平成13年(行ケ)第535号審決取消請求事件平成15年7月17日判決言渡,平成15年7月10日口頭弁論終結判決原告セイコーエプソン株式会社訴訟代理人弁理士横井俊之,岩上渉,下出隆史被告特許庁長官今井康夫指定代理人東次男,関川正志,小林信雄,林栄二,高橋泰史,大橋信彦 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の求めた裁判「特許庁が訂正2001-39071号事件について平成13年10月19日にした審決を取り消す。」との判決。 第2 事案の概要原告は,後記本件発明の特許権者であるが,本件特許につき,異議2000-71505号事件において,平成13年3月21日付けで「特許第2962310号の請求項1ないし6,8ないし13,15ないし20に係る特許を取り消す。同請求項7,14,21に係る特許を維持する。」との決定がされたため,この決定のうち請求項1ないし6,8ないし13,15ないし20に係る部分の取消しを求めて特許取消決定取消訴訟(東京高裁平成13年(行ケ)第196号事件)を提起するとともに,本件訂正審判の請求をしたところ,特許庁により,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決がされたため,同審決の取消しを求めて本訴を提起したものである。 1 前提となる事実等(1) 特許庁における手続の経緯(1-1) 本件特許特許権者:セイコーエプソン株式会社(原告)発明の名称:「画像処理装置,画像処理方法および画像処理プログラムを記録した媒体」特許出願日:平成10年4月6日(特願平10-93743号)特許設定登録日:平成11年8月6日特許番号:第2962310号(1-2) 異議 理方法および画像処理プログラムを記録した媒体」特許出願日:平成10年4月6日(特願平10-93743号)特許設定登録日:平成11年8月6日特許番号:第2962310号(1-2) 異議手続及び特許取消決定取消訴訟(別件)異議事件番号:異議2000-71505号訂正請求日:平成12年8月29日(誤記の訂正)異議の決定日:平成13年3月21日決定の結論:「訂正を認める。特許第2962310号の請求項1ないし6,8ないし13,15ないし20に係る特許を取り消す。同請求項7,14,21に係る特許を維持する。」決定謄本送達日:平成13年4月9日(原告に対し)特許取消決定取消訴訟提起:平成13年5月3日(東京高裁平成13年(行ケ)第196号事件)(1-3) 本件訂正審判手続請求日:平成13年5月2日(訂正2001-39071号)手続補正:平成13年8月3日(本件補正)審決日:平成13年10月19日審決の結論:「本件審判の請求は,成り立たない」(なお,本件補正も認められなかった。)審決謄本送達日:平成13年10月31日(原告に対し)(2) 本件発明の要旨(2-1) 本件訂正前の特許請求の範囲請求項1及び7(なお,請求項2~6,8~21は省略。)【請求項1】 画像をドットマトリクス状の画素で表現した画像データを取得する画像データ取得手段と,上記画像データに対して個々の画素における画像データを変更することによって各種の画像処理を実行するべく実行可能な画像処理を表示して選択を入力する画像処理選択手段と,この画像処理選択手段によって画像の拡大処理と画像のシャープさの変更処理とが共に選択されたか否かを判断する同時処理判断手段と,この同時処理判断手段によって画像の拡大処理と画像のシャープさの変更処理とが共 像処理選択手段によって画像の拡大処理と画像のシャープさの変更処理とが共に選択されたか否かを判断する同時処理判断手段と,この同時処理判断手段によって画像の拡大処理と画像のシャープさの変更処理とが共に選択されたと判断されたときに,上記画像データにおける構成画素数を増やして画像を拡大するにあたり,この補間する画像データの変化度合いを調整することにより選択された画像のシャープさとなるように補間処理を実行可能な画素補間手段と,生成された画像データを出力する画像データ出力手段とを具備することを特徴とする画像処理装置。 【請求項7】 上記請求項1~請求項6のいずれかに記載の画像処理装置において,上記画素補間手段は,画像のシャープさの変化度合いの異なる複数の補間処理を実行可能であるとともに,それぞれの補間倍率の割合を変化させて画像のシャープさを調整することを特徴とする画像処理装置。 (2-2) 本件訂正審判請求に係る特許請求の範囲請求項1及び2(本件補正前のもの。下線部分が訂正部分であり,下記請求項2は,上記(2-1)に記載の訂正前の請求項7が訂正されたもの。請求項3~21は省略。以下,「訂正後の請求項1」,「訂正後の請求項2」といい,これに係る発明をそれぞれ「訂正発明1」,「訂正発明2」という。)【請求項1】 画像をドットマトリクス状の画素で表現した画像データを取得する画像データ取得手段と,上記画像データに対して個々の画素における画像データを変更することによって各種の画像処理を実行するべく実行可能な画像処理を表示して選択を入力する画像処理選択手段と,この画像処理選択手段によって画像の拡大処理と画像のシャープさの変更処理とが共に選択されたか否かを判断する同時処理判断手段と,この同時処理判断手段によって画像の拡大処理と画像のシャープさの変更処理とが 画像処理選択手段によって画像の拡大処理と画像のシャープさの変更処理とが共に選択されたか否かを判断する同時処理判断手段と,この同時処理判断手段によって画像の拡大処理と画像のシャープさの変更処理とが共に選択されたと判断されたときに,上記画像データにおける構成画素数を増やして画像を拡大するにあたり,実行可能な複数の補間処理のいずれかであって上記拡大処理とシャープさの変更処理とを同時に行う補間処理を実行し,上記同時処理判断手段によって画像拡大処理が選択されて画像のシャープさの変更処理が選択されていないと判断されたときに,上記画像データにおける構成画素数を増やして画像を拡大するにあたり,実行可能な複数の補間処理のいずれかであってシャープさに影響を与えない補間処理を実行して,上記補間する画像データの変化度合いを調整することにより選択された画像のシャープさとなるように補間処理を実行可能な画素補間手段と,生成された画像データを出力する画像データ出力手段とを具備することを特徴とする画像処理装置。 【請求項2】 画像をドットマトリクス状の画素で表現した画像データを取得する画像データ取得手段と,上記画像データに対して個々の画素における画像データを変更することによって各種の画像処理を実行するべく実行可能な画像処理を表示して選択を入力する画像処理選択手段と,この画像処理選択手段によって画像の拡大処理と画像のシャープさの変更処理とが共に選択されたか否かを判断する同時処理判断手段と,この同時処理判断手段によって画像の拡大処理と画像のシャープさの変更処理とが共に選択されたと判断されたときに,上記画像データにおける構成画素数を増やして画像を拡大するにあたり,この補間する画像データの変化度合いを調整することにより選択された画像のシャープさとなるように補間処理を実行可能 と判断されたときに,上記画像データにおける構成画素数を増やして画像を拡大するにあたり,この補間する画像データの変化度合いを調整することにより選択された画像のシャープさとなるように補間処理を実行可能な画素補間手段と,生成された画像データを出力する画像データ出力手段とを具備することを特徴とする画像処理装置において,上記画素補間手段は,画像のシャープさの変化度合いの異なる複数の補間処理を実行可能であるとともに,それぞれの補間倍率の割合を変化させて画像のシャープさを調整することを特徴とする画像処理装置。 (3) 審決の理由本件審決の理由は,【別紙】の「審決の理由」に記載のとおりである。要するに,(ⅰ)本件補正(訂正審判請求書の補正)は認められない,(ⅱ)訂正発明1,2は,刊行物1(特開平5-130398号公報,本訴甲1),刊行物2(特開平9-252401号公報,本訴甲2)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,他の請求項に係る発明を検討するまでもなく,本件審判請求は特許法126条4項の規定に適合しない,というものである。 2 原告の主張(審決取消事由)の要点原告は,訂正審判請求書の補正が認められなかった点については審決取消事由とせず,専ら,訂正発明1,2が独立特許要件を満たさないとして本件訂正が認められなかった点について,審決取消事由を主張するものである(第5回弁論準備手続調書)。 (1) 取消事由1(訂正発明1の進歩性の判断の誤り)審決は,刊行物2に開示された技術を誤認し,刊行物1と2の組み合わせに基づく判断を誤り,顕著な作用効果を看過した結果,訂正発明1の進歩性の判断を誤り,独立特許要件を満たさないとの誤った結論に達 )審決は,刊行物2に開示された技術を誤認し,刊行物1と2の組み合わせに基づく判断を誤り,顕著な作用効果を看過した結果,訂正発明1の進歩性の判断を誤り,独立特許要件を満たさないとの誤った結論に達したものである。 (1-1) 刊行物2に開示された技術の誤認審決は,「刊行物2には,画像処理として補間処理(拡大処理)と所望の鮮鋭度(シャープさ)の双方を必要とする場合には,補間する画像データの変化度合を調整することにより選択された画像のシャープさとなる補間処理を実行可能なスプライン補間処理を適用し,鮮鋭度を維持しつつ拡大処理のみ必要とする場合には,シャープさに影響を与えないレプリケーション補間方法を適用する技術が記載され(上記エ参照)ている。」と認定する。 (1-1-1) 上記認定は,刊行物2に記載されたエッジ部の有無による判断という点を看過している点で誤っている。すなわち,刊行物2(甲2)4頁左欄には,入力された画像データについて,エッジ部であるか否かを判定し,「エッジ部にある」と判定されればレプリケーション補間,「エッジ部にはない」と判定されればスプライン補間を実行する技術が開示されており,上記のように,刊行物2は,「補間処理と所望の鮮鋭度の双方を必要とする場合」にスプライン補間処理を実行し,「鮮鋭度を維持しつつ拡大処理のみ必要とする場合」にレプリケーション補間を実行するという技術を開示しているのではない。 刊行物2においては,補間処理の切り替えを行うために「エッジ判定」を実行することが必須であり,「エッジ判定」を無視した時点で「補間処理を選択」することができない。刊行物2には「エッジ判定」以外に「補間処理を選択」するための構成が開示されていない。よって,審決が「刊行物2記載の技術から取捨選択によりこのような技術思想を抽出すること 選択」することができない。刊行物2には「エッジ判定」以外に「補間処理を選択」するための構成が開示されていない。よって,審決が「刊行物2記載の技術から取捨選択によりこのような技術思想を抽出することを阻害する特段の要因は存在しないものと認められる」とする点には根拠がない。 なお,被告は,汎用性を論拠に反論するが,それは新証拠である乙1,2を新たな判断材料としてはじめて可能となる議論であって,許されない。そして,汎用性があることと,「補間処理とシャープさの双方が必要な場合に,その双方の処理を実行可能な補間処理を選択」する技術とを直接的に結びつける因果関係は存在しない。また,「必要とする処理の内容に適した補間処理方法を選択する」思想に具体性がなく,当業者が反復実施して目的とする技術効果をあげることができる程度にまで具体的・客観的なものとして発明を特定することができないから,刊行物2に記載された発明の特定事項として不適切である。 (1-1-2) 上記認定は,倒置した論理により,刊行物2からトートロジィ(同語反復)を抽出しこれを技術思想であるかのように認定している点でも誤っている。審決は,刊行物2の記載に「補間処理を選択」する構成を抽出する根拠がないにもかかわらず,「必要とする処理の内容に適した補間処理方法を選択」する構成の認定にあたり,刊行物2において結果的に行われている事項を抽出し,当該結果を補間処理選択の条件であると,倒置した論理に基づいて認定しており,技術認定が誤っている。すなわち,審決は,前記のように,エッジ判定を無視して,刊行物2において「画像の一部に対してスプライン補間を適用すると拡大処理とシャープさの変更がなされる」という補間処理の結果を抽出し,この結果から逆に「拡大処理とシャープさの変更を必要とする場合にはその双方の処理を実 「画像の一部に対してスプライン補間を適用すると拡大処理とシャープさの変更がなされる」という補間処理の結果を抽出し,この結果から逆に「拡大処理とシャープさの変更を必要とする場合にはその双方の処理を実行可能な補間処理(スプライン処理)を選択する」技術が開示されていると認定している。このように,結果から補間処理選択の条件を導いても,論理の倒置であって,技術を認定していることにはならない。同様の誤った認定がレプリケーション補間についてもされている。 (1-1-3) 審決は,上記誤認のほかにも,刊行物2の技術認定において重大な誤認をしている。すなわち,画像処理分野の発明において補間処理を「どのように」使用するのかも非常に重要な要素であるにもかかわらず,この点を看過し,刊行物2と訂正発明1との技術思想が同様であるかのように誤認している。 刊行物2に「画像中のエッジ部についてはシャープな鮮鋭度を維持しつつ,他の部分については上記係数αを変化せしめて所望の鮮鋭度の補間画像を得ることができる」(4頁)と記載してあるので,刊行物2の技術では「一枚の画像中」において,ある画素にはレプリケーション,他の画素にはスプライン補間というように補間手法がダイナミックに切り替えられる。これに対し訂正発明1は,全文訂正明細書(甲8)に「複数の補間処理のいずれか」(1頁)と記載してあるように,「一枚の画像に対していずれかの補間手法を適用するもの」である。 すなわち,補間処理を「切り替える」構成と補間処理を「あらかじめ決定」する構成とは異なるにもかかわらず,「必要とする処理の内容に適した補間処理方法を選択する」技術が開示されているかのように認定しており,両者の差異を看過して同視しうる技術思想のように誤認している。刊行物2の技術と訂正発明1の技術は同視し得ないのであるから に適した補間処理方法を選択する」技術が開示されているかのように認定しており,両者の差異を看過して同視しうる技術思想のように誤認している。刊行物2の技術と訂正発明1の技術は同視し得ないのであるから,刊行物1と2を組み合わせても訂正発明1が想到されるはずがない。 訂正発明1と刊行物2記載の発明とでは,技術思想が異なっており,それを具体化するための構成も異なっているのである。 (1-2) 刊行物1と2の組み合わせに基づく進歩性判断の誤り審決では「刊行物1に記載された発明において,画像処理手段としてのMTF補正部233と変倍/移動処理部234の代わりに,刊行物2に記載の拡大処理とシャープさの変更処理を同時に行う補間処理と,シャープさに影響を与えない補間処理を用い」とし,この構成から「同時処理判断手段を設けることも,当業者が格別の創意工夫を要することなく容易になし得る」と認定しているが,誤りである。 刊行物1において,MTF補正部233(エッジ強調処理回路)を削除すると,利用者がシャープさの変更を指示したときに,当該シャープさの変更を単独で実行できない。実行できるのは「拡大処理とシャープさの変更処理を同時に行う補間処理」と「シャープさに影響を与えない補間処理」である。したがって,この組み合わせから導出される構成は,「拡大処理とシャープさの変更とを同時に行わせる」ための選択肢と「シャープさに影響を与えない補間処理を行わせる」ための選択肢とを設け,前者の選択肢の選択によって「拡大処理とシャープさの変更処理を同時に行う補間処理」を実行し,後者の選択肢の選択によって「シャープさに影響を与えない補間処理」を実行する構成である。 すなわち,「拡大処理とシャープさの変更処理とが共に選択されたか否かを判断する同時処理判断手段」を具備する構成は,刊行物1 選択によって「シャープさに影響を与えない補間処理」を実行する構成である。 すなわち,「拡大処理とシャープさの変更処理とが共に選択されたか否かを判断する同時処理判断手段」を具備する構成は,刊行物1と2とを組み合わせたものには存在しない。 また,審決では「拡大して,しかもシャープさの変更を行う補間処理は,これらのいずれか一方だけを行うときの処理とは異なる処理が必要となり,共に選択されたか否かを判断する手段も必要なことは明らかであるから,『画像処理選択手段によって…共に選択されたか否かを判断する同時処理判断手段』を設けることも,当業者が格別の創意工夫を要することなく容易になし得ることである。」としているが,この認定は誤っている。拡大して,しかも,シャープさの変更を行うときは,まず拡大処理を行い,次にシャープさの変更処理を行えば足りるからである(処理の順序は逆でも可)。 なお,被告は,「同時処理判断手段」の容易推考性を論じる際に,「画像の拡大処理と画像のシャープさの変更処理とを選択したときに,拡大処理とシャープさの変更処理とを同時に行う補間処理を実行」する構成を前提とするが,この構成は本件特許の構成要件の一部であり,これを前提として本件特許の他の構成要件である「同時処理判断手段」を設けることは許されない。 (1-3) 顕著な作用効果の看過による進歩性判断の誤り「同時処理判断手段」と「画素補間手段」は,訂正発明1と刊行物1記載の発明との相違点である。訂正発明1は,拡大処理した上で更にシャープさを変化させる処理を実行すると処理時間が多くかかるという従来技術での問題を解消することを課題の1つとしており,その技術思想は,「処理速度の高速化」を実現するために「同時処理判断手段」と「画素補間手段」を必須の構成要件としたものである。 「同時処理判断 う従来技術での問題を解消することを課題の1つとしており,その技術思想は,「処理速度の高速化」を実現するために「同時処理判断手段」と「画素補間手段」を必須の構成要件としたものである。 「同時処理判断手段」によれば,画像の拡大処理と画像のシャープさの変更処理とが共に選択されたか否かを判断することができ,この判断を行うことにより,画像の拡大処理と画像のシャープさの変更処理とが共に選択されたときに,拡大処理とシャープさの変更処理とを同時に行う補間処理を実行することができる。このとき,上記2つの処理を個別に2回で実施することを排除して1回の処理で実施することができ,処理時間を短くすることが可能になる。 刊行物2における処理と訂正発明1の処理とを比較しても,訂正発明1の処理の方が圧倒的に高速である。すなわち,刊行物2においては,拡大処理に際してシャープネス調整のためにCubicスプライン補間係数とBスプライン補間係数の重み付け加算処理を行っており,多数の画素を有する画像に対して重み付け加算処理を行う。したがって,訂正発明1の処理と比較して非常に多くの演算処理を実施する。また,刊行物2ではエッジの有無を判別しているので,一枚の画像内の全体にスプライン補間を適用するわけではないが,一般に自然画でエッジとされる画素は数%であり,自然画の処理について刊行物2の処理と訂正発明1の処理とを比較したときに,訂正発明1の処理が圧倒的に速いことに相違ない。刊行物2では,明らかに速度が遅くなるにもかかわらず,2種スプライン補間の重み付け加算を採用しており,「処理速度の高速化」を導出可能な動機付けが存在しない。 以上のように,訂正発明1の構成によって,顕著な作用効果を奏することが明らかである。しかし,審決は,上記顕著な作用効果を何ら考慮せず看過していることにより,刊 」を導出可能な動機付けが存在しない。 以上のように,訂正発明1の構成によって,顕著な作用効果を奏することが明らかである。しかし,審決は,上記顕著な作用効果を何ら考慮せず看過していることにより,刊行物2から取捨選択したり,刊行物1と2とを組み合わせる際に,根拠となる技術思想及び動機付けを認定せずに創作作業を繰り返し,個別の構成要件について単に容易としているのみである。審決の訂正発明1に関する進歩性の判断には誤りがある。 刊行物1及び2のいずれにおいても,「同時処理判断手段」と「画素補間手段」とを組み合わせた構成は開示されていないし,個別処理を排除して「処理速度を高速化」する思想も開示されていない。 (2) 取消事由2(訂正発明2の進歩性の判断の誤り)審決は,刊行物2に記載された発明について「結果的に,補間点Xpの補間データYpが,補間倍率の割合を変化させてBスプライン補間関数とCubicスプライン補間関数を重み付け加算し」と認定しているが誤りである。 すなわち,刊行物2に開示されたBスプライン補間関数とCubicスプライン補間関数の重み付け加算では,補間倍率を変化させていない。補間倍率について刊行物2には「Bスプライン補間係数記憶手段31,Cubicスプライン補間係数記憶手段32は,マルチフォーマッタ20への図示しない入力手段から入力された拡大倍率に応じた補間点の位置を表すtの値を設定する。すなわち,例えば拡大倍率が2倍であれば…前述のtの値として0.5および1.0が設定され」(8頁)と記載されている。したがって,Bスプライン補間においても,Cubicスプライン補間においても,補間倍率を調整するパラメータは「t」である。 また,補間係数の算出にあたり,刊行物2では「設定されたtの値ごとのBスプライン補間係数,Cubicスプライン も,Cubicスプライン補間においても,補間倍率を調整するパラメータは「t」である。 また,補間係数の算出にあたり,刊行物2では「設定されたtの値ごとのBスプライン補間係数,Cubicスプライン補間係数が補間係数演算手段33に入力される」(8頁)と記載されている。したがって,Bスプライン補間係数,Cubicスプライン補間係数の双方とも,同じ値「t」を使用して計算される。すなわち,両者の補間倍率は等しく,かつ,この補間倍率は最終的に得られる補間倍率とも等しく,2つの補間係数の算出において補間倍率の割合を変化させていない。これは,重み付け加算の仕組みを考えると当然である。 以上のように,審決では刊行物2に「補間倍率の割合を変化させる」技術が開示されているかのように誤認し,この誤認に基づいて,「請求項2にかかる構成を採用することは当業者が格別の創意工夫を要することなくなし得る」と認定している。請求項2の進歩性判断は,上記刊行物2の誤認のみを根拠としてなされており,この認定判断の誤りは,請求項2の進歩性判断の結論に影響を与える。 3 被告の主張の要点(1) 取消事由1(訂正発明1の進歩性の判断の誤り)に対して(1-1) 刊行物2に開示された技術の認定について(1-1-1) 刊行物2に記載された発明は,実施例レベルでみると,確かに,1枚の画像中においてエッジ部かどうか判断し,エッジ部については,レプリケーション補間処理を適用し,エッジ部以外の部分については,2種類の補間関数の重み付けによる補間処理を適用するものである。 しかしながら,2種類の補間関数の重み付けによる補間処理が,補間処理(拡大処理)とシャープさ(鮮鋭度)の処理という複数の機能を有し,レプリケーション補間処理がシャープさ(鮮鋭度)を維持しつつ補間処理(拡大処理)のみの機 の補間関数の重み付けによる補間処理が,補間処理(拡大処理)とシャープさ(鮮鋭度)の処理という複数の機能を有し,レプリケーション補間処理がシャープさ(鮮鋭度)を維持しつつ補間処理(拡大処理)のみの機能を有することは,刊行物2における段落【0014】,【0018】,【0019】等の記載から明らかなことである。 そして,2種類の補間関数の重み付けによる補間処理は,前記機能からみて,1枚の画像ごとの画像処理として補間処理(拡大処理)とシャープさ(鮮鋭度)の処理の双方が必要な場合に用いることができるものであり(乙1,2参照),また,レプリケーション補間処理は,前記機能からみて,画像処理としてシャープさ(鮮鋭度)を維持しつつ,すなわち,シャープさについては特別の処理をしないで,補間処理(拡大処理)のみを必要とする場合に用いることができるものであり,それらは,それぞれの処理を必要とする場合に選択的に用いるものであることが明らかである。 必要とする画像処理の内容に応じて画像処理方法を選択する場合は,1枚の画像中の画像データにおける場合以外にも,1枚の画像ごとにおける画像処理においても存在し,必要とする処理の内容に適した補間処理方法を選択する技術には,1枚の画像中での処理,1枚の画像ごとの処理の場合というように汎用性があることが,当業者に明らかである。 そして,ある刊行物に実施例レベルの発明が記載されている場合,その実施例レベルの発明が利用分野等において汎用性があることが当業者に明らかであれば,特段の阻害要因がない限り,その実施例レベルでの発明から取捨選択あるいは上位概念化により,汎用的なレベルに上位概念化した発明を抽出し認定することは,刊行物に記載された発明を認定する際に許されるべき手法である。 したがって,1枚の画像中におけるエッジ部とエッジ あるいは上位概念化により,汎用的なレベルに上位概念化した発明を抽出し認定することは,刊行物に記載された発明を認定する際に許されるべき手法である。 したがって,1枚の画像中におけるエッジ部とエッジ部以外の画像処理への適用が記載されている刊行物2に記載の発明から,「画像処理として補間処理とシャープさの双方が必要な場合には,その双方の処理を実行可能な補間処理を選択し,鮮鋭度を維持しつつ拡大処理のみを必要とする場合には,シャープさに影響を与えないレプリケーション補間方法を選択するというように,必要とする処理の内容に適した補間方法を選択するという技術思想」を抽出することができるというべきであり,審決の認定に原告主張の誤りはない。 (1-1-2) 原告は,審決がトートロジィ(同語反復)を抽出しこれを技術思想であるかのように認定していると主張するが,刊行物2に記載された発明から,「必要とする処理の内容に適した補間処理方法を選択」する構成が抽出できることは前記のとおりであり,この抽出が「エッジ判定」を無視して抽出したものではなく,また,結果的に行われている事項から抽出したものでないことは明らかであるから,原告の主張は失当である。 (1-1-3) 刊行物2に記載された発明から前記のような技術思想を抽出できるのであるから,刊行物2と訂正発明1につき,補間処理を「どのように」使用するのかという技術思想の差異を看過して両者を同視し得る技術思想のように誤認しているなどという原告の主張は失当である。 (1-2) 刊行物1と2の組み合わせに基づく進歩性判断について刊行物2には,「画像処理として補間処理とシャープさの双方が必要な場合にはその双方の処理を実行可能な補間処理を選択し,鮮鋭度を維持しつつ拡大処理のみを必要とする場合にはシャープさに影響を与えないレプ 刊行物2には,「画像処理として補間処理とシャープさの双方が必要な場合にはその双方の処理を実行可能な補間処理を選択し,鮮鋭度を維持しつつ拡大処理のみを必要とする場合にはシャープさに影響を与えないレプリケーション補間方法を適用するというように,必要とする処理の内容に適した補間処理方法を選択するという技術思想」が含まれている。 そして,刊行物1に記載された発明においては,画像処理選択手段(操作パネル100)による選択により,拡大処理とシャープさの変更処理を同時に選択し,それら2つの処理を共に必要とする場合があることも当然に予測できるから,このような2つの処理を行うために,刊行物2に記載された技術思想を適用して,刊行物1に記載された発明に,拡大処理とシャープさの変更処理を同時に行う補間処理を実行可能な画素補間手段と,シャープさに影響を与えない補間処理を実行可能な画素補間手段を設けて,画像処理選択手段(操作パネル100)による選択により,拡大処理とシャープさの変更処理が同時に選択された場合には,画像処理手段としてのMTF補正部233と変倍/移動処理部234による拡大処理とシャープさの変更処理に代えて,前記の拡大処理とシャープさの変更処理とを同時に行う補間処理を実行可能な画素補間手段で補間処理を実行し,また,拡大処理のみが選択された場合には,シャープさに影響を与えない補間処理を実行可能な前記画素補間手段で補間処理を実行すること,すなわち,相違点(1)に係る構成を採用することは,当業者が格別の創意工夫を要することなくなし得ることである。 審決が「画像処理手段としてのMTF補正部233と変倍/移動処理部234の代わりに」と説示したのは,「拡大処理とシャープさの変更処理とが同時に選択された場合」と,「拡大処理のみが選択された場合」の2つの場合の処理を 手段としてのMTF補正部233と変倍/移動処理部234の代わりに」と説示したのは,「拡大処理とシャープさの変更処理とが同時に選択された場合」と,「拡大処理のみが選択された場合」の2つの場合の処理を行うための構成として,MTF補正部233と変倍/移動処理部234の代わりに,拡大処理とシャープさの変更処理を同時に行う補間処理を実行可能な画素補間手段と,シャープさに影響を与えない補間処理を実行可能な画素補間手段を用いるとの趣旨であり,シャープさの変更処理を実行するためのMTF補正部233自体を削除するという意味ではない。 そして,「拡大処理とシャープさの変更処理とが共に選択されたか否かを判断する同時処理判断手段を具備する構成については刊行物1と2とを組み合わせたものには存在しない」という点について,審決は,同時処理判断手段が刊行物1と2とを組み合わせたものに存在するといっているのではなく,その点は当業者が格別の創意工夫を要することなく容易になし得るといっているのであり,誤りはない。 また,審決が,「拡大して,しかもシャープさの変更を行う補間処理は,これらのいずれか一方だけを行うときの処理とは異なる処理が必要となり,共に選択されたか否かを判断する手段も必要なことは明らかである」と認定したのは,「前記のように画像の拡大処理と画像のシャープさの変更処理とを選択したときに,拡大処理とシャープさの変更処理とを同時に行う補間処理を実行し,画像の拡大処理を選択して画像のシャープさの変更処理を選択しないときに,シャープさに影響を与えない補間処理を実行するものとした場合」に「同時処理判断手段」を設けることが容易であるといっているのであり,シャープさの変更を行うときに,まず拡大処理を行い,次にシャープさの変更処理を行う場合について認定しているのではない。 た場合」に「同時処理判断手段」を設けることが容易であるといっているのであり,シャープさの変更を行うときに,まず拡大処理を行い,次にシャープさの変更処理を行う場合について認定しているのではない。 前記のように2種類の補間関数の重み付けによる補間処理とレプリケーション補間処理とを選択的に実行する場合に,画像の拡大処理と画像のシャープさの変更処理とが共に選択されたか否かの判断と,画像の拡大処理が選択されて画像のシャープさの変更処理が選択されていないとの判断が必要になることは,当然のことである。すなわち,画像の拡大処理と画像のシャープさの変更処理とを同時に行う補間処理を実行する場合というのは,利用者が画像処理選択手段によって画像の拡大処理と画像のシャープさの変更処理とを共に選択したときであり,シャープさに影響を与えない補間処理を実行する場合というのは,利用者が画像処理選択手段により画像拡大処理を選択しシャープさの変更処理を選択しない場合であることは明らかなことであるから,そのいずれの場合かを判断するために,「同時処理判断手段」を設けることは,当業者であれば容易になし得ることであり,審決の判断に原告が主張するような誤りはない。 (1-3) 顕著な作用効果について「同時処理判断手段」と「画素補間手段」によって「処理速度の高速化」が実現されるとの原告の主張は,根拠がない。拡大とシャープさの変更を1回の処理で実施するからといって,変更を個別に2回の処理で実施するものに比べ,処理時間が短くなるとは直ちにはいえない。処理時間の長短の比較は,拡大とシャープさの変更を1回で処理するための具体的な構成と,2回の処理の具体的な構成がそれぞれ明らかにされた場合に,はじめて可能になるものである。 訂正発明1は,特許請求の範囲の記載から明らかなように,1回の処理 変更を1回で処理するための具体的な構成と,2回の処理の具体的な構成がそれぞれ明らかにされた場合に,はじめて可能になるものである。 訂正発明1は,特許請求の範囲の記載から明らかなように,1回の処理の構成として,「拡大処理とシャープさの変更処理とを同時に行う補間処理」と規定するだけで,補間処理の構成を具体的に規定していない。このような構成からは,処理時間を算出することや,個別に2回の処理で実施するものとの処理時間の比較は不可能であるから,訂正発明1が非常に高速に拡大処理とシャープネス調整処理を実施することができるという原告の主張は,根拠がなく,失当である。 仮に,訂正発明1が「拡大処理とシャープさの変更処理とを同時に行う補間処理」の構成により,個別に2回で行う処理に比べ「処理速度の高速化」が図れるものであったとしても,そのような作用効果は,刊行物2に記載された発明から抽出される「技術思想」から,当業者が容易に予測できる自明の作用効果であり,これをもって,顕著な作用効果であるということはできない。 (2) 取消事由2(訂正発明2の進歩性の判断の誤り)に対して補間点Xpの補間データYpを求める式(4)において,重み付けの割合αを変更した場合には,補間係数ak1-1 ,ak,ak+1 ,ak+2を決定するCubicスプライン補間係数に関係する項(例えば,(1-α)ck-1)とBスプライン補間係数に関係する項(例えば,(α)bk-1)の割合が変更されるものとなる。 そして,Cubicスプライン補間係数ck-1 ,ck,ck+1 ,ck+2及びBスプライン補間係数bk-1 ,bk,bk+1 ,bk+2は,入力手段から入力された拡大倍率に応じた補間点の位置を表す値tの値,すなわち,拡大倍率に応じた値となっており,原告が主張するように,Bスプライ ライン補間係数bk-1 ,bk,bk+1 ,bk+2は,入力手段から入力された拡大倍率に応じた補間点の位置を表す値tの値,すなわち,拡大倍率に応じた値となっており,原告が主張するように,Bスプライン補間係数, Cubicスプライン補間係数の双方とも同じ値tを使用して計算され,両者の入力された補間倍率は等しい。 しかしながら,これらの補間係数に前記重み付け割合を乗じた場合,すなわち,Cubicスプライン補間係数ck-1 ,ck,ck+1 ,ck+2に重み付けの割合(1-α)を,Bスプライン補間係数bk-1 ,bk,bk+1 ,bk+2に同割合(α)を乗じた場合には,結果的にみて,Bスプライン補間係数, Cubicスプライン補間係数の双方が異なった値tを使用して計算されたものと等価となり,このことは,補間点Xpの補間データYpが,補間倍率の割合を変化させてBスプライン補間関数とCubicスプライン補間関数を重み付け加算したといえるから,「結果的に,補間点Xpの補間データYpが,補間倍率の割合を変化させてBスプライン補間関数とCubicスプライン補間関数を重み付け加算し」たと認定した点に,原告主張の誤りはない。 第3 当裁判所の判断 1 取消事由1(訂正発明1の進歩性の判断の誤り)について(1) 原告は,審決が刊行物2に開示された技術を誤認していると主張する。 (1-1) 刊行物2(甲2)の記載事項について検討すると,次のような記載がある。 「そこでまず入力された画像データについて,補間画像データを算出する対象の補間点が原画像のエッジ部にあるか否かを閾値処理を行なうことによって判定し,その結果,補間点がエッジ部にあると判定された場合は,その補間点についてはレプリケーション補間方法により補間画像データを求め,補間点がエッジ部にはないと判 否かを閾値処理を行なうことによって判定し,その結果,補間点がエッジ部にあると判定された場合は,その補間点についてはレプリケーション補間方法により補間画像データを求め,補間点がエッジ部にはないと判定された場合は,その補間点については上記特願平7-177007号に開示した2種類の補間関数の重み付けによる補間処理(以下,この演算処理を便宜上,単にスプライン補間処理と称するものとする)を適用するのが望ましい(段落【0019】)。 このような補間処理を採用すれば,画像中のエッジ部についてはシャープな鮮鋭度を維持しつつ,他の部分については上記係数αを変化せしめて所望の鮮鋭度の補間画像を得ることができる。」(段落【0020】)「そこで,原画像を読み取って得られた原画像データに対して所定の補間処理を施して原画像データ数とは異なるデータ数,具体的には拡大再生に際しては原画像データよりも多いデータ数の2次的な画像データである補間画像データを求め,この補間画像データに基づいて可視画像の再生を行うことによって,拡大再生した場合でも画像の鮮鋭度の低下を防止することができる。」(段落【0004】)「このように画像データに対する補間処理としては従来より種々の方法が提案されているが,一般に3次のスプライン補間関数による処理がよく用いられている。 この処理は,デジタル的に得られた原画像データ{Yk }を隣接する各画素間(各区間という)ごとに3次関数{fk }で結び,補間点(補間しようとする点)の設定位置(上記各区間内での設定位置)におけるfk の値を補間画像データとするものである。」(段落【0005】)「このように原画像データを通過する補間演算は,鮮鋭度が比較的高い補間処理であり,例えばCubic スプライン(キュービックスプライン)補間関数などが知られてい のである。」(段落【0005】)「このように原画像データを通過する補間演算は,鮮鋭度が比較的高い補間処理であり,例えばCubic スプライン(キュービックスプライン)補間関数などが知られている。以下このCubic スプライン補間関数について具体的に説明する。」(段落【0006】)「ところで,上記Cubic スプライン補間関数は,前述したように元のサンプル点を通ることと,その第1階微分係数が各区間間で連続することが必要とされていて,鮮鋭度の比較的高いシャープな2次画像(補間により得られる画像)を再生するための補間画像データを得る補間関数であるが,一方,原画像の濃度変化が緩い部分についての補間演算では鮮鋭度は比較的低いが滑らかな2次画像を再生するのが望ましい。このように鮮鋭度は比較的低いが滑らかな2次画像を再生する補間画像データを得る補間関数としては例えばBスプライン(ビースプライン)補間関数が知られている。」(段落【0011】)「このように2次画像(補間画像)を高い鮮鋭度でシャープに再生したい場合は例えばCubic スプライン補間関数を用い,低い鮮鋭度で滑らかに再生したい場合は例えばBスプライン補間関数を用いればよい。」(段落【0013】)「ここで本願出願人は,互いに異なる鮮鋭度を有する2つの補間関数の対応する係数同士を,所望とする補間画像の鮮鋭度に応じて重み付け加算すること等により,補間画像の鮮鋭度をきめ細かく調整することを可能とした画像データの補間処理方法を提案している(特開平2-278478号参照)。この方法によれば,例えば鮮鋭度が互いに異なる2つの補間関数として上記Cubic スプライン補間関数とBスプライン補間関数とを採用した場合,Cubic スプライン補間関数の補間係数ck-1 ,ck ,ck+1 ,ck+2 鮮鋭度が互いに異なる2つの補間関数として上記Cubic スプライン補間関数とBスプライン補間関数とを採用した場合,Cubic スプライン補間関数の補間係数ck-1 ,ck ,ck+1 ,ck+2 とBスプライン補間関数の補間係数bk-1 ,bk,bk+1 ,bk+2 とを,原画像データYk-1 ,Yk ,Yk+1 ,Yk+2 に対応するごとに重み付けして加算するものであり,この重み付けの割合(係数)αを変更することにより,最もシャープな鮮鋭度(α=0)から最も滑らかな鮮鋭度(α=1)の範囲内の中間的な所望とする鮮鋭度の2次画像を得るものである。」(段落【0014】)「ところで補間点が,例えば文字等のように画像データの変化(例えば濃度変化)が急峻なエッジ部にある場合に,そのエッジ部の鮮鋭性を補間処理によって鈍らせないためには,例えば図4に示すように,補間点の補間画像データをその補間点に最も近い原画像の画素の画像データと同一にするレプリケーション補間方法(または最近傍補間方法)等が適当である。このレプリケーション補間方法等は特にエッジの保存性に優れるという利点がある。」(段落【0018】【発明が解決しようとする課題】)(1-2) 上記段落【0019】には,画像のエッジ部であるか否かで補間処理を切り替えていることが記載されている。しかし,その前提として,画像データの拡大再生に際しては,画像の鮮鋭度の低下を防止するために補間画像データを求め,この補間画像データに基づいて可視画像の再生を行うこと(【0004】),画像データに対する補間処理としては,一般に3次のスプライン補間関数による処理がよく用いられており,これは鮮鋭度が比較的高い補間処理であること(【0005】~【0006】),原画像の濃度変化が緩い部分についての補間演算では鮮鋭度は比 ,一般に3次のスプライン補間関数による処理がよく用いられており,これは鮮鋭度が比較的高い補間処理であること(【0005】~【0006】),原画像の濃度変化が緩い部分についての補間演算では鮮鋭度は比較的低いが滑らかな2次画像を再生するのが望ましく,このような補間処理に用いられる補間関数としてBスプライン補間関数が知られていること(【0011】),互いに異なる鮮鋭度を有する2つの補間関数の対応する係数同士を,所望とする補間画像の鮮鋭度に応じて重み付け加算すること等により,補間画像の鮮鋭度をきめ細かく調整できること(【0013】~【0014】),補間点が,例えば文字等のように画像データの変化が急峻なエッジ部にある場合に,そのエッジ部の鮮鋭性を補間処理によって鈍らせないためには,レプリケーション補間方法(または最近傍補間方法)等が適当であること(【0018】)が記載されている。 (1-3) 刊行物2では,以上の技術事項に基づいて,画像データがエッジ部にあるか否かを判別して,エッジ部にあれば,レプリケーション補間方法により補間を行い,エッジ部にないと判断されれば,所望の鮮鋭度が得られる補間関数を用いた補間処理を行っているのである。 ところで,画像データには,データの変化が急激な文字等のエッジ部と,データの変化がそれ程急激でない部分の両者を含む画像データ以外に,例えば文字のみからなる文書をイメージデータとして取り込んだ,データの変化点が全て急激なエッジ部からなる画像データや,絵や写真等をイメージ化したエッジ部を含まない画像データがあり,それぞれ画像処理の対象とされることは当業者の技術常識である。 したがって,刊行物2の記載は,前者を拡大再生する際は,レプリケーション補間方法が適当であり,後者に対しては補間画像の鮮鋭度をきめ細かく調整できる補間関 の対象とされることは当業者の技術常識である。 したがって,刊行物2の記載は,前者を拡大再生する際は,レプリケーション補間方法が適当であり,後者に対しては補間画像の鮮鋭度をきめ細かく調整できる補間関数が用いられることを開示しているといえる。そして,前者の画像処理は,そのエッジの鮮鋭性を補間処理によって鈍らせないために用いられ,後者の画像処理は,補間画像の鮮鋭度をきめ細かく調整するために用いられるのであるから,刊行物2には,「画像処理として補間処理(拡大処理)と所望の鮮鋭度(シャープさ)の双方を必要とする場合には,補間する画像データの変化度合いを調整することにより選択された画像のシャープさとなる補間処理を実行可能なスプライン補間処理を適用し,鮮鋭度を維持しつつ拡大処理のみ必要とする場合には,シャープさに影響を与えないレプリケーション補間方法を適用する技術」が記載されているということができる。これと同旨と解される審決の認定は,是認し得るものである。 (1-4) 原告は,刊行物2においては,補間処理の切り替えを行うために「エッジ判定」を実行することが必須であり,「エッジ判定」を無視した時点で「補間処理を選択」することができないのであって,刊行物2には「エッジ判定」以外に「補間処理を選択」するための構成が開示されておらず,審決の認定には根拠がないなどと主張する。 しかし,審決は,刊行物2の記載から,画像データの種類や必要とする処理等に応じて補間処理を選択するという事項を認定しているのであって,その補間処理を選択する手段を認定したものではないから,原告の主張は採用の限りではない。 原告は,上記のほか,被告が乙1,2を提出して主張する点について非難するほか,刊行物2に記載された発明の特定事項として不適切であるなどとも主張する。 しかし,上記審決の認 主張は採用の限りではない。 原告は,上記のほか,被告が乙1,2を提出して主張する点について非難するほか,刊行物2に記載された発明の特定事項として不適切であるなどとも主張する。 しかし,上記審決の認定は,乙1,2を引用するまでもなく,刊行物2の記載から認定し得るものであり,相違点(1)の容易推考性を判断するために十分に明確であって,原告主張の誤りはない。 また,原告は,結果的に行われている事項を抽出し,当該結果を補間処理選択の条件であると認定していると主張する。しかし,審決で認定された補間処理選択の条件は,必要とする画像処理の内容ないし機能であるから,トートロジィであるとはいえない。 さらに,原告は,刊行物2の「一枚の画像中の」処理と,訂正発明1の「一枚の画像に対していずれかの補間手法を適用するもの」との差異を看過しているとも主張する。しかし,審決で認定したのは,上記のように前提となる「一枚の画像に対して選択的に用いられる処理」であるから,差異を看過しているものではない。 (1-5) 以上のとおり,審決が,刊行物2の記載から必要とする処理の内容に適した補間処理方法を選択するという技術思想を抽出した点に誤りはないというべきであり,原告の主張は,採用の限りではない。 (2) 原告は,刊行物1と2の組み合わせに基づく進歩性判断に誤りがあるとして,審決が「刊行物1に記載された発明において,画像処理手段としてのMTF補正部233と変倍/移動処理部234の代わりに,刊行物2に記載の拡大処理とシャープさの変更処理を同時に行う補間処理と,シャープさに影響を与えない補間処理を用い」と認定し,この構成から「同時処理判断手段を設けることも,当業者が格別の創意工夫を要することなく容易になし得る」と認定したのが誤りであると主張する。 そこで,検討するに,審 えない補間処理を用い」と認定し,この構成から「同時処理判断手段を設けることも,当業者が格別の創意工夫を要することなく容易になし得る」と認定したのが誤りであると主張する。 そこで,検討するに,審決は,訂正発明1と刊行物1に記載された発明との相違点を検討するに際して,刊行物2の記載から,「画像処理として補間処理(拡大処理)と所望の鮮鋭度(シャープさ)の双方を必要とする場合には,補間する画像データの変化度合いを調整することにより選択された画像のシャープさとなる補間処理を実行可能なスプライン補間処理を適用し,鮮鋭度を維持しつつ拡大処理のみ必要とする場合には,シャープさに影響を与えないレプリケーション補間を適用する」というように,必要とする処理の内容に適した補間処理方法を選択するという技術思想を抽出し,「刊行物2に記載の拡大処理とシャープさの変更処理を同時に行う補間処理と,シャープさに影響を与えない補間処理を実行可能な画素補間手段を用い,画像処理選択手段(操作パネル100)による選択により,拡大処理とシャープさの変更処理が同時に選択された場合には,前記の拡大処理とシャープさの変更処理とを同時に行う補間処理を実行し,拡大処理のみが選択された場合には,シャープさに影響を与えない補間処理を実行可能とすること,すなわち,相違点(1)に係る構成を採用することは,当業者が格別の創意工夫を要することなく容易になし得ることである。」と判断したものであると解される。 したがって,原告の主張するように,MTF補正部233(エッジ強調処理回路)を削除し,「シャープさの変更を指示したときにシャープさの変更を単独で実行できない」構成とすることが容易に想到し得ると判断したのではないことは明らかであり,原告の主張は,前提を欠くものというほかない。 なお,原告は,「拡大 更を指示したときにシャープさの変更を単独で実行できない」構成とすることが容易に想到し得ると判断したのではないことは明らかであり,原告の主張は,前提を欠くものというほかない。 なお,原告は,「拡大処理とシャープさの変更処理が共に選択されたか否かを判断する同時処理判断手段」を具備する構成は,刊行物1と2とを組み合わせたものには存在しない,「拡大処理とシャープさの変更処理とを同時に行う補間処理を実行」する構成は,本件特許の構成要件であり,進歩性否定の論理付けとしては許されないなどと主張する。 しかし,刊行物2に記載されたCubicスプライン補間関数とBスプライン補間関数との重み付けされた補間関数を用いた補間処理や,レプリケーション補間処理は,拡大再生処理と同時に行われるのは明らかである。そうであれば,画像の拡大処理とシャープさの変更処理を選択可能な「操作パネル100」を有する刊行物1に記載された発明において,画像の拡大処理と画像のシャープさの変更処理を共に選択することによって,画像データにおける構成画素数を増やして画像を拡大再生するにあたり,拡大処理とシャープさの変更処理を同時に行う補間処理を実行し,画像の拡大処理を選択して画像のシャープさの変更処理を選択しないことによって,画像データにおける構成画素数を増やして画像を拡大するにあたりシャープさに影響を与えない補間処理を実行すること,すなわち,訂正発明1の「同時処理判断手段」及び「画素補間手段」を設けることは,当業者が容易に想到し得ることである。 よって,原告の上記主張は,採用することができない。 (3) 原告は,審決が訂正発明1の顕著な作用効果を看過して進歩性の判断を誤ったと主張する。 しかし,拡大処理(補間処理)と画像のシャープさの変更を同時に行うことによりその高速化を図るという 。 (3) 原告は,審決が訂正発明1の顕著な作用効果を看過して進歩性の判断を誤ったと主張する。 しかし,拡大処理(補間処理)と画像のシャープさの変更を同時に行うことによりその高速化を図るという訂正発明1の効果は,刊行物2に記載された技術により同じように達成できるのであるから,刊行物1及び2に記載された発明から当業者が十分に予測し得る範囲のものである。 また,刊行物2に記載された補間関数は,処理に時間を要するから訂正発明1の方が優れているという原告の主張は,訂正発明1の特許請求の範囲請求項1(甲8)において,用いられる補間関数が特定されていないのであるから(念のために,甲8の「発明の詳細な説明」欄の記載を参酌しても同様である。),原告の主張は,明細書の記載に基づかないというほかなく,採用することができない。 よって,原告の上記主張は理由がない。 (4) 以上によれば,原告主張の審決取消事由1は理由がなく,審決が訂正発明1につき,独立特許要件としての進歩性がないと判断した点は,相当として是認し得るものである。そして,本件訂正審判請求においては,請求項それぞれの構成において重複する部分があることなどからすれば,請求項ごとに訂正の許否を判断することが相当でない特段の事情があるというべきである。したがって,訂正発明2に関する審決取消事由2の当否について判断するまでもなく,本件訂正審判の請求を成り立たないとした審決の結論は,是認し得るものである。 2 取消事由2(訂正発明2の進歩性の判断の誤り)について訂正発明2は,訂正審判請求前の請求項7に係る発明であり,前記のとおり,異議2000-71505号事件についての平成13年3月21日付け異議の決定においては,特許が維持された発明である。しかし,本件審決においては,上記異議事件における刊行物 発明であり,前記のとおり,異議2000-71505号事件についての平成13年3月21日付け異議の決定においては,特許が維持された発明である。しかし,本件審決においては,上記異議事件における刊行物とは異なる刊行物を引用して,進歩性を否定する判断がされている。このような事情に加え,当事者が当裁判所の判断が示されることを希望して争点に関する主張を行ったことにもかんがみ,上記のように本訴請求の当否には影響しないものの,訂正発明2に関する審決の判断の当否について,審決が示した理由のみに即して,当裁判所の所見の要点を示しておくこととする。 (1) 原告は,刊行物2に記載された発明について「結果的に,補間点Xpの補間データYpが,補間倍率の割合を変化させてBスプライン補間関数とCubicスプライン補間関数を重み付け加算し」との審決の認定は誤りであると主張する。 これに対し,被告は,「Cubicスプライン補間係数ck-1 ,ck,ck+1 ,ck+2に重み付けの割合(1-α)を,Bスプライン補間係数bk-1 ,bk,bk+1 ,bk+2に同割合(α)を乗じた場合には,結果的にみて,Bスプライン補間係数,Cubicスプライン補間係数の双方が異なった値tを使用して計算されたものと等価となり,このことは,補間点Xpの補間データYpが,補間倍率の割合を変化させてBスプライン補間関数とCubicスプライン補間関数を重み付け加算したといえるから,『結果的に,補間点Xpの補間データYpが,補間倍率の割合を変化させてBスプライン補間関数とCubicスプライン補間関数を重み付け加算し』たと認定した点に,原告主張の誤りはない。」と反論する。 (2) しかし,検討するに,複数の補間処理について各補間倍率を変えて実行することと,複数の補間関数の係数の重み付けを変えて加算 付け加算し』たと認定した点に,原告主張の誤りはない。」と反論する。 (2) しかし,検討するに,複数の補間処理について各補間倍率を変えて実行することと,複数の補間関数の係数の重み付けを変えて加算することは,明らかに異なる処理であるにもかかわらず,両者が等価であることについて,審決の説示及び被告の主張を精査しても,納得し得る根拠が示されていない。また,本件全証拠によっても,両者が等価であることを認めるに足りない。 そうすると,本件において,「結果的に,補間点Xpの補間データYpが,補間倍率の割合を変化させてBスプライン補間関数とCubicスプライン補間関数を重み付け加算し」たものと認定することは根拠を欠くものといわざるを得ない。したがって,この認定を前提に訂正発明2の独立特許要件としての進歩性を否定した審決の判断は,根拠を欠くものである。 3 結論審決には,上記2のように是認し得ない部分があるが,上記1(4)に判示したように,本件訂正審判の請求を成り立たないとした審決の結論自体は,是認し得るものである。よって,原告の請求は棄却されるべきである。 東京高等裁判所第18民事部裁判長裁判官塚原朋一裁判官塩月秀平裁判官田中昌利
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