平成11(行ウ)26 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成13年3月26日 浦和地方裁判所 住民訴訟
ファイル
hanrei-pdf-15632.txt

判決文本文21,924 文字)

主文 1 被告Aは,埼玉県飯能市に対して,金292万3200円及び別表遅延損害金計算表記載の各内金に対する同表起算日欄記載の日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告らの被告Aに対するその余の請求及び被告Bに対する請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,原告らに生じた費用の2分の1と被告Aに生じた費用は,これを2分し,その1を原告らの負担とし,その余は被告Aの負担とし,原告らに生じたその余の費用と被告Bに生じた費用を原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の申立て 1 原告ら(1) 被告らは,連帯して埼玉県飯能市に対し,金622万6500円及び内金311万3250円については平成9年4月1日から,内金311万3250円については平成10年4月1日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 訴訟費用は,被告らの負担とする。 (3) 仮執行宣言 2 被告ら(1) 本案前の答弁被告らに対し,飯能市に対する金311万3250円及びこれに対する平成9年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の連帯支払を求める請求に係る訴えを却下する。 (2) 本案の答弁原告らの請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は,原告らの負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,埼玉県飯能市の住民が,飯能市が平成9年度の庁用バス運行業務の委託契約締結のために実施した指名競争入札手続において,最低制限価額を設ける等の法令違反があり,そのため,本来落札を許すべきでない業者に落札を許し,当該業者が入札した,より高額の委託料額で右委託契約を締結し,また,平成10年度については,随意契約の許される場合でないのに,前年度の業者と随意契約の形式で同額の委託料額で委託契約を締結し,もって,飯能市に対し,本来の最低入 額の委託料額で右委託契約を締結し,また,平成10年度については,随意契約の許される場合でないのに,前年度の業者と随意契約の形式で同額の委託料額で委託契約を締結し,もって,飯能市に対し,本来の最低入札額との差額相当の損害を与えたと主張して,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,飯能市に代位し,飯能市長及び同市総務部庶務課長個人に対して,右の損害賠償を請求した事案である。 被告らは,本案前の主張として,平成9年度分の請求に係る訴えについては,適法な監査請求を経由しておらず,それにつき正当な理由もない不適法な訴えである,本案については,右各契約手続には原告主張の違法はなく,適法であると主張している。 2 基本的事実関係(当事者間に争いがないか,証拠[甲1号証ないし8号証,12号証ないし14号証,乙1号証及び2号証,4号証ないし37号証,証人Cの証言,被告Bの供述]及び弁論の全趣旨により認められる。)(1) 当事者ア原告らは,いずれも埼玉県飯能市(以下「飯能市」という)の住民である。 イ被告Aは,本件当時,飯能市長の職にあった者であり,被告Bは,平成8年4月1日から平成11年3月31日まで,飯能市総務部庶務課長の職にあり,主として,庶務文書係における法規及び文書の取扱に関する事務処理を担当していた者である。 (2) 飯能市における庁用バス運行業務の民間委託の検討ア飯能市における庁用バス運行業務とは,市の職員,市民,その他の関係者を研修,施設見学等の目的で市内外の各所に運送する業務(業務の規模は,平成7年度の実績でみると,平日運行:月曜日から金曜日まで,時間外運行・早朝出発・夜間帰庁:年間約200時間,休日等の運行:年間約12回,年間運行範囲:市内約70回,県内約82回,県外約32回[宿泊を伴うもの約10回]であった。)であり, から金曜日まで,時間外運行・早朝出発・夜間帰庁:年間約200時間,休日等の運行:年間約12回,年間運行範囲:市内約70回,県内約82回,県外約32回[宿泊を伴うもの約10回]であった。)であり,従来,この業務は,市の職員を運転手として運用されていた。 イ平成8年7月頃から,政府の行財政改革の方針もあり,飯能市においても,行政改革大綱が策定され,各種事務処理の見直しや民間委託の推進等の方針が示された。そして,庁用バス運行業務についても,前記運転手が定年に達することもあって,その民間委託が検討されることになり,助役及び総務部長の指示により,被告Bにその検討が命ぜられた。 そこで,被告Bは,同年8月から同年9月にかけ,上記業務の合理化の方策を検討し,問題点を指摘した書面(乙22号証)を作成して関係部署に配布し,更に,同年10月から同年11月にかけて,平成7年度の実績を基礎とし,この業務を民間委託をした場合の委託料の見積り等を行い,その検討結果を「バス運行業務委託内容(合理化検討書)」と題する書面(乙23号証)にまとめ,助役等に報告した。 ウこのような経緯で,平成8年11月,飯能市においては,平成9年度から庁用バス運行業務を民間に委託して行うことを決定し(以下「本件民間委託」という。),被告Bに対し,本件民間委託の具体的手続の立案及び実施が命ぜられた。 (3) 平成9年度の本件民間委託手続の実施等ア被告Bは,本件民間委託を地方自治法(以下「法」という。)234条1項所定の指名競争入札の方法により実施するのを相当と考え,指名業者の選定作業を行うこととし,具体的には,総務部長及び企画財政部長に相談した結果を踏まえ,飯能市,埼玉県日高市及び同県入間市において営業している運送業者を対象として,平成9年2月頃までに,次の9社を指名業者として選定 ととし,具体的には,総務部長及び企画財政部長に相談した結果を踏まえ,飯能市,埼玉県日高市及び同県入間市において営業している運送業者を対象として,平成9年2月頃までに,次の9社を指名業者として選定した(なお,(ア)の国際興業と(オ)の武蔵貨物自動車は,後日,入札を辞退した。以下,この2社を除いた業者を一括して「本件指名業者」という。)。 (ア) 国際興業株式会社飯能市α(イ) 西武自動車株式会社所沢市β(ウ) 株式会社飯能観光バス飯能市γ(エ) 株式会社東栄自動車飯能市δ(オ) 武蔵貨物自動車株式会社飯能市ε(力) 丸大観光株式会社入間市ζ(キ) 有限会社みやび交通日高市η(ク) 有限会社三国交通飯能市ε(ケ) 信州リースバスサービス入間市θイ飯能市契約に関する規則(ただし,平成10年規則第39号による改正前のもの。以下「本件規則」という。)3条は,飯能市の指名競争入札に参加しようとする者及び随意契約の方法により契約の締結を希望する者は,一定の期間毎に所定の書類を市長宛提出し,指定業者としての承認を得なければならないと規定している(以下「本件承認」という。)。 本件指名業者のうち,東栄自動車は本件承認を受けていたが,他の業者は,いずれも本件承認を受けていなかった(当時本件承認を得ていた業者は他に二社あったが,営業所の所在地との関係で指名業者から除外された。)。 ウ委託料については,被告Bは,平成7年度の実績と予想される人件費,運行経費(燃料費,車検,修繕料等),保険料,重量税,その他の一般管理費等にっき調査を遂げ,財政課の予算査定を受けた結果,本件民間委託に係るバス運行経費を744万円と試算した。 そして,被告Bは,本件民間委託に係る契約の締結に当たっては 料,重量税,その他の一般管理費等にっき調査を遂げ,財政課の予算査定を受けた結果,本件民間委託に係るバス運行経費を744万円と試算した。 そして,被告Bは,本件民間委託に係る契約の締結に当たっては,機会均等及び公正の見地も重要であるが,本件民間委託が,市の研修,施設見学等に伴う交通手段の確保を目的とするものであって,職員,住民等の生命,身体の安全に関わるものであることから,異常に安価な入札価格での落札を未然に防止することも必要であり,そのためには,受託者の資力,信用及び経験の確保の見地の検討もまた重要であると考え,本件民間委託については,予定価格及び最低制限価格(地方自治法施行令[以下「令」という。]167条の13,同条の10第2項)を設定した指名競争入札手続によることにつき決済を求める平成9年3月10日付伺書を作成し,同日,財政課長,企画財政部長,総務部長,助役及び市長である被告Aの承認を得た。 エ総務部長は,平成9年3月10日付の書面をもって,本件各指名業者に対し,本件民間委託に係る指名競争入札を行うことを通知した(以下「本件入札」という。)。右通知書には,今後の手続進行の予定(説明会,入札日,契約日),委託業者決定の方法(最低価格入札者が委託業者となること,最低制限価格が設けられること,予定価格を超えた場合は再入札となること等)が記載され,委託業務の内容を記載した庁用バス運行業務委託仕様書が添付されていた。 オ同月14日,飯能市役所において,本件入札の説明会が開催された。 右説明会における確認及び変更事項(この中には,契約期間は1年であるが,初回入札により誠意ある業者に決定し,特に問題なく受託事項を遂行した場合には,次回以降随意契約により同じ業者が継続するというのが慣例になっている,との記載がある。)は,後日書面で本件指定 であるが,初回入札により誠意ある業者に決定し,特に問題なく受託事項を遂行した場合には,次回以降随意契約により同じ業者が継続するというのが慣例になっている,との記載がある。)は,後日書面で本件指定業者に送付された。 なお,被告Bは,この頃,財政課に対し,本件民間委託について,民間委託料年間約744万円として,予算措置をとるよう要請していたが,平成9年3月21日に,飯能市議会において,平成9年度予算案として上記委託料が可決された。 力同月24日,飯能市役所において,本件入札が行われ,本件指名業者がこれに参加した。 総務部長は,同日,入札に先立ち,前記の被告Bの委託料の試算価格を参考にして,予定価格を779万9400円(消費税額を含む。消費税額を除くと742万8000円)に,最低制限価格を546万8400円(同。消費税額を除くと520万8000円,)と決定した。 この入札手続における本件各指定業者の入札価格(消費税別)は,次のとおりであった。 (ア) 東栄自動車 363万5000円(イ) 西武自動車 456万円(ウ) 三国交通 660万円(工) みやび交通 685万円(オ) 丸大観光 757万9000円(力) 信州リースバスサービス 780万円(キ) 飯能観光バス 1037万8400円キ右入札の結果,東栄自動車及び西武自動車の入札価格は,いずれも前記最低制限価格を下回っていたため除外され,予定価格の範囲内における最低価格で入札した三国交通が落札者と決定された。落札価格は660万円,業務委託金額は,右落札価格に消費税額を加えた693万円であった。 被告Bは,同月25日,企画財政部長,総務部長,収入役,助役及び市長たる被告Aに対し が落札者と決定された。落札価格は660万円,業務委託金額は,右落札価格に消費税額を加えた693万円であった。 被告Bは,同月25日,企画財政部長,総務部長,収入役,助役及び市長たる被告Aに対し,右入札結果を報告し,本件民間委託につき,三国交通との庁用バス業務委託契約を締結する準備を進めることにつきの承認を得た。 ク飯能市長(被告A)と三国交通は,同年4月1日,契約金額を年額693万円(消費税額33万円を含む。年額を12等分し,三国交通は,毎月1回,翌月5日までに請求書を提出し,飯能市は請求受理後30日以内に委託代金として57万7500円ずつを支払う。),契約期間を同年4月1日から平成10年3月31日までとする平成9年度庁用バス運行業務委託契約(以下「本件9年度契約」という。)を締結した。 なお,飯能市は,上記契約締結の際,関東運輸局長から特定旅客自動車運送事業の経営の許可を受けるまでの間,三国交通が,事実上,庁用バスの運行業務を行うことになることについては,やむを得ないものとして了承していた。 ケ飯能市は,平成9年5月から平成10年4月にかけて,三国交通に対し,本件9年度契約の委託料として,毎月57万7500円ずつを支払った(最終月分は,平成10年4月24日)。 飯能市事務専決規定(昭和54年3月31日規程第1号,以下「本件専決規定」という。)によると,1件100万円以下の収入,支出負担行為及び支出命令は部長の共通専決事項,1件20万円以下の収入,支出負担行為及び支出命令は課長の共通専決事項,庁用自動車等の使用及び管理並びに損害賠償保険に関することは庶務課長の専決事項と定められており,上記委託料に係る支出命令は,上記定めに従い,総務部長の専決により処理された。 コ三国交通は,平成9年4月24日,関東運輸局長に対し,特定旅客自動 に関することは庶務課長の専決事項と定められており,上記委託料に係る支出命令は,上記定めに従い,総務部長の専決により処理された。 コ三国交通は,平成9年4月24日,関東運輸局長に対し,特定旅客自動車運送事業の経営の許可申請(事業区域・飯能市,運行の需要者・飯能市,取扱旅客の範囲・市の行政目的達成及び市主催行事の遂行のために公務に携わる関係者の輸送に限る。)を行い,これに対し,同局長は,同年6月10日,a事業用自動車両側中央部に「飯能市」と明記すること,b事業用自動車の運行は,飯能市の指示によるものとするとの条件を付して,同事業の運営を許可した(関自旅1第792号)。 なお,関東運輸局埼玉陸運支局長は,同年7月2日,三国交通に対し,a貸切旅客自動車運送事業を免許を受けずに経営したこと,b車体表示をしていない事業用自動車があったこと,c乗務記録を備え付けていない事業用自動車があったことを理由として,文書警告処分(以下「本件処分」という。)をした。 (4) 平成10年度の本件民間委託手続の実施等ア被告Bは,平成10年4月1日付の伺書で,本件9年度契約の業務遂行状況が良好であり,かっ,関東運輸局の許可との関係で継続性が必要とされるものであることから,三国交通との間で,前年度と同様の内容の平成10年度庁用バス運行業務委託契約(以下「本件10年度契約」という。)を,令167条の2第2号の規定による随意契約の形式で締結することの決裁を求め,同日,総務部長,収入役,助役を経て,市長である被告Aの決裁を得た。 イそして,飯能市長(被告A)と三国交通は,同年4月1日,契約金額を年額693万円(消費税額33万円を含む。年額を12等分し,三国交通は,毎月1回,翌月5日までに請求書を提出し,飯能市は請求受理後30日以内に委託代金として57万7500円ずつ 4月1日,契約金額を年額693万円(消費税額33万円を含む。年額を12等分し,三国交通は,毎月1回,翌月5日までに請求書を提出し,飯能市は請求受理後30日以内に委託代金として57万7500円ずつを支払う。),契約期間を同年4月1日から平成11年3月31日までとする本件10年度契約を締結した。 本件規則18条の2は,市長は,随意契約によろうとするときは,2人以上の者から見積書を徴するものと規定しているが,本件10年度契約の締結に際し,被告Aは,三国交通の提出した見積書が本件9年度契約と同額の委託料額であったこと,本件9年度契約における三国交通のバス運行業務が良好であったことから,同条ただし書所定の,契約の性質又は目的により,その必要がない場合に当たると認め,三国交通以外から見積書を徴することを求めなかった。 ウ飯能市は,平成10年5月から平成11年4月にかけて,三国交通に対し,本件10年度契約の委託料として,毎月57万7500円ずつを支払ったが,この各支払も,本件専決規定の前記定めに従い,総務部長の専決により処理された。 (5) その後の監査請求等の手続ア飯能市議会議員であるCは,平成10年5月中旬頃,西部自動車の営業マンから,本件入札の手続において,同社より約200万円も高い価格で入札した三国交通が落札したのは疑問であるとの話を耳にした。 イそこで,C議員は,平成10年6月12日の飯能市6月定例市議会における一般質問において,この入札問題を取り上げ,その結果,同議会は,同月18日,全会一致で,本件民間委託に係る入札に関し不明な点を解明することを目的とする「庁用バス運行業務委託に関する特別委員会」(以下「本件特別委員会」という。)を設置することを議決した。 ウ本件特別委員会は,同日から同年12月に至るまで,合計10回の会議を開い ことを目的とする「庁用バス運行業務委託に関する特別委員会」(以下「本件特別委員会」という。)を設置することを議決した。 ウ本件特別委員会は,同日から同年12月に至るまで,合計10回の会議を開いた上,同月10日,飯能市議会議長宛に,本件民間委託に関する特別委員会報告書を提出した。右委員会は,非公開というわけではなく,報道関係者は傍聴していたし,一般市民等も希望があれば傍聴は可能ではあったが,飯能市ないし市議会から積極的に公開であることを広報することはしていなかった。 この報告書の議長提出を契機として,本件民間委託問題につき,同月12日,産経新聞は,初めて「飯能の庁用バス運行業務委託不明朗な指名競争入札市議会が特別委で調査百条委設置求める声も」等と報道し,また,東京新聞も,「庁用バス疑惑で報告書飯能市議会特別委無資格の業者が落札百条委設置を議論」等と報道した。 エ原告らは,平成11年2月10日,飯能市監査委員に対し,本件9年度契約及び10年度契約の締結の手続は,本件規則に違反するものであり,これによって飯能市は損害を被ったとして,監査請求を行った(以下「本件監査請求」という。)ところ,飯能市監査委員は,同年4月8日,本件9年度契約に係る請求は,法定の監査期間内の請求でなく,また,正当な理由があって請求期間を経過したものとはいえないとして,これを却下し,本件10年度契約に係る請求は,理由がないとして棄却した。 オ原告らの本訴提起は,平成11年5月7日である。 3 争点に関する当事者の主張(1) 被告らの本案前の主張ア本件9年度契約は,平成9年4月1日に締結されたものであるが,本件監査請求は,右日時から1年以上経過した平成11年2月10日にされているから,法242条2項本文の規定に違反している。 イ本件監査請求について 契約は,平成9年4月1日に締結されたものであるが,本件監査請求は,右日時から1年以上経過した平成11年2月10日にされているから,法242条2項本文の規定に違反している。 イ本件監査請求については,同項ただし書の適用はない。 すなわち,同項の「正当な理由」の有無については,特段の事情がない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか,また,当該行為を知ることができたときから相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきであるところ,本件入札及び本件9年度契約は秘密裡に行われたものではなく,同契約の違法性については,平成10年6月の飯能市議会において指摘されていたのであるから,原告らは右時点において,同契約の違法性を知ることができたものというべきである。 そうすると,右時点から約8か月後にされた本件監査請求には,前記の「正当な理由」があるということはできず,同条項ただし書の適用はない。 ウしたがって,本件訴えは,不適法というべきである。 (2) 本案前の主張に対する原告らの主張ア被告らの本案前の主張アは争う。 本件9年度契約は,委託代金を12回に区分して支払うものであるところ,このような契約の場合には,その支出を一体のものとみて,監査請求期間の起算点としては,右支出が終了した日と解すべきである。 そうすると,本件9年度契約についての支出の終了日は,平成10年4月24日であるから,1年の期間経過前にされた本件監査請求は,法242条2項本文の規定に違反しない。 イ同イは争う。 仮に,本件監査請求が,法242条2項の監査請求期間を経過していたとしても,同項ただし書の適用がある。 すなわち,本件入札は,本件指名業者しか知ることはできず,秘密裡に行われたものとい は争う。 仮に,本件監査請求が,法242条2項の監査請求期間を経過していたとしても,同項ただし書の適用がある。 すなわち,本件入札は,本件指名業者しか知ることはできず,秘密裡に行われたものということができ,また,本件入札ないし本件9年度契約の違法性は,平成10年6月12日の飯能市定例議会で始めて問題とされ,その後設置された本件特別委員会の報告書が同年12月10日に市議会議長に提出され,これを契機としてマスコミによって報道されたことにより,原告らは,初めてこれらの事実及びその違法性を知ることができたのであり,そのときから2か月後に本件監査請求をしたのであるから,本件監査請求については,法242条2項ただし書所定の「正当な理由」が存在するものというべきである。 (3) 本案の主張ア原告(ア) 本件9年度契約は,次の理由により違法である。 a 最低制限価格の設定本件入札においては,最低制限価格が設定された。しかし,指名競争入札について最低制限価格の設定が認められるのは「工事又は製造の請負の契約」に限られている(令167条の13,同条の10)のであって,この契約類型に該当しない本件9年度契約に最低制限価格を設定することは許されない。 b 本件規則3条違反本件規則3条は,前記のとおり,飯能市の指名競争入札に参加しようとする者に対しては,本件承認手続を経るごとが求められている。 しかし,本件指名業者については,東栄自動車を除き,落札者である三国交通を含めて,この手続がとられていない。 c 本件規則2条1項違反本件規則2条1項は,飯能市の入札に参加しようとする者の資格要件として,「引き続き2年以上その営業を従事していること」と規定している。しかるに,本件入札においては,この資格要件を充たさない三国交通を参加させている。 (イ) 本件 札に参加しようとする者の資格要件として,「引き続き2年以上その営業を従事していること」と規定している。しかるに,本件入札においては,この資格要件を充たさない三国交通を参加させている。 (イ) 本件10年度契約は,次の理由により違法である。 a 随意契約によったこと自体の違法本件10年度契約は,法234条2項,令167条の2第1項1号から7号所定の随意契約の許される場合のいずれにも該当しない。 b 本件規則18条の2違反本件10年度契約を随意契約の方式によるに当たり,被告Aは,2人以上の者から見積書を徴することを要求している上記条項に違反し,三国交通以外の業者から見積書を徴していない。 三国交通は,前記のとおり関東陸運局埼玉支局長から本件処分を受けた業者であり,本件民間委託の受託業者としては不適切な会社であるから,同条項ただし書を適用すべき場合には当たらない。 c 本件10年度契約は,そもそも上記のとおり受託業者として不適切な業者である三国交通との契約であること,前記のとおり違法な手続で締結された本件9年度契約を前提として締結されたものであることにより,違法となるものというべきである。 (ウ) 被告らは,本件9年度契約及び本件10年度契約の締結につき,以下の責任がある。 a 被告Aは,飯能市長として,本件入札の実施,本件9年度契約及び本件10年度契約の締結,委託料の支出について,本件専決規定により,下部機関に専決処理させていたものであるが,これに対する指揮監督義務を怠った結果,飯能市に対し損害を被らせたものであるから,民法715条,415条及び709条により,飯能市に対し損害賠償責任を負うべきである。 b 被告Bは,本件9年契約及び本件10年契約については,対外的には,補助機関として事務処理したにすぎないが,対内的には,被告Aから各契 び709条により,飯能市に対し損害賠償責任を負うべきである。 b 被告Bは,本件9年契約及び本件10年契約については,対外的には,補助機関として事務処理したにすぎないが,対内的には,被告Aから各契約に関する事務処理の委任を受けていたのであり,これに関する注意義務を怠った結果,飯能市に対し損害を被らせたものであるから,民法415及び709条により,飯能市に対し損害賠償責任を負うべきである。 (エ) 飯能市の被った損害a 飯能市は,違法な本件9年度契約及び本件10年度契約によって三国交通に対し支出した各年693万円,合計1386万円の損害を被った。 b 上記損害が認められないとしても,飯能市は,違法な最低制限価格の設定に基づく本件9年度契約及びこれを前提とする本件10年度契約を締結しなければ,東栄自動車の入札価格363万5000円(消費税18万1750円,合計381万6750円)によって平成9年度及び10年度の庁用バス運行委託契約を締結できたものというべきであるから,各年度につき,その差額である311万3250円(合計622万6500円)の損害を被ったものというべきである。 (オ) よって,原告らは,法242条の2第1項4号に基づき,飯能市に代位して,被告らに対し,連帯して飯能市に対して,右損害の一部として622万6500円及び平成9年度分の内金311万3250円に対する平成9年4月1日から,平成10年度分の内金311万3250円に対する平成10年4月1日から,各支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 イ被告ら原告らの主張は,いずれも争う。 (ア) 本件9年度契約の適法性a 令167条の13,同条の10第2項の最低制限価額の設定は,市民の安全性,当該業務遂行の安全性,確実性,経済的効率性等の観点から,総合事情 の主張は,いずれも争う。 (ア) 本件9年度契約の適法性a 令167条の13,同条の10第2項の最低制限価額の設定は,市民の安全性,当該業務遂行の安全性,確実性,経済的効率性等の観点から,総合事情を考慮して行われるべきものであるから,同条項は,制限列挙ではなく,例示列挙と解すべきところ,本件9年度契約は,バスの乗客の生命,身体の安全性の確保,業務遂行の安全性等が要求されるものであるため,本件入札に最低制限価額を設定したものであって,このことに違法はない。 b また,本件9年度契約の締結に関しては,平成8年7月の行政改革大綱によって,本件民間委託が検討され,同年10月から契約締結に向けての準備が開始されたもので,時間的余裕がなかったため,本件承認等の手続は行わなかったが,本件指名業者はいずれも地元では実績のある業者であって,問題のある業者ではなく,また,三国交通は,法人となったのは平成8年11月1日であるが,代表者のDは,昭和58年ころから,個人事業としてスクールバスの運行業務に携わっており,これらの点を考慮すれば,実質的な違法性はないものと評価できるものというべきである。 (イ) 本件10年度契約の適法性庁用バス運行業務については,安全性のみならず,継続性を要するところ,右業務につき改めて入札及び関東運輸局長の許可を要求すると,右業務の継続性に支障が生ずるおそれがある。そして,右事情に加え,三国交通の実績,バス利用者の評判及び三国交通からの委託代金据置きの同意が得られた等の事実を考慮し,三国交通を受託業者として,本件10年度契約を随意契約の方法により締結したものであるから,他社からの見積書を徴していなかったとしても,実質的な違法はない。また,三国交通が本件処分を受けたからといって,同社が受託会社として不適切であるということはでき の方法により締結したものであるから,他社からの見積書を徴していなかったとしても,実質的な違法はない。また,三国交通が本件処分を受けたからといって,同社が受託会社として不適切であるということはできない。 第3 当裁判所の判断 1 本案前の主張について(1) 本件9年度契約についての監査請求期間の起算点ア本件監査請求が本件9年度契約の締結日である平成9年4月1日から1年以上経過した平成11年2月10日にされたことは,前記のとおりである。 この点につき,原告らは,本件9年度契約は,委託代金を分割して支払うものであるから,このような場合の監査請求期間の起算点は,当該支出を一体としてとらえ,その支出が終了した日である平成10年4月24日と解すべきであると主張する。 イしかし,甲1号証(本件監査請求書)によれば,原告らの本件9年度契約に係る本件監査請求の内容は,最低制限価格を設定した本件入札の手続が違法であることにより,これに基づく本件9年度契約の締結が違法であるから,飯能市が被った損害を返還させるよう措置を求めるというものであって,委託代金が分割とされたことなど問題にしていないことは明らかであるから,本件監査請求の対象は,本件入札の違法を前提とする違法な本件9年度契約の締結であると認めることができる。そして,法242条1項の規定の体裁からみて,前記分割支出が終了するまでは監査請求をすることができないと解する根拠はないこと,同条2項は,監査請求期間を1年に制限することにより当該財務会計行為の効力を右期間内に確定させ,もって,法的安定性の確保に資することを目的としていることからすれば,本件9年度契約に係る監査請求の起算点は,契約締結日である平成9年4月1日と解するのが相当である。 そうすると,本件監査請求は,監査請求期間を経過した後にされた ことを目的としていることからすれば,本件9年度契約に係る監査請求の起算点は,契約締結日である平成9年4月1日と解するのが相当である。 そうすると,本件監査請求は,監査請求期間を経過した後にされたものというべきであって,原告の主張は採用できない。 (2) 本件監査請求と法242条2項ただし書の適用ア被告らは,本件入札及び本件9年度契約は,秘密裡に行われたものではなく,本件9年度契約の違法性については,平成10年6月12日には飯能市議会において問題とされており,原告らは,その時,当該契約の違法性を知ることができたから,その時点から約8か月後にされた本件監査請求には,法242条2項ただし書所定の「正当な理由」があるとはいえないと主張する。 イ財務会計上の行為が秘密裡にされたような場合には,法242条2項ただし書にいう「正当な理由」の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当な注意力をもって調査したときに,客観的にみて当該財務会計行為の存在及び内容を知ることができたかどうか,そして,当該財務会計行為の存在及び内容を知ることができたと認められる時から相当な期間内に監査請求をしたと認められるか否かによって判断されるべきものと解される。 ウそこで,これを本件について,順次検討する。 (ア) 前記認定事実によると,本件入札及び本件9年度契約自体は,平成9年3月21日の飯能市議会の予算審議及び議決を経ており,これらが秘密裡に行われたと認めることはできない。しかし,この審議及び決議の過程において,本件入札における最低制限価格の設定,本件承認手続の履践状況,指定業者,特に三国交通の入札資格要件該当性に関する事実が明らかにされていたことを認めるに足りる証拠はなく,これらの事実こそ,本件9年度契約の違法性を判断する上で重要な前提事実であ 手続の履践状況,指定業者,特に三国交通の入札資格要件該当性に関する事実が明らかにされていたことを認めるに足りる証拠はなく,これらの事実こそ,本件9年度契約の違法性を判断する上で重要な前提事実であるから,これらの事実が不分明であるということは,本件9年度契約自体が秘密裡にされた場合と同視すべき場合に当たるということができる。 (イ) 平成10年6月12日の定例市議会の一般質問において,本件入札問題が取り上げられ,本件特別委員会が設置され,同委員会の審議を経て同年12月10日に市議会議長宛の報告書が提出され,これを契機として,同月12日に新聞報道がされた経緯は前記のとおりであり,同年6月12日の市議会議事録(乙36号証)が作成されていたこと,本件特別委員会の傍聴も不可能ではなかったといえることは前記のとおりであるけれども,これらが新聞報道されていたことを認めるべき証拠はなく,また,特別委員会の傍聴についても特別の広報がされていたわけでもない本件にあっては,原告らのような一般住民に対し,その時点において,これらに逐一目を配ることを求めることは酷というべきであるから,前記の事実関係を前提とすれば,原告ら飯能市住民にとっては,相当な注意義務をもって調査したことにより,前記報道のあった同年12月12日に至って,本件入札及び本件9年契約の内容を客観的に知り得る状態になったものと評価するのが相当である。 (ウ) そして,本件監査請求は,右報道のされた日から約2か月を経過した平成11年2月20日にされたのであるから,前記の相当な期間内に行われたと認めることができるものというべきである。 (エ) 以上によれば,本件監査請求が本件9年度契約締結の日から1年を経過した後にされたことについては,法242条2項ただし書きにいう「正当な理由」があるということができ きるものというべきである。 (エ) 以上によれば,本件監査請求が本件9年度契約締結の日から1年を経過した後にされたことについては,法242条2項ただし書きにいう「正当な理由」があるということができるから,同項ただし書の適用により,本件監査請求は,適法にされたものであり,これに前記の事実を総合すると,本件訴えは,出訴期間を遵守した適法なものというべきである。 以上の次第で,被告らの本案前の主張は,採用することができない。 2 本案の主張について(1) 本件9年度契約の違法性についてア本件民間委託が最低制限価格の設定を伴う指名競争入札の方法により行われ,本件9年度契約に至ったことは前記のとおりであるところ,この点につき,原告らは,指名競争入札において最低制限価格の設定が認められるのは「工事又は製造の請負の契約」に限られているのであるから,この契約類型に該当しない本件9年度契約に最低制限価格を設定したことは違法であると主張し,これに対し,被告らは,最低制限価格の設定は,前記契約類型以外の契約であっても,本件のような場合には許されると反論する。 イ法は,普通地方公共団体の締結する「売買,貸借,請負その他の契約」については,機会均等の理念に最も適合して公正であり,かつ,価格の有利性を確保できるという観点から,一般競争入札の方法によるべきことを原則とし,それ以外の方法としての指名競争入札,随意契約,せり売りの方法は,政令の定める場合に該当するときに限り,これによることができる,と定めて,これらを例外的なものと位置付けている(法234条1項,2項)。そして,令167条は,その例外の一である指名競争入札をすることができる場合について1号から3号を列挙し(その1号は,「工事又は製造の請負,物件の売買その他の契約でその性質又は目的が一般競争入札に適 して,令167条は,その例外の一である指名競争入札をすることができる場合について1号から3号を列挙し(その1号は,「工事又は製造の請負,物件の売買その他の契約でその性質又は目的が一般競争入札に適しないものをするとき」と定めている。),また,令167条の2第1項は,例外の二である随意契約ができる場合について1号から7号までを列挙している(その2号は,「不動産の買入れ又は借入れ,普通地方公共団体が必要とする物品の製造,修理,加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」と定めている。)。なお,せり売りについて定める令167条の3は,動産の売払いの場合に関する規定である。更に,法234条3項により最低制限価格を設けることができる場合として,一般競争入札又は指名競争入札により「工事又は製造の請負の契約を締結しようとする場合において,当該契約の内容に適合した履行を確保するために特に必要があると認めるとき」と定めている(令167条の10,同条の13)。 この最低制限価格を設ける趣旨は,本来,普通地方公共団体の支出の原因となる契約については,予定価格の制限の範囲内の価格をもって申込みをした者のうち最低の価格をもって申込みをした者を契約の相手方とすべきであるが,「工事又は製造の請負の契約」については,技術上常識で考えられないような不合理な低価格で落札するようなことがあると,その価格では契約の完全な履行が確保できず,かえって普通地方公共団体に損害を与える結果となるおそれがあるため,そのような事態の生じることを防止する目的で,前記の類型の契約においては,予め最低制限価額を設け,これを下回る入札者を排除するにあると解される。 指名競争入札は,入札者が特定していることにより,一般競争入札と 態の生じることを防止する目的で,前記の類型の契約においては,予め最低制限価額を設け,これを下回る入札者を排除するにあると解される。 指名競争入札は,入札者が特定していることにより,一般競争入札と比べて信用のない者,不誠実な者を排除することができ,また,参加者の範囲が予め指名された者に限定されているものであるから,一般競争入札と比べて手続が簡略であるという長所を持つ反面,参加者が一部の者に固定化し,偏重する弊害がないとはいえず,談合が容易であるという短所があることも指摘されている。また,随意契約は,入札の方法によらないで,任意に特定の相手方を選択して締結する契約方法であるから,指名競争入札と比べて更に手続が簡略であり,経費の面でも負担が少なくて済み,しかも,相手方が特定の者であるため,競争入札では充足できない資力,信用,技術,経験等相手方の能力を熟知の上選定できるという点で,運用宜しきを得れば所期の目的を達成することができる反面,一旦その運用を誤ると,情実に流れ,公正な取引を害する弊害を免れないことになる。 このように指名競争入札ができる場合を限定し,更に,契約類型を特定して最低制限価格を設定できる場合を一層限定している法及び令の前記各規定を通覧すると,普通地方公共団体の長は,当該公共団体の支出の原因となる契約のうち,「工事又は製造の請負の契約」に限って,最低制限価額を設け,これを下回る入札者を排除することが許されると解するのが相当であって,普通地方公共団体が,これらの契約以外の支出の原因となる契約を締結するために指名競争入札を実施する場合にまで,最低制限価格を設定し,当該価格以上の価格をもって申込みをした者のうち,最低の価格の申込者を落札者とする方法を採用することは許されないものと解するのが相当である。 ウこのように解すると, にまで,最低制限価格を設定し,当該価格以上の価格をもって申込みをした者のうち,最低の価格の申込者を落札者とする方法を採用することは許されないものと解するのが相当である。 ウこのように解すると,普通地方公共団体が,「工事又は製造の請負の契約」以外の支出の原因となる契約を締結する場合において,行政上その契約の履行水準を一定以上に保つ必要があり,そのためには,当該履行水準を維持するために相当と認められる価格に満たない不合理な価格での落札者を排除する等合理的な行政目的達成の必要上やむを得ない事情がある場合においても,これを指名競争入札に付した上,最低制限価格を設定することは許されないことになる。 しかし,上記のような合理的な行政目的を実現することは許容されなければならないものというべきであるから,そのような場合において,指名競争入札に付したならば,最低入札価格が前記相当価格を下回るおそれがあるときには,その契約は,前記の令167条の2第1項2号所定の「その他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないもの」に該当するものとして,随意契約の方式によって行うことができるものと解するのが相当である。ただ,その場合においても,普通地方公共団体としては,右の事情につき配慮した上で,当該地方公共団体に最も有利な価格で契約すべき義務を負うのであるから,そのような価格を契約額として合意しなければならないものというべきである。 エこれを本件についてみると,前記認定の事実関係によれば,本件9年度契約は,庁用バス運行業務委託契約であって,令167条の10,同条の13所定の「工事又は製造の請負の契約」に該当しないことは明らかであるから,前記の説示に照らし,最低制限価格を設定した上で実施された指名競争入札の手続に基づいてされた本件9年度契約の締結は,違法といわ 定の「工事又は製造の請負の契約」に該当しないことは明らかであるから,前記の説示に照らし,最低制限価格を設定した上で実施された指名競争入札の手続に基づいてされた本件9年度契約の締結は,違法といわなければならない。原告らの主張は,この限度では理由があるものというべきであって,前記契約類型以外の契約であっても,本件のような場合には最低制限価格の設定が許されるとする被告らの主張は,採用することができない。 オところで,本件民間委託の目的である庁用バス運行業務委託契約は,前記のとおりの業務規模をもって,市の研修,施設見学等,飯能市の行政上目的達成のための交通手段を継続的,安定的,かつ,安全に確保することを目的とし,職員,住民等の生命,身体の安全に直接関わるものであるから,行政上その契約の履行水準を良好な状態で確実に維持する必要があることはいうまでもなく,したがって,もし,これを指名競争入札に付したならば,最低入札価格がこの履行水準に見合う業務を維持するために相当と認められる価格を下回るおそれがあるときには,この相当価格に満たない不合理な価格での落札者を排除する合理的な行政目的があったものということができる。 そして,前記の事実関係を総合すると,本件民間委託において,単純に指名競争入札を実施した場合には,最低入札価格がこの履行水準に見合う業務を維持するために相当と認められる価格を下回るおそれがあったものと推認することができるから,前記の説示に照らし,本件民間委託において,委託者たる飯能市としては,前記の令167条の2第1項2号所定の「その他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないもの」に該当するものとして,委託料の額だけでなく,前記の履行水準確保の見地から,受託業者の資力,信用,経験等その能力を総合評価の上適切な業者を選定し,その者と その性質又は目的が競争入札に適しないもの」に該当するものとして,委託料の額だけでなく,前記の履行水準確保の見地から,受託業者の資力,信用,経験等その能力を総合評価の上適切な業者を選定し,その者との間で,随意契約の方式によって契約を締結することが相当であったというべきである。弁論の全趣旨によると,本件民間委託のような庁用バス運行業務委託契約の締結は,大半の普通地方公共団体において,随意契約の方式が採られていると認めることができるのである。 したがって,単純に指名競争入札を実施し,最低の価格で入札した者と契約を締結すべきであったとする原告らの主張も,そのまま採用することは困難である。 カここで,本件民間委託に係る平成9年度契約が,随意契約の形式で締結された場合の委託相当額について便宜検討する。 前記のとおり,本件民間委託の目的である庁用バス運行業務委託契約は,前記の業務規模で飯能市の研修,施設見学等,市の行政上目的達成のための交通手段を継続的,安定的,かつ,安全に確保することを目的とし,職員,住民等の生命,身体の安全に直結するものであるから,その契約の履行水準を良好な状態で確実に維持する行政上の必要があったものである。 そして,前記の事実関係によれば,被告Bは,この行政上の必要を満たす履行を確保するのと実質的には同様の見地から,本件民間委託に係る委託料にういて検討し,平成7年度の実績から予測される人件費,運行経費(燃料費,車検,修繕料等),保険料,重量税,その他の一般管理費等にっき調査を遂げ,財政課の予算査定を受けた結果,これを年間744万円と試算し,総務部長においては,この試算額を参考として,指名競争入札をする場合の最低制限価格を546万8400円(消費税込み)と設定したものであり,被告Bのした試算方法に格別不合理な点は見受けら 円と試算し,総務部長においては,この試算額を参考として,指名競争入札をする場合の最低制限価格を546万8400円(消費税込み)と設定したものであり,被告Bのした試算方法に格別不合理な点は見受けられないことからして,本件民間委託に係る平成9年度契約が,随意契約の形式で締結された場合の委託料相当額としては,飯能市が本件9年度契約において最も有利な価格として想定したこの最低制限価格と同額の546万8400円(同)と認めるのが相当である。 (2) 本件10年度契約の違法性についてア原告らは,本件10年度契約は,随意契約によったこと自体,複数の見積書を徴しなかったこと,三国交通と契約したこと,そして,違法な本件9年契約を前提に締結されたものであることから,いずれにせよ違法であると主張する。 イそこで検討するに,本件民間委託に係る平成10年度の契約も,その性質は,平成9年度のそれと同様であるから,前記の説示に照らし,随意契約の方法によるべきであったものというべきである。したがって,随意契約の方法で締結に至った本件10年度契約は,その方式自体としては,違法ということはできない。 しかしながら,本件民間委託に係る平成10年度契約が,随意契約の形式で締結された場合の委託料相当額としては,前記したとおり,飯能市が本件9年度契約において最も有利な価格として試算した最低制限価格と同額の546万8400円がその後不相当となった事実を窺わせる証拠もないから,これと同額と推認するのが相当である。 そして,本件10年度契約の委託料が693万円(消費税込み)とされたことは前記のとおりであるが,これは,前記の次第で違法と評価される本件9年度契約の実績を踏襲したからにほかならないことは明らかである。そして,随意契約としての庁用バス運行業務委託契約における委託料の決 前記のとおりであるが,これは,前記の次第で違法と評価される本件9年度契約の実績を踏襲したからにほかならないことは明らかである。そして,随意契約としての庁用バス運行業務委託契約における委託料の決定には,行政サイドの合理的な裁量権の行使が認められるべきことは否定できないけれども,本件においては,このように違法な本件9年度契約の委託料額が前提とされているのであるから,この委託料の決定に当たっては,いわゆる他事考慮として,裁量権の逸脱・濫用があったものと評価せざるを得ない。 そうすると,その余の点に触れるまでもなく,本件10度契約については,裁量権を濫用した結果,委託料を693万円として締結した違法があるものというべきである。 (3) 被告らの責任についてア被告A前記認定事実によれば,被告Aは,飯能市長として,本件入札の実施,本件9年度契約及び本件10年度契約の締結,委託料の支出について,本件専決規定により,下部機関である総務部長をして専決処理させていたものであるが,これに対する指揮監督義務を怠った結果,前記のような違法な各契約の締結をさせたものというべきであるから,民法709条により,飯能市に対し,同市が被った損害を賠償する責任がある。 イ被告B前記認定事実によれば,被告Bは,飯能市総務部庶務課長として,上司の指示に従い,本件民間委託に関する実務の担当者として,各種の事務処理を行った者であるが,本件入札の実施,本件9年度契約及び本件10年度契約の締結,委託料の支出については,本件専決規定の定めに従い,総務部長が専決処理してきたものであるから,被告Bは,本件9年度契約及び10年度契約の締結等につき,法律上何ら権限がないというべきであって,本件各契約が違法であるとしても,飯能市に対して賠償責任を負う立場にあるとはいえない。 あるから,被告Bは,本件9年度契約及び10年度契約の締結等につき,法律上何ら権限がないというべきであって,本件各契約が違法であるとしても,飯能市に対して賠償責任を負う立場にあるとはいえない。 この点,原告らは,被告Bは,対内的には,被告Aから右各契約に関し委任を受けていたと主張するが,前記のとおり・それは,飯能市における行政組織上の補助機関として,専決権者である総務部長ひいては市長である被告Bの職務を補佐したに過ぎないのであって,法律的な意味で委任があったことを意味するものではないし,他に原告らの主張の委任の事実を認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告らの右主張は採用できず,原告らの被告Bに対する請求は,理由がない。 (4) 損害についてア前記認定判断したところによれば,平成9年度及び同10年度の本件民間委託に係る契約は,いずれも随意契約の方式により締結されるのが相当であったものであり,その場合における委託料は,各年度につき年間546万8400円(消費税込み)で締結されたと推認されるところ,前記のように違法な本件9年度契約及び本件10年度契約の締結により,飯能市は,各年度につき,それぞれ委託料として,693万円(同)宛を三国交通に対して支払ったのであるから,飯能市は,各年度にっき,前記価格の差額に相当する146万1600円,合計292万3200円の損害を被ったものと認めることができる。 この点,原告らは,飯能市は,前記委託金額の全額の損害,これが認められないとしても,少なくとも,最低価格入札者である東栄自動車の入札価格との差額相当額であるとして,各年度につき311万3250円の損害を受けたと主張するが,既に説示したとおり,本件9年度契約及び本件10年度契約によって飯能市が被った損害は,前記認定の委託料相当額による随意契 当額であるとして,各年度につき311万3250円の損害を受けたと主張するが,既に説示したとおり,本件9年度契約及び本件10年度契約によって飯能市が被った損害は,前記認定の委託料相当額による随意契約によって各年度の運送委託契約を締結しなかったことによる損害であって,最低制限価格を付した指名競争入札の違法を前提とする損害(平成9年度),あるいは,これを前提とする随意契約を締結したことによる損害(平成10年度)と観念すべきものではないから,委託金額の全額,あるいは前記主張金額が損害となると認めることはできない。 したがって,原告らの主張は,採用できない。 イ原告らは,右損害に対する遅延損害金の起算日として,各契約締結日(平成9年及び同10年の各4月1日)を主張するが,前記の認定事実によれば,本件9年度契約及び本件10年度契約に基づく委託料は,各年度の5月から翌年度の4月まで,12回に分割して支払われているのであり,弁論の全趣旨によれば,各分割委託料は,右期間の各毎月末日までに支払われたと推認することができる(ただし,平成10年3月分が同年4月24日に支払われてことは前記のとおりである。)から,前記損害に対する遅延損害金は,毎月の分割金の支払日から前記損害額を月毎に按分した各内金である12万1800円ずつに対して発生するものというべきである(詳細は,別表の遅延損害金起算日一覧表記載のとおり)。 ウそうすると,原告らの被告Aに対する請求は,飯能市に対して,292万3200円及び別表遅延損害金計算表記載の各内金に対する同表起算日欄記載の各日から支払済みまで民法所定年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるものというべきである。 3 よって,原告らの被告Aに対する請求は,上記の限度で認容し,同被告に対するその余の請求及び被告Bに対する みまで民法所定年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるものというべきである。 3 よって,原告らの被告Aに対する請求は,上記の限度で認容し,同被告に対するその余の請求及び被告Bに対する請求は,失当であるから,いずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民訴法61条,64条,65条を適用して,主文のとおり判決する。 なお,仮執行の宣言については,相当でないので,これを付さないこととする。 浦和地方裁判所第4民事部裁判長裁判官田中壯太裁判官都築民枝裁判官蛭川明彦

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る