令和6(ネ)10048 特許権侵害差止等請求控訴事件、同附帯控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和7年3月19日 知的財産高等裁判所 3部 判決 控訴棄却 大阪地方裁判所 令和3(ワ)1720
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判決文本文46,683 文字)

令和7年3月19日判決言渡 令和6年(ネ)第10048号特許権侵害差止等請求控訴事件、同附帯控訴事件(原審・大阪地方裁判所令和3年(ワ)第1720号)口頭弁論終結日令和6年11月21日判決 控訴人・附帯被控訴人エリーパワー株式会社(以下「控訴人」という。) 同訴訟代理人弁護士三村量一 同澤田将史 同松下昂永 同長谷川未織 同補佐人弁理士相田義明 被控訴人・附帯控訴人株式会社GSユアサ(以下「被控訴人」という。) 同訴訟代理人弁護士松本司 同田上洋平 同冨田信雄 主文 1 本件控訴及び本件附帯控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とし、附帯控訴費用は被控訴人の負担とする。 事実 及び理由 以下、略称等は、特に断らない限り、原判決の表記による。また、原判決中の「原告」、「被告」はそれぞれ「被控訴人」、「控訴人」に読み替える。 第1 控訴の趣旨及び附帯控訴の趣旨 1 控訴の趣旨 ⑴ 原判決中、控訴人の敗訴部分を取り消す。 ⑵ 前項の部分につき、被控訴人の請求を棄却する。 2 附帯控訴の趣旨 ⑴ 原判決を次のとおり変更する。 ⑵ 控訴人は、原判決別紙控訴人製品目録記載2の製品を製造し、販売し、若しくは輸出 ⑵ 前項の部分につき、被控訴人の請求を棄却する。 2 附帯控訴の趣旨⑴ 原判決を次のとおり変更する。 ⑵ 控訴人は、原判決別紙控訴人製品目録記載2の製品を製造し、販売し、若しくは輸出し、又は販売の申出をしてはならない。 ⑶ 控訴人は、前項記載の製品を廃棄せよ。 ⑷ 控訴人は、被控訴人に対し、12億7765万円及びうち8億8588万5377円に対する令和2年3月31日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員、うち1265万円に対する令和3年2月1日から、うち3億7911万4623円に対する令和4年5月27日から、各支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は、発明の名称を「電池」とする特許(特許第5713127号。本件特許1)に係る特許権(本件特許権1)及び発明の名称を「蓄電装置」とする特許(特許第6493463号。本件特許2)に係る特許権(本件特許権2)を有する被控訴人が、原判決別紙控訴人製品目録記載1の各製品(併せて控訴 人製品1)及び同目録記載3の製品(控訴人製品3)は、本件特許1の特許発明の範囲の請求項1に記載の発明(本件発明1)の技術的範囲に属し、同目録記載2の各製品(併せて控訴人製品2)は、本件特許2の特許請求の範囲の請求項2に係る発明(本件発明2)の技術的範囲に属しており、控訴人がこれらの商品を製造、販売等する行為によって本件特許権1及び本件特許権2(本件 各特許権)が侵害されたと主張し、控訴人に対し、特許法100条1項及び2 項に基づき、控訴人製品2の製造・販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償請求として、12億7765万円(控訴人製品1及び3による本件特許権1の侵害につき12億6500万円(一部請求) 、控訴人製品2の製造・販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに、不法行為に基づく損害賠償請求として、12億7765万円(控訴人製品1及び3による本件特許権1の侵害につき12億6500万円(一部請求)、控訴人製品2による本件特許権2の侵害につき●●●●●円)及びこれに対する不法行為の後の日から支払済みまで民法所定の割合(各遅延損害金の起算日に応じ、 平成29年法律第44号による改正前の割合である年5パーセント又は同号による改正後の割合である年3パーセント)による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原判決は、控訴人製品1及び3は本件発明1の技術的範囲に属するが、控訴人製品2は本件発明2の技術的範囲に属するとは認められないと判断し、被控 訴人の請求のうち、不法行為に基づく損害賠償請求として、5億2928万5945円及びうち3億6882万1560円に対する令和2年3月31日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員、うち1億6046万4385円に対する令和4年5月27日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員の支払を求める限度で認容し、被控訴人のその余の請求をいずれも棄却し たので、控訴人が原判決のうち控訴人敗訴部分を不服として控訴し、被控訴人が原判決のうち被控訴人敗訴部分を不服として附帯控訴した。 2 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、後記3のとおり当審における控訴人の補充主張を、後記4のとおり当審における被控訴人の補充主張を、後記5のとおり当審における被控訴人の追加主張を、後記6のとおり当審にお ける被控訴人の追加主張に対する控訴人の反論を、それぞれ付加するほか、原判決「事実及び理由」(以下、「事実及び理由」の記載を省略する。)第2の3、4及び第3(3頁13行目から36頁22行目まで)に記載 る被控訴人の追加主張に対する控訴人の反論を、それぞれ付加するほか、原判決「事実及び理由」(以下、「事実及び理由」の記載を省略する。)第2の3、4及び第3(3頁13行目から36頁22行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決8頁8行目の「電熱」を「伝熱」に改める。また、本件各発明の構成要件を再掲すると、別紙本件各発明の構成要件の とおりである。 なお、控訴人は、当審において、新たな無効事由の主張をしたが(乙75に記載された発明に基づく新規性及び進歩性欠如〔控訴理由書2、第2の4〕、乙76に記載された発明に基づく進歩性欠如〔控訴理由書2、第2の5〕、乙90に記載された発明に基づく進歩性欠如〔控訴理由書2、第2の6〕、サポート要件違反〔控訴理由書2、第3〕、実施可能要件違反〔控訴理由書2、第4〕、明 確性要件違反〔控訴理由書2、第5〕、新規事項の追加〔控訴理由書2、第6〕、本件特許1出願の分割要件違反に伴う新規性違反〔控訴理由書2、第7〕及び第2世代出願の分割要件違反に伴う新規性違反〔控訴理由書2、第8〕)、当裁判所は、これらの主張は時機に後れた攻撃防御方法であって、訴訟の完結を遅延させることとなると認め、第1回口頭弁論期日においてこれらの主張及びこ れらの裏付けの証拠を却下した。 また、控訴人は、争点2-1ないし2-3(本件発明1についての乙9発明、乙10発明又は乙11発明に基づく進歩性欠如)に関し、当審において、乙9発明、乙10発明又は乙11発明に、乙77ないし82により認められると主張する周知技術(控訴理由書2において「周知技術1-1」、「周知技術1-2」 と称されているもの)を適用することによって、本件発明1を想到することは当業者にとって容易であるとの新たな主張をしたが(控訴 技術(控訴理由書2において「周知技術1-1」、「周知技術1-2」 と称されているもの)を適用することによって、本件発明1を想到することは当業者にとって容易であるとの新たな主張をしたが(控訴理由書2、第2の1⑵イ、第2の2⑵イ、第2の3⑵イ)、当裁判所は、これらの主張についても、時機に後れた攻撃防御方法であって、訴訟の完結を遅延させることとなると認め、第1回口頭弁論期日において却下した。 3 当審における控訴人の補充主張⑴ 争点1-1(控訴人製品1及び3が構成要件B2及びC2を充足するか)についてア本件発明1の発電要素には積層型が含まれないこと(ア) 本件明細書1の段落【0002】は、本件発明1の背景技術として長 円筒形に巻回された発電要素が明示されており、段落【0003】も、 「長円筒形」、すなわち巻回型の発電要素を並べる構造に関する背景技術を紹介しており、本件発明1が、巻回型の発電要素を備えた電池の構造を背景技術とした発明であることが分かる。 また、本件明細書1の段落【0006】ないし【0008】のとおり、本件発明1が解決しようとする課題は、巻回型の発電要素に特有の課題 であり、本件発明1は、巻回型においては円筒形の内側に波板状の一部を差し込む(集電接続板の接続を内側と外側の両方で行う)従来技術において作製の困難さという課題があったことを考慮して、巻回された発電要素の円周の内側でなく外側で接続するようにしたものであり、積層型においてはこのような課題が生じない。 そして、本件明細書1に示された実施例や図の記載は、全て巻回型の発電要素を前提としている。本件明細書1において、積層型について、段落【0029】に「上記実施形態では、長円筒形の巻回型の発電要素1について説明したが、積層型の れた実施例や図の記載は、全て巻回型の発電要素を前提としている。本件明細書1において、積層型について、段落【0029】に「上記実施形態では、長円筒形の巻回型の発電要素1について説明したが、積層型の発電要素1の場合にも、積層の端面からはみ出した正極1aや負極1bの金属箔を同様に接続固定することが できる。」との言及はあるが、具体的に積層型の発電要素にどのように本件発明を適用することができるかについて言及はない。 さらに、被控訴人は、本件特許1の出願過程で平成26年8月11日に提出した意見書(甲20)において、「発電要素の活物質未塗工部の外側面(活物質未塗工部の最外周面)」と記載するなど、構成要件B2にい う「外側面」とは、発電要素の活物質未塗工部の最外周面、すなわち、巻回型の発電要素において巻回された金属箔の活物質未塗工部のうちの巻回軸に対して最も外側にある面を意味していることを前提として、意見を述べていたのであり、これに反する被控訴人の主張は禁反言に当たり許されない。 以上によれば、構成要件B2及びC2にいう「活物質未塗工部の外側 面」とは巻回型の発電要素を備えていることを前提に、その巻回された金属箔の活物質未塗工部のうちの巻回軸に対して最も外側にある面を意味すると解されるから、積層型である控訴人製品1及び3は、「活物質未塗工部の外側面」を想定し得ず、構成要件B2及びC2を充足し得ない。 (イ) 原判決は、本件特許1の請求項2に「前記発電要素は、巻回型の発電 要素である請求項1記載の電池。」と記載されていることを根拠に、本件発明1の発電要素は特定の形状に限定されるものではないと理解するのが自然であるとの結論を導いた。しかし、改善多項制を採用する現行の特許法において、特許請求の範囲はそれぞれ独立して記載 を根拠に、本件発明1の発電要素は特定の形状に限定されるものではないと理解するのが自然であるとの結論を導いた。しかし、改善多項制を採用する現行の特許法において、特許請求の範囲はそれぞれ独立して記載されているのであって、本件発明1と関係のない請求項2の記載は本件発明1の内 容を画定するための要素とならない。このことは、特許法36条5項に規定されているとおり、請求項1と請求項2の発明が同一の発明であることが、特許法上問題とならないことからも分かる。 また、原判決は、本件明細書1の段落【0029】の記載のみをもって、「本件発明1の発電要素の形状や種類は限定されないことが明記され ている」と誤って断じている。しかし、本件明細書1には、前記のとおり、本件発明1が巻回型の発電要素を前提として創作されたものであることが示されている。加えて、そもそも本件発明1は集電接続板と発電要素との接続構造に特徴を有する発明であるから、段落【0029】の「本発明は、発電要素1の形状や種類は一切限定されず、集電接続板2 とこの発電要素1との接続構造も特に限定されない。」との記載は、本件発明1との関係では空文に等しい。積層型の発電要素に関する具体的な記載が全く存在しないことを踏まえれば、本件明細書1の記載を根拠として本件発明1の技術的範囲に積層型を含めて解釈することは許されない。 イ本件発明1の発電要素に積層型が含まれるとしても、控訴人製品1及び 3では、接続板部は「活物質未塗工部の外側面」ではなく「内側面」に接していること控訴人製品1及び3においては、積層型の発電要素が採用されているところ、より詳細に見れば、セパレータ(白色のフィルム)により覆われた生産積層単位が四つ絶縁テープ(透明及び緑色のもの)で纏められて構成 品1及び3においては、積層型の発電要素が採用されているところ、より詳細に見れば、セパレータ(白色のフィルム)により覆われた生産積層単位が四つ絶縁テープ(透明及び緑色のもの)で纏められて構成 されている。生産積層単位とは、一つの製造装置を1回作動させて組み上げられる積層単位である。積層型の電池は目標となる電池容量を満たすために、正負極の積層枚数や極板のサイズが固定されており、目標となる電池容量が確保されていないと電池としての性能が得られないので、控訴人製品1及び3の発電要素は所定の積層枚数及び極板のサイズとすべく、四 つの生産積層単位を積層させており、これによって初めて電池として機能する。このような電池の設計からすれば、積層された金属箔全体、つまり四つの生産積層単位全体をもって一つの発電要素とみるべきである。 したがって、控訴人製品1及び3においては、生産積層単位が更に積層された発電要素全体を一つの発電要素として、「外側面」と「内側面」を決 するべきであり、外側面は次に掲げる図Aの赤色部分、内側面は図Aの青色部分となる。 【図A】 (上方からの図) (下方からの図) そして、控訴人製品1及び3においては、次に掲げる図Bのとおり、内 側面でのみ「接続板部」と「活物質未塗工部」とが接続されているので、構成要件B2及びC2の「活物質未塗工部の外側面」を充足しない。 【図B】(控訴人製品1及び3の発電要素部分を上方向から見た模式図)なお、本件明細書1の図3には、金属箔を巻回した長円筒形が二つ示されており、この長円筒形一つを発電要素の1単位と解するならば、本件特 許1は発電要素を二つ有するケースを実施例として示していると理解すべきである。仮に、このように、控訴人製品1及び3 が二つ示されており、この長円筒形一つを発電要素の1単位と解するならば、本件特 許1は発電要素を二つ有するケースを実施例として示していると理解すべきである。仮に、このように、控訴人製品1及び3について、発電要素を二つ有すると解しても、接続板部は、二つの発電要素それぞれの内側面に接続していることになるから、やはり接続板部は発電要素の外側に接続していないことになる。また、本件発明1は、外側面と内側面が存在する 発電要素について、あえて外側面に集電接続板を接続することが特徴であるところ、控訴人製品1及び3について発電要素が四つであるとすると、内側面が実質的に存在しないことになるから、このように発電要素を四つとして考える構成を控訴人製品1及び3に適用することは適切でない。 ウ控訴人製品1及び3は「表面が接合される」を充足しないこと 構成要件B2及びC2の「表面が接合される」について、一般的に「接合」とは「つぎあわすこと。」と定義されているところ(広辞苑第七版。乙電極箔(活物質未塗工部)クリップ部材集電接続板(接続板部)発電要素外側面内側面内側面内側面外側面 2)、この定義によれば、二つの物が「はなれないように合う」、「くっつく」必要があるのであって、二つの物が「接合」している場合には、二つの部材は直接接触する形で結合しており、その間に他の部材が介在することを想定していない。 本件明細書1において「接合」の文言が用いられているのは、請求項1 の引き写し箇所である段落【0009】を除くと、段落【0018】のみであり、その他の箇所では「接続」が用いられている。段落【0018】は、「正極側の接続板部」と金属箔(正極側の「活物質未塗工部」)とが直接接触する形で結合されるものであるか と、段落【0018】のみであり、その他の箇所では「接続」が用いられている。段落【0018】は、「正極側の接続板部」と金属箔(正極側の「活物質未塗工部」)とが直接接触する形で結合されるものであるから、「表面が接合される」とは「接続板部」と「活物質未塗工部」のそれぞれの表面(以下「面と面」ともい う。)が直接接触する形で結合していることを意味すると解するのが合理的な文言解釈である。 本件特許1の審査過程における被控訴人の説明(平成26年8月11日付け意見書。甲20)も、本件発明1の構成について、面と面が直接接触する形で結合していることを前提としたものとなっている。 これに対し、控訴人製品1及び3は、「接続板部」と「活物質未塗工部」のそれぞれの表面の間に介在物であるクリップ部材が存在するから、構成要件B2及びC2を充足しない。 原判決は、本件明細書1の段落【0018】及び【0026】の記載を根拠として、本件発明1において、活物質未塗工部と接続板部とを接続固 定する部材は限定されておらず、接続の態様についても限定されないと判断した。しかし、段落【0018】の「挟持板4が接続板部2bと金属箔とを溶着して確実に接続固定するためだけに用いられる」との記載部分においては、金属箔と接続板の間に挟持板を設けることについて何ら示唆されていない。また、段落【0026】については、挟持板以外の接続部品 を用いてもよいことが記載されているものの、接続板部と正極及び負極の 金属箔との間に接続部品が介在する態様について何ら示唆されておらず、仮に何らかの接続部品について示唆されているとしても、活物質未塗工部と集電接続部材との間に介在するような構成ではない。 仮に、原判決のとおり、「表面が接合される」との文言を、「活物質未塗工部 ず、仮に何らかの接続部品について示唆されているとしても、活物質未塗工部と集電接続部材との間に介在するような構成ではない。 仮に、原判決のとおり、「表面が接合される」との文言を、「活物質未塗工部と接続板部の表面が、直接接触している場合に限定されるものではな く、両部材が何等かの部材を介する態様も含め離れないように合わせられてい」るという意義に解するとしても、介在する部材がいかなるものであってもよいとの解釈は、本件明細書1の記載に照らして採用し難く、段落【0018】及び【0026】の記載を素直に解釈すれば、接続板部と金属箔との間に何らかの部材が介在してよいとしても、活物質未塗工部と接 続板部との接合に寄与するものが許され得る程度である。クリップ部材は、活物質未塗工部を束ねる機能はあるが、上記接合に寄与する機能はない。 また、本件発明1の作用効果は「作製を容易にする」(段落【0008】)点にあるところ、この作用効果を踏まえて「表面が接合される」との文言を解釈するならば、「接続板部」と「活物質未塗工部」のそれぞれの表面が 直接接触する形で結合されていることを意味すると解される。さらに、被控訴人が、本件発明1にいうところの「接続板部」と「活物質未塗工部」との間に部材が存在する発明を、本件特許1とは別に、本件特許1の出願後に出願していること(乙88)からしても、当業者は「接続板部」と「活物質未塗工部」の各表面が直接接触する形で結合している場合とそうでな い場合とは技術的に異なると理解しており、控訴人製品1及び3と本件発明1とは技術的に全く異なるものであるし、本件特許1の出願時点では、接続板部と活物質未塗工部との間に部材を挟む態様は想定されておらず、本件特許1の技術的範囲に含まれない。 ⑵ 争点2-1ないし2-3(本件 技術的に全く異なるものであるし、本件特許1の出願時点では、接続板部と活物質未塗工部との間に部材を挟む態様は想定されておらず、本件特許1の技術的範囲に含まれない。 ⑵ 争点2-1ないし2-3(本件発明1についての乙9発明、乙10発明又 は乙11発明に基づく進歩性欠如)について ア争点2-1(本件発明1についての乙9発明に基づく進歩性欠如)について(ア) 乙9発明に乙12構成を適用することについて端子接続部材が電池外装体の外方に配置されている構成自体は周知技術であるから(乙24ないし30)、乙12に接した当業者からすれば、 乙12においてフランジ部を密閉形二次電池の蓋部の外方に配置する構成を採用することは自明の技術的事項である。したがって、上記の周知技術を前提とすれば、乙12には、端子接続部材が電池外装体の外方に配置されている構成が記載されているに等しい。 また、フランジ部を容器の内方に設置するか外方に設置するかは、当 業者において設計事項にすぎない。すなわち、電池の基本的な機能からすれば、本件発明1にいうところの「外部接続端子」、「集電接続板」及び「端子接続部材」が全て電気的に接続されていることが重要なのであり、「端子接続部材」が「電池外装体」の外方に配置されているか内方に配置されているかは上記の電気的な接続には影響がない。このことは、 本件特許1に係る原出願日(平成14年5月27日)より前の時点で、電池の技術分野において、本件発明1の「外部接続端子」に該当する部材と「集電接続板」に該当する部材とを接続する「端子接続部材」が「電池外装体」の外方に配置された構成は、当業者において周知であったことからも理解できる。特に、乙30(特開平10-10653号公報) の周知例は、本件発明1の「端子 続する「端子接続部材」が「電池外装体」の外方に配置された構成は、当業者において周知であったことからも理解できる。特に、乙30(特開平10-10653号公報) の周知例は、本件発明1の「端子接続部材」に該当する部材が、本件発明1の「電池外装体」に該当する部材の外方にあるか内側にあるかという点を実施者の選択に委ねており、「端子接続部材」が「電池外装体」の外方に配置されているか内方に配置されているかが設計事項であることを明確にしている。また、乙12構成において、「フランジ部」を「蓋体」 の「外方に配置」することを阻害する要因は何ら存在しない。原判決は、 乙12の記載を基に、フランジ部が蓋体の下面に設けられている構成のみが開示されていると判断したようであるが、上記周知技術の存在を無視したものであり、不当である。 (イ) 乙9発明に乙22構成を適用することについて原判決は、「乙22公報記載の発明は、過電流の発生時に電池からの電 流を自動的に遮断することを目的とする発明、すなわち、電池にヒューズを設ける発明であって、正極又は負極の一方のみに使用することが想定されており、乙22公報にはその旨が明記されている」から、「乙9発明に乙22構成を適用しても、当業者は、正極と負極の双方に端子接続部材を設ける構成要件A4の構成を想到し得ない」と判断した。 しかし、蓄電池において、正極及び負極の両方にヒューズを設けることがあり得ることは複数の例に示されている(乙40、41)から、正極及び負極の一方にしかヒューズを設けないことを前提とした点において、原判決は誤りである。 また、乙22公報に記載されているのは、あくまでもヒューズの構成 を設けた電池なのであって、乙22公報からヒューズの構成のみを抜き出して、「正極又は負 した点において、原判決は誤りである。 また、乙22公報に記載されているのは、あくまでもヒューズの構成 を設けた電池なのであって、乙22公報からヒューズの構成のみを抜き出して、「正極又は負極の一方のみに使用する」ものと断ずることは妥当でない。乙22公報記載の発明においては電池負極又は正極の一方のみにヒューズを設置することが想定されているとしても、控訴人の主張は「ヒューズ」そのものを乙9発明に適用するというものではなく、「ヒュ ーズ」を設ける際に用いられる、電池エンクロージャ部分30の上部に配置されるとともにスタッド12に接続される電流板4という構成を乙9発明に適用するというものであるから、「ヒューズ」の構成が電池負極又は正極の一方にしか用いられないこととは直結しない。 さらに、リチウムイオン電池を含む蓄電池において、外部接続端子に かかる回転力(回転トルク)によって問題が生ずることは周知の課題で あり、当業者が適宜配慮すべき設計上の事項であった。乙22の電流板4を含む構成は、明らかに外部接続端子の回転力が蓄電池の内部に直接伝わらない構造を有しているから、当業者には、乙22の構成(電池エンクロージャ部分30の上部に配置されるとともにスタッド12に接続される電流板4という構成)を採用することによって外部接続端子の回 転トルクの問題をなくすことについて動機付けがある。 加えて、乙9発明は「集電用リードをいくつも付設しなければならない大型の電池等では、このリードの付設作業に必要な手間、工数は多大なものとなっていた」(段落【0005】)、「この作業は煩雑さを極め・・・電池等の作成工数を大幅に増大させ」(段落【0006】)といった従来 技術の課題に対し、そのような工程を「簡便かつ迅速」なものとすること (段落【0005】)、「この作業は煩雑さを極め・・・電池等の作成工数を大幅に増大させ」(段落【0006】)といった従来 技術の課題に対し、そのような工程を「簡便かつ迅速」なものとすることを目的とした発明である(段落【0007】)。そして、乙22公報記載の発明も、電池において「複雑な機構」(段落【0003】)となることを回避するという目的を有しているから、両者は電池の構造を簡易なものとする点で共通した課題を有する。 したがって、乙9発明に乙22構成を適用する動機付けがあり、容易想到性が認められる。 (ウ) 乙9発明に乙23構成を適用することについて原判決は、「乙23公報のケース又はカバー4(電池外装体)は、それ自体が導電体要素5を構成していることから、導電体要素5は電池外装 体の外方に配置されているとはいえず、乙23公報にこれを示唆する記載もない」から「乙23構成は構成要件A4に相当する構成ではない」と判断した。 しかし、乙23の図1から分かるとおり、乙23の蓄電装置の発電要素(電力供給装置9)及び外部端子7、8は、それぞれ、接続手段5、 6により電気的に接続されている。接続手段5、6は、蓄電装置のコン テナの壁4(本件発明1の「電池外装体」に相当)を貫通し、その表面(外方)に水平方向に延びて、それぞれ、外部端子7、8に接続されている。乙23の蓄電装置は、故障等により発熱した場合に機能するブレーカスイッチ3を設けるため、接続手段6を6aの部分と6bの部分とで構成しているものの、蓄電装置の発電要素(電力供給装置9)と外部 端子7、8とを、それぞれ接続手段5、6により電気的に接続していることに変わりはない。そして、接続手段5、6のうち、蓄電装置のコンテナの壁4の表面に配置されている部分が、本 供給装置9)と外部 端子7、8とを、それぞれ接続手段5、6により電気的に接続していることに変わりはない。そして、接続手段5、6のうち、蓄電装置のコンテナの壁4の表面に配置されている部分が、本件発明1の「端子接続部材」に相当する。原判決は、段落【0018】及び乙23の図14に基づいて上記判断をしたようであるが、図14の構成は、コンテナの壁4 に相当する絶縁体21の上にカバー4(導体)を設け、これを接続手段5の一部としたものであるところ、この構成においても、接続手段5、6は蓄電装置のコンテナの壁4(本件発明1の「電池外装体」に相当)を貫通し、その表面(外方)に水平方向に延びて、それぞれ外部端子7、8に接続されていることに変わりはなく、この蓄電装置のコンテナの壁 4の表面に配置されている部分が、本件発明1の「端子接続部材」に相当する。仮に、図14の構成について異なる評価をしたとしても、図14は乙23に係る複数の発明の中の一実施例であり、乙23発明がこの態様に限られるものではない。 加えて、前記のとおり、蓄電池の外部接続端子にかかる回転力(回転 トルク)によって問題が生ずることは周知の課題であり、当業者が適宜配慮すべき設計上の事項であった。乙23の電流板4を含む構成(リチウムイオン電池において、カバー4の外方に配置されるとともに、正端子8に接続される陰極(カソード)側の導電体要素5、及び、カバー4の外方に配置されるとともに負端子7に接続される陽極(アノード)側 の接続手段6(6a)という構成)は、明らかに外部接続端子の回転力 が蓄電池の内部に直接伝わらない構造を有しているから、当業者には、乙23の構成を採用することにより外部接続端子の回転トルクの問題をなくすことについての動機付けがある。 (エ) 以 の回転力 が蓄電池の内部に直接伝わらない構造を有しているから、当業者には、乙23の構成を採用することにより外部接続端子の回転トルクの問題をなくすことについての動機付けがある。 (エ) 以上のとおり、乙9発明に乙12構成、乙22構成又は乙23構成を適用することによって、当業者は容易に本件発明1を想到するから、本 件発明1は進歩性を欠くものであり、無効である。 イ争点2-2(本件発明1についての乙10発明に基づく進歩性欠如)について(ア) 乙10発明に乙12構成を適用することについて乙12構成が本件発明1の構成要件A4に相当する構成であることは、 前記ア(ア)のとおりである。 また、乙10発明は、大型の平角型のリチウムイオン二次電池等を製造するのに適用して好適な平角型二次電池の製造方法に関する発明であり(段落【0001】)、乙12に記載された密閉型二次電池と同様に、電池の外装体から外方向に突出した2本の外部接続端子を備えているか ら(【図3】及び【図7】)、外部接続端子をナット締めして接続する際に生じる回転トルクによって、乙12の記載と同様に、極板間短絡、リード板の溶接外れによる特性低下、断線、気密性の低下又は接触抵抗の増大といった問題が生ずることが容易に予測できる。この問題に対してオフセット接続によって対処することは周知技術である。 そうすると、当業者には、乙10発明のリチウムイオン電池において予測されるこれらの課題を解決するために、乙12に記載された構成を適用し、発電要素からの取出し電極部と外部接続端子とを電池を収納する容器の外で接続部材を用い、オフセットして接続することについて動機付けがあり、当業者において、乙10発明に乙12構成を適用するこ とにより、相違点に係る構成とすること 続端子とを電池を収納する容器の外で接続部材を用い、オフセットして接続することについて動機付けがあり、当業者において、乙10発明に乙12構成を適用するこ とにより、相違点に係る構成とすることは容易になし得たことであった。 (イ) 乙10発明に乙22構成を適用することについて原判決の判断が、正極及び負極の一方にしかヒューズを設けないことを前提とした点において誤りであること、乙22公報からヒューズの構成のみを抜き出して「正極又は負極の一方のみに使用する」ものと断ずることは妥当でなく、「ヒューズ」の構成が電池負極又は正極の一方にし か用いられないこととは直結しないこと、リチウムイオン電池を含む蓄電池において、外部接続端子にかかる回転力(回転トルク)によって問題が生ずることが周知の課題であり、当業者が適宜配慮すべき設計上の事項であり、当業者には、乙22の構成(電池エンクロージャ部分30の上部に配置されるとともにスタッド12に接続される電流板4という 構成)を採用することによって外部接続端子の回転トルクの問題をなくすことに動機付けがあったことは、前記ア(イ)のとおりである。 さらに、乙10発明は従来技術が有していた「局部的な発熱を招き、非常に危険である」(段落【0008】)、「局部発熱を招く不都合がある」(段落【0010】)といった課題を解決することを目的としていたのに 対し、乙22公報記載の発明も従来技術が有していた「電流の遮断時に電池ガスに着火する危険性」を減少させる(段落【0007】)ことを目的としており、電池の使用時における安全性を確保するという点において、課題及び目的を共通している。集電部材から外部端子までの通電経路の構造が異なるとしても、電気的に接続されているという点では同様 なのであ 電池の使用時における安全性を確保するという点において、課題及び目的を共通している。集電部材から外部端子までの通電経路の構造が異なるとしても、電気的に接続されているという点では同様 なのであって、そのような設計事項にすぎない些細な違いは当業者にとって何ら阻害事由とはならない。 したがって、乙10発明に乙22構成を適用する動機付けがあり、容易想到性が認められる。 (ウ) 乙10発明に乙23構成を適用することについて 乙23構成が構成要件A4に相当する構成であること、蓄電池の外部 接続端子にかかる回転力(回転トルク)によって問題が生ずることが周知の課題であり、当業者が適宜配慮すべき設計上の事項であって、当業者には、乙23の構成を採用することにより外部接続端子の回転トルクの問題をなくすことについて動機付けがあることは、前記ア(ウ)のとおりである。 また、乙10発明は従来技術が有していた「局部的な発熱を招き、非常に危険である」(段落【0008】)、「局部発熱を招く不都合がある」(段落【0010】)といった課題を解決することを目的としていたのに対し、乙23公報記載の発明も「安全上の理由」のため「異常な温度上昇」に対応することも目的としていたのだから(段落【0001】)、電 池の使用時における温度上昇を防止して安全性を確保するという点において、課題及び目的を共通にしている。 したがって、乙10発明に乙23構成を適用する動機付けがあり、容易想到性が認められる。 (エ) 以上のとおり、乙10発明に乙12構成、乙22構成又は乙23構成 を適用することによって、当業者は容易に本件発明1を想到するから、本件発明1は進歩性を欠くものであり無効である。 ウ争点2-3(本件発明1についての乙11発明に基づく進歩性 又は乙23構成 を適用することによって、当業者は容易に本件発明1を想到するから、本件発明1は進歩性を欠くものであり無効である。 ウ争点2-3(本件発明1についての乙11発明に基づく進歩性欠如)について(ア) 乙11発明に乙12構成を適用することについて 乙12構成が本件発明1の構成要件A4に相当する構成であることは、前記ア(ア)のとおりである。 また、乙11発明は、密閉形電池、特に巻回式の発電要素を採用した密閉形電池に関する発明であり(段落【0001】)、乙12に記載された密閉形二次電池と同様に電池の外装体から外方向に突出した2本の外 部接続端子を備えているから(【図1】、【図4】及び【図5】)、外部接続 端子をナット締めして接続する際に生ずる回転トルクによって、乙12の記載と同様に極板間短絡、リード板の溶接外れによる特性低下、断線、気密性の低下又は接触抵抗の増大といった問題が生ずることが容易に予測できる。この問題に対してオフセット接続によって対処することは周知技術である。 そうすると、乙11発明の密閉形電池において予測されるこれらの課題を解決するために、乙12構成を適用し、発電要素からの取出し電極部と外部接続端子とを、電池を収納する容器の外で接続部材を用い、オフセットして接続することについては、当業者に動機付けがあり、当業者において、乙11発明に乙12に記載された電極構成を適用すること により、相違点に係る構成とすることは容易になし得たことであった。 (イ) 乙11発明に乙22構成を適用することについて原判決の判断が、正極及び負極の一方にしかヒューズを設けないことを前提とした点において誤りであること、乙22公報からヒューズの構成のみを抜き出して「正極又は負極の一方のみに使用する ることについて原判決の判断が、正極及び負極の一方にしかヒューズを設けないことを前提とした点において誤りであること、乙22公報からヒューズの構成のみを抜き出して「正極又は負極の一方のみに使用する」ものと断ず ることは妥当でなく、「ヒューズ」の構成が電池負極又は正極の一方にしか用いられないこととは直結しないこと、リチウムイオン電池を含む蓄電池において、外部接続端子にかかる回転力(回転トルク)によって問題が生ずることが周知の課題であり、当業者が適宜配慮すべき設計上の事項であり、当業者には、乙22の構成(電池エンクロージャ部分30 の上部に配置されるとともにスタッド12に接続される電流板4という構成)を採用することによって外部接続端子の回転トルクの問題をなくすことに動機付けがあったことは、前記ア(イ)のとおりである。 加えて、乙11発明と乙22公報記載の発明とでは、集電部材から外部端子までの通電経路の構造が異なるとしても、電気的に接続されてい るという点では同様なのであって、そのような設計事項にすぎない些細 な違いは当業者にとって何ら阻害事由とはならない。 したがって、乙11発明に乙22構成を適用する動機付けがあり、容易想到性が認められる。 (ウ) 乙11発明に乙23構成を適用することについて乙23構成が構成要件A4に相当する構成であること、蓄電池の外部 接続端子にかかる回転力(回転トルク)によって問題が生ずることが周知の課題であり、当業者が適宜配慮すべき設計上の事項であって、当業者には、乙23の構成を採用することにより外部接続端子の回転トルクの問題をなくすことについて動機付けがあることは、前記ア(ウ)のとおりである。 したがって、乙11発明に乙23構成を適用する動機付けがあり、容易想到性が ことにより外部接続端子の回転トルクの問題をなくすことについて動機付けがあることは、前記ア(ウ)のとおりである。 したがって、乙11発明に乙23構成を適用する動機付けがあり、容易想到性が認められる。 (エ) 以上のとおり、乙11発明に乙12構成、乙22構成又は乙23構成を適用することによって、当業者は容易に本件発明1を想到するから、本件発明1は進歩性を欠くものであり無効である。 ⑶ 争点4-1(本件特許権1の侵害に係る損害の発生及びその額)についてア原判決は、控訴人各製品全体の売上額を基準として実施料相当額を計算したが、「電池において、作製を容易にすることができる電池を提供することを目的としている」(本件明細書1段落【0008】)本件発明1の技術的内容を踏まえると、控訴人製品1及び3の一部品である「電池」(電池セ ル)の中のさらに一部品である「電池引出端子と端子接続部材と外部接続端子からなる端子」に相当する構成部分(控訴人においては「天板組立品」と呼んでいる。)のみが算定基礎とされるべきである。特許発明を適用した部品が製品全体の一部にすぎない場合に、売上全体を基準とした上で相当実施料率の算定に際して当該事情を考慮すべきとする考え方は適切では ない。 控訴人製品1及び3のうち本件発明1が適用されている部分の売上は●●●●●●●●●●●●円であり(乙61)、本件発明1の控訴人製品1及び3への貢献は極めて限定的であり、また、需要者が購入製品を選択する際に何ら影響を与えないものである。このような事情に、二次電池の分野における他の事例や統計データに照らし合わせれば、適切な実施料率は、 控訴人製品1及び3の対象部分の売上の●●を超えるものではない。 イ原判決が実施料相当額の算定の根拠として挙げ 次電池の分野における他の事例や統計データに照らし合わせれば、適切な実施料率は、 控訴人製品1及び3の対象部分の売上の●●を超えるものではない。 イ原判決が実施料相当額の算定の根拠として挙げた甲43は、10年以上前の統計資料であって本件の参考となるものではないし、そもそも、個々の事例における特殊性が著しいライセンス契約において、統計的な数値を参照することに合理性がない。控訴人がライセンス料率の実例(乙72、 73)を示して適正な実施料率の算定を提示したにもかかわらず、原判決は、何ら理由を示すことなく、これらの証拠を無視して統計資料のみを根拠としたものであり、参照すべき資料を誤っている。加えて、甲43のうち被控訴人の提出していない部分(乙74)には、「1つのデバイスが関連する特許は膨大な量になるため、1件あたりのロイヤルティ料率を決める となると、100%を超えてしまうため、ポートフォリオ全体として管理をしている」との記載があり、この事情は控訴人製品1及び3にも当てはまるものである。この点からも、原判決が当該報告書記載の料率のみを根拠としたことは誤りである。また、原判決は、甲43につき、司法決定によるロイヤルティ料率のうち「電気」の分野に係る数値を摘示しているが、 「電池」である控訴人製品1及び3について「電気」のロイヤルティ料率を根拠とすること自体誤りである。 このように、原判決は、相当実施料率を算定する際に参照すべき資料を誤り、現時点における日本の電池業界の実態を全く反映していない統計資料を根拠とした結果、相当実施料率を不適切に高く算定している。 控訴人製品1及び3の売上全体に対する相当実施料率は、控訴人が過去 に締結したライセンス契約の事例(乙72、73)に基づく電池の製造原価に対するラ 施料率を不適切に高く算定している。 控訴人製品1及び3の売上全体に対する相当実施料率は、控訴人が過去 に締結したライセンス契約の事例(乙72、73)に基づく電池の製造原価に対するライセンス料率(●●●●●●●●●●●●●●)及び蓄電システム全体における電池の占める価格割合を踏まえた割合(●●●●●●●●●●●●●●●●)を考慮して決定されるべきであって、●●●●●程度である。 ウ本件発明1は、電池の機能に何らかの影響を与えるものではなく、電池の構造に何らかの革命をもたらしたものでもなく、電池作製に際してごく一部の工程を容易にしたのみであって、その技術的意義は乏しい。 本件発明1の構成要件B2、C2及びA4は、いずれも過去に特許不成立となった発明に係る構成を寄せ集めたものにすぎない。 本件発明1が端子接続部材と集電接続板の本体部の構成を備えている技術的意義が、原判決が示すとおり、「電池外装体の内外において、外部接続端子と集電接続板の接続板部との間の距離を長くすることができるようになり、外部接続端子に加えられるトルクや衝撃を接続板部と発電要素の活物質未塗工部との接続部分に伝わりにくくすることが可能となり、当 該接続部分を損傷させたり、当該接続部分での接合が外れたりすることを防止できることにある」としても、このような構成とその効果については周知であり、本件発明1の効果として何ら特筆すべきものではなく、かつ、そもそも外部接続端子に回転力が加わったとしても、集電接続板と端子接続部材との接続点は蓋体により固定されて回転しないようになっている のだから、上記構成がないとしても接合部分には何ら影響を及ぼさない。 したがって、本件発明1の上記効果は、控訴人製品1及び3においては意義に乏しいものであり、本件 て回転しないようになっている のだから、上記構成がないとしても接合部分には何ら影響を及ぼさない。 したがって、本件発明1の上記効果は、控訴人製品1及び3においては意義に乏しいものであり、本件発明1の効果を評価するのであれば、本件明細書1に記載された電池の「作製を容易にする」点に限られるべきである。 そうすると、乙66ないし69の公開特許公報に記載の構成は、電池に おいて作製を容易にする効果を発揮するものであるから、いずれも本件発 明1の代替技術であり、これらを考慮すれば、本件発明1の技術的価値は微少である。 しかも、本件明細書1の記載によれば、本件発明1は、従来技術において「上記非水電解質二次電池は、上方に突出する端子3に接続された集電接続板2を横置きの発電要素1の正極1aや負極1bにおける直線部の 垂直になって重なり合った部分に沿わせて接続するために、波板状の複雑な形状の板材を組み合わせたり、端子3にも接続し難い形状にならざるを得ないため、作製が困難になるという問題があった」(段落【0006】)、「薄いアルミニウム箔や銅箔を挟み込んで超音波溶接を行なっても十分に溶着させることができないという問題も生じていた。また、この集電接 続板2は、2個の発電要素1ごとに幾重にも重なり合ったアルミニウム箔や銅箔を波板状の各凹部に同時に挿入して挟み込む必要があり、この組み立て時の作業性が悪くなるという問題もあった。」(段落【0007】)という課題があったことに対し、「作製の容易化」という効果を図ったものである。しかし、控訴人製品1及び3においては、クリップ部材で活物質未塗 工部をあらかじめまとめる構成とすることによって、上記各課題は解消されており、本件発明1を適用するまでもなく、作製が容易になる効果が十分に生 製品1及び3においては、クリップ部材で活物質未塗 工部をあらかじめまとめる構成とすることによって、上記各課題は解消されており、本件発明1を適用するまでもなく、作製が容易になる効果が十分に生じており、上記構成は、本件発明1とは全く異なる発明の効果であり、代替技術である。すなわち、控訴人製品1及び3は代替技術の効果が生じている場合であるから、控訴人製品1及び3において、本件発明1が 有意義な効果を生じているとはいえない。 以上によれば、控訴人製品1及び3では、本件発明1に特有の効果を何ら得られていないから、仮にこれらの製品が本件発明1の技術的範囲に属すると判断されたとしても、これらの製品の売上げに対する貢献は極めて低い。 エ原判決は、控訴人が確定した文書提出命令によって提出を命じられた文 書の提出を拒み、被控訴人が控訴人製品1及び3の正確な売上高の開示を受けることができなかったことを挙げて、実施料の算定に当たり考慮されるべき(上振れさせる)要因に当たると判断した。 しかし、控訴人は、文書提出命令に関して特許法の規定する真実擬制の効果が生ずることを踏まえて、対象文書の最終的な立証対象である売上額 について当事者間における争いをなくし、審理促進に貢献したのであって、原判決はこれを控訴人にとって不利に評価しており、不当である。原判決のように、自白が成立して当事者間で争いのない売上額について、自白が成立した経緯を摘示して相当実施料を上振れさせてしまえば、実質的には自白が成立した金額よりも高い売上額を裁判所が認定したに等しく、弁論 主義を逸脱する。 4 当審における被控訴人の補充主張⑴ 争点1-2(控訴人製品2が構成要件F2及びG2を充足するか)について本件発明2の構成要件F2は「前記蓄電装置は 等しく、弁論 主義を逸脱する。 4 当審における被控訴人の補充主張⑴ 争点1-2(控訴人製品2が構成要件F2及びG2を充足するか)について本件発明2の構成要件F2は「前記蓄電装置は、複数の前記蓄電素子が収 容される外装体本体と、前記外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐ内蓋部及び外蓋部を有する蓋体とを備え、」であり、この記載を通常の意味に理解すれば、外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐのは蓋体であり、蓋体が「内蓋部」及び「外蓋部」を有するものであるとしか理解できず、「内蓋部が外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐことを特定するものである」などとは認められな い。 また、本件明細書2には、内蓋部は全ての蓄電素子の容器蓋部の上面を覆うように配置されていることに限定されず、一部の容器蓋部の上面を覆うように配置されていても構わないことが明記されており(段落【0054】)、内蓋部が一部の蓄電素子の容器蓋部の上面を覆うにすぎない場合は、残部の 蓄電素子の容器蓋部の上面は覆われないことになるから、本件発明2が内蓋 部のみで外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐ構成に限定されないことは、本件明細書2の記載からも明らかである。本件明細書2の段落【0011】、【0031】及び【0032】においても、本件発明2において、外装体本体の開口部を塞ぐのは蓋体であり、当該蓋体が「内蓋部」及び「外蓋部」を有していることが説明されている。 被控訴人が本件発明2の出願時に提出した平成29年7月24日付け上申書(甲22)には、外装体が密閉構造であるとの記載が存在し、本件発明2において外装体は外装体本体と蓋体を有するから(本件明細書2の段落【0031】)、被控訴人は、出願過程において、本件発明2は外装体本体と蓋体により密閉構造をとってい あるとの記載が存在し、本件発明2において外装体は外装体本体と蓋体を有するから(本件明細書2の段落【0031】)、被控訴人は、出願過程において、本件発明2は外装体本体と蓋体により密閉構造をとっていることを主張している。 さらに、本件発明2は、蓄電素子から発せられる熱による電気機器への影響を低減することを目的とし(本件明細書2の段落【0004】、【0005】)、蓋体の内蓋部を外蓋部と蓄電素子との間に配置することにより、蓄電素子から発せられる熱を内蓋部によって遮断し、蓄電素子から発せられる熱による電気機器への影響を低減することができるものであるが(段落【0012】)、 内蓋部が蓄電素子を覆う部分が一部であっても、覆われている部分においては蓄電素子から発せられる熱を吸収及び反射することにより、内蓋部がない場合と比較して、伝熱のうち、ふく射伝熱が大幅に低減され、本件発明2の課題を解決できるから、本件発明2の構成要件F2を、その通常の用語の意味に反してまで、「内蓋部が外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐことを特 定するものである」などと限定して解釈すべき理由はない。 原判決は、蓄電素子の熱による電気機器への影響を解決するために、外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐものと、被控訴人の主張を理解しているようであるが、本件発明2の課題の認定を誤り、被控訴人の主張を誤解している。 また、原判決は、本件明細書2の段落【0054】は、本件発明2の「密 閉」される構成とは異なる形態について説明したものと理解するのが相当である旨判示するが(41頁18~25行)、本件特許2の請求項1に記載の発明も「前記外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐ内蓋部及び外蓋部を有する蓋体と、」を発明特定事項としており(甲4)、請求項3以下は請求項1又 するが(41頁18~25行)、本件特許2の請求項1に記載の発明も「前記外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐ内蓋部及び外蓋部を有する蓋体と、」を発明特定事項としており(甲4)、請求項3以下は請求項1又は2を引用する発明であることから、原判決の解釈はとり得ない。 以上のとおり、本件発明2の構成要件F2は、蓋体(内蓋部と外蓋部)により外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐ構成であればよい。 そして、控訴人製品2は、容器の開口部を中蓋及び上蓋により密閉状態で塞いでおり、5か所のスリットを設けていても、中蓋により電池からの熱を遮断して、電池監視部への熱による影響を低減していることから、本件発明 2の構成要件F2を充足する。 ⑵ 争点4-1(本件特許権1の侵害に係る損害の発生及びその額)についてア控訴人は、被控訴人から本件特許権1の侵害の警告を受けた後も、控訴人製品1及び3に使用するリチウムイオン蓄電池の設計変更を行っておらず、本件発明1は上記リチウムイオン蓄電池に必要不可欠な技術であり、 その実施の価値は極めて高い。本件発明1は、大型の蓄電池において、作製を容易にするとともに、電池の耐久性の向上及び端子と接続部材との接触抵抗を低減する(本件明細書1の段落【0021】)という電池の機能に直接的に資する発明である。 また、控訴人製品1における蓄電システムは、蓄電池(リチウムイオン 電池)がなければ成り立たない製品であり、単なる価格割合を超える貢献がある。まして、控訴人製品3における「電池パック」は、その構成及び価格の大部分を蓄電池が占めている。 したがって、本件発明1は、控訴人製品1及び3に使用されているリチウムイオン電池に貢献する程度が高いのみならず、控訴人製品1及び3に 占める貢献も極めて高い。 以 池が占めている。 したがって、本件発明1は、控訴人製品1及び3に使用されているリチウムイオン電池に貢献する程度が高いのみならず、控訴人製品1及び3に 占める貢献も極めて高い。 以上の点に加え、原判決が認定した事実関係等を前提とすると、本件発明1の実施に対して受けるべき料率は、少なくとも●●●を下らない。これを●●とした原判決の判断は、極めて低きに失する。 イ原判決は、特許権侵害行為時の税率に応じて、損害賠償に係る消費税の税率を決定すべきとする。 しかし、被控訴人が特許権侵害の有無を争い、訴訟に至った場合、損害賠償金が確定するのは判決確定時である。そして、消費税法基本通達9-1-21の定めに基づけば、額が確定した日に資産等の譲渡があったものとされるから、損害の発生時期を問わず、税率は10%となる。 5 当審における被控訴人の追加主張(均等侵害) 仮に、控訴人製品2が、原判決の構成要件F2の解釈を前提として、同構成要件を文言上充足しないとしても、以下のとおり、控訴人製品2は本件発明2と均等である。控訴人製品2が本件発明2の構成要件G2を充足することは、原審において被控訴人が主張したとおりである。 ⑴ 相違部分 原判決の構成要件F2の解釈を前提とすると、本件発明2の構成要件F2は、内蓋部により外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐものであるのに対し、控訴人製品2は、中蓋に5か所のスリットが存在するものの、電池監視部を保護ケースと上蓋の上面部により密閉している点が相違部分である。 ⑵ 相違部分が本件発明2の本質的部分でないこと 本件明細書2の段落【0004】ないし【0006】、【0023】、【0061】によれば、本件発明2の本質的部分は、蓄電装置において、蓄電素子から発せられる熱による電気 本質的部分でないこと 本件明細書2の段落【0004】ないし【0006】、【0023】、【0061】によれば、本件発明2の本質的部分は、蓄電装置において、蓄電素子から発せられる熱による電気機器への影響を低減することを目的として、内蓋部と外蓋部との間に電気機器を配置し、内蓋部により蓄電素子から発せられる熱を遮断し、もって蓄電素子から発せられる熱による電気機器への影響 を低減することとした点にあると認められる。 控訴人製品2は、内蓋部に相当する中蓋を有し、単に中蓋にわずかなスリットを設けているにすぎないことから、本件発明2による課題解決方法に影響を与えるものではなく、相違部分は本質的部分でない。 ⑶ 相違部分を控訴人製品2のものと置き換えても本件発明2の目的を達することができ、同一の作用効果を奏すること 控訴人製品2の保護ケースには隙間等は存在せず、控訴人製品2の電池監視部は保護ケース及び上蓋の上面部からなる空間に完全に密閉されるものであり、その結果、電池監視部の電池から発せられる熱による電気機器への影響を低減するとの、本件発明2と同一の作用効果を奏するものである。 ⑷ 上記⑶のとおり置き換えることに、控訴人製品2の製造時に、当業者であ れば容易に想到可能であること電池から発せられる熱を遮断するために、スリットのある中蓋に加えて、隙間のない保護ケースにより電池監視部を囲繞することは、控訴人製品2の製造時に当業者であれば容易に想到可能な構成にすぎない。 ⑸ 控訴人製品2が、本件特許2出願時における公知技術と同一又は当業者が これから容易に推考できたものでないこと控訴人製品2は、本件特許2出願時における公知技術と同一ではなく、かつ、当業者が当該公知技術から容易に推考できたものではない。 ⑹ 一又は当業者が これから容易に推考できたものでないこと控訴人製品2は、本件特許2出願時における公知技術と同一ではなく、かつ、当業者が当該公知技術から容易に推考できたものではない。 ⑹ 控訴人製品2の構成が本件特許2の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存在しないこと 本件特許2の出願手続において、控訴人製品2の構成を意識的に除外したような特段の事情は存在しない。 6 当審における被控訴人の追加主張に対する控訴人の反論⑴ 控訴人製品2においては、上蓋の上面部の保護ケース側に、発泡スチロールが貼り付けられており、保護ケースと上蓋の上面部とは発泡スチロールを 介して接しているところ、発泡スチロールは単なる緩衝材として貼り付けら れているものであって、電池監視部が保護ケースと上蓋の上面部により密閉されているものではないから、被控訴人の主張する相違部分は事実に反するものである。 ⑵ 本件発明2は、蓄電素子から発せられる熱による電気機器への影響を低減するという課題に対して、外装体本体に蓄電素子を配置して、内蓋部で外装 体本体の開口部を密閉するという、外装体における特定の構成により当該課題を解決するものである。したがって、蓄電素子が入っている外装体の開口部を密閉する構成は、本件発明2の本質的部分に該当する。これに対して、控訴人製品2について被控訴人の主張する相違部分は、「電池監視部を保護ケースと上蓋の上面部により密閉している」というものであり、蓄電素子が 入っている外装体本体の開口部を密閉していない(控訴人製品2ではむしろ電池監視部の方を密閉した空間内に存置している)のであるから、控訴人製品2と本件発明2とは、その本質的部分において相違している。本件発明2 る外装体本体の開口部を密閉していない(控訴人製品2ではむしろ電池監視部の方を密閉した空間内に存置している)のであるから、控訴人製品2と本件発明2とは、その本質的部分において相違している。本件発明2は、外装体の特定の構造を示すことにより、蓄電素子から発せられる熱による電気機器への影響を低減するという課題の実現手段を提供するものである から、当該特定の構造自体が特許発明の本質的部分に該当する。控訴人製品2のように異なる構造をとるものは、およそ別個の発明と評価されるべきものであり、均等の第1要件を充足しない。したがって、均等のその余の要件について検討するまでもなく、被控訴人の均等の主張は理由がない。 第3 当裁判所の判断 当裁判所は、控訴人製品1及び3は本件発明1の技術的範囲に属するものであり、本件特許1が無効であるとは認められないから、控訴人が控訴人製品1及び3を製造、販売等したことは本件特許権1を侵害するものであり、他方、控訴人製品2は本件発明2の技術的範囲に属すると認められず、当審において被控訴人がした控訴人製品2に関する均等の主張も認められないものであって、 被控訴人の請求は、原判決と同じく、控訴人に対し、5億2928万5945 円及びうち3億6882万1560円に対する令和2年3月31日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員、うち1億6046万4385円に対する令和4年5月27日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員の支払を求める限度で理由があり、その余の請求はいずれも理由がないものと判断する。 その理由は、後記1のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断を、後記2のとおり当審における被控訴人の補充主張に対する判断を、後記3のとおり当審における被控訴人の追加主張に対する判 。 その理由は、後記1のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断を、後記2のとおり当審における被控訴人の補充主張に対する判断を、後記3のとおり当審における被控訴人の追加主張に対する判断を、それぞれ付加するほか、原判決第4(原判決36頁23行目から54頁19行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 ただし、原判決53頁1行目の前に、「被控訴人は、控訴人による本件特許権1の侵害行為によって生じた被控訴人の損害に消費税相当額が含まれる旨主張するところ、控訴人は、消費税相当額が損害に含まれること自体については争っていない。」を加える。 1 当審における控訴人の補充主張に対する判断(以下、本項に記載された段落 番号は、特段の記載のない限り、本件明細書1の段落を指す。)⑴ 前記第2の3⑴(争点1-1(控訴人製品1及び3が構成要件B2及びC2を充足するか)について)の主張についてア控訴人は、前記第2の3⑴アのとおり、本件発明1の発電要素には積層型が含まれないと主張する。 (ア) 本件明細書1は、背景技術として、「大型の非水電解質二次電池における従来の発電要素1と集電接続板2と端子3との接続構造」を、図3を引用して(段落【0002】)説明する。具体的には、その発電要素1は、「正極1aと負極1bをセパレータを介して長円筒形に巻回した」発電要素であり、その「正極1aは帯状のアルミニウム箔の表面に正極活物 質を担持させ、負極1bは帯状の銅箔の表面に負極活物質を担持させた もの」で、「これらの正極1aと負極1bは、それぞれ帯状の片方の側端部に活物質を塗布しない未塗工部を設けておき、この未塗工部でアルミニウム箔と銅箔が露出するようにして」あり、「これらの正極1aと負極1bは、発電要素1 正極1aと負極1bは、それぞれ帯状の片方の側端部に活物質を塗布しない未塗工部を設けておき、この未塗工部でアルミニウム箔と銅箔が露出するようにして」あり、「これらの正極1aと負極1bは、発電要素1の巻回の際に、巻回軸に沿って互いに反対方向にずらすことにより、長円筒形の一方(図示右下)の端面には正極1aの側 端部のアルミニウム箔のみがはみ出し、他方(図示左上)の端面には負極1bの側端部の銅箔のみがはみ出すようにしているものである(段落【0002】)。そして、【図3】に示されるように、2個の発電要素1,1は、長円筒形の平坦な側面同士が直立して重なり合うように横置きに並べられ、これらの発電要素1,1の双方の端面で、それぞれ波板状の 集電接続板2,2に、各発電要素1の端面からはみ出した正極1aのアルミニウム箔や負極1bの銅箔を接続するようになっており、正極側となる端子3を接続固定した集電接続板2は、波板状の各凹部に発電要素1,1の一方の端面からはみ出した正極1aのアルミニウム箔を挟み込んで超音波溶接により接続固定し、負極側となる端子3を接続固定した 集電接続板2は、波板状の各凹部に発電要素1,1の他方の端面からはみ出した負極1bの銅箔を挿入して超音波溶接により接続固定している(段落【0003】)。 このようにして作製される非水電解質二次電池は、発電要素が長円筒形の平坦な側面が直立するように横置きに並べて収納されることで、設 置のスペース効率が良いものとなるが(段落【0005】、【0022】)、集電接続板2を横置きの発電要素1の正極1aや負極1bにおける直線部の垂直になって重なり合った部分に沿わせて接続するため、作製が困難になる問題があり(段落【0006】)、集電接続板2は、電流容量を高めるために、波板状の部分の板 1の正極1aや負極1bにおける直線部の垂直になって重なり合った部分に沿わせて接続するため、作製が困難になる問題があり(段落【0006】)、集電接続板2は、電流容量を高めるために、波板状の部分の板厚もある程度厚くする必要があり、薄 いアルミニウム箔や銅箔を挟み込んで超音波溶接を行っても十分に溶着 させることができないという問題等も生じていた(段落【0007】)。 本件特許1に係る発明は、かかる事情に対応して改良された電池において、作製を容易にすることができる電池を提供することを目的としており(段落【0008】)、本件発明1は、集電接続板を外部接続端子と発電要素とに容易に接続することができるため、容易に電池を作製する ことができるようになる(段落【0010】)。 このように、本件明細書1の背景技術及び発明が解決しようとする課題の記載は、巻回型の発電要素を前提としたものとなっているが、これらの課題は、その内容からすれば、発電要素が巻回型であるもののみならず、積層型の場合であっても当てはまるものである。 すなわち、本件明細書1の段落【0029】は、「積層型の発電要素1の場合にも、積層の端面からはみ出した正極1aや負極1bの金属箔を同様に接続固定することができる。」と記載しており、そのような端面からはみ出した正極及び負極の金属箔を有する積層型の発電要素は、その端部において巻回型の発電要素と構造を共通にしているものであるから、 段落【0006】、【0007】に記載された発電要素の端面からはみ出した正極及び負極の金属箔の接続固定に関する上述の課題は積層型の発電要素においても同様に生じるものと認められる。 以上によれば、本件発明1が解決しようとする課題が巻回型の発電要素に特有の課題であるとの理由で、本件発明1が巻 接続固定に関する上述の課題は積層型の発電要素においても同様に生じるものと認められる。 以上によれば、本件発明1が解決しようとする課題が巻回型の発電要素に特有の課題であるとの理由で、本件発明1が巻回型の発電要素に限 定されると解することはできない。 そして、本件特許1の特許請求の範囲の請求項1には、発電要素自体の構成として、正極・負極があること、「発電要素」の一端部に正極の活物質未塗工部があり、他端部に負極の活物質未塗工部があること、正極・負極に活物質塗工部があることが記載されているが、これらの構成は、 積層型の発電要素の構成としても存在し得るものである。他方、同請求 項1には、本件特許1の発電素子が巻回型に限られることを示す記載はない。 そうすると、本件発明1の電池は、その発電要素が巻回型であるものに限定されるものではなく、段落【0029】に記載されている積層型の発電要素を有するものも含むと認められる。 上記検討の内容に照らせば、本件明細書1の実施形態に示された発電要素が巻回型のもののみであり、積層型の発電要素が実施形態として記載されていないとしても、そのことをもって、段落【0029】の記載が存在するにもかかわらず、本件発明1の電池が巻回型の発電要素のもののみに限定されると解することはできない。そして、控訴人製品1及 び3が積層型であるために構成要件B2及びC2を充足しないと解することもできない。 (イ) 控訴人は、被控訴人が本件特許1の審査過程において提出した意見書(甲20)において、「発電要素の活物質未塗工部の外側面(活物質未塗工部の最外周面)」との記載をしていることを挙げ、被控訴人が上記審査 過程において、構成要件B2にいう「外側面」とは、発電要素の活物質未塗工部の最外周面、すなわ 質未塗工部の外側面(活物質未塗工部の最外周面)」との記載をしていることを挙げ、被控訴人が上記審査 過程において、構成要件B2にいう「外側面」とは、発電要素の活物質未塗工部の最外周面、すなわち、巻回型の発電要素において巻回された金属箔の活物質未塗工部のうちの巻回軸に対して最も外側にある面を意味していることを前提として、意見を述べていたと主張する。 しかし、甲20の意見書と同時に提出された手続補正書により行われ た補正後の請求項1においては、「活物質未塗工部の外側面」との文言が用いられており、それについて「活物質未塗工部の最外周面」との限定はされておらず、他方、上記意見書において、上記補正が出願時の明細書等の記載の範囲内であり、新規事項を追加するものではないことを示すために、実施形態の巻回型の発電素子について述べた明細書等の記載 を挙げていることからすると、上記の「発電要素の活物質未塗工部の外 側面(活物質未塗工部の最外周面)」との記載のうち、「活物質未塗工部の外側面」は請求項1に用いられた文言を記載したものであるのに対し、括弧内の「活物質未塗工部の最外周面」は、明細書等に実施形態として記載された巻回型の発電要素において「活物質未塗工部の外側面」に対応した構成を表現したものであり、実施形態(実施例)に関する説明と して記載されたものと解される。したがって、被控訴人が、本件特許1の審査過程において、巻回型の発電要素を前提とした意見を述べていたとは認められず、被控訴人が本件発明1の電池は積層型の発電要素を有するものを含むと主張することが禁反言により許されないとも解されない。 控訴人は、本件特許1の特許請求の範囲の請求項2の記載を根拠として請求項1の発明が巻回型に限定されないと解することはできない旨主 含むと主張することが禁反言により許されないとも解されない。 控訴人は、本件特許1の特許請求の範囲の請求項2の記載を根拠として請求項1の発明が巻回型に限定されないと解することはできない旨主張する。しかし、特許法36条5項前段には、特許請求の範囲には、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならないと規定され、同法 70条1項には、特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならないと規定されていることからすれば、各請求項に係る発明には、特許請求の範囲における記載の差異に応じた差異があることが前提であり、しかも、上記(ア)で検討したように、本件明細書の記載等によっても請求項1の発電要素を請求項2に記 載の巻回型に限定して解釈すべき事情も見当たらない。そうすると、同法36条5項後段において、特許請求の範囲の各請求項に係る発明が同一である記載となることは妨げられない旨が確認的に規定されているからといって、それによって、ある請求項に係る発明の内容の解釈に当たり、他の請求項の記載を参酌することができないものであるとはいえず、 本件特許1の特許請求の範囲において、請求項2として「前記発電要素 は、巻回型の発電要素である請求項1記載の電池」との請求項を置いていることを根拠の一つとして、請求項1記載の電池の発電要素は巻回型のものに限られないと解することが不当であるとはいえない。 (ウ) 以上によれば、前記第2の3⑴アの控訴人の主張は採用することができない。 イ控訴人は、前記第2の3⑴イのとおり、控訴人製品1及び3は、セパレータにより覆われた四つの生産積層単位が絶縁テープでまとめられて構成されており、四 訴人の主張は採用することができない。 イ控訴人は、前記第2の3⑴イのとおり、控訴人製品1及び3は、セパレータにより覆われた四つの生産積層単位が絶縁テープでまとめられて構成されており、四つの生産積層単位全体をもって一つの発電要素とみるべきであるから、本件発明1の発電要素に積層型が含まれるとしても、控訴人製品1及び3では、接続板部は「活物質未塗工部の外側面」ではなく「内 側面」に接していると主張する。 しかし、本件特許1の特許請求の範囲の記載及び本件明細書1のいずれにも、控訴人が主張する「生産積層単位」についての記載はない。 段落【0027】は、「発電要素1の個数は限定されず、1個以上であれば何個の発電要素1を用いる非水電解質二次電池であってもよい」、「各発 電要素1の正負極にそれぞれ少なくとも1本以上の接続板部2bが配置されていればよい」と記載されていることからすれば、本件発明1の「発電要素」は、正極及び負極を有し、正負極にそれぞれ少なくとも1本以上の接続板部が配置されて発電要素として機能するまとまりの最小単位をもって1個と把握すべきものといえる。 そして、控訴人が主張する「生産積層単位」は、正極及び負極を有し、正負極にそれぞれ1本の接続板部が配置されている単位であるから、この単位が本件明細書1の「発電要素」に当たるものであると認められ、控訴人製品1及び3において、四つの「生産積層単位」がまとめられたものが本件発明1の「発電要素」に対応すると解することはできない。 また、本件発明1の実施形態が発電要素を二つ有するケースであること を根拠に、控訴人製品1及び3の四つの発電要素をあえて二つの発電要素に分けて検討することが適切であるとも解されない。 控訴人は、本件発明1は、外側面と内側面が存 を二つ有するケースであること を根拠に、控訴人製品1及び3の四つの発電要素をあえて二つの発電要素に分けて検討することが適切であるとも解されない。 控訴人は、本件発明1は、外側面と内側面が存在する発電要素についてあえて集電接続板を接続することが特徴であるところ、発電要素が四つであると内側面が実質的に存在しないことになるから、このように発電要素 を四つとして考える構成を控訴人製品1及び3に適用することは適切でないとも主張する。しかし、本件明細書1には「内側面」に関する記載は存在せず、本件発明1の特徴が控訴人の主張する上記内容のとおりであると解すべき根拠は存在しない。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 ウ控訴人は、前記第2の3⑴ウのとおり、構成要件B2及びC2の「表面が接合される」とは「接続板部」と「活物質未塗工部」のそれぞれの表面が直接接触する形で結合していることを意味すると解すべきであり、控訴人製品1及び3は、「接続板部」と「活物質未塗工部」のそれぞれの表面の間に介在物であるクリップ部材が存在するから、構成要件B2及びC2を 充足しないと主張する。 しかし、「接合」の語の辞書における定義(乙2)からは、活物質未塗工部と接続板部の表面が直接接触していることを要するか否か一義的に明らかではないこと、段落【0026】において、接続板部2bと正極1aや負極1bの金属箔との接続に、挟持板4以外の接続部品を用いたり、い ずれの接続部品を用いることなく接続を行うことも可能であることが記載されており、活物質未塗工部と接続板部とを接続固定する部材は限定されておらず、接続の態様についても限定されていないことが示唆されていると解されることからすれば、構成要件B2及びC2の「表面が接合される」とは 、活物質未塗工部と接続板部とを接続固定する部材は限定されておらず、接続の態様についても限定されていないことが示唆されていると解されることからすれば、構成要件B2及びC2の「表面が接合される」とは、活物質未塗工部と接続板部の表面が直接接触している場合に限 られず、何らかの部材を介する態様も含め離れないように合わせられてい れば足りると解されることは、原判決第4の2⑵の説示のとおりであり、控訴人製品1及び3のクリップ部材に「接合に寄与する機能はない」との控訴人の主張は採用することができない。 本件明細書1において、段落【0026】その他の段落で、接続板部と金属箔との間に接続部品が介在する態様の接続に関する記載がないとし ても、挟持板以外の接続部品が接続板部と金属箔との間以外に存在するものに限られると解すべき根拠となる記載があるとは認められない。また、段落【0018】及び【0026】の記載が、接続板部と金属箔との間に控訴人製品1及び3のクリップ部材のような部材が存在することを排除していると解すべき根拠も見当たらない。 被控訴人が本件特許1の審査過程において提出した意見書(甲20)には、「接続板部の面が接合されている(面同士が接合されている)」との記載があるが、これは、引用文献1では「複数の線と点とが接合されている」こととの対比において用いられたものであり、この記載が、本件発明1及び本件明細書1における「接合」が、接続板部の表面と金属箔の表面とが 直接接触する態様を指すことを意味しているとは解されず、甲20の記載全体を検討してもこの結論は変わらない。 本件発明1が、作製を容易にすることができる電池を提供することを目的としている(段落【0008】)ことをもって、本件発明1の電池が、活物質未塗工部の面と接続板 体を検討してもこの結論は変わらない。 本件発明1が、作製を容易にすることができる電池を提供することを目的としている(段落【0008】)ことをもって、本件発明1の電池が、活物質未塗工部の面と接続板部の面が直接接触しているものに限られると は解されない。また、被控訴人が、本件特許1の出願後に乙88の出願をしており、乙88が本件発明1にいう接続板部と活物質未塗工部との間に部材が存在するものに関する特許出願であるとしても、これをもって、本件特許1の出願時において、接続板部と活物質未塗工部との間に部材が存在するものは技術的に全く異なるものであるとか本件特許1の技術的範 囲外とされたものであると認められることにはならず、このように部材が 介在する態様が本件発明1の電池に含まれないと解することもできない。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 ⑵ 前記第2の3⑵(争点2-1ないし2-3(本件発明1についての乙9発明、乙10発明又は乙11発明に基づく進歩性欠如)について)の主張について ア控訴人は、争点2-1(本件発明1についての乙9発明に基づく進歩性欠如)に関し、前記第2の3⑵アのとおり、乙9発明に乙12構成、乙22構成又は乙23構成を適用することによって、当業者は容易に本件発明1を想到すると主張する。 (ア) 乙9発明に乙12構成を適用することについて 乙12公報の特許請求の範囲【請求項1】の記載及び乙12公報の発明の詳細な説明の記載によれば、乙12公報に記載された「フランジ部」が、蓋体の下面に設けられており、蓋体の下面にはフランジ部の係合部に係合する回転阻止部が設けられていることにより、端子極柱に外力が加わっても端子極柱が回転することがないという効果を奏するものであ ると認めら 設けられており、蓋体の下面にはフランジ部の係合部に係合する回転阻止部が設けられていることにより、端子極柱に外力が加わっても端子極柱が回転することがないという効果を奏するものであ ると認められることは、原判決第4の4⑴イの説示のとおりである。また、乙12公報の段落【0080】の記載によれば、同公報記載の発明の効果として、端子極柱に一体に形成された平面状フランジ部上面と蓋体下面の間に環状パッキングを介在させ、ポール部に環状押圧バネを係止させて端子極柱を蓋体に固定することによって、環状パッキングが上 下方向に圧縮され、端子極柱を蓋板に対して確実に密閉しつつ固定できるとの効果もあると認められる。 このように、乙12公報に記載の発明は、フランジ部が蓋体の下面に設けられていることが、発明の効果と密接に関連しているものであるから、原判決第4の4⑴の説示のとおり、乙12公報はフランジ部が蓋体 の下面に設けられている構成を開示していると認められ、乙12公報に 本件発明1の構成要件A4の構成に相当する構成が記載されているに等しいとはいえず、フランジ部を容器の内容に設置するか外方に設置するかが設計事項であるともいえず、乙9発明に乙12構成を適用しても、本件発明1の構成には到達しない。仮に、本件特許1の原出願日より前の時点で、本件発明1の外部接続端子に相当する部材と集電接続板に相 当する部材とを接続する端子接続部材が、電池外装体の外方に配置された構成の電池が乙24ないし30により当業者に周知のものであったとしても、上記のとおり、乙12公報に記載の発明においてフランジ部が蓋体の下面に設けられていることは、発明の効果と密接に関連しているのであるから、この構成が設計事項であるとは解されない。 (イ) 乙9発明に乙22構 2公報に記載の発明においてフランジ部が蓋体の下面に設けられていることは、発明の効果と密接に関連しているのであるから、この構成が設計事項であるとは解されない。 (イ) 乙9発明に乙22構成を適用することについて乙40の公報に記載の発明は、扁平角型電池が過充電状態となって内圧が上昇し、電池が膨張した場合に、第1のヒューズが溶断されて、一つのルートに流れる過電流が遮断されても、別のルートで過電流が流れることになるために、第2のヒューズを設けているものである。また、 乙41の公報に記載の発明は、複数の発電要素が並列接続してなるものであり、このためにヒューズを複数設ける必要があるものである。これに対し、乙22公報に記載の発明には、上記のような事情は存在せず、乙22公報には、自動遮断機(ヒューズ)が正の側又は負の側で使用することができると記載されているのであるから(段落【0010】)、乙 22公報に記載の発明は、正極又は負極の一方のみに使用することが想定されているものであると認められ、乙9発明に乙22構成を適用しても、当業者が、正極と負極の双方に端子接続部材を設ける本件発明1の構成要件A4の構成を想到し得ないとの原判決の判断に誤りはない。 また、乙9発明と乙22公報に記載の発明が、その課題や目的等を異 にしており、乙9発明のケース蓋の外方に乙22公報の電流板4を適用 することを動機付けることのないことは、原判決第4の4⑵イの説示のとおりである。さらに、乙22公報に記載の発明は「電池用自動遮断器」であり、仮に、電池において、外部接続端子にかかる回転力によって問題が生ずることが周知の課題であったとしても、乙22公報の発明の詳細な説明には、上記課題が存在することや、乙22公報に記載の発明又 はこの発明に用 において、外部接続端子にかかる回転力によって問題が生ずることが周知の課題であったとしても、乙22公報の発明の詳細な説明には、上記課題が存在することや、乙22公報に記載の発明又 はこの発明に用いられている構造を上記課題の解決に用いることができることに関する記載があるとは認められないから、当業者が、上記発明を構成する構造の一部にすぎない「電流板4」を、遮断機を構成する一部材であることから離れ、それ自体を上記課題の解決に用いることができるものと理解して、これを乙9発明に適用する動機付けがあるとは認 められない。 (ウ) 乙9発明に乙23構成を適用することについて乙23公報に記載されたケース又はカバー4(電池外装体)が、それ自体導電体要素5を構成していて、導電体要素5が電池外装体の外方に配置されているといえないことは、原判決第4の4⑶イの説示のとおり である。 乙23公報の図1(原判決別紙「乙23公報の図」の「図1」)は、乙23公報に記載された第1実施形態のコンテナ1の概略分解斜視図であって(乙23の段落【0013】、【図面の簡単な説明】)、具体的な構成を示すものではないから、この図の記載をもって、接続手段5、6のう ち、コンテナの壁4の表面に配置されている部分が本件発明1の「端子接続部材」に相当すると認めることはできない。 そして、乙23公報の図14(原判決別紙「乙23公報の図」の「図14」)において、絶縁体21とカバー4は別の箇所に位置している(同図において、「21」と「4」の数字からそれぞれ引かれた線が指し示す 場所が異なっている)から、絶縁体21がコンテナの壁4に相当すると はいえず、図14に関する控訴人の主張はその前提を欠くものである。 したがって、乙23構成が本件発明1の構成要件A4に 場所が異なっている)から、絶縁体21がコンテナの壁4に相当すると はいえず、図14に関する控訴人の主張はその前提を欠くものである。 したがって、乙23構成が本件発明1の構成要件A4に相当する構成であるとは認められず、この点に関する原判決第4の4⑶イの判断は相当である。 また、乙9発明と乙23公報に記載の発明が、その課題や目的を異に していることは、原判決第4の4⑶ウの説示のとおりである。さらに、乙23公報に記載の発明は「ブレーカスイッチ及びブレーカスイッチを含むバッテリ」であり、仮に、電池において、外部接続端子にかかる回転力によって問題が生ずることが周知の課題であったとしても、乙23公報の発明の詳細な説明には、上記課題が存在することや、乙23公報 に記載の発明又はこの発明に用いられている構造を上記課題の解決に用いることができることに関する記載があるとは認められないから、当業者が、上記発明を構成する一つの構造にすぎない「導電体要素5」又は「接続手段6」を上記課題の解決に用いることができるものと理解して、これを乙9発明に適用する動機付けがあるとは認められない。 (エ) 以上によれば、争点2-1に関する前記第2の3⑵アの控訴人の主張は、いずれも採用することができない。 イ控訴人は、争点2-2(本件発明1についての乙10発明に基づく進歩性欠如)に関し、前記第2の3⑵イのとおり、乙10発明に乙12構成、乙22構成又は乙23構成を適用することによって、当業者は容易に本件 発明1を想到すると主張する。また、控訴人は、争点2-3(本件発明1についての乙11発明に基づく進歩性欠如)に関し、前記第2の3⑵ウのとおり、乙11発明に乙12構成、乙22構成又は乙23構成を適用することによって、当業者は容易に本件発 人は、争点2-3(本件発明1についての乙11発明に基づく進歩性欠如)に関し、前記第2の3⑵ウのとおり、乙11発明に乙12構成、乙22構成又は乙23構成を適用することによって、当業者は容易に本件発明1を想到すると主張する。 (ア) しかし、乙12構成及び乙23構成が、本件発明1の構成要件A4に 相当する構成であるといえないことは、前記ア(ア)及び(ウ)並びに原判決 第4の4⑴イ、同⑶イ及び第4の5⑴の説示のとおりである。 (イ)乙22公報に記載の発明が、正極又は負極の一方のみに使用することが想定されているものであると認められることは、前記ア(イ)並びに原判決第4の4⑵イ及び第4の5⑵の説示のとおりであるから、乙10発明又は乙11発明に乙22構成を適用しても、正極と負極の双方の端子 接続部材を設ける構成要件A4を備えた本件発明1には到達しない。 (ウ) また、当業者が、乙22公報に記載の発明を構成する構造の一部にすぎない「電流板4」や、乙23公報に記載の発明を構成する構造の一部にすぎない「導電体要素5」又は「接続手段6」を、電池にかかる回転力を原因とする課題の解決に用いることができるものと理解して、これ を乙10発明又は乙11発明に適用する動機付けがあるとは認められないことは、乙9発明の場合(前記ア(イ)、(ウ))と同様である。 (エ) 以上によれば、争点2-2に関する前記第2の3⑵イの控訴人の主張、及び争点2-3に関する前記第2の3⑵ウの主張は、いずれも採用することができない。 ⑶ 前記第2の3⑶(争点4-1(本件特許権1の侵害に係る損害の発生及びその額)について)の主張についてア控訴人は、前記第2の3⑶ア及びイのとおり、①特許法102条3項の実施料相当額の算定においては、控訴人製品1及び3の売 (本件特許権1の侵害に係る損害の発生及びその額)について)の主張についてア控訴人は、前記第2の3⑶ア及びイのとおり、①特許法102条3項の実施料相当額の算定においては、控訴人製品1及び3の売上全体を基準とすべきではなく、これらの製品の「電池引出端子と端子接続部材と外部接 続端子からなる端子」に相当する構成部分のみを算定基礎とすべきであり、この部分のみを算定基礎とすると、適切な実施料率は●●を超えない、②原判決は、参照すべき資料を誤って、相当な実施料率を不適切に高く算定しており、仮に売上全体を基礎とすると、控訴人製品1及び3の売上全体に対する相当な実施料率は●●●●●程度にすぎないと主張する。 しかし、リチウムイオン電池である控訴人製品1及び3は、電池の発明 である本件発明1の技術的範囲に属すると認められるのであって、このような控訴人製品1及び3の製造、販売による本件特許権1の侵害によって生じた損害に関し、控訴人製品1及び3の売上高全体に相当な実施料率を乗じて算定することが不当であるとは解されない。 実施料相当額の算定に当たり、株式会社帝国データバンクが作成した 「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書」(甲43)に掲載された、アンケート調査に基づく特許権におけるロイヤルティ料率の平均値のうち電気の技術分類の数値、及び日本の司法決定によるロイヤルティ料率のうち電気分野の数値を考慮事情とすることは相当であり、ライセンス契約に個別性があるからといって、特許法 102条3項の実施料相当額の算定に際して上記統計を用いることができないとは解されない。上記報告書には、「デバイスに関する特許」について、一つのデバイスが関連する特許は膨大な量になるため、1件当たりのロイヤルティ料 料相当額の算定に際して上記統計を用いることができないとは解されない。上記報告書には、「デバイスに関する特許」について、一つのデバイスが関連する特許は膨大な量になるため、1件当たりのロイヤルティ料率を決めると100%を超えてしまうことから、ポートフォリオ全体として管理している旨の記載があるが(乙74)、「デバイス」 とはスマートフォン、パソコン、タブレット等を指すものであって(弁論の全趣旨〔被控訴人の原審第16準備書面3頁〕)、電池はこれに含まれないと解されるから、上記記載をもって、本件における実施料相当額の算定に際して甲43の統計を用いることが不当であるとはいえない。 控訴人は、ライセンス料率の実例として、乙72の実施許諾契約と、乙 73の契約を挙げ、これらの契約における料率を考慮すべきと主張する。 しかし、乙72の実施許諾契約は控訴人と他の者との共同開発の成果に基づく発明に関するものであり、乙73の契約は、対象とされた発明に係る特許の出願人を控訴人以外の者とすることを承諾し、控訴人がその承諾をした対価として、当該発明を実施した製品の販売価格の一定割合を受領す ることを合意したものであって、これらの契約の性質に照らせば、原判決 が、本件における特許法102条3項の相当な実施料の算定において上記各契約内容を考慮すべき事情に挙げなかったことが合理性を欠くとはいえない。 以上によれば、原判決が、参照すべき資料を誤って、相当な実施料率を不適切に高く算定したとはいえない。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 イ控訴人は、前記第2の3⑶ウのとおり、本件発明1の控訴人製品1及び3の売上げに対する貢献は極めて小さいと主張する。 この点、原判決第4の7⑵イの説示のとおり、本件発明1は電池の機能 きない。 イ控訴人は、前記第2の3⑶ウのとおり、本件発明1の控訴人製品1及び3の売上げに対する貢献は極めて小さいと主張する。 この点、原判決第4の7⑵イの説示のとおり、本件発明1は電池の機能に直接的に資するものではないが、他方で、本件発明1は、電池製作を容 易にし、電池の耐久性を高めることに資する効果を奏するものであり、控訴人製品1及び3は本件発明1の技術的範囲に属するのであって、本件発明1の上記効果が控訴人製品1及び3にとって意義のないものであるとは解されない。 また、乙66ないし69の公開特許公報に記載の発明の構成が、電池の 作製を容易にする効果を奏するものであるとしても、本件発明1の構成要件B2及びC2並びに構成要件A4に相当する構成を開示するものではなく、乙66ないし69の公開特許公報に記載の発明の構成が本件発明1の代替技術であるといえないことは、原判決第4の7⑵イの説示のとおりである。 さらに、控訴人製品1及び3において、クリップ部材で活物質未塗工部を纏める構成としていることによって、本件明細書1において従来の電池における課題とされたものが解消されたとは認められず、控訴人製品1及び3において本件発明1の構成が有意義な効果をもたらしていないと認めることもできない。 以上によれば、控訴人製品1及び3の売上げに対する本件発明1の貢献 が極めて小さいとは認められず、相当な実施料率に関する原判決の判断が不当であるともいえない。 したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。 ウ控訴人は、前記第2の3⑶エのとおり、原判決が、相当な実施料の算定に際して考慮すべき事情として、確定した文書提出命令によって提出を命 じられた文書の提出を控訴人が拒んだことを挙げたことが不当である旨主 、前記第2の3⑶エのとおり、原判決が、相当な実施料の算定に際して考慮すべき事情として、確定した文書提出命令によって提出を命 じられた文書の提出を控訴人が拒んだことを挙げたことが不当である旨主張する。 しかし、控訴人が、本件訴訟において、確定した文書提出命令によって提出を命じられた文書の提出を拒んだこと、提出を命じられた文書は、控訴人による本件特許1の侵害が行われた期間である平成27年3月20 日から令和4年5月27日までの間の、控訴人製品1及び3に関する売上元帳、製品別売上一覧表、売上伝票等であることが認められる。そして、控訴人が上記文書を開示した場合に、当該文書により、上記期間における控訴人製品1及び3の売上金額が、被控訴人の主張する●●●●●●●●●円よりも多いと認められる可能性があるといえ、仮にそのように認めら れる場合には、被控訴人は上記期間における控訴人製品1及び3の売上金額として主張する金額を増額したはずである。これらの事情によれば、控訴人が文書提出命令に従わず、開示を命じられた文書を開示しなかったとの事情を、原判決が相当な実施料の算定に際して考慮したことが不当であるとはいえず、自白が成立した金額よりも高い金額を裁判所が認定したと いうことにもならない。 したがって、控訴人の主張は採用することができない。 2 当審における被控訴人の補充主張に対する判断(以下、本項に記載された段落番号は、特段の記載のない限り、本件明細書2の段落を指す。)⑴ 前記第2の4⑴(争点1-2(控訴人製品2が構成要件F2及びG2を充 足するか)について)の主張について ア被控訴人は、前記第2の4⑴のとおり、争点1-2(控訴人製品が構成要件F2及びG2を充足するか)に関し、本件発明2の構成要件F2は、内 を充 足するか)について)の主張について ア被控訴人は、前記第2の4⑴のとおり、争点1-2(控訴人製品が構成要件F2及びG2を充足するか)に関し、本件発明2の構成要件F2は、内蓋部と外蓋部からなる蓋体により外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐ構成であればよく、控訴人製品2は本件発明2の構成要件F2を充足すると主張する。 イしかし、まず、本件発明2の構成要件F2の記載からは、開口部を密閉状態で塞ぐ主体が明らかでないことは、原判決第4の3⑴アの説示のとおりであり、構成要件F2の記載を通常の意味に理解すれば内蓋部とともに外蓋部も外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐものであるとしか解されないなどとはいえない。 ウ被控訴人は、段落【0054】において、内蓋部は全ての蓄電素子の容器蓋部の上面を覆うように配置されていることに限定されず、一部の容器蓋部の上面を覆うように配置されていてもかまわないと記載していることから、本件発明2が内蓋部のみで外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐ構成に限定されないといえる旨主張する。 この点、証拠(甲4、22)及び弁論の全趣旨によれば、①本件特許2に係る出願は、原出願(特願2013-73746)の分割出願としてされたものであること、②原出願の特許請求の範囲には密閉構造の外装体の記載が存在しなかったが、本件特許2に係る出願当初の特許請求の範囲では、請求項1に「前記蓄電素子が収容される外装体本体と、前記外装体本 体の開口部を密閉状態で塞ぐ内蓋部及び外蓋部を有する蓋体とを備え」の記載があること、③被控訴人は、平成29年7月24日、本件特許2に係る出願を原出願から分割して出願する際の説明書類として上申書(甲22)を提出したが、この上申書において、上記請求項1の上記記載は、原出 載があること、③被控訴人は、平成29年7月24日、本件特許2に係る出願を原出願から分割して出願する際の説明書類として上申書(甲22)を提出したが、この上申書において、上記請求項1の上記記載は、原出願の出願時の明細書の段落【0030】ないし【0033】、【0044】、【0 051】、出願時の請求項3、分割直前の請求項1、図1等の記載に基づく と記載しており、段落【0054】を挙げていないことが認められる。 また、上記上申書では、本件特許2に係る出願時に添付した明細書等に関し、原出願時に添付した明細書等と異なる部分に関する説明が記載されているが、段落【0054】については何も記載されておらず、このことから、段落【0054】に記載された内容は原出願の願書に添付した明細 書等にも存在したと認めることができる。 以上のとおり、段落【0054】の記載内容は、特許請求の範囲に密閉構造の外装体の記載が存在しなかった原出願の出願当時から、明細書に含まれていたものであり、かつ、被控訴人は、段落【0054】を、本件特許2に係る出願において加えられた密閉構造の外装体の記載の根拠に挙 げていない。 これらの事情に加え、原判決第4の3⑴エに挙げられた事情も考慮すれば、段落【0054】は、本件発明2の「密閉」される構成とは異なる形態の構成についての記載であると認められ、同段落が、本件発明2が内蓋部のみで外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐ構成に限定されないこと を示すものであると解することはできない。 エ段落【0033】及び段落【0052】には、外装体本体200の開口部210を内蓋部320が閉止し、内蓋部320が外装体本体200の蓋として機能する旨が記載されている。その一方で、段落【0011】には、「前記蓄電装置は、内方に前記蓄 】には、外装体本体200の開口部210を内蓋部320が閉止し、内蓋部320が外装体本体200の蓋として機能する旨が記載されている。その一方で、段落【0011】には、「前記蓄電装置は、内方に前記蓄電素子が収容される外装体本体の開口部 を塞ぐ蓋体を備え、前記蓋体は、外側に配置される外蓋部と、前記外蓋部と前記蓄電素子との間に配置される内蓋部とを有し、」との記載があり、段落【0031】には、「蓋体300は、外装体100の蓋を構成する部材であり、」との記載があり、段落【0032】には、蓋体が外蓋部と内蓋部を有する旨の記載がある。しかし、内蓋部が外装体本体の開口部を塞ぐもの であると解しても、その内蓋部は外蓋部とともに蓋体を構成するものであ るから、蓋体が外装体本体の開口部を塞いでいるといえるのであって、上記各段落の記載が、内蓋部が外装体本体の開口部を塞ぐものであるとの理解と矛盾することはない。 同様に、前記ウの上申書(甲22)において外装体が密閉構造であるとの記載があり、蓋体が外装体を構成する部材である(段落【0031】)こ とについても、このことをもって、内蓋部が外装体本体の開口部を塞ぐものであると解し得ないことにはならない。 オ放熱する物体からの熱の伝達は、ふく射伝熱だけでなく、熱伝導及び対流熱伝達もあり(甲36)、蓄電素子から発せられる熱の伝達がふく射伝熱だけによるものとは認められず、本件明細書2にも、蓄電素子から発せら れる熱の問題がふく射伝熱の問題を指すとか、ふく射伝熱を遮断することで課題が解決するとの記載は存在しないから、内蓋部が蓄電素子を覆う部分が一部であってもふく射伝熱が低減されることを根拠として、内蓋部が外装体本体の開口部を塞ぐものであると解されないことにはならない。 カその他、前記第2 は存在しないから、内蓋部が蓄電素子を覆う部分が一部であってもふく射伝熱が低減されることを根拠として、内蓋部が外装体本体の開口部を塞ぐものであると解されないことにはならない。 カその他、前記第2の4⑴のとおり被控訴人が主張する内容を検討しても、 本件発明2の構成要件F2は、内蓋部が外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐことを特定するものであり、控訴人製品2は構成要件F2を充足しないとの原判決の判断(原判決第4の3)は左右されない。 したがって、被控訴人の前記主張は採用することができない。 ⑵ 前記第2の4⑵(争点4-1(本件特許権1の侵害に係る損害の発生及び その額)について)の主張についてア被控訴人は、前記第2の4⑵アのとおり、本件発明1の控訴人製品1及び3に対する貢献は極めて高く、相当な実施料率は●●●を下らないと主張する。 しかし、本件特許権1の侵害による損害につき、特許法102条3項に おける相当な実施料を算定するに際して考慮すべき事情としては、原判決 第4の7⑵イが挙げるとおり、本件発明1が電池の機能に直接的に資するものではないことや、蓄電システムである本件発明1において電池の占める価格割合が極めて高いとはいえないといった事情があり、これらの事情は上記実施料を低く認定する方向に作用するものといえる。 そうすると、被控訴人が主張する事情を考慮しても、本件で認められる 事情を総合考慮すれば、本件発明1の実施に対して受け取るべき実施料の料率は●●が相当であって、この点に関する原判決の判断は相当である。 したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。 イ被控訴人は、前記第2の4⑵イのとおり、消費税相当額の損害に関し、損害賠償金が確定するのは判決確定時であり、消費税法基本通達9-1- したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。 イ被控訴人は、前記第2の4⑵イのとおり、消費税相当額の損害に関し、損害賠償金が確定するのは判決確定時であり、消費税法基本通達9-1- 21によれば、額が確定した日に資産等の譲渡があったものとされるから、税率は10%とすべきであると主張する。 前提として、補正の上で引用した原判決第4の7⑷のとおり、消費税相当額が損害に含まれることについては、当事者間に争いがない。 そして、特許権侵害の不法行為による損害賠償金は、特許権侵害行為時 に直ちに損害が発生して金額が確定するものといえる。損害賠償請求が訴訟でされた場合、判決によって損害額の認定がされるが、これによって特許権侵害による損害の金額が確定するものではない。 そうすると、特許権侵害の不法行為による損害賠償金に対する消費税相当額が損害に含まれると解する場合、その消費税率は、特許権侵害行為当 時の消費税率であると解するのが相当である。 本件については、特許権侵害行為の期間は平成27年3月20日から令和4年5月27日までであり、控訴人が控訴人製品1及び3の売上げの詳細を開示しないことから、本件特許権1の侵害による実施料相当額の損害金4億4250万円を、消費税率が8%から10%に改正された令和元年 10月1日の前後で日数に応じて案分することが相当であり、この方法を 用いて消費税相当額の損害を算出した原判決は相当である。 したがって、被控訴人の上記主張は採用することができない。 3 当審における被控訴人の追加主張(均等侵害)に対する判断⑴ 特許請求の範囲に記載された構成中に相手方が製造等をする製品又は用いる方法(以下「対象製品等」という。)と異なる部分が存する場合であっても、 ①同部分が特許発明 張(均等侵害)に対する判断⑴ 特許請求の範囲に記載された構成中に相手方が製造等をする製品又は用いる方法(以下「対象製品等」という。)と異なる部分が存する場合であっても、 ①同部分が特許発明の本質的部分ではなく、②同部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、③上記のように置き換えることに、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、④対象製品等 が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから同出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、⑤対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは、同対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解する のが相当である(最高裁平成6年(オ)第1083号同10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照)。 そして、上記①の要件(以下「第1要件」という。)における特許発明における本質的部分とは、当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解すべきで あり、特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて、特許発明の課題及び解決手段とその効果を把握した上で、特許発明の特許請求の範囲の記載のうち、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定することによって認定されるべきである。 ⑵ 本件明細書2は、発明が解決しようとする課題として、従来の蓄電装置で は、蓄電素子から発せられる の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定することによって認定されるべきである。 ⑵ 本件明細書2は、発明が解決しようとする課題として、従来の蓄電装置で は、蓄電素子から発せられる熱により、電気機器が影響を受けるおそれがあ るという問題を挙げ(段落【0004】)、本件特許2に係る発明は、この課題を解決するためになされたものであり、蓄電素子から発せられる熱による電気機器への影響を低減することができる蓄電装置を提供することを目的とするとしている(段落【0005】)。そして、本件明細書2には、本件特許2に係る発明は、上記課題を解決するため、外装体本体に蓄電素子を収容し、 蓋体の内蓋部を外蓋部と蓄電素子との間に配置し、電気機器を内蓋部と外蓋部との間に配置し、外装体本体の開口部を内蓋部で閉止することによって、蓄電素子から発せられる熱を遮断し、電気機器への影響を低減する効果を奏することが記載されている(請求項2、段落【0012】、【0023】、【0033】、【0034】、【0052】等、原判決第4の3⑴イ)。 以上によれば、本件特許2に係る発明の特許請求の範囲の記載のうち、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分は、外装体本体に蓄電素子を収容し、蓋体の内蓋部を外蓋部と蓄電素子との間に配置し、電気機器を内蓋部と外蓋部との間に配置し、外装体本体の開口部を内蓋部で閉止することにより、蓄電素子から発せられる熱を内蓋部で遮断して電気機器 への影響を低減することにあると認められるから、本件発明2の構成要件F2の構成は、本件発明2の本質的部分であるといえる。 ⑶ 控訴人製品2は、本件発明2の内蓋部に相当する中蓋に、5か所のスリットが設けられており、そのスリットに発電要素のタブを貫通させており、加えてそ の構成は、本件発明2の本質的部分であるといえる。 ⑶ 控訴人製品2は、本件発明2の内蓋部に相当する中蓋に、5か所のスリットが設けられており、そのスリットに発電要素のタブを貫通させており、加えてその状態でも隙間を有するものであるから、その中蓋は、外装体本体の 開口部を密閉状態で塞いでいるとはいえず、控訴人製品2は本件発明2の構成要件F2を充足しない(原判決第4の3⑴ウ、前記2⑴)。 ⑷ 上記⑵及び⑶によれば、本件発明2の構成中に控訴人製品2と異なる部分が存在し、この部分が本件発明2の本質的部分であるから、均等の第1要件を充足しない。 したがって、その余の要件について判断するまでもなく、控訴人製品2は、 本件発明2と均等なものとして、その技術的範囲に属するということはできない。 被控訴人は、上記異なる部分が本質的部分でないと主張するが、上記⑵及び⑶の説示に照らし、採用することができない。 4 その他、控訴人及び被控訴人が縷々主張する内容を検討しても、当審におけ る上記認定判断(原判決引用部分を含む。)は左右されない。 5 結論以上によれば、その余の争点について判断するまでもなく、原判決は相当であり、本件控訴及び本件附帯控訴はいずれも理由がない。 よって、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官中平健 裁判官今井弘晃 裁判官水野正則 今井弘晃 裁判官水野正則 別紙本件各発明の構成要件 1 本件発明1(特許第5713127号の請求項1記載の発明)A1 蓋板を有する電池外装体と、 A2 一端部に正極の活物質未塗工部を有し、他端部に負極の活物質未塗工部を有する発電要素と、A3 前記蓋板の一端部に配置された正極側の外部接続端子、及び、前記蓋板の他端部に配置された負極側の外部接続端子と、A4 前記電池外装体の外方に配置されるとともに前記正極側の外部接続端子 に接続される正極側の端子接続部材、及び、前記電池外装体の外方に配置されるとともに前記負極側の外部接続端子に接続される負極側の端子接続部材と、A5 前記正極の活物質未塗工部と前記正極側の端子接続部材とを接続する正極側の集電接続板、及び、 A6 前記負極の活物質未塗工部と前記負極側の端子接続部材とを接続する負極側の集電接続板とを備え、B 前記正極側の集電接続板は、B1 前記発電要素の正極側の端部から前記発電要素の中央方向に水平に延びるとともに前記正極側の端子接続部材と接続される正極側の本体部と、 B2 前記正極側の本体部から突設されて、前記正極の活物質未塗工部の外側面のうちの前記正極の活物質未塗工部の端部と前記正極の活物質塗工部との間に、表面が接合される正極側の接続板部とを有し、C 前記負極側の集電接続板は、C1 前記発電要素の負極側の端部から前記発電要素の中央方向に水平に延び るとともに前記負極側の端子接続部材と接続される負極側の本体部と、 C2 前記負極 前記負極側の集電接続板は、C1 前記発電要素の負極側の端部から前記発電要素の中央方向に水平に延び るとともに前記負極側の端子接続部材と接続される負極側の本体部と、 C2 前記負極側の本体部から突設されて、前記負極の活物質未塗工部の外側面のうちの前記負極の活物質未塗工部の端部と前記負極の活物質塗工部との間に、表面が接合される負極側の接続板部とを有するD 電池。 2 本件発明2(特許第6493463号の請求項2記載の発明、ただし、訂正2022-390001の訂正審決による訂正後のもの)E 複数の蓄電素子と、複数の前記蓄電素子それぞれに接続されて複数の前記蓄電素子それぞれの状態を取得する電気機器とを備える蓄電装置であって、 F1 前記蓄電素子は、非水電解質二次電池であり、F2 前記蓄電装置は、複数の前記蓄電素子が収容される外装体本体と、前記外装体本体の開口部を密閉状態で塞ぐ内蓋部及び外蓋部を有する蓋体とを備え、G1 前記電気機器は、 G2 前記蓄電装置が備える複数の前記蓄電素子に対して当該複数の前記蓄電素子のそれぞれに設けられた電極端子が配置されている側、かつ、G3 前記内蓋部と前記外蓋部との間にG4 配置されており、H 前記内蓋部には、外部端子が取り付けられている I蓄電装置。

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