令和1(行コ)330 措置命令取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和2年12月3日 東京高等裁判所
ファイル
hanrei-pdf-91890.txt

判決文本文6,331 文字)

令和2年12月3日判決言渡令和元年(行コ)第330号措置命令取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成30年(行ウ)第30号)主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 消費者庁長官が平成29年▲月▲日付けで控訴人に対してした不当景品類及 び不当表示防止法7条1項の規定に基づく命令(消表対第〇号)を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,控訴人が,商品販売用ウェブサイトである「Amazon.co.jp」(以下「本件ウェブサイト」という。なお,以下,略称は原則として原判決に従う。)を運営して,リテール事業(控訴人が,仕入先から商品を調達し,本件ウェブサ イトにおいて販売する小売事業)及びマーケットプレイス事業(控訴人が,商品の製造事業者,小売業者等に対し,控訴人が運営する本件ウェブサイトにおいて商品を販売等する場を提供する事業)を営んでいるところ,消費者庁長官から,控訴人に対し,平成29年▲月▲日,A株式会社製の3種類のクリアホルダー(原判決別紙1別表1記載の各クリアホルダー),株式会社B(ブランド名・ C)製ブレーキフルード(原判決別紙1別表2記載のブレーキフルード)及び株式会社D製のE(原判決別紙1別表3記載の甘酒)の合計5つの商品について,それぞれ,製造事業者が一般消費者への提示を目的としないで商品管理上便宜的に定めていた価格又は製造事業者が設定したいわゆるメーカー希望小売価格より高い価格を,本件ウェブサイトに記載された「販売価格」を上回る「参考価 格」として,いわゆる見え消しにした状態で併記し,実際の「販売価格」が「参 考価格」に比して安いかのように表示し,もって,景 件ウェブサイトに記載された「販売価格」を上回る「参考価 格」として,いわゆる見え消しにした状態で併記し,実際の「販売価格」が「参 考価格」に比して安いかのように表示し,もって,景表法5条2号が規定する表示(同法5条2号は,「商品…の価格…について,実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品…を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって,不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあ ると認められるもの」と規定する。)をしたとして,景表法7条1項の規定に基づく命令(本件措置命令)を受けたため,控訴人が,その取消しを求める事案である。 原審は控訴人の請求を棄却したところ,控訴人が控訴した。 2 関連する法令等の定め,前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張の要 点は,原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」1ないし4(原判決3頁8行目から82頁11行目まで。原判決119頁から131頁までの別紙1から4までを含む。)に記載のとおりであるから,これを引用する。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求は理由がないと判断する。その理由は,次のとお り補正するほかは,原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」1ないし5(原判決82頁13行目から118頁1行目まで。原判決132頁から138頁までの別紙5及び6を含む。)に記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 原判決82頁14行目冒頭から90頁20行目末尾までを次のとおり改め る。 「⑴ 景表法上の措置を受けるべき表示をした主体ア本件措置命令は,控訴人が,景表法5条2号が規定する不当な表示を行った事業者であるとして ら90頁20行目末尾までを次のとおり改め る。 「⑴ 景表法上の措置を受けるべき表示をした主体ア本件措置命令は,控訴人が,景表法5条2号が規定する不当な表示を行った事業者であるとしてされたものであるところ,控訴人は,これに該当しないとして争っている。 イそこで検討するに,景表法は,その1条に目的規定を置いて,「この 法律は,商品…の取引に関連する不当な…表示による顧客の誘引を防止するため,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより,一般消費者の利益を保護することを目的とする(景表法1条)。」と規定している。 このように,景表法は,「商品の取引に関連する不当な表示」による 「顧客の誘引を防止し」,「一般消費者の利益を保護することを目的とする」ものであるところ,前記前提事実に証拠(乙2の1ないし3,乙3,4)によれば,本件措置命令で問題とされている5つの商品の各ウェブサイト上の表示を見ると,いずれも「この商品は,Amazon.co.jpが販売,発送します。」との記載がされ,控訴人自身が「販売者」となるいわゆるリ テール商品であることが明示されており,これら5商品の「販売者」に関して,控訴人以外の業者の会社名などの表示は一切されていない。そして,これら5商品の各ウェブサイト(乙2の1ないし3,乙3,4)には,それぞれの商品の写真や内容説明などと共に,「販売者」である旨明示された控訴人が実際に販売する価格(たとえば乙2の1では「¥637」), その直近上部に「参考価格」という金額(乙2の1では「¥4,860」)とそれをいわゆる見え消し(乙2の1では「¥4,860」)の状態にする抹消線の表示,さらには,実際の販売価格の直近下 ), その直近上部に「参考価格」という金額(乙2の1では「¥4,860」)とそれをいわゆる見え消し(乙2の1では「¥4,860」)の状態にする抹消線の表示,さらには,実際の販売価格の直近下部に,割引額と割引率(乙2の1では「OFF:¥4,223(87%)」)という記載がされていると認められる。 そうすると,これら5商品に関して,およそ販売者として控訴人以外の業者名の表示がされていない本件において,控訴人のウェブサイト上のこれら5商品に関する「販売価格」,「参考価格」等の表示を見た一般消費者は,販売者である控訴人が,それぞれの商品の実際の販売価格を決め,その安さを強調して顧客を誘引するために,「参考価格」,「割引 額」,「割引率」等の表示をしたと理解する以外に考えようがなく,この 「参考価格」,「割引額」及び「割引率」等の表示によって,本件各商品が大幅に割引されたお買い得品であると一般消費者が誤解するとするならば,「商品の取引に関連する不当な表示」を行って「不当な顧客の誘引」を行った「主体」は,控訴人と考えるほかにはないということになる。 ウもとより,景表法5条は,事業者が,自己の供給する商品の取引について,同条1号ないし3号に該当する不当な表示を行ったときは,同法7条1項により,当該事業者に対し,その行為の差止め,その行為が再び行われることを防止するために必要な事項を命ずるなどのいわゆる「措置命令」を発することができるとしており,そうすると,景表法5条にいう不 当な表示をした事業者とは,不当な表示内容を決定した事業者をいうもの,すなわち,措置命令を受けたときに,その不当とされる表示内容を使うことを止める決定をしたり,再び同様なことを行うことを防止するために必要な事項を決定し は,不当な表示内容を決定した事業者をいうもの,すなわち,措置命令を受けたときに,その不当とされる表示内容を使うことを止める決定をしたり,再び同様なことを行うことを防止するために必要な事項を決定したりすることができる権限を有する事業者でなければならないことになる。 これを本件について見ると,控訴人は,自ら開設したウェブサイトを用いてリテール事業を行い,商品の販売者となっているのであるから,自らがある特定の商品の販売者となるに当たって,いかなる顧客誘引のための行為をするかについては,一般に商品の売主が広告等によって一般消費者に対して様々な誘引行為を行うのと同様に,違法不当との評価に当 たらない限り,控訴人は,それらの行為を行う権限を有するというべきである。すなわち,本件において,措置命令を受けたとした場合に,自らウェブサイトを開設してリテール業者として販売している控訴人は,たとえば「参考価格」という表示をやめたり,「参考価格」として表示される価格をより低いものに変更する権限を当然に有するというべきであり, 本件において控訴人にそのような措置命令に従った行為をする権限がな いと解すべき事情は見出せない。 実際に,本件表示①については,平成29年頃,本件商品②の参考価格が間違っているのではないかという趣旨のカスタマーレビュー(顧客による書き込み)が複数回掲載されたため,控訴人の担当者は,Aの担当者に対し,その参考価格の設定が正しいのかどうかを確認し,適正な価 格でないのであれば修正するように連絡しており(甲28,乙29),また,実際に,控訴人は,本件表示①については平成29年5月10日,本件表示②については同年6月29日,本件表示③については同年8月10日,それぞれ,参考価格の表示を削除して り(甲28,乙29),また,実際に,控訴人は,本件表示①については平成29年5月10日,本件表示②については同年6月29日,本件表示③については同年8月10日,それぞれ,参考価格の表示を削除していることが認められる(乙6,7,24,25,弁論の全趣旨)のであって,控訴人は,本件の5商 品について,それらの商品の誘因行為となる参考価格等の表示内容について決定権限を有していたと認められる。 エ以上によれば,本件においては,表示内容の決定に「関与した」事業者か否かというやや広範かつあいまいな概念に該当するか否かについて議論するまでもなく,控訴人は,景表法5条2号にいう不当な表示をした事 業者に該当するといえる。 ⑵ 控訴人の主張に対する判断ア控訴人は,景表法5条2号の表示行為をした事業者は当該表示の内容を決定した者であるところ,本件各表示における参考価格は,仕入先や出品者が,単独で又は控訴人以外の者と共同して決定した上で,控訴人 に対し,本件ウェブサイトに表示するよう指図したものであり,控訴人は,それを機械的に表示したにすぎず,別途,小売業者としての表示を作成又は使用した事実はないから,同条が規定する表示をした事業者には該当しない旨主張する。 イしかしながら,まず,控訴人は,自ら創設した本件ウェブサイトを用い て,本件の5商品について自ら販売者となってリテール事業を行ってい るのであるから,当然のことながら,それらの商品の内容や価格等について,一般消費者に対し,良い商品が安く買えると思うような広告宣伝活動を行って営業を行うことは,違法又は不当でない限り,一般に販売者である控訴人の自由に委ねられているというべきである。仮に,控訴人の言うように,控訴人以外の事業者等が,本件ウェブサイトに表示 宣伝活動を行って営業を行うことは,違法又は不当でない限り,一般に販売者である控訴人の自由に委ねられているというべきである。仮に,控訴人の言うように,控訴人以外の事業者等が,本件ウェブサイトに表示された 「参考価格」の内容を決定し,それを表示するように控訴人に対して指図し,控訴人はそれを機械的に表示するしかないということになるのであれば,そのような事業者等と控訴人との間で,その旨の特別の合意があると考えるほかないが,そのような特別の合意がされたと認めるに足りる証拠はない。 ウかえって,控訴人が消費者庁に提出した報告書(乙7)に添付されている「仕入契約書の当社雛形」は,控訴人が商品提供者等と個別の契約を締結する際の雛形になるものと解されるが,その第5条(商品情報)2項(b)には,控訴人は,仕入業者が提供する商品情報に合理的な編集又は調整を加えることができる旨の規定があることが認められる。これと上 記イで述べた事実とを考え合わせれば,控訴人は,各商品提供者との間で,控訴人が商品販売者として,一般消費者に対する誘引として用いる「参考価格」等の表示について,それを各商品提供者から具体的な金額の案の提供を受けるにしても,各商品提供者がその「参考価格」を控訴人に指図し,控訴人はそれに対して編集や調整などの変更をすることは許 されず,その提供を受けた金額を機械的に表示するしか許されないというような拘束を受けるものであったとは,到底考えられない。 エ以上より,控訴人の上記主張は,採用することができない。」⑵ 原判決106頁6行目の「しかし,」から17行目末尾までを次のとおり改める。 「控訴人の上記主張は,景表法5条2号にいう表示を行った事業者は,「そ の表示内容の決定に関与した事業者」であ 6行目の「しかし,」から17行目末尾までを次のとおり改める。 「控訴人の上記主張は,景表法5条2号にいう表示を行った事業者は,「そ の表示内容の決定に関与した事業者」であると解すべきことなどから,本件において,5商品それぞれの製造事業者,仕入先又は出品者などが,本件各表示を行った事業者であることを前提としているものと解される。しかしながら,前記1(争点1について)に説示したとおり,本件においては,表示内容の決定に「関与した」事業者か否かというやや広範かつあいまいな概念 に該当するか否かについて議論するまでもなく,景表法5条に違反した事業者に対する措置命令の制度によって一般消費者の利益を保護するという景表法の目的等に照らして,本件ウェブサイト上の5商品に関する参考価格等を表示したと一般消費者が理解するのは控訴人であり,かつ5商品の販売者として,参考価格等の表示を止めたり,変更したりする権限を有するのは控訴 人であるという前提で,景表法5条2号にいう表示を行った事業者は控訴人であると判断しているのであるから,控訴人の上記主張は,当裁判所の考え方とその前提を異にするものであって,採用の限りではない。」⑶ 原判決107頁19行目の「しかし」から末行末尾までを次のとおり改める。 「しかしながら,控訴人の上記主張は,景表法5条2号にいう表示を行った事業者は,「その表示内容の決定に関与した事業者」であると解すべきことなどを前提として,本件において,5商品それぞれに関わる製造事業者,仕入先又は出品者などが,本件各表示を行った事業者であることを主張しているものと解されるところ,当裁判所は,本件に関しては,前記⑴アのよう な前提で,景表法5条2号にいう表示を行った事業者は控訴人であると判断している 件各表示を行った事業者であることを主張しているものと解されるところ,当裁判所は,本件に関しては,前記⑴アのよう な前提で,景表法5条2号にいう表示を行った事業者は控訴人であると判断しているのであるから,控訴人の上記主張は,当裁判所の考え方とその前提を異にするものであって,採用の限りではない。」 2 以上によれば,控訴人の請求は理由がなく,これを棄却した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり 判決する。 東京高等裁判所第21民事部 裁判長裁判官定塚誠 裁判官谷口園恵 裁判官増誠一

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る