平成20(ワ)13852 実用新案実施料

裁判年月日・裁判所
平成21年2月10日 大阪地方裁判所
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判決文本文3,410 文字)

- 1 -平成21年2月10日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成20年(ワ)第13852号実用新案実施料請求事件口頭弁論終結日平成21年1月9日判決原告A被告ニチリン化学工業株式会社訴訟代理人弁護士黒田修一訴訟復代理人弁護士武石智広主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1請求の趣旨 被告は原告に対し,登録第3053741号異方向検知式自動供紙機,仕込一号機,二号機に対する平成10年8月26日から同20年8月25日までの実施料5000万円を支払え。 訴訟費用は被告の負担とする。 仮執行宣言第2当事者の主張 請求の原因( )原告は,平成9年1月31日,被告に対し,ニチリン化学工業株式会社 仕込一号機,二号機を登録第3053741号異方向検知式自動供紙機に特許改善をした(実用新案登録出願日平成9年2月8日。この実用新案登録に係る考案を以下「本件考案」という。被告は,平成10年8月26日か。)ら同20年8月25日までの間,被告の保有する仕込一号機,二号機により- 2 -本件考案を実施した。 ( )被告は,本件考案を実施したことにより,上記10年間の実施料相当額 の利益を得,これにより原告は同額の損失を被った。 ( )よって,原告は,被告に対し,上記実施料相当額の不当利得金10年間 分5000万円の支払を求める。 請求原因に対する認否及び主張( )認否 請求の原因のうち,原告が登録第3053741号の実用新案登録をしたことは認め,原告が被告工場で稼働する2台のパルプシート供紙機(原告のいう仕込一号機,二号機)に何らかの改善をしたこと,被告が本件考案を実施していることは否認し,その余の主張は争う。 ( )主 たことは認め,原告が被告工場で稼働する2台のパルプシート供紙機(原告のいう仕込一号機,二号機)に何らかの改善をしたこと,被告が本件考案を実施していることは否認し,その余の主張は争う。 ( )主張 ア本件考案は被告の業務範囲における職務上の考案であるから,被告は,本件考案について無償の通常実施権を有しており,仮にこれを実施したとしても,対価を支払う義務はない。 イ本件考案は進歩性を欠くから,実用新案登録は無効であり,原告は同実用新案登録に係る実用新案権に基づく権利行使はできない。 すなわち,本件考案は「パルプ」の水平長を「タイマーで積算検知」,することで「マイクロスイッチの動作のみによる給紙機の停止を防止」しようとしたものであるが,引用文献1(実願昭53-115703号)において「予圧を設けることで停止スイッチの作動を阻止すること」が知られており,さらに引用文献2(特開平5-301657号)及び引用文献3(特開昭63-210611号)において「厚さ検知手段において,ノイズ除去手段を目的として,時間積算を行うこと」が知られていることから,引用文献1記載のノイズ除去手段として引用文献2及び同3記載の発明を採用すれば本件考案に至るのであり,周知の技術に基づいて極めて容- 3 -易に想到し得るものである。 被告の主張に対する原告の反論原告は,被告の従業員(電気主任技術者)として,電気関係の保守安全を( )1業務としていた。本件考案は,原告がその業務の一環として考案したものである。しかし,発明の内容が会社の業務に属するもので,研究,開発に携わっていない原告のような電気主任技術者が新しい機能の自動供紙機を自発的に考案した場合,業務発明といい,これは従業員の自発性によるもので,例えば就業規則に特許の権利を受けるような定めがあって 発に携わっていない原告のような電気主任技術者が新しい機能の自動供紙機を自発的に考案した場合,業務発明といい,これは従業員の自発性によるもので,例えば就業規則に特許の権利を受けるような定めがあっても無効である。法定通常実施権は研究,開発専従社員による発明のみ有効である。今回のような場合は平成9年4月7日以前に出願書類をB取締役に提出し,その上で同年,。 4月11日に再度退職通告を受けており被告の不当解雇によるものであるしたがって,原告が平成10年5月26日付けの内容証明郵便で明記し,原告の予言どおり通常実施権を放棄したことになる。被告が権利を譲り受けたい時は登録がされた後に原告と契約を交わし,被告は原告にその発明に見合った対価を支払う必要がある。 本件考案が進歩性を欠くとの被告の主張は争う。本件考案は,従来の作業( )2性の悪い供紙機と比較すれば進歩性がないとはいえない。 その他の主張は,別紙のとおりである。 ( )3第3当裁判所の判断 本件は,被告の従業員であった原告が,被告在職中にその業務の一環として考案した登録第3053741号の実用新案登録に係る考案(本件考案)について,被告が原告に無断で本件考案を実施していると主張して,不当利得に基づき,その間の実施料相当額の支払を求めたものと解される。 原告主張の請求の原因事実中,原告が登録第3053741号の実用新案登録をしたこと,本件考案が原告が被告の従業員として電気関係の保守安全を業務としていた際に,その業務の一環として考案したものであることは,当事者- 4 -間に争いがない。 しかし,原告は,被告が,原告の主張する平成10年8月26日から同20年8月25日までの間,本件考案を実施していることについて何ら立証せず,本件全証拠をもってしても,上記実施の事実を認めるに足 しかし,原告は,被告が,原告の主張する平成10年8月26日から同20年8月25日までの間,本件考案を実施していることについて何ら立証せず,本件全証拠をもってしても,上記実施の事実を認めるに足りない。 この点をしばらくおき,仮に被告が上記期間において本件考案を実施していたとしても,上記のとおり,本件考案が,原告が被告の従業員(電気主任技術者)として電気関係の保守安全を業務としていた際に,その業務の一環として考案したものであることは原告が自認するところであるから,本件考案は,従業者が使用者の業務範囲に属し,かつ,その考案をするに至った行為がその使用者における従業者の現在又は過去の職務に属する考案であることが明らかである。したがって,実用新案法11条3項,特許法35条1項(平成16年法律第79号による改正前のもの)により,使用者である被告は,本件実用新案権について通常実施権を有する。そうすると,被告は本件考案を適法に無償で実施することができたのであって,これにより被告が何らかの利得を得たとしても,その利得は法律上の原因に基づくものであるから,不当利得とならないことが明らかである(民法703条。 )原告は,発明の内容が会社の業務に属するもので,研究,開発に携わっていない原告のような電気主任技術者が新しい機能の自動供紙機を自発的に考案した場合,業務発明といい,従業員の自発性によるもので,会社に例えば就業規則に特許の権利を受けるような定めがあっても無効であるなどと主張するが,独自の見解であって採用することができない。 また,原告は,被告が上記通常実施権を放棄したかのような主張をするが,同事実を認めるに足りる証拠はない(原告の挙げる被告宛の平成10年5月26日付けの内容証明郵便〔甲5の1〕には「平成9年実用新案第1724号,(判決注・ 常実施権を放棄したかのような主張をするが,同事実を認めるに足りる証拠はない(原告の挙げる被告宛の平成10年5月26日付けの内容証明郵便〔甲5の1〕には「平成9年実用新案第1724号,(判決注・本件考案の出願番号)については,4月11日の再退職勧告に依り将来の利益を会社は放棄した事となります」との記載があるが,原告の一方。 - 5 -的通告にすぎず,これにより被告が上記通常実施権を放棄したことにはならない。 。) 原告のその余の主張をしん酌しても,上記判断は左右されない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告の本件請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部裁判長裁判官田中俊次裁判官西理香裁判官北岡裕章

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