平成30年10月23日判決言渡名古屋高等裁判所平成29年(ネ)第935号,同30年(ネ)第145号協定遵守請求控訴,同附帯控訴事件(原審名古屋地方裁判所平成28年(ワ)第3609号)主文 本件控訴に基づき,原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 上記部分に係る被控訴人の請求を棄却する。 本件附帯控訴を棄却する。 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1当事者の求めた裁判 控訴の趣旨主文同旨 附帯控訴の趣旨原判決を次のとおり変更する。 ⑴主位的請求控訴人は,被控訴人に対し,原判決別紙協議目録記載1の事項について,同目録記載2の態様において,協議に応ぜよ。 ⑵予備的請求控訴人が,被控訴人に対し,原判決別紙協議目録記載1の事項について,同目録記載2の態様において,協議に応ずる義務があることを確認する。 第2事案の概要(略語は,新たに定義するもののほか,原判決の例による。以下,本判決において同じ)。 本件は,愛知県知多半島東部海域に漁業権を有する漁業協同組合である被控訴人が,電気事業等を営む株式会社であり,上記海域に近接するA火力発電所及びB火力発電所を保有,操業している控訴人に対し,①近年の漁獲量の減少が,A火 力発電所及びB火力発電所の操業による温排水による海水温の上昇及び排出される塩素による影響であることが強く疑われる,②新たに公表された次期石炭灰処分場の建設計画(次期石炭灰処分場建設計画)及びA火力発電所の建替計画(A火力リプレース計画)が実施されると,被控訴人の操業に更に深刻な損害を与える可能性があるなどとして,当事者間で平成9年に締結された協定書(本件協定書)6条3項又は7条に基づき,主位的に,原判決別紙協議目録記載1の事項について同目録記載2の態 の操業に更に深刻な損害を与える可能性があるなどとして,当事者間で平成9年に締結された協定書(本件協定書)6条3項又は7条に基づき,主位的に,原判決別紙協議目録記載1の事項について同目録記載2の態様で協議することを求め,予備的に,同事項について同態様で協議に応ずる義務があることの確認を求めた事案である。 原審は,上記②のうち次期石炭灰処分場建設計画について,次期石炭灰処分場にB火力発電所4・5号機から排出される石炭灰(汚泥固化物)の一部が埋立処分される予定があると認められるから,本件協定書に基づく協議の対象事項に当たり,本件協定書7条に基づき,控訴人は被控訴人と原判決別紙協議目録記載1⑵の事項について協議すべき義務を負うものと認められるが,その余の事項について協議すべき義務を負うものとは認められず,本件協定書において協議の態様は明文化されておらず,協議態様を定めない給付判決をすることはできないなどとして,被控訴人の主位的請求をいずれも棄却し,予備的請求のうち次期石炭灰処分場建設計画に係る上記協議目録記載1⑵の事項について協議に応ずる義務があることを確認する限度で認容し,その余の予備的請求をいずれも棄却したところ,控訴人が控訴し,被控訴人が附帯控訴した。 前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,原判決4頁22行目の「A火力発電所」の後に「5号機」を,同頁23行目の「4号機」の後に「合計出kWkW力112.5万」を,同頁25行目の「目指して」の後に「出力107万,の」をそれぞれ加え,同13頁2行目から同頁3行目にかけての「協定事項」を「協議事項」に改め,次項以下に各当事者の当審における補充主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄第2の2~4記載のとおりであるから,これを引用する。 控訴人の当審における補充主張 を「協議事項」に改め,次項以下に各当事者の当審における補充主張を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄第2の2~4記載のとおりであるから,これを引用する。 控訴人の当審における補充主張⑴次期石炭灰処分場建設計画はB火力発電所4・5号機の操業とは関連しないことについて原判決は,B火力発電所4・5号機から生じた汚泥固化物の少なくとも一部が次期石炭灰処分場において埋立処分される予定であると認められることを理由として,次期石炭灰処分場建設計画は,B火力発電所4・5号機の操業に関連するものであるとしている。 確かに控訴人は,現在,B火力発電所4・5号機から生じた汚泥固化物等の一部を,控訴人の最終処分場において埋立処分しており,次期石炭灰処分場が建設された後は,同処分場において埋立処分する可能性があることは事実である。 しかしながら,①一般に石炭灰処分場は,石炭火力発電所の操業に必須のものではなく,廃棄物の海面埋立処分事業として独立した事業であること,②次期石炭灰処分場の建設に向けた許認可申請や関係者への説明については,発電所とは別に独立して行っていること,③控訴人は,被控訴人に対しても次期石炭灰処分場建設計画について説明等を行っていることから,次期石炭灰処分場は,発電所とは全く別個の独立した事業であることは明らかである。 また,B火力発電所4・5号機から生じ,控訴人の最終処分場に埋立処分している汚泥固化物等は,B火力発電所1~5号機全体から発生する石炭灰や汚泥固化物等の量の4%程度と少量であり(乙12,現にB火力発電所4・5号機から生じ)た汚泥固化物等や石炭灰の一部については,控訴人が公益財団法人愛知臨海環境整備センター(以下「ASEC」という)に処理を委託して,ASECの廃棄物最。 終処分場に埋め立てられているように(乙13の た汚泥固化物等や石炭灰の一部については,控訴人が公益財団法人愛知臨海環境整備センター(以下「ASEC」という)に処理を委託して,ASECの廃棄物最。 終処分場に埋め立てられているように(乙13の1,2,別の処分方法もあるの)で,仮に次期石炭灰処分場がなかったとしても,B火力発電所4・5号機の操業に全く支障はない。 よって,次期石炭灰処分場建設計画とB火力発電所4・5号機の操業との関連性はないというべきである。 ⑵本件協定書7条の「定めのない事項」の解釈について原判決は,A火力リプレース計画において建設を予定しているA火力発電所5号機(石炭)について,本件協定書締結当時,当事者双方が本件協定書に基づく協議の対象として想定していなかったものであるから,本件協定書に基づく協議の対象とはいえないと至極妥当な解釈をしている。 ところが,次期石炭灰処分場建設計画について,A火力リプレース計画と同様に,本件協定書締結当時,計画が想定されていなかったにもかかわらず,これを理由に,本件協定書7条の「定めのない事項」に該当するとしており,いずれも本件協定書締結当時「想定していなかったもの」であるにもかかわらず,本件協定書の協議対象であるか否かについて異なる結論を導いており,論理的に矛盾が生じている。 次期石炭灰処分場建設計画は,A火力リプレース計画と同様に,本件協定書締結当時「想定していなかったもの」であるから,当然,本件協定書に基づく協議対象ではないとすることが論理的に一貫した解釈であり,結論としても妥当である。 一般に,契約書において「疑義が生じたとき「定めがない事項が生じたと,」,き」に契約当事者間で協議する旨の記載がされていても,契約の目的事項の範囲を超えて無限定に協議義務が発生するわけではないことは明らかであり,本件協定書7条の「疑 「定めがない事項が生じたと,」,き」に契約当事者間で協議する旨の記載がされていても,契約の目的事項の範囲を超えて無限定に協議義務が発生するわけではないことは明らかであり,本件協定書7条の「疑義が生じたとき「定めのない事項が生じたとき」についても,本件協」,定書の目的事項の範囲内に限定されるべきである。 本件協定書の目的事項は,A火力発電所5号機(石油)並びにB火力発電所4・5号機の建設及び操業であるが,そもそも石炭灰処分場は,本件協定書の目的事項の範囲外である。 この点,被控訴人は,本件協定書1条1号の「海上工作物を含む関連施設」に該当すると主張するが,同号の「海上工作物を含む関連施設」とは,B火力発電所4・5号機を建設するに際して,付帯設備として新たに建設を予定していた揚炭桟橋や副資材桟橋を指すのであって,控訴人の現行の石炭灰処分場は,本件協定書締結時には,既に建設済みであったのであるから,本件協定書の目的事項の範囲外で あったことは明らかである。 したがって,本件協定書締結当時に計画すらされていなかった次期石炭灰処分場が本件協定書の目的事項の範囲外であることは明らかであるため,A火力リプレース計画と同様に,当事者双方が本件協定書に基づく協議の対象として想定しているはずはなく,本件協定書に基づく協議義務が生じることもないことは当然である。 被控訴人の当審における補充主張⑴原判決は,A火力リプレース計画に関する事項は,協議義務の対象とならないと判示するが,本件協定書を極めて形式的に解釈しており失当である。 本件協定書が締結された平成9年当時,既にA火力発電所1~4号機,B火力発電所1~3号機は稼働しており,これらの発電所が運転するようになって以来,被控訴人(その組合員)の操業に悪影響が生じていたことから,新たにA火力発電所 成9年当時,既にA火力発電所1~4号機,B火力発電所1~3号機は稼働しており,これらの発電所が運転するようになって以来,被控訴人(その組合員)の操業に悪影響が生じていたことから,新たにA火力発電所5号機(石油)及びB火力発電所4・5号機が建設され操業することになれば,従前以上に被控訴人の操業に悪影響が生ずることが懸念された。そこで,A火力発電所,B火力発電所と近接する海域に漁業区域(漁業権)を有する被控訴人は,愛知。 ,県漁業協同組合連合会(以下「県漁連」という)とは別個に控訴人と協議を行い本件協定書の調印に至ったのである。 すなわち,本件協定書は,従前の発電所の操業に変更が加えられる場合の協定であり,これらの変更に当たっては,控訴人が被控訴人との協議に応ずるとしたところに,本件協定書の精神がある。こうした実質によれば,既設発電所に変更が加えられる場合には,控訴人は被控訴人との協議に応ずるとの解釈が導かれなければならない。 原判決のような形式論理によれば,例えば,A火力発電所6号機やB火力発電所6号機を新設し,より三河湾の環境に負荷を与え,被控訴人の操業に悪影響を与えることが容易に推測されるような場合にも,控訴人は被控訴人との協議には応じなくて良いという到底容認し難い結果を招くことになる。 控訴人は,A火力リプレース計画は,既設の1~4号機を廃止して,5号機(石 炭)を新設するものであるから,本件協定書が想定していたものと異なる旨を主張し,原判決も,本件協定書にいう「5号機の建設」には当たらないと判断したが,既設の1~4号機の稼働が新設される5号機(石炭)の稼働に置き換えられる(リプレース)ということは,A火力発電所の基本的(ないしは根本的)な変更である。 しかも,製油を燃料とするものが石炭を燃料とするものに替えられ,石炭を搬入する る5号機(石炭)の稼働に置き換えられる(リプレース)ということは,A火力発電所の基本的(ないしは根本的)な変更である。 しかも,製油を燃料とするものが石炭を燃料とするものに替えられ,石炭を搬入するための船舶を通過させるための海路とするための浚渫,生ずる石炭灰の処分,二酸化炭素や硫化水素の増加等の事情が生ずることが容易に想定される。 したがって,既設火力発電所の大幅な変更として,A火力リプレース計画は,本件協定書が定める協議事項に含まれると解されなければならない。 原判決は,次期石炭灰処分場建設計画に関する事項については,被控訴人が求める協議対象となることを認めたが,次期石炭灰処分場建設計画とA火力リプレース計画とが被控訴人の操業に及ぼす影響は,相互に関連し合っているので,協議の場でこれを区分することは現実的には不可能である。実際,A火力リプレース計画についての環境影響調査手続でも,両計画を対象とすることを控訴人自身が認めているところである。 よって,A火力リプレース計画に関する事項もまた,控訴人との協議対象となることは明らかというべきである。 ⑵ア被控訴人が本訴において求めている控訴人との協議事項は,原判決別紙協議目録記載1のとおりであり,ここでは,まず,現在までの漁獲量,漁獲高減少と,B火力発電所,A火力発電所操業との関連性に関する事項を挙げている(同目録記載1⑴。 )本件協定書締結時点で,控訴人は環境影響調査を行い,調査書は,本件確認書に添付されているが,建設前の予測であり,いかに最新の科学的知見に基づいて予測しても,現実の結果がどのようなものであったか,予測どおりであったのか予想以外の結果になっているかが検証されなければならない。 被控訴人は,平成9年当時に予測していたのとは異なる漁獲量,漁獲高の減少と いう事態に直面している。 ものであったか,予測どおりであったのか予想以外の結果になっているかが検証されなければならない。 被控訴人は,平成9年当時に予測していたのとは異なる漁獲量,漁獲高の減少と いう事態に直面している。そして,環境影響調査の検証を行うことは,今後の次期石炭灰処分場建設計画,A火力リプレース計画を検討するに当たっても,基礎作業となる。 したがって,この事項について,控訴人からの説明を受け,協議を尽くすことが必要である。 イ次に,次期石炭灰処分場建設計画,A火力リプレース計画に関する事項を協議事項に挙げている(同目録記載1⑵,⑶。 )控訴人は,環境影響調査手続において,環境影響調査書等を作成,提出しているが,これらの書面は,開示期間が限定され,印刷することができず,開示期間後はインターネットサイトからも削除されるので,環境影響調査書等から,被控訴人(及びその組合員)の操業に関する影響を理解することは不可能である。したがって,この事項についても,控訴人から説明を受け,被控訴人も質問し,協議を尽くす必要がある。 ⑶原判決は,協議態様に関する被控訴人の請求を棄却したが,控訴人は,控訴理由書において,組合長会議や関係地域住民説明会の説明だけでも協議と評価して主張しており,このような控訴人の姿勢からすれば,一度機会を設け,説明し,それについての多少の被控訴人からの質疑応答がされれば,これをもって「協議に応じた,判決に従ったと強弁することは目に見えている。 」そのような形式的協議ではなく,実質的協議が確保されるためには,被控訴人が求めている協議態様が不可欠である。 原判決は,強制執行が不可能な給付請求をすることは不適法で許されないとの理由で主位的請求を棄却したが,被控訴人の請求は,協議事項,協議態様とも具体的に特定されており,これが履行されない場合は, る。 原判決は,強制執行が不可能な給付請求をすることは不適法で許されないとの理由で主位的請求を棄却したが,被控訴人の請求は,協議事項,協議態様とも具体的に特定されており,これが履行されない場合は,強制執行の一態様としての間接強制が可能である。したがって,主位的請求は,強制執行が不可能な給付請求ではないから,原判決の判断は誤りである。 ⑷次期石炭灰処分場建設計画及びA火力リプレース計画は,いずれも石炭火 力発電所に関する計画である。 石炭火力発電所については,地球温暖化防止,そのための二酸化炭素排出量の削減という地球的規模における人類的課題に逆行するものとして多方面からの批判があり,国内外で反対運動や建設計画の中止が続いている。 今後,石炭火力発電所及びその関連施設の建設には,より反対運動が強まるであろうとの予測の下で,控訴人は,建設計画が遅れれば,計画が中止に追い込まれることを懸念せざるを得ない事態となっており,控訴人が被控訴人との協議に応じ,その中で,被控訴人からの疑念が解消されず,その問題性が明らかになれば,計画に支障を来すおそれがある。 被控訴人は,環境保護のためにA火力リプレース計画を阻止しようとして本訴を提起しているのではなく,被控訴人(及びその組合員)の生業を守るため,これに対する悪影響を防止したいと考えているものであるが,上記のような計画の支障の発生,その間の反対運動の高まり,ついには計画自体の中止という事態に陥ることを回避するため,控訴人は被控訴人との協議を頑なに拒否しているのである。 控訴人がなりふり構わず石炭火力発電所及びその関連施設の建設を強行しようとするのは,専ら安い原料によって発電コストを下げるという企業利益の追求にあり,自らの企業利益のためには,被控訴人(及びその組合員)の生業を顧みようとしない,独善的企業 の関連施設の建設を強行しようとするのは,専ら安い原料によって発電コストを下げるという企業利益の追求にあり,自らの企業利益のためには,被控訴人(及びその組合員)の生業を顧みようとしない,独善的企業姿勢であると強く批判されなければならない。 ⑸控訴人の当審における補充主張に対する反論ア控訴人は,一般に石炭灰処分場は石炭火力発電所の操業に必須のものではないと主張するが,本件協定書の定めは「発電所およびその他海上工作物を含,む関連施設の建設および運営」とされており「発電所の操業に必須な設備ないし,施設」とは定められていない。控訴人は,付帯設備として新たに建設を予定していた揚炭桟橋や副資材桟橋が含まれることを認めているが,これら桟橋も,石炭火力発電所の操業に必須なものではない。 イ控訴人は,石炭灰処分場が「全く独立した事業」であると主張するが, 本件で問題なのは,一般的な石炭灰処分場の性質ではなく,まさに控訴人が建設を計画している次期石炭灰処分場であり,これがB火力発電所の操業とは「全く独立した事業」ではないことは,控訴人が公表したプレスリリース(甲5の1)において「B火力発電所を今後も安定的に運転していくためには,継続的に自社処分場を確保する必要があり」と説明して認めているところである。 ウ控訴人は,法的手続が別個にされていることを主張するが,同一事業について複数の行政手続を要する場合,それぞれの手続を要することは当たり前のことであり,別途の行政手続がされていることをもって,協定対象から外れるという控訴人の論理は成り立ち得ない。 エ控訴人は,関係者に説明している,県漁連とも協議を行っていると主張するが,否認する。控訴人と県漁連との協議が行われたという事実はないし,県漁連との協議が行われたとしても,その協議に被控訴人が拘束されたり 人は,関係者に説明している,県漁連とも協議を行っていると主張するが,否認する。控訴人と県漁連との協議が行われたという事実はないし,県漁連との協議が行われたとしても,その協議に被控訴人が拘束されたり,被控訴人との協議が不要となるものでもない。 オ控訴人は,被控訴人が,C水産振興会の組合長会議や関係地域住民説明会にも参加していたから,控訴人と協議する機会がなかったわけではないと主張するが,上記組合長会議や住民説明会はいずれも控訴人が説明するのみで協議の場ではなかった。 カ本件協定書7条の「定めのない事項」の解釈について控訴人は,原判決のA火力発電所に関する判示と次期石炭灰処分場に関する判示との間に矛盾があるとするが,原判決は,A火力発電所5号機(石炭)については,本件協定書では石油火力発電所を対象とし,今回は石炭火力発電所を建設するのだから「全く別個,次期石炭灰処分場建設計画は,B火力発電所4・5号機の操業」に関連する設備,と認定したのであるから,控訴人が指摘するような論理矛盾はない。 キ原判決の「疑義「定めのない事項」の解釈は誤っているが,原判決の」,解釈に従ったとしても,次期石炭灰処分場の建設は「定めのない事項」として協, 議対象となる。 ク控訴人は,本件協定書1条1号に定める「海上工作物を含む関連施設」が「付帯設備として新たに建設を予定していた揚炭桟橋や副資材桟橋」に限定される旨を主張するが,本件協定書にそのような限定はされていない。 ケ控訴人は,本件協定書締結時に,次期石炭灰処分場の建設が計画すらされていなかったことをもって,本件協定書の目的事項の範囲外である旨を主張するが,本件協定書は,B火力発電所4・5号機の操業に伴う事項を協定の対象としており,したがって,当時,次期石炭灰処分場の建設計画がなかったとしても もって,本件協定書の目的事項の範囲外である旨を主張するが,本件協定書は,B火力発電所4・5号機の操業に伴う事項を協定の対象としており,したがって,当時,次期石炭灰処分場の建設計画がなかったとしても,むしろ,だからこそ本件協定書に基づく協議の対象となるのである。 第3当裁判所の判断 当裁判所は,被控訴人の請求はいずれも理由がなく棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり補正し,次項に被控訴人の当審における補充主張について判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄第3の1~4記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴原判決15頁1行目末尾の後に改行して,次のとおり加える。 「本件協定書3条には,被控訴人及び被控訴人の組合員は,同1条に定める控訴人の行為により,漁業の操業に関し,迷惑を被ることがあっても,これを容認するものとする旨が記載され,同4条1項には,控訴人は,同1条及び3条に定める被控訴人の協力等に対し,3億5000万円を支払う旨が記載され,同6条には,被控訴人及び控訴人は,本件協定書締結により,A火力発電所5号機(石油)並びにB火力発電所4・5号機の建設及び操業に係る問題(温排水拡散に伴う補償を含む)は全て解決したことを確認し(1項,被控訴人は,今後,控訴人に対し,A。 )火力発電所5号機(石油)並びにB火力発電所4・5号機の建設及び操業に関し異議求償等の申出をしないとともに,被控訴人の組合員から控訴人に対し異議求償等の申出があった場合は,被控訴人の責任において解決する旨(2項)が記載されている(甲4の1」。 ) ⑵原判決15頁9行目の「A火力発電所5号機」の後に「石油」を加える。 ()⑶原判決16頁9行目の「設計計画」を「設置計画」に改め,同頁24行目の「添付書類には」の後に「受入産業廃棄物は全 ⑵原判決15頁9行目の「A火力発電所5号機」の後に「石油」を加える。 ()⑶原判決16頁9行目の「設計計画」を「設置計画」に改め,同頁24行目の「添付書類には」の後に「受入産業廃棄物は全て自社(火力発電所)で発生す,る廃棄物であるとした上」を,同頁25行目の「種類として」の後に「ダスト,「類「燃え殻「汚泥」のほか」をそれぞれ加え,同行の「,その品」を「その」,」,(品」に改め,同17頁2行目の「固化したもの」の後に「」を加える。 。」)⑷原判決17頁2行目末尾の後に改行して,次のとおり加える。 「キ平成28年度実績によれば,B火力発電所4・5号機から生じ,控訴人の最終処分場に埋立処分された石炭灰(ダスト類)は0t,汚泥固化物等(汚泥固化物,汚泥,燃え殻。以下同じ。ただし,汚泥は1~3号機から生じたものの一部を含む)は4万3774.3tであり,B火力発電所1~5号機から生じた石炭灰及。 び汚泥固化物等の合計100万6657.2tに占める割合は約4%であった。 (乙12)また,B火力発電所から排出される石炭灰及び汚泥固化物等の一部は,外部事業者であるASECにその処理が委託されている(乙13の1,2」。 )⑸原判決17頁8行目の「2021年」を「平成33年度」に,同頁14行目の「結んだものである」を「結んだものであり,被控訴人が,控訴人の同事業。 の実施に同意し,これにより迷惑を被ることを容認する対価(温排水拡散に伴う補償を含む)として,控訴人から3億5000万円(本件覚書による協力金2億円。 を含めると合計5億5000万円)の支払を受けることにより,同事業に係る問題。 。 を全て解決済みとすることを主たる内容とするものである」に,それぞれ改める⑹原判決18頁7行目の「原告は」から同頁9行目の「生じた 億5000万円)の支払を受けることにより,同事業に係る問題。 。 を全て解決済みとすることを主たる内容とするものである」に,それぞれ改める⑹原判決18頁7行目の「原告は」から同頁9行目の「生じたことや」ま,でを「本件協定書6条1項により,A火力発電所5号機(石油)並びにB火力発電所4・5号機の建設及び操業に係る問題(温排水拡散に伴う補償を含む)につい。 ては,全て解決済みであることが確認されている上,被控訴人は,本件確認書1条の環境影響調査書に示す温排水による影響及びその評価を超えたことや,上記各発 電所の建設及び操業に関し,控訴人の責に帰すべき事故等によって塩素の排出等が生じたこと」に改め,同頁12行目の「3項にいう「」の後に「乙の事業に関し」を加える。 ⑺原判決18頁24行目冒頭から同21頁15行目末尾までを,次のとおり改める。 「⑴本件協定書に基づく協議対象についてア上記2⑴アのとおり,本件協定書は,控訴人のA火力発電所5号機(石油)並びにB火力発電所4・5号機の建設及び操業に関して締結されたものであり,被控訴人が,控訴人の同事業の実施に同意し,これにより迷惑を被ることを容認する対価として,控訴人から3億5000万円の支払を受け,同事業に係る問題を全て解決済みとすることを主たる内容とするものであることに鑑みると,本件協定書の趣旨を,控訴人が広く既設発電所の変更等について被控訴人と協議することを約束したものと解することはできない。本件協定書6条3項,7条の協議対象は,A火力発電所5号機(石油)並びにB火力発電所4・5号機の建設及び操業に関する事項に限られると解される。 イ前記認定事実⑵オ~キによれば,控訴人は,B火力発電所4・5号機から生ずる汚泥固化物等の一部を,発電所構内の最終処分場において埋立処分しており, 建設及び操業に関する事項に限られると解される。 イ前記認定事実⑵オ~キによれば,控訴人は,B火力発電所4・5号機から生ずる汚泥固化物等の一部を,発電所構内の最終処分場において埋立処分しており,次期石炭灰処分場においても自社(火力発電所)で発生する汚泥固化物等の埋立処分が予定されていることが認められ,控訴人自身,B火力発電所4・5号機から生ずる汚泥固化物等の一部を,次期石炭灰処分場において埋立処分する可能性があることを認めているから,次期石炭灰処分場がB火力発電所4・5号機の操業と全く無関係ということはできない。 もっとも,前記認定事実⑵ア,イ,キによれば,控訴人は,B火力発電所1~3号機から生ずる石炭灰の一部を最終処分場に埋立処分してきたのに対し,B火力発電所4・5号機から生じる石炭灰については,セメント原料等に有効利用することを原則とし,埋立処分を予定していなかったこと,平成28年度実績において,B 火力発電所4・5号機から生じた石炭灰(ダスト類)は,控訴人の最終処分場に埋立処分されておらず,B火力発電所4・5号機から生じ,最終処分場に埋立処分された汚泥固化物等の量は,B火力発電所1~5号機から生じ,最終処分場に埋立処分された石炭灰及び汚泥固化物等の約4%にすぎなかったこと,証拠(乙8の1,2,乙13の1,2)によれば,石炭火力発電所から排出される石炭灰及び汚泥等の処分を外部業者に委託することも可能であり,B火力発電所4・5号機の操業に次期石炭灰処分場の建設が不可欠とはいえないことなどに照らすと,次期石炭灰処分場建設計画は,B火力発電所1~3号機から排出される石炭灰及び汚泥固化物等を埋立処分するためのもの(これらの処分場所を従前の最終処分場から次期石炭灰処分場に変更するためのもの)であると認められ,B火力発電所4・5号機の操業 所1~3号機から排出される石炭灰及び汚泥固化物等を埋立処分するためのもの(これらの処分場所を従前の最終処分場から次期石炭灰処分場に変更するためのもの)であると認められ,B火力発電所4・5号機の操業のための施設とはいえず,これとは独立した別個の計画であると評価するのが相当である。したがって,次期石炭灰処分場は,本件協定書1条1号にいうB火力発電所4・5号機の「関連施設」に当たらないと解される。 ⑵本件協定書7条の解釈について本件協定書は,上記のとおり,被控訴人が,控訴人によるA火力発電所5号機(石油)並びにB火力発電所4・5号機の建設及び操業に同意し,これにより迷惑を被ることを容認する対価として3億5000万円の支払を受け,同事業に係る問題を全て解決済みとすることを主たる内容とするものであり,B火力発電所4・5号機の操業により生じる汚泥固化物等の一部の処分場所が,従前の最終処分場から新たに建設される次期石炭灰処分場に変更される可能性があるとしても,次期石炭灰処分場はB火力発電所1~3号機の石炭灰及び汚泥固化物等の処分のために建設されるものである上,B火力発電所4・5号機の操業自体に基本的な変化があるものともいえず,本件協定書7条が想定する「定めのない事項が生じた」と解することはできない。むしろ,B火力発電所4・5号機から生ずる汚泥固化物等の一部が次期石炭灰処分場に埋立処分される可能性があることをもって,次期石炭灰処分場建設計画について,本件協定書7条によって,控訴人が被控訴人と協議する法的義 務を負うと解することは,上記した本件協定書が締結された趣旨を逸脱する解釈であり,採用し得ない。 ⑶被控訴人は,B火力発電所4・5号機から生じた石炭灰も埋立処分されており,次期石炭灰処分場建設計画は,B火力発電所4・5号機の操業に直結する事 結された趣旨を逸脱する解釈であり,採用し得ない。 ⑶被控訴人は,B火力発電所4・5号機から生じた石炭灰も埋立処分されており,次期石炭灰処分場建設計画は,B火力発電所4・5号機の操業に直結する事項であると主張するが,証拠(乙12)によれば,少なくとも平成28年度実績において,控訴人の最終処分場に,B火力発電所4・5号機から生じた石炭灰(ダスト類)は埋立処分されておらず,本件記録を精査しても,B火力発電所4・5号機から生ずる(汚泥固化物等以外の)石炭灰が次期石炭灰処分場に埋立処分される予定があると認めるに足りる証拠もないから,被控訴人の上記主張は採用することができない。 また,被控訴人は,次期石炭灰処分場建設計画は,本件協定書締結当時は想定されていなかったものであるから「定めのない事項」に該当することは明らかであ,り,B火力発電所4・5号機から生ずる石炭灰が次期石炭灰処分場の対象になっているか否かについて「疑義」があるから,本件協定書7条の要件に該当すると主張するが,上記のとおり本件協定書が締結された趣旨に照らして,次期石炭灰処分場建設計画が,本件協定書7条の「定めのない事項」に該当するものと解することはできず,前記2⑵のとおり,本件協定書7条の「疑義」とは,本件協定書の対象事項に関し,本件協定書の内容等について「疑義」が生じた場合に協議する義務を定めたものであると解するのが相当であるから,被控訴人の上記主張も採用することはできない。 ⑷以上によれば,次期石炭灰処分場建設計画について,控訴人が,本件協定書7条に基づく協議義務を負っているものとは認められない」。 ⑻原判決22頁3行目から同頁4行目にかけての「A火力発電所5号機」の後に「石炭」を加え,同頁20行目の「協定事項」を「協議事項」に改める。 () 被控訴人の当審におけ とは認められない」。 ⑻原判決22頁3行目から同頁4行目にかけての「A火力発電所5号機」の後に「石炭」を加え,同頁20行目の「協定事項」を「協議事項」に改める。 () 被控訴人の当審における補充主張について⑴被控訴人は,本件協定書は,従前の発電所の操業に変更が加えられる場合 の協定であり,これらの変更に当たって,控訴人が被控訴人との協議に応ずるとしたところに本件協定書の精神があるとして,既設発電所に変更が加えられる場合には,控訴人は被控訴人との協議に応ずるとの解釈が導かれなければならないと主張する。 しかしながら,前記認定事実(補正して引用した原判決「事実及び理由」欄第3の1。以下同じ)⑴によれば,本件協定書は,控訴人がA火力発電所5号機(石。 油)並びにB火力発電所4・5号機の建設及び操業に当たり,その影響を受ける可能性のあった被控訴人と協議して締結されたものであり,被控訴人が控訴人の同事業の実施に同意し,これにより迷惑を被ることを容認する対価として,控訴人から3億5000万円の支払を受け,同事業に係る問題を全て解決済みとすることを主たる内容とするものであり,被控訴人が主張するように既設発電所に変更が加えられる場合を広く対象とするものと解することはできず,本件協定書の対象はA火力発電所5号機(石油)並びにB火力発電所4・5号機の建設及び操業に関する事項に限られるというべきである。 被控訴人は,A火力リプレース計画は,既設のA火力発電所1~4号機の稼働を新設されるA火力発電所5号機(石炭)に置き換えるものであるから,A火力発電所の大幅な変更として,本件協定書が定める協議事項に含まれると解されなければならないと主張するが,上記のとおり本件協定書が既設発電所に変更が加えられる場合を広く対象とするものと解することはできないから の大幅な変更として,本件協定書が定める協議事項に含まれると解されなければならないと主張するが,上記のとおり本件協定書が既設発電所に変更が加えられる場合を広く対象とするものと解することはできないから,被控訴人の主張は理由がない。 さらに,被控訴人は,原判決が協議対象と認めた次期石炭灰処分場建設計画とA火力リプレース計画とは,被控訴人の操業に及ぼす影響が相互に関連し合っており,協議の場で区分することが不可能であるから,A火力リプレース計画も本件協定書による協議対象に含まれると主張するが,上記1⑺で原判決を補正して説示したとおり,次期石炭灰処分場建設計画についても,本件協定書7条に基づく協議対象と認めることはできないから,これを前提とする被控訴人の主張を採用することはで きない。 ⑵ア被控訴人は,原判決別紙協議目録記載1⑴の協議事項について,本件協定書締結時に作成された環境影響調査書は,あくまで建設前の予測であり,現実の結果がどのようなものであったのか検証されなければならないなどと主張するが,前記認定事実⑴によれば,本件協定書並びにこれと同時に締結された本件確認書及び本件覚書によって,控訴人のA火力発電所5号機(石油)並びにB火力発電所4・5号機の建設及び操業に伴う問題については,基本的に解決済みとされたものと認められ,同イのとおり,本件確認書1条に,環境影響調査書に示す温排水による影響及びその評価を超えた場合で,被控訴人又は被控訴人の組合員の営む漁業に損害を与えた場合は,本件協定書6条3項の協定をもって協議する旨が記載されているものの,被控訴人は,上記場合に当たることや,本件協定書6条3項の「控訴人の責に帰すべき事故等により被控訴人又は被控訴人の組合員の営む漁業に損害を与えた」ことを具体的に主張立証しておらず,これらを認めるに足りる 訴人は,上記場合に当たることや,本件協定書6条3項の「控訴人の責に帰すべき事故等により被控訴人又は被控訴人の組合員の営む漁業に損害を与えた」ことを具体的に主張立証しておらず,これらを認めるに足りる証拠もないことに照らすと,控訴人が,本件協定書6条3項,7条に基づき,原判決別紙協議目録記載1⑴の事項について,被控訴人と協議すべき義務を負うものとはいえない。 イ被控訴人は,次期石炭灰処分場建設計画及びA火力リプレース計画について作成された環境影響調査書等の開示期間が限定され,印刷することができず,開示期間経過後はインターネットサイトから削除されることから,環境影響調査書等から,被控訴人の操業に関する影響を理解することが不可能であることを理由に,これらの事項について控訴人と協議を尽くす必要があると主張するが,上記各計画が本件協定書の対象事項とは認められない以上,控訴人が,原判決別紙協議目録記載1⑵,⑶の事項について,本件協定書に基づく協議義務を負うものとは認められない。 ⑶被控訴人は,控訴人のこれまでの対応から,原判決別紙協議目録記載2の態様で協議を命じることが必要であり,これが履行されない場合には間接強制が可能であるから,主位的請求が認められるべきであると主張するが,上記1で原判決 を補正して引用したとおり,そもそも本件協定書に基づき,控訴人が,同目録記載1の事項について,被控訴人との協議に応ずる義務を負うものとは認められないから,採用できない。 ⑷被控訴人は,その他,控訴人が協議に応じない理由等をるる主張して控訴人を非難するが,上記結論を左右するものとはいえない。 第4 結論 以上のとおり,被控訴人の請求はいずれも理由がなく棄却すべきところ,被控訴人の予備的請求を一部認容した原判決はその限りで相当でないから,本件控訴に基づき原判 を左右するものとはいえない。 第4 結論 以上のとおり,被控訴人の請求はいずれも理由がなく棄却すべきところ,被控訴人の予備的請求を一部認容した原判決はその限りで相当でないから,本件控訴に基づき原判決中控訴人敗訴部分を取り消し,同部分に係る被控訴人の請求を棄却し,本件附帯控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第2部裁判長裁判官松並重雄裁判官鳥居俊一裁判官剱持亮
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