令和元年6月6日判決言渡平成30年(ネ)第10088号特許権侵害行為差止等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成29年(ワ)第17791号)口頭弁論終結日平成31年4月25日判決 控訴人タカハタプレシジョン株式会社 訴訟代理人弁護士小宮司同小宮清同熊崎誠実同多田津雪同小宮憲同小宮圭香 被控訴人株式会社Toshin 被控訴人笛吹精工株式会社 被控訴人ら訴訟代理人弁護士鮫島正洋同山口建章 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人らは,原判決別紙被告ら物件目録1記載のマグネット歯車及び同歯車を使用した同目録2記載の流量計用指針ユニットを製造し,販売し,又は販売の申出をしてはならない。 3 被控訴人らは,その本店,営業所及び工場に存する原判決別紙被告ら物件目録1記載のマグネット歯車及び同歯車を使用した同目録2記載の流量計用指針ユニット並びにそれらの半製品(同目録1記載のマグネット歯車又は同歯車を使用した同目録2記載の流量計指針ユニットの構造を具備しているが,製品として完成していないもの)を廃棄せよ。 4 被控訴人らは,原判決別紙被告ら物件目録1記載のマ 1記載のマグネット歯車又は同歯車を使用した同目録2記載の流量計指針ユニットの構造を具備しているが,製品として完成していないもの)を廃棄せよ。 4 被控訴人らは,原判決別紙被告ら物件目録1記載のマグネット歯車及び同歯車を使用した同目録2記載の流量計用指針ユニットに係る原判決別紙設備目録1ないし8記載の各設備を除去せよ。 5 被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して5830万円及びこれに対する平成29年6月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(略称は,特に断りのない限り,原判決に従う。) 1 事案の要旨本件は,発明の名称を「マグネット歯車及びその製造方法,これを用いた流量計」とする特許(特許第5554433号。請求項の数5。以下,この特許を「本件特許」といい,本件特許に係る特許権を「本件特許権」という。)の特許権者である控訴人が,原判決別紙被告ら物件目録1記載のマグネット歯車(以下「被告マグネット歯車」という。)が本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲に属し,被告らによる被告マグネット歯車及び同歯車を使用した同目録2記載の流量計用指針ユニット(以下「被告ユニット」といい,また,被告マグネット歯車と被告ユニットを併せて「被告製品」という。)の製造,販売が本件特許権の侵害に当た る旨主張して,被控訴人らに対し,特許法100条1項及び2項に基づき,被告製品の製造,販売等の差止め及び被告製品,半製品等の廃棄を求めるとともに,本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償として5830万円及びこれに対する平成29年6月9日(不法行為の後である訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 原判決は,本件発明 て5830万円及びこれに対する平成29年6月9日(不法行為の後である訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 原判決は,本件発明は,本件特許出願前に日本国内において公然実施をされ,又は公然知られた,原告メータ1(「器物番号08-646432・型式番号L9910号21」の水道メータ)及び原告メータ2(「器物番号08-646437・型式番号L9910号21」の水道メータ)に組み込まれた原告マグネット歯車に係る発明と同一の発明であるから,本件発明に係る本件特許は,新規性欠如の無効理由があり,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるので,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の請求は,いずれも理由がないとして,これを棄却した。 控訴人は,原判決を不服として本件控訴を提起した。 2 前提事実次のとおり訂正するほか,原判決「事実及び理由」の第2の2記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決3頁10行目の「被告Toshin」を「被控訴人株式会社Toshin(以下「被控訴人Toshin」という。)」と,同頁12行目の「被告笛吹精工」を「被控訴人笛吹精工株式会社(以下「被控訴人笛吹精工」という。)」と改める。 (2) 原判決3頁22行目から4頁8行目までを次のとおり改める。 「本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである(甲5)。 【請求項1】回転軸線を有する軸部,前記軸部の一端側の外周面に複数の歯を有し,噛 みあう相手歯車に回転を伝達する歯部,前記軸部の他端側に軸線方向に突設されたカシメ用突起,からなる樹脂製の歯車と,前記歯車と一体的に回転するマグネット部材と,からなり,前記マグネット部材が 車に回転を伝達する歯部,前記軸部の他端側に軸線方向に突設されたカシメ用突起,からなる樹脂製の歯車と,前記歯車と一体的に回転するマグネット部材と,からなり,前記マグネット部材が貫通孔を有し,前記軸部の他端側に前記貫通孔を挿通させると共に,前記貫通孔から突出した前記カシメ用突起の突出部を前記マグネット部材の挿通側から熱カシメして,前記軸部の回転軸線方向に移動可能に間隙を確保して保持された,ことを特徴とするマグネット歯車。」(3) 原判決5頁1行目の「(なお,」から3行目末尾までを「(甲6ないし10,13)。」と,同頁6行目の「同年」を「平成29年」と改める。 (4) 原判決5頁12行目から14行目までを次のとおり改める。 「(7) 被告マグネット歯車は,本件発明の構成要件A,B,D及びFを充足する。」 3 争点(1) 被告マグネット歯車の本件発明の技術的範囲の属否ア構成要件Cの充足性(争点1-1)イ構成要件Eの充足性(争点1-2)(2) 無効の抗弁の成否ア特許法29条1項1号又は2号による新規性欠如の有無(争点2-1)イ明確性要件違反の有無(争点2-2)(3) 損害額(争点3)第3 争点に関する当事者の主張次のとおり訂正し,当審における当事者の主張を付加するほか,原判決「事実及び理由」の第3記載のとおりであるから,これを引用する。 1 原判決の訂正(1) 原判決5頁25行目を「1 被告マグネット歯車の本件発明の技術的範囲 の属否」と改める。 (2) 原判決6頁1行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「 被告製品の構成は,原判決別紙被告ら物件等説明書記載のとおりである。 そして,被告製品のうち,」(3) 原判決7頁7行目末尾に行を改めて次のとおり加える 行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「 被告製品の構成は,原判決別紙被告ら物件等説明書記載のとおりである。 そして,被告製品のうち,」(3) 原判決7頁7行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「 そして,被告マグネット歯車が本件発明の構成要件AないしD及びFを充足することは前述のとおりであるから,被告マグネット歯車は,本件発明の構成要件をすべて充足し,その技術的範囲に属する。」(4) 原判決7頁12行目から14行目までを次のとおり改める。 「2 無効の抗弁の成否(1) 特許法29条1項1号又は2号による新規性欠如の有無(争点2-1)について」(5) 原判決7頁19行目の「同歯車」を「原告マグネット歯車」と,同頁20行目の「出願前」を「本件特許出願前」と,同頁21行目の「ものであり」を「原告マグネット歯車に係る発明と同一の発明であり」と改め,同行目の「2号」の次に「,123条1項2号」を加える。 (6) 原判決10頁10行目から11行目にかけての「本件明細書」を「本件特許出願の願書に添付した明細書(以下,図面を含めて「本件明細書」という。 甲5)」と改める。 (7) 原判決12頁15行目の「ものであるから」を「原告マグネット歯車に係る発明と同一の発明であるから」と改める。 (8) 原判決16頁10行目の「範囲」を「範囲の請求項1」と,同頁13行目の「本件特許権にかかる特許出願」を「本件特許出願」と,同頁17行目の「本件特許権にかかる特許請求の範囲」を「本件特許の特許請求の範囲の請求項1」と改める。 2 当審における当事者の主張(争点2-1(特許法29条1項1号又は2号に よる新規性欠如の有無)に関するもの)〔控訴人の主張〕(1) 原告マグネット歯車が構成要件Eの構成を備えていないこと原判決は,原告マ の主張(争点2-1(特許法29条1項1号又は2号に よる新規性欠如の有無)に関するもの)〔控訴人の主張〕(1) 原告マグネット歯車が構成要件Eの構成を備えていないこと原判決は,原告マグネット歯車は,本件特許出願前の平成21年時点において,マグネット歯車における軸部の回転軸線方向に移動可能に間隙を有していたと認められるから,本件発明の構成要件Eの「前記軸部の回転軸線方向に移動可能に間隙を確保して保持された」との構成を具備していた旨判断したが,以下のとおり誤りである。 ア原告通水実験について乙2には,乙2の事実実験(平成29年8月3日)時点における原告マグネット歯車の回転軸線方向の移動量(間隙)は,原告メータ1について0.08mm,原告メータ2について0.11mmであることの記載があるが,原告通水実験(甲15)の結果によれば,対象となる10個の実験用マグネット歯車(できる限りマグネット歯車における間隙がないように製作した実験用マグネット歯車5個及びそれらが組み込まれた各指針ユニット(「無1」~「無5」),通常どおりに製作した実験用マグネット歯車5個及びそれらが組み込まれた各指針ユニット(「有1」~「有5」))において,通水実験前後でマグネット歯車の回転軸線方向の「間隙」が最大で「0.127mm」(「無1」)拡大したことに照らすと,原告マグネット歯車の回転軸線方向の間隙は約8年にわたる原告マグネット歯車の使用による経年劣化により生じた可能性が極めて高いから,乙2の上記記載から,平成21年の原告各メータの製造時点に上記間隙が存在したことを推認することはできない。 この点について原判決は,①「無1」~「無5」のマグネット歯車にも間隙があり,全て間隙のある実験用マグネット歯車を使用した原告通水実験の測定結果は,軸部の回転 したことを推認することはできない。 この点について原判決は,①「無1」~「無5」のマグネット歯車にも間隙があり,全て間隙のある実験用マグネット歯車を使用した原告通水実験の測定結果は,軸部の回転軸線方向の間隙がないマグネット歯車の経年 劣化による摩耗の程度を正確に示したものということはできない,②熱カシメ機の熱カシメホーンを下降させて,熱カシメ用の突起を上から潰した後,熱カシメホーンを反転上昇させると,熱カシメの突起が応力によって若干戻ることから,軸部の回転軸線方向の間隙が生じると考えられるところ(乙13),原告通水実験において,できる限り間隙がないように「無1」~「無5」が製作されたにもかかわらず,上記のとおりの間隙が生じていることは,控訴人の熱カシメ機による熱カシメの際に軸部の回転軸線方向の間隙が生じることは不可避であることを示すものであり,平成21年当時も同様に軸部の回転軸線方向の間隙が生じることは不可避であったと推認される,③原告通水実験のうち,間隙が0.127mm拡大した「無1」のマグネット歯車及び間隙が0.124mm拡大した「有4」のマグネット歯車について,その写真(写真27と28,写真43と44)を参照すると,実験前後で測定箇所が異なると考えられるから,測定値の正確性,信用性には疑義があり,これらを除外すると,原告通水実験における実験前後の間隙の差は,最大で0.064mm(「無5」)にとどまる,④原告通水実験における積算流量は2500㎥前後であるのに対し,原告各メータの8年間の実際の積算流量(原告メータ1につき562.4㎥,原告メータ2につき420.4㎥)は原告通水実験の流量の5分の1程度にすぎないことに照らすと,原告マグネット歯車の使用による経年劣化の程度は,原告通水実験で使用された歯車の同実験前後の間隙の数 ㎥,原告メータ2につき420.4㎥)は原告通水実験の流量の5分の1程度にすぎないことに照らすと,原告マグネット歯車の使用による経年劣化の程度は,原告通水実験で使用された歯車の同実験前後の間隙の数値差より更に小さくなる可能性があるとして,原告通水実験の結果から平成21年の原告各メータの製造時点に上記間隙が存在しなかったということはできない旨判断した。 しかしながら,上記①の点については,そもそも,軸部の回転軸線方向の間隙がないマグネット歯車であっても,余程の特殊な加工をしない限り,約8年程度にわたる使用により経年劣化しないマグネット歯車など存在し ないから,原判決の上記判断は理由がない。 上記②の点については,熱カシメの突起が応力によって若干戻ることからといって直ちに軸部の回転軸線方向の間隙が生じるわけではなく(甲19),実際,マグネット歯車における軸部の回転軸線方向に移動可能な間隙が存在しないマグネット歯車は存在することからすると(甲20の「柏原計器工業株式会社製の水道メータ」),熱カシメ加工において間隙のないマグネット歯車を製造することは可能であり,また,控訴人においては現行設備が海外に存在しており,平成21年当時の設備が存在しないため,原告通水実験では,便宜上間隙が生じているものを利用したにすぎないから,原判決の上記判断は理由がない。 上記③の点については,原告通水実験の実験前後において測定対象それ自体は変わっておらず,また,経年劣化を作為的に短期間で生じさせているため,写真上で測定箇所があたかも変わっているかのように見えるだけであるから,原判決の上記判断は理由がない。 上記④の点については,水道メータは設置される場所によって当然積算流量は変動すること(例えば,設置場所が新宿区の歌舞伎町の飲食店などの水道を多量に使 けであるから,原判決の上記判断は理由がない。 上記④の点については,水道メータは設置される場所によって当然積算流量は変動すること(例えば,設置場所が新宿区の歌舞伎町の飲食店などの水道を多量に使用する場所であれば,その水道メータにおいて積算される流量も変動する。),原告各メータはメータが1回転する流量が「9999㎥」であることからすると,原告各メータに表示された積算流量(原告メータ1につき562.4㎥,原告メータ2につき420.4㎥)が,1回転をする前なのか,した後なのか判断できないから,原判決の上記判断は理由がない。 以上によれば,原告通水実験の結果から平成21年の原告各メータの製造時点に間隙が存在しなかったということはできないとの原判決の判断は誤りである。 イ原告作業標準について 原判決は,①平成13年作成の原告作業標準(乙3,10)によれば,その作成当時,控訴人は熱カシメ後に回転軸線方向に直交する左右方向に間隙が生じるように作業工程を管理していたものと認められること,原告マグネット歯車の軸部の回転軸線方向(上下方向)の間隙がなくマグネットが固定されている場合,マグネットが回転軸線方向と直交する方向に移動することが困難であることに照らすと,左右にガタつきがあることが確認されたマグネット歯車には,回転軸線方向(上下方向)にも間隙を設けられているということができる,②原告作業標準の「管理点」欄の「カシメ後の球R先端部からカシメリブ先端までの寸法:0.6~0.9」との記載は,カシメ後の球R先端部からカシメリブ先端までの寸法に0.3mmの幅があり,回転軸線方向に間隙が生じることを前提とするものであるとして,控訴人は,原告作業標準の作成された同年頃には,回転軸線方向(上下方向)の間隙のあるマグネット歯車を製作し,同書類 0.3mmの幅があり,回転軸線方向に間隙が生じることを前提とするものであるとして,控訴人は,原告作業標準の作成された同年頃には,回転軸線方向(上下方向)の間隙のあるマグネット歯車を製作し,同書類を阪神計器に交付した平成16年5月頃の時点においても同様であった旨判断した。 しかしながら,上記①の点については,そもそも,乙3は控訴人が作成した文書ではないし,回転軸線方向(上下方向)の間隙がない状態であっても,回転軸線方向に直交する左右方向においてガタつくことは当然ありうるから(例えば,ポリアセタールなどの合成樹脂を用いた場合において,そのポリアセタールの表面における摺動性(滑らかさ)が高ければ,当然,回転軸線方向に直交する左右方向においてガタつく。),左右にガタつきがあるからといって軸部の回転軸線方向の間隙が存在することを意味するものではなく,また,原告マグネット歯車の軸部の回転軸線方向(上下方向)の間隙がなくマグネットが固定されている場合,マグネットが回転軸線方向と直交する方向に移動することが困難であるとする証拠は存在しないから,原判決の上記判断は理由がない。 上記②の点については,カシメ後の球R先端部からカシメリブ先端まで の寸法に0.3mmの幅が生じたのは,球R先端部(先端球R部)の樹脂による形成において許容される公差であって,回転軸線方向に間隙が生じることを前提とするものではないから,原判決の上記判断は理由がない。 したがって,控訴人は原告作業標準の作成された平成13年頃には回転軸線方向(上下方向)の間隙のあるマグネット歯車を製作し,平成16年5月頃の時点においても同様であったとの原判決の判断は誤りである。 ウ甲17及び18について原判決は,控訴人が提出した甲17及び18の各図面は,原告各メータが製造さ 車を製作し,平成16年5月頃の時点においても同様であったとの原判決の判断は誤りである。 ウ甲17及び18について原判決は,控訴人が提出した甲17及び18の各図面は,原告各メータが製造された平成21年2月頃当時のものではないなどとして,上記各図面をもって原告マグネット歯車が回転軸線方向に移動可能な間隙を有していなかったということはできない旨判断した。 しかしながら,甲17は確かに平成22年10月頃作成されたものではあるが,平成21年頃までの技術から連続性を有するものであるから,甲17をもって回転軸線方向に移動可能な間隙はなかったということはできないと直ちに結論付けられるものではなく,このことは,甲18についても同様である。 したがって,原判決の上記判断は理由がない。 (2) 小括以上のとおり,原告マグネット歯車が平成21年時点において本件発明の構成要件Eの「前記軸部の回転軸線方向に移動可能に間隙を確保して保持された」との構成を具備していたことを認めることはできないから,原告マグネット歯車は,本件発明の構成要件Eを充足しない。 したがって,原告マグネット歯車に係る発明は本件発明と同一の発明であるとした原判決の判断は誤りである。 〔被控訴人らの主張〕(1) 原告マグネット歯車が構成要件Eの構成を備えていること 控訴人の主張は,原審で主張していた事項の繰り返しであって,原判決の判断に誤りはないから,控訴人の主張はいずれも理由がない。 なお,控訴人が挙げる甲20の「柏原計器工業株式会社製の水道メータ」については,甲20の写真から水道メータのマグネット歯車における回転軸線方向の間隙の有無を確認することができないし,また,甲20の水道メータは本件特許出願後の平成29年に製造されたものであるのみならず,水道メータの の写真から水道メータのマグネット歯車における回転軸線方向の間隙の有無を確認することができないし,また,甲20の水道メータは本件特許出願後の平成29年に製造されたものであるのみならず,水道メータのメーカーが異なれば,樹脂部分の材質,熱カシメを行う前のリブの形状,熱カシメ機の仕様,熱カシメ加工の手順や条件など全てが異なってくるから,控訴人以外のメーカーが製造したマグネット歯車は,原告マグネット歯車がその製造時の平成21年時点から間隙が存在していなかったことの根拠にはならない。 また,原告作業標準記載の「カシメ後の球R先端部からカシメリブ先端までの寸法:0.6~0.9」の0.3mmの幅は,原告マグネット歯車に用いられたポリアセタールの合成樹脂の公差は±0.1mm程度に設定されること(例えば,甲18に図示されたマグネット歯車の樹脂製の本体においては,その球R先端部から後端部までの寸法表記が「8.75±0.1」と記載されているとおり,8.75mmのマグネット歯車の公差による寸法の変動幅は,最大0.2mmである。)に照らすと,回転軸線方向に生じる間隙を示したものであり,原告マグネット歯車の樹脂の成形の際に生じる公差を表したものではない。 (2) 小括以上のとおり,原告マグネット歯車は本件発明の構成要件Eを充足するから,本件特許出願前に製造販売されていた原告マグネット歯車に係る発明が本件発明と同一の発明であるとした原判決の判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断当裁判所も,本件発明は,本件特許出願前に公然実施をされた原告マグネッ ト歯車に係る発明と同一の発明であると認められ,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものであるから,控訴人は,特許法104条の3第1項の規定により,被控訴人らに対し,本件特許権を行使することができ に係る発明と同一の発明であると認められ,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものであるから,控訴人は,特許法104条の3第1項の規定により,被控訴人らに対し,本件特許権を行使することができず,控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 1 本件明細書の記載事項(1) 本件明細書(甲5)には,次のような記載がある(下記記載中に引用する図1ないし6については,別紙明細書図面を参照)。 ア 【技術分野】【0001】本発明は,マグネット歯車及びその製造法,これを用いた流量計に関する。 【背景技術】【0002】マグネット付き歯車形成部材のマグネット受面の一部に切り欠きを設け,マグネットを装着し,切り欠きの下方から受治具でマグネットを保持し,マグネットの磁化面にかしめリブを押し付けながら熱を加えてリブをかしめるマグネット付き歯車におけるマグネット取付方法が知られている(…)。 【0003】羽根車の回転に応じて回転するように磁気的に羽根車に結合されているマグネット歯車と,羽根車とマグネット歯車の間を仕切っている合成樹脂製の隔壁と,隔壁に埋め込まれて,マグネット歯車の回転軸の先端面が回転自在の状態で乗っている平坦な軸受面を備えた合成樹脂製の軸受板とを有し,軸受板は,隔壁に対して,インサート成形,接着または圧入により,固定されており,軸受板の軸受面は,隔壁の表面から突出した位置にある流量メータも知られている(…)。 【発明が解決しようとする課題】 【0005】本発明は,羽根車の回転に確実に追従することができ,かつ長期使用におけるマグネットの脱落を防止することができるマグネット歯車及びその製造方法,これを用いた流量計を提供することを目的とする。 イ 【課題 明は,羽根車の回転に確実に追従することができ,かつ長期使用におけるマグネットの脱落を防止することができるマグネット歯車及びその製造方法,これを用いた流量計を提供することを目的とする。 イ 【課題を解決するための手段】【0006】前記課題を解決するために,請求項1に記載のマグネット歯車は,回転軸線を有する軸部,前記軸部の一端側の外周面に複数の歯を有し,噛みあう相手歯車に回転を伝達する歯部,前記軸部の他端側に軸線方向に突設されたカシメ用突起,からなる樹脂製の歯車と,前記歯車と一体的に回転するマグネット部材と,からなり,前記マグネット部材が貫通孔を有し,前記軸部の他端側に前記貫通孔を挿通させると共に,前記貫通孔から突出した前記カシメ用突起の突出部を前記マグネット部材の挿通側から熱カシメして,前記軸部の回転軸線方向に移動可能に間隙を確保して保持された,ことを特徴とする。 【発明の効果】【0012】請求項1記載の発明によれば,羽根車の回転に確実に追従することができ,指示機構に正確に回転を伝達することができる。…ウ 【0015】(1)流量計の構成図1はマグネット歯車1を備えた流量計10の一般的構成を示す縦断面図である。以下,図面を参照しながら,本実施形態に係るマグネット歯車1が提供された流量計10の全体構成及び指示機構部について説明する。 【0016】 (1.1)流量計の全体構成及び動作流量計10は,両端に流入口20aおよび流出口20bが形成された流入部外箱としてのメータケース20を有し,このメータケース20の内部には流入口20aおよび流出口20bに連通している計量室30が形成されている。計量室30内には,水の流 び流出口20bが形成された流入部外箱としてのメータケース20を有し,このメータケース20の内部には流入口20aおよび流出口20bに連通している計量室30が形成されている。計量室30内には,水の流れ方向に直交するように羽根車40が回転自在の状態に配置されている。計量室30の上側には計量室30と遮水した状態で指示機構部としての歯車列からなる機械式の指針ユニット50が装着されている。 【0017】指針ユニット50は,メータケース20における計量室30の真上の部位に形成した上方開口部から挿入され,上方開口部を封鎖する状態で上方開口部に取り付けた蓋ケース60とメータケース20との間に挟持されている。指針ユニット50は合成樹脂製,例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)製のレジスタケース70を備え,その底壁部分70aが,計量室30と指針ユニット50の内部とを仕切っている隔壁部分である。 【0018】計量室30内の羽根車40の回転軸41はその下端部分が,メータケース20の底板部分20cの中央に垂直に取り付けたピボット軸42によって回転自在の状態で支持されている。羽根車40の回転軸41の先端部分41aは,レジスタケース70の底壁部分70aの中央に形成した円形凹部70bに挿入されており,その先端部には回転軸線cを中心として同心円上にマグネット11が埋め込まれている。 【0019】指針ユニット50の内部には,底壁部分70aを挟み,羽根車40の回転軸41に対して同軸状態でマグネット歯車1が配置されている。マグネット歯車1の軸部の下端部分にも,その回転軸線cを中心として同心円上 にマグネット5が埋め込まれている。軸部の上端部は回転自在の状態でピボット軸51によって支持されており,下端部は,底壁部分70a 歯車1の軸部の下端部分にも,その回転軸線cを中心として同心円上 にマグネット5が埋め込まれている。軸部の上端部は回転自在の状態でピボット軸51によって支持されており,下端部は,底壁部分70aの軸受面に回転自在の状態で支持されている。 このように,マグネット歯車1は回転自在の状態で,羽根車40と同軸状態に支持され,羽根車40とは底壁部分70aを挟み磁気的に結合(マグネットカップリング)された状態にある。その結果,羽根車40が水流によって回転すると,それに伴ってマグネット歯車1も羽根車40と同期して回転する。 【0020】係る構成の流量計10は,その流入口20aおよび流出口20bが上流側の水道管および下流側の水道管(図示せず)に接続されて使用される。 流入口20aから流入した水は,計量室30内に入り,羽根車40を回転させながら流出口20bに向けて流れ,流出口20bから下流側の水道管に流出する。羽根車40は計量室30を流れる流量に応じた回転速度で回転するように設定されている。 【0021】羽根車40が回転すると,これにマグネットカップリングされている指針ユニット50側のマグネット歯車1も追従して回転する。マグネット歯車1の回転は歯車列を介して回転指標に伝達され,流量計測値が表示される。 エ 【0022】(1.2)マグネット歯車図2はマグネット歯車1を構成するマグネット歯車本体とマグネット部材とを分離して示した斜視図,図3(a)はマグネット歯車本体の角軸4側に視点をおいた平面図,(b)はマグネット歯車本体の縦断面図,(c)はマグネット5の平面図,(d)はマグネット5の縦断面図,図4(a) はマグネット歯車1のマグネット5側に視点をおいた平面図,(b)はマグ 平面図,(b)はマグネット歯車本体の縦断面図,(c)はマグネット5の平面図,(d)はマグネット5の縦断面図,図4(a) はマグネット歯車1のマグネット5側に視点をおいた平面図,(b)はマグネット歯車1の縦断面図である。以下,図面を参照しながらマグネット歯車1の構成について説明する。 【0023】図2に示すように,マグネット歯車1は,軸部の一端側に形成された歯車2と,マグネット部材としてのマグネット5を保持する保持部としてのフランジ3と,マグネット部材が挿通される角軸4と,角軸4の先端中央部に形成された半円球状の球R部4cとからなるマグネット歯車本体と,角軸4に挿通された状態で保持され歯車2と一体的に回転するマグネット5と,から構成されている。 【0025】角軸4は断面形状が,例えば四角形や六画形等の多角形とされ,軸部の他端側に歯車2及びフランジ3と一体に形成されている。この角軸4には角軸4の断面形状に合わせて形成された貫通孔5aを有するマグネット5が挿通されて,後述するように熱カシメされて角軸4の軸線方向に間隙を確保して保持されている。 具体的には,図3(a),(b)に示すように,角軸4の端部には軸線方向にその断面形状が先端部に向けてテーパ形状とされた環状リブ4aが突設されている。 そして,図4(a),(b)に示すように,角軸4にマグネット5を挿通させると共に,貫通孔5aから突出した環状リブ4aの突出部をマグネット5の挿通側から熱カシメによって折り返して,折り返された環状リブ4aの折り返し部4bでマグネット5の一面が保持されている。 【0026】角軸4の外面とマグネット5の貫通孔5aの内面のそれぞれ対向する方向の間隙は0.05mmないし0.3mmとなるように調整され,マグネ ット5がその自重 一面が保持されている。 【0026】角軸4の外面とマグネット5の貫通孔5aの内面のそれぞれ対向する方向の間隙は0.05mmないし0.3mmとなるように調整され,マグネ ット5がその自重で角軸4の軸線方向に移動できる程度の嵌合状態とされている。 【0027】図3(c)に示すように,マグネット5は,羽根車40のマグネット11と対向してマグネットカップリングを形成する着磁面5bが,例えば等方4極で磁束密度として30mTないし100mTに着磁されている。そして,非着磁面5cが角軸4の軸心と直交するフランジ3の当て付け面(表面)3aに0.05mmないし0.5mmの間隙を確保して保持されている。 間隙が0.05mmよりも小さい場合は,後述するように急激な流量変化があったときに,マグネットカップリングの結合が外れ計量誤差を生じやすくなる。また,間隙が0.5mmよりも大きい場合には,軸線方向の上下振動により貫通孔5aの角部によって熱カシメして折り返された折り返し部4bが削られ,マグネット5が脱落する虞がある。 そのために,安定したマグネットカップリングが維持され,長期に亘って,マグネット5が脱落する虞がない間隙の範囲としては,0.05mmないし0.5mmが好ましく,0.1mmないし0.2mmがより好ましい。 【0030】(2)マグネット歯車の組み立て本実施形態に係るマグネット歯車1は,軸部としての角軸4の端部に軸線方向に環状リブ4aが突設され,マグネット5を挿通させると共に,貫通孔5aから突出した環状リブ4aの突出部をマグネット5の挿通側から熱カシメして折り返し部4bを形成して保持する。そして,角軸4に熱カシメされたマグネット5は,その軸線方向に0.05mmないし0.5mmの間隙を確保して保持されている。 5の挿通側から熱カシメして折り返し部4bを形成して保持する。そして,角軸4に熱カシメされたマグネット5は,その軸線方向に0.05mmないし0.5mmの間隙を確保して保持されている。 オ 【0040】(2.3)本実施形態のマグネット歯車図5は,マグネット歯車本体にマグネット5を熱カシメによって保持する本実施形態に係るマグネット歯車1の組み立て工程の一例を説明するための工程図である。 マグネット歯車1は,受け治具Jの上面に設けられたピンJ1に,軸部の軸心に形成された円筒孔2aを挿入して,マグネット歯車本体が角軸4の他端側に突設され,その断面形状が先端部に向けてテーパ形状とされた環状リブ4aを上方にして位置決めされる。また,受け治具Jの上面には,ピンJ1と同軸に受け部J2が設けられ,マグネット歯車本体のフランジ3の背面3bが支持される(図5(a)参照)。 【0041】次に,予め成形着磁されたマグネット5を角軸4の環状リブ4a側から挿通し,その上方から熱カシメホーンHを降下させる。熱カシメホーンHは,環状リブ4aと接触する表面が,例えば140°Cないし160°Cの温度に保持されている。 そして,熱カシメホーンHで貫通孔5aから突出した環状リブ4aを加熱・押圧しながら環状リブ4a全体を軟化状態にする。具体的には,0. 4Mpaないし0.6Mpaの押圧力で8secないし12sec加熱・押圧状態を保持する(図5(b)参照)。 【0042】図5に示すように,環状リブ4aは,熱カシメホーンHで加熱・押圧されて軟化すると,その断面形状が先端に向けてテーパ状に形成されているために,確実に外側へ折り返されて,その折り返し部4bでマグネット5の着磁面5bに当て付くことになる(図5(c)参照)。 軟化して外側へ折り返される折 断面形状が先端に向けてテーパ状に形成されているために,確実に外側へ折り返されて,その折り返し部4bでマグネット5の着磁面5bに当て付くことになる(図5(c)参照)。 軟化して外側へ折り返される折り返し部4bの折り返し状態は,熱カシ メホーンHの表面温度と押圧力と押圧時間によって変化し,環状リブ4aの折り返し状態によって,その内側面で当て付けられるマグネット5の保持状態が変化することになる。 そのために,熱カシメホーンHの表面温度,押圧力及び押圧時間と,折り返された環状リブ4aの折り返し部4bとマグネット5の軸線方向の間隙との関係を予め実験によって定めておくことにより,マグネット5の軸線方向の間隙を必要な範囲に確保することができる。 【0043】本実施形態においては,一例として,高さ0.5mmの環状リブ4aが形成されたマグネット歯車本体をポリアセタール(POM)を用いて射出成形し,熱カシメホーンHの設定温度150°C,押圧力0.5Mpa,押圧時間10secとすることで,0.1ないし0.2mmの好適な間隙を得た。 カ 【0044】(3)作用・効果図6は,本実施形態に係るマグネット歯車1のマグネット歯車本体に対するマグネット5の保持状態を説明するための模式図であり,説明のためにマグネット5と歯車本体との間隙を模式的に示している。以下,図面を参照しながら,羽根車40とマグネット歯車1とのマグネットカップリングの作用について説明する。 【0045】本実施形態に係るマグネット歯車1は,角軸4が軸部の他端側に歯車2と一体に形成され,対抗して回転する羽根車40とマグネットカップリングを形成するマグネット5が熱カシメによって角軸4の軸線方向に間隙を確保して保持されている。 図6に示すように,マグネット5とマグネッ 体に形成され,対抗して回転する羽根車40とマグネットカップリングを形成するマグネット5が熱カシメによって角軸4の軸線方向に間隙を確保して保持されている。 図6に示すように,マグネット5とマグネット歯車1の回転中心となる 角軸4は,角軸4の外面間距離(w2)とマグネット5の貫通孔5aの内面間距離(w1)の差にもとづいて,それぞれ対向する方向に0.05mmないし0.3mmの間隙(G1)を有して,マグネット5がその自重で角軸4の軸線方向に移動できる程度の嵌合状態とされている。 そして,マグネット5は,角軸4の軸線方向にも0.05mmないし0. 5mmの間隙(G2)を確保して保持されている。 そのために,角軸4に挿通されて保持されたマグネット5が,羽根車40の先端部に埋め込まれたマグネット11から磁気力を受けた場合に,角軸4の軸線と直交する方向の間隙の範囲内で,磁気結合力が最も高まるように移動(図6中矢印参照)して調心作用が発生する。 【0046】その結果,瞬間的に大流量の水が流れて,羽根車40に上下振動や軸心の首振り現象が発生しても,羽根車40の先端部に埋め込まれたマグネット11から受ける磁気力によって,磁気結合力を高めるように移動してマグネットカップリングの外れによる計量誤差の発生が抑制される。また,一旦マグネットカップリングが外れた場合であっても,その後の計量動作中に自己復帰(再結合)しやすくなる。 【0047】さらに,マグネット5は貫通孔5aの4辺全周を覆うように折り返された環状リブ4aで保持されているために,計量作動中の軸線方向の上下振動が発生した場合であっても,長期の使用によるマグネット5の脱落を防止することができる。 (2) 前記(1)の記載事項によれば,本件明細書には,本件発明に関し,次 めに,計量作動中の軸線方向の上下振動が発生した場合であっても,長期の使用によるマグネット5の脱落を防止することができる。 (2) 前記(1)の記載事項によれば,本件明細書には,本件発明に関し,次のような開示があることが認められる。 ア 「本発明」は,羽根車の回転に応じて回転するように磁気的に羽根車に結合されている,歯車とマグネット部材とからなるマグネット歯車におい て,羽根車の回転に確実に追従することができ,かつ長期使用におけるマグネットの脱落を防止することができるマグネット歯車を提供することを目的とし,上記課題を解決するための手段として,マグネット部材の貫通孔から突出した歯車のカシメ用突起の突出部をマグネット部材の挿通側から熱カシメして,歯車の軸部の回転軸線方向に移動可能に間隙を確保してマグネット部材が保持される構成を採用し,これにより,羽根車の回転に確実に追従することができ,指示機構に正確に回転を伝達することができるという効果を奏する(【0003】,【0005】,【0006】,【0012】)。 イ 「本発明」の実施形態に係るマグネット歯車1は,角軸4が軸部の他端側に歯車2と一体に形成され,対抗して回転する羽根車40とマグネットカップリングを形成するマグネット5が熱カシメによって角軸4の軸線方向に間隙を確保して保持されているため,マグネット5が,羽根車40の先端部に埋め込まれたマグネット11から磁気力を受けた場合に,角軸4の軸線と直交する方向の間隙の範囲内で,磁気結合力が最も高まるように移動(図6中の矢印参照)して調心作用が発生し,その結果,瞬間的に大流量の水が流れて,羽根車40に上下振動や軸心の首振り現象が発生しても,羽根車40の先端部に埋め込まれたマグネット11から受ける磁気力によって,磁気結合力を高めるように移 生し,その結果,瞬間的に大流量の水が流れて,羽根車40に上下振動や軸心の首振り現象が発生しても,羽根車40の先端部に埋め込まれたマグネット11から受ける磁気力によって,磁気結合力を高めるように移動してマグネットカップリングの外れによる計量誤差の発生が抑制され,また,一旦マグネットカップリングが外れた場合であっても,その後の計量動作中に自己復帰(再結合)しやすくなり,さらに,マグネット5は貫通孔5aの4辺全周を覆うように折り返された環状リブ4aで保持されているために,計量作動中の軸線方向の上下振動が発生した場合であっても,長期の使用によるマグネット5の脱落を防止することができるという効果を奏する(【0044】ないし【0047】,図1,2,4,6)。 2 争点2-1(特許法29条1項1号又は2号による新規性欠如の有無)について次のとおり訂正するほか,原判決「事実及び理由」の第4の2記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決20頁16行目から17行目にかけての「違反の無効理由」を「による新規性欠如」と改める。 (2) 原判決21頁14行目の「乙2の」から17行目の「認められるところ」までを次のとおり改める。 「乙2の事実実験(平成29年8月3日)時点における原告マグネット歯車の回転軸線方向の移動量(間隙)は,原告メータ1について0.08mm(乙2の20頁記載の「移動距離0.081mm」(小数点第3位切捨て)),原告メータ2について0.11mm(乙2の40頁記載の「移動距離0.114mm」(小数点第3位切捨て))であったことが認められる。上記認定事実によれば,原告各メータの原告マグネット歯車には,平成21年の製造当時において軸部の回転軸線方向に間隙が存在していたことを推認することができる。」。 (3) あったことが認められる。上記認定事実によれば,原告各メータの原告マグネット歯車には,平成21年の製造当時において軸部の回転軸線方向に間隙が存在していたことを推認することができる。」。 (3) 原判決22頁8行目から21行目までを削り,同頁22行目から23頁4行目までを次のとおり改める。 「(イ) 仮に原告通水実験(甲15)の実験用マグネット歯車を使用した測定結果を前提とするとしても,同実験で使用された「無1」のマグネット歯車及び「有4」のマグネット歯車について,実験前後の写真(「無1」につき写真27及び28,「有4」につき写真43及び44)をそれぞれ比較すると,いずれもカシメ部の潰された突起の形状及びマグネット部材の角度が異なっており,これらの差異がマグネット歯車の使用に伴う摩耗によって生じたとは認め難く,同一のマグネット歯車であったとしてもその測定箇所(周方向)が異なっている可能性が高いといわ ざるを得ない。また,甲15の他の写真及び記載事項に照らしても,「無1」のマグネット歯車及び「有4」のマグネット歯車の測定箇所(周方向)は明らかではなく,その測定結果の正確性及び信用性には疑義がある。「無1」及び「有4」以外の実験用マグネット歯車については,実験前後の軸部の回転軸線方向の間隙の差が最大で0.064mm(「無5」)にとどまり,乙2の事実実験における原告マグネット歯車の回転軸線方向の移動量(間隙)(原告メータ1につき0.08mm,原告メータ2につき0.11mm)を下回る。 この点に関し控訴人は,「無1」のマグネット歯車及び「有4」のマグネット歯車の各写真について,原告通水実験の実験前後において測定対象それ自体は変わっておらず,また,経年劣化を作為的に短期間で生じさせているため,写真上で測定箇所があたかも変わって び「有4」のマグネット歯車の各写真について,原告通水実験の実験前後において測定対象それ自体は変わっておらず,また,経年劣化を作為的に短期間で生じさせているため,写真上で測定箇所があたかも変わっているかのように見えるだけである旨主張する。 しかしながら,上記認定事実に照らし,控訴人の上記主張は採用することができない。」(4) 原判決23頁5行目の「(エ)」を「(ウ)」と改め,同頁14行目の「可能性があり」から16行目末尾までを次のとおり改める。 「可能性がある。 以上によれば,原告通水実験の測定結果によって,原告各メータの原告マグネット歯車には平成21年の製造当時において軸部の回転軸線方向に間隙が存在していたとの前記推認を妨げることはできない。」(5) 原判決23頁22行目の「作成当時,」の後に「カシメ後,鉄片を左右に振るとマグネット部材がそれに追従してガタつく程度のガタつきが生じることを確認し,」を加える。 (6) 原判決24頁2行目末尾に行を改めて次のとおり加える。 「 この点に関し控訴人は,そもそも,乙3は控訴人が作成した文書ではな いし,回転軸線方向の間隙がない状態であっても,回転軸線方向に直交する左右方向においてガタつくことは当然ありうるから(例えば,ポリアセタールなどの合成樹脂を用いた場合において,そのポリアセタールの表面における摺動性(滑らかさ)が高ければ,当然,回転軸線方向に直交する左右方向においてガタつく。),左右にガタつきがあるからといって軸部の回転軸線方向の間隙が存在することを意味するものではなく,また,原告マグネット歯車の軸部の回転軸線方向(上下方向)の間隙がなくマグネットが固定されている場合,マグネットが回転軸線方向と直交する方向に移動することが困難であるとする証拠は存在しない旨主 く,また,原告マグネット歯車の軸部の回転軸線方向(上下方向)の間隙がなくマグネットが固定されている場合,マグネットが回転軸線方向と直交する方向に移動することが困難であるとする証拠は存在しない旨主張する。 しかしながら,後記(ウ)のとおり,原告作業標準(乙3,10)は控訴人の意思に基づいて作成された文書であるものと認められる。そして,上記のとおり,控訴人は,原告作業標準の作成当時において,カシメ後,鉄片を左右に振るとマグネット部材がそれに追従してガタつく程度のガタつきが生じることを確認し,熱カシメ後に回転軸線方向と直交する左右方向に間隙が生じるように作業工程を管理していたものと認められるところ,回転軸線方向の間隙が設けられていないマグネット歯車において,このようなガタつきが生じるとは考え難い。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。」(7) 原判決24頁3行目から7行目までを削り,同頁8行目の「(ウ)」を「(イ)」と改める。 (8) 原判決24頁13行目から14行目にかけての「考えられない。」を「考えられず,控訴人の意思に基づいて作成されたものと認められる。」と,同頁25行目の「(エ)」を「(ウ)」と,同頁末行及び25頁9行目の各「軸線方向(上下方向)の間隙」を「マグネット部材が回転軸線方向(上下方向)に移動可能な間隙」と改める。 (9) 原判決25頁24行目から26頁5行目までを次のとおり改める。 「 エ以上のとおり,乙2の実験結果から,原告各メータの原告マグネット歯車には,平成21年の製造当時において軸部の回転軸線方向に間隙が存在していたことを推認することができること,控訴人作成の原告作業標準等から,控訴人は,原告各メータの上記製造当時において,マグネット部材が回転軸線方向(上下方向)に「移 軸部の回転軸線方向に間隙が存在していたことを推認することができること,控訴人作成の原告作業標準等から,控訴人は,原告各メータの上記製造当時において,マグネット部材が回転軸線方向(上下方向)に「移動可能な間隙」のあるマグネット歯車を製作していたことを推認することができることを総合すると,原告各メータの上記製造当時の原告マグネット歯車における上記間隙は,マグネット部材が回転軸線方向(上下方向)に「移動可能」な大きさであったことが認められる。 そうすると,原告マグネット歯車は,本件特許出願前の同年時点において,マグネット部材が軸部の回転軸線方向に移動可能な間隙を有していたと認められるから,本件発明の構成要件Eの「前記軸部の回転軸線方向に移動可能に間隙を確保して保持された」との構成を具備していたものと認められる。 これに反する控訴人の主張は理由がない。 (2) 小括以上によれば,控訴人は,本件特許出願前の平成21年,原告マグネット歯車が組み込まれた原告各メータを製造し,これらを東京都(水道局)に販売したこと,原告マグネット歯車は,その製造及び販売当時,本件発明の構成要件の構成を全て具備していたことが認められる。 加えて,原告各メータを通常利用可能な技術を用いて分解し,分析することにより,原告マグネット歯車の構造を知り得る状況にあったものと認められるから,原告マグネット歯車に係る発明は,本件出願前に公然実施をされた発明であって,本件発明と原告マグネット歯車に係る発明は,同一の発明であるものと認められる。 したがって,本件発明に係る本件特許には,新規性欠如の無効理由(特 許法29条1項2号,123条1項2号)が存在し,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,控訴人は,被控訴人らに対し,同法104条の3第1項 許には,新規性欠如の無効理由(特許法29条1項2号,123条1項2号)が存在し,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,控訴人は,被控訴人らに対し,同法104条の3第1項の規定により,本件特許権を行使することができない。よって,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の請求は,いずれも理由がない。 3 結論以上のとおり,控訴人の請求はいずれも理由がないから,控訴人の請求を棄却した原判決は相当である。したがって,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官國分隆文 裁判官筈井卓矢 (別紙)明細書図面 【図1】 【図2】 【図3】 【図4】 【図5】 【図6】
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