平成15(行ウ)223等 遺族年金不支給処分取消等請求事件,遺族年金請求事件

裁判年月日・裁判所
平成17年4月21日 東京地方裁判所 その他
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判決文本文18,920 文字)

主文 1(平成15年(行ウ)第223号事件)原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 2(平成16年(行ウ)第283号事件)原告の請求を却下する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨(1) 平成15年(行ウ)第223号事件被告が原告に対し,平成13年7月13日付けで行った裁定処分を取り消す。 (2) 平成16年(行ウ)第283号事件被告は原告に対し,金1065万8404円及びこれに対する平成3年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 請求の趣旨に対する答弁(1) 平成15年(行ウ)第223号事件ア本案前の答弁本件訴えを却下する。 イ本案の答弁主文と同旨(2) 平成16年(行ウ)第283号事件原告の請求を棄却する。 第2 事案の概要本件は,原告が,平成12年9月に,社会保険庁長官に対して,原告の母である故人Aが受領すべきであった遺族年金のうち未支給分の給付請求を行ったところ,社会保険庁長官は,平成13年7月13日付けでこれに対する応答としての決定を行い,未支給分として合計478万9765円を原告に対して給付したが,原告は,そのほかにも未支給分が存在すると主張して,平成15年(行ウ)第223号事件においては,同事件被告社会保険庁長官の行った上記決定の取消しを求め,平成16年(行ウ)第283号事件においては,同事件被告国に対し,未支給分として金1065万8404円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 法令の定め等(1) 裁定-厚生年金保険法( 6年(行ウ)第283号事件においては,同事件被告国に対し,未支給分として金1065万8404円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 法令の定め等(1) 裁定-厚生年金保険法(昭和60年法律第34号国民年金法等の一部を改正する法律による改正前のもの。以下,特に断らない限り,同じ。)33条保険給付を受ける権利は,その権利を有する者(以下「受給権者」という。)の請求に基づいて,社会保険庁長官(昭和37年法律第123号による改正前の厚生年金保険法では「厚生大臣」であった。)が裁定する。 (2) 未支給の保険給付-厚生年金保険法37条1項,5項(現行法に至るまで同じ)ア保険給付の受給権者が死亡した場合において,その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは,その者の配偶者,子,父母,孫,祖父母又は兄弟姉妹であって,その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは,自己の名で,その未支給の保険給付の支給を請求することができる(1項)。 イ未支給の保険給付を受けるべき同順位者が2人以上あるときは,その1人のした請求は,全員のためその全額につきしたものとみなし,その1人に対してした支給は,全員に対してしたものとみなす(5項)。 (3) 審査請求及び再審査請求-厚生年金保険法90条1項(現行法に至るまで同じ)被保険者の資格,標準報酬又は保険給付に関する処分に不服がある者は,社会保険審査官に対して審査請求をし,その決定に不服がある者は,社会保険審査会に対して再審査請求をすることができる。 (4) 不服申立てと訴訟との関係-厚生年金保険法91条の3(現行法に至るまで同じ)同法90条1項に規定する処分の取消し 社会保険審査会に対して再審査請求をすることができる。 (4) 不服申立てと訴訟との関係-厚生年金保険法91条の3(現行法に至るまで同じ)同法90条1項に規定する処分の取消しの訴えは,当該処分についての再審査請求を経た後でなければ,提起することができない。 (5) 時効-厚生年金保険法92条1項保険給付を受ける権利は,5年を経過したときは,時効によって,消滅する(昭和29年法律第115号による改正以降,基本的に同じである。ただし昭和40年法律第104号による改正前の厚生年金保険法では,「障害手当金を受ける権利」は別扱いとされていた。)。 (6) 金銭債権の消滅時効-会計法30条後段国に対する権利で,金銭の給付を目的とするもののうち,時効に関し他の法律に規定がないものは,5年間これを行わないときは,時効により消滅する。 (7) 権利の絶対的消滅,民法規定の準用-会計法31条ア国に対する権利で,金銭の給付を目的とするものの時効による消滅については,別段の規定がないときは,時効の援用を要せず,また,その利益を放棄することができないものとする。 (1項後段)イ国に対する権利で,金銭の給付を目的とするものについて,消滅時効の中断,停止その他の事項(前項に規定する事項を除く。)に関し,適用すべき他の法律の規定がないときは,民法の規定を準用する。 (2項後段) 2 前提となる事実(末尾に証拠等を掲記した事実は当該証拠等により認定した事実であり,証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない事実である。)(なお, (2項後段) 2 前提となる事実(末尾に証拠等を掲記した事実は当該証拠等により認定した事実であり,証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない事実である。)(なお,両事件における証拠は,甲号証は甲34号証まで,乙号証は乙28号証までは共通しており,そのほかには,平成16年(行ウ)第283号事件において,甲35号証及び36号証,乙29号証ないし32号証が追加で提出されているだけであるため,本判決では,専ら同事件での証拠を引用するものとする。)(1) 原告の母(故人)A(日本名はA′,日本在住当時の本名は「A″」。以下「亡A」という。)の夫で,故人のB(以下「亡B」という。)は,日本で炭坑夫として稼働していたが,昭和29年11月に,炭坑内の事故が原因で死亡した。 (2) 亡Aは,昭和30年6月ころ,昭和35年法律第17号による改正前の厚生年金保険法(以下「旧厚生年金保険法」という。)33条に基づく遺族年金の裁定を受けたが,亡Bについては労働基準法79条による遺族補償給付が行われたため,旧厚生年金保険法64条に基づき,死亡の日から6年を経過する昭和35年11月まで,遺族年金の支給は停止された。 なお,亡Aは,昭和36年6月22日付けで,遺族年金証書の交付を受けた。 亡Aに係る遺族年金のうち,昭和62年11月分から平成2年11月分までは,埼玉県戸田市α-16-23C方のA′名義の銀行口座(株式会社住友銀行渋谷東口支店・口座番号ZZZZZZZ)に振り込まれた。 (甲20,36,乙1,3,4,11,29,32)(3) 亡A(実際には原告が代筆)は,平成3年3月1日付けで,山口県民生部保険課に対 (甲20,36,乙1,3,4,11,29,32)(3) 亡A(実際には原告が代筆)は,平成3年3月1日付けで,山口県民生部保険課に対し,遺族年金の給付について照会をしたところ,同課は,同年4月17日付けの「保険金について」と題する書面(甲12。ただし,手書き部分を除く。)のとおり回答し,「C」と称する人物について照会した。 (4) 社会保険庁の職員は,亡Aの上記照会について,山口県民生部保険課職員から報告を受け,平成2年12月分以降についての「A′」あての支払を差し止めるとともに,「C」の所在等を調査し,亡Aに対しても,北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国。以下「北朝鮮」という。)への帰国時期,氏名変更の経緯等について,書面による照会を行った。亡Aは,上記照会に回答し,氏名変更届,支払金融機関届等を提出した。 (乙13,16,32)(5) 社会保険庁長官は,平成6年12月15日に,亡Aに対し,平成2年12月分から平成6年11月分までの遺族年金合計345万1708円を支給した。 (6) 亡Aは,昭和61年厚生省令第17号による改正前の厚生年金保険法施行規則68条所定の現況届を提出しなかったため,平成6年12月分以降の年金給付の支給を停止された。 (甲14,乙32)(7) 社会保険業務センターは,平成7年4月10日,亡A名義の年金受給権者現況届(平成7年3月22日付けのもの。甲15)を受領した。 (8) 亡A (甲14,乙32)(7) 社会保険業務センターは,平成7年4月10日,亡A名義の年金受給権者現況届(平成7年3月22日付けのもの。甲15)を受領した。 (8) 亡Aは,平成11年12月5日に死亡した。 (9) 原告は,平成12年9月29日(受付日),社会保険庁長官に対し,亡Aの子として,厚生年金保険法37条1項に基づき,亡Aが受給すべき遺族年金のうち未支給分の給付請求をした。 なお,原告の妹であるD,原告の弟であるEは,いずれも,原告に対して,亡Aに係る遺族年金の受領権限を委任した。 (10) 社会保険業務センターは,平成13年6月28日付けで,原告の代理人とされる「F」に対し,事務連絡書(甲20)を送付して,原告に対する遺族年金の支払金額等について通知した。 (甲20)(11) 社会保険庁長官は,平成13年7月13日付けで,上記請求に対する応答としての決定(以下「本件処分」という。)を行い,原告に対して「厚生年金保険未支給保険給付支給決定通知書」を送付してこれを通知するともに,同日,平成7年8月分から平成11年12月分までの未支給遺族年金合計416万7866円を,平成13年8月15日,平成6年12月分から平成7年7月分までの未支給遺族年金合計62万1899円を,それぞれ支給した。 (12) 原告は,平成13年9月19日(受付日),本件処分で認められた未支給分のほかに,昭和29年から平成2年までの未支給分が存在すると主張し,本件処分を不服として,山口社会保険事務局社会保険審査官に対し,審査請求をしたところ,同審査官は,平成14年1 で認められた未支給分のほかに,昭和29年から平成2年までの未支給分が存在すると主張し,本件処分を不服として,山口社会保険事務局社会保険審査官に対し,審査請求をしたところ,同審査官は,平成14年1月31日付けで,上記審査請求が不適法であるとして却下する旨の決定をした。 (13) 原告は,平成14年4月9日(受付日),上記決定を不服として,社会保険審査会に対し,再審査請求をしたところ,社会保険審査会は,平成14年12月24日付けで,再審査請求を適法であると認めたうえで,本案について審理し,本件処分は妥当であるとして,上記再審査請求を棄却する旨の裁決をした。 なお,原告の再審査請求代理人原和良は,同月27日,上記裁決書謄本を受領した。 3 当事者の主張(原告の主張)(1) 原告が遺族年金請求権を有する根拠ア亡Aは,夫である亡Bの死亡により,昭和29年11月に遺族年金を受給する権利を取得し,しばらくして年金の裁定を受けた。 しかし,その後,亡Aは,昭和36年8月に,北朝鮮に帰国した。 亡Aは,平成2年ころ,遺族年金を受給できることを知り,平成3年3月,問い合わせを行ったところ,受給資格を有することを知るに至った。亡Aが遺族年金の支給を受けることができる期間の始期は,労働基準法79条による遺族補償給付が終了した昭和35年12月であった。 その後,亡Aは,未支給の遺族年金を含めた年金の支給を再三求めたが,同人が文盲であることに加え,日朝間の交流・音信の困難さ,送金上の問題等を理由として,具体的支給手続は遅々として進まず,平成8年に,平成2年12月分から平成6年11月分までの未支給分が遡って支給されるに至った。 亡Aは,平成7年3 難さ,送金上の問題等を理由として,具体的支給手続は遅々として進まず,平成8年に,平成2年12月分から平成6年11月分までの未支給分が遡って支給されるに至った。 亡Aは,平成7年3月に現況届を提出したが,何らかの理由で支給が停止され,平成6年12月分以降の遺族年金が未支給となったまま,平成11年12月5日,死亡するに至った。 原告は,亡Aの子として,平成12年9月に,亡Aに係る未支給保険給付の請求を行った。 これに対して,社会保険庁は,平成13年7月13日に,平成7年8月分から平成11年12月分,平成13年8月15日に,平成6年12月分から平成7年7月分までの未支給遺族年金について,それぞれ支給したが,平成2年11月分以前の未支給分については支給を行わなかった。 イ原告は,以下のとおり,亡Aが受給すべきであった昭和35年12月分から平成2年11月分までの遺族年金の支払を請求する権利を有する。 a 昭和35年12月から昭和55年2月までにおける遺族年金額平成16年9月24日付けの被告の「回答」(甲35)によれば,昭和35年12月から昭和55年2月までに亡Aが受給すべきであった遺族年金は,加給分を除き,合計金320万6049円であった(内訳については別紙請求金額目録参照)。 b 昭和56年2月から昭和61年2月までにおける遺族年金額当事者照会に基づく被告の回答によれば,昭和56年2月から昭和60年11月までの間,国から何者かに支給された遺族年金で,亡Aが受給すべきであった遺族年金は,合計金380万5539円であり(内訳については別紙請求金額目録参照),その余は支給されておらず,支給されるべきであった金額も不 から何者かに支給された遺族年金で,亡Aが受給すべきであった遺族年金は,合計金380万5539円であり(内訳については別紙請求金額目録参照),その余は支給されておらず,支給されるべきであった金額も不明である。 c 昭和61年3月から平成2年11月までにおける遺族年金額昭和61年3月から平成2年11月までに亡Aが受給すべきであった遺族年金は,合計金364万6816円であった(内訳については別紙請求金額目録参照)。 ウ原告は,少なくとも(請求すべき金額が判明した範囲内で)上記イaないしc記載の金額の合計である金1065万8404円及びこれに対する遅延損害金の支払を受ける権利を有する。 (2) 亡Aは平成2年11月分までの遺族年金の支給を受けていないことア株式会社三井住友銀行渋谷駅前支店の回答(甲36)によると,昭和58年12月13日付けで,埼玉県戸田市α-16-23C方を住所とするA′名義で平和相互銀行の普通預金口座が開設されている。 しかし,そもそも,昭和58年当時,亡Aが日本に居住していないのはいうまでもないうえ,短期的な来日・滞在すらしておらず,同人が(この時期に)口座を開設したことはあり得ない。 同口座は,何者かが亡Aの遺族年金を不正受給すべく,同人の日本名を利用し,本人になりすまして開設したものであることは明らかである。 同口座には,社会保険庁から,平成2年10月15日付けで13万5366円,同年12月17日付けで13万5366円の遺族年金が送金され,平成4年7月28日には,同口座から金50万円が出金された記録が残っているが,亡Aは,上記預金口座の管理に全く関与しておらず,出金した事実もない。 イ被告 366円の遺族年金が送金され,平成4年7月28日には,同口座から金50万円が出金された記録が残っているが,亡Aは,上記預金口座の管理に全く関与しておらず,出金した事実もない。 イ被告は,昭和35年12月から昭和55年2月までの間,遺族年金について未払である旨の記録は存在しないので,支払済みであることが推認されると主張する。 しかし,原告の手紙(甲30,31)や日朝間の政治的経済的状況等の諸般の事情からすると,この間の送金は,亡Aと何の関係もない第三者に対して行われたものと推認され,亡Aには支給されていなかったというべきである。 ウ本件において,亡Aは,少なくとも昭和36年6月の裁定以降の遺族年金について支給を請求していた。これに対し,被告は,Cなる人物あてに遺族年金が支給されている旨伝え,同人についての調査を依頼した。 亡Aは,第三者が自己の日本名を語り,長期間にわたって遺族年金を受給していたことを知り,被告の対応から,当該不正受給者を調査しない限り,それまでの未支給分を受給できないものと考えたため,過去の年金未支給分について即座に不服を申し立てなかったにすぎず,これをもって「亡Aが年金の支給があったことを認めていた旨推認させる」根拠とすることはできない。 (3) 消滅時効が成立していないことア本件の年金受給権は,本邦での生活を余儀なくされた亡Aが遺族年金を受給するための手続が保障されていなかったことや,国交の断絶した国家間における音信の困難性という一種の障害事由により,長年,亡Aが請求することができなかったものであり,その障害事由の除去された時期から,支分権としての年金受給権ではなく,未支給年金総額についての請求権の時効が進行すると解すべきである。 より,長年,亡Aが請求することができなかったものであり,その障害事由の除去された時期から,支分権としての年金受給権ではなく,未支給年金総額についての請求権の時効が進行すると解すべきである。 イ社会保険庁は,平成13年6月28日付けで,原告の代理人として交渉に当たっていたFに対して,「なお,平成2年11月分までの年金については,「戸田市α-16-3C方」の「A′」様に対して支払が行われております。昭和59年以前のA′さんの年金受取りは,「β郵便局」と登録されていましたが,古いことですので住所等の記録は消えておりますので,詳細についてはわかりません。」と記載された書面を送付している。 これは,亡Aのそれまでの未払分の請求に対して,平成2年11月分までの支払を留保し,社会保険庁において支払の有無を調査し,その結果,支払済みであるとして亡Aへの支払拒否の意思を初めて明確にした文書である。 また,亡Aや原告,Fらも,違法に亡Aの年金を受給し続けてきた「C」「A′」なる人物の調査を被告から依頼され,その全容が判明しない限り,他人受給分の支給はされないものと思わされたのである。 よって,過去の遺族年金請求権(未払分)の消滅時効の起算点は,どんなに早くても,平成13年6月28日付けの亡Aあての書面(甲20)がFに到達した時点から進行すると解するべきであり,原告が審査請求を申し立てた同年9月19日に,時効の進行は中断しているから,原告の年金受給権は時効消滅していない。 (4) よって,原告は,平成15年(行ウ)第223号事件においては,本件処分の取消しを求め,平成16年(行ウ)第283号事件においては,被告国に対し,昭和35年12月分から平成2年11月分までの遺族年金として金1065 ,平成15年(行ウ)第223号事件においては,本件処分の取消しを求め,平成16年(行ウ)第283号事件においては,被告国に対し,昭和35年12月分から平成2年11月分までの遺族年金として金1065万8404円及びこれに対する亡Aが請求した月の翌月である平成3年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。 (被告の主張)(1) 本案前の主張(平成15年(行ウ)第223号事件に関して)ア年金給付訴訟の類型厚生年金保険法33条(旧厚生年金保険法33条も同じ)は,「給付を受ける権利は,その権利を有する者(以下「受給権者」という。)の請求に基づいて,社会保険庁長官が裁定する。」と定めている。 同条は,国民年金法16条と同様に,保険給付を受けるための条件が客観的に満たされていても,これにより直ちに具体的な保険給付請求権が発生するのではなく,行政庁たる社会保険庁長官の裁定処分により,「給付を受ける権利」の存在が確認されて初めて給付を受けることができることを定めたものであり,裁定処分によって確認される「給付を受ける権利」を基本権ないし受給権という。 これに対し,基本権に基づいて,定められた支給期月ごとに年金の支給を受ける権利が発生する(厚生年金保険法36条)が,これを支分権という。 支分権は,国に対する具体的な金銭債権であり,基本権が存在する限り,特段の行政処分を経ることなく,支給期月の到来によって発生し,また,その支払は,国の歳出に関する事務として会計法の適用を受ける。 上記のような基本権と支分権の区別によれば,①基本権の有無を争う者は,行政庁たる社会保険庁長官を被告として,これが存在しないとする ,国の歳出に関する事務として会計法の適用を受ける。 上記のような基本権と支分権の区別によれば,①基本権の有無を争う者は,行政庁たる社会保険庁長官を被告として,これが存在しないとする裁定処分の取消訴訟を,②基本権の存在を前提として,具体的な支分権の支払を求める者は,国を被告として,その支払請求訴訟を,それぞれ提起すべきである。 イ未支給の保険給付請求(厚生年金保険法37条)の場合厚生年金保険法37条と同旨の規定である国民年金法19条1項に基づく遺族の未支給年金請求の法的性格に関する最高裁判所平成7年11月7日第三小法廷判決(民集49巻9号2829頁参照)からすると,遺族等による未支給保険給付請求に対する社会保険庁長官の応答(厚生年金保険法37条)は,厚生年金保険法33条の定める基本権についての裁定処分に準じて,「給付に関する処分」(厚生年金保険法90条)とされ,自己が厚生年金保険法37条の遺族に該当すると主張する者は,行政庁たる社会保険庁長官を被告として,上記の応答処分の取消訴訟を提起すべきである。 他方,未支給保険給付の具体的な金額は,死亡した受給権者の請求により既にされた裁定に基づいて,おのずと定まるものであり,支給額として新たに裁定されるものではない。社会保険庁長官の応答が取消訴訟の対象とされる理由が,「請求をした者が請求権を有する所定の遺族に当たるか否かを統一的見地から公権的に確認すること」にある点にかんがみると,社会保険庁長官が,当該請求者が厚生年金保険法37条所定の遺族であることを認め,既に未支給年金の一部を給付している場合には,もはや法所定の遺族に当たるか否かを確認する必要はないのであるから,その余の未支給分の支払を求める者は,端的に,国を被告として,その支払 あることを認め,既に未支給年金の一部を給付している場合には,もはや法所定の遺族に当たるか否かを確認する必要はないのであるから,その余の未支給分の支払を求める者は,端的に,国を被告として,その支払請求訴訟を提起すべきであると解される。 また,厚生年金保険法37条1項所定の遺族は,死亡した受給権者が有していた未支給の支分権を同項の規定に基づいて承継取得するにすぎず,請求者が未支給保険給付の額を争う場合,これは正に受給権者から承継取得した支分権に基づく支給請求であるから,受給権者が支分権に基づいて支給請求をする場合同様,国を被告として,その支払請求訴訟を提起すべきである。 ウ実務上も,以下のとおり,上記解釈に沿う運用が行われている。 すなわち,厚生年金保険法37条1項に基づく支給請求が行われた場合,①支給されるべき未支給保険給付がある場合(未支給保険給付があり,全額支給されるべき場合及び未支給保険給付の一部が時効消滅している場合),②そもそも未支給保険給付がない場合(死亡した受給権者に全額支給されている場合及び死亡した受給権者の年金の支給が全額停止されていたため未支給の年金が存在しない場合),③請求者が未支給の保険給付を請求できる遺族の範囲に該当しないか又は生計を一にしていたとは認められず,未支給保険給付の請求権者に該当しない場合,④未支給保険給付の全部が時効消滅している場合のそれぞれにおいて,社会保険庁長官の対応も異なる。 ①,③,④の場合には,請求者に送付される書面上,「社会保険庁長官の決定」との文言が記載されるとともに,不服申立権の教示(行政不服審査法57条)が附記されている。他方,②の場合には,「社会保険庁長官の決定」との文言はなく,不服申立権の教示の附記もない。 の決定」との文言が記載されるとともに,不服申立権の教示(行政不服審査法57条)が附記されている。他方,②の場合には,「社会保険庁長官の決定」との文言はなく,不服申立権の教示の附記もない。 これは,①及び③の場合には,請求に対する応答の中に,請求者が請求権を有する所定の遺族に当たるか否かの確認処分(裁定)が含まれており,④の場合にも,当該請求者について,時効中断事由の存否等消滅時効の成否を判断する必要があり,その前提として,その者が請求権を有する所定の遺族に当たるか否かの確認をすることとなり,裁定が行われることから,③と同様の取扱いがされるが,②の場合には,そもそも未支給保険給付がないから,請求者が請求権を有する所定の遺族に当たるか否かを判断するまでに至らず,社会保険庁長官による裁定が行われないからである。 なお,①の場合に請求者に送付される書面(乙20)上,支給金額が記載されているが,これは請求者に支給金額を知らせるためにすぎず,本請求に係る具体的な支払期日及び支払金額については,別途,振込通知書等によって,請求者に通知する取扱いとなっている。 エ本件の場合原告が,厚生年金保険法37条に規定する「保険給付の受給権者の子」であって,「(当該受給権)者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたもの」であることは,当事者間に争いがない。 被告は,現に,平成13年7月13日付けで,原告に対し,上記の要件の存在を認めて,厚生年金保険未支給保険給付支給決定処分(本件処分)をするとともに,亡Aの未支給遺族年金合計416万7866円を支給し,さらに,平成13年8月15日,62万1899円を支給した。 原告の本訴提起の目的は,上記給付のほかに,未支給の年 するとともに,亡Aの未支給遺族年金合計416万7866円を支給し,さらに,平成13年8月15日,62万1899円を支給した。 原告の本訴提起の目的は,上記給付のほかに,未支給の年金給付があるとして,その支給を求める点にあるものとみられるところ,厚生年金保険法37条1項に基づく未支給年金給付の支給請求に対する裁定は,請求者が請求権を有する所定の遺族に当たるか否かの確認にとどまり,支給金額は裁定の内容ではないから,原告は,社会保険庁長官のした裁定処分の取消しを求めるのではなく,端的に,国を被告として,その支払請求訴訟を提起すべきであり,平成15年(行ウ)第223号事件は訴えの利益を欠き,不適法である。 (2) 本案の主張ア支払済みであること亡Aに係る昭和61年3月分から平成2年11月分までの遺族年金については,埼玉県戸田市α-16-23C方・「A′」名義の銀行口座(株式会社住友銀行渋谷東口支店・口座番号ZZZZZZZ)に振り込まれ,支給された。 昭和35年12月から昭和55年2月までの間の(亡Aに対する)遺族年金額に係る被告の回答(甲35)は,あくまで,原告の求めに応じ,法律に基づく加給年金額を除いた遺族年金を試算した額にすぎず,証拠書類は,保存期間の経過により残存しておらず,事実の確認は不可能である。しかし,昭和35年12月から昭和55年2月までの間の遺族年金について未払である旨の記録も存在しないから,亡Aに支払われたものと推認される。 また,昭和55年2月分から昭和60年10月分までの間の遺族年金についても,保存期間の経過により証拠書類は残存していない。しかし,平成3年3月ころに亡Aの照会に基づく調査の際に作成された「A支払記録経過表」(乙32 2月分から昭和60年10月分までの間の遺族年金についても,保存期間の経過により証拠書類は残存していない。しかし,平成3年3月ころに亡Aの照会に基づく調査の際に作成された「A支払記録経過表」(乙32)に,昭和59年5月1日から昭和60年11月1日の間に6回にわたり,昭和55年2月分から昭和60年10月分までの遺族年金合計380万5539円が,亡Aに対する支払として株式会社住友銀行渋谷東口支店の銀行口座に振り込まれた旨記載されていることからすると,昭和61年3月分から平成2年11月分までと同様,A′名義の銀行口座に振り込まれたものと推認される。 したがって,本件は「その者に支給しなかったものがあるとき」(厚生年金保険法37条1項)という要件を満たしておらず,原告の請求は理由がない。 イ時効により消滅していること仮に,上記支払が亡Aに対してされたものではなくても,上記遺族年金に係る支払請求権は,既に時効により消滅したものである。 すなわち,年金に係る受給権者等の権利は,基本権と支分権とに分かれているところ,基本権たる年金給付を受ける権利は,その支給事由が生じた日から「5年を経過したとき」は,厚生年金保険法92条1項により,時効によって消滅する。 これに対し,基本権に基づいて発生する支分権は,国に対する具体的な金銭債権であり,かつ,厚生年金保険法上特段の規定も存在しないことから,国の歳出に関する事務として会計法の適用を受ける。 その結果,支分権は,「5年間これを行わないとき」は,時効により消滅し(会計法30条後段),時効の援用を要せず,行政庁において時効利益を放棄することは許されない(同法31条1項)。また,5年間の短期消滅時効の起算点について 間これを行わないとき」は,時効により消滅し(会計法30条後段),時効の援用を要せず,行政庁において時効利益を放棄することは許されない(同法31条1項)。また,5年間の短期消滅時効の起算点については,特に適用すべき法律の規定がないことから,民法の規定が準用され(会計法31条2項後段),民法166条により,「権利を行使することを得る時より進行」する。 本件は,支分権に基づく年金支給請求であるところ,亡Aは,昭和35年12月分から平成2年11月分までの遺族年金について,平成11年12月5日に死亡するまでの間,その給付を求めたことはない。 上記遺族年金支給請求権は,定められた支給期日が平成元年までは毎年2月,5月,8月,11月の4期,平成2年からは毎年2月,4月,6月,8月,10月,12月の6期であるから,「5年間これを行わな」かったものとして,会計法30条後段に該当することは明らかであり,時効により消滅したものというべきである。 しかるに,原告が主張するところは,国交のない国家間で音信が困難であったというにすぎず,権利を行使するについて何ら法律上の障碍が存したものではない。現に,原告は,亡Aの代理人として,平成3年3月に,年金受給権の存否について照会する内容の書面(乙3)を我が国に送付し,年金を受給できる旨知ったのであるから,遅くともその時点で亡Aにおいて支分権を行使することが十分可能であった。 また,原告は,亡A,原告及びFらが,Cなる人物等の調査を社会保険庁から依頼されたため,その全容が判明しない限り,他人に支給された分の支給は受けられないと誤信させられた旨主張するが,そのような主観的事情が時効進行の妨げにならないことは明らかである。 したがって,亡A その全容が判明しない限り,他人に支給された分の支給は受けられないと誤信させられた旨主張するが,そのような主観的事情が時効進行の妨げにならないことは明らかである。 したがって,亡Aに係る昭和35年12月分から平成2年11月分までの遺族年金支給請求権は,定められた支給期日から時効が進行しており,すべて時効により消滅している。 4 争点したがって,本件の争点は,次のとおりである。 (1) 厚生年金保険法37条1項に基づき,未支給保険給付の支給請求をして,社会保険庁長官のした処分によって未支給分として一定の金員を受領した年金受給権者の遺族が,受領した分以外にも未支給分があるとして,その支給を請求しようとする場合,社会保険庁長官を被告として上記処分の取消訴訟を提起すべきか,それとも,直接,国を被告として,未支給分の支払請求訴訟を提起すべきか(本案前の争点)。 (争点1)(2) 本件において,原告は,昭和35年12月分から平成2年11月分までの(亡Aに係る)遺族年金の支給を受ける権利を有するか(本案の争点)。 (争点2)第3 当裁判所の判断 1 争点1について最高裁判所平成7年11月7日第三小法廷判決(民集49巻9号2829頁参照)は,「国民年金法16条は,給付を受ける権利は,受給権者の請求に基づき社会保険庁長官が裁定するものとしているが,これは,画一公平な処理により無用な紛争を防止し,給付の法的確実性を担保するため,その権利の発生 民年金法16条は,給付を受ける権利は,受給権者の請求に基づき社会保険庁長官が裁定するものとしているが,これは,画一公平な処理により無用な紛争を防止し,給付の法的確実性を担保するため,その権利の発生要件の存否や金額等につき同長官が公権的に確認するのが相当であるとの見地から,基本権たる受給権について,同長官による裁定を受けて初めて年金の支給が可能となる旨を明らかにしたものである。同法19条1項により遺族が取得するのは支分権たる請求権ではあるが,同法16条の趣旨に照らして考えると,上記19条1項にいう請求は裁定の請求に準じて社会保険庁長官に対してすべきものであり(現に国民年金法施行規則は,法19条の規定による未支給年金の支給の請求は所定の請求書を同長官に提出することによって行うべき旨を定めている。),これに対して同長官が応答することが予定されているものと解される。そして,社会保険庁長官の応答は,請求をした者が請求権を有する所定の遺族に当たるか否かを統一的見地から公権的に確認するものであり,不服申立ての対象を定めた同法101条1項にいう「給付に関する処分」に当たるものと解するのが相当である。したがって,同法19条1項所定の遺族は,社会保険庁長官による未支給年金の支給決定を受けるまでは,死亡した受給権者が有していた未支給年金に係る請求権を確定的に取得したということはできず,同長官に対する支給請求とこれに対する処分を経ないで訴訟上未支給年金を請求することはできないものといわなければならない。」旨判示しているところ,国民年金法19条に相当する厚生年金保険法37条に基づく請求についても,同様に社会保険庁長官による未支給年金の支給決定を受けるまでは,死亡した受給権者が有していた未支給年金に係る請求権を確定的に取得したということはできないと解するのが 法37条に基づく請求についても,同様に社会保険庁長官による未支給年金の支給決定を受けるまでは,死亡した受給権者が有していた未支給年金に係る請求権を確定的に取得したということはできないと解するのが相当である。 ところで,厚生年金保険法37条1項の規定によれば,上記の同条に基づく請求に係る社会保険庁長官の支給決定は,①保険給付の受給権者が死亡したこと,②その死亡した者に支給すべき保険給付で未支給のものがあること,③その死亡者の配偶者,子等であり,その者の死亡当時,その者と生計を同じくするものの請求であることの各要件をいずれも満たすことが要件とされており,社会保険庁長官は,上記の支給決定を行うに当たっては,②の未支給分があるか否かの要件を満たしているか否かを判断するために,受給権者本人に対して支給すべき金額及び現実に支給済みの金額を算定する必要がある。 そして,同項の規定により遺族が取得するのは,過去に発生した具体的な支分権たる請求権であって,必ず具体的な金額をもってその内容が特定される性質のものであり,「厚生年金保険未支給保険給付支給決定通知書」(乙20の1)も,「あなたから請求のありました未支給年金・保険給付については,次のとおり社会保険庁長官が決定しましたので通知します。」との不動文字による記載に続けて,年金証書の基礎年金番号・年金コード,亡くなられた受給権者の氏名のほかに,支給対象期間及び支給金額を具体的に記載するものであり,これらと切り離して,単に請求者が厚生年金保険法37条1項所定の遺族である旨を裁定したとの趣旨の記載は存在しない。 そして,そもそも厚生年金保険法37条1項に基づく請求は,過去に発生した具体的な支分権たる請求権に係る一回的な支払の請求であって,受給権者について基本権の存在を確定する場 は存在しない。 そして,そもそも厚生年金保険法37条1項に基づく請求は,過去に発生した具体的な支分権たる請求権に係る一回的な支払の請求であって,受給権者について基本権の存在を確定する場合のように,同項に基づく請求をした者について,これらの具体的な請求権との関係を離れて,同人が死亡した受給権者の配偶者,子,父母,孫,祖父母又は兄弟姉妹のいずれかであって,受給権者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものであるということのみを独立して公権的に確認する意義も見出し難い。 これらのことからすれば,過去に発生した具体的な支分権たる請求権について厚生年金保険法37条1項に基づく請求に対して社会保険庁長官が行う決定は,具体的な過去の未支給の保険給付について請求者が同項所定の遺族に該当するか否かについて,その具体的な未支給の範囲を含めて,統一的見地から公権的に確認する「保険給付に関する処分」であると解するのが相当であって,請求者は,一部の未支給保険給付の存在を認めてこれを支給する裁定がされても,なおそのほかにも未支給分が存在すると主張する場合には,その変更を求めて取消訴訟を提起することができると解すべきである。 ちなみに,被告は,厚生年金保険法37条1項に基づく請求に対して社会保険庁長官の行う決定は,請求者が請求権を有する所定の遺族に当たるか否かの確認にとどまり,支給金額は裁定の内容ではなく,仮に同項に基づく請求があっても,未支給の金額がないと判断した場合には,請求者が請求権を有する所定の遺族に当たるか否かを判断するまでに至らず,社会保険庁長官による裁定が行われないと主張するが,その趣旨が,上記のような判断に至った場合には何らの処分も行われないというのであれば,取消しの対象となる処分はないことになり,請求者は,取消訴訟 ず,社会保険庁長官による裁定が行われないと主張するが,その趣旨が,上記のような判断に至った場合には何らの処分も行われないというのであれば,取消しの対象となる処分はないことになり,請求者は,取消訴訟を提起することはできず,また,社会保険庁長官の応答処分を受けていないことになるから,当事者訴訟を提起してその給付を求めることもできないということとなって,その結論が極めて不合理であることは明らかである。 したがって,本件処分の取消しを求める平成15年(行ウ)第223号事件に係る訴えは適法であるが,このような方法を採ることなく,直接,未支給分の年金の給付を求める平成16年(行ウ)第283号事件に係る訴えは不適法である。 2 争点2について(1) 各項末尾掲記の証拠等によれば,以下の事実が認められる。 ア亡Aは,夫であった亡Bが昭和29年11月に亡くなった後,昭和30年6月ころ,遺族年金の裁定を受けたが,旧厚生年金保険法64条の規定により,昭和35年12月に,その支給が開始されることとなっていた。 (乙1,2)イ亡Aは,昭和36年8月ころ,日本から,本国である北朝鮮に帰国し,平成3年までの間,一切,遺族年金に関する請求等をしなかった。 (甲28,31,乙3,11)ウ亡Aは,平成3年3月1日付けで,原告に代筆させて,山口県民生部保険課に対し,北朝鮮にいても遺族年金の給付を受けることができるか等について照会する手紙(乙3)を送付し,この手紙は,同月ころ,同課 ウ亡Aは,平成3年3月1日付けで,原告に代筆させて,山口県民生部保険課に対し,北朝鮮にいても遺族年金の給付を受けることができるか等について照会する手紙(乙3)を送付し,この手紙は,同月ころ,同課に到着した。 これに対し,同課は,同年4月17日付けで,問い合わせのあった保険金については,亡Aには受給資格がある旨,亡A及び原告に通知するとともに,「C」なる人物との関係等について,亡Aらに照会した。 (甲12,乙3)エ社会保険庁長官は,平成6年12月15日に,亡Aに対し,平成2年12月分から平成6年11月分までの遺族年金345万1708円を支給した。 社会保険業務センターは,平成7年4月10日,亡A名義の年金受給権者現況届及び居住証明書(いずれも平成7年3月22日付けのもの。それぞれ甲15,甲16)を受領した。 亡Aは,平成8年3月29日付けで,上記年金を平成7年9月18日に受領した旨,社会保険業務センターあてに通知したが,その際,特段,支給金額等について異議を述べることもなかった。 (甲15,16,18,27の2,乙11,15,32)オ亡Aが平成11年12月5日に死亡した後,原告は,平成12年9月29日(受付日),社会保険業務センターに対し,亡Aが受給すべきであった遺族年金のうち未支給分につき,給付請求をした。 (甲6,10,乙5)(2) 年金 未支給分につき,給付請求をした。 (甲6,10,乙5)(2) 年金に係る受給権者等の権利は,基本権(保険給付の裁定を受ける権利)と支分権(基本権に基づき,毎支払期ごとに支払われる年金の請求権)とに分けられるが,そのうち基本権は,厚生年金保険法92条1項により,その支給事由が生じた日から5年を経過したときは時効によって消滅し,他方,支分権については,厚生年金保険法上特段の規定も存在しないから,国の歳出に関する事務として会計法の適用を受け,5年間これを行わないときは時効により消滅し(会計法30条後段),時効の援用を要せず,行政庁において時効利益を放棄することもできない(同法31条1項)。 (3) 本件では,亡Aは,亡Bが死亡してから5年以内に,基本権に係る裁定を受けており,基本権の存在には争いがない。 本訴において,原告は,既に発生した支分権に基づく請求として,昭和35年12月分から平成2年11月分までの,亡Aに係る遺族年金の支給を受ける権利があると主張するものであるが,(1)で認定したとおり,亡Aは,平成3年3月1日まで,遺族年金の支給を全く請求していないから,原告が本訴において主張する部分のうち,少なくとも,平成3年3月時点において5年経過済みの部分(昭和35年12月分から昭和61年1月分まで)については,会計法30条後段,31条1項後段により,当該時点で時効により消滅済みであったことが明らかである。 また,亡A(ないし原告)による平成3年3月1日付けの手紙(乙3)は,基本的に,遺族年金受給権の有無について照会する趣旨のものと解されるが,仮に,ここに,昭和61年2月分から平成 る。 また,亡A(ないし原告)による平成3年3月1日付けの手紙(乙3)は,基本的に,遺族年金受給権の有無について照会する趣旨のものと解されるが,仮に,ここに,昭和61年2月分から平成2年11月分までの遺族年金の支給を請求する趣旨が含まれていたとしても,亡Aないし原告は,平成6年12月15日に支給された平成2年12月分から平成6年11月分までの遺族年金を受領する際,年金額算定の基礎となる期間や年金額自体について何ら異議を述べておらず,その後,原告が,平成12年9月29日(受付日)に,未支給の遺族年金について給付請求をするまで,社会保険庁長官や国に対して,平成3年3月時点では時効消滅していなかった部分(昭和61年2月分から平成2年11月分まで)について給付を求めてはいないから,当該部分についても,「5年間これを行わない」ものとして,会計法30条後段,31条1項後段により消滅時効が成立したものと認められる(なお,社会保険庁は,平成12年9月29日までの間,亡Aないし原告名義の手紙等を複数回受領しているが,いずれも,昭和61年2月分から平成2年11月分までの遺族年金の支払を請求するものではない。)。 この点について,原告は,国交の断絶した国家(我が国と北朝鮮)間における音信の困難性や,亡Aは,「C」「A′」なる人物の調査を依頼されたため,その全容が判明しない限り,遺族年金を請求できないものと思い込んでいた旨主張するが,日朝間の国交が断絶していても,北朝鮮から出した郵便物は我が国に届いている(現に,亡Aないし原告が出した手紙が我が国に届いている。)から,客観的にみて,亡Aが遺族年金を請求できない状況にあったとはいえないし,また,亡Aの主観的事情は,消滅時効の成立を何ら妨げるものではないから,消滅時効に関する原告の主張 我が国に届いている。)から,客観的にみて,亡Aが遺族年金を請求できない状況にあったとはいえないし,また,亡Aの主観的事情は,消滅時効の成立を何ら妨げるものではないから,消滅時効に関する原告の主張は理由がない。 3 このように,昭和35年12月分から平成2年11月分までの遺族年金については消滅時効が成立しているから,これらが実際に亡Aに対して支払われたか否かを問題にするまでもなく,本件処分は適法であり,本件処分の取消しを求める旨の原告の平成15年(行ウ)第223号事件被告に対する請求は理由がない。 第4 結論以上のとおり,原告の平成16年(行ウ)第283号事件被告に対する請求は不適法であるから,これを却下することとし,原告の平成15年(行ウ)第223号事件被告に対する請求は理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官市村陽典裁判官石井浩裁判官矢口俊哉

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