令和3(ワ)517 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年4月11日 水戸地方裁判所
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判決文本文24,539 文字)

主文 1 被告らは、原告に対し、連帯して、2億2774万0172円及びうち6842万8000円に対する平成27年6月25日から、うち8316万円に対する平成28年6月24日から、うち7128万円に対する平成29年6月23日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、これを10分し、その4を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。 4 この判決は、上記1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告らは、原告に対し、連帯して、3億9707万5629円及びうち1億2309万2688円に対する平成27年6月25日から、うち1億4295万3565円に対する平成28年6月24日から、うち1億2252万8770円に対する平成29年6月23日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支 払え。 第2 事案の概要本件は、地方公共団体である原告が、被告らに対し、原告が県内の阿見浄水場で使用する活性炭の再生業務について実施した平成26年度から平成28年度までの3回の一般競争入札において、被告らを含む16の事業者が、事前に再生 業務の供給予定者及び入札価格を調整する談合行為をし、原告は、かかる談合行為がなければ形成されたであろう落札価格と、現実の落札価格との差額分につき損害を被ったなどと主張して、共同不法行為に基づき、損害金合計3億9707万5629円(①平成26年度分:損害金元本1億1190万2688円、弁護士費用1119万円、確定遅延損害金282万6303円。②平成27年度分: 損害金元本1億2995万3565円、弁護士費用1300万円、確定遅延損害 金319万4932円。③平成28年度 費用1119万円、確定遅延損害金282万6303円。②平成27年度分: 損害金元本1億2995万3565円、弁護士費用1300万円、確定遅延損害 金319万4932円。③平成28年度分:損害金元本1億1138万8770円、弁護士費用1114万円、確定遅延損害金247万9371円。)及びうち各年度の損害金元本と弁護士費用の合計額に対する、平成26年度分については平成27年6月25日から、平成27年度分については平成28年6月24日から、平成28年度分については平成29年6月23日から(いずれも不法行為の 日より後の日)、各支払済みまで、民法(平成29年度法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 前提事実次の事実は、括弧内に掲げた証拠(枝番のあるものは、特に断らない限り枝番 を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により認められる事実のほか、当事者間に争いがない。 (1) 当事者等ア原告は、地方自治法1条の3第1項及び第2項の定める普通地方公共団体であり、茨城県公営企業の設置等に関する条例1条1項1号に基づき、地方 公営企業として、地方公営企業法2条1項1号の定める水道事業を設置し、経営している。なお、水道事業を含む原告の公営事業の管理者は企業局長であり(同条例3条2項)、企業局長は、当該業務の執行に関し原告を代表する(同法8条1項)。 原告は、水道事業用施設として、阿見浄水場(以下「本件浄水場」という。) を含む10の浄水場を所有している。 イ被告本町化学は、医薬品、医薬部外品、工業薬品の製造、販売等を目的とする株式会社である。 ウ被告エーシーケミカルは、活性炭(新炭及び再生炭)の販売、製造及び加工処理等を目的とする ている。 イ被告本町化学は、医薬品、医薬部外品、工業薬品の製造、販売等を目的とする株式会社である。 ウ被告エーシーケミカルは、活性炭(新炭及び再生炭)の販売、製造及び加工処理等を目的とする株式会社である。 (2) 原告による浄水場用活性炭の調達 原告は、次のとおり、一般競争入札の方法により業者を決定した上で、年度ごとに粉末活性炭の購入単価契約や粒状活性炭再生業務の委託単価契約を締結し、これに基づき、原告が所有する浄水場で使用する活性炭を随時調達していた。 ア原告は、毎年2月、ホームページ上に、入札参加資格や委託する業務内容 等(活性炭の仕様、契約期間中の予定数量等)に関する入札公告を行い、その掲載後速やかに入札説明書を配布する。その後、業者から入札参加資格等の確認申請、原告による入札参加資格等の確認決定を行い、3月中に入札参加資格者による入札を行って、落札者を決定する。かかる入札において、参加者は、粉末活性炭の購入については1kg当たりの単価、粒状活性炭の再 生業務については1池当たりの単価を入札価格として提示して入札に参加する。 イ入札にかかる調達期間(入札後に締結する単価契約の期間)は、原則として、粉末活性炭の購入は毎年4月1日から翌年3月31日まで、粒状活性炭の再生業務は4月1日から翌年5月31日までである。 ウ原告は、入札により、粉末活性炭の購入単価(1kg当たり)、粒状活性炭再生業務の委託単価(1池当たり)を決定し、その単価に基づき、落札業者との間で、購入単価契約又は再生業務委託単価契約を締結する。 エ原告は、上記各単価契約に基づき、粉末活性炭の納品量や粒状活性炭の再生業務量に応じた代金を、落札業者に対して支払う。 (3) 窓口業者浄水場向けの活性炭の 託単価契約を締結する。 エ原告は、上記各単価契約に基づき、粉末活性炭の納品量や粒状活性炭の再生業務量に応じた代金を、落札業者に対して支払う。 (3) 窓口業者浄水場向けの活性炭の納入や再生等を行う業者(メーカー)は、これらの業務に関して地方公共団体等が実施する入札に、自ら参加するほか、各地方公共団体等の有資格者名簿に登録のある他の業者を自社の代理店として入札に参加させている(以下、代理店として入札に参加する業者を「窓口業者」という。)。 (4) 平成26年度から平成28年度の本件浄水場に関する入札 ア原告は、平成26年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成26年3月12日、一般競争入札(以下、本件浄水場における粒状活性炭再生業務の一般競争入札を指すものとして、入札対象年度ごとに「平成26年度入札」などという。)を実施した。平成26年度入札は、被告エーシーケミカルの窓口業者である株式会社後藤商店(以下「後藤商店」という。)が、 1池当たり770万円の単価で落札し、原告は、後藤商店との間で、同年4月1日、1池当たりの単価を831万6000円(うち61万6000円は消費税及び地方消費税)、契約期間を同日から平成27年5月31日までとする、本件浄水場における粒状活性炭再生業務の業務委託単価契約(以下「平成26年度契約」という。)を締結した。また、後藤商店は、被告に対し、平 成26年4月2日、かかる契約における業務の一部を被告エーシーケミカルに委託し又は下請けさせる旨の届出をした(甲3、甲4、甲9、甲12の1、乙B5の1)。 イ原告は、平成27年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成27年2月26日、一般競争入札(平成27年度入札)を実施した。平 成27年度 、甲9、甲12の1、乙B5の1)。 イ原告は、平成27年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成27年2月26日、一般競争入札(平成27年度入札)を実施した。平 成27年度入札は、被告エーシーケミカルの窓口業者である後藤商店が、1池当たり790万円の単価で落札し、原告は、後藤商店との間で、同年4月1日、1池当たりの単価を853万2000円(うち63万2000円は消費税及び地方消費税)、契約期間を同日から平成28年5月31日までとする、本件浄水場における粒状活性炭再生業務の業務委託単価契約(以下「平 成27年度契約」という。)を締結した。また、後藤商店は、原告に対し、平成27年4月6日、かかる契約における業務の一部を被告エーシーケミカルに委託し又は下請けさせる旨の届出をした(甲5、甲6、甲10、甲12の2、乙B5の2)。 ウ原告は、平成28年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、 平成28年3月1日、一般競争入札(平成28年度入札)(以下、平成26 年度入札、平成27年度入札及び平成28年度入札を併せて「本件各入札」という。)を実施した。平成28年度入札は、被告エーシーケミカルの窓口業者である後藤商店が、1池当たり790万円の単価で落札し、原告は、後藤商店との間で、同年4月1日、1池当たりの単価を853万2000円(うち63万2000円は消費税及び地方消費税)、契約期間を同日から平成2 9年5月31日までとする、本件浄水場における粒状活性炭再生業務の業務委託単価契約(以下「平成28年度契約」という。)を締結した。また、後藤商店は、原告に対し、平成28年4月6日、かかる契約における業務の一部を被告エーシーケミカルに委託し又は下請けさせる旨の届出をした(甲7、甲8、甲11、甲1 度契約」という。)を締結した。また、後藤商店は、原告に対し、平成28年4月6日、かかる契約における業務の一部を被告エーシーケミカルに委託し又は下請けさせる旨の届出をした(甲7、甲8、甲11、甲12の3、乙B5の3)。 (5) 原告による委託料の支払原告は、後藤商店に対し、平成26年度契約、平成27年度契約及び平成28年度契約に基づき、別紙業務委託費の支払一覧中「支払日」欄記載の日に、同「支払額(円)」欄記載の額の業務委託費を支払った(甲13から15)。 (6) 課徴金納付命令等 ア公正取引委員会は、平成29年2月21日、別紙業者一覧中番号1、2、4、5、7、8、9、10、12、13、14、15、16の業者に対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)47条1項4号に基づき、立入検査を行った。 イ公正取引委員会は、令和元年11月22日、被告らは、他の事業者と共同 して、本件浄水場を含む東日本に所在する126の浄水場に供給する活性炭について、供給予定者(自社の活性炭を供給すべき者)を決定し、供給予定者が被告本町化学を通じて活性炭を供給できるようにしており、独占禁止法2条6項の規定する不当な取引制限に該当し、同法3条の規定に違反するなどとして、被告本町化学に対して課徴金1億6143万円、被告エーシーケ ミカルに対して課徴金688万円の納付を命じた(甲1、甲2)。 ウ公正取引委員会は、上記同日、別紙業者一覧中番号1、2、4、5、7、8、9、10、12、13、14、15の業者に対し、取締役会等において、今後他の事業者と共同して浄水場向けの活性炭について供給予定者を決定せず自主的に供給することを決議することなどを命じる排除措置命令(以下「本件排除措置命令」 、15の業者に対し、取締役会等において、今後他の事業者と共同して浄水場向けの活性炭について供給予定者を決定せず自主的に供給することを決議することなどを命じる排除措置命令(以下「本件排除措置命令」という。)をした(甲1、甲2)。 エ被告本町化学は、公正取引委員会の上記各命令を不服として、東京地方裁判所に対し、上記各命令の取消しを求める訴えを提起した。 (7) 平成29年度以降の本件浄水場に関する入札ア原告は、平成29年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成29年3月2日、一般競争入札(平成29年度入札)を実施した。平成 29年度入札は、1回目の入札における最低入札価格が後藤商店の1池当たり790万円であったが、原告が設定していた予定価格は760万円であり、これを上回ったため、1回目の入札は不調に終わった。そのため、2回目の入札が行われ、後藤商店が1池当たり590万円で落札した(甲16の1)。 なお、予定価格とは、原告が、茨城県企業局会計規定に基づき定める落札価 格の上限であり、落札価格はこれを上回ることができない。原告は、毎年、入札の3か月程前に、浄水場ごとに過去に入札に参加していた窓口業者5から8社を選定し、当該年度の入札に参加する意向があるかを確認し、その意向がある業者から参考見積を徴取した上で、その中の最低見積額に基づき予定価格を定めている。 イ原告は、平成30年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成30年3月5日、一般競争入札(平成30年度入札)を実施し、サンアグロ株式会社が1池当たり480万円で落札した(甲16の2)。 ウ原告は、平成31年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成31年3月4日、一般競争入札(平成31年度入札)を実施し、サンア 社が1池当たり480万円で落札した(甲16の2)。 ウ原告は、平成31年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、平成31年3月4日、一般競争入札(平成31年度入札)を実施し、サンア グロ株式会社が1池当たり500万円で落札した(甲16の3)。 エ原告は、令和2年度の本件浄水場における粒状活性炭再生業務に関し、令和2年3月19日、一般競争入札(令和2年度入札)を実施し、サンアグロ株式会社が1池当たり214万8300円で落札した(甲16の3)。 2 争点本件の争点は、①被告らの不法行為の成否、②原告の損害額である。 (1) 被告らの不法行為の成否(原告の主張)ア被告らを含む別紙業者一覧記載の16の業者(以下「16社」という。)は、原告が実施する活性炭の入札に、自社が供給する活性炭(自社の名称、銘柄、品番、商標等を付した活性炭)を取り扱う販売業者(窓口業者)等を 参加させ、又は自らが参加していた。 16社は、東日本に所在する地方公共団体の浄水場に供給する活性炭につき、各社の利益を確保するため、自社の活性炭を供給する供給予定者を事前に決定し、その他の業者は、供給予定者が供給できるよう協力する旨の合意(以下「本件基本合意」という。)をした。そして、遅くとも平成25年10 月24日以降、かかる合意の下に、①被告本町化学は、活性炭の入札に先立ち、16社のうち被告本町化学を除く他の15社(以下「15社」という。)と個別に面談をし、15社に対して、入札物件、自社の活性炭を供給した者、受注者となった窓口業者、契約数量、落札金額等の情報を年度ごとにまとめた入札結果表を配布し、②15社は、被告本町化学に対し、入札結果表の中 から自社が供給予定者となることを希望するものを伝え、③被告本町 った窓口業者、契約数量、落札金額等の情報を年度ごとにまとめた入札結果表を配布し、②15社は、被告本町化学に対し、入札結果表の中 から自社が供給予定者となることを希望するものを伝え、③被告本町化学は、15社からの希望、入札結果表に記載の供給実績等を勘案して、15社のいずれかを各物件の供給予定者として割り振り、④供給予定者の窓口業者が提示する入札価格を、供給予定者若しくは被告本町化学が単独で、又は両者の協議により決定し、⑤供給予定者以外の業者は、供給予定者の窓口業者の入 札予定価格よりも高い価格を、自社の窓口業者に提示させていた。 イ被告らを含む16社は、本件浄水場に供給する活性炭についても、本件各入札に参加するに当たって、上記同様に、事前に被告エーシーケミカルを供給予定者と決定し、その入札予定価格を平成26年度入札は770万円、平成27年度入札及び平成28年度入札は790万円として、被告エーシーケミカル以外の業者は窓口業者にそれよりも高い価格で入札をさせた。 ウこのように、被告らは、他の業者と本件基本合意をし、これに基づき、本件各入札に当たって、供給予定者及び入札価格を事前に調整した。被告らの行為は、原告が自由競争によって形成される公正な価格により活性炭を調達することを妨げる談合行為であり、不法行為を構成する。 (被告本町化学の主張) ア供給予定者は、従来から活性炭メーカーの間で定められたルールによって決定されていた。被告本町化学は、当該ルールに従って供給予定者が決定されるに当たって、活性炭メーカーからの指示を受けて、①当該ルールにより自動的に供給予定者が定まる物件については、そのメーカーが供給予定者となることを連絡し、②自動的に供給予定者が定まらない場合には、活性炭供 給能力が高く からの指示を受けて、①当該ルールにより自動的に供給予定者が定まる物件については、そのメーカーが供給予定者となることを連絡し、②自動的に供給予定者が定まらない場合には、活性炭供 給能力が高く、16社間で強い影響力を有していたメーカーの意向を確認し、その他のメーカーにその案を伝え、各メーカーが了解するかを判断した結果を他の活性炭メーカーに連絡していた。被告本町化学が行った行為は、事務的、機械的な連絡に過ぎず、被告本町化学が供給予定者を決定したり、主体的に連絡を取ったりしたことはない。 イ活性炭メーカーは、被告本町化学が連絡行為等をしなくとも、メーカー間で直接連絡を取り合うことで、談合行為をすることができた。活性炭メーカーは、被告本町化学を介在させることで、談合行為が発覚しにくくなると考えて、被告本町化学を利用したのであり、本件の談合に当たって被告本町化学の行為は重要なものではなかった。被告本町化学は、活性炭メーカーに手 足として利用されたのであり、その行為は違法性を欠く。 ウ被告本町化学は、独占禁止法2条6項の「事業者」に当たらないから、被告本町化学の行為は不法行為に当たらない。 エしたがって、被告本町化学は不法行為責任を負わない。 (被告エーシーケミカルの主張)ア被告エーシーケミカルが本件基本合意に参加していたことは十分に立証 されていない。 イ被告エーシーケミカルが、本件各入札に関し、供給予定者等を決定する個別調整行為をしたことは争う。また、原告の主張する個別調整行為は、本件基本合意があって初めて談合行為といえるものであるが、上記のとおり基本合意の立証は尽くされていない。 ウ本件各入札はいずれも一般競争入札であり、基本合意に参加していない事業者(アウトサイダー)が入札に て初めて談合行為といえるものであるが、上記のとおり基本合意の立証は尽くされていない。 ウ本件各入札はいずれも一般競争入札であり、基本合意に参加していない事業者(アウトサイダー)が入札に参加することはあり得た。また、窓口業者を通じて本件各入札に参加したセラケム株式会社(以下「セラケム」という。)及びダイネン株式会社(以下「ダイネン」という。)は、本件各入札の各時点では本件基本合意から離脱し、アウトサイダーとなっていた。そのため、本 件各入札はいずれも競争原理が働いていたものであり、原告の公正な競争の下で形成される落札価格をもって契約を締結する権利ないし法的利益は侵害されていない。 エしたがって、被告エーシーケミカルは不法行為責任を負わない。 (2) 原告の損害額 (原告の主張)ア被告らの行為により原告が被った損害は、現実の落札価格(以下「現実落札価格」という。)から、当該不法行為がなければ形成されたであろう落札価格(以下「想定落札価格」という。)を差し引いた額である。そして、16社は、本件各入札以前から、活性炭の入札案件について供給予定者及び入札価 格を調整していた疑いがあるため、談合行為が終了し、その影響を受けなく なった平成29年度以降、令和2年度までに実施された、本件浄水場にかかる粒状活性炭再生業務の入札における落札価格の平均をもって、本件各入札における想定落札価格と推認するのが相当である。 イ損害額元本は、平成26年度入札に関しては1億1190万2688円、平成27年度入札に関しては1億2995万3565円、平成28年度入札 に関しては1億1138万8770円である。その計算方法は、別紙原告主張損害額元本のとおりであり、年度ごとに、想定落札価格(平均落札価格)と現実落 は1億2995万3565円、平成28年度入札 に関しては1億1138万8770円である。その計算方法は、別紙原告主張損害額元本のとおりであり、年度ごとに、想定落札価格(平均落札価格)と現実落札価格との差額が現実落札価格に占める割合(損害割合)を算出し、これを年度ごとに支払った業務委託費の総額に乗じた金額が、損害額元本となる。 ウ本件で請求する確定遅延損害金は、平成26年度入札に関しては282万6303円、平成27年度入札に関しては319万4932円、平成28年度入札に関しては247万9371円である。その計算方法は、別紙業務委託費の支払一覧及び確定損害金の計算書のとおりである。原告は、別紙業務委託費の支払一覧中「支払日」欄記載の日に同別紙中「支払額(円)」欄記載 の金額の業務委託費を支払っており、これに年度ごとの上記損害割合を乗じた金額が同別紙中「請求額(円)」欄記載の金額である。そして、かかる各金額について、平成26年度入札分に関しては各支払日から平成27年6月24日まで、平成27年度入札分に関しては各支払日から平成28年6月23日まで、平成28年度入札分に関しては各支払日から平成29年6月22日 までの年5分の割合の日割り計算をした金額が、別紙確定損害金の計算書中「損害金(円)」欄記載の金額であり、これが原告が請求する確定遅延損害金である。 エ原告は、被告らの不法行為により本件訴えの提起を余儀なくされ、弁護士にその提起及び追行を委任せざるを得なかったから、平成26年度入札に関 して1119万円、平成27年度入札に関して1300万円、平成28年度 入札に関して1114万円の弁護士費用は、本件と相当因果関係のある損害である。 (被告本町化学の主張)ア中華人民共和国(以下「中国」 27年度入札に関して1300万円、平成28年度 入札に関して1114万円の弁護士費用は、本件と相当因果関係のある損害である。 (被告本町化学の主張)ア中華人民共和国(以下「中国」という。)産の活性炭の輸入価格が下落し、重油価格が変動するなど、平成26年度から平成28年度と平成29年度か ら令和2年度との間で、落札価格の形成に影響を及ぼす経済的要因等に顕著な変動があり、平成29年度以降の現実落札価格の平均をもって想定落札価格を推認するのは相当ではない。 イ予測的な判断による損害の算定は控えめにするべきであり、仮に平成29年度以降の落札価格をもって損害額を算定するとしても、落札価格と予定価 格の比率(落札率)をもって想定落札価格を推認するべきである。落札率をもって想定落札価格を推認し、損害を算定すると、平成26年度入札に関しては8120万6738円、平成27年度入札に関しては8816万0751円、平成28年度入札に関しては7407万1973円となる。本件の損害は、これを超えるものではない。 ウ民事訴訟法248条により相当な損害額が認定される場合であっても、上記同様に、損害の算定は控えめにするべきである。 (被告エーシーケミカルの主張)ア原告は、平成29年度以降の本件浄水場に係る活性炭再生業務の入札時と、本件各入札時とで経済的要因等に変動がないこととして、物価動向等の一般 的な経済状況について主張するが、損害の算定に当たっては、調達側(浄水場運営者)の行動(入札の条件)がより重要である。 従前入札に参加していた有力な事業者が合併により消滅するなどしたことで、本件各入札時と平成29年度以降の入札時では市場参加者が相違している。また、平成29年度から令和2年度までの入札においては、平成28 入札に参加していた有力な事業者が合併により消滅するなどしたことで、本件各入札時と平成29年度以降の入札時では市場参加者が相違している。また、平成29年度から令和2年度までの入札においては、平成28 年度以前にはなかった「茨城県内に所在する粒状活性炭再生工場で自ら再生 処理ができる者、又は茨城県内に所在する粒状活性炭再生工場で再生処理ができる者と契約していること」との入札参加資格が新たに定められており、入札条件が変わっている。そのため、平成29年度入札以降の落札価格をもって原告の損害を算定することはできない。 平成29年度入札時に、原告は予定価格を従前より引き下げ、この影響に より、平成30年度入札以降の落札価格が下落した。そのため、平成30年度入札以降の落札価格をもって、損害を算定するべきではない。 イ平成29年度以降の入札における落札率は従前と比べ大きく下落している。これは、公正取引委員会による調査が開始され、従前と異なる入札環境に直面した各事業者が、一時的な混乱に陥り、赤字覚悟の低価格入札をした 結果である。そのような入札における落札価格をもって想定落札価格とすることは合理的ではない。 ウ談合が行われたとされている時期に最も近接しているのは平成29年度入札であるところ、その1回目の入札時の最低入札額は790万円であった。 かかる金額で入札が成立しなかったのは、原告が設定していた予定価格を上 回る金額であったからであり、原告が平成28年度以前の入札時と同様に予定価格を790万円以上に設定していれば、平成29年度入札は790万円で落札されていたのであるから、これをもって、本件における想定落札価格とするべきである。そうすると、本件における原告の損害はない。 エ公正取引委員会は、本件排除措置命令に 29年度入札は790万円で落札されていたのであるから、これをもって、本件における想定落札価格とするべきである。そうすると、本件における原告の損害はない。 エ公正取引委員会は、本件排除措置命令において、違反行為の目的として「各 社の利益を確保するため」と認定したが、「受注価格の低落防止等を図るため」との認定はしていない。公正取引委員会の認定によっても、違反行為は各業者が安定的に(順番に)受注するという利益を確保するためになされたものであり、当該違反行為により落札価格は不当に引き上げられたと推認することはできず、むしろそのようなことはなかったと推認できる。そのため、 原告に損害は発生していない。 オ本件浄水場にかかる活性炭再生業務の入札案件は不人気案件であり、これを落札することを希望する業者は被告エーシーケミカルの他にほとんどおらず、原告の主張する談合行為がなかったとしても、被告エーシーケミカルがその希望する入札額で落札できた可能性が相当程度高かった。そのため、原告に損害は発生していない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(被告らの不法行為の成否)について(1) 認定事実括弧内の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア基本合意 16社は、遅くとも平成25年10月24日以降、次のとおり、東日本地区所在の地方公共団体が発注する浄水場(本件浄水場を含む。)における粉末活性炭の納入、粒状活性炭の再生等の業務の入札について、事前に供給予定者を決定し、その窓口業者の入札予定価格を決め、供給予定者以外の業者はその入札予定価格よりも高い協力価格を窓口業者に提示させる旨合意(本 件基本合意)し、供給予定者は被告本町化学を介して活性炭を供給できるようにしていた(甲17、 を決め、供給予定者以外の業者はその入札予定価格よりも高い協力価格を窓口業者に提示させる旨合意(本 件基本合意)し、供給予定者は被告本町化学を介して活性炭を供給できるようにしていた(甲17、甲18)。 (ア) 被告本町化学の営業担当者は、15社の担当者と、毎年11月頃から翌年1月あるいは2月頃までの間に、面談を実施していた。かかる面談において、被告本町化学の営業担当者は、被告本町化学において作成した入札 結果表(活性炭に係る入札の結果をまとめたもの。)及び予定見込表(地方自治体により今後発注が見込まれる活性炭の入札について参考見積の実施状況等を取りまとめたもの。)を示すなどしながら、15社から、どの物件において活性炭の納入及び再生業務を行う業者(供給予定者)となりたいかの希望を聴取していた。そして、被告本町化学の営業担当者は、15 社からの希望に加え、過去の納入実績や供給量のバランス等を考慮して、 各物件における供給予定者をどこにするかの方針を決め、各業者にこれを伝えて了承を取っていた。 (イ) 供給予定者の窓口業者の入札価格は、入札前に、被告本町化学と供給予定者が相談して決めていた。かかる入札価格については、被告本町化学又は供給予定者が、当該窓口業者に連絡していた。 (ウ) 被告本町化学は、供給予定者の窓口業者の入札価格を基に、それよりも高い価格を協力価格として定め、供給予定者以外の業者に伝達し、他の業者は自社の窓口業者に当該協力価格で入札に参加させ、供給予定者が落札できるよう協力していた。 イ基本合意からの離脱 (ア) 16社の一社であるセラケム(別紙業者一覧表中番号16)は、平成27年10月頃、本件基本合意から離脱した(甲1、甲2、甲17の5)。 (イ) 16社の一社であるダイ 合意からの離脱 (ア) 16社の一社であるセラケム(別紙業者一覧表中番号16)は、平成27年10月頃、本件基本合意から離脱した(甲1、甲2、甲17の5)。 (イ) 16社の一社であるダイネン(別紙業者一覧表中番号8)は、平成28年1月頃、本件基本合意から離脱した(甲1、甲2、甲17の1、甲17の2)。 ウ個別調整行為被告らは、本件基本合意に基づき、本件各入札について、次のとおり、被告エーシーケミカルの窓口業者が落札できるよう調整行為(以下「本件個別調整行為」という。)をした(甲17、甲18)。 (ア) 被告本町化学の営業担当者と被告エーシーケミカルの営業部門責任者 は、本件各入札の前年の12月頃から翌年1月頃に面談をしていた。かかる面談において、被告本町化学の営業担当者は、前年度の入札結果表を示しながら、被告本町化学として被告エーシーケミカルを供給予定者とすることを考えている入札案件を示し、被告エーシーケミカルの営業部門責任者も、本件浄水場の案件(本件各入札)の供給予定者となることを希望す る旨伝えた。 (イ) 原告は、各年2月頃に、本件各入札に係る入札公告を行っていたところ(前提事実(2)ア)、入札公告が出された頃に、被告本町化学の営業担当者は、被告エーシーケミカルの営業部門責任者に対し、本件各入札について被告エーシーケミカルを供給予定者とする旨を伝えていた。また、被告本町化学の営業担当者は、被告エーシーケミカルの営業部門責任者に対し、 本件各入札の直前に、被告エーシーケミカルの窓口業者の入札価格(平成26年度入札につき770万円、平成27年度入札につき790万円、平成28年度入札につき790万円。)を指示し、被告エーシーケミカルは、これを窓口業者である後藤商店に伝え、後藤商 者の入札価格(平成26年度入札につき770万円、平成27年度入札につき790万円、平成28年度入札につき790万円。)を指示し、被告エーシーケミカルは、これを窓口業者である後藤商店に伝え、後藤商店にかかる価格で入札させた(前提事実(4))。 エ入札業者本件各入札に参加した業者は、別紙入札結果【阿見浄水場】中「窓口業者」欄記載のとおりであり、これらを代理店とする供給業者は、同別紙中「メーカー」欄記載のとおりであった。 (2) 検討 ア被告らの不法行為責任について上記(1)アのとおり、被告らを含む16社は、東日本地区に所在する地方公共団体が発注する浄水場用活性炭の納入、再生等の業務の入札案件について、供給予定者及び入札価格を事前に調整する旨合意(本件基本合意)し、これに基づき、上記(1)ウのとおり、本件各入札においても、供給予定者を被 告エーシーケミカルとし、その窓口業者である後藤商店の入札価格を事前に決めていた(本件個別調整行為)ものであり、被告らのかかる行為は、原告の公正な競争の下に形成された低廉な価格によって契約を締結する利益を侵害する不法行為に当たるというべきである。 イ被告本町化学の主張について (ア) 被告本町化学は、自社が行った行為は、活性炭メーカー間のルールによ って決定された供給予定者等の情報を、他のメーカーに連絡する事務的、機械的なものに過ぎず、被告本町化学において供給予定者を決定したり、主体的に連絡を取ったりしたことはない旨、被告本町化学は、活性炭メーカーに利用されたものであり、自社が行った行為は本件の談合において重要なものではなく、違法性を欠く旨主張する。 しかしながら、被告本町化学の活性炭営業担当者の供述調書(甲17)中には、上記(1)アに されたものであり、自社が行った行為は本件の談合において重要なものではなく、違法性を欠く旨主張する。 しかしながら、被告本町化学の活性炭営業担当者の供述調書(甲17)中には、上記(1)アに沿う記載部分がある一方で、被告本町化学の上記主張に沿う記載部分はなく、その他上記主張を裏付ける証拠はない。また、本件各入札について、被告本町化学が上記主張のとおりの連絡をしていたのであれば、かかる行為は、活性炭メーカー間での供給予定者及び入札価 格の事前調整の一端を担うものであり、上記ア同様に不法行為に該当するものというべきである。 したがって、被告本町化学の上記主張は採用できない。 (イ) 被告本町化学は、自社が独占禁止法2条6項の「事業者」に当たらず、独占禁止法に反する行為はしていない旨主張するが、独占禁止法に違反す ることが不法行為責任を負う要件となるものではなく、仮に被告本町化学が上記「事業者」に当たらないとしても、上記に認定した被告本町化学の不法行為責任の成否が左右されるものではない。 ウ被告エーシーケミカルの主張について(ア) 被告エーシーケミカルは、自社が基本合意に参加したことが十分に立証 されていないとし、具体的には、被告本町化学及び他の活性炭メーカーは平成20年頃には供給予定者の調整等を行っていたが、被告エーシーケミカルは平成20年5月1日に設立され、平成22年に活性炭再生工場の稼働を開始したものであり、その被告エーシーケミカルが、上記の調整等に関する合意に参加した経緯は不明であり、被告エーシーケミカルが基本合 意に参加したことが立証されていないと主張する。しかしながら、上記(1) アのとおり、平成25年10月24日には、被告エーシーケミカルを含む16社間で本件基本合意が成立して 基本合 意に参加したことが立証されていないと主張する。しかしながら、上記(1) アのとおり、平成25年10月24日には、被告エーシーケミカルを含む16社間で本件基本合意が成立していたことが認められ、これに基づき、上記(1)ウのとおり、本件各入札において本件個別調整行為が行われたことが認められるのであるから、被告エーシーケミカルが本件基本合意に参加した経緯の如何にかかわらず、被告エーシーケミカルの行為は不法行為 を構成するものといえる。したがって、被告エーシーケミカルの上記主張は採用できない。 (イ) 被告エーシーケミカルは、本件各入札はいずれも一般競争入札であり、本件基本合意に参加していないアウトサイダーが入札に参加することがあり得たのであるから、本件各入札は競争原理が働いていたものであり、 原告の法的利益は侵害されていない旨主張する。しかしながら、入札参加予定者らによって供給予定者や入札価格を事前に調整する談合行為が行われた入札については、少なくとも当該談合行為者ら間での競争は阻害されているのであるから、抽象的にアウトサイダーが入札に参加する可能性があったとしても、その一事をもって、直ちに当該入札において競争原理 が働いていたということはできない。そのため、本件各入札が一般競争入札であったことのみを理由に、被告らの不法行為責任を否定することはできない。そして、被告本町化学の活性炭営業担当者の供述調書(甲17の2)中には、本件基本合意に関し、アウトサイダーの参加が見込まれる入札案件については、アウトサイダーよりも低い価格で入札するための調整 をしていたとの旨の記載部分があるが、本件各入札について、アウトサイダーが入札に参加する可能性が具体的に見込まれていたとか、被告らが、アウトサイダーが参 ーよりも低い価格で入札するための調整 をしていたとの旨の記載部分があるが、本件各入札について、アウトサイダーが入札に参加する可能性が具体的に見込まれていたとか、被告らが、アウトサイダーが参加してくることを前提として入札価格を決定したとの事情はうかがわれない。そうすると、本件各入札について、入札参加可能性のあるアウトサイダーとの競争原理が働いていたということはでき ない。したがって、被告エーシーケミカルの上記主張は採用できない。 (ウ) 被告エーシーケミカルは、本件各入札には、基本合意から離脱していたセラケム又はダイネンの窓口業者が参加しており、公正な競争が働いていた旨主張する。 上記(1)イ(ア)のとおり、セラケムは平成27年10月頃に本件基本合意から離脱したことが認められるところ、上記(1)エのとおり、上記離脱後 に実施された平成28年度入札に、セラケム及びその窓口業者は参加していない。この点、被告エーシーケミカルは、被告本町化学の活性炭営業担当者の供述調書(甲17の2)の記載を根拠に、セラケムは平成25年頃に本件基本合意から離脱し、その後アウトサイダーとして平成26年度入札及び平成27年度入札に参加した旨主張するが、上記供述調書は、平成 25年頃以降、平成29年2月の公正取引委員会による立入検査までの間に、本件基本合意に参加していた事業者が減少したことを説明するものであり、平成25年にセラケムが基本合意から離脱した旨供述したものとは解されない。したがって、セラケムが平成25年頃に本件基本合意から離脱したこと、ひいては、本件基本合意離脱後に本件各入札に参加したこと は認められない。 上記(1)イ(イ)のとおり、ダイネンは平成28年1月頃に本件基本合意から離脱したことが認められるところ、 したこと、ひいては、本件基本合意離脱後に本件各入札に参加したこと は認められない。 上記(1)イ(イ)のとおり、ダイネンは平成28年1月頃に本件基本合意から離脱したことが認められるところ、上記(1)エのとおり、その後実施された平成28年度入札にダイネンの窓口業者である株式会社鹿島商会(以下「鹿島商会」という。)が参加している。しかしながら、証拠(甲6、甲 8)及び弁論の全趣旨によれば、鹿島商会は、平成28年度入札時に、平成27年度入札時と同額である905万円で入札したことが認められるところ、平成28年度入札における後藤商店(被告エーシーケミカルの窓口業者)の落札価格は、平成27年度入札時と同じ790万円であり、平成28年度入札において前年度よりも入札価格の水準が上がったとの事 情はうかがわれない。そうすると、本件基本合意から離脱したダイネンの 窓口業者である鹿島商会が平成28年度入札に参加していたとしても、その入札価格は、前年の落札価格を踏まえても本件基本合意離脱前に協力価格として入札していた額と同額にとどまったのであるから、本件個別調整行為による競争阻害性が否定される程に、平成28年度入札において自由かつ公正な競争が行われていたとはいい難い。また、平成28年度入札に 参加するに当たって、被告らが、本件基本合意から離脱したダイネンとの競争を前提に、後藤商店の入札価格を決定したとの事情もうかがわれない。 そのため、平成28年度入札において、被告エーシーケミカルその他本件基本合意参加者らとダイネンとの間で、公正な価格競争が行われていたとまではいえない。 したがって、被告エーシーケミカルの上記主張は採用できない。 (3) 小括以上によれば、被告らは、共同不法行為者として、連帯して不法行為責任 価格競争が行われていたとまではいえない。 したがって、被告エーシーケミカルの上記主張は採用できない。 (3) 小括以上によれば、被告らは、共同不法行為者として、連帯して不法行為責任を負うと認めるのが相当である。 2 争点(2)(原告の損害額) (1) 総論入札談合によって当該入札の発注者に生じる損害は、談合が行われなければ当該入札において形成されたであろう想定落札価格と、実際の落札価格(現実落札価格)との差額をもって算定することができると解され、本件各入札のように単価契約を前提とするものについては、上記差額が現実落札価格に占める 割合(損害割合)を算出し、単価契約に基づき発注者が支出した費用に、当該損害割合を乗じた額をもって損害額と認めるのが相当である。 そして、ここにいう想定落札価格は、現実には存在しなかった価格であり、これを直接に推計することは困難であるから、現実に存在した落札価格を手掛かりとしてこれを推計することが許され、一般的には、入札価格形成の前提と なる経済条件、市場構造その他の経済的要因等に変動がない限り、当該入札の 直前の入札における落札価格(以下「直前価格」という。)をもって想定落札価格を推認するのが相当である(最高裁平成元年12月8日第二小法廷判決・民集43巻11号1259頁参照)。しかしながら、談合行為が相当長期にわたる場合や、当該入札の前においても同様の談合行為が行われていた疑いがある場合には、直前価格をもって想定落札価格を推認することは相当でなく、談合 行為終了後、公正かつ自由な競争によって行われた入札における現実の落札価格をもって想定落札価格を合理的に推認することができると解するのが相当である。 (2) 本件各入札の想定落札価格ア証拠(甲1 終了後、公正かつ自由な競争によって行われた入札における現実の落札価格をもって想定落札価格を合理的に推認することができると解するのが相当である。 (2) 本件各入札の想定落札価格ア証拠(甲17の6)及び弁論の全趣旨によれば、16社の全部又は一部の 業者は、本件各入札以前においても、長期間にわたり、東日本地区に所在する地方公共団体の浄水場向け活性炭の納入及び再生業務について、事前に供給予定者やその入札価格を調整していたことが認められ、本件各入札における原告の損害について、本件各入札の直前に実施された入札における落札価格(直前価格)をもって想定落札価格を推認することは相当でない。 イそこで、本件各入札以降に実施された本件浄水場における粒状活性炭再生業務の入札での落札価格をもって、本件各入札の想定落札価格を推認することができるか検討する。 本件各入札と、平成29年度以降の本件浄水場における粒状活性炭再生業務の入札は、同一浄水場における同種業務についての入札であるところ、証 拠(甲9から11、甲24)及び弁論の全趣旨によれば、本件各入札及び平成29年度入札から令和2年度入札まで、原告の発注する業務の仕様は、その基本部分において共通していることが認められ、かかる仕様において、入札価格形成に影響を及ぼす顕著な点に変更があるとの事情はうかがわれない。 そして、平成29年度から平成31年度までの入札については、本件の証 拠上、想定落札価格の推認の基礎とすることができないほど、価格形成の前提となる経済条件等に著しい変動があったとまでは認められない。しかしながら、弁論の全趣旨によれば、入札参加見込事業者からの参考見積を基に設定される予定価格(前提事実(7)ア)が、平成31年度入札は793万円であり、 に著しい変動があったとまでは認められない。しかしながら、弁論の全趣旨によれば、入札参加見込事業者からの参考見積を基に設定される予定価格(前提事実(7)ア)が、平成31年度入札は793万円であり、令和2年度入札は583万円であったことが認められ、令和2年度入札 については前年度比で約26パーセント下落している。また、令和2年度入札については、サンアグロ株式会社の落札価格も前年度比で約57パーセント減少している(前提事実(7)ウ、エ)。これら予定価格及び落札価格の下落幅を考慮すれば、令和2年3月19日実施の令和2年度入札は、前年度から、なにがしか入札価格に影響を与える事情の変動があったものと推認される。 そのため、本件各入札の想定落札価格の算定に当たっては、令和2年度入札の落札価格を基礎とすることは相当でない。 以上によれば、平成29年度から平成31年度までの、本件浄水場における粒状活性炭再生業務の入札での落札価格をもって、本件各入札の想定落札価格を推認することができると解するのが相当である。 ウその上で、原告は、本件各入札以降の入札における落札価格の平均をもって、想定落札価格とするべきであると主張する。この点、談合解消以降相当数の入札が行われている場合には、価格形成の前提となる事情にさしたる変化がなくとも、入札参加者の経営判断等種々の要因により、入札ごとに落札価格に一定の変動があり得ることを前提に、その変動を平準化するべく、平 均値を求めて、これをもって想定落札価格と推認することは合理的といえる。 しかしながら、本件においては、上記のとおり、平成29年度から平成31年度までの3回の入札をもって想定落札価格を推認しようとしているのであり、平均値をもって想定落札価格と合理的に推認するには、その基礎となる入札の 件においては、上記のとおり、平成29年度から平成31年度までの3回の入札をもって想定落札価格を推認しようとしているのであり、平均値をもって想定落札価格と合理的に推認するには、その基礎となる入札の数が不足しているといわざるを得ない。 そして、想定落札価格は現実には存在しなかった価格であり、あくまで想 定されるものに過ぎず、その額における落札が相当程度の蓋然性をもって想定できる範囲においてのみ認定されるべきである。そこで、本件各入札における想定落札価格は、平成29年度から平成31年度までの入札のうち、落札価格の最も高い平成29年度の590万円と認めるのが相当である。 (3) 被告らの主張について ア被告本町化学の主張について(ア) 被告本町化学は、平成29年度以降の入札は、中国産の活性炭の輸入価格や重油価格(A重油価格)の下落の影響を受けており、本件各入札時との比較において、落札価格形成に影響を及ぼす顕著な経済的要因等に変動があるから、平成29年度以降の入札における落札価格をもって、本件各 入札の想定落札価格を推認することはできないと主張する。 しかしながら、本件の入札は、粒状活性炭の再生業務であって、新たな活性炭を納入することを主たる内容とするものではなく、活性炭の輸入価格の変動が、再生業務の価格形成にどのような影響を及ぼすのかは明らかでない。また、被告本町化学の主張によれば、活性炭の輸入価格の変動は、 翌年以降の活性炭の再生業務の価格へ影響を及ぼすとのことであるが、被告本町化学が主張する中国産の活性炭の輸入価格の平均単価は、平成29年度(平成30年度の再生業務の価格に影響)には前年度比6.09パーセント増となっているが、平成30年度入札の落札価格は平成29年度入札時よりも下落しており、 活性炭の輸入価格の平均単価は、平成29年度(平成30年度の再生業務の価格に影響)には前年度比6.09パーセント増となっているが、平成30年度入札の落札価格は平成29年度入札時よりも下落しており、中国産の活性炭の輸入価格の変動は、必ずしも 活性炭の再生業務の価格に相関的な影響を与えるものとはいえない。その他、中国産の活性炭の輸入価格の変動が、平成29年度以降の入札における落札価格をもって想定落札価格を推認することを不相当とするほどに、活性炭の再生業務の価格形成に顕著な影響を及ぼすものであることを認めるに足りる証拠はない。 また、重油価格(A重油価格)の変動についても、これが活性炭の再生 業務の価格にどのような影響を及ぼすのかは証拠上明らかでなく、これが活性炭の再生業務の価格形成に顕著な影響を及ぼすものであることを認めるに足りる証拠はない。 したがって、被告本町化学の上記主張は採用できない。 (イ) また、被告本町化学は、落札率を用いて損害を算定するべきであると主 張する。しかしながら、本件においては、本件各入札以降、同一浄水場における同種業務についての入札が実施されており、前記のとおり、落札価格それ自体を比較することによって、想定落札価格を合理的に推認し、損害を算定することができるのであるから、落札率を用いて損害を算定するべき理由はない。 イ被告エーシーケミカルの主張について(ア) 被告エーシーケミカルは、原告が平成29年度入札の予定価格を従前よりも引き下げたために、平成30年度以降の落札価格が下落しており、自由かつ公正な競争とは異なる要因で落札価格が変動しているのであるから、平成30年度以降の入札における落札価格をもって損害を算定するべ きではないと主張する。 この点、平成2 落しており、自由かつ公正な競争とは異なる要因で落札価格が変動しているのであるから、平成30年度以降の入札における落札価格をもって損害を算定するべ きではないと主張する。 この点、平成29年度入札における1回目の入札時の最低入札価格は、平成27年度及び平成28年度入札の落札価格と同額の790万円であったが、落札価格の上限となる予定価格が760万円に設定されていたことから入札が成立しなかったものである(前提事実(4)イ、ウ、(7)ア)。そ して、予定価格は一般に公開されているものではなく、平成29年度入札に参加した事業者らは、上記1回目の入札の結果により、原告の設定した予定価格が790万円を下回っていることを認識することができた。しかしながら、弁論の全趣旨によれば、本件浄水場における粒状活性炭再生業務の入札の予定価格は、平成26年度が812万円、平成27年度が84 5万円、平成28年度が852万円、平成29年度が760万円、平成3 0年度が842万円、平成31年度が793万円であったことが認められ、本件各入札前後を通じて、予定価格に著しい変動は認められない。また、予定価格は、原告が入札参加の意向がある業者からの参考見積に基づいて予算確保の観点から設定するものであり、入札参加事業者らにも明らかにされず、入札参加事業者らは当該年度の予定価格を把握できないまま入札 価格を決定するのであって、平成29年度入札における予定価格が前年度までの落札価格を下回っているからといって、これが、直ちに、平成30年度以降の落札価格の下落を導く競争外の要因であったということはできない。証拠(甲16の2、甲16の3)からわかる平成30年度入札及び平成31年度入札における入札参加事業者らの入札額全体に照らして も、平成2 の下落を導く競争外の要因であったということはできない。証拠(甲16の2、甲16の3)からわかる平成30年度入札及び平成31年度入札における入札参加事業者らの入札額全体に照らして も、平成29年度の予定価格が790万円を下回っていたことが、入札参加事業者らの入札価格の形成に著しい影響を及ぼしたとの事情はうかがわれない。したがって、被告エーシーケミカルの上記主張は採用できない。 また、被告エーシーケミカルは、本件各入札時と平成29年度以降の入札時では市場参加者が相違している旨主張するが、市場参加者あるいは入 札参加者が変動したことにより、直ちに平成29年度以降の入札における落札価格をもって想定落札価格を推認することの合理性が否定されるものとは解されない。 加えて、被告エーシーケミカルは、平成29年度入札以降、「茨城県内に所在する粒状活性炭再生工場で自ら再生処理ができる者、又は茨城県内に 所在する粒状活性炭再生工場で再生処理ができる者と契約していること」との入札参加資格が新たに定められていることを指摘するが、かかる参加資格の制限が、具体的に入札価格の形成にいかなる程度、内容の影響を与えるものであるかは明らかでない。また、上記のとおり入札参加資格が制限されれば、競争の範囲が限定されることになるのであるから、入札価格 は、資格制限のない場合と比較して一般的に高くなる(すなわち、原告の 損害の額は低くなる。)ものと解され、これにより、平成29年度以降の入札の落札価格をもって想定落札価格を推認することの合理性が否定されるとはいえない。 (イ) 被告エーシーケミカルは、平成29年度以降の入札においては、一部業者により赤字覚悟の低価格入札があり、そのような落札価格をもって想定 落札価格を推認することは合 されるとはいえない。 (イ) 被告エーシーケミカルは、平成29年度以降の入札においては、一部業者により赤字覚悟の低価格入札があり、そのような落札価格をもって想定 落札価格を推認することは合理的ではないと主張するが、これを裏付ける証拠はない。被告エーシーケミカルは、落札率の低下(予定価格と落札価格の差の増加)を指摘するが、予定価格設定の基礎となる参考見積について、入札に参加する可能性のある業者としては、予定価格が高く設定されるよう、一定程度高い見積もりを提出する動機があるといえ、実際の落札 価格が予定価格を大きく下回るものであったとしても、そのことのみによって、落札業者が赤字覚悟の異常な入札をしたとまではいえない。したがって、上記主張は採用できない。 (ウ) 被告エーシーケミカルは、平成29年度入札の1回目の入札の最低入札価格790万円をもって想定落札価格というべきであると主張する。しか しながら、前提事実(7)アのとおり、本件浄水場の粒状活性炭再生業務の入札における予定価格は、過去に入札に参加した業者から入手した参考見積に基づいて設定されるものであり、予定価格の設定方法を含め、本件各入札と主として同一の条件で実施された入札における落札価格をもって想定落札価格を推認することが合理的であり、現に不調となった入札の結 果をその推認の基礎とすることは相当でないというべきである。 (エ) 被告エーシーケミカルは、公正取引委員会が「受注価格の低落防止等を図るため」との認定をしていないことをもって、本件各入札の落札価格は不当に引き上げられておらず、原告に損害は発生していないと主張する。 しかしながら、被告らの行為は、事前に供給予定業者及びその入札価格を 調整するものであり、公正な競争を害する行為であって、原告に損害 引き上げられておらず、原告に損害は発生していないと主張する。 しかしながら、被告らの行為は、事前に供給予定業者及びその入札価格を 調整するものであり、公正な競争を害する行為であって、原告に損害が発 生したことは被告らの行為から容易に推認されるところであり、公正取引委員会が「受注価格の低落防止等を図るため」との認定をしていないことをもって原告に損害が生じていないということはできない。 (オ) 被告エーシーケミカルは、本件浄水場の案件は不人気案件であり、談合行為がなくとも被告エーシーケミカルが希望する額で落札することがで きた旨主張するが、これを裏付ける証拠はなく、採用できない。 (4) 損害額の算定ア以上を前提に原告の損害を計算するに、本件各入札における原告の損害割合(現実落札価格に占める想定落札価格と現実落札価格の差額分の割合)は、別紙損害額元本(認定)中「損害割合」欄記載のとおりである。そして、原 告が、平成26年度契約、平成27年度契約及び平成28年度契約に基づき支出した業務委託費の総額に、上記損害割合を乗じた額は、同別紙中「損害額」欄記載のとおりであり、かかる金額が、原告の損害金元本と認められる。 イまた、原告が、平成26年度契約、平成27年度契約及び平成28年度契約に基づき支出した個別の業務委託費に、それぞれ上記損害割合を乗じた額 は、別紙支払一覧(認定)中「認容額(円)」欄記載のとおりである。そして、かかる金額について、各支払日から、別紙確定損害金(認定)中「終期」欄記載の日までに発生した遅延損害金は、同別紙中「損害金(円)(円未満切捨)」欄及び「損害金合計(円)(円未満切捨)」欄記載のとおりである。 ウ加えて、弁論の全趣旨によれば、原告は本件訴えの提起及び追行を訴訟代 理人 損害金は、同別紙中「損害金(円)(円未満切捨)」欄及び「損害金合計(円)(円未満切捨)」欄記載のとおりである。 ウ加えて、弁論の全趣旨によれば、原告は本件訴えの提起及び追行を訴訟代 理人弁護士に委任したことが認められ、これに要した弁護士費用として、上記アの損害金元本の約1割に相当する2026万円(内訳は後記3(2)のとおり。)は、本件個別調整行為と相当因果関係のある損害と認められる。 3 総括以上に説示したところによれば、被告らは、原告に対し、連帯して、次の金員 を支払う義務を負うものと認められる。 (1) 損害金元本合計2億0260万8000円平成26年度分:6220万8000円平成27年度分:7560万円平成28年度分:6480万円(2) 弁護士費用合計2026万円 平成26年度分:622万円平成27年度分:756万円平成28年度分:648万円(3) 確定遅延損害金合計487万2172円平成26年度分:157万1173円 平成27年度分:185万8636円平成28年度分:144万2363円(4) 遅延損害金平成26年度分の損害金元本及び弁護士費用合計6842万8000円に対する平成27年6月25日から、平成27年度分の損害金元本及び弁護士費 用の合計8316万円に対する平成28年6月24日から、平成28年度分の損害金元本及び弁護士費用の合計7128万円に対する平成29年6月23日から、各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金。 第4 結論よって、原告の請求は、上記の限度で理由があるから、その限りでこれを認容 し、その余は理由がないから棄却することとして、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法64条本文、61条、65条1項本文を、 よって、原告の請求は、上記の限度で理由があるから、その限りでこれを認容 し、その余は理由がないから棄却することとして、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法64条本文、61条、65条1項本文を、仮執行宣言につき、同法259条1項本文をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。なお、仮執行免脱宣言は、相当でないから、これを付さないこととする。 水戸地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官三上乃理子 裁判官田島敬太 裁判官西田祥平は、退官により、署名、押印することができない。 裁判長裁判官三上乃理子

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