平成14(行ウ)396 文書非開示決定取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年3月18日 東京地方裁判所 情報公開
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判決文本文11,318 文字)

主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求原告が「市民参加条例策定委員会委員応募者に対する書類選考に関する情報を記載したもの。その他関連する資料,特に応募者提出の論文」についてした情報公開請求に対し,被告が平成13年8月13日付けでした決定のうち,「応募者提出の応募論文」(ただし,住所,氏名,電話番号,年齢,性別及び職業を除いた部分 )を非公開とする旨の決定を取り消す。 第2 事案の概要本件は,東京都小金井市の住民である原告が,小金井市情報公開条例に基づき,小金井市市民参加条例策定委員会の公募委員の応募者に係る書類選考に関する情報を記載した文書その他関連する資料,特に応募者の提出した論文の公開を求めたところ,被告が,上記公開請求に係る情報のうち上記論文等について,同条例9条2号に定める非公開情報に該当することを理由としてこれを非公開とする決定をしたことから,原告が,上記論文のうち氏名,住所,電話番号,年齢,性別及び職業を除いた部分を非公開としたことを不服として,上記決定の当該部分の取消しを求めている事案である。 1 本件条例の定め(1) 小金井市情報公開条例(平成10年小金井市条例第1号。以下「本件条例」という。)5条は,何人も,実施機関に対し,市政情報の公開を請求することができる旨規定する。 そして,本件条例7条1項は,実施機関が本件条例6条所定の事項を記載した請求書による市政情報の公開請求を受理したときは,受理した日から起算して14日以内に,上記請求書を提出したもの(以下「請求者」という。)に対し 例7条1項は,実施機関が本件条例6条所定の事項を記載した請求書による市政情報の公開請求を受理したときは,受理した日から起算して14日以内に,上記請求書を提出したもの(以下「請求者」という。)に対し,請求に係る市政情報を公開する旨又はしない旨の決定をしなければならない旨規定し,本件条例8条1項は,本件条例7条1項の規定による請求に係る市政情報を公開することと決定したときは,すみやかに請求者に対して当該市政情報の公開をしなければならない旨規定する。 (2) 一方,本件条例9条2号は,次の情報が記録されている市政情報について,当該情報の公開をしないことができる旨規定する。 「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)で,特定の個人が識別され,又は識別され得るもののうち,一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの。ただし,次に掲げる情報を除く。 ア法令等の定めるところにより,何人でも閲覧することができる情報イ実施機関が作成し,又は取得した情報で公表を目的としているものウ当該個人の公的地位又は立場に関する情報であって,公開することが公益上必要であると認められるものエ人の生命,身体,健康,財産又は生活を保護するため,公開することが一般に必要であると認められるもの」(3) なお,本件条例10条は,請求に係る市政情報に本件条例9条各号のいずれかに該当する情報とそれ以外の情報が記録されている場合において,公開しないことができる情報とそれ以外の情報とを分離できるときは,同条各号に該当する部分を除いて,市政情報の公開をしなければならない旨規定する。 2 前提となる事実(これらの事実はいずれも当事者間に争いがない。)( それ以外の情報とを分離できるときは,同条各号に該当する部分を除いて,市政情報の公開をしなければならない旨規定する。 2 前提となる事実(これらの事実はいずれも当事者間に争いがない。)(1) 小金井市は,平成13年6月20日付け市報において,小金井市市民参加条例策定委員会の委員を募集した。上記市報には,上記委員の応募対象は,同市内に在住する20歳以上の者で,市民協働及び市民参加等に関心のある者であり,応募方法として,同年7月5日までに,市民自治の基本理念,市民協働及び市民参加等のあり方に関する論文(800字以内)と住所,氏名,電話番号,年齢,性別及び職業を明記のうえ,直接,郵送又はFAXで同市企画課に応募する旨記載されているが,上記委員の選考方法については記載されていなかった。 (2)ア原告は,平成13年8月3日付けで,被告に対し,本件条例に基づいて,「市民参加条例策定委員会委員応募者に対する書類選考に関する情報を記載したもの。その他関連する資料,特に応募者提出の論文」の公開を請求した。 イこれに対し,被告は,平成13年8月13日付けで,原告に対し,公開請求に係る上記各情報のうち,「小金井市市民参加条例策定委員会の公募委員の決定について」という件名の起案書の一部を公開したが,応募者10名の氏名,住所,性別,年齢,職業,電話(FAX)番号,提出論文及び評定順位については,本件条例9条2号に定める非公開事由に該当するとして,これらの情報を非公開とする旨の決定をした(以下,上記応募者の提出論文を「本件各論文」といい,本件各論文である個々の論文を,別紙「非公開文書の記述内容一覧」に従って,「本件論文1」ないし「本件論文10」といい,上記決定のうち,被告がした本件各論文を非公開とする部分を「本件決定」という。)。 各論文である個々の論文を,別紙「非公開文書の記述内容一覧」に従って,「本件論文1」ないし「本件論文10」といい,上記決定のうち,被告がした本件各論文を非公開とする部分を「本件決定」という。)。 (3) 原告は,上記(2)イの決定のうち,本件各論文等の情報を非公開とする部分を不服として,平成13年10月3日付けで,被告に対し,異議申立てをした。 これに対し,被告は,同年11月5日,上記異議申立てについて,小金井市情報公開・個人情報保護審査会に諮問した。 その後,同審査会は,平成14年6月19日付けで,被告に対し,上記(2)イの決定が相当である旨の答申を行い,被告は,同年7月19日付けで,上記異議申立てを棄却する旨の決定をした。 3 当事者双方の主張(被告の主張)(1) 本件条例には,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号。以下「情報公開法」という。)6条2項のように,「当該情報のうち,氏名,生年月日その他特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより,公にしても,個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは,当該部分を除いた部分」は個人に関する情報に含まれないとみなす旨の規定が置かれていないから,本件条例の下においては,独立した一体的な情報の中に非公開事由に該当する個人に関する情報があれば,当該の独立した一体的な情報すべてを非公開とすることができるものである(最高裁判所平成13年3月27日第三小法廷判決・民集55巻2号530頁)。 そして,本件各論文の記載内容は,別紙「非公開文書の記述内容一覧」のとおりであって,①応募者識別部分,②「市民自治の基本理念,市民協働及び市民参加等の在り方」に関する記述部分,③宛先,提出 そして,本件各論文の記載内容は,別紙「非公開文書の記述内容一覧」のとおりであって,①応募者識別部分,②「市民自治の基本理念,市民協働及び市民参加等の在り方」に関する記述部分,③宛先,提出の目的,提出年月日の記述部分(以下,それぞれ「①の部分」ないし「③の部分」という。)から構成されるものであるところ,本件各論文のうち,①の部分は,他の情報と切り離して取り上げた場合,それ自体は情報として意味を有するものではなく,②の部分と合わせて,はじめて情報としての意味を持つものであり,③の部分も同様であるから,その全体が独立した一体的な情報というべきである。 (2) 以上を前提として,本件各論文が本件条例9条2号に定める非公開事由に該当するか否かについて検討する。 ア本件各論文のうち,①及び②の部分が,いずれも本件条例9条2号に定める「個人に関する情報」であることは明らかであり,①の部分により,本件論文の作成者である応募者が識別され得ることも明らかである。 また,本件論文8については,「市民自治の基本理念,市民協働及び市民参加等の在り方」に関する記述部分の中に,「○年○月小金井市の行政計画(注:論文には,具体的な行政計画の名称が記載されている。)が策定され,私も市民代表の策定委員として起草の場に参加させていただくことができた。」との記述があることから,この記述によって,その作成者である個人が特定され得るものである。 イところで,本件条例9条2号に定める「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」とは,プライバシーを侵害するような情報であり,社会通念上他人に知られることを望まないものをいうところ,そのような情報がプライバシーを侵害するような情報であるかについては,個人 あると認められるもの」とは,プライバシーを侵害するような情報であり,社会通念上他人に知られることを望まないものをいうところ,そのような情報がプライバシーを侵害するような情報であるかについては,個人によって感じ方が異なるため,一律的な基準は設けることはできないが,公開を請求された市政情報に,一般市民の個人情報が含まれている場合には,プライバシーを侵害するような情報を広範囲に理解したうえで,特定の個人が識別され,又は識別され得るものはすべて,「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」に該当すると解すべきである。 また,上記②の部分は,市民自治の基本理念,市民協働及び市民参加等のあり方を記述する部分であり,本件各論文の作成者である応募者個人としての思想,信条が記述されているものであって,いわゆるセンシティブ・データに当たるから,本件条例9条2号に定める「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」に該当することも明らかである。 ウそして,本件各論文は,市民参加条例策定委員の公募委員の選考のために,応募者に提出を求めたものであり,あくまで私人としての応募者の立場における意見が自由に記述されているものであって,市民参加条例策定委員としての公的な立場における意見が記述されているものではなく,公募に当たり,提出論文の公開を全く予告していないことから,本件条例9条2号ただし書アないしエのいずれにも該当しないものである。 エしたがって,本件各論文は,個々の論文について,その全体を独立した一体的な情報としてみた場合,いずれも本件条例9条2号に定める非公開事由に該当することは明らかである。 (3) 以上によれば,本件各論文を公開しないこととした本件決定は適法で の全体を独立した一体的な情報としてみた場合,いずれも本件条例9条2号に定める非公開事由に該当することは明らかである。 (3) 以上によれば,本件各論文を公開しないこととした本件決定は適法であるから,原告の請求は棄却されるべきである。 (原告の主張)(1) 原告は,小金井市市民参加条例策定委員会の公募委員の選考過程の透明性を高めたいという思いから,住所,氏名,電話番号,年齢,性別及び職業を除いた本件各論文の公開と,本件各論文がいかなる基準で評価され,選考に当たった審査委員が公募委員の適格性をどのようなものとして判断したかを明らかにするよう求めたのであって,応募者が誰であるかについては,何の関心もない。 そして,本件各論文のうち,応募者の氏名,生年月日,住所,電話番号等の個人が識別できる情報である①の部分を除いた部分については,本件条例9条2号の「個人に関する情報で,特定の個人が識別され,又は識別され得るもの」には該当しないというべきである。 (2) これに対し,被告は,本件各論文に市民参加のあり方や市民参加に係る応募者の主張が記載されていること等から,本件各論文が応募者のプライバシーに関する情報であり,また,個人の思想,信条に係るセンシティブ・データであって,本件条例9条2号に定める「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」に該当する旨主張する。 しかし,「市民自治の基本理念,市民協働及び市民参加等の在り方」に関する論文に,私生活に係るプライバシーに関わる情報が記載されているとは考えにくい。 また,本件各論文は,応募者が小金井市に提出することにより,公衆に提供し,又は提示することに同意したとみなされるべきであるから,そこに個人の思想,信条が記載 れているとは考えにくい。 また,本件各論文は,応募者が小金井市に提出することにより,公衆に提供し,又は提示することに同意したとみなされるべきであるから,そこに個人の思想,信条が記載されていることをもって,それ自体を非公開事由に該当するセンシティブ・データであるとすることは,市民の普通の感覚に違背する論理であって,論文作成者の作成意図を恣意的に歪曲したものというべきである。 このようなことからすれば,本件各論文は,「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」に該当するとはいえず,被告の上記主張は失当である。 (3) 被告は,前掲最高裁判所平成13年3月27日判決を引用し,本件各論文の①ないし③の部分を合わせた全体が独立した一体的な情報であるとしたうえ,これらの情報の一部分に非公開事由に該当する記述があることから,独立した一体的な情報である個々の論文のすべてを非公開とすることができる旨主張している。 しかしながら,本件各論文の場合,②の部分のみを他の部分から切り離して取り上げた場合であっても,市民参加条例策定委員会の公募委員の選考情報として十分意味を持つのであって,実際の公募委員の選考過程においても,①の部分を切り離して②の部分について審査が行われたと考えられる。 さらに,本件条例に関する「適用除外事項細目基準」には,「個人の情報のうち,社会生活上等の情報にあっては,個人が識別されない状態であれば,これを公開しても,プライバシーを中心とする個人の正当な権利,利益を侵害するおそれがないと認められるものも少なくなく,その場合は,氏名その他個人識別性のある部分を除き公開するものとする。」と規定されており,本件条例が小金井市の保有する情報について公開を原則とするも 害するおそれがないと認められるものも少なくなく,その場合は,氏名その他個人識別性のある部分を除き公開するものとする。」と規定されており,本件条例が小金井市の保有する情報について公開を原則とするものであることにかんがみれば,上記基準については,上記のような運用が単に許容されることを示したにすぎないと解することは相当ではない。 このようなことからすれば,本件は,前掲最高裁判所平成13年3月27日判決に係る事案とは異なるものであって,本件各論文の①ないし③の全体が独立した一体的な情報であるからその全体を非公開とすることができるという被告の主張は,理由がないというべきである。 (4) 以上のとおり,本件各論文を公開しないこととした本件決定は,本件条例9条2号の非公開事由に関する解釈を誤ったものであって,違法であるから,取り消されるべきである。 4 争点以上によれば,本件の争点は,本件各論文が本件条例9条2号に定める非公開事由に該当するか否かである。 第3 当裁判所の判断 1 前記「前提となる事実」,証拠(甲2,3,7,乙1)及び弁論の全趣旨によれば,本件各論文の記載内容は,別紙「非公開文書の記述内容一覧」のとおりであり,個々の論文は,応募者の住所,氏名,年齢,職業,電話番号,ファックス番号,性別の記載のある応募者識別部分(①の部分),応募者の「市民自治の基本理念,市民協働及び市民参加等の在り方」に関する思想,信条,意見等を記載した記述部分(②の部分)及び宛先,提出の目的,提出年月日の記述部分(③の部分)から構成されていること,本件論文8には,「市民自治の基本理念,市民協働及び市民参加等の在り方」に関する記述部分の中に,「○年○月小金井市の行政計画(注:論文には,具体的な行政計画の名称が記載されている。) されていること,本件論文8には,「市民自治の基本理念,市民協働及び市民参加等の在り方」に関する記述部分の中に,「○年○月小金井市の行政計画(注:論文には,具体的な行政計画の名称が記載されている。)が策定され,私も市民代表の策定委員として起草の場に参加させていただくことができた。」との記述があることがそれぞれ認められる。 2(1) ところで,原告は,本件決定について,本件各論文のうち①の部分を除いた部分を非公開としたことが違法であり,①の部分を除いた部分を公開すべきであるとして,本件決定の一部の取消しを求めているのに対し,被告は,本件各論文を構成する①ないし③の部分が全体として1個の独立した一体的な情報であるとしたうえで,本件各論文に本件条例の定める非公開事由が存する限り,そのすべてを非公開とすることができる旨主張している。 そこで,これらの主張の当否について検討する。 (2) 本件条例は,10条において,請求に係る市政情報に本件条例9条各号に掲げる非公開事由のいずれかに該当する情報とそれ以外の情報が記録されている場合において,非公開事由に該当する情報とそれ以外の情報とを分離できるときは,非公開事由に該当する部分を除いて,市政情報の公開をしなければならない旨規定しているが,情報公開法6条2項のように,当該情報のうち,氏名,生年月日その他特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより,公にしても,個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは,当該部分を除いた部分は個人に関する情報に含まれないものとみなす趣旨の規定は設けられていない。 このようなことからすれば,本件条例10条は,実施機関に対して,請求に係る市政情報において複数の情報が記録されている場合において,それらの情 ものとみなす趣旨の規定は設けられていない。 このようなことからすれば,本件条例10条は,実施機関に対して,請求に係る市政情報において複数の情報が記録されている場合において,それらの情報のうちに非公開事由に該当するものがあるときは,非公開事由に該当する情報とそれ以外の情報が分離できる限り,非公開事由に該当する部分を除いたその余の部分についてのみ,これを公開することを実施機関に義務付けているにすぎないというべきであって,実施機関に対し,同条を根拠として,非公開事由に該当する独立した一体的な情報をさらに細分化し,その一部を非公開とし,その余の部分には非公開事由に該当する情報が記録されていないものとみなして,これを公開すべきことを義務付けているものと解することはできないというべきである。 したがって,独立した一体的な情報の中に本件条例9条2号に定める非公開事由に該当する記載がある場合,実施機関としては,当該の独立した一体的な情報を細分化することなく一体として非公開とすることができ,実施機関がこのような決定をした場合,請求者が上記の非公開事由に該当する記載を除いたその余の部分の公開を請求する権利はないというべきであるから,実施機関がした非公開決定のうち,当該部分に係る一部の取消しを求めることはできないと解すべきである(前掲最高裁判所平成13年3月27日第三小法廷判決)。 (3) そこで,本件各論文について上記の点を検討する。 本件各論文のうち,①の部分は,他の部分と切り離して取り上げた場合,それ自体は単に当該論文の作成者である個人を特定するための記載にすぎず,社会通念上独立した情報として意味を有するものということはできないのであって,②の部分と合わせて,はじめて当該論文に記載された思想,信条,意見等 該論文の作成者である個人を特定するための記載にすぎず,社会通念上独立した情報として意味を有するものということはできないのであって,②の部分と合わせて,はじめて当該論文に記載された思想,信条,意見等を有する応募者を特定する情報としての意味を持つものである。 また,②の部分についても,他の部分と切り離して取り上げた場合,当該論文に記載された思想,信条,意見等を表明した者が特定できない以上,社会通念上,論文としての意味を有するものということはできないというべきであり,③の部分についても,他の情報と切り離して取り上げた場合,独立した情報として社会通念上意味を有するものということができず,その余の部分と合わせて,はじめて当該論文を提出した目的,年月日等に関する情報としての意味を持つものである。 このようなことからすれば,本件各論文については,①ないし③の部分で構成される全体として初めて公募委員の選考のために提出された論文として独立した一体的な情報を成すものというべきである。 そうすると,本件各論文の①ないし③の部分のいずれかにおいて,本件条例9条2号に定める非公開事由に該当する記載がある場合,被告としては,当該論文の全体を非公開とすることができ,原告としては,本件決定のうち,上記の非公開事由に該当する記載を除いた部分についてのみの取消しを求めることはできないというべきである。 (4) これに対し,原告は,本件条例に関する「適用除外事項細目基準」に「個人の情報のうち,社会生活上等の情報にあっては,個人が識別されない状態であれば,これを公開しても,プライバシーを中心とする個人の正当な権利,利益を侵害するおそれがないと認められるものも少なくなく,その場合は,氏名その他個人識別性のある部分を除き公開するもの ない状態であれば,これを公開しても,プライバシーを中心とする個人の正当な権利,利益を侵害するおそれがないと認められるものも少なくなく,その場合は,氏名その他個人識別性のある部分を除き公開するものとする。」と規定されていること(甲6により認める。)を根拠として,本件各論文のうち,本件条例9条2号に定める非公開事由に該当する記載を除いた部分を公開すべきである旨主張する。 しかしながら,上記基準は法令としての効力を有するものではなく,実施機関が上記基準のような一定の基準を定めたうえで,本件条例の規定する非公開事由に該当する独立した一体的な情報を更に細分化して,当該非公開事由が記載されていない部分のみを公開する運用を行うことは,本件条例の許容するところと解されるが,住民等が実施機関に対して上記のような態様の部分公開を権利として請求することができるか否かは別であって,地方公共団体の保有する情報の公開を請求する権利をどのような要件の下にどの範囲で付与するかは,専ら当該地方公共団体がその条例において定めるべき事項というべきであるところ,前記(2)のとおり,本件条例においては,情報公開法6条2項と同様の態様による一部公開を認める趣旨の規定が設けられていない以上,本件条例によって,原告の上記主張に係る態様の部分公開を請求する権利が付与されたものということはできない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 3 以上を前提として,本件各論文が本件条例9条2号に定める非公開事由に該当するか否かについて検討する。 (1) 本件各論文のうち,①の部分は,当該論文の作成者である応募者を特定するための情報であるから,同号に定める「個人に関する情報」であって,本件論文の作成者である特定の個人が識別されるものであることは明らかであ 論文のうち,①の部分は,当該論文の作成者である応募者を特定するための情報であるから,同号に定める「個人に関する情報」であって,本件論文の作成者である特定の個人が識別されるものであることは明らかである。 また,公募委員の応募者が,自己が応募した事実や,自己の住所,電話番号等について,他人に知られたくないと望むことは,社会通念上正当であるということが相当である。 したがって,①の部分は,本件条例9条2号に定める非公開事由に該当する。 (2) また,本件各論文のうち,②の部分は,市民自治の基本理念,市民協働及び市民参加等のあり方に関する応募者個人の思想,信条,意見等が記載されているものであって,これを①の部分と一体の情報としてみた場合,①の部分に記載された当該論文の作成者である特定の個人がこのような思想,信条,意見等を有することが明らかになるところ,このような情報が同号に定める「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」に該当することは明らかというべきであるから,②の部分は,本件条例9条2号に定める非公開事由に該当するというべきである。 なお,本件各論文は,応募者が,小金井市市民参加条例策定委員会の公募委員に応募するために,小金井市に提出したものであるが,そのような目的で選考者側にこれを提出することと,その内容を一般公衆に知らせることとは別個のことがらであるから,本件各論文が上記のような目的で小金井市に提出されたものであるからといって,応募者が,その内容を提出先以外の広く一般公衆に知らせることを承諾していると認めるべき理由はない。 (3) さらに,本件論文8の②の部分には,前記1のとおり,「○年○月小金井市の行政計画(注:論文には,具体的な行政計画の名称が記載され に知らせることを承諾していると認めるべき理由はない。 (3) さらに,本件論文8の②の部分には,前記1のとおり,「○年○月小金井市の行政計画(注:論文には,具体的な行政計画の名称が記載されている。)が策定され,私も市民代表の策定委員として起草の場に参加させていただくことができた。」とする記述が存在するところ,上記記述に基づいて,本件論文8の作成者である特定の個人を識別する可能性があることは否定できないから,上記記述は,「個人に関する情報で,特定の個人が識別され得るもの」に該当するというべきである。 また,本件論文8の作成者である特定の個人が識別された場合には,当該個人が本件論文8に記載された思想,信条,意見等を有することが明らかになるから,このような情報は,「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」に該当すると認められる。 したがって,本件論文8の②の部分は,このようなことからも,本件条例9条2号に定める非公開事由に該当するというべきである。 (4) 以上のとおり,本件各論文には,いずれも本件条例9条2号に定める非公開事由に該当する記載が存在するから,本件各論文は,同号に定める非公開事由に該当する情報であると認められる。 したがって,本件各論文の全体を非公開とした本件決定は,適法というべきであるから,本件各論文のうち,上記の非公開事由に該当する記載を除いた部分の公開を求めて本件決定の一部の取消しを求めることは,できないというべきである。 第4  結論以上によれば,原告の請求は,理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 主文 よれば,原告の請求は,理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 理由 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官市村陽典 裁判官森英明 裁判官馬渡香津子

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