平成14年2月27日宣告平成13年(わ)第149号,同第252号判決上記の者らに対する虚偽有印公文書作成,同行使被告事件について,当裁判所は,検察官山口浩,被告人Aの弁護人中尾晴一,被告人Bの弁護人中野敬一並びに被告人Cの主任弁護人高向幹範及び弁護人山崎辰雄各出席の上審理し,次のとおり判決する。 主文 被告人Cを懲役1年6か月に,同Aを懲役1年4か月に,同Bを懲役1年2か月に処する。 被告人3名に対し,この裁判が確定した日からそれぞれ3年間,その刑の執行を猶予する。 理由 (犯罪事実)被告人Cは,福岡県築上郡a町長であったもの,被告人Aは,同町税務課長であったもの,被告人Bは,同町総務課長であったものであるところ,被告人らは,同町助役D(平成13年5月18日死亡)及び同町福祉課長Eらと共謀の上,Fが同町に売却した同町g番地の土地(以下「本件土地」という。)の売却代金3308万4000円の譲渡所得に対する所得税の課税を免れさせるため,平成6年8月中旬ころ,同町h番地所在の同町役場において,行使の目的をもって,ほしいままに,真実は,Fに平成5年11月ころ本件土地の買取りの申出をし,同年12月24日ころ農産物加工所建設のため本件土地を買い受ける旨の売買契約を締結し,同月27日ころ上記売買代金として3308万4000円を支払ったものであるのに,Eが作成権限を有する公文書である「租税特別措置法施行規則第14条第7項第3号イに規定する書類の発行を予定している事業に関する説明書」と題する文書の事業の名称欄に「一般廃棄物(不燃物)処理施設建設工事」,資産の買取り等の申出の予定年月日欄に「平成6年10月」,同説明書 号イに規定する書類の発行を予定している事業に関する説明書」と題する文書の事業の名称欄に「一般廃棄物(不燃物)処理施設建設工事」,資産の買取り等の申出の予定年月日欄に「平成6年10月」,同説明書添付の「平成6年度a町一般会計歳入歳出予算書(抄本)」と題する文書の予算現額の公有財産購入費欄に「33,084(単位千円)」,同備考欄に「一般廃棄物(不燃物)処理施設用地購入費」などと記載し,上記説明書の同町長Cの名下に「a町長之印」と刻された職印を押捺し,もって,Eの職務に関し内容虚偽の公文書を作成した上,平成6年8月18日ころ,福岡県行橋市b町i番j号所在の行橋税務署において,これを同税務署上席調査官Gに提出して行使した。 (証拠) 省略(被告人Aの確定裁判)被告人Aは,平成10年6月18日,福岡高等裁判所において,虚偽有印公文書作成,同行使,単純収賄の罪により,懲役1年6か月,3年間執行猶予の言渡しを受け,その裁判は平成12年5月18日に確定したものであって,この事実は前科調書(乙13)及び判決書謄本(乙15)によって認められる。 (法令の適用) 1 被告人Aについて罰条平成7年法律第91号による改正前の刑法(以下「改正前の刑法」という。)65条1項,60条,156条,155条1項,158条1項科刑上の一罪改正前の刑法54条1項後段,10条により犯情の重い判示説明書にかかる虚偽有印公文書行使罪の刑で処断併合罪の処理改正前の刑法45条後段,50条刑の執行猶予改正前の刑法25条1項 2 被告人B及び同Cについて被告人両名につき併合罪の処理に関する改正前の刑法45条後段,50条を適用せず,被告人Bの訴訟費用につき刑事訴訟法181条1項ただし書を適用するほかは,被告人Aと同一の法令を適用する。 Cについて被告人両名につき併合罪の処理に関する改正前の刑法45条後段,50条を適用せず,被告人Bの訴訟費用につき刑事訴訟法181条1項ただし書を適用するほかは,被告人Aと同一の法令を適用する。 (量刑の理由) 1 本件は,被告人らが,a町が農産物加工所用地という名目で既に買収した土地について,そのままの名目では被買収者の譲渡所得に所得税が課税されるため,租税特別措置法上の特別控除を受けさせて譲渡所得税の課税を免れさせる目的で,同町助役らと共謀の上,税務署との事前協議に必要な同法施行規則第14条第7項第3号イに規定する書類の発行を予定している事業に関する説明書及び添付書類に,当該土地が一般廃棄物処理施設用地として買収予定である旨の虚偽の事実等を記載して内容虚偽の公文書を作成した上,税務署に当該文書を提出して行使した事案である。 2 本件犯行の動機は,町が計画する老人福祉センター建設予定地に隣接する本件土地の所有者の長男から水利権や日照権等の権利主張をされ,その要求に応じない場合は,同人から建設差止めの訴訟を起こされるなどして,同センター建設計画が遅延し,そうなれば補助金が打ち切られるなどして同計画がとん挫することをおそれたというものであるが,もとよりそのために違法行為が許されないのは当然であり,情状として過大に考慮することはできない。本件犯行は,犯行の一年近く前から,被告人らを含む町の幹部職員らによる綿密な協議を重ねて行われた,組織的,計画的かつ巧妙で悪質なものである。本件犯行は,公正かつ正確であるべき公文書に対する社会的信用を害し,ひいては厳正であるべき税務行政を誤らせたものであり,結果は重い。 3 本件犯行は,町の要職にある被告人らが,町民の信頼に背き,組織的に違法行為を敢行したものであって,被告人らの責任はいずれも大きいといわねばな 正であるべき税務行政を誤らせたものであり,結果は重い。 3 本件犯行は,町の要職にある被告人らが,町民の信頼に背き,組織的に違法行為を敢行したものであって,被告人らの責任はいずれも大きいといわねばならない。ことに被告人Cは,町の行政の最高責任者たる地位にあり,本件は他の共犯者らの発案,準備等にかかるものとはいえ,最終的には被告人Cの承認がなければ行い得なかったものであることにかんがみれば,その責任は共犯者らのそれと比べて重いというべきである。また,被告人Aは,本件と同種,同時期の虚偽有印公文書作成,同行使,収賄の罪により有罪の判決を宣告された確定裁判があり,公務員として法令を遵守する意識が鈍麻していたというほかはない。 4 しかし,本件犯行自体は,被告人らの利得を目的としたものではなく,老人福祉センター建設は被告人Cの町長就任以前から町の懸案事項であり,その建設が遅延し,建設計画がとん挫するようなことがあれば,町の福祉行政に支障が生ずる可能性もあったこと,被告人Cは本件犯行発覚後の町長選挙に落選し,被告人Aも前件で懲戒免職になったあと,更に本件発覚後団体役員を辞職せざるを得なくなるなど,一定の社会的制裁を受けており,被告人Bは既に町を辞職していること,被告人Bは,辞職後の苦しい生活の中から12万円の贖罪寄付をしていること,被告人らは本件について反省の情を示していることなど,被告人らのために酌むべき情状もある。 5 そこで,以上の情状を総合的に考慮した結果,本件については被告人らに対しいずれも刑の執行を猶予するのが相当であると判断し,主文のとおり量刑した。 (求刑各被告人につき懲役1年6か月)平成14年2月27日福岡地方裁判所小倉支部第1刑事部裁判長裁判官若宮利信裁判官 した。 (求刑各被告人につき懲役1年6か月)平成14年2月27日福岡地方裁判所小倉支部第1刑事部裁判長裁判官若宮利信裁判官川野雅樹裁判官坂本好司
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