平成25(行コ)242 行政処分取消等請求控訴,同附帯控訴事件(原審・東京地方裁判所平成22年(行ウ)第741号行政処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年2月12日 東京高等裁判所
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判決文本文17,486 文字)

平成26年2月12日判決言渡平成25年(行コ)第242号行政処分取消等請求控訴,同附帯控訴事件 主文 1 控訴人の控訴に基づき,原判決中控訴人敗訴部分をいずれも取り消す。 2 上記取消しに係る被控訴人の請求をいずれも棄却する。 3 被控訴人の附帯控訴及び当審において拡張された請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,第1,2審を通じ被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求める裁判 1 控訴人主文と同旨 2 被控訴人(一) 本件控訴を棄却する。 (二) 原判決主文第2項を次のとおり変更する(附帯控訴の趣旨及び当審における拡張請求)。 控訴人は,被控訴人に対し,607万8814円及びこれに対する平成23年1月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (三) 当審における訴訟費用は,控訴人の負担とする。 (四) 仮執行宣言第2 事案の概要本件は,控訴人がその水道局職員である被控訴人に対し,正当な理由なく,72回につき出勤時限に遅れた上,そのうち71回につき部下に指示して出勤記録なしを「出勤」の表示を意味する「○」に修正させたことを理由として,平成22年7月9日付けで停職3月の懲戒処分(以下「本件停職処分」という。)をし たため,被控訴人が,控訴人に対し,本件停職処分の取消しを求めるとともに,本件停職処分に伴う減収分,将来の逸失利益,慰謝料及び弁護士費用として合計557万0198円の損害賠償の支払を求める事案である。 原判決は,本件停職処分はその根拠となる主要な事実の存在を認めることができず違法であるとして,こ 逸失利益,慰謝料及び弁護士費用として合計557万0198円の損害賠償の支払を求める事案である。 原判決は,本件停職処分はその根拠となる主要な事実の存在を認めることができず違法であるとして,これを取り消し,また,本件停職処分には国家賠償法上の違法もあるとして,期末勤勉手当等の返納分86万3449円,本件停職処分中の給与183万4086円,本件停職処分による期末勤勉手当の減額分76万3704円,慰謝料20万円,弁護士費用20万円の合計386万1239円の損害賠償及びこれに対する平成23年1月20日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を命ずる限度で被控訴人の損害賠償請求を認め,その余を棄却したため,これに不服の控訴人が原判決中敗訴部分の取消しと同部分に係る被控訴人の請求棄却を求めて控訴し,被控訴人は,附帯控訴を提起して敗訴部分の取消しとその認容を求めるとともに,当審において損害賠償請求を607万8814円に拡張した。 1 前提事実,争点及びこれに関する当事者の主張の要旨は,次の2のとおり原判決を補正し,3,4のとおり当事者双方が当審において追加又は敷衍した主張を付け加えるほか,原判決「事実及び理由」中,「第2 事案の概要」の「2」及び「3」記載のとおりであるから,これを引用する。 2 原判決の補正(一) 原判決8頁6行目の「4年3か月分」を「3年3か月分」と改める。 (二) 同9頁13行目から14行目にかけての「557万0198円を下らない」を「607万8814円」に,15行目の「557万0198円」を「607万8814円」にそれぞれ改める。 (三) 同10頁16行目冒頭から11頁5行目末尾までを次のとおり改める。 「エ本件停職処分による逸失利益 111万7575円被控訴人は,本件停職処分 4円」にそれぞれ改める。 (三) 同10頁16行目冒頭から11頁5行目末尾までを次のとおり改める。 「エ本件停職処分による逸失利益 111万7575円被控訴人は,本件停職処分により,平成23年4月1日付けの定時昇 給では3号分の削減がされて1号給の昇給しか受けられず,平成24年4月1日付け及び平成25年4月1日の各定時昇給では1号分の削減がされて3号給の昇給しか受けられなかった。また,平成25年4月1日から給与制度の見直しがされたため,期末勤勉手当及び退職手当の支給額を改めて計算し直した結果,逸失利益は,111万7575円となる。」 3 被控訴人が当審において追加又は敷衍した主張(一) 被控訴人が72日において出勤時限に遅れたこと,そのうち71日において部下に指示して出勤記録なしを「出勤」の表示を意味する「○」に修正させたことについては,控訴人に立証責任があるところ,その立証があるとはいえない。 (1) 被控訴人が遅参していないことについて被控訴人がこれらの72日に出勤記録にカードを通さなかった理由は別紙の「内容」欄記載のとおりであるが,電車遅延による遅参の日以外はいずれも遅参していない。その理由は以下のとおりである。 ア入力操作の不能以下の(ア),(イ)の日は被控訴人において出勤記録への入力操作を行うことが不能であったのであり,被控訴人が遅参したことはない。 (ア) 被控訴人の人事情報が局システムに登録されたのは平成18年4月28日の17時25分であり,これが被控訴人に伝えられたのは5月10日ころである。したがって,被控訴人は平成18年5月1日及び同月8日には出勤記録への入力ができなかった。 なお,被控訴人は5月1日に休暇申請をしているが れが被控訴人に伝えられたのは5月10日ころである。したがって,被控訴人は平成18年5月1日及び同月8日には出勤記録への入力ができなかった。 なお,被控訴人は5月1日に休暇申請をしているが,これは給与事務申請届出受付システム(以下「受付システム」という。)を使用して行うものである。局システムと受付システムとは別のシステムであり,この2つのシステムは,IDもパスワードも異なるから,受付シ ステムの使用が局システムの使用可能性を示すものではない。 (イ) ストライキ実施日(平成20年3月19日)について平成20年3月19日,A営業所において同日午前8時30分から1時間のストライキが実施され,カードリーダへの入力が不能であったから,出勤記録への入力ができなかったことは明らかである。 イ時限前の出張(ア) 被控訴人は,平成18年5月12日,19日は,近隣の小学校で開催された水道教室に時限前から出張していた。これらの水道教室は午前9時ないし9時10分開始であり,その準備には時間を要するので,被控訴人は出勤時限前に営業所を出発しており,遅参していないことが明らかである。 (イ) 平成18年11月28日,平成19年4月13日,同年6月25日は,出勤時限前からB支所に出張しており,遅参していない。 (ウ) また,被控訴人は,平成21年5月29日,同年6月25日にC営業所に出張したが,いずれの日も出勤時限前にD営業所をEとともに公用車で出発しており,遅参していないことが明らかである。 (エ) 平成19年11月28日,12月12日,平成20年2月5日,2月28日,3月10日,4月11日,5月2日については,部下職員の刑事事件に対応するためF警察署に時限前から出張するなどしていたから,遅参していな 11月28日,12月12日,平成20年2月5日,2月28日,3月10日,4月11日,5月2日については,部下職員の刑事事件に対応するためF警察署に時限前から出張するなどしていたから,遅参していないことが明らかである。 ウ監査事務局監査日について平成18年7月10日及び平成21年2月5日は営業所の業務監査日であり,被控訴人は両日とも午前8時30分に営業所で監査担当者に挨拶をしているから,遅参していない。 エ腰痛による入力代行依頼平成20年10月23日,10月27日及び11月26日は,被控訴 人が腰痛を押して出勤したところ,これを見た部下のGが入力の代行を申し出たため同人に入力を依頼したものであり,遅参していない。 オ正面玄関からの登庁別紙のうち「1階正面玄関から登庁」と記載された日は,被控訴人が正面玄関から登庁したところ,その都度部下の職員から「(出勤記録は)やっておきますから」と言われたので,任せたものであり,遅参していない。 (2) 被控訴人が部下に出勤記録の修正を指示したことはないことについて別紙のうち「電車遅延」と記載された日は,いずれも交通機関の事故による遅参であり,遅参に正当な理由がある。また,被控訴人がこれらの日に,部下に出勤「○」への修正を指示したことはない。 (二) 本件停職処分の手続の違法懲戒に際し,控訴人は非違行為を認めていない被控訴人に対し,非違行為の具体的な認定内容を告げず,遅参及び修正指示の個別的特定も明らかにせずに事情を聴取し,反論反証をふまえた調査も怠り,かつ認定した非違行為の具体的日時を示すことなく本件処分をしたことには,重大な手続上の瑕疵があり,違法である。 4 控訴人が当審において追加又は敷衍した主張(一) 被控 えた調査も怠り,かつ認定した非違行為の具体的日時を示すことなく本件処分をしたことには,重大な手続上の瑕疵があり,違法である。 4 控訴人が当審において追加又は敷衍した主張(一) 被控訴人の主張(一)は争う。被控訴人は,72日において遅参し,そのうち71日において出勤への修正を指示した。 (1) 遅参についてア入力操作不能の主張について(ア) 被控訴人は,平成18年4月28日17時25分時点で,局システムに登録されている(乙28)から,平成18年5月1日時点で,所定の操作を行えば出勤の記録が登録される状態になっていた。実際に,平成18年5月1日時点で,被控訴人は,自らの休暇の申請をす るとともに,被控訴人及び職員についての休暇を承認しており,同日から入力操作が可能であったことは明らかである。 (イ) ストライキ実施日について被控訴人以外の他の営業所長は平成20年3月19日ストライキ実施日でもカードを通して入力しており,スト中でも出勤記録の取扱いは通常勤務日と変わりない(乙45)。入力操作は可能であった。 イ時限前の出張に行っていたとの主張について(ア) 被控訴人が時限前の出張に行っていたと主張する日のうち,平成18年5月12日,19日,同年11月28日,平成19年4月13日,同年6月25日の5日間については,出勤時限前の出張命令など存在せず,また,急に出勤時限前の出張が入り,被控訴人が部下職員に出張入力を依頼したという事実もない。 (イ) 平成21年5月29日,同年6月25日については,出張の事実はあるが,時限前に出張した事実はない。 (ウ) F警察署についても,勤務時間中に出張したことはあるが,時限前出張はない。 ウ 日,同年6月25日については,出張の事実はあるが,時限前に出張した事実はない。 (ウ) F警察署についても,勤務時間中に出張したことはあるが,時限前出張はない。 ウ監査事務局監査日(平成18年7月10日,平成21年2月5日)について被控訴人が平成18年7月10日の監査において午前8時30分に所長挨拶をした事実は認められない。また,平成21年2月5日の監査についても,平成21年定例監査の開始時刻は,「監査員から別途指示がない限り,午前10時」と定められていた(乙48の1)から,午前8時30分に所長挨拶をしたとは認められない。 エ腰痛による代行入力依頼及び1階正面からの登庁について営業所の開庁準備は8時30分直前に行われ,8時30分前には未だ正面玄関は開いていないから,被控訴人が出勤時限前に正面玄関から登 庁することはできない。また,整理担当者のうち,被控訴人に対し,入力の代行等を申し出をしたと供述する者は存在しない。 (2) 被控訴人による出勤への修正指示についてア被控訴人は,事故欠勤への修正を指示したのではなく,出勤の表示への修正を指示した。このことは被控訴人が出勤整理簿等を決裁して,被控訴人が出勤扱いになっていることを知っていながら,訂正を求めていないことからも明らかである。 イなお,「電車遅延」と記載された日についても,そのうち,合計13日については,被控訴人と同じ営業所の職員で,被控訴人と同じ路線を利用している職員は誰一人として勤務時限に遅れていないし,被控訴人が交通機関の遅延の証拠として提出するもののうちには,交通機関の遅れの時間帯が出勤時限に影響しないもの,利用路線が異なるものなどがあり,何ら参考にはならないものである 時限に遅れていないし,被控訴人が交通機関の遅延の証拠として提出するもののうちには,交通機関の遅れの時間帯が出勤時限に影響しないもの,利用路線が異なるものなどがあり,何ら参考にはならないものである。 (二) 本件停職処分手続の違法の主張について控訴人は,本件処分について被控訴人の出勤記録の修正を行ったH,E,I,J及び部下であったKの事情聴取を行っており,被控訴人の聴取を2回行って本件処分対象期間の被控訴人の勤怠状況を示す年間出勤簿(乙17の1ないし4)を示した上でその弁明を聞き,さらに,被控訴人の上申書を検討した上で本件停職処分を下したものであり,職務上通常尽くすべき調査義務は十分尽くしている。したがって,本件停職処分の手続に違法はない。 第3 当裁判所の判断当裁判所は,本件停職処分に被控訴人主張の違法はなく,また,これによる違法な権利侵害もないから,被控訴人の損害賠償請求(附帯控訴及び訴え変更による当審請求も含む。)も理由がないものと判断する。 その理由は,以下のとおりである。 1 認定される事実 前提となる事実,被控訴人本人尋問の結果,証人E,同J及びH(当審)の各証言,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができ,この認定に反する甲90の記載及び被控訴人本人尋問の結果は採用できない。 (一) 被控訴人について(1) 被控訴人は,平成2年4月東京都の職員として採用され,採用時から平成8年3月まで,平成9年4月から平成12年3月まで及び平成18年4月から現在まで水道局に勤務している。その間,被控訴人は他局において勤務し,東京都庁の本庁舎に勤務していたことがある。 (2) 被控訴人は,平成18年4月1日付けで,知事部局である東京都中央卸売市場 現在まで水道局に勤務している。その間,被控訴人は他局において勤務し,東京都庁の本庁舎に勤務していたことがある。 (2) 被控訴人は,平成18年4月1日付けで,知事部局である東京都中央卸売市場から水道局A営業所に営業所長としての異動を命じられ,同月3日,都庁での挨拶を終えてA営業所に赴任した。 また,平成21年2月23日,組織改革により旧C営業所(大田区α所在)と旧A営業所(大田区β所在)が統合してD営業所となり,被控訴人は同日からD営業所の所長となったが,D営業所の場所は旧A営業所と同じである。 (3) 被控訴人は,平成21年7月16日立川給水管理事務所営業課長として転出した(乙3,乙17の1)。 (二) 出勤記録のシステムについて(1) 前提事実記載のとおり,東京都水道局において,職員は,出勤したときは,営業所に設置されているカードリーダに職員カードを挿入するか,自分の職員番号をテンキーで入力するかの方法で,自ら出勤を記録しなければならないとされ,これにより,職員の当日の出勤時刻,職員ID,カードリーダ番号,出勤を示す記号である「○」が人事情報管理システム(以下「局システム」という。)に電磁的に記録され,保存されることになる。 出勤時限に遅れた職員が上記操作をすると,局システムに「○」が赤で 表示されるほか,出勤時刻,職員ID,カードリーダ番号が表示され,また,カードリーダを通さず,かつ,職員番号のテンキー入力もしない場合には「*」(記録なし)が表示される。 (2) 平成18年4月の被控訴人着任当初から,A営業所では始業時間の8時30分の全職員の在席状況について,勤怠整理担当者が1階の執務室を巡回し,毎日現認していた。 ① そして,上記「*」の付された職員が出勤時限に在席を確認された場 当初から,A営業所では始業時間の8時30分の全職員の在席状況について,勤怠整理担当者が1階の執務室を巡回し,毎日現認していた。 ① そして,上記「*」の付された職員が出勤時限に在席を確認された場合(局システムへの入力操作を忘れた場合)には,勤怠整理担当者が局システムの入力を「○」に修正し,出勤時刻を「8:30」と記入していた。 ② また,交通機関の遅れによるやむを得ない遅参の場合,職員は,駅で発行される遅延証明書を添えて勤怠整理担当者に申し出,同様に勤怠整理担当者が出勤記録を書き換えていた。この実際の操作は,局システム上,勤怠整理担当者のみが行い得るものである。この場合には,出勤記録に「事故」と表示される。なお,平成19年1月30日からLのホームページに遅延証明書が掲載されるようになり(甲75),それを勤怠担当者が打ち出して確認すれば,職員からの遅延証明書の提出は不要とされるようになった。 職員が遅参した場合に上記①の処理を行うことは不正な処理である。たとえ交通機関の遅れによる遅参であっても(上記②の処理を行うことはできるが),上記①の処理をすることはできず,不正な処理となる。 被控訴人がA営業所,D営業所長在任中に,被控訴人の部下として勤怠整理事務を担当していた職員は,J(庶務係主任・平成17年4月1日から平成19年12月13日),E(課長補佐・平成19年4月1日から平成21年7月15日まで)のほか,M,H,Gである(乙13)。 (3) カードリーダの設置場所は,営業所建物裏側の職員通用口にあった。 このため,職員のほとんどは,出勤時,裏側の通用口を経由して自己の席へ赴いていた。また,営業所の正面玄関は,午前8時30分の直前に開けられていた。 (三) 被控訴人赴任当初の出勤記録の入力について のほとんどは,出勤時,裏側の通用口を経由して自己の席へ赴いていた。また,営業所の正面玄関は,午前8時30分の直前に開けられていた。 (三) 被控訴人赴任当初の出勤記録の入力について(1) 被控訴人は,A営業所に赴任する前から,職員番号を入力する方法で自己の出勤記録を行ってきた。この職員番号は不変であり,職場等の異動によっても変更することがなかったため,被控訴人は,A営業所に赴任した直後からその操作を行い,これにより出勤記録がされているものと考えていた。 (2) しかしながら,上記人事異動に伴い,前職場から水道局へ送付された人事関係資料一式がいずれかに紛れてしまい,局システムに被控訴人の氏名が登録されていなかったため,被控訴人は,勤怠整理担当者のJから「所長の出勤記録が登録されていない,所長の氏名が局システムに載っていないので出勤入力しても意味がない。」との説明を受けた。 (3) 局システムに被控訴人の氏名等が搭載されたのは,平成18年4月28日17時25分である(乙28)。 被控訴人は,同月29日から30日まで及び5月2日から7日まで休みを取っていたが,同月1日には出勤した(乙17の1)。 そして,被控訴人は5月1日に受付システムを利用して自己の休暇の申請及び職員の休暇の承認手続を行った(乙18,29,32)。 (4) 被控訴人は,5月上旬頃,Jから,「もう直ったので,そろそろ入力してください」といわれた。同月9日からは被控訴人の出勤記録には,カードリーダに入力又はこれを通過した記録が残っている(乙11)。 (四) 控訴人の出勤記録について前提となる事実のとおり,平成18年4月1日から平成21年7月15日までの間の局システムにおける被控訴人の出勤記録中,問題とされた出勤 いる(乙11)。 (四) 控訴人の出勤記録について前提となる事実のとおり,平成18年4月1日から平成21年7月15日までの間の局システムにおける被控訴人の出勤記録中,問題とされた出勤 日,記録修正内容,修正入力者,控訴人による遅参との認定状況は,原判決別紙一覧表記載のとおりであり,出勤記録が記録なしを意味する「*」から出勤を意味する「○」に修正入力された日が88日,そのうち修正入力を行った者が不明なものは28日,控訴人の部下職員が修正入力者として記録されているものが60日あり,その内訳は,Mが4日,Jが17日,Hが35日,Eが1日,Gが3日であった(乙11ないし13)。 他方,上記以外の出勤日については,被控訴人において所定の入力操作が行われており,このうち,平成19年6月22日以降は,被控訴人が自ら事故欠勤を入力している(乙14)。 (五) 出勤状況総括表等についてA営業所においては,所長が職員の勤怠を把握することを目的として,出勤状況総括表(紙ベース)が作成されており,D営業所においても,職員の執務場所がαとβの庁舎に分かれていたことから,所長が職員の勤怠を把握することを目的として,出勤簿整理表が作成され,それぞれ被控訴人が所長としてこれを決裁することとなっていた。そこには,休暇取得者とその種類,事故欠勤状況が記載されており,局システムの勤怠管理記録と一致するものとして作成されていた。したがって,時限前に出勤をした者については空欄のままとされ,事故欠勤をした職員については「事故」などの記載がされている。被控訴人については,処分対象の72日のうち,出勤状況総括表又は出勤簿整理表のある50日分については,いずれも,事故等の記載はなく出勤を意味する空欄となっている。平成18年4月1日から平成21年7月1 訴人については,処分対象の72日のうち,出勤状況総括表又は出勤簿整理表のある50日分については,いずれも,事故等の記載はなく出勤を意味する空欄となっている。平成18年4月1日から平成21年7月15日までの間において,被控訴人の出勤記録が事故欠勤として登録されている16日間のうち,平成19年6月22日,同年7月9日,同年12月14日及び平成20年2月20日の4日間については,出勤状況総括表の被控訴人の欄に事故欠勤である旨の記載はされていない(乙6の1ないし乙7の9,乙14)が,それ以外の日は事故欠勤である旨が記載されている。 (六) 本件停職処分に至る事情平成22年5月20日,被控訴人が平成19年11月5日から平成21年6月25日までの間に51回も職場に遅参していることを告発する旨の内部告発文書(乙20の1ないし3)が東京都総務局人事部長,同部人事課長及び同課服務班長宛投函され,平成22年6月初め頃,調査が開始され,出勤記録等のデータが収集された。そして,E,K及びIにつき同月7日,被控訴人につき同月10日,E(2回目)及びHにつき同月15日,Jにつき同月16日,被控訴人につき同月17日(2回目)にそれぞれ,職員部観察指導課長,服務指導係長等4名による事情聴取がされた。被控訴人に対する事情聴取の際には,本件停職処分対象期間の被控訴人の勤怠状況を示す年間出勤簿(乙17の1ないし4)を示して,処分対象日を含む未入力日についてその事情を聴取した。被控訴人から同月24日,上申書が提出され,同年7月6日,主管課長から部長決裁を経て措置意見が提出され,同月9日,本件停職処分がされた(乙3ないし5,33,34,36,37,47,甲1,175)。本件処分通知書(甲1)には,遅参日72日,修正日71日の具体的な日付は記載されてい 措置意見が提出され,同月9日,本件停職処分がされた(乙3ないし5,33,34,36,37,47,甲1,175)。本件処分通知書(甲1)には,遅参日72日,修正日71日の具体的な日付は記載されていない。 2 判断(一) 本件停職処分の根拠となった事実の有無について(1) 72日の遅参の有無についてア控訴人は,被控訴人が本件停職処分の対象となった72日において出勤時限に遅れてきたと主張するところ,証人Jは,被控訴人が出勤時限に遅れてきたことをたびたび見たことがあり,具体的な日付までは覚えていないものの,出勤記録を「*」から「○」に修正していれば,被控訴人が遅れてきた以外の理由で出勤記録を修正したことは特にないので,その日が被控訴人が出勤時限に遅れてきた日である旨証言し,証人Eも,被控訴人が出勤時限に遅れてきたことをたびたび見たことがあ り,具体的な日付までは覚えていないものの,出勤記録を「*」から「○」に修正していれば,被控訴人が遅れてきた以外の理由で出勤記録を修正した記憶はないので,その日が被控訴人が出勤時限に遅れてきた日である旨述べている。また,A営業所及びD営業所で被控訴人の部下として勤務した職員であるK(乙36),I(乙37,57),N(乙59),O(乙60),P(乙61)は,その事情聴取書又は陳述書において,被控訴人が月数回程度もしくは頻繁に遅参していた旨を述べている。 そして,東京都水道局においては,所定操作によって出勤記録を自ら入力することは,「勤務時間等規程」,「処務規程」,「事務処理要領」などの規程上,職員の基本的な服務上の義務であり,被控訴人もこれに従っているが,本件停職処分の対象日となった72日については出勤時限前の入力をしていない。これらによれば 処務規程」,「事務処理要領」などの規程上,職員の基本的な服務上の義務であり,被控訴人もこれに従っているが,本件停職処分の対象日となった72日については出勤時限前の入力をしていない。これらによれば,被控訴人が出勤時限前の入力をしていないという事実と前記の各証言とが相まって,処分対象の72日については,被控訴人がその理由はともかく遅参したことが一応推認されるというべきである。 そこで,さらに推認を覆す事由があるか個別に判断する。 イ入力操作の可能性について(ア) 前記1の認定事実によれば,被控訴人については,平成18年4月の異動直後は局システムに被控訴人の人事情報が登録されていなかったため,出勤入力をすることができなかったこと,局システムに被控訴人の人事情報が搭載されたのは,平成18年4月28日17時25分であることが認められるが,Jがこのことを被控訴人に伝えたのが5月8日より前であることを認めるに足りる的確な証拠はない。 この点について,証人Jは,被控訴人の氏名登録を告げたのが5月初めと証言するが,その日付の特定はあいまいであり,これが確実に平成18年5月1日まで遡り得ると認めることは困難である。他方で 5月9日に被控訴人自身によるカードリーダを通じた操作が開始されていることからみて,休み明けの5月8日の登庁後に,被控訴人はJから個人情報が局システムに登録されたことを聞いたと認めるのが自然であり,同日についても,被控訴人において局システムを利用できたとまでは認められない。 控訴人は,被控訴人が平成18年5月1日に休暇の申請・承認をしていることから,同日には入力可能の事実を知っていた旨主張するが,休暇の申請を行う受付システムと局システムは異なるシステムであり,前者の入力操作を行ったからといって後 5月1日に休暇の申請・承認をしていることから,同日には入力可能の事実を知っていた旨主張するが,休暇の申請を行う受付システムと局システムは異なるシステムであり,前者の入力操作を行ったからといって後者の入力が可能であることを知っていたということはできない。 この点に係る被控訴人の主張は理由がある。 (イ) ストライキ実施日について甲8ないし10,3月19日の状況報告書(甲150の1)等によれば,平成20年3月19日,A営業所において同日午前8時30分から1時間のストライキが実施され,カードリーダへの入力が不能であったと認められる。証拠(乙45)によれば,他の営業所においては同日にカード入力が行われていることが認められるが,D営業所の入力可能性についての上記認定を左右するものとはいえない。 (ウ) 以上のとおり,平成18年5月1日,8日,平成20年3月19日の3日間については,被控訴人において出勤の入力を行うことが客観的又は主観的に不可能であったから,これらの日については,出勤の入力がされていないことから遅参の事実を推認することはできないというべきである(遅参の事実を推認する前提事実に欠ける。)。 そして,前記の証言のみでは,被控訴人がこれらの日に遅参したことを認めるに足りない。 ウ時限前出張の主張について (ア) 被控訴人は本件遅参とされた対象日72日のうち7日(平成18年5月12日,19日,同年11月28日,平成19年4月13日,同年6月25日,平成21年5月29日,同年6月25日)について,時限前の出張に行っていたと主張する。 しかしながら,平成18年5月12日,19日(いずれも水道教室),平成18年11月28日,平成19年4月13日,平成19年6月25日(いずれもB支所 時限前の出張に行っていたと主張する。 しかしながら,平成18年5月12日,19日(いずれも水道教室),平成18年11月28日,平成19年4月13日,平成19年6月25日(いずれもB支所)については,本来提出されるべきはずの時限前出張届出や時限後の出張申請が提出されていない(甲30の各号,証人H,被控訴人本人)。 また,証拠(甲83・被控訴人の手帳,被控訴人本人)によれば,被控訴人が平成18年5月12日及び19日午前9時ないし9時10分から近隣小学校で開催された水道教室に出張したことが認められるが,開催場所はいずれもA営業所から100メートルないし250メートル程度しか離れていない場所であり,準備の都合等を考慮しても被控訴人が営業所を出勤時限前に出発したことを認めるまでの証拠はない。 (イ) さらに,平成21年5月29日については8時45分から14時15分,同年6月25日については8時45分から16時まで公用車を利用しての出張が届け出られている(甲30の13,14)ことからすれば,前記両日とも午前8時45分にD営業所(β分室)から自動車で出発したことが認められる。 (ウ) したがって,これらの点についての被控訴人の供述は信用することができず,いずれの日においても時限前出張,すなわち被控訴人が出勤時限前から勤務をしていたことを認めることはできないというべきである。 (エ) また,控訴人は,F警察署関係,刑事事件の家族からの電話対応 により7日を費やし,出勤時限前にこれらの処置や情報収集等をしたと主張し,これに沿う供述をするところ,甲67によれば平成19年11月頃,庁内における盗撮未遂事故につき,警察に口頭で説明することが指示されたなどの事実が認められる。しかし,Eは,事情 収集等をしたと主張し,これに沿う供述をするところ,甲67によれば平成19年11月頃,庁内における盗撮未遂事故につき,警察に口頭で説明することが指示されたなどの事実が認められる。しかし,Eは,事情聴取において,被控訴人とともに勤務時間中にF警察署に行ったことはあるが,自身又は被控訴人が時限前に同警察署に行ったことを否定しており(乙33,34),時限前出張の届出もないことに照らすと,被控訴人が出勤時限前にこれらに対応したとの事実を認めるに足りないというべきである。 エ監査事務局監査日について(ア) 被控訴人は,平成21年2月5日につき,監査事務局定例監査で午前8時30分に所長挨拶をしたと主張する。しかし,平成21年定例監査の開始時刻は,「監査員から別途指示がない限り,午前10時」と定められており(乙48の1),同通知の別紙2で,「実査会場等において,管理職及び係長紹介後,事業概要の説明を10分程度で行う。」とされているから,被控訴人の主張を認めることはできない。 (イ) 平成18年7月10日についても,被控訴人が午前8時30分に所長挨拶をしたことを認めるに足りる証拠はない。被控訴人は,その本人尋問において,当日午前8時30分に正面玄関から入ったら,Jから,監査担当者がきているので早く挨拶してください,カードはこちらで処理しておくと言われ,午前8時30分ぴったしに挨拶をしたと供述している。しかし,証人Jはこれを否定している。また,同証人は,服務監査の場合は午前8時30分の職員の出勤状況等を確認するため8時30分から開始するときもあるが,その場合でも所長の挨拶は8時30分丁度ではなく,9時までの間に行われると証言している。したがって,仮に同日の監査が服務監査であったとしても,所長 挨拶が必ず午前 0分から開始するときもあるが,その場合でも所長の挨拶は8時30分丁度ではなく,9時までの間に行われると証言している。したがって,仮に同日の監査が服務監査であったとしても,所長 挨拶が必ず午前8時30分から開始されたという被控訴人主張を認めることはできない。 オ腰痛の日,正面玄関からの登庁の日について被控訴人は,腰痛の日のほか,正面玄関から登庁した日に,出勤入力について,部下の職員がやっておきますとか代行入力を申し出たと主張する。 営業所の開庁準備は8時30分直前に行われるから,正面玄関を通過可能な時間は5分程度であるが(証人H),被控訴人が時限前に出勤する場合の時間は時限の2,3分前という場合が多い(乙11,12)ので,被控訴人が正面玄関から時限前に登庁する可能性がないとはいえない。しかし,これらの該当日に出勤記録の修正処理をした担当者は判明分で,H(18回),J(7回),M(3回),G(3回)であるところ,証人尋問を実施した証人H,証人Jはそのような申し出をしたことを否定する証言をしており,これらの証言に照らすと,この点に関する被控訴人の供述は,M,Gが担当した日の分も含め全体的に信用することができないというべきである。 カまとめ以上によれば,本件停職処分において遅参とされた72日のうち,平成18年5月1日及び同月8日並びに平成20年3月19日については,遅参の事実を認めることはできない。他方,その余の69日については,前記の遅参の推認を覆す事実関係があるとはいえないから,遅参の事実が認められるというべきである。 (2) 71日の修正指示の有無についてア控訴人は,被控訴人が本件停職処分の対象となった71日において出勤記録の修正を指示したと主張するが,こ 事実が認められるというべきである。 (2) 71日の修正指示の有無についてア控訴人は,被控訴人が本件停職処分の対象となった71日において出勤記録の修正を指示したと主張するが,このうち平成18年5月1日及び同月8日並びに平成20年3月19日については遅参の事実自体が 認められないのであるから,修正の指示についても認められないというべきである。残りの68日について判断するに,証人Jは,被控訴人から出勤記録を出勤の表示に修正するように明確に指示された記憶はないものの,被控訴人が出勤時限に遅れてきた際に,Jら勤怠整理担当者に対し「事故」とか「電車の遅れ」とか「遅延」というような言葉を述べており,被控訴人から遅延証明書も交付されず,インターネットで運行情報を確認しても遅延に当たる情報もなく,「*」のままにしておくこともできなかったので,やむを得ず出勤を意味する「○」に修正をした旨証言し,証人Eは,被控訴人から出勤記録を出勤の表示に修正するように具体的に指示された記憶はないものの,被控訴人が出勤時限に遅れてきた際に,「ちょっと電車が遅れたので修正しておいて下さい」とか,「電車が遅れました」とか,「ちょっと直しておいて下さい」というような言葉を述べており,事故欠勤は自ら届出をするものであって修正には当たらないことから,出勤記録を修正することを指示されたものと理解した旨を証言している。また,証人Hは,被控訴人が遅参した場合は,その都度Eに「通せなかったから修正してくれ」と言い,それを受けて,同人から「すいません。お願いします。丸にしてください。直してください。」と言われたため,逆らえずに出勤への修正を行った旨を証言している。 これらによれば,遅参した場合の被控訴人の担当者に対する指示は,「直しておい してください。直してください。」と言われたため,逆らえずに出勤への修正を行った旨を証言している。 これらによれば,遅参した場合の被控訴人の担当者に対する指示は,「直しておいてくれ。」「修正してくれ。」などというものであり,「事故欠勤」にするようにとか,「○」にするようにとの明確な指示があったものではない。しかし,そもそも電車遅延による遅参でない場合は,事故欠勤に登録することはできないのであるから,この場合の被控訴人の指示の内容は「○」に修正する趣旨以外に考えられないところである。 また,被控訴人は,日々出勤状況総括表又は出勤簿整理表を決裁してお り,これらの指示をした日の自己の出勤状況欄が「事故欠勤」ではなく「出勤」を示す空欄になっていることを見ていながら,部下に「事故欠勤」への再訂正を求めず,その後も同様の指示を繰り返していたのであるから,被控訴人の意思が出勤扱いへの修正を求めることにあったことは明らかというべきである。なお,前記のとおり,被控訴人は一部の日(50日中の9日)において出勤状況総括表又は出勤簿整理表の決裁をしていないが,大部分の日においては決裁をしているのであり(前提事実(4)イ),また,出勤状況総括表等の記載に一部正確性に欠けるところがあるものの,大部分においては正確に記載されているのであるから(前記1(五)),これらの事実は上記の判断を左右するものではない。 被控訴人は,所長の決裁書類は極めて多数であり,出勤状況総括表又は出勤簿整理表の決裁において,逐一記載内容をチェックしていないとして,自己の出勤状況欄が空欄となっているか,事故欠勤の記載となっているかを認識・把握していないと主張するが,出勤状況総括表等の被控訴人の氏名及び記載欄は,決済欄の真下にあるから(乙6,7の各号), して,自己の出勤状況欄が空欄となっているか,事故欠勤の記載となっているかを認識・把握していないと主張するが,出勤状況総括表等の被控訴人の氏名及び記載欄は,決済欄の真下にあるから(乙6,7の各号),上記主張は到底採用することができない。 イ被控訴人は,その本人尋問において,出勤時限に遅れてきた際に,JやEに対し,電車の遅延の事実を伝えたことはあるが,修正しておいて下さいと述べたことはない旨供述するが,前記の各証拠に照らして信用することができない。 ウしたがって,前記71日のうち,遅参の事実が認められない3日を除くその余の68日については,いずれも被控訴人が部下に対し出勤への修正を求める指示をしたというべきである。 (3) 以上によれば,本件停職処分の理由の72日の遅参のうち,69日についてはその事実が認められ,71日の修正指示のうち68日についてはその事実が認められる。したがって,本件停職処分は,その根拠となる主要 な事実の存在が認められるというべきであり,この点に違法はない。 (二) 本件停職処分のその余の違法主張について(1) 手続上の違法について控訴人は,被控訴人から2日にわたって事情を聴取しているが,その際には,本件停職処分対象期間の被控訴人の勤怠状況を示す年間出勤簿(乙17の1ないし4)を示して,本件停職処分対象日の遅参,修正指示の有無について聴取しており,被控訴人の防御の機会を与えている。また,被控訴人の反論等も踏まえ,営業所の勤怠整理事務を担当した職員6人のうち重要度が高いと認められる4人から事情聴取した上で,本件停職処分をしており,処分通知書に遅参72日,修正指示71日の具体的な日付が記載されていないことを考慮しても,本件停職処分の手続が違法である ち重要度が高いと認められる4人から事情聴取した上で,本件停職処分をしており,処分通知書に遅参72日,修正指示71日の具体的な日付が記載されていないことを考慮しても,本件停職処分の手続が違法であるとまではいえない。 (2) 比例原則違反について被控訴人は,仮に遅参が認定されたとしても,その遅参時間は明らかではないなどとして,本件停職処分が比例原則にも反する旨主張するが,乙20の1ないし3によれば,何日かの遅参につきその遅参時間の認定ができなくないではないものの,本件停職処分は,いずれも職権により,遅参時間を最小の1分として行われ(甲66),この遅参事実のほか,被控訴人の入力指示が控訴人の懲戒処分の指針(乙8)の第5の(6)の虚偽報告に当たること,被控訴人が管理職員として,自らの有する権限を背景に不正を行ったと判断されたことなどから,被控訴人を停職3か月とする本件停職処分がされたものであって,乙9の取扱基準及び乙10の標準処分量定からみても,本件停職処分が比例原則を逸脱したものということもできない。 その他,被控訴人は,本件停職処分の違法性及びこれを基礎づける控訴人提出証拠につきるる主張するが,いずれも採用することはできない。 以上から,被控訴人の本件停職処分の取消しを求める請求は,理由がない。 (三) 損害賠償請求について(1) 上記によれば,本件停職処分が違法であることを前提とする被控訴人の損害賠償請求は理由はない。 (2) 被控訴人は,プレスリリースの違法を別途主張し,慰謝料を求めるが,甲2,53,乙15の各号によって認められるプレスリリース内容とこれによる新聞記事の内容が被控訴人の名誉を毀損したり,プライバシーを侵害するものであるとは認められないから,被控 ,慰謝料を求めるが,甲2,53,乙15の各号によって認められるプレスリリース内容とこれによる新聞記事の内容が被控訴人の名誉を毀損したり,プライバシーを侵害するものであるとは認められないから,被控訴人の請求は理由がない。 第4 結論よって,これと異なる原判決を取り消した上,被控訴人の請求をいずれも棄却することとし,被控訴人の附帯控訴及び当審において拡張された請求は理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法67条2項,61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第11民事部 裁判長裁判官瀧澤 泉 裁判官三代川 俊一郎 裁判官寺本昌広

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