昭和31(う)360 猥褻誘拐被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和32年3月12日 名古屋高等裁判所 金沢支部 破棄自判
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      本件公訴を棄却する。          理    由  弁護人谷口成高の控訴趣意は昭和三十一年十一月十四日付控訴趣意書並に昭和三 十二年二月五日付

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判決文本文2,721 文字)

主文原判決を破棄する。 本件公訴を棄却する。 理由弁護人谷口成高の控訴趣意は昭和三十一年十一月十四日付控訴趣意書並に昭和三十二年二月五日付控訴趣意補充申立書記載の通りであるから、此処にこれを引用する。 記録に依れば原判決は挙示の証拠を綜合し、「被告人は昭和三十一年三月頃から甲羽田空港副操縦士乙なる偽名で、富山市、金沢市等にあるカフエー、バー等に出入していたものであるが、偶々同年四月三十日頃富山市a町カフエー丙に於て、女給丁と雑談中同女に対し、現在右甲に於てエアガールを募集中であるから、志望者があれば推薦して貰い度い等と申向け、同人からその知人である戊(当十六年)が適任で、或は志望するかも知れない旨聞知するや、戊をエアガールに推薦する旨甘言を以て誘惑し、温泉地に連れ出してこれを姦淫しようと企て、同年五月一日同女を被告人の宿泊先である同市b町c番地旅館己に呼び寄せ、予て偽造しておいたDC六B、庚副操縦士乙なる名刺を渡し、恰も自分が甲株式会社の副操縦士であるように装つて「あなたを甲のエアガールに世話して上げたい。試験は七、八月頃と思う。一度考えてみてくれ。」と申向け、同女をして被告人が甲株式会社の副操縦士で真にエアガールに世話するため呼び寄せたものと誤信させた上、さらに翌二日再び同女を同所に呼び寄せて、推薦するについての打合わせ等に事寄せて、言葉巧みに誘い出し、同日午後二時四十分頃富山駅発上り列車に乗車させ、同日夕刻石川県江沼郡d町e番地辛旅館に連行して宿泊させ、もつて姦淫の目的で同女を誘拐したものである。」旨の事実を認定し、刑法第二百二十五条、第五十六条、第五十九条、第五十七条等を適用し、被告人を懲役一年に処する旨言渡したものであることを認め得る。ところで、被告人の前記の所為は、 したものである。」旨の事実を認定し、刑法第二百二十五条、第五十六条、第五十九条、第五十七条等を適用し、被告人を懲役一年に処する旨言渡したものであることを認め得る。ところで、被告人の前記の所為は、姦淫の目的で人を誘拐したものとして、刑法第二百二十五条に該当し、なお同法第二百二十九条本文に依り、告訴を待つて論ずべき罪とされていることは、敢て此処に説明する迄もなく、また司法警察員作成昭和三十一年五月六日付告訴調書(記録第一六丁以下)の記載に依れば、被拐取者戊は同日被害事実を捜査官憲に申告し、併せて犯人の処罰方を要求したことを認めるに足るから、本件起訴は適法であつて、本訴は公訴提起に際し、所謂訴訟条件を欠いていたものではない。(原審証拠調の結果に徴すれば、右告訴は戊の自由意思に基いたものであり、強制その他の方法に依り、その真意に反して為されたものでないことを看取するに足る。)しかるに記録中編綴の富山県東礪波郡f町壬作成の戸籍謄本(記録第四一六丁)の記載に依れば、前記戊は本件公訴(昭和三十一年五月二十一日受理)提起後、被告人と婚姻し、昭和三十一年九月十二日富山県東礪波郡f町長宛其の旨の届出を為し、右届出は同日受理されたことが明かであり、他方刑法第二百二十九条但書は「但被拐取者又ハ被売者犯人ト婚姻ヲ為シタルトキハ婚姻ノ無効又ハ取消ノ裁判確定ノ後ニ非レハ告訴ノ効ナシ」と規定して居るから、前記の婚姻は、さきに為された告訴の効力に対し、如何なる影響を及ぼすかを、此処に審案する必要が生ずる。原判決は刑事訴訟法第二百三十七条第一項の趣旨を本件の場合にも類推し、被告人と戊の結婚が、公訴提起後に成立したことを理由とし、同人等の婚姻は、さきに為された告訴の効力を左右するものでなく、従つて本件公訴は適法であると言い、被告人に対し有罪の宣告をしている。思うに所謂 告人と戊の結婚が、公訴提起後に成立したことを理由とし、同人等の婚姻は、さきに為された告訴の効力を左右するものでなく、従つて本件公訴は適法であると言い、被告人に対し有罪の宣告をしている。思うに所謂拐取罪に付て、刑法第二百二十七条第二項が被拐取者収受罪から婚姻目的のものを除外していること及同法第二百二十九条但書が特に告訴権の行使に婚姻の存否を条件としていること等から見て、刑法は営利拐取、国外移送拐取の如き特殊の場合を除いては婚姻を第一次的に保護尊重し、苟も刑事訴追によつてその破綻を招くが如きことを極力避けようとする趣旨が十分に窺われるのでありこれに従えば、婚姻成立の時期が公訴提起の前であると後であるとに依つて、婚姻に対す<要旨第一>る保護尊重に、差等を設けなければならぬ根拠を見出し難く、これに反して、刑事訴訟法第二百三十七条は、</要旨第一>告訴権の軽卒な行使に依り、公訴の追行が不当に左右されることを防止しようとする趣旨の規定であつて、必ずしも本件の場合に適切な規定でないと解されるから、これ等各法条の趣旨を綜合すれば、本件に於けるが如<要旨第二>く、被拐取者が犯人と婚姻した場合には、該婚姻の成立が、公訴提起の前であると否とを問わず、いやしくも</要旨第二>婚姻の無効又は取消の裁判が確定した後に為されたものでない限り、当該犯罪に対する告訴はすべて無効であり、既に為された告訴の効力は、悉く消滅に帰するものと解するのが相当である。そうして見れば本件公訴を適法と認め、被告人の所為に対し有罪の認定を下した原判決は、法令の解釈適用を誤つたものであり、その誤りは判決に影響するから論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。 よつて刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十条に依り原判決を破棄した上、同法第四百条但書に従い次の通り判決する。 本件公訴事実は叙上 は判決に影響するから論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。 よつて刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十条に依り原判決を破棄した上、同法第四百条但書に従い次の通り判決する。 本件公訴事実は叙上原審認定事実と同旨であり、刑法第二百二十九条本文に依り、告訴を待つてこれを論ずべきであるところ論旨に対する判示部分に引用した戸籍謄本の記載に依れば、被告人は昭和三十一年九月十二日被拐取者である戊と婚姻したことを認め得べく、従つて被告人の本件犯行に対するさきの戊の告訴(昭和三十一年五月六日付司法警察員作成の告訴調書に依るもの)は刑法第二百二十九条但書に依り、その効力を喪失したものと解さざるを得ず、その結果、本件公訴は訴訟条件を欠如するに至つたと認めざるを得ないから、刑事訴訟法第四百四条第三百三十八条第四号に従い公訴棄却の言渡を為すべきものとする。 よつて主文の通り判決する。 (裁判長判事高城運七判事沢田哲夫判事木村直行)

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