平成24(行コ)8 所得税更正処分取消請求控訴事件(原審・福岡地方裁判所平成20年(行ウ)第58号,差戻前控訴審・当庁平成22年(行コ)第12号,上告審・最高裁判所平成23年(行ヒ)第104号,同第105号)

裁判年月日・裁判所
平成25年5月30日 福岡高等裁判所 租税
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判決文本文11,042 文字)

-1-平成25年5月30日判決言渡平成24年(行コ)第8号所得税更正処分取消請求控訴事件 主文 1 原判決中,過少申告加算税賦課決定処分の取消請求を認容した部分を取り消し,同請求を棄却する。 2 前項に関する訴訟の総費用は被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文同旨第2 事案の概要と審理経過(略称等は,本判決に特に記載するほか,原判決記載の例による。) 1 本件は,被控訴人の経営する医療法人(本件法人)が契約者となり,保険料を支払った養老保険契約(被保険者が保険期間内に死亡した場合には死亡保険金が支払われ,保険期間満了まで生存していた場合には満期保険金が支払われる生命保険契約をいう。以下同じ。本件養老保険契約)に基づいて満期保険金の支払を受けた被控訴人が,その満期保険金の金額を一時所得に係る総収入金額に算入した上で,本件法人の支払った上記保険料の全額(本件支払保険料)が一時所得の金額の計算上控除し得る「その収入を得るために支出した金額」(所得税法34条2項)に当たるとして,所得税(平成17年分)の確定申告をしたところ,本件支払保険料のうちその2分の1に相当する被控訴人に対する役員報酬として損金経理がされた部分(被控訴人負担分)以外の保険料(法人負担分)は,上記「その収入を得るために支出した金額」に当たらないとして,更正処分(本件更正処分)及び過少申告加算税賦課決定処分(本件賦課決定処分)を受けたため,上記各処分(更正処分については申告額を超える部分,本件更正処分等)の取消しを求めた事案である。 2 審理経過-2-(1) 原審原審は,本件支払保険料のうち,法人負担分は,「その収入を得るために支出した金額」に該当するとし,本件更正処分等は,法令の解釈・適用を誤ったもの る。 2 審理経過-2-(1) 原審原審は,本件支払保険料のうち,法人負担分は,「その収入を得るために支出した金額」に該当するとし,本件更正処分等は,法令の解釈・適用を誤ったものであって違法であるとして,これを取り消した。 (2) 差戻前控訴審控訴人は,原審の判断を不服として控訴した。 差戻前控訴審は,以下のとおり判示して,本件更正処分を取り消した部分を取り消し,これに係る被控訴人の請求を棄却し,その余の本件賦課決定処分の取消部分に係る控訴を棄却した。 本件支払保険料のうち,法人負担分は,「その収入を得るために支出した金額」ということはできない。したがって,本件更正処分は適法である。ただし,被控訴人が法人負担分を,「その収入を得るために支出した金額」に当たるとして一時所得の金額を計算したことはやむを得ないものであり,国税通則法65条4項所定の「正当な理由があると認められる」場合に当たるとして,被控訴人に過少申告加算税を課することはできず,本件賦課決定処分は違法である。 (3) 上告審上記(2)の判断を不服として,控訴人,被控訴人とも,上告受理の申立てをしたところ,上告審は,以下のとおり判示して,差戻前控訴審判決のうち,控訴人の敗訴部分を破棄し,同部分につき,福岡高等裁判所に差し戻し,その余の部分についての被控訴人の上告を棄却すべきであるとした。 本件支払保険料のうち,法人負担分は,「その収入を得るために支出した金額」に当たるとはいえない。そして,過少申告加算税に関する国税通則法65条4項にいう「正当な理由があると認められる」場合とは,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,過少申告加算税の趣旨に照らしても,なお,納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷-3-に 当な理由があると認められる」場合とは,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,過少申告加算税の趣旨に照らしても,なお,納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷-3-になる場合をいう。本件では,課税実務上の運用や税務当局ないしその関係者の示した見解の有無などの点について十分に審理することなく,所得税基本通達34-4の文言や,法人負担分を総収入金額から控除することが許容されるとの見解を記載した市販の解説書が複数存在していたという事情のみをもって,上記「正当な理由」があるものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるというべきである。 (4) 差戻審における審理の範囲上記(3)の差戻しを受けた当審は,上告審の判断の拘束力を受けて(民事訴訟法325条3項),改めて,本件賦課決定処分に関する控訴人の控訴について判断するものである。 したがって,当審の審理の対象は,本件賦課決定処分の違法性の有無である。 3 関連法令等の定め原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の2項に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決3頁9行目の「法31条2号」を「法第31条第2号」に改め,5頁4行目の「次」の次に「の各号」を加える。)。 4 前提事実原判決を次のとおり補正するほか,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の3項に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決5頁23行目及び24行目の「子ら」を「被保険者」に,24行目の「際」を「場合」に,26行目の「締結し,」を「締結した。」に,それぞれ改める。 (2) 6頁3行目の「支払保険料の」の次に「経理」を加え,17行目の「平成18年3月15日」を削る。 (3) 7頁6行目の ,26行目の「締結し,」を「締結した。」に,それぞれ改める。 (2) 6頁3行目の「支払保険料の」の次に「経理」を加え,17行目の「平成18年3月15日」を削る。 (3) 7頁6行目の「(」の次に「別表2の「異議決定(C)」。」を加える。 5 争点-4-被控訴人が満期保険金に係る一時所得の金額の計算において,本件支払保険料のうち,法人負担分についても,所得税法34条2項の「その収入を得るために支出した金額」に当たるとして,その金額を控除して申告したこと(以下「本件申告処理」という。)について,国税通則法65条4項が定める「正当な理由があると認められる」場合に該当するか。 6 争点に関する当事者の主張(被控訴人の主張)以下の事情ないし事実からすると,本件申告処理は,例外的に過少申告加算税の課されない場合として国税通則法65条4項が定める「正当な理由があると認められる」場合に該当する。 (1) 八幡税務署による誤指導被控訴人の妻P1は,八幡税務署において,本件養老保険契約における満期保険金の申告方法について相談したところ,平成18年3月ころ,一時所得の計算上,本件支払保険料全額を控除して申告ができる旨の回答を得た。 そこで,被控訴人は,平成18年3月に,本件申告処理をしたうえで,確定申告を行った。 (2) 所得税法,同法施行令,通達の文言解釈との関係等以下のとおり,被控訴人の解釈は,法令や通達の文言を素直に解釈することによって導かれる,法律の文言どおりの解釈である。 ア本件養老保険契約における満期保険金は,一時所得であるところ,所得税法34条2項は,一時所得の金額の計算につき,「一時所得の金額は,その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額の合計額 約における満期保険金は,一時所得であるところ,所得税法34条2項は,一時所得の金額の計算につき,「一時所得の金額は,その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額の合計額を控除し」と規定し,「その収入を得るために支出した金額」が収入を得た本人の負担分に限定される旨の明示は一切ない。 イまた,所得税法施行令183条2項2号は,「生命保険契約等に係る保険料又は掛金の総額」は,一時所得の計算上控除できる旨規定しており,-5-その文言上,本人の負担分しか控除できないという限定はない。また,同号は,除外事由について規定しているが,養老保険にかかる支払保険料については,除外事由に該当しない。 ウさらに,所得税基本通達34-4は,一時所得の計算上控除できる保険料等の額には「満期返戻金等の支払を受ける者以外の者が負担した保険料等の額も含まれる。」と規定し,支払を受ける者以外が負担した保険料又は掛金の額も支出した金額に含まれる旨明示している。 (3) 養老保険の特性養老保険の場合,支払保険料の総額を払い込まない限り満期(又は死亡)保険金全額の支払を受けることはできないのであるから,死亡と生存は表裏の関係にあり,満期(又は死亡)保険金に対応しているのは,あくまでも支払保険料の総額である。 養老保険は,生存または死亡を保険事故とすることから,本件のように満期保険金と死亡保険金の受取人が分離するということも当然にありうるが,この場合でも,満期(又は死亡)保険金に対応しているのは,支払保険料の総額であることに何ら変わりはない。 (4) 死亡保険金が一時所得となる事例との比較死亡保険金が一時所得となる事例においては,一時所得の計算上控除される保険料は,保険金受取人が負担したか否かにかかわらず,支払保険料 りはない。 (4) 死亡保険金が一時所得となる事例との比較死亡保険金が一時所得となる事例においては,一時所得の計算上控除される保険料は,保険金受取人が負担したか否かにかかわらず,支払保険料の総額となるのであるから,本件のように満期保険金が一時所得となる事例についても,同様に一時所得の計算上控除される保険料は保険金受取人が負担したか否かにかかわらず,支払保険料の総額とすべきであり,あえて異なる取扱いをする合理的理由はない。 (5) 契約者を法人,被保険者を従業員の家族とし,死亡保険金の受取人を従業員,満期保険金の受取人を法人とする事例との比較契約者を法人,被保険者を従業員の家族とし,死亡保険金の受取人を従業-6-員,満期保険金の受取人を法人とする場合には,法人は,支払保険料の2分の1を保険料積立金として資産計上し,残りの2分の1を福利厚生費として損金算入する経理処理を行うこととなる。 この場合,福利厚生費として損金算入された支払保険料については,従業員に給与課税されないこととなるが,それでも,従業員が死亡保険金を受け取った際には一時所得の計算上,支払保険料全額について控除が認められることとなる。 これとの対比上,本件において,保険金の受取人に対する課税の有無と,支払保険料の控除の可否とを結びつける必然性は全くない。 (6) 課税金の不還付養老保険について,満期保険金の受取人を法人とし,死亡保険金の受取人を従業員の遺族とする場合については,支払保険料の2分の1を資産計上し,残りの2分の1を給与として経理処理をせよとされている(法人税基本通達9-3-4(3)但書き)。 本件養老保険契約において,仮に被保険者が保険期間中に死亡し,本件法人が死亡保険金を受け取ることとなっても,既に給与課税をした保険料 をせよとされている(法人税基本通達9-3-4(3)但書き)。 本件養老保険契約において,仮に被保険者が保険期間中に死亡し,本件法人が死亡保険金を受け取ることとなっても,既に給与課税をした保険料について課税金を被保険者の相続人に還付しないはずである。 また,本件養老保険契約が解約された場合,解約返戻金は,過去の支払保険料に対する課税関係とは無関係に全て契約者たる法人に返還されることとなるが,この場合も,解約という結果から顧みれば本来給与課税は不要であったこととなるものの,給与課税をした保険料について課税金の還付は行わないはずである。 (7) 市販の解説書の存在本件申告処理を適法とする市販の解説書が複数存在した。 これに対して,控訴人は,P2(株式会社P3発行)の記事(平成11年1月18日付け)には,本件申告処理を認めない旨の記載があったと主張す-7-るが,P2は参考図書にすぎない。 (8) 種々の裁判例の存在平成24年1月13日に最高裁判所(第二小法廷判決・民集66巻1号1頁)は,本件申告処理が違法である旨判断した(以下「13日付最高裁判決」という。)。 それまで,本件申告処理が適法であるかどうかについては,下級審の判断も分かれる状態であり,本件申告処理を適法とする判断もあった。本件申告処理を違法であるとする裁判例もあったが,その場合においても,過少申告加算税の賦課まで認めた裁判例は一例もなかった。 なお,税務当局は,「申告所得税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)」を定めている。 同通達は,「正当な理由があると認められる」場合として「税法の解釈に関し,申告書提出後新たに法令解釈が明確化されたため,その法令解釈と納税者の解釈とが異なることとなった場合において,その納税 同通達は,「正当な理由があると認められる」場合として「税法の解釈に関し,申告書提出後新たに法令解釈が明確化されたため,その法令解釈と納税者の解釈とが異なることとなった場合において,その納税者の解釈について相当の理由があると認められること」を規定しているところ,本件申告処理が違法とされたのは,13日付最高裁判決が言い渡された平成24年1月13日である。 (控訴人の主張)過少申告加算税は,期限内申告書が提出された場合において,修正申告又は更正がされ,当初の申告税額が結果的に過少になったときに,増差税額の10%又は15%の税率を乗じて課される附帯税である。そして,過少申告加算税は,過少申告による納税義務違反の事実があれば,原則としてその違反者に対し課されるものであり,これによって,当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに,過少申告による納税義務違反の発生を防止し,適正な申告納税の実現を図り,もって納税の実を挙げようとする行政上の措置であり,主観的責任の追及という意味での制裁的な要素は-8-重加算税に比して少ないものである。 したがって,「正当な理由があると認められる」場合については,ある程度厳格に解するべきである。 (1) 八幡税務署による誤指導被控訴人は,前記(被控訴人の主張)(1)のとおり主張する。しかしながら,かかる事実は認められない。 (2) 所得税法,同法施行令,通達の文言解釈との関係等被控訴人は,前記(被控訴人の主張)(2)のとおり主張する。しかしながら,法の不知や法令解釈の誤りは納税者の主観的事情にすぎず,「正当な理由があると認められる」場合を基礎付ける事情となるものではない。 (3) 市販の解説書の存在被控訴人は しかしながら,法の不知や法令解釈の誤りは納税者の主観的事情にすぎず,「正当な理由があると認められる」場合を基礎付ける事情となるものではない。 (3) 市販の解説書の存在被控訴人は,前記(被控訴人の主張)(7)のとおり主張する。しかしながら,いずれの市販の解説書も,税務当局の職員が監修等で関与したものではなく,客観的にその記載内容が税務当局の見解であると理解されるようなものではないし,法令解釈上の具体的な根拠も示されておらず,他に根拠となり得るような課税実務の運用や税務当局ないしその関係者の示した見解があるといった事情も存しない。 かえって,P2には,税務当局の関係者により具体的根拠とともに,本件養老保険契約にかかる満期保険金について,法人負担分の額が一時所得の計算上控除できないことが明らかにされており,かかる見解は13日付最高裁判決に合致するものであった。 (4) 種々の裁判例の存在被控訴人は,前記(被控訴人の主張)(8)のとおり主張する。しかしながら,所得税法34条2項などについての13日付最高裁判決の法令解釈は,同条項の趣旨・目的により従前から明確であったといえ,租税法律主義に反するものではなく,一般的な常識にも合致するものである。 -9-(5) 課税実務上の運用の変更の不存在税務当局は,従前から13日付最高裁判決と同様の法令解釈の下で課税実務上の運用を行っているのであり,課税実務上の運用を変更した事実はない。 (6) 以上によれば,本件において,「正当な理由があると認められる」場合に該当する事実は認められない。 第3 当裁判所の判断 1 過少申告加算税は,過少申告による納税義務違反の事実があれば,原則としてその違反者に対し課されるものであり,これによって,当初 る」場合に該当する事実は認められない。 第3 当裁判所の判断 1 過少申告加算税は,過少申告による納税義務違反の事実があれば,原則としてその違反者に対し課されるものであり,これによって,当初から適法に申告して納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに,過少申告による納税義務違反の発生を防止し,適正な申告納税の実現を図り,もって納税の実を挙げようとする行政上の措置である。この趣旨に照らせば,過少申告があっても,例外的に過少申告加算税が課されない場合として国税通則法65条4項が定めている「正当な理由があると認められる」場合とは,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である(最高裁判所平成18年10月24日第三小法廷判決・民集60巻8号3128頁)。 2(1) 八幡税務署による誤指導被控訴人は,前記第2(被控訴人の主張)(1)のとおり主張する。 しかしながら,これを認めるに足りる証拠は全くなく,かかる事実は認められない。 (2) 所得税法,同法施行令,通達の文言解釈との関係等被控訴人は,前記第2(被控訴人の主張)(2)のとおり主張する。 しかしながら,13日付最高裁判決の判断は,一時所得に係る収入を得た個人の担税力に応じた課税を図るという所得税法34条2項の趣旨からすると,当然の帰結であるといえる。所得税法施行令183条2項2号や所得-10-税基本通達34-4がその規定振りのために,いささかわかりにくい面があり,本件養老保険契約における満期保険金の課税処理について解釈が分かれていたものである。そして,もとより,政令は法律よりも下位規 税基本通達34-4がその規定振りのために,いささかわかりにくい面があり,本件養老保険契約における満期保険金の課税処理について解釈が分かれていたものである。そして,もとより,政令は法律よりも下位規範であるから,政令が法律の解釈を決定付けるものではなく,いわんや通達が法律の解釈を決定付けるものでもない。そして,そもそも,上記施行令も,上記通達も,いずれも所得税法34条2項と整合的に解されるべきであり,またそのように解し得たものである。 これに対して,本件申告処理は,法人負担分につき,本件法人の法人税額算出及び被控訴人の所得税額算出に当たって,二重に控除して非課税とするという点において不合理な申告である。 (3) 養老保険の特性被控訴人は,前記第2(被控訴人の主張)(3)のとおり主張する。 しかしながら,一時所得に係る収入を得た個人の担税力に応じた課税を図るという所得税法34条2項の趣旨からすると,同項の「その収入を得るために支出した金額」という文言も,収入を得る主体と支出をする主体が同一であることを前提としたものと解されるということと,保険料の総額を支払わなければ満期(又は死亡)保険金全額の支払を受けることができないという本件養老保険契約の内容とを関連付けて考察することは疑問なしとしない。 (4) 死亡保険金が一時所得となる事例との比較被控訴人は,前記第2(被控訴人の主張)(4)のとおり主張する。 しかしながら,被控訴人が主張する事例は,相続税法基本通達3-17(2)の事例であるところ,同通達は,従業員等が死亡保険金を受領してこれが一時所得となる場合,使用者からその保険料相当額の経済的利益を,いわば福利厚生として享受したものとみるべきであるから(乙13),当該経済的利益については従業員等の給与として 亡保険金を受領してこれが一時所得となる場合,使用者からその保険料相当額の経済的利益を,いわば福利厚生として享受したものとみるべきであるから(乙13),当該経済的利益については従業員等の給与として課税しないという特別の扱いをした(従-11-業員が使用者から経済的利益を受けた場合には給与とみなされて所得税が課税されるのが原則であるが,従業員が死亡保険金を受け取った場合には,死亡保険金は実質的には使用者から遺族に対する香典ないし弔慰金の性質を有するものであるから,従業員は保険料相当額の経済的利益を福利厚生として享受したものとして,上記原則にかかわらず,所得税の課税をしないという特別の扱いをした。)とみるべきである。 したがって,使用者が負担した保険料相当額についても,従業員等に対する課税がなされている場合と同様に扱うべきものであり,従業員等の一時所得の計算上控除できる。 本件の場合,被控訴人が受領したのは満期保険金であり,法人負担分相当額の経済的利益を福利厚生として享受したものとみることはできない。したがって,上記特別の扱いをする基礎に欠ける。 (5) 契約者を法人,被保険者を従業員の家族とし,死亡保険金の受取人を従業員,満期保険金の受取人を法人とする事例との比較被控訴人は,前記第2(被控訴人の主張)(5)のとおり主張する。 しかしながら,前(4)記載のとおり,被控訴人が受領したのは満期保険金であり,法人負担分相当額の経済的利益を福利厚生として享受したものとみることはできない。したがって,上記特別の扱いをする基礎に欠ける。 (6) 課税金の不還付被控訴人は,前記第2(被控訴人の主張)(6)のとおり主張する。 しかしながら,契約内容に従って,法人が死亡保険金を受け取ることや解約の場合に契約者たる法人に保 る。 (6) 課税金の不還付被控訴人は,前記第2(被控訴人の主張)(6)のとおり主張する。 しかしながら,契約内容に従って,法人が死亡保険金を受け取ることや解約の場合に契約者たる法人に保険料が返還されることと,法律に従ってなされる課税実務とを関連付けて考察することは疑問なしとしない。 (7) 市販の解説書の存在被控訴人は,前記第2(被控訴人の主張)(7)のとおり主張する。 証拠(甲5ないし7)によれば,確かに,本件申告処理が許容される旨の-12-理解の下に執筆された解説書が存在することが認められる。しかしながら,同解説書について,税務当局あるいはその職員が税務当局の官職名を明示した上で監修あるいは執筆をしていたり,本件申告処理を採用すべき法令解釈上の具体的な根拠を示していたりするなどの事情は認められない。 他方,証拠(乙7)によれば,国税庁が監修した解説書(昭和62年発行)には,一時所得の計算上控除される保険料等の総額は,課税済みの本人負担分に限られ,事業主が負担した保険料等で,給与所得として課税が行われていないものは,その控除する保険料等の総額から除くこととされることが明記されている。 また,P2は,国税庁審理室課長補佐がその官職名を明示したうえ,具体的根拠や関連する通達の解釈を示しながら,法人負担分(損金算入され,給与課税されていない。)の額を一時所得の計算上控除できないこと,つまり,本件申告処理は許容されないことを述べていたものである(乙14)。 (8) 課税実務上の運用に関する変更の有無税務当局が,養老保険の満期保険金に係る一時所得の金額の計算について,課税実務上の変更を行った形跡はない。すなわち,証拠(甲10,乙7)及び弁論の全趣旨によれば,養老保険は,昭和60年ころから流通し始めたもので 老保険の満期保険金に係る一時所得の金額の計算について,課税実務上の変更を行った形跡はない。すなわち,証拠(甲10,乙7)及び弁論の全趣旨によれば,養老保険は,昭和60年ころから流通し始めたものであり,満期までの期間が概ね5年であること,国税庁が監修して昭和62年に発行された解説書(乙7)には,生命保険契約等に基づく一時金に係る一時所得の金額の計算の改正について,「事業主が負担した保険料又は掛金で給与所得として課税が行われていないものは,その控除する保険料又は掛金の総額から除くこととされています。」との記載があることが認められる。しかし,税務当局が従前の実務上の運用を変更したことや従来の実務の運用が不明確であったと認めるに足りる証拠はない。 (9) 種々の裁判例の存在被控訴人は,前記第2(被控訴人の主張)(8)のとおり主張する。 -13-確かに,被控訴人が主張するように,本件申告処理について下級審においては判断が分かれており,適法とする判断も,違法とする判断もあったことは顕著な事実である。 しかしながら,上記のとおり,税務当局が監修をしていたり,税務当局の職員がその官職名を明示したうえで執筆するなどした市販の解説書には,本件申告処理を適法とするものはなく,かえって,本件申告処理は適法ではないと理解できる記載がなされていたものである。 そして,本件上告審判決の法令解釈は,所得税法の趣旨に照らして所得税法施行令や所得税基本通達を解釈するものであって,本来あるべき解釈であったということができる。 したがって,本件申告処理を適法とする判断の裁判例があったことは重視されるべき事情であるとはいえない。 (10) まとめ上記の説示に加え,被控訴人は,申告前に,本件申告処理が妥当であるかどうかについて,税務当局に問い合 断の裁判例があったことは重視されるべき事情であるとはいえない。 (10) まとめ上記の説示に加え,被控訴人は,申告前に,本件申告処理が妥当であるかどうかについて,税務当局に問い合わせをすることもなく,課税額が少額となる本件申告処理を採用して申告したものである(弁論の全趣旨)。 かような事実関係の下においては,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になるものとまでは認めることができず,「正当な理由があると認められる」場合に該当するとはいえない。 3 以上によれば,本件賦課決定の取消しを求める部分については,原判決を取り消し,同部分に関する請求を棄却すべきである。 よって,主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第1民事部 -14-裁判長裁判官古賀寛 裁判官武野康代 裁判官清野英之は,差し支えのため署名押印できない。 裁判長裁判官古賀寛

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