昭和49(行ウ)1 佐伯労基署長遺族補償年金不支給処分取消

裁判年月日・裁判所
昭和51年2月10日 大分地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-19723.txt
🤖 AI生成要約2026/3/13

【DRY-RUN】主   文  原告の請求を棄却する。  訴訟費用は原告の負担とする。        事   実 第一 当事者の求めた裁判 一、請求の趣旨 (一) 被告が原告に対し昭和四七年一二月二一日付をもつてなした

タグ

キーワード(AI生成)

判決文本文6,382 文字)

主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 第一当事者の求めた裁判一、請求の趣旨(一) 被告が原告に対し昭和四七年一二月二一日付をもつてなした労働者災害補償保険法による同年六月二六日以降の遺族補償給付を支給しない旨の処分(以下不支給処分という)を取消す。 (二) 訴訟費用は被告の負担とする。 二、請求の趣旨に対する答弁(一) 原告の請求を棄却する。 (二) 訴訟費用は原告の負担とする。 第二当事者の主張一、請求原因(一) 原告の亡夫訴外Aは、大分県佐伯市内の森工業有限会社に溶接工として雇傭され、昭和四六年五月二四日午後三時一五分ごろ佐伯造船所構内において作業に従事していたところ、クレーンの吊荷にはねられて負傷し、直ちに健康保険南海病院に入院したが、同年同月二六日右負傷によつて死亡した。 (二) そこで原告は被告に対し労働者災害補償保険法(以下労災保険法と略称する)による遺族補償の給付を請求したところ、被告は訴外亡Aの死亡が業務上の事由によるものであることを認め、昭和四六年七月三〇日原告に対し労災保険法による遺族補償給付(遺族補償年金)を支給する旨の処分をした。 (三) ところが被告は、原告が昭和四七年六月二六日訴外Bと養子縁組を結んだので労災保険法一六条の四、一項三号の受給権消滅事由に該当するに至つたとして同年一二月二一日原告に対し同年六月二六日以降の遺族補償年金を支給しない旨の処分をした。 (四) 原告は被告の右処分を不服として大分労働者災害補償保険審査官に対し審査請求をしたが、同審査官は昭和四八年三月一九日原告の右請求を棄却したので、さらに原告はこれを不服として労働保険審査会に対し再審査請求をしたところ、同審査会は昭和四九年六月二九日右再審査請求を棄却する旨裁決し、同年七月二六 は昭和四八年三月一九日原告の右請求を棄却したので、さらに原告はこれを不服として労働保険審査会に対し再審査請求をしたところ、同審査会は昭和四九年六月二九日右再審査請求を棄却する旨裁決し、同年七月二六日以降にその旨原告に通知した。 (五) しかし、原告には労災保険法一六条の四に該当するような受給権消滅事由がないから、被告のなした本件遺族補償年金不支給処分は違法である。 よつてその取消を求める。 二、請求原因に対する認否請求原因(一)ないし(四)の事実はいずれも認める(但支給処分の日時は七月二二日であり、不支給処分の日時は一二月一五日である。)が、同(五)の主張は争う。 三、抗弁原告は昭和四七年六月二六日訴外Bと養子縁組をし、同訴外人の養子となつた。 同訴外人は原告と直系血族又は直系姻族の関係を有しない者である。 したがつて、原告は労災保険法一六条の四、一項三号に該当し、原告の同法による遺族補償年金を受ける権利は昭和四七年六月二六日消滅した。 よつて被告のなした本件遺族補償年金不支給処分は適法である。 なお、原告の事実上及び法律上の主張は争う。 四、抗弁に対する認否及び原告の主張(一) 抗弁事実のうち、原告が訴外Bと養子縁組をし、同訴外人の養子となつたことは認めるが、その時期は昭和四七年一〇月一九日である。 (二) 原告は訴外亡Aと結婚した昭和二八年一二月一二日当時から以下に述べるとおり訴外Bと事実上の養親子関係、もしくは少くとも事実上の直系姻族の関係にあつたものであり、前項の法律上の養子縁組は単に法的手続をなしたにすぎず、全く実質関係の変動を伴わないものであるから、遺族補償年金受給権の消滅事由に該らない。すなわち、原告と訴外亡Aは、同訴外人の義理の叔母に当る訴外Bがブラジルに在住したB家のただ一人の生存者であつたので、B家の家系を絶や 伴わないものであるから、遺族補償年金受給権の消滅事由に該らない。すなわち、原告と訴外亡Aは、同訴外人の義理の叔母に当る訴外Bがブラジルに在住したB家のただ一人の生存者であつたので、B家の家系を絶やさないため、結婚のうえ、訴外Bの養子となつてB家を継ぐこととなり、結婚以来、B家の屋敷内に居住して、同家の祖先の祭祀を主宰し、親戚付合や近隣との交際もBの名において行い、その他一切の日常生活をB家の人として過ごしてきたものである。 ところが訴外Bがブラジル在住のため正式な養子縁組手続が遷延しているうちに訴外亡Aが労災事故で死亡し、訴外Bからは七二才の高令になつたので早く手続をするようにとの督促をうけたため、原告は養子縁組の手続をなしたのである。 ところで労災保険法一六条の四が遺族補償年金受給権の消滅事由を定めている趣旨は、同条一項各号に該当する事由が生じた場合には、受給権者の被扶養利益の喪失状態が解消されるとみなされるからであつて、原告のように受給権が発生する以前から事実上の養親子関係にあり、受給権発生後単に養子縁組の届出という法的手続をなしただけで養子縁組の前後を通じて実質関係に全く変更がない場合には、被扶養利益の喪失状態は何ら解消されていないから、受給権を消滅させる実質的根拠に欠け、受給権消滅事由に該らない。 なお、右のことは、受給権の発生後に事実上の養子縁組関係に入つたものは受給権を喪失するのに対し、受給権発生前から事実上の養子縁組関係と同様の状態に入つたものはこれを喪失しないことからも明らかである。 第三証拠(省略) 理由 一原告の夫訴外A(以下訴外Aという)が労災事故によつて昭和四六年五月二六日死亡し、被告は、原告に対し、同年七月労災保険法による遺族補償年金を支給する旨の処分をなしたが、その後昭和四七年一二月原 一原告の夫訴外A(以下訴外Aという)が労災事故によつて昭和四六年五月二六日死亡し、被告は、原告に対し、同年七月労災保険法による遺族補償年金を支給する旨の処分をなしたが、その後昭和四七年一二月原告が同法一六条の四、一項三号の遺族補償年金受給権消滅事由に該当するに至つたとして同年六月二六日以降の遺族補償年金を支給しない旨の処分をなしたこと、原告は被告の右処分を不服として大分労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をしたが棄却され、さらに労働保険審査会に対して再審査請求をしたところ、昭和四九年六月二九日右請求を棄却する旨の裁決を受け、同年七月二五日以降にその旨の通知を受けたことはいずれも当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨によると、支給処分の日時が昭和四六年七月二二日同不支給処分の日時が昭和四七年一二月一五日、同通知が同年一二月二一日であることが認められ、他に右認定を左右する証拠はない。 二そこで、つぎに被告の抗弁について判断する。 (一) 原告が訴外Bと養子縁組をし、同訴外人の養子となつたことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第一号証(訴外B及び訴外Aの各戸籍謄本写し)及び原告本人尋問の結果によれば、原告が訴外Bの養子として縁組の届出をしたのは昭和四七年六月二六日であること、訴外Bは、原告の法律上の直系血族又は直系姻族以外の者であることがそれぞれ認められ、他に右認定に反する証拠はない。 右事実によれば、原告は、労災保険法による遺族補償年金の受給権者となつた後に自己の直系血族又は直系姻族以外の者の養子となつたものであるということができる。 なお、原告は労災保険法一六条の四、一項三号の「直系姻族」には事実上の直系姻族も含まれると解すべきであるかの如く主張するが、およそ身分関係を表現する法律用語としては、身分関係を画一的に取扱う意味 なお、原告は労災保険法一六条の四、一項三号の「直系姻族」には事実上の直系姻族も含まれると解すべきであるかの如く主張するが、およそ身分関係を表現する法律用語としては、身分関係を画一的に取扱う意味から法律上の身分関係をいい、事実上のものは「事実上の」とただし書をつけて表現するのが通常の用法である。 そして、同法においても婚姻、養子縁組(同法一六条の四、一項二、三号参照)につき同用法を使用しているので、右用法のとおり法律上のもののみをいい、事実上のものは含まれないものと解する。又事実上のものと法律上のものとの身分関係に差があることは、以下にのべることからも明らかである。 従つて、原告の右主張は自余の判断をするまでもなく理由がない。 (二) 次に原告は、受給権発生前から訴外Bと事実上の養子縁組関係と同様の事情にあり、たゞ受給権発生後に養子縁組の届出をしただけで、実質関係に全く変動がないので、この様な場合には労災保険法一六条の四、一項三号に該当しない旨主張するので、この点について判断する。 1 そして原告はその例として受給権の発生後に事実上の養子縁組関係と同様の事情に入つたものが受給権を喪失する(法一六条の四、一項三号)に対し受給権発生前から事実上の養子縁組関係と同様の事情にあるものは受給権を喪失しないことをあげている。右事例は正にそのとおりである。 しかしながら、そもそも同法による遺族補償年金は、労働者の死亡により被扶養利益を喪失した遺族に対し、それを填補することを目的として支給されるものであるところ事実上の養子縁組関係が受給権発生の前後を通じて続いている場合には、受給権者の被扶養利益の喪失状態に何ら変動がないから受給権を消滅させる事由は全く存在しないのに対し受給権発生前から事実上の養子縁組関係同様の事情にあつた者が、受給権発生後に右縁組の ている場合には、受給権者の被扶養利益の喪失状態に何ら変動がないから受給権を消滅させる事由は全く存在しないのに対し受給権発生前から事実上の養子縁組関係同様の事情にあつた者が、受給権発生後に右縁組の届出をした場合はそれによつて受給権者たる養子は養親の嫡出子たる身分を取得し、これに付随して、両者間の法定血族関係を基にした扶養関係、相続関係が生じ、ひいては、受給権発生後における受給権者の被扶養利益の喪失状態を解消する何らかの変動をきたすことは、一般的に考えられるところである。 そうしてみると、同法一六条の四、一項三号が受給権の消滅事由として「養子となつたとき」を規定する理由は、受給権者に右事由が生じた場合は、具体的、個々的場合の財産状態の変動はさておき、一般に養子は、養親から扶養される場合が多いこと、新たな法律上の身分関係から生ずる扶養利益があること、養親らの財産について相続ができる状態になることなど養子たる受給権者の被扶養利益の喪失状態を解消するような変更が生じる場合が多いことを考えて、同条一項三号の事由の発生をもつて一律に受給権を消滅させることとしたものと解される。 なお、実質上、養親側に何ら見るべき積極財産がなく、養子側の財産状態に殆んどプラスの変動がない場合であつても、すべてをできるだけ画一的に規定しようとする法の本質からみて、法は当然にはこれを法の適用除外事由としているものとは解し難い。 2 ところで、前記甲第一号証及びいずれも成立に争いのない甲第二号証、乙第一号証、並びに原告本人尋問の結果を総合すると、訴外Aは、原告と結婚する以前から母方の実家に当るB家の家系を継ぐ者として親族から承認され、母方の祖母の訴外Cを自宅に引き取つて同居し、B家の祖先の位牌を自宅に祭るなどしていたものであるところ、原告は、昭和二八年暮ごろ訴外Aと結婚 母方の実家に当るB家の家系を継ぐ者として親族から承認され、母方の祖母の訴外Cを自宅に引き取つて同居し、B家の祖先の位牌を自宅に祭るなどしていたものであるところ、原告は、昭和二八年暮ごろ訴外Aと結婚し、右Cが既に死亡していたので訴外Aと二人だけで同訴外人の実家の別棟に居住し、その後約八年程経てB家の屋敷内に転居してそのまま現在に至つているが、結婚当時から訴外Aと共に近隣の部落内ではBの姓を名のり、国民健康保険税の納入や農協への出資等もBの名で行い、さらにB家の当主として親戚付合をし、同家の祭祀を主宰してきたものであること、B家の先代には訴外Aの母を含めて四男五女の子供があつたが、家系を継ぐべき男子は現在いずれも死亡し、同家の家系を継ぐ者としては長男の亡訴外Dの嫁である訴外Bただ一人が生存しているのみであること、訴外Bは、昭和二年ごろブラジルに移住したため、原告とは昭和四八年に帰国した際一度面識があるだけであるが、訴外Aとは何度か文通もし、すでに昭和三〇年ころから同訴外人がB家の家系を継ぐべき者であることを承認していたこと、原告は、結婚以来、訴外Aと共にB家の財産である家・屋敷約一アール、畑約一〇アール及び山林等を管理してきたが、他に訴外Eとの間で互の生活を扶養し合う等の関係が全くなかつたこと、訴外Aと訴外Bの養子縁組は昭和四五年ごろから正式の法的手続をすべく準備が進められていたが、その後訴外Aが死亡したため、原告は、夫Aとの間に儲けた長男Fを訴外Bの養子にしようとしたところ、当時右Fが未成年者であつて、その手続が比較的煩雑であつたので結局自己が養子として訴外Bと縁組し、届出するに至つたものであるが、その後も訴外Bから扶養を受けるなどはしていないことがそれぞれ認められ、他にこれに反する証拠はない。 3 以上一、二の事実によると、原告は本件 養子として訴外Bと縁組し、届出するに至つたものであるが、その後も訴外Bから扶養を受けるなどはしていないことがそれぞれ認められ、他にこれに反する証拠はない。 3 以上一、二の事実によると、原告は本件養子縁組の届出によつて、扶養状態そのものには変更はなく、亡夫及び訴外Bらの意思を尊重したために生活のために重要な受給権を喪失したものであつて、その立場は実に問題とするに値するものである。 しかしながら、右2認定の事実によると、原告は養子縁組の届出によつて訴外Bらと新しい扶養関係が生じ(これが期待できないことは同認定のとおりであるが、具体的、事実上の問題と法の規定並びに解釈の問題とは別個の問題であることは前記(二)1のとおりである。)、相続関係も発生しているのであるから、右届出の前後によつて、何らその後扶養利益の喪失状態に変動がないものとはいえず、受給権発生の前後を通じて、事実上の養子縁組関係と同様の状態にあつただけのものと、すべての点について同視することはできず、むしろ法律上の届出によつて新しい状態となつたとするのが合理的である。 なお、本件事案においては原告に気の毒な結果を発生していることは前記事実から明らかであるが、これは前記事実を考察して考えれば、法律を知つていればさけられたか、或はそうでないとしても熟慮して、行動しえたいわゆる法の不知から発生したものともいえなくはない。 4 その他、事実上の養子縁組関係につき、特に尊重すべき規定のない労災保険法によれば、原告主張の前記認定の事実関係においては同法一六条の四、一項三号のみ特に右場合を適用除外事由とみることもでき難い。 したがつて、原告の右主張は理由がなく、被告のなした不支給処分には何ら違法の点は認められないものといわなければならない。 三よつて、原告の本訴請求は理由がないのでこれを棄 由とみることもでき難い。 したがつて、原告の右主張は理由がなく、被告のなした不支給処分には何ら違法の点は認められないものといわなければならない。 三よつて、原告の本訴請求は理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。 (裁判官三宅純一谷岡武教市川頼明)

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る