令和6(ネ)10068 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和7年6月26日 知的財産高等裁判所 2部 判決 控訴棄却 大阪地方裁判所 令和4(ワ)9112
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判決文本文31,945 文字)

令和7年6月26日判決言渡令和6年(ネ)第10068号損害賠償請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所令和4年(ワ)第9112号〔甲事件〕、同第11173号〔乙事件〕)口頭弁論終結日令和7年4月15日 判決当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 本判決において用いる主な略語は、次のとおりである(原判決で定義された略語を含む。)。 原告控訴人(1審甲事件・乙事件原告)甲事件被告被控訴人(1審甲事件被告)槌屋ティスコ株式会社 乙事件被告被控訴人(1審乙事件被告)株式会社槌屋被告ら甲事件被告及び乙事件被告本件特許発明の名称を「微細粉粒体のもれ防止用シール材」とする特許(特許第4818622号、請求項数7、出願日:平成17年3月14日、設定登録日:平成23年9月9日) 本件特許権本件特許に係る特許権本件明細書本件特許の願書に添付した明細書及び図面。以下、特に断らない限り、「【4桁の数字】」は本件明細書の段落を指し、「【図〇】」は本件明細書の図面を指す。 本件訂正訂正審判請求(訂正2023-390075)を認めた令和 5年11月15日付け審決による本件特許の特許請求の範囲 等の訂正本件訂正発明1 本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲請求項1記載の発明本件訂正発明2 本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲請求項4記載の発明本件各訂正発明本件訂正発明1及び本件訂正発明2構成要件1C 本件訂 正後の本件特許の特許請求の範囲請求項1記載の発明本件訂正発明2 本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲請求項4記載の発明本件各訂正発明本件訂正発明1及び本件訂正発明2構成要件1C 本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲請求項1を1Aから 1Fまでの符号を付して分説した場合の1Cの符号に対応する構成部分構成要件1E 本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲請求項1を1Aから1Fまでの符号を付して分説した場合の1Eの符号に対応する構成部分 被告製品原判決別紙被告製品目録記載の製品キヤノンキヤノン株式会社第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被告らは、原告に対し、連帯して1億円及びこれに対する令和4年12月2 3日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 3 仮執行宣言第2 事案の概要 1 事案の要旨原告は、発明の名称を「微細粉粒体のもれ防止用シール材」とする特許(特 許第4818622号。本件特許)に係る本件特許権の共有持分2分の1を有する者である。甲事件被告は被告製品を製造し、乙事件被告は甲事件被告から被告製品を購入してキヤノンに販売している。本件は、原告が、被告らに対し、被告らが被告製品を製造販売する行為は本件特許権(本件訂正後の特許請求の範囲請求項1及び4)を侵害すると主張して、特許権侵害の共同不法行為に基 づく損害賠償請求の一部請求(民法709条、719条1項前段、特許法10 2条2項)として、1億円及びこれに対する不法行為後である令和4年12月23日(1審乙事件訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 原審は、被告製品は少なくとも本件特許の構成要件1C及び1Eを充足する 2月23日(1審乙事件訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 原審は、被告製品は少なくとも本件特許の構成要件1C及び1Eを充足するものとは認められないと判断して、原告の請求をいずれも棄却した。これに対 し、原告が原判決を不服として本件控訴を提起した。 2 前提事実は、以下のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」第2の3(原判決3頁2行目から5頁12行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正) ⑴ 原判決3頁14行目から15行目まで(前提事実⑵「本件特許権」アの第2文)を、次のとおり改める。 「 本件明細書には、別紙「本件明細書の記載(抜粋)」の記載がある。」⑵ 原判決5頁4行目末尾(前提事実⑷の末尾)に改行の上、以下を加える。 「 本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲請求項1及び4の各構成要件は、 次のとおり分説される(なお、下線は訂正箇所を示す。)。 (本件訂正発明1-本件訂正後の本件特許請求の範囲請求項1)1A 微細粉粒体を担持する回転体の外周面にパイルを摺接させながら軸線方向へのもれを防ぐ、画像形成装置における微細粉粒体のもれ防止用シール材であって、 1B 多数の微細長繊維を束ねて構成されるパイル糸が基布の表面に切断された状態で立設されるカットパイル織物を主体とし、1C カットパイル織物は、地糸の経糸または緯糸の径がパイル糸の径よりも細くされており、経糸と緯糸の径が同じ、もしくは経糸と緯糸が異なる径を用いてパイル織りされた織物であり、 1D パイル糸は、基布の製織方向の少なくとも一方に平行な方向に沿う ように配列され、該基布の表面に対して、該配列の方向から予 緯糸が異なる径を用いてパイル織りされた織物であり、 1D パイル糸は、基布の製織方向の少なくとも一方に平行な方向に沿う ように配列され、該基布の表面に対して、該配列の方向から予め定める角度θだけ開く方向に傾斜する斜毛状態で、パイル糸を構成する多数の微細長繊維が分離してパイルが形成され、かつパイル間のピッチが狭められるように毛羽立たされており、1E 使用状態では、回転体の回転方向に対し、該配列の方向が該予め定め る角度θよりも大きな角度φをなすように、該配列の方向を該回転方向に対して傾斜させることを特徴とする1F 画像形成装置における微細粉粒体のもれ防止用シール材(本件訂正発明2-本件訂正後の本件特許請求の範囲請求項4)2A 前記パイル糸は、単繊維の集合または複数種類の単繊維で構成され、 前記パイルは、前記微細粉粒体が前記もれ防止用シール材を越えて移動しようとしても、前記回転体の前記軸線方向の逆方向に案内されるように傾いていることを特徴とする2B 請求項1~3のいずれか1つに記載の微細粉粒体のもれ防止用シール材」 3 争点は、以下のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」第2の4(原判決5頁13行目から6頁16行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正)⑴ 原判決「事実及び理由」第2の4⑴(原判決5頁15行目から16行目ま で)を次のとおり改める。 「⑴ 構成要件1Cの解釈(争点A-1・当審における追加主張)及び同解釈を前提にした場合に被告製品が構成要件1Cの構成(地糸の経糸又は緯糸の径がパイル糸の径よりも細くされており)を備えるか(争点1)」⑵ 原判決「事実及び理由」第2の4⑶(原判決5頁19行目から21行目ま で)を次のとお 構成要件1Cの構成(地糸の経糸又は緯糸の径がパイル糸の径よりも細くされており)を備えるか(争点1)」⑵ 原判決「事実及び理由」第2の4⑶(原判決5頁19行目から21行目ま で)を次のとおり改める。 「⑶ 被告製品が構成要件1Eの構成(使用状態では、回転体の回転方向に対し、該配列の方向が該予め定める角度θよりも大きな角度φをなすように、該配列の方向を該回転方向に対して傾斜させる)を備えるか(争点3)及び間接侵害の成否(争点A-2・当審における追加主張)⑷ 均等侵害の成否(争点A-3・当審における追加主張)」 ⑶ 原判決「事実及び理由」第2の4「争点」のうち、原判決5頁23行目の「⑷」を「⑸」に、原判決5頁25行目の「⑸」を「⑹」に、原判決6頁1行目の「⑹」を「⑺」に、原判決6頁5行目の「⑺」を「⑻」に、原判決6頁9行目の「⑻」を「⑼」に、原判決6頁12行目の「⑼」を「⑽」に、それぞれ改める。 ⑷ 原判決6頁16行目末尾に改行の上、以下を加える。 「(損害論)⑾ 原告の損害(争点10)」 4 争点に関する当事者の主張は、以下のとおり補正し、後記5のとおり当審における当事者の追加主張等を付加するほかは、原判決「事実及び理由」第3 (原判決6頁17行目から25頁12行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正) 原判決25頁12行目末尾に改行の上、以下を加える。 「10 原告の損害(争点10) (原告の主張)⑴ 原告は、被告らによる本件特許権の侵害により、被告製品の販売開始から令和4年9月30日までの間、被告らが同販売により得た限界利益相当額の損害(特許法102条2項)として、少なくとも合計2億3820万円の損害を被ってい 本件特許権の侵害により、被告製品の販売開始から令和4年9月30日までの間、被告らが同販売により得た限界利益相当額の損害(特許法102条2項)として、少なくとも合計2億3820万円の損害を被っている。 ⑵ よって、原告は、被告らに対し、一部請求として1億円及び遅延損害金 の連帯支払を求める。 (被告らの主張)否認ないし争う。」 5 当審における当事者の追加主張等⑴ 争点A-1(構成要件1Cの解釈・当審における追加主張)及び争点1(被 告製品の構成要件1C充足性)について(原告の主張)ア構成要件1Cや本件明細書(段落【0008】【0050】)の記載によれば、パイル糸と経糸・緯糸は、太い/細いとの比較がされるとともに「径」が繊維の太さ/細さの指標である「D(デニール)」で表示されて いる。また「径」の字義は「直径」を意味するが、繊維の断面は一般的に不規則な形状を示すから、当業者であれば、構成要件1Cの「径」を字義どおりの「直径」と解すべきでないと理解する。したがって、構成要件1Cは、カットパイル織物と地糸の経糸・緯糸について、径の値の大小関係を定めたものではなく、糸の太さを相対的に比較し、その大小関係(太い /細い)を定めたものと解するのが相当である。 そして、糸の太さの大小関係の比較方法として「デニールと繊維ごとの比重を用いて断面積を算出し、その大小関係を比較する方法(一定長の糸の重量であるデニールの値を、当該繊維の比重で除して算出し、その大小関係を比較する方法)」を採用するのが、本件明細書の記載(段落【00 50】)、当業者の技術常識及び糸の太さについての当業者の技術理解に即した相当なものである。 イ本件において、前記方 係を比較する方法)」を採用するのが、本件明細書の記載(段落【00 50】)、当業者の技術常識及び糸の太さについての当業者の技術理解に即した相当なものである。 イ本件において、前記方法による比較結果は、一定長の糸の重量を当該繊維の比重で除した値の大小関係であるから、これは、糸に含まれる繊維の断面積の総和の大小関係と相関する。したがって、被告製品の構成要件1 C充足性は、糸に含まれる繊維の断面積の総和の大小関係をみることによ って証することが可能であり、証拠(甲28)によれば、被告製品のパイル糸及び経糸について、パイル糸の方が経糸よりも糸に含まれる繊維の断面積の総和の値が大きい。よって、被告製品は構成要件1Cを充足する。 ウ原告は、原審段階から前記解釈を主張しており、時機に後れた攻撃防御方法に当たらない。原告は、控訴審で、糸の太さの対比判断の具体的手法 についての主張を改めたが、糸に含まれる繊維の断面積の総和の大小関係で対比判断することの限度では、原審でも証拠(甲22)を提出していた。 原告は、控訴審で、前記のとおり主張を改めて証拠(甲28)を提出し、均等侵害の主張を追加し、構成要件1Eの関係で証拠(甲29~35)を提出し、間接侵害の主張を追加したが、原判決の認定判断を踏まえ提出し たもので、時機に後れた提出とも、故意・重過失によるものともいえない。 (被告らの主張)ア原告の構成要件1Cの解釈に関する新たな主張及び証拠(甲28)の提出は、時機に後れた攻撃防御方法であり、却下されるべきである(民訴法157条1項)。これらは原審の弁論終結時までに主張・提出されるべき ところ、適時の提出に何らの支障はなく、後れて提出することについて合理的理由もないのであって、これらの攻撃防 である(民訴法157条1項)。これらは原審の弁論終結時までに主張・提出されるべき ところ、適時の提出に何らの支障はなく、後れて提出することについて合理的理由もないのであって、これらの攻撃防御方法により訴訟の完結を遅延させることとなる。 イ構成要件1Cは、あくまでも糸の「径」の大小を比較しており、「径の値の大小関係を定めたものではな」いとする原告の主張は、構成要件1C の文言を無視した解釈である。本件明細書には「径」の意義について特段の定義はなく、字義どおりに解釈されないのであれば、発明特定事項の技術的意味を当業者が理解できないなどとして明確性要件(特許法36条6項2号)を欠くことになるのであり、解釈において「径」という文言を無視してよいことにはならない。 また、本件明細書(段落【0050】)は、パイルの単繊維の「径」に ついてデニール表記を用いるのみであり、繊維の束としての糸の「径」をデニールで測定してよいとは述べていないから、繊維の束であるパイル糸、経糸・緯糸の「径」をデニールで表記する原告の手法(甲28)は、前提を欠く。また、原告は、地糸の経糸・緯糸とパイル糸の繊維の「断面積」を実測値に基づいて算出すべきとするが、測定値に基づいて断面積を算出す ることは困難であるから(乙5)、原告の測定方法(甲28・側面直径の測定値に基づき繊維の断面積の総和を算出する方法)は否定される。 本件各訂正発明の特許請求の範囲の記載では「径」と記載する一方で、本件明細書では「径」の認識方法の記載がない以上、その比較について「径」ではなく「太さ」や「断面積」を用いるべきという恣意的な読替え はできない。よって、原告の主張は失当である。 ウ仮に、原告の解釈を採用し、地糸の経糸・緯糸とパイル糸の太さ ついて「径」ではなく「太さ」や「断面積」を用いるべきという恣意的な読替え はできない。よって、原告の主張は失当である。 ウ仮に、原告の解釈を採用し、地糸の経糸・緯糸とパイル糸の太さの大小関係を「断面積」で比較するとしても、糸の径を太くすることの作用効果は、多数の微細長繊維を含ませることができるために、糸の外周を大きくすることにあると解されるし(段落【0043】)、パイル糸の間隔を狭 くするには、周囲に配される経糸・緯糸の空隙を含んだ幅(糸の外周)を小さくする必要があると解されるから、糸の外周の大きさである「空隙を含んだ断面積」で比較しなければ、本件各訂正発明の作用効果を生じさせる糸の太さを比較したことにはならない。よって、原告の手法(甲28)のように、単繊維の断面積に繊維本数を乗じて得られる「空隙を含まない 糸の断面積」を算出し比較しても、本件各訂正発明の作用効果との関係では意味がない。そして、原告の手法(甲28)による単繊維の断面積の測定方法自体、変形・変質により断面積にばらつきのある製品状態のもので測定しており、不合理不適切である(なお、単繊維の断面積の値にフィラメント数を乗じた値は、経糸の方がパイル糸よりも大きい〔乙21〕。)。 ⑵ 争点3(被告製品の構成要件1E充足性)及び争点A-2(間接侵害の成否 ・当審における追加主張)について(原告の主張)ア構成要件1E充足性は、シール材本体の構成に加え、そのトナーカートリッジへの取付位置及び取付方向が定まることによって決定するところ、被告らは、トナーカートリッジへの所定の取付位置及び取付方向が定めら れた製品(シール材の形状、斜毛方向から、トナーカートリッジへの取付角度、位置が一義的に定まる製品)として、かつ、所 ところ、被告らは、トナーカートリッジへの所定の取付位置及び取付方向が定めら れた製品(シール材の形状、斜毛方向から、トナーカートリッジへの取付角度、位置が一義的に定まる製品)として、かつ、所定の取付位置及び取付方向を認識して、被告製品を製造販売した(被告らの認識は、証拠〔甲29~35〕でシール材の取付方向が明示され、また、証拠〔甲31の段落【0027】〕で、被告製品と同様、トナーの軸線方向に対してパイル が角度θ2斜毛する構成となっていることから認められる。)。そして、被告製品は、使用状態において、所定の取付位置及び取付方向の下、構成要件1Eが定める角度θと角度φの大小関係を満たす(甲17)。 したがって、被告らの被告製品の製造販売行為は、使用状態において構成要件1Eを満たす微細粉粒体のもれ防止用シール材を製造販売したもの であり、これは、それ自体で、本件特許の実施行為となる。 イ争点A-2(間接侵害の成否・当審における追加主張)について被告製品は、キヤノン製トナーカートリッジ向けの専用品であり、キヤノン又は関係会社が、被告製品をトナーカートリッジに装着する行為は「生産」に該当するから、被告製品は「その物の生産にのみ用いる物」に 該当する。そして、被告製品がキヤノン又は関係会社においてトナーカートリッジに装着されて、本件特許の構成要件を充足する製品となるから、被告らによる被告製品の製造販売は、特許法101条1号に該当する。 ウ使用状態における構成要件1Eの各角度について、被告製品の製造時の状態で角度θが存在することは、写真画像の解析(甲20、23)により 立証されており、その上で、実験(甲17)により、被告製品がトナーカ ートリッジに装着された状態と、回転体が回転 状態で角度θが存在することは、写真画像の解析(甲20、23)により 立証されており、その上で、実験(甲17)により、被告製品がトナーカ ートリッジに装着された状態と、回転体が回転する状態(甲36)とで、角度θに変化が生じないことが確認されている(なお、平面と曲面の各感光ドラムで、パイル繊維が感光ドラムに接触する長さは略同じであり、実験(甲17)における平面アクリル板を用いた苛酷試験は、実際のトナーカートリッジで発生する事象の再現には技術的妥当性がある。)。 また、被告製品につき、トナーカートリッジの製作過程においてシール材に何らかの作用が加わることはなく、仮に加わったとしても、それによってパイルの傾斜状態が変わることはない。さらに、トナーカートリッジから感光体ドラムを取り外した状態についても、角度θ<角度φを満たしていることが確認されている(甲6)。 エ時機に後れた攻撃防御方法に当たらないことは、前記⑴(原告の主張)ウのとおり。 (被告らの主張)ア原告の構成要件1Eに関する証拠(甲29~35)及び間接侵害の主張の提出は、時機に後れた攻撃防御方法であるから、民訴法157条1項に 基づき却下すべきである。前記⑴(被告らの主張)アのとおり。 イ被告製品は、その形状から取付位置や取付方向を判断できるものではなく、設計段階でキヤノン等の関係会社から被告製品の使用状態における取付位置や取付方向を開示されたこともないのであり、キヤノンが角度θ<角度φとなるように取り付けていることの立証はない。証拠(甲29~3 5)も、当業者が一般論として認識する事項が公開公報等に記載されているにすぎない。また、甲31は、一定の作用効果を奏する目的で、一定形状のシール材が一定形状のトナ 証はない。証拠(甲29~3 5)も、当業者が一般論として認識する事項が公開公報等に記載されているにすぎない。また、甲31は、一定の作用効果を奏する目的で、一定形状のシール材が一定形状のトナーカートリッジに取り付けられる角度、位置を例示するにすぎず、キヤノンが、被告製品を自らのトナーカートリッジにどのような目的、態様で取り付けるかはキヤノンの自由である。この ため、シール材の形状、斜毛方向から、トナーカートリッジに取り付けら れる角度、位置が一義的に定まるとの原告の主張は誤りである。 ウ争点A-2(間接侵害の成否・当審における追加主張)について特許法101条1号「その物の生産にのみ用いる物」とは、当該物に、社会通念上経済的、商業的又は実用的な他の用途がない場合を含むと解されるところ、感光体へ被告製品をどのように取り付けるかはキヤノンの判 断次第であり、特定の配置方法でのみ取り付けられる物ではない。本件では、被告製品をキヤノンが角度θ<角度φに貼っていることの立証すらなく、少なくとも異なる方法・用途が経済的、商業的又は実用的なものでないことの立証もない。よって、間接侵害は成立しない。 エ原告は、使用状態における角度θ及び角度φを立証することができてい ない。すなわち、被告製品は、直立のパイル糸を有する基布を「パイル糸を構成する繊維がパイル糸の配列方向に倒れるような形態で、加熱したヒートローラに通す」という方法で製造されるから、パイル糸を構成する繊維が「予め定める角度θ」だけ開く方向に傾斜したものではなく、予め定める角度θが存在しない以上、角度φとの大小関係も定まらない。予め定 める角度θが存在することは、画像解析(甲20、23)によっても立証されていない。 傾斜したものではなく、予め定める角度θが存在しない以上、角度φとの大小関係も定まらない。予め定 める角度θが存在することは、画像解析(甲20、23)によっても立証されていない。 甲17の実験は、被告製品の製造工程後の外力による影響が考慮されていない上、平板のアクリル板で実験しており、曲面の感光ドラムという実際のカートリッジで発生する事象の再現として技術的妥当性がない。 ⑶ 争点A-3(均等侵害の成否・当審における追加主張)について(原告の主張)ア被告製品が、構成要件1Cの構成のうち、地糸の経糸又は緯糸の径がパイル糸の径より細いという点について、構成要件充足性を備えていないという相違点(以下「本件相違点」という。)があるとしても、均等侵害が 成立する。 イ本件相違点は、非本質的部分における相違であり、被告製品は均等侵害の第1要件を満たす。 すなわち、本件訂正発明1は、①微細粉粒体のもれ防止用シール材を構成するパイル糸の配列方向が、回転体の回転方向に対し角度φだけ傾斜するように配置され、かつ、②基布の表面に対し「パイル糸の配列方向から 予め定める角度θだけ開いた方向」に傾斜する斜毛状態において、パイル糸を構成する多数の微細長繊維が分離してパイルが形成され、パイル間のピッチが狭められるように毛羽立たされており、かつ、パイルが、平面視において、回転体の回転方向に対して回転体の中央側に傾斜する構成を備えることにより、(ⅰ)シール材に侵入しようとするトナーが、回転体の 回転作用により、パイルの毛の流れ方向に沿って、回転体の中央側に案内され、また、(ⅱ)パイルが、隣接する配列方向のパイルに接触し、隣接する配列方向との間に隙間が生じることを防ぐとともに、パイルが重なり 転作用により、パイルの毛の流れ方向に沿って、回転体の中央側に案内され、また、(ⅱ)パイルが、隣接する配列方向のパイルに接触し、隣接する配列方向との間に隙間が生じることを防ぐとともに、パイルが重なり合う部分で高密度のシールを行うことができ、(ⅲ)これにより、パイル糸としての立毛密度を低くすることが可能となり、当接負荷を軽減するこ とができる点に技術的特徴点が認められるものである。それゆえ、本件訂正発明1は、前記①及び②の構成を備える点を、従来技術に見られない特有の特徴的部分(本質的部分)とする発明である。 仮に、被告製品が、構成要件1Cの構成を備えないとしても、その余の構成要件を充足し本質的部分を備えるから、本件相違点は、非本質的部分 における相違である。 ウ被告製品は均等侵害の第2要件を満たす。 すなわち、被告製品は、前記イ①及び②により、本件訂正発明1の構成要件1D及び構成要件1Eを満たし、前記イ(ⅱ)(ⅲ)の効果を奏する。 また、本件訂正発明1は、前記イ①及び②の角度θと角度φの構成により、 前記イ(ⅱ)(ⅲ)の効果を奏するから、経糸・緯糸とパイル糸の径の大 小関係は、シール効果の程度に影響を及ぼすものではなく、この意味でも被告製品は、本件訂正発明1と同一の作用効果を奏する。 したがって、本件訂正発明1の構成要件1C中の本件相違点に係る部分を被告製品におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏する。 エ被告製品は均等侵害の第3要件を満たす。 すなわち、本件明細書には、構成要件1Cの技術的意義の記載はなく、経糸・緯糸とパイル糸の「径」の大小関係は、シール効果の程度に影響を及ぼさない。微細粉粒体のもれ防止用シール材について、経糸・緯糸とパイル糸 、本件明細書には、構成要件1Cの技術的意義の記載はなく、経糸・緯糸とパイル糸の「径」の大小関係は、シール効果の程度に影響を及ぼさない。微細粉粒体のもれ防止用シール材について、経糸・緯糸とパイル糸の「径」の大小関係については、技術常識はなく、設計事項である。 したがって、本件訂正発明1の構成要件1C中の本件相違点に係る部分を被告製品のものと置き換えることは、当業者が、被告製品の製造等の時点で容易に想到することができた。 オ本件では、被告製品の構成が、特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情はないから、均等侵 害の第5要件も満たす。すなわち、原告は、2回の拒絶理由通知を受ける中で、権利範囲につき、本件相違点の構成を備えなければ特許発明の技術的範囲に属しない旨を承認し、又は外形的にそのように解されるような行動をとった事実はない。本件明細書の記載を踏まえれば、本件訂正発明1の顕著な効果は、前記ウのとおり、構成要件1D及び構成要件1Eによる ことが十分に理解されるから、原告が各意見書(甲37の3、乙15の3)において、構成要件1Cにより顕著な効果を奏する旨述べたとしても、本件明細書に記載のない特徴的部分や効果を付加的に示したものにとどまり、禁反言が働くとされる理由はない。 カ時機に後れた攻撃防御方法に当たらないことは、前記⑴(原告の主張) ウのとおり。 (被告らの主張)ア原告の均等侵害の主張は、時機に後れた攻撃防御方法であるから、民訴法157条1項に基づき却下すべきである。前記⑴(被告らの主張)アのとおり。 イ被告製品については、均等侵害は成立しない。すなわち、本件各訂正発 明は「もれ防止用シール材」(構成要件1F 157条1項に基づき却下すべきである。前記⑴(被告らの主張)アのとおり。 イ被告製品については、均等侵害は成立しない。すなわち、本件各訂正発 明は「もれ防止用シール材」(構成要件1F)であり「微細粉粒体に対するシールを確実に行」うことを目的とする(段落【0007】)。そして、本件明細書の記載(段落【0043】)によれば、パイル糸の径を太くすることで、多数の微細長繊維を含ませて繊維密度を高めることができ、繊維密度を高めることにより、微細粉粒体に対するシール性が向上する(パ イル糸の径が細くなればシール性が低下する)ことが示されている。加えて、原告は、平成23年5月2日付け意見書(甲37の3)及び同年7月25日付け意見書(乙15の3)において、パイル糸の径に係る特徴的な構成により、パイル糸の根元からのトナー漏れを防ぐという顕著な効果を奏すると主張する。したがって、本件各訂正発明は、地糸の経糸及び緯糸 の径をパイル糸の径よりも細くすることにより、微細粉粒体のシールを確実に行うことをその技術思想の一部としており、構成要件1Cが従来技術にない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であることは明らかである。 よって、構成要件1Cの存否は、本件各訂正発明の本質的部分に関わる相違点であり、均等侵害の第1要件を満たさない。 ウ前記イの本件明細書の記載(段落【0043】)及び各意見書(甲37の3、乙15の3)によれば、構成要件1Cの存在しない構成の場合、微細粉粒体のシールを確実に行うことができず、パイル糸の根元からトナーの漏れが発生するおそれがあるというから、被告製品についても、構成要件1Cの不存在によりトナー漏れが発生しやすい構成となるはずであるか ら、これらの書証により、構成要件1Cを備えない被告製品が の漏れが発生するおそれがあるというから、被告製品についても、構成要件1Cの不存在によりトナー漏れが発生しやすい構成となるはずであるか ら、これらの書証により、構成要件1Cを備えない被告製品が本件各訂正 発明と同一の作用効果を奏するとの原告の主張は否定される。よって、均等侵害の第2要件を満たさない。 エ経糸・緯糸とパイル糸との径の大小関係がシール効果の程度に影響を及ぼさないことについて、原告は立証することができておらず、そのような一般的知見もない。原告は、拒絶理由通知により周知技術との指摘を受け たのに対し、平成23年7月25日付け意見書(乙15の3)のとおり反論し特許査定を受けているから、構成要件1Cを備える構成を、これを備えない構成にすることが設計事項であるとはいえず、被告製品製造時においても、構成要件1Cを備える構成を、これを備えない構成に置換することが当業者に容易想到であったとはいえない。よって、均等侵害の第3要 件を満たさない。 オ原告は、平成23年5月2日付け意見書(甲37の3)において構成要件1Cが本件各訂正発明の特徴的な構成であり、これを有しない構成が技術的範囲に含まれないことを明言しており、構成要件1Cが存在しない構成が本件各訂正発明の技術的範囲には含まれないことを表明したものと評 価される。よって、均等侵害の第5要件を満たさない。 第3 当裁判所の判断 1 被告らの時機に後れた攻撃防御方法の主張について被告らは、①争点1及び争点A-1 に係る原告の構成要件1Cの解釈に関する新たな主張及び証拠(甲28)の提出、②争点3及び争点A-2 に係る原告の構 成要件1Eに関する証拠(甲29~35)及び間接侵害の主張の提出、③争点A-3 に係る原告の均等侵害の主張 に関する新たな主張及び証拠(甲28)の提出、②争点3及び争点A-2 に係る原告の構 成要件1Eに関する証拠(甲29~35)及び間接侵害の主張の提出、③争点A-3 に係る原告の均等侵害の主張は、いずれも時機に後れた攻撃防御方法であるから民事訴訟法157条1項の規定に基づき却下すべきであると主張する。 しかしながら、①の構成要件1Cの解釈に関する主張について、原告は、原審段階において画像から繊維の断面積総和を比較した証拠(甲22)を提出し、 ②の構成要件1Eに関する証拠(甲29~35)及び間接侵害の主張について も、原告は、原審段階においてキヤノンと被告製品との関係や被告製品の取付位置・取付方向等に対する認識について主張していたものであり、③の均等侵害の主張を含め、その提出する主張及び証拠に照らし、いずれも訴訟の完結を遅延させることとなるものとは認められない。 よって、これらの原告の主張は、いずれも時機に後れた攻撃防御方法に当た るものとはいえず、被告らの主張を採用することはできない。 2 その上で、当裁判所は、原審と同様、被告製品は、少なくとも本件特許の構成要件1C及び1Eを充足するものとは認められず(争点A-1、1、3)、本件特許の構成要件1Eに関し間接侵害が成立するものとは認められず(争点A-2)、本件に関し均等侵害が成立するものとも認められないから(争点A- 3)、原告の請求は理由がなく、いずれも棄却すべきものと判断する。 その理由は、以下のとおりである。 3 争点A-1(構成要件1Cの解釈・当審における追加主張)及び争点1(被告製品の構成要件1C充足性)について⑴ 特許請求の範囲の記載 前記第2の2⑵のとおり、本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲請求項1の構成要件1Cは 審における追加主張)及び争点1(被告製品の構成要件1C充足性)について⑴ 特許請求の範囲の記載 前記第2の2⑵のとおり、本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲請求項1の構成要件1Cは「カットパイル織物は、地糸の経糸または緯糸の径がパイル糸の径よりも細くされており、経糸と緯糸の径が同じ、もしくは経糸と緯糸が異なる径を用いてパイル織りされた織物であり」とするものであり、地糸の経糸・緯糸の「径」とパイル糸の「径」の大小関係が比較されている。 このうち「径」の用語は、字義においては「さしわたし、直径」を意味するものと解されている(乙7。三省堂編修所編「広辞林第6版」)⑵ 本件明細書別紙「本件明細書の記載(抜粋)」のうち本件各訂正発明におけるパイル織物の地糸の経糸・緯糸とパイル糸の「径」の大小関係については、「…カ ットパイル織物は、地糸の経糸または緯糸の径がパイル糸の径よりも細くさ れており…」(段落【0008】【0009】参照)、「図4および図5では、パイル糸4として、地経糸21および地緯糸22よりも太い径の糸を使用する例を、(a)で平面視、(b)で側断面視して、それぞれ模式的に示す。…パイル糸4としての径を太くすることによって、多数の微細長繊維を含ませることができ、繊維密度を高めることができる。地経糸21または地 緯糸22のうちの一方は、パイル糸4と同等の径とすることもできる。すなわち、地経糸21または地緯糸22は、パイル糸4よりも小径とする。図4と図5の違いは、図4では、地緯糸22でパイル糸4を絞る構造となる点にある。この構造によって、パイル糸4の繊維(ファイバー)が抜けにくくなるようにすることができる。」(段落【0043】)などの記載がある。ま た、パイル糸の「径」等について、 絞る構造となる点にある。この構造によって、パイル糸4の繊維(ファイバー)が抜けにくくなるようにすることができる。」(段落【0043】)などの記載がある。ま た、パイル糸の「径」等について、「…パイル糸4を構成する微細長繊維は、高分子材料を素材とする単繊維または複合繊維からなり、微細長繊維の繊維径は平均で25㎛以下であり、パイル糸4は、微細長繊維を50以上1000以下の本数束ねて構成されることが好ましい。パイル糸4から微細長繊維を分離させて、これらの微細長繊維によるパイル3を容易に形成することが できるからである。」(段落【0033】)、「たとえば、径が数D(デニール)程度の複数種類の単繊維をたとえば300本程度束ねてパイル糸4を構成し、2.54㎝(1インチ)当りの縦パイル数を20、横パイル数を50程度とすると、パイル密度は1000となり、単繊維の密度は1平方インチ当り30000本程度となる。」(段落【0050】)、「たとえば、3 00D(デニール)程度の複合繊維糸30をパイル糸4として、1インチ(2.54㎝)当りの縦パイル数を46程度、横パイル数を24程度とし、パイル糸4当り600本の分割繊維を含むものとすれば、パイル密度は1100程度となり、分割繊維の密度は1平方インチ当り660000程度となる。以上のように、パイル糸4が複合繊維から構成されれば、複合繊維は分 割繊維からなるので、複合繊維を分割繊維に分割してパイル3を形成するこ とができる…」(段落【0052】)等の記載がある。 ⑶ 技術常識本件特許の出願日(平成17年3月14日)以前に頒布・刊行された文献等には、繊維の太さ等に関して、次のア及びイのような記載があるほか、同出願日以後のネット記事にも、次のウのとおりの記載がある(ウの 本件特許の出願日(平成17年3月14日)以前に頒布・刊行された文献等には、繊維の太さ等に関して、次のア及びイのような記載があるほか、同出願日以後のネット記事にも、次のウのとおりの記載がある(ウの記事は出 願日以後のものであるが、その内容に照らし、ア及びイの記載とあいまって出願当時の技術常識を推認させるに足りるものである。)。 ア繊維の形態的な太さは、一般的にその断面が不規則な形状を示しているので、正確な計測は困難である。したがって、一定の長さ当たりの重量で繊維の太さが示されている。デニール(denier)はその単位の一種で、9 000m当たりのグラム数で表される。JIS ではテックス(tex)と呼ぶ繊度の単位があり、1000m当たりのグラム数で表す(乙4、石川欣造監修「三訂版繊維」1986(昭和61)年)。 イ繊維においてその太さは最も重要な性質である。…それを繊度(細さ)と呼び、それには色々の表し方がある。…人造繊維においては、最初人造 絹糸がつくられたという歴史的な関係上、絹の繊度を表す単位デニール(Denier)が一般的に用いられる。これは9000mの長さの糸の重量をgで表したものである。デニールでは数字が大きいほど糸は太い。…純学術上の目的には繊維の太さはその断面積がいくらという数字で表すのが一番合理的である。しかし繊維の断面は正しい円形であるというような場合 は少ないから、実際に繊維の断面を…測定することは簡単ではない。しかし繊維の比重が分かっておればデニール数から断面積を容易に計算できる(乙5、櫻田一郎「繊維の化学」〔初版〕昭和53年)。 ウ糸は、細い繊維の集合体ですので、同じ糸でも、状態によって「集合」の様子が変わり「直径」が変わってしまいます。糸の太さは、このように 乙5、櫻田一郎「繊維の化学」〔初版〕昭和53年)。 ウ糸は、細い繊維の集合体ですので、同じ糸でも、状態によって「集合」の様子が変わり「直径」が変わってしまいます。糸の太さは、このように 変化する「直径」ではなく、状態によって変わらないものを基準にする必 要があります。では、変わらないものとは何か? それは糸の「長さ」と「重さ」です。…どんな素材でも、まずデニールを測るのが基本です。なぜなら、「長さ」を一定にして「重さ」を測る恒長式のデニールのほうが、「重さ」を一定にして「長さ」を測る恒重式の番手より楽だからです(乙6、山梨県産業技術センター富士技術支援センターのブログ「シケンジョ テキ」2020(令和2)年4月30日。同ブログには、甘撚、普通撚、強撚などの撚りの程度により、糸を構成する単繊維の断面積は変化しなくても、糸の外周に占める単繊維の間の空隙の割合が異なることが写真及び図で示され、撚りの弱い(甘撚)場合は空隙の割合が大きくなる一方、撚りの強い(強撚)場合は空隙の割合が小さくなり、これに伴い、糸の見た 目の径も異なることが示されている。)。 ⑷ 構成要件1Cの解釈についてア前記⑴のとおり、本件訂正発明1の構成要件1Cでは、地糸の経糸・緯糸とパイル糸の各「径」の「大小」が比較されているところ、具体的にこれらの各糸の「径」を認識する方法や、経糸又は緯糸の径をパイル糸の径 よりも細くする技術的意義や程度(どの程度細くする必要があるのか等)については、請求項にも本件明細書にも、これを説明する記述はない。したがって、本件訂正発明1の構成要件1Ⅽの「径」の意味するところについては、一般的に当業者の理解する技術常識を踏まえて判断するほかはない。 イしかるところ、まず、本件明細 記述はない。したがって、本件訂正発明1の構成要件1Ⅽの「径」の意味するところについては、一般的に当業者の理解する技術常識を踏まえて判断するほかはない。 イしかるところ、まず、本件明細書中には、各糸(繊維)の径やその大小関係については、「…カットパイル織物は、地糸の経糸または緯糸の径がパイル糸の径よりも細くされており…」(段落【0008】【0009】参照)のように、製品状態の糸について述べるような記載部分がある一方、「図4および図5では、パイル糸4として、地経糸21および地緯糸22 よりも太い径の糸を使用する例を…それぞれ模式的に示す。」(段落【0 043】)、「…パイル糸4を構成する…微細長繊維の繊維径は平均で25㎛以下であり…」(段落【0033】)、「たとえば、径が数D(デニール)程度の複数種類の単繊維を…束ねてパイル糸4を構成し」(段落【0050】)、「たとえば、300D(デニール)程度の複合繊維糸30をパイル糸4として…」(段落【0052】)のように、原糸状態の糸 について述べるような記載部分がある。 ウこの点について、前記⑶の技術常識を踏まえて検討すると、細い繊維の集合体である糸は、その断面が正しい円形になるわけではない上、撚りの程度によって、糸を構成する単繊維の断面積は変化しなくても、糸の外周に占める単繊維の間の空隙の割合が異なることから、撚りの弱い場合は空 隙の割合が大きくなる一方、撚りの強い場合は空隙の割合が小さくなり、糸の見た目の「径」も異なるものとなる。本件明細書においても、シール材に関する先行技術について「パイル糸は多数の繊維を撚り合わせて形成されており、カットパイルとして切断された後では、撚りが解消され、基布の表面から多数の繊維が突出する状態となる」(段落【00 シール材に関する先行技術について「パイル糸は多数の繊維を撚り合わせて形成されており、カットパイルとして切断された後では、撚りが解消され、基布の表面から多数の繊維が突出する状態となる」(段落【0003】)と され、また、本件各訂正発明について「図4および図5では、パイル糸4として、地経糸21および地緯糸22よりも太い径の糸を使用する例を…模式的に示す。…図4と図5の違いは、図4では、地緯糸22でパイル糸4を絞る構造となる点にある」(段落【0043】)とされるなど、地緯糸でパイル糸を絞る部分では、撚りが強くかかり、パイル糸が切断され多 数の繊維が突出する部分では、撚りが解消されることが示されている。すなわち、製品状態の糸においては、同じ糸でも、その場所により、糸の見た目の「径」が異なり得ることとなる。さらに、本件明細書によれば、シール材のカットパイル織物は「…概略的に、製織→毛割→シャーリング→コーティング→毛割り→シャーリングの工程を経て製造する。…毛割の工 程では、パイル糸4の角度出しを行う…」(段落【0048】)とされ、 そして、パイル糸の角出しを行う、すなわち基布の表面に対してパイル糸を毛倒しして斜毛状態にするには、一般的に、被告製品のシール材の製造工程(乙3)のように、傾斜機(ヒートローラ―)による加圧・加熱が行われるところ、製造工程における加圧・加熱等により、糸を構成する単繊維に変形や変質が生じ、単繊維の径も変わり得ることになる。 このように、製造工程における加圧・加熱等により糸の「径」が変化し得ることや、製品中の糸の各部分にかかる撚りの程度により糸の見た目の「径」が異なり得るにもかかわらず、本件明細書に、その「径」及び「大小」の正しい認識方法について何ら明示されていない場合に が変化し得ることや、製品中の糸の各部分にかかる撚りの程度により糸の見た目の「径」が異なり得るにもかかわらず、本件明細書に、その「径」及び「大小」の正しい認識方法について何ら明示されていない場合において、請求項にいう各糸の「径」が製品状態の糸の「径」を意味するものと解したと きは、その内容を一義的に把握することができないから、発明事項の明確性を欠き、本件訂正発明1を実施することは困難になる。 他方、本件明細書においては、前記のとおり、「図4および図5では、パイル糸4として、地経糸21および地緯糸22よりも太い径の糸を使用する例を…それぞれ模式的に示す。」など、原糸状態の糸の「径」やその 大小関係について述べる記載部分(段落【0043】【0033】【0050】【0052】)も存するのであり、後で述べるとおり、「径」とは一般的に繊維の「太さ」を指すものとして用いられている方法により示される「太さ」と同義であると解するのが相当であり、原糸状態の糸は、各糸の「径」がそれぞれ一様であることから、各糸の「径」の意味を一義的 に把握することができ、これに基づき各糸の「径」の「大小」を比較することもできるものと解される。そうすると、本件訂正発明1の構成要件1Cの「径」及びその「大小」は、原糸状態の糸の「径」及びその「大小」を意味するものと解するのが相当である。 エそして、前記⑶の技術常識によれば、繊維の重要な性質である「太さ」 については、デニール(denier)のように一定の長さ当たりの重量で繊維 の太さを示す方法が一般的に用いられている。繊維の素材が異なり比重(密度)が異なる場合には、デニール数では直ちには太さの比較をすることはできないが、繊維の比重とデニール数から断面積を容易に計算し、比 太さを示す方法が一般的に用いられている。繊維の素材が異なり比重(密度)が異なる場合には、デニール数では直ちには太さの比較をすることはできないが、繊維の比重とデニール数から断面積を容易に計算し、比較することができることは、技術常識であると認められる。 オそうすると、本件訂正発明1の構成要件1Cにおける地糸の経糸・緯糸 とパイル糸の各「径」とは、原糸状態において、一般的に用いられている方法で示される各糸の「太さ」を意味し、その「大小」についても、当該方法を前提に、原糸状態の糸の繊維の断面積を算出して「径」の大小関係を決することをいうものと解するのが、出願当時の当業者の技術常識を踏まえた構成要件の合理的な解釈であるというべきである(以上によれば、 構成要件1Cが不明確ということもできない。)。 ⑸ 被告製品の構成要件1C充足性について以上の構成要件1Cの解釈を踏まえ、被告製品による充足性を検討する。 証拠(乙21、22)によれば、被告製品における原糸状態の基布用経糸とパイル糸の各フィラメントの断面積を、糸の密度及びデニール数等から測 定し、糸の空隙を除いた断面積を比較したところ、測定値及び理論値とも経糸の数値(径)の方がパイル糸の数値(径)よりも大きい結果となったことが認められ(乙21)、また、被告製品における原糸状態の基布用経糸とパイル糸に対して同一の条件で同一のテンションを付与し、同一の方法で測定したところ、糸の「径」は、経糸の「径」の方がパイル糸の「径」より大きく、 テンションを付与していない無負荷状態においても、同様の結果となったことが認められる(乙22)。 したがって、被告製品は、構成要件1Cを充足しない。 ⑹ 当事者の主張についてア原告は、被告製品の構成要件1C充足性は、 においても、同様の結果となったことが認められる(乙22)。 したがって、被告製品は、構成要件1Cを充足しない。 ⑹ 当事者の主張についてア原告は、被告製品の構成要件1C充足性は、糸に含まれる繊維の断面積 の総和の大小関係をみることによって証することが可能であり、証拠(甲 28)によれば、被告製品のパイル糸の方が経糸よりも糸に含まれる繊維の断面積の総和の値が大きいから、構成要件1Cを充足するなどと主張する。 しかしながら、証拠(甲28)は、被告製品について、製品状態におけるパイル糸及び経糸をそれぞれ採取し、断面積を比較するものであるとこ ろ、前記⑷ウのとおり、製造工程における加圧・加熱等により糸の「径」が変化し得ることや、製品状態の糸の各部分にかかる撚りの程度により、同じ糸でもその部位により糸の見た目の「径」が異なり得ることに照らすと、各糸の「径」(太さ、断面積)を、製品状態の糸から一義的に認識し、その大小を比較することは困難である。したがって、原告の提出する証拠 (甲28)から被告製品の構成要件1C充足性を判断することは相当ではなく、原告の主張を採用することはできない。 イ他方、被告らは、構成要件1Cについて、本件明細書には「径」の意義について特段の定義はなく、字義どおりに解釈されないのであれば、発明特定事項の技術的意味を当業者が理解することができず、明確性要件(特 許法36条6項2号)を欠くことになるなどと主張するが、前記⑷オのとおり、出願時の技術常識を踏まえ、構成要件1Cを合理的に解釈すれば、構成要件1Cが不明確ということはできないから、被告らの主張を採用することはできない。 4 争点3(被告製品の構成要件1E充足性)及び争点A-2(間接侵害の成否・ 1Cを合理的に解釈すれば、構成要件1Cが不明確ということはできないから、被告らの主張を採用することはできない。 4 争点3(被告製品の構成要件1E充足性)及び争点A-2(間接侵害の成否・ 当審における追加主張)について⑴ 争点3(被告製品の構成要件1E充足性)についての判断は、以下のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」第4の3(原判決29頁12行目から30頁25行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正) ア原判決29頁14行目末尾に改行の上、以下を加える。 「 なお、本件各訂正発明では、構成要件1Eの前提として、「パイル糸は、…該配列の方向から予め定める角度θだけ開く方向に傾斜する斜毛状態で、パイル糸を構成する多数の微細長繊維が分離してパイルが形成され」ているところ(構成要件1D)、被告製品は、その製造工程の中の製織(パイル織り)工程の後、パイル糸傾斜加工工程において傾斜機としてヒ ートローラ―を使用し、カットパイル織物を、当該織物上のパイルの配列方向と並行に傾斜機に投入し、ヒートローラの回転に合わせて当該織物を移動させることによって、当該織物上のパイル糸の毛を長手方向(パイル配列方向)に倒していることが認められるから、その結果、パイル糸は、当該織物上のパイルの配列方向に傾斜することとなるものの(乙3)、配 列方向から角度θだけ開く方向に傾斜する斜毛状態になることを認めるに足りる証拠はない。原告は、画像解析(甲20)に基づき、基準角度と異なる角度で配列していた被告製品のサンプルの存在を指摘するが、他方で基準角度と異なるか判断することができないサンプル(No6、7)も存在していることに照らすと、全てのパイル糸が、その配列方向から角度θ 列していた被告製品のサンプルの存在を指摘するが、他方で基準角度と異なるか判断することができないサンプル(No6、7)も存在していることに照らすと、全てのパイル糸が、その配列方向から角度θ だけ開く方向に傾斜するよう製造されていたものとはにわかに認め難い。 また、この点を措くとしても、構成要件1E充足性に関しては、次のような点を指摘することができる。」イ原判決30頁7行目「解されない。」の次に以下を加える。 「また、原告が当審で追加提出する証拠(甲29~35)によっても、原 告の主張する事実を認めるに足りない。」⑵ 争点A-2(間接侵害の成否)については、前記補正の上引用した原判決記載のとおり、キヤノン又は関連会社が製造するトナーカートリッジに被告製品がどのように設置されるのかについて被告らの関与はなく、取付位置・取付方法は、キヤノンの判断によるものであるところ、キヤノンが被告製品を 角度θ<角度φで取り付けていると認めるに足りる証拠はなく、これと異な る方法・用法で取り付けることが、経済的、商業的又は実用的なものでないことの立証もない。したがって、被告製品が本件特許を侵害する物の生産にのみ用いられている物(特許法101条1項1号)であることを認めるに足りる立証はないというべきであるから、原告の間接侵害の主張を採用することはできない。 5 争点A-3(均等侵害の成否・当審における追加主張)について⑴ 原告は、被告製品が、構成要件1Cの構成を備えておらず、本件相違点があるとしても、均等侵害が成立すると主張する。 ⑵ そこで検討すると、原告は、本件特許の出願経過において、平成23年2月21日付け拒絶理由通知を受けたため(甲37の1)、同年5月2日付け 手続補正書(甲37の2) 成立すると主張する。 ⑵ そこで検討すると、原告は、本件特許の出願経過において、平成23年2月21日付け拒絶理由通知を受けたため(甲37の1)、同年5月2日付け 手続補正書(甲37の2)及び同日付意見書(甲37の3)を提出したこと、原告は、同意見書において、本件特許の出願に係る発明は、(A)カットパイル織物の地糸の経糸又は緯糸の径がパイル糸の径よりも細くされているという特徴的な構成(構成要件1C)を有していること、(B)パイルを織物表面に対して、配列の方向から予め定める角度θだけ開く方向に傾斜するこ と、(C)使用状態では、パイルの配列の方向が予め定める角度θよりも大きな角度φをなすようにカットパイル織物を配置すること、という三つの構成を全て満たすことによって、微細粉体のシールを確実に行い、しかもパイル糸としての立毛密度を低くすることができ、当接負荷を軽減することができるという顕著な効果を奏することを述べていたことが認められる。すなわ ち、原告は、同意見書において、(A)の構成は、(B)及び(C)とともに、本件特許の出願に係る発明が顕著な効果を奏するための不可欠な構成である旨述べていたものである。 また、原告は、平成23年5月18日付け拒絶理由通知を受けたため(乙15の1)、同年7月25日付け手続補正書とともに同日付け意見書(乙1 5の3)を提出し、同意見書において、拒絶理由に挙げられた引用文献3 (特開平11-61101号公報)及び引用文献4(特開2000-230376号公報)について、引用文献3の地糸の経糸・緯糸及びパイル糸の各径を算定すると、前者が後者よりも太いこと、本件特許の出願に係る発明は、地糸の経糸・緯糸の径がパイル糸の径よりも太いとパイル糸の間隔をトナーの漏れを防ぐために十 3の地糸の経糸・緯糸及びパイル糸の各径を算定すると、前者が後者よりも太いこと、本件特許の出願に係る発明は、地糸の経糸・緯糸の径がパイル糸の径よりも太いとパイル糸の間隔をトナーの漏れを防ぐために十分に狭くすることができず、パイル糸の根元からトナ ーの漏れが発生しやすくなるという問題点を見出し、当該問題点を解決するために、地糸の経糸及び緯糸の径をパイル糸の径よりも細くする構成としたものであり、当該特徴的な構成により、パイルの根元からのトナー漏れを防ぐという顕著な効果を奏するなどと説明した上で、このような構成の記載も示唆もなく、前記技術的思想の存在しない各引用文献に記載の発明から本件 特許の出願に係る発明に想到することはできないなどと述べていたことが認められる。 ⑶ このように、原告が、構成要件1C中の本件相違点に係る部分(地糸の経糸・緯糸の径がパイル糸の径よりも細いこと)が本件各訂正発明の特徴的かつ不可欠な構成であることを強調していたことに照らすと、原告は、被告製 品のように当該部分の構成が構成要件1Cと異なるものについては特許請求の範囲から意識的に除外したもの、すなわち、被告製品のような構成が特許発明の技術的範囲に属しないことを承認し、又は外形的にそのように解されるような行動をとったものと理解されてもやむを得ない。したがって、本件においては、均等侵害の第5要件に関し、構成要件1Cを充足しない被告製 品が意識的に特許請求の範囲から除外されたという特段の事情が認められるから、原告の主張を採用することはできない。 6 小括以上によれば、原告の本件請求は、いずれも理由がない。そして、当事者の主張に鑑み、本件記録を検討しても、前記認定判断を左右するに足りる的確な 主張立証はない。 第4 括以上によれば、原告の本件請求はいずれも理由がない。そして、当事者の主張に鑑み、本件記録を検討しても、前記認定判断を左右するに足りる的確な主張立証はない。 主文 よって、原判決は、結論においてこれと同旨であるから、本件控訴を棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官清水響 裁判官菊池絵理 裁判官頼晋一 (別紙)当事者目録 控訴人(1審甲事件・乙事件原告)三和テクノ株式会社 訴訟代理人弁護士中紀人、森本純、安井祐一郎、藤田雄功、芳賀彩 訴訟代理人弁理士喜多秀樹、西野卓嗣、河上哲也、東毅 補佐人弁理士阿部勇喜 河上哲也同東毅補佐人弁理士阿部勇喜 同岸本昌平 被控訴人(1審甲事件被告) 槌屋ティスコ株式会社 被控訴人(1審乙事件被告) 株式会社槌屋 上記両名訴訟代理人弁護士飯塚卓也同桑原秀明同籔本凌 同小島義博 上記両名補佐人弁理士瀬崎幸典以上 (別紙)本件明細書の記載(抜粋)【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】 本発明は、電子写真方式で使用するトナーなどの微細粉粒体を担持する回転体の外周面を、軸線方向に微細粉粒体がもれないようにシールする微細粉粒体もれ防止用シール材に関する。 【背景技術】【0002】 従来から、電子写真方式を利用する画像形成装置では、トナーと呼ばれる微細粉粒体が現像剤として使用される。電子写真方式の画像形成装置は、プリンタ、複写装置、ファクシミリ装置などとして広く用いられている。電子写真方式では、感光ドラムなどの像担持体に静電潜像を形成し、トナーで現像して、記録用紙などに転写し、トナーを記録用紙などに定着させる。トナーは現像ユニットの容器などに貯蔵され、現像ローラの外周面に付 着した状態で感光ドラムなどの表面まで移動する。現像ローラや感光ドラムは回転しながら、その外 ナーを記録用紙などに定着させる。トナーは現像ユニットの容器などに貯蔵され、現像ローラの外周面に付 着した状態で感光ドラムなどの表面まで移動する。現像ローラや感光ドラムは回転しながら、その外周面にトナーを付着させる。現像ローラや感光ドラムには、たとえば軸線方向の外方などに、トナーがもれることがないよう、微細粉粒体もれ防止用シール材が使用されている。 【0003】 微細粉粒体もれ防止用シール材に関する先行技術には、可動体の表面に接触させるパイル糸と、それを支える基布とを含むパイル織物を主体とするものがある(たとえば、特許文献1~3参照)。パイル織物は、パイル糸が基布の表面から突出するように製織され、パイル糸は切断されてカットパイルの状態となる。パイル糸は多数の繊維を撚り合わせて形成されており、カットパイルとして切断された後では、撚りが解消され、基布の表面か ら多数の繊維が突出する状態となる。微粉粒体は、パイルによって移動を阻止されるけれども、細い繊維であるパイルは可撓性があるので、可動体の表面に対するパイルの接触圧力は小さく、可動体の動きに対する負荷が小さい状態でシールを行うことができる。 【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】 【0005】パイル織物を使用する微細粉粒体もれ防止用シール材では、パイルがトナーなどの微細粉粒体の径と同程度の径の繊維で構成されるので、シールを有効に行うためには、パイルの密度を高める必要があると考えられている。たとえば、特許文献1ではパイル糸の立毛密度として1平方インチ(2.54㎝平方)当り4~8万本、特許文献2では1平方㎝当 り13,000~346,000本、特許文献3では、1平方㎝当り20,000~35,000本とそれぞれ開示されている。 【000 チ(2.54㎝平方)当り4~8万本、特許文献2では1平方㎝当 り13,000~346,000本、特許文献3では、1平方㎝当り20,000~35,000本とそれぞれ開示されている。 【0006】パイル糸の立毛密度を高くして、パイルの繊維を密に配置すると、トナーなどの微細粉粒体に対するシール性は向上するけれども、繊維の数が多くなる結果、パイルの繊維が接 触する可動体に対する当接荷重も大きくなり、可動体の移動に大きな駆動力が必要となる。 【0007】本発明の目的は、微細粉粒体に対するシールを確実に行い、しかも当接負荷を軽減することができる、画像形成装置における微細粉粒体もれ防止用シール材を提供することである。 【課題を解決するための手段】【0008】本発明は、微細粉粒体を担持する回転体の外周面にパイルを摺接させながら軸線方向へのもれを防ぐ、画像形成装置における微細粉粒体のもれ防止用シール材であって、多数の微細長繊維を束ねて構成されるパイル糸が基布の表面に切断された状態で立設さ れるカットパイル織物を主体とし、カットパイル織物は、地糸の経糸または緯糸の径がパイル糸の径よりも細くされており、経糸と緯糸の径が同じ、もしくは経糸と緯糸が異なる径を用いてパイル織りされた織物であり、パイル糸は、基布の製織方向の少なくとも一方に平行な方向に沿うように配列され、該 基布の表面に対して、該配列の方向から予め定める角度θ だけ開く方向に傾斜する斜毛状態で、パイル糸を構成する多数の微細長繊維が分離してパイルが形成され、かつパイル間のピッチが狭められるように毛羽立たされており、使用状態では、回転体の回転方向に対し、該配列の方向が該予め定める角度θ よりも大きな角度φ を 細長繊維が分離してパイルが形成され、かつパイル間のピッチが狭められるように毛羽立たされており、使用状態では、回転体の回転方向に対し、該配列の方向が該予め定める角度θ よりも大きな角度φ をなすように、該配列の方向を該接線方向に対して傾斜させることを特徴 とする画像形成装置における微細粉粒体のもれ防止用シール材である。 【0009】本発明に従えば、画像形成装置における微細粉粒体のもれ防止用シール材は、微細粉粒体を担持する回転体の外周面に摺接しながら軸線方向へのもれを防ぐために、多数の微細長繊維で構成されるパイル糸が基布の表面に切断された状態で立設されるカットパイル織 物を主体とする。カットパイル織物では、地糸の経糸または緯糸の径をパイル糸の径より小さくしている。経糸と緯糸の径が同じ、もしくは経糸と緯糸が異なる径を用いてパイル織りされた織物である。パイル糸は、基布の製織方向の少なくとも一方に平行な方向に沿うように配列され、かつ基布の表面に対して、配列の方向から予め定める角度θだけ開く方向に傾斜する斜毛状態で、パイル糸を構成する多数の微細長繊維が分離してパイルが形 成され、かつパイル間のピッチが狭められるように毛羽立たされている。毛羽立つ状態のパイルを構成する多数の微細長繊維が回転体の外周面に当接し、微細粉粒体をシールすることができる。パイルは、基布の製織方向の少なくとも一方に平行な配列方向に沿って形成され、基布の表面に対して、配列方向から予め定める角度θだけ開く方向に傾斜するので、パイルの先端が回転体の外周面に当接する状態で当接荷重によって傾斜している方向 にさらに傾斜すると、隣接する配列方向のパイルに接触し、接触部分で微細粉粒体に対する高密度のシールを行うことができる。 【0013】本発明に る状態で当接荷重によって傾斜している方向 にさらに傾斜すると、隣接する配列方向のパイルに接触し、接触部分で微細粉粒体に対する高密度のシールを行うことができる。 【0013】本発明に従えば、カットパイル織物は、多数の微細長繊維を束ねたパイル糸としての本数の割合が縦方向と横方向とで異なるように製織され、パイル糸の本数の割合が大きい方 向がパイルの配列方向となるので、パイルは配列方向に配列方向とは異なる方向よりも高密度で配置される。配列方向に並ぶパイルについて、隣接するパイル間のピッチは、配列方向に沿ってのパイル間のピッチよりも大きくなる。パイルは、配列方向に対して角度θだけ開く方向に傾斜しているので、パイル糸間の平均ピッチが0.2㎜~1.5㎜でも、使用状態では、パイルの微細長繊維が回転体の外周面に摺接される際にさらに傾斜して、 隣接する配列方向に沿うパイルと重なり、微細粉粒体に対するシールを有効に行うことができる。 【発明の効果】【0024】本発明によれば、カットパイル織物を主体として形成されるパイルの多数の微細長繊維 が回転体の外周面に当接し、微細粉粒体をシールすることができる。パイルは、基布の表面に対して、配列方向から予め定める角度θだけ開く方向に傾斜するので、パイルの先端が回転体の外周面に当接する状態で当接荷重によって傾斜している方向にさらに傾斜すると、隣接する配列方向のパイルに接触し、接触部分で微細粉粒体に対する高密度のシールを行うことができる。パイルは、ピッチを変えることができ、1つの配列方向ではパイル 糸の状態で1平方㎝当り数100~数1000本程度と立毛密度が高くなくても、パイルの傾斜による案内で微細粉粒体のもれを防ぐことができる。しかもパイル糸としての立毛密度を低 配列方向ではパイル 糸の状態で1平方㎝当り数100~数1000本程度と立毛密度が高くなくても、パイルの傾斜による案内で微細粉粒体のもれを防ぐことができる。しかもパイル糸としての立毛密度を低くすることで当接負荷を軽減することができる。さらに、パイル糸としての立毛密度を低くすると、パイルの根元部分に空隙が生じ、この空隙に微細粉粒体を捕捉することができる。捕捉した微細粉粒体は回転体に戻らなくなるので、回転体の外周面に付着し ている微細粉粒体に対するクリーニング作用を行うことも可能となる。 【発明を実施するための最良の形態】【0031】図1は、(a)で本発明の実施の一形態としての微細粉粒体もれ防止用シール材1を含む画像形成装置の部分的な断面構成を示し、(b)で微細粉粒体もれ防止用シール材1の 部分的な平面構成を示す。微細粉粒体もれ防止用シール材1は、基布2の表面からパイル3を起毛させたパイル織物で構成される。基布2は、緯糸と経糸とで製織され、経糸の一部がパイル糸4となって基布2の表面から突出し、パイル3は、パイル糸4を構成する微細長繊維が分離されて形成される。微細粉粒体もれ防止用シール材1は、支持板5の表面で支持され、パイル3の先端が現像ローラ6の外周面6aに接触する。現像ローラ6は、 回転軸7の軸線7aまわりに回転する。微細粉粒体もれ防止用シール材1は、現像ローラ6の外周面6aなどの表面に付着する微細粉粒体であるトナー8に対するシールを行う。 トナー8は、複写機や印刷機などの画像形成装置が電子写真方式で画像形成を行う際に、静電潜像を顕像化させる現像剤となる。 【0032】 すなわち、微粉粒体もれ防止用シール材1は、微細粉粒体としてのトナー7を担持する回転体である現像ローラ5の外周面5aにパイル3 に、静電潜像を顕像化させる現像剤となる。 【0032】 すなわち、微粉粒体もれ防止用シール材1は、微細粉粒体としてのトナー7を担持する回転体である現像ローラ5の外周面5aにパイル3を摺接させながら軸線6a方向へのもれを防ぐために用いられ、多数の微細長繊維を束ねて構成されるパイル糸4が基布2の表面に切断された状態で立設されるカットパイル織物を主体としている。後述するように、パイル糸4は、基布2の製織方向の少なくとも一方に平行な方向2aに沿うように配列さ れ、かつ基布2の表面に対して、配列の方向2aから予め定める角度θだけ開く方向4aに向かい、基布2の表面に対して角度δで傾斜する斜毛状態で、パイル糸4を構成する多数の微細長繊維が分離してパイル3が形成されるように毛羽立たされている。微粉粒体もれ防止用シール材1の使用状態では、回転体である現像ローラ6の回転方向6bである回転の接線方向に対し、配列の方向4aが予め定める角度θよりも大きな角度φをなすよう に、配列の方向4aを回転方向6bに対して傾斜させる。なお、基布2から突出するパイル3は、基布2の表面に対して垂直ではなく、一定の角度δで傾斜する状態としておく。 【0033】また、パイル糸4を構成する微細長繊維は、高分子材料を素材とする単繊維または複合繊維からなり、微細長繊維の繊維径は平均で25㎛以下であり、パイル糸4は、微細長繊 維を50以上1000以下の本数束ねて構成されることが好ましい。パイル糸4から微細長繊維を分離させて、これらの微細長繊維によるパイル3を容易に形成することができるからである。 【0036】特に、図1(b)に示すように、使用状態では、回転体である現像ローラ6の回転方向 6bに対し、パイル3の配列方向2aが予 パイル3を容易に形成することができるからである。 【0036】特に、図1(b)に示すように、使用状態では、回転体である現像ローラ6の回転方向 6bに対し、パイル3の配列方向2aが予め定める角度θ よりも大きな角度φ をなすように、製織方向を回転方向6bに対して傾斜させ、かつパイル3が現像ローラ6の外周面6aに摺接するように、カットパイル織物が配置されるので、傾斜するパイル3の方向4aは、現像ローラ6の回転の回転方向6bよりも、パイル3の配列方向2a側に傾く。回転の軸線7a方向は回転方向6bに垂直であるので、パイル3の傾きによって、微細粉粒 体であるトナー8が回転の軸線7a方向に、微細粉粒体もれ防止用シール材1を越えて移動しようとしても、パイル3の傾斜で軸線5a方向の逆方向に案内され、もれを防ぐことができる。 【0043】図4および図5では、パイル糸4として、地経糸21および地緯糸22よりも太い径の 糸を使用する例を、(a)で平面視、(b)で側断面視して、それぞれ模式的に示す。図6は経方向に縮めた状態、図7は縮めていない状態をそれぞれ示す。パイル糸4としての経を太くすることによって、多数の微細長繊維を含ませることができ、繊維密度を高めることができる。地経糸21または地緯糸22のうちの一方は、パイル糸4と同等の径とすることもできる。すなわち、地経糸21または地緯糸22は、パイル糸4よりも小径とす る。図4と図5の違いは、図4では、地緯糸22でパイル糸4を絞る構造となる点にある。 この構造によって、パイル糸4の繊維(ファイバー)が抜けにくくなるようにすることができる。 【0045】図4や図6に示すように、経方向に縮めることによって、基布2の縦方向である経方向 と横方向である緯方向とで、パ 繊維(ファイバー)が抜けにくくなるようにすることができる。 【0045】図4や図6に示すように、経方向に縮めることによって、基布2の縦方向である経方向 と横方向である緯方向とで、パイル糸4を異なる本数の割合となるように配列させることができる。ここで、縦方向および横方向のパイル糸4間の平均ピッチは、0.2㎜~1. 5㎜とする。縦方向と横方向とのうち、パイル糸4の本数の割合が大きい縦方向を配列方向とする。 【0046】 図8は、図4~図7に示すカットパイル織物20の製造状態を(a)で、使用状態を(b)でそれぞれ示す。カットパイル織物20は、前述のように、たとえば経方向である縦方向が配列方向2aとなって、配列方向2aに沿ってパイル糸4が最も高密度で配列している。ただし、(a)に示すように、パイル4糸は、角度θで配列方向2aから傾斜した方向4aに傾いて突出するような斜毛状態で形成される。(b)に示すように、使用状 態では、回転体の回転方向6bに対して配列方向2aが角度θよりも大きな角度φをなすように、カットパイル織物20は傾けられる。この角度φは、0度以上45度以下の範囲である。角度θは角度φよりも小さくする。すなわち、パイル糸4の方向は、配列方向2aから予め定める角度θだけ回転方向6b側に傾斜している。なお、パイル糸4の本数の割合は、緯方向である横方向の方が大きいようにすることもできる。 【0048】カットパイル織物20は、概略的に、製織→毛割→シャーリング→コーティング→毛割り→シャーリングの工程を経て製造する。製織の工程では、縦パイルまたは横パイルとしてパイル織物を製造する。毛割の工程では、パイル糸4の角度出しを行う。シャーリングの工程では、パイル糸4の先端を切断し、基布2の表面 グの工程を経て製造する。製織の工程では、縦パイルまたは横パイルとしてパイル織物を製造する。毛割の工程では、パイル糸4の角度出しを行う。シャーリングの工程では、パイル糸4の先端を切断し、基布2の表面から突出するパイル3の高さを揃 える。コーティングの工程では、基布2の裏面側に接着剤を塗布する。次の毛割の工程とシャーリングの工程は、仕上げである。 【0049】以上のようなカットパイル織物20に使用するパイル糸4は、単繊維の集合または複数種類の単繊維で構成されているものを使用することができる。パイル糸4は多数の単繊維 の集合または複数種類の単繊維で構成され、これらの単繊維が撚り合わされているので、撚りを戻してこれらの単繊維を分離させて、多数の単繊維からなるパイル3を形成することができる。 【0050】たとえば、径が数D(デニール)程度の複数種類の単繊維をたとえば300本程度束ね てパイル糸4を構成し、2.54cm(1インチ)当りの縦パイル数を20、横パイル数を50程度とすると、パイル密度は1000となり、単繊維の密度は1平方インチ当り30000本程度となる。 【0051】図9は、パイル糸4として使用可能な複合繊維(コンジュゲートフィラメント)糸30 の断面構成を示す。この複合繊維糸30は、たとえば放射状のナイロン繊維31と外側のポリエステル繊維32とで構成され、たとえば登録商標ベリーマ(カネボウ)として製造されている。このような複合繊維糸30は、成分の異なる2種類以上のポリマーを紡糸口で複合し、同時に紡糸させたものであり、複数の成分がそれぞれ繊維の長さ方向に連続した構造で、単繊維内で相互接着している。複合繊維糸30をパイル糸4とすると、複合繊 維を分割させて、異なる性質の単繊維からなる に紡糸させたものであり、複数の成分がそれぞれ繊維の長さ方向に連続した構造で、単繊維内で相互接着している。複合繊維糸30をパイル糸4とすると、複合繊 維を分割させて、異なる性質の単繊維からなるパイルを得ることができる。 【0052】たとえば、300D(デニール)程度の複合繊維糸30をパイル糸4として、1インチ(2.54㎝)当りの縦パイル数を46程度、横パイル数を24程度とし、パイル糸4当り600本の分割繊維を含むものとすれば、パイル密度は1100程度となり、分割繊維 の密度は1平方インチ当り660000程度となる。以上のように、パイル糸4が複合繊維から構成されれば、複合繊維は分割繊維からなるので、複合繊維を分割繊維に分割してパイル3を形成することができる。また、パイル糸4は、単繊維と複合繊維との組合せで構成することもできる。パイル糸4を単繊維と複合繊維との組合せで構成すれば、複合繊維と単繊維とを分割して、特性の異なる繊維の組合わせとしてパイル3を形成することが できる。 【図面の簡単な説明】【0054】【図1】本発明の実施の一形態としての微細粉粒体もれ防止用シール材1を含む画像形成装置の部分的な断面図および微細粉粒体もれ防止用シール材1の部分的な平面図である。 【図4】図1に示す微細粉粒体もれ防止用シール材1の主体となるカットパイル織物20の実施例の構成を簡略化して示す模式的な平面図および断面図である。 【図5】図1に示す微細粉粒体もれ防止用シール材1の主体となるカットパイル織物20の参考例の構成を簡略化して示す模式的な平面図および断面図である。 【図6】図1に示す微細粉粒体もれ防止用シール材1の主体となるカットパイル織物20 の参考例の構成を簡略化して示す模式的な平面図および断面 成を簡略化して示す模式的な平面図および断面図である。 【図6】図1に示す微細粉粒体もれ防止用シール材1の主体となるカットパイル織物20 の参考例の構成を簡略化して示す模式的な平面図および断面図である。 【図7】図1に示す微細粉粒体もれ防止用シール材1の主体となるカットパイル織物20の参考例の構成を簡略化して示す模式的な平面図および断面図である。 【図8】図4~図7に示すカットパイル織物20の製造状態と使用状態とをそれぞれ示す模式的な平面図である。 【図9】図1のパイル糸4として使用可能な複合繊維(コンジュゲートフィラメント)糸30の模式的な断面図である。 【図1】 【図4】 【図5】 【図6】 【図7】 【図8】 【図9】 以上

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