平成29(行ケ)31 選挙無効請求事件

裁判年月日・裁判所
平成30年2月6日 東京高等裁判所 棄却
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判決文本文19,937 文字)

- 1 - 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 1 平成29年10月22日施行の衆議院(小選挙区選出)議員選挙の東京都第2区,同第5区,同第8区,同第9区及び同第18区並びに神奈川県第15区における各選挙をいずれも無効とする。 2 訴訟費用は,原告Fを除く原告らと被告東京都選挙管理委員会との間に生じたものは,同被告の負担とし,原告Fと被告神奈川県選挙管理委員会との間に生じたものは,同被告の負担とする。 第2 事案の概要等 1 事案の概要⑴ 衆議院議員総選挙の実施平成29年10月22日,衆議院議員総選挙(以下,同日施行の衆議院議員総選挙を「本件選挙」という。)が施行された。 本件選挙は,平成29年法律第58号(以下「平成29年改正法」という。)による改正後の平成28年法律第49号(以下「平成29年改正後の平成28年改正法」という。)により改定された選挙区割り(以下,このうち衆議院小選挙区選出議員の選挙(以下「小選挙区選挙」という。)に関するものを「本件選挙区割り」という。)の下で施行されたものである。 ⑵ 原告ら原告Aは,本件選挙における小選挙区選挙の東京都第2区の,原告Bは同東京都第5区の,原告Cは同東京都第8区の,原告Dは同東京都第9区の,原告Eは同東京都第18区の,原告Fは同神奈川県第15区の,それぞれ選挙人である。 - 2 -⑶ 本件請求の内容本件は,原告らが,本件選挙区割りに関する公職選挙法の規定は,議員定数を各都道府県の人口に比例して配分しておらず,公正な代表を選出する契機である選挙権の 2 -⑶ 本件請求の内容本件は,原告らが,本件選挙区割りに関する公職選挙法の規定は,議員定数を各都道府県の人口に比例して配分しておらず,公正な代表を選出する契機である選挙権の平等の保障(憲法15条1項,14条1項,44条ただし書)に反し,憲法が規定する代議制民主主義(前文,1条,43条1項)を害する違憲・無効なものであるから,これに基づき施行された本件選挙の前記⑵の各選挙区における選挙も無効であるなどと主張して,公職選挙法204条の規定に基づいて,上記各選挙を無効とすることを求めている事案である。 2 前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,当裁判所に顕著であるか,又は後掲証拠若しくは弁論の全趣旨により容易に認められる事実である。 ⑴ 原告適格原告らは,次のとおり,本件選挙における小選挙区選挙の各選挙区の選挙人である。(当事者間に争いがない事実)原告A 東京都第2区原告B 東京都第5区原告C 東京都第8区原告D 東京都第9区原告E 東京都第18区原告F 神奈川県第15区⑵ 本件選挙の概要本件選挙は,平成29年10月22日,平成29年改正後の平成28年改正法による改正後の衆議院議員選挙区画定審議会設置法(以下「区画審設置法」という。)及び公職選挙法の規定の下で施行されたものである。本件選挙施行当時の衆議院議員の定数は465人とされ,そのうち289人が小選- 3 -挙区選出議員,176人が比例代表選出議員とされ(公職選挙法4条1項),小選挙区選挙については,全国に289の選挙区を設け,各選挙区において1人の議員を選出するものとされ(同法 が小選- 3 -挙区選出議員,176人が比例代表選出議員とされ(公職選挙法4条1項),小選挙区選挙については,全国に289の選挙区を設け,各選挙区において1人の議員を選出するものとされ(同法13条1項,別表第1。以下,これらの規定を併せて「本件区割規定」といい,後記の改正の前後を通じてこれらの規定を併せて単に「区割規定」ということがある。),衆議院比例代表選出議員の選挙(以下「比例代表選挙」という。)については,全国に11の選挙区を設け,各選挙区において所定数の議員を選出するものとされている(同法13条2項,別表第2)。総選挙においては,小選挙区選挙と比例代表選挙とを同時に行い,投票は小選挙区選挙及び比例代表選挙ごとに1人1票とされている(同法31条,36条)。(当事者間に争いがない事実,当裁判所に顕著な事実)⑶ 本件選挙に至る経緯ア平成21年8月30日に衆議院議員総選挙(以下,同日施行の衆議院議員総選挙を「平成21年選挙」という。)が,平成24年12月16日に衆議院議員総選挙(以下,同日施行の衆議院議員総選挙を「平成24年選挙」という。)が,平成26年12月14日に衆議院議員総選挙(以下,同日施行の衆議院議員総選挙を「平成26年選挙」という。)が,それぞれ施行されたが,最高裁平成22年(行ツ)第207号平成23年3月23日大法廷判決・民集65巻2号755頁(以下「平成23年大法廷判決」という。)は,平成21年選挙について,最高裁平成25年(行ツ)第209号,第210号,第211号同年11月20日大法廷判決・民集67巻8号1503頁(以下「平成25年大法廷判決」という。)は,平成24年選挙について,最高裁平成27年(行ツ)第253号同年11月25日大法廷判決・民集69巻7号2035頁(以下「平成27年大法廷 7巻8号1503頁(以下「平成25年大法廷判決」という。)は,平成24年選挙について,最高裁平成27年(行ツ)第253号同年11月25日大法廷判決・民集69巻7号2035頁(以下「平成27年大法廷判決」という。)は,平成26年選挙について,いずれも,各選挙における選挙区割りが,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったと判- 4 -断した。(弁論の全趣旨により容易に認められる事実,当裁判所に顕著な事実)イ平成26年選挙の後,各都道府県の選挙区数を増やすことなく,平成29年改正後の平成28年改正法による改正後の区画審設置法3条2項が定める方式(以下「アダムズ方式」という。)により都道府県別の議員定数を計算した場合に減員対象となる都道府県のうち,議員1人当たりの日本国民の人口の最も少ない6県(青森,岩手,三重,奈良,熊本,鹿児島)の各選挙区数をそれぞれ1減ずるいわゆる0増6減(以下「0増6減」という。)とそれに基づく選挙区割りの改定が行われ(以下,これらを併せて「0増6減等の措置」という。),その結果,平成27年10月1日を調査時とする国勢調査(以下「平成27年国勢調査」という。)の結果によれば,選挙区間の日本国民の人口の最大較差は1対1.956となるものとされた。(乙14の1,弁論の全趣旨)ウ本件選挙は,本件選挙区割りの下で施行されたが,本件選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差は,選挙人数が最も少ない鳥取県第1区と選挙人数が最も多い東京都第13区との間で1対1.979であり,鳥取県第1区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は0区であった。 (乙1) 3 争点⑴ 本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っているか否か⑵ 憲法上要求される合理的な期間内における 倍以上となっている選挙区は0区であった。 (乙1) 3 争点⑴ 本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っているか否か⑵ 憲法上要求される合理的な期間内における是正がされなかったか否か⑶ 本件選挙のうち東京都第2区,同第5区,同第8区,同第9区及び同第18区並びに神奈川県第15区における各選挙を無効とするか否か 4 争点に関する当事者の主張⑴ 争点⑴(本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に- 5 -至っているか否か)について(原告らの主張)ア新憲法の下で昭和22年に改正された衆議院議員選挙法は,中選挙区選出議員選挙につき,各都道府県にその人口に比例して議員定数を配分したが,その後,我が国の人口の地方から都市部への流入に応じた議員定数の人口比例配分は,正しく行われることはなく,むしろ,平成6年にいわゆる「1人別枠方式」が採用されるなど,議員の定数配分における人口比例原則の軽視は甚だしいものであった。しかし,その後の区画審設置法及び公職選挙法の改正においては,「1人別枠方式」を定めた条文の文言が削除されただけで,「1人別枠方式」による議員定数の配分が改められたわけではなく,さらに,平成29年改正後の平成28年改正法における0増6減等の措置の合理性は明らかでなく,本件選挙区割りは,従前と同様に,一部の選挙区について議員の定数を減じただけで,基本的に「1人別枠方式」を含む従前の配分が継続されるものとなっている。 イまた,日本全国の人口を小選挙区選出議員の定数289で除した商である43万9774人を基準人数とし,この基準人数に,本件選挙区割りにより各都道府県に配分された小選挙区選出議員数を乗じた積と,各都道府県の人口との差は,別表1の「基準人 員の定数289で除した商である43万9774人を基準人数とし,この基準人数に,本件選挙区割りにより各都道府県に配分された小選挙区選出議員数を乗じた積と,各都道府県の人口との差は,別表1の「基準人数による過不足議員数の検討」の「過不足人数」欄記載のとおりとなる。東京都で基準人数の5倍,神奈川県で基準人数の2倍,大阪府,愛知県,埼玉県及び千葉県で基準人数を超える差(不足)がそれぞれ生じ,それに相当する議員が足りない状況にある。したがって,本件選挙区割りは,各都道府県への小選挙区選出議員の配分の点において,1人1票の人口比例配分の原則に反し,違憲である。 ウさらに,平成22年10月1日を調査時とする国勢調査(以下「平成22年国勢調査」という。)によると,神奈川県の人口が大阪府の人口より多いのに,神奈川県への配分議員数が大阪府の配分議員数より1少ないと- 6 -いう逆転現象が生じていた(別表2参照)が,本件選挙区割りにおいても,この逆転現象が放置されている。いわゆる最大較差論は,例えば2倍以内の差であれば平等と認めること自体が問題であるばかりか,人口「比例」配分とは無関係であり,また,最大値と最小値との比較をするだけで,その中間に属する道府県を検討の対象とせず,その結果,「逆転現象」を無視する点でも妥当でない。 エ加えて,各都道府県内における各選挙区の人口が前記イの基準人数とどの程度かい離しているかを示した結果は,別表3の「県内最小選挙区」と「県内最大選挙区」の各「県内基準人数との差」のとおりであり,本件選挙区割りは,各都道府県内における各選挙区の人口が基準人数に可能な限り近づいているものとは到底言えない。 オ以上によれば,本件選挙区割りは,憲法の要求する投票価値の平等を満たしていないから,憲法に違反する。 府県内における各選挙区の人口が基準人数に可能な限り近づいているものとは到底言えない。 オ以上によれば,本件選挙区割りは,憲法の要求する投票価値の平等を満たしていないから,憲法に違反する。 (被告らの主張)投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく,国会が正当に考慮することのできる他の政策目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであり,選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められているから,小選挙区制度における具体的な選挙区を定めるに当たっては,種々の政策的考慮要素を総合的に考慮した上で,国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに,投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められる。したがって,国会が具体的に定めた選挙制度の仕組みが,投票価値の平等という憲法上の要求に反し,国会の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており,これを是認することができない場合に初めて,憲法に違反することになる。 選挙区間の最大較差が2倍未満となる本件選挙区割りは,国会において通常考慮し得る諸般の要素を斟酌した,一般に合理性を有するものであって,- 7 -憲法の投票価値の平等の要求に反するものとはいえず,また,選挙区間の最大較差を2倍未満に縮小させただけでなく,被災地等の例外なく,全選挙区を通じて較差の縮小が図られたから,この最大較差のみをもってしても,本件選挙当時,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていなかったことは明らかである。 ⑵ 争点⑵(憲法上要求される合理的な期間内における是正がされなかったか否か)について(原告らの主張)新憲法の下で昭和22年に改正された衆議院議員選挙法は,中選挙区選出議員選挙につき,各都 (憲法上要求される合理的な期間内における是正がされなかったか否か)について(原告らの主張)新憲法の下で昭和22年に改正された衆議院議員選挙法は,中選挙区選出議員選挙につき,各都道府県にその人口に比例して議員定数を配分したが,その後,我が国の人口の地方から都市部への人口の流入に応じた議員定数の人口比例配分は,正しく行われることはなく,むしろ,平成6年に「1人別枠方式」が採用されるなど,議員の定数配分における人口比例原則の軽視は甚だしいものであった。そして,平成23年大法廷判決は,投票価値の不平等は違憲状態にあるとし,国会に対して「1人別枠方式」の可及的速やかな廃止を求めたのに,その後の区画審設置法及び公職選挙法の改正においては,「1人別枠方式」を定めた条文の文言が削除されただけで,「1人別枠方式」による議員定数の配分が改められたわけではなく,平成27年大法廷判決は,なお平成26年選挙の選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったと判示した。 しかるに,本件選挙区割りは,アダムズ方式を用いて議員の定数を配分したわけではなく,従前と同様に,一部の選挙区について議員の定数を減じただけで,基本的に「1人別枠方式」を含む従前の配分が継続されるものとなっている。 (被告らの主張)憲法上要求される合理的な期間内における是正がされなかったか否かの判- 8 -断は,単に期間の長短のみならず,是正措置の内容,そのために検討を要する事項,実際に必要となる手続,作業等の諸般の事情を総合考慮して,国会における是正の実現に向けた取組が,司法の判断を踏まえた立法裁量権の行使として相当なものであったか否かという観点から行うべきである。 平成24年以降の区画審設置法及び公職選挙法の改正は,平成23 ける是正の実現に向けた取組が,司法の判断を踏まえた立法裁量権の行使として相当なものであったか否かという観点から行うべきである。 平成24年以降の区画審設置法及び公職選挙法の改正は,平成23年大法廷判決から平成27年大法廷判決までの趣旨に沿って,1人別枠方式を廃止するとともに,将来的にも選挙区間の最大較差を2倍未満とするための所要の改正を行い,選挙区間の最大較差を2倍未満にまで縮小させたものであること,本件選挙は,平成29年改正後の平成28年改正法により新たに定められた本件選挙区割りの下での初めての選挙であり,本件選挙における選挙区間の最大較差は,衆議院議員の小選挙区選挙上,過去最少の数値であるのみならず,小選挙区選挙に関する累次の最高裁判所の判決において合憲とされた最大較差をも相当程度に下回るものであったこと,この最大較差の縮小は,平成23年大法廷判決が投票価値の平等に配慮した合理的な基準であると評価した平成29年改正後の平成28年改正法による改正前の区画審設置法3条(以下「新区画審設置法3条」という。)の求める2倍未満の較差をまさに実現したものであったことからすると,平成24年以降の区画審設置法及び公職選挙法の改正は,平成23年大法廷判決から平成27年大法廷判決までの趣旨を踏まえた立法裁量権の行使として十分に相当なものであって,国会においても,本件選挙までに,本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあるなどということは全く認識することができない状況にあった。 したがって,本件選挙区割りについて,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったものであるなどとはいえない。 ⑶ 争点⑶(本件選挙を無効とするか否か)について(原告らの主張)- 9 -本件選挙には,争点⑴ される合理的期間内における是正がされなかったものであるなどとはいえない。 ⑶ 争点⑶(本件選挙を無効とするか否か)について(原告らの主張)- 9 -本件選挙には,争点⑴及び⑵において原告らが主張した違憲・無効事由があるから,本件選挙区割りを定める区割規定(以下「本件区割規定」という。)は無効とされるべきであり,本件区割規定に基づいて施行された本件選挙における小選挙区選挙も無効である。 (被告らの主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記第2の2の前提事実,後掲各証拠,弁論の全趣旨及び当裁判所に顕著な事実によれば,以下の事実が認められる。 ⑴ 衆議院議員の選挙制度における小選挙区制の採用と1人別枠方式ア昭和25年に制定された公職選挙法は,衆議院議員の選挙制度につき,中選挙区単記投票制を採用していたが,平成6年に公職選挙法が改正され,これにより,衆議院議員の選挙制度は,従来の中選挙区単記投票制から小選挙区比例代表並立制に改められた。(当裁判所に顕著な事実)イ平成6年に制定された区画審設置法2条によれば,衆議院議員選挙区画定審議会(以下「区画審」という。)は,衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定に関し,調査審議し,必要があると認めるときは,その改定案を作成して内閣総理大臣に勧告するものとされている。(当裁判所に顕著な事実)ウ平成24年法律第95号(以下「平成24年改正法」という。)による改正前の区画審設置法3条(以下「旧区画審設置法3条」という。)は,前記イの選挙区の区割りの基準(以下,後記の改正の前後を通じて「区割基準」という。)につき,①1項において,前記イの改定案を作成するに当たっては,各選挙区の人口の均衡を図り,各選挙区の人口のうち ,前記イの選挙区の区割りの基準(以下,後記の改正の前後を通じて「区割基準」という。)につき,①1項において,前記イの改定案を作成するに当たっては,各選挙区の人口の均衡を図り,各選挙区の人口のうち,その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上にならないように- 10 -することを基本とし,行政区画,地勢,交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないものと定めるとともに,②2項において,各都道府県の区域内の選挙区の数は,各都道府県にあらかじめ1を配当することとし(以下,このことを「1人別枠方式」という。),この1に,小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とすると定めていた(以下,この区割基準を「旧区割基準」といい,この規定を「旧区割基準規定」ともいう。)。(当裁判所に顕著な事実)エ小選挙区比例代表並立制の導入の際に1人別枠方式を設けること等について,区画審設置法の法案提出者である政府側からは,投票価値の平等の確保の必要性がある一方で,過疎地域に対する配慮,具体的には人口の少ない地方における定数の急激な減少への配慮等の視点も重要であることから,定数配分上配慮したものである旨の説明がされていた。(当裁判所に顕著な事実)⑵ 平成21年選挙平成21年選挙の小選挙区選挙は,平成14年法律第95号により改定された選挙区割り(以下「平成14年選挙区割り」という。)の下で施行された(以下,平成21年選挙に係る衆議院小選挙区選出議員の選挙区を定めた上記改正後(平成24年改正法による改正前)の公職選挙法13条1項及び別表第1を併せて「平成14年区割規定」という。)。(当裁判所に顕著な事実)平成14年の上記改正の基 の選挙区を定めた上記改正後(平成24年改正法による改正前)の公職選挙法13条1項及び別表第1を併せて「平成14年区割規定」という。)。(当裁判所に顕著な事実)平成14年の上記改正の基礎とされた平成12年10月1日を調査時とする国勢調査の結果による人口を基に,平成14年区割規定の下における選挙区間の人口の較差をみると,最大較差は人口が最も少ない高知県第1区と人口が最も多い兵庫県第6区との間で1対2.064であり,高知県第1区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は9選挙区であった。平成21年- 11 -選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差は,選挙人数が最も少ない高知県第3区と選挙人数が最も多い千葉県第4区との間で1対2.304であり,高知県第3区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は45選挙区であった。(乙2の1,当裁判所に顕著な事実)⑶ 平成23年大法廷判決平成23年大法廷判決は,平成21年選挙について,選挙区の改定案の作成に当たり,選挙区間の人口の最大較差が2倍未満になるように区割りをすることを基本とすべきものとする旧区画審設置法3条1項の定めは,投票価値の平等の要請に配慮した合理的な基準を定めたものであると評価する一方,平成21年選挙時において,選挙区間の投票価値の較差が前記のとおり拡大していたのは,同条2項の1人別枠方式がその主要な要因となっていたことが明らかであり,かつ,人口の少ない地方における定数の急激な減少への配慮等の視点から導入された1人別枠方式は既に立法時の合理性が失われていたものというべきであるから,旧区割基準のうち1人別枠方式に係る部分及び旧区割基準に従って改定された平成14年区割規定の定める平成14年選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ってい いたものというべきであるから,旧区割基準のうち1人別枠方式に係る部分及び旧区割基準に従って改定された平成14年区割規定の定める平成14年選挙区割りは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたと判示した。しかし,平成23年大法廷判決は,これらの状態につき憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず,旧区割基準規定及び平成14年区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできないとした上で,事柄の性質上必要とされる是正のための合理的期間内に上記の状態を解消するために,できるだけ速やかに旧区割基準中の1人別枠方式を廃止し,旧区画審設置法3条1項の趣旨に沿って平成14年改正区割規定を改正するなど,投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要があると判示した。(当裁判所に顕著な事実)⑷ 平成24年改正法平成23年大法廷判決後,平成23年大法廷判決を受けて行われた各政党- 12 -による検討及び協議を経て,平成24年6月及び7月に複数の政党の提案に係る改正法案がそれぞれ国会に提出され,これらの改正法案のうち,旧区画審設置法3条2項の削除及びいわゆる0増5減(各都道府県の選挙区数を増やすことなく議員1人当たりの人口の少ない5県の各選挙区数をそれぞれ1減ずることをいう。以下同じ。)を内容とする改正法案が,同年11月16日に平成24年改正法として成立した。平成24年改正法は,附則において,旧区画審設置法3条2項を削除する改正規定は公布日から施行するものとする一方で,各都道府県の選挙区数の0増5減を内容とする改正後の公職選挙法の規定は次回の総選挙から適用する(公職選挙法の改正規定は別に法律で定める日から施行する)ものとし,上記0増5減を前提に,区画審が選挙区間の人口の較差が2 数の0増5減を内容とする改正後の公職選挙法の規定は次回の総選挙から適用する(公職選挙法の改正規定は別に法律で定める日から施行する)ものとし,上記0増5減を前提に,区画審が選挙区間の人口の較差が2倍未満となるように選挙区割りを改める改定案の勧告を公布日から6か月以内に行い,政府がその勧告に基づいて速やかに法制上の措置を講ずべき旨を定めた。 上記の改正により,旧区画審設置法3条1項が同改正後の区画審設置法3条(以下「新区画審設置法3条」という。)となり,同条においては,前記⑴ウ①の基準のみが区割基準として定められた(以下,この区割基準を「新区割基準」という。)。(以上につき,乙3の1(17ないし29頁),乙4(241頁),乙8の6(2頁))⑸ 平成24年選挙平成24年改正法の成立と同日に衆議院が解散され,平成24年12月16日に平成24年選挙が施行されたが,平成24年選挙までに新たな選挙区割りを定めることは時間的に不可能であったため,平成24年選挙は前回の平成21年選挙と同様に平成14年区割規定及びこれに基づく平成14年選挙区割りの下で施行されることとなった。(当裁判所に顕著な事実)平成24年選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差は,選挙人数が最も少ない高知県第3区と選挙人数が最も多い千葉県第4区との間で1対- 13 -2.425であり,高知県第3区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は72選挙区であった。(乙2の2)⑹ 平成25年の公職選挙法及び区画審設置法の改正平成24年改正法の成立後,平成24年改正法の附則の規定に従って区画審による審議が行われ,平成25年3月28日,区画審は,内閣総理大臣に対し,選挙区割りの改定案の勧告を行った。この改定案は,平成24年改正法 改正法の成立後,平成24年改正法の附則の規定に従って区画審による審議が行われ,平成25年3月28日,区画審は,内閣総理大臣に対し,選挙区割りの改定案の勧告を行った。この改定案は,平成24年改正法の附則に規定に基づき,各都道府県の選挙区数の0増5減を前提に,選挙区間の人口の較差が2倍未満となるように17都県の42選挙区において区割りを改めることを内容とするものであった。(乙3の2(37頁),乙5,乙6)上記勧告を受けて,平成25年4月12日,内閣は,上記改定案に基づく選挙区割りの改定を内容とする公職選挙法の改正事項(平成14年区割規定の改正規定及びその施行期日)を定める法制上の措置として,平成24年改正法の一部を改正する法律案を国会に提出し,平成25年6月24日,この改正法案が平成25年法律第68号(以下「平成25年改正法」という。)として成立した。平成25年改正法は同月28日に公布されて施行され,平成25年改正法による改正後の平成24年改正法中の上記0増5減及びこれを踏まえた区画審の上記改定案に基づく選挙区割りの改定を内容とする公職選挙法の改正規定はその1か月後の平成25年7月28日から施行されており,この改正により,各都道府県の選挙区数の0増5減とともに上記改定案のとおりの選挙区割りの改定が行われた(以下,上記改正後(平成29年改正後の平成28年改正法による改正前)の公職選挙法13条1項及び別表第1を併せて「平成25年区割規定」といい,平成25年区割規定に基づく上記改定後の選挙区割りを「平成25年選挙区割り」という。)。(乙4(241,242頁),当裁判所に顕著な事実)上記改定の結果,平成22年国勢調査の結果によれば,選挙区間の人口の- 14 -最大較差は1対1.998となるものとされた。(乙3の2(5 (241,242頁),当裁判所に顕著な事実)上記改定の結果,平成22年国勢調査の結果によれば,選挙区間の人口の- 14 -最大較差は1対1.998となるものとされた。(乙3の2(53頁),乙4(242頁))⑺ 平成25年大法廷判決平成25年大法廷判決は,平成24年選挙について,平成24年選挙時において平成14年区割規定の定める平成14年選挙区割りは平成21年選挙時と同様に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものではあるが,前記⑷のような平成24年選挙までの間の国会における是正の実現に向けた取組が平成23年大法廷判決の趣旨を踏まえた立法裁量権の行使として相当なものでなかったとはいえないから,憲法上要求される合理的期間における是正がされなかったとはいえず,平成14年区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできないとした上で,国会においては今後も新区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備に向けた取組が着実に続けられていく必要があると判示した。(当裁判所に顕著な事実)⑻ 平成25年大法廷判決後の状況国会においては,平成26年6月には,衆議院に,有識者により構成される検討機関として衆議院選挙制度に関する調査会が設置され,同調査会において衆議院議員選挙の制度の在り方の見直し等が進められ,衆議院議院運営委員会において同調査会の設置の議決がされた際に,同調査会の答申を各会派において尊重するものとする旨の議決も併せてされている。同調査会においては,同年9月以降,平成26年選挙及び平成27年大法廷判決の前後を通じて,定期的な会合が開かれ,投票価値の較差の更なる縮小を可能にする定数配分等の制度の見直しを内容とする具体的な改正案などの検討が行われていた。(乙8の1 6年選挙及び平成27年大法廷判決の前後を通じて,定期的な会合が開かれ,投票価値の較差の更なる縮小を可能にする定数配分等の制度の見直しを内容とする具体的な改正案などの検討が行われていた。(乙8の1ないし16,乙9)⑼ 平成26年選挙平成26年11月21日の衆議院解散に伴い,同年12月14日,前記0- 15 -増5減の措置による改定を経た平成25年選挙区割りの下において平成26年選挙が施行された。(当裁判所に顕著な事実)平成26年選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差は,選挙人数が最も少ない宮城県第5区と選挙人数が最も多い東京都第1区との間で1対2.129であり,宮城県第5区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は13選挙区であった。(乙2の3)⑽ 平成27年大法廷判決ア平成27年大法廷判決は,平成26年選挙について,平成25年選挙区割りにおいては,平成25年改正法成立の約3か月前の平成25年3月31日現在及び約6か月後の平成26年1月1日現在の各住民基本台帳に基づいて総務省が試算した選挙区間の人口の最大較差は既にそれぞれ1対2. 097及び1対2.109であり,上記試算において較差が2倍以上となっている選挙区はそれぞれ9選挙区及び14選挙区となっており,さらに,平成26年選挙時における選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2. 129に達し,較差2倍以上の選挙区も13選挙区存在していたものであり,このような投票価値の較差が生じた主な要因は,いまだ多くの都道府県において,新区割基準に基づいて定数の再配分が行われた場合とは異なる定数が配分されていることにあるというべきであり,このような投票価値の較差が生じたことは,全体として新区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていた 数の再配分が行われた場合とは異なる定数が配分されていることにあるというべきであり,このような投票価値の較差が生じたことは,全体として新区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたとはいえないことの表れというべきであり,以上のような平成26年選挙時における投票価値の較差の状況やその要因となっていた事情などを総合考慮すると,平成25年改正法による改正後の平成24年改正法による選挙区割りの改定の後も,平成26年選挙時に至るまで,平成25年選挙区割りはなお憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものといわざるを得ないと判示した。(当裁判所に顕著な事実)- 16 -イそして,平成27年大法廷判決は,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったといえるか否かについて,平成23年大法廷判決の言渡しから平成26年選挙までに,2回の法改正を経て,旧区画審設置法3条2項の規定が削除されるとともに,直近の平成22年国勢調査の結果によれば,全国の選挙区間の人口の較差が2倍未満となるように定数配分と選挙区割りの改定が行われ,平成26年選挙時の投票価値の最大較差は前回の平成24年選挙時よりも縮小し,更なる法改正に向けて衆議院に設置された検討機関において選挙制度の見直しの検討が続けられているのであって,このような考慮すべき諸事情に照らすと,国会における是正の実現に向けた取組が平成23年大法廷判決及び平成25年大法廷判決の趣旨を踏まえた立法裁量権の行使として相当なものでなかったということはできず,憲法上要求される合理的期間を徒過したものと断ずることはできないと判示した。(当裁判所に顕著な事実)なお,平成27年大法廷判決は,国会においては,今後も,衆議院に設置された検討機関において行われている投票価値の を徒過したものと断ずることはできないと判示した。(当裁判所に顕著な事実)なお,平成27年大法廷判決は,国会においては,今後も,衆議院に設置された検討機関において行われている投票価値の較差の更なる縮小を可能にする制度の見直しを内容とする具体的な改正案の検討と集約が早急に進められ,新区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備に向けた取組が着実に続けられていく必要があるというべきであると判示した。(当裁判所に顕著な事実)⑾ 平成28年の区画審設置法及び公職選挙法の改正ア前記⑻の衆議院選挙制度に関する調査会は,平成26年9月から平成27年12月までの16回にわたる会議の開催を経て,平成28年1月14日,衆議院議長に対し,答申(以下「本件答申」という。)を行った。本件答申の内容は,小選挙区選挙に関連する部分をみると,①衆議院議員の定数を10人(小選挙区選出議員の定数を6人,比例代表選出議員の定数を4人)削減する,②選挙区間の1票の較差を2倍未満とする,③都道府- 17 -県への議席配分は,各都道府県の人口を一定の数値で除し,それぞれの商の整数に小数点以下を切り上げて得られた数の合計数が小選挙区選挙の定数と一致する方式(アダムズ方式)により行うこととし,各都道府県の議席は,その人口を当該数値(除数)で除した商の整数に小数点以下を切り上げて得られた数とする,④都道府県への議席配分の見直しは,制度の安定性を勘案し,10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口に基づき行う,⑤大規模国勢調査の中間年に実施される簡易国勢調査の結果,較差2倍以上の選挙区が生じたときは,区画審は,各選挙区間の較差が2倍未満となるように関係選挙区の区画の見直しを行うなどというものであった。(乙8の1ないし17,乙10(3,4頁)) 勢調査の結果,較差2倍以上の選挙区が生じたときは,区画審は,各選挙区間の較差が2倍未満となるように関係選挙区の区画の見直しを行うなどというものであった。(乙8の1ないし17,乙10(3,4頁))イ本件答申を受けて,平成28年5月20日,平成28年法律第49号(以下「平成28年改正法」という。)が成立した。平成28年改正法の内容は,「人口」を「日本国民の人口」とした(平成28年改正法による改正後の区画審設置法3条1項)上で,①区画審設置法3条の,各選挙区の日本国民の人口のうち,最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることを基本とするとされていた規定につき,基本とするという部分を削除し,各選挙区間の日本国民の人口の最大較差が2倍以上とならないように厳格化すること(平成28年改正法による改正後の区画審設置法3条1項),②各都道府県の区域内の選挙区の数を平成32年以降10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づき,アダムズ方式により配分すること(同法3条1項,2項),②平成37年以降の簡易国勢調査の結果に基づく各選挙区間の日本国民の人口の最大較差が2倍以上になったときは,各都道府県の選挙区数を変更することなく,区画審が較差是正のために選挙区割りの改定案の作成及び勧告を行うものとすること(同法3条3項,4条2項)等というものであった。もっとも,平成28年改正法の附則においては,①区画審は,平成27年国勢調査の- 18 -結果に基づく小選挙区選出議員の選挙区の改定案の作成及び勧告を行うものとすること(附則2条1項),ただし,②①の改定案の作成に当たっては,小選挙区選挙の定数6減の対象県について,平成27年国勢調査の結果に基づき,アダムズ方式により都道府県別定数を計算した場合に減員対象となる都道 則2条1項),ただし,②①の改定案の作成に当たっては,小選挙区選挙の定数6減の対象県について,平成27年国勢調査の結果に基づき,アダムズ方式により都道府県別定数を計算した場合に減員対象となる都道府県のうち,議員1人当たりの日本国民の人口の最も少ない都道府県から順に6県とすること(附則2条2項1号),③平成27年国勢調査の結果に基づき,各選挙区の日本国民の人口に関し,将来の見込人口を踏まえ,平成32年までの5年間を通じて較差2倍未満となることを基本として区割りを行うなどの措置をとること(附則2条3項),④平成28年改正法の施行後においても,全国民を代表する国会議員を選出するための望ましい選挙制度の在り方については,不断の見直しが行われるものとすること(附則5条)が定められた。(乙11の1(10ないし20頁),乙11の2(4ないし10,12ないし17頁),乙13の1)ウ平成28年改正法の成立後,前記イの平成28年改正法の附則の定めを受け,区画審による審議が行われ,区画審は,平成29年4月19日,内閣総理大臣に対し,選挙区割りの改定案の勧告を行った。この改定案は,0増6減を前提に,選挙区間の最大較差が2倍未満となるように19都道府県の97選挙区において区割りを改めることを内容とするものであった。 (乙14の1,2,乙16(7ないし13頁))上記勧告を受けて,内閣は,平成29年5月16日,上記改定案に基づく選挙区割りの改定を内容とする公職選挙法の改正事項(平成25年選挙区割規定の改正規定及びその施行期日)を定める法制上の措置として,平成28年改正法の一部を改正する法律案を国会に提出し,平成29年6月9日,この改正法案が成立した(平成29年改正法)。平成29年改正法は同月16日に公布,施行された(ただし,平成29年改正 して,平成28年改正法の一部を改正する法律案を国会に提出し,平成29年6月9日,この改正法案が成立した(平成29年改正法)。平成29年改正法は同月16日に公布,施行された(ただし,平成29年改正後の平成28年改正法中の公職選挙法の改正規定は,その1か月後の平成29年7月1- 19 -6日に施行された。)。平成29年改正後の平成28年改正法により,各都道府県の選挙区数の0増6減とともに,上記改定案のとおりの選挙区割りの改定が行われ(この改定により成立した選挙区割りが本件選挙区割りであり,本件選挙区割りを定めている上記改正後の公職選挙法13条1項及び別表第1が本件区割規定である。),平成27年国勢調査の結果によれば,選挙区間の日本国民の人口の最大較差は1対1.956とされた。 (前提事実⑶イ,乙14の1,乙16(13ないし16頁),乙18の1)⑿ 本件選挙平成29年9月28日の衆議院解散に伴い,同年10月22日,前記0増6減の措置等による改定を経た本件選挙区割りの下において本件選挙が施行された。本件選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差をみると,選挙人数が最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と比べて,選挙人数が最も多い選挙区(東京都第13区)との間で1対1.979であり,較差が2倍以上となっている選挙区は0選挙区であった。(前提事実⑶ウ,当事者間に争いがない事実) 2 争点⑴(本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っているか否か)について⑴ 憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば投票価値の平等を要求しているものと解される。他方,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく,国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべき を要求しているものと解される。他方,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく,国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであるところ,国会の両議院の議員の選挙については,憲法上,議員の定数,選挙区,投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ(43条2項,47条),選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められている。 衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用- 20 -される場合には,選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定するに際して,憲法上,議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべきであるが,それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮することが許容されているものと解されるのであって,具体的な選挙区を定めるに当たっては,都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位として,地域の面積,人口密度,住民構成,交通事情,地理的状況などの諸要素を考慮しつつ,国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに,投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められているところである。したがって,このような選挙制度の合憲性は,これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお,国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになり,国会がかかる選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが,上記のような憲法上の要請に反するため,上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており,これを是認することができない場合に,初めてこれが憲法に違反することになるも について具体的に定めたところが,上記のような憲法上の要請に反するため,上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており,これを是認することができない場合に,初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべきである(最高裁昭和49年(行ツ)第75号昭和51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁,平成23年大法廷判決,平成25年大法廷判決及び平成27年大法廷判決参照)。 ⑵ 前記1の認定事実(以下「認定事実」という。)⑾及び⑿のとおり,本件選挙は,平成26年選挙の後に成立した平成29年改正後の平成28年改正法の附則の規定に基づいて,0増6減等の措置により改定された選挙区割り(本件選挙区割り)の下で施行されたものであり,0増6減等の措置により,平成27年国勢調査の結果によれば,選挙区間の日本国民の人口の最大較差は1対1.956とされ,本件選挙当日においても,選挙人数が最も少ない鳥取県第1区と選挙人数が最も多い東京都第13区との間の較差は1対1. 979となっており,鳥取県第1区と比べて較差が2倍以上となっている選- 21 -挙区は0選挙区であった。 なるほど,認定事実⑾のとおり,平成29年改正後の平成28年改正法により,都道府県への議席配分(各都道府県への選挙区数の配分)はアダムズ方式により行うこととされたが,本件選挙区割りは,平成29年改正後の平成28年改正法の附則の規定に基づく0増6減等の措置により改定された経過措置としての選挙区割りにすぎず,平成24年改正法による0増5減の措置等(認定事実⑷)を経ているとしても,本件選挙区割りにおいては,0増5減等の措置及び0増6減等の措置における定数削減の対象とされた県以外の都道府県について旧区割基準に基づいて配分された定数の見直しを経ておらず,1人別枠方式を定めた旧区画 選挙区割りにおいては,0増5減等の措置及び0増6減等の措置における定数削減の対象とされた県以外の都道府県について旧区割基準に基づいて配分された定数の見直しを経ておらず,1人別枠方式を定めた旧区画審設置法3条2項が削除された後の新区割基準並びに平成29年改正後の平成28年改正法による改正後の区画審設置法3条が定める現行の区割基準(以下「現行区割基準」という。)に基づいた定数の再配分が行われていないから,いまだ相当数の都道府県において,そのような再配分が行われた場合に配分されるべき定数とは異なる定数が配分されているという評価を免れず,本件選挙区割りが,平成23年大法廷判決が廃止を求めた旧区割基準中の1人別枠方式の影響を脱しているものとはいえない。 しかし,認定事実⑾イのとおり,平成28年改正法の内容は,①区画審設置法3条の,各選挙区の日本国民の人口のうち,最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることを基本とするとされていた規定につき,基本とするという部分を削除し,各選挙区間の日本国民の人口の最大較差が2倍以上とならないように厳格化すること,②各都道府県の区域内の選挙区の数を平成32年以降10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づき,アダムズ方式により配分すること,③平成37年以降の簡易国勢調査の結果に基づく各選挙区間の日本国民の人口の最大較差が2倍以上になったときは,各都道府県の選挙区数を変更することなく,区画審- 22 -が較差是正のために選挙区割りの改定案の作成及び勧告を行うものとすること等というものであって,アダムズ方式を採用した点について,他の人口比例を図る方式を選択した場合との優劣という点で異なる見解もあり得,また,最終的に各都道府県に配分された選挙区数についての具体的な選挙区 というものであって,アダムズ方式を採用した点について,他の人口比例を図る方式を選択した場合との優劣という点で異なる見解もあり得,また,最終的に各都道府県に配分された選挙区数についての具体的な選挙区割りを的確にする必要が残されることとなるが,平成28年改正法の内容自体については,合理性を有するものということができる。そして,本件選挙区割りは,経過措置として,いわば応急措置的なものという評価は免れないところであるが,上述のとおり,本件選挙区割りにおいては,平成27年国勢調査の結果によれば,選挙区間の日本国民の人口の最大較差は1対1.956とされ,本件選挙当日においても,選挙人数が最も少ない鳥取県第1区と選挙人数が最も多い東京都第13区との間の較差は1対1.979となっており,鳥取県第1区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は0選挙区であったのであるから,平成21年選挙(認定事実⑵),平成24年選挙(認定事実⑸)及び平成26年選挙(認定事実⑼)と比較すると,選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差が最も小さくなっているのであり,また,本件選挙区割りは,いわば応急措置的なものであるとしても,選挙区間の選挙人数の最大較差を2倍未満とするという結果が実現されており,新区割基準(平成29年改正後の平成28年改正法による改正前のもの)及び現行区割基準が求める選挙区間の日本国民の人口の最大較差を2倍未満とするという結果を概ね満たしているという推認を妨げるに足りる証拠はない。 そうすると,原告らが主張する点を考慮しても,少なくとも本件選挙当時,本件区割規定の定める本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったとはいえないから,本件選挙区割りを定める公職選挙法の本件区割規定が憲法に違反していたということはできない。 件区割規定の定める本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったとはいえないから,本件選挙区割りを定める公職選挙法の本件区割規定が憲法に違反していたということはできない。 3 結論よって,本件選挙における小選挙区選挙の東京都第2区,同第5区,同第8- 23 -区,同第9区及び同第18区並びに神奈川県第15区の各選挙が無効であるとは認められず,原告らの請求は,その余の争点について判断するまでもなく,いずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第10民事部 裁判長裁判官大段亨 裁判官西村英樹 裁判官松本真

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