平成26(行ケ)10241 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成27年6月30日 知的財産高等裁判所 4部 判決 審決取消
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判決文本文30,383 文字)

平成27年6月30日判決言渡同日原本受領裁判所書記官平成26年(行ケ)第10241号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成27年5月19日判決 原告株式会社ニッケンビルド 原告日鐵住金建材株式会社 上記両名訴訟代理人弁理士山名正彦同筬島孝夫 被告兼脱退被告訴訟引受人富士川建材工業株式会社 被告兼脱退被告訴訟引受人株式会社ニチラス 上記両名訴訟代理人弁護士伊藤博昭上記両名訴訟代理人弁理士伊藤儀一郎 脱退被告有限会社坂本建美装 主文 1 特許庁が無効2014-800021号事件について平成26年9月29日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告兼脱退被告訴訟引受人らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等⑴ 被告兼脱退被告訴訟引受人ら(以下「被告ら」という。)及び脱退被告は,平成24年3月6日,発明の名称を「建物のモルタル塗り外壁通気層形成部材及びその製造方法並びに建物のモルタル塗り外壁通気層形成工法」とする発明につき,特許出願(特願2012-48723号。以下「本件出願」という。)をし(甲3),平成25年1月18日,設定登 層形成部材及びその製造方法並びに建物のモルタル塗り外壁通気層形成工法」とする発明につき,特許出願(特願2012-48723号。以下「本件出願」という。)をし(甲3),平成25年1月18日,設定登録(特許第5177826号)を受けた(請求項の数6。甲2。以下,この「特許」を「本件特許」といい,この特許権を「本件特許権」という。)。 ⑵ 原告らは,平成26年2月3日付けで本件特許の特許請求の範囲の請求項1(以下「訂正前請求項1」という。)に記載された発明に係る特許について特許無効審判を請求した(甲15)。 ⑶ 特許庁は,上記請求を無効2014-800021号事件として審理を行った。 被告ら及び脱退被告は,同年3月28日付けで訂正前請求項1及び本件出願の願書に添付した明細書についての訂正(以下「本件訂正」という。)を請求した(甲17)。 ⑷ 特許庁は,同年9月29日,「請求のとおり訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年10月9日,原告らに送達された。 ⑸ 原告らは,同年11月7日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 なお,脱退被告は,被告らと本件特許権を共有していたが,平成27年1月8日,共有持分を全部被告らに移転し,その旨が登録された。被告らは,同年3月5日,脱退被告の訴訟引受け申立てに基づく引受決定により,脱退被告の訴訟上の地位を承継し,脱退被告は,同日,原告らの承諾を得て,本件訴訟から脱退した。 2 特許請求の範囲の記載本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1(以下「訂正後請求項1」という。)の記載は,次のとおりである(以下,訂正後請求項1に係る発明を「本件発明」という。)。 【訂正後請求項 囲の記載本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1(以下「訂正後請求項1」という。)の記載は,次のとおりである(以下,訂正後請求項1に係る発明を「本件発明」という。)。 【訂正後請求項1】連続敷設用の建物のモルタル塗り外壁通気層形成部材であって,前記連続敷設用のモルタル塗り外壁通気層形成部材は,水平方向に延びる,断面形状が略凹溝条に形成された溝条リブが間隔をあけて複数設けられ,前記溝条リブ間には網目部が形成されたラス材と,該ラス材の一面側に貼着された防水シートとを有し,前記溝条リブの長手方向に向かっては,該溝条リブの長手方向と略直交し,前記貼着された防水シート側に向けて略台形山状に突出させて形成された,底面が平面とされ,上方に向かって斜めに拡開し,逆台形型の凹溝条をなし,該凹溝条の各隅部がRを設けて形成されてなる通気胴縁部が,間隔をあけて複数設けられ,隣り合う前記通気胴縁部間の谷部は,通気層用空間とされ,前記モルタル塗り外壁通気層形成部材の連続敷設時には,前記通気胴縁部同士及び前記溝条リブ同士が重ね合わせられ,前記逆台形型凹溝条をなす通気胴縁部の形状及び断面形状が略凹溝条をなす溝条リブの形状が重ね合わせ敷設の目印形状となるよう形成された,ことを特徴とする建物のモルタル塗り外壁通気層形成部材。 3 本件審決の理由の要旨 ⑴ 本件審決の理由は,別紙審決書写しのとおりであり,要するに,本件発明と,本件出願日前の特許出願であって,本件出願後に特許掲載公報(特許第4990409号公報。以下,この特許を「本件先願特許」という。)の発行がされたものの願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(特許法29条の2。以下,これらを併せて「先願当 公報(特許第4990409号公報。以下,この特許を「本件先願特許」という。)の発行がされたものの願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(特許法29条の2。以下,これらを併せて「先願当初明細書等」という。)に記載された発明(以下「甲5発明」という。)との間には,実質的な相違点が存在するから,本件発明は,甲5発明と実質的に同一であるとはいえず,したがって,本件発明に係る本件特許は,特許法29条の2の規定に違反してなされたものではなく,無効とすることはできないというものである。 ⑵ 本件審決が認定した甲5発明,本件発明と甲5発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。 ア甲5発明「建築物のモルタル外壁を構築する目的で使用する複合ラスであって,水平方向に延びる,上下方向に間隔をあけて配置された複数本の横力骨32(リブ)と,前記横力骨32と32の間に形成された網目部33とで構成したリブラス34と,リブラス34の背面に防水紙5を裏打ちして平板状の複合ラス素材が構成されるとともに,防水紙5の裏打ちは,接着剤等により止め付ける手段で行われ,複合ラス素材は,前記横力骨32を備えたリブラス34と防水紙5を合一に等しく裏面側へ凹溝状に突出させるプレス加工等を行うことにより,半円形状の突条部10aが多数形成された複合ラス30ができあがり,突条部10aが,横力骨32(リブ)の長手方向と略直交しており,また,半円形状の突条部10aの2つの隅部は,Rを設けて形成されており,各突条部10aの頂部を,建築物の躯体を構成する柱11及び間柱12へ取り付けた外壁パネル13と当接させ,その当接箇所を固定具6 で固定することにより,外壁パネル13と複合ラスとの間に通気層を形成できる,複合ラス」 ,建築物の躯体を構成する柱11及び間柱12へ取り付けた外壁パネル13と当接させ,その当接箇所を固定具6 で固定することにより,外壁パネル13と複合ラスとの間に通気層を形成できる,複合ラス」イ本件発明と甲5発明との一致点「建物のモルタル塗り外壁通気層形成部材であって,前記モルタル塗り外壁通気層形成部材は,水平方向に延びるリブが間隔をあけて複数設けられ,前記リブ間には網目部が形成されたラス材と,該ラス材の一面側に貼着された防水シートとを有し,前記リブの長手方向に向かっては,該リブの長手方向と略直交し,前記貼着された防水シート側に向けて所定形状に突出させて形成された凹溝条をなし,凹溝条の2つの隅部は,Rを設けて形成されてなる通気胴縁部が,間隔をあけて複数設けられ,隣り合う前記通気胴縁部間の谷部は,通気層用空間とされた,建物のモルタル塗り外壁通気層形成部材。」である点。 ウ相違点(相違点1)凹溝条の形状について,本件発明では,逆台形型であり,底面が平面とされ,上方に向かって斜めに拡開し,逆台形型の凹溝条の各隅部(4つ)にRを設けているのに対し,甲5発明では,半円形状であり,2つの隅部にRを設けている点。 (相違点2)水平方向に延びるリブが,本件発明では,略凹溝条に形成された溝条リブであるのに対して,甲5発明では,そのようなものであるかどうか不明である点。 (相違点3)建物のモルタル塗り外壁通気層形成部材が,本件発明では,連続敷設用 のものであり,連続敷設時には,通気胴縁部の形状及びリブの形状が重ね合わせ敷設の目印形状となるよう形成しているのに対して,甲5発明では ルタル塗り外壁通気層形成部材が,本件発明では,連続敷設用 のものであり,連続敷設時には,通気胴縁部の形状及びリブの形状が重ね合わせ敷設の目印形状となるよう形成しているのに対して,甲5発明では,連続敷設用のものであるかどうか不明であるとともに,通気胴縁部同士及び(溝条)リブ同士が重ね合わされ,通気胴縁部の形状及びリブの形状が重ね合わせ敷設の目印形状となるよう形成しているかどうか不明である点。 4 原告ら主張の取消事由⑴ア先願当初明細書等記載の発明の認定の誤り,本件発明と甲5発明との相違点1の認定の誤り(取消事由1)イ本件発明と甲5発明との相違点2の認定の誤り(取消事由2)ウ本件発明と甲5発明との相違点3の認定の誤り(取消事由3)⑵ なお,本件審決は,甲5号証から甲5発明を認定し,これと本件発明とを対比し,本件発明の特許法29条の2の該当性を判断しているが,甲5号証に記載されている明細書(以下「甲5明細書」という。),特許請求の範囲及び図面(以下,「甲5明細書等」という。)は,本件先願特許の願書に最初に添付したものではなく,先願当初明細書等に当たらないから,本件審決の上記認定及び判断には誤りがある。 もっとも,原告らは,上記誤りの点については取消事由として主張していない。また,本件先願特許の先願当初明細書等であると認める甲24号証記載の明細書,特許請求の範囲及び図面(以下,これらを併せて「甲24明細書等」という。)の記載事項と,甲5明細書等の記載事項との異なる点(甲24明細書等記載の請求項1〔以下,「本件当初特許請求の範囲の請求項1」という。〕が「縦方向の間隔をあけて横向き方向へ配置された複数本の横力骨を備えたラス網と,(中略)複合ラス。」であるのに対し,甲5明細書等記載の請求 項1〔以下,「本件当初特許請求の範囲の請求項1」という。〕が「縦方向の間隔をあけて横向き方向へ配置された複数本の横力骨を備えたラス網と,(中略)複合ラス。」であるのに対し,甲5明細書等記載の請求項1〔以下「甲5請求項1」という。〕は「縦方向の間隔をあけて横向き方向へ配置された複数本の横力骨を備え,縦力骨がないラス網と,(中略)複合ラス。」である点。)を勘案しても,甲24明細書等から甲5発 明を認定することができるから,前記誤りは,本件審決の結論に影響を及ぼすものではないといえる。 そこで,以下においては,本件先願特許に係る先願当初明細書等(以下「本件先願当初明細書等」という。)は,甲24明細書等であることを前提として,本件審決の取消事由の有無を判断する。 第3 当事者の主張 1 取消事由1(先願当初明細書等記載の発明の認定の誤り,本件発明と甲5発明との相違点1の認定の誤り)について〔原告らの主張〕⑴ア本件審決は,甲5発明の「リブラス34と防水紙5を合一に等しく裏面側へ凹溝状に突出させるプレス加工等を行うことにより,」形成される「半円形状の突条部10a」と,本件発明の「貼着された防水シート側に向けて略台形山状に突出させて形成された,」「逆台形型の凹溝条」とは,「貼着された防水シート側に向けて所定形状に突出させて形成」した「凹溝条」である点で共通しており,甲5発明の「突条部10a」は,その頂部を,「建築物の躯体を構成する柱11及び間柱12へ取り付けた外壁パネル13と当接させ,その当接箇所を固定具6で固定することにより,外壁パネル13と複合ラスとの間に通気層を形成」させることができるものであるから,本件発明の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」に相当するとして,本件発明と甲5発明とは,「貼着された防水シート側 により,外壁パネル13と複合ラスとの間に通気層を形成」させることができるものであるから,本件発明の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」に相当するとして,本件発明と甲5発明とは,「貼着された防水シート側に向けて所定形状に突出させて形成された凹溝条をなし,凹溝条の2つの隅部は,Rを設けて形成されてなる通気胴縁部」を備えている点において一致している旨認定した。 しかしながら,本件審決は,甲5明細書等においては,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」が半円形状のもののみに限定されていると解し,これを前提として,「凹溝条」をなす「通気胴縁 部」の形状につき,本件発明では,「逆台形型」であり,各隅部(4つ)にRを設けているのに対し,甲5発明では,「半円形状」であり,2つの隅部にRを設けている点を相違点1として認定しているが,以下のとおり,この認定は誤りである。 イ甲5明細書等において,「半円形状」の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」,すなわち,「半円形状」の「突条部10a」は,一実施例として甲5号証の図2,図3等の図面中に示されているにすぎない。 甲5請求項1には,「(ラス網と防水紙を)表面側から背面側へ凹溝状に突出させた突条部が,前記横力骨と同方向に一定の間隔をあけて,同横力骨とは直交する縦向き方向に複数本形成されている」と記載されているが,「突条部」の形状は具体的に特定されていない。甲5請求項1の従属項である請求項2から4及び甲5明細書においても,「突条部」を「半円形状」と特定する記載は,一切ない。 これらの事実によれば,甲5発明の技術的思想の本質は,複合ラスに,凹溝状に突出させた突条部が形成され,甲5明細書等記載の請求項6(以下「甲5請求項6」という。)記載のとおり,その突条部 これらの事実によれば,甲5発明の技術的思想の本質は,複合ラスに,凹溝状に突出させた突条部が形成され,甲5明細書等記載の請求項6(以下「甲5請求項6」という。)記載のとおり,その突条部の「頂部を,建築物の躯体を構成する柱及び間柱へ取り付けた外壁パネルへ当接させ,その当接箇所を固定具で固定することにより,外壁パネルと複合ラスとの間に通気層を形成」する構成を要旨としていることが明らかといえ,上記「突条部」の形状を「半円形状」に限定する根拠はない。 以上によれば,本件審決が,甲5明細書等においては,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」が半円形状のもののみに限定されていると解したことは誤りであり,したがって,同解釈を前提として,本件発明と甲5発明との間には,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」の形状につき,相違点1のとおりの相違が存在すると認定したことも,誤りである。 ⑵ 仮に,本件発明と甲5発明との間には,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」の形状につき,相違点1のとおりの相違が存在するとしても,同相違を実質的な相違点として認めた本件審決の判断は,誤りである。 ア(ア) 本件審決は,本件発明の「逆台形型」の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」に係る作用,効果として,①「モルタル塗り外壁通気層形成部材1の構造躯体6(判決注:本件審決には,「構造躯体5」と記載されているが,明白な誤記である。)への取り付ける際に接する溝条リブ2の底面は,ラス固定用の例えばステープルガンの銃口が容易に入り,しかもステープルを打ち付けられるようになるべく平面になるよう設定されている。」こと(本件訂正後の明細書〔甲17。以下「本件訂正後明細書」という。〕の段落【0028】),②「上記通気胴縁部5の上面と底面の各隅部に を打ち付けられるようになるべく平面になるよう設定されている。」こと(本件訂正後の明細書〔甲17。以下「本件訂正後明細書」という。〕の段落【0028】),②「上記通気胴縁部5の上面と底面の各隅部には,若干の丸み,すなわちRを設けてあり,溝条リブ2の亀裂や引きちぎれを防止できるように工夫が施されている。」こと(甲17【0030】),③被請求人ら(被告ら及び脱退被告)が主張する「柱や間柱の面の幅方向中央部と通気胴縁部の平面とされた底面の略中心部分とが正確に一致しなくとも,通気胴縁部の底面が平面であれば,ある程度の誤差を吸収して,すなわち前記底面の中心部分を外してもステープルを前記の柱や間柱に確実に打ち込むことができる」こと,「構造躯体に対しモルタル塗り外壁通気層形成部材を取付けのために添設させたとき,その通気胴縁部の底面が平面になっていると,構造躯体の外面には,前記通気胴縁部の底面が面で接触するため,摩擦抵抗が大きくなって,取付けのための作業安定性が格段に優れる」ことを挙げている。 そして,本件審決は,相違点1に係る本件発明の構成は,これら①,②及び③の作用,効果を有することが明らかであるとして,相違点1は,設計上の微差とはいえない旨認定した。 (イ) しかしながら,甲5発明の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」の形状を「半円形状」のものに限定したとしても,以下によれば,前記①から③の作用,効果は,いずれも甲5発明の作用,効果に比して,新規,有用なものとはいえない。 a 前記①の点について,ステープルガンの銃口の入りやすさは,底面ではなく,拡開部の大きさに左右されるものであり,また,甲5号証の図3における符号6のとおり,甲5発明において,ステープルは,横力骨等をまたぐよ 点について,ステープルガンの銃口の入りやすさは,底面ではなく,拡開部の大きさに左右されるものであり,また,甲5号証の図3における符号6のとおり,甲5発明において,ステープルは,横力骨等をまたぐように縦方向に打ち付けられることから,銃口の入りやすさについて,甲5発明と本件発明との間に,差はない。 しかも,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」は,本来,通気層の形成を主目的としているので,ステープルを外壁パネル等の対象物に打ち付けることができれば足り,したがって,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」の底面が平面であるか,多少傾斜しているかによって,ステープル打付けの容易性,ひいては,通気層形成の容易性においても,前記両発明の間に差はないはずである。 b 前記②の点については,当業者に周知の技術に係るものであり,また,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」の通気層形成という作用,効果においても,前記両発明の間に差はない。 c 前記③の点のうち,「誤差を吸収」してステープルを確実に打ち込めるという点については,前記aによれば,前記両発明の間に差はないはずである。 また,摩擦抵抗の点については,ラス網と外壁パネル等の対象物との間には必ず防水紙が介在するところ,当該防水紙自体,ある程度の摩擦抵抗を備えていることから,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」の底面の形状の相違は,防水紙を前記対象物に押し当てる部分が平面であるか,突部であるかの差異にすぎない。このことから,摩擦抵抗の 強度については,前記両発明の間に差があったとしても,微差にすぎないといえる。 イ以下によれば,甲5請求項1に記載された「ラス網と防水紙を表面側から背面側へ凹溝状に突出させた突条部」の構成は,本件発明の「溝条リブの長手方向と略直 としても,微差にすぎないといえる。 イ以下によれば,甲5請求項1に記載された「ラス網と防水紙を表面側から背面側へ凹溝状に突出させた突条部」の構成は,本件発明の「溝条リブの長手方向と略直交し,前記貼着された防水シート側に向けて略台形山状に突出させて形成された,底面が平面とされ,上方に向かって斜めに拡開し,逆台形型の凹溝条」をなす「通気胴縁部」の構成と,実質において同一であり,相違点1は,実質的なものとはいえない。 (ア) 発明が有する作用,効果の意義の検討に当たり,特許法29条1項の規定と同法29条の2の規定は,有用な新規の発明の保護を図るという同法の目的に照らし,区別することなく,運用されるべきである。 そして,甲5請求項1に記載された「突条部」及び本件発明の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」は,その形状が,「半円形状」であるか,「底面が平面とされ,上方に向かって斜めに拡開し,逆台形型」であるかにかかわらず,いずれも「建物の外壁パネルへ当接させて複合ラスとの間に通気層を形成する」という作用,効果を有する。 甲5請求項1に記載された「突条部」と,本件発明の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」は,このように同一の作用,効果を有する以上,技術的思想の共通性を否定できず,実質において同一といえる。 (イ) 以下のとおり,本件発明の「逆台形型」の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」と甲5発明の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」とは,形状及び大きさにおいて大差はない。 a 本件訂正後明細書の段落【0031】の記載,すなわち,「通気胴縁部5の高さは,(中略)建物の設計寸法に応じて,例えば高さ16,18,20mmなど自由な高さすることが可能とされている。」に照らしながら,例え 後明細書の段落【0031】の記載,すなわち,「通気胴縁部5の高さは,(中略)建物の設計寸法に応じて,例えば高さ16,18,20mmなど自由な高さすることが可能とされている。」に照らしながら,例えば甲2号証の図2を参照すると,本件発明の「逆 台形型」の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」は,溝幅が最大となる溝開口幅の寸法と,最小となる山部の幅の寸法との間には,実際は大差がなく,これは,甲5号証中の例えば図1(B)に見られる「突条部10a」と略類似の範囲というべきである。 以上によれば,本件発明の「逆台形型」の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」と甲5発明の「突条部10a」とは,形状において大差はないものといえる。 b また,甲5明細書の段落【0020】には,「突条部10a」の高さ寸法は15mm程度に形成されており,間口幅は20mm程度の大きさとされている旨が記載されている。 前述した本件訂正後明細書の段落【0031】の記載にも鑑みると,本件発明の「逆台形型」の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」と甲5発明の「突条部10a」とは,大きさにおいても大差はないものといえる。 〔被告らの主張〕⑴ 本件において,特許法29条の2の該当性の有無を判断するに当たっては,訂正後請求項1に記載された全ての構成による発明が,特許法29条の2所定の「同一」性の有無を判断する前提となり,他方,本件発明と比較対照して「同一」性の有無を判断すべき発明は,先の出願の明細書等において,1つの発明としてその構成が明確に記載され,対比可能なものでなければならない。 すなわち,訂正後請求項1に係る特許が特許法29条の2の規定に反し,無効であるというためには,先の出願の明細書等に,訂正後請求項1に記載された発明,すなわ 可能なものでなければならない。 すなわち,訂正後請求項1に係る特許が特許法29条の2の規定に反し,無効であるというためには,先の出願の明細書等に,訂正後請求項1に記載された発明,すなわち,本件発明の全ての構成と対比できる発明の構成が,明確に表現されていなければならない。 特許法29条の2の規定の適用手法については,審査基準第Ⅱ部第3章の 2.4にも,「請求項に係る発明が他の出願の当初明細書等に記載された発明又は考案と同一」とは,「請求項に係る発明の発明特定事項と他の出願の当初明細書等に記載された発明又は考案の発明を特定するための事項とに相違点がない場合,又は相違点はあるがそれが課題解決のための具体的手段における微差である場合(実質的同一)をいう」と明記されているところである。 ⑵ア甲5明細書等には,本件発明と同一の発明の構成は,全く開示されていない。 甲5明細書の実施例3及び甲5号証の図9に記載された発明は,「横力骨32」,「網目部33」及び「突条部10a」を採用しているところ,これらは,それぞれ,本件発明の「溝条リブ」,「網目部」及び「通気胴縁部5」に類似している。この点に鑑みると,甲5明細書等においては,甲5明細書の実施例3及び甲5号証の図9に記載された発明が,本件発明に比較的近いものといえる。 イ本件審決は,前記アと同様に,甲5明細書等から甲5発明を抽出し,これと本件発明とを対比している。 この特許法29条の2の適用手法は,本件発明の全ての構成を前提として,本件発明と対比可能な発明を甲5明細書等から抽出し,同抽出に係る発明と本件発明との間における構成の一致点の有無を検討するというものであり,前記⑴の審査基準に則ったものといえる。 したがって,上記適 対比可能な発明を甲5明細書等から抽出し,同抽出に係る発明と本件発明との間における構成の一致点の有無を検討するというものであり,前記⑴の審査基準に則ったものといえる。 したがって,上記適用手法によって,本件発明について特許法29条の2の該当性の有無を検討した本件審決の判断に,誤りはない。 ウ原告は,本件審決につき,甲5明細書等においては,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」が半円形状のもののみに限定されていると解したことは誤りである旨主張するが,本件審決は,前記適用手法によって,甲5明細書等から,本件発明の構成と対比可能な 構成として「半円形状の突条部10a」を抽出して比較考察の対象としたのであり,この点に誤りはない。 2 取消事由2(本件発明と甲5発明との相違点2の認定の誤り)について〔原告らの主張〕⑴ 本件審決は,相違点2につき,甲5発明においては,「水平方向に延びる」「横力骨32(リブ)」が,本件発明のように,「略凹溝条に形成された溝条リブ」のようなものであるか不明である旨認定するが,以下によれば,同認定は,誤りである。 ⑵ア甲5発明の横力骨32(リブ)及び本件発明の「溝条リブ」に期待される本来の役割は,ラス網の補強であり,同補強機能を有する限り,断面形状は格別問題にならず,この点は,当業者に明らかである。 甲5発明の横力骨32(リブ)は,本件発明の「溝条リブ」と同様に,ラス網の補強材としての役割を果たしていることから,断面形状が,本件発明の「溝条リブ」とは異なり,「略凹溝条に形成された」とは認め難い点は,問題にならない。 イ甲5明細書の段落【0031】には,実施例3につき,「本実施例3の特徴は,上記実施例1のラス網3に代えて,リブラス3 は異なり,「略凹溝条に形成された」とは認め難い点は,問題にならない。 イ甲5明細書の段落【0031】には,実施例3につき,「本実施例3の特徴は,上記実施例1のラス網3に代えて,リブラス34を採用した点にある。」と記載されているところ,本件出願以前において,当業者間に公知ないし周知であったリブラスに関する様々な構成例が存在し(甲6の1から甲11),「略凹溝条に形成された溝条リブ」も,多種多様なものが存在しており,当業者間に,公知,周知の材であったことが明らかである。 〔被告らの主張〕争う。 3 取消事由3(本件発明と甲5発明との相違点3の認定の誤り)について〔原告らの主張〕以下によれば,本件審決による相違点3の認定は,誤りである。 ⑴ 本件審決は,建物のモルタル塗り外壁通気層形成部材が,本件発明では,連続敷設用のものであるのに対し,甲5発明では, 連続敷設用のものであるかどうか不明である旨認定する。 しかしながら,甲5明細書の段落【0026】中の「この複合ラス10の張設作業は,後のモルタル塗着作業に必要な全範囲にわたり,特にラス網3の断点(隙間)を生じさせないように隣接する複合ラス10相互間の継ぎ足し処理を順次に繰り返して行う。」という記載は,個々の複合ラス10がモルタル塗着作業を前提とする以上,塗着したモルタルが漏れ出すようなラス網3の断点(隙間)を生じさせてはならないことを説明するもので,その趣旨は,隣接する複合ラス10相互間の継ぎ足し処理を「連続敷設」とすることに他ならない。 したがって,甲5発明においても,建物のモルタル塗り外壁通気層形成部材は,実質的に連続敷設用のものであるといえ,本件審決の前記認定は,誤りである。 ⑵ 本件審決は,建物のモルタル したがって,甲5発明においても,建物のモルタル塗り外壁通気層形成部材は,実質的に連続敷設用のものであるといえ,本件審決の前記認定は,誤りである。 ⑵ 本件審決は,建物のモルタル塗り外壁通気層形成部材が,本件発明では,連続敷設時には,通気胴縁部の形状及びリブの形状が重ね合わせ敷設の目印形状となるよう形成しているのに対して,甲5発明では,通気胴縁部同士及び(溝条)リブ同士が重ね合わされ,通気胴縁部の形状及びリブの形状が重ね合わせ敷設の目印形状となるよう形成しているかどうか不明である旨認定している。 しかしながら,本件審決は,本件発明に関し,「目印形状」についてその部位や形成状況等を具体的に説示しておらず,客観性及び具体性を欠いている。 また,甲5発明においても,連続敷設時において,凹溝状に突出させた突条部10aの形状が重ね合わせ敷設の目印形状となるのは自明のことであるところ,本件審決は,突条部10a及び横力骨32の構成が重ね合わせ 敷設の目印形状とならない理由についても説明していない。 以上によれば,本件審決の前記認定は,誤りである。 〔被告らの主張〕争う。 第4 当裁判所の判断当裁判所は,以下のとおり,本件審決には,先願発明の認定の誤り及びそれに基づく相違点1の認定の誤りがあることから,原告ら主張の取消事由1は理由があるものと判断する。 1 本件発明について⑴ 本件発明の特許請求の範囲(訂正後請求項1)の記載は,前記第2の2記載のとおりである(甲17)。 ⑵ 本件訂正後明細書(甲17)の「発明の詳細な説明」及び図面(甲2。以下,併せて「本件訂正後明細書等」という場合もある。また,下記記載中に引用する図面について別紙1甲2号証図面を参照。)には,概要, 本件訂正後明細書(甲17)の「発明の詳細な説明」及び図面(甲2。以下,併せて「本件訂正後明細書等」という場合もある。また,下記記載中に引用する図面について別紙1甲2号証図面を参照。)には,概要,以下のとおり記載されている。 ア本件発明の技術分野本件発明は,ラス材,特にリブラス材を用いての建物のモルタル塗り外壁通気層形成部材等に関するものである(【0001】)。 イ背景技術(ア) 従前から,例えば木造住宅のモルタル塗り外壁内には,一般に所定の空間部が形成されており,その内部の空気温度がいわゆる露点温度以下になると,壁内の水蒸気が凝結して水滴になる現象,すなわち,壁内結露を起こす可能性が高いとされている。 壁内結露は,カビ,腐食等の原因となり,建物の耐久性を低下させるなどの悪影響をもたらすことがあるので,壁内結露を防ぐために,壁体内の湿気を外部に放出する手段として,いわゆるモルタル塗り外壁 通気工法が開発されてきた(【0002】,【0003】)。 (イ) モルタル塗り外壁通気工法においては,透湿防水シートという材料で壁を覆い,モルタル塗り外壁材との間に外気が流れる通気層を作ることによって,建物の壁体内の湿気を,透湿防水シートから通気層を通して外部に放出する方法が採用されている。その方法の具体的内容は,例えば,透湿防水シートで壁を覆った後,通気胴縁を設け,その上にラス網を布設して,モルタル外壁仕上げを行うというものである(【0004】,【0005】)。 ウ本件発明が解決しようとする課題しかしながら,従来のモルタル塗り外壁通気工法によれば,壁内の通気層を形成するために,別部材としての通気胴縁を複数個用意した上で,それらを順次取り付ける工事をする必要があり,作業 する課題しかしながら,従来のモルタル塗り外壁通気工法によれば,壁内の通気層を形成するために,別部材としての通気胴縁を複数個用意した上で,それらを順次取り付ける工事をする必要があり,作業コストの上昇及び施工作業の手間の増大を招いていた。 そこで,本件発明は,建物壁内に通気層を確実に形成するとともに,通気胴縁の役割を果たす通気胴縁部とリブラスを一体に形成することにより,別部材としての通気胴縁を不要として通気胴縁の材料費及び取付けの施工の手間を省き,工期の短縮及び施工の簡易化を図ることのできる建物のモルタル塗り外壁通気層形成部材等の提供を目的とする(【0007】,【0008】)。 エ課題解決のための手段及び本件発明の作用,効果本件発明は,前記ウの課題を解決するための手段として,①間隔をあけて複数設けられた,水平方向に延びる,断面形状が略凹溝条に形成された溝条リブ,②溝条リブの間に網目部が形成されたラス材及び③ラス材の一面側に貼着された防水シートを有するモルタル塗り外壁通気層形成部材において,溝条リブの長手方向と略直交し,貼着された防水シート側に向けて略台形山状に突出させて形成された,底面が平面とされ,上方に向かっ て拡開し,逆台形型の凹溝条をなし,その各隅部がRを設けて形成される通気胴縁部を,溝条リブの長手方向に向かって,間隔をあけて複数設け,隣り合う通気胴縁部間の谷部を通気層用空間とするという構成を採用することによって,建物壁内に通気層を確実に形成するとともに,通気胴縁の役割を果たす通気胴縁部とリブラスを一体に形成して,前記ウの目的を達成するという作用,効果を奏するようにしたものである(【0009】,【0010】)。 オ実施例(ア) モルタル塗り外壁通気層形成部材1 ブラスを一体に形成して,前記ウの目的を達成するという作用,効果を奏するようにしたものである(【0009】,【0010】)。 オ実施例(ア) モルタル塗り外壁通気層形成部材1モルタル塗り外壁通気層形成部材1は,①間隔をあけて複数設けられた水平方向に延びる溝条リブ2,②溝条リブ2の間に網目部が形成されたラス材3及び③ラス材3の一面側に貼着された防水シート4とを有して形成されており,溝条リブ2の長手方向に向かって,通気胴縁部5が,間隔をあけて複数設けられている。 通気胴縁部5は,溝条リブ2の長手方向と略直交し,貼着された防水シート4側に向けて略山状に突出させて形成されたものであり,例えば,防水シート4側に向けて略山状に突出するよう折り曲げ加工することによって形成された凹溝条をなす(【0014】,【0016】,図1)。 すなわち,図2のとおり,モルタル塗り外壁通気層形成部材1は,水平方向に向かって略凹凸状をなす断面形状に形成される。なお,略凹凸状にする際,各々の隅部にRを付けることにより,リブ部の切れの防止を図ることができる。 そして,防水シート4側に向かって突出した略山状の凸部分が通気胴縁部5として機能するものとなることから,モルタル塗り外壁通気層形成部材1は,通気胴縁の役割を果たす通気胴縁部5とリブラスの部 分が一体に形成されたものといえる。隣り合う通気胴縁部5の間に形成される谷部,すなわち,空間部は,通気層用の空間として形成されるものとなる(【0017】から【0019】)。 (イ) モルタル塗り外壁通気層形成部材1を用いた建物のモルタル塗り外壁通気層形成工法(【0025】)a モルタル塗り外壁通気層形成部材1を,防水シート4側に向 0019】)。 (イ) モルタル塗り外壁通気層形成部材1を用いた建物のモルタル塗り外壁通気層形成工法(【0025】)a モルタル塗り外壁通気層形成部材1を,防水シート4側に向かって突出した凸部分側,すなわち,防水シート4貼着面側を,建物の構造躯体6室外側に添接させて,取り付ける。 これによって,通気胴縁部5が,従来の縦の通気胴縁の役割を果たし,複数設けられた通気胴縁部5相互の間の谷部には,通気層7が形成される(【0026】,図2,図3)。 b モルタル塗り外壁通気層形成部材1は,通気胴縁部5側から,例えばステープルや釘などの止着部材16を構造躯体6側に打ち込むなどの簡単な施工によって,構造躯体6に取り付けることができる(【0027】)。 c モルタル塗り外壁通気層形成部材1を構造躯体6に取り付ける際,構造躯体6に接する溝条リブ2の底面は,ラス固定用の例えばステープルガンの銃口が容易に入り,しかもステープルを打ち付けられるように,なるべく平面になるよう設定されている(【0028】)。 d 通気胴縁部5の上面の幅は,その底面の幅のおよそ1.3倍以上を有する逆台形の形状をしており,複数枚のモルタル塗り外壁通気層形成部材1の重ね合わせ時に作業性を損なわないように工夫されている(【0029】)。 e 通気胴縁部5の上面と底面の各隅部には,若干の丸み,すなわちRを設けてあり,溝条リブ2の亀裂や引きちぎれを防止できるように工夫が施されている(【0030】)。 f 通気胴縁部5の高さは,通気層7内で,充分に通気がなされる高さを有するよう,建物の設計寸法に応じて,例えば高さ16,18,20mmなど自由な高さとすることが可能とされている(【0031 f 通気胴縁部5の高さは,通気層7内で,充分に通気がなされる高さを有するよう,建物の設計寸法に応じて,例えば高さ16,18,20mmなど自由な高さとすることが可能とされている(【0031】)。 ⑶ 前記⑵によれば,本件訂正後明細書等には,本件発明につき,以下のとおり開示されていることが認められる。 建物に悪影響をもたらす壁内結露を防ぐために,透湿防水シートで壁を覆い,この透湿防水シートとモルタル塗り外壁材との間に外気が流れる通気層を作ることによって,建物の壁体内の湿気を上記透湿防水シートから上記通気層を通して外部に放出するというモルタル塗り外壁通気工法が開発され,採用されているところ,従来の工法においては,透湿防水シート及びモルタルを塗着するラス網のほか,壁内の通気層を形成するために,別部材としての通気胴縁を複数個用意した上で,それらを順次取り付ける工事をする必要があり,作業コストの上昇及び施工作業の手間の増大を招いていた(【0002】から【0005】,【0007】)。 そこで,本件発明は,間隔をあけて複数設けられた,水平方向に延びる,断面形状が略凹溝条に形成された溝条リブ及び溝条リブの間に網目部が形成されたラス材により構成されるリブラス並びにラス材の一面側に貼着された防水シートを有するモルタル塗り外壁通気層形成部材において,溝条リブの長手方向と略直交し,貼着された防水シート側に向けて略台形山状に突出させて形成された,底面が平面とされ,上方に向かって拡開し,逆台形型の凹溝条をなし,その各隅部がR(丸み)を設けて形成される通気胴縁部を,溝条リブの長手方向に向かって,間隔をあけて複数設け,隣り合う通気胴縁部間の谷部を通気層用空間とするという構成を採用した。そして,同構成を有するモルタル塗り外壁通気層形成部材を される通気胴縁部を,溝条リブの長手方向に向かって,間隔をあけて複数設け,隣り合う通気胴縁部間の谷部を通気層用空間とするという構成を採用した。そして,同構成を有するモルタル塗り外壁通気層形成部材を,防水シート貼着面側を建物の構造躯体室外側に添接させて取り付け,前記の複数設けられた逆台形型の凹溝条をなす通気胴縁部の突出した凸部分が上記構造躯体室外側に接するようにし, 通気胴縁部間の谷部が通気層となるようにした(【0009】,【0014】,【0016】から【0019】,【0025】,【0026】,図1から図3)。 この結果,本件発明は,建物壁内に通気層を確実に形成するとともに,通気胴縁の役割を果たす通気胴縁部とリブラスを一体に形成することにより,別部材としての通気胴縁を不要として通気胴縁の材料費及び取付けの施工の手間を省き,工期を短縮させ,施工を簡易化させた(【0010】)。 2 本件先願当初明細書等の記載事項について⑴ 本件先願当初明細書等(甲24)には,以下のとおりの記載がある(なお,下記記載中に引用する図面について別紙2甲24号証図面参照。)。 なお,甲5明細書等にも,本件当初特許請求の範囲の請求項1が「縦方向の間隔をあけて横向き方向へ配置された複数本の横力骨を備えたラス網と,(中略)複合ラス。」であるのに対し,甲5請求項1は「縦方向の間隔をあけて横向き方向へ配置された複数本の横力骨を備え,縦力骨がないラス網と,(中略)複合ラス。」であるほかは,本件先願当初明細書等と同じ内容が記載されている。 【請求項1】縦方向の間隔をあけて横向き方向へ配置された複数本の横力骨を備えたラス網と,及び前記ラス網の背面に裏打ちされた防水紙とから成り,前記横力骨を備えたラス網と防水紙を表面側から背面 縦方向の間隔をあけて横向き方向へ配置された複数本の横力骨を備えたラス網と,及び前記ラス網の背面に裏打ちされた防水紙とから成り,前記横力骨を備えたラス網と防水紙を表面側から背面側へ凹溝状に突出させた突条部が,前記横力骨と同方向に一定の間隔をあけて,同横力骨とは直交する縦向き方向に複数本形成されている構成を特徴とする,複合ラス。 【請求項2】当該複合ラスを構成する前記横力骨を備えたラス網と防水紙は止着材により結合して一体化されている構成を特徴とする,請求項1に記載した複合ラス。 【請求項3】 前記突条部には,横力骨と同方向のへ通気路を確保するため,表面側へ押し戻した凹部が断続的に設けられている構成を特徴とする,請求項1又は2に記載した複合ラス。 【請求項4】前記凹部は,隣接する横力骨と横力骨との間の中央部位に設けられていることを特徴とする,請求項3に記載した複合ラス。 【請求項6】複合ラスの突条部の頂部を,建築物の躯体を構成する柱及び間柱へ取り付けた外壁パネルへ当接させ,その当接箇所を固定具で固定することにより,外壁パネルと複合ラスとの間に通気層を形成した複合ラスの張設を行い,前記のように張設した複合ラスの表面側へモルタルを塗着してモルタル壁を形成することを特徴とする,請求項1~4のいずれかに記載した複合ラスを用いた外壁通気構造。 【0001】この発明は,建築物のモルタル外壁を構築する目的で使用する複合ラスと,同複合ラスの製造方法,並びに前記複合ラスを用いて構築するモルタル外壁通気構造の技術分野に属する。 【0002】・・・建築物の外壁構造は,外壁の中に雨水や湿気などの水分が浸入すると,該水 スの製造方法,並びに前記複合ラスを用いて構築するモルタル外壁通気構造の技術分野に属する。 【0002】・・・建築物の外壁構造は,外壁の中に雨水や湿気などの水分が浸入すると,該水分が滞留し,(中略)耐久性に悪影響を及ぼすという問題点が指摘されている。また,近年,建築物の高気密化および高断熱化が進み,建築物外壁の内外に大きい温度差が生じることに起因して,外壁内部で結露が生じる問題も指摘されている。 そのため,前記水分や結露の問題を解消するべく,モルタル外壁の内部には通気層を形成する施工法(外壁通気工法)の需要が増大している。 【発明が解決しようとする課題】【0006】・・・建築物の外壁パネルの内側に縦方向の胴縁を所定間隔をあけて取り付け,この胴縁にラスを貼って通気層を形成する構成がこれまでの一般的な通気工法であった。 【0007】上記特許文献2(判決注:特開2008-95445号公報,【0005】)の図1~図3には,胴縁を用いない発明が開示されている。具体的には,防水シートとラスと通気部材とを一体化した建築物外壁用下地材を提案し,建築物の躯体を組み立てた後に,前記外壁用下地材(ラス)の取り付け工程を行うと通気層を形成できる構成が開示されている。 この特許文献2に係る建築物外壁用下地材によれば,胴縁の取り付け工程を省略できるので,工期の短縮化を図ることはできる。しかしながら,通気層を形成するためには別途通気部材を必要とする。 【0008】本発明の目的は,(中略)複合ラスを更に改良して,通気層を形成するために胴縁や通気部材等を用いる必要を一切なくし,複合ラスの取り付け工程を行うことのみで通気層を形成することができ,経済性と作業性(施 本発明の目的は,(中略)複合ラスを更に改良して,通気層を形成するために胴縁や通気部材等を用いる必要を一切なくし,複合ラスの取り付け工程を行うことのみで通気層を形成することができ,経済性と作業性(施工性)に優れた複合ラスを提供し,更に同複合ラスの製造方法,並びに前記複合ラスを用いたモルタル外壁通気構造を提供することである。 【課題を解決するための手段】【0009】上記の課題を解決するための手段として,請求項1に記載した発明に係る複合ラス10は,縦方向へ間隔をあけて横向き方向へ配置された複数本の横力骨2を備えたラス網3と,及び前記ラス網3の背面に裏打ちされた防水紙5とから成り,前記横力骨2を備えたラス網3と防水紙5を表面側から背面 側へ凹溝状に突出させた突条部10aが,前記横力骨2と同方向に一定の間隔をあけて,同横力骨2とは直交する縦向き方向に複数本形成されている構成を特徴とする。 【0015】請求項1~4に記載した発明に係る複合ラス10若しくは20又は30は,縦方向に間隔をあけて配置された横力骨2を備えたラス網3と,該ラス網3の背面に裏打ちされた防水紙5とで構成し,前記横力骨2とラス網3及び防水紙5を合一に表面側から裏面側へ凹溝状に突出(又は膨出)させた突条部10aを,前記横力骨2と同方向に一定の間隔をあけて,同横力骨2とは直交する縦向き方向に形成しているので,この複合ラス10を請求項6に記載した発明のように,各突条部10aの頂部を,建築物の躯体を構成する柱11及び間柱12へ取り付けた外壁パネル13と当接させ,その当接箇所を固定具6で固定することにより,外壁パネル13と複合ラス10(の防水紙5)との間に通気層7を形成できる。よって,同複合ラス10の表面側へモルタル9を塗着すること パネル13と当接させ,その当接箇所を固定具6で固定することにより,外壁パネル13と複合ラス10(の防水紙5)との間に通気層7を形成できる。よって,同複合ラス10の表面側へモルタル9を塗着することにより,前記通気層7を通気構造に形成したモルタル外壁を構築できる。つまり,胴縁を必要とせず,また,複合ラスに特別な棒状の通気部材を取り付ける必要もない。従って,経済性および作業性に優れた複合ラスを提供できる。要するに,本発明の複合ラス10を用いると,モルタル外壁に一定の通気構造(通気層7)を確実に十分に形成することができる。 また,モルタル外壁に通気層7を形成するための胴縁や通気部材等の部材を用いる必要がない分だけ,建築物の躯体を組み立てる手間と材料を省ける。その上,本発明の複合ラスは,外壁パネル13へ取り付ける工程を行うだけで,同時に通気層7を形成できる便利さが在る。 【0019】次に,先ず本発明による複合ラスの実施例を図面に基づいて説明する。 図1と図2は,本発明による複合ラス10の実施例1を示している。この複合ラス10は,モルタル外壁の通気構造を構築するに際し,モルタル塗着作業に先立って,建築物の躯体を構成する外壁パネル13へ取り付けて張設される。 実施例1の複合ラス10は,図5に主な構成要素を関係配置に分離して示した通り,縦方向(図5の上下方向)に間隔をあけて横向き方向(図の左右方向)に配設した複数本の横力骨2と,前記横力骨2へ接合されたラス網3と,該ラス網3の背面に裏打ちされた防水紙5とで,先ずは図4に示した平板状の複合ラス素材10’が構成される。 その上で,前記複合ラス素材10’を構成する横力骨2及びラス網3並びに防水紙5を合一に等しく裏面側へ凹溝状に突出させる加工 とで,先ずは図4に示した平板状の複合ラス素材10’が構成される。 その上で,前記複合ラス素材10’を構成する横力骨2及びラス網3並びに防水紙5を合一に等しく裏面側へ凹溝状に突出させる加工を行って,図1A,Bに示すように,横力骨2と同一方向に一定の間隔をあけた配置で平行に並ぶ突条部10aが,横力骨2とは直交する縦向き方向に多数形成されている。(以下略)【0020】上記の突条部10aは,図1Bに示したように,建築物の躯体を構成する柱11及び間柱12の設置間隔(通常,455mmピッチ程度)と一致する間隔で設けられる。ちなみに本実施例では,図1(B)に示した前記柱11と間柱12の間の中央部位にも,さらに一つの突条部10aを設けた構成(即ち,227.5mmピッチ程度)の設置間隔で実施されている。 因みに,上記突条部10aの高さ寸法(図2の符号H参照)は,モルタル外壁内に通気層7を形成するのに適正な高さとし,図示の実施例ではH=15mm程度に形成されている。また,突条部10aの間口幅(図2,図3に示したD寸法)は20mm程度の大きさとされている。ただし,突条部10aの高さ寸法H,及び間口幅Dの大きさは,前記した寸法例には限定されない。モルタル外壁の構造設計に応じて適宜に変更して実施することは可能で ある。 【0031】図9(A),(B)は,本発明による複合ラスの実施例3を示している。 本実施例3の複合ラス30は,上記実施例1に説明した複合ラス10と対比した場合,構成の大部分は共通する。但し,本実施例3の特徴は,上記実施例1のラス網3に代えて,リブラス34を採用した点にある。リブラス34は,図9Aの上下方向に間隔を開けて横方向(図9Aの左右方向)に配置される横力骨 分は共通する。但し,本実施例3の特徴は,上記実施例1のラス網3に代えて,リブラス34を採用した点にある。リブラス34は,図9Aの上下方向に間隔を開けて横方向(図9Aの左右方向)に配置される横力骨32(リブ)と,前記横力骨32と32の間に形成された網目部33とで構成されている。 本実施例3の複合ラス30も,上記の各実施例と同様,横力骨32を備えたリブラス34の背面に防水紙5を裏打ちして先ずは平板状の複合ラス素材を構成する。防水紙5の裏打ちは,例えばホッチキス(登録商標)又はこれに類似の工具が打ち出す止め針により,若しくは接着剤等により止め付ける手段で行われる。 こうして製造した平板状の複合ラス素材について,前記横力骨32を備えたリブラス34と防水紙5を合一に等しく裏面側へ凹溝状に突出させるプレス加工等を行うことにより,図9A,Bに示した通り,横力骨32と同一方向に一定の間隔をあけて,横力骨32と直交する縦向き方向に平行に並ぶ突条部10aを多数形成された複合ラス30ができあがる。 【0032】本実施例3の複合ラス30を用いたモルタル外壁の通気構造も,通気層7を形成するために胴縁や通気部材等の部材を用いる必要がなく,複合ラス30を単に外壁パネル13へ取り付けて張設する作業を行うだけで,外壁パネル13と複合ラス30との間に,横方向に隣接する縦向きの突条部10aによって通気層7を一定の形状,大きさに形成することができる。(以下略)【0033】 以上,実施例を図面に基づいて説明したが,本発明は,図示例の限りではない。本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において,当業者が通常に行う設計変更,応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。 ⑵ア前記⑴によれば,本件先願 明は,図示例の限りではない。本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において,当業者が通常に行う設計変更,応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。 ⑵ア前記⑴によれば,本件先願当初明細書等には,以下の発明が記載されていることが認められる(以下,この発明を「本件先願発明」という。)。 「建築物のモルタル外壁を構築する目的で使用する複合ラスであって,水平方向に延びる,上下方向に間隔をあけて配置された複数本の横力骨32(リブ)と,前記横力骨32と32の間に形成された網目部33とで構成したリブラス34と,リブラス34の背面に防水紙5を裏打ちして平板状の複合ラス素材が構成されるとともに,防水紙5の裏打ちは,接着剤等により止め付ける手段で行われ,複合ラス素材は,前記横力骨32を備えたリブラス34と防水紙5を合一に等しく裏面側へ凹溝状に突出させるプレス加工等を行うことにより,突条部10aが多数形成された複合ラス30ができあがり,突条部10aが,横力骨32(リブ)の長手方向と略直交しており,各突条部10aの頂部を,建築物の躯体を構成する柱11及び間柱12へ取り付けた外壁パネル13と当接させ,その当接箇所を固定具6で固定することにより,外壁パネル13と複合ラスとの間に通気層を形成できる,複合ラス」イそして,前記⑴によれば,本件先願当初明細書等(甲24)には,本件先願発明につき,以下のとおり開示されていることが,認められる。 (ア) 外壁内部の結露等を防ぐために,モルタル外壁の内部に通気層を形成する施工法(外壁通気工法)の需要が増大しているところ,従来の一般的な通気工法は,建築物の外壁パネルの内側に縦方向の胴縁を所定間隔をあけて取り付け,この胴縁にラスを貼って通気層を形成する 気層を形成する施工法(外壁通気工法)の需要が増大しているところ,従来の一般的な通気工法は,建築物の外壁パネルの内側に縦方向の胴縁を所定間隔をあけて取り付け,この胴縁にラスを貼って通気層を形成するというものである。胴縁を用いずに通気層を形成する構成も開示されていたが,同構成は,建築物の躯体を組み立てた後,防水シートとラスと通気部材 とを一体化した建築物外壁用下地材(ラス)を取り付けることによって通気層を形成するというものであり,したがって,防水シートとラスのほか,通気層を形成するための通気部材を要した。本件先願発明は,これらの従来技術のように胴縁や通気部材等の別部材を用いることなく,通気層を形成する構成の提供を目的とするものである(【0002】,【0006】から【0008】)。 (イ) 本件先願発明は,上下方向に間隔をあけて横方向に配置される横力骨32(リブ)と,前記横力骨32と32の間に形成された網目部33とでリブラス34を構成し,さらに,この背面に防水紙5を裏打ちして平板状の複合ラス素材を構成して,リブラス34と防水紙5を合一に等しく裏面側へ凹溝状に突出させるプレス加工等を行うことにより,横力骨32と同一方向に一定の間隔をあけて,横力骨32と直交する縦向き方向に平行に並ぶ突条部10aが多数形成された複合ラス30を構成した。そして,複合ラス30を建築物の躯体に取り付けるに当たり,各突条部10aの頂部を建築物の外壁パネル13と当接させてその当接箇所を固定具6で固定し,外壁パネル13と複合ラス10(の防水紙5)との間に,通気層7を形成するという構成を採用した(【請求項1】,【請求項6】,【0009】,【0015】,【0019】,【0031】,【0032】,図1から図5,図9)。 これにより,本件先願発 気層7を形成するという構成を採用した(【請求項1】,【請求項6】,【0009】,【0015】,【0019】,【0031】,【0032】,図1から図5,図9)。 これにより,本件先願発明は,胴縁も,別途の通気部材も要することなく,通気層を形成できるという効果を奏する(【0032】)。 3 取消事由1の検討⑴ 本件審決による本件先願当初明細書等記載の発明の認定についてア本件審決は,本件先願当初明細書等に記載された発明として,前記第2の3⑵アのとおりの甲5発明,すなわち,「建築物のモルタル外壁を構築する目的で使用する複合ラスであって,(中略)前記横力骨32を備えた リブラス34と防水紙5を合一に等しく裏面側へ凹溝状に突出させるプレス加工等を行うことにより,半円形状の突条部10aが多数形成された複合ラス30ができあがり,(中略)また,半円形状の突条部10aの2つの隅部は,Rを設けて形成されており,各突条部10aの頂部を,建築物の躯体を構成する柱11及び間柱12へ取り付けた外壁パネル13と当接させ,その当接箇所を固定具6で固定することにより,外壁パネル13と複合ラスとの間に通気層を形成できる,複合ラス」を認定した。 この点に関し,前記2⑵に加え,本件先願当初明細書等(甲24)の図2及び図3には,2つの隅部がRを設けて形成された「半円形状」の「突条部10a」が描かれていることによれば,上記認定に係る「複合ラス」は,本件先願当初明細書等に記載されていることが認められる。当事者も,上記「複合ラス」が甲5明細書等に記載されていること自体については,争っていない。 しかしながら,本件審決は,前記第2の3⑵ウのとおり,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」の形状につき,本件発明では,「逆台形型」であ 細書等に記載されていること自体については,争っていない。 しかしながら,本件審決は,前記第2の3⑵ウのとおり,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」の形状につき,本件発明では,「逆台形型」であり,各隅部(4つ)にRを設けているのに対し,甲5発明では,「半円形状」であり,2つの隅部にRを設けている点を相違点1として掲げており,この点に鑑みると,本件審決は,甲5明細書等においては,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」が半円形状のもののみに限定されており,その他の形状のものは排除されていると解したものと推認できる。 そして,原告らは,取消事由1として,本件審決が,甲5明細書等に開示されている「凹溝条」をなす「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」の形状につき,上記のとおり限定して解し,これを前提として,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」の形状につき,本件発明では「逆台形型」であり,各隅部(4つ)にRを設けているのに対し,甲5発明では「半円形状」で あり,2つの隅部にRを設けている点を相違点1として認定したことは,誤りである旨主張する。 イそこで検討するに,本件先願当初明細書等(甲24)中,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」の具体的形状については,図1から図3及び図9において「半円形状」の「突条部10a」が描かれているのみであり,他に上記具体的形状を示す記載も図面もない。 本件先願発明の課題及びその解決の点からみると,前記2⑵によれば,モルタル塗り外壁通気工法につき,従来技術においては,建築物の外壁内に通気層を形成するに当たり,別部材を要したことから,本件先願発明は,別部材を用いずに通気層を形成することを課題とし,リブラスに防水シートを貼着した部材,す つき,従来技術においては,建築物の外壁内に通気層を形成するに当たり,別部材を要したことから,本件先願発明は,別部材を用いずに通気層を形成することを課題とし,リブラスに防水シートを貼着した部材,すなわち,「平板状の複合ラス素材」において「貼着された防水シート側に向けて突出させて」「凹溝条」を形成し,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」を備え,その「通気胴縁部」の「凹溝条」の凸部分,すなわち,「突条部10a」の頂部を建物の外壁に当接させることによって通気層を形成することにより,別部材を用いずに通気層を形成し,前記課題を解決するものである。 この点に関し,通気層を形成するためには,「通気胴縁部」の「凹溝条」の凸部分,すなわち,「突条部10a」の頂部が建物の外壁に接することにより,「凹部分」に通気層となるべき空間が形成されれば足りるといえる。このことから,従来技術の課題を解決するためには,「通気胴縁部」が凹凸部分を備えた「凹溝条」をなしていれば足り,その「凹溝条」の「凹部分」の底が平面であるか否かなどという具体的形状は,上記課題解決の可否自体を左右する要因ではない。 そして,本件先願当初明細書等において,「半円形状」の「突条部10a」,すなわち,「半円形状」の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」については,前記のとおり図示されているのみであり,「半円形状」とする意義に ついては記載も示唆もされていない。 加えて,前記2⑴のとおり,本件先願当初明細書の段落【0033】においては,「以上,実施例を図面に基づいて説明したが,本発明は,図示例の限りではない。本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において,当業者が通常に行う設計変更,応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。」と を図面に基づいて説明したが,本発明は,図示例の限りではない。本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において,当業者が通常に行う設計変更,応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。」と記載されており,同記載によっても,「突条部10a」,すなわち,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」が,本件先願当初明細書等に図示されている「半円形状」のものに限られないことは,明らかといえる。 以上によれば,本件先願当初明細書等においては,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」の具体的形状は限定されておらず,図示された「半円形状」のもののみならず,その他の形状のものも記載されているに等しいというべきである。前述したとおり,本件先願当初明細書等とほぼ同様の内容を有する甲5明細書等についても,同様のことがいえる。 したがって,本件審決が,本件先願当初明細書等においては,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」が半円形状のもののみに限定されており,その他の形状のものは排除されていると解したことは,誤りである。 ⑵ 本件発明の「逆台形型」の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」についてア本件訂正後明細書(甲17)には,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」の「逆台形型」の形状に関し,概要,「モルタル塗り外壁通気層形成部材1を構造躯体6に取り付ける際,構造躯体6に接する溝条リブ2の底面は,ラス固定用の例えばステープルガンの銃口が容易に入り,しかもステープルを打ち付けられるように,なるべく平面になるよう設定されている。」(【0028】)との記載がある。 この点に関し,前記1⑵オ,⑶及び甲2号証の図2によれば,本件発明に係るモルタル塗り外壁通気層形成部材1を建築物の構造躯体に取り されている。」(【0028】)との記載がある。 この点に関し,前記1⑵オ,⑶及び甲2号証の図2によれば,本件発明に係るモルタル塗り外壁通気層形成部材1を建築物の構造躯体に取り付ける際は,ステープルなどの止着部材を構造躯体の壁面に接している「逆台形型」の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」の底面部に打ち付けて固定することが認められる。 そして,同事実に鑑みると,前記記載は,「逆台形型」の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」の底面部を「なるべく平面になるように設定する」ことにより,同「底面部」が壁面に接する部分,すなわち,止着部材を打ち付ける部分の面積を大きくして安定性を高め,それによって,止着部材の打付けが容易になり,ステープルを使用する場合は,ステープルガンの銃口を入れやすくなるとともに,ステープルを打ち付けることができるようになるという効果を奏することについて述べたものと認められる。 しかしながら,上記効果は,止着部材を打ち付ける場所である「通気胴縁部」の底面部と壁面との当接部分の面積が大きくなり,安定性が高められることによって生じるものであるから,自明なものといえ,しかも,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」のうち「逆台形型」の形状を有するものに特有の効果ともいえない。 イまた,本件訂正後明細書には,概要,「通気胴縁部5の上面の幅は,その底面の幅のおよそ1.3倍以上を有する逆台形の形状をしており,複数枚のモルタル塗り外壁通気層形成部材1の重ね合わせ時に作業性を損なわないように工夫されている。」(【0029】)との記載もあるところ,訂正後請求項1には,「逆台形型」の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」の上面と底面の各幅の比率については特定されていないことから,上記記載に係る「重ね合わせ時に作業性を 029】)との記載もあるところ,訂正後請求項1には,「逆台形型」の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」の上面と底面の各幅の比率については特定されていないことから,上記記載に係る「重ね合わせ時に作業性を損なわない」ことは,本件発明の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」が「逆台形型」の形状を有することに 係る効果ということはできない。 ウそして,本件訂正後明細書等には,上記各記載のほか,本件発明において「凹溝条」をなす「通気胴縁部」の形状を「逆台形型」としたことによる作用,効果に関する記載はない。 エ以上によれば,本件発明において「凹溝条」をなす「通気胴縁部」の形状を「逆台形型」としたことによる特段の作用,効果の存在は認め難い。 ⑶ 小括ア(ア) 前記⑴のとおり,本件先願当初明細書等(甲24)においては,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」の具体的形状は限定されておらず,図示された「半円形状」のもののみならず,その他の形状のものも記載されているに等しいといえる。 そして,前記⑵のとおり,本件発明において「凹溝条」をなす「通気胴縁部」の形状を「逆台形型」としたことによる特段の作用,効果の存在は認め難い。 (イ) また,本件審決は,前記第2の3⑵ウのとおり,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」の形状につき,本件発明においては,「逆台形型」の各隅部(4つ)にRを設けているのに対し,甲5発明においては,「半円形状」の2つの隅部にRを設けている点も,相違点1の内容に掲げている。 この点に関しては,前述したとおり,本件先願当初明細書等においては,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」の具体的形状につき,「半円形状」のもののみならず,その他の形状のも この点に関しては,前述したとおり,本件先願当初明細書等においては,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」の具体的形状につき,「半円形状」のもののみならず,その他の形状のものも記載されているに等しいといえること,甲24号証の図2及び図3においては,「半円形状」の「突条部10a」の各隅部(2つ)にRが設けられていることに鑑みると,本件先願当初明細書等には,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」がその具体的形状に 応じて備える個数の隅部にRを設けることも,実質上,記載されているに等しいということができる。本件先願当初明細書等とほぼ同様の内容を有する甲5明細書等についても,同様のことがいえる。 (ウ) 以上によれば,本件発明の「逆台形型」の「凹溝条」をなし,その「凹溝条」の各隅部(4つ)がRを設けて形成されてなる「通気胴縁部」は,本件先願当初明細書等に記載されているに等しいということができ,したがって,本件発明と本件先願発明との間に,本件審決のいう相違点1は,存在しないというべきである。 イ(ア) 本件審決は,「逆台形型」の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」の作用効果として,①本件訂正後明細書(甲17)の段落【0028】に,概要,「モルタル塗り外壁通気層形成部材1を構造躯体6に取り付ける際,構造躯体6に接する溝条リブ2の底面は,ラス固定用の例えばステープルガンの銃口が容易に入り,しかもステープルを打ち付けられるように,なるべく平面になるよう設定されている。」と記載されていること,②本件訂正後明細書の段落【0030】に,「通気胴縁部5の上面と底面の各隅部には,若干の丸み,すなわちRを設けてあり,溝条リブ2の亀裂や引きちぎれを防止できるように工夫が施されている。」と記載されて 本件訂正後明細書の段落【0030】に,「通気胴縁部5の上面と底面の各隅部には,若干の丸み,すなわちRを設けてあり,溝条リブ2の亀裂や引きちぎれを防止できるように工夫が施されている。」と記載されていること,③「柱や間柱の面の幅方向中央部と通気胴縁部の平面とされた底面の略中心部分とが正確に一致しなくとも,通気胴縁部の底面が平面であれば,ある程度の誤差を吸収して,すなわち前記底面の中心部分を外してもステープルを前記の柱や間柱に確実に打ち込むことができる」こと,④「構造躯体に対しモルタル塗り外壁通気層形成部材を取付けのために添設させたとき,その通気胴縁部の底面が平面になっていると,構造躯体の外面には,前記通気胴縁部の底面が面で接触するため,摩擦抵抗が大きくなって,取付けのための作業安定性が格段に優れる」ことを挙げて,相違点1に係る本件発明 の構成には,これらの作用効果があることから,相違点1は設計上の微差とはいえない旨判断している。 (イ) しかしながら,①の点は,前記⑵アのとおり,自明のものであり,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」のうち「逆台形型」の形状を有するものに特有の効果ともいえない。②の点も,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」の各遇部にRを設けることによって生じる効果といえ,「逆台形型」の形状を有するものに特有の効果ともいえず,しかも,前記アのとおり,本件先願当初明細書等には,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」,すなわち,「突条部10a」がその具体的形状に応じて備える個数の隅部にRを設けることも,実質上,記載されているに等しいということができるから,本件先願発明においても同様の効果が生じ得る。そして,本件先願当初明細書等とほぼ同様の内容を有する甲5明細書等についても,同様のことがいえる。③の点は,訂正後請求項1及び本件 いうことができるから,本件先願発明においても同様の効果が生じ得る。そして,本件先願当初明細書等とほぼ同様の内容を有する甲5明細書等についても,同様のことがいえる。③の点は,訂正後請求項1及び本件訂正後明細書等に記載されておらず,自明のものともいえないから,本件発明の作用効果と認めることはできない。④の点は,前記⑵アのとおり,本件発明に係るモルタル塗り外壁通気層形成部材1を建築物の構造躯体に取り付ける際は,ステープルなどの止着部材を構造躯体の壁面に接している「逆台形型」の「凹溝条」をなす「通気胴縁部」の底面部に打ち付けて固定するところ,同底面部が平面であれば,上記構造躯体の壁面と接する部分の面積が広くなり,これによって,同部分の摩擦抵抗が大きくなって安定性が高まり,上記取付けをしやすくなることをいうものと解されるが,これは自明なものといえ,しかも,「凹溝条」をなす「通気胴縁部」の底面部が平面であることによって生じる効果であり,「逆台形型」の形状を有するものに特有の効果とはいえない。 以上によれば,本件審決の前記判断は,前提において誤りがあるといわ ざるを得ない。 4 結論以上に鑑みると,原告ら主張の取消事由1には理由があるから,本件審決は,取消しを免れない。 よって,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由があるから認容することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官富田善範 裁判官大鷹一郎 裁判官鈴木わかな (別紙1)甲2号証図面 図面中の符号の説明(甲17【0050】) 1 モルタル塗り外壁通気層形成部材 一郎 裁判官鈴木わかな (別紙1)甲2号証図面 図面中の符号の説明(甲17【0050】) 1 モルタル塗り外壁通気層形成部材 2 溝条リブ 3 ラス材 4 防水シート 5 通気胴縁部 6 建物の構造躯体 7 通気層 8 モルタル 9 ラスモルタル 10 透湿防水シート 11 通気端定木 12 横通気胴縁 16 止着部材 17 開口側隅角部分 図1:モルタル塗り外壁通気層形成部材の構成の説明図 図2:本件発明を適用した実施例の概略構成説明図(その1) 図3:本件発明を適用した実施例の概略構成説明図(その2) (別紙2)甲24号証図面 図面中の符号の説明(甲24【0034】) 2 横力骨 3 ラス網 5 防水紙 6 固定具(ステープル) 7 通気層 8 防水シート 9 モルタル 10 複合ラス10’ 複合ラス素材10a 突条部 11 柱 12 間柱 13 外壁パネル 30 複合ラス 32 横力骨 33 網目部 34 リブラス 図1:(A)は実施例1の複合ラスの正面図,(B)は前記複合ラスを外壁パネルへ取り付けた状態で示す平面図,(C)は前記(A)図のC-C線矢視断面図。 図2:図1(B)中に指示したX部を拡大した平面図 図3:図2に示す複合ラスへモルタルを塗着した状態を示す平面図 図4:実施例1の複合ラスを製造する途中段階の複合ラス素材を 指示したX部を拡大した平面図 図3:図2に示す複合ラスへモルタルを塗着した状態を示す平面図 図4:実施例1の複合ラスを製造する途中段階の複合ラス素材を図1(A)と同じ視点で示す正面図 図5:図4に示した複合ラス素材の構成要素を分離して示す斜視図 図9:実施例3の複合ラスを示した正面図

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