- 1 - 主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人らの負担とする。 理由 上告代理人新垣勉、同日高洋一郎の上告受理申立て理由(ただし、排除されたものを除く。)について 1 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。 ⑴ア 「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」(以下「日米地位協定」という。)18条6項は、合衆国軍隊の構成員による日本国内における不法の作為又は不作為で公務執行中に行われたものでないものによって日本国政府以外の第三者に生じた損害に関し、合衆国の当局は、慰謝料の支払の申出をするかどうかを決定し、かつ、その申出をする場合にはその額を決定し、その申出をした場合において、請求人がその請求を完全に満たすものとしてこれを受諾したときは、その支払をしなければならない旨を規定している。また、昭和39年6月には、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う民事特別法」その他の法令又は日米地位協定18条6項の規定により救済されない直接の被害につき被上告人が救済を必要と認めたときには、見舞金を支給することができるものとする旨の閣議決定がされた。 「合衆国軍隊等の行為等による被害者等に対する賠償金の支給等に関する省令」(昭和37年総理府令第42号)においては、地方防衛局長は、被害者又はその遺族で、損害賠償請求書を提出したものに対し、防衛大臣との協議の結果、見舞金を令和5年(行ヒ)第430号不作為違法確認等、国家賠償等請求事 理府令第42号)においては、地方防衛局長は、被害者又はその遺族で、損害賠償請求書を提出したものに対し、防衛大臣との協議の結果、見舞金を令和5年(行ヒ)第430号不作為違法確認等、国家賠償等請求事件令和6年12月16日第二小法廷判決- 2 -支給する必要があるときは、見舞金の額を決定し、その支払手続をとらなければならない旨が規定されている(14条、15条1項)。 イ日本国政府と合衆国政府によって設置された沖縄に関する特別行動委員会(SACO)が平成8年12月に取りまとめた最終報告においては、日米地位協定18条6項の規定に基づく合衆国政府の支払の額が、被害者等が加害者に損害賠償を請求した事件についての裁判所の確定判決の額に満たない場合には、日本政府が、必要に応じてその差額を埋めるため、請求者に対し支払を行うよう努力する旨の内容が盛り込まれた。 これを受け、「米国政府による支払が裁判所の確定判決等による額に満たない場合の取扱いについて」(平成30年6月21日付け防地補第10027号防衛省地方協力局長通知)において、上記閣議決定に基づく見舞金として、上記差額を上限とする見舞金(以下「SACO見舞金」という。)を支給することができることとされたが、併せて遅延損害金及び訴訟費用は支給の対象としないことも定められている。 また、SACO見舞金の支給に係る事務処理について定めた「地位協定第18条第6項に関する事案で、被害者が損害賠償訴訟を提起し、裁判所の確定判決による額が米国政府による補償額を上回る事例が生じた場合の見舞金の支給について」(平成20年3月5日付け防衛省地方協力局補償課長事務連絡)において、各防衛局業務課等は、被害者又は請求代理人からSACO見舞金の支給を受けたい旨の要請があった場合、支給申請書等を提出させた上、本省補 平成20年3月5日付け防衛省地方協力局補償課長事務連絡)において、各防衛局業務課等は、被害者又は請求代理人からSACO見舞金の支給を受けたい旨の要請があった場合、支給申請書等を提出させた上、本省補償課との協議結果を受けて、支給額を決定するとともに、所定の様式によるSACO見舞金受諾書を取り付けた上、SACO見舞金を支給するものとされているところ、その様式は、SACO見舞金として一定の金額を受け取ることを受諾し、今後いかなる申立てもしないことを約束する旨を記載したものとされている。 ⑵ Aは、平成20年1月、合衆国海兵隊に所属する兵2名(以下「本件米兵ら」という。)による強盗傷害事件の被害に遭い、その後、がんにより死亡した。 - 3 -Aの相続人である上告人らは、Aの死後、本件米兵らを被告として、不法行為に基づく損害賠償を求める訴えを那覇地方裁判所沖縄支部に提起した。同裁判所は、平成30年7月、本件米兵らに対し、損害金元金並びにこれに対する上記事件の日から口頭弁論終結の日までの確定遅延損害金及びその翌日から支払済みまでの遅延損害金の支払を命ずる判決を言い渡し、同判決は、同月、確定した。 上告人らは、その後、上記事件に係る損害賠償請求を完全に満たす最終的解決として慰謝料を受け取ることに同意し、本件米兵ら、合衆国政府及びその職員等を永久に免責する旨を記載した示談書を提出して、合衆国から、日米地位協定18条6項に基づく慰謝料として146万円余の支払を受けた上で、沖縄防衛局長に対し、SACO見舞金として、上記の損害金元金及び確定遅延損害金の合計額と上記慰謝料との差額である2496万円余の支給を求める旨の申請書を提出した。沖縄防衛局長は、上告人らに対し、上記損害金元金と上記慰謝料との差額である1591万円余を支給する旨を回答するとともに、上記 記慰謝料との差額である2496万円余の支給を求める旨の申請書を提出した。沖縄防衛局長は、上告人らに対し、上記損害金元金と上記慰謝料との差額である1591万円余を支給する旨を回答するとともに、上記様式によるSACO見舞金受諾書を提出するよう求めた。 しかし、上告人らは、現在まで、沖縄防衛局長に対し、SACO見舞金受諾書を提出しておらず、上告人らと被上告人との間において、SACO見舞金を支給する旨の合意は成立していない。 2 本件は、上告人らが、被上告人に対し、上告人らがSACO見舞金受諾書を提出しないことを理由に沖縄防衛局長がSACO見舞金の支払手続をとらなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法であるなどと主張して、同項に基づき、上記損害金元金と上記慰謝料の差額に相当する額の損害賠償等を求める事案である。 3 前記事実関係等によれば、上告人らと被上告人との間において、SACO見舞金を支給する旨の合意は成立していないというのであるから、上告人らはSACO見舞金の支給を受ける権利を有するものということはできない。また、他に、SACO見舞金の支給に関し、上告人らの権利又は法律上保護される利益が侵害されたというべき事情も見当たらない。 - 4 -したがって、被上告人は、沖縄防衛局長が上告人らに対しSACO見舞金の支払手続をとらなかったことにつき、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負わない。 4 以上と同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は採用することができない。 なお、その余の請求に関する上告については、上告受理申立ての理由が上告受理の決定において排除されたので、棄却することとする。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。なお、裁判官三浦守の意見がある。 裁判官三浦守の意見は、次のと 理申立ての理由が上告受理の決定において排除されたので、棄却することとする。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。なお、裁判官三浦守の意見がある。 裁判官三浦守の意見は、次のとおりである。 私は、結論において多数意見に賛同するが、沖縄防衛局長が、上告人らに対し、自らが支給額を決定して回答したSACO見舞金を支給しないことは、信義則上の義務に違反し、上告人らの法的利益を害するものの、国家賠償法1条1項の違法があるとまではいい難いと考える。以下、その理由を述べる。 1 日米地位協定18条6項は、合衆国軍隊の構成員等の公務外の不法行為により第三者に損害が生じた場合の請求権の取扱いについて規定する。この請求権は、被害者又はその遺族(以下「被害者等」という。)と加害者の私人間の問題であるが、我が国が日米安保条約(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約をいう。以下同じ。)に基づき施設及び区域の使用を許す合衆国軍隊の構成員等による問題であり、被害者等にとっては、加害者の所在の確認、裁判の執行等について様々な困難があるなど、通常の手続によってはその請求を満たすことができない場合があるため、合衆国政府が遅滞なくその請求を満たす支払を行うことによって被害者等の救済を図るものと解される。 2 平成8年12月2日に承認されたSACO最終報告は、日米地位協定18条6項に基づく合衆国政府の支払が裁判所の確定判決の額に満たない過去の事例は極めて少ないとした上で、仮に将来そのような事例が生じた場合には、日本政府が、- 5 -必要に応じてその差額を埋めるため、請求人に対し支払を行うよう努力するものとしている。これは、合衆国軍隊の構成員等による重大な犯罪行為を含め、沖縄県における同軍隊の施設及び区域に関連する問題に対処すべき事 応じてその差額を埋めるため、請求人に対し支払を行うよう努力するものとしている。これは、合衆国軍隊の構成員等による重大な犯罪行為を含め、沖縄県における同軍隊の施設及び区域に関連する問題に対処すべき事情の下で、被害者等の困難な事情を踏まえ遅滞なくその救済を図るため、同項の運用を改善し、その目的を実現するために必要な措置として行うものと解される。 これを受けて、平成8年12月3日閣議決定「沖縄に関する特別行動委員会の最終報告に盛り込まれた措置の実施の促進について」(以下「平成8年閣議決定」という。)は、SACO最終報告に盛り込まれた措置を的確かつ迅速に実施するため、法制面及び経費面を含め、政府全体として十分かつ適切な措置を講ずるものとした。したがって、内閣は、①日米地位協定18条6項に基づく合衆国政府の支払を受けていること、②加害者を被告とする損害賠償請求訴訟における確定判決等を受けていること、③上記合衆国政府の支払が確定判決等の額に満たないことを要件として、被害者等に対し、その差額を支給するため十分かつ適切な措置を講ずることとしたものと解される。 これに基づき、平成10年1月13日付け施本総第8号防衛施設庁総務部長通知及びこれを改めた平成30年6月21日付け防地補第10027号防衛省地方協力局長通知(以下、これらを併せて「平成30年局長通知等」という。)は、地方防衛局長等に対し、日米地位協定18条6項に基づく請求に関し、合衆国政府の支払が裁判所の確定判決の額に満たない場合において、この差額についてはSACO見舞金として支給することができることを示した上で、その支給は、昭和39年6月23日閣議決定「合衆国軍隊等により損害を受けた者に対する賠償金の支給について」を根拠とし、上記要件の下で、昭和37年総理府令第42号(以下「昭和37年総理府 示した上で、その支給は、昭和39年6月23日閣議決定「合衆国軍隊等により損害を受けた者に対する賠償金の支給について」を根拠とし、上記要件の下で、昭和37年総理府令第42号(以下「昭和37年総理府令」という。)14条及び15条の手続に従って行うこと等を通知した。 このように、SACO見舞金の支給は、法律の規定を根拠とする仕組みによるものではなく、申請者との間の個別の契約に基づくものと解されるが、それは、純粋の私経済作用ではなく、被害者等の困難な事情を踏まえ遅滞なくその救済を図る日- 6 -米地位協定18条6項の目的を実現するため、合衆国政府の支払と確定判決等の額との差額を補填するものであって、平成8年閣議決定に基づく行政上の仕組みの下に行われる。政府は、これをSACO見舞金制度と呼んでおり、SACO見舞金という名目であるが、実質的には損害を補填し、差額を埋めることによって被害者救済を行う趣旨である旨の説明をしている(平成29年5月23日参議院法務委員会における防衛省地方協力局長答弁)。 3 平成30年局長通知等は、SACO見舞金の支給に関し、遅延損害金を支給の対象としないものとしているが、SACO最終報告においても平成8年閣議決定においても、日本政府による差額の補填に関し、確定判決等の額から遅延損害金を除外する旨の記載はない。 むしろ、不法行為による損害賠償債務が損害の発生と同時に遅滞に陥るものであって、確定判決等の取得に相当の期間を要する以上、SACO最終報告の「裁判所の確定判決の額」が殊更に遅延損害金を除外するものとは解されない。また、同最終報告は、「努力する」としているが、平成8年閣議決定は、同最終報告に盛り込まれた措置を的確かつ迅速に実施するため、法制面及び経費面を含め、政府全体として十分かつ適切な措置を講ずるものとしてお 同最終報告は、「努力する」としているが、平成8年閣議決定は、同最終報告に盛り込まれた措置を的確かつ迅速に実施するため、法制面及び経費面を含め、政府全体として十分かつ適切な措置を講ずるものとしており、遅延損害金を対象とすることが政府の努力の及ばないものとして、これを除外するものとは解されない。 もとより、日米両政府は、公務外の不法行為に関し、被害者等に対し損害賠償義務を負うものではない。しかし、何人も、自己の権利を実現するため、裁判所において裁判を受ける権利が保障されていること(憲法32条)等に鑑みれば、被害者等が加害者に対する損害賠償請求訴訟の確定判決等を得ている場合、公権力による当該請求権の取扱いにおいて、司法判断に基づく正当な権利の実現を尊重すべきことは当然である。 この点に関し、日米地位協定18条6項に基づく合衆国政府の支払は、加害者及び合衆国政府等に対する請求権を放棄して免責する旨の記載のある示談書を提出することを条件として行われているが、その支払額が公平かつ公正な審査を経て遅滞- 7 -なく決定され、請求人がその請求を完全に満たすものとして受諾することを要件とする仕組みの下において、確定判決等により被害者等の正当な権利が確定しているときは、合衆国政府の支払が確定判決等の額を満たすことによって、被害者等の救済と紛争の解決が公平かつ公正に実現される。SACO最終報告において、合衆国政府の支払が確定判決の額に満たない事例が極めて少ないとされているのは、むしろ当然のことといってよい。 SACO見舞金制度は、加害者に対する免責を条件とする合衆国政府の支払と確定判決等の額との差額を補填するものである以上、遅延損害金を対象から除外することは、必然的に、当該司法判断に基づく正当な権利の実現を損なうことになる。 被害者等が通常の手続によ る合衆国政府の支払と確定判決等の額との差額を補填するものである以上、遅延損害金を対象から除外することは、必然的に、当該司法判断に基づく正当な権利の実現を損なうことになる。 被害者等が通常の手続によってはその請求を満たすことが困難な状況にあるとしても、正当な権利の実現は、本来、私人間の問題であって、加害者がその責任を免れる理由はなく、被害者等にこれを甘受させる理由もない。SACO最終報告の上記の経緯等に照らしても、同最終報告が、殊更に、正当な権利に関し、加害者を免責して救済を制限することを意図するものとは解されない。 以上のことからすると、平成30年局長通知等が遅延損害金を対象としないものとしたことは、SACO最終報告及び平成8年閣議決定の趣旨に反し、被害者等の正当な権利の実現を損なう不合理なものというべきである。 4 平成20年3月5日付け防衛省地方協力局補償課長事務連絡(以下「平成20年課長事務連絡」という。)の定める実施要領は、SACO見舞金の支給に関し、請求者から、今後いかなる申立てもしないことを約束する旨(以下「本件約束」という。)の記載がされたSACO見舞金受諾書を提出させた上で、その支給をするものとしている。 そして、沖縄防衛局長は、上告人らのSACO見舞金支給申請に関し、防衛大臣との協議を経てSACO見舞金を支給する必要があると認めた上で、SACO見舞金の支給額として、合衆国政府の支払と確定判決が認容した損害金元金との差額(以下「本件差額」という。)を決定し、その後、上告人らに対し、本件差額を支- 8 -給する旨を回答するとともに、SACO見舞金受諾書の提出を求めた。 SACO見舞金の支給は、契約に基づくといっても、純粋の私経済作用ではなく、被害者等の困難な事情を踏まえ遅滞なくその救済を図る日米地位協定18条6項の ともに、SACO見舞金受諾書の提出を求めた。 SACO見舞金の支給は、契約に基づくといっても、純粋の私経済作用ではなく、被害者等の困難な事情を踏まえ遅滞なくその救済を図る日米地位協定18条6項の目的を実現するため、合衆国政府の支払と確定判決等の額との差額を補填するものであって、平成8年閣議決定に基づく行政上の仕組みの下で適正に行われるべき公権力の行使である。これを単に契約自由の原則の下における一般的な契約締結上の問題とみることは相当でない。 沖縄防衛局長が本件差額の支給を決定して回答した時点において、被上告人と上告人らとの間でSACO見舞金の支給に関する契約が成立したとまではいえないにしても、本件差額の限度において、SACO見舞金の支給要件を満たしこれを支給する必要があると認める被上告人の判断が示されたものであり、これを受領する上告人らの意思も明らかである。日米地位協定18条6項を基礎とするSACO見舞金制度の上記の趣旨及び目的に照らし、この時点において、上告人らが本件差額の支給を受けるべき利益は、客観的かつ具体的なものというべきであり、国家賠償法1条1項の適用上、沖縄防衛局長は、上告人らの上記利益を尊重しその支給について誠実に事務を処理すべき信義則上の義務を負い、上記利益は、法的保護に値するものということができる。 本件約束は、通常の和解契約等にもみられるが、上記のとおり、遅延損害金の除外がSACO最終報告及び平成8年閣議決定の趣旨に反し、司法判断に基づく正当な権利の実現を損なう不合理なものである以上、本件約束を支給の条件とすることにも同じ問題がある。 取り分け、本件において、加害者らを被告とする訴訟の確定判決は、強盗傷害事件の発生から10年余を経て、損害金元金(1737万円余)及びこれに対する遅延損害金(確定遅延損害金は90 同じ問題がある。 取り分け、本件において、加害者らを被告とする訴訟の確定判決は、強盗傷害事件の発生から10年余を経て、損害金元金(1737万円余)及びこれに対する遅延損害金(確定遅延損害金は905万円余)を認容したものである。そして、合衆国政府の支払(146万円余)は、上記損害金元金の1割にも満たず、上告人らの請求を満たすには程遠いにもかかわらず、何ら義務を履行しない加害者に対する一- 9 -切の免責を条件とする。こうした経緯を前提としながら、沖縄防衛局長は、本件差額(1591万円余)の支給を決定して回答したが、上記事件から16年以上が経過してもなお、本件約束を支給の条件として、これを支給していない。このような取扱いは、長年にわたり重大犯罪の被害に伴う困難な状況にある上告人らに対し、損害金元金の補填のため、長年の遅延損害金に係る正当な権利について、加害者を免責した上でその補填を求めないことを余儀なくさせるものといわざるを得ない。 これは、上記のような私人間の権利義務関係について、公権力が司法判断の意義を損なう取扱いをするものであって、その合理的な理由を見いだし難い上、公平かつ公正な被害者救済の理念に反するというべきである。 そうすると、沖縄防衛局長が、上告人らがSACO見舞金受諾書を提出することを条件とし、上告人らに対し本件差額に係るSACO見舞金を支給しないことは、国家賠償法1条1項の適用上、上記信義則上の義務に違反して、上告人らがその支給を受けるべき法的利益を害するというべきである。この点において、原判決は、同項の解釈適用を誤っている。 5 しかしながら、上記の沖縄防衛局長の事務処理は、平成30年局長通知等及び平成20年課長事務連絡に従ったものであること、SACO見舞金の支給は、日米地位協定の義務の履行として行われるものでは 5 しかしながら、上記の沖縄防衛局長の事務処理は、平成30年局長通知等及び平成20年課長事務連絡に従ったものであること、SACO見舞金の支給は、日米地位協定の義務の履行として行われるものではなく、支給の内容等を具体的に規律する法律がないこと、その支給に関する取扱いの適法性に関する裁判所の判断も示されていなかったこと等の事情を考慮すると、沖縄防衛局長が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と上記行為をしたと認めることは困難である。 したがって、沖縄防衛局長が上告人らに対し本件差額に係るSACO見舞金を支給しないことに国家賠償法1条1項の違法があるとまではいい難い。 6 我が国が、主権国家として、自国の安全を確保するため、日米安保条約に基づき合衆国軍隊の施設及び区域の使用を許す場合、その構成員等による公務外の不法行為は、単なる私人間の問題にとどまるものではない。その根絶と被害者等の救済は、全国の米軍基地の周辺地域に関わる重要な問題であり、取り分け、米軍基地- 10 -が集中し現在もなお重大な犯罪行為が繰り返されている沖縄県の住民の負担を真に軽減することは、国政の重要な課題である。被害者等が遅滞なく十分に救済されることが肝要であり、制度の基本的な在り方が問われる。 (裁判長裁判官三浦守裁判官草野耕一裁判官岡村和美裁判官尾島明)
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