審原告らの主張は理由がないこと(ア) 1審原告らの主張1審原告らは、デフレ調整の始期を平成20年としたことの根拠がない旨主張する。 (イ) 1審被告らの反論a 物価変動率の算定期間の始期を平成20年としたのはデフレ調整の目的を踏まえたものであり、この点に関する厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落 。 (イ) 1審被告らの反論a 物価変動率の算定期間の始期を平成20年としたのはデフレ調整の目的を踏まえたものであり、この点に関する厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落はないことしかしながら、厚生労働大臣がデフレ調整に当たって物価変動率を算定する期間の始期を平成20年とした理由は、これまで述べたとおりである。 すなわち、厚生労働大臣が物価変動率を算定する期間の始期を平成20年としたのは、デフレ調整の目的が、平成20年以降のデフレ傾向による生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加による 同世帯と一般国民との間の不均衡を是正することにあったためである。 厚生労働大臣は、このような平成20年以降のデフレ傾向により生活保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加した(生活扶助基準の水準が実質的に引き上げられた)と評価することができる状況にあり、生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との不均衡はより一層顕著となっていたことから、かかる平成20年以降のデフレ傾向によって拡大した生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との不均衡を是正するためにデフレ調整を行ったものである。 したがって、物価変動率の算定期間の始期を平成20年とした点に関する厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落はない。 b 平成20年を始期とすることによって平成19年から平成20年にかけての物価変動が反映されないこととなったとしても、これによってデフレ調整後の生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との均衡を失することにはならないこと確かに、消費者物価指数は、平成19年から平成20年にかけて1パーセントを超える上昇をしていたが、既に平成19年検証において、生活扶 民の生活水準との均衡を失することにはならないこと確かに、消費者物価指数は、平成19年から平成20年にかけて1パーセントを超える上昇をしていたが、既に平成19年検証において、生活扶助基準と一般低所得世帯との不均衡(夫婦子1人世帯において約1.1パーセント、単身高齢世帯において約13パーセント)が確認されていたところであり、平成20年を始期とすることによって平成19年から平成20年にかけての物価変動が反映されないこととなったとしても、これによってデフレ調整後の生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との均衡を失することにはならない。 さらに、仮に平成19年を始期として物価変動率を算定したとしても、生活扶助相当CPIの変動率はマイナス4.60パーセントであって (甲A第324号証)*5、平成20年を始期とした変動率マイナス4. 78パーセントとは0.18パーセントの差があるにすぎない。 したがって、平成19年から平成20年にかけて消費者物価指数が1. 4パーセント上昇していたとしても、このことによってデフレ調整における物価変動率を算定する期間の始期を平成20年とした厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があるということはできない。 エデフレ調整の適法性の判断に当たり生活保護受給世帯に4.78パーセントの可処分所得の相対的、実質的増加があったか否かが審査されるべきであるとする1審原告らの主張に理由がないこと(ア) 1審原告らの主張1審原告らは、本件改定の適法性の判断に当たり、裁判所は、1審被告らが主張する生活保護受給世帯に4.78パーセントの可処分所得の相対的、実質的増加があったか否かを審査すべきであると主張する。 (イ) 1審被告らの反論 当たり、裁判所は、1審被告らが主張する生活保護受給世帯に4.78パーセントの可処分所得の相対的、実質的増加があったか否かを審査すべきであると主張する。 (イ) 1審被告らの反論 *5 まず、甲A第324号証の表中の「②CPI」欄(平成19年平均のもの)に記載されている各品目別の価格指数に、「①左記ウエイト中生活扶助相当品目」欄記載の値を乗じた数値を算出して合計すると、平成19年平均の数値が「643556.7」となる。この数値を、除外品目を除いた生活扶助相当品目のウエイトの合計である6169(平成19年平均)で除すると、以下の計算式のとおり、平成19年の生活扶助相当CPIの試算結果は「104.3」となる。なお、平成19年平均の生活扶助相当品目のウエイトの合計が平成20年平均のもの(6189)とで異なっているのは、平成20年に消費者物価指数の中間年見直しが行われ、平成20年において新たに加えられた品目(3品目、ウエイト合計20)が存在することによるものである。 平成19年生活扶助相当CPI:643556.7÷6169≒104.3以上のとおり得られた数値を用いて、平成19年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率(下落率)を試算すると、次の計算式のとおり、マイナス4.60パーセントと算定される。 (99.5/104.3)-1≒-0.0460(△4.60 %) a 判断の過程ではなく判断の結論について審査することは、判断過程審査から逸脱するものであること本件改定に係る厚生労働大臣の裁量判断に対する審査は、老齢加算訴訟最高裁判決と同じく、「原告の主張を踏まえながら行政庁の論証過程を追 ることは、判断過程審査から逸脱するものであること本件改定に係る厚生労働大臣の裁量判断に対する審査は、老齢加算訴訟最高裁判決と同じく、「原告の主張を踏まえながら行政庁の論証過程を追試的に検証し、それが一応納得できるものか否かの点に限って一点一点審理すべきであるとする」ものであり、この審査による場合においては、1審被告らが説明する判断過程を追試的に検証し、これが一応納得できるかという観点から、すなわち、1審被告らが挙げる理由から本件改定の判断が導かれ得るか、1審被告らが掲げる理由に論理の飛躍や連関を欠くところがあるか否かという観点から、審査がなされることになる。 そして、このような老齢加算訴訟最高裁判決の判断過程審査(論証過程の追試的検証)については、行為の内容(結論)に着目するのではなく、行為を行うに至った判断過程に着目した審査である点に特色があるとされている(甲A第119号証13頁)。したがって、かかる審査手法に従えば、デフレ調整における改定率をマイナス4.78パーセントとすることとした厚生労働大臣の判断の適法性の審査においては、かかる判断に至った過程に着目した上で、1審被告らが挙げる理由からデフレ調整における改定率をマイナス4.78パーセントとした厚生労働大臣の判断が導かれ得るか、1審被告らが掲げる理由に論理の飛躍や連関を欠くところがあるか否かという観点から、審査がなされることになる。 具体的にいえば、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断過程(デフレ調整における改定率をマイナス4.78パーセントとすることとした判断過程)、すなわち、厚生労働大臣が、平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準 の相対的、実質的な引上げ)により生じた一 とすることとした判断過程)、すなわち、厚生労働大臣が、平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準 の相対的、実質的な引上げ)により生じた一般国民との間の不均衡の是正を図るためのデフレ調整を行うとしたこと、そして、そのデフレ調整を遂行する上で、平成20年以降の生活保護受給世帯の相対的、実質的な可処分所得の増加の程度を把握するため、生活扶助相当CPIを設定し、その下落率を生活扶助基準に反映させる手法を選択したこと、さらに、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの下落率4.78パーセントが、平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加分となっているものと評価し、その数値分を減額することで生活保護受給世帯と一般国民との間の不均衡を是正することが相当であると判断したことについて着目した上で、1審原告らの主張も踏まえながら、1審被告らが説明する厚生労働大臣の上記判断過程に論理の飛躍や連関を欠くところがあるか否かが問題とされるべきものである。 1審原告らの前記主張が、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断過程には着目せず、デフレ調整における改定率をマイナス4.78パーセントとした判断の当否を審査の対象とすべきであるという趣旨であるとすれば、それは、判断の過程ではなく判断の結論について審査することにほかならず、判断代置的な審査手法であって、老齢加算訴訟最高裁判決が採用した判断過程審査(論証過程の追試的検証)から逸脱するものといわざるを得ない。 b 生活扶助相当CPIの設定に関する判断過程審査に当たっては、これに関する厚生労働大臣の判断過程が正しく理解されなければならないことそして、厚生労働大臣は、生活扶助相当CPIの設定に 生活扶助相当CPIの設定に関する判断過程審査に当たっては、これに関する厚生労働大臣の判断過程が正しく理解されなければならないことそして、厚生労働大臣は、生活扶助相当CPIの設定に当たり、これによって平成20年以降の生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加の程度をより正確に把握することを一つの重要な 考慮要素として斟酌しているものの、考慮すべき要素はそれに限られるわけではなく、恣意的な判断が介在しないという意味での合理性や、生活保護受給世帯を含む国民に対する説明可能性(説明の分かり易さという意味での簡便さ)も考慮したものである。 ふえんすると、生活扶助相当CPIは、客観性、信頼性が高く、社会に広く定着している経済指標である総務省CPIを基にしたものであるところ、総務省CPIと生活扶助相当CPIの主な違いは、①指数品目と②平成20年から平成22年までの物価変動を算定するに当たり用いたウエイトの基準年の2点である。厚生労働大臣は、①指数品目については、総務省CPIのうち生活扶助による支出が想定される品目に限定し、②平成20年から平成22年までの物価変動を算定するに当たっては、物価変動率の算定期間における消費実態を正確に反映するためにこの期間に接着した平成22年基準のウエイトを用いることとしたものであり、いずれも、平成20年以降の生活保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加の程度をより正確に把握するための変更である。他方、生活扶助相当CPIの算定に当たり家計調査のウエイトのデータを用いたという点については、総務省CPIにおいても同様である。また、1審原告らは、生活扶助相当CPIの設定に当たり教養娯楽用耐久財等について他の品目と異なる取扱いをしなかったことを問題視する ータを用いたという点については、総務省CPIにおいても同様である。また、1審原告らは、生活扶助相当CPIの設定に当たり教養娯楽用耐久財等について他の品目と異なる取扱いをしなかったことを問題視するが、これは、そもそも総務省CPIにおいてもこのような取扱いはされていないことを前提に、恣意的な判断が介在しないという意味での合理性や国民に対する説明可能性等も考慮して、総務省CPIと異なる取扱いはしなかったものである。 生活扶助相当CPIの設定に関する判断過程審査においても、このような前提を踏まえて判断されなければならない。 したがって、1審原告らの前記主張のように生活扶助相当CPIの正 確性の問題を殊更に強調することは、厚生労働大臣の判断過程を正解しないものであり、結果として、「自ら特定の衡量利益ないし考慮事項を選び出してこれを一般的に強調する」(岡田幸人・最高裁判所判例解説民事篇平成24年度(下)472頁)ことになっており、この点においても判断過程審査の判断枠組みを逸脱するものである。 オ生活扶助相当CPIの算出に当たり家計調査により算出されたウエイトを用いた点に関する1審原告らの主張に理由がないこと(ア) 1審原告らの主張1審原告らは、家計調査により算出されたウエイトを基に算出された生活扶助相当CPIは、被保護者世帯の消費実態を全く反映しないものであり、被保護者世帯の消費実態を反映していないと主張する。 (イ) 1審被告らの反論しかしながら、厚生労働大臣が、生活扶助相当CPIの設定に当たり、家計調査を用いて算出されたウエイトを用いた理由については、これまで述べたとおりである。 すなわち、家計調査は、総務省統計局が、国民生活における家計収支の実態を把握す Iの設定に当たり、家計調査を用いて算出されたウエイトを用いた理由については、これまで述べたとおりである。 すなわち、家計調査は、総務省統計局が、国民生活における家計収支の実態を把握するために、一般国民の家計上の支出、収入、貯蓄等を調査する基幹統計の一つであり、詳細な品目別の支出額が調査の対象となっており、調査対象世帯の選定方法も含め、統計資料としての精度が高いだけではなく、家計上の支出(詳細な品目ごとの支出額)等の把握を目的とした調査であるから、総務省CPIないし生活扶助相当CPIの算定に用いられる各品目のウエイト(品目ごとの消費支出の割合)を把握するのに最も適したデータといえる。 さらに、生活扶助基準の水準は、これまでも、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に立脚して改定が行われてきており、一般国民の消費を表す家計調査により算出 された消費者物価指数のウエイトデータを用いることは、従来の改定の考え方とも整合するものである。 他方、厚生労働省が実施している社会保障生計調査は、保護基準の改定等に用いられる統計資料ではあるものの、調査世帯の選定において地域等による偏りが生じる可能性があることや、サンプル数が必ずしも多くないことなどを踏まえると、生活保護受給世帯全体の家計収支の状況を推測する精度に一定の限界があることは否定できない。その上、社会保障生計調査は、生活保護受給世帯の「生活実態」を把握する調査であって、生活保護受給世帯の詳細な支出先や支出額を把握するものではないから、その調査結果を分析しても、おおまかなウエイトは把握できたとしても、家計調査のように詳細な品目ごとのウエイトは把握できない。 そのため、社会保障生計調査のウエイトを用いた場合には るものではないから、その調査結果を分析しても、おおまかなウエイトは把握できたとしても、家計調査のように詳細な品目ごとのウエイトは把握できない。 そのため、社会保障生計調査のウエイトを用いた場合には、消費者物価指数の詳細な品目ごとの価格データが存在するにもかかわらず、その詳細な品目ごとのウエイトを反映した物価指数を算出することができなくなると予想されるところである。 したがって、生活扶助相当CPIの算定に当たり家計調査に基づくウエイトのデータを用いた点に関する厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落はなく、1審原告らの前記主張は理由がない。 カ生活扶助相当CPIの設定に当たり平成22年基準のウエイトのデータを用いた点に関する1審原告らの主張は理由がないこと(ア) 1審原告らの主張1審原告らは、①厚生労働大臣が物価を考慮するのであれば、総務省が採用し、世界的にも標準的な計算方法(ラスパイレス方式)を用い、平成17年のウエイトを用いた消費者物価指数と、平成22年のウエイトを用いた平成23年の消費者物価指数とを接続する処理を行えばよかったのであり、あえて「期間の接着」を持ち出して特異な計算を行うべき 合理的理由はどこにもない、②生活扶助相当CPIの算定に当たりパーシェ指数を用いることで、大幅な下方バイアスが生じたなどとして、比較年(平成20年)が基準年(平成22年)よりも前であってはならない旨主張する。1審原告らの上記主張は、平成20年から平成22年までの生活扶助相当CPIの変動率を算定するに当たって平成22年基準のウエイトを用いたことを論難するものと解される。 (イ) 1審被告らの反論a しかしながら、厚生労働大臣が、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CP 当たって平成22年基準のウエイトを用いたことを論難するものと解される。 (イ) 1審被告らの反論a しかしながら、厚生労働大臣が、平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの算定に当たり平成22年基準のウエイトのデータを用いた理由については、これまで述べたとおりである。 すなわち、本件改定が行われた平成25年当時、総務省CPI(家計調査)のウエイトのデータとしては、平成17年以前の基準によるものと平成22年基準によるものが存在した。この点、国民の消費の内容は時間と共に変化することから、現実の消費実態を反映した物価指数を算定するためには、物価指数の算定時点に可能な限り近接した時点の消費の構造を示すデータを用いるのが相当と考えられた。このような観点から見ると、仮に、平成17年基準によるウエイトのデータを用いた場合には、平成17年以降の消費構造の変化が反映されず(平成20年の指数は3年間、平成23年の指数は6年間の消費構造の変化が反映されないこととなる。)、物価変動率の算定期間における消費実態を正確に反映しないものとなることが予想された。これに対して、平成22年基準によるウエイトのデータは、物価変動率を算定する期間に接着したものであり(平成20年の指数は2年、平成23年の指数は僅か1年しか離れていない)、現実の消費実態を反映したものとして相当と考えられた。 そこで、厚生労働大臣は、平成20年から平成23年までの物価変動 率を算定するに当たり、平成22年基準によるウエイトを用いることとしたものである。 以上を踏まえると、平成20年から平成23年までの物価変動率を算定するに当たり平成22年基準によるウエイトを用いた点に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠 としたものである。 以上を踏まえると、平成20年から平成23年までの物価変動率を算定するに当たり平成22年基準によるウエイトを用いた点に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえない。 b また、確かに、平成20年の消費者物価指数と同年の生活扶助相当CPIとではウエイトの基準時を異にしている上、ウエイトを異にすることに起因して相互に真逆のバイアスが働く関係にある。しかし、バイアスは、生活扶助相当CPIを算定する場合はもちろん、消費者物価指数を算定する場合においても不可避的に生ずるものである。そうすると、平成20年の生活扶助相当CPIを算定するに当たり、指数・価格及びウエイトの参照時点を平成22年としたことによって下方バイアスが生じることをもって、かかる算定方法が不合理であるとして問題視するのは誤りである。 c したがって、1審原告らの前記主張は理由がない。 キ生活扶助相当CPIの設定における欠価格の処理に関する1審原告らの主張は理由がないこと(ア) 1審原告らの主張1審原告らは、生活扶助相当CPIの欠価格の処理方法について、①「「上位類」価格比を使用する方が、全品目の平均価格比を使用するよりはるかに合理的である。」、②ILOマニュアル等の国際的な基準に反する、③国際基準から逸脱するものであり、その結果、生活扶助相当CPIは固定バスケット方式の消費者物価指数の定義から逸脱したものとなるから、生活扶助相当CPIがロウ指数に相当しないことは明らかであるなどと主張する。 (イ) 1審被告らの反論 a 生活扶助相当CPIの欠価格の処理方法が不合理であるとする1審原告らの主張が、他に適切な処理方法がある旨をいうものであるとすれば、そ 。 (イ) 1審被告らの反論 a 生活扶助相当CPIの欠価格の処理方法が不合理であるとする1審原告らの主張が、他に適切な処理方法がある旨をいうものであるとすれば、それは、厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があることを基礎づけ得るものではないことしかしながら、そもそも、1審原告らの前記主張が、他に適切な欠価格の処理方法がある旨をいうものであるとすれば、それはすなわち、生活扶助相当CPIの設定方法について他に妥当ないし適切な手段が存在することを主張するものにすぎないから、本件改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の逸脱又はその濫用があることを基礎づけ得るものではない。 したがって、1審原告らの前記の主張が失当であることは明らかである(なお、生活扶助相当CPIの欠価格の処理方法が十分に合理的なものであることは、原審において主張したとおりである。)。 b 生活扶助相当CPIの欠価格の処理方法が国際的な基準に反するとの1審原告らの主張に理由がないことまた、ILOマニュアルは、日本を含めた主要国の物価指数作成当局において消費者物価指数を作成する際に用いられているものであるが、その位置づけは、「統計機関が消費者物価指数(CPI)を作成するに際しての模範的慣行として支持」されているもので、手引書として、「各国における関連統計の作成者を支援すること」を主たる目的として作成されたものである(甲A第277号証・序文(5頁)、読者ガイド(19頁))。そして、ILOマニュアルの「マニュアルに含められている原則と勧告を、統計機関が消費者物価指数(CPI)を作成するに際しての模範的慣行として支持する。しかしながら実際上の、また資源の制約のため、現行の勧告のあるもの ュアルの「マニュアルに含められている原則と勧告を、統計機関が消費者物価指数(CPI)を作成するに際しての模範的慣行として支持する。しかしながら実際上の、また資源の制約のため、現行の勧告のあるものはすべての統計機関によってただちに実施されないかも知れない」、「指数算式の選択(中 略)など、特定の概念的及び実際的問題に対する明確な回答が常に存在するとは限らない」(ILOマニュアル序文・5頁)、「あらゆる状況に向いている算式は一つもないかも知れない」(ILOマニュアル1.13節・3頁)との記載からも明らかなとおり、ILOマニュアルに完全に適合する方法を採用しなかったとしても、その物価指数の作成方法が直ちに妥当性を欠くということにはならない。 そして、欠価格の処理方法について正しいとされる手法はなく、ILOマニュアル9.48節は想定した状況に応じた処理方法が複数解説されているのみであり、欠価格の処理方法を網羅的、限定的に挙げたものとも解されない。さらに、ILOマニュアル9.49節は、「基本指数の計算から観察値を除くことは、その価格が指数に残っている品目の価格と同じように変化したであろうと推定することと同じである。」として、欠価格品目の価格を除外して計算する処理が許容されることを前提とした記載があることからすれば、生活扶助相当CPIの欠価格の処理方法がILOマニュアルの記載、あるいはその趣旨に反するものでないことは明らかである。 以上によれば、欠価格の処理方法が国際的な基準に反する旨をいう1審原告らの前記の主張は理由がない。 c 欠価格の処理方法が国際基準に反する、あるいは合理性を欠くことから生活扶助相当CPIがロウ指数に当たらないとの1審原告らの主張に理由がないこと生活扶助 張は理由がない。 c 欠価格の処理方法が国際基準に反する、あるいは合理性を欠くことから生活扶助相当CPIがロウ指数に当たらないとの1審原告らの主張に理由がないこと生活扶助相当CPIの欠価格の処理方法が実務上の妥当な処理と評価できるものであることは、原審において述べたとおりであり、それが国際的な基準に反するものでないことは前記のとおりである。もっとも、仮に、欠価格の処理方法として他に適切な方法が存在するとしても、生活扶助相当CPIについては、欠価格品目の価格を計算上除外 するという処理自体の結果として、欠価格品目も物価指数の計算の基礎となっているといえるのであるから、生活扶助相当CPIのロウ指数該当性は、欠価格の処理方法によって左右されるものではない。 したがって、欠価格の処理方法が国際基準に反する、あるいは合理性を欠くことから生活扶助相当CPIがロウ指数に当たらない旨をいう1審原告らの主張は理由がない。 ク指数の「接続」が必要であるとする1審原告らの主張は理由がないこと(ア) 1審原告らの主張1審原告らは、「2005年(引用者注:平成17年)~2009年(引用者注:平成21年)における指数系列と、2010年(引用者注:平成22年)~2014年(引用者注:平成26年)の指数系列は、バスケットの内容(品目の構成)もウエイトも一致しない」とした上で、「総務省統計局が採用している消費者物価指数の作成方法である異なる指数系列を接続係数によりリンクさせる方法から逸脱した方法」であると主張する。 (イ) 1審被告らの反論しかしながら、平成20年の生活扶助相当CPIは485品目、平成23年の生活扶助相当CPIは517品目と品目数は異なるものの、同一 であると主張する。 (イ) 1審被告らの反論しかしながら、平成20年の生活扶助相当CPIは485品目、平成23年の生活扶助相当CPIは517品目と品目数は異なるものの、同一の指数品目を用いて計算されており、また、平成20年を基準とする平成23年の生活扶助相当CPIは同じ買物かご(517品目)を購入するために必要な全費用の変化を表したものであるから、1審原告らの前記主張はその前提を欠く。 そもそも、「接続」は、指数参照時点(指数の値が100に置かれる時点)が異なる指数同士を比較するために、指数参照時点を数学的、形式的に一致させるものにすぎない。すなわち、接続とは、基準改定により改定前と改定後とで異なる指数を、基準年における旧基準と新基準の年 平均指数(新基準は100)の比で旧基準の指数を換算し、長期的な物価変動を時系列的に分析できるようにすることをいう。例えば、平成17年基準の指数を平成22年基準に換算する具体的な計算手順は以下のとおりである。 以上の例からも明らかなとおり、接続は、指数参照時点(指数の値が100に置かれる時点)が異なる指数同士を比較するために、主に長期的な物価の変動を把握する目的で、指数参照時点を数学的、形式的に一致させるものであって、基準改定の前後における品目やウエイトの相違が解消されるものではないのである(乙A第112号証3頁、乙A第113号証9頁参照)。 なお、平成20年及び平成23年の各生活扶助相当CPIは、いずれも平成22年を指数参照時点として計算しているため、指数の接続は不要である。 以上のとおり、接続によって(適切な)物価算出が可能になるかのような1審原告らの上記主張は、接続の意義、目的を根本的に誤解するもの 時点として計算しているため、指数の接続は不要である。 以上のとおり、接続によって(適切な)物価算出が可能になるかのような1審原告らの上記主張は、接続の意義、目的を根本的に誤解するもの品目H17H18H19H20H21H22品目H17H18H19H20H21H22H23総合CPI100.0100.3100.3101.7100.399.6総合CPI100.4100.7100.7102.1100.7100.099.7平成22年基準(H22の指数を100したもの)平成17年基準(H17の指数を100としたもの)100.0 / 99.6 = 1.004①「平成22年基準の平成22年指数(つまり100)」を「平成17年基準の平成22年指数」で除す②①で算出された値(1.004)で、平成17年基準の平成17~21年の各指数に一律乗じる③②の結果、平成22年基準の平成17~21年の各指数に換算される であり、理由がない。 ケ生活扶助相当CPIがロウ指数に当たらないとする1審原告らの主張は理由がないこと(ア) 1審原告らの主張1審原告らは、①「宇南山意見書は、指数算式間の優劣・・・等をまったく考慮せず、ロウ指数の定義に当てはまりさえすれば妥当性を認めるという乱暴な規範を打ち立てている」、また、宇南山意見書において、平成20年を基準とする平成23年の生活扶助相当CPIの算式が平成20年を基準時(価格参照時点)としていることについて、②「原資料(引用者注:甲A第275号証)が2010年(引用者注:平成22年)を基準時としているにもかかわらず、これを式の変形以外になんらの合理的な説明もなく2008年(引用者注:平成20年)を基準時と 資料(引用者注:甲A第275号証)が2010年(引用者注:平成22年)を基準時としているにもかかわらず、これを式の変形以外になんらの合理的な説明もなく2008年(引用者注:平成20年)を基準時と読み替えることはできない。」、③「比較時tが0(引用者注:基準時)以降の時点を含意していること(0<t)が「国際規準」である」にもかかわらず、「2010年(引用者注:平成22年)が価格参照時であるなら、2008年(引用者注:平成20年)は価格参照時点よりも古い「比較時」ということになり、CPIマニュアルの定義から逸脱する」、④平成20年及び平成23年の生活扶助相当CPIを算出する計算上の品目(485品目*6、517品目)が異なることから、その相違を無視し、宇南山意見書が主張するように式の変形を行うことはできず、生活扶助相当CPIは、ロウ指数の定義式に合致しないなどとして、1審被告らがいうロウ指数は「ロウ指数」ではない旨主張する。 *6 なお、1審原告らは、「2005(引用者注:平成17年)基準バスケットにおける生活扶助相当品目の集合M(品目数m)」、「(略)m=485である」とするが、平成20年の生活扶助相当CPIは、平成22年基準の生活扶助相当品目のうち、平成20年の価格指数が存在する品目を用いて算出されている。 (イ) 1審被告らの反論a しかしながら、国際的な基準に沿う妥当な算出方法であるか否かの評価方法については、原審において述べたとおりである。物価(指数)の算出において、実務的、学術的に正解となる唯一の算出方式というものは存在せず、現実の物価指数作成の実務では、理論的には無数の手法がある中で、調査の実行可能性な いて述べたとおりである。物価(指数)の算出において、実務的、学術的に正解となる唯一の算出方式というものは存在せず、現実の物価指数作成の実務では、理論的には無数の手法がある中で、調査の実行可能性などの制約も踏まえつつ、できるだけ望ましい算式を探る試みがされているところ、ILOマニュアルには一定の妥当性があると認められた指数算式(物価指数の算出方法)が掲載されているのであるから、ILOマニュアルに記載があることが国際的にも妥当性が認められた算式(物価指数の作成手法)であるかどうかの一つの基準であるといえる。 そして、総務省統計局作成の消費者物価指数の計算方式が物価指数算出の唯一の方式ではないのであって、物価指数の算出において、ラスパイレス指数を用いなければならない、あるいはラスパイレス指数が他の指数よりも絶対的に優れているといった専門的知見は存在せず、どのような指数を用いるかは、その算出目的に従って政策的な判断として選択されるべき事柄であることは、原審において述べたとおりである。 以上によれば、1審原告らの前記主張は、その実質において、本件改定で用いられた生活扶助相当CPIよりも適切な物価指数の算出方法があることを指摘するもの、すなわち、当不当を問題とする旨の主張にすぎないから、本件改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の逸脱又はその濫用があることを基礎づけ得るものではないというべきである。 b 次に、基準時(価格参照時点)は、比較時よりも過去の時点となる(過去から新しい時点の価格を把握する)例が多いものの、相対的な 価格変化を見る基準となる時点であるから、比較時よりも新しい時点とする(新しい時点から過去の価格を把握する)ことも可能であり、ロウ指数においては任意の時点に設定できるもので 、相対的な 価格変化を見る基準となる時点であるから、比較時よりも新しい時点とする(新しい時点から過去の価格を把握する)ことも可能であり、ロウ指数においては任意の時点に設定できるものである*7。 これに対して、1審原告らは、基準時(価格参照時点)は比較時よりも過去の時点でなければならないなどと主張する。しかし、統計学の基礎的な教科書に「基準時点を0(ゼロ)、比較時点をtとする(ただしtは0より大きな値(未来)だけではなくて、0より小さな値(過去)もとりうるものとする)」と明記されている(乙A第114号証119頁)ことからしても、上記主張に理由がないことは明らかである(なお、ILOマニュアル(甲A第277号証)をみても、基準時点(価格参照時点)を比較時点よりも過去の時点としなければならないことを示す記載はない。かえって、同1.59節(13頁)には、「あるいはt(引用者注:比較時点)から0(引用者注:基準時点)へと過去に遡って計算されようと」として、新しい時点t(比較時点)を価格参照時点として選択できることが当然の前提となった記載がある。)。 したがって、1審原告らの前記主張には理由がない。 c なお、宇南山意見書は、平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIの計算上の品目が異なることを前提に、平成 *7 なお、ラスパイレス指数(基準時をウエイト参照時点とする。)とパーシェ指数(比較時をウエイト参照時点とする。)は、基準時又は比較時(価格参照時点)が変わると、そのウエイト参照時点も変わってしまうため(ウエイト参照時点が変わると当然ながら結果が変わり得る。)、基準時又は比較時(価格参照時 ト参照時点とする。)は、基準時又は比較時(価格参照時点)が変わると、そのウエイト参照時点も変わってしまうため(ウエイト参照時点が変わると当然ながら結果が変わり得る。)、基準時又は比較時(価格参照時点)を任意の時点とすることができず、このような性質を踏まえ基準時又は比較時を設定する必要がある。もっとも、これは基準時又は比較時(価格参照時点)とウエイト参照時点がその定義上、連関しているからにすぎない。ロウ指数の場合、どの価格参照時点でも(ウエイト参照時点が変わらなければ)結果が変わらないことから、価格参照時点は問題とならない。 20年を基準として平成23年の生活扶助相当CPIについて、ロウ指数と評価することは合理的であると述べているのであり、1審原告らの前記主張に理由がないことは明らかである。 d 以上のとおり、生活扶助相当CPIがロウ指数ではない旨の1審原告らの前記主張は理由がない。 コゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことが違法であるとする1審原告らの主張は理由がないこと(ア) 1審原告らの主張1審原告らは、ゆがみ調整とデフレ調整を併せてすることで、生活扶助基準を重複して引き下げるものであるなどと指摘して、本件改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がある旨主張する。 (イ) 1審被告らの反論しかしながら、デフレ調整は生活扶助基準の水準(高さ)の設定を適正にするもの、ゆがみ調整は既に水準(高さ)が定まっていることを前提に、当該水準の展開を適正にするためのものであるから、各見直しは重複するところはない。 すなわち、平成25年報告書(乙A第7号証2頁)に「今回、本部会としては、年齢階級別、世帯人員別、級地別に基準額と消費実態の乖離を めのものであるから、各見直しは重複するところはない。 すなわち、平成25年報告書(乙A第7号証2頁)に「今回、本部会としては、年齢階級別、世帯人員別、級地別に基準額と消費実態の乖離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数について検証を行った」と記載されていることからも明らかなとおり、平成25年検証は飽くまで生活扶助基準の「展開のための指数」について検証したものである。そして、平成25年報告書を通覧しても、平成25年検証において生活扶助基準の「水準」(高さ)についても検証が行われた旨の記載はない。 この点、基準部会は、平成25年検証において、まず、①現行の基準額 の年齢別、世帯人員別、級地別の体系が消費の実態に合っているか否かを定量的に評価した上で、②その結果を踏まえて水準の検証を行うことを予定していた。ただし、平成25年報告書においては、「今回、本部会としては、年齢階級別、世帯人員別、級地別に基準額と消費実態の乖離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数について検証を行った」と記載されているとおり、上記①についての検証結果を取りまとめたものであり、上記②については、引き続きの検討事項とされたものである。 以上のとおり、ゆがみ調整とデフレ調整を併せてすることで生活扶助基準を重複して引き下げるものである旨の1審原告らの主張は、そもそもゆがみ調整及びデフレ調整を正解しないものであって、理由がない。 ⑸ 激変緩和措置の適法性に関する1審原告らの主張に対する反論ア 2分の1処理がゆがみ調整の趣旨を没却するとする1審原告らの主張は理由がないこと(ア) 1審原告らの主張1審原告らは、熊本地裁判決を引用しながら、2分の1処理についてゆがみ調整の趣旨 処理がゆがみ調整の趣旨を没却するとする1審原告らの主張は理由がないこと(ア) 1審原告らの主張1審原告らは、熊本地裁判決を引用しながら、2分の1処理についてゆがみ調整の趣旨を没却するものであるにもかかわらず、基準部会における審議を経ていないとして、本件改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がある旨主張する。 (イ) 1審被告らの反論しかしながら、基準部会等の専門機関による検討を経ていないことをもって厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があるといえないことは、前記のとおりである。 この点をおくとしても、2分の1処理がゆがみ調整による生活扶助基準の改定の趣旨を没却するものであるとは認められない。すなわち、平成25年検証の結果を反映させる比率を2分の1とした場合であっても、 平成25年検証の結果明らかとなった年齢階級別、世帯人員別、級地別の生活扶助基準額と一般低所得世帯の消費実態のかい離がそのかい離の程度に比例してバランスよく一定の割合で解消されることに変わりはなく、生活保護受給世帯間の公平を図るために生活扶助基準の展開部分を適正化するというゆがみ調整の本質的部分の趣旨に沿う改定を実現するものであることは明らかである。 したがって、1審原告らの前記主張は理由がない。 イゆがみ調整の幅を増額方向と減額方向共に基準部会の検証結果の2分の1としたことにより激変緩和の措置になっていないとする1審原告らの主張は理由がないこと(ア) 1審原告らの主張1審原告らは、2分の1処理をすることで増額幅が2分の1になる世帯においては、増額幅が2分の1とされなければ達したはずの額が「最低限度の生活」に要する額であるから、2分の 審原告らの主張1審原告らは、2分の1処理をすることで増額幅が2分の1になる世帯においては、増額幅が2分の1とされなければ達したはずの額が「最低限度の生活」に要する額であるから、2分の1処理は、同世帯に対してこれを下回る生活を強いることになり、激変緩和の措置になっていない旨を主張する。 (イ) 1審被告らの反論a 減額幅のみ2分の1の比率で反映させることは、生活保護受給世帯間の公平を図るというゆがみ調整の目的に沿わないことしかしながら、2分の1処理に当たり増額方向と減額方向ともに平成25年検証の検証結果を反映させる比率を一律2分の1とした理由は、前記のとおりである。 すなわち、確かに、個別の指数ごとに減額幅(減額の改定比率)については2分の1とし、増額幅(増額の改定比率)についてはそのまま反映させるといったように、部分的に反映程度を変えることは理論的にはあり得るものの、平成25年検証の結果から明らかとなった生活 扶助基準の展開部分と一般低所得世帯の消費実態とのかい離を解消して、生活扶助基準を適正化し生活保護受給世帯間の公平を図るとするゆがみ調整の目的等からすれば、基準部会の検証結果を部分的に生活扶助基準に反映させる場合には、ゆがみ調整による影響の内容・程度にかかわらず一定の割合でこれを反映させることがゆがみ調整の目的に沿う合理的な措置であるといえる。つまり、平成25年検証の結果を反映させる比率を一律2分の1とした場合であっても、平成25年検証の結果明らかとなった年齢階級別、世帯人員別、級地別の生活扶助基準額と一般低所得世帯の消費実態のかい離が、そのかい離の程度に比例してバランスよく一定の割合で解消されることに変わりはなく、生活保護受給世帯間の公平を図るために生 別、世帯人員別、級地別の生活扶助基準額と一般低所得世帯の消費実態のかい離が、そのかい離の程度に比例してバランスよく一定の割合で解消されることに変わりはなく、生活保護受給世帯間の公平を図るために生活扶助基準の展開部分を適正化するというゆがみ調整の本質的部分の趣旨に沿う改定を実現するものである。 これに対し、減額幅のみ2分の1の比率で反映させ、増額幅については平成25年検証の結果を全て反映させるとした場合、生活保護受給世帯間における不公平を生じさせることになるから、生活保護受給世帯間の公平を図るために生活扶助基準の展開部分を適正化するというゆがみ調整の本質的部分を改変することになる。 以上のとおり、厚生労働大臣は、平成25年検証によって判明した年齢階級別、世帯人員別及び級地別のゆがみを公平に解消させる観点等からは、減額幅のみ2分の1の比率で反映させるのは適当ではないと考えられたため、一律の改定比率としたものであり、かかる判断の過程及び手続に過誤、欠落はない。 b 増減幅についても2分の1の比率で反映させることによって最低限度の生活を下回ることにはならないことまた、憲法25条並びに法3条及び8条2項にいう最低限度の生活は、 抽象的かつ相対的な概念であり、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるから、このような最低限度の生活を営むために必要な需要(金額)を一義的に導くことはおよそ不可能である。これまでの最高裁判例において、最低限度の生活を保護基準において具体化するに当たっては、高度の専門技術的な考察とともに、それに基づいた政策的判断を必要とするとされているのも、いかに高度の専門技術的な考察をしたとしても、そ いて、最低限度の生活を保護基準において具体化するに当たっては、高度の専門技術的な考察とともに、それに基づいた政策的判断を必要とするとされているのも、いかに高度の専門技術的な考察をしたとしても、そこから最低限度の生活を営むために必要な需要(金額)を一義的に導き出すことは不可能であり、最終的には厚生労働大臣の政策的判断に委ねるほかないことを示すものといえる。 そして、平成25年検証自体、統計手法やサンプル数に由来する一定の限界が認められる上、更なる検証が予定されていた(乙A第7号証9頁)。この点、基準部会が行う保護基準の評価及び検証に一定の限界があることは、基準部会の委員自身が承知しているところである。 例えば、平成24年5月8日の第9回基準部会において、岩田部会長代理は、「生活保護の場合(中略)パーフェクトな比較はできないということだと私は思っているのです。だから、常にデータの制約ということを考えなければいけないし(中略)、一般所得世帯との比較といっても、一体それをこのデータの中でどういうふうにモデル化できるかという非常に難しい問題があるので、完全な比較というのはできないということですね。」(甲A第80号証の1)と発言している。 また、第10回基準部会において、栃本委員は、「生活保護の実際の被保護者の世帯であるとか、そういうものの変容といいますか(中略)やはりそうとう考えなければいけないということであるので、あくまで展開というのは操作的なものであるということを承知した上で見ておかないと」と発言し、これを受けて、駒村部会長は、「今まではあ る種、どう操作してきたのかということが明らかでない部分もあったわけですけれども、今回は消費実態を復元というか、接近する方法として回帰分析を行い、展開がこれに近いだろうという数 ではあ る種、どう操作してきたのかということが明らかでない部分もあったわけですけれども、今回は消費実態を復元というか、接近する方法として回帰分析を行い、展開がこれに近いだろうという数字を今回導き出そうということでございます。」と発言している(乙A第24号証12頁)。 以上からすると、平成25年検証の手法や結果について、修正の余地がない完全なものであるということはできないし、ひいては、同検証の結果を全て生活扶助基準に反映させない限り改定後の生活扶助基準が法3条及び8条2項の規定にいう「最低限度の生活」を具体化したものにならないということもできない。したがって、平成25年検証の結果を2分の1の限度で適用することは、増額幅が2分の1になる世帯において「最低限度の生活」を下回る生活を強いることを直ちに意味するものとはいえないから、2分の1処理はゆがみ調整の本質的部分を改変する措置とは認められない。 以上
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