平成21(ワ)11487 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年2月24日 大阪地方裁判所
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判決文本文17,540 文字)

主文 1 被告は,原告に対し,2億5319万6000円及びこれに対する平成21年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを5分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 主位的請求被告は,原告に対し,12億8198万円及びこれに対する平成21年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 予備的請求被告は,原告に対し,11億6598万円及びこれに対する平成21年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,原告が,被告に対し,主位的に,被告の従業員によるデリバティブ取引の勧誘が公序良俗違反,適合性の原則違反又は説明義務違反であり,また,解約料を詐取された旨主張して,使用者責任(民法715条)に基づき,適合性の原則違反及び説明義務違反については併せて金融商品の販売等に関する法律(以下「金融商品販売法」という。)5条に基づき,損害賠償として12億8198万円及びこれに対する損害発生の日の後の日である平成21年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,予備的に,被告との取引が原告の目的の範囲外の行為であり,又は錯誤により無効であると主張して不当利得に基づく返還請求として11億6598万円及びこれに対する被告の利得発生の日の後の日である平成21年4月1日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による利息の支払を,それぞれ求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがある事実は各項記載の事実により認定)(1) 原告は,教育基本法, 月1日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による利息の支払を,それぞれ求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがある事実は各項記載の事実により認定)(1) 原告は,教育基本法,学校教育法及び私立学校法に従い,学校を設置して教育を行う学校法人である。 (2) 被告は,有価証券の売買等を行う証券会社であり,大阪支店において,原告との取引を行なった。 (3) 平成20年1月当時原告の理事長であったA,常務理事(総務担当)兼事務局長であったB及び常務理事(財務担当)であったCは,平成19年秋ころから,当時被告大阪支店の従業員であったD及びEから,日本円と豪ドルとを10年間にわたり毎月交換し,その差額を決裁する,フラット為替取引の勧誘を受けた。 (4) 原告は,被告と,平成20年1月24日,別紙基本契約書のとおり,デリバティブ取引基本契約を締結した(以下「本件基本契約」という。)。 (5) 原告と被告は,平成20年1月24日,本件基本契約に基づき,別紙個別取引確認書のとおり,個別取引契約を締結した(以下「本件取引」という。)。 (6) 原告と被告は,平成20年11月7日,基準レートを48.40とする,本件取引と同様の取引契約を締結した(以下「別件取引」という。)。 (7) 文部科学省は,平成21年1月16日付けで,原告を含む同省の管轄学校法人に対し,「学校法人における資産運用について(通知)」と題する書面を送付し,デリバティブ等のリスクのある商品を学校法人の資産運用に組み込むことに警告を発するとともに,原告に対し,資産運用の実態について説明を求め,説明をしたAに対し,原告における資産運用の内容を変更するよう促した(甲3,証人A)。 (8) 原告は,平成21年3月,本件取引の解約を被告に伝えたところ,同月27日,当時被 について説明を求め,説明をしたAに対し,原告における資産運用の内容を変更するよう促した(甲3,証人A)。 (8) 原告は,平成21年3月,本件取引の解約を被告に伝えたところ,同月27日,当時被告大阪支店の金融公共法人部部長であったF及びEから,本件取引の解約料として11億6270万円を請求され,同月31日,被告は原告に11億6270万円を支払った(以下「本件解約料」という。)。 (9) 平成20年2月から平成21年3月までの本件取引の各月度の損益状況は,別紙デリバティブ取引収支表のとおりであり,通算すると,原告は328万円の損失(以下「本件取引損失」という。)を被った。 争点及び争点に関する当事者の主張(1) 公序良俗違反ア原告の主張(ア) 本件取引は,外国為替市場に反映することを予定していない原告と被告との相対取引であり,また,1豪ドルが74円を超える円高が継続すると原告には最大で52億8000万円の巨額の損失が生じる可能性がある反面,逆に円安が続くと何億円もの巨額の利益を得られるという射幸性が非常に高い取引であるなど賭博の構成要件に該当し,公序良俗に違反する。 (イ) 被告の従業員は,実質的には被告が本件取引の売主であり,原告との本件取引が賭博性を有する取引で,公序良俗に反する取引であることを知っていたか,容易に知り得たのに,原告を本件取引に勧誘し,契約を締結させたから,本件取引は原告に対する不法行為である。 イ被告の主張(ア) 為替変動リスクの回避のため,為替予約を組むことは,海外取引を行う事業会社では日常的に行われていることであって,本件取引が公序良俗に反することはない。 (イ) 原告は,理事長らが被告従業員の説明を聞いて納得して契約書に調印したにもかかわらず,損失が出たから 事業会社では日常的に行われていることであって,本件取引が公序良俗に反することはない。 (イ) 原告は,理事長らが被告従業員の説明を聞いて納得して契約書に調印したにもかかわらず,損失が出たからといって公序良俗に反すると主張することは許されない。 (2) 適合性原則違反ア原告の主張(ア) 本件取引はオプションの売りというハイリスクなデリバティブ取引を利用して組成した複雑かつ難解な金融商品であり,しかも,原告が被告に売却したオプション金額は3倍に設定されており,投機性を一段と高めている。 (イ) 原告は,学校教育という公益を目的とする学校法人であり,本件取引のようなハイリスクで複雑かつ難解なデリバティブ商品について専門的リスク管理能力を有する投資家ではない。 (ウ) 原告は,寄附行為により,その資産を元本割れのリスクのない安全確実な金融商品で運用することが義務づけられている。 (エ) 被告は,日本最大規模の証券会社であり,原告と同様の学校法人とも多数有価証券取引を行っているから,学校法人に対してハイリスクハイリターンの金融商品を投資勧誘することは禁忌であることを知っていた。 (オ) 以上に照らせば,被告が原告に対し本件取引を勧誘したことは,適合性の原則に違反し,原告に対し,不法行為が成立する。 イ被告の主張(ア) 原告は,総資産900億円,運用資産400億円の学校法人であり,平成20年1月当時,195億円もの仕組債の運用を行っており,仕組債の中には豪ドルや米ドルの為替と連動するものも含まれており,原告は,為替変動について十分な知識及び経験を有していた。 (イ) 本件取引は,要は,将来の為替レートを現時点で予約するものであるから,将来の為替の動向をどう見通すかだけのことであって,海外取引を行う は,為替変動について十分な知識及び経験を有していた。 (イ) 本件取引は,要は,将来の為替レートを現時点で予約するものであるから,将来の為替の動向をどう見通すかだけのことであって,海外取引を行う一般事業会社にとっては日常茶飯事のように行われていることである。また,本件取引は,将来の一定期間の為替を対象とするものであるが,株価や指数を基準とする仕組債その他の金融商品と仕組みそのものは変わらない。 (ウ) 為替変動自体は,一般人であっても新聞やインターネット等により容易に知ることができるし,原告は,為替連動型の仕組債を多数購入していたのであるから,本件取引が原告に過大な危険を伴う取引であるとは言い難い。 (3) 説明義務違反ア原告の主張(ア) 金融商品販売法3条1項は,金融商品販売業者は,顧客に対し,当該金融商品の重要な部分についての説明義務を課している。本件取引は,原告と被告とが相対取引で,豪ドルと日本円の為替レートが1豪ドル当たり74円を超えるかどうかで勝ち負けを決する賭博性を有する取引であることや,10年間もの長期の契約にもかかわらず,契約条件の変更は認められないため,本件取引が途中で解約できるのか,できるとして解約料が発生するのか,解約料は具体的にどのような方法で算定され,いくらの金額になるのかは,原告にとって非常に重要な情報である。したがって,被告は,原告に対し,これらの点について説明する義務があった。 (イ) 別紙認否対照表の「原告の主張」の平成19年9月14日欄から平成20年1月24日欄まで記載のとおり,被告の担当社員であったD,Eらは,原告の担当者であったBらに対し,本件取引契約締結時に上記(ア)の賭博性や本件取引の途中解約に関する事項につき,全く説明しなかったし,本件取引解約時にも,解約料の算出方法に 社員であったD,Eらは,原告の担当者であったBらに対し,本件取引契約締結時に上記(ア)の賭博性や本件取引の途中解約に関する事項につき,全く説明しなかったし,本件取引解約時にも,解約料の算出方法について説明しなかった。 イ被告の主張E,Dらは,別紙認否対照表の「被告の主張」の平成19年9月14日欄から平成20年1月24日欄までのとおり,数回にわたり,原告を訪問し,「面談者」欄記載の相手に対し,本件取引の仕組みやリスクについて説明し,本件取引契約時には,EがBに対し,基本契約書を示しながら逐条的に説明をし,本件取引を途中解約した場合損失が出る可能性があること,たとえば円高局面で月次の受け渡しがマイナス,かつ,豪ドルが74円を下回るような状況で解約すると,契約の残りの期間にもよるが,大きな損失が出る可能性があること,実際の解約料の金額は,金利,為替,金融商品市場における相場その他の実勢条件に基づき,客観的に合理的かつ公正な方法により算出されることを説明し,Bは理解できたことを示した。 したがって,被告は,原告に対する説明義務を尽くした。 (4) 本件解約料は,客観的に合理的かつ公正な方法により算出されていないか。 ア原告の主張原告による本件取引の解約申入れは,本件基本契約10条(1)によるものであり,解約料は,11条(2),(1)①により算出されるべきであるところ,本件解約料は,客観的に合理的かつ公正な方法により算出されたとはいえないにもかかわらず,被告は,原告に対して,上記方法により算出されたものと偽って本件解約料を詐取した。 本件解約時に被告の有する本件取引の当事者としての地位は,今後の為替の動向により勝つか負けるかわからない賭博者としての地位であり,客観的に合理的かつ公正な方法で算出すればおよそ第三者が有償で譲 。 本件解約時に被告の有する本件取引の当事者としての地位は,今後の為替の動向により勝つか負けるかわからない賭博者としての地位であり,客観的に合理的かつ公正な方法で算出すればおよそ第三者が有償で譲り受ける可能性のある交換価値を有しているとはいえず,解約料の評価はゼロである。 イ被告の主張本件解約料は,外部の監査法人の監査においても適正との評価を得ている評価方法,評価モデルを用いて合理的かつ公正な方法により算出されたものであり,有価証券の公正価値評価機関によっても適正な算定結果であると評価されている。原告は,数度にわたり,今解約すれば解約料はいくらかを問い合わせた上で解約したが,解約料の根拠について問い合わせたことはなく,客観的に合理的かつ公正な方法で算出されたものと認識していた。 本件基本契約に解約料の規定があるところ,原告は,正当な解約料について主張しないから,解約料を詐取されたという原告の主張は完結していない。 (5) 損害及び被告の責任ア原告の主張(ア) 本件取引は,公序良俗に反し,Eらによる本件取引の勧誘行為は適合性原則に反するとともに説明義務違反であり,Eらの不法行為により,原告には,本件解約料及び本件取引損失という損害が生じた。また,原告は,本件訴訟の提起及び遂行のために訴訟代理人らに対する弁護士費用を要するところ,このうち損害額の1割相当である1億1600万円もEらの不法行為と相当因果関係を有する。したがって,被告は,原告に対し,上記合計12億8198万円につき使用者責任又は金融商品販売法5条に基づく損害賠償義務を負う。 (イ) 本件解約料は,客観的に合理的かつ公正な方法によって算出されたものではなく,原告に支払義務はなかったにもかかわらず,Eは,あたかも原告に支払義務 法5条に基づく損害賠償義務を負う。 (イ) 本件解約料は,客観的に合理的かつ公正な方法によって算出されたものではなく,原告に支払義務はなかったにもかかわらず,Eは,あたかも原告に支払義務があるかのごとく誤信させ,原告から本件解約料名目で11億6270円を詐取したものである。仮にEが客観的に合理的かつ公正な方法により算出されたものと考えて原告に本件解約料を請求したとしても,何の検討もすることなく請求したことには過失がある。したがって,被告は,原告に対し,本件解約料につき使用者責任又は金融商品販売法5条に基づく損害賠償義務を負う。 イ被告の主張争う。 (6) 過失相殺ア被告の主張(過失相殺の評価根拠事実)(ア) 原告は,平成20年1月当時,195億円もの仕組債の運用を行っており,その中には豪ドルや米ドルの為替と連動するものも含まれていた。 (イ) Eらは,数回にわたり,Bらに対して本件取引の仕組みやリスクについて説明したし,資料も交付したのであるから,原告らは内部において十分協議したはずである。 イ原告の主張本件において,原告が解約料相当額の損害を被ったことについて原告に過失はなく,他方,本件解約により,被告には損害が発生していないから,本件解約料を一部でも被告に保有させておく必要性はなく,また,被告の違法性は高いから,過失相殺をするのは相当ではない。 (7) 原告の目的の範囲外ア原告の主張原告は,学校法人であり,毎月多額の外国為替取引を行う必要性は全くなく,本件取引のようなハイリスクの取引は,学校法人の資産運用方法として是認される取引ではない。したがって,原告が本件取引を行うことは,寄附行為に定める「確実な有価証券」の購入に該当しないことは明らかで ,本件取引のようなハイリスクの取引は,学校法人の資産運用方法として是認される取引ではない。したがって,原告が本件取引を行うことは,寄附行為に定める「確実な有価証券」の購入に該当しないことは明らかであり,原告の目的遂行のために必要な行為ではなく,原告の目的の範囲外の行為であり無効である。 イ被告の主張(ア) 原告の寄附行為には,「基本財産及び運用財産中の積立金は,理事会の決議により確実な有価証券を購入するか,または確実な信託銀行に信託し,または確実な銀行に定期預金として,もしくは郵便貯金として理事長が保管する。」とされているところ,「確実」か否かは理事会が判断すべきであり,理事会の決議があるものは,「確実」と判断されたと考えるべきである。 (イ) 上記のとおり,原告の寄附行為に有価証券の購入,信託,定期預金又は郵便貯金という資産運用が挙げられている以上,一般的に原告がそのような資産運用を行うことは,原告の目的の範囲内であり,実質的にも銀行の低金利が続きペイオフが解禁された昨今,本件取引のような資産運用は,学校法人においてその活動上当然に予想されるものである。 (ウ) 被告は,本件取引当時,原告の寄附行為の規定を知らず,他方,原告の理事らは寄附行為の規定を熟知していたのであるから,本件取引が寄附行為の目的の範囲外の行為であったとしても,本件取引を行った理事らが本件取引の無効を主張することは信義則上許されない。 (8) 原告の錯誤ア原告の主張原告は,Eらから基本契約書11条の意味について正確な説明を受けていれば,本件取引をすることはなかったところ,契約当事者にとって中途解約による一括清算の場合の計算方法は重要であり,要素の錯誤として本件基本契約及び本件取引はいずれも無効である。 イ被告の主張 いれば,本件取引をすることはなかったところ,契約当事者にとって中途解約による一括清算の場合の計算方法は重要であり,要素の錯誤として本件基本契約及び本件取引はいずれも無効である。 イ被告の主張争う。 (9) 被告の不当利得ア原告の主張本件取引は,原告の目的の範囲外の行為であり,また,原告の錯誤によるものであって,無効であるから,被告は,原告に対し,不当利得として本件取引損失及び本件解約料の返還義務を負う。 イ被告の主張争う。 第3 当裁判所の判断 1 前記第2の2の各事実のほか,証拠(甲23,甲24,乙30,乙32,証人B,証人A,証人E,証人D)及び後掲の各証拠によれば,次の各事実を認めることができる。 (1) 本件取引の内容等(前記第2の2(4),(5))ア本件取引は,市場を介して行われる取引ではなく,原告と被告との間での相対取引であり,あらかじめ合意した支払日に,被告は原告に対し金額a(20万豪ドルを合意した参照為替レートにより換算した円貨)を,原告は被告に対し金額b(20万豪ドルを1ドル当たり74円で換算した円貨)を支払うものとし,同一日に同一通貨での支払となる場合は,差額決済とする。 イ本件取引において,原告と被告とは,合意した参照為替レートが74円又はこれより円高になった場合には支払額が3倍となるレバレッジ及び参照為替レートが93円又はこれより円安となった場合にはそれ以降参照為替レートが74円又はこれより円高である場合の支払はされない旨の部分消滅条件につき合意した。 ウしたがって,1豪ドル当たり74円を分水嶺として,円高が進むほど原告が差額として被告に支払う金額が増え,しかもレバレッジにより取引量が3倍になるため原告の損失が大きくなる。他方 意した。 ウしたがって,1豪ドル当たり74円を分水嶺として,円高が進むほど原告が差額として被告に支払う金額が増え,しかもレバレッジにより取引量が3倍になるため原告の損失が大きくなる。他方,円安に進むほど原告が被告から差額として受け取る金額が増えることとなり,一度でも93円又はこれより円安になると,74円又はこれより円高となった場合の交換がなくなることから,原告の差額の支払は発生しないことになり,原告の利得が大きくなる。 (2) 原告の属性ア原告は,大阪府下に複数の中学,複数の高校及び大学を設置し,生徒数約1万3000人を擁する著名な学校法人であり,また,多額の私学助成金の交付を受けている。 イ原告の寄附行為(甲7)には,基本財産及び運用財産中の積立金は,理事会の決議により確実な有価証券を購入するか,確実な信託銀行に信託するか,確実な銀行の定期預金又は郵便貯金として理事長が保管する旨規定されている(31条)。 ウ原告は,平成11年,被告と取引を開始し,総資産900億円,運用資産400億円を有し,被告の預かり資産は,ピーク時において195億円に達し,その取引の大半は,平成13年ころから仕組債と呼ばれる社債による運用であり,中には米ドル為替や豪ドル為替と連動するものも含まれており,本件訴訟提起時点までの受取利息等は約58億円に達していた。 エ原告は,他の証券会社とも金融商品取引をしており,本件取引開始前には,他の証券会社からも同種商品の提案を受けていた(証人B,弁論の全趣旨)。 オ本件取引当時の原告の事務局長であったBは,経営学部の教授であり,少なくとも産業経済の概略に関する知識を有していた(証人B)。 (3) 本件取引開始に至るまでの間の被告による本件取引についての説明及び経緯ア 告の事務局長であったBは,経営学部の教授であり,少なくとも産業経済の概略に関する知識を有していた(証人B)。 (3) 本件取引開始に至るまでの間の被告による本件取引についての説明及び経緯ア D,E及び被告本社プロダクトマネージャーであったGは,平成19年10月11日,A,C及びBに対し,「フラット為替ご参考資料」(乙6)に沿って,フラット為替取引について,対象となる通貨として米ドル及び豪ドルを挙げ,両国の経済状況及び今後の展開を説明したほか,それぞれの通貨を例にして期間,為替レート,レバレッジの有無,部分消滅の有無を異にした複数の取引内容についての説明をし,その際,為替レートの変動によるリスクが存在すること,即ち一定額以上に円高が進むと原告に損失が生じることを説明した。Eらは,オーストラリアの経済の堅調さ,日本との金利差が大きいことなどを理由として,豪ドルを対象通貨とすることを勧めたが,Bらからは検討しておくという程度の返答しか得られなかった。 イ D及びEは,平成20年1月23日,A,C及びBに対し,上記(1)の内容の本件取引を提案し,1豪ドル当たり74円以下の円高になった場合,レバレッジが3倍となり,原告の損失がどの程度になるかについても説明し,また,オーストラリアの経済情勢等から今後も為替レートは堅調に推移する可能性が高いとの見通しを述べて本件取引を勧めた。 ウ Bは,平成20年1月24日,Eに電話し,上記イの提案を受け,本件取引を行う旨告げたが,B,A及びCは,本件取引は,毎月の決済日に差金決済を行うこと,基本的には,1豪ドル当たり74円より円安になれば原告の利益となり,74円より円高になれば原告の損失となるが,74円以下の円高になると3倍のレバレッジが設定されていること,このように,本件取引には為替リスクがある ドル当たり74円より円安になれば原告の利益となり,74円より円高になれば原告の損失となるが,74円以下の円高になると3倍のレバレッジが設定されていること,このように,本件取引には為替リスクがあることを理解していた。 エ Eは,同日,Bを訪れ,本件基本契約書(甲1)及び「スワップ取引等のデリバティブ取引に関する説明書(契約締結前交付書面)」(乙3の2)を交付し,Bは,事前にAの承諾を得ていたことから,本件基本契約書及び上記説明書の内容を確認し,自己の判断と責任においてフラット為替取引を行う旨の「スワップ取引等のデリバティブ取引に関する確認書」(乙3の1)に理事長印を押捺した。 オ Eは,上記エの書類を持って被告大阪支店に戻り,本社プロダクトマーケティング部に電話で原告の本件取引の注文を伝え,その後,Bに対し,電話で本件取引が確定したことを連絡し,再度Bを訪問して「約定のご確認」(乙5)を交付し,Bは,これに理事長印を押捺した。 カ Eは,平成20年1月28日,Bを訪問し(乙33の2),「デリバティブ取引基本契約書に基づく個別取引確認書」(乙4)を交付し,Bは,これに理事長印を押捺した。 キ Eは,平成20年2月から10月まで,概ね月1回の割合で原告を訪問し,同月27日,当時の状況として為替レートが1豪ドル当たり58円程度であり,原告に毎月960万円程度の損失が生じることから,フラット為替取引を追加することを提案し,原告と被告とは,同年11月7日,別件取引を締結した。 ク文部科学省は,平成21年1月6日付けで,文部科学大臣所轄の学校法人理事長に対し,「学校法人の資産運用について(通知)」を送付し,学校法人の資産運用に本件取引のようなデリバティブ等のリスクのある商品を組み込むことについて警告を発した(甲3)。 ケ平成21年1 人理事長に対し,「学校法人の資産運用について(通知)」を送付し,学校法人の資産運用に本件取引のようなデリバティブ等のリスクのある商品を組み込むことについて警告を発した(甲3)。 ケ平成21年1月24日付けの「週刊東洋経済」において,原告と被告との間の仕組債,本件取引等について,杜撰な資産運用とする記事が掲載された(乙36)のに対し,原告は,ホームページにおいて,上記記事は一方的かつ偏向的な見解に基づき事実を誤認,曲解したもので,原告においては,理事会による審議を経て資産を適正に運用している旨の説明をした(乙27)。 コ原告は,文部科学省から資産運用の実態についての報告を求められ,Aは,平成21年1月26日,文部科学省を訪れて説明をしたところ,担当官から,資産運用の内容を安全確実なものに変更するよう促され,特に本件取引及び別件取引については厳しく指摘された。 サ原告において,上記コへの対処方法を検討し,平成21年3月初旬ころ,本件取引を解約することとし,同月11日,23日及び26日,CはEに対し解約料がいくらになるかを尋ねた(乙34の1~3)。 シ原告のH常務理事は,平成21年3月26日,被告に対し,本件取引を解約する旨連絡し,同月27日,Eは,Hに対し,解約料は11億6270万円であることを伝えた。 ス Hは,平成21年3月27日,被告に対し,本件取引を解約により同月31日において終了し,同日,解約料として11億6270万円を支払う旨の理事長印の押された「約定のご確認」(甲4)をEに交付した。 セ原告は,平成21年3月31日,被告に対し,本件取引の解約料として11億6270万円を支払った(前記第2の2(8))。 ソ F及びEは,平成21年6月5日,原告訴訟代理人であるI弁護士,原告のJ事務局長,経済学部教授Kらに対 ,被告に対し,本件取引の解約料として11億6270万円を支払った(前記第2の2(8))。 ソ F及びEは,平成21年6月5日,原告訴訟代理人であるI弁護士,原告のJ事務局長,経済学部教授Kらに対し,本件解約料の算定方法について資料(甲6)を示して説明したが,具体的な計算式を示すことはなかった。 タ原告は,別件取引は,解約することなく継続し,平成23年10月までに合計1億0594万円の利益を得ている(弁論の全趣旨)。 2 争点(3)(説明義務違反)について(1) 金融商品取引では,投資家は,基本的には自己の判断と責任に基づいて取引を行うことが要請されるというべきであるが,本件取引はリスクの高い取引であり,被告は,金融商品取引に関する専門的知識を有する業者であるから,そのような状況においては,被告は,本件取引類似の金融商品の取引経験を有しない原告に対して勧誘をする際に,信義則上,原告の投資判断にとって重要な事項を説明すべき義務を負い,これに違反したときは,説明義務違反による不法行為責任が生じるというべきである。 そして,前記1(1)の本件取引の内容に照らすと,被告は,本件取引の勧誘に際して,原告に対し,具体的には,本件取引は,為替変動により大きな損失が生じる可能性があること,中途解約する場合には多額の解約清算金が発生する可能性があることについて十分に理解できるよう説明すべき義務があった。 (2) 上記1(3)ウのとおり,Bらは本件取引の為替リスク,即ち,為替相場が1豪ドル当たり74円又はこれより円高になった場合には,レバレッジにより大きな損失が生じることを理解していたということができ,この点については被告の説明義務違反は認められない。 原告は,最大限52億8000万円もの損失が発生するとの説明は聞いて レッジにより大きな損失が生じることを理解していたということができ,この点については被告の説明義務違反は認められない。 原告は,最大限52億8000万円もの損失が発生するとの説明は聞いていない旨主張するが,乙第31号証によれば,52億8000万円というのは1豪ドル当たり0円という究極の円高の場合の計算である上,上記1(3)のBらの理解に基づいて計算すれば,どの程度の円高になればどの程度の損失を受けるのかは明らかである。また,Bらは74円より円高になることを想定していなかった(証人B)ために,上記の為替リスクが現実化することはないと判断していた。したがって,EらがBらに対して最大限52億8000万円の損失を被るとの説明をしていないことによって上記認定は左右されない。 (3) Eは,証人尋問及び陳述書(乙30)において,中途解約する場合には解約手数料が必要であることについて,平成19年10月11日にはA,C及びBに対し,資料(乙6)を示して,平成20年1月24日にはBに対し,本件基本契約書を示して,原告に損失が出る状況で解約すると,残りの契約期間にもよるが,大きな損失が出る可能性がある旨説明した旨述べる。また,A,C及びBは,学校法人である原告の理事等として本件取引を行うことを決断したのであるから,Eらからの口頭による説明だけでなく,被告から提供された資料等を検討した上で本件取引を決断したはずであって,本件基本契約書,乙第3号証の2,乙第6号証等被告から交付を受けた書類については十分検討したものと推認することができる。 しかし,乙第6号証における解約料の説明は,ポイントを落とした字で,「時価の変動によっては,期中での合意解約に際し,受取り超となることも,支払い超となることもあります。」と記載されているのみであって,これに 乙第6号証における解約料の説明は,ポイントを落とした字で,「時価の変動によっては,期中での合意解約に際し,受取り超となることも,支払い超となることもあります。」と記載されているのみであって,これによっては,解約料の具体的算定方法あるいは概算額について全く推測もできず,顧客が取引を継続すべきか,解約料を払っても解約の申入れをすべきかを判断する資料とはなり得ない。また,平成19年10月11日は本件取引に絞るのではなく,フラット為替についての一般的な説明や米ドルをも含めた商品の説明が中心であったこと(上記1(3)ア)を考慮すると,同日の段階で,EがBらに対し,解約手数料についてまで説明をしたとは考えられない。 さらに,平成20年1月24日は,基本契約書締結の日であり,Bは,Eらと,半年近く,フラット為替の入口から詰めまで話してきて,その中でいろいろ聞くべきことは聞いたと認識していたし,オーストラリアの経済情勢は堅調であり,1豪ドル当たり74円より円高になることはないと判断していたこと(証人B),E自身,解約料の具体的な算定方法はわからず,「大きな損失」と言ってもどの程度の額になるのか,それが10億円なのか1000万円なのかすら理解していなかったこと(証人E)に照らすと,この段階において,EがBに対し,本件取引について説明するに当たってことさら解約料について詳しく説明をしたとは考えられない。また,乙第3号証の2には解約料についての説明はなく,本件基本契約書には,中途解約の際の一括清算の内容が抽象的に記載されているのみであって,解約料の具体的算定方法あるいは概算額について予測ができるに足りる記載はない。 以上によれば,Eらは,原告に対し,解約料の発生を考慮した上で本件取引を行うかどうかを決定する判断材料を与えたとはいえず,中途解約の場合の解 あるいは概算額について予測ができるに足りる記載はない。 以上によれば,Eらは,原告に対し,解約料の発生を考慮した上で本件取引を行うかどうかを決定する判断材料を与えたとはいえず,中途解約の場合の解約手数料についての説明は,極めて不十分であったと言わざるを得ない。 3 争点(1)(公序良俗違反)について上記1(1)に照らすと,本件取引は,基本的には,将来の為替レートを契約締結時に予約するものであり,現時点の為替のスポットレートより円高の水準で外貨の購入コストを固定化し,将来の為替変動リスクをヘッジするものであるということができ,海外取引を行う企業においては日常的に行われている。他方,原告は,本件取引は,射幸性が高いと主張し,確かに乙第31号証には,原告の最大損失が52億8000万円であるとの記載があるが,これは,究極の円高である1豪ドル当たり0円という為替レートを想定した場合であって,これにより,本件取引の射幸性が高いということはできず,他に本件取引自体が賭博性を有すると認めるに足りる証拠はない。 以上によれば,本件取引が公序良俗に反するものとはいえず,原告の主張は理由がない。 4 争点(2)(適合性原則違反)について(1) 原告の本件取引への適合性を判断するに当たっては,本件取引の具体的な特性を踏まえて,これとの相関関係において,原告の投資経験,証券取引の知識,投資意向,財産状態等の諸要素を総合的に考慮する必要があるというべきである(最高裁平成17年7月14日第一小法廷判決・民集59巻6号参照)。 (2) 上記1(1)のとおり,本件取引は,ハイリスク・ハイリターンのものであるということができる。他方,上記1(2)のとおり,原告は,為替と連動する仕組債等については既に取引経験があり,また,B,C及びAは,本件取引には り,本件取引は,ハイリスク・ハイリターンのものであるということができる。他方,上記1(2)のとおり,原告は,為替と連動する仕組債等については既に取引経験があり,また,B,C及びAは,本件取引には,1豪ドル当たり74円より円高になると原告に損失が発生するリスクがあることは認識していたが,資源国であるオーストラリアの今後の展開等について調査した結果,一時的に74円を割る円高になったとしても,短期間で回復するであろうから,10年間継続すれば総計では利益が出ると判断した(証人B)というのであり,為替リスクについては理解していた。また,上記1(2)の原告の財産状況に照らし,原告が本件取引によって生じる損失に耐えられない経済状況であったとは認められない。 以上によれば,原告がおよそ本件取引を自己責任で行う適性を欠き,取引から排除されるべきであった者とはいえず,原告の適合性原則違反の主張は理由がない。 5 争点(4)(本件解約料は,客観的に合理的かつ公正な方法により算出されていないか。)について(1) 被告は,原告に対し,本件解約料を,本件基本契約11条(2),(1)①に基づき請求したことは,当事者間に争いがない。 (2) 証拠(甲15,甲27,いずれも経済学者であるLの意見書,以下併せて「L意見書」という。)では,被告がブラック・ショールズモデル(オプション価格を計算するときの標準的な理論であり,一般的に用いられている(乙14)。)を発展させた被告独自のオプション契約の現在価格の算定式であるプライシングモデルに入力したパラメータのうち,ボラティリティ(一定期間における原資産の変動率)は,本来事前のボラティリティ(市場取引に際し,将来期間において原資産の価格がどの程度変動するかを表す数値)であるべきところをインプライドボラティリティ ティリティ(一定期間における原資産の変動率)は,本来事前のボラティリティ(市場取引に際し,将来期間において原資産の価格がどの程度変動するかを表す数値)であるべきところをインプライドボラティリティ(市場でのオプションの価値を前提としてブラック・ショールズ式などを利用して逆算する。)で代替し,フォワード為替は,現在の金利差が満期まで固定するものとして機械的に決めたものであって,いずれも無理なあるいは不合理な仮定をもとにするものであると指摘されている。 しかし,将来にわたる取引期間のある本件取引について,本件取引解約時の価値を評価するためには,ボラティリティ及びフォワード為替の数字を含め,一定の仮定を前提とした推計による予測にならざるを得ないところ,L意見書は,これらについて客観的に合理的かつ公正な数字と言えるのは,事前に又は事後的に,誤解や無理のない推計方法を採用して客観性と合理性を確保し,原告と被告の合意によって公正性が得られた場合に限るとするものであり,この立場に立つと,実際には一般の投資家を対象とするオプション取引は困難となるものと思われる。 (3) 乙第28号証(有価証券の公正価値評価を業務とする株式会社Mによる評価報告書)において,被告のパラメータや計算方法について疑問は示されておらず,また,証拠(乙15~17)によれば,被告のプライシングモデルにより算出した本件取引の平成30年1月29日を決済日とする評価額は,パラメータを同じものとして他社(米国N社及び米国O社)のプライシングモデルによって計算したものと大きく異なるものではないことが認められる。 (4) 上記(3)に照らすと,L意見書から,直ちに本件解約料が客観的に合理的かつ公正な方法により算出されていないというには合理的疑問があり,他にこれを認めるに足りる証拠はない ことが認められる。 (4) 上記(3)に照らすと,L意見書から,直ちに本件解約料が客観的に合理的かつ公正な方法により算出されていないというには合理的疑問があり,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 したがって,被告に本件解約料を詐取されたとの原告の主張は採用できない。 6 争点(5)(損害及び被告の責任)について以上によれば,Eらの原告に対する本件取引の勧誘行為には,説明義務違反の違法がある。そして,原告が学校法人であることに照らすと,Eらが,Bらに対し,本件取引を中途解約する場合の解約料は,為替レート等によっては,10億円を上回ることがあり得る旨説明をしていたならば,原告は,本件取引それ自体を行っていなかったものと認めることができるから,被告は,本件取引全体に関して原告が被った損害を賠償する責任を負うと解することができる。 したがって,原告が被告に支払った解約料11億6270万円及び本件取引損失328万円は,Eらの説明義務違反と相当因果関係のある損害と認められる。 7 争点(6)(過失相殺)について前記1(2)のとおり,原告は,平成11年ころから,被告との間において,為替と連動するものも含む仕組債と呼ばれる社債を中心として,多額の資産運用を行っており,本件取引開始に際しても,前記2において判示したとおり,Bらは,Eらからフラット為替取引について一通りの説明を受け,為替の変動により多額の損失を被る可能性があるということを理解した上で本件取引を行ったと認められる。また,原告においては,A,C及びBの3名が協議した上で本件取引を行うことを決断したこと,本件解約料を支払った後の交渉過程においては,経済学部の教授も参加しており,原告においては,より慎重に検討するための人材を有していたことなどの諸事情を考慮すると で本件取引を行うことを決断したこと,本件解約料を支払った後の交渉過程においては,経済学部の教授も参加しており,原告においては,より慎重に検討するための人材を有していたことなどの諸事情を考慮すると,本件取引において損失が発生したことには,原告にも相当程度の過失が認められ,その過失割合は8割と認めるのが相当である。 8 争点(7)(原告の目的の範囲外の行為)について前記1(2)イのとおり,原告は,本件取引以前においても,被告との間において仕組債等の取引を行っており,乙第27号証によれば,原告は,「週刊東洋経済」において資産運用に問題があるとの指摘を受けたのに対し,自ら適正な取引である旨ホームページ上に掲載したことが認められる。また,原告は,本件基本契約において,被告に対し,原告が寄附行為に基づき本契約の対象となる取引を行うことができる権利能力があることを保証し(本件基本契約書5条1項),現在においても別件取引を継続し,利益を受け取っている。 これらの事実に照らせば,原告において,上記寄附行為31条にいう「確実な有価証券」には,国債や大手電鉄会社等の社債だけでなく,これまで取引したような仕組債,デリバティブ取引等をも含むものとして解釈され,運用されてきたものというべきであって,本件取引が原告の目的の範囲外の行為とはいえないし,仮にそうであったとしても,上記各事実に照らすと,原告が本件取引を目的の範囲外の行為であると主張することは信義則に反し許されない。 9 争点(8)(錯誤)について本件基本契約書11条には,中途解約の場合には,解約料を支払う必要があることが記載されているところ,上記2で認定したとおり,Bは,本件取引を開始するに当たり,Eから本件基本契約書を受け取り,検討したものと認めることができるから,中途解約の場合には解 を支払う必要があることが記載されているところ,上記2で認定したとおり,Bは,本件取引を開始するに当たり,Eから本件基本契約書を受け取り,検討したものと認めることができるから,中途解約の場合には解約料を支払わなければならないこと自体は理解していたものといえ,この点については何ら錯誤はない。 本件解約料が結果として11億円を超える高額なものとなった直接の原因は,本件取引開始後に豪ドルが円に対して大幅に安くなったという事象にあるから,本件取引開始時に原告に法律行為の要素の錯誤があったとはいえない。 10 まとめ以上によれば,原告の被告に対する,被告従業員の不法行為に基づく損害賠償請求は,過失相殺後の2億3319万6000円に,被告従業員の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当の損害額2000万円を加えたもの及びこれに対する本件解約料を支払った日の後である平成21年4月1日から支払済みまでの遅延損害金の限度で理由があるが,原告の不当利得に基づく請求は理由がない。 なお,金融商品販売法5条の規定が不法行為に基づく損害賠償請求権とは別個の請求権を定めたものとしても,その要件事実は不法行為と異なるところはなく,損害の算定,過失相殺の適用も同様であると解されるから,同請求についても上記限度で理由があり,その余は理由がない。 第4 結論以上によれば,原告の請求は,上記第3の10の限度で理由があるからこの限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第16民事部 裁判長裁判官森純子 裁判官寺元義人 裁判長 裁判官 森純子 裁判官 寺元義人 裁判官 木戸口由佳

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