平成24(行ウ)101 弁護士報酬請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年7月19日 神戸地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文19,328 文字)

- 1 -平成25年7月19日判決言渡平成24年(行ウ)第101号弁護士報酬請求事件主文 1 被告は,原告らに対し,400万円及びこれに対する平成24年1月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告らのその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを10分し,その1を原告らの負担とし,その余は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,原告らに対し,440万円及びこれに対する平成24年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 第2 事案の概要 1 本件は,神戸市の住民である原告らが,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,神戸市長を被告として提起した住民訴訟において一部勝訴したことから,被告に対し,同条12項に基づき,上記訴訟において訴訟委任した弁護士に支払うべき報酬の範囲内における相当額として,440万円及びこれに対する原告らが履行を請求したとする日である平成24年1月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(争いのない事実,当裁判所に顕著な事実及び後掲の証拠により容易に認められる事実)(1) 基本事件の概要ア原告らは,弁護士阿部泰隆(以下「阿部弁護士」という。)に訴訟委任して,別の神戸市の住民らと共同して,平成17年9月27日,神戸市長を被告として住民訴訟を提起した(当庁平成○年(行ウ)第○号。以下 - 2 -「基本事件」といい,基本事件の原告らを「基本事件原告」という。)。 基本事件原告は,神戸市がA組合条例(以下「本件条例」という。)に基づいてA組合(以下「本件組合」という。)に補助金を交付したことが違法であると主張して, 事件の原告らを「基本事件原告」という。)。 基本事件原告は,神戸市がA組合条例(以下「本件条例」という。)に基づいてA組合(以下「本件組合」という。)に補助金を交付したことが違法であると主張して,同組合に対する交付した補助金の不当利得返還請求を行うこと及び同補助金を交付した当時の市長個人であるB及びCに対して不法行為に基づく損害賠償請求を行うことを求めた。基本事件原告が,神戸市に対して支払請求の義務付けを求めた額は,本件組合について31億3993万5008円及びこれに対する法定利息,Bについて20億3355万5290円及びこれに対する遅延損害金,Cについて11億0637万9718円及びこれに対する遅延損害金である。(甲6,乙5)イ神戸地方裁判所は,平成20年4月10日,基本事件原告のうち,2名の訴えを却下するとともに,その余の基本事件原告の請求のうち,本件組合に対する1億2502万円の支払請求の義務付け及びBに対する1523万8642円の支払請求の義務付けを認める限度で認容する判決を言い渡した。(甲6)ウ神戸市長は上記第1審判決を不服として控訴を提起し(大阪高等裁判所平成○年(行コ)第○号),基本事件原告のうち,訴えを却下された2名を除く者は,阿部弁護士に訴訟委任をして附帯控訴を提起した(同第○号)。大阪高等裁判所は,平成21年2月20日,上記第1審判決を変更して,被控訴人(附帯控訴人)らの請求を,本件組合に対する4019万5000円の支払請求の義務付け並びにBに対する4019万5000円及びこれに対する遅延損害金の支払請求の義務付けを認める限度で認容する判決を言い渡した。(甲7)エ神戸市長は,最高裁判所に上告及び上告受理の申立てをしたが(最高裁判所平成○年(行ツ)第○号,○年(行ヒ)第○号),最高裁判所は,平成2 付けを認める限度で認容する判決を言い渡した。(甲7)エ神戸市長は,最高裁判所に上告及び上告受理の申立てをしたが(最高裁判所平成○年(行ツ)第○号,○年(行ヒ)第○号),最高裁判所は,平成22年6月25日,上告を棄却するとともに基本事件を上告審として受 - 3 -理しない旨の決定をしたため,前記控訴審判決が確定した。(甲8)オ被告は,平成21年4月30日,基本事件によって確定した,神戸市長がB及び本件組合に対して請求すべき債権の元本及び遅延損害金として合計4691万2445円を本件組合から受領した。(甲2)(2) 他の3つの住民訴訟及び弁護士報酬相当額請求訴訟(甲5)ア原告らは,阿部弁護士に訴訟委任して,別の神戸市の住民らと共同して,神戸市が,勤続15年,25年及び35年の職員に対し,それぞれ額面3万円,10万円及び5万円の旅行クーポン券等を支給してきた事業は,給与条例主義に反する違法な公金の支出であるとして,神戸市長に,上記支出当時の神戸市長であったBに対する損害賠償請求の義務付けを求める住民訴訟を提起した(当庁平成○年(行ウ)第○号。以下「慰安会訴訟」という。)。 神戸地方裁判所は,平成18年3月23日,上記事業が給与条例主義に反し違法であるとして,上記請求を一部認容する判決を言い渡した。神戸市長が控訴を提起し,これに対し,慰安会訴訟の原告である住民らが阿部弁護士に訴訟委任をして附帯控訴を提起して争い,大阪高等裁判所は,平成19年2月16日,上記事業が給与条例主義に反し違法であるとの判断を維持して,控訴及び附帯控訴を棄却する判決を言い渡した。神戸市長は,最高裁判所に上告及び上告受理の申立てをしたが,同年10月18日,上告棄却及び上告受理申立て不受理決定を受け,前記控訴審判決が確定した。 慰 訴及び附帯控訴を棄却する判決を言い渡した。神戸市長は,最高裁判所に上告及び上告受理の申立てをしたが,同年10月18日,上告棄却及び上告受理申立て不受理決定を受け,前記控訴審判決が確定した。 慰安会訴訟の請求額は9827万4500円及びこれに対する遅延損害金であり,判決認容額は4827万4500円及びこれに対する遅延損害金であり,上記判決の結果被告がBから回収した額は5474万1960円であった。(以上,アについて乙1ないし3)イ原告らは,阿部弁護士に訴訟委任して,別の神戸市の住民らと共同し - 4 -て,神戸市において,平成16年度に,同市の永年勤続職員に対して,慰安会名目で旅行会社等の発行する旅行クーポン券と引換え可能な旅行クーポン引換券等を支給し,旅行クーポン引換券等の引換えをした旅行会社等に対して委託料名目で金員を支出したこと,及び,同市において,平成17年度から同市の永年勤続職員に対する前年度同様の慰安会事業を行っている,D共済会に対し,交付金が支出されたことについて,上記各支出はいずれも給与条例主義に反する違法な公金の支出であるなどとして,神戸市長に,上記支出当時の神戸市長であるB及び上記共済会に対する損害賠償請求の義務付けを求める住民訴訟を提起した(当庁平成○年(行ウ)第○号。以下「教員慰安会訴訟」という。)。 神戸地方裁判所は,前記共済会に対する損害賠償請求の義務付けを求める部分のうち遅延損害金の請求の義務付けを求める部分を除き,原告らの請求を認容する判決を言い渡したところ,神戸市長が控訴を提起し,教員慰安会訴訟の原告である住民らは控訴審においても阿部弁護士に訴訟委任をして争い,大阪高等裁判所は控訴を棄却する判決を言い渡した。神戸市長は,最高裁判所に上告及び上告受理の申立てをしたが,上告 ,教員慰安会訴訟の原告である住民らは控訴審においても阿部弁護士に訴訟委任をして争い,大阪高等裁判所は控訴を棄却する判決を言い渡した。神戸市長は,最高裁判所に上告及び上告受理の申立てをしたが,上告棄却及び上告受理申立て不受理決定を受け,前記控訴審判決が確定した。 教員慰安会訴訟の請求額及び判決認容額は総額2508万3261円及びこれに対する遅延損害金であり,上記判決の結果被告がB及び前記共済会から回収した額は2876万8246円であった。 ウ原告らは,阿部弁護士に訴訟委任して,別の神戸市の住民と共同して,神戸市において,退職した市議会議員等に対し,傘寿・卒寿祝いとして高級肌着を贈呈するためなどの公金支出,及び市バス・地下鉄優待乗車証を贈与した行為が違法な財務会計行為に該当するとして,神戸市長に,上記支出当時の神戸市長であるB及びCに対する損害賠償請求の義務付けを求める住民訴訟を提起した(当庁平成○年(行ウ)第○号。以下「市議待遇 - 5 -者訴訟」という。)。 神戸地方裁判所は上記請求を一部認容する判決を言い渡したところ,神戸市長が控訴を提起し,市議待遇者訴訟の原告である住民らが控訴審においても阿部弁護士に訴訟委任をして争い,大阪高等裁判所は控訴を棄却する判決を言い渡した。神戸市長は,最高裁判所に上告及び上告受理の申立てをしたが,上告棄却及び上告受理申立て不受理決定を受け,前記控訴審判決が確定した。 市議待遇者訴訟の請求額は総額2486万3503円及びこれに対する遅延損害金であり,判決認容額は363万1740円及びこれに対する遅延損害金であり,上記判決の結果により被告がBから回収した額は392万1284円である。 エ原告らは,阿部弁護士に訴訟委任して,別の神戸市の住民と共同し 363万1740円及びこれに対する遅延損害金であり,上記判決の結果により被告がBから回収した額は392万1284円である。 エ原告らは,阿部弁護士に訴訟委任して,別の神戸市の住民と共同して,慰安会訴訟,教員慰安会訴訟及び市議待遇者訴訟について,被告に対し,地方自治法242条の2第12項に基づき,弁護士報酬の範囲内の相当額の支払を求める訴えを提起した(当庁平成○年(行ウ)第○号)。 神戸地方裁判所は,阿部弁護士の報酬の範囲内の相当額は,慰安会訴訟について390万円,教員慰安会訴訟について190万円,市議待遇者訴訟について50万円の合計630万円と判断し,請求を一部認容する判決を言い渡し,同判決は確定した。 (3) 基本事件の審理等ア基本事件の第1審における争点は,①本件組合が本件条例上の組合に当たるか,②本件組合に対して,本件条例に基づき,支出額若しくは支出見込み額又は不足額等に基づく積算をしないで補助金を交付したことが一律違法であるか等,③(ア)本件組合による補助金の使途に応じて,補助金の交付に違法となる部分があるか,(イ)それ故に本件組合が法律上の原因なく補助金を不当に利得していることになる部分があるか,(ウ)神戸市長の - 6 -過失の有無,(エ)神戸市の損害及び本件組合の不当利得の額,(オ)本件組合が悪意の受益者であるかであり,③(ア)の争点においては,本件組合が行う20以上の事業の違法性が争点となった。(甲6)第1審裁判所は,①本件組合が本件条例上の組合に当たる,②補助金の交付が一律違法になることはないと判示した上で,③(ア)本件組合が行う事業のうち,職員勤続慰安会事業(勤続15年,25年及び35年の職員に対して,それぞれ額面3万円,10万円及び5万円の旅行クーポン券を交付する になることはないと判示した上で,③(ア)本件組合が行う事業のうち,職員勤続慰安会事業(勤続15年,25年及び35年の職員に対して,それぞれ額面3万円,10万円及び5万円の旅行クーポン券を交付する事業)及び永年組合員祝金事業が給与条例主義に反し違法であって,目的外支出にあたる,(イ)したがって,本件組合は上記両事業に係る補助金相当額を不当に利得したこととなり,事後的に神戸市に返還する義務を負う,(ウ)C及びBに過失が認められる,(エ)本件組合の不当利得額は両事業の合計の半額である1億2502万円である(両事業の財源の半分は神戸市が補助金の交付により負担している)が,神戸市の損害には本件組合の不当利得額は含まれず,本件不当利得額に対する遅延損害金である1523万8642円のみが神戸市の損害である,(オ)本件組合が悪意の受益者であるといえない,と判示した。さらに,第1審裁判所は,基本事件原告のうち2名について,阿部弁護士の訴訟代理権があるとはいえないとして上記2名の訴えを却下し,基本事件原告のうち死亡した2名の訴えについて訴訟終了宣言をした。(甲6)イ基本事件の控訴審では,上記①ないし③の争点に加え,基本事件原告が本件組合に対し,本件組合が神戸市から受け取った補助金(全額)について不当利得として事後的に神戸市に返還すべき義務を負うに至ったとしても,不当利得返還請求の義務付けを求める予備的請求を追加したことから,④予備的請求に係る訴えの変更の許否及び適法な監査請求前置の有無が争点に加えられ,さらに,被告が主位的請求についても適法な監査請求前置がない旨主張したことから,⑤主位的請求に係る適法な監査請求前置 - 7 -の有無が争点に加えられた。(甲7)控訴審裁判所は,⑤について適法な監査請求を経ているとした上で, 求前置がない旨主張したことから,⑤主位的請求に係る適法な監査請求前置 - 7 -の有無が争点に加えられた。(甲7)控訴審裁判所は,⑤について適法な監査請求を経ているとした上で,①及び②について第1審裁判所の結論を維持した。そして,③につき,(ア)本件組合が行う事業のうち職員勤続慰安会事業のみが給与条例主義に反し違法である,(イ)本件組合に対する補助金の支出のうち,同事業の財源となる部分の支出もまた違法である,(ウ)Bは違法な支出部分に係る支出命令を阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,(エ)同事業の半額が補助金を財源としていることから,同事業に係る支出金8039万円の半額である4019万5000円が神戸市の損害額であり本件組合の不当利得額でもある,(オ)本件組合が悪意の受益者であるとはいえないと判示し,④の争点については判断の必要がないとした。(甲7)ウ基本事件原告が第1審で提出した訴状,請求の趣旨変更の申立書,準備書面の通数は18通,控訴審で提出した答弁書,附帯控訴状,準備書面等は8通であった。また,提出された書証の数は,第1審,控訴審を合わせて,基本事件原告提出のもの(甲号証)が42点,神戸市長提出のもの(乙号証)が36点であった。(争いなし)エ基本事件の口頭弁論期日(判決言渡期日を除く。)の回数は,第1審が13回,控訴審が3回であった。第1審における第1回ないし第8回までの口頭弁論期日は,慰安会訴訟,教員慰安会訴訟又は市議待遇者訴訟のいずれかの期日と同一期日に開かれた。(争いなし)オ基本事件において,尋問が行われることはなかった。(争いなし)カ原告Eらの役割基本事件の訴訟追行に必要な資料収集のための情報公開手続は,原告Eがこれを行っていた。 基本事件に係る監査請求は ,尋問が行われることはなかった。(争いなし)カ原告Eらの役割基本事件の訴訟追行に必要な資料収集のための情報公開手続は,原告Eがこれを行っていた。 基本事件に係る監査請求は,阿部弁護士ではなく原告ら本人がこれを行った。 - 8 -基本事件原告が届け出た送達場所は原告Eの自宅であった。 原告E及び同Fは,阿部弁護士とともに,基本事件の期日に出頭していた。 記者会見等報道機関に対する対応を行ったのは,阿部弁護士ではなく,原告E及び同Fであった。(以上,カについて争いなし。)(4) 原告らの阿部弁護士に対する訴訟委任に関する合意原告らと阿部弁護士とは,平成20年7月15日,基本事件について,①原告らは,基本事件に勝訴した場合,地方自治法242条の2第12項に基づき,被告に対して弁護士報酬の範囲内の相当額を請求して,裁判所が認容した額を阿部弁護士に支払うこと,②原告らは,上記相当額として,被告に対し,従前の東京弁護士会の報酬基準(以下「本件報酬規定」という。)に定められた成功報酬のみを請求すること(経済的利益の額が300万円以下の部分は経済的利益の額の16%,300万円を超え3000万円以下の部分は経済的利益の額の10%,3000万円を超え3億円以下の部分は経済的利益の額の6%を成功報酬とする。),③原告らは,阿部弁護士に対し,被告に対する弁護士報酬の範囲内の相当額(本件報酬規定による成功報酬)の支払請求を委任するとともに,被告がこれに応じない場合における上記相当額支払請求事件の訴訟委任をすることとし,その際に改めて委任状を交付することを合意した。(甲1)(5) 被告に対する支払請求ア阿部弁護士は,「請求書兼和解の申し出」と題する平成24年1月1日付け書面(甲3。以下「本件請求書」と の際に改めて委任状を交付することを合意した。(甲1)(5) 被告に対する支払請求ア阿部弁護士は,「請求書兼和解の申し出」と題する平成24年1月1日付け書面(甲3。以下「本件請求書」という。)を神戸市長に送付した。 本件請求書には,地方自治法242条の2第12項に基づき,原告らに代理して弁護士報酬の範囲内の相当額の支払を求める旨,その額は本来であれば440万円に加えて遅延損害金となるが,400万円での和解を提案する旨,和解が成立しなければ訴訟を提起せざるを得ない旨が記載されて - 9 -いる。(甲3)イ神戸市長は,同年2月24日ころ,阿部弁護士に対し,金額の相当性の担保等の観点から阿部弁護士の請求には応じられないと回答した。(甲4)(6) 本件訴訟の提起ア原告らは,同年12月10日,本件訴訟を提起した。(当裁判所に顕著)イ阿部弁護士は,本件訴訟について,原告らが阿部弁護士に対して訴訟委任する旨の平成23年2月16日付け訴訟委任状及び平成25年1月8日付け訴訟委任状を当裁判所に提出した。(当裁判所に顕著) 3 本件における争点は,以下の4つである。(以下,「12項請求権」とは住民訴訟に勝訴した住民の普通地方公共団体に対する地方自治法242条の2第12項に基づく請求権をいい,「弁護士報酬請求権」とは弁護士の上記住民に対する委任契約に基づく報酬請求権をいう。)(1) 原告らの被告に対する12項請求権が時効により消滅したか(12項請求権が,①地方自治法236条1項の適用を受けず,かつ,②民法172条1項の適用を受けるといえるか)(争点1)(2) 阿部弁護士の原告らに対する弁護士報酬請求権が時効により消滅していることから,「報酬を支払うべきとき」(地方自治法242条の2第12項)に当た 1項の適用を受けるといえるか)(争点1)(2) 阿部弁護士の原告らに対する弁護士報酬請求権が時効により消滅していることから,「報酬を支払うべきとき」(地方自治法242条の2第12項)に当たらないといえるか(争点2)(3) 原告らの被告に対する12項請求権の行使が権利濫用により許されないといえるか(争点3)(4) 原告らが阿部弁護士に支払うべき弁護士報酬額の範囲内で,相当と認められる額(以下「本件報酬相当額」という。)はいくらか(争点4) 4 争点1に対する当事者の主張【被告の主張】 - 10 -(1) 地方自治法236条1項は,国の権利義務を早期に決済する必要があるなどの行政上の便宜を考慮する必要がある金銭債権であって他に時効期間につき特別の規定のないものについて適用されるところ,12項請求権は,地方自治法に基づくからといって債権の内容上,公法上の請求権であるとはいえない上,租税や社会保険等のように多数の者に対して時効の援用なく画一的処理をする必要があるという行政上の便宜を考慮する必要がなく,早期決済という趣旨に照らせば5年より短い2年の時効を排除する理由はない。 仮に,12項請求権が公法上の請求権であるならば,本件訴訟は実質的当事者訴訟ということになるところ,実質的当事者訴訟であれば,12項請求権には行政処分が介在していることになるが,法律上,そのような仕組みが採用されていないことは明らかであり,公法上の請求権を対象とする地方自治法236条1項の適用はない。 (2) 12項請求権は,文理上,「弁護士の職務に関する債権」(民法172条1項)に当たる。また,弁護士報酬請求権が2年で消滅するのに,これと表裏一体の関係にある12項請求権が2年を超えて残存するというのは不合理である。 文理上,「弁護士の職務に関する債権」(民法172条1項)に当たる。また,弁護士報酬請求権が2年で消滅するのに,これと表裏一体の関係にある12項請求権が2年を超えて残存するというのは不合理である。したがって,12項請求権は「弁護士の職務に関する債権」に当たる。 (3) そして,本件における12項請求権は,基本事件に係る最高裁判所の決定書が被告に送達された平成22年6月28日から起算して2年を経過した平成24年6月28日に時効消滅しており,被告は,平成25年3月1日,第1回口頭弁論期日において,答弁書を陳述して消滅時効を援用した。なお,本件請求書の送付を催告とみるとしても,催告から6か月を経過した後に本件訴訟が提起されたから,時効中断は生じていない。 【原告らの主張】(1) 公法と私法とを区別する立場に立てば,12項請求権は,地方自治法によって創設された公法上の債権であるから,地方自治法236条1項によ - 11 -り,その時効期間は5年であるし,仮に12項請求権が私法上の債権であるとしても,後述のとおり,12項請求権に民法172条1項の適用はなく,その時効期間は10年である。また,公法と私法とを区別しない立場に立てば,12項請求権は,地方自治法236条1項により,その時効期間は5年である。いずれの立場に立ったとしても,原告らの被告に対する12項請求権は時効消滅していない。 (2) 民法172条1項は,弁護士報酬請求権について,その額等を巡って種々の争いが生じる可能性があることから,依頼者をして長期間にわたって請求に対応させることのないよう,短期消滅時効を定めたものであるが,このような同条の趣旨は12項請求権には当てはまらない。また,12項請求権は地方自治法242条の2第12項によって創設された債権であって に対応させることのないよう,短期消滅時効を定めたものであるが,このような同条の趣旨は12項請求権には当てはまらない。また,12項請求権は地方自治法242条の2第12項によって創設された債権であって,弁護士報酬請求権とは性質も相手方も異なる全く別個の債権であるから,両者の時効期間が異なったとしても不合理ではない。したがって,12項請求権は「弁護士の職務に関する債権」(民法172条1項)には当たらない。 5 争点2に対する当事者の主張【被告の主張】(1) 本件における弁護士報酬請求権は,基本事件に係る最高裁判所の決定書が被告に送達された平成22年6月28日から起算して2年を経過した平成24年6月28日に時効が完成した。 (2)ア被告は,本件における弁護士報酬請求権の消滅により直接利益を受ける者であるから,上記消滅時効を援用する。 イ被告が上記消滅時効を援用できないとしても,阿部弁護士が本件における弁護士報酬請求権の時効を援用しないことや時効中断を主張することは,原告らの利益と相反するものであり,民法108条及び弁護士職務基本規程28条4号に反するから,当該主張は許されない。 (3) したがって,本件における弁護士報酬請求権は時効消滅したから,本件 - 12 -は「報酬を支払うべきとき」に当たらない。 【原告らの主張】原告らは,阿部弁護士に対し,弁護士報酬請求権につき,債務を承認し,その上で本件訴訟の提起を阿部弁護士に委任している。原告らは阿部弁護士に対する報酬の支払を拒絶しているわけではないから,原告らと阿部弁護士の利益が相反することはない。また,原告らは,阿部弁護士との間で,被告に対し12項請求権を行使して得た金額をもって原告らが阿部弁護士に支払う弁護士報酬とする旨合意しており いから,原告らと阿部弁護士の利益が相反することはない。また,原告らは,阿部弁護士との間で,被告に対し12項請求権を行使して得た金額をもって原告らが阿部弁護士に支払う弁護士報酬とする旨合意しており,被告の出捐分が阿部弁護士の弁護士報酬となるのだから,利益相反はない。 したがって,本件は「報酬を支払うべきとき」に当たる。 6 争点3に対する当事者の主張【被告の主張】住民訴訟は,住民が自己の個人的な権利利益の保護救済を求めて提起するものでなく,地方財政の適正な運営の確保を目的として住民全体の利益を図るために提起されるものである。12項請求権に対する支出が公金をもってまかなわれることに鑑みれば,住民訴訟に勝訴した住民らが,消滅時効完成前に弁護士報酬支払債務を承認して,本来支払う必要がなかった報酬を弁護士に支払おうとする場合には,弁護士は弁護士報酬請求権が時効によって消滅していることを説明して消滅時効の援用を促し,12項請求権の行使をしないで済むようにすべきであって,当該住民が弁護士に委任して12項請求権を行使することは権利の濫用に当たり,許されないというべきである。 そうすると,本件において,原告らが阿部弁護士に対し消滅時効完成前に弁護士報酬支払債務を承認した上で,阿部弁護士に委任して12項請求権を行使したことは権利の濫用に当たり,許されない。 【原告らの主張】本件が,前記5【原告らの主張】のとおり,「報酬を支払うべきとき」に当 - 13 -たる以上,12項請求権の行使は,地方自治法242条の2第12項に基づく適正,適法なものであり,阿部弁護士に説明義務違反はないし,原告らが阿部弁護士に委任して12項請求権を行使することは,何ら権利の濫用にならない。被告の主張を前提にすれば,原告らが時効 12項に基づく適正,適法なものであり,阿部弁護士に説明義務違反はないし,原告らが阿部弁護士に委任して12項請求権を行使することは,何ら権利の濫用にならない。被告の主張を前提にすれば,原告らが時効の援用を強要されることとなり,不合理である。 7 争点4に対する当事者の主張【原告らの主張】(1) 基本事件の判決認容額をもとに本件報酬規定の成功報酬を算定すると,消費税込みで440万4483円である。なお,被告は敗訴部分に係る事案の難易や労力を勘案すべきでないと主張するが,原告らが主張している本件報酬相当額は認容額を基準に算定しており,敗訴部分に係る事案の難易や労力を勘案したものではない。 (2) 被告は,基本事件における争点が先行する慰安会訴訟における争点と一部重複おり,それを斟酌すべきであると主張するが,基本事件においても原告らの主張に対し被告が反論して争点化したため,阿部弁護士も再反論の書面作成を余儀なくされた。また,被告は,基本事件における準備書面の作成を原告ら本人が担当していた可能性が高いと主張するが,阿部弁護士がこれを行っていた。なお,阿部弁護士が本件請求書において提示した400万円は和解の提案であって,本件相当報酬額がこれに拘束される理由はない。 (3) 基本事件原告が行った監査請求において,基本事件原告が主張の骨子をまとめて示すことができたのは,阿部弁護士が基本事件原告に助言をしたためであるし,監査請求における主張は,訴訟における主張よりも容易であるから,原告ら本人が監査請求を行ったことによって,訴訟における弁護士の労力が低減することはない。また,原告Eは,情報公開手続や書面の提出等,弁護士事務所の事務員が行うべき業務を自ら行ったにすぎない。さらに,基本事件の期日が慰安会訴訟と同一の期日に開かれて る弁護士の労力が低減することはない。また,原告Eは,情報公開手続や書面の提出等,弁護士事務所の事務員が行うべき業務を自ら行ったにすぎない。さらに,基本事件の期日が慰安会訴訟と同一の期日に開かれていたことによっ - 14 -て,阿部弁護士の労力が低減するものではない。加えて,法律解釈が問題になる基本事件においては,尋問が行われていないことを減額要素とすべきではない。 そもそも,原告らが主張する本件報酬相当額は,着手金を請求せずに控えめに算定したものであるし,被告がこれまでに弁護士に訴訟委任した事件について支払ってきた弁護士報酬に比べれば,本件における原告らの請求額は,極めて抑制的なものである。 【被告の主張】(1) 準備書面の通数や証拠の点数が多数に上ったのは,原告が,判決において違法と認定されなかった多数の事業の違法性を主張し,また,基本事件原告の一部について阿部弁護士の訴訟代理権の有無が争いとなったためである。基本事件原告の敗訴部分に係る事案の難易や労力は勘案すべきでない。 (2) 基本事件原告の勝訴部分については,先行する慰安会訴訟で違法性が判示されていた。また,原告ら本人が基本事件における文書作成の多くを行っていた可能性が高い。なお,阿部弁護士は,本件請求書において適正な報酬相当額として400万円の支払を請求するにとどめた以上,本件報酬相当額が400万円を超えることはない。 (3) その他,前記前提事実(3)エ,オ及びカの諸事情に照らすと,本件報酬相当額は相当程度減額されるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 争点1に対する判断(1) 地方自治法242条の2第12項において,住民訴訟を提起した住民が勝訴した場合に「相当と認められる額」の支払を普通公共団体に請求することができるとされてい 1 争点1に対する判断(1) 地方自治法242条の2第12項において,住民訴訟を提起した住民が勝訴した場合に「相当と認められる額」の支払を普通公共団体に請求することができるとされているのは,住民訴訟が,住民が自己の個人的な権利利益の保護救済を求めて提起するものではなく,地方財務行政の適正な運営を確保することを目的として,自己を含む住民全体の利益のために,いわば公益 - 15 -の代表者として提起するものであり,住民が勝訴した場合には,普通地方公共団体が勝訴による利益(財務会計上の違法な行為又は怠る事実が防止され又は是正されるという利益)を受けることとなる以上,住民が勝訴するために要した費用を普通地方公共団体が負担するのが衡平の理念にかなうからである。 12項請求権は,以上のような衡平の理念に照らして,地方自治法242条の2第12項によって創設された権利であって,公法上の債権であるから,地方自治法236条1項により,その消滅時効は5年であると解される。 (2) これに対し,被告は,12項請求権と弁護士報酬請求権とは表裏一体の関係にあるから,時効期間が異なるのは不合理であると主張する。しかしながら,12項請求権は前述のような衡平の理念に照らして地方自治法によって創設された権利であって,有償の委任契約に基づいて発生する弁護士報酬請求権とは,その性質が異なる。また,12項請求権は,住民が契約関係にない普通地方公共団体に対して行使するものであり,弁護士が委任契約を締結した依頼者に対して行使する弁護士報酬請求権とは,行使の主体も相手方も異なる。さらに,12項請求権は,委任契約で定められた報酬額のうち,「相当と認められる額」に限って認められるものである点においても,弁護士報酬請求権とは異なる。以上のように,12 使の主体も相手方も異なる。さらに,12項請求権は,委任契約で定められた報酬額のうち,「相当と認められる額」に限って認められるものである点においても,弁護士報酬請求権とは異なる。以上のように,12項請求権は,その性質,行使の主体及び相手方,行使できる額の点において,弁護士報酬請求権と異なるものであることに鑑みれば,弁護士報酬請求権と同一の時効期間とすべき理由は見出しがたく,被告の上記主張を採用することはできない。 また,被告は,仮に12項請求権が公法上の請求権であるならば,本件訴訟は実質的当事者訴訟ということになるところ,実質的当事者訴訟であれば,12項請求権には行政処分が介在していることになるが,法律上,そのような仕組みが採用されていないことは明らかであり,公法上の請求権を対 - 16 -象とする地方自治法236条1項の適用はないとも主張するが,公法上の法律関係において必ずしも行政処分が存するわけではなく,行政処分が介在していないからといって実質的当事者訴訟に当たらないとはいえず,被告の主張は的を射ない。 (3) したがって,本件における12項請求権が時効消滅したとの被告の主張を採用することはできない。 2 争点2に対する判断(1) 前記前提事実(6)イに照らすと,原告らは,平成23年2月16日ころ,本件訴訟について,阿部弁護士に対して訴訟委任したと認められるから,遅くとも同日までに阿部弁護士に対する弁護士報酬支払債務を承認したことは明らかである。 したがって,阿部弁護士の原告らに対する弁護士報酬請求権が時効消滅したとは認められないから,本件は「報酬を支払うべきとき」(地方自治法242条の2第12項)に当たる。 (2) これに対し,被告は,阿部弁護士が弁護士報酬請求権の時効中断を主張することは 消滅したとは認められないから,本件は「報酬を支払うべきとき」(地方自治法242条の2第12項)に当たる。 (2) これに対し,被告は,阿部弁護士が弁護士報酬請求権の時効中断を主張することは,原告らの利益と阿部弁護士の利益が相反し,民法108条及び弁護士職務基本規程28条4号に反するため,許されないと主張する。 しかしながら,前記前提事実(4)によれば,原告らと阿部弁護士は,阿部弁護士の報酬について,原告らが12項請求権を行使して被告から支払を受けた金額をもって原告らの阿部弁護士に対する報酬の支払に充てる旨を合意したのであり,実質的に原告らが阿部弁護士に負担する支払はなく,その限りで利益相反がないし,しかも,原告らは,12項請求権を行使する本件訴訟について阿部弁護士に対し訴訟委任して,阿部弁護士が12項請求権の発生要件たる「報酬を支払うべきとき」に当たる旨主張することを当然に容認しているのであって,そうである以上,原告らは阿部弁護士が弁護士報酬支払債務について時効中断した旨主張することを当然に容認しているというこ - 17 -とができる。したがって,阿部弁護士が時効中断を主張することによって,原告らの利益が害されるとはいえない。 そうすると,上記のとおり原告らが時効中断の主張を容認している以上,民法108条ただし書にいう本人の許諾があると考えられるし,弁護士職務基本規程28条にいう本人の同意があると考えられるから,時効中断の主張が民法108条及び弁護士職務基本規程28条に反するとはいえない。 したがって,被告の上記主張を採用することはできない。 3 争点3に対する判断被告は,地方財政の適正な運営の確保を目的とする住民訴訟の趣旨に照らせば,住民訴訟に勝訴した住民が,消滅時効完成前に弁護士報酬支払債務を承認して ことはできない。 3 争点3に対する判断被告は,地方財政の適正な運営の確保を目的とする住民訴訟の趣旨に照らせば,住民訴訟に勝訴した住民が,消滅時効完成前に弁護士報酬支払債務を承認して,本来支払う必要がなかった報酬を弁護士に支払おうとする場合,弁護士は住民に対し消滅時効の援用を促すなどすべきであり,当該住民が弁護士に委任して12項請求権を行使することは権利の濫用に当たると主張する。 そこで検討すると,被告の上記主張によれば,住民訴訟に勝訴した住民は自ら積極的に弁護士報酬支払債務を承認してはならず,その上,住民から依頼を受けた弁護士は,当該住民に対し弁護士報酬の支払を求めることができないことになり,結局のところ,弁護士報酬を回収する術を失う結果となるのであって,あまりに不合理といわざるを得ない。 そもそも,住民訴訟に勝訴した住民が住民訴訟を受任した弁護士に報酬を支払うべきとき,報酬の全部又は一部を普通地方公共団体が負担するのは,住民が上記住民訴訟に勝訴した結果,普通地方公共団体がその勝訴による利益を受けることとなる以上,住民が勝訴するために要した費用を普通地方公共団体が負担するのが衡平の理念にかなうからであり,当該住民が上記住民訴訟における弁護士報酬支払債務を承認して12項請求権を行使することは,地方自治法242条の2第12項が当然に予定するものであって,弁護士報酬支払債務を負う住民が弁護士に委任して12項請求権を行使することは住民訴訟の目的に - 18 -何ら反するものではない。 したがって,被告の上記主張は失当である。 4 争点4に対する判断(1) 前記前提事実(4)のとおり,原告らと阿部弁護士とは,本件報酬規定に従って算出された成功報酬額を地方自治法242条の2第12項所定の「その範囲内で相当と認め 4 争点4に対する判断(1) 前記前提事実(4)のとおり,原告らと阿部弁護士とは,本件報酬規定に従って算出された成功報酬額を地方自治法242条の2第12項所定の「その範囲内で相当と認められる額」として,原告らが被告に請求し,被告から支払われた同額を阿部弁護士に支払うことを合意した。 基本事件の判決の結果回収された額は,4691万2445円であり,これを本件報酬規定に当てはめると,成功報酬額は440万4483円(消費税込み)となる。 (2) ところで,地方自治法242条の2第12項所定の「相当と認められる額」とは,住民訴訟において住民から訴訟委任を受けた弁護士が当該訴訟のために行った活動の対価として必要かつ十分な程度として社会通念上適正妥当と認められる額をいい,その具体的な額は,地方自治法242条の2第1項4号の規定による住民訴訟に勝訴した住民が12項請求権を行使した場合,当該訴訟における事案の難易,弁護士が要した労力の程度及び時間,認容された額,判決の結果普通地方公共団体が回収した額,住民訴訟の性格その他諸般の事情を総合的に勘案して定められるべきものと解するのが相当である(最高裁平成21年4月23日第一小法廷判決・民集63巻4号703頁参照)。 (3) そこで,上記説示にしたがって,本件報酬相当額を検討する。 ア認容額及び回収額前記前提事実のとおり,基本事件における判決認容額は4019万5000円及びこれに対する遅延損害金であり,判決の結果4691万2445円を回収したのであるから,被告は現実にこれだけの経済的利益を受けているのであり,本件報酬相当額の認定に当たっては,これら認容額及び - 19 -回収額は重要な考慮要素となるというべきである。 イ基本事件における事案の難易基本事件における争 受けているのであり,本件報酬相当額の認定に当たっては,これら認容額及び - 19 -回収額は重要な考慮要素となるというべきである。 イ基本事件における事案の難易基本事件における争点は,前記前提事実(3)ア及びイのとおりであり,基本事件における中心的な争点は,本件組合が行う20以上の事業の違法性である。そして,前記前提事実(3)イのとおり,給与条例主義に反し違法であると判示された事業は,職員勤続慰安会事業(勤続年数15年,25年及び35年の職員に対し,それぞれ額面3万円,10万円及び5万円の旅行クーポン券を交付する事業)のみであったところ,前記前提事実(2)アに照らすと,神戸市が同種の事業を行った事案について当該事業が給与条例主義に反し違法であると判示した慰安会訴訟第1審判決が平成18年3月23日に言い渡され,その後同判決を維持した慰安会訴訟控訴審判決が平成19年10月13日に確定していたから,阿部弁護士が基本事件において上記職員勤続慰安会事業の違法性を主張するに当たっては慰安会訴訟の判決の論旨を踏まえることが可能であったと考えられる。 しかしながら,基本事件において前記認容額に至るためには,職員勤続慰安会事業の違法性という争点のみならず,Bの過失の有無,本件組合の不当利得額,被告の損害額といった基本事件に固有の争点について,基本事件原告の主張が採用される必要があり,これら固有の争点に対する主張・立証が容易なものであったとはいえない。 以上の事情に鑑みれば,基本事件における事案の難易については,本件報酬相当額の増・減額要素のいずれとしても重視することは相当でないというべきである。 ウ阿部弁護士が要した労力の程度及び時間(ア) 基本事件は,第1審で13回,控訴審で3回の口頭弁論期日(判決言渡期日を除く。)を要 のいずれとしても重視することは相当でないというべきである。 ウ阿部弁護士が要した労力の程度及び時間(ア) 基本事件は,第1審で13回,控訴審で3回の口頭弁論期日(判決言渡期日を除く。)を要し,訴え提起から判決確定まで約5年を要した事案であって,基本事件に要した阿部弁護士の労力は小さくない。他方 - 20 -で,違法と認定された職員勤続慰安会事業以外の多数の事業の違法性に関する審理のために審理が長期化したとも考えられるから,審理期間については,本件報酬相当額の増・減額要素のいずれとしても重視することは相当でない。 なお,この点につき,被告は,基本事件における期日が慰安会訴訟と同一期日に開かれていたこと,原告本人が常に期日に出頭して陳述を行っていたことを減額要素として指摘するが,住民訴訟を担当する弁護士の負担の中で期日に出頭すること自体の負担が占める割合は決して大きくないと考えられるし,原告E及び同Fが期日において陳述を行うことによって弁護士の労力が大きく低減するものでもないと考えられるから,被告が指摘する事情は減額要素としては限定的なものである。 (イ) 基本事件原告が第1審で提出した訴状,請求の趣旨変更の申立書,準備書面の通数は18通,控訴審で提出した答弁書,附帯控訴状,準備書面等は8通であり,提出された書証の数は,第1審,控訴審を合わせて,基本事件原告提出のもの(甲号証)が42点,神戸市長提出のもの(乙号証)が36点であり,主張書面及び書証の提出に係る阿部弁護士の労力は小さくないと考えられる。他方で,違法と認定された職員勤続慰安会事業以外の多数の事業の違法性に関する主張・立証にも多くの労力が割かれたと推察されることにも照らすと,主張・立証に係る阿部弁護士の労力については,本件報酬相当額の増・減額要素のいずれとして 続慰安会事業以外の多数の事業の違法性に関する主張・立証にも多くの労力が割かれたと推察されることにも照らすと,主張・立証に係る阿部弁護士の労力については,本件報酬相当額の増・減額要素のいずれとしても重視することは相当でないと考えられる。 なお,この点につき,被告は,原告ら本人が基本事件における文書作成の多くを行っていた可能性が高いと主張するが,原告らはそれを強く否認している上,本件訴訟において,基本事件で提出された書面は訴状(乙5)のみが提出されているにすぎず,被告の主張を裏付ける的確な証拠はないといわざるを得ないから,被告の主張を採用することはでき - 21 -ない。 (ウ) 基本事件における立証に必要な資料収集のための情報公開手続は,阿部弁護士ではなく,原告Eが行ったことは,前記前提事実(3)カのとおりである。基本事件では,神戸市が本件組合に支出した補助金の使途の違法性等が争点になっており,その使途を把握するために必要な資料は行政機関内部に保管されているのが通常であるから,基本事件を追行する上で情報公開手続の持つ意義は大きいというべきである。したがって,基本事件の証拠収集については,阿部弁護士の労力を限定的に評価せざるを得ない。 (エ) その他被告が減額要素として主張する各事情について基本事件において原告Eの自宅が原告らの送達場所として届け出られていたが,そのことによって阿部弁護士の労力が大きく低減されるとは考えがたく,減額要素としては限定的なものである。また,基本事件において尋問が行われることはなかったものの,前記のとおり基本事件における争点は法律解釈の問題であるから,尋問が行われていないことを減額要素として過大に評価することはできない。 被告は,阿部弁護士ではなく原告ら本人が監査請求を行ったことも減 記のとおり基本事件における争点は法律解釈の問題であるから,尋問が行われていないことを減額要素として過大に評価することはできない。 被告は,阿部弁護士ではなく原告ら本人が監査請求を行ったことも減額要素として指摘するが,そもそも前記の「相当と認められる額」は,訴訟追行の対価である報酬の額の範囲内で認められるものにすぎないから,阿部弁護士が監査請求を受任しなかったことを減額要素として評価することはできない。また,被告は,阿部弁護士が報道機関に対する対応を行わなかったことも減額要素となる旨指摘するが,一般的にみて,住民訴訟を提起すれば報道機関への対応を要するのが通常であるとはいえず,報道機関への対応が住民訴訟を受任した弁護士が通常行うべき業務であるとはいえないから,被告が指摘する事情を減額要素として評価することはできない。 - 22 -エ住民訴訟の性格住民訴訟は,住民が自己の個人的な権利利益の保護救済を求めて提起するものではなく,普通地方公共団体の財務行政の適正な運営を確保することを目的として自己を含む住民全体の利益のために提起するものであるから,仮に依頼者と弁護士との間で高額の報酬を合意していても,同じように普通地方公共団体に高額の相当額の支払義務を課すことは相当ではない。 オまとめ以上のとおり,事案の難易,弁護士が要した労力の程度及び時間,認容された額,判決の結果普通地方公共団体が回収した額,住民訴訟の性格その他諸般の事情を総合的に勘案すれば,本件報酬相当額は400万円と認めるのが相当である。 5 結論したがって,被告は,原告らに対し,地方自治法242条の2第12項に基づき,400万円の支払義務を負う。そして,弁論の全趣旨によれば,阿部弁護士が原告らに代理して弁護士報酬相当額の支 結論 したがって,被告は,原告らに対し,地方自治法242条の2第12項に基づき,400万円の支払義務を負う。そして,弁論の全趣旨によれば,阿部弁護士が原告らに代理して弁護士報酬相当額の支払を求める旨を記載した本件請求書は,遅くとも平成24年1月5日に被告に到達したと認められる。 よって,原告らの請求は,被告に対し400万円及びこれに対する同月6日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官小西義博 - 23 - 裁判官遠藤浩太郎 裁判官和田山弘剛

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