平成30刑(わ)1936 受託収賄、贈賄、受託収賄幇助

裁判年月日・裁判所
令和4年7月20日 東京地方裁判所
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判決文本文103,600 文字)

- 1 - 令和4年7月20日東京地方裁判所刑事第16部宣告平成30年刑(わ)第1936号、第2206号受託収賄(被告人A1)、贈賄(被告人A2及び被告人A3)、受託収賄幇助、贈賄(被告人A4)各被告事件 主文 被告人A1を懲役2年6月に、被告人A2を懲役1年6月に、被告人A3を懲役1年に、被告人A4を懲役2年に処する。 この裁判が確定した日から、被告人A1及び被告人A4に対し5年間、被告人A2に対し4年間、被告人A3に対し2年間、それぞれその刑の執行を猶予する。 訴訟費用中、平成30年刑(わ)第1936号受託収賄、贈賄、受託収賄幇助被告事件に関する証人B1、同C1、同D1、同E1(ただし、第12回公判期日に関するもの)、同C2に支給した分は被告人4名の連帯負担とし、平成30年刑(わ)第2206号贈賄被告事件に関する証人F1、同C3、同F2、同F5、同F3、同E1(ただし、第7回、第8回、第10回公判期日に関するもの)、同F4、同H1に支給した分は被告人A4の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)第1 被告人A1は、平成28年6月21日から平成29年7月10日までの間、文部科学省大臣官房長として、同省の所掌に係る経費及び収入の予算、決算及び会計並びに会計の監査、国会との連絡及び同省の所掌事務に関する総合調整に関する事務等を掌理することを職務とし、同月11日から平成30年7月4日までの間、同省科学技術・学術政策局長の職にあったもの、被告人A2は、学校法人C大学の理事長であったもの、被告人A3は同大学の学長であったもの、被告人A4は、医療等に関するコンサルタントを業務とする株式会社Dの取締役であったものであるが、- 2 - 1 被告人A1は、平成29年5月10日、東京都港区 3は同大学の学長であったもの、被告人A4は、医療等に関するコンサルタントを業務とする株式会社Dの取締役であったものであるが、- 2 - 1 被告人A1は、平成29年5月10日、東京都港区(住所省略)精進料理Iにおいて、被告人A2から、文部科学省が、全学的な独自色を大きく打ち出す取組を行う私立大学等に対し、経常費・設備費・施設費を一体として重点的に支援する「平成29年度私立大学研究ブランディング事業」に関し、前記C大学が同事業の支援対象校に選定されるように、同大学が同省に提出する「事業計画書」の記載等について助言・指導するとの有利かつ便宜な取り計らいを受けたい旨の請託を受け、その謝礼として供与されるものであることを知りながら、前記A2及び前記A3から、東京都新宿区(住所省略)学校法人C大学において、同大学の平成30年度医学部医学科一般入試試験を受験した自己の二男に対し、平成30年2月4日、同試験の点数の加算を受けた上、同月17日、同試験の合格者の地位の付与を受け、もって自己の職務に関し請託を受けて賄賂を収受し、 2 被告人A2及び被告人A3は、共謀の上、第1の1記載の請託に関する謝礼として、前記C大学において、前記入学試験を受験した前記A1の二男に対し、平成30年2月4日、同試験の点数の加算をした上、同月17日、同試験の合格者の地位を付与し、もって前記A1の職務に関し賄賂を供与し、 3 被告人A4は、前記A1が第1の1の犯行に及んだ際、その情を知りながら、平成29年5月10日、前記精進料理Iにおいて、前記A1が前記A2から第1の1記載の請託を受けるに当たり、同店での会食の場を設けて両者を面会させた上、同年6月上旬頃、東京都内において、前記A1による前記「事業計画書」の記載等についての助言・指導の内容を前記A2に伝えるなど 1記載の請託を受けるに当たり、同店での会食の場を設けて両者を面会させた上、同年6月上旬頃、東京都内において、前記A1による前記「事業計画書」の記載等についての助言・指導の内容を前記A2に伝えるなどし、もって前記A1の第1の1記載の犯行を容易にしてこれを幇助し、第2 分離前の相被告人F4は平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA」という。)の理事として、理事長を補佐して、JAXAの経営に当たるとともに、広報普及など広報部の業務及び契約など契約部の業務等を所管することを職務としていたものであるが、被告人A4は、Dの取締役であったD2と共謀の上、同社の営業相手におい- 3 - てJAXAから宇宙飛行士の講師派遣を受け、あるいは、同社の営業相手に対し被告人A4及び前記D2がJAXAの人工衛星を利用した業務を提案するに当たり、前記F4から助言・助力を受けるなど、同社のコンサルタント業務等に関して有利かつ便宜な取り計らいを受けたいとの趣旨又はそのような有利かつ便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨のもとに、別表(添付省略)記載のとおり、平成27年8月28日から平成29年3月28日までの間、21回にわたり、東京都港区(住所省略)所在の飲食店「J」等において、代金合計147万9848円相当の飲食等の接待をするとともに、平成28年12月5日、東京都港区内において、タクシーチケット1冊(利用金額合計6万5250円)を供与し、もって前記F4の前記職務に関して賄賂を供与したものである。 (争点に対する判断)第1 判示第1の事実について 1 主たる争点本件の主たる争点は、①被告人A1が、被告人A2から、判示第1の1記載の請託を受 務に関して賄賂を供与したものである。 (争点に対する判断)第1 判示第1の事実について 1 主たる争点本件の主たる争点は、①被告人A1が、被告人A2から、判示第1の1記載の請託を受けたか否か、②被告人A1の二男であるK(以下「二男」という。)が入学試験において点数の加算を受け、さらに正規合格者の地位の付与を受けたことが、賄賂たり得る利益なのか、請託の対象となった行為が、被告人A1の職務行為又は職務に密接に関係する行為(以下「職務密接関係行為」ともいう。)に該当するのか、被告人A1に受託収賄の故意があるか、被告人A4が被告人A1の受託収賄を幇助し、その故意があるか、被告人A2及び被告人A3に贈賄の故意及び共謀の事実があるか、である。 そこで、以下、当裁判所が判示第1の事実を認定した理由を補足して説明する。 2 証拠上明らかな事実関係各証拠によれば、以下の事実が明らかである。 当事者について- 4 - ア被告人A1は、昭和60年に科学技術庁(現文部科学省)に入庁し、平成24年から大臣官房の政策課長、総務課長、会計課長を経て、平成26年1月に大臣官房審議官に、その後大臣官房総括審議官を経て平成28年6月から大臣官房長、平成29年7月から科学技術・学術政策局長に任じられた。 イ被告人A4は、スポーツトレーナーとして治療院を開業し、さらに医療コンサルタントとしてクリニックの開業支援に携わり、株式会社D(以下「D」という。)と業務提携後、同社に業務を移し、自らも同社に取締役として就任した。他方で、L1衆議院議員(当時。以下「L1」という。)やL2衆議院議員(当時。以下「L2」という。)の私設秘書として政治活動にも参加するようになり、L3元衆議院議員(当時。以下「L3」という。)の政治活動を応援 衆議院議員(当時。以下「L1」という。)やL2衆議院議員(当時。以下「L2」という。)の私設秘書として政治活動にも参加するようになり、L3元衆議院議員(当時。以下「L3」という。)の政治活動を応援したり、平成27年にはL4参議院議員(当時。以下「L4」という。)の政策顧問として活動したり、中央省庁に出入りして官僚と交流するようになり、その中でもL3を通じて紹介された被告人A1との親交を深め、毎週のようにゴルフや食事を共にしていた。 また、被告人A4は、平成26年6月にL3が主催した被告人A1の大臣官房審議官への昇進祝いの会の際、L3から眼科医である被告人A2を紹介された。被告人A2からの依頼もあり、同年9月9日にはC大学を訪問し、病院の資金調達方法として、病院不動産を運用対象とする不動産投資信託(病院REIT。以下「病院リート」という。)を紹介するなどしたことがあった。同年12月頃、被告人A4は、被告人A2から被告人A1と会食をしたいと依頼されていた。 ウ被告人A2は、平成20年10月にC大学の学長に就任し、平成25年7月から平成30年7月までの間、同大学の理事長を務めた。 被告人A2は、理事長就任後、大学の資金運営として文部科学省による私学助成を得るため、相談できる人脈関係を作ろうと考え、被告人A4に対し、被告人A1との会食を申し入れた。平成28年当時、C大学は、文部科学省に対し、私学助成の一つである私立大学ブランディング事業を申請していた。 エ被告人A3は、平成9年4月にC大学の主任教授になり、平成26年7月、- 5 - C大学学長に就任した。 ブランディング事業についてア平成28年5月、文部科学省(以下「文科省」ともいう。)は、学長のリーダーシップの下、優先課題として全学的な独自色を大きく打ち出す研究 C大学学長に就任した。 ブランディング事業についてア平成28年5月、文部科学省(以下「文科省」ともいう。)は、学長のリーダーシップの下、優先課題として全学的な独自色を大きく打ち出す研究に取り組む私立大学・私立短期大学に対し、経常費・設備費・施設費を一体として重点的に支援する「私立大学ブランディング事業」(以下「ブランディング事業」という。)を実施した。選定予定校数は30から40校とし、対象となる研究は地域の経済・社会、雇用、文化の発展や特定の分野の発展・深化に寄与する研究(タイプA社会発展型)と、先端的・学際的な研究拠点の整備により、全国的あるいは国際的な経済・社会の発展、科学技術の進展に寄与する研究(タイプB世界展開型)を支援対象とした。 支援方法として、3年もしくは5年を支援期間とし、私立大学等経常費補助として措置額は1校当たり年額2000万円から3000万円、私立学校施設整備費補助金としてAタイプで上限が2000万円、Bタイプで上限4000万円とされ、私立大学等研究設備整備費等補助金として1大学当たりの補助金額は4000万円を上限とされた。 選定方法は、文部科学大臣が委嘱した学識経験者等の委員で構成する「私立大学研究ブランディング事業委員会」(以下「事業委員会」という。)が審査し、同事業の趣旨に沿った取組を行う私立大学等を選定し、支援対象校とする。審査手続では、事業委員会の下部組織である審査部会が申請校の事業計画書を採点し、採点結果を踏まえて事業委員会で支援対象校を選定することとされていた。 イ平成28年度ブランディング事業では、198校の申請があり、審査部会による事業計画書の採点等を経て、事業委員会により支援対象校40校が選定された。 平成29年度は、予算が増額され、支援対象校は50から60校が想定されたところ 事業では、198校の申請があり、審査部会による事業計画書の採点等を経て、事業委員会により支援対象校40校が選定された。 平成29年度は、予算が増額され、支援対象校は50から60校が想定されたところ、募集の結果、188校が申請し、60校が選定された(甲10)。 なお、平成28年度ブランディング事業は、平成28年8月22日が提出期限とされ、同年11月1日に事業委員会が開催されて支援対象校が選定され、同月22- 6 - 日、選定結果が公表された。平成29年度は、同年3月に実施通知がされ、同年6月8日が事業計画書等の提出期限とされ、同年10月6日に事業委員会が開催され、同年11月22日に選定結果が公表された。 ウ被告人A2が理事長を務めるC大学は、平成28年度ブランディング事業にタイプBの世界展開型で申請したものの、審査の結果不選定となったが、平成29年度に再度申請し、支援対象校に選定され(甲50)、平成29年度予算私立学校等研究設備整備費等補助金として、589万1000円の交付を受けた(甲51)。 第一次I会食等についてア前記のとおり、C大学は、平成28年度ブランディング事業について申請をしていたものであるが、申請後、被告人A2は、被告人A4を通じて被告人A1との会食を求めた。 他方で、被告人A1には、当時、部活動(野球部)を終えて本格的に大学の受験勉強を始めた高校3年生の二男がおり、同人は医学部進学を志望し、進学先としてC大学を話題とすることもあった。被告人A1は、その理事長を務める被告人A2との会食となったことから、会食の際に二男のことを伝えようと考え、二男が部活動で活躍した新聞記事などを用意した。 平成28年9月8日、判示第1の1記載の精進料理屋I(以下「I」という。)において、被告人A1、被告人A2、被告人A4の3 男のことを伝えようと考え、二男が部活動で活躍した新聞記事などを用意した。 平成28年9月8日、判示第1の1記載の精進料理屋I(以下「I」という。)において、被告人A1、被告人A2、被告人A4の3名が同席して会食し、その際、被告人A2は、被告人A1に対してブランディング事業に申請していることを伝え、他方で被告人A1は、二男が医学部に進学希望があることを伝えた(以下、この会食を「第一次I会食」という。)。 イ同年11月11日、被告人A1、被告人A2、被告人A4は、すっぽん料理屋M(以下「M」という。)で再度会食した。会食後、被告人A2は、被告人A1の自宅に、同会食での領収書と共に、C大学の受験のための願書を同封して郵送した(甲53資料2-4、被告人A1の公判供述。)。 なお、平成28年度ブランディング事業について、同月1日に事業委員会が開か- 7 - れ、C大学は不選定となった。 C大学の医学部受験における不正入試についてア C大学では、医学部医学科の入学定員が120名であり、推薦入試となる30名を除く90名のうち、一般入試が75名、センター試験利用入試が15名とされているところ、遅くとも平成12年頃から、受験生の内、C大学の卒業生などの縁故者の子弟が同大学の入学試験を受験した場合に、当該子弟の一部について、入学試験の得点を加算して順位を繰り上げ、優先的に合格させることが繰り返されていた。一般入学試験では、第一次試験、第二次試験とも試験後に入試委員会、定例教育委員会、教授会を経て、学長が合格者を決定する手続とされていたが、その一方で、被告人A2が理事長、被告人A3が学長となってからは、入試委員会に先立ち、被告人A2と被告人A3、医学科学務課長の3人で、入学試験において優遇措置を依頼されていた受験生(以下「縁故受験生」とも 方で、被告人A2が理事長、被告人A3が学長となってからは、入試委員会に先立ち、被告人A2と被告人A3、医学科学務課長の3人で、入学試験において優遇措置を依頼されていた受験生(以下「縁故受験生」ともいう。)の得点調整を検討するための打合せ(以下、この打合せを「プレビュー」という。)が実施され、縁故受験生に加点する得点調整が行われた。プレビューは、第一次試験、第二次試験の両方について行われ、平成29年度入試や平成30年度入試では、大学に2000万円を寄付する縁故者の子弟のうち、一定水準以上の得点だった者に対し加点し、順位を繰り上げることがあった。 イ二男は、平成29年2月にC大学医学部医学科入試の第一次試験を受験した。 被告人A2があらかじめ用意した加点を検討する対象となる縁故受験生のリストに二男は含まれていたが、同人の得点は、400点満点中200点であり、順位は1051位であり、得点が低かったことから、プレビューの場では加点の対象にされなかったため、第一次試験の合格基準点である230点に足りず、二男は合格者454名には入らなかった(甲77)。 平成29年2月8日、C大学は、第一次試験の結果を公表し、二男は不合格となった。その頃、被告人A1は、被告人A4を通じて被告人A2から、二男の第一次試験の結果を伝えられ、手帳に「C 400点 200点 1000番230- 8 - 051番 200 英語× 270 800人~900人」などと記載した(甲76)。 第二次I会食とC大学がブランディング事業で選定されるまでア被告人A2は、被告人A4を通じて再び被告人A1との会食を持ち掛け、平成29年5月10日、Iで被告人A1、被告人A2、被告人A4が会食した(以下、この会食を「第二次I会食」という。)。同会食中の会話は、被告人A4によっ A4を通じて再び被告人A1との会食を持ち掛け、平成29年5月10日、Iで被告人A1、被告人A2、被告人A4が会食した(以下、この会食を「第二次I会食」という。)。同会食中の会話は、被告人A4によってICレコーダーで密かに録音されていた。この会食の場で、被告人A2は、被告人A1に対して、ブランディング事業の趣旨の説明のために文部科学省の担当者を紹介することを依頼した(なお、それ以外の依頼があったのかについては後に検討する。)。 イ翌同月11日、被告人A1と被告人A2は、東京都新宿にあるQホテルで面会し、その際、被告人A1は、被告人A2に対し、平成29年度ブランディング事業の公募通知(「平成29年度私立大学研究ブランディング事業における『事業計画書』及び『調査回答票』の提出について(通知)」と題する書面。甲50資料2)を交付したが、同通知には、「記入要領等に係るお問い合わせについては、公平性の観点から、原則として電話にてお願いします。なお、その場合であっても、申請内容が事業の趣旨に合致しているか等、個別大学の申請内容に関わるお問い合わせには対応できません」との記載があり、同記載部分に被告人A1がマーカーで着色していた。被告人A1は、文部科学省の担当者を紹介することはできない旨を被告人A2に伝えた。被告人A1との面会後、被告人A2は、「文科ブランディング」「5月20-23日」「素案」と封筒にメモをした(甲64資料1)。 ウ被告人A2は、同月22日、被告人A4に面会を申し入れ、同月25日にA4と面会した(甲53資料2-6)。その後、同日、被告人A2は、C大学においてブランディング事業の事業計画書作成のとりまとめ役を担っていたC1(以下「C1」という。)に対し、事業計画書案の作成に関し指示を与えた。 被告人A2は、同月31日午前、C1から 2は、C大学においてブランディング事業の事業計画書作成のとりまとめ役を担っていたC1(以下「C1」という。)に対し、事業計画書案の作成に関し指示を与えた。 被告人A2は、同月31日午前、C1から事業計画書案を受け取り、同日午後4時48分頃、被告人A1に対し、「ブランディングの書類一応できましたのでお目通- 9 - し頂けますでしょうか?先生のご指示のところへお持ちしますし、お時間があれば遅くてもお目にかかることができれば幸いです。」などと記載したメールを出し、更に被告人A4に電話で連絡を入れ、銀座N(寿司屋。以下「N」という。)において被告人A4に前記事業計画書案等の書類を入れた封筒を預け、被告人A1に渡してほしい旨依頼した。被告人A4は、同年6月1日、被告人A1の文部科学省大臣官房長室を訪れ、前記の事業計画書案を持参した。同日午後4時39分頃、被告人A4は、被告人A2に対し、「今、A1さんにお渡ししました。今週末迄には、A1さんと会って打ち合わせします。」とメールで連絡をし、同月3日、被告人A4は、被告人A1と会った後、被告人A2に対し、「ブランディングの資料は拝見させて頂きました。A1さんとも打合せしました。少し修正が必要な感じですが、どの様にお伝えしましょうか?」と更にメールを出した。同月5日、被告人A4と被告人A2は、Oで面会し、書き込みを入れていた事業計画書案(甲71)が被告人A2に渡された。被告人A4は、同月6日、DのスタッフであるD3(以下「D3」という。)に対し、C大学の作成した事業計画書案について「A1さんには、パクリはいいけど、表紙の表題と図が全く的外れと言われて私の方で修正して伝えて有ります。」とメッセージを送信した。 被告人A2は、被告人A4から書き込みを入れていた事業計画書案を受け取った直後の同月5 はいいけど、表紙の表題と図が全く的外れと言われて私の方で修正して伝えて有ります。」とメッセージを送信した。 被告人A2は、被告人A4から書き込みを入れていた事業計画書案を受け取った直後の同月5日午後7時31分頃、C1に対し、従前の事業計画書案について、「やさしい医科大学は曖昧だ。」「メタボロームはP1大学等が進めているので弱い。」「イメージ図が分かりづらい。」「低侵襲医療」「他大学が追随できない。」「他大学に先導して」「拠点の整備を前面に打ち出して、C大学の行く先、方向性を明記し、ブランドを目指すように」等と修正するよう指示した。同月6日、C1は、被告人A2の指示を受けて被告人A4に修正した事業計画書案をメールに添付して送信したところ、被告人A4は、同日午後9時頃、C1に対して電話で「イメージ図がまだ分かりづらい。」などと言った。 エ同月7日、C大学は、事業計画書等を文部科学省に提出し、同年10月6日- 10 - の事業委員会で支援対象校に選定された。被告人A1は、担当課長に対してあらかじめC大学がブランディング事業で選定されているか結果を連絡するよう指示しており、同年11月6日、C大学が選定された結果が被告人A1に伝えられた。同日、被告人A1は、ブランディング事業の選定結果の公表日である11月7日に先立ち、被告人A2に対し、C大学が選定された旨電話で連絡を入れた。 二男の平成30年度C大学受験と加点等について平成30年2月3日、二男は、C大学医学部医学科入試の第一次試験を受験した。 同月4日に、被告人A2、被告人A3は、医学科学務課長C4(以下「C4」という。)と第一次試験後のプレビューを行い、二男の各科目の合計点は226点であったが、10点を加算し、二男の得点は236点となり、順位は169位となった。 第一次試験の合 学務課長C4(以下「C4」という。)と第一次試験後のプレビューを行い、二男の各科目の合計点は226点であったが、10点を加算し、二男の得点は236点となり、順位は169位となった。 第一次試験の合格ラインは217点であったことから、二男は成績上位者451名に入り、同月7日、二男の第一次試験の合格が発表された。同月8日、被告人A2は被告人A1に対し、二男の合格に関し電話をかけた。 同月10日、C大学医学部医学科入試の第二次試験が行われた。二男の得点は合計301点となり、順位は87位となった。同月11日、被告人A2、被告人A3は第二次試験後のプレビューを行ったが、二男を含め加点の対象となる受験生はなかった。同月13日、被告人A2は、被告人A4に電話をかけ、その後、被告人A4が被告人A1に電話をかけ、被告人A1は、手帳に「450名→ 70番正規2/13 80番補欠調整中」と記した(甲82・2月12日の欄)。 同月14日、被告人A1は、被告人A1の文部科学省大臣官房長室を訪れた被告人A4と相談の上、二男の入試の結果について被告人A1が被告人A2に電話で連絡を入れた。 同日、C大学では、入試委員会等で検討された結果、第二次試験で行われた適性検査等によって5名が不合格とされ、さらにセンター試験利用者8名がセンター試験による合格者とされ、一般入試の合格者枠から除かれた。これらの結果、一般入試での合格者75名中、二男は74位となり、正規合格し、同月17日、正規合格- 11 - 者として発表された。 3 請託を受けたのか否かについて(争点) 争点 について、当裁判所は、第二次I会食において、被告人A2が被告人A1に、平成29年度私立大学研究ブランディング事業の事業計画書の記載等について助言・指導することを依頼する旨の請託をし、被告人A1 点について、当裁判所は、第二次I会食において、被告人A2が被告人A1に、平成29年度私立大学研究ブランディング事業の事業計画書の記載等について助言・指導することを依頼する旨の請託をし、被告人A1がこれを承諾したと認定したので、以下その理由について説明する。 第二次I会食における会話について前記のとおり第二次I会食において録音されていた被告人A1、被告人A2、被告人A4の会話の内容(甲46の音声データ。以下「音声データ」という。)によれば、前記のとおり、被告人A2が文科省の担当者の紹介を被告人A1に依頼しただけではなく、以下のとおり、二男の平成29年度C大学の入試に関して加点をすることができなかった経過が暗に示された上に、被告人A2から、被告人A1に対し、ブランディング事業に関してC大学が同事業の支援対象校に選定されるよう、同大学が同省に提出する「事業計画書」の記載等について助言・指導するなどの有利かつ便宜な取り計らいを受けたい旨の申し入れがあり、被告人A1、A4もそれを容認していたとみるのがごく自然な内容のやり取りがされていたと認められる。 ア二男やブランディング事業に関する会話の概要音声データ等の関係各証拠によれば、①被告人A1と被告人A4が被告人A2を上座に座らせる旨発言があった上、被告人A1が、「申し訳ないです。」「本当に申し訳ございません。」「今、浪人してますので、頑張っていると思いますので。」などとC大学の入学試験に不合格となった二男について言及すると、被告人A2も「来年は、絶対大丈夫だと思いますので。」「今回の子息の内容が書いてありますので。」「やっぱ、もうあと5点、10点欲しいなとね。」「ま、そこの差が実はちょっとね、頑張れるか頑張れないかで。」などと言って、被告人A1に対して二男の平成29年度入試の第 内容が書いてありますので。」「やっぱ、もうあと5点、10点欲しいなとね。」「ま、そこの差が実はちょっとね、頑張れるか頑張れないかで。」などと言って、被告人A1に対して二男の平成29年度入試の第一次試験の各科目の点数、合計点、順位を記載した書面(甲63)を渡したことが認められる。 - 12 - さらに、この会話に続いて、②被告人A1は、被告人A2からブランディング事業に関する資料を示され、被告人A2が理事長を務めるC大学の研究科課長に指導をして欲しい旨依頼したことに対し、「基本的にはですね、これを良いとか悪いとかっていうのは言えないんですよ。」「したがって、この制度の趣旨はどういう趣旨なのかっていうことは説明できたりするんですね。それと前回落ちたときのどこが悪かったというのも説明できる。」「これの書き方を指導するっていうことは違反になってしまう。それは無理なんですね。そうではなくて、この制度の趣旨をよく理解してもらって、Cで考えているものについてちょっと意見交換をしてもらって、それが趣旨に合っているかどうかっていうようなことはサジェスチョンできると思う。 そういうやりとりをすれば段々と見えてきます。」などと言い、C大学の担当者としてC1が紹介されると、「先生これお預かりして。私が直接C1さんに電話するのもなんなんですね。ちょっとA4さんを通じてあれしますんで。」「私が担当の者をですね、誰がいいかちょっと見繕いますので。」「A4さんに誰のところへ行ってくれって言いますから。」「電話入れればすぐちゃんと対応するように事前に言っておきますんで。」「あればっかりは書き方でもう変わってきちゃいますからね。その添削っていうのもものすごく重要ですので。」「正直申し上げると前のやつはかなり厳しい状況でしたよね。もしC1さんがやっていて、その延長 。」「あればっかりは書き方でもう変わってきちゃいますからね。その添削っていうのもものすごく重要ですので。」「正直申し上げると前のやつはかなり厳しい状況でしたよね。もしC1さんがやっていて、その延長線だと、また今年も無理だと思いますね。いやまあ正直ですね。」「おそらく公募にあった文書の読み方が的が外れてるんだと思います。そういう感じでしたので。そこのところをどういう風にやっていくかっていうのがやっぱ一番重要ですからね。」「研究の中身をやるんじゃなくて、ブランディングを高めていくっていうその目的に合ったことを何をするかっていうのが重要なんで。それを全く医学の事を知らない人が審査している可能性もありますんで。」「誰が見ても分かるようにしなきゃいけないっていうのと、その制度の趣旨がどこがあっているかっていうのと。中身はどれも良いんです、大学がやって出してくる、そこで何が自分のところは日本一なんだっていうピークをですね、どうやって示すかっていうところが一番のあれです。自分のところはここが- 13 - 尖っています、他と違うんですっていうのが。」「ピークは何かっていうのをきちっと示すっていうのと、制度の趣旨に合っているかってところを、ぜひちょっと、あの指導させますんで。」「そこでもう一つ重要なのが、その事業で、日本で素晴らしいんだ、というのと同時にもちろん世界で。世界の中でこれを広げていくんだということですね、日本で重要だということと、同時に世界にこう発信するんだという、どういう波及効果があるかってことも示さないといけない。」などと言った上、「ちょっと二つお願いがあってですね。一点は私の名前を絶対、その、この人には言わないでほしい。」「そうするともう指導できなく、お話しすることができなくなっちゃう。」「あと二点目はですね、ブランディングの中 っと二つお願いがあってですね。一点は私の名前を絶対、その、この人には言わないでほしい。」「そうするともう指導できなく、お話しすることができなくなっちゃう。」「あと二点目はですね、ブランディングの中のP2だとかP3、医科系の大学が取ってるところがありますので公開されていますので調べて勉強しておくことが重要。」などと言った上、さらに自らがP4大学で競争的資金をとるために「いかに良い申請書を書くか。」、「私が添削した。」、「私がP4大学にいたときはずっと申請書を取らしてきた。」などと述べ、「P4大学は自分が文科省に戻った後にも申請書を見てくれといっぱい持ってくるが、一切見れないが、パラパラ見ると大体赤点だった。」などと言い、C1を文科省の担当者と面会させる際の方法について、被告人A4は、「自分が同行する。」「その方が文科省に入ったことも、記録、私と行けば残らないで入れますから。その方が私はいいかなと。私それはもう私のさじ加減で。 その方がお互い多分、良いと思いますんで。普通に行くとどこに行くって書かないといけないから。私と行ったら書かなくていいですから。」と言い、被告人A1が「一番良いのを付けますから。そこは任せておいて下さい。私が指名しておきますから。」と言い、被告人A4が「ダメな人が来ると大変ですから。」と言うと、被告人A1は「そりゃだめだけど、普通にいったら、ま、これは聞かないですからね。」と言い、被告人A4が「そうです、聞かないです、聞かないです、頑張ってくださいって、ホームページに趣旨は書いてますからって言われて、それでおしまいです。」などと言い、その後も被告人A1は、「タイトルで大体分かる」、「日本一なのか世界一なのか分かるようなタイトルを入れる」、「50字以内で全てが分かる」、「科研費など競- 14 - 争的資金との大きな 言い、その後も被告人A1は、「タイトルで大体分かる」、「日本一なのか世界一なのか分かるようなタイトルを入れる」、「50字以内で全てが分かる」、「科研費など競- 14 - 争的資金との大きな違いは専門家が見るか否かである」などと言った上、「この件はじゃあ承りましたので、じゃあ、近々ちょっと連絡して。」などと発言したことが認められる。 イ会話の趣旨の検討 の会話の趣旨前記①、②の会話の趣旨を検討すると、①については、既に認定したとおり、第一次I会食及びMでの会食において、被告人A1は二男が医学部受験をするが、C大学も話題となっていたことを話していたこと、その後、被告人A2が被告人A1の自宅に願書を送ったり、さらに第一次試験の発表後には、被告人A4を通じてわざわざ電話で第一次試験の試験の科目ごとの結果を伝えたりした経過があったことが認められる。このような経過において、被告人A2は、公判廷において、要旨、第一次I会食において、被告人A1に対し、二男の大学入試について「ある程度いい線行っていたら何とかなりますよ。」と言ったこと、被告人A2は、第二次I会食の目的に関し、既にMでの会食の際に、被告人A1から、「ブランディング事業に関してああいう書き方では厳しい」、「ピント外れでした」などと言われ、その年は選定されないんだと思ったが、次を見越して「来年は事前に指導をお願いするかもしれない。」と言ったところ、被告人A1も「分かった」旨言ってくれたこと、さらに、二男の平成29年度の入試の結果について、被告人A4に伝えた際には、「400点満点で200点で1051位だった、申し訳ないけど今回は無理だ。1000番を超えると難しい。1次の足きりが230点だったから、もうちょっと取ってくれればいいね。」と説明し、A4も「それじゃ仕方ない。100 200点で1051位だった、申し訳ないけど今回は無理だ。1000番を超えると難しい。1次の足きりが230点だったから、もうちょっと取ってくれればいいね。」と説明し、A4も「それじゃ仕方ない。1000番台じゃあな。500番とは違いますしね。」と答えたことを供述している。 このA2の公判供述は、被告人A1が、被告人A4を通じて被告人A2から二男の成績を伝えられた際、手帳に、「400点 200点 1000番230 1051番 200 英語× 270 800人~900人」と記載していること(甲76)によく整合し、信用できる。なお、被告人A1は、230点が第一次試験の合- 15 - 格ラインであり、230点取れば1000番台になる、と被告人A4から聞いた旨供述するが(第16回公判被告人A1の速記録66、67頁)、客観的には230点を取れば454番となるのであり(甲77)、そのような虚偽の事項を被告人A2が被告人A4を通じてわざわざ連絡する理由もなく、信用性に乏しい。 以上のとおり、信用できる被告人A2の前記公判供述等によって認められる第二次I会食に至るまでの経過からすると、第二次I会食の目的は、ブランディング事業に関して事業計画書の書き方について被告人A1から助言・指導を得ることにあると共に、二男の医学部入試に関して併せて話題とすることにあったものといえ、被告人A2はもちろん、被告人A1、被告人A4も同様の認識であったものといえる。 実際、音声データに照らしてみても、被告人A1が、被告人A2の快気祝いだという第二次I会食の会が始まって開口一番に「申し訳ないです。」「本当に申し訳ございません。」「今、浪人してますので、頑張っていると思いますので。」などとC大学の入学試験に不合格となった二男について何の前提の会話もないのに唐突に話し出した 「申し訳ないです。」「本当に申し訳ございません。」「今、浪人してますので、頑張っていると思いますので。」などとC大学の入学試験に不合格となった二男について何の前提の会話もないのに唐突に話し出したこと、被告人A2も「来年は、絶対大丈夫だと思いますので。」「今回の子息の内容が書いてありますので。」「やっぱ、もうあと5点、10点欲しいなとね。」「ま、そこの差が実はちょっとね、頑張れるか頑張れないかで。」などと言い、予め用意した二男の平成29年度入試の第一次試験の各科目の点数、合計点、順位を記載した書面(甲63)を渡しているのであって、このような会話の内容は、第二次I会食において二男の医学部入試が話題になることが予め想定されていたこととよく整合するだけではなく、前記の被告人A2の公判供述にあるように、予め被告人A1の二男に関して得点が低すぎたために加点できなかったということを被告人A1と被告人A2が共通して認識していたことを前提にするとよく理解できるものといえる。 とりわけ、前記の手帳の記載や、信用できる被告人A2の前記公判供述によれば、被告人A1は、既に被告人A4を通じて二男の第一次試験の結果として400点満点中200点であることを伝えられており、被告人A4を通じて順位の繰り上げが- 16 - できなかった経過も併せて伝えられていたものと推認できることからすると、二男の得点は200点であり、第一次試験の合格ラインである230点には30点足りないにもかかわらず、「あと5点、10点」あればとする被告人A2の発言内容は、合格ラインに30点足りなくても、5点、10点あれば、加点するなどの有利な取り計らいをして合格することができるということを暗に伝える趣旨の発言と認められ、そのような趣旨の発言であることは被告人A1及び被告人A4において理解 くても、5点、10点あれば、加点するなどの有利な取り計らいをして合格することができるということを暗に伝える趣旨の発言と認められ、そのような趣旨の発言であることは被告人A1及び被告人A4において理解できたものと考えられる。 これらによれば、被告人A1はもちろん、同席した被告人A4においても、二男の一般入試の得点が合格最低点に達しない場合には、被告人A2が暗に加点等の優遇措置を講じて、被告人A1の二男を不正に合格させることができることをよく認識していたとみるのが自然な内容の会話がされていると認められる。 これに対し、被告人A1は、C大学において縁故受験生に対して不正入試を行っていることなどは知らなかった旨供述する。しかしながら、文部科学省では、私立大学に対し平成14年10月1日付け文部科学事務次官名義の「私立大学における入学者選抜の公正確保等について」と題する書面を通知している(甲128)。同書面によれば、かねて入学に関する寄付金の収受の禁止等について各大学に留意を促しており、一部の私立大学において入学者選抜の公正を疑わしめるような事態があったことを指摘しているところ、当時、被告人A1は文部科学省高等教育局に配属されていたのであって、前記の書面の内容は当然に把握していたものと認められる上、前記書面が発出された平成14年以前のもっと古い時期から、私立大学の入学に際して高額の寄付金が求められる実態があったことを被告人A1自ら第二次I会食の席上で話題にしており、そのような不正入試がその後も実質的には継続している可能性があり得ることはその職務としての知識、経験として認識していたものといえる。被告人A1は、文部科学省の幹部である自分に対して大学の不正工作を言うことは常識では考えられないなどとも述べているが、そもそも前記の書面には「合格発表前に個 識、経験として認識していたものといえる。被告人A1は、文部科学省の幹部である自分に対して大学の不正工作を言うことは常識では考えられないなどとも述べているが、そもそも前記の書面には「合格発表前に個別に保護者等関係者と接触するなど、いやしくも入学者選抜の公正確- 17 - 保に疑惑を招くような行為を現に慎むこと。」と指摘されているにもかかわらず、その後、被告人A1がそのような制約を無視して被告人A1の息子の合否の確認をするために被告人A2と直接連絡をとるなどしていたことに照らして、被告人A1の前記供述は採用できない。 の会話の趣旨次いで、前記②によると、第二次I会食の時点において、被告人A1は、被告人A2から、ブランディング事業の申請に際し、文科省の担当者からC大学の担当者に対し、ブランディング事業の趣旨について説明を行うのみならず、C大学の担当者と意見交換を行い、ブランディング事業の趣旨に合っているかどうかサジェスチョン、すなわち暗示、示唆ないし提案できるとした上で、前年度の事業計画書の内容が趣旨に合っていないこと、タイトルの付け方、審査委員を意識した記載内容にすることなど具体例を挙げて教示し、このような問い合わせのため文科省の担当者を求めても通常は断られる内容のものであるが、一番良い担当者を付けるなどと発言した上、C大学の担当者らが文科省に来庁する際には、被告人A4が同行して来庁したことが記録に残らないようにする、などとし、被告人A4もそれらの発言に同調する発言をしていると認められる。 これらの被告人A1、被告人A4の一連の発言内容からすれば、単にブランディング事業の趣旨説明をするのみならず、通常は問い合わせても断られるような実質的な記載内容に関する具体的な助言・指導を受けられると容易に理解できるのであり、被告人A1 言内容からすれば、単にブランディング事業の趣旨説明をするのみならず、通常は問い合わせても断られるような実質的な記載内容に関する具体的な助言・指導を受けられると容易に理解できるのであり、被告人A1、被告人A4、被告人A2においても同様の認識でいたもので、被告人A2が、平成29年度ブランディング事業の事業計画書の記載等につき助言・指導することを依頼し、被告人A1がこれを承諾したとみるのが自然な内容の会話がされていると認められる。 これに対し、被告人A1は、C大学の担当者と文科省の担当者との間での意見交換をするとの部分は、文部科学省の担当者が制度趣旨を説明し、C大学の担当者はC大学の自らしようとする事業内容を念頭に置いて聞くだけであって、その内容を- 18 - 説明するということはない、などと供述するが、意見交換をするという発言内容から明らかにかけ離れている。また、リップサービスで一番良い担当者を付けるなどと言った、アポ取りがスムーズに行くようにした趣旨であるとも述べているが、発言時には被告人A4も同調しており、現に翌日には被告人A1が被告人A2に対し担当者の紹介はできない旨わざわざ伝えるという行動に出ていることに照らすと、単に酒に酔った上でのリップサービスの類であったとは考え難い。被告人A1は、検察官による反対質問において、文部科学省の大臣官房長であるという立場で前記の発言をした趣旨がどう捉えられると思うか、との質問に対しては質問の趣旨が分からないなどと明らかに回答を避けているが、被告人A2が前記の発言を受けて記載内容についても指導を受けられると期待することを想像すらしなかったというのは不合理というほかない。 実際、被告人A2は、公判廷において、文科省の高官の人が私たちに教えるのは役職柄まずいものなので、私の名前を出さないように られると期待することを想像すらしなかったというのは不合理というほかない。 実際、被告人A2は、公判廷において、文科省の高官の人が私たちに教えるのは役職柄まずいものなので、私の名前を出さないようにと言っているのではないか、私たちだけにそうしてくれるのかなと思った、低侵襲の、そういうもので世界一のブランで、といった話は、低侵襲のタイトルでやるならそういうような状況に向かうことが一番大切であることを教えてくれたりするものであり、全体的にはブランディングの全体的な趣旨を特にA1さんの意見を言ってくれているものと思っていたと述べており、被告人A1の発言を会食の場を盛り上げるためだけの中身のない発言とは受け取らずに、被告人A1から助言・指導を受けられるものと期待していたものと認められる。 ウ小括以上検討したところによれば、第二次I会食の際に、被告人A2は、同人が二男のC大学の入学試験に関して、その得点が合格最低点に達しない場合には、加点等の優遇措置を講じることができることを、被告人A1との共通認識とした上で、被告人A1に対し、平成29年度ブランディング事業の事業計画書の記載等について助言・指導することを依頼をし、被告人A1がこれを承諾したとみるのが自然な内- 19 - 容の会話がされていたと認められる。 ブランディング事業計画書の記載等についての助言・指導の有無についてア第二次I会食及びその翌日(平成29年5月11日)そもそも第二次I会食の際にも、被告人A1は、前記のとおり、タイトルの付け方、審査委員を意識した記載内容にすることなど細々とした具体例を挙げて教示している上、被告人A2の公判供述によれば、第二次I会食の翌日にQホテルにおいて被告人A1と面会したところ、「被告人A1はブランディング事業計画書の作成に関し、ブラ など細々とした具体例を挙げて教示している上、被告人A2の公判供述によれば、第二次I会食の翌日にQホテルにおいて被告人A1と面会したところ、「被告人A1はブランディング事業計画書の作成に関し、ブランディング事業の全体的な骨格のことを言及した。その骨格は非常に大切だから、第三者を入れてきちんとしなきゃいけない、おおもとの素案をちゃんと検討して書かなければいけない、理事長も交えて始めから検討しなければいけない、ということだった。また、前年度にブランディング事業で選定されたところを参考にして、それと同じレベルかそれ以上に、と言われた。ブランディング事業の特殊性があり、個性があるべきだとか、ブランディング事業の重要性、制度というものを強調して、日本一とか世界一とかそういうものに属するような書き方を検討しては、等と言われた。」旨供述している。このような発言自体、ブランディング事業計画書の記載等について相応に具体的な助言・指導をしているものといえる。 イ平成29年5月12日以降その後も、前記のとおり、①被告人A2は、平成29年5月22日、被告人A4に電話連絡をして面会を求めた上、同月25日にA4と面会した直後、C1に対し、1週間後には事業計画書案を作成するよう指示し(甲69資料4、C1証言64頁)、C1が事業計画書案を作成して被告人A2に対し提出すると、同月31日、被告人A1に対し、「ブランディングの書類ができたのでお目通しをしてほしい」旨のメールを出した上、被告人A4と面会して事業計画書案等を入れた封筒を預け、被告人A1に渡して欲しい旨依頼したこと、②同年6月1日、被告人A4が被告人A1の文部科学省大臣官房長室を訪れ、前記のブランディング事業計画書案を持参し、同日午後4時の被告人A4の被告人A2に対するメールでは、「今、A1さんに- こと、②同年6月1日、被告人A4が被告人A1の文部科学省大臣官房長室を訪れ、前記のブランディング事業計画書案を持参し、同日午後4時の被告人A4の被告人A2に対するメールでは、「今、A1さんに- 20 - お渡ししました。今週末迄には、A1さんと会って打ち合わせします。」と送信し、更に同月3日、被告人A4は、被告人A1と会った後、被告人A2に対し、「ブランディングの資料は拝見させて頂きました。A1さんとも打合せしました。少し修正が必要な感じですが、どの様にお伝えしましょうか?」等というメールを送信したことが認められる。 前記の一連のメールの記載内容や被告人A1らの行動からすれば、被告人A1が、被告人A4を通じて被告人A2が依頼した事業計画書案を受け取り、その記載内容について被告人A4と打ち合わせたことが優に推認できる。また、被告人A2は、被告人A1と第二次I会食の翌日である同年5月11日にQホテルで会った際、前記のとおりブランディング事業の事業計画書について相応に具体的な助言・指導を受け、被告人A2はその際のメモとして「5月20-23日」「素案」「同じレベル」「特殊がある」等を記載しているところ(甲64資料1)、まさに「5月20-23日」の期間内である5月22日に、前記のとおり被告人A4に電話連絡をして面会を求め、同月25日の被告人A4との面会後には直ちにC1に事業計画書案の作成を指示しているのであるから、被告人A2による事業計画書作成の着手が被告人A1との打合せに関連しているものであることが前記の記載からも裏付けられる。 もっとも、被告人A1と被告人A2との間の直接のやりとりがなく、いずれも被告人A4が介在しているものの、この点についても、既にみたとおり、第二次I会食において被告人A4が間に立つ旨発言している上、被告人A4は、 告人A1と被告人A2との間の直接のやりとりがなく、いずれも被告人A4が介在しているものの、この点についても、既にみたとおり、第二次I会食において被告人A4が間に立つ旨発言している上、被告人A4は、まさに前記の連絡をしていた同年6月6日、同じくDの取締役であったD2(以下「D2」という。)に対し、「本日、C大学ブランディング(文科省認定)を取る為にA2理事長がA1さんにお願いしている件で、私が全て間に入って進めてる」などとメールを送信していることに照らすと(甲99資料4-2)、被告人A1と被告人A2が直接連絡をするのではなく、被告人A4が間に入って連絡を取り持っていたとしても何ら不自然ではない。 さらに、被告人A2は、同月5日、被告人A4から、書き込みを入れた事業- 21 - 計画書案(甲71)を渡された上、被告人A4から助言を受けたことが認められるところ、当該助言の内容は、前記事業計画書案に対して「やさしい医科大学は曖昧だ」「メタボロームはP1大学等が進めているので弱い」「イメージ図が分かりづらい」「低侵襲医療」「他大学が追随できない」「他大学に先導して」「拠点の整備を前面に打ち出して、C大学の行く先、方向性を明記し、ブランドを目指すように」といったものであることが認められる(証人C1の公判供述、甲69資料6)。 この被告人A4の助言の内容について検討すると、確かに、平成29年6月5日にDの従業員であるD1(以下「D1」という。)やD3が事業計画書について書き込みをしたり発言したりしたものと整合するものもあり(証人D1、同D3の公判供述)、これらは被告人A1によるものではなく、被告人A4の判断によりされた助言であるかのようにも思われる。 しかしながら、既に認定したとおり、同月6日に被告人A4がD3に対して送信したメッセ 供述)、これらは被告人A1によるものではなく、被告人A4の判断によりされた助言であるかのようにも思われる。 しかしながら、既に認定したとおり、同月6日に被告人A4がD3に対して送信したメッセージには、事業計画書案について「A1さんには、パクリはいいけど、表紙の表題と図が全く的外れと言われて私の方で修正して伝えて有ります。」と記載されている。そのメッセージの記載内容からすれば、被告人A1が事業計画書案の内容を確認し、その内容について同メッセージに記載された趣旨の内容の助言をしたものとみるほかなく、被告人A4が被告人A2に助言した内容には、被告人A1からの助言を踏まえた内容が含まれていると優に推認できる。 以上からすれば、被告人A1が、被告人A4を通じて被告人A2が依頼したC大学のブランディング事業の申請に係る事業計画書案の記載内容を確認し、更にそれを踏まえてその記載内容について助言・指導をしたものと認められる。 なお、被告人A4の弁護人は、前記のとおり、被告人A2が、平成29年5月31日に、被告人A1に対し事業計画書案を見ることを依頼する旨のメールを送信しているのであるから、事業計画書案について被告人A1から助言・指導を受けたのであれば、被告人A2は謝礼のメールを被告人A1に送信するはずであるのに、そのようなメールを送信したのは被告人A4に対してのみであることからすると、- 22 - 被告人A1が助言・指導したとは認められない旨主張する。しかしながら、前記のとおりブランディング事業の公募通知の記載から、申請内容について個別対応ができないことを知っていた被告人A1において、5月31日のメールを受信した後は、ブランディング事業に関する被告人A2とのやり取りについて、被告人A4を通じて行うことを徹底したとしても何ら不自 対応ができないことを知っていた被告人A1において、5月31日のメールを受信した後は、ブランディング事業に関する被告人A2とのやり取りについて、被告人A4を通じて行うことを徹底したとしても何ら不自然ではないと考えられることからすると、被告人A2が謝礼のメールを被告人A1に送信するはずであるなどとはいえず、この点に関する被告人A4の弁護人の主張は採用できない。 ウ助言・指導の有無に関する被告人A1、被告人A2、被告人A4の各公判供述について 被告人A1の公判供述について被告人A1は、公判廷において、要旨、第二次I会食の翌日である同月11日、ブランディング事業の公募通知をプリントアウトしたところ、大学からの問い合わせには電話のみ対応とされており、そのようなものを見たのは初めてであり非常に驚き、当該箇所に青いマーカーで線を引き、被告人A2に担当者を紹介することもできなくなったと思い、被告人A2に電話し、同日午後6時半にQホテルで会い、ブルーマーカーで線を引いてあるところを説明し、担当者紹介をすることはできなくなり、私自身も以後ブランディング事業の件について被告人A2と会うことができなくなった旨伝え、被告人A2は了解したものの、同人は誰かに見てもらえないかと再三発言していたことから、被告人A4に相談してみてはどうかと提案し、その後、C大学の事業計画書案の記載内容について助言・指導したことはないと供述する。 しかしながら、被告人A1の前記公判供述は、捜査段階の供述内容から明らかに変遷している。すなわち、被告人A1は、前記のとおり、公募通知を見て大変驚愕し、その日の夕方に慌てて被告人A2と会い、ブランディング事業の件で関わることを断ったとして極めて強い印象に残る事実があった旨述べているにもかかわらず、捜査段階においては前記のように を見て大変驚愕し、その日の夕方に慌てて被告人A2と会い、ブランディング事業の件で関わることを断ったとして極めて強い印象に残る事実があった旨述べているにもかかわらず、捜査段階においては前記のように驚いて被告人A2に対応したことは直ちには思い- 23 - 出すことができなかったなどと述べているが(第20回公判被告人A1の供述調書82~85頁)、そのような強い印象に残る事実を直ちに思い出すこともできず、供述することができなかったというのは、自らに対する嫌疑を晴らす上で重要な内容であることも考え合わせると、不自然といわざるを得ない。 また、被告人A1は、前述のQホテルで被告人A2に対し担当者の紹介を断ったことなどについて、被告人A4には知らせなかった旨述べている。しかしながら、前記のとおり被告人A1自身が大変に驚き、即座に被告人A2に断りを入れたという経過がありながら、被告人A4にそのことを一切連絡しなかったというのも不自然である。すなわち、被告人A1は、そもそも第二次I会食においてC大学の担当者であるC1に対して文科省の担当者を被告人A4を通じて連絡を入れるとしていたものであるし、その後も前記で認定したとおり、被告人A2からの事業計画書に関して確認をしてほしいとのメールを受けた上、さらに被告人A4を通じて被告人A2から事業計画書案を渡されそうになったにもかかわらず、被告人A4に対して前記のQホテルにおける被告人A2に対する依頼を断った事実などを全く話さなかったというのは考え難い。 以上によれば、Qホテルで被告人A2に対しブランディング事業の件で関わることはできない旨伝え、その後C大学が同事業の申請をするまで関わっていない旨の被告人A1の前記公判供述は、信用性に乏しい。 なお、被告人A1の弁護人は、平成29年6月1日午後6時に、被告 件で関わることはできない旨伝え、その後C大学が同事業の申請をするまで関わっていない旨の被告人A1の前記公判供述は、信用性に乏しい。 なお、被告人A1の弁護人は、平成29年6月1日午後6時に、被告人A4が被告人A2から受け取った事業計画書案が、DにおいてPDF化されていることから、同日日中に被告人A4が被告人A1と面会した際に事業計画書案を同人に渡したことはないと認められ、被告人A1が事業計画書案を受領しなかったことは、同案の記載について助言・指導することを被告人A1が引き受けなかったことを裏付けている旨主張する。 確かに、弁護人が主張する事業計画書案のPDF化の事実は証拠上認められる。 しかしながら、被告人A4は同年5月31日夕刻に事業計画書案を受け取っていた- 24 - のであるから、同人において、翌日に被告人A1のもとに事業計画書案を持参するまでの間に、そのコピーを作成していたということも考えられるのであり、PDF化の事実が、被告人A1の公判供述の信用性に関する前記判断を左右するものではない。その他被告人A1の弁護人が種々主張する点を考え合わせても、前記判断は揺らがない。 被告人A2の公判供述について被告人A2も、公判廷において、要旨、被告人A1とQホテルで会った際に、担当者を紹介することなどを断られ、その後、被告人A1から、事業計画書案について助言・指導をしてもらったことはなかったと供述する。 しかしながら、被告人A2は、公判廷において、前記のような供述をする一方で、捜査段階では、前記Qホテルでの公募通知に関するやりとりについては、被告人A1がマーカーで引いてある部分を示しながら「ここに書いてあるとおり私は対応できないことになっている、私が関与していることは絶対に言わないでね。」などと言い、前日のIの会食の際にも ついては、被告人A1がマーカーで引いてある部分を示しながら「ここに書いてあるとおり私は対応できないことになっている、私が関与していることは絶対に言わないでね。」などと言い、前日のIの会食の際にもA1の名前を絶対に出さないで欲しいと要請したことについて重ねて要請してきた、と供述していたに過ぎず、自ら供述が変遷していることを認めている。客観的証拠から検討しても、前記で認定したとおり、被告人A2が、同月31日に被告人A1に対し、「ブランディングの書類ができたのでお目通しをしてほしい」旨のメールを出し、その後も被告人A1が関与することを前提とした連絡を被告人A4との間で繰り返していたことは既に認定したとおりであるところ、これらについて、被告人A2は、Qホテルで被告人A1から今後被告人A4に相談するように言われたが、その後、被告人A4にそのことで連絡をすることもなかったし、被告人A1に断られたことを被告人A4に隠し、ブランディングのことも相談しなかった、被告人A4から被告人A1と相談しているとのメールがあったが、被告人A4が自分を喜ばせるためにそのようなメールを送ってきたものと思っていたなどと述べているが、メールの記載内容と明らかに矛盾している上、その内容も整合性のない場当たり的なものといわざるを得ず、被告人A1から事業計画- 25 - 書案について助言・指導してもらったことはなかった旨の公判供述は信用性に乏しいというほかない。 被告人A4の公判供述について被告人A4も、公判廷において、要旨、5月31日、被告人A2とNで会った際に事業計画書案を受け取ったが、被告人A1は指導はできないとしていたし、被告人A2から、書き方の指導を求められ無理だと思ったものの、同人がL3の支援者なので、むげに断ることもできず、被告人A1がだめなら自分の 書案を受け取ったが、被告人A1は指導はできないとしていたし、被告人A2から、書き方の指導を求められ無理だと思ったものの、同人がL3の支援者なので、むげに断ることもできず、被告人A1がだめなら自分の方で処理できると思っており、翌日被告人A1から事業計画書案を見ることを断られたものの、D1やD3と打ち合わせてコメントを入れた。被告人A1の名前があったほうが、被告人A2が安心するかなと思っていたが、実際には被告人A1には事業計画書案について一切伝えていなかった。二枚舌のようには結果的になるが、政治家と官僚との間に入って仕事をするときの調整能力として何ら悪いことをしているつもりもないし、それが自分の役割だと思った、などと供述する。 しかしながら、被告人A4の前記公判供述も、要するに、被告人A1に断られていながら、被告人A2に対して被告人A1が事業計画書を見ているかのように装ったというものであって、それ自体不自然であるとの感を免れないものであるし、そのような対応は、L3の大切な支援者であったという被告人A2に対するものとしても不合理である。また、被告人A4の公判供述は、既に認定した一連のメールの記載内容において、被告人A1が事業計画書を見ることを前提としたやりとりをしていることとも整合しない。とりわけ、D3に対して「A1さんには、パクリはいいけど、表紙の表題と図が全く的外れと言われて私の方で修正して伝えて有ります。」とメッセージを送信しているが、D3に対して二枚舌を使う必要性は証拠上見出せない。以上指摘した諸点に照らすと、被告人A4の前記公判供述は、不自然・不合理なものというほかなく、信用性に乏しい。 争点 についての結論以上検討したところによれば、被告人A1は、第二次I会食から、C大学におい- 26 - て事業計画書等を提出 自然・不合理なものというほかなく、信用性に乏しい。 争点 についての結論以上検討したところによれば、被告人A1は、第二次I会食から、C大学におい- 26 - て事業計画書等を提出するまでの間に、同大学において作成した事業計画書案の記載内容について助言・指導したと認められるところ、そもそもC大学側から何らの依頼もなく、かつ何らの見返りもないのに被告人A1が同大学のために、公募通知でできないとされている助言・指導をあえてするような理由は想定できないことに加え、前記のとおり、第二次I会食において、被告人A2が二男の入試に関し加点等の優遇措置をとることができることが共通認識となっている中で、被告人A2が、事業計画書の記載内容について助言・指導を依頼し、それを被告人A1が承諾したとみるのが自然な内容の会話がされていたと認められることを考え合わせると、第二次I会食において、加点等の優遇措置が見返りになるという共通認識の下で、被告人A2が被告人A1に、平成29年度ブランディング事業の事業計画書の記載等について助言・指導することを依頼する旨の請託をし、被告人A1がこれを承諾したと推認できる。 4 10点を加算した理由及び趣旨について被告人A2は、公判廷において、二男の第一次試験の点数に10点を加点したのは、ブランディング事業とは関係なく、被告人A1から紹介され、運動や勉強のできる人材として欲しかったからであり、二男が入学することで、被告人A1とも関係ができ、文科省との人脈ができることを期待していた旨供述し、被告人A2の弁護人も、被告人A2にとって文科省の高官である被告人A1と何らかの人脈を持っておくことは私立大学として重要かつ有用なことであること、また、C大学にとって有用な人材の確保という観点から優遇するために他の縁故受験生と A2にとって文科省の高官である被告人A1と何らかの人脈を持っておくことは私立大学として重要かつ有用なことであること、また、C大学にとって有用な人材の確保という観点から優遇するために他の縁故受験生と同様に二男に対して加点したに過ぎず、被告人A1によるブランディング事業の事業計画書の記載等についての助言・指導に対する謝礼の趣旨を含むものではない旨主張する。 しかしながら、既に認定したとおり、被告人A2が第二次I会食において被告人A1と会食をした目的は、ブランディング事業に関して事業計画書の書き方について被告人A1から助言・指導を得ることなどにあると共に、加点等の優遇措置を講ずることができることを前提にした上で二男の医学部入試に関して併せて話題- 27 - とすることにあったこと、その後被告人A4を通じて被告人A1からC大学のブランディング事業の事業計画書の作成に実際に助言・指導を受け、平成29年11月7日にC大学が平成29年度のブランディング事業の支援対象校に実際に選ばれたこと、被告人A2自身、平成30年度の縁故受験生リストとして二男の記載をしたものについて、「K(ブラン)」と記載し、その連絡先として被告人A4の携帯電話番号を記載していたことからすると、被告人A2が二男の試験の点数に10点を加算した趣旨には、前記のとおり請託を受け、それに応じた助言・指導に対する謝礼の趣旨が含まれていたと推認できる。被告人A2は、縁故入学の依頼のあった受験生に関しては、2000万円もの寄付金を受け取ることを目安としていたと認められることに照らすと、単に文科省の幹部との人脈形成の目的のみで加点をしたものとは考え難く、この点に関する被告人A2の前記公判供述は信用できない。 5 二男の得点に加算がされて正規合格したことに関する被告人A1、被告人A2の認 省の幹部との人脈形成の目的のみで加点をしたものとは考え難く、この点に関する被告人A2の前記公判供述は信用できない。 5 二男の得点に加算がされて正規合格したことに関する被告人A1、被告人A2の認識等について10点の加算について携帯電話の通信履歴(甲95)によれば、第一次試験後のプレビューが行われた翌日である平成30年2月5日から6日頃、被告人A1と被告人A4は、それぞれの携帯電話で複数回連絡を取り合い、同月6日には被告人A2が被告人A4に電話をかけ、同月7日の教育委員会、臨時教授会、合格発表があった後、同日午後8時31分、被告人A2が被告人A4に電話をかけ、その6分後の同日午後8時37分、被告人A4が被告人A1に電話をかけたことが認められる。両名の通話時間は約13分であり、同日午後8時52分、被告人A1が被告人A2に電話をかけたが、通話時間は0.5秒となっている。被告人A1は、その直後、再度被告人A4に電話をかけている。 翌同月8日午前7時17分、被告人A2は被告人A1に電話をかけ(通話時間約1分59秒)、さらに9分後に、被告人A1から被告人A2に電話をかけている(通話時間約24秒)。 - 28 - 以上の連絡の時期及び状況に加え、既に認定したとおり二男の入学試験について加点等の優遇措置をとることができることが被告人A1らにおいて共通認識になっていたと認められることに照らすと、前記の一連の連絡は、二男の入学試験について優遇措置を受けられるかどうかも含めて二男の成績に関して確認をするため、被告人A4を介して、被告人A1と、被告人A2との間で連絡を取っていたものと推認できる。また、被告人A2らにおいて10点を加算した趣旨は既に認定したとおりであるところ、被告人A1に対していわば恩義を感じ、被告人A1との関係を深めたいと 人A2との間で連絡を取っていたものと推認できる。また、被告人A2らにおいて10点を加算した趣旨は既に認定したとおりであるところ、被告人A1に対していわば恩義を感じ、被告人A1との関係を深めたいと考えている被告人A2において、その恩義に対する謝礼をしたことを被告人A1に認識してもらおうとするのはごく自然な心理・行動であると考えられることからすると、被告人A2において、被告人A1に対し、10点の加算とまで明確にしたか否かはともかく、二男の入学試験について加点等の優遇措置をとった旨を伝えたと推認することができる。 正規合格についてア被告人A1の認識について第二次試験から二男が正規合格したとの発表までの事実関係は、前記のとおりと認められるほか、さらに、第二次試験後のプレビューが行われた平成30年2月11日の後の同月13日午後9時8分、被告人A2から被告人A4に電話があり、その3分後である同日午後9時11分、被告人A4が被告人A1に電話をかけている。 さらに入試委員会が行われた同月14日、午後零時40分に被告人A1が被告人A4に電話をかけ、その後、同日午後5時14分、被告人A1が被告人A2に電話をかけたことが認められる。 このような連絡の時期及び状況に照らして、二男の入学試験に関する連絡が、被告人A4を介して被告人A1と被告人A2との間でされたものと推認できる。加えて、被告人A1が、その手帳に「450名→ 70番正規2/13 80番補欠調整中」と記していることが認められるところ(甲82、2月12日の欄)、当該記載箇所やその内容に加え、前記のとおり、第二次試験後のプレビューが行われた同- 29 - 月11日の後の同月13日午後9時8分に被告人A2から被告人A4に電話があり、その3分後の同日午後9時11分、被告人A4が被告人A 記のとおり、第二次試験後のプレビューが行われた同- 29 - 月11日の後の同月13日午後9時8分に被告人A2から被告人A4に電話があり、その3分後の同日午後9時11分、被告人A4が被告人A1に電話をかけた経過があることからすれば、当該記載はまさに第二次試験後のプレビューを踏まえた連絡を受けて記載されたものと推認できる。 そして、被告人A2の公判供述によれば、同月13日当時、被告人A2は、二男の得点が第二次試験の得点を加え合計301点で、同人の順位が87位となっており、C大学の一般入試での正規合格者は75名であることから、二男が補欠合格をすることは確実であると認識していたと認められることに加え、被告人A1の前記の手帳の記載にある「80番補欠調整中」との記載部分は、前記のとおり87位であった二男について、80番台であって補欠合格することを伝えられたこととよく整合する記載であると考えられる上に、被告人A1自身、前記の被告人A2の電話を受けて被告人A4が電話をかけてきた同月13日午後9時11分から同16分まで会話をした直後、同日午後9時25分にインターネットで検索をして「C大学補欠合格」とのキーワードを入力したことが認められる(甲96)ことを考え合わせると、被告人A2から被告人A1自身が二男が補欠合格できることの連絡を受けたと推認することができる。 さらに、同月14日午後5時14分、被告人A1が被告人A2に電話をかけ、2分58秒の通話がされているところ、被告人A2は、公判廷において、第二次試験後のプレビュー後に電話があり、被告人A1に対し「正規であれば70番台まで、そして補欠はそれ以降。」「補欠の上の方に入る。」と言ったところ、被告人A1から、「正規じゃないんですか。」と言われ、「それは難しい。」「正規になるかは入試委員会次 し「正規であれば70番台まで、そして補欠はそれ以降。」「補欠の上の方に入る。」と言ったところ、被告人A1から、「正規じゃないんですか。」と言われ、「それは難しい。」「正規になるかは入試委員会次第だ」と言ったと思う旨供述する(第29回公判被告人A2の速記録39頁、第31回公判被告人A2の供述調書67頁)。 この被告人A2の公判供述は、補欠合格できる旨伝えられていた被告人A1が、合格発表の前にわざわざ被告人A2に対して電話をかけたという経過を合理的に説明するものである。また、既に認定したとおり、被告人A1がC大学のブランディ- 30 - ング事業の申請に際し、事業計画書の記載内容について助言・指導をしていた経過があったことや、後記のとおり正規合格には補欠合格にはない利益があると認められることからすれば、単なる補欠合格ではなく、正規合格者の地位をも求めることは何ら不自然ではない。 以上のとおりであるから、前記の被告人A2の公判供述は信用することができ、少なくとも、被告人A1が、二男が正規合格か補欠合格となるか関心があり、被告人A2に対し、「正規じゃないんですか。」と言って被告人A2に正規合格を希望する旨伝えたが、正規合格になるか否かは入試委員会次第であり、被告人A2が正規合格者となることを確実にすることは難しい旨応答したことが認められる。このような被告人A1と被告人A2との応答に加え、前記のとおり、第二次I会食において、二男の得点が合格最低点に達しない場合には、加点等の優遇措置を講じることができることが、被告人A1と被告人A2との共通認識となっており、被告人A1がブランディング事業の事業計画書の記載等について助言・指導したこと以外に、被告人A2において謝礼の趣旨で二男の得点に加点をすることとなるような取り計らいを被告人A1が行っ となっており、被告人A1がブランディング事業の事業計画書の記載等について助言・指導したこと以外に、被告人A2において謝礼の趣旨で二男の得点に加点をすることとなるような取り計らいを被告人A1が行ったとは証拠上うかがわれないことからすると、被告人A1は、前記助言・指導に対する謝礼として、被告人A2により加点等の優遇措置が講じられ、その結果正規合格者の地位の付与を受けるに至ったという可能性を認識していたと認められる。 イ被告人A2の認識について被告人A2については、前記のとおり、二男が補欠合格できるとの認識を有していたことは認められるものの、被告人の二男に対する加点は10点で、それ以外の縁故受験生に対してそれ以上の加点をしたものもある上、被告人A1から「正規じゃないんですか」と電話で言われた際にも、「それは難しい」などと述べるにとどまっており、二男に正規合格者の地位を与えようという強い意図があったとまでは認め難い。 しかしながら、被告人A2は、被告人A1に対し、正規合格は難しい旨述べてい- 31 - るものの、他方で、「正規になるかは入試委員会次第だ。」とも述べているのであり、入試委員会の結果次第では正規合格をする可能性もあることは認識していたものといえる。実際、第二次試験後のプレビューにおいて二男の得点は301点であり、総合順位がその時点で87位であったことからすれば、75位までの間は12名のみであり、その前年にはセンター試験利用による合格者であったことや適性試験等で不合格とされたことなどから合計10名が除外されたことなどもあったことからすると、75位までに入る可能性もあると認識していたとしても何ら不自然ではない。そして、被告人A2が、被告人A1との関係上、ブランディング事業の事業計画書の記載内容について助言・指導を受け ことからすると、75位までに入る可能性もあると認識していたとしても何ら不自然ではない。そして、被告人A2が、被告人A1との関係上、ブランディング事業の事業計画書の記載内容について助言・指導を受けた立場からすれば、被告人A1に対する謝礼である趣旨がより明確になるために正規合格になることを希望していなかったとは考え難く、入試委員会の検討の結果、センター試験利用による合格者や適性試験等で不合格とされるものが多く生じるなどして二男が正規合格をするのであればそれを希望こそすれ、その結果を望んでいなかったものとは考えられない。 よって、被告人A2は、正規合格者の地位を付与することも条件付きではあるものの認識認容していたものと認められる。 被告人A1らの公判供述について被告人A1は、平成30年2月13日午後9時11分に被告人A4から電話があった際の被告人A2からの会話の内容として、第一次試験の合格者が450人、第二次試験では70番が正規合格、80番台が補欠合格になるが、その時点でまだ正規合格も補欠合格も決まっていない旨聞いたとして手帳にメモをした、同月14日に被告人A4が大臣官房長室に来た際、被告人A2の電話の趣旨を改めて話し合った上、二男の受験の結果も出ているかもしれないと思って被告人A2に電話をかけたが、被告人A2はだみ声で何を言っているのか分からず、70、正規、80、補欠という単語と、結果がまだ出ていない、ということを聞いた旨供述しており、被告人A4もそれに沿う供述をしている。 しかしながら、C大学の事業計画書案の記載について助言・指導したか否かとい- 32 - う本件において根幹をなす争点について、既に検討したとおり、被告人A1及び被告人A4の公判供述はいずれも信用できないことからすると、平成30年2月13日及び同月14日の 否かとい- 32 - う本件において根幹をなす争点について、既に検討したとおり、被告人A1及び被告人A4の公判供述はいずれも信用できないことからすると、平成30年2月13日及び同月14日の被告人A2との電話による会話の内容についても、被告人A1及び被告人A4の各公判供述は、信用性に乏しいといわざるを得ない。 また、被告人A1らの前記公判供述によれば、被告人A2は、第二次試験も終わり、合格発表まであと4日という時期(平成30年2月13日)の夜に、二男の合否に関する何らの実質的な情報提供をすることなく、C大学の一般入試での正規合格者が75名であるという、その学生募集要領(甲54資料1)にも明記され、C大学において70番が正規合格、80番台が補欠合格になるとの自明の事実を伝えるために、被告人A4を通じてわざわざ被告人A1に伝える連絡を入れたということになるが、そのような被告人A2の行動は不自然・不合理というほかない。 以上によれば、この点に関する被告人A1の前記公判供述及びそれに沿う被告人A4の公判供述は信用性に乏しい。 6 被告人A2の検察官調書について以上の認定事実は、既に詳述したとおり、第二次I会食における録音内容や、当事者のメールの記載内容などの客観的証拠、更に信用性が認められる被告人A2の公判供述の一部などに基づいて認定したものである。 そして、以下のとおり、その事実認定は、被告人A2の検察官調書によっても補強されている。 被告人A2の検察官調書の内容について被告人A2は、検察官に対して概略以下のように供述する。 私は、C大学が平成28年度のブランディング事業の申請をしており、その対象に選んでいただきたいという気持ちもあって被告人A4を通じて面会を申し入れ、平成28年9月、Iで被告人A1に対してブランディング は、C大学が平成28年度のブランディング事業の申請をしており、その対象に選んでいただきたいという気持ちもあって被告人A4を通じて面会を申し入れ、平成28年9月、Iで被告人A1に対してブランディング事業の対象校に選定して欲しい旨伝えたところ、被告人A1は、P4大学の副学長をしていた際の補助金獲得の実績を話してその新聞のコピーを見せ、さらに、二男がC大学に行きたがって- 33 - いるとして高校野球で活躍したことの新聞記事も示した。私は縁故入学をさせていることを被告人A1も知っているものと思い、「いい線までいけば、なんとかしますよ。」と言った。もっとも平成29年度の一般入学試験では、二男の順位が低すぎたために加点することができず、被告人A4に対して「A1さんのご子息は、400点満点で200点しか取れず、順位は1051位だったから、今回は申し訳ないけど無理ですよね。1000番以内ならね。1000番を超えるとちょっと難しいね。 一次試験の足切りが230点だったから、もうちょっと点を取ってくれていればね。」などと話した。第二次I会食では、被告人A1に「あと5点、10点欲しいなとね。」と言い、二男が200点であったから、それに5点、10点を足した205点から210点であれば、第一次試験の合格点の230点に達しなくても点数加算するなどの配慮をすることを示した。第二次I会食の翌日、Qホテルでも被告人A1はIと同様にブランディング事業の申請に関して助言・指導をしてくれたが、他方で、公募通知を示して被告人A1自身が直接対応できないことになっているので、関与していることを絶対に言わないでください、と言われた。また、ブランディング事業の申請の素案を被告人A1に渡す期限の目安として「5月20-23日」と言われたのでそれをメモした。ところが、私はその期限を守 ていることを絶対に言わないでください、と言われた。また、ブランディング事業の申請の素案を被告人A1に渡す期限の目安として「5月20-23日」と言われたのでそれをメモした。ところが、私はその期限を守ることができなかった。同月23日被告人A4と連絡を取り、同月25日に会った際、進捗状況をA1さんが心配していることを聞き、被告人A4から、ブランディング事業の事業計画書の作成がどの程度まで進んでいるかを確認され、5月末までの提出を求められた。そこで、その頃、私は、C1に指示して事業計画書案の作成を指示し、その後、同月31日、被告人A1に対して「ブランディングの書類一応できましたので、お目通し頂けますでしょうか?」とメールを出した。被告人A4から連絡があり、被告人A1が忙しいことから代わりに被告人A4に預けることになり、その後、被告人A4を通じて被告人A1が添削した修正箇所をメモしてC1に伝え、改訂版をC1から受け取ると被告人A4に再度送って確認してもらい、文部科学省に申請した後は被告人A4にもお礼のメールを出していた。その後、平成29年11月には、被告人- 34 - A1から、ブランディング事業の選定の結果の発表の前に電話で連絡があり、「C大学は取りましたから。」と言われた。私は、被告人A1への恩返しやお礼の意味でも、二男を点数加算して合格させようと考えた。学長である被告人A3に対しても、ブランディング事業の申請について見てくれている人がいると伝えていた。平成30年度の一般入試の第一次試験の前にも、被告人A3に対して文部科学省の官僚の子息でK君がC大学を受験することを伝えたことがあった。縁故受験生リストの「1 963 K(ブラン)」との記載は、ブランディング事業でお世話になったのでそのことを書いていた。その後、被告人A4を通じて電話で第一 がC大学を受験することを伝えたことがあった。縁故受験生リストの「1 963 K(ブラン)」との記載は、ブランディング事業でお世話になったのでそのことを書いていた。その後、被告人A4を通じて電話で第一次試験に通ったことを伝えたところ、被告人A1から電話があり、翌日折り返して電話をした際に「ある程度の配慮はいたしました。」などと伝えた。第二次試験後のプレビューでは二男は87位であり、その後被告人A4には「二男が80番台におり、間違いなく補欠合格できる地位にいること、正規合格の75番以内に入るかどうかは入試委員会で決められる。」などと伝えたところ、その翌日、被告人A1と電話で話をした際、被告人A1に対しては「ご子息の第二次試験の結果ですけど、80番台で、補欠の1番グループに入っています。この順位でしたら、必ず受かりますから。」などと言い、二男が補欠合格できることを伝えると、被告人A1は「補欠はちょっとね。正規の方がいいですよ。正規でお願いします。」と言って補欠合格ではなく、正規合格ができるように求めてきた。私は、その時点で入試委員会の結果を聞いていなかったことや、この時期では順位を上げることは難しかったので、「これからは正規までは難しいかもしれません。」と言った。その後、C4学務課長から、二男が75番以内に入ったことを伝えてもらい、被告人A3からも同旨の報告を受けた。 被告人A2の検察官調書の信用性について被告人A2の前記検察官調書における供述は、既に認定した客観的証拠等に基づく認定事実とよく符合又は整合しており、十分に信用することができる。被告人A2は、公判段階では部分的に供述が変遷したものもあるものの、平成29年度入試では、ブランディング事業においてC大学が選定されなかったことや、二男の試験- 35 - の点数が低かったことか 人A2は、公判段階では部分的に供述が変遷したものもあるものの、平成29年度入試では、ブランディング事業においてC大学が選定されなかったことや、二男の試験- 35 - の点数が低かったことから加点をしなかったが、平成29年5月の第二次I会食の場で被告人A1に対し事業計画書の記載内容について助言・指導することを求め、被告人A1がその求めに応じて、被告人A4を介して記載内容について助言・指導をしてくれたので、それに対する恩返しの気持ちもあって、平成30年度入試の二男の試験の点数に加点し、第二次試験後に二男が補欠合格できる旨被告人A1に伝えたところ、被告人A1から正規合格にするよう依頼されたという中核部分については、捜査段階における取調べの当初から一貫しており、被告人A2が公判において供述を変遷させるに至った部分については、その変遷の合理的な理由は示されていないし、被告人A1から事業計画書案について助言・指導を受けていない旨などの公判段階で変遷した供述部分が信用できないことは既に説示したとおりである。 したがって、前記3ないし5における事実認定は、信用できる被告人A2の捜査段階の供述によっても裏付けられ、補強されているといえる。 被告人A2の検察官調書に関する証拠排除の主張についてア弁護人の主張の要旨弁護人らは、前記の被告人A2の検察官調書について、被告人A2との関係では任意性を欠き、その余の被告人との関係では、刑訴法321条1項2号書面としての要件該当性を欠く旨主張するのでこの点についても検討する。 まず、任意性に関して、被告人A2の弁護人は、被告人A2に対する取調べにおいて、検察官は被告人A2の行為が贈賄罪になると決めつけ、暗に認めて反省しなければ身体拘束を避けられないとほのめかして迎合的にさせていた上、その取調べに A2の弁護人は、被告人A2に対する取調べにおいて、検察官は被告人A2の行為が贈賄罪になると決めつけ、暗に認めて反省しなければ身体拘束を避けられないとほのめかして迎合的にさせていた上、その取調べにおいて一部の録音録画がされているに過ぎず、ほとんどの取調べの録音録画が欠けているところ、録音録画がされていないことは、何らかの心理的、言語学的見地による操作がされていることを示している旨主張する。 次いで、刑訴法321条1項2号の相対的特信情況がなかったとして、被告人A3の弁護人は、①本件当時、被告人A2は77歳と高齢であり、②健康状態を見ても、平成28年12月には心臓の手術を受け、本件取調べ当時は経過観察のため通- 36 - 院していたり、平成30年2月には緑内障の手術を受けたが、右目の視野が8割欠損し、左目の視野にも欠損が生じ、回復が見込めないまま本件の取調べを受けていたり、平成26年頃からうつ病の症状が出ており、本件当時も心療内科にも通院しており、心臓の薬や心療内科で処方された薬、糖尿病の薬など全部で8種類の薬を毎日服用し、だるさを感じ、自分の意見をはっきり述べたり、相手の言うことを否定したりすることができない精神状態になっていた、③被告人A2に対する取調べは、初日の平成30年6月18日には8時間弱、同月19日には約5時間など、その後も連日にわたって長時間の取調べが行われ、肉体的にも精神的にも追いつめられ、記憶にあるか否かを吟味せずに取り調べに応じていた、④検察官は、加点が賄賂であることを前提として取調べを行い、また、当時の弁護人が検察官の主張を争うことを放棄し、起訴猶予を見込み、否認すれば逮捕されるかもしれないと述べていたこともあり、被告人A2は迎合的に供述をしていた、などと主張する。 イ検討まず、被告人A2の公判供述 の主張を争うことを放棄し、起訴猶予を見込み、否認すれば逮捕されるかもしれないと述べていたこともあり、被告人A2は迎合的に供述をしていた、などと主張する。 イ検討まず、被告人A2の公判供述等によれば、前記①、②の治療経過や症状があったことが認められる。 他方で、被告人A2に対する取調べの経過は、捜査報告書(甲131、弁40)のとおり認められる。被告人A2に対する取調べは、いずれも在宅事件として捜査され、平成30年6月18日から同年7月24日までの間に合計26日間取調べが行われている。そのうち、2日以上の連日の取調べが行われたのは、同年6月18日から同月21日までの4日間、同月26日から28日までの3日間、同年7月8日から17日までの10日間、同月19日から20日までの2日間、同月22日から24日までの3日間である。 もっとも長い時間の取調べが行われたのは、初日である同年6月18日の7時間39分であるが、これには昼食やそれに伴う休憩等が含まれたものと推認できる。 また、同日を含め4時間以上の取調べが行われたのは6日間あり、この内さらに6時間以上の取調べが行われたのは3日間であるが、いずれも供述調書が作成されて- 37 - おり、読み聞け等のために時間を要したものと推認できる。それ以外の取調べは3時間以上4時間未満が7日間、2時間以上3時間未満は8日間、1時間以上2時間未満は3日間、1時間未満は2日間である。 以上を見ると、26日間の取調べのうち、取調べ時間が4時間未満のものが20日を占めており、その内訳も前記のとおりかなり短いものも含まれている。しかも、取調べがなかった同年6月22日、24日、25日、29日、7月1日、2日、4日、5日、7日、18日、21日の合計11日間は、当然のことながら在宅事件であるために身柄の拘束 のも含まれている。しかも、取調べがなかった同年6月22日、24日、25日、29日、7月1日、2日、4日、5日、7日、18日、21日の合計11日間は、当然のことながら在宅事件であるために身柄の拘束などもなく自宅等で過ごすこともできたと認められる。 そして、最も長時間の取調べが連続して行われた同年6月18日、19日には取調べの最後の部分に限り、録音録画がされているところ、同録音録画によれば、検察官は、いずれも言いたくないことは言わなくてよいと告げていることが認められる。 加えて、同月18日の記録によれば、映像上、被告人A2は、「正直に話をした。」と言い、供述調書の内容も間違いがないと発言している。さらに検察官の質問に対して、「平成28年、平成29年度にブランディング事業の申請をした。平成28年度は通らなかったが、文部科学省の官房長のA1さん、コンサルタント会社の経営者のA4さんと私の3人で食事をとった、ブランディング事業の申請をC大学がしていること、被告人A1の息子がC大学を受験することが話題となり、その際に、私が、『いい成績だったら、何とかなりますよ。』と話した。 『かなりよい線だったら』と調書にはしたが、同じである。私が言ったことに間違いはない。A1さんの息子さんは、受験したが、受からなかった。一次試験が1000番ちょっとで受からなかった。平成29年5月にA1さん、A4さんと3人で会食をした。A1さんに息子さんの成績を渡したと思う。A1さんからは、『書き方とかがきちっとしていないと、趣旨に合っていないと難しいよ』と言われた。A1さんの息子さんがC大学を再度受験することも話題となった。ブランディング事業の選定の発表の前の日にA1さんから電話があり、『C大学はかなりいい線にいる。』と言われた。なんとか行- 38 - くのかな 子さんがC大学を再度受験することも話題となった。ブランディング事業の選定の発表の前の日にA1さんから電話があり、『C大学はかなりいい線にいる。』と言われた。なんとか行- 38 - くのかな、と思った。実際に対象になった。A1さんの息子さんはC大学を受けて、一次試験を確か百七十何番だった。200番以内で通った。A3にも、『文科省関係のKっていうのが受けるよ。』と言い、A3も『分かりました。』と答えていた。A3は、『いい線にいるから、他校に行く人とか、適性試験ではじかれる人がいたら、正規合格もする。』と言った気がする。先ほどの取調べでは、二次試験で成績も上がった、とA3は言ったと発言した。申し訳ない気持ちがある。ブランディング事業について補助金が欲しいとお願いしたこと、かなりいい線行けばと言ったことが影響したかと思う。本当のことは話していると思う。」などと述べている。 平成30年6月19日の録音録画19日の記録をみると、「体の調子は普通です。 受験者に対して一次試験後に加算するプレビューのことを昨日話せなかった。いろいろな観点から正直に話したい。第一次試験の終わった後、学長と2人で試験結果を見て、その状況をみて、我々が推薦する人が、入学できるようにかさ上げする。 平成30年度もかさ上げをした。私も一緒にやった。A1の息子さんが一般入試の点数を10点加算した。だいたい220点台、240番ぐらいだったのが、230点台になり、170、180番台になった。プレビューは場所はいろいろがあるが、学長室だったと思う。」「やっぱり真実を語りたい。昨日喋れなかったことがあった。 C大学に非常に、多大なご迷惑をかけていますから、ここであったことを話して、きちんとした結果を得たいと思った次第です。」「留守電が入っていたので、直接渡したA1先生にお電話をし かったことがあった。 C大学に非常に、多大なご迷惑をかけていますから、ここであったことを話して、きちんとした結果を得たいと思った次第です。」「留守電が入っていたので、直接渡したA1先生にお電話をした。最終発表の2日前だと記憶している。 『今、試験結果、80番台におります。これは補欠の1グループにおります。』と話すと、A1は『補欠ではね。』『正規になりませんかね。』というようなことだった。 『正規合格がいい。』というような話だった。『今からじゃ難しい状況にあるから。』『まあ、でもこれでも必ず入りますから。』と話した。C4に確認したら、適性試験とかで抜ける人がいるから、うまく行くかもしれません、と言っていた。最終的には75番以内に入って正規合格になった。A1さんが希望していたとおりの内容になった。」と発言し、供述調書の内容について、「ほぼ間違いない」、と発言し、取調べ検察官が、「ほぼって- 39 - 言うと?」と言うと、被告人A2は笑いだし、検察官が「間違っているなら言ってもらっていいけど。」と言うと、被告人A2は「いやいや」と微笑み、「私がときどき間違えるんですけど、ほぼそのとおり言っている、という意味です。」と発言している。 前記の映像記録によれば、被告人A2の健康状況が悪化しているような様子は見受けられない。既に検討したとおり、取調べの初日である同年6月18日は、休憩時間なども含めて7時間39分の取調べが行われ、翌19日には4時間59分の取調べが行われており、2日間の合計の取調べ時間でみればこの2日間が最も長い取調べをしたものであるが、同月19日の取調べの最後の状況に関する前記の録画内容における被告人A2の様子においてさえ、弁護人が指摘するような被告人A2が疲弊しきった姿などは見当たらない。また、被告人A2は、取調べの初日 るが、同月19日の取調べの最後の状況に関する前記の録画内容における被告人A2の様子においてさえ、弁護人が指摘するような被告人A2が疲弊しきった姿などは見当たらない。また、被告人A2は、取調べの初日には黙っていたプレビューの存在などを2日目に明らかにしたところ、その際に自ら正直に話した動機も述べており、供述の経過も自然である。弁護人は否認して逮捕されることを恐れ、迎合的に供述をしていたなどと指摘するが、被告人A2自身、取調べ開始から2日目にあたる同月19日の時点で、「やっぱり真実を語りたい。昨日喋れなかったことがあった。C大学に非常に、多大なご迷惑をかけていますから、ここであったことを話して、きちんとした結果を得たいと思った次第です。」などと述べていることに照らし、同月18日、同月19日の取調べにおいて、弁護人が主張するような供述態度であったとはうかがわれない。 更にその内容をみても、被告人A2は、被告人A1に対してC大学への進学を希望しているという被告人A1の息子が受験するに際して、平成29年度の入試の時点から、「いい成績だったら、何とかなりますよ。」、あるいは「かなりよい線だったら」などと発言し、さらに、平成30年度の一般入試の合格発表前に被告人A1と電話をした際の内容として、被告人A2が、二男に関して、「80番台におります。 これは補欠の1グループにおります。」と言い、被告人A1が「補欠ではね。」「正規になりませんかね。」「正規合格がいい。」と言った発言をしたことを述べているとこ- 40 - ろ、同月18日、同月19日に作成された被告人A2の各検察官調書(乙39、40)の内容も合わせてみれば、これらがその後の供述調書等を通じて一貫した内容であることも明らかである。 以上によれば、被告人A2に対する取調べについて、検察官に 告人A2の各検察官調書(乙39、40)の内容も合わせてみれば、これらがその後の供述調書等を通じて一貫した内容であることも明らかである。 以上によれば、被告人A2に対する取調べについて、検察官による、強制、拷問、又は脅迫に当たる事実はなく、前記の取調べ時間等を見ても、不当に長く抑留または拘禁されたものと匹敵するような経過も見当たらない。その他、任意にされたものではない疑いを抱かせる事情は見当たらず、被告人A2の前記の自白調書の任意性に疑いはない。 また、被告人A2の公判供述における否認供述の内容が不自然・不合理であることは既に検討したとおりである。被告人A2が、信用できない供述をしている部分に照らすと、被告人A1ら他の被告人との間において矛盾が生じないように努めていると認められるのであって、被告人A2が被告人A1らの否認供述の内容を踏まえて供述しているものと認められる。 とりわけ、被告人A2は、結果的に裏口入学をしたとして誹謗中傷されている、二男に対して心から申し訳ない旨その心情を吐露しているところ、二男は、SNSなどを通じて裏口入学をしたなどと強い非難を受け、大学を退学するように罵られたり、死ね、一家心中しろなどと強烈な脅迫を受けているというのであり、被告人A2が、かかる世間からの誹謗中傷を受けている二男やその家族の精神的苦痛を慮り、公判段階で供述を変遷させたものと認められる。 以上によれば、被告人A2が公判段階において外部の事情を顕著に意識して供述していることは明らかであり、外部の事情によって強い影響を受けることのなかった捜査段階の供述状況が相対的にみて特に信用すべきものであると認められる。 ウ結論その他、弁護人らの主張を踏まえて検討しても、刑訴法321条1項2号、同322条に該当することに疑いを入れる余地はなく、 の供述状況が相対的にみて特に信用すべきものであると認められる。 ウ結論その他、弁護人らの主張を踏まえて検討しても、刑訴法321条1項2号、同322条に該当することに疑いを入れる余地はなく、被告人A2の検察官調書について証拠能力が認められる。この点に関する弁護人らの主張はいずれも理由がない。 - 41 - 7 賄賂たり得る利益か(争点) 検討前記認定のとおり、二男は、平成30年度のC大学医学部医学科の入学試験において、第一次試験の結果総合226点であったが、被告人A2、被告人A3が10点を加算し、236点となり、第一次試験に合格し、さらに第二次試験が行われ、総合301点となり、87位となったが、適性検査等により5名が不合格となり、さらにセンター試験利用者8名がセンター試験による合格者として一般入試の合格者枠から除かれた結果、一般入試での合格者75名中74位となり、正規合格したことが認められる。 C大学の医学部医学科学生募集要項(甲54)によれば、医学部医学科90名を募集し、その内75名を一般入学試験により、15名をセンター試験利用入学試験によることとし、一般入学試験においては、第一次試験の学力試験(理科200点、数学100点、英語100点、配点合計400点)の成績によって判定し、第一次試験合格者を定め、第二次試験は、第一次試験合格者に対し、小論文、適性検査及び面接を行い、第一次試験の成績及び調査票を加味して総合的に判定し、合格者を決定するとしており、試験の成績を無効とする不正行為として、試験の公平性を損なう行為をすることとしている。 被告人A2、被告人A3が、二男の一般入学試験において、第一次試験の合計226点に、10点を加算したことは、学力試験の成績によって第一次試験合格者を定めるとした募集要項に反するも こととしている。 被告人A2、被告人A3が、二男の一般入学試験において、第一次試験の合計226点に、10点を加算したことは、学力試験の成績によって第一次試験合格者を定めるとした募集要項に反するものであり、二男に対し、第一次試験、さらにそれを前提とする第二次試験についても不相当に有利に扱うものであることは明らかであり、賄賂たり得る利益に該当する。 また、前記の加点により正規合格者の地位を得たことにより、C大学の入学手続をする資格が与えられ、入学手続をすることにより、6年間にわたる医学教育を受けることができるのであって、このような入学手続資格を得られる正規合格者の地位を与えられたことが賄賂たり得る利益に該当することも明らかである。 - 42 - 被告人A1の弁護人の主張についてこれに対し、被告人A1の弁護人は、二男は入学試験の点数の加算を受けた事実はあるが、加算されなかったとしても補欠として繰り上げ合格できたのであるから、賄賂たり得る利益がない旨主張する。 確かに、証拠(弁41)によれば、二男は、10点の加点がない場合は、第二次試験の小論文の得点を加算した後の順位は150位となり、さらに成績上位者のうち9名が適性検査等で不合格となり、8名がセンター利用試験で合格していたため併願していた一般入試の合格者枠から除かれることから、二男は133位となる。 そして、第二次試験後の成績の順位が159位までの受験生が繰り上げ合格となっていたことからすると、二男は10点の加点がなかったとしても補欠合格をしていたものと認められる。 そのことを前提に、被告人A1の弁護人は、正規合格者の地位を得ることの利益は、せいぜい補欠合格者が正規合格者となるまでの間の時期的な早期性だけであり、名目上の利益でしかないなどと指摘する。 しかしながら、補欠合 、被告人A1の弁護人は、正規合格者の地位を得ることの利益は、せいぜい補欠合格者が正規合格者となるまでの間の時期的な早期性だけであり、名目上の利益でしかないなどと指摘する。 しかしながら、補欠合格者が繰り上がって正規合格となるためには、そもそも正規合格者から辞退者が出るという偶然の事情に左右されるのであり、補欠合格とされたことのみでは後の補欠合格発表日に入学資格が付与される可能性がある立場にあるに過ぎず、確実に入学資格が得られるような立場にあるものではない。 そして、そのような立場の違いにより、早期に正規合格者の地位を得ることには、経済的な利益もあるものと評価できる。被告人A1によっても学費が比較的安いとしているC大学でさえ、入学手続においては、入学金100万円、授業料250万円、教育充実費250万円など合計757万8700円を入学手続の際に一括して納入することが求められる(甲54)。一般に医学部への受験に際しては、他の大学も併願して受験することも考えられるところ、志望校の正規合格者の地位を早期に得ることは、例えばいわゆる滑り止めとなる他大学への不要な高額の入学金等の納付を回避することができるのであり、経済的にも利益があると認められる。 - 43 - この点について、被告人A1の弁護人は、入学金等は返還を受けることができる旨主張する。確かにC大学の募集要項にも入学金を除いて返金に応じる旨明記されている。また、民事訴訟を提起するなどして入学金そのものも返還を求められる場合も考えられる。 しかしながら、仮に事後に入学金等も含めて返還を得られる可能性があるとしても、志望校の正規合格者の地位が得られなければ、補欠合格から繰り上げの連絡があるまでの間、先行して到来する第2志望等の大学への入学金等を納付し、さらに志望校に繰り上げ合格し られる可能性があるとしても、志望校の正規合格者の地位が得られなければ、補欠合格から繰り上げの連絡があるまでの間、先行して到来する第2志望等の大学への入学金等を納付し、さらに志望校に繰り上げ合格した場合を想定して別途入学金等も準備しなければならない事態が生じることは当然に予想されるのであり、志望校について正規合格者の地位を早期に得ることは、一時的にではあれ、そのような多額の現金を用意しなければならない事態を回避する経済的な利益があることは明らかである。 以上指摘した点に加え、前記のとおり、被告人A1が、被告人A2に対し、補欠合格ではなく正規合格となることを求めていることも考え合わせると、正規合格者の地位を得ることの利益が賄賂性を否定すべきほどの名目上の利益にすぎないなどとは考えられず、被告人A1の弁護人らの主張は採用できない。 被告人A4の弁護人の主張について被告人A4の弁護人は、被告人A2、被告人A3は10点を加算したにすぎず、正規合格者となったのは二男が第二次試験の点数が良かったことと、正規合格者の定員75名の枠から除外された受験生が13名に上り、例年になく多かったという偶然の結果、正規合格者の枠の内、下限である74位2名の内の1人になったに過ぎないとして、10点を加点したこと自体は本来は補欠合格者の地位を得られる程度のものに過ぎず、正規合格者の地位を付与するほどのものではなかったとして、賄賂たり得る利益ではなかったと主張する。 しかしながら、証拠によれば、正規合格者の定員75名のうち、平成28年度の入学試験では8名(センター試験利用合格者3名、適性検査等の不合格者5名)、平成29年度の入学試験では10名(センター試験利用合格者4名、適性検査等の不- 44 - 合格者6名)が除外されたところ、前記のとおり、平成30年 利用合格者3名、適性検査等の不合格者5名)、平成29年度の入学試験では10名(センター試験利用合格者4名、適性検査等の不- 44 - 合格者6名)が除外されたところ、前記のとおり、平成30年度は13名(センター試験利用合格者8名、適性検査等の不合格者5名)が除外されたことが認められ、例年に比べて正規合格者から除外された者が多かったことが認められるが、平成30年度は前年に比べて3名程度増えていたに過ぎない。例年と全く異なる前提であったとする弁護人の主張には疑問があるし、客観的に見れば10点の加点をすることで順位が繰り上がり、正規合格者の枠に入ったことが明らかであり、正規合格者の地位を得られるまで順位を上げるほどの利益があったことの評価を左右するものともいえない。前記のとおり、浪人期間中に受験勉強に励んだと認められる二男の第一次試験の合計得点の増加が前年度の得点と比較して26点であることに照らしても、10点の加算自体が小さなものではないことは明らかである。 この点に関する被告人A4の弁護人の主張は理由がない。 8 職務関連性の有無について以上によれば、判示のとおり、被告人A1は、文部科学省大臣官房長の地位にあった当時に、被告人A2から平成29年度ブランディング事業に関し、C大学が文部科学省に提出する「事業計画書」の記載等について助言・指導することの請託を受け、それに応じて助言、指導をしたと認められる上、その後、その謝礼として二男に対し、平成30年2月4日、同試験の点数の加算を受け、同月17日、同試験の正規合格者の地位の付与を受けたことが認められる。 そこで、前記請託の対象となった事業計画書の記載等について助言・指導をすることが、賄賂罪における職務行為又は職務密接関係行為に当たるか否かについて、以下検討する。 この点につい が認められる。 そこで、前記請託の対象となった事業計画書の記載等について助言・指導をすることが、賄賂罪における職務行為又は職務密接関係行為に当たるか否かについて、以下検討する。 この点について、被告人A1の弁護人らは、事業計画書の記載等について助言・指導をすることは、当時の被告人A1の文部科学省の大臣官房長の職務行為の対象ではなく、職務に関して賄賂を収受したことには該当しない旨主張する。すなわち、文部科学省組織令によれば、文部科学省には大臣官房の他に高等教育局をはじめ6局等が置かれ(同組織令2条、甲10)、その内大臣官房には官房長が置かれ- 45 - ており(同組織令11条1項)、被告人A1は官房長としての職務は認められるものの、ブランディング事業は、高等教育局の所管であり(同組織令52条)、さらにブランディング事業の支援対象校の選定については、事業委員会で審査決定されるものであり、また、同事業における補助金に関する決裁も高等教育局長の専決事項であり、被告人A1には一般的職務権限がそもそもなく、事業計画書の記載等について助言・指導をすることは、被告人A1がかつてP4大学副学長時代に多くの公募事業採択をした際に得た個人的な知見に基づく私的行為として行われたものであり、大臣官房長の本来の職務行為の公正及びその公正に対する社会的信頼を損なうものでもなく、職務密接関係行為でもない旨主張する。 確かに、ブランディング事業の所管部局が高等教育局であり、同事業における補助金に関する決裁が高等教育局長の専決事項であることなどは弁護人が主張するとおりであり、支援対象校の選定に大臣官房は何ら関与せず、事業計画書は前記のとおり選定の際の資料として用いられるものである。 しかし他方で、大臣官房は、文科省の所掌に係る経費及び収入の予算、決算及び おりであり、支援対象校の選定に大臣官房は何ら関与せず、事業計画書は前記のとおり選定の際の資料として用いられるものである。 しかし他方で、大臣官房は、文科省の所掌に係る経費及び収入の予算、決算及び会計並びに会計の監査に関することを所掌すること(文部科学省組織令3条1項14号)から、補助金が補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下「補助金適正化法」という。)等の関連法令に基づいて適正かつ効率的に交付・支出されるよう、以下のとおり、ブランディング事業の補助金交付の前後を通じて複数の場面で監査の形で関与していると認められる。 まず、高等教育局長による補助金交付決定から、現に補助金が交付される、あるいは補助金の額の確定に至るまでという、補助金交付事務が終了するまでの間には、大臣官房が事前監査(会計書面監査)の実施等という形で関与することが認められる。すなわち、ブランディング事業は、私学助成金のうち、経常費、設備費及び施設費を一体として補助する事業であり、経常費については、文部科学大臣(以下「文科大臣」という。)が日本私立学校共済事業団(以下「私学事業団」という。)を介して各学校法人に補助金を交付するという間接補助金に該当し、設備費及び施設費- 46 - については、文科大臣が直接各学校法人に交付する補助金に該当するところ、いずれも、補助金の交付申請に対し、高等教育局長が交付決定(経常費については、厳密には同年度1回目にされた交付決定に対する変更交付決定)をした後、同局長が支出負担行為担当官として支出負担行為を行う、間接補助金たる経常費については、支出負担行為後、大臣官房会計課長が、官署支出官として支出事務を行って、文科大臣から補助金が私学事業団に交付され、その後私学事業団から事業実績報告書が文科省に提出され補助金の額が確定 費については、支出負担行為後、大臣官房会計課長が、官署支出官として支出事務を行って、文科大臣から補助金が私学事業団に交付され、その後私学事業団から事業実績報告書が文科省に提出され補助金の額が確定される、直接補助金たる設備費及び施設費については、支出負担行為後、各学校法人が文科省に事業実績報告書を提出し、それに基づいて補助金の額が確定され、その後、大臣官房会計課長が官署支出官として支出事務を行う、という手続が行われる。この過程の中で、前記のとおり、大臣官房会計課長が支出事務を行うだけではなく、交付決定及び補助金の額の確定の手続においては、これらの事務を所管する高等教育局から、大臣官房会計課監査班は合議を受けて意見を述べ(事前監査たる会計書面監査)、支出負担行為については、大臣官房会計課経理班第二係長が、補助者として所要の手続を行う。 さらに、高等教育局において補助金交付決定を一定の場合取り消すことができるが、その場合にも、大臣官房会計課監査班は、合議を受け意見を述べる(事前監査たる会計書面監査)ものとされている。加えて、大臣官房会計課長は、各部局の会計経理に関し、事後監査(会計実地監査)をし、その結果を、監査報告書として大臣官房長に報告することになっているところ、補助金の交付に関する事項もこの監査の対象になるものである。 以上を前提に検討すると、まず、大臣官房は、前記のとおり、各学校法人が申請してくるブランディング事業が制度の趣旨に沿った取組を行うものであるか否かの審査、すなわち支援対象校の選定そのものには関与することはなく、関与の可能性もないと認められることからすると、事業計画書の記載等について助言・指導をすることが、大臣官房長の職務行為に当たるとは認め難い。 ア他方、前記のとおり、高等教育局においてブランディング事業の支援 性もないと認められることからすると、事業計画書の記載等について助言・指導をすることが、大臣官房長の職務行為に当たるとは認め難い。 ア他方、前記のとおり、高等教育局においてブランディング事業の支援対象- 47 - 校が選定された後は、大臣官房の関係部局において、支援対象校に対する補助金の交付決定から補助金額の確定までという場面のほか、交付決定の取消がなされる場面で事前監査を実施するだけではなく、会計年度末までには事後監査を実施するなどしてブランディング事業に係る補助金に関する手続に監査という形で複数の場面で関与することになっていると認められる。 そうすると、大臣官房長は、文部科学省組織令11条2項により、「大臣官房の事務を掌理する」ものとされ、大臣官房内の部局に属する職員に対する指揮監督権を有すると認められることも踏まえると、大臣官房長が、特定の私立大学が申請するブランディング事業の事業計画書の記載内容等について助言・指導を行ったことにより、その後に行われる前記の各監査の場面において、支援対象校として選定されたC大学に対する補助金の交付が実現する方向で、監査の判断に影響が及ぶ可能性があると認められるのであって、事業計画書の記載等について助言・指導をすることは、大臣官房長が所掌する職務に影響を及ぼす可能性があるものといえる。 イまた、大臣官房は、ブランディング事業に関する補助金の予算要求を所管し、補助金の支出に係る事務や会計監査に関する事務を所管するものであるから、大臣官房長は、補助金が補助金適正化法等の関連法令に基づいて適正かつ効率的に交付・支出されるようにその職務権限を行使する職務を有しているということができ、その反面として、補助金の適正かつ効率的な交付を妨げてはならないということもその職務に伴う義務として負っていると解さ に交付・支出されるようにその職務権限を行使する職務を有しているということができ、その反面として、補助金の適正かつ効率的な交付を妨げてはならないということもその職務に伴う義務として負っていると解される。 ところで、前記のとおり、ブランディング事業は、文部科学省が、学長のリーダーシップの下、優先課題として全学的な独自色を大きく打ち出す研究に取り組む私立大学・私立短期大学に対し、経常費・設備費・施設費を一体として重点的に支援するものであり、事業計画書などを事業委員会が審査し、同事業の趣旨に沿った取組を行う私立大学等を選定し、支援対象校とすることを予定しているものである。 このように、ブランディング事業は、大学などの各種の事業の目的等に照らし、公募に応じて自らの取組を申請して、それに対して専門家などの目で評価して選定す- 48 - るいわゆる競争的資金であり、このような競争的資金としての性質上、その選定過程において、公平らしさを含む公平性の確保が厳に要求されていたと認められる。 したがって、支援対象校の選定事務を所管する高等教育局が申請者に対して、事業の趣旨を説明することを超えて、事業計画書の記載内容について直接助言・指導をして特定の申請者を特別に扱うことは、公平性の確保が要求される競争的資金としての制度の趣旨に反し、許されないものといえ、現に、委員への働きかけを防止して審査を公平に行うため、委員の数や委員が誰であるかは非公表とされている上(甲10)、申請する際に提出する事業計画書の記入要領等に係る問い合わせについても、公平性の観点から原則として電話にて対応することとされていたものである(甲50)。そして、この公平性の確保の要請は、前記のとおり補助金の適正かつ効率的な交付を妨げてはならないという職務を負う大臣官房長にも当てはまるというべき 電話にて対応することとされていたものである(甲50)。そして、この公平性の確保の要請は、前記のとおり補助金の適正かつ効率的な交付を妨げてはならないという職務を負う大臣官房長にも当てはまるというべきである。 とりわけ、大臣官房は、ブランディング事業に関する補助金の予算要求を所管し、補助金の支出に係る事務や会計監査に関する事務を所管する上、文科省の所掌事務に関する総合調整に関すること(文部科学省組織令3条10号)、国会との連絡に関する事項(同条11号)、広報に関する事項(同条12号)、文部科学省の職員の任免等に関する事項(同条1号)、さらには機密に関する事項(同条4号)についてもその事務をつかさどるものとされているのであり、大臣官房が各所管部局間を調整するなどして自ら各局の所管事項に関する各種の情報を収集したり、説明を要求したりすることのできる職務権限が認められる。そうすると、大臣官房は、その幅広く情報収集をすることのできる職務権限に基づき、ブランディング事業に関しても、外部には非公表とされている、事業委員会審査部会の委員の氏名、各委員の人文系、理工系、医科系などの属性やそれに基づく職務分担、担当者ごとの採点の結果などの情報を確認することができるのはもちろん、さらに各委員毎の採点の傾向や重視する事項、委員長所見で公表された事項以外の情報などについても収集することができたものといえる。 - 49 - なお、弁護人は、採点基準等は公表されているのであって、秘密の対象となるものはない旨指摘しているが、前記のとおり各委員の氏名は非公表とされているものであるし、実際に審査において各委員毎に個性が生じるのは当然である。審査委員であったB1は、「文部科学省から指示を受けた訳ではないが、「研究拠点の形成」「世界的に展開すること」「大学の特性を活 ものであるし、実際に審査において各委員毎に個性が生じるのは当然である。審査委員であったB1は、「文部科学省から指示を受けた訳ではないが、「研究拠点の形成」「世界的に展開すること」「大学の特性を活かしたこと」といったキーワードがあることに着目して審査をしていた。」旨述べており、採点者毎に重視している事項があったものと推認できる。このような情報に関しても公表されているものではないが、大臣官房が必要であれば調査することができるものであることは既に指摘したとおりである。 そうすると、このようにブランディング事業の事業計画書の採点の具体的な方法、基準等に関しても幅広く情報収集をすることのできる大臣官房の事務を掌理する大臣官房長において、ブランディング事業の申請に際して助言・指導を行うことは、その職務権限に基づいて情報収集を行うことにより公表されている以上の情報に基づいて、助言・指導がされるのではないかとの期待を当然に生じさせうるのであって、前記の公平らしさを含む公平性の確保の要請に反し、許されるものではなかったというべきである。 以上によれば、大臣官房の事務を掌理する大臣官房長が、特定の私立大学が申請するブランディング事業の事業計画書の記載内容等について助言・指導することは、前記のとおり競争的資金であるブランディング事業において求められる公平性の確保の要請に反するものであることは明らかである上、そのような行為は補助金の適正な交付を妨げるものと認められ、そのような助言・指導は、大臣官房長としての職務の遂行上得られた機密情報を利用することなく、公表されている情報や自己の公務員としての経験に基づいてなされたものであったとしても、純然たる私的な行為ということはできず、公的な性格も持つ行為というべきである。このことは、被告人A1自身も、「公募事業に ている情報や自己の公務員としての経験に基づいてなされたものであったとしても、純然たる私的な行為ということはできず、公的な性格も持つ行為というべきである。このことは、被告人A1自身も、「公募事業についての目的、趣旨については、きちっと説明する。 しかしながら、個々具体的な中身をチェックして、指導助言するということはあっ- 50 - てならない。更に言えば、部下や選考委員会の委員に対して、個別の大学に便宜を図るような働きかけ、指導を行ってはいけない。」「私も、文部科学省の職員の一人として、それに従っておりました。」旨述べ、高等教育局のみならず、自らの職務としてそのような義務があったことを認める供述をしているところにも裏付けられている(第17回被告人A1の供述調書43頁)。 以上のとおり、大臣官房の事務を掌理する大臣官房長が、特定の私立大学がブランディング事業の補助金の申請をするにあたり作成する事業計画書の記載内容について助言・指導することは、同補助金の交付に関する大臣官房長の職務に影響を及ぼす可能性があり、大臣官房長としての公的な性格をもつ行為であることからすると、大臣官房長の職務に密接に関係する行為と認めるのが相当である。 9 被告人A1の受託収賄罪、被告人A2の贈賄罪、被告人A4の受託収賄幇助罪の成否について以上によれば、その余の各弁護人の主張を検討しても、判示第1の1に記載のとおり、被告人A1には受託収賄罪が成立する。また、被告人A2が、被告人A1の職務権限等について、大臣官房長の地位にあったということ以上に具体的な認識を有していたとは証拠上認め難いものの、謝礼として加点する以上、ブランディング事業の申請に際し、それに関連する職務権限のある立場にあることは未必的にも認識していたものと認められ、判示第1の2に記載のとおり、 いたとは証拠上認め難いものの、謝礼として加点する以上、ブランディング事業の申請に際し、それに関連する職務権限のある立場にあることは未必的にも認識していたものと認められ、判示第1の2に記載のとおり、被告人A2には贈賄罪が成立する。 さらに、被告人A4についても、既に検討したとおり、被告人A1と、被告人A2の双方が不正な利益を求めていることをよく認識した上で会食(第二次I会食)の機会を設けたのみならず、第二次I会食での被告人A1と被告人A2との間の会話の趣旨もよく理解した上で、その後も被告人A1が表立つことを避けるため、被告人A4が被告人A2との間を取り持ち、被告人A1の助言・指導の内容等を伝え、被告人A1の犯行を強く手助けしたと認められ、被告人A1の職務権限については、少なくとも被告人A2と同様の認識を有していたと認められる。したがって、判示- 51 - 第1の3のとおり、被告人A4には、受託収賄罪の幇助犯が成立する。 10 被告人A3の贈賄の故意、共謀の有無について被告人A3の弁護人の主張の概要被告人A3の弁護人は、被告人A3が、被告人A2から文科省の幹部にブランディング事業の申請書を見てもらっていることを聞き、その幹部が二男の父親であり、二男への加点はその父親にブランディング事業の申請書の助言・指導をしてもらったことに対する謝礼の趣旨である、との被告人A3の検察官調書等について、違法収集証拠であり、同調書は任意性も欠くので証拠能力はなく、信用性もないと主張する。 さらに、被告人A3の弁護人は、被告人A3は被告人A2からブランディング事業の申請に関し、被告人A1に助言・指導の請託をしたことを聞いたこともなく、点数の不正操作をされた多くの受験生の中の一人として二男がいたことの認識はあっても、それが贈賄であることの認識も ディング事業の申請に関し、被告人A1に助言・指導の請託をしたことを聞いたこともなく、点数の不正操作をされた多くの受験生の中の一人として二男がいたことの認識はあっても、それが贈賄であることの認識もなく、被告人A2との間で贈賄の共謀をした事実もない旨主張する。 違法収集証拠の主張についてア被告人A3の弁護人の主張の要旨まず、被告人A3の弁護人は、被告人A3のC大学の学長室において、違法な無令状捜索・差押えが行われたことから、それにより収集された証拠(甲90、94)は違法収集証拠として排除されるべきであるし、それらを引用するなどして直接利用して作成された被告人A3の検察官調書(乙21、23、24、25)の該当部分も違法性を承継しており証拠能力が否定されるべきである旨主張する。 イ証拠上認められる事実弁護人が違法収集証拠であると主張する証拠の収集、作成状況について、証人Rの当公判廷における供述を中心とする関係各証拠によれば、以下の事実が認められる。 平成30年6月18日、東京地方検察庁の検察官らは、被告人A2、被告人- 52 - A3の取調べを行うこととし、被告人A3についてR検事(以下「R」という。)が担当した。Rは、第二次I会食における録音テープの内容や、C大学の元幹部から、被告人A2により第二次試験で点数調整がされ、縁故入学がされており、縁故入学者に係るリストがあるなどという情報を入手していた。 Rは、被告人A3に対し、同日午後2時24分から午後6時59分まで東京地方検察庁の執務室で取調べを行った。Rは、被告人A3に対し、C大学の入試に関する事情を聴取するに際し、言いたくないことは言わなくてよい旨告げ、縁故入学があるか確認したところ、被告人A3は縁故入学も点数の加点などもなく、不正はないとした上で、あると に対し、C大学の入試に関する事情を聴取するに際し、言いたくないことは言わなくてよい旨告げ、縁故入学があるか確認したところ、被告人A3は縁故入学も点数の加点などもなく、不正はないとした上で、あるとすれば全ての採点が終わった段階で同じような順位であれば縁故受験生を選ぶぐらいである旨述べていた。Rが縁故受験生のリストがあるか確認すると、被告人A3は、リストは学長室にあり、受験生の番号、氏名、関係性として誰々の教授の紹介であるとか、そういったことが記載されており、基本的にはC大学のOBとか医師仲間である旨述べた。 Rが、官僚の息子がいるか確認すると、被告人A3は、当初いないと述べていたが、追及すると、厚生省だったかななどと述べた上、さらに文科省と述べたが、具体的な役職や名前などは覚えていない旨述べていた。Rは、不正がないのであればリストや入試関係の書類を提出して欲しい旨依頼すると、被告人A3はリストは捨てたかもしれないなどと述べたが、再度提出をRが求めたところ承諾した。 被告人A3は、手帳と携帯電話についてその場で任意提出に応じた上、同日午後7時15分頃、ミニバンタイプの車両にR、被告人A3、Rの立会検察事務官、特別捜査部の検察事務官2名が同乗し、被告人A3の案内の下、(地名省略)のC5ビルにあるC大学の学長室に移動した。被告人A3は、学長室の壁一面にある本棚から青色のファイルを取り出し、ページを開いた上「ああ、上げてますね。」と言ってRに「K、文科省、プラス10」と記載のある部分(甲94資料1)を示した。 Rは、これは第二次試験かと確認したところ、第一次試験である旨被告人A3が答えた。 - 53 - Rは学長室のパソコンで作成されたものであると聞いたことから、被告人A3に対し、パソコンの任意提出を求めたところ、被告人A3は、業 ろ、第一次試験である旨被告人A3が答えた。 - 53 - Rは学長室のパソコンで作成されたものであると聞いたことから、被告人A3に対し、パソコンの任意提出を求めたところ、被告人A3は、業務上使用しているとして任意提出を拒否したため、Rは、USBメモリにデータを移して提出を受けた。Rは、入試関係の書類についても任意提出を求めたが、被告人A3は、捨てたかもしれない、どこにあるかも分からないと言い、Rは被告人A3の了解を得て検察事務官と共に本棚などを探した。 Rは、被告人A3に机の引き出しを開けてもらい、過去の手帳などの任意提出を受けた。また、本棚などから入試委員会と書かれたファイルや入試の成績表が出てきたことから、これらも被告人A3から任意提出を受けた。検察事務官が持参したモバイルパソコンとモバイルプリンタを使用して任意提出書と押収品目録等の手続書面を作成した。 Rは、加点をしていることが分かったことから、学長室内で同日午後8時51分頃から同日午後9時33分頃までの間、被告人A3に対する取調べを行った。 被告人A3は、被告人A2から、一般入試の前に文部科学省の幹部の息子がC大学を受けるからよろしくと言われた、具体的な役職は聞いていない、第一次試験の後に被告人A2と加点することを決め、C4という事務担当者に指示した旨供述した。 Rが、第二次試験も加点していないのか確認すると、はっきり思い出せない旨述べ、Rが供述調書を作成し、被告人A3は署名、押印した。 翌同月19日以降もRは被告人A3の取調べを行い、冒頭、黙秘権を告知していた。同日の取調べでは第一次試験後のプレビューで加点をする状況について確認し、被告人A2とそれぞれ縁故受験生のリストを持ち合わせ、C4が示す第一次試験の成績表とそれを比べ、順位を見て加点をすること、被告人A の取調べでは第一次試験後のプレビューで加点をする状況について確認し、被告人A2とそれぞれ縁故受験生のリストを持ち合わせ、C4が示す第一次試験の成績表とそれを比べ、順位を見て加点をすること、被告人A2と被告人A3がそれぞれリストの縁故受験生について教授の息子など関係性を紹介すること、寄付金が考慮要素であったことを述べた。 翌同月20日の取調べでは、Rが、被告人A3に対し、ブランディング事業に関してC大学が選ばれたことを確認した。被告人A3は、自分は申請書の作成に- 54 - は関わっていない旨述べていたが、K君のお父さんに申請書類を出す前に見てもらったことがあると被告人A2から聞いていた、いくつか指導が入ったことや、今年は行けるかもしれないと聞いた、平成29年5月、6月頃には文科省の幹部としか聞いていなかったが、その後、平成30年度の一般入試の前、プレビューをする前の頃に、被告人A2から、二男について、今年も文科省の幹部の子息がうちを受ける、ブランディングの関係でお世話になったという話を聞いてつながった、もっとも、被告人A2からどの時点で話を聞いたのかは覚えていない、被告人A2とは普段から立ち話を含めてコミュニケーションをとっていて思い出せない、などと述べた。他方で、被告人A3は、平成30年度一般入試の第一次試験後のプレビューの場では被告人A2から文科省幹部の息子であるとしか聞いていない、ブランディングについて発言はなかったと断言した。もっとも、Rが加点をした趣旨を確認すると、被告人A3は、ブランディング事業の事業計画書を見てもらい、C大学も選定されたことからお礼の趣旨だった、前年度も文科省の幹部の御子息と聞いていたが、そのときはブランディングの話は出ていないし、順位が1000番台で加点の対象にもならなかった旨述べた。 R 大学も選定されたことからお礼の趣旨だった、前年度も文科省の幹部の御子息と聞いていたが、そのときはブランディングの話は出ていないし、順位が1000番台で加点の対象にもならなかった旨述べた。 Rは、同月19日以降の取調べでは、第二次試験の加点の有無や、二男の父親の文科省での具体的な役職について確認したが、被告人A3は従前と同様に第二次試験での加点を否定し、二男の父親についても文科省の幹部としか聞いていなかった旨述べていた。また、ブランディング事業の申請の書面は、平成28年度のものより平成29年度のものは良くなっていた旨述べつつも、ブランディング事業の申請書について受けた具体的なアドバイスの内容も被告人A2らに任せていて覚えていない旨述べていた。 ウ Rの公判供述の信用性について以上の事実認定は、主にRの公判供述によるものであるが、同供述は以下に述べるとおり信用することができる。 すなわち、Rの公判供述は、その内容自体に格別不自然・不合理な点はないし、- 55 - 客観的証拠に符合又は整合している。 とりわけ、取調べの初日である平成30年6月18日に、Rが被告人A3に対して縁故受験生のリストの提出を求め、学長室にあることを被告人A3が述べ、学長室から二男が記載されたリストが発見されたところ、Rらは東京都新宿区内に3つあるC大学のキャンパスの内、そもそもどの場所に縁故受験生リストが保管されているかを把握していなかったことや、学長室に移動した後も、壁面にある3つの書棚を含め合計5つの書棚やロッカー、2つの机といった多数の資料を収納することができる状況がある中で、どの部分に縁故受験生リストがあるのかはRらには即座には把握できるものではなかったこと等に照らせば、被告人A3自らが青色ファイルを取り出して二男の記載部分があることを示し とができる状況がある中で、どの部分に縁故受験生リストがあるのかはRらには即座には把握できるものではなかったこと等に照らせば、被告人A3自らが青色ファイルを取り出して二男の記載部分があることを示したとのRが供述する縁故受験生リストの発見の経緯は、自然で合理的な内容である。さらに、同日、Rが、C大学の学長室で任意提出を受けた後に再度被告人A3の取調べを行い、検察官調書(乙41)を作成したことも、同調書の存在とその記載内容により裏付けられており、その後の取調べと検察官調書の作成に関する供述も、7通の検察官調書(乙20から26)の存在及び各記載内容と符合又は整合している。以上指摘した諸点に照らすと、前記イの認定に沿うRの公判供述は、基本的に信用することができる。 エ被告人A3の公判供述の信用性について公判供述の要旨これに対し、被告人A3は、第29回公判において、要旨、以下のように述べる。 取調べの初日である平成30年6月18日、Rから、C大学の入試について、不正に個別の受験生に加点をしている旨言われた上、「文科省関係のご子息にもそのようなことをしているのではないか。」「捜査に協力してくれますね。」、「主任検事がかんかんになって怒っている。」「入試の資料はどこだ。」と言われた。「学長室にある。」と答えた後に、「見せて欲しい。」と言われたのでまずいと思い、「記憶違いだ。」と弁解したら、Rはにらみつけてきて、怒るように「うそをついたな。」と言い、大変恐怖を感じ、誰に対する何の捜査なのかも分からず、聞くこともできず、Rに従- 56 - うしかなかった。学長室では、本棚や机などありとあらゆるところを捜され、プライベートな手帳など20冊も全て押収された。鍵のかかった机も開けるように言われ、入試の資料2年分を見つけられてしまった。学長 うしかなかった。学長室では、本棚や机などありとあらゆるところを捜され、プライベートな手帳など20冊も全て押収された。鍵のかかった机も開けるように言われ、入試の資料2年分を見つけられてしまった。学長室で供述調書を作成した記憶はなく、その後、検察庁に戻り、再度取調べを受けたと思う。 その後もRによって供述調書が作成され、被告人A2の判断で加点をしていたのに、私と被告人A2と二人で話し合って加点をしたことになってしまった。恐怖で異議を述べると何をされるか分からなかったし、黙秘もできなかった。そもそも贈賄事件で自分自身が対象とされているかも分からなかった。逮捕勾留されてしまうという恐怖があり、取調べを拒否することもできなかった。Rは、読み聞かせの際に傍らに立って私を威圧していた。二男の得点から何もしなくても補欠に入ると言ったら、まだ反省をしていないのかと叱責されたり、正規合格も補欠合格も変わりはないと言ったが正規合格の方がいいに決まっているだろうと言われた。そうですね、としか言えず、加点して正規合格をさせたと書かれてしまった。指示した、と言う命令的な言葉も使いたくなかったが、学長だから学務課長に対して言うのは指示じゃないかと怒られた。記憶どおりに話せば前記の例のように否定され、自由に話せる雰囲気はなかった。一度作成された調書は変更できないと思っていた。 信用性の検討まず、取調べの初日にRから、「主任検事がかんかんになって怒っている。」などと言われて恐怖を感じ、学長室での捜索を余儀なくされたという点についてみると、確かに、R自身、前記のように主任検事が発言をしたと被告人A3に対して言ったことがあること自体は認めている。しかし、その発言の時期について、Rは、取調べ初日にしたのではなく、第二次試験での加点の有無について被告人A3に対して確認 検事が発言をしたと被告人A3に対して言ったことがあること自体は認めている。しかし、その発言の時期について、Rは、取調べ初日にしたのではなく、第二次試験での加点の有無について被告人A3に対して確認をする中で、被告人A3が10点の加算しかしなかったと述べていたところ、C大学のサーバーを分析した結果、10点以上の加算をしたものが見つかり、客観的証拠と齟齬があった中で再度確認をした際に発言をしたものであり、C大学のサーバーの押収をしたのが平成30年7月4日であるので、それ以降のことである旨、- 57 - 具体的根拠を示して述べている。他方、被告人A3は、前記のRの証人尋問が終了した後の第34回公判において再度実施した被告人質問では、主任検事が怒っていると聞かされたのは取調べの初日であった同年6月18日の昼間だったのかはっきりしない、取調べの初期で2、3日以内だったと思うなどと述べ、供述を曖昧なものへ変遷させるに至っている。 また、被告人A3は、Rが学長室に入ると、間もなく青色のファイルを発見した、エントエグザムとファイルの背表紙に記載があり分かってしまった旨供述するが、客観的には学長室の壁面にある3つの書棚を含め合計5つの書棚、ロッカーや2つの机があり、そのような多くの資料を収納できる書棚等が多数存在する中で、Rが即座に青色ファイルを発見することができたというのは、事柄の流れとして不自然であるとの感を免れない。被告人A3は、手帳20冊も押収されたなどと述べているが、客観的には4冊にとどまるものであり、この点も客観的証拠に反する。のみならず、同日は学長室で供述調書を作成されたことが認められるところ、被告人A3はその記憶はなく、その後も検察庁に連れていかれ、取調べを受けたと思う旨述べており、客観的には存在しなかった夜間における取調べを述べ 日は学長室で供述調書を作成されたことが認められるところ、被告人A3はその記憶はなく、その後も検察庁に連れていかれ、取調べを受けたと思う旨述べており、客観的には存在しなかった夜間における取調べを述べていることからすると、被告人A3の公判供述は、真に記憶しているところを述べているのか疑問がある。 そもそも被告人A3は、同日に検察庁に呼び出されて縁故入学の有無を確認された際に、文科省の子息がいるだろうと問い詰められた旨当初述べていたが、その後、文科省という言葉は私かRのどちらかが出したのだろうと思う旨述べ、この点も供述を変遷させている。また、青色のファイルを発見された際にRから誰それはどうなっているとか問いかけがあったと思うが、具体的に何を示して説明したか覚えていないなどと曖昧に述べている。 以上のとおり、被告人A3の公判供述は、Rから威圧され、脅迫的な言動のために恐怖したとする点や、学長室で青色のファイルを発見した経過などの供述の核心部分、またその周辺部分も含め、客観的証拠等に反し、重要部分の変遷を含む上、- 58 - その供述内容も曖昧なものであることからすると、全体として信用性に乏しいといわざるを得ない。 オ違法収集証拠の主張についての検討弁護人は、Rが平成30年6月18日にC大学の学長室において、被告人A3に縁故受験生のリストを探させたり、Rや検察事務官ら3名が入試関係の資料を探して本棚を確認したり机の引き出しを開けさせたりしたことは、任意提出の形式ではあるが、実質的には通常の捜索、差押と変わらず、無令状で行われたものであり、違法である旨主張する。 しかしながら、弁護人が依拠する被告人A3の公判供述が信用できないことは既に検討したとおりである。前記イのとおり認定した事実関係によれば、被告人A3が自らC大学の学長 り、違法である旨主張する。 しかしながら、弁護人が依拠する被告人A3の公判供述が信用できないことは既に検討したとおりである。前記イのとおり認定した事実関係によれば、被告人A3が自らC大学の学長室を案内し、自ら青色ファイルを取り出し、問題となる箇所も開いてRらに示しているし、被告人A3が、入試関係の資料についてもRらが探すことに同意をした一方、提出を求められたノートパソコンについてはそれを拒否し、USBメモリによるデータの移転によることを選択しているのであって、これら一連の経過からすれば、被告人A3が任意に関係証拠の提出を行ったことは明らかである。 また、そもそもRにおいても、被告人A3が入学関係の書類がある場所を案内することを確認した上で学長室に移動したものの、被告人A3がどの場所にあるか分からない旨述べたことから検察事務官らと探すことになったものであり、当初から書類等を探す目的であったとは認め難い。探索せざるを得ない状況になった後も、Rは、被告人A3が使用する袖机の棚を開ける際には被告人A3に開けてもらっており、その意思に基づいて入試関係の書類の有無を確認している。 以上によれば、検察官や検察事務官が建造物内で証拠物を探索したことは、結果的に被告人A3の立場が当初Rが想定していたような参考人としてのものではなく、贈賄被疑事件の被疑者としての位置付けにその後変わった経過からすると、被告人A3の承諾を得たとはいえ、慎重さに欠ける面があったことは否定できないものの、- 59 - 少なくとも弁護人の主張するような、令状主義を潜脱するような意思があったものではないし、まして証拠排除をすべきような重大な違法はなかったと認めるのが相当である。 なお、被告人A3の弁護人は、捜査報告書(甲90、94)について、違法収集証拠であったこと 意思があったものではないし、まして証拠排除をすべきような重大な違法はなかったと認めるのが相当である。 なお、被告人A3の弁護人は、捜査報告書(甲90、94)について、違法収集証拠であったことは第33回公判のRの公判供述によって初めて明らかになったことであるから、公判前整理手続をしていた令和元年10月29日に証拠意見として刑訴法326条の同意をしたことは、重大な錯誤に基づくものであるから、同意を取り消す旨主張する。 しかしながら、違法収集証拠には当たらないのは既に検討したとおりであり、主張は前提を欠き採用できない。また、そもそも被告人A3の弁護人は、公判前整理手続において、令和元年7月31日付けの被告人A3の弁護人作成の証拠意見書では、「点数関係の資料等を全て押収されるなどされた」と記載しており、初日の取調べもあった平成30年6月18日の状況を被告人A3から聴取していないとは考え難い。また、公判前整理手続が長期間にわたって行われた経過からしても、被告人A3に対して確認する機会も十分にあったものといえる。このような公判前整理手続の経過や、既に甲90、94号証が採用され、取り調べられていることからすれば、同意の取消しの効力は認められず、被告人A3の弁護人の主張は採用できない。 被告人A3の検察官調書の任意性について被告人A3の弁護人は、被告人A3の検察官調書には任意性が認められない旨主張する。 すなわち、被告人A3の弁護人は、①初日の取調べから、Rは、不正入試に関わっていた被告人A3の罪悪感等に乗じて取調べを実施し、「うそをいったな、今からすぐ調べに行くから。」などと威圧的な言動を行い、被告人A3は恐怖を受けて言いなりの心理状態になっていた、②被告人A3は、当時足を骨折していた上、取調べの苦痛により不眠がちとなり、体重も減り、 からすぐ調べに行くから。」などと威圧的な言動を行い、被告人A3は恐怖を受けて言いなりの心理状態になっていた、②被告人A3は、当時足を骨折していた上、取調べの苦痛により不眠がちとなり、体重も減り、精神状態も落ち込み、「トラックがぶつかってきてくれて死ねればどんなにか楽なのに。」などと述べていた、③Rは、平成- 60 - 30年度第二次試験で行われた小論文の答案4通について必要も合理性もないのに採点をさせ、被告人A3は拷問を受けたような気持ちであった、④主任検察官がかんかんになって怒っているなどと強い威嚇を行い、被告人A3を屈服させようとしていた、⑤取調べの初日で被告人A2との共謀が疑われたのに、同月28日までの間、被疑事実を告げることもせずに取調べを行い、被告人A3は何を黙秘したらいいかも分からず、実質的には黙秘権の侵害が行われていた、⑥Rは、被告人A3に対する検察官調書の読み聞かせをする際に、座っている被告人A3の間近に立って威圧した、⑦Rは、被告人A3が、正規合格も補欠合格も変わりがない旨述べたことに対し、正規合格のほうがいいに決まっているだろうなどと言われ、意見を否定されるなど、たびたび供述内容の変更を強要された、⑧Rは、被告人A3の取調べについて録音録画をせず、取調べのメモも廃棄しており、不当な取調べの記録を残さずに隠滅したことが推認できる、⑨被告人A3が弁護人を選任したのは同年7月5日であり、それまでの間、Rは、弁護人がないことを知っていながら弁護人選任権があることを告げなかった、などと主張する。 しかしながら、弁護人の前記主張が依拠する被告人A3の公判供述は、既に検討したとおり、公判段階でも変遷があったり、6月18日の状況に関する供述の信用性は乏しく、事実を誇張して供述する傾向があったりすると認められることからする 張が依拠する被告人A3の公判供述は、既に検討したとおり、公判段階でも変遷があったり、6月18日の状況に関する供述の信用性は乏しく、事実を誇張して供述する傾向があったりすると認められることからすると、全体として信用性に乏しいといわざるを得ず、は採用できない。 加えて、そもそも被告人A3に対する取調べは、被告人A3に対する逮捕・勾留をした上でのものではなく、在宅のまま取調べを続けていたものであるところ、②について弁護人は精神面の不調や骨折の問題があった旨指摘しているが、治療等の機会は十分にあったものといえる上、Rが被告人A3のそのような体調も把握した上で取調べを行っていたことや、被告人A3のC大学での執務等を踏まえて取調べの時間を調整していたことも証拠上認められる。③については、Rは、第二次試験で不当に高い点数をつけて加点をしていたのではないかとの疑いがあったことから実施したものである旨述べており、被告人A3の供述の信用性を検討するために行- 61 - われたことは明らかである上、そもそも、被告人A3はC大学で試験委員の経験もあるということからすると、採点基準も与えられた上で小論文の採点を実施することが拷問のような効果を与えるものであるとは考えられない。その他、⑤、⑥、⑧、⑨についても、Rの公判供述によれば、被告人A3に対し、取調べの冒頭で黙秘権があることを告知していたことが認められる上、Rが、被告人A3に対する読み聞かせの際に供述調書の該当部分を指で示し、特定していたことが威嚇をしたものとは評価し難い。また、弁護人選任権についても、被告人A3自身、取調べの初日である同年6月18日からC大学の顧問弁護士と話す機会があった旨述べており、弁護人選任権があることはよく理解していたものと認められる。その他、取調べの録音録画がされていない 人A3自身、取調べの初日である同年6月18日からC大学の顧問弁護士と話す機会があった旨述べており、弁護人選任権があることはよく理解していたものと認められる。その他、取調べの録音録画がされていないことや、取調べメモが残されていないことをもって直ちに任意性等が疑われるものではないし、④、⑦についてみても、被告人A3の検察官調書の信用性の問題はともかくとして、脅迫に該当するものではない上、供述を強制したものとも評価し難い。 以上によれば、被告人A3の検察官調書について、任意性が認められないとする弁護人の主張はいずれも理由がない。 被告人A3の検察官調書の信用性についてア被告人A3の検察官調書における供述の要旨被告人A3の検察官調書における供述内容は、要旨、以下のとおりである。 私は、平成29年度のC大学の一般入試の第一次試験後、プレビューの前に、被告人A2から、「今年は、文部科学省の幹部の息子がうちを受けるので、よろしく。」と言われ、監督官庁の幹部の息子が入学すれば、その幹部とも良好な関係が築けるし、私学助成金等の受給においても有利に働く可能性もあるなど有益であると思っていた。プレビューの場でも改めて被告人A2から、K君は文科省の息子との紹介があり、リストに記載したが、順位が1051番であり、1000番台以下は加点しない扱いであったので、被告人A2も「この順位だと仕方がないね。」と言って加点せず、「×」と記載した(甲90資料1)。その後、平成29年5月か6月上旬頃、- 62 - 被告人A2から、C大学が平成28年には選定されなかったブランディング事業の申請について、「文部科学省の幹部が、申請書類を見てくれた。いくつか指導が入ったので、それを踏まえて、検討する。今年は行けるかもしれない。」などと言っていた。文部科学省の幹 ったブランディング事業の申請について、「文部科学省の幹部が、申請書類を見てくれた。いくつか指導が入ったので、それを踏まえて、検討する。今年は行けるかもしれない。」などと言っていた。文部科学省の幹部が申請前にそのような公平性に反することをしてくれたのは、被告人A2が助言・指導をお願いしたのであろうと思い、多少の不安を持ったが、被告人A2の人脈の広さや行動力、ブランディング事業に選定される期待が大きく、「それはいいですね。」などと言った。ブランディング事業の申請については被告人A2やC1に任せていたので、助言・指導の内容を聞いていたものの具体的には思い出せないが、平成28年度に比べて提出された事業計画書は分かりやすく説得力のあるものとなっていて感心した、その後、平成29年11月頃、被告人A2から「まだ正式に発表されていないけど、ブランディングに通りそうだ。」と言われた、後日、ブランディング事業に選定されたことが正式に文部科学省から連絡があった。 平成30年1月頃、平成30年度のC大学の一般入試の始まる前に、被告人A2から「文科省の幹部の御子息が今年も受けるからよろしく。昨年、1次で不合格となったK君。ブランディングの関係でお世話になった人の御子息。」と言われた。その際に、私は、ブランディング事業の申請に際し事業計画書について助言・指導をしてくれたのが二男の父親であり、文科省の幹部であることが分かり、被告人A2が、一般入試前に受験生について情報共有するのは多額の寄付を約束してくれた重要性の高い縁故受験生であることが多いことから、二男についても、文部科学省の幹部に対するお礼の意味で合格させようとしていることが分かった。私自身としても、ブランディング事業の支援対象校に選定されたことは、C大学にとって名誉なことであるし、私立大学等経常費補助金が得 学省の幹部に対するお礼の意味で合格させようとしていることが分かった。私自身としても、ブランディング事業の支援対象校に選定されたことは、C大学にとって名誉なことであるし、私立大学等経常費補助金が得られることからありがたいと思っていて、お礼をするという被告人A2の考えに異論はなかった(乙26)。第一次試験後のプレビューの場で、被告人A2が、「1963番のK君は、文科省関係の人。」「このままだと危ないから、10点加えよう。」と言い、私も賛成した。二男の順位は248位から169位に上がり、第二次試験で再度調整するつもりだったが、第二次試験- 63 - の結果、二男は87位となっており、間違いなく合格できると思い、加点の必要はないと判断した。私が委員長を務める入試委員会の結果、二男は正規合格したことから被告人A2に報告し、その後、教育委員会、教授会でも承認された(乙24、25)。 イ信用性の検討被告人A3の検察官調書における供述は、その内容において不自然・不合理な点は見当たらない上、捜査段階を通じて一貫しており、変遷も見当たらない。当時被告人A3が持参したという縁故受験生リストとも整合するものであり、その他客観的証拠に反するような部分も見当たらない。 加えて、既に認定したとおり、被告人A3は、取調べの初日において、縁故入学がされているのではないかと確認され、当初はそのリストが存在することを認めながら、縁故入学した者の中に官僚の息子がいるのではないかと追及されると、最初は否定したが最終的には文科省の関係者がいたことを述べた上、Rからリストを提出して欲しいと依頼されると、一度はその存在を認めていたリストを捨てたかもしれないなどと明らかに虚偽の弁解をするに至っている。最終的には任意提出に応じているものの、被告人A3が前記のとおり当初 を提出して欲しいと依頼されると、一度はその存在を認めていたリストを捨てたかもしれないなどと明らかに虚偽の弁解をするに至っている。最終的には任意提出に応じているものの、被告人A3が前記のとおり当初はその存在を認めたリストについて、官僚の息子がいるのではないかと追及されるやそれを隠そうとしていることから、被告人A3が、二男に対する加点が検察官が目を付ける事態、つまり贈賄として問題となることを認識していたものと強くうかがわれる。 a 他方、被告人A3の弁護人は、被告人A3のRに対する供述は、Rによる威圧的な言動や被告人A3が精神的にも肉体的にも疲労していたことから、Rによる誘導に応じてしまった結果の供述である旨指摘し、被告人A3も、「被告人A2から、外部の人が事業の計画書を見てくれるというような話を聞いており、また、大学の顧問弁護士から、この件は文科省の人に計画書の事でお願いをしたことがまずかった、と言われ、この2つが合わさり、検察官からそういう計画書を文科省にお願いするのを悪いと思わなかったのかと言われ、検察官の望んでいる答えを想定し、- 64 - そのような記載になってしまった。助言・指導に対するお礼の意味で加点をした、という認識もなかったが、やはり顧問弁護士の話や加点をしたのがまずかったという言葉から類推し、お礼という意味を検察官とのやり取りをする中で推論して入れてしまった。」など、と供述する。 ところで、被告人A2が作成した平成30年度の縁故受験生リスト(甲93)には、二男について「1963 K(ブランディング、文科)」との記載があるもの(同資料1)や、「1963 K(ブラン)」と記載があるものがあり(同資料3-1)、被告人A2の検察官調書にも、平成30年度の一般入試の第一次試験後のプレビューにおいて、従前から被告人A3 あるもの(同資料1)や、「1963 K(ブラン)」と記載があるものがあり(同資料3-1)、被告人A2の検察官調書にも、平成30年度の一般入試の第一次試験後のプレビューにおいて、従前から被告人A3に説明していたが、改めて「この受験生の父親であるA1さんは、文部科学省の官僚なんだけど、ブランディング事業のことで指導してもらいお世話になった。」旨説明した旨述べていることが認められる(乙17)。 前記一連の捜査資料からすれば、平成30年度の第一次試験後のプレビューの場においても、改めて被告人A2から二男に関し、ブランディング事業との関連も含めて説明があったのでないか、との仮説が当然に生じるところである。二男への10点の加算と、ブランディング事業との関連が明確に示されるのはまさに第一次試験後のプレビューの場であることは明らかであり、この点について取調官が被告人A3に確認をしないことは考え難いことに照らし、その点について被告人A3に何度も質問した旨のRの公判供述の信用性は高い。 その上で、Rの公判供述によれば、Rが被告人A3に対し何度確認しても、被告人A3は、第一次試験後のプレビューではブランディングという言葉を被告人A2が発言をしたことはなかったとして、被告人A3はその記憶はない旨述べていたことが認められる。 実際、被告人A3の一連の検察官調書を見ても、第一次試験後のプレビューで被告人A2からはそのような発言がなかったことを前提に調書が作成されている。すなわち、第一次試験後のプレビューではなく、それより前の段階において、被告人A2から、前記のとおり「文科省の幹部の御子息が今年も受けるからよろしく。昨- 65 - 年、1次で不合格となったK君。ブランディングの関係でお世話になった人の御子息。」と言われたということに止まっており、第一次試 「文科省の幹部の御子息が今年も受けるからよろしく。昨- 65 - 年、1次で不合格となったK君。ブランディングの関係でお世話になった人の御子息。」と言われたということに止まっており、第一次試験後のプレビューの場ではそのような従前被告人A2から言われていたことの認識の下で加点した、との記載になっている。 これらによれば、被告人A3が、どの時点で被告人A2からブランディング事業の申請に関して文科省の幹部から助言・指導を受け、その謝礼として文科省の幹部の息子である二男に対して加点をすることを認識したかに関し、自らの記憶に基づいて否定すべき点は否定してRに供述していたものと認められる。弁護人は、被告人A3がRの威圧的、脅迫的な言動や、精神的に追い詰められていた結果、事実関係を全く否定することもできずRに言われるがまま供述調書が作成されたかのような主張をしているが、前記のとおり、第一次試験後のプレビューにおいて被告人A2から二男への加点が話題になった際にブランディング事業に関する発言があったか否かという最も肝心な点について、検察官から繰り返し確認されているのに対し、被告人A3はRの意を受けた供述をするようなことはせず、自らの意思に基づいて記憶があるものと、記憶がないものを明確に分け、記憶がないものは否定して述べていたことが認められることからすると、被告人A3はRの取調べにおいて自発的に供述をしていたと認められ、弁護人の主張は採用できない。 以上によれば、被告人A3が、第一次試験後のプレビューの前の段階において、被告人A2から「文科省の幹部の御子息が今年も受けるからよろしく。昨年、1次で不合格となったK君。ブランディングの関係でお世話になった人の御子息。」と言われたとの供述内容は、まさに被告人A3の記憶に基づいて自発的に供述されたものと 息が今年も受けるからよろしく。昨年、1次で不合格となったK君。ブランディングの関係でお世話になった人の御子息。」と言われたとの供述内容は、まさに被告人A3の記憶に基づいて自発的に供述されたものと認められる。 b その他、被告人A3の弁護人は、そもそも被告人A3は、C大学で強権的、独断的な大学運営をする学長であった被告人A2に対して批判があり、それに対抗する候補者として被告人A2の後の学長として擁立されたのであり、理事長となった後も大きな影響力を持っていた被告人A2に対し、大きく波風を起こすことはなか- 66 - ったものの、被告人A3は個別加点を縮小するように働きかけるなど抵抗をしていたのであり、両者には緊張関係があったことからすると、被告人A2が、贈賄と疑われかねない行為である二男への加点の理由である、ブランディング事業の申請に関して助言・指導を受けたといった経緯を話す訳がない旨主張し、被告人A3も被告人A2との関係性について弁護人の主張に沿う供述をする。 しかしながら、被告人A3の弁護人は、被告人A2は、被告人A3にプレビューでも示さなかった受験生に関し、被告人A3に隠したままC大学の入試システムを操作することができたC大学の職員であるC2(以下「C2」という。)に直接指示し、個別に加点をさせていたと指摘しているところ、C2は、被告人A2から予め個別に連絡を受けていた旨述べている。そうすると、仮に被告人A2が被告人A3に対して被告人A1との関係性や贈賄の事実を被告人A3に秘匿したいと考えていたのであれば、そもそも二男の存在を被告人A3に告げずに、C2に個別に加点を指示すれば足りると考えられるのであり、被告人A2が被告人A3に対して前記事項を秘匿しようとしていたとは考え難い。 また、被告人A3は、被告人A2を継いで学長 人A3に告げずに、C2に個別に加点を指示すれば足りると考えられるのであり、被告人A2が被告人A3に対して前記事項を秘匿しようとしていたとは考え難い。 また、被告人A3は、被告人A2を継いで学長に就任したが、直ちに縁故受験生に対して加点することを止めた訳でもなく、被告人A2と同様に多額の寄付金を出す縁故者の子息に対して加点をすることを継続して行っていた上、被告人A3自身も大学への寄付とは別に自らも現金を受け取っていたことも認められる。被告人A2も当然にそのような事情は把握していたものと考えられ、被告人A3が贈賄の事実を明らかにすれば、一連の被告人A3の不相当な行為も当然に発覚することとなるのは明らかであり、そのような立場にあった被告人A3が贈賄の事実を暴露することを被告人A2が想定していなかったとしても何ら不自然ではない。 以上によれば、被告人A3が、被告人A2と共に、ブランディング事業の申請に関して文科省の幹部から助言・指導を受けた謝礼として文科省の幹部の息子である二男に対して10点の加点をしたとの被告人A3の検察官調書は十分に信用することができる。 - 67 - 被告人A3の贈賄罪の成否について以上検討したところによれば、被告人A3は、少なくとも第一次試験後のプレビューの場に至るまでに、被告人A2との間において、二男の父親である文科省の幹部から、C大学のブランディング事業の申請に際し、助言・指導を受けたことに対する謝礼をすることについて意思を相通じていたこと、平成30年度第一次試験後のプレビューにおいて前記の意思に基づいて加点をし、加点後の成績が有効なものであることを前提にして学長として二男について正規合格者としての地位を付与する決定をしたことが認められるのであり、被告人A3には、被告人A2との間におけ に基づいて加点をし、加点後の成績が有効なものであることを前提にして学長として二男について正規合格者としての地位を付与する決定をしたことが認められるのであり、被告人A3には、被告人A2との間における贈賄の共謀も、贈賄の故意も認めることができる。なお、被告人A3には、二男の父親である被告人A1について文科省の幹部であるとしか聞かされてはいなかったものであるが、謝礼として加点する以上、ブランディング事業の申請に際し、それに密接に関連する職務権限を有する立場にあることは未必的にも認識していたものと認められるのであり、故意に欠けるところはない。 その余の被告人A3の弁護人の主張を検討しても、前記認定を左右するものはなく、被告人A3には、判示第1の2のとおり被告人A2との共謀による贈賄罪が成立する。 第2 判示第2の事実について 1 争点弁護人は、被告人A4は複数の国会議員の秘書・政策顧問として活動しており、当該議員らの政治活動の実現のために官僚であるF4(以下「F4」という。)らと意見交換をするなどして会食をしたことはあったが、F4のJAXAの理事の職務に関して便宜供与を受けたこともないし、別表(添付省略)記載の会食等はかかる便宜供与を受けるため、あるいは便宜供与を受けたことに対する謝礼の趣旨でなされたものではないとして、賄賂にも該当しない旨主張する。 当裁判所は、判示第2のとおり贈賄罪の成立を認めたのである。すなわち、後記3のとおり、被告人A4は、D2と共に、Dと業務委託契約をした株式会社H(以- 68 - 下「H」という。)に対し病院リートを勧め、それを実施するために官僚や政治家、病院の院長らへの接待を繰り返し、その一環として、C大学のA2(以下、第2において「A2」という。)に近づき、大学病院の病院リート化をもちかけていた 院リートを勧め、それを実施するために官僚や政治家、病院の院長らへの接待を繰り返し、その一環として、C大学のA2(以下、第2において「A2」という。)に近づき、大学病院の病院リート化をもちかけていたところ、A2が、C大学創立100周年記念事業の講演会に宇宙飛行士の派遣を希望していたことに目を付け、Dのコンサルタント業務に関して有利に働くと考え、F4を招いて宇宙飛行士の講師派遣について口利きすることをA2に示し、F4もこれに応じて宇宙飛行士の講師派遣について便宜供与をしたものと認めた。また、後記4のとおり、被告人は、Dの営業として、JAXAに対し、株式会社G(以下「G」という。)の防災訓練にJAXAの人工衛星を利用することを提案するためJAXAの担当者に面会をしたものであるが、F4がこの連絡役を担ったり、助言をしたり、面会に同席するなどの便宜供与をしたものと認めた。その上で、後記5のとおり、F4に対する判示別表記載の会食の趣旨は、このような有利かつ便宜な取り計らいを受けたいとの趣旨又はそれらを受けたことについての謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨のもとに行われたものと認定したものである。 以下、その理由を詳述する。 2 証拠上明らかな事実関係各証拠によれば、以下の事実が認められる。 当事者についてア F4は、昭和59年に科学技術庁に採用され、文部科学省大臣官房の総務課長、文化庁の文化部長を務めた後、JAXAに出向し、平成26年7月25日JAXAの参与となり、平成27年4月1日から平成29年3月31日までは理事を務め、同年4月1日には文部科学省の国際統括官に就任した(J甲85)。 イ被告人A4は、前記のとおり、国会議員の秘書として活動していたが、元々は医療コンサルタントとしてクリニックの開業支援に携わり、D 、同年4月1日には文部科学省の国際統括官に就任した(J甲85)。 イ被告人A4は、前記のとおり、国会議員の秘書として活動していたが、元々は医療コンサルタントとしてクリニックの開業支援に携わり、Dと業務提携し、秘書としての活動の傍ら、平成27年には同社の取締役に就任していた。 Dは、病院、診療所等に関するコンサルタント業や医療、介護、福祉に関するコ- 69 - ンサルタント業、経理管理及びマネジメント業務を目的としており、平成22年の設立時からD4(以下「D4」という。)が代表取締役を務めていた。 D2は、D4がDを設立する以前からD4に協力し、平成27年には被告人A4と共に同社の取締役に就任した。なお、D2もA4と同様に国会議員の秘書、政治顧問の名称で活動をしていた。 後述のとおり、Dは、平成23年10月、H1(以下「H1」という。)が代表取締役を務めるHと業務委託契約を締結し、病院リートを実施するために政治家や官僚、病院関係者との会食など接待をしたり、病院リートの説明会を開いたりしていた。 また、Dは、平成27年3月頃、S株式会社(以下「S」という。)から、コンサルタントの依頼を受けた。Sは、JAXAの人工衛星を運営管理し、宇宙飛行士の訓練やJAXAの管制室で働くスタッフの教育などを担っていたが、民間の仕事を得るために医療業界への進出を考え、Dに医療分野への展開や民間活用の可能性について調査報告を依頼していた。 被告人A4とF4との別表記載の会食等についてア被告人A4は、平成25年10月24日、L3からF4を紹介された。 被告人A4は、F4に対し、同日を含め、L3らと共に、②同年12月19日、③平成26年1月23日、④同年2月13日、⑤同年3月7日、⑥同年4月3日、⑦同年8月29日、⑧同年10月3日、⑨平成2 。 被告人A4は、F4に対し、同日を含め、L3らと共に、②同年12月19日、③平成26年1月23日、④同年2月13日、⑤同年3月7日、⑥同年4月3日、⑦同年8月29日、⑧同年10月3日、⑨平成27年5月22日、⑩同年6月18日、⑪同年7月29日、⑫同月30日、和食や中華料理、ステーキ料理店などの高級料理店での会食をし、⑧、⑪を除きいずれも二次会では銀座の高級クラブにおいて飲食し、共に女性による接待を受けていた(以下、⑧のNにおける会食を「N会食」という。)。 F4は、前記の飲食において、いずれも金銭の負担を一切しなかった。 イその後、被告人A4は、L3が同席しない際にもF4と会食等を繰り返すようになり、既にJAXAの理事にあったF4に対し、別表(添付省略)記載のとお- 70 - り、平成27年8月28日から平成29年3月28日までの間、21回にわたり、代金合計147万9848円相当の飲食等をし、平成28年12月5日には、東京都港区内において、タクシーチケット1冊(番号2605501から2605520を含むもの。J甲83、84)を交付した。 F4は、前記の会食等についてもいずれも金銭を一切負担したことはなく、また、前記の21回の飲食等の内、別表番号の1、5、6、8ないし10、12ないし18の合計13回が前記同様に銀座の高級クラブで女性による接待を受けるものであり、その会食の中には、F4や被告人A4が女性の胸を揉んで興じている様子が写真撮影されたものもあった。 3 Dの業務と宇宙飛行士の講師派遣との関係等についてDとHの関係等ア DとHの関係Dは、平成23年10月、H1が代表取締役を務めるHとの間で業務委託契約を締結した(J甲96)。 Hは、一つのビルに複数の診療所等が入り、1階の調剤薬局が集中的に処方箋を受け ア DとHの関係Dは、平成23年10月、H1が代表取締役を務めるHとの間で業務委託契約を締結した(J甲96)。 Hは、一つのビルに複数の診療所等が入り、1階の調剤薬局が集中的に処方箋を受けるというメディカルモールを札幌などで事業展開し、東京にも進出を検討していたところ、H1は札幌で被告人A4と知り合い、東京で適当な物件を探すため、Dとの間で前記業務委託契約を締結した。 H1は、D2らの助言に従い、H2(以下「H2」という。)を設立し、メディカルモールを展開しようとしていた。ところが、候補としていた物件を大手との競合の末に取り逃すなど、メディカルモールの計画は滞っていた。 そうしたところ、H1は、D2から、病院リートを紹介された。H1は、病院リートの仕組みを知らなかったが、D2によれば、病院を流動資産として証券化するものであり、病院をリート化する事務局が資金を集め、運営を賄うものであること、運営母体が病院から替わるものであり、事務局が運営をすることになり、既存の病院に薬局を併設することも可能となることから、病院のリート化はHの事業拡大に- 71 - メリットがある旨説明された。H1は、病院リートによれば企業の規模に関係なく運営母体に関わり、有利な場所に薬局を開設して処方箋を取り込むことができ、大手企業と対抗することもできることから、メリットが大きいと考え、病院リートに取り組むこととし、Dに引き続き業務を委託した。病院リートは、病院の評価をして証券化するものであり、Dがその評価を行うということであった。 D2は、病院リートに関する取り組みをDにおいて取り仕切り、被告人A4と共に病院リートができる可能性のある病院の院長たちとの会食をしたり、説明会を行ったりし、被告人A4を通じて病院リートに関わる官僚や政治家の接待を行い、人間 り組みをDにおいて取り仕切り、被告人A4と共に病院リートができる可能性のある病院の院長たちとの会食をしたり、説明会を行ったりし、被告人A4を通じて病院リートに関わる官僚や政治家の接待を行い、人間関係の構築を進めていた。接待はそのほとんどを被告人A4が担当しており、D2は、被告人A4から、接待等の報告を受け、当該接待の内容や評価、次のターゲットに対する打合せを行っていた。D2は、政治家であるL3やL1を同席させた会食をした上、病院の院長や医大の理事長らへ病院リートの勉強会などの企画を持ち掛け、公益法人、独立行政法人のリート化や大学附属病院のリート化などを検討させていた(J甲112資料1-8等)。D2は、平成26年8月頃、H1に対して、病院リートの実現に時間がかかることについて指摘された際に、「私たちの優位性は時間とノウハウにあり、時間の優位性は規模の小ささを補う唯一の武器であります。我々では、ガイドラインが出来上がり、官庁間の調整が整った時点で、残念ながら大手不動産会社や大手法律事務所に勝つことは出来ません。ガイドライン作りは今年末から年度末にまでに終わり、その後の官庁間の調整は約1年と見込んでおりますが、それでも今年12月~来年3月までに事業内容を確定させ、来年4月までには収支見通しを安定させない限りはこの事業に将来性は無くなります。」など送信しており(J甲112資料1-6)、H1は、大手は官僚の天下りを常にしており、パイプが歴史的にあるので、その意味で新参者である会社がそれに対抗するには、こういうタイミングで早く情報を取って早く仕掛けなければ勝ち目はない、と理解していた。 H1は、前記の活動はD2から病院リートの実現のためのものであると説明を受- 72 - け、会食の費用をHないしH2を通じて支出していたほか、Dに対する業務 ば勝ち目はない、と理解していた。 H1は、前記の活動はD2から病院リートの実現のためのものであると説明を受- 72 - け、会食の費用をHないしH2を通じて支出していたほか、Dに対する業務委託料を概ね月100万円前後支払い、記録として残っているものでも、H2として平成26年1月から同年10月までは月額42万円ないし43万2000円、合計428万4000円が支払われ(J甲99)、Hとして平成26年4月から同年7月まで月額216万円、同年8月、9月に172万8000円、同年10月に189万円、同年11月から平成27年5月まで月額62万6400円を支払っていた(J甲96、99)。 また、前記の他、被告人A4に対しては顧問料30万円を支払い、被告人A4自身、平成26年にはD4と共にH2の取締役に就任していた(J甲101)。 イ被告人A4による接待費、交際費について被告人A4は、前記のとおり政治家、官僚、病院関係者に対する接待を繰り返していた。その中には、平成26年6月26日に東京都渋谷区の「T」において、元国会議員であるL3が主催する会食の際に官僚であるA1(以下、第2においては「A1」という。)や、A2らが同席するものもあった。これ以外にも、接待等の対象となる政治家には、国会議員としてL3の他にL2、L4、官僚ではF4などが含まれていた(J甲97資料2、3-1、3-2)。 なお、H1は、被告人A4の接待がL3、L2、L4など特定の国会議員に集中している上、高級クラブで不必要に接待をしていたことから、D2らにはクラブでの接待を全て禁止するよう伝え、平成26年8月、損害が生じたなどして同年9月末日をもって被告人A4を解任する旨伝えた。 前記の経緯において、D2は、H1に対し、A4が官僚との間で会食を重ねていて信頼関係は強固なも するよう伝え、平成26年8月、損害が生じたなどして同年9月末日をもって被告人A4を解任する旨伝えた。 前記の経緯において、D2は、H1に対し、A4が官僚との間で会食を重ねていて信頼関係は強固なものがあり、病院リートについて官僚への働きかけをするには被告人A4の同行が必要であることなどを述べていた(J甲112資料1-5)。 その後、H1は、D2らによる病院リートの進展の目途がつかず、採算を取ることが困難であると考え、平成27年4月頃、薬局事業の継続をあきらめ、他社に薬局事業を全て譲渡し、清算した。接待費については、被告人A4によるものとして- 73 - 平成26年5月から同年8月まで合計約1611万円となっていたが、その他に前記のとおり実際には被告人A4による会食等も含め、D4の名目で行われた接待費等も平成26年6月から平成27年4月まで合計約1320万円に上っていた。 F4との会食の経緯について被告人A4は、前記のとおり会食をする中で、政治家とも懇意となり、その一人であるL3からF4の紹介を受けた。L3は、「かなり役立つ漢です」としてF4を紹介し(J甲75)、前記2アのとおり、被告人A4はL3と共にF4と飲食を行い、①ないし⑧の費用はいずれもH2が負担したが、被告人A4、L3、F4以外の他の参加者もいるものの、費用は一晩で100万円を超えるものもあった(J甲97資料2、3-1、3-2等)。 F4は、①の会食の際に、被告人A4について、L3の支援者であり、いくつかの会社を経営しているとL3から紹介されており、Hの営業顧問としての名刺やH2の顧問としての名刺を手渡された(J甲114資料1―2)。 さらに、F4は、④の会食では、Dの代表取締役としてD4を紹介され(J甲114資料1-3)、⑥の会食ではD2をH2の社員として紹介 刺やH2の顧問としての名刺を手渡された(J甲114資料1―2)。 さらに、F4は、④の会食では、Dの代表取締役としてD4を紹介され(J甲114資料1-3)、⑥の会食ではD2をH2の社員として紹介され(J甲114資料1-1)、F4は、D4は被告人A4のグループに入っているものと認識し、その旨日記に記載した(J甲73・103丁)。 以上によれば、被告人A4、D2、D4は、いずれもHとの業務委託契約を受けて病院リートへの取り組みを進める中でF4との会食の機会を設けたものと認められる。また、F4も、当初から被告人A4がいくつかの会社を経営していると聞いており、D4やD2との関係をも把握し、遅くともの会食があった平成26年4月頃には被告人A4がDにも関与していること認識していたものと推認できる。 F4とA2らとの会食(N会食)に至るまでア C大学に対するD2らの病院リートに関する取り組みについて被告人A4は、前記のとおり、L3を通じて、平成26年6月26日、A2を紹介されており、A2からは病院経営とそのための資金調達の相談をされていた。D- 74 - 2らは、再度L3を通じてA2と会食をする機会を設け、大学病院の病院リート化について持ち掛けることを予定しており、同年8月28日のMでの会食を通じてそれを実施することとし、H1にその旨報告していた(J甲112資料1-8等)。 イ C大学創立100周年記念事業についてところで、A2は、平成25年7月からC大学の理事長にあったが、同大学は、創立100周年記念事業として、平成28年11月19日に式典、祝賀会を、同月20日に講演会と演奏会を予定していた。C大学の記念式典の検討委員会では、講演会には宇宙飛行士による講演をすることが案として出されていたが、A2は宇宙飛行士の招へいに困難を感 に式典、祝賀会を、同月20日に講演会と演奏会を予定していた。C大学の記念式典の検討委員会では、講演会には宇宙飛行士による講演をすることが案として出されていたが、A2は宇宙飛行士の招へいに困難を感じ、何かつてがないかと考え、知人であるL3に依頼することとした。A2は、平成26年7月30日、L3にU1宇宙飛行士を講師として依頼できないか、A1を通じて紹介して欲しいとメールを出したところ、同月31日、L3は、同年7月にJAXAの参与となったF4を紹介し、「私とA4氏はとても親しくしております。先生のご下命があればすぐに動きます。」と返信した(J甲91資料1-4)。A2とL3は、平成26年8月28日にMで会食を予定しており、その際にF4との面会をA2は依頼したが(J甲91資料1-5)、F4の都合がつかなかった。 平成26年8月28日、Mにおいて、L3、A2、被告人A4、D2、L1が同席し、A2はL3に対して宇宙飛行士の派遣を相談した。被告人A4は、A2に対して病院リートの説明を行った。同日の会食の費用については、H2が負担した(J甲97資料3-2)。 同年9月9日、被告人A4がC大学を訪問し、A2とC大学の財務部長に対して病院リートの仕組みなどを説明した。 この頃、A2は被告人A4に会えば病院リートの話になると思っていた。 F4とA2らの会食(N会食)についてア会食の状況等同年10月3日、Nにおいて会食が行われ(前記⑧の会食)、被告人A4、L3、- 75 - A2、F4、L1が同席した。 席上、A2は、F4に対しC大学100周年記念事業の説明を行い、宇宙飛行士の派遣を依頼した。また、被告人A4が、A2に対し、病院リートの説明を行った。 その際、F4が、「検討委員会は出来レースなので、やったもん勝ちですよ。」と発言した。A 記念事業の説明を行い、宇宙飛行士の派遣を依頼した。また、被告人A4が、A2に対し、病院リートの説明を行った。 その際、F4が、「検討委員会は出来レースなので、やったもん勝ちですよ。」と発言した。A2は病院リートを進めるため、被告人A4に対して、「来週、大学の財務部長と会って説明して説得して欲しい。」などと発言した。 なお、被告人A4は、N会食をする前に、D2との間で、A2に対する対策レビューと称した打合せを行っていた(J甲41、同日12時22分のメール)。 そして、N会食があった日の夜、被告人A4は、D2に対して、「REITは理事長はやる気満々。来週、大学の財務部長と会って説明して説得して欲しいとの事です。F4さんと前打合せして、良かったです。A2理事長にF4さんが、検討委員会は出来レースなので、やったもん勝ちですよって、言ってくれたらA2理事長のスイッチが入りました。」とのメールを送信した(J甲41、同日23時56分のメール)。 翌日である同月4日、H、H2、Dの合同会議が行われた。同議事録では、業務の推移として、C大学について、「A2理事長との昨日の会食にて、来週にもC大学の財務部長と打ち合わせを行うことが決定した。説明後に、機密保持契約を締結し、具体的なスケジュールについて協議をする。東京(駅名省略)駅近くにあるC大学の総資産は1500億円を超える。」と記載されている(J甲113資料1)。 イ会食の趣旨について前記アの事実は、捜査報告書(J甲41)の被告人A4のD2に対するメールや、H・H2・Dの合同会議議事録(J甲113)を中心とする関係各証拠によって認めたものである。 とりわけ、N会食の後に被告人A4から、D2へ送信したメールの記載内容は、被告人A4が、N会食の前に、打合せたとおりに、F4が、病院リートの検討を進 心とする関係各証拠によって認めたものである。 とりわけ、N会食の後に被告人A4から、D2へ送信したメールの記載内容は、被告人A4が、N会食の前に、打合せたとおりに、F4が、病院リートの検討を進める国交省に関し、「検討委員会は出来レースなので、やったもん勝ちですよ。」な- 76 - どと述べ、その発言が奏功して、A2が病院リートの実現に積極的になったということをD2に報告したものとみるほかない。 そもそも、被告人A4とD2は、N会食の直前に対策レビューと称した打合せを行い、A2に対する病院リートの検討を促すための計画を立てたものと認められるところ、当該対策レビューでは、N会食に先立って行われたMでの会食において、A2がC大学の100周年記念事業への宇宙飛行士の派遣を希望していたことを十分に把握し、それを前提にして打合せが行われたものと推認できる。そうすると、当時、病院リートの検討をA2に求めていた被告人A4らは、L3と共に宇宙飛行士の派遣についてF4に口利きすることに応じ、NにおいてまさにA2に対し、F4に口利きをすることを示した上、そうすることによって、A2に対し、C大学における病院リートの導入についてDに有利な方向への検討を促そうとしたものと推認できるのであり、N会食での会話はそのような意図に基づいてなされたものと認められる。 そして、「検討委員会は出来レースなので、やったもん勝ちですよ。」との前記のF4の発言は、「F4さんと前打合せして、良かったです。」との記載に照らして、被告人A4の意図に応じ、A2に対して病院リートの検討をまさに促したものと認められ、前記のような被告人A4とA2との利害関係については、同席したF4もそれをよく認識したものと推認できる。 これに対し、被告人A4は、公判廷において、そもそもA2が求めて さに促したものと認められ、前記のような被告人A4とA2との利害関係については、同席したF4もそれをよく認識したものと推認できる。 これに対し、被告人A4は、公判廷において、そもそもA2が求めていた宇宙飛行士の派遣をF4に口利きすることをもって病院リートをA2に検討をさせようとする意図などはなかった旨述べ、F4と病院リートについて前打合せをしたこともないし、Nでの席上「出来レース」といったのはL3であって、F4ではないなどと述べている。また、F4も、公判廷において、本件で逮捕されるまでの間に病院リートなどの話題を聞いたこともなかった旨述べている。 しかしながら、被告人A4の前記公判供述は、被告人A4自身がD2に送信したN会食に関する前記のメールの記載の文言と明らかにかけ離れていて信用できるも- 77 - のではない。 また、F4は、前記のとおり、Nにおける会食も含め、病院リートの話自体を聞いたことは一切なかった旨述べているが、少なくともN会食において、A2、被告人A4が病院リートを話題にしたことは両名が一致して述べているところであり、会食に同席していたにもかかわらずそれを全く聞いていなかったとするF4の公判供述は不自然で信用できない。 もっとも、被告人A4は、公判廷において、A2も、反対尋問において、寿司屋であるNのカウンターで会食がされ、被告人A4とA2の会話は、離れて座っていたF4には聞こえなかったかのような供述をしている。しかしながら、A2は、検察官による主尋問では、カウンターではなく、N店内の半個室で会食が行われた旨述べていたところ、およそ理由もなく、前記のとおり弁護人の反対尋問では供述を変遷させたものであることに照らし、変遷後の前記のA2の供述や、その後の被告人A4の公判供述は信用性に乏しいというべきである。 いたところ、およそ理由もなく、前記のとおり弁護人の反対尋問では供述を変遷させたものであることに照らし、変遷後の前記のA2の供述や、その後の被告人A4の公判供述は信用性に乏しいというべきである。 むしろ、F4は、N会食の直前である平成26年8月29日に、A4、D2、L3、P5大学のV1理事長、P6大学医学部V2教授、W1らと会食をしたことが認められるところ(前記の会食。J甲73・179丁)、当時、D2は、H1との間で、P5大学医学部付属病院についてのリート化の提案をし、勉強会をスタートすることを要請しようと予定していたことが認められる(J甲112資料1-8)ことからすると、同会食において被告人A4やD2が病院リートを話題にしたことが容易に推認できるのであり、それに同席していたF4がその内容を把握しなかったなどとは考え難い。 そうすると、F4が、Nその他の会食において病院リートの話題を聞いたこともないという供述は信用できない。 C大学の100周年記念事業に宇宙飛行士の講師派遣が決定された経緯について関係各証拠によれば、①F4は、N会食の3日後の平成26年10月6日、JA- 78 - XAの広報部長であるF1(以下「F1」という。)に対し、「宇宙飛行士を講演に呼ぶにはどうしたらいいか、C大学がそういった企画を考えている。」などと確認し、②平成27年3月6日、「X」において、A2とC大学の100周年記念事業の企画立案や各委員会の総括担当をするC3(以下「C3」という。)と会食し、C3に対して、宇宙飛行士の講師派遣の申請書の書き方について助言し、学内に限らず、広く地域社会の人たちを対象とすることや、宇宙と医学というC大学のテーマから、医学者であり、宇宙飛行士であるU2が適任であるなどと助言をし、③さらに、F4は、C3から、C3 て助言し、学内に限らず、広く地域社会の人たちを対象とすることや、宇宙と医学というC大学のテーマから、医学者であり、宇宙飛行士であるU2が適任であるなどと助言をし、③さらに、F4は、C3から、C3が起案した申請書案を確認し、C3はその上で申請書をJAXAの広報部へメールで提出し、④その後もF4はA2と会食を重ね、文部科学省の大臣経験者であったL5国会議員(以下「L5」という。)を会食に同席させる機会があった際には、A2に対し、宇宙飛行士をうまく呼ぶ手段として、「L5先生から私の方に、L5事務所でもいいのだけど、電話一本もらえると私も動きやすい。」などと伝え、会食後、A2は、L5事務所に電話をかけ、F4の電話番号を伝えて、電話1本架けて欲しいと秘書に依頼し、⑤同月、F4は、F1に対し、C大学の申請書が来ていないか、元文科大臣が関係している講演会である旨伝えたことから、C大学の申請について、JAXAの総務部では宇宙飛行士派遣の対象を審査する宇宙飛行士講演活動審査会の最優先活動案件として準備され、F4も理事としてそれを了承し、⑥平成28年4月22日、F4が構成員である同審査会で、C大学100周年記念講演への宇宙飛行士の派遣依頼は最優先活動案件として派遣案件に選定されたことが認められる。 前記事実に加え、JAXA内では、政治家や関係省庁からの宇宙飛行士の講演派遣依頼については、最優先活動案件として、審査会で他の案件と比べて優先的に派遣先として決定されるなどの取り扱いをしていたが、このような取り扱いは公表されていなかったと証拠上認められることを考え合わせると、N会食以降、F4がC大学の100周年記念事業についての宇宙飛行士の派遣について有利かつ便宜な取り計らいをしていることが優に認められる。 - 79 - 弁護人の主張についてア せると、N会食以降、F4がC大学の100周年記念事業についての宇宙飛行士の派遣について有利かつ便宜な取り計らいをしていることが優に認められる。 - 79 - 弁護人の主張についてアこれに対し、弁護人は、F4が前記の申請を最優先活動案件としたのは、被告人A4の影響を受けたものではなく、L5が口利きをしたことの影響であるなどとも指摘するが、そもそも、F4がL5と会った同年12月7日の前には、既にF4はC3が起案した申請書案の確認にも応じていたのであるし、A2がL5事務所に電話をかけるまでの前記の経緯に照らして、採用できない。 イ弁護人は、そもそもA2はL3に対して陳情してF4を紹介してもらったに過ぎず、被告人A4に期待したこともなかったし、被告人A4も関わっていなかったとも指摘する。 しかしながら、この点についても、L3は、被告人A4はF4ととても親しい間柄にある旨メールによりA2に伝えていたのであるから、A2において、F4へ影響力のある被告人A4に対して宇宙飛行士派遣に関する口利きを期待していたことは容易に推認できる。そのことは、最初にF4と会う予定であった平成26年8月28日のMの会食はもちろん、N会食においても被告人A4を同席させたことからしても裏付けられる。 また、被告人A4は、Mでの会食の席上、A2がL3に対して宇宙飛行士の派遣を相談していたことをよく把握し、一方で、被告人A4は、Hの業務委託を受けて病院リートを進める中で候補の一つとなっていたC大学の理事長であるA2に対して盛んに病院リートの検討を求めていたことからすれば、かかる被告人A4が、Nにおいて、A2のF4に対する陳情を後押ししなかったとは到底考えられない。 ウ弁護人は、そもそもF4は、N会食までの会食には、L3に招かれて出席していたのであり、 らすれば、かかる被告人A4が、Nにおいて、A2のF4に対する陳情を後押ししなかったとは到底考えられない。 ウ弁護人は、そもそもF4は、N会食までの会食には、L3に招かれて出席していたのであり、L3との関係でA2に対する配慮をしたとも指摘する。 しかしながら、そもそも、L3が、被告人A4をF4に紹介した経緯等に照らせば、L3との関係でA2に対する配慮をしたからといって、被告人A4との関係での配慮でなくなるものでもなく、両者は併存し得るものである。 また、F4自身、被告人A4が同席している会食は、L3が支出しているもので- 80 - はなく、被告人A4が支払っていることは途中からは分かっていた旨述べており、既にN会食までの間に、F4は、2アの①ないし⑦のとおり7回にわたり会食を共にし、その全てで2次会として銀座の高級クラブで接待を受けている。 そして、実際にも、L3が同席せずに被告人A4と会食を繰り返すようになる前である平成27年8月19日、F4は、鹿児島県南種子島町の種子島宇宙センターで行われたH2Bロケット(こうのとり5号機を搭載)の打ち上げについて、被告人A4夫妻らを関係者と称して無理強いをして招待したなどと自らの日記に記載しており(J甲73・317丁、J104・5:01~5:04)、既に被告人A4のために自らの職務権限を行使して不相当な便宜を図ったという認識をF4が有していたことが認められる。 以上によれば、N会食までの会食にF4を招いていたのがL3であったとしても、被告人A4のために便宜を図っていたという認定は左右されない。 エさらに、弁護人は、そもそも病院リートは、L2の政策であるインフラリートの一つであり、被告人A4は、L2と厚生労働大臣と面談をして意見交換をしたり、L3とともに厚生労働省の担当者らと協議をし エさらに、弁護人は、そもそも病院リートは、L2の政策であるインフラリートの一つであり、被告人A4は、L2と厚生労働大臣と面談をして意見交換をしたり、L3とともに厚生労働省の担当者らと協議をしたり、平成27年6月に「病院不動産を対象とするリートに係るガイドライン」が公表されるまでその検討会を傍聴したり、さらにL3と共に病院関係者に対して普及啓発・ヒアリング活動をしていたのであって、病院リート実現のための活動はDの営業活動ではなく、政治家の政策実現のための活動であった旨主張する。 しかしながら、既に詳細に認定した経過に照らすと、被告人A4が、病院リートに関する取り組みを進めていたのは、当時HのH1との業務委託契約に基づいてDとして活動していたものと認められる。 また、Dにおいて、官僚と面談をする際に有効なものとして政治家を位置付けていたと認められる。すなわち、証拠(J甲112資料1-6)によれば、D2は、H1に対し、「A4抜きのアポイントは現在でも非常に難しいのが事実です。」「これは、この一年間のL2先生やL3先生による引き立てが非常に有効に効いており、- 81 - どのような立場や理由をつけても私単独ではアポが入りません。」(J甲112資料1-6・6頁)、「これまで、長い間をかけてA4さんを官僚サイドに出してきたもので、L3先生のおかげもあり信頼関係は強固なもので、私が急に出て行ってもまだ警戒されているのが実情です。」「L3先生、L1との関係を前面に出しても、官僚サイドの警戒感が解けないので、やはり半年程度は時間がかかるのではないかと見ています。」(J甲112資料1-5・1頁)とのメールを記載している。このようなメールの記載内容からすれば、D2、被告人A4が、政治家を官僚らとの面会を取るための手段として位置付けていたと認め と見ています。」(J甲112資料1-5・1頁)とのメールを記載している。このようなメールの記載内容からすれば、D2、被告人A4が、政治家を官僚らとの面会を取るための手段として位置付けていたと認められ、病院リート実現のための活動に政治家の政策実現のための活動という側面があったとしても、Dの営業活動という側面があったことも優に認められる。 オ弁護人は、病院リートガイドラインによれば、Dは病院リートの仕組みに登場する病院開設者、不動産投資法人などのプレーヤーに該当せず、そもそも報酬を得られるような対象となっていないと主張する。 しかしながら、そもそもDのウェブサイトでは病院リートに関しコンサルタントをすることを明記している。すなわち、Dは、その後D5と社名を変更したが、「病院リート説明会開催中 D5では、大学や病院の要請により説明会を開催しています。さらに、大学や病院の要望により、上場準備のための各種手続きやコンプライアンス体制の構築、東京証券所との予備交渉、関係各庁との事前相談等、上場申請準備からAM会社設立までトータルサポートします。」などと本件事件当時から記載していたことが認められる(J弁28、証人D4の公判供述)。 以上によれば、Dがその営業利益を求めて病院リートについて取り組みを進めていたことは明らかであり、前記エにおける検討結果も考え合わせると、被告人A4が、前国会議員らを通じて政治家との関係を示して官僚らと接触し、官僚らとの関係を用いるなどして病院リートを進め、Hとの業務委託に基づく営業活動をしていたものと認められる。 小括- 82 - 以上によれば、被告人A4は、Dの営業相手であるC大学においてJAXAからの宇宙飛行士の講師派遣を受けるにあたり、F4から助言、助力を受けるなどしたところ、これが病院リートに - 82 - 以上によれば、被告人A4は、Dの営業相手であるC大学においてJAXAからの宇宙飛行士の講師派遣を受けるにあたり、F4から助言、助力を受けるなどしたところ、これが病院リートに関するDのコンサルタント業務等に関して有利かつ便宜な取り計らいになるものと認識し、F4も同様の認識をしていたものといえる。 4 Dの業務とJAXAの人工衛星を利用した業務の提案の関係等について証拠上明らかな事実既に認定したとおり、平成27年3月頃、Dは、JAXAの人工衛星を運営管理するSからコンサルタントを依頼され、Sの医療分野への進出などSについて民間活用を検討していたことが認められるほか、関係各証拠によれば、以下の事実が明らかである。 ア Dは、前記のとおりJAXAの人工衛星を管理するSからコンサルタントを依頼され、当初、Sが医療業界に関心を示しており、DがSの職員に対して基礎的な研修を行ったりしたが、うまくいかず、D2、被告人A4は、Sの危機管理などの知識経験を生かして防災分野に進出することを計画した。 イ被告人A4は、L3を通じて人脈のあった株式会社G名古屋の中枢にいたG1(以下「G1」という。)に連絡を取り、平成28年1月22日、DのD4、D2、被告人A4、E(以下「E」という。)代表取締役のE1(以下「E1」という。)、SのS1部長ほか2、3名がGセンターを訪問した。 ウ Gセンターは、全国のGグループの危機管理を全部集中管理していたところ、見学の結果、想像以上にBCPや防災に対する取組がされており、被告人A4らが提案できることはなかった。 エ被告人A4らは、Gでは海外のBCPや防災対策は手付かずで課題とされていたことから、同年2月10日から同月14日までの間、G1、D2、E1と共にインドネシアのジャカルタに行き、 とはなかった。 エ被告人A4らは、Gでは海外のBCPや防災対策は手付かずで課題とされていたことから、同年2月10日から同月14日までの間、G1、D2、E1と共にインドネシアのジャカルタに行き、ジャカルタGモールを見学し、また、被告人A4、D2、E1は、同年3月頃、マレーシアのGモールも視察した。 オ同月17日、被告人A4は、ジャカルタGモールの社長G2に対し、「早速で- 83 - すが、来週JAXAの理事と打合せをする事になりました。つきましては、G2さんがお話してくれた、Gがジャカルタ(海外)で運営をする上での危機管理やBCPの現状と今後、日本とどの様にコンセンサスや連携を取ればいいのか?など困っている事について株式会社Dによる調査が必要である旨のレコメンレターをメールして頂きたいと思います。それを持って、JAXAの理事にGが海外で直面している問題がある事を理解して貰い、G2さんから頂いたアドバイスである、G3社長との会食(意見交換会)へと根回ししたいと思います。 (中略)なお、株式会社Dは、中国、インド、バングラディッシュ(中略)等アジア全域において医療、福祉、防災分野での調査実績があります。」とメールを送信した。 カ被告人A4は、前記G2からレコメンレターを出すことは留保されたが、そのアドバイスに従い、同年3月1日、Gセンターのセンター長であるG4宛てに、DのD4名義でメールを出した。同メールには、災害時のBCPにおいて、通信回線の復旧や確保を自治体や自衛隊、警察、消防から一元化してできるのがJAXAであり、その実務を担当するのがSであり、災害発生後の過酷な条件でも医療機関との地域連携をできるのがDであるとして、さらにSは衛星画像データをG防災マップに活用できるなどとした上で、「御提案」と題する文書には、予備調査と するのがSであり、災害発生後の過酷な条件でも医療機関との地域連携をできるのがDであるとして、さらにSは衛星画像データをG防災マップに活用できるなどとした上で、「御提案」と題する文書には、予備調査としてBCP運用評価、海外支社のBCP基礎調査等を平成28年4月から6月にかけて行うこと、BCP/BCMコンサルティングとしてJAXAとの協定締結、Sとの協定締結、G防災マップの充実(衛星画像の落とし込み、自治体防災マップの落とし込み)等を平成28年6月以降行うと記載した(J甲126資料1、2)。 キ同月10日、G本社において、D4、D2、被告人A4、E1が、前記G4に対し、カの提案に従って説明した。 ク被告人A4、D2、E1は、マレーシアのGモールを見学した後、D2がGに対する提案として、A案(Z5にGのデータを入力するケース)、B案(GにZ5のデータを入力するケース)、C案(Z7のプラットフォーム上で全ての作業を行うケース)として、それぞれGがDに対して支払う費用として、300万円、500- 84 - 万円、1000万円としたものを作成し、被告人A4もその内容を把握していた。 ケ同月28日、再度G本社で打合せがあり、Dは、D4、D2、被告人A4、E1、Sからは前記S1、GからはG5主任、さらにZ5とZ6の担当者が出席した。GがZ5やZ6と共にするシステムにJAXAの人工衛星の画像のデータを落とし込むこと、Dと契約することのメリット、JAXAの人工衛星画像を使用する際のメリットなどについて協議がされたが、具体的な方向性が定まらず、協議は持ち越しとなった(J甲108)。 コ被告人A4とD2は、前記のような活動をする一方で、平成28年2月6日から同月8日かけて被告人A4がF4と話す内容を打合せ、「F4さん、9日16時半から祐天寺 ち越しとなった(J甲108)。 コ被告人A4とD2は、前記のような活動をする一方で、平成28年2月6日から同月8日かけて被告人A4がF4と話す内容を打合せ、「F4さん、9日16時半から祐天寺で診察リハビリ、その後、軽く一杯やります。話す内容はどうしましょうか?」(J甲69資料2-1)、「F4さんはZ4への協力。JAXAとの取引口座開設への道筋、Sとの関係性説明等でしょう。あとは何かあると思いますか?」(J甲69資料2-2)、「Sとの関係性は、現場は頑張っているが、Yが邪魔をすると言う感じを優しく言えばいいですか?」(J甲69資料2-4)、「現況、不都合が無いのでYの名前を出して批判する必要がないでしょう。GとSとの関係構築も順調に進んでいるので、弾みをつけるために援護射撃をお願いします、の方が得策だと思います。ポジティブ情報10に対して、ネガティブ情報1くらいの割合です。 Gも上手くいけばF4さんの遊びも増えるよ、くらいで。ただ、Sの役員クラスは民間企業を馬鹿にしているから、営業部隊の邪魔をしかねない、くらいのジャブは良いと思います。」(J甲69資料3-1、3-2)などのメールを相互に送っていた。 サ被告人A4は、平成28年2月9日、F4に対し、中目黒駅近くの焼鳥屋において、Gが防災訓練にJAXAの人工衛星を使うことを考えている、Gが衛星を買い取るなどと言った話題を出し、さらに同年3月29日にもF4に対し、GがJAXAの人工衛星を利用して防災訓練をしたいと申し入れた。 シ同年3月30日、F4は、JAXAの第一宇宙技術部門衛星利用運用センタ- 85 - ー(SOAC)長であるF5(以下「F5」という。)に対し、Gが防災訓練にJAXAの人工衛星を使いたいとして、Gは各地のGモールを災害時の拠点とすることを考えており、6月頃 ンタ- 85 - ー(SOAC)長であるF5(以下「F5」という。)に対し、Gが防災訓練にJAXAの人工衛星を使いたいとして、Gは各地のGモールを災害時の拠点とすることを考えており、6月頃にイベントを行うなどと伝えた。F4とF5は、Gとそのコンサルタント会社各1名との面会を同年4月11日にJAXAの東京事務所の役員応接室で行うこととし、F4は、第一宇宙技術部門の担当理事にも同様の説明をした(J甲95資料1ないし4、9)。 ス F4は、被告人A4に対して前記について連絡した。被告人A4は、同年3月30日、D2に対し、「F4さんから連絡があり、4月11日、16:30に御茶ノ水JAXA事務所にてと決まりました。F4さんからのお願い 2020までの全体像の企画書。前回の防災訓練の内容。今回計画している防災訓練の内容。防災訓練の内容がいかに公的な物なのかをアピールして欲しい。JAXAの技術を使うのは試験的では無く、2020までの将来を通じて自社で完結出来る様にJAXAの力を借りたい。みたいな感じの内容にして欲しいとの事でした。」とメールを出した(J甲69資料6-1)。 セ同年4月11日、JAXAの東京事務所において、JAXA側からは、前記衛星利用運用センターからF5ほか1名、第一宇宙技術部門の事業推進課から1名、F4の計4名が出席し、G側からは、DのD2、被告人A4が出席し、Gの担当者は欠席したが、協議が行われた。 ソその後、同年5月24日、A4から、F5宛に、熊本震災のためにスケジュールが変更になり、当初の防災訓練も変更になったとの連絡があった(J甲95資料30)。 検討前記認定事実によれば、被告人A4が、Dの業務として株式会社Gに対しJAXAの人工衛星の衛星画像の利用を提案するなどしており、Dの営業活動として行われ があった(J甲95資料30)。 検討前記認定事実によれば、被告人A4が、Dの業務として株式会社Gに対しJAXAの人工衛星の衛星画像の利用を提案するなどしており、Dの営業活動として行われたことが明らかである。さらに、F4においても、被告人A4がDとしてGの防災訓練に関してJAXAの人工衛星を利用するため、JAXAの担当者に面会を申- 86 - し入れたことをよく認識した上で、打ち合わせの場を設けたことが認められる。F4は、その連絡役を担い、担当者やその理事にも概要を伝え、日程調整を行った上、被告人A4には予めJAXAとの協議に必要な検討事項を伝えるなどの助力、助言をするなどの根回しまで行い、面会の際には同席していたものである。加えて、前記面会の後に、F5が他の担当者に対し、今後のことを考えると、G側から連絡があったとの外形を整えるべきとの提案をしていると証拠上認められる(J甲95資料26)ことからすると、F4の関与は単にJAXA側の窓口を紹介したにとどまらず、JAXAの人工衛星をGの防災訓練に使用することの実現に向けて、自らJAXA内部の担当者らに取次ぎなどを行い、F4が被告人A4のDとしての営業に有利かつ便宜な取り計らいをしたものと認められる。 弁護人の主張についてこれに対し、弁護人は、被告人A4はL4の政策顧問として政治活動をしており、L4の政策である「防災対策・国土強靭化」の具体的実現の一つとして、JAXAやSの有人宇宙技術の民間活用を発案し、その具体的な活用先としてGを対象としたものであり、G防災訓練における衛星利用はJAXAの民間活用と防災対策・国土強靭化の双方を実現する公益性の高い仕組みであった旨主張する。 しかしながら、被告人A4とGの担当者であるG1とのメールの記載や、JAXAで面会したF5とのメ 用はJAXAの民間活用と防災対策・国土強靭化の双方を実現する公益性の高い仕組みであった旨主張する。 しかしながら、被告人A4とGの担当者であるG1とのメールの記載や、JAXAで面会したF5とのメールの記載等は、いずれもDの担当者である被告人A4と交渉をしたものとされており、L4の政策顧問としての立場を示すものは一切存在しない。 この点について、被告人A4は、Dにはお手伝いをしてもらっていた、などと供述しているところ、その趣旨はあいまいである上、前記のとおり、D2がGに対する提案として、A案からC案まで、Dの業務内容に応じて費用額を300万円から1000万円と設定し、呈示する予定であったことが認められ、被告人A4自身もその内容を把握しているのであるから、Dがその営業活動としてGとの案件に関わっていることを認識していたことは明らかである。 - 87 - さらに、F5の公判供述によれば、被告人A4から防災対策・国土強靭化に関する発言もなかったことが認められる。すなわち、F5は、公判廷において、「同年4月11日、東京事務所において、JAXA側からは、SOACのF5、F6、第一宇宙技術部門の事業推進課のF7、F4が、G側からはコンサルのA4と、D2が出席し、Gの防災に関する取組、過去の事例などの紹介があり、JAXA側からもWINDSの説明、過去の防災への取り組みを紹介したが、G側からは、具体的な使い方の説明はなく、将来のGの業務や防災に関する展望などの話もなかった。」「JAXA側から、民間事業者による一過性のイベントにならないような位置付けができるか検討され、シナリオを設定し、A4にメールで示した。」「4月11日の段階で、各地で物流の起点となる巨大スーパーマーケットであるGが切断されないようにすることが国民的な利益になる、などという説 できるか検討され、シナリオを設定し、A4にメールで示した。」「4月11日の段階で、各地で物流の起点となる巨大スーパーマーケットであるGが切断されないようにすることが国民的な利益になる、などという説明はなかった。海外のGとのネットワークの話も一切なかった。」などと述べ、F5は、被告人A4らが具体的な提案もなくJAXAとの協議をしてきたことから、やむなくJAXA側からその後メールで具体案などを呈示した旨述べている。この供述は、F5が被告人A4に送信したメール(J甲95資料24)に、「なお、防災訓練では、衛星通信を利用するシナリオを設定しそれにそった訓練を行うものと考えられますが、次のようなシナリオが設定できると、物流網を運用しているGの特徴が出てよいのではないかと考えていますが、如何でしょうか。『現地で必要な物資等の情報を現地拠点で集約して衛星回線を利用して中央拠点に伝達、それを受けて必要な物資をGの物流網に活用して収集・提供する。(将来的には)衛星画像で津波被害域等を把握することにより道路通行可否の確認が行え、輸送計画が立案できる。』」こうしたシナリオが設定、実証できると、物流網を運用しているGと実験する意義が説明できると共に、G側は将来の(商用衛星の利用を含む)衛星導入に向けた事前実証になるといった位置付けで説明できるのではないかと考えています。」と記載されていることに裏付けられており、信用することができる。 これらによれば、弁護人が主張するような、防災対策・国土強靭化に関連させた- 88 - 具体的な提案が被告人A4やD2からJAXA側に対し何もなされていないことが明らかであるが、L4の政策として防災対策・国土強靭化を進めるためにJAXAの人工衛星の民間利用を提案しようとしていたというのであれば、前記のとおりF4から防災訓練 側に対し何もなされていないことが明らかであるが、L4の政策として防災対策・国土強靭化を進めるためにJAXAの人工衛星の民間利用を提案しようとしていたというのであれば、前記のとおりF4から防災訓練の内容がいかに公的な物なのかをアピールして欲しいという助言も得ていながら、防災対策・国土強靭化に言及しなかったとは考えられない。この点について、被告人A4は、国会議員であるL4の名前を出すことは、L4の政策として行われることを示すことになり、政治家関与となるといろんなバイアスがあるのでそのような説明はできなかったなどと述べているが、L4の氏名を出すことなく、防災対策・国土強靭化という公的な利益があることを説明することは十分可能であったと考えられ、この点に関するA4の説明は不自然・不合理というほかない。 以上によれば、Dの営業のためではなく、L4の政策目的のためにGの防災訓練にJAXAの人工衛星を利用することを提案しようとしたという被告人A4の公判供述は信用できず、弁護人の主張は採用できない。 5 判示別表(添付省略)記載の会食等の趣旨について 以上検討したところを前提に、判示別表(添付省略)記載の会食等の趣旨について検討する。 被告人A4は、F4と知り合ってから約2か月後である平成25年12月19日から平成29年3月28日までの間に、30回以上にわたり、F4に一切費用を負担させることなく飲食等を提供し、そのほとんどは高級飲食店や高級クラブでの飲食等であったのであり、知り合ってから間もない時期から、前記のような頻度で高額の飲食等の提供をするということ自体から、一定の見返りや便宜を求める趣旨で飲食等を提供していたものと強くうかがわれるところである。 のみならず、前記3において検討したとおり、被告人A4がDの営業相手であるC大学の理事 いうこと自体から、一定の見返りや便宜を求める趣旨で飲食等を提供していたものと強くうかがわれるところである。 のみならず、前記3において検討したとおり、被告人A4がDの営業相手であるC大学の理事長であるA2に対して病院リートの検討を求め、他方でA2がC大学100周年記念事業の講演に宇宙飛行士の派遣を求めているという状況の中、F4は、C大学の100周年記念事業についての宇宙飛行士派遣について、申請書を事- 89 - 前に見たり、最優先活動案件として選定させたりするなど宇宙飛行士の講師派遣に向けた便宜供与をしており、被告人A4及びF4においてそのような便宜供与がDの病院リートに関する営業に有利かつ便宜な取り計らいとなることを認識していたと認められる。さらには、前記4において検討したとおり、JAXA東京事務所でのDの被告人A4、D2とJAXAのF5らとの面会をF4をして調整させるなど被告人A4のDとしての営業に便宜を図っていると認められることからすると、既に認定したF4への一連の飲食の提供等が、以上のような便宜供与を受けることを期待し、実際に便宜を受けた後はそれに対する謝礼としてなされ、今後も同様の便宜供与を図ることを期待してされたものであると推認できる。 加えて、判示別表(添付省略)記載の一連の飲食の提供等は、Dとの間で業務提携をしたEのE1をしてその費用を負担させたことが証拠上明らかであるところ、E1は、公判廷において、①Eの業績が下降気味であったところ、「国の仕事をしている。」などと言う被告人A4から、「お金はかかるが政治家や官僚を紹介してあげる。」などと言われ、平成27年4月以降、政治家であるL3、L4、官僚では文部科学省のF4、A1らを紹介され、接待を繰り返し、支払いは全て行っていた、②被告人A4らは、接待をすることで自 介してあげる。」などと言われ、平成27年4月以降、政治家であるL3、L4、官僚では文部科学省のF4、A1らを紹介され、接待を繰り返し、支払いは全て行っていた、②被告人A4らは、接待をすることで自分たちの行うビジネスの口利きや紹介などの便宜を図ってもらうため、自分たちが進めたい分野の監督官庁などの役人を紹介してもらっていた、③被告人A4は、政治家や官僚など相手の好みに応じ、A1であればゴルフ関連のお付き合いや練習、レッスンや会食等を行ったり、F4であれば都内の一等地にあるような高級料理店、和食屋、ホテルや会員制の施設のある飲食店や寿司屋、カニ料理、ちゃんこ料理屋、高級割烹料理屋などに行き、その後二次会で銀座の高級クラブ等に行き、普通の客ではできないようなホステスの胸を触らせ、判示のタクシーチケット1冊を渡すこともあった、などと述べている。 E1の前記供述は、E1が別表(添付省略)記載の会食等の経費を支払ったことについては、領収書等(J甲83)によって裏付けられている上、その会食の趣旨は、被告人A4らの会話の録音内容に関する証拠によって裏付けられており、基本- 90 - 的に信用することができる。 すなわち、被告人A4やD2らの会話内容の録音によれば、「官僚とか、局長クラスになるとみんな招待しているんだよ。」「みんなが知らないようなご飯屋さんを探しては、連れてってあげてる。」「この野郎、お前、飯食ったろ、働けよ、早くって言うやつは誰もいないじゃない。」(J甲106、31:34~34:29)との被告人A4やD2の会話が認められる。 また、Eの社員となっていた被告人A4の兄に対し、その取引相手と交渉した際の経過を叱責したときの被告人A4やD2の発言として、「公平に仕事をさ、振り分けてもらいに行くんじゃねえんだよ。よその会社よりも良 、Eの社員となっていた被告人A4の兄に対し、その取引相手と交渉した際の経過を叱責したときの被告人A4やD2の発言として、「公平に仕事をさ、振り分けてもらいに行くんじゃねえんだよ。よその会社よりも良い条件で、優先的に仕事を出せって言うために、上から話を下ろしてんだよ。」「権力使ってやってんだよ、俺たちはよ。」「Eはちっちゃいけど、ケツのバックが大きいから、突っ込んでけって話なの。」「Z1か、Z2が一番強い、その上に大物が総務省なんだよ。その総務省からの話なんだよ。本家の話、てめえら、そんなことするのかよ、という話をしなければならない。」「実際にだってガチでけんかしたら、会社がでかい方が体力あるから強いに決まってんじゃん。だけど、総務省が付いているとこの方が強いに決まってるじゃん。」などと発言したことが認められる(J甲107、18:25~22:10、34:08~36:40、43:09~45:34)。 さらに、Dとして被告人A4、D2、D4が、Gの担当者らとの間で平成28年3月28日に説明した際には、D2が、「簡単に言いますと、文科省と話ができるのはうちの会社だけなんです。」(J甲108、4:59~)、「JAXAの衛星画像を使いたいですね、民間で使いたいですね、Gが使いたいですね、という場合に、文科省、JAXA、Sと行政にはたらきかけて上から降ろしていくことができる、これがDなんです。」「医療の関係で文科省と大学病院の関係でつながりがある。」「今回はJAXAの衛星画像ですが、例えば、警察の持っているこれとか、消防の持っているこれとか、国交省で持っている、Z6でいえば省庁が持っているこういう情報だとか、それらを民間で使えないか、そういったものを調べる能力がある。」「J- 91 - AXAだけでなく、総務省とか、国交省を始めとする防災関係 いる、Z6でいえば省庁が持っているこういう情報だとか、それらを民間で使えないか、そういったものを調べる能力がある。」「J- 91 - AXAだけでなく、総務省とか、国交省を始めとする防災関係の省庁、地方自治体とか、できるかできないかを調べる能力がある。」「文科省さんとお話ができるラインが張り巡らされている。」「事前に話を通すことができる。」(J甲108、40:54~43:00)などと発言をしたことが認められる。 以上のE1供述や、それに沿う一連の証拠の内容からすれば、被告人A4らが、F4やその他多くの官僚や政治家らとの接待を繰り返し行った趣旨は、政治家や官僚との関係を利用し、便宜を受けることで、Dの営業をより有利に行うためのものであったことが優に認められる。そうすると、数ある接待をした官僚のうち、JAXAの理事であったF4への別表(添付省略)記載の接待の趣旨は、Dの営業相手において、JAXAの宇宙飛行士の派遣を受けたり、JAXAの人工衛星を利用した業務を提案するに当たり、実際に便宜な取り計らい受けたことに対する謝礼を含むものであることも推認でき、前記における推認を補強している。とりわけ、平成28年4月11日にJAXAの東京事務所において、Dとして被告人A4とD2がJAXAのF5らと面会ができたことが認められるところ、同日の夜にも、F4は、高級料理店での会食の接待を受け、さらに銀座の高級クラブで接待を実際に受けており(別表番号6)、まさに謝礼として接待を行ったものとみるのが自然である。 そして前記のとおり、Dは、Sとの間でコンサルティング契約を締結しており、被告人A4が、Sと密接な関係にあるJAXAの理事であるF4に対し、その後も前記と同様に便宜を受けられる関係を維持したいと考えるのは当然とも考えられる。 前記のとおり、被告人A グ契約を締結しており、被告人A4が、Sと密接な関係にあるJAXAの理事であるF4に対し、その後も前記と同様に便宜を受けられる関係を維持したいと考えるのは当然とも考えられる。 前記のとおり、被告人A4とD2は、「GとSとの関係構築も順調に進んでいるので、弾みをつけるために援護射撃をお願いします、の方が得策だと思います。ポジティブ情報10に対して、ネガティブ情報1くらいの割合です。Gも上手くいけばF4さんの遊びも増えるよ、くらいで。ただ、Sの役員クラスは民間企業を馬鹿にしているから、営業部隊の邪魔をしかねない、くらいのジャブは良いと思います。」などと認識を共有しており、F4を利用することがDとしての契約相手であるSの民間活用に資するものであり、それにより継続的な営業利益を上げることを意図してい- 92 - たと認められる。 結局、その後の別表番号7以下の接待も同様に、Dの営業に関し、JAXAの人工衛星の利用などを含め、便宜な取り計らいを受けることを期待して継続的に行われたものであると認められる。 6 F4の職務権限、収賄の故意についてF4の職務権限についてF4は、平成27年4月1日からJAXA理事であったところ、JAXA理事は、理事長を補佐して機構の経営に当たり、理事長の定めに従い、F4は広報部、評価・監査部、総務部、人事部、財務部、契約部、施設部、宇宙教育推進室などを所管すると共に(J甲76資料④)、JAXAの業務運営の基本方針、業務の実施に関する重要事項その他重要な意思決定を要する事項に関する審議を行う理事会議の構成員であった(J甲76資料⑦)。 そして、JAXAでは、宇宙飛行士の広報活動に関し広報部が所管し、講演依頼について最優先活動対応案を広報理事らに諮り決定し、政治家等案件は、総務部が優先案件として判断し、か た(J甲76資料⑦)。 そして、JAXAでは、宇宙飛行士の広報活動に関し広報部が所管し、講演依頼について最優先活動対応案を広報理事らに諮り決定し、政治家等案件は、総務部が優先案件として判断し、かつ、必須条件を満たす案件を最優先活動候補として識別し、宇宙飛行士講演活動審査会に付議し、同審査会が審議し、対応方針を決定するところ、審査会の構成員には広報部担当理事が含まれている(J甲77)。 以上によれば、F4が、宇宙飛行士の講師派遣に関し、所管する権限を有していたことは明らかである。 また、JAXAでは、超高速インターネット衛星(WINDS)の実験運用として社会化実験(民間利用実証実験等)を行っており、これらは衛星利用推進センターが業務を担当し、これは第一宇宙技術部門の所管であったが、前記のとおりF4はJAXA理事として前記のとおり理事長を補佐して機構の経営に当たる権限があるとされていること、人工衛星の社会化実験の一つとしてGが使用することになれば報告事項として理事会議に付議されることも予想されたこと、契約部としてGが有償使用する場合には所管する理事として権限が及ぶものであったことが認められ- 93 - る。 以上によれば、F4が、被告人A4の求めに応じて人工衛星をGの防災訓練に関し、自ら第一宇宙部門の担当者らに取次ぎを行うなどした一連の行為は、F4の職務権限に属するものといえる。 F4の収賄の故意について前記5において検討したところなどによれば、F4自身、前記を含めた被告人A4への対応をしたことにより、被告人A4から高額の接待等を繰り返し受けていたことが、賄賂に該当することを認識していたものと推認できる。 F4は、当公判廷でそれを否定するかのような発言もしているが、証拠によれば、被告人A4やD2との会食において、「退官し 繰り返し受けていたことが、賄賂に該当することを認識していたものと推認できる。 F4は、当公判廷でそれを否定するかのような発言もしているが、証拠によれば、被告人A4やD2との会食において、「退官した後に、どれだけ若いお姉ちゃんと遊ぶか。」「楽しみですね。」と言われると、「今遊ぶと失脚しちゃうから。」「身を慎んで。」などと発言したほか(J甲105・50:21~52:22)、被告人A4とのLINEでのやりとりにおいて、「明日、秘書と会食する際には、私の話は一切しないでくださいよ。それから、5000円以上の接待は倫理法に基づいて届け出が必要であることにも留意のこと」「秘書はその辺のことが分かってなくて、喋りかねないから危ない。」「私はA4さんとの会食については届け出なんかしてないですが、本来は必要」「兎に角、私はこんなことで失脚したくないので、私とA4さんが会食していることはご内密に」(J甲40添付資料33頁)と記載している。 F4は、「法律に抵触しようがしまいが銀座のどこどこに被告人A4と行ったということ自体のダメージが大きい。きれいごとの解釈とは別に、これは出せないなと思っていた。」旨述べており、これらの記載や供述からも、社会的に見ておよそ理解が得られるようなものではなく、極めて不相当な利益を自己の職務に関して受けていたことを認識していたことが裏付けられている。 以上によれば、F4に収賄の故意があったことは明らかである。 7 弁護人の主張についてこれに対し、弁護人は、①被告人A4は、平成24年頃にL1の私設秘書に、- 94 - 同年10月にはL2と知り合い、同人の議員引退後、同人の秘書的業務を行い、平成25年にはL3を紹介され、同人の秘書的立場になり、さらに同年秋にはL4を紹介され、平成27年には同人の政策顧問になるなど、 年10月にはL2と知り合い、同人の議員引退後、同人の秘書的業務を行い、平成25年にはL3を紹介され、同人の秘書的立場になり、さらに同年秋にはL4を紹介され、平成27年には同人の政策顧問になるなど、政治家の秘書、政策顧問等として活動していたのであり、議員らと同席し、あるいはその代理として官僚と会食をするようになっていた、②官僚らとゴルフをしたり、観劇をしたりするのは仕事を通じて知り合った者と個人的な友人関係ができたに過ぎず、社会的にありふれた通常のことであり、官僚を籠絡して営業活動をしようとしたものではない、③別表記載の会食は、政治家秘書、政策顧問として官僚に対して行われたものであり、慣習として政治家側が会食費用を持つことになっており、政治家は国家公務員倫理法においても利害関係者として扱われていない、④別表記載の2、3、7、11、13、19、20はいずれも観劇をした後に会食をしたものであるところ、被告人A4の妻がバレエの大ファンであり、別表番号2の当日、元々オペラやバレエの観劇を趣味としていたF4が、公益財団法人Z3を通じてチケットを手配し、被告人A4夫妻と観劇をしたことをきっかけに家族ぐるみでバレエやオペラを観劇するようになったものに過ぎず、その際に行われた会食も、1人数千円程度のチェーン店の居酒屋が含まれるなど、F4が手配した公演チケットの価値が高額なものであることからしてもそれに見合うようなものでもなく、純粋にF4と親睦を図るためのプライベートな会食であった、⑤別表番号9、16から18、21の各会食は、被告人A4がL4の政策顧問として設立準備を進めていたZ4に関する会食であり、F4の職務権限とは関係がないなどと主張し、被告人A4もそれに沿う供述をする。 しかしながら、弁護人の主張はいずれも採用できない。 弁護人は、①、③のとお 準備を進めていたZ4に関する会食であり、F4の職務権限とは関係がないなどと主張し、被告人A4もそれに沿う供述をする。 しかしながら、弁護人の主張はいずれも採用できない。 弁護人は、①、③のとおり、別表記載の会食は、被告人A4が、政治家秘書、政策顧問であり、政治家側の立場として官僚であるF4に接したものであって、慣習として政治家側が会食費用を持っていた、政治家は国家公務員倫理法においても利害関係者として扱われていないなどと指摘する。 しかしながら、国会議員等の政治家といえども、別の職を有して事業を営み、当- 95 - 該事業の利益のために行う場合には、国家公務員倫理法上においても事業者に該当し、職員との関係で利害関係があれば利害関係者となるのは当然であり、同法による規制の対象となるのは明らかである。さらに、当該職員の職務に関して、職務に対する対価として利益を与えるものであれば、それが賄賂に該当するのも当然である。この点に関する弁護人の主張は採用できない。 そして、被告人A4らによる接待の趣旨は、被告人A4やD2らの会話内容の録音テープからすれば、高額の接待を繰り返し、官僚らを懐柔し、被告人A4らの要望に自然に沿うような関係にさせ、Dの営業活動において便宜を受けることを意図していたものであることは既に詳述したとおりである。 また、弁護人は、被告人A4の政治家の秘書等の立場にあったことを強調するが、そもそも被告人A4、D2は、政治家としての肩書を利用することで、F4へ接待をしようとしていたことが認められる。 すなわち、関係各証拠(J甲105・1:42~1:43。J弁20)によれば、被告人A4、D2は、F4に対して、「家族でセブに遊びに来れば。」「夏休み、いや冬休みがいいか。2泊3日でも行ける。奥さんと娘は1、2週間か。」などと誘 05・1:42~1:43。J弁20)によれば、被告人A4、D2は、F4に対して、「家族でセブに遊びに来れば。」「夏休み、いや冬休みがいいか。2泊3日でも行ける。奥さんと娘は1、2週間か。」などと誘ったのに対し、F4が「そんなん、もう行ったらアウトだよ。」「現役のときに海外に行ったらアウト。」「だってEさんで行くわけでしょ。まずいよ。」などと明らかに収賄になる危険があるとして失職する旨発言すると、D2らが「家族旅行だから。」「A4さんの国会議員の秘書兼政策秘書が。」「何ならL4先生も一緒に。」などと被告人A4が国会議員の秘書として随行するとの名目であれば問題がないという趣旨の発言をしている。この発言を受けて、F4も、「都合良かったんだよね。政策秘書ってのがないとね、なかなか難しい。」などと述べていること、F4の紹介により被告人A4らがスポーツ庁の幹部を来訪するに当たり、F4が、被告人A4にDの名刺ではなくL4の政策顧問の名刺の使用を求め、D2にも利害関係人でないような名刺の使用を求めたり、幹部と面談する際には政策顧問として面談するよう念を押していることが認められる。以上のとおり、被告人A4、D2、F4がいずれも国会- 96 - 議員の秘書などの肩書を形式的に、いわば隠れ蓑として利用していたことを前提にするとよく理解できるやり取りをしている。 その上で、さらに②、④について検討をすると、弁護人の指摘するとおり、仕事を通じて知り合った者と個人的な友人関係が生じることは社会的にもあり得ることで不自然ではないが、他方で、官僚に対して高額の接待を繰り返して親しくなった末に個人的な関係ができたとしても、直ちに純然たる私的な交際に変化するものではないこともまた当然の理といえる。 証拠をみても、被告人A4とD2らは、「家で接待してもいいけど を繰り返して親しくなった末に個人的な関係ができたとしても、直ちに純然たる私的な交際に変化するものではないこともまた当然の理といえる。 証拠をみても、被告人A4とD2らは、「家で接待してもいいけどな。」「大体結構官僚ばかだからホームパーティーに呼ばれるのは大丈夫って勝手に勘違いしている。」「家族で食べにきちゃう。」「まあ、その方がいい。」「家族でもってなついちゃったら、お父さんだけ逃げられない。」「そうそう。」「贈収賄は外の話だけどさ、家族からみはなされちゃってさ。」「それでもう来年ね、K君が医学部入っちゃったら、もう」「ツモ」「大恩人ですよ。」「次官だからね。」などとA1を前提とした会話をしている(J甲123・1:18:40~)。 前記の被告人A4らの発言内容からすれば、家族ぐるみで付き合うといった私的な交際であるような形式を整えれば、官僚らが受け入れやすくなるとの認識を有していたと認められる。前記で指摘したとおり、D2がF4を家族ぐるみでセブに招待しようとしたこともその一環と認められる。これらによれば、確かにF4とのバレエなどの観劇をしたことや、F4の妻や被告人A4の妻が同席するなど家族ぐるみで交際をしていた経過は認められるものの、それらは、被告人A4やD2がその状況をも利用してF4を懐柔しようとしていたとみることができ、純然たる私的な交際であることの現れとは認め難い。被告人A4自身、観劇後の会食においても、仕事の話をした旨述べており、その他の会食との区別があったとも言い難い。実際、メール等の証拠をみても、平成28年6月17日の会食である別紙番号7について見ると、同日、被告人A4は、D2に対し「F4さんとバレエ観に行きます。」「何か有りますか?」とメールを送り、D2は「W2さんが足踏みしている理由(こち- 97 - らの る別紙番号7について見ると、同日、被告人A4は、D2に対し「F4さんとバレエ観に行きます。」「何か有りますか?」とメールを送り、D2は「W2さんが足踏みしている理由(こち- 97 - らの予想)を確認できれば理想的です(中略)相手の気分が良ければ軽めに聞いてみて下さい。」などと当時のスポーツコンプライアンスに関しての話題を出すことを予定しており、被告人A4とF4との純然たる私的な交際であることとそぐわないやり取りがされているというべきである。結局、観劇後の会食の費用を被告人A4が負担した趣旨も、それ以外の接待と同様、F4による便宜を期待してなされたものが含まれていると推認でき、この点に関する弁護人の主張も採用できない。 ところで、被告人A4は、⑤に関し、Z8に所属していたL4の関与の下、Z9のL6らとも協力し、スポーツコンプライアンスに関する政策を進めていたものであり、スポーツコンプライアンスの教育をするための団体の設立を目指して活動していたところ、当時のスポーツ庁次長との間でトラブルが生じたり、スポーツ庁名義のスポーツコンプライアンスの重要性に言及する書面を作成したりした際にF4に相談をしており、別表番号9、16から18、21の各会食はそのためのものである旨述べ、弁護人もこの相談はF4の職務権限とは関係がない旨主張する。 確かに、前記のスポーツ庁の設立に関わる経過は、JAXAの理事であったF4の職務とは本来無関係のものであるのは指摘のとおりであるし、F4が、前記次長との個人的な関係があったことから、同人とL4との間のトラブルを仲裁した経過があったことなどもそのとおりである。 しかしながら、当該団体は、スポーツ庁の補助金事業としてコンプライアンスに関する現況評価事業を400万円で事業委託を受けているが、そもそも、同団体の設立 経過があったことなどもそのとおりである。 しかしながら、当該団体は、スポーツ庁の補助金事業としてコンプライアンスに関する現況評価事業を400万円で事業委託を受けているが、そもそも、同団体の設立登記の手続、補助金事業の申請等はDのD3が行い、補助金の受注後は、その現況評価事業をやはりD3がSと共に行ったものであることが証拠上認められる。 D3は、具体的な契約関係は分からないなどと述べているが、報酬は期待していた旨述べており、結局のところ被告人A4がDの営業も兼ねて関与していたものと認められる。また、スポーツ庁名義のスポーツコンプライアンスの重要性に言及する書面も広く企業に対して寄付金を集めるためのものである上、証拠によれば、D2と被告人A4は、「大学、高校等の学校毎に協会への会員費1万円を求める。」「それ- 98 - でも1億集まる。」「コンプライアンスのマニュアルはうちがつくり、自治体、企業にも浸透する。」「スポーツ庁もばかだからさ、高校部活のガイドラインを作るとか言っていて、今度行ったときに頭ひっぱたいてやって、お前何言っているんだよ、うちのコンプライアンスの下に作ればいいだろ、と言ってやる。」などと発言している(J甲123・2:09~2:11、2:13~)。加えて、E1の供述によれば、被告人A4とD2は、業界に団体を作ってコンプライアンスに関する事業として教育事業であるとか監査する団体とか作ってビジネスを進めることを計画しており、うまくいけば何十億も稼げるなどと発言していた旨供述し、それに沿う内容の被告人A4とD2との間のメールによるやり取りも認められる(J甲69資料10)。これらによれば、被告人A4らが、団体の利益を上げ、それを享受しようとしていたことが認められる。 以上によれば、被告人A4によるスポーツコンプライアンス るやり取りも認められる(J甲69資料10)。これらによれば、被告人A4らが、団体の利益を上げ、それを享受しようとしていたことが認められる。 以上によれば、被告人A4によるスポーツコンプライアンスに関する活動自体、純然たる政治活動として行ったものとは到底いえず、D、ひいては自らの利益も目的に行ったものであると認められる。そしてF4が被告人A4の前記活動に便宜供与をした趣旨も、被告人A4による度重なる接待を受けたことの見返りであることは既に検討したところから明らかである。 そうすると、前記の弁護人の指摘する別表番号9、16から18、21の各会食は、そのようなF4の職務権限外にわたる相談や謝礼を含めたものであることは否定できないものの、他方で、従前から行われていたJAXA理事としての職務権限に関わる人工衛星の利用に関する営業等の謝礼や、今後も同様にDの営業等に有利な取り計らいを受けることを期待してなされたものを排除する趣旨のものでもないことは明らかである。結局、職務行為に関する利益の提供と、職務行為外の便宜供与を受けたことに関する利益提供が混在していたということになるが、飲食等の提供により得た利益が不可分なものであることを考慮すれば、それらは包括して賄賂性を帯びるものというべきである。したがって、この点に関する弁護人の主張も採用できない。 - 99 - 8 結論以上によれば、その余の弁護人の主張を考慮しても、判示第2のとおり、被告人A4には贈賄罪が成立する。 (量刑の理由)第1 被告人A1、被告人A2、被告人A3について本件は、判示第1 のとおり、文部科学省の大臣官房長であった被告人A1が、同省が私立大学に経常費等の補助金を支援するブランディング事業の申請に際し、請託を受け、被告人A2が理事長、被告人A3が学長である は、判示第1 のとおり、文部科学省の大臣官房長であった被告人A1が、同省が私立大学に経常費等の補助金を支援するブランディング事業の申請に際し、請託を受け、被告人A2が理事長、被告人A3が学長であるC大学がその選定を受けられるよう、同大学が提出する事業計画書の記載等について助言・指導をした上、その謝礼として、C大学医学部医学科の一般入試に際して、被告人A2、被告人A3から被告人A1の二男の試験の点数に加点を受け、正規合格者の地位を受けたという贈収賄の事案である。 被告人A1についてみるに、すでに検討したとおり、広範な職務権限を有する大臣官房長として、ブランディング事業の助言・指導については差し控えるべき立場にあったにもかかわらず、助言・指導を行っただけではなく、前記のとおり私立大学における入学者選抜の公正確保を求める書面を通知するなど大学入試を所管する文部科学省の大臣官房長という立場にありながら、こともあろうに、自らの二男が受験した大学入学試験において点数の加算を受け、正規合格者としての地位の付与を受けるという、入試の公平性を蔑ろにすること甚だしい利益を賄賂として収受したものであって、文部科学省の大臣官房長としての職務に対する公正さとそれに対する社会の信頼を害した程度は著しいものというほかない。被告人A1において、職務の公正やその信頼を保持しようとする意識は鈍麻していたといわざるを得ず、相当強い非難を免れない。 被告人A2は、C大学において、多額の寄付金を出す縁故受験生に対し、入学試験の点数に加点して不正に合格させることを繰り返す中、補助金を得るために文部科学省の大臣官房長である被告人A1に接触を図り、被告人A1の息子が医学部へ- 100 - の入学を希望していることが分かるとこれに応じ、判示犯行に及んだものであって、動機 金を得るために文部科学省の大臣官房長である被告人A1に接触を図り、被告人A1の息子が医学部へ- 100 - の入学を希望していることが分かるとこれに応じ、判示犯行に及んだものであって、動機・経緯に酌むべき点は見当たらず、贈賄の共犯者間では主導的立場にあったことも考慮すると、やはり強い非難を免れない。 被告人A3は、被告人A2からブランディング事業の申請に際し、文部科学省の幹部から便宜を得ていることを聞いていながら、その幹部の息子の入学に際して加点する不正を共に行った上で、学長として最終的に合否を決めていたのであり、相応の非難を免れない。 これらに加え、被告人3名は、公判廷において、いずれも各自の犯行を否認して、不合理な弁解に終始しており、反省の態度も認められない。 しかし他方で、被告人A1が得た利益をみると、二男は加点がなくても補欠合格ができる順位にいたところ、加点により正規合格に繰り上げられたというものである。これが、既に検討したとおり賄賂足り得る利益であることには疑いはないものの、そもそも最終的に合格者の地位を得ることができなかったのにその地位を得たというような事案ではなく、その点は情状において考慮すべきである。加えて、被告人A1は、前科前歴がなく、定年退職したものの、退職金の支給が差し止められるなど一定の社会的制裁を受けていることなどの酌むべき事情が認められ、これらの事情を考慮すると、直ちに実刑をもって臨むのは酷であるとの感を免れず、主文の量刑が相当であると判断した。 被告人A3については、犯行への関与は受動的なものであったことに加え、被告人A2、被告人A3両名について、前科前歴がなく、理事長又は学長を辞任するなどして一定の社会的制裁を受けていることなどの酌むべき事情が認められるので、これらの事情を考慮し、主文の たことに加え、被告人A2、被告人A3両名について、前科前歴がなく、理事長又は学長を辞任するなどして一定の社会的制裁を受けていることなどの酌むべき事情が認められるので、これらの事情を考慮し、主文の量刑が相当であると判断した。 第2 被告人A4について判示第1の3の事実について、被告人A4は、被告人A1と、被告人A2の双方が不正な利益を求めていることをよく認識した上で会食の機会を設けたのみならず、その後も被告人A1が表に立つことを避けるため、まさに暗躍して被告人A2との- 101 - 間を取り持って、被告人A1の指導内容等を伝え、被告人A1の犯行を強く手助けしたものである。このように幇助犯とはいえ重要な役割を果たしたことは明らかであり、強い非難を免れない。 また、判示第2の事実についてみると、JAXAの理事であったF4に対して、被告人A4が取締役を務めるコンサルタント会社の営業相手において宇宙飛行士の講師派遣を受けることができたり、あるいはJAXAの人工衛星を利用した業務を提案したりするに際し、助言・助力を受けるなどの便宜を得たことの謝礼、さらに今後も同様の便宜を得る目的で高額の接待等を繰り返したものであり、本件犯行において、国立研究開発法人の職員として、みなし公務員とされるJAXAの理事の職務権限の行使に対する公正さとそれに対する社会の信頼を大きく害する犯行である。 被告人A4は、共犯者D2と共に、コンサルタント会社として文部科学省との関係があることを取引相手に対して誇示し、営業を有利に展開しようと考え、F4を通じて多数の官僚らとの接触を図り、官僚や政治家との接待を繰り返していた中で犯行を行っており、利欲的な動機に斟酌すべき点はないし、政治家の政策顧問などの名刺を最大限利用するなど態様も巧妙で、計画的、常習的犯行である。 との接触を図り、官僚や政治家との接待を繰り返していた中で犯行を行っており、利欲的な動機に斟酌すべき点はないし、政治家の政策顧問などの名刺を最大限利用するなど態様も巧妙で、計画的、常習的犯行である。 被告人A4は、接待行為を実行する役割を担っていたものであり、指示役であったD2と同様、中心的な役割を担っていたものであって、等しく重い責任があるというべきである。 しかるに、被告人A4は、当公判廷で不合理な弁解を繰り返し陳弁するだけでなく、正当な政治活動であるなどと強弁しており、反省の態度は皆無である。 以上のとおり、犯情、一般情状は芳しいものではないが、他方で、被告人A4に前科前歴がないこと、判示第1の3の犯行は幇助犯にとどまることに加え、同種事案の量刑傾向に鑑みると、やはり直ちに実刑をもって臨むことには躊躇を覚えることから、主文の量刑が相当であると判断した。 (求刑被告人A1に対し懲役2年6月、被告人A2に対し懲役1年6月、被告人- 102 - A3に対し懲役1年、被告人A4に対し懲役2年)令和4年7月20日東京地方裁判所刑事第16部 裁判長裁判官西野吾一 裁判官小林謙介 裁判官足立洋平- 103 -

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