平成27(受)659 立替金等請求本訴,不当利得返還請求反訴事件

裁判年月日・裁判所
平成29年2月21日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄差戻 札幌高等裁判所 平成26(ネ)204
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判決文本文10,288 文字)

- 1 -平成27年(受)第659号立替金等請求本訴,不当利得返還請求反訴事件平成29年2月21日第三小法廷判決 主文 原判決を破棄する。 本件を札幌高等裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人金昌宏の上告受理申立て理由第1及び第3について 1 上告人らは,信販会社である被上告人の加盟店であった有限会社A(以下「本件販売業者」という。)との間で宝飾品等の売買契約を締結したとして,被上告人との間で購入代金に係る立替払契約を締結したが,上記売買契約は架空のものであり,上記立替払契約は,本件販売業者の依頼により,上告人らが名義上の購入者となることを承諾して締結されたものであった(以下,このように名義上の購入者となることを「名義貸し」という。)。 本件本訴は,被上告人が,上告人らに対し,上記立替払契約に基づく未払金の支払等を求めるものであり,本件反訴は,上告人Y2が,被上告人に対し,割賦販売法35条の3の13第1項により上記立替払契約の申込みの意思表示を取り消したこと等を理由として,不当利得返還請求権に基づき,上記立替払契約に基づく既払金の返還等を求めるものである。なお,本件反訴は,原審で提起され,その後,上告人Y2に対する本訴は,取り下げられた。 上記立替払契約のうち,平成20年法律第74号(以下「改正法」という。)の施行日である平成21年12月1日以降に締結されたもの(以下「改正後契約」という。)については,割賦販売法35条の3の13第1項により立替払契約の申込 - 2 -みの意思表示を取り消すことができるか否かが,同日より前に締結されたもの(以下「改正前契約」という。)については, )については,割賦販売法35条の3の13第1項により立替払契約の申込 - 2 -みの意思表示を取り消すことができるか否かが,同日より前に締結されたもの(以下「改正前契約」という。)については,改正法による改正前の割賦販売法30条の4第1項により本件販売業者に対して生じている売買契約の無効等の事由をもって被上告人に対抗することが信義則に反するか否かが争われている。 2 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。 (1) 被上告人は,割賦販売法2条4項に規定する個別信用購入あっせん(上記改正前は,同改正前の割賦販売法2条3項2号に規定する割賦購入あっせん)を業とする者(以下「あっせん業者」という。)であり,平成16年4月,呉服や貴金属の卸小売等を業とする本件販売業者との間で,割賦購入あっせん加盟店契約を締結した。 (2) 本件販売業者は,平成14年頃から多数回にわたり,その運転資金を得る目的で,既存の顧客に対して名義貸しを依頼し,これに応じた顧客に架空の売買契約の購入代金に係る立替払契約を締結させ,被上告人や他の信販会社から代金相当額の支払を受けるとともに,上記顧客の信販会社に対する支払金相当額を自ら負担していた。 (3) 上告人らは,本件販売業者から懇請されて,名義貸しを承諾し,本件販売業者との間で締結した架空の売買契約(以下「本件各売買契約」という。)の購入代金について,被上告人との間で,平成20年11月から平成23年11月にかけて,第1審判決別紙2の立替払契約内容一覧表の「契約日」欄記載の各年月日に,「契約金額」欄記載の各金員を被上告人が本件販売業者に対し立て替えて支払うこと及び「支払方法」欄記載のとおり上告人らが被上告人に対し立替金を支払うことを内容とする立替払契約(以下「本件各立替払契約」という。)を締 記載の各金員を被上告人が本件販売業者に対し立て替えて支払うこと及び「支払方法」欄記載のとおり上告人らが被上告人に対し立替金を支払うことを内容とする立替払契約(以下「本件各立替払契約」という。)を締結し,被上告- 3 -人は,本件販売業者に対し,同一覧表の「立替払日」欄記載の各年月日に,「契約金額」欄記載の各金員を支払った。本件各売買契約は,特定商取引に関する法律2条1項に規定する訪問販売に係る契約に該当するものであった。 本件販売業者は,本件各立替払契約の締結について勧誘をするに際し,上告人らに対し,ローンを組めない高齢者等の人助けのための契約締結であり,上記高齢者等との売買契約や商品の引渡しは実在することを告げた上で,「支払については責任をもってうちが支払うから,絶対に迷惑は掛けない。」などと告げた。 (4) 本件各立替払契約に基づく上告人らの被上告人に対する支払は,上告人ら名義の口座から口座振替の方法により行われていたところ,平成23年10月分までは,本件販売業者が支払金相当額を上記口座に振り込んでいた。 (5) 本件販売業者は,平成23年11月28日,営業を停止し,平成24年4月3日,破産手続開始の申立てをし,その後,破産手続開始の決定を受けた。 (6) 改正後契約に係る上告人らは,平成24年3月から平成25年1月にかけて,被上告人に対し,割賦販売法35条の3の13第1項により改正後契約の申込みの意思表示を取り消す旨の意思表示をした。 (7) 改正前契約に係る上告人らは,改正前契約に係る売買契約は民法93条ただし書又は94条1項により無効であるなどとして,改正法による改正前の割賦販売法30条の4第1項により,上記無効等の事由をもって被上告人に対抗すると主張している。 これに対し,被上告人は,改正前契約に係る上告 条1項により無効であるなどとして,改正法による改正前の割賦販売法30条の4第1項により,上記無効等の事由をもって被上告人に対抗すると主張している。 これに対し,被上告人は,改正前契約に係る上告人らが上記無効等の事由をもって被上告人に対抗することは,信義則に反し許されないと主張している。 3 原審は,上記事実関係の下において,改正前契約に係る売買契約は民法93- 4 -条ただし書又は94条1項により無効であるとした上で,次のとおり判断して,被上告人の本訴請求を認容し,上告人Y2の反訴請求を棄却した。 (1)ア割賦販売法35条の3の13第1項6号に規定する事項には,立替払契約又は売買契約に関する事項であって購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものであれば,契約内容や取引条件のみならず,契約締結の動機も含まれる。 イ改正後契約に係る上告人らが改正後契約を締結した主たる動機は,本件販売業者が同上告人らの被上告人に対する支払金相当額を補塡すると約束した点にある。そして,本件販売業者は,改正後契約の締結時に,上記支払金相当額を支払う意思が全くないにもかかわらず,改正後契約に係る上告人らに対して上記約束をしたということはできないから,本件販売業者が告げた内容に虚偽はなく,割賦販売法35条の3の13第1項にいう「不実のことを告げる行為」(以下「不実告知」という。)があったとはいえない。本件販売業者は,改正後契約を媒介するに当たり,ローンを組めない高齢者等の人助けのための契約締結であり,上記高齢者等との売買契約や商品の引渡しは実在することを改正後契約に係る上告人らに告げているが,その内容は購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものに当たらず,不実告知の対象とはならない。 (2) 改正前契約に係る上告人らは,被上告人からの確 を改正後契約に係る上告人らに告げているが,その内容は購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものに当たらず,不実告知の対象とはならない。 (2) 改正前契約に係る上告人らは,被上告人からの確認の電話に対して,契約締結の意思があること及び商品を受け取っていることを回答しており,購入者の背信行為により改正前契約が締結されたといえる。そして,上記(1)イのとおり,改正後契約についても不実告知による取消しは認められない。また,改正前契約に係る上告人らは,本件販売業者が不正な利益を取得しようとしていることを知らないとしても,名義貸しであることを知り,それが一般常識に照らして不正な取引であ- 5 -ることを改正前契約の締結当時認識し,又は認識することができたといえる。そうすると,改正前契約に係る上告人らが改正前契約に係る売買契約の無効をもって被上告人に対抗することは,信義則に反し許されない。 4 しかしながら,原審の上記3(1)アの判断は是認することができるが,同(1)イの判断及びこれを前提とした同(2)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。 改正法により新設された割賦販売法35条の3の13第1項6号は,あっせん業者が加盟店である販売業者に立替払契約の勧誘や申込書面の取次ぎ等の媒介行為を行わせるなど,あっせん業者と販売業者との間に密接な関係があることに着目し,特に訪問販売においては,販売業者の不当な勧誘行為により購入者の契約締結に向けた意思表示に瑕疵が生じやすいことから,購入者保護を徹底させる趣旨で,訪問販売によって売買契約が締結された個別信用購入あっせんについては,消費者契約法4条及び5条の特則として,販売業者が立替払契約の締結について勧誘をするに際し,契約締結の動機に関するものを含め,立替払契約又は売買契 売買契約が締結された個別信用購入あっせんについては,消費者契約法4条及び5条の特則として,販売業者が立替払契約の締結について勧誘をするに際し,契約締結の動機に関するものを含め,立替払契約又は売買契約に関する事項であって購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものについて不実告知をした場合には,あっせん業者がこれを認識していたか否か,認識できたか否かを問わず,購入者は,あっせん業者との間の立替払契約の申込みの意思表示を取り消すことができることを新たに認めたものと解される。そして,立替払契約が購入者の承諾の下で名義貸しという不正な方法によって締結されたものであったとしても,それが販売業者の依頼に基づくものであり,その依頼の際,契約締結を必要とする事情,契約締結により購入者が実質的に負うこととなるリスクの有無,契約締結によりあっせん業者に実質的な損害が生ずる可能性の有無など,契約締結の動機に関す- 6 -る重要な事項について販売業者による不実告知があった場合には,これによって購入者に誤認が生じ,その結果,立替払契約が締結される可能性もあるといえる。このような経過で立替払契約が締結されたときは,購入者は販売業者に利用されたとも評価し得るのであり,購入者として保護に値しないということはできないから,割賦販売法35条の3の13第1項6号に掲げる事項につき不実告知があったとして立替払契約の申込みの意思表示を取り消すことを認めても,同号の趣旨に反するものとはいえない。 上記事実関係によれば,本件販売業者は,改正後契約の締結について勧誘をするに際し,改正後契約に係る上告人らに対し,ローンを組めない高齢者等の人助けのための契約締結であり,上記高齢者等との売買契約や商品の引渡しは実在することを告げた上で,「支払については責任をもってうちが支払うから 正後契約に係る上告人らに対し,ローンを組めない高齢者等の人助けのための契約締結であり,上記高齢者等との売買契約や商品の引渡しは実在することを告げた上で,「支払については責任をもってうちが支払うから,絶対に迷惑は掛けない。」などと告げているところ,その内容は,名義貸しを必要とする高齢者等がいること,上記高齢者等を購入者とする売買契約及び商品の引渡しがあること並びに上記高齢者等による支払がされない事態が生じた場合であっても本件販売業者において確実に改正後契約に係る上告人らの被上告人に対する支払金相当額を支払う意思及び能力があることといった,契約締結を必要とする事情,契約締結により購入者が実質的に負うこととなるリスクの有無及びあっせん業者に実質的な損害が生ずる可能性の有無に関するものということができる。したがって,上記告知の内容は,契約締結の動機に関する重要な事項に当たるものというべきである。 以上によれば,本件販売業者が改正後契約に係る上告人らに対してした上記告知の内容は,割賦販売法35条の3の13第1項6号にいう「購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」に当たるというべきである。 - 7 - 5 以上と異なる原審の上記3(1)イの判断及びこれを前提とした同(2)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,上記告知の内容についての改正後契約に係る上告人らの誤認の有無及び改正前契約に係る上告人らが名義貸しに応じた動機やその経緯を前提にしてもなお改正前契約に係る売買契約の無効をもって被上告人に対抗することが信義則に反するか否か等につき更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。 よって,裁判官山崎敏充の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で, 無効をもって被上告人に対抗することが信義則に反するか否か等につき更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。 よって,裁判官山崎敏充の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 裁判官山崎敏充の反対意見は,次のとおりである。 多数意見は,立替払契約が名義貸しという不正な方法によって締結されたものであったとしても,不実告知を理由とする名義貸人による取消しが認められる場合があることを前提に,本件販売業者が改正後契約に係る上告人らに対してした告知の内容が割賦販売法35条の3の13第1項6号に規定する重要事項に該当するなどとして,原判決を破棄し本件を原審に差し戻すべきものとするが,私は,多数意見の前提とする考え方には賛成することができない。その理由は以下のとおりである。 1 本件で問題になっているいわゆる名義貸しは,あっせん業者と加盟店契約を締結している販売業者の依頼に応じた顧客が,販売業者との間で形式上商品購入契約を締結したことにして,あっせん業者との間でその購入代金に係る立替払契約を締結し,販売業者にあっせん業者から支払われる立替金を入手させるというものであり,個別信用購入あっせん(改正法による改正前は割賦購入あっせん)という三- 8 -者間の特殊な契約関係を利用した不正な取引というべきものである。名義貸しを行った者は,販売業者との間の商品購入契約が架空のものであって,当然のことながら商品を受領していないことを認識しつつ,あっせん業者との間で当該商品の購入代金につき立替払契約を締結し,割賦金の支払義務を負担することを承諾しているのである。割賦販売法は,消費者保護の観点から,販売業者の違法不当な行為によって実際に商品を購入した者に対し,当該購入代金に係る立替払契約について,あっせん業者 支払義務を負担することを承諾しているのである。割賦販売法は,消費者保護の観点から,販売業者の違法不当な行為によって実際に商品を購入した者に対し,当該購入代金に係る立替払契約について,あっせん業者と販売業者との間の密接な関係を考慮して,一定の要件の下で,販売業者による不実告知を理由とする意思表示の取消しや販売業者に対して有する抗弁権の接続によるあっせん業者からの支払請求の拒絶を認めているが,名義貸しの場合は,そもそも商品購入契約が架空のものであり,かつ,そのことを名義貸人が認識しているという点で,同法が保護の対象として予定する場合とは著しく状況を異にするのであって,そうした場合をも同様に同法の保護の対象に含めるのは,相当とはいい難い。以下に敷衍して述べる。 2 改正法によって新設された不実告知による意思表示の取消制度(割賦販売法35条の3の13第1項)は,立替払契約を利用した悪質商法による消費者トラブルが多発し,その多くが訪問販売等の特定の形態の販売行為によるものであるとの実情を踏まえ,そうした悪質な勧誘販売行為を助長する不適切な与信の排除を目的として導入されたものである。すなわち,このような販売契約の勧誘に際し販売業者による不実告知等の違法不当な行為があった場合,購入契約の取消しが認められたとしても,これと法的には別の契約である立替払契約は存続し,購入者は抗弁権の接続により未払金の支払の拒絶はできても既払金の返還を求めることはできないところ,こうした結果は不合理であり,また,購入者に酷であるので,これを是正- 9 -し既払金の返還を可能とするために新たに上記制度が設けられたものと理解される。そうすると,そもそも購入契約の取消しが問題にならない本件のような名義貸しの事案における名義貸人をも上記制度による保護の対象とするのは,このよ とするために新たに上記制度が設けられたものと理解される。そうすると,そもそも購入契約の取消しが問題にならない本件のような名義貸しの事案における名義貸人をも上記制度による保護の対象とするのは,このような立法の趣旨とは整合しないし,改正法の立法過程をみても,名義貸人を上記制度による保護の対象とする旨の明確な見解が示されたり,あるいは,名義貸しのケースを念頭に置いて上記規定の適用の可否が検討されたりした形跡はうかがえない。適用の要件をみると,上記規定は対象を訪問販売等の特定の形態の販売行為に限定しているが,そもそも名義貸しによる架空の商品購入契約について,そうした態様に該当するか否かを論じる意味はない。また,上記規定は,販売業者が販売契約等について勧誘をするに際しての一方的かつ不当な行為を問題にするところ,名義貸しは,購入契約が架空であることについて名義貸人の容認ないし少なくとも認識がある場合であるから,適用の前提に疑問がある。効果の面からしても,本件のような名義貸しは,販売業者や第三者が割賦金の支払をすることが前提となっているのであるから,それが滞って名義貸人に支払請求がされる場合に,未払金の支払の拒絶が問題になることはあっても,既払金の返還まで求めなければならないような事態が生じることは通常考えにくく,それゆえ,既払金の返還を可能にする目的で新設された上記制度を適用して,名義貸人の保護を図らなければならない必要性に乏しい。本件では,ローンを組めない高齢者等の人助けのための契約締結であり,それらの人との売買契約や商品の引渡しは実在するなどと販売業者が告げた内容が不実告知の対象に当たるか否かが問題とされているが,もともと立替払契約を結べない者のために名義を貸すのは,あっせん業者との関係で明らかに不正な行為であって,いかに名義貸人が法律知識 者が告げた内容が不実告知の対象に当たるか否かが問題とされているが,もともと立替払契約を結べない者のために名義を貸すのは,あっせん業者との関係で明らかに不正な行為であって,いかに名義貸人が法律知識に乏しく,また,高齢者等の人助けのためとして販- 10 -売業者から懇請されたとしても,それが不正な行為であることは常識的に理解できたはずである。上記告知の内容が事実であってもなくても,また,その点に誤認があってもなくても,それが不正な取引に当たることは変わらないのであるから,上記告知の内容が事実に反しその点に誤認があったことを理由にして,名義貸人が立替払契約上の責任を免れるとするのは妥当ではない。本件のような名義貸しの事案については,上記規定を適用する前提を欠くというほかなく,不実告知を理由とする立替払契約の意思表示の取消しを認めることはできないというべきである。 3 抗弁権の接続(改正法による改正前の割賦販売法30条の4第1項)は,販売業者の違法不当な行為の結果として締結された商品購入契約が無効とされ又は取り消されたとしても,これと法的には別の契約である立替払契約に基づく割賦金の支払義務が当然に消滅するものではないことから,消費者保護の観点に立って,そのような購入契約について購入者が販売業者に対抗できる事由をもって,立替払契約に基づく割賦金の支払を拒絶できるようにするものと解される。そうすると,本件のような名義貸しの場合は,そもそも購入契約が架空のものであり,しかも名義貸人は少なくともそのことを認識しながら立替払契約を締結しているのであるから,そうした名義貸人に抗弁権の接続を認めることは,上記立法の趣旨に沿うものとはいい難く,架空の商品購入契約につき虚偽表示等による無効事由があると構成することができるとしても,そうした事由をもってあっ ,そうした名義貸人に抗弁権の接続を認めることは,上記立法の趣旨に沿うものとはいい難く,架空の商品購入契約につき虚偽表示等による無効事由があると構成することができるとしても,そうした事由をもってあっせん業者からの支払を一律に拒み得るとすることは妥当ではない。もっとも,名義貸しによる立替払契約が締結されるに至った経緯や理由にはさまざまなものが考えられるところ,あっせん業者と販売業者との関係,販売業者による違法不当な行為についてのあっせん業者の認識の有無及び程度,あっせん業者の名義貸人に対する申込意思等の確認状況のほ- 11 -か,名義貸人が名義貸しに応じるに至った経緯などに照らして,あっせん業者の名義貸人に対する支払請求が信義則上許されない特段の事情があると認められるときは,名義貸人はあっせん業者の支払請求を拒むことができると解する余地はあるが,本件においてそのような特段の事情は認められない。 4 名義貸しの中には,悪質な販売業者が立替払契約を悪用して資金を調達しようとして,顧客等に虚言を用いたり,執拗に懇請したりして,架空の購入契約による立替払契約を強引に結ばせるといったものもあり得るであろう。こうしたケースにおける名義貸人は,いわば被害者とみることもできるのであって,悪質な販売業者を一掃し,このような名義貸しが行われるのを防ぐ必要があることは論をまたない。そのためには,何よりも,名義貸しが不正な取引に加担することで許されないこと,そして,名義貸人は最終的に支払を迫られる立場にあることについて,国民一般に十分な啓発活動を行うことが必要であろう。また,あっせん業者と販売業者とが加盟店契約を締結し,継続的な取引関係にあることに鑑みると,あっせん業者に対し,加盟店たる販売業者が不正な取引を行わないように管理監督すべき責任を負わせることも う。また,あっせん業者と販売業者とが加盟店契約を締結し,継続的な取引関係にあることに鑑みると,あっせん業者に対し,加盟店たる販売業者が不正な取引を行わないように管理監督すべき責任を負わせることも有効かつ妥当な措置といえる。割賦販売法35条の3の5が,あっせん業者に訪問販売等の特定の形態の販売契約に係る立替払契約を締結しようとする場合に,その契約の締結に先立って,違法な勧誘行為の有無等に関する調査義務を課しているのは,この趣旨に出たものであり,調査事項として,不実告知等による誤認の有無が挙げられている(割賦販売法施行規則75条2号イ,76条11項)のも肯けるところである。しかしながら,あっせん業者がこうした幅広い調査を通じて悪質な販売業者による違法不当な行為や不正な取引の防止に一定の責任を果たすべきものとされているとしても,あっせん業者と販売業者との関係や販売業- 12 -者と名義貸人との関係もまたさまざまであって,名義貸しの場合における名義貸人の立替払契約上の責任を論じるに際し,あっせん業者と販売業者の立場を当然に同一ないし一体のものと考えるのは当を得ない。この点については,既に述べたあっせん業者の名義貸人に対する支払請求が信義則に反するか否かの判断において,あっせん業者が販売業者の不正を認識しつつあえて立替払契約を締結したとか,行うべき調査を怠り不正を見逃したとか,不正の徴候を察知しながら漫然と放置していたなど,名義貸しによる立替払契約の締結について,あっせん業者に何らかの責められるべき点があるか否かが検討されるべきものと考える。 5 以上述べたとおり,私見によれば,本件において,改正後契約に係る上告人らが本件販売業者による不実告知があったことを理由に同契約を取り消すことはできないとし,また,改正前契約に係る上告人らが同契約に 以上述べたとおり,私見によれば,本件において,改正後契約に係る上告人らが本件販売業者による不実告知があったことを理由に同契約を取り消すことはできないとし,また,改正前契約に係る上告人らが同契約に係る売買契約の無効をもって被上告人に対抗することは信義則に反し許されないとして,被上告人の本訴請求を認容し,上告人Y2の反訴請求を棄却した原審の判断は,結論において是認することができるから,論旨は理由がなく,本件上告は棄却されるべきである。 (裁判長裁判官大橋正春裁判官岡部喜代子裁判官大谷剛彦裁判官木内道祥裁判官山崎敏充)

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