平成18(ワ)5240 産業廃棄物処理施設建設差止請求事件

裁判年月日・裁判所
平成21年10月9日 名古屋地方裁判所
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判決文本文102,046 文字)

平成18年(ワ)第5240号産業廃棄物処理施設建設差止請求事件判決主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求被告は,別紙施設目録記載の産業廃棄物処理施設の操業をしてはならない(なお,原告らは操業差止請求に係る施設の種類を廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令7条3号,4号,5号,7号,8号,8号の2,13号の2に規定する産業廃棄物処理施設とするのに対し,後記第2の1(2)アのとおり現実に建設され,被告が操業を予定している施設には,同条4号,7号,8号の2に規定する施設が含まれないことが証拠(甲1,3)上明らかであるところ,施設としての同一性があるものと認め,施設の種類を別紙施設目録のとおり訂正した。)。 第2事案の概要本件は,被告が別紙施設目録記載の設置場所(以下「本件設置場所」という。)に同目録記載の産業廃棄物処理施設(以下「本件施設」という。)を建設し,その操業を予定しているところ,本件施設の周辺に居住又は就業する原告らが,本件施設が操業されると,本件施設から排出されるダイオキシン類に暴露され,原告らの生命,健康が侵害されるおそれが極めて大きいなどと主張して,被告に対し,人格権に基づき,本件施設の操業差止めを求めた事案である。 争いのない事実等(認定事実は末尾に証拠を掲記する。)(1)当事者ア原告ら原告らは,愛知県春日井市,名古屋市○区,同市○区に居住又は就業する住民である。(甲127[以下,枝番のある書証については,特記しない限りすべての枝番を含む。],弁論の全趣旨)イ被告被告は,風俗営業(パチンコ・マージャン)の遊戯場経営,産業廃棄物・一般廃棄物の中間処理場及び最終処理場の建設,運営及び管理等を目的とする株式会社である。(弁論 を含む。],弁論の全趣旨)イ被告被告は,風俗営業(パチンコ・マージャン)の遊戯場経営,産業廃棄物・一般廃棄物の中間処理場及び最終処理場の建設,運営及び管理等を目的とする株式会社である。(弁論の全趣旨)(2)本件施設の設置許可及び建設と被告の操業予定ア被告は,平成13年5月23日,愛知県知事に対し本件施設の設置許可を申請し,平成16年4月28日,愛知県知事から廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)15条1項の規定に基づく設置許可を受けて,本件設置場所において本件施設の建設を開始し,平成19年10月22日これを完成させ,本件施設の操業を予定している。 (甲1,3,124,弁論の全趣旨)イ被告は,次の各期間,合計3回にわたり本件施設の試運転を実施した(以下,下記(ア)の試運転から順に「第1回試運転」,「第2回試運転」,「第3回試運転」という。)。(弁論の全趣旨)(ア)平成19年10月22日から同年11月3日まで(イ)平成20年3月4日から同月31日まで(ウ)平成20年9月9日から同年10月14日までウ産業廃棄物の処分を業として行おうとする者は都道府県知事の許可(業許可)を受ける必要があるところ(廃棄物処理法14条6項),被告は,愛知県知事に対し業許可を申請する予定であるものの,現在までに,業許可を申請しておらず,業許可を受けていない。(弁論の全趣旨)(3)本件施設の概要ア焼却予定物被告は,本件施設において,廃棄物処理法にいう産業廃棄物(以下単に「廃棄物」ということもある。)のうち,汚泥,廃油,廃プラスチック類,紙くず,木くず,繊維くず,動植物性残さ,金属くず,ガラスくず及び陶磁器くず,並びに感染性産業廃棄物(すべての品目について,廃PCB,PCB処理物及びPCB汚染物等を除く。また ,廃プラスチック類,紙くず,木くず,繊維くず,動植物性残さ,金属くず,ガラスくず及び陶磁器くず,並びに感染性産業廃棄物(すべての品目について,廃PCB,PCB処理物及びPCB汚染物等を除く。また,廃プラスチック類,金属くず,ガラスくず及び陶磁器くずについては,自動車等破砕物を除く。)を焼却処理することを予定している。(甲1別紙3,甲3)なお,廃棄物処理法にいう産業廃棄物とは,事業活動に伴って生じた廃棄物のうち,燃え殻,汚泥,廃油,廃酸,廃アルカリ,廃プラスチック類等をいう(同法2条4項,同法施行令2条)。 イ焼却炉本件施設において廃棄物を焼却するための焼却炉は,株式会社A設計・製作に係る傾斜回転床炉KR-4001型である(以下「本件炉」という。)。(甲1別紙6-9・10,乙14の1)ウ処理能力本件施設の処理能力は,混合処理の場合において,43.2t/日(1. 8t/h)である。(甲1,3)(4)ダイオキシン類等の発生廃棄物の焼却処理に伴い,ダイオキシン類が不可避的に発生するほか,ばいじん,窒素酸化物,硫黄酸化物及び塩素ガス等の有害物質,並びに水銀,カドミウム,クロム,鉛,ヒ素及び銅等の重金属類が発生する。 争点 原告らは,被告に対し,人格権に基づき,本件施設の操業差止めを求めることができるか。 第3争点に関する当事者の主張(原告らの主張) 立証責任について人格権侵害に基づく本件施設の操業差止めが認められるためには,本件施設から有害物質が発生すること,発生した有害物質が本件施設外に流出すること,流出した有害物質が原告らの下に到達すること,これにより原告らの健康が侵害されることが必要であるが,原告らが上記各事実のすべてについて立証責任を負うと解するのは妥当でない。本件施設からダイオキシン類等の有害物質がいったん発 下に到達すること,これにより原告らの健康が侵害されることが必要であるが,原告らが上記各事実のすべてについて立証責任を負うと解するのは妥当でない。本件施設からダイオキシン類等の有害物質がいったん発生し,原告らの下に到達した場合には原告らに取返しのつかない健康被害が生じること,被告は廃棄物処理業についての専門的な事業者であり,本件施設を支配し,維持管理し,その支配及び維持管理に関する多様かつ具体的な情報を独占する者であるから,施設の安全性に関して立証責任を負うことになっても格別不利益ではないこと,事業者は環境保全義務(環境基本法8条1項)を負っていることからすれば,原告らの立証責任を緩和し,軽減させるよう解釈をするべきである。 ダイオキシン類排出削減のため,廃棄物処理法施行規則の平成9年改正により,産業廃棄物処理施設の構造に関する技術上の基準(同規則12条の2第5項,4条1項7号。以下「構造基準」という。)及び維持管理の技術上の基準(同規則12条の7第5項,4条の5第1項2号。以下「維持管理基準」という。)が定められているところ,廃棄物処理法によれば,産業廃棄物処理施設を設置しようとする者は,当該施設が構造基準に適合しない限り,設置許可を受けることができず(同法15条の2第1項1号),許可を受けた後も維持管理基準を遵守する義務を負い(同法15条の2の2),これらの基準に違反した場合には,改善命令,使用停止命令,許可取消し等の行政処分の対象となる上(同法15条の2の6第1号,15条の3第2項),この命令違反については罰則が設けられている(同法26条2号)。構造基準及び維持管理基準は,産業廃棄物処理施設におけるダイオキシン類排出削減のため科学的見地を踏まえて定められた最低限度の安全基準ということができ,これらの基準に違反して操業がなされる 条2号)。構造基準及び維持管理基準は,産業廃棄物処理施設におけるダイオキシン類排出削減のため科学的見地を踏まえて定められた最低限度の安全基準ということができ,これらの基準に違反して操業がなされる廃棄物処理施設は,単に行政法規違反にとどまらず,実質的に相当量のダイオキシン類を排出するおそれが大きいというべきである。そして,構造基準及び維持管理基準の適合性に関する資料は廃棄物処理業についての専門的な事業者である被告に集中する傾向があり,資料に乏しい原告らとの間の公平を図るため,①これらの基準に適合することを被告において立証できない限り,本件施設からダイオキシン類が発生し,施設外に排出されることが推定されるというべきである。そして,②上記のように本件施設からダイオキシン類が発生し,施設外に排出されることが推定される場合には,発生するダイオキシン類の具体的濃度,排出経路等についての具体的な立証がない場合であっても,排出されたダイオキシン類が原告らの下に到達すること,及びこれにより原告らの健康が侵害されることが推認されるというべきである。 ダイオキシン類等の危険性について(1)ダイオキシン類は,いったん体内に入ると代謝,排泄されにくく蓄積される物質であり,これを長期にわたり摂取したときに生じる中毒症状(慢性毒性)として①発がん性,②生殖毒性,③免疫毒性等がある。①発がん性については,動物実験において2,3,7,8-四塩化ダイオキシン(2,3,7,8-TCDD)及び類縁化合物の発がん性が示され,また,国際がん研究機関により,ダイオキシン類のうち2,3,7,8-TCDDについては,ヒトに対して発がん性があるとの見解が発表されており,②生殖毒性については,環境省ダイオキシンリスク評価研究会報告書では,動物実験において,催奇形性,妊娠率の低下 ,3,7,8-TCDDについては,ヒトに対して発がん性があるとの見解が発表されており,②生殖毒性については,環境省ダイオキシンリスク評価研究会報告書では,動物実験において,催奇形性,妊娠率の低下,出生仔の低体重,性周期の変調等の影響があるとされ,また,コホート研究において,ヒトに対する影響について,子どもの成長の遅延,行動上の問題,知力の不足及び成長の抑制が認められたとの報告がなされ,③免疫毒性については,胸腺の萎縮や免疫抑制が報告されている。このように,ダイオキシン類は,日々微量を摂取することによっても慢性毒性として人体に与える影響が大であり,大変危険な物質である。 (2)廃棄物の焼却処理に伴いばいじんが発生し,また,破砕処理過程等において粉じんが発生し,これらが飛散する。これらの粒子状物質は呼吸とともに吸引されて気管支から肺胞組織に沈着し,組織を壊死させるものであり,呼吸器病,肺がん等の原因になる。 (3)廃棄物の焼却処理によって,ダイオキシン類のほかにも,多数の有害物質が発生し,周辺の環境を汚染する。廃棄物の種類及び性状,その混合割合その他の焼却条件によって,いかなる未知の物質が発生するか知れない。そして,これらの有害物質が同時期に体内に摂取された場合には,その毒性としての作用は相乗的に強化されてリスクを高める。原告らは,このような複合汚染の危険にもさらされている。 本件施設からのダイオキシン類排出の蓋然性について(1)本件炉の構造上及び運用上の問題点ア燃焼室熱負荷,燃焼室容積及び燃焼排ガスの滞留時間について(ア)燃焼室熱負荷について燃焼室熱負荷は,燃焼室容積1㎥当たり・1時間当たりの発生熱量であり,次式により求められる。 燃焼室熱負荷(kcal/㎥・h)=廃棄物の低位発熱量(kcal/kg)×焼却能力(kg/ 熱負荷について燃焼室熱負荷は,燃焼室容積1㎥当たり・1時間当たりの発生熱量であり,次式により求められる。 燃焼室熱負荷(kcal/㎥・h)=廃棄物の低位発熱量(kcal/kg)×焼却能力(kg/h)÷燃焼室容積(㎥)燃焼室熱負荷は,炉内における火炎の充満度を示す値であり,これが大きい場合には火炎が過度に充満しすぎて,燃焼ガスの完全燃焼が実現しないままに,ガスが燃焼室を通過してしまうこととなる。逆に,燃焼室熱負荷の値が小さい場合には,燃焼ガスが炉内には完全には充満せず,炉内温度が十分に上昇せず,不完全燃焼が生ずることとなる。 被告は,本件炉の燃焼室熱負荷の値を14万8770kcal/㎥・hとして設計している。しかしながら,本件炉のような,産業廃棄物を焼却する炉の場合は,燃焼室熱負荷は,15万kcal/㎥・h以上30万kcal/㎥・h未満を基準とするべきである。 燃焼室熱負荷は,炉の焼却能力を測る基準でもあり,燃料室熱負荷がその基準を下回る場合には,焼却能力にまだ余裕があるため,届出焼却量よりも多くの廃棄物を焼却することが可能になる。本件炉は,燃料室熱負荷の値が基準を下回っており,届出焼却量よりも多くの廃棄物を焼却することが可能であるため,安全を犠牲にして経済性を追求することが可能な構造になっている。 また,届出焼却量よりも多くの廃棄物を焼却することが可能であるため,被告が計画量を超える廃棄物を受け入れ,焼却処理した場合には,それだけ発生する排ガスの量も多くなる。そして,排ガスの量が増加すると,バグフィルターの処理能力がそれだけ高く要求される。しかしながら,本件炉では届出焼却量で焼却処理をした場合のバグフィルターに入る直前の湿り排ガス量が3万6091N㎥/hであるところ,バグフィルターの処理風量は最大3万8360N㎥/hであり,処理 。しかしながら,本件炉では届出焼却量で焼却処理をした場合のバグフィルターに入る直前の湿り排ガス量が3万6091N㎥/hであるところ,バグフィルターの処理風量は最大3万8360N㎥/hであり,処理能力にほとんど余裕がないため,排ガスの量が増加すればバグフィルターの処理能力を簡単に超えてしまうこととなり,有害な排ガスが本件施設外に排出されることとなる。 (イ)燃焼室容積について被告は,本件炉の燃焼室容積を71.96㎥として届け出ている。しかしながら,「ごみ処理に係るダイオキシン類防止等ガイドライン」では,燃焼室容積について「燃焼室内下流側の再燃焼域は,燃焼温度が850℃以上の範囲で,排ガスの滞留時間が2秒以上となるように設計するものとする。その範囲は,主たる2次空気ノズル位置より燃焼室出口まで,又はガスの混合を考慮した位置より燃焼室出口までとし,内面を耐火物で被覆するものとする。」とされているところ,被告は,ロータリー式自動灰出し装置,二次燃焼室及び炉の椀状部を燃焼室容積に含めておらず,不当に過小な容積となっている。ロータリー式自動灰出し装置,二次燃焼室(別紙図面11の斜線部分)及び炉の椀状部は,いずれも耐火被覆に覆われた,本来燃焼室としての実質を有する空間であって,燃焼室容積に含めるべきである。 ロータリー式自動灰出し装置の容積は5.97㎥,二次燃焼室の容積は4.86㎥である。また,炉の椀状部の容積は5㎥であり,椀状部を含めた別紙図面10のH3の部分の容積は20.58㎥となる。 したがって,本来の燃焼室容積は次のとおり87.78㎥となり(なお,V1,V2,V3は,それぞれ別紙図面10のH1,H2,H3の部分の容積を表す。),これは,被告の届出に係る71.96㎥の1. 220倍である。 ロータリー式灰出し装置+V1+V2+V3+二次 なお,V1,V2,V3は,それぞれ別紙図面10のH1,H2,H3の部分の容積を表す。),これは,被告の届出に係る71.96㎥の1. 220倍である。 ロータリー式灰出し装置+V1+V2+V3+二次燃焼室=5.97㎥+1.58㎥+54.8㎥+20.58㎥+4.86㎥=87.78㎥そして,次式のとおり,本件炉の焼却能力は,燃焼室容積の大きさに比例して増大する関係にある。 焼却能力(kg/h)=燃焼室熱負荷(kcal/㎥・h)×燃焼室容積(㎥)÷廃棄物の低位発熱量(kcal/kg)そのため,本件炉の焼却能力は,被告の届出に係る1.8t/hの1. 220倍となり,2.196t/hとなる。 したがって,本件炉は,届出焼却量よりも多くの廃棄物を焼却することが可能な構造になっており,被告が経済性を追求する余り,大量の廃棄物を受け入れて焼却することにより,有害物質が被告の想定を超えて発生する危険性がある。 (ウ)燃焼排ガスの滞留時間について産業廃棄物処理施設の構造基準(廃棄物処理法施行規則12条の2第5項,4条1項7号)として,燃焼室につき,「燃焼ガスの温度が摂氏八百度以上の状態で産業廃棄物を焼却することができるものであること。」及び「燃焼ガスが,摂氏八百度以上の温度を保ちつつ,二秒以上滞留できるものであること。」が要求されており,ダイオキシン類の発生を抑制するためには,燃焼ガスが800℃以上の温度で2秒間滞留することが必要である。しかしながら,本件炉においては,燃焼ガスが800℃以上の温度で2秒間滞留することが不可能である。 まず,滞留時間の計算式は次のとおりである。 滞留時間(s)=「滞留時間2秒以上の燃焼室容積」(㎥)÷燃焼排ガス体積(㎥/s)「滞留時間2秒以上の燃焼室容積」の算出については,「ごみ処理施設整備の計画・設計要領」(乙42 次のとおりである。 滞留時間(s)=「滞留時間2秒以上の燃焼室容積」(㎥)÷燃焼排ガス体積(㎥/s)「滞留時間2秒以上の燃焼室容積」の算出については,「ごみ処理施設整備の計画・設計要領」(乙42)によると,滞留時間を計算する際の燃焼室容積は,「主たる2次空気ノズル位置より燃焼室出口まで,又はガスの混合を考慮した位置より燃焼室出口まで」とされている。 被告は,「滞留時間2秒以上の燃焼室容積」を71.96㎥として計算しており,別紙図面18の一番下の空気供給口である①の空気供給口より上の部分を考慮している。 しかしながら,①の空気供給口は,一次燃焼に必要なものであり,主たる2次空気ノズルに含めるべきでない。別紙図面18の②の空気供給口より上の部分(③の部分)を「滞留時間2秒以上の燃焼室容積」と考えるべきである。 したがって,「滞留時間2秒以上の燃焼室容積」は次式のとおり61. 24㎥となる。 二次燃焼室+V1+V2=4.86㎥+1.58㎥+54.8㎥=61.24㎥次に,燃焼排ガス体積を算出するに,焼却能力1.8t/hの場合,燃焼排ガス体積は2万3722N㎥/h=6.58N㎥/sとなるところ,燃焼排ガス体積は焼却量に比例するため,前記のように燃焼室容積を1.220倍とする場合には,燃焼排ガス体積は8.03N㎥/sとなる。そして,800℃の条件下での燃焼排ガス体積は次式のとおり31.56㎥/sとなる。 8.03(N㎥/s)×(800+273)/273=31.56(㎥/s)以上を前提として滞留時間を計算すると,次のとおり1.94秒となり,滞留時間2秒を満たさない。 61.24(㎥)÷31.56(㎥/s)=1.94(s)イ投入方法の問題点(ア)連続燃焼は,一酸化炭素(CO),ダイオキシン類等の有害物質や黒煙の排出を抑制する大前提となっている 満たさない。 61.24(㎥)÷31.56(㎥/s)=1.94(s)イ投入方法の問題点(ア)連続燃焼は,一酸化炭素(CO),ダイオキシン類等の有害物質や黒煙の排出を抑制する大前提となっている。すなわち,焼却炉内で燃焼が急激に大きくなると,部分的に酸素不足となり,COやダイオキシン類前駆物質が生成されやすくなる。逆に,燃焼が急速に小さくなると,その部分の温度低下によって燃焼が完全とならず,やはりCOやダイオキシン類前駆物質が生成されやすくなる。 ストーカ式焼却炉では,乾燥工程,燃焼工程,後燃焼工程が明確に区別されており,廃棄物は順送りとなり,回転ストーカ式焼却炉でも,乾燥,主燃及び後燃というように廃棄物が順送りとなる。このように廃棄物を順送りして焼却するのは,燃焼が途切れることなく,安定的で連続した燃焼状態となるからである。 (イ)本件炉においては,破砕後,バケットによって投入ホッパーに運び込まれた廃棄物を,3分間に1回,90kgずつ,高温燃焼中の炉床の上にプッシャーによって逐次落とし入れるという廃棄物投入方式が採られているが,燃焼しているところに廃棄物を投入するため,外気は入らないものの,燃焼の変化を少なくするという原則に反している。 このように間欠的に,800℃以上の高温で燃えさかる炉床に直接廃棄物を投入すると,廃プラスチック類等の発熱量の大きい廃棄物の場合,一気に激しく燃え上がり,直ちに熱分解ガスが発生して燃焼室内の酸素が急激に減少することになる。そのため,平均では十分な酸素濃度があったとしても一時的又は局所的に酸素不足による不完全燃焼が起こってCO濃度が高くなり,ダイオキシン類前駆物質が増大し,ダイオキシン類濃度も高くなる。 また,逆に,燃焼中の炉床に汚泥等の発熱量の極めて小さい廃棄物を投入した場合には,急激に炉内温度 全燃焼が起こってCO濃度が高くなり,ダイオキシン類前駆物質が増大し,ダイオキシン類濃度も高くなる。 また,逆に,燃焼中の炉床に汚泥等の発熱量の極めて小さい廃棄物を投入した場合には,急激に炉内温度が下がって燃焼が不完全となり,やはりダイオキシン類濃度の増加につながる。 このように,本件炉の廃棄物投入方式は,構造的に一次燃焼室内の温度や酸素濃度が乱高下することが避けられないものとなっており,本件炉の二次燃焼室は,そのような一次燃焼室の酸素濃度の乱高下を緩和できるような機能・性能を備えておらず,高濃度のダイオキシン類が発生する危険性が大きい。 ウ空気供給の不備本件炉には,炉内の上部空間に複数の二次燃焼用の空気供給口が設けられているものの,一次燃焼用の空気供給口が設けられていない。椀状の回転床の中に投入された廃棄物は,椀状の壁に半ば覆われる形になるが,椀状の回転床の内部に空気を送り込む構造になっていないため,回転床内部の廃棄物に対し十分に空気が行き渡らず,未燃物が残ることとなる。 本件炉では,傾斜した椀状の回転床が回転することによって内部の廃棄物が攪拌され,回転床内部の廃棄物全体に空気が行き渡ることが想定されている。しかし,そのような椀状の回転床の回転のみによって,回転床の下部にある廃棄物にも十分な空気が常に行き渡るほどの攪拌が必ず生ずることは期待できない。 そのため,本件炉においては,回転床の下部にある廃棄物について,不完全燃焼となり,ダイオキシン類等の有害物質が発生する危険性が大きい。 本件炉で回転床内部の廃棄物に未燃物が残る可能性が大きいことは,ロータリー式灰出し装置の存在からも推知される。すなわち,ロータリー式灰出し装置は,内部が耐火構造であり,独自の空気供給口も付いている。 このような構造からすれば,ロータリー式灰出し装置は単なる は,ロータリー式灰出し装置の存在からも推知される。すなわち,ロータリー式灰出し装置は,内部が耐火構造であり,独自の空気供給口も付いている。 このような構造からすれば,ロータリー式灰出し装置は単なる灰出し装置ではなく,ロータリーキルン炉ともいいうる燃焼空間であるといえ,回転床内部で焼却し尽くされなかった廃棄物をこの空間の中で燃焼させ尽くすことがもともと想定されていると考えられる。これは被告の申請書に書かれている焼却方法とは相当に異なるものであり,この場合の燃焼ガスの挙動は全く不明である。 エ発熱量調整の不備・非現実性(ア)発熱量調整の重要性被告は,本件炉の設計計算を行うに当たり,焼却する廃棄物の混合割合を,木くず37.22%,廃プラスチック類35.00%,金属くず0.28%,ガラスくず及び陶磁器くず0.22%,紙くず3.28%,繊維くず0.67%,廃油10.00%,汚泥2.78%,動植物性残さ2.78%,感染性廃棄物7.78%と想定し,この混合割合による廃棄物の低位発熱量を5947kcal/kgとして計算している。 この数値は,焼却炉の設計計算を行うにおいて前提となっている値であり,廃棄物の低位発熱量が変われば,燃焼ガス温度,燃焼室熱負荷,排ガス滞留時間等の計算結果は全く違ったものとなるから,設計の基礎として想定されている廃棄物の低位発熱量と実際に焼却処理する廃棄物の低位発熱量とが齟齬した場合,実際の燃焼状態は設計において想定された燃焼状態と全く異なるものとなる。投入する廃棄物の混合割合を調整して発熱量を一定に保つことが,焼却を想定どおりに行うために重要である。 (イ)低位発熱量の算定に現実的な根拠がないこと混合焼却における廃棄物の低位発熱量は,どのような廃棄物をどのような割合で混ぜるかによって全く異なるため,その低位発熱量 りに行うために重要である。 (イ)低位発熱量の算定に現実的な根拠がないこと混合焼却における廃棄物の低位発熱量は,どのような廃棄物をどのような割合で混ぜるかによって全く異なるため,その低位発熱量の設定は,基本的には具体的な搬入計画を前提として計算されなければならない。 しかるに,被告は,「計画立案の際に予測した,各焼却対象物の構成比は,建造物解体廃棄物の組成・建設廃棄物の組成・愛知地方における廃棄物の現状等を基本に予測を立てた」(乙135・8頁)と説明するにすぎず,被告の計画における廃棄物の構成比及び低位発熱量の算定は,現実的・具体的な根拠に基づいたものではない。 (ウ)発熱量計算の非現実性被告の設計計算書には焼却する廃棄物の種類ごとの専焼計算も付されているところ,その専焼計算において,木くず,廃プラスチック等それ自体ある程度の発熱量を持つものについては100%単体での焼却を想定して計算してあるが,汚泥,動植物性残さ,金属くず,ガラスくず等それ自体としては発熱量がないか又は著しく低いものについては,相当割合の廃油と合わせた焼却として発熱量が算定されている。その結果,計算表に示されている各廃棄物単体の低位発熱量は,その廃棄物自体の発熱量というよりもむしろ一定割合の廃油の発熱量とでもいうべき数値となっており,必ずしも各廃棄物自体の性状を正しく反映した数値となっていない。 また,混合焼却における廃棄物の低位発熱量は5947kcal/kgとされているものの,汚泥,金属くず,ガラスくず等が発熱量を持たないのであれば,これらの廃棄物のみが増えたり減ったりした場合,全体の重量が変わるにもかかわらず全体の発熱量は変わらないことになり,混合焼却における廃棄物1kg当たりの低位発熱量の値は一定したものとならない。 (エ)発熱量調整の非現実性本 ったりした場合,全体の重量が変わるにもかかわらず全体の発熱量は変わらないことになり,混合焼却における廃棄物1kg当たりの低位発熱量の値は一定したものとならない。 (エ)発熱量調整の非現実性本件施設には,敷地の狭さゆえに搬入された廃棄物の十分な備蓄スペースがなく,独自の分別設備もないため,発熱量調整のための廃棄物の分別は,廃棄物排出業者のマニフェスト伝票の記載任せとならざるを得ない。しかしながら,マニフェスト伝票の運用実態として,その大半がずさんに運用されていることは公然と指摘されているところであり,また,たとえマニフェスト伝票が排出者によって適正に運用されていたとしても,マニフェスト伝票自体,混合された廃棄物の具体的な性状や混合割合まで記載しているわけではなく,さらに,記載上単一性状の廃棄物であっても廃棄物の性質上他の性状のものが混入していることは避けられないものである。したがって,本件施設に搬入される廃棄物の種類及び量やその混合割合をマニフェスト伝票の記載に基づいて正確に把握することは,現実には不可能といわざるを得ない。 (オ)このように,本件炉における発熱量調整は極めて現実性に乏しいものであり,本件施設が稼働された場合は,想定外の燃焼状態となって,基準値を超える高濃度のダイオキシン類等の有害物質が排出される危険性が極めて大きい。 オ人員体制の不足本件施設における被告の人員体制は不足しており,何事もなく運転が進んでいるときはともかく,ひとたびトラブルが生じた際の体制として不十分である。第1回試運転時及び第2回試運転時の消石灰飛散事故や赤さび飛散事故も,人員の不足や連携の不備など,人員体制の不備が露呈した事故といえ,また,試運転時のアラーム警報の頻繁な発報にかんがみると,本件炉の安全稼働を万全に保障できるような体制となっ 事故や赤さび飛散事故も,人員の不足や連携の不備など,人員体制の不備が露呈した事故といえ,また,試運転時のアラーム警報の頻繁な発報にかんがみると,本件炉の安全稼働を万全に保障できるような体制となっているとはおよそ考え難い。 (2)試運転結果に現れた問題点ア第1回試運転について(二次室出口温度及びボイラー出口温度の計算値と実測値との大幅な相違)(ア)本件炉の設計計算書(乙14の2)において,二次室出口温度は944℃,ボイラー出口温度は862℃と計算されており,この差は82℃である。この温度差は,ボイラーの能力に基づく計算値である。 ボイラー出口温度は,火炎の輻射熱を直接受けていないので,輻射熱の影響がなく,真のガス温度を知る端緒となる。すなわち,ボイラー出口付近の温度に82℃を加えると二次室出口の真のガス温度が推定できる。 第1回試運転中の平成19年11月1日における排ガス温度と性状のデータ(乙147)における二次室出口温度及びボイラー出口温度を比較し,ボイラー出口温度に82℃を加えた数値は次のとおりとなる。 時刻二次室出口ボイラー出口ボイラー出口+82(時:分:秒)(℃)(℃)(℃)14:40:271030.5669.6751.615:31:261024.3713.5795.515:56:261017.0706.0788.016:06:261022.1705.4787.416:12:271016.2703.7785.716:23:26949.0681.4763.416:25:26943.9685.2767.216:27:26941.1682.8764.816:53:26941.4690.5772.5これによると,二次燃焼室出口付近のガス温度は維持管理基準で 43.9685.2767.216:27:26941.1682.8764.816:53:26941.4690.5772.5これによると,二次燃焼室出口付近のガス温度は維持管理基準である800℃に達していない。これは,火炎の輻射熱を温度計が受けるため,試運転データに現れている温度は見かけ上の温度であって実際のガス温度ではないことを意味する。 (イ)被告はこの点について,汚れ係数を考慮していない点,排ガス量が設計計算と異なっている点,ボイラー出口温度計の設置位置がおかしい点を挙げている。しかし,被告のこのような反論は,正確を期すべき温度の計測が実際には全く正確にできていないことを示すものであり,このような反論をすること自体,被告の産業廃棄物処理業者としての資質及び本件炉の安全性を立証できていないことを自認したに等しい。 イ第2回試運転について(ア)実際の炉内温度は計測値よりも低いこと第2回試運転中の平成20年3月10日から同月13日までの排ガス温度のグラフのうち,二次室出口温度のグラフには櫛の歯のような状態が,炉内上部温度のグラフには1000℃前後を大きく変動する状態が現れている(乙151)。 同月10日から同月19日までの二次室出口温度のグラフは,温度が900℃に低下すると二次室の二次バーナーが着火し,二次燃焼室の温度を上昇させるように設定されていることを示している。このグラフが櫛の歯状になる理由は,二次室出口の実際のガス温度が設定温度の900℃以下であるからである。すなわち,二次バーナーが着火すると火炎からの輻射熱で二次室出口の近くにある温度計の保護管の温度が急激に上昇し,やがてバーナーは停止するが,そうすると,真のガス温度は900℃よりはるかに低い(800℃以下)ため,温度計の保護管の温度はすぐに低下する 二次室出口の近くにある温度計の保護管の温度が急激に上昇し,やがてバーナーは停止するが,そうすると,真のガス温度は900℃よりはるかに低い(800℃以下)ため,温度計の保護管の温度はすぐに低下することになる。すると,また二次バーナーが着火することになる。このような動作をくり返すため温度変化が櫛の歯状になる。 以上より,同月10日から同月19日までの排ガス温度のグラフから,二次室出口付近のガス温度が見かけ上900℃にあるように見えても,実際のガス温度はそれ以下である。 同月20日から同月23日までの二次室出口温度のグラフは,800℃以下には低下していない。特に同月21日のものは800℃の線で下限が揃っている。これは,二次室出口温度を800℃に設定し,800℃以下になればバーナーが着火するようになったものである。そのため,実際の二次室出口付近のガス温度は,既に説明したとおり800℃以下であることになる。 このように,炉内温度,特に二次室出口温度が見かけ上800℃以上に達していても,実際のガス温度が800℃に達していない場合,たとえ排ガス滞留時間が2秒以上あっても,CO濃度を低濃度に抑えることはできない。 (イ)ダイオキシン類測定の問題点平成20年3月14日午後1時05分から午後5時05分までの間にダイオキシン類が測定されている。この時間の排ガス温度のグラフを見ると,二次室出口温度の下限が900℃を示したものが,急激に上昇し,下限が平均1100℃にも達している。そして,ダイオキシン類測定時間を過ぎると温度が低下し900℃の下限を示している。これは明らかにダイオキシン類測定に対して意図的に温度を上げたものであり,この測定値は全く信頼できない。 (ウ)燃焼の不安定さ平成20年3月24日から同月31日までの期間では,炉上部温度と二次室出口 明らかにダイオキシン類測定に対して意図的に温度を上げたものであり,この測定値は全く信頼できない。 (ウ)燃焼の不安定さ平成20年3月24日から同月31日までの期間では,炉上部温度と二次室出口温度の各グラフが同一の変化を示し,同じような波形となっている。これは全体として炉内の温度が高くなったことを意味しており,炉内上部温度と二次室出口温度が同一の火炎の輻射熱の影響を受けていることになる。 このような温度変化は,二次バーナーが作動しないように炉内の温度が設定以上(800℃以上と推測される。)になっていれば実現する。 すなわち,二次室出口温度が見かけ上800℃以上になれば,二次バーナーは停止したままであるため,炉内上部の温度変化が,そのまま二次室出口温度に影響を与えるから,炉上部温度と二次室出口温度とは同一の変化を示すこととなる。 (エ)廃棄物の投入量が少ない場合,炉内温度が低下し,CO濃度が高くなること平成20年3月26日の試運転データでは,午前7時から午前8時にかけて廃棄物の投入量は500kg程度で,この時間の前後では最も廃棄物の投入量が少なくなっている。その結果,排ガス温度,特に炉内上部温度はこの時間帯に急激に低下し,600℃以下となっている。これに対して,二次室出口温度は,二次バーナーの着火のため約30分間800℃の線に沿ってほぼ一定となっている。それから急激に温度が上がって再び急激に低下し,炉内上部温度は600℃以下,二次室出口温度は800℃で約20分間一定となっている。 このように,廃棄物の投入量が少ない場合には,炉内の温度が上昇しない。 また,この時間帯のCO濃度は,平均すると200ppm以上あり,一般に廃棄物の投入量が500kg前後と少ないときには同様になっている。また,午後3時までに廃棄物の投入を終了したのに対し 昇しない。 また,この時間帯のCO濃度は,平均すると200ppm以上あり,一般に廃棄物の投入量が500kg前後と少ないときには同様になっている。また,午後3時までに廃棄物の投入を終了したのに対しCO濃度の発生は午後8時以降にまでわたっているから,廃棄物の投入を停止して生じた炭が焼却し終わるまでには5時間程度かかっている。このように一酸化炭素が継続して観測されるということは,大量の炭が生成され,廃棄物が炭の状態になっても燃焼を継続するということを意味する。 そして,この炭の燃焼が原因となって,100ppmを超える高濃度の一酸化炭素が発生している。 (オ)酸素濃度の急激な変動酸素濃度のグラフはどれも針のように鋭いピークの変化がある。廃棄物が投入されると,一時的に燃焼が下火になるので過剰酸素となり,このときに高いピークとなる。しかし,やがてガス化が始まり,ガス燃焼のため急激に酸素が消費されるため,今度は酸素濃度が低下し,それが下のピークとなって現れる。 酸素濃度の下限が6%を下回る場合があると,一般にCO濃度が高くなる。このことは,平成20年3月30日の試運転データから読み取ることができる。同日午後9時ころに酸素濃度がちょうど4%に下がっているときがあるが,同時刻のCO濃度を見ると,400ppm以上の高濃度になっている。 (カ)高いCO濃度の計測CO濃度は短時間ではあるが度々1000ppm以上にも達している。 第2回試運転中の平成20年3月19日から同月31日までの全日において,CO濃度1時間平均値が度々100ppmを超え,高いときには500ないし600ppmに達することすら生じていた。その理由として,既に述べたように,炉内の実際のガス温度が低いこと,3分ごとに90kgの廃棄物(なお,試運転ではこの値よりはるかに少ない。)を燃焼中 0ないし600ppmに達することすら生じていた。その理由として,既に述べたように,炉内の実際のガス温度が低いこと,3分ごとに90kgの廃棄物(なお,試運転ではこの値よりはるかに少ない。)を燃焼中の炉床に投入するという廃棄物投入方法に欠陥があること,本件炉は廃棄物の下から空気が供給される構造になっておらず,回転床の中で廃棄物が燃え尽きず,発生した炭がロータリー式自動灰出し装置の内部で時間をかけて燃焼することが指摘できる。 (キ)排ガス量の問題本件炉の設計計算においては,処理能力が1.8t/hであり,湿り排ガス量は3万8332N㎥/hとされている。これに対し,平成20年3月26日の廃棄物処理量は1.5t/hを超えていないところ,同日の湿り排ガス量は3万4300N㎥/hである。そのため,1.8t/hの廃棄物を実際に焼却した場合には,湿り排ガス量が単純計算でも想定値を超えることになる。 その場合,バグフィルターでダイオキシン類を十分に除去することができなくなる。 (ク)高いHCl濃度の計測第2回試運転では次のとおり高い塩化水素(HCl)濃度が計測されている。 平成20年3月11日午後5時から午後6時ころ150ppm同月13日午後7時59分から午後11時59分150ppm以上同月14日午後3時59分から午後7時59分200ppmこのように高いHCl濃度が計測されるのは,炉内に廃棄物を投入すると塩ビ型の廃棄物が一気にガス化し,塩化水素が大量に発生するからである。 そのため,本件炉を作動させた場合には,高いHCl濃度が計測される。 (ケ)高い臭気指数平成20年3月31日の計測では,春日井市と被告との公害防止協定において基準値が30であるところの臭気指数が35を示している。 ウ第3回試運転について(ア)二次バーナーの作動第3 高い臭気指数 平成20年3月31日の計測では,春日井市と被告との公害防止協定において基準値が30であるところの臭気指数が35を示している。 主文 ウ第3回試運転について (ア)二次バーナーの作動 第3回試運転における二次バーナーの燃料の消費量は,試運転結果報告書(乙179)の消耗資材量一覧表に記載のとおりであるところ,本件施設の設計仕様書(乙14の1)において,二次バーナーの消費燃油量は1時間当たり約120リットルとされているから,各運転日ごとの二次バーナーの作動時間は次のとおりとなる(日付はいずれも平成20年のものを表す。)。 燃料消費量作動時間運転時間(ℓ)(h)(h) 9月12日 13日 3.42 16日 2.58 17日 7.92 18日 6.33 29日 3.5 30日 3.17 10月1日 3.67 2日 6日 5.5 7日 8日 1390 11.58 9日 1408 11.73 10日 6.82 12日 4.5 13日 2.88 14日 6.38 また,第3回試運転では,全般的に二次室出口温度が炉内上部温度より高い状態が継続している。このことは,二次バーナーの作動によって,二次室出口付近の温度が上昇していることを示しており,二次バーナーが常に作動していること,二次バーナーを頻繁に作動させなければ二次室出口付近のガス温度を800℃以上に保つことができないことを意味する。 したがって,本件炉で廃棄物を焼却する際には,維持管理基準の定める燃焼ガスの温度が800℃以上の状態で燃焼させることが困難であり,非常に不安定な燃焼し 0℃以上に保つことができないことを意味する。 したがって,本件炉で廃棄物を焼却する際には,維持管理基準の定める燃焼ガスの温度が800℃以上の状態で燃焼させることが困難であり,非常に不安定な燃焼しかできない。また,いったん二次バーナーを止めた場合には,ガス温度が急激に減少する危険がある。 (イ)温度の減少並びに高いCO濃度及びHCl濃度の計測第3回試運転では,本件炉に廃棄物を投入しているにもかかわらず,炉内下部温度及び炉内上部温度が急激に減少している。また,温度の減少に関連して,高いCO濃度が計測されている。 このように温度が非常に容易に減少すること,廃棄物を投入していても温度が800℃以下になることは,本件炉の炉内温度が見かけ上は800℃以上を計測したとしても,実際のガス温度は800℃以上に達していないことを意味する。 また,廃棄物を比較的多く投入している平成20年9月17日及び同年10月9日においても,高いCO濃度が継続しており,廃棄物を多く投入しても,高いガス温度を維持して,一酸化炭素の発生を抑えることが必ずしもできない。このように低温で燃焼を継続する状態では,高濃度で発生する一酸化炭素を燃焼によって低濃度にすることができず,高いCO濃度が計測されるという問題点がなおも存在することを示している。 さらに,第3回試運転では,HCl濃度も極めて高い値が計測されており,所々で被告が自主的に定めた維持管理計画値だけでなく,法規制値を超過している。第3回試運転中にHCl濃度の計測を行い記録の存在する日のすべてで「校正中」の記載があり,被告は校正をした記録を証拠として提出していない。本件施設では,第2回試運転において維持管理計画値を超過するHCl濃度が計測されているところ,被告は,その原因につき計測機器の不備であるとしつつ,改善をしたは をした記録を証拠として提出していない。本件施設では,第2回試運転において維持管理計画値を超過するHCl濃度が計測されているところ,被告は,その原因につき計測機器の不備であるとしつつ,改善をしたはずの第3回試運転においてもHCl濃度を正確に計測できず,法規制値を超過する高いHCl濃度が計測されている。このことは,計測されたHCl濃度は機械の誤動作によるものでなく,実際の濃度においても,法規制値を超過していることを示すものである。 被告は,CO濃度,HCl濃度につきそれぞれ75ppmで警報が鳴るようにして,1時間平均値がそれぞれ100ppmを超えないように調整している。しかしながら,75ppmの警報ですら本来は異常事態であり,それが度々観測されること自体が,本来想定した燃焼から逸脱した異常事態である。 (ウ)1.8t/hの処理能力まで焼却量が達していないこと第3回試運転において,①43.2t/日の処理量で廃棄物を焼却することができていない点,②廃棄物の発熱量ベースで1.8t/hの処理能力まで廃棄物の焼却をすることができている時間帯が少ない点で,100%稼働運転にもかかわらず1.8t/hの処理能力まで焼却量が達しておらず,本件炉の焼却炉としての安全性が証明されたとはいえない。 (3)経理的基礎の不存在ア法令上,産業廃棄物処理施設を設置しようとする者の能力の基準として,「産業廃棄物処理施設の設置及び維持管理を的確に,かつ,継続して行うに足りる経理的基礎を有すること」が要求されており(廃棄物処理法15条の2第1項3号,同法施行規則12条の2の3第2号),上記「経理的基礎」の判断に関して,旧厚生省から平成12年9月29日付け「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務の取扱いについて」と題する通知 の3第2号),上記「経理的基礎」の判断に関して,旧厚生省から平成12年9月29日付け「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務の取扱いについて」と題する通知(甲27。以下「衛産79号通知」という。)が出され,経理的基礎の判断の方法が詳細に定められている。 法がこのような設置主体に関する基準を設けた趣旨は,たとえ処理施設そのものが構造上,技術上の基準を満たしていたとしても,経理的基礎を欠く業者が産業廃棄物処理業を行った場合には,利益追求を最優先して環境負荷や周辺住民の生命・健康への影響を無視し,構造上の限界を超えて産業廃棄物を受け入れ,焼却することによって,計画においては想定されていない大量の有害物質が排出されることがあり得ることから,経理的基礎を欠く事業者による操業を類型的に危険なものとして規制することにある。これは,悪質な産業廃棄物処理業者が計画書に記載した処理量を超えて廃棄物を焼却した事案が数多く見られたという立法事実に基づいて,これを防ぐ目的に出たものである。 したがって,設置業者が経理的基礎を欠いているということは,違法に有害物質を排出する蓋然性があることを推認させる間接事実であり,近隣住民に対する健康被害の高度の蓋然性を推認させることとなる。 イ被告の財務状況について以下の財務分析によれば,被告については①借入金依存体質が顕著であり,②経営の安定性に欠け,③成長の鈍化ないし収益性の低下が顕著であり,短期的な収益状況ないし財務状況の改善が見込めないという評価が可能であり,経理的基礎を有しない事業者と判断すべきである。 (ア)安全性分析1(自己資本比率)被告の自己資本比率は,継続的に20%を下回っており,直近の平成19年8月期では,12.02%にまで落ち込んでいる。これは,被告が著 事業者と判断すべきである。 (ア)安全性分析1(自己資本比率)被告の自己資本比率は,継続的に20%を下回っており,直近の平成19年8月期では,12.02%にまで落ち込んでいる。これは,被告が著しい借入金依存体質で返済の負担が重い会社であることを示している。 (イ)安全性分析2(流動比率)被告の流動比率は,平成15年8月期以降30%ないし40%台という非常に低い水準で推移しており,直近の平成19年8月期でも53. 48%と非常に低い率である。これは,被告が短期的な支払能力に余裕がなく,資金ショートに陥りやすい財務状況にあることを示している。 (ウ)収益性分析平成15年8月期から平成19年8月期までの被告の利益率については,①売上高対総利益率が10.19%ないし11.82%,②売上高対営業利益率が2.54%ないし4.76%,③売上高対経常利益率が2.35%ないし4.49%,④売上高対当期純利益率が0.004%ないし0.47%となっている。上記の各利益率は年々低下しており,特に,①売上高対総利益率,③売上高対経常利益率及び④売上高対当期純利益率については,直近の平成19年8月期が最も低い数値となっている。 被告の現在の事業はパチンコ遊戯場経営であるところ,平成19年度版TKC経営指標によるパチンコホール業に係る総合経営分析表(甲158)の黒字企業平均では,①売上高対総利益率が15.3%,②売上高対営業利益率が2.5%,③売上高対経常利益率が2.5%であり,被告の利益率は,業界水準と比べても特に高くなっているとはいえない。 加えて,収益性の総合指標である経営資本対営業利益率についても,被告のそれは年々低下し,平成19年8月期では14.26%となっている。 このように,被告が現在行っているパチンコホール営業の収益性は,良好なものとはい 合指標である経営資本対営業利益率についても,被告のそれは年々低下し,平成19年8月期では14.26%となっている。 このように,被告が現在行っているパチンコホール営業の収益性は,良好なものとはいえない。 また,被告は平成16年から平成17年にかけて新規パチンコ店を開業しているが,開業に伴って,設備投資資金のための新たな借入れと思われる長期借入金が増加しており,これが利益率を圧迫している。長期借入金の返済負担は長期にわたり続くから,今後とも長期にわたり利益率の低下が続くことが予想され,さらに,本件施設の建設に係る設備投資費用として新たな借入金を増加させたことは,一層の利益率の低下を招くこととなる。 (エ)生産性分析被告の粗付加価値額対有形固定資産額比率は経年的に低下しており,生産性の指標として好ましいものではない。 (オ)成長性分析被告においては,経年的に売上高が高くなっているものの,利益率が下がっており,純利益額も逓減している。これは成長性が鈍化していることの現れであり,将来的に財務状況が急速に改善することは見込めない。 (カ)損益分岐点分析被告においては,平成14年8月期から平成18年8月期にかけて損益分岐点が大幅に上昇しており,財務状況が経年的に悪化している。 (キ)キャッシュフロー分析被告においては,営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを差し引いたフリーキャッシュフローが,平成16年8月期及び平成17年8月期においてマイナスになっており,このマイナスを財務キャッシュフローによって賄っている。これは,被告の借入金依存体質が強まっていることを示している。 ウ被告の採算見込みの不合理性被告が愛知県に提出した採算計画書(乙14の22及び乙145)によれば,産業廃棄物処理業によって長期的に利益が得られることとなっ 体質が強まっていることを示している。 ウ被告の採算見込みの不合理性被告が愛知県に提出した採算計画書(乙14の22及び乙145)によれば,産業廃棄物処理業によって長期的に利益が得られることとなっているが,次のとおり,その採算計画書には不自然,不合理な点が多数あり,これを信用することはできない。 (ア)廃棄物の処理単価について被告は,平成13年5月の採算計画書(乙14の22)において,廃棄物の処理単価(受入単価)を3万円/t(CASE1)から5万円/t(CASE3)と想定し,平成19年5月の採算計画書(乙145)においてはこれを36.8円/kgから40.9円/kg(3万6800円/tから4万0900円/t)として試算を行っている。しかし,被告は処理単価を3万円/tから5万円/tと想定した根拠について一切資料を提出していない。通常,何らかの事業を始めるに当たって収入の予測を立てる際には,現実の取引先になるであろう企業に対して打診するなどして,現実に見込むことのできる収入を基に試算するものであり,本件でいえば,産業廃棄物の処理を依頼する見込みのある企業に対する打診をして,上記の処理単価が実現可能なものであることの確認がなされてしかるべきである。 廃棄物処理に要する費用について,ある業者が調査した結果によれば3000円/㎥ないし1万2000円/㎥であるところ,これを材質ごとに環境省が公開している換算係数によって1t当たりの単価に換算すると,木くず1万0909円/t,金属くず2655円/t,ガラスくず及び陶磁器くず6000円/t,廃プラスチック類3万4285円/t,繊維くず5万円/tとなる。これと比較すると,被告の想定する処理単価は相当高額に設定されており,収入試算の根拠として意味のないものといわざるを得ない。 (イ)43.2t/日 類3万4285円/t,繊維くず5万円/tとなる。これと比較すると,被告の想定する処理単価は相当高額に設定されており,収入試算の根拠として意味のないものといわざるを得ない。 (イ)43.2t/日の処理量の実現可能性被告は,1日当たり43.2tの産業廃棄物を焼却することを前提として採算計画書を作成しているが,第3回試運転に係る試運転結果報告書(乙179)を見る限り,それだけの量を処理した日はない。これは,排ガスに係る各種の測定値を維持管理計画値あるいは維持管理基準値以下に抑えるために,試運転においては処理量を制限し,調整していたものである。したがって,本格稼働後もこれらの基準値を守り続けようとすれば,採算計画書どおり廃棄物の受入れ及び焼却をすることは不可能であり,採算見込みを達成することはできないであろう。 (ウ)試運転結果から見た経費算定の不合理性a燃料費について平成19年5月の採算計画書(乙145)における燃料費は,平成13年5月の採算計画書(乙14の22)におけるそれよりも高額になっているが,これは,被告が当初,再生燃料油を精製し,二次バーナーの燃料として使用することを計画していたが,その計画を撤回したことによるものと思われる。 しかしながら,既に述べたとおり,本件炉においては,当初の想定を超えて,常に二次バーナーを作動させ続けなければ必要な温度を保つことができないということが,試運転の結果から明らかになっている。したがって,計画外の燃料費を考慮していない採算計画書は不正確なものというほかない。 b中和薬剤の使用量について試運転結果によれば,ダイオキシン類の排出を抑制する目的で使用される消石灰等の中和薬剤が,採算計画書における使用量よりも多く使用されている。 平成13年5月の採算計画書(乙14の22)によれば,廃棄物 運転結果によれば,ダイオキシン類の排出を抑制する目的で使用される消石灰等の中和薬剤が,採算計画書における使用量よりも多く使用されている。 平成13年5月の採算計画書(乙14の22)によれば,廃棄物1t当たり28.33kgの消石灰を使用する計画になっており,また,平成19年5月の採算計画書(乙145)によれば,消石灰のほか,活性炭及びろ過助剤を含め,廃棄物1t当たり38.89kgの中和薬剤を使用する計画になっているが,第3回試運転に係る試運転結果報告書(乙179)によれば,試運転中には平均して廃棄物1t当たり62.78kgの消石灰を使用している。消石灰については,当初の採算計画書の2倍以上の量である。 平成19年5月の採算計画書においては,中和薬剤の年間費用として初年度2297万円,構成比6.4%(100%稼働時には2603万円,構成比5.9%)が見込まれているところ,消石灰の使用量が倍増すれば,中和薬剤の年間費用も増加し,被告の採算計画が大きく狂うことは間違いない。 c廃棄物の2度破砕について被告は,破砕不良の廃棄物が炉内にどか落ちすることによる投入量のばらつきを防ぐために,破砕可能な廃棄物をすべて2度破砕する方針のようであるが,2度破砕という処理工程は当初の計画では予定されていなかったものであり,当該工程を追加することによる費用増加が平成19年5月の採算計画書(乙145)に全く反映されていない。 2度目の破砕工程に必要な電気費,人件費等の費用も大きく変わるであろうし,2度の破砕に要する時間から,処理可能量も当然変わるであろうから,被告は,採算計画書を抜本的に書き直す必要があるというべきである。 (エ)パチンコ遊技台のリサイクル環境の変化パチンコ業界においては次第にパチンコ遊技台のリサイクルの気運が高まってきており,現在約8 は,採算計画書を抜本的に書き直す必要があるというべきである。 (エ)パチンコ遊技台のリサイクル環境の変化パチンコ業界においては次第にパチンコ遊技台のリサイクルの気運が高まってきており,現在約82.3%といわれるリサイクル率を,100%に近づけることが目指されている。今後リサイクル率が上がっていけば,被告が廃棄物として処理するパチンコ台の減少は免れず,被告の採算計画に狂いが生じることは間違いない。 (4)産業廃棄物処理業者としての資質の欠如被告は大要,①住民を無視し,原告らを敵視する,②情報開示は被告に都合のいいものに限定し,不利な情報は開示しない,③遵法精神が欠如している,④裁判所にまで虚偽の説明をするという体質を持った企業である。 このような企業に産業廃棄物処理施設を適正に操業することは到底期待できず,産業廃棄物処理業者としての資質を欠如した企業が,構造的欠陥を有する本件炉を用いて本件施設を稼働させれば,計画どおりの操業はなされず,基準値を超過するダイオキシン類が発生することは容易に予測される。 排出されるダイオキシン類の到達予測について(1)予測手法について被告は,本件施設の操業に伴う大気汚染予測につき,旧厚生省が平成10年に定めた「生活環境影響調査指針」に従って行うべき旨主張し,同指針において標準的な予測手法とされるプルーム式,パフ式の大気拡散式を用いて予測する手法(以下「プルーム・パフモデル」という。)を採用している。 しかし,大気汚染予測において,実際の風の流れが地形や建物,構造物の影響を受けることは公知の事実であるところ,プルーム・パフモデルが,地形,建物,構造物等の影響を無視して算定する手法であるのに対し,3次元流体モデルは,現実の地形,建物及び構造物の影響を考慮して算定する手法であるから,3次元流体モデルの ,プルーム・パフモデルが,地形,建物,構造物等の影響を無視して算定する手法であるのに対し,3次元流体モデルは,現実の地形,建物及び構造物の影響を考慮して算定する手法であるから,3次元流体モデルの方がより正確な予測値を導き出すことは明らかであり,3次元流体モデルを用いて大気汚染予測を行うべきである。 (2)3次元流体モデルによる検証結果ア本件施設周辺において出現頻度の高い気象条件として3つの気象条件を設定し,本件施設から排出されるダイオキシン類濃度を0.1ng-TEQ/N㎥と仮定して検証を行った結果,3次元流体モデルによる最大着地濃度は,気象条件ごとに,それぞれプルーム・パフモデルによる最大着地濃度の約1.4倍,約6倍,約140倍となった。 なお,プルーム・パフモデルを用いて予測された最大着地濃度は,春日井市南消防署の気象データを用いた場合において,0.0006pg-TEQ/㎥超0.0007pg-TEQ/㎥未満となった。 イところで,法令上求められているダイオキシン類濃度の測定をした結果を行政に報告する際に,事業者は,最良のコンディションを整えた上で測定を行い,その結果得られた最も低い測定値を行政に届け出ることが容認されていることから,被告から愛知県に届け出られたダイオキシン類濃度の測定値が基準値以下であっても,年間を通じて基準値以下のダイオキシン類しか排出されていないという制度的保証はない。既に述べたとおり,被告は現に,試運転期間中,ダイオキシン類測定に対して意図的に炉内温度を上げ,最良の燃焼状態を作出した上でダイオキシン類濃度を測定している。また,株式会社Bが他の産業廃棄物焼却炉及び地方公共団体の焼却炉について実施した調査によれば,ダイオキシン類の年平均濃度の推定値は,事業者の自主測定に係るダイオキシン類濃度よりも1桁から6 ている。また,株式会社Bが他の産業廃棄物焼却炉及び地方公共団体の焼却炉について実施した調査によれば,ダイオキシン類の年平均濃度の推定値は,事業者の自主測定に係るダイオキシン類濃度よりも1桁から6桁も多い数値となっている。 そうすると,実際に排出されるダイオキシン類濃度としては,被告の維持管理計画値である0.1ng-TEQ/N㎥ではなく,法規制値である1ng-TEQ/N㎥である場合や,その10倍の10ng-TEQ/N㎥である場合も想定すべきである。 そして,寄与濃度=排出濃度×排ガス量×拡散による希釈という関係にあるため,現実の着地濃度は排出濃度及び排ガス量に比例する。 したがって,実際に排出されるダイオキシン類濃度が10ng-TEQ/N㎥である場合,プルーム・パフモデルを用いて得られる年平均の最大着地濃度は,排出されるダイオキシン類濃度を0.1ng-TEQ/N㎥と仮定して得られた予測結果の最低値である0.0006pg-TEQ/㎥を100倍して,0.06pg-TEQ/㎥となる。 ウ上記ア及びイに照らせば,3次元流体モデルとプルーム・パフモデルとで最大着地濃度の140倍の開きがあると仮定すると,実際に排出されるダイオキシン類濃度として10ng-TEQ/N㎥が維持されている場合3次元流体モデルを用いて得られる年平均の最大着地濃度は,次式のとおり,8.4pg-TEQ/㎥と推定され,環境基準値である0.6pg-TEQ/㎥を大幅に上回る。 0.06(pg-TEQ/㎥)×140=8.4(pg-TEQ/㎥)このように,気象条件いかんでは,環境基準値を上回るダイオキシン類が原告らの居住地又は就業地に到達することが明らかになっている。 (被告の主張) 立証責任について(1)本件訴訟において,原告らの人格権に基づく本件施設の操業差止請求権が認 回るダイオキシン類が原告らの居住地又は就業地に到達することが明らかになっている。 (被告の主張) 立証責任について(1)本件訴訟において,原告らの人格権に基づく本件施設の操業差止請求権が認められるために立証されるべき主題は,①本件施設から基準値を超えるダイオキシン類が排出され,排出されるダイオキシン類により原告らに社会生活上受忍すべき限度を超える健康被害が生じること及び②差止めの必要性であり,これらについては,差止請求権を根拠付ける請求原因事実であることから,民事訴訟の一般原則に従い,原告らが立証責任を負うべきである。 もっとも,技術的事項についての立証の困難性,住民と事業者との間における証拠との距離,分析能力の差等に着目すると,事業者にも一定の現実の立証の必要性(証拠提出責任)が負担させられてしかるべきである。しかしながら,被告は本件訴訟において,その課せられた現実の立証の必要性(証拠提出責任)について,すべて履行し尽くした。 (2)本件施設の試運転の期間中,合計8回にわたる外部有資格者及び行政機関が主体となったダイオキシン類測定が行われ,そのすべてにおいて,維持管理基準値及び維持管理計画値を大幅に下回る結果が得られている。また,法令の基準自体が,極めて多岐にわたり,ダイオキシン類そのものの排出基準もあれば,それとは関連性が薄いというべき,その他の物質,振動,臭気,音等に関する基準,その他子細な形式的基準まで含まれている。そうすると,仮に基準を満たしていない事項が一時的に認められたとしても,その事項の内容,基準を満たしていない程度,改善可能性等を考慮し,立証主題に結びつくものか否かを実質的に検討すべきである。 ダイオキシン類等の危険性についてダイオキシン類に一定程度の毒性があることは認めるが,その余は否認ないし争う。 改善可能性等を考慮し,立証主題に結びつくものか否かを実質的に検討すべきである。 ダイオキシン類等の危険性についてダイオキシン類に一定程度の毒性があることは認めるが,その余は否認ないし争う。 化学物質によるリスクは,危険性ないし有毒性と暴露量との相関関係によって決まるものであるから,化学物質のリスク管理を考える場合には,化学物質の危険性ないし有毒性を評価するだけでなく,暴露量を合わせて評価することにより適切にリスクの評価を行い,その結果に基づいて管理を行う必要がある。 本件施設からのダイオキシン類排出の蓋然性について(1)本件炉の構造上及び運用上の問題点ア燃焼室熱負荷,燃焼室容積及び燃焼排ガスの滞留時間について(ア)燃焼室熱負荷について被告は,燃焼室熱負荷の設計基準として「15万kcal/㎥・h以下」を採用し,本件炉の燃焼室熱負荷の値を14万8770kcal/㎥・hと設定しており,この値は適正である。 上記設計基準は,社団法人全国都市清掃会議・財団法人廃棄物研究財団編集発行に係る「ごみ処理施設整備の計画・設計要領」(乙42)189頁にも明記されており,廃棄物処理法8条,15条の規定に基づく設置許可を要する一般廃棄物処理施設及び産業廃棄物処理施設の処理能力の算定に広く採用されているものである。 原告らは「燃焼室熱負荷は,炉の焼却能力を測る基準でもあり」と主張するところ,その主張の根拠は,環境省の平成14年11月26日付け「廃棄物焼却施設の能力算定方法について」と題する事務連絡文書(乙90添付資料2)の記載にあると思われる。これによると,「廃棄物の処理及び清掃に関する法律第8条及び第15条の規定による設置許可が必要な廃棄物焼却施設の処理能力の算定については,焼却炉メーカー等から提出された能力計算書等について審査し,その妥当 ると,「廃棄物の処理及び清掃に関する法律第8条及び第15条の規定による設置許可が必要な廃棄物焼却施設の処理能力の算定については,焼却炉メーカー等から提出された能力計算書等について審査し,その妥当性を判断することで差し支えないが,小型焼却炉の処理能力の算定方法に関する問い合わせが多数寄せられていることから,小型焼却炉の一般的な処理能力の算定方法を以下に示すので,審査に当たっての参考とされたい。」として,「焼却能力(kg/h)={燃焼室熱負荷(kcal/㎥・h)×一次燃焼室容積(㎥)}/廃棄物の低位発熱量(kcal/kg)」なる算定式が示されている。 しかし,これは「小型焼却炉の一般的な処理能力の算定方法」であり,廃棄物を炉内に一定量ずつ送り込む廃棄物の定量供給装置及び計量装置や,排ガス急冷塔,バグフィルター,排風機等の排ガス処理装置を持たない小型焼却炉の処理能力についての一定の指標にすぎない。本件施設のように設置許可が必要な廃棄物焼却施設の場合,炉の焼却能力は,一定の指標としての燃焼室熱負荷によって規定されるというよりも,廃棄物の定量供給装置,計量装置及び排ガス処理装置の能力の範囲によって相当限定的に規定されるのであって,これらの装置の能力を超えて廃棄物を焼却することなどできない。 (イ)燃焼室容積について被告は,本件炉の燃焼室容積を71.96㎥としており,これは適正なものである。 社団法人全国都市清掃会議・財団法人廃棄物研究財団編集発行に係る「ごみ処理施設整備の計画・設計要領」(乙42)189頁によれば,燃焼室容積とは,炉材等で囲まれた燃焼空間をいい,ごみがない状態における火格子上の全容積(流動床炉の場合は流動層を含みその上部空間)で,耐火物(耐火れんが又はキャスタブル耐火材)被覆部上端までとることとされている。 この定義に た燃焼空間をいい,ごみがない状態における火格子上の全容積(流動床炉の場合は流動層を含みその上部空間)で,耐火物(耐火れんが又はキャスタブル耐火材)被覆部上端までとることとされている。 この定義において重要なのは,燃焼室容積とはあくまで「燃焼空間」を指すものであるということである。すなわち,あくまで燃焼に寄与する空間を燃焼室容積として算出すべきであって,燃焼に寄与しない空間は,耐火物で造られているからといって燃焼室容積に含めることは妥当でない。 本件施設についてみると,ロータリー式自動灰出し装置は,耐火物構造となっているものの,燃焼空間ではないことから(ロータリー式自動灰出し装置の設置目的は,燃焼後の燃えがらを移送することにある。),燃焼室容積に含まれないことは当然である。また,傾斜回転床炉の椀状部についても,いわゆる火格子構造とは異なり,燃焼用空気を底部から供給する機構がないことから,燃焼空間には該当しない(燃焼には,燃焼物,熱,酸素の3要素が必要である。)。 原告らは,本件炉が大きな炉であることから,被告が届出量以上の廃棄物を焼却する危険がある旨主張するようであるが,被告は焼却量を計測し,記録することとなっており,そのようなことはあり得ない。また,被告は,自主的にダイオキシン類の規制値を法規制値より小さい0.1ng-TEQ/N㎥と設定しており,焼却能力を過小に届け出ることによって法規制を潜脱する結果にはならないのであるから,過小届出をする理由もない。 (ウ)燃焼排ガスの滞留時間について本件施設の設計条件として,燃焼室出口湿りガス量は2万3722N㎥/h,燃焼室出口温度は944℃とされているところ,排ガスが944℃の条件下で1秒間に燃焼室内を通過する量は,次式のとおり,29. 38㎥/sとなる。 23,722(N㎥/h)×(94 万3722N㎥/h,燃焼室出口温度は944℃とされているところ,排ガスが944℃の条件下で1秒間に燃焼室内を通過する量は,次式のとおり,29. 38㎥/sとなる。 23,722(N㎥/h)×(944+273)/273=105,750(㎥/h)=29.38(㎥/s)本件炉の燃焼室容積は上記のとおり71.96㎥であるから,燃焼室における排ガスの滞留時間は,次式のとおり,2.45秒となる。 71.96(㎥)÷29.38(㎥/s)=2.45(s)したがって,本件炉の燃焼室においては,排ガスを944℃の条件下で2.45秒滞留させることができ,燃焼ガスが800℃以上の温度を保ちつつ,2秒以上滞留できるという基準を十分に満足している。 イ投入方法の問題点について(ア)炉内への廃棄物の投入を可能な限り連続的に行うことが望ましいという原告らの主張は,一概に誤りとはいえない。本件炉において,廃棄物はプッシャーによって炉内に投入されるところ,プッシャーによる投入は,その構造上間欠的にならざるを得ない。 しかし,投入ロットが1時間の処理能力の5%未満である場合においては,間欠的な投入は,燃焼を不安定にする要因にはならない。また,プッシャーの動作は均一であって,ほぼ連続投入に近い運転状態となるものであり,プッシャーによる投入は,これまでの廃棄物焼却炉に広く使われてきた安定的な方法であり,炉に対する負荷を大きく変動させるものではない。 (イ)原告らは,本件炉において,①乾燥工程,②燃焼工程,③後燃焼工程というあるべき燃焼工程が明確に分けられていない点を問題としている。 しかし,燃焼という化学反応が行われる限り,本件炉を含むすべての焼却炉において,程度及び時間の差こそあれ,上記の3つの工程を経ることはいうまでもない。 そして,本件炉においては,回転床内の廃 る。 しかし,燃焼という化学反応が行われる限り,本件炉を含むすべての焼却炉において,程度及び時間の差こそあれ,上記の3つの工程を経ることはいうまでもない。 そして,本件炉においては,回転床内の廃棄物の総量がリテンションボリュームを超えた際に,粒径の小さなものから順次こぼれ落ちていくのであり,燃え尽きて粒径が小さくなった廃棄物から順次離脱していくことになる。したがって,定まったリテンションタイムがあるわけではなく,回転床内にとどまる時間は,個々の廃棄物の燃焼速度に依存している。 その際,初めから小さな粒径をした廃棄物が投入された場合であっても,経験上,そのような廃棄物は焼却場への投入後直ちに燃え尽きてしまうので,問題にならない。 (ウ)プッシャーによる間欠的な投入の場合に限らず,連続投入の場合においても,投入された廃棄物の種類による燃焼速度の違いから燃焼状態が変動しうるものであるが,この燃焼変動を考慮して,焼却炉には余剰空気が供給されることとなっている。余剰空気の割合は空気比mで表され,本件炉は空気比m=2.0で設計されている。空気比m=2.0は,燃焼に必要な空気と同量の余剰空気を炉内に供給するというものである。 したがって,本件炉では,炉内の燃焼状態に変動が生じたとしても,余剰空気によって燃焼が安定する計画になっている。 (エ)原告らは,廃棄物を間欠的に,高温で燃えさかる炉床に直接投入すると,平均では十分酸素濃度があったとしても一時的又は局所的に酸素不足による不完全燃焼が起こってCO濃度が高くなり,黒煙,ダイオキシン類前駆物質及びダイオキシン類濃度が増加する旨主張するが,そのような現象を防止するために燃焼ガスが燃焼室内で2秒以上滞留することが求められているのであり,前記ア(ウ)のとおり,本件炉においては,2.45秒の滞留時間が キシン類濃度が増加する旨主張するが,そのような現象を防止するために燃焼ガスが燃焼室内で2秒以上滞留することが求められているのであり,前記ア(ウ)のとおり,本件炉においては,2.45秒の滞留時間が確保されている。 ウ空気供給の不備について本件炉においては,下段,中段,上段の3台の送風機により,燃焼空気を段階的に供給している。下段送風機の送風管のノズルは,傾斜した回転床の上端部付近を狙う形で配置されている。これは,傾斜した回転床の回転により上部まで持っていかれた廃棄物が転がり落ちたり滑り落ちたりする動作を開始し,新たな燃焼面が現れる部分に対して空気供給がなされているものである。 本件炉において,燃焼空気の供給が不十分であり,問題があるとすれば,燃焼は不完全な形で推移することとなるが,いわゆる不完全燃焼を表す指標としては,第1に,排ガス中のCO濃度が上昇すること,第2に,排出されるもえがらに燃え残りが多く含まれることが挙げられる。 しかしながら,第1回試運転の段階におけるCO濃度のグラフ上,CO濃度の瞬時値は激しく上下動し,ピーク時に100ppmを超えることもあるが,これを1時間平均値に直せば低い数値となる。そして,今後の試運転と本格稼働においては,さらに燃焼の安定化が図られることになっている。 燃え残りが含まれるという点についても,第1回試運転において発生したもえがらの熱しゃく減量を分析したところ,4.8%であった。熱しゃく減量は,もえがらを強熱下(600℃±25℃・3時間)におき,どの程度重量減少するかという値であり,法規制上10%未満でなければならないところ,これを充足している。 したがって,本件炉において,空気供給に何ら問題はない。 エ発熱量調整の不備・非現実性について(ア)原告らは,混合焼却における廃棄物の低位発熱量を現実 ければならないところ,これを充足している。 したがって,本件炉において,空気供給に何ら問題はない。 エ発熱量調整の不備・非現実性について(ア)原告らは,混合焼却における廃棄物の低位発熱量を現実には5947kcal/kgに調整できないことを問題にするようである。 しかし,投入しようとする廃棄物の低位発熱量を計算値と等しくなるよう調整することは,不可能であるし,焼却施設の運転管理上,その必要もない。 一般的に,焼却施設の運転に当たって管理しなければならないのは,総発熱量であり,本件施設の場合,5947kcal/kgの平均発熱量を持つ混合廃棄物を1800kg/hで焼却する計画であるから,次式に従った総発熱量1070万4600kcal/hを,主たる管理指標として炉内温度の変動を捉えることにより,管理するのである。 5,947(kcal/kg)×1,800(kg/h)=10,704,600(kcal/h)(イ)原告らは,被告の計画において廃棄物の排出予定事業者として挙げられていた事業者は架空のものであり,廃棄物の構成比及び低位発熱量の算定に根拠がない旨主張するが,そもそもこの問題は,本件施設における燃焼管理とは全く別次元の問題である。燃焼管理上は,廃棄物(特に計画ごみの全体の約7割を占める標準発熱量のごみ)の構成比が大きく振れ,最も低い発熱量から最も高い発熱量まで変動したとしても,設備自体は全く問題なく維持管理できるのであって,少なくとも排出予定事業所が変わったからといって,設備の運転管理に影響が及ぶことはない。 (ウ)被告は本件施設の設計計算書において廃棄物を種類ごとに専焼した場合の燃焼計算をも行っているところ,汚泥,金属くず,ガラスくず及び陶磁器くず等の廃棄物については,相当量の廃油を混ぜて燃焼した場合の発熱量が算出されている。こ 書において廃棄物を種類ごとに専焼した場合の燃焼計算をも行っているところ,汚泥,金属くず,ガラスくず及び陶磁器くず等の廃棄物については,相当量の廃油を混ぜて燃焼した場合の発熱量が算出されている。これは,そもそも,無機物あるいはほとんどが水分であるような廃棄物を単体で焼却させることは不可能であるところ,本件施設の最大の焼却能力を割り出し,特にダイオキシン類等の排出規制値を確定させるためには,廃棄物を種類ごとに専焼した場合の焼却能力を計算上算出しておく必要があるので,焼却を予定する廃棄物の中で,比較的総発熱量をコントロールしやすい廃油との混焼をした場合を仮定して計算をしているにすぎない。 また,被告は,各廃棄物を計画の比率で混焼した場合の廃棄物の元素レベルの組成を求め,それぞれの元素が持つ固有の発熱量を合算する方式によって,混合焼却における廃棄物の低位発熱量を算出しているのであって,廃棄物の種類ごとの低位発熱量と重量とを単純に合算して平均を求めているわけではないから,汚泥,金属くず,ガラスくず及び陶磁器くず等の重量及び発熱量を考慮に入れると,混合焼却における廃棄物1kg当たりの低位発熱量が狂ってくるなどという原告らの主張は失当である。 (エ)原告らは,マニフェスト伝票の記載によっては,本件施設に搬入される廃棄物の種類及び量やその混合割合を正確に把握することができない旨主張する。 しかし,被告は,マニフェスト伝票だけに依存して本件施設を稼働させようとしているわけではない。本件施設は,廃棄物の定量供給装置,重量計測装置付き投入装置を具備し,炉温が低下した場合のために昇温バーナー,二次バーナー等の設備を具備しており,有害物質の排出を抑制するための諸々の設備,対策を十分に備えている。 また,マニフェスト制度は,単なる事業者間の自主的ルールでは 低下した場合のために昇温バーナー,二次バーナー等の設備を具備しており,有害物質の排出を抑制するための諸々の設備,対策を十分に備えている。 また,マニフェスト制度は,単なる事業者間の自主的ルールではなく,廃棄物処理法に基づき正しく運用することが要求されるものであり,行政処分や刑事罰による担保もあることから,相当程度の実効性を有するものである。そして,搬入される廃棄物が,高発熱量のごみ,標準発熱量のごみ,定発熱量のごみのいずれに属するのか,その基本的性状がいかなるものであるか等については,マニフェスト伝票によって十分に把握しうるものであり,マニフェスト伝票が,本件施設の適切な運転管理上大きな一助となることはいうまでもない。 オ人員体制の不足について否認ないし争う。 (2)試運転結果に表れた問題点についてア二次室出口のガス温度の推定について原告らは,ボイラー出口付近のガス温度に82℃を加えると二次室出口の真のガス温度が推定でき,これが800℃に達していない旨主張する。 しかし,本件炉の設計計算書において,二次室出口温度とボイラー出口温度との差が82℃となったのは,熱交換器の使用継続に伴いその伝熱面に付着物が付いて伝熱効果が低下することを見越して,高温流体(排ガス)から低温流体(水)に対する熱の伝わりやすさを示す総括伝熱係数(単位伝熱面積当たり・単位時間当たり・単位温度差当たりの貫流熱量)を35kcal/㎡・h・℃と低く設定したことによるものである。この値は,新品のボイラの約半分程度になると仮定して設定したものであり,被告においては,本件施設の稼働直後の時点では総括伝熱係数は70kcal/㎡・h・℃程度であり,燃焼室出口温度が944℃の場合には,ボイラー出口温度が約787℃となるものと予測していた。このように,熱交換器の伝熱面に汚 設の稼働直後の時点では総括伝熱係数は70kcal/㎡・h・℃程度であり,燃焼室出口温度が944℃の場合には,ボイラー出口温度が約787℃となるものと予測していた。このように,熱交換器の伝熱面に汚れのない稼働当初にあって,ボイラー出口温度が計算値より相当程度低くなるのは当然のことである。 次に,平成19年11月1日におけるボイラー出口温度は,二次室出口温度が1000℃程度の時に,700℃前後となっており,上記の787℃と比較して約100℃程度の開きがあるが,この開きについては,実際にボイラーを通過している排ガスの総量に,計算値との差があることを考慮しなければならない。同じ温度であっても,排ガスの量が半分であれば,排ガスが持っている熱量も半分となるからである。同日における乾きガス量はおおむね1万8850N㎥/hと想定できるところ,これによってボイラー出口温度を計算すると,約735℃となる。 さらに,ボイラー出口温度を測る熱伝対の先端受熱部分が,排ガス温度を測るのに適切な位置まで差し込まれていなかったため,実際のガス温度より40℃ないし80℃程度低く表示されていた可能性がある。この傾向は,第2回試運転において顕著に現れている。 以上に指摘した要因によりボイラー出口温度の実測値が計算値を下回っているにすぎないのであるから,ボイラー出口温度に82℃を加えることによって二次室出口の真のガス温度を推定するという作業は無意味であり,原告らの上記主張は失当である。 イ実際の炉内温度が計測値より低いかについて平成20年3月10日から同月19日までの温度グラフのうち,比較的特徴が顕著な同月14日の温度変化を,午前8時から午前11時までの3時間のスパンで表したグラフを見ると,炉内上部温度は1200℃を超えていないこと,炉内上部,二次室出口及びボイラー入口 うち,比較的特徴が顕著な同月14日の温度変化を,午前8時から午前11時までの3時間のスパンで表したグラフを見ると,炉内上部温度は1200℃を超えていないこと,炉内上部,二次室出口及びボイラー入口の3つの温度波形は同一の周期で変動していること,二次室出口より後方に位置するボイラー入口の方が温度が高くなっていることが読み取れる。 本件施設は,炉内温度が一定水準以上になると,破砕処理後の廃棄物の投入を制限する「抑制運転モード」に入るようプログラミングされているところ,同日前後にあっては,「抑制運転モード」における投入停止温度を1150℃(炉内上部)に設定していた。炉内上部の温度変動は,こうした廃棄物の投入制御によってもたらされるものであって,ごく自然な変動である。 また,上記グラフのうち,午前10時27分から48分までの時間帯を除いては,二次室出口温度及びボイラー入口温度の変動が炉内上部温度に同調する形となっており,全体的な温度変動の要因が炉内上部温度にあることが明確に分かる。したがって,温度が上下する支配的な要因は,炉内の廃棄物の燃焼状態の変動にあり,二次バーナーの稼働及び停止にあるわけではない。 さらに,二次室出口より後方に位置するボイラー入口の排ガス温度の方が高くなることは本来的にあり得ないことであり,二次室出口温度を測る熱伝対の位置又は差込み深さに問題があったことから,被告は,同月22日,二次室出口の熱伝対の位置を,ボイラー入口に最も近い位置に変更する最終的な調整を行っている。 以上から,二次室出口温度が二次バーナーの火炎の輻射熱の影響により見かけ上800℃ないし900℃以上あるように見えるが,二次室出口付近の真のガス温度は800℃を下回っているという原告らの主張は事実に反する。 ウダイオキシン類測定の問題点について原告らは より見かけ上800℃ないし900℃以上あるように見えるが,二次室出口付近の真のガス温度は800℃を下回っているという原告らの主張は事実に反する。 ウダイオキシン類測定の問題点について原告らは,平成20年3月14日のダイオキシン類測定の結果について,意図的に温度を上げて行われた測定であり信頼できない旨主張する。 しかしながら,同日のダイオキシン類濃度の測定値は0.01ng-TEQ/N㎥であるところ,そもそも,炉内温度を上げただけで,ダイオキシン類濃度をここまで低い数値にすることは不可能である。ダイオキシン類の抑制は,安定した燃焼を図る焼却炉,排ガスの急冷を確実に行える排ガス急冷塔,バグフィルターに代表される高度な集じん装置等のハード面が具備されていること,これらが適正に維持管理されていることに加え,温度管理(炉内温度だけでなく,特にバグフィルター入口温度の管理)等の管理技術が一体となって初めて達成できるものであり,運転温度を常に高く維持すれば足りるというような単純なものではない。 上記の測定値の正当性は,第2回試運転以降行われた8回にわたるダイオキシン類測定(行政検査を含む。)の結果との対照によっても確認できる。 したがって,測定値が信頼できないというのは不当な評価であり,原告らの上記主張は失当である。 エ高濃度の一酸化炭素が発生しているかについて第2回試運転の期間中,ほとんどすべてのCO濃度の上昇が,「抑制運転モード」から通常運転への復帰時に起こっていることが確認されたことから,「抑制運転モード」の影響による温度降下をより時間をかけて行うため,抑制運転の最終段階にある投入停止の間に小刻みなON-OFF運転を取り入れ,間欠運転とするというシミュレーションを,平成20年3月31日の午後1時30分から午後2時までの間に行った。その様 うため,抑制運転の最終段階にある投入停止の間に小刻みなON-OFF運転を取り入れ,間欠運転とするというシミュレーションを,平成20年3月31日の午後1時30分から午後2時までの間に行った。その様子を表したグラフを見ると,炉内温度は若干高止まりの傾向となるが,CO濃度は比較的安定することが確認できる。現在は,小刻みなON-OFF運転を取り入れた「抑制運転モード」により運転されている。 オ二次バーナーの作動と二次室出口付近のガス温度について原告らは,第3回試運転の結果からも,本件炉において,二次バーナーを頻繁に作動させなければ二次室出口付近のガス温度を800℃以上に保つことができない旨主張する。 しかし,原告らが廃棄物の投入にもかかわらず温度が800℃以下に低下する旨指摘する箇所は,そのほとんどが,システムのサイクル停止(廃棄物の投入が直ちに停止され,次いで各機器が自動的に停止していく停止動作)をかけ,廃棄物の投入が行われていない時間帯を指している。炉を立ち上げている時間帯及び炉の停止過程にある時間帯を除いた通常の運転状態にある時間帯において,二次室出口温度が800℃以下となっている事実はない。 また,第3回試運転においては,稼働時間(余熱時間,停止サイクル時間も含む。)が約200時間であったのに対し,二次バーナー及び昇温バーナーの燃料として使用された再生油の合計使用量は1万1396ℓであり,1時間当たりに換算すれば57ℓ/h程度に収まっている。二次バーナーの消費燃料は120ℓ/h,昇温バーナーの消費燃料は100ℓ/hであるから,二次バーナーや昇温バーナーをほぼ常態的に作動させているような状態にはない。 カCO濃度の計測について原告らは,本件炉に廃棄物を投入しているにもかかわらず,炉内温度が急激に減少し,その温度減少に関連して高 ーや昇温バーナーをほぼ常態的に作動させているような状態にはない。 カCO濃度の計測について原告らは,本件炉に廃棄物を投入しているにもかかわらず,炉内温度が急激に減少し,その温度減少に関連して高いCO濃度が計測されている旨指摘する。 しかし,1日に合計40tの廃棄物を焼却した場合であっても,何らかの要因により廃棄物の投入を抑制ないし停止することにより,炉内温度が低下し,次いでCO濃度の瞬時値が上昇することはありうる事態である。 現に,温度が減少した時間帯には,薬剤タンクの残量の確認が取れないために投入を抑制したり,回転床のモーターの回転数が低下したことから,確認のため投入を一時停止したり,自動灰出し装置の水封式チェーンコンベアーに金属片が引っかかったために投入を停止して復旧に当たったりするなどの,廃棄物の投入を抑制ないし停止させる事態が生じている。問題は,そうした事態にあっても維持管理基準値を超過することなく制御,管理を行えるかであるところ,少なくとも本件施設の管理システムにおいて,CO濃度の1時間平均値が維持管理基準値を超過していた事実はなく,十分な制御,管理が行われていた。 ただし,平成20年10月8日に行われた行政検査において,CO濃度の1時間平均値106ppmを記録した時間帯がわずかとはいえ存在し,本件施設の常時管理システムにおいても98ppmを記録していることは事実であり,この点については改善の必要が認められるところ,被告においてその改善計画を立案した。 また,原告らが温度減少を指摘する箇所には,システムの停止過程にあり,廃棄物の投入が行われていない時間帯が含まれている。廃棄物の投入が停止されれば次第に炉内温度が降下していくが,その過程でCO濃度の瞬時値がある程度上昇するのはやむを得ない。しかし,廃棄物処理法及び同法施行 投入が行われていない時間帯が含まれている。廃棄物の投入が停止されれば次第に炉内温度が降下していくが,その過程でCO濃度の瞬時値がある程度上昇するのはやむを得ない。しかし,廃棄物処理法及び同法施行規則が求めているのは,通常の運転状態における燃焼の安定性であり,その指標として排ガスの性状に係る数値等が維持管理基準を満たすことであって,設備の停止時,ましてや排ガスが排出されていない段階についてCO濃度を問題とすべきではない(なお,本件施設においては,そのような段階においても,維持管理基準値を超過しているわけではない。)。 キHCl濃度の計測についてHCl濃度を計測する塩化水素ガス測定器については,電極測定感度及び精度を一定に保つために校正が必要であり,第3回試運転時には1日1回,午後11時ころに自動校正が行われ,また,試運転期間の初期には手動の校正も随時行っていた。校正液には低濃度側が12ppm,高濃度側が800ppmの等価液を使用しており,実際の作業においては,12ppmの濃度につき,いったん100ppm前後まで上げた後に12ppmまで下げて確認し,800ppmの濃度につき,いったん900ppm以上まで上げた後に800ppmまで下げて確認している。したがって,手動,自動を問わず校正を行う際には,100ppm前後の濃度と900ppm程度の濃度が記録されることになるが,これは等価液を吸引した際の数値であり,ガスを吸引した際の数値ではない。 校正中の値を除けば,第3回試運転中にHCl濃度が正味の警報値に達したのは,平成20年10月14日に廃プラスチック類の専焼テストを行った際に数度あっただけで,原告らの指摘に係る法規制値を超過する高いHCl濃度とは,そのほとんどが校正中の濃度を指すものと推測される。 したがって,極めて高いHCl濃度が計測 チック類の専焼テストを行った際に数度あっただけで,原告らの指摘に係る法規制値を超過する高いHCl濃度とは,そのほとんどが校正中の濃度を指すものと推測される。 したがって,極めて高いHCl濃度が計測されているという原告らの主張は,誤解ないし曲解に基づくものであり,失当である。 ク1.8t/hの処理能力まで焼却量が達していないことについて第3回試運転においては,愛知県が,行政検査にあっては,本件施設をフル稼働の状態に置いた上で各種測定を行うとの姿勢を示したため,被告は,本件施設の最大能力での運転を行った。 例えば,24時間運転を行った平成20年9月17日において,平均処理量は1738kg/hであり,1800kg/hに達していないものの,処理量が1800kg/hに達している時間帯は24時間中延べ10時間にわたり,最大値は1941kg/hである。同日の平均CO濃度は26. 8ppm,ダイオキシン類濃度の測定値は0.00065ng-TEQ/N㎥である。したがって,1.8kg/hの処理量で焼却を行った場合にCO濃度やダイオキシン類濃度が基準値を超える可能性があり,本件炉の安全性が確認されていないという原告らの主張には,根拠がない。 (3)経理的基礎の不存在についてア被告の財務状況について被告においては,収益性の総合指標である経営資本営業利益が業界平均と比べて良好な数値を維持しており,流動性(安全性)についても,自己資本比率及び流動比率は若干低い値で推移しているものの,債務償還年数及び借入金対月商倍率は平均値より格段に高い。 平成18年8月期の損益計算書によれば,被告は,純売上高約270億円,売上総利益約29億円,経常利益約7億円を計上する企業であり,金融機関の信用度も高く,借入れの余力もある。現に,本件の産業廃棄物処理事業についても,大手都 書によれば,被告は,純売上高約270億円,売上総利益約29億円,経常利益約7億円を計上する企業であり,金融機関の信用度も高く,借入れの余力もある。現に,本件の産業廃棄物処理事業についても,大手都市銀行からの融資が実行され,本件施設が完成し,本格稼働に備える状態となっている。 このように,被告の財務基盤は健全であり,十分な経理的基礎を有している。 イ被告の採算見込みについて(ア)廃棄物の処理単価について被告は,本件施設の竣工に先立ち,東海三県の廃棄物処理業者に対し,本件施設のオープンの案内とアンケートを実施した上,搬入元となる予定の事業者との間で,「覚書」及び「産業廃棄物処理委託契約書」を取り交わし,廃棄物の搬入元,種類及び量並びに取引金額をまとめた資料(乙132)を銀行に対し提出している。「産業廃棄物処理委託契約書」は,被告が産業廃棄物処理業の許可を受けることを前提として,契約日付を入れずに取り交わしたものであり,実質的には仮契約に類するものである。上記資料にあるように,本件施設における産業廃棄物処理業においては,既に排出予定事業者が十分に確保されており,十分な収益の見通しが立っている。 (イ)43.2t/日の処理量の実現可能性について被告の採算計画書は,そもそも1日当たり43.2tの産業廃棄物を焼却することを前提として作成したものではない。43.2t/日の処理能力は本件施設の最大能力を表すにすぎず,本件施設の損益計算の見積りは,稼働率を最大でも85%と見て行われている。これを1日当たりの処理量に換算すれば,36t/日ないし37t/日程度である。 また,稼働率を100%ないしそれ以上にまで高めれば,排出される排ガスの性状が悪化するという考え方も,あまりにも単純な比較級数的な考え方であり,失当である。既に述べたとおり,被告は /日程度である。 また,稼働率を100%ないしそれ以上にまで高めれば,排出される排ガスの性状が悪化するという考え方も,あまりにも単純な比較級数的な考え方であり,失当である。既に述べたとおり,被告は,第3回試運転において,最大1941kg/hまで負荷を高める運転を実施し,その上で種々の排ガス測定を行ったところ,その数値は,試運転結果報告書(乙179)の2-3「9/17排ガス」の項に示されたとおり,いずれも良好な結果となっている。 (ウ)試運転結果からみた経費算定の不合理性についてa燃料費について既に述べたとおり,第3回試運転において,二次バーナー及び昇温バーナーの燃料として使用された再生油の合計使用量は,稼働時間1時間当たりに換算すると57ℓ/h程度に収まっており,採算計画に影響を及ぼすような数値ではない。 b中和薬剤の使用量について中和薬剤の使用量は,当初計画値が70kg/hであるところ,第3回試運転において24時間連続的に運転を実施した日の中和薬剤使用量から1時間当たりの使用量を割り出せば,86.6kg/hないし89.0kg/hである。これは,使用開始時のろ布の状態を考えれば適正な投入量であり,累計運転時間が600時間程度を経過すれば,ろ布表面から不規則的に剥離し,落下する薬剤層は無視できる程度に落ち着いてくるので,薬剤投入量は,70kg/h程度になってくる。したがって,採算計画に影響を及ぼすような事態は生じない。 c廃棄物の2度破砕について廃棄物が破砕不良となる要因は,当該廃棄物が破砕機の中に留まっている時間が計画よりも短いことによるものであるから,破砕不良の物を再度破砕機にかける時間的,能力的な余裕は当然に確保されている。したがって,2度破砕によっても,電気費,人件費等の費用や処理可能量が大きく変わることはない いことによるものであるから,破砕不良の物を再度破砕機にかける時間的,能力的な余裕は当然に確保されている。したがって,2度破砕によっても,電気費,人件費等の費用や処理可能量が大きく変わることはない。 (4)産業廃棄物処理業者としての資質の欠如について否認ないし争う。 被告は,本件施設の維持管理を的確かつ継続的に行うのに必要な知識,技能及び経験を備えており,これを基礎にして,法の要求する厳格な要件を具備するよう努力を積み重ね,関連法規を遵守しながら本件施設の操業計画を進めてきた。 また,被告は,平成13年9月から平成16年2月にかけて,合計21回にわたり住民説明会(事業説明会及びシンポジウム)を開催し,本件施設の事業計画の内容を広く地域住民に周知し,その中で提起された様々な意見を事業計画に活かし,より一層安全な計画にするよう努力を積み重ねてきた。 そして,被告は,地元自治体である春日井市との間で公害防止協定を取り交わし,民主的プロセスを経て本件施設の事業計画を遂行してきた。 したがって,被告は,本件施設を安全に稼働させることができる十分な適格を有するものというべきである。 排出されるダイオキシン類の到達予測について被告が行った環境影響調査によれば,本件施設から排出されるダイオキシン類濃度が0.1ng-TEQ/N㎥であるという前提条件の下で,長期予測における最大着地濃度は0.000353pg-TEQ/㎥,短期予測における最大着地濃度は0.00062pg-TEQ/㎥であり,いずれも環境基準値である0.6pg-TEQ/㎥を満足している。 平成10年に旧厚生省が作成した「生活環境影響調査指針」及び平成18年9月に環境省が同指針の内容を見直して作成した「生活環境影響調査指針」(乙112)によれば,大気濃度を予測する場合の拡散計算式として,有風時 に旧厚生省が作成した「生活環境影響調査指針」及び平成18年9月に環境省が同指針の内容を見直して作成した「生活環境影響調査指針」(乙112)によれば,大気濃度を予測する場合の拡散計算式として,有風時にはプルーム式を,無風ないし弱風時にはパフ式を用いることが推奨されており,被告がこれらの拡散計算式(プルーム・パフモデル)を用いたことに何ら問題はない。このように,被告が本件施設の稼働を前提とした環境影響調査を「生活環境影響調査指針」に従って行ったのは,同指針に従って環境影響調査を行うことが共通のルールだからである。 第4当裁判所の判断 前記争いのない事実等,証拠(以下の各項冒頭に掲記する。)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1)ダイオキシン類について(甲18,乙36の6,106,107)アダイオキシン類とは,ポリ塩化ジベンゾ・パラ・ジオキシン(PCDD),ポリ塩化ジベンゾ・フラン(PCDF)及びコプラナーポリ塩化ビフェニル(コプラナーPCB)の総称であり(ダイオキシン類対策特別措置法2条1項。以下,同法を「ダイオキシン法」という。),ダイオキシンとはPCDDの略称である。 ダイオキシン類の毒性について,そのメカニズムは十分に解明される段階には至っていないものの,動物実験により,発がん性,肝毒性,免疫毒性,生殖毒性等の毒性があることが確認されており,また,事故による中毒や職業暴露の事例において,クロロアクネ(塩素ざ瘡)が現れることや,肝障害,神経症状,呼吸器系への影響が報告されており,人体にも重大な害悪を及ぼす危険性がある。 塩素の付く数及び位置の違いによって,PCDDには75種類の,PCDFには135種類の,コプラナーPCBには十数種類の異性体があり,それぞれ毒性の強さが異なるものであるが,多数の異性体の混合物と 。 塩素の付く数及び位置の違いによって,PCDDには75種類の,PCDFには135種類の,コプラナーPCBには十数種類の異性体があり,それぞれ毒性の強さが異なるものであるが,多数の異性体の混合物として存在するダイオキシン類の毒性は,毒性等量(TEQ,ToxicEquivalentの略号)によって評価される。毒性等量は,PCDDの中で最も毒性が強い2,3,7,8-四塩化ダイオキシン(2,3,7,8-TCDD)の毒性を1として個々の異性体の毒性を表した毒性等価係数(TEF,ToxicEquivalencyFactorの略号)に,当該異性体の量を乗じた値の総和で表される。 イ化学物質のリスクを管理するために,人が一生涯,毎日摂取しても,病気等の悪影響が生じない量を定め,これを1日当たり,体重1kg当たりの量で表すことによって当該化学物質のリスクを評価する方法が一般的に採られており,その量を耐容一日摂取量(TDI)という。 ダイオキシン類のTDIについては,平成10年のWHO専門家会合の最終報告書において,科学的知見に基づき,1ないし4pg-TEQ/kg/日が当面の耐容できる値であるとされた。我が国においては,ダイオキシン類に関する施策の指標とすべきものとして,TDIが4pg-TEQ/kg/日と設定されている(ダイオキシン法6条1項,同法施行令2条)。 (2)法規制について(甲50添付資料-2,甲104,乙2)アダイオキシン法7条において,政府は,ダイオキシン類による大気の汚染,水質の汚濁及び土壌の汚染に係る環境上の条件につき人の健康を維持する上で望ましい基準(以下「環境基準」という。)を定めるものとされているところ,ダイオキシン類による大気の汚染に係る環境基準(以下「大気環境基準」という。)は,平成11年12月27日付け環境庁 持する上で望ましい基準(以下「環境基準」という。)を定めるものとされているところ,ダイオキシン類による大気の汚染に係る環境基準(以下「大気環境基準」という。)は,平成11年12月27日付け環境庁告示第68号により,年平均値0.6pg-TEQ/㎥以下と定められている。 イ廃棄物焼却に伴うダイオキシン類の排出を削減するため,平成9年に廃棄物処理法施行規則が改正され,産業廃棄物焼却施設(同法施行令7条3号,5号,8号,12号及び13号の2に掲げる施設)に適用される構造基準(同法施行規則12条の2第5項,4条1項7号)及び維持管理基準(同規則12条の7第5項,4条の5第1項2号)が強化された。上記改正後の主な構造基準及び維持管理基準として,本件施設にも適用されるものは,後記ウ及びエのとおりである。 そして,廃棄物処理法によれば,産業廃棄物処理施設を設置しようとする者は,当該施設が構造基準に適合しない限り,設置許可を受けることができず(同法15条の2第1項1号),許可を受けた後も維持管理基準を遵守する義務を負い(同法15条の2の2),これらの基準に違反した場合には,改善命令,使用停止命令,許可取消しの対象となる上(同法15条の2の6第1号,15条の3第2項),この命令違反については罰則が設けられている(同法26条2号)。 また,平成12年の廃棄物処理法及び同法施行規則改正により,産業廃棄物処理施設の設置許可の要件の1つとして,申請者が産業廃棄物処理施設の設置及び維持管理を的確に,かつ,継続して行うに足りる経理的基礎を有することが追加された(同法15条の2第1項3号,同法施行規則12条の2の3第2号)。旧厚生省は,その改正の趣旨を,「設置者が倒産するなどして,適正な維持管理が行われなくなることなどを防止するため」と説明している。設置者が経理 条の2第1項3号,同法施行規則12条の2の3第2号)。旧厚生省は,その改正の趣旨を,「設置者が倒産するなどして,適正な維持管理が行われなくなることなどを防止するため」と説明している。設置者が経理的基礎を有するという基準に適合しないと認められる場合には,改善命令,使用停止命令,許可取消しの対象となる上(同法15条の2の6第1号,15条の3第2項),この命令違反については罰則が設けられている(同法26条2号)。 ウ構造基準(ア)外気と遮断された状態で,定量ずつ連続的に廃棄物を燃焼室に投入することができる供給装置の設置(イ)次の要件を備えた燃焼室の設置a燃焼ガスの温度が800℃以上の状態で2秒以上滞留b外気と遮断c助燃装置の設置d燃焼に必要な空気を供給できる設備の設置(ウ)燃焼ガスの温度をおおむね200℃以下に冷却することができる冷却設備の設置(エ)ばいじんを除去する高度の機能を有する排ガス処理設備の設置(オ)燃焼ガス温度及び排ガス中のCO濃度の連続測定・記録のための装置の設置(カ)ばいじんを焼却灰と分離して排出・貯留できる設備の設置エ維持管理基準(ア)燃焼室への廃棄物の投入は,定量ずつ連続的に行うこと。 (イ)燃焼室中の燃焼ガス温度を800℃以上に保つこと。 (ウ)焼却灰の熱しゃく減量を10%以下とすること。 (エ)運転開始時には炉温を速やかに上昇させ,運転停止時には炉温を高温に保ち廃棄物を燃焼し尽くすこと。 (オ)集じん器に流入する燃焼ガスの温度をおおむね200℃以下に冷却すること。 (カ)冷却設備等にたい積したばいじんを除去すること。 (キ)排ガス中のCO濃度を100ppm以下とすること。 (ク)排ガス中のダイオキシン類の濃度を次の基準以下とすること。 a燃焼室の処理能力が4t/h以上の 等にたい積したばいじんを除去すること。 (キ)排ガス中のCO濃度を100ppm以下とすること。 (ク)排ガス中のダイオキシン類の濃度を次の基準以下とすること。 a燃焼室の処理能力が4t/h以上のもの0.1ng/㎥b同2t/h以上4t/h未満のもの1ng/㎥c同2t/h未満のもの5ng/㎥(ケ)燃焼ガス温度及び排ガス中のCO濃度を連続的に測定・記録すること。 (コ)排ガス中のダイオキシン類濃度を年1回以上測定・記録すること。 (サ)ばいじんを焼却灰と分離して排出・貯留すること。 (3)本件施設について(甲1,120,148,乙3,14の1・2・6ないし14,108,140,141,168の1,180)ア本件施設の構造及び設備本件施設の構造及び設備は,別紙図面1ないし16のとおりである。ただし,後記イのとおり,被告が廃棄物搬送装置をスキップコンベアからフレックスコンベアに変更したことから,別紙図面2及び3中,「スキップコンベア」とあるのは「フレックスコンベア」と読み替えるものとする。 (甲1の別紙6,乙108,180の2項)本件炉は,別紙図面9ないし11のとおりの構造を持ち,傾斜して回転する椀状の炉床内で廃棄物を混合攪拌させながら燃焼を継続させるという特徴を持つ。炉形式は,床燃焼方式のうち回転床炉に分類されるところ,床燃焼方式は,火格子では載積不能な物(例えば汚泥,粒状物)や,受熱融解して着火燃焼を行うような物の燃焼に適するとされる。(甲1別紙8の1頁,乙140の3頁,乙141の44頁)傾斜回転床炉は,遅くとも平成6年ころ,有限会社Cによって新たに開発された炉形式であり,本件施設以外では3つの施設において実際に稼働している。これらの施設に係る操業主体及び所在地は次のとおりである。 (甲120,乙6,168の1,弁論 ,有限会社Cによって新たに開発された炉形式であり,本件施設以外では3つの施設において実際に稼働している。これらの施設に係る操業主体及び所在地は次のとおりである。 (甲120,乙6,168の1,弁論の全趣旨)(ア)操業主体有限会社C所在地宮崎県延岡市(イ)操業主体D株式会社所在地愛媛県喜多郡○町(ウ)操業主体株式会社E所在地東京都国立市イ維持管理に関する計画被告は,本件施設の設置許可申請に当たって,本件施設の維持管理に関する計画(以下「維持管理計画」という。)に係る事項を,要旨次のとおりと定めた。(甲1別紙9)(ア)排ガスの性状ダイオキシン類濃度を0.1ng-TEQ/N㎥以下,CO濃度を100ppm以下,HCl濃度を150mg/N㎥以下とする(なお,以下では,本件施設の維持管理計画に係る事項として定められたこれらの数値を「維持管理計画値」という。)。 (イ)排ガスの性状の測定頻度ダイオキシン類濃度を年1回測定し,CO濃度を連続的に測定・記録し,HCl濃度を年2回測定する。 (ウ)処理能力に見合った産業廃棄物の処理a燃焼ガス温度,排ガスCO濃度及び炉内圧を確認し,適正な範囲に維持できるように廃棄物の投入量を調整する。 b炉内燃焼温度は,800℃以上を保持する。 炉内燃焼温度の管理値は,850℃とする。 c本件炉の運転状態を確認し,変動幅が少なくなるような廃棄物の投入を継続する。 (エ)廃棄物の投入方法a破砕可能な廃棄物(廃プラスチック類,紙くず,木くず,繊維くず,金属くず,ガラスくず及び陶磁器くず)については,投入前に破砕処理し,均一に混合した上,スキップコンベアで移送し,投入プッシャーによって炉内に投入する。 b廃油については,廃油供給ポンプから炉内に定量供給する。 c汚泥及び動植物性 については,投入前に破砕処理し,均一に混合した上,スキップコンベアで移送し,投入プッシャーによって炉内に投入する。 b廃油については,廃油供給ポンプから炉内に定量供給する。 c汚泥及び動植物性残さ(下記dのものを除く。)については,混合タンクで均一に攪拌混合した上,移送ポンプで炉内に定量供給する。 d汚泥及び動植物性残さのうち,密閉容器などに包装されているもの(廃食品など)については,スキップコンベアで移送し,投入プッシャーによって炉内に投入する。 e感染性産業廃棄物については,密閉容器のまま,エレベータコンベアで移送し,投入プッシャーによって炉内に投入する。 f炉内温度が低い場合(850℃以下)は,上記cの汚泥及び動植物性残さの投入を停止する。 g廃棄物の投入は,外気遮断構造を確実に使用する。 h廃棄物の炉内への投入は,定量ずつ投入し,炉内の燃焼状態を常に監視する。 (オ)燃焼ガスの温度管理(800℃以上の維持)a燃焼温度の管理値として,850℃を採用し,850℃前後の燃焼温度を維持する。 b800℃以下の場合は,自動で助燃バーナーを作動し,燃焼温度を800℃以上に維持する。 (カ)焼却灰の熱しゃく減量値の管理a定期的(月1回)に,焼却灰の熱しゃく減量値を確認する。 b熱しゃく減量値は,5%以下を管理値とする。 (キ)運転開始時における炉温の温度管理燃焼室の温度を800℃以上に上げ,その後,廃棄物を投入する。 (ク)運転開始時における炉温の温度管理助燃バーナーを作動させ炉温を800℃以上に保ちつつ,廃棄物を燃焼し尽くす。 (ケ)燃焼ガス温度の連続測定・記録燃焼室の温度を連続で測定し,記録する。 (コ)バグフィルターに流入する燃焼ガスの温度の管理噴霧する冷却水の量を自動制御し,バグフィルター入口温度を200 す。 (ケ)燃焼ガス温度の連続測定・記録燃焼室の温度を連続で測定し,記録する。 (コ)バグフィルターに流入する燃焼ガスの温度の管理噴霧する冷却水の量を自動制御し,バグフィルター入口温度を200℃以下に管理する。 (サ)バグフィルターに流入する燃焼ガスの温度の連続測定・記録バグフィルター入口温度を連続で測定し,記録する。 (シ)排ガス中のCO濃度の管理CO濃度計により,CO濃度を100ppm以下に管理する。 (ス)排ガス中のダイオキシン類濃度の管理a消石灰投入量,活性炭投入量を管理する。 bCO濃度を管理する。 c燃焼温度を管理する。 被告は,平成18年2月9日付け産業廃棄物処理施設軽微変更等届出書において,破砕処理後の廃棄物を投入プッシャーに連続的に投入させ,投入量をより適正に管理するため,及び粉じん対策の徹底のため,廃棄物搬送装置を,スキップコンベアからフレックスコンベア(急傾斜コンベア)に変更した(したがって,上記(エ)a及びdのスキップコンベアは,フレックスコンベアと置き換えられる。)。(甲148)ウ被告は,本件施設が構造基準に適合し,かつ,維持管理基準に従って本件施設を維持管理することができることについて,別紙1及び2のとおり説明している。(乙1の3の18頁,19頁)(4)被告と春日井市との公害防止協定(乙61,119)被告と春日井市は,平成17年4月7日,本件施設に係る被告の事業活動に関し,公害の防止に関する協定(以下「基本協定」という。)を締結した。 基本協定において,被告は,春日井市と別に締結する公害の防止に関する細目協定(以下「細目協定」という。)を遵守するものとし,そのために必要な措置を講ずるものとされ(基本協定4条),被告と春日井市は,平成19年3月28日,細目協定を締結したところ,細目協定にお する細目協定(以下「細目協定」という。)を遵守するものとし,そのために必要な措置を講ずるものとされ(基本協定4条),被告と春日井市は,平成19年3月28日,細目協定を締結したところ,細目協定において,本件施設からの排出ガスのダイオキシン類濃度の基準は,煙突排出口において,0. 1ng-TEQ/N㎥以下とされ,被告はこの基準を遵守するものとされている(細目協定1条1項)。 また,基本協定において,春日井市は,被告が基本協定及び細目協定を履行していないと認めたときは,被告に対し,改善等の必要な措置を講ずべきことを指示でき,被告はその指示に従い改善等の措置を講ずるものとされ(基本協定5条1項),春日井市は,上記措置によっても公害の防止効果が認められず,これにより,地域住民の健康若しくは生活環境に係る被害が生じ,又は生ずるおそれがあると認めるときは,被告に対し,本件施設の操業の全部又は一部を停止し,その原因究明等を命ずることができ,被告は直ちにその命令に従うものとされ(同条3項),被告は,上記命令を受けたときは,速やかに,原因究明を行い,必要な対策について計画書を作成し,春日井市と協議するものとし,被告は,当該協議が終了するまでの間,本件施設の操業を再開してはならないものとされている(同条4項)。 (5)本件施設の試運転の状況ア第1回試運転について(甲138,乙137,138,149,150)被告は,期間を平成19年10月22日から同年11月22日までと定めて本件施設の試運転を行うことを計画し,同年10月22日に試運転を開始したが,同年11月3日午後3時20分ころ,本件施設東屋外に設置された薬剤タンクから,充填中の中和薬剤(消石灰,活性炭及びろ過助剤)が噴出し,本件施設外まで飛散する事故が発生した。 事故を受けて,本件施設の廃棄物投入 3日午後3時20分ころ,本件施設東屋外に設置された薬剤タンクから,充填中の中和薬剤(消石灰,活性炭及びろ過助剤)が噴出し,本件施設外まで飛散する事故が発生した。 事故を受けて,本件施設の廃棄物投入に係るシステムは,同日のうちに全部停止された。 被告は,事故後直ちに,飛散した薬剤の回収及び清掃活動に当たり,後日,事故の原因を究明し,春日井市及び名古屋市と協議の上,周辺住民への説明会を開催するなどした。被告作成に係る報告書(乙137)によれば,事故の原因は,①薬剤タンクの残量の見極めの誤り,②薬剤の充填停止の指示が届かなかったこと,③薬剤の送りすぎにより,エアー抜き用バグフィルターから圧送空気を逃がしきれなくなり,圧送空気の圧力が高まったこと,③充填作業の監視活動が不十分であったこと,⑤外部業者との打合せが不十分であり,マニュアルの不徹底があったことにあり,被告は,事故の原因を踏まえて再発防止策をとりまとめた上,対策を講じた。 イ第2回試運転について(甲1,141,乙119,159,172,174)(ア)被告は,上記事故により休止された本件施設の試運転を平成20年3月4日から再開し,同月31日まで行うことを計画し,実施した。 この試運転中,愛知県及び春日井市により行政検査(各種の測定)が行われたところ,排ガス中のHCl濃度,敷地境界の騒音値(夜間,朝及び夕)及び排ガスの臭気指数(煙突の出口)の各測定値が,被告の維持管理計画値及び春日井市との細目協定による基準値(以下「協定値」という。)を超過した。すなわち,排ガス中のHCl濃度の維持管理計画値及び協定値が150mg/N㎥以下であるところ,測定値は,平成20年3月26日に愛知県が行った測定において240mg/N㎥となり,敷地境界の騒音値の維持管理計画値及び協定値が,夜間(午後10時か 値及び協定値が150mg/N㎥以下であるところ,測定値は,平成20年3月26日に愛知県が行った測定において240mg/N㎥となり,敷地境界の騒音値の維持管理計画値及び協定値が,夜間(午後10時から翌日午前6時まで)につき60デシベル以下,朝(午前6時から午前8時まで)及び夕(午後7時から午後10時まで)につき65デシベル以下であるところ,測定値は,同月3月25日から26日にかけて春日井市が行った測定において,夜間につき66デシベル,朝につき66デシベル,夕につき67デシベルとなり,排ガスの臭気指数(煙突の出口)の維持管理計画値及び協定値が30以下であるところ,測定値は,同月27日に春日井市が行った測定において35,同月31日に春日井市が行った測定において31となった。 また,同月31日午前10時ころから午後3時20分ころまでの間に,錆混じりの水滴が本件施設の隣地まで飛散する事故が発生した。 (イ)愛知県尾張県民事務所長は,平成20年4月3日付けで,被告に対し,周辺住民への説明及び再発防止策等を実施するとともに,再度事故が発生しないように,施設管理体制の整備,従業員教育等を徹底するよう勧告した。(甲141の7丁)春日井市長においても,同日付けで,被告に対し,同旨の勧告をした。 (同8丁)愛知県知事は,廃棄物処理法15条の2の6の規定に基づき,平成20年4月25日付けで,被告に対し,排ガス中のHCl濃度,敷地境界の騒音値及び臭気指数(煙突の出口)を維持管理計画値以下とすることを命令事項とする改善命令を発令した。(同25丁)春日井市長は,基本協定5条の規定に基づき,同日付けで,被告に対し,各種の測定値を維持管理計画値及び協定値以下とするための改善措置を講ずるよう指示した。(同28丁)(ウ)被告は,上記改善命令を受け,平成20年7月 協定5条の規定に基づき,同日付けで,被告に対し,各種の測定値を維持管理計画値及び協定値以下とするための改善措置を講ずるよう指示した。(同28丁)(ウ)被告は,上記改善命令を受け,平成20年7月4日,愛知県に対し,上記の測定値超過の原因と対策をまとめた改善計画書(乙172の1)を提出した。この改善計画書によると,HCl濃度が維持管理計画値及び協定値を超過した原因としては,①HCl濃度計の校正ミスにより表示値が下方に振れていたため,表示値を拠りどころとしていた中和薬剤の投入量が本来吹き込むべき量を下回っていたこと,②払落し圧力を降下させるというオペレーション上の変更により,ろ布表面の新たなケーキ層の形成が過小となったことの2点が主要因であり,他に,③破砕物投入が間欠的となっていたことにより,塩化水素の出口温度が激しい変動を伴うものとなったこと,④薬剤投入量の比例制御の基準線(75ppm[122mg/N㎥])において,計画値,協定値(150mg/N㎥)に対しての安全マージンが過小であったこと,⑤通過ガス量に対する薬剤の相対的な投入量が1系と2系とで差があったことなどが挙げられている。 被告は,同年8月9日までに,上記の改善計画書に係る改善対策工事及び錆混じりの水滴が飛散した事故に係る再発防止対策工事を実施し,完了させた。 ウ第3回試運転について(甲1,199,204,乙119,175,194)(ア)被告は,本件施設の試運転を平成20年9月9日から再開し,同年10月15日まで行うことを計画し,実施した。 この試運転中,愛知県により行政検査(各種の測定)が行われたところ,排ガス中のCO濃度の測定値が維持管理基準値を超過し,敷地境界の騒音値(昼間及び夜間)及び敷地境界の臭気指数の各測定値が被告の維持管理計画値を超過した。すなわち,排 (各種の測定)が行われたところ,排ガス中のCO濃度の測定値が維持管理基準値を超過し,敷地境界の騒音値(昼間及び夜間)及び敷地境界の臭気指数の各測定値が被告の維持管理計画値を超過した。すなわち,排ガス中のCO濃度の維持管理基準値が100ppm以下であるところ,測定値は,平成20年10月8日に愛知県が行った測定において106ppmとなり,敷地境界の騒音値の維持管理計画値が,昼間(午前8時から午後7時まで)につき70デシベル以下,夜間(午後10時から翌日午前6時まで)につき60デシベル以下であるところ,測定値は,同日午前11時から午後7時までの間に愛知県が行った測定において75デシベル,同日午後10時から同月9日午前6時まで間に愛知県が行った測定において69デシベルとなり,敷地境界の臭気指数の維持管理計画値が13以下であるところ,測定値は,同月8日に愛知県が行った測定において15となった。 また,試運転期間中の行政検査の際,被告が春日井市との細目協定に掲げられた搬出入時間外に重油及び消石灰を搬入したことが,愛知県により確認された。すなわち,細目協定において製品等の搬出入時間が午前8時から午後5時まで(日曜日及び祝日を除く。)とされているところ,被告は,平成20年10月9日(木)午前5時50分に重油の搬入を行い,同日午前6時20分に消石灰の搬入を行った。 (イ)愛知県知事は,廃棄物処理法15条の2の6の規定に基づき,平成20年12月25日付けで,被告に対し,排ガス中のCO濃度の維持管理基準値(100ppm)以下とすること,敷地境界の騒音値(すべての地点)及び敷地境界の臭気指数(すべての地点)を維持管理計画値以下とすることなどを命令事項とする改善命令を発令した。(甲204添付資料2)春日井市長は,基本協定5条の規定に基づき,平成20年1 の地点)及び敷地境界の臭気指数(すべての地点)を維持管理計画値以下とすることなどを命令事項とする改善命令を発令した。(甲204添付資料2)春日井市長は,基本協定5条の規定に基づき,平成20年12月25日付けで,被告に対し,環境関連法令を遵守するとともに,維持管理基準値,維持管理計画値及び協定値を遵守するために必要な措置を講ずるよう指示した。(甲199)(ウ)被告は,上記改善命令を受け,平成21年1月19日,愛知県に対し,上記の測定値超過の原因と対策をまとめた改善計画書(乙194)を提出した。 差止請求権の要件人は,社会生活を営む以上,相互の生存のための活動や社会経済活動の影響を全く免れることはできないことからすれば,自らの生命の安全・身体の健康に何らかの影響がありうるからといって,直ちに他人の活動を止めさせることはできず,生命の安全・身体の健康等を被侵害利益とする人格権に基づく差止請求権は,社会生活において受忍すべき限度を超えて生命の安全・身体の健康等の被害を受ける蓋然性があると認められる場合に,初めて行使が可能となるものというべきであり,また,その請求権の発生要件となる上記の点についての主張・立証責任は,民事訴訟の一般原則に基づき,請求権の存在を主張する者において負担すべきであるから,本件においては,本件施設の稼働により,本件施設からダイオキシン類等の有害物質が排出され,これが原告らの下に到達し,原告らの受忍限度を超えてその生命の安全・身体の健康が侵害される蓋然性があることなどについて,原告らにおいて立証すべきである。 もっとも,ダイオキシン類の排出という点についていえば,廃棄物処理法施行規則が,前記1(2)イのとおり廃棄物焼却に伴うダイオキシン類の排出を削減する目的で構造基準及び維持管理基準を強化したという経緯や,同 も,ダイオキシン類の排出という点についていえば,廃棄物処理法施行規則が,前記1(2)イのとおり廃棄物焼却に伴うダイオキシン類の排出を削減する目的で構造基準及び維持管理基準を強化したという経緯や,同法が,産業廃棄物処理施設に係る周辺地域の環境の保全及び環境省令で定める周辺の施設について適正な配慮がなされていることをも設置許可の要件としていること(同法15条の2第1項2号)などに照らすと,構造基準及び維持管理基準の遵守は,本件施設の設置許可を受けた被告において当然に果たさなければならない行政上の義務であると同時に,周辺住民に対する関係においても,その生命の安全及び健康を確保すべき責務を負うべきものと解されるから,被告において,本件施設が構造基準に適合し,かつ,本件施設を稼働させた場合に継続的に維持管理基準を充足できることを相当な資料,根拠に基づき立証しなければ(被告は,現在までに,廃棄物処理法14条6項の業許可を受けておらず,本件施設を本格稼働させる段階に至っていないため,維持管理基準の遵守の点については予測的判断とならざるを得ない。),本件施設から相当量のダイオキシン類が排出されることにより,原告らの受忍限度を超えてその生命の安全・身体の健康が侵害される蓋然性があることが事実上推定されるものというべきであり,被告において,本件施設が構造基準に適合し,かつ,本件施設を稼働させた場合に継続的に維持管理基準を充足できることを立証した場合には,上記事実上の推定は破れ,原告らにおいて,上記侵害の蓋然性があることについて更なる立証を行わなければならないと解される。 本件施設の構造及び設備上の構造基準及び維持管理基準の充足性について(1)前記争いのない事実等のとおり,被告が,平成13年5月23日,愛知県知事に対し本件施設の設置許可を申請したの 解される。 本件施設の構造及び設備上の構造基準及び維持管理基準の充足性について(1)前記争いのない事実等のとおり,被告が,平成13年5月23日,愛知県知事に対し本件施設の設置許可を申請したのに対し,愛知県知事は,平成16年4月28日,本件施設の設置許可処分をしたものであるところ,証拠(甲67,68)によれば,その設置許可処分に当たっては,平成13年8月1日から平成16年3月22日にかけて,12回にわたり,専門家によって構成される愛知県廃棄物処理施設審査会議による審査会議が行われており,専門的科学的知見に基づく審査がなされたことが認められる。 廃棄物処理法によれば,都道府県知事は,産業廃棄物処理施設の設置に関する計画が環境省令(同法施行規則)で定める技術上の基準に適合していると認めるときでなければ,その設置許可をしてはならないとされているところ(同法15条の2第1項1号),前記1(2)ウの構造基準は,同法施行規則が定める産業廃棄物処理施設に係る技術上の基準のうち,産業廃棄物焼却施設(同法施行令7条3号,5号,8号,12号及び13号の2に掲げる施設)に適用されるものであり,上記の「環境省令で定める技術上の基準」に含まれる関係にある。 そうすると,前記1(3)アの認定事実に,本件施設の設置許可処分が上記のとおり専門的科学的知見に基づく審査を経た上でなされていることを併せ考えれば,本件施設が構造基準に適合すること,及び,被告により不適正な維持管理がなされない限り,継続的に維持管理基準を充足することができることが一応推認されるというべきであるが,原告らは,それぞれ理由を示しながら,本件炉の構造等に関して種々の問題点を指摘し,本件施設が構造基準に適合せず,あるいは,本件施設の有する構造及び施設を前提にしても維持管理基準を充足することができ 原告らは,それぞれ理由を示しながら,本件炉の構造等に関して種々の問題点を指摘し,本件施設が構造基準に適合せず,あるいは,本件施設の有する構造及び施設を前提にしても維持管理基準を充足することができない旨主張するので,構造基準及び維持管理基準の充足性について,上記の一応の推認を妨げる事由があるか否か,以下検討を加えることとする(本件施設を稼働させた場合に継続的に維持管理基準を充足できるか否かという点については,①客観的側面として,本件施設の有する構造及び設備を前提に,これを適正に稼働させた場合において維持管理基準を充足することができるかという問題と,②主観的側面として,被告が本件施設の処理能力を超えて廃棄物を焼却するなどの不適正な処分や維持管理を行い,維持管理基準に違反するような事態が生じないかという問題に分けて考えることができ,②の点については後記4で別途検討を加える。 なお,上記のとおり,専門的科学的知見に基づく審査を経た上で本件施設の設置許可処分がなされていることにより,本件施設の構造及び設備の構造基準及び維持管理基準への充足性について一応の推認が働くとはいっても,事実上の,かつ,一応のものであって,被告においては,原告らから理由を示して指摘された種々の問題点について,相当な資料,根拠に基づいて,それらが構造基準及び維持管理基準の充足性を妨げる事由に当たらないことを立証すべきである。)。 (2)燃焼室熱負荷,燃焼室容積及び燃焼排ガスの滞留時間についてア燃焼室熱負荷について原告らは,産業廃棄物焼却炉の燃焼室熱負荷については15万kcal/㎥・h以上30万kcal/㎥・h未満を採用すべきであり,それを前提にすれば,本件炉において被告が届け出た焼却能力(1.8t/h)よりも多くの廃棄物を焼却することが可能であり,届出焼却量を超えた /㎥・h以上30万kcal/㎥・h未満を採用すべきであり,それを前提にすれば,本件炉において被告が届け出た焼却能力(1.8t/h)よりも多くの廃棄物を焼却することが可能であり,届出焼却量を超えた焼却処理によって有害な排ガスの排出がもたらされる旨主張する。 証拠(乙42,90)によれば,燃焼室熱負荷とは,燃焼室単位容積当たり・単位時間当たりのごみの発生熱量をいい,焼却炉形式,構造,炉規模,焼却方法,ごみ質等を考慮し,実績等を勘案して決められるものであり,上記のような多くの条件を勘案して,経験的に定められるものであること,この数値は火炎の充満度を示す指標でもあることから,燃焼室が小さく燃焼室熱負荷の大きすぎる設計では,燃焼室に火炎が充満し,炉内が高温となって炉壁の損傷を早めることになるほか,炉内での滞留時間が不足することによって可燃ガスの燃焼が完結せず,ダイオキシン類の分解にも不利となり,また炉内が高温となるため,炉壁等でのクリンカ(炉壁等での局所的な高温部において焼却灰が溶融固化する現象をいう。)の発生の機会が多くなること,他方,燃焼室が過大で燃焼室熱負荷の小さすぎる設計では,炉壁からの放熱が大きいため炉温が低下する上,火炎の充満度が少ないことから,殊に低質ごみの場合には燃焼が不安定となり,焼却灰の熱しゃく減量が悪くなることが認められる。 しかるところ,旧厚生省が定めていた「ごみ処理施設構造指針」では,24時間稼働の連続燃焼式焼却炉について,8万ないし15万kcal/㎥・hの燃焼室熱負荷が標準とされていること,同指針の解説書を引き継いだ社団法人全国都市清掃会議・財団法人廃棄物研究財団編集発行に係る「ごみ処理施設整備の計画・設計要領」(乙42)でも,連続運転焼却炉の場合,一般的には15万kcal/㎥・h以下の値が採用されているとされ 法人全国都市清掃会議・財団法人廃棄物研究財団編集発行に係る「ごみ処理施設整備の計画・設計要領」(乙42)でも,連続運転焼却炉の場合,一般的には15万kcal/㎥・h以下の値が採用されているとされていることが認められる(甲28,乙42,乙90添付資料1)。ごみ処理施設とは通常一般廃棄物処理施設をいうものであること(廃棄物処理法8条)からすると,上記指針の定めは一般廃棄物の焼却施設を対象とするものと考えられるが,産業廃棄物焼却施設について別異に扱うべき合理的理由は見出し難い。この点に関し,Fは,その意見書(甲28)において,産業廃棄物焼却施設では,都市ごみの焼却施設と異なり,廃棄物の種類が様々であるため発熱量が大きく異なるため燃焼変化が大きくなり,炉内を十分に高温にして対応する必要があることから,15万kcal/㎥・h以上の燃焼室熱負荷を採用すべき旨の意見を述べるが,少なくとも本件施設については,燃焼室熱負荷の値を14万8770kcal/㎥・hとして設計されていることは明らかであるところ,上記設計値は,15万kcal/㎥・hとの乖離が大きくない上,後記(5)アに説示するとおり,破砕可能な廃棄物(基準ごみ)を投入前に可能な限り混合し,攪拌した上で破砕処理するなどの運転管理により炉内温度を適正温度に保ち,総発熱量を一定に保つという制御方法をとっており,これによって燃焼の安定化が図られるといえ,本件施設については,そうした設計値の範囲内において安定した燃焼状態を保ちつつ運転を継続することが十分に可能と考えられるから,上記意見は採用できない。 また,環境省が都道府県・各政令市廃棄物担当課に宛てた平成14年11月26日付け「廃棄物焼却施設の能力算定方法について(情報提供)」と題する事務連絡文書(乙90添付資料2)では,廃棄物処理法15条の規定 環境省が都道府県・各政令市廃棄物担当課に宛てた平成14年11月26日付け「廃棄物焼却施設の能力算定方法について(情報提供)」と題する事務連絡文書(乙90添付資料2)では,廃棄物処理法15条の規定による設置許可が必要な産業廃棄物焼却施設の処理能力の算定についても,一般廃棄物処理施設と同様に,焼却炉メーカー等から提出された能力計算書等について審査し,その妥当性を判断することで差し支えないとされている。 そうすると,本件施設について,その設置許可処分が前示のとおり専門的科学的審査を経た上でなされていることを併せ考えれば,本件炉の燃焼室熱負荷が14万8770kcal/㎥・hとされていることは不合理でなく,15万kcal/㎥・h以上30万kcal/㎥・h未満を採用すべきことにはならないというべきである。 したがって,原告らの上記主張は採用できない。 イ燃焼室容積について原告らは,ロータリー式自動灰出し装置,二次燃焼室(別紙図面11の斜線部分)及び炉の椀状部についても本件炉の燃焼室容積に含めるべきであるにもかかわらず,被告がこれらの容積を含めていないため,被告が届け出た燃焼室容積は不当に過小なものとなっており,本件炉の実際の焼却能力が1.8t/hを上回ることから,届出焼却量を超えた焼却処理によって有害な排ガスの排出がもたらされる旨主張する。Fも,本件炉の燃焼室容積につき,原告らの主張と同旨の意見書(甲28,乙109)を提出している。 証拠(乙42,90添付資料1)によれば,燃焼室容積とは,炉材等で囲まれた燃焼空間をいい,ごみがない状態における火格子上の全容積で,ガス減温が始まる手前まで(あるいは耐火物被覆部上端まで)をとるものとされていることが認められる。 まず,ロータリー式自動灰出し装置について,Fの意見書(甲28)では,同装置の内部が耐 の全容積で,ガス減温が始まる手前まで(あるいは耐火物被覆部上端まで)をとるものとされていることが認められる。 まず,ロータリー式自動灰出し装置について,Fの意見書(甲28)では,同装置の内部が耐火物で被覆されており,未燃の廃棄物をそこで高温燃焼させる仕組みになっている旨指摘されている。しかし,未燃のまま回転床から落ちる廃棄物の存在及び数量を明らかにしうる証拠はなく,上記のような仕組みになっているとは認め難いし,Gの意見書(乙90)においても,回転床で燃焼し切れなかった廃棄物が炭となって,同装置内に落下する可能性があるが,その量が極めて少量である旨指摘されている。そして,同装置は,内部が耐火物で被覆されているものの,その構造上もえがらを保管庫まで自動的に移送する目的で設置されているものと認められる上(乙1の3の18頁,19頁),回転床の下部に位置すること(本件炉において「火格子」に相当するものは椀状の回転床と考えられる。)に照らすと,同装置を燃焼に寄与する空間と見るべきではないから,燃焼室容積に含めるべきとはいえない。 次に,別紙図面11の斜線部分について,Fの意見書(乙109)では,小型焼却炉であっても,そうでない焼却炉であっても,二次燃焼炉を燃焼室容積に含めるべき旨の意見が述べられ,Gも,その意見に同調している(乙86)。しかし,Gが指摘するように,同斜線部分は「二次燃焼炉」には当たらないと考えられるから(同斜線部分に設置された二次バーナーは,二次室出口温度を800℃以上に保つために作動されるものであり,基本的に二次室出口温度が炉内上部温度より高温になることがないということが,試運転のデータにも現れている。),これを燃焼室容積に含めるべきことにはならない。また,一次燃焼室と二次燃焼室とが分かれる焼却炉において,燃焼室熱負荷が一 温度より高温になることがないということが,試運転のデータにも現れている。),これを燃焼室容積に含めるべきことにはならない。また,一次燃焼室と二次燃焼室とが分かれる焼却炉において,燃焼室熱負荷が一次燃焼室の計算値であるとする文献もあり(乙122添付資料3),この点からも,被告が一次燃焼室のみを燃焼室容積に含める形で本件炉の設計計算をしていることが不合理とはいえないというべきである。 次に,炉の椀状部について,Gの意見書(乙73)では,「解釈が分かれる」としつつ,本件炉が椀状の回転床の底から空気を送り込む構造になっていないこと,燃焼中の廃棄物が椀状部の半分程度を常時占有することから,椀状部は燃焼空間でないと判断するのが相当である旨の意見が述べられている。しかし,後記(4)のとおり,本件炉は下段送風機により回転床内に一次燃焼用の空気が供給される構造になっており,回転床内において廃棄物の燃焼反応が生ずることに変わりはないと考えられるし,また,上記のとおり燃焼室容積については「ごみがない状態における火格子上の全容積」をとるとされていることに照らすと,燃焼室は廃棄物が燃焼床にないときの容積をとるべきと考えられるから,椀状部の一部を廃棄物が占有していることが,椀状部を燃焼空間から除外する理由にはならないというべきである。したがって,被告が炉の椀状部を燃焼室容積に含めていない点は,合理的根拠に欠けるといわざるを得ず,これを燃焼室容積に含めるのが相当と考えられる。 そこで,椀状部の容積を含めた燃焼室下部の容積をV3´とし,椀状部の容積に原告ら主張の5㎥を採用すると,V3´は20.58㎥(15.58+5=20.58)となり,全体の燃焼室容積は,次式のとおり,76.96㎥となる。 V1+V2+V3´=1.58(㎥)+54.8(㎥)+20.58(㎥)= 用すると,V3´は20.58㎥(15.58+5=20.58)となり,全体の燃焼室容積は,次式のとおり,76.96㎥となる。 V1+V2+V3´=1.58(㎥)+54.8(㎥)+20.58(㎥)=76.96(㎥)そうすると,燃焼室熱負荷の値を14万8770kcal/㎥・hで固定させた場合には,燃焼室容積と焼却能力は比例する関係にあるから{燃焼室熱負荷(kcal/㎥・h)=廃棄物の低位発熱量(kcal/kg)×焼却能力(kg/h)÷燃焼室容積(㎥)},計算上,焼却能力に1.069倍(76.96/71.96=1.069)の余裕があることになる。 しかしながら,焼却能力が200kg/h未満であるなどの事由により法令上設置許可を要しない小型焼却炉(廃棄物処理法施行令5条1項,7条参照)と異なり,廃棄物処理法15条の規定に基づく設置許可を要する産業廃棄物焼却施設にあっては,構造基準として設置することが要求される廃棄物の定量供給装置や排ガス処理設備等の処理能力によってその焼却能力も相当程度限定されると考えられる上,本件施設については,廃棄物の受入量を重量で記録するほか,破砕物の搬送過程等に廃棄物の処理量を計測し,かつ記録する計量器を具備していることが認められる(乙122)。そして,被告は本件施設の操業状況に関する各種の記録を公開する姿勢を示しており(現に,試運転結果報告書(乙179)等において廃棄物の処理量のデータが提出されている。),法令上も,処分した廃棄物の各月ごとの種類及び数量を含む維持管理に関する記録を利害関係者の閲覧に供することが義務付けられているのであるから(廃棄物処理法15条の2の3,8条の4,同法施行規則12条の7の3第1号),被告が本件施設の処理能力を超えて廃棄物の焼却処理をする危険性は,到底認めることができない。 したがっ ているのであるから(廃棄物処理法15条の2の3,8条の4,同法施行規則12条の7の3第1号),被告が本件施設の処理能力を超えて廃棄物の焼却処理をする危険性は,到底認めることができない。 したがって,届出焼却量を超えた焼却処理によって有害な排ガスの排出がもたらされる旨をいう原告らの上記主張は,採用できない。 ウ燃焼排ガスの滞留時間について原告らは,1.8t/hを超える廃棄物の処理がなされることを前提に,燃焼ガスの滞留時間を2秒以上確保できず,構造基準に適合しない旨主張する。 しかし,被告が本件施設の処理能力を超えて廃棄物の焼却処理をする危険性を認めることができないのは前示のとおりであるから,原告らの主張は前提を欠き失当である。 そして,1.8t/hの処理能力の範囲内での廃棄物処理を想定した場合,燃焼室出口湿り排ガス量は2万3722N㎥/hであるから(乙14の2の総括一覧表),仮に,燃焼ガス滞留時間の計算において考慮すべき燃焼室の範囲を原告ら主張のとおり61.24㎥としたとしても,次式のとおり,800℃で2.37秒,944℃で2.08秒と,滞留時間の基準に適合する。 800℃の条件下で,燃焼ガスが1秒間に燃焼室内を通過する量23,722(N㎥/h)×(800+273)/273=93,237(㎥/h)=25.89(㎥/s)燃焼排ガスの滞留時間(800℃)61.24(㎥)÷25.89(㎥/s)=2.37(s)944℃の条件下で,燃焼ガスが1秒間に燃焼室内を通過する量23,722(N㎥/h)×(944+273)/273=105,750(㎥/h)=29.38(㎥/s)燃焼排ガスの滞留時間(944℃)61.24(㎥)÷29.38(㎥/s)=2.08(s)したがって,原告らの上記主張は採用できない。 (3)投入方法の問題点について原告ら =29.38(㎥/s)燃焼排ガスの滞留時間(944℃)61.24(㎥)÷29.38(㎥/s)=2.08(s)したがって,原告らの上記主張は採用できない。 (3)投入方法の問題点について原告らは,廃棄物を高温燃焼中の炉床にプッシャーによって直接落とし入れるという本件炉の廃棄物投入方式が,間欠的であり,燃焼の変化を少なくするという原則に反するものであって,平均では十分酸素濃度があったとしても一時的又は局所的に酸素不足による不完全燃焼が起こってCO濃度及びダイオキシン類濃度が高くなり,あるいは,燃焼が不完全となってダイオキシン類濃度が高くなる旨主張する。 確かに,プッシャーによる投入は,その構造上間欠的にならざるを得ないものであるが,前記認定のとおり,被告は廃棄物搬送装置をスキップコンベアからフレックスコンベアに変更し,破砕処理後の廃棄物を少量ずつ連続的にプッシャーに送り込むことが可能になっていることが認められる。そして,証拠(乙194)によれば,被告は,フレックスコンベアによって搬送する廃棄物の1回当たりの所定計量を10kgと設定していること,第3回試運転において,破砕不良の廃棄物が搬送され,最大20kg程度の廃棄物が1回にまとまって投入される現象が生じていたことから,①定量切り出し装置に層厚調整プッシャーを設け,送り出す破砕物の層厚を確実に100mm前後とする,②計量器内の破砕物重量が所定重量近くになった場合の定量切り出し装置の減速量を-40%に変更し,所定重量を超えないようにする,③破砕物の長辺が200mmを超えるものの割合がコンベアー(破砕機からの排出用)上の目視により30%以上認められた場合には,破砕機の能力の範囲内で2度破砕するなどの対策を講ずることとしていることが認められる。 このように,本件施設においては,投入ロットを (破砕機からの排出用)上の目視により30%以上認められた場合には,破砕機の能力の範囲内で2度破砕するなどの対策を講ずることとしていることが認められる。 このように,本件施設においては,投入ロットを少量化することにより燃焼状態の変化を少なくするための対策が講じられているといえる。 加えて,実際に本件施設を稼働させた場合にダイオキシン類濃度及びCO濃度が維持管理基準を超過するかという点については,後記(7)及び(8)でそれぞれ検討するが,その検討に照らしても,本件炉の廃棄物投入方式が,維持管理基準に適合しないことに結び付くような欠陥であると認めることはできない。 したがって,原告らの上記主張は採用できない。 (4)空気供給の不備について原告らは,本件炉には,一次燃焼用の空気供給口が設けられていない上,椀状の回転床の回転のみによって,回転床の下部にある廃棄物にも十分な空気が常に行き渡るほどの攪拌が生ずることは期待できないため,回転床の下部にある廃棄物について,不完全燃焼となり,ダイオキシン類等の有害物質が発生する危険性が高い旨主張する。 しかし,証拠(乙140)によれば,本件炉においては,下段送風機の送風管のノズルが椀状の回転床の上部に向けて空気を送り込む形で配置されていることが認められる。そして,本件炉の回転床は常用運転時に3ないし6rpm(回転/分)で回転することが認められることから(甲1別紙6-9),ある時点で回転床の下部にあった廃棄物は遅くとも10秒後には上部まで移動し(3rpmで回転させた場合),それが重力によって落下する際に空気が供給されることとなる。そうすると,本件炉においては下段送風機が一次燃焼用の空気が供給する役割を果たしているものといえ,十分な攪拌が期待できず不完全燃焼となるという原告らの主張は根拠に乏しいものといわ されることとなる。そうすると,本件炉においては下段送風機が一次燃焼用の空気が供給する役割を果たしているものといえ,十分な攪拌が期待できず不完全燃焼となるという原告らの主張は根拠に乏しいものといわざるを得ない。 なお,第3回試運転中の行政検査において,一時的に過燃焼又は燃焼の不活発化が生じている時間帯を除いて,CO濃度瞬時値が1ないし20ppmという低い値で推移していることからも,空気供給の不備によって不完全燃焼が生ずるものとは認め難い。すなわち,証拠(乙194)によれば,CO濃度の瞬時値が100ppmを超えるピークを示す場合には,炉内温度が上昇し酸素濃度が低下する傾向にあり,過燃焼により酸素不足に陥った場合と,炉内温度が低下し,酸素濃度が上昇する傾向にあり,燃焼が不活発化した場合の2つの場合があることが認められるところ,第3回試運転において行政検査が行われた平成20年10月8日のCO濃度瞬時値を見ると,100ppmを度々超過しており,ピークを記録した時間帯の中には5000ppmに達するものもあるが,ピークに達した後最長でも5分後には100ppm以下に戻っており,ピーク及びその付近の時間帯を除いては,ほとんど1ないし20ppmという低い瞬時値で推移しているものである(甲185の4,乙186,194)。 したがって,原告らの上記主張は採用できない。 (5)発熱量調整の不備・非現実性についてアまず,原告らは,被告の計画における廃棄物の構成比及び低位発熱量の算定は,現実的・具体的な根拠に基づいたものではないこと,現実に混合焼却における廃棄物1kg当たりの低位発熱量の値が一定したもの(5947kcal/kg)とならないことを問題とする。 しかしながら,以下の理由から,これらの点は,本件施設の維持管理上大きな支障となるとは考え難いというべき g当たりの低位発熱量の値が一定したもの(5947kcal/kg)とならないことを問題とする。 しかしながら,以下の理由から,これらの点は,本件施設の維持管理上大きな支障となるとは考え難いというべきである。 (ア)証拠(乙14の2,135)によれば,次のとおり認められる。 被告は,本件施設の運転管理のため,焼却対象物を,高発熱量のごみ(廃油),基準ごみ(固形状廃棄物である木くず,廃プラスチック類,紙くず,繊維くず,金属くず並びにガラスくず及び陶磁器くず),低発熱量のごみ(汚泥及び動植物性残さ),その他(感染性産業廃棄物)の4種類に分けている。被告は,焼却する廃棄物の種類別処理量(合計は1800kg/h)を,廃油につき180kg/h,木くずにつき670kg/h,廃プラスチック類につき630kg/h,紙くずにつき59kg/h,繊維くずにつき12kg/h,金属くずにつき5kg/h,ガラスくず及び陶磁器くずにつき4kg/h,汚泥につき50kg/h,動植物性残さにつき50kg/h,感染性産業廃棄物につき140kg/hと計画しているため,この計画による高発熱量のごみの割合(重量ベース)は10%(180/1800=0.1),基準ごみの割合は76.67%{(670+630+59+12+5+4)/1800=0.7667},低発熱量のごみの割合は5.56%{(50+50)/1800=0.0556},その他のごみの割合は7.78%(140/1800=0.0778)となる。 被告は,混合焼却における単位時間当たりの廃棄物の総発熱量を一定に保ち,かつ可能な限り1070万4600kcal/h{5,947(kcal/kg)×1,800(kg/h)=10,704,600(kcal/h)}に近づけて焼却処理をするため,以下の方法による運転管理を行うことととしている。すな 4600kcal/h{5,947(kcal/kg)×1,800(kg/h)=10,704,600(kcal/h)}に近づけて焼却処理をするため,以下の方法による運転管理を行うことととしている。すなわち,①全体の4分の3程度を占める基準ごみを,可能な限り混合し,攪拌した上で,100mm以下に破砕し,定量切出し装置から一定量ずつ送り込んで炉内に投入し,②実際には基準ごみの混合比率は必ずしも一定とならず,基準ごみの平均発熱量が変動し,その変動に応じて炉内温度が上下動することから,炉内温度を適正温度(850℃から950℃までの範囲内)に保つため,炉内温度が低下傾向にある場合には定量切出し装置による基準ごみの送り量を高速へシフトさせ,上昇傾向にある場合には送り量を低速へシフトさせ,適正温度にある場合には標準速を維持し(なお,定量切出し装置による送り量は高速,標準速,低速の3速で管理されており,速度変更は,インバーターで自動的になされる。),③基準ごみの平均発熱量が定量切出し装置の調整幅を超えて高くなった場合,すなわち,送り量を低速化する調整にもかかわらず炉内温度が上昇傾向となった場合には,低発熱量のごみを自動的に投入し,④逆に,基準ごみの平均発熱量が定量切出し装置の調整幅を超えて低くなった場合,すなわち,送り量を高速化する調整にもかかわらず炉内温度が低下傾向となった場合には,高発熱量のごみを燃焼させる(廃油バーナーを自動的に作動させて廃油を燃焼させる)という運転管理を行うこととしている。 (イ)このように,本件施設においては,基準ごみの混合比率が実際には一定とならず,基準ごみの平均発熱量が変動することを前提として,上記の方法による運転管理により炉内温度を適正温度に保ち,総発熱量を一定に保つという制御方法をとっているのであるから,現実に混 実際には一定とならず,基準ごみの平均発熱量が変動することを前提として,上記の方法による運転管理により炉内温度を適正温度に保ち,総発熱量を一定に保つという制御方法をとっているのであるから,現実に混合焼却における廃棄物1kg当たりの低位発熱量の値を一定にする必要はなく,また,現実に焼却する廃棄物の構成比についても,計画値に近い方が望ましいとはいえるものの,必ずしも計画どおりの構成比が実現される必要はないものである。 イ次に,原告らは,汚泥,動植物性残さ,金属くず,ガラスくず等の廃棄物について,専焼計算における低位発熱量が各廃棄物自体の性状を正しく反映した数値となっていないことを問題とする。 しかし,被告は,焼却予定物の種類ごとにさせた場合の本件施設の焼却能力を計算上明らかにする必要があったところ,上記の各廃棄物は,無機物ないしほとんどが水分で組成されるものであって,そもそも単体で焼却させることが不可能であるから,比較的総発熱量を調整しやすい廃油と混焼させた場合を仮定して計算をしたにすぎず(乙14の2,135),このことが本件施設の運転管理上問題となるものでもない。 ウ次に,原告らは,各廃棄物排出事業者から受け入れる廃棄物の種類及び量やその混合割合をマニフェスト伝票と呼ばれる管理票によって把握・管理することは不可能であり,また,本件施設に搬入された廃棄物の十分な備蓄スペースがないことから,混合後の廃棄物の性状を一定にすることは不可能である旨主張する。 しかし,産業廃棄物管理票(以下単に「管理票」という。)は,産業廃棄物排出業者に対して,その廃棄物の処理を他人に委託する場合に交付することが義務付けられているものであり(廃棄物処理法12条の3),これによって廃棄物の処理の流れを把握することにより,不法投棄等の不適正処理を防止するものであ 棄物の処理を他人に委託する場合に交付することが義務付けられているものであり(廃棄物処理法12条の3),これによって廃棄物の処理の流れを把握することにより,不法投棄等の不適正処理を防止するものである。そして,管理票には,運搬又は処分を委託した産業廃棄物について,当該委託に係る産業廃棄物の種類及び数量を記載すべきこととされ(同法12条の3第1項),管理票の交付は,当該産業廃棄物の種類ごとに交付することとされ,引渡しに係る当該産業廃棄物の運搬先が2箇所以上である場合には,運搬先ごとに交付することとされるところ(同法施行規則8条の20),虚偽の管理票を交付した産業廃棄物排出業者については都道府県知事による措置命令の対象となり(同法19条の5第1項3号イ),罰則の対象ともなっている(同法29条3号)ことからすれば,管理票の記載には一定程度の信頼性があるものと考えられる。また,廃棄物の種類ないし性状は,廃棄物の処理単価を決める際の重要な要素となるものであり,被告が排出業者から廃棄物を受け入れるに当たっては,廃棄物の種類ないし性状を全く確認することなく排出業者及び運搬業者との間で契約を締結することは考え難く,そうした確認作業を経ることによって,管理票に虚偽の記載がなされる危険性は低減されるといえる。加えて,十分な備蓄スペースがない点については,排出業者との契約時に最終的な混合割合を考慮して契約することでも対応が可能である。 本件施設の運転管理に当たって,そもそも現実に混合焼却における廃棄物1kg当たりの低位発熱量の値を一定にする必要がないことは,前記ア(イ)で説示したとおりであるが,管理票及び被告自身の確認作業を通じて本件施設に搬入される廃棄物の種類及び量を把握しておけば,運転管理の基本となる基準ごみの組成をできる限り均一にするよう調整をするこ (イ)で説示したとおりであるが,管理票及び被告自身の確認作業を通じて本件施設に搬入される廃棄物の種類及び量を把握しておけば,運転管理の基本となる基準ごみの組成をできる限り均一にするよう調整をすることも相当程度可能となり,発熱量の安定化が図られるといえる。そうすると,混合後の廃棄物の性状を厳格な意味において一定にすることが必ずしもできないことは,原告らの主張するとおりであるが,それとて本件施設の維持管理上大きな支障となるとは考え難いというべきである。 したがって,原告らの上記主張は採用できない。 (6)燃焼ガス温度についてア原告らは,試運転データに現れた二次室出口温度が火炎の輻射熱の影響を受けた見かけ上の温度であって真のガス温度でなく,ボイラー出口付近のガス温度に82℃を加えると二次室出口の真のガス温度が推定でき,これが800℃に達しておらず,維持管理基準に適合しない旨主張する。証人Fも,同旨の証言をし,同旨の意見書(甲153)を提出している。 しかし,82℃というのは,本件炉の設計計算書(乙14の2)における二次室出口温度とボイラー出口温度との差であり,設計計算書においては,ボイラーの水壁面に対する総括伝熱係数(高温流体[排ガス]から低温流体[水]に対する熱の伝わりやすさを示す係数であり,単位伝熱面積当たり・単位時間当たり・単位温度差当たりの貫流熱量を意味する。)が35kcal/㎡・h・℃とされているところ(乙14の2の7-1-7頁),この値は,被告が,ボイラーの使用継続に伴いその伝熱面に付着物が付くことにより,新品のボイラーの約半分程度まで伝熱効果が低下することを見越して,あらかじめ低く設定したものであること,被告は,本件施設の稼働直後の時点では総括伝熱係数が70kcal/㎡・h・℃程度になると予測していたことが認められる(乙 まで伝熱効果が低下することを見越して,あらかじめ低く設定したものであること,被告は,本件施設の稼働直後の時点では総括伝熱係数が70kcal/㎡・h・℃程度になると予測していたことが認められる(乙167)。証人Fも,一般論として汚れの付着によりボイラーの機能が低下すること,汚れていない管の場合,伝熱面が新しいときの熱伝達係数を用いることは認めており(証人F・平成20年8月5日尋問調書2頁,21頁),上記の予測は不合理なものではない。 加えて,実際にボイラーを通過する排ガス量に計算値との差があることが考慮されなければならない。設計計算書においては,焼却炉出口における湿り排ガス量を2万3722N㎥/hとしてボイラー出口のガス温度が計算されているところ(乙14の2の7-1-7頁・1-36丁の総括一覧表),原告らが二次室出口温度とボイラー出口温度との温度差を問題とする平成19年11月1日にあっては,廃棄物処理量は最大で1時間当たり1363kgであり100%の稼働運転ではなかったことが認められる(甲139)。証拠(甲162,乙167)によれば,同日の排ガス量を測定したデータは存在しないものの,平成20年3月14日にあっては乾きガス量が1万8900N㎥/hであったこと,平成20年3月15日にあっては乾きガス量が1万8800N㎥/hであったこと,同月14日の廃棄物投入量は最大1779kgであったこと,同月15日の廃棄物投入量は最大1597kgであったことが認められる。そうすると,同月14日及び15日の運転負荷は平成19年11月1日と同程度あるいはそれ以上であったといえ,平成19年11月1日の乾きガス量を1万8850N㎥/hと想定しても不合理ではない。そして,証拠(乙14の2の7-1-2頁)によれば,乾きガス量と湿りガス量の比はおおむね12.19 上であったといえ,平成19年11月1日の乾きガス量を1万8850N㎥/hと想定しても不合理ではない。そして,証拠(乙14の2の7-1-2頁)によれば,乾きガス量と湿りガス量の比はおおむね12.19:13.18となることが認められるから,同日の湿りガス量は2万0381N㎥/h(18,850×13.18/12.19=20,381)と想定できる。 そこで,総括伝熱係数を70kcal/㎡・h・℃,湿りガス量を2万0381N㎥/hとすると,二次室出口温度が944℃である場合のボイラー出口温度は,次式のとおり,753℃となる(なお,水冷壁への総伝熱量は,総括伝熱係数に比例するので,総括伝熱係数を35kcal/㎡・h・℃とした場合の水冷壁への総伝熱量である68万8046kcal/hの2倍となる(乙14の2の7-1-7頁)。)。 二次室出口温度-水冷壁への総伝熱量/(湿りガス量×ボイラー出口ガス比熱)=944(℃)-{688,046(kcal/h)×2}/{20,381(N㎥/h)×0.353(kcal/N㎥・℃)}=944(℃)-191(℃)=753(℃)原告らの主張するように,平成19年11月1日のボイラー出口温度は700℃前後であり(乙147),なお50℃程度の開きがあるが,この点に関し,被告は,第2回試運転の排ガス温度のデータにおいて,後方に位置する排ガス急冷塔入口温度がボイラー出口温度よりも40℃ないし80℃程度高くなるという逆転現象が現れていることから,平成19年11月1日時点においても同様に,ボイラー出口温度を測る熱伝対の先端受熱部分が排ガス温度を測るのに適切な位置まで差し込まれていなかったため,実際のガス温度より40℃ないし80℃程度低く表示されていた可能性がある旨主張し,これに沿うHの意見書(乙167)が提出されている。これ ガス温度を測るのに適切な位置まで差し込まれていなかったため,実際のガス温度より40℃ないし80℃程度低く表示されていた可能性がある旨主張し,これに沿うHの意見書(乙167)が提出されている。これに対し,証人Fは,排ガスが通る煙道の中の温度が均一ではなく,温度の高い層と低い層が乱れなく平行に流れており,煙道の中で温度分布があるために,ボイラー入口温度と排ガス急冷塔入口温度の逆転現象が生じうる旨の見解を示し,また,ボイラー入口温度と排ガス急冷塔入口温度のいずれも正確に計測できていない旨証言する(証人F・平成20年8月5日尋問調書3頁以下,23頁以下,41頁以下)。 確かに,第2回試運転の排ガス温度のデータにおいて,排ガス急冷塔入口温度がボイラー出口温度よりも40℃ないし80℃程度高くなるという逆転現象が現れていることが認められる(甲163)。また,第2回試運転において,後方に位置するボイラー入口温度が二次室出口温度よりも高くなるという逆転現象が現れたのに対し,平成20年3月22日に二次室出口温度を計測する熱伝対の差込位置を調整した結果,同月23日以降,二次室出口温度を前後矛盾なく把握できるようになったことが認められ(甲163,乙167),このような実例があることに照らすと,平成19年11月1日の時点において,ボイラー出口温度を測る熱伝対の差込位置が適切でなかったために実際のガス温度より程度低く表示されていたということも,可能性としては考えられる。 しかし,同日や同月2日においては,ボイラー入口温度と排ガス急冷塔入口温度の逆転現象が現れていないと認められるところ(乙147),それにもかかわらずなぜ第2回試運転において逆転現象が生じたのかが明らかになっておらず,熱伝対の差込位置が適切でなかったという被告の主張は裏付けに乏しいといわざるを得 認められるところ(乙147),それにもかかわらずなぜ第2回試運転において逆転現象が生じたのかが明らかになっておらず,熱伝対の差込位置が適切でなかったという被告の主張は裏付けに乏しいといわざるを得ない。また,例えば平成20年3月26日の試運転時において,前方に位置する二次室出口温度と後方に位置するボイラー入口温度との高低が何度も入れ替わっており(甲163),このことからすると,排ガスが通る煙道の中の温度が均一ではなく,温度の高い層と低い層が乱れなく平行に流れており,煙道の中で温度分布があるという証人Fの見解も合理的なものと考えられる。したがって,平成19年11月1日のボイラー出口温度が,熱伝対の差込位置が適切でなかったために実際のガス温度より程度低く表示されていたのか,温度の低い排ガス層のガス温度を計測したものであるのか,あるいはその両者とも生じていたのか,不明であるといわざるを得ない。 もっとも,二次室出口温度とボイラー出口温度に191℃程度の差が生ずることは上記のとおりであるから,仮に平成20年11月1日のボイラー出口温度の計測値が正しいとしても,二次室出口温度は800℃を上回ることになる。したがって,ボイラー出口温度に82℃を加えることによって二次室出口の真のガス温度を推定することはできないというべきであり,その推定に基づき燃焼ガス温度が800℃に達していないとする原告らの上記主張は採用できない。 なお,証拠(乙147)によれば,平成20年11月1日及び同月2日において,二次室出口温度はボイラー入口温度より30℃ないし50℃程度高くなっていることが認められる。これは放熱の影響によるものと推察されるが,このことも,二次室出口温度とボイラー入口温度の温度差につき,実測値と計算値とで違いが生じていることの一因と考えられる。 イ次に っていることが認められる。これは放熱の影響によるものと推察されるが,このことも,二次室出口温度とボイラー入口温度の温度差につき,実測値と計算値とで違いが生じていることの一因と考えられる。 イ次に,原告らは,平成20年3月10日から同月19日までの排ガス温度のグラフの上,二次室出口温度のグラフが櫛の歯状になっていることなどから,二次室出口付近のガス温度が見かけ上800℃ないし900℃以上あっても,それは二次バーナーの火炎の輻射熱の影響によるものであって,真のガス温度は800℃を下回っており,維持管理基準に適合しない旨主張する。証人Fも,同旨の証言をし,同旨の意見書(甲153)を提出している。 しかし,例えば,平成20年3月14日午前8時から午前11時までの排ガス温度のグラフ(乙167の「グラフ-4」)及び同月23日午後0時から午後3時までの排ガス温度のグラフ(乙167の「グラフ-6」)からは(両グラフの基礎データにつき,甲163,乙151参照),二次室出口温度が,炉内上部温度とおおむね連動している状況が見てとれる。 そして,排ガスが炉内(一次燃焼室内)から二次燃焼室へ,二次燃焼室からボイラーへと流れていること,証拠(乙167)によれば,二次バーナーと炉内上部温度計の位置関係は別紙図面17のとおりと認められることからすると,二次バーナーの作動が炉内上部温度計の計測する温度の上昇をもたらすとは考え難く,二次バーナーを作動させた場合には,炉内上部温度と関係なく二次室出口温度が上昇すると考えられる。そうすると,二次バーナーは限られた機会にのみ作動しているものであって(例えば,同月14日午前10時31分ころ,午前10時38分ころ,同月23日午後0時39分ころ,午後0時52分ころ,午後2時46分ころには,それぞれ,炉内上部温度と連動せず二次室出 いるものであって(例えば,同月14日午前10時31分ころ,午前10時38分ころ,同月23日午後0時39分ころ,午後0時52分ころ,午後2時46分ころには,それぞれ,炉内上部温度と連動せず二次室出口温度が上昇している。また,同月21日午後3時50分から午後6時50分までの排ガス温度のグラフ(乙167の「グラフ-7」)を見ると(同グラフの基礎データにつき,甲163,乙151参照),同日午後3時53分ころ,午後4時50分ころ,午後5時10分ころ,午後5時43分ころ,午後5時55分ころ,午後6時48分ころなどにも,それぞれ,炉内上部温度と連動せず二次室出口温度が上昇している。),同月14日や23日に現れているような,二次室出口温度が炉内上部温度と連動している状況は,本件炉において,二次バーナーを頻繁に作動させることなく800℃ないし900℃のガス温度を保つことができていることを示すものと認められる。原告らが指摘するように二次室出口温度のグラフが櫛の歯状となっているのは,炉内の廃棄物の燃焼状態の変動によってもたらされる排ガス温度の変動を反映したものにすぎない。 したがって,原告らの上記主張は採用できない。 ウ次に,原告らは,第3回試運転において全般的に二次室出口温度が炉内上部温度より高い状態が継続していることなどから,本件炉において,二次バーナーを頻繁に作動させなければ二次室出口付近のガス温度を800℃以上に保つことができない旨主張する。 しかし,本件炉において,適正量の廃棄物を投入して燃焼させた場合に,二次バーナーを頻繁に作動させることなく800℃以上のガス温度を保つことができることは,前記イに説示したとおりである。また,証拠(乙179の4-1項,乙193)によれば,第3回試運転において24時間の稼働時間をしたと認められる平成20年9月 ℃以上のガス温度を保つことができることは,前記イに説示したとおりである。また,証拠(乙179の4-1項,乙193)によれば,第3回試運転において24時間の稼働時間をしたと認められる平成20年9月17日,同年10月7日,同月8日,同月9日における,二次バーナー及び昇温バーナーの燃料として使用された再生油の使用量は,同年9月17日が950ℓ(39.6ℓ/h),同年10月7日が960ℓ(40ℓ/h),同月8日が1390ℓ(57.9ℓ/h),同月9日が1408ℓ(58.7ℓ/h)であることが認められる(かっこ内は1時間当たりの使用量に換算した数値)。この4日間については,廃棄物が投入されていなかったと認められる同月7日午後6時30分ころから午後8時ころまでの時間帯(乙179の3-2項の「処理量」のグラフ参照)を除き,二次室出口温度が800度以上で推移していると認められるところ(乙179の3-2項),二次バーナーを常時作動させた場合の消費燃油量は120ℓ/h,昇温バーナーを常時作動させた場合の消費燃油量は100ℓ/hであるから(乙14の1),排ガス温度を800℃以上に保つために二次バーナーや昇温バーナーをほぼ常態的に作動させているような状態にあったとはいえない。 したがって,原告らの上記主張は採用できない。 (7)ダイオキシン類濃度についてア本件施設の試運転期間中の排ガス中のダイオキシン類濃度の測定結果等は次のとおりと認められる(測定結果として示すものはいずれも酸素濃度12%換算値であり,単位はいずれもng-TEQ/N㎥である。)(甲185の4,乙152,156,167の16頁,179の2-3項・2-5項・2-10項,181,183)。これによれば,排ガス中のダイオキシン類濃度は,維持管理計画値である0.1ng-TEQ/N㎥を大幅に下 ,乙152,156,167の16頁,179の2-3項・2-5項・2-10項,181,183)。これによれば,排ガス中のダイオキシン類濃度は,維持管理計画値である0.1ng-TEQ/N㎥を大幅に下回っており,維持管理基準値である1ng-TEQ/N㎥以下(本件施設においては,低位発熱量が最も低い紙くず[3925kcal/kg]を専焼させた場合の最大焼却量が2723kg/hとなることから(甲3,乙14の2),排ガス中のダイオキシン類濃度につき前記1(2)エ(ク)bの維持管理基準が適用される。)を十分に充足することができるというべきである。 (ア)試料採取日時平成20年3月14日午後1時05分から午後5時05分まで測定結果0.01試料採取者I株式会社(以下「I」という。)分析実施者株式会社J(以下「J」という。)(イ)試料採取日時同月15日午後1時05分から午後5時25分まで測定結果0.01試料採取者I分析実施者J(ウ)試料採取日時同月26日午前10時から午後2時まで測定結果0.0016試料採取者愛知県環境調査センター分析実施者同上(エ)試料採取日時同月28日午後1時から午後5時まで測定結果0.003試料採取者財団法人岐阜県公衆衛生検査センター(以下「岐阜県公衆衛生検査センター」という。)分析実施者株式会社K(以下「K」という。)(オ)試料採取日時同年9月17日午後1時02分から午後5時07分まで測定結果0.00065試料採取者岐阜県公衆衛生検査センター分析実施者K(カ)試料採取日時同年10月7日午後2時20分から午後4時20分まで測定結果0.00067試料採取者岐阜県公衆衛生検査センター分析実施者K(キ)試料採取日時同月8日午前10時30分から 試料採取日時同年10月7日午後2時20分から午後4時20分まで測定結果0.00067試料採取者岐阜県公衆衛生検査センター分析実施者K(キ)試料採取日時同月8日午前10時30分から午後2時44分まで測定結果0.00065試料採取者愛知県環境調査センター分析実施者同上(ク)試料採取日時同月14日午後0時39分から午後4時39分まで(廃プラスチック類専焼時)測定結果0.0048試料採取者I分析実施者L株式会社イこれに対し,原告らは,①試運転期間中に投入される廃棄物は,その種類,性状及び混合割合があらかじめ十分に調整されており,対応が容易であること,②二次バーナーを強力に焚いてガス温度を通常より高く維持すれば燃焼時のダイオキシン類の合成を抑制できること,③バグフィルターに使用する活性炭及び消石灰の投入量を増やせば,排ガス中の有毒物の除去率を大きく上げることができることから,上記の測定結果が全く信頼できない旨主張する。証人Fも,平成20年3月14日のダイオキシン類測定に対し意図的に二次室出口温度が上げられており,測定結果が信頼できない旨証言し,その旨の意見書(甲153)を提出している。 (ア)①の点についてなるほど,試運転に供する廃棄物の組成と量は試運転計画書においてあらかじめ設定されており(乙159,175),被告は計画に沿って廃棄物を用意し,これを破砕し,混合することによって廃棄物の組成を十分に調整することができる。しかし,廃棄物の組成が判明しているからダイオキシン類の生成を抑制できるというものではなく,後記(イ)のとおり,ダイオキシン類の生成を抑制するためには,燃焼を安定化させて不完全燃焼を防ぐことが重要な要素の1つとなるところ,試運転のように廃棄物の組成と量があらかじめ設定されてい ではなく,後記(イ)のとおり,ダイオキシン類の生成を抑制するためには,燃焼を安定化させて不完全燃焼を防ぐことが重要な要素の1つとなるところ,試運転のように廃棄物の組成と量があらかじめ設定されていない場合であっても,被告は破砕可能な廃棄物を投入前に破砕処理し,均一に混合することとしているのであるから(前記1(3)イ(エ)a),これによって廃棄物の混合比率のばらつきをなくした上で本件炉に投入することが可能であり,燃焼の安定化を図ることができるというべきである。また,被告は,本格稼働の運転状態と試運転の運転状態が異なることを想定して廃プラスチック類の専焼テストを行い,前記ア(ク)のとおりその際にもダイオキシン類濃度の測定を行っているのであるから,①の点が測定結果の信頼性を否定する理由にはならないというべきである。 (イ)②の点及び証人Fが指摘する点についてなるほど,平成20年3月14日の排ガス温度のグラフから,二次室出口温度の下限が900℃程度で推移していたものが,午後3時ころから午後4時ころにかけて炉内上部温度,二次室出口温度がともに上昇し,二次室出口温度の下限が1150℃以上に達し,午後5時ころから午後6時ころにかけて炉内上部温度,二次室出口温度がともに低下し,二次室出口温度の下限が900℃程度に戻るという温度変化が見てとれる(乙151)。証拠を精査してもその原因は判然とせず,被告がダイオキシン類測定に対し意図的に温度を上げたとまでは推認できないものの(意図的なものであれば試料採取時間の始期である同日午後1時05分以前から温度を上げていてしかるべきである。),被告が本件施設の維持管理計画において,炉内燃焼温度の管理値を850℃とし,850℃前後で推移させることとしていることからして(前記1(3)イ(ウ)b),二次室出口温度の下 てしかるべきである。),被告が本件施設の維持管理計画において,炉内燃焼温度の管理値を850℃とし,850℃前後で推移させることとしていることからして(前記1(3)イ(ウ)b),二次室出口温度の下限が1150℃以上というのは,上記の管理値と比べて200℃以上の著しい乖離であり,午後3時ころから午後6時ころに生じた一時的な現象であったとしても,本格稼働時に想定される通常の燃焼状態とはかけ離れているといわざるを得ないから,本格稼働の際にも排ガス中のダイオキシン類濃度が0.01ng-TEQ/N㎥程度にとどまることの根拠として同日の測定結果を援用することは相当でないというべきである。 もっとも,証拠(乙185)並びにFの意見書(甲28),Mの意見書(甲126)及びHの意見書(乙167)に示されたダイオキシン類の生成に関する意見を総合すると,ダイオキシン類の生成及び排出を抑制するためには,<ア>廃棄物の焼却において安定した燃焼を図り,不完全燃焼を回避することにより,ダイオキシン類の合成やその前駆物質の生成を抑制すること,<イ>燃焼ガスをできるだけ早く200℃以下に冷ますことにより,ダイオキシン類の再合成を抑制すること,<ウ>バグフィルターに代表される高度な集じん装置により,生成されたダイオキシン類を吸着・除去することがとりわけ重要であることが認められる。そうすると,二次バーナーを強力に焚いてガス温度を通常より高く維持することは,二次燃焼室において未燃ガスを燃焼し尽くし,不完全燃焼を回避することにつながるため,ダイオキシン類の排出抑制の1つの要素になるということができるものの,単純に燃焼ガス温度を上げるだけで大幅な排出抑制が可能になると考えることはできない。そして,上記のとおりダイオキシン類濃度の測定は8回にわたり行われているところ,平成2 るということができるものの,単純に燃焼ガス温度を上げるだけで大幅な排出抑制が可能になると考えることはできない。そして,上記のとおりダイオキシン類濃度の測定は8回にわたり行われているところ,平成20年3月26日の排ガス温度のグラフでは,午前10時から午後2時ころまでの間,二次室出口温度の下限が800℃,平均が850℃ないし900℃程度で推移し,同月28日の排ガス温度のグラフでは,午後1時ころから午後5時ころまでの間,二次室出口温度の下限が800℃,上限が100℃程度,平均が900℃程度で推移していることが認められる(乙157)。これらの時間帯には二次バーナーを強力に焚いてガス温度を通常より高くしていたとは認められないにもかかわらず,ダイオキシン類濃度の測定結果が上記のとおり維持管理計画値を大幅に下回るものとなっていることからして,少なくとも,二次バーナーを焚いてガス温度を通常より高くしなかった場合に維持管理基準値を超えるダイオキシン類の排出につながる蓋然性は認められないというべきである。むしろ,本件施設においては,<ア>安定した燃焼,<イ>燃焼ガスの急冷及び<ウ>バグフィルターによるダイオキシン類の除去が全体として十分に機能しているために,ダイオキシン類の排出抑制が達成できていると見るのが自然であり,かつ相当と考えられる。 (ウ)③の点についてこの点に関し,原告らは,被告が平成13年5月の採算計画書(乙14の22)において廃棄物1t当たり28.33kgの消石灰を,平成19年5月の採算計画書(乙145)において廃棄物1t当たり38. 89kgの中和薬剤(消石灰,活性炭及びろ過助剤)を使用する計画になっているところ,第3回試運転に係る試運転結果報告書(乙179)によれば,試運転中には平均して廃棄物1t当たり62.78kgの消石灰を使 gの中和薬剤(消石灰,活性炭及びろ過助剤)を使用する計画になっているところ,第3回試運転に係る試運転結果報告書(乙179)によれば,試運転中には平均して廃棄物1t当たり62.78kgの消石灰を使用しており,消石灰については当初の計画の倍以上の量を使用している旨指摘する。 しかし,廃棄物が投入されない余熱動作中や停止サイクル中であっても,排ガスがバグフィルターを通過する限り中和薬剤は投入されるのであるから,廃棄物の重量当たりの使用量で整理するのは相当でなく,被告が採算計画書において稼働時間当たりの使用量を定めているように(乙145の8頁),稼働時間当たりの使用量で議論をするのが相当である。 そして,証拠(乙14の2の7-1-14頁,乙14の5)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,二酸化硫黄(SO2)との反応に必要な消石灰の量を4.2kg/h,塩化水素(HCl)との反応に必要な消石灰の量を21.3kg/hと算出した上,反応上の安全効率を考慮して使用消石灰量を計算上反応に必要な量の200%に当たる51.0kg/h{(4.2+21.3)×2=51.0}と決定したこと,活性炭投入量の適正水準が0.0002kg/N㎥(200mg/N㎥)とされていることから,これに稼働時間当たり湿り排ガス量の最大値である3万8332N㎥/hを乗じて,活性炭の投入量を7.7kg/hと算出し,近似する8kg/hと決定したこと,ろ過助剤については,適正投入量を0. 00015kg/N㎥(0.15g/N㎥)とし,これに稼働時間当たり湿り排ガス量の最大値である3万8332N㎥/hを乗じて,ろ過助剤の投入量を5.7kg/hと算出し,近似する6kg/hと決定したこと,そうすると,投入薬剤量の合計は65kg/h(51.0+8+6=65)となるが,実際に投入される薬剤が,あらかじ 乗じて,ろ過助剤の投入量を5.7kg/hと算出し,近似する6kg/hと決定したこと,そうすると,投入薬剤量の合計は65kg/h(51.0+8+6=65)となるが,実際に投入される薬剤が,あらかじめ消石灰80%,活性炭10%,ろ過助剤10%の比率で混合された中和薬剤であることから,ここでも安全効率を若干考慮して,中和薬剤(混合)の使用量を平均70kg/hと決定したことが認められる。他方,第3回試運転においてダイオキシン類濃度が測定された平成20年9月17日の中和薬剤投入量は2110kg,同年10月7日の中和薬剤投入量は2079kg,同月8日の中和薬剤投入量は2110kg,同月14日の中和薬剤投入量は1460kgであると認められ(乙179の4-1項),稼働時間当たりの中和薬剤投入量は,同年9月17日が87.9kg/h,同年10月7日が86.6kg/h,同月8日が87.9kg/hとなる(この3日については24時間連続して排ガスが発生していたのに対し,平成20年10月14日については24時間連続して本件施設を稼働させていたわけではないと認められることから(乙179の3-2項),同日の稼働時間当たりの中和薬剤投入量を算定することはできない。)。また,第3回試運転において中和薬剤投入量が最大となったのは同月9日の2136kgであると認められ(乙179の4-1項),同日の稼働時間当たりの中和薬剤投入量は89.0kg/hとなる。そうすると,計画された中和薬剤使用量が平均70kg/hであるのに対し,実際には86.6kg/hないし89.0kg/h投入されていることとなるが,これについては,中和薬剤を付着させるろ布が,累計使用時間が短く,比較的新しいものである場合には,ろ布表面の中和薬剤が払落し動作によることなく剥離,脱落してしまう割合が高いため, いることとなるが,これについては,中和薬剤を付着させるろ布が,累計使用時間が短く,比較的新しいものである場合には,ろ布表面の中和薬剤が払落し動作によることなく剥離,脱落してしまう割合が高いため,一定の薬剤層を保つために2割ないし3割程度多めに中和薬剤を投入しておく必要があるという説明がなされており,ダイオキシン類測定に対して中和薬剤の投入量を増やしたと認めるには足りないというべきである。 仮に,被告が計画どおり70kg/hの中和薬剤を投入するにとどまった場合を想定しても,活性炭によるダイオキシン類除去率にそれほど有意な差は認められないから,上記の測定結果が全く信頼できないとの評価は当たらないというべきである。けだし,89.0kg/hの中和薬剤を投入した場合の排ガス1N㎥当たりの活性炭投入量が232mg/N㎥{89,000,000(mg/h)×0.1÷38,332(N㎥/h)=232(mg/N㎥)}となるのに対し,70kg/hの中和薬剤を投入した場合の排ガス1N㎥当たりの活性炭投入量は183mg/N㎥{70,000,000(mg/h)×0.1÷38,332(N㎥/h)=183(mg/N㎥)}となるところ,証拠(乙14の5)によれば,活性炭投入量とダイオキシン類除去率との相関関係は159mg/N㎥を超える辺りからそれほど顕著ではないことが認められるからである。ここで3割の中和薬剤がろ布から剥離,脱落して機能しないと仮定すると,89.0kg/hの中和薬剤を投入した場合の排ガス1N㎥当たりの活性炭実質投入量が162mg/N㎥,70kg/hの中和薬剤を投入した場合の排ガス1N㎥当たりの活性炭実質投入量が128mg/N㎥となるが,証拠(乙14の5)によれば,活性炭投入量が162mg/N㎥のときダイオキシン類除去率は93%程度,活性炭投入量が 剤を投入した場合の排ガス1N㎥当たりの活性炭実質投入量が128mg/N㎥となるが,証拠(乙14の5)によれば,活性炭投入量が162mg/N㎥のときダイオキシン類除去率は93%程度,活性炭投入量が128mg/N㎥のときダイオキシン類除去率は85%程度であることが認められる。そうすると,89.0kg/hの中和薬剤を投入した場合と70kg/hの中和薬剤を投入した場合とで吸着・除去されずに残るダイオキシン類の量にはせいぜい2倍程度の開きしかないことになり,ダイオキシン類濃度の測定値の開きも2倍程度にとどまるといえるから,上記の測定結果が全く信頼できないとの評価は当たらないというべきである。 (エ)以上から,原告らの上記主張は採用できない。 (8)CO濃度についてア第3回試運転中の平成20年10月8日の行政検査において,CO濃度の1時間平均値が最大で106ppmとなり,維持管理基準値を超過したことは前記認定のとおりであり,その具体的な状況は,愛知県環境調査センター所長の報告書(甲185の4)に示されている。 この点に関し,被告は,本件施設に常設されたCO濃度計の測定結果ではCO濃度の1時間平均値が100ppmを超過していないことなどを挙げて,愛知県の測定結果に正確性が担保されているか疑問である旨主張するが,愛知県の測定機器は測定レンジが5000ppmまであり,かつ,10秒ごとにCO濃度を計測できる高性能な機器であることが認められる上(甲185の4),その校正作業や測定方法に問題があったことを認めるに足りる証拠はないから,上記主張は採用できない。 また,被告は,排ガス中のCO濃度とダイオキシン類濃度とは相関関係がなく,CO濃度の超過がダイオキシン類の排出に直結するものではない旨主張し,これに沿うHの意見書(乙187),社団法人全国産業廃棄 また,被告は,排ガス中のCO濃度とダイオキシン類濃度とは相関関係がなく,CO濃度の超過がダイオキシン類の排出に直結するものではない旨主張し,これに沿うHの意見書(乙187),社団法人全国産業廃棄物連合会中間処理部会排出基準策定技術検討会幹事2名の論文(乙185)及びNの解説書(乙189)を提出している。確かに,ダイオキシン類やその前駆物質がバグフィルター等の集じん装置によるガス処理過程において低減されるのに対し,一酸化炭素はガス処理過程において低減されないため,CO濃度とダイオキシン類濃度との相関関係は非常に弱いとされており(乙189),両者の相関関係が弱いことを示すデータも存在する(乙185)。しかし,不完全燃焼を回避することにより,ダイオキシン類の合成やその前駆物質の生成を抑制することがダイオキシン類濃度の低減のための重要な要素の1つであることは前示のとおりであって,いかなる燃焼状態が生じていたとしても集じん装置によるガス処理のみによってダイオキシン類濃度の低減が達成できるものとは考え難い上,こうした焼却炉におけるダイオキシン類の一次生成に関してはCO濃度が有効な指標となると認められるから(乙189),CO濃度の超過を全く問題にする必要がないことにはならないというべきである。被告自身,高濃度の一酸化炭素が発生するような不完全燃焼の下でダイオキシン類やその前駆物質が合成されやすいことが確立された科学的知見であることについては否定しておらず,また,平成9年5月26日に廃棄物処理基準等専門委員会がまとめた調査結果(甲197)によれば,排ガス中のCO濃度が高くなるとダイオキシン類濃度も高くなり,特にCO濃度が100ppm以上になると正の相関関係が強くなることを示すデータが存在している。そして,「排ガス中のCO濃度を100ppm以下 ス中のCO濃度が高くなるとダイオキシン類濃度も高くなり,特にCO濃度が100ppm以上になると正の相関関係が強くなることを示すデータが存在している。そして,「排ガス中のCO濃度を100ppm以下とすること」が維持管理基準に盛り込まれた趣旨は,常時測定をすることが不可能なダイオキシン類濃度に代わる代替的指標として,CO濃度を連続的に測定・記録し,これを100ppm以下に抑えるにより,ダイオキシン類の生成につながる不完全燃焼を防止することにあると解されるところ,上記の観点を踏まえると,これを単なる代替的指標として軽視すべきでなく,CO濃度の点も含め,継続的に維持管理基準を充足できることを被告において立証しなければ,本件施設から相当量のダイオキシン類が排出されることにより,原告らの受忍限度を超えてその生命の安全・身体の健康が侵害される蓋然性があることが事実上推定されることに変わりはないというべきである。 そこで,維持管理基準値を超過するCO濃度1時間平均値が計測された事実をもって,本件施設が構造基準に適合し,かつ,被告により不適正な維持管理がなされない限り,継続的に維持管理基準を充足することができるという前記の一応の推認が覆えるか否か,以下検討する。 イ前記認定のとおり,被告は愛知県の平成20年12月25日付け改善命令を受け,平成21年1月19日,愛知県に対し改善計画書(乙194)を提出したところ,これによれば,CO濃度の瞬時値が100ppmを超えるピークを示す場合には,炉内温度が上昇し酸素濃度が低下する傾向にあり,過燃焼により酸素不足に陥った場合と,炉内温度が低下し,酸素濃度が上昇する傾向にあり,燃焼が不活発化した場合の2つの場合があることが認められ,被告は,それぞれの場合にCO濃度の瞬時値の上昇を防止できなかった原因とその対策を次 場合と,炉内温度が低下し,酸素濃度が上昇する傾向にあり,燃焼が不活発化した場合の2つの場合があることが認められ,被告は,それぞれの場合にCO濃度の瞬時値の上昇を防止できなかった原因とその対策を次のとおりまとめている。また,証拠(乙195)によれば,被告は,その対策に係る工事を行った上で愛知県に軽微変更届を提出することを予定していることが認められる。 (ア)過燃焼によるCO濃度の上昇について(原因1)抑制運転モードへの変更による投入量の抑制が実施上遅れていた(変更作業に4分ないし5分程度要していた。)。 (対策)抑制運転④のモード(抑制運転③の速度[900kg/h]による間欠運転(75%))に2回連続で,ないしは1時間のうちに3回入る場合に,各モードに設定してある投入速度を高発熱量のごみ用に変更するという作業を,1分以内に行うため,中央システム盤に移管する。 (原因2)上段送風機の風量調整による二次燃焼空気量の調整が間に合っていなかった(変更作業に1分ないし2分程度要していた。)。 (対策)a酸素濃度の降下を伴いながらCO濃度(瞬時値)が上昇し,150ppmを超えた場合を1つの判断基準として,上段送風機の送風量をインバーターで増量調整する作業を行っていたところ,判断基準を変更し,CO濃度(瞬時値)が100ppmを超えた場合に上記作業を行うようにする。 b酸素濃度が10%以下となった場合,又は酸素濃度の降下を伴いながらCO濃度(瞬時値)が上昇し,100ppmを超えた場合に,上段送風機の送風量をインバーターで増量調整するという作業を,25秒以内に行うため,中央システム盤に移管する。 (イ)燃焼の不活発化によるCO濃度の上昇について(原因1)抑制運転モードによる投入量の抑制が効きすぎた場合に投入速度を基に戻す変更が実施上遅れ 秒以内に行うため,中央システム盤に移管する。 (イ)燃焼の不活発化によるCO濃度の上昇について(原因1)抑制運転モードによる投入量の抑制が効きすぎた場合に投入速度を基に戻す変更が実施上遅れていた(変更作業に4分ないし5分程度要していた。)。 (対策)温度降下時に炉内上部温度と炉内下部温度の差が50℃以下になることが2回連続,ないしは直近の1時間のうちに3回現れた場合に,投入速度を1段階低発熱量用に変更するという作業を,1分以内に行うため,中央システム盤に移管する。 (原因2)破砕不良の廃棄物が送り込まれ,最大20kg程度の廃棄物が1回にまとまって投入される現象が生じていた。 (対策)a定量切り出し装置に層厚調整プッシャーを設け,送り出す破砕物の層厚を確実に100mm前後とする。 b計量器内の破砕物重量が所定重量近くになった場合の定量切り出し装置の減速量を-40%に変更し,所定重量を超えないようにする。 c破砕物の長辺が200mmを超えるものの割合がコンベアー(破砕機からの排出用)上の目視により30%以上認められた場合には,破砕機の能力の範囲内で2度破砕する。 d計量器内の破砕物重量が所定重量を30%以上超えた場合には「計量オーバー」の警報を出し,注意を喚起することにより,状況に応じて投入の一時停止,減速など必要な対策を取れるようにする。 (原因3)燃焼の不活発化を補う各バーナーの燃油量調整が遅れていた(変更作業に1ないし2分程度要していた。)。 (対策)酸素濃度とCO濃度とが同時に急上昇する状況において,昇温バーナー,廃油バーナー及び二次バーナーの基準となる燃油量を増量するという変更作業を,30秒以内に行うため,中央システム盤に移管する。 ウ上記イ(ア)の原因1が過燃焼につながること,同原因2がCO濃度の上昇につ バーナー及び二次バーナーの基準となる燃油量を増量するという変更作業を,30秒以内に行うため,中央システム盤に移管する。 ウ上記イ(ア)の原因1が過燃焼につながること,同原因2がCO濃度の上昇につながること,上記イ(イ)の原因1ないし3が燃焼の不活発化につながることは容易に理解できるところであり,被告の対策の主眼は,これまで行っていた各種の対策に係る変更作業に要する時間を短縮することにあるといえる。そして,証拠(甲185の4,乙186,194)によれば,行政検査が行われた平成20年10月8日のCO濃度瞬時値を見ると,100ppmを度々超過しており,ピークを記録した時間帯の中には5000ppmに達するものもあるが,ピークに達した後最長でも5分後には100ppm以下に戻っていること,ピーク及びその付近の時間帯を除いては,ほとんど1ないし20ppmという低い瞬時値で推移していることが認められる。そうすると,いったんCO濃度瞬時値が上昇し,100ppmを超えるピークが現れたとしても,被告が各種の対策を講じたことにより比較的短時間のうちに100ppm以下に戻すことができていたと見るのが自然であるから,被告が更に上記イ(ア)及び(イ)記載の対策を講じ,各種の変更作業に要する時間が短縮されれば,CO濃度瞬時値が100ppmを超える時間帯が短縮され,あるいはピークに達する瞬時値が低く抑えられることが推認されるというべきである。そして,ピーク及びその付近の時間帯を除いては,ほとんど1ないし20ppmという低い瞬時値で推移していることにかんがみると,100ppmを超えるピークが生じることがあったとしても,それを1時間のうちに頻繁に生じさせないように制御すれば,1時間平均値を100ppm以下に収めることは十分に可能であると考えられる。 したがって,上記 mを超えるピークが生じることがあったとしても,それを1時間のうちに頻繁に生じさせないように制御すれば,1時間平均値を100ppm以下に収めることは十分に可能であると考えられる。 したがって,上記の対策を講じて適正に本件施設を稼働させた場合には,CO濃度1時間平均値を100ppm以下にするという維持管理基準を充足することは十分に可能であると認められるから,第3回試運転時に最大106ppmのCO濃度1時間平均値が記録された事実をもって,本件施設が構造基準に適合し,かつ,被告により不適正な維持管理がなされない限り,継続的に維持管理基準を充足することができるという前記の一応の推認を覆すには足りないというべきである(被告が今後試運転を再開した場合において,上記対策を講じたにもかかわらず行政検査の際にCO濃度1時間平均値が100ppmを超過するなどして,愛知県において,必要な改善を講ずることが不可能であり,本件施設の維持管理が維持管理基準に適合していないと判断するに至ったときには,設置許可処分の取消しがなされることがあり得るが(廃棄物処理法15条の3第2項,15条の2の6第1号。なお,甲182参照。),そのことは別論である。)。 エまた,原告らは,第2回試運転中の平成20年3月19日以降,ほぼ全日にわたって基準値を大きく超える高濃度の一酸化炭素が発生しており,これが本質的に本件炉の焼却方法の欠陥に起因するものである旨主張する。 なるほど,原告らの主張するとおり,同日から同月31日までの全日において,CO濃度1時間平均値が度々100ppmを超え,高いときには500ないし600ppmに達する状況が生じていたことが見てとれる(甲159,160)。しかし,甲159のCO濃度1時間平均値のグラフと乙172の1の7項とを対照すると,CO濃度1時間平均値が には500ないし600ppmに達する状況が生じていたことが見てとれる(甲159,160)。しかし,甲159のCO濃度1時間平均値のグラフと乙172の1の7項とを対照すると,CO濃度1時間平均値が100ppmを超過している時間帯は,運転開始時であったり,抑制運転のテスト(投入停止まで実施したときに炉温を維持できるかの検証)を行っていたり,停電時の停止テストを行っていたり,投入装置の異常を各種バーナーで補うテストを行っていたり,投入装置の異常からシステムをサイクル停止するテストを行っていたり,薬剤タンクが空になった場合にシステムがサイクル停止に入るかどうかのテストを行っていたり,破砕物の投入が停止された場合に三種類のバーナーの燃焼及び感染性廃棄物の投入によって炉内温度を維持できるかどうかのテストを行っていたり,バーナーの燃油量調整を行っていたり,あるいは,冷却水の炉床循環,廃油バーナーの異常失火,昇温バーナーの異常等の不具合が実際に生じたためにシステムをサイクル停止するなどした時間帯であることが認められる。加えて,被告は,平成20年3月19日以前においては,CO濃度の1時間平均値をCO濃度計から中央システム盤に取り込み,1時間平均値が75ppmを超えた場合に警報が鳴るシステムに設定していたものを,同日以降,CO濃度の瞬時値のデータを中央システム盤に取り込むようにしたこと,この変更に伴い,1時間平均値が75ppmを超えた場合に警報が鳴るシステムも作動しなくなったことが認められる(乙173,証人H)。そうすると,同日から同月31日までの間にCO濃度1時間平均値が100ppmを超過した原因は,上記のような各種のテストを行ったことや,装置の不具合に対処してシステムをサイクル停止するなどしたことにあることは明らかであり,本質的に本件炉の焼却 濃度1時間平均値が100ppmを超過した原因は,上記のような各種のテストを行ったことや,装置の不具合に対処してシステムをサイクル停止するなどしたことにあることは明らかであり,本質的に本件炉の焼却方法の欠陥に起因するものとはいえない。 したがって,原告らの上記主張は採用できない。 (9)1.8t/hの処理能力まで焼却量が達していないことについて原告らは,第3回試運転中100%稼働運転がなされた日においても,①43.2t/日の処理量で廃棄物を焼却することができていない点,②廃棄物の発熱量ベースで1.8t/hの処理能力まで廃棄物の焼却をすることができている時間帯が少ない点で,1.8t/hの処理能力まで焼却量が達しておらず,本件炉の焼却炉としての安全性が証明されたとはいえない旨主張する。 しかし,証拠(乙179の2-3項,3-2項)によれば,第3回試運転中の平成20年9月17日には24時間の稼働運転が行われ,同日午前10時10分から午後0時10分まで,午後1時02分から午後5時07分までにそれぞれ排ガスの試料採取が行われているところ,同日の廃棄物処理量(合計)は,平均値が1737.5kg/hであり,午前10時から午前11時までにつき1713kg,午前11時から午後0時までにつき1876kg,午後0時から午後1時までにつき1748kg,午後1時から午後2時までにつき1886kg,午後2時から午後3時までにつき1833kg,午後3時から午後4時までにつき1931kg,午後4時から午後5時までにつき1941kgであったことが認められる。同日のダイオキシン類濃度の測定結果は,前記(7)アで認定したとおり0.00065ng-TEQ/N㎥であり,他の物質についても維持管理基準値ないし維持管理計画値を超過した事実は認められない。そして,上記のように, ン類濃度の測定結果は,前記(7)アで認定したとおり0.00065ng-TEQ/N㎥であり,他の物質についても維持管理基準値ないし維持管理計画値を超過した事実は認められない。そして,上記のように,廃棄物処理量がほぼ1800kg/h,あるいは1800kg/hを超えている時間帯に測定が行われていることからすると,1800kg/hでの処理をした場合の安全性が確認されていないとはいえず,1800kg/hでの処理が維持管理基準値の超過に結び付くものとは認められない。 そうすると,原告らの主張する点から,本件施設を稼働させた場合に維持管理基準に違反する事態が生ずることを推認することはできない。したがって,原告らの上記主張は採用できない。 (10)排ガス量の問題について原告らは,本件炉の設計計算において湿り排ガス量が3万8332N㎥/hとされているところ,1.8t/hの廃棄物を実際に焼却した場合には,湿り排ガス量がこれを超えることが予測され,その場合,バグフィルターでダイオキシン類を十分に除去することができなくなる旨主張する。 しかし,証拠(乙179の2-3項)によれば,第3回試運転中の平成20年9月17日午前10時10分から午後0時10分までの湿り排ガス流量は2万8000N㎥/h,同日午後1時07分から午後5時07分までの湿り排ガス流量は2万6500N㎥/hであったこと,その測定位置は煙突の中間点であることが認められる。前記(9)で説示したとおり,これらの時間帯の廃棄物処理量はほぼ1800kg/hであるか,あるいは1800kg/hを超えていることからすれば,排ガス流量が単純に廃棄物処理量に比例するわけではないと考えることができ,1800kg/hの廃棄物を焼却処理した場合に想定量を超える量の排出ガスが発生し,バグフィルターの処理能力を超えるとは れば,排ガス流量が単純に廃棄物処理量に比例するわけではないと考えることができ,1800kg/hの廃棄物を焼却処理した場合に想定量を超える量の排出ガスが発生し,バグフィルターの処理能力を超えるとは認められない。 したがって,原告らの上記主張は採用できない。 (11)HCl濃度についてHCl濃度は,維持管理基準に含まれていないが(ただし,大気汚染防止法3条1項,同法施行規則5条1号の規定により,700mg/N㎥が排出基準と定められている。),被告は維持管理計画において排ガス中のHCl濃度を150mg/N㎥以下とすることとしており(甲1別紙9),本件施設の維持管理に関わる事項であるから,ここで検討を加えておく。 第2回試運転において維持管理計画値を超過するHCl濃度が計測されたことから,愛知県が改善命令を発令し,これに対し被告が対策を講じたことは前記1(5)イで認定したとおりであるから,問題は,第3回試運転の結果から見て,被告が本件施設を稼働させた場合に維持管理計画値を超過するおそれが大きいといえるかどうかである。 この点につき,原告らは,第3回試運転において,極めて高いHCl濃度が計測されており,所々で維持管理計画値だけでなく,法規制値を超過している旨主張する。 しかし,証拠(乙178,179の3-1項)によれば,排ガス中のHCl濃度が75ppm以上となったときにHCl濃度警報が作動するところ,第3回試運転中に同警報が作動した時間帯のほとんどは測定機器の自動校正,手動校正又は校正確認が行われた時間帯であり,これを除くと,同警報が作動したのは,平成20年10月12日午後4時19分03秒から20分13秒までの時間帯,同月14日午前9時31分48秒から33分18秒までの時間帯及び同日午前11時04分18秒から05分18秒までの時間帯のみであ 成20年10月12日午後4時19分03秒から20分13秒までの時間帯,同月14日午前9時31分48秒から33分18秒までの時間帯及び同日午前11時04分18秒から05分18秒までの時間帯のみであることが認められる。 そして,証拠(乙178,196)によれば,HCl濃度の測定機器については電極測定感度及び精度を一定に保つために校正作業(等価液を吸引させて調整をする作業)を行う必要があること,校正作業には低濃度側が12ppm,高濃度側が800ppmの等価液が使用されており,校正作業中には800ppmを超えるHCl濃度が計測されることが認められる。したがって,校正作業が行われている時間帯に高濃度のHCl濃度が計測され,HCl濃度警報が作動することは,廃棄物の焼却により発生した排ガスの影響によるものでないと考えられるから,問題はない。 また,平成20年10月12日午後4時19分03秒から20分13秒までの時間帯については,同日4時以降廃棄物が投入されておらず,システムを停止させている時間帯であったことが認められる(乙179の3-2項)。 そうすると,通常運転時における維持管理とは無関係であるから,この時間帯について維持管理計画値の超過を議論するのは適切でない。 さらに,残りの時間帯(同月14日午前9時31分48秒から33分18秒までの時間帯及び同日午前11時04分18秒から05分18秒までの時間帯)のHCl濃度については,明確な数値は判然としないが,グラフ上,いずれの時間帯もせいぜい80ppmであったことが読み取れる(乙179の3-2項)。そうすると,維持管理計画値を超過していたとは認められない。 したがって,原告らの上記主張は採用できず,被告が本件施設を稼働させた場合に維持管理計画値を超過するおそれが大きいとはいえない。 (12)小括以上 維持管理計画値を超過していたとは認められない。 したがって,原告らの上記主張は採用できず,被告が本件施設を稼働させた場合に維持管理計画値を超過するおそれが大きいとはいえない。 (12)小括以上によれば,原告らが本件施設の構造及び設備や試運転結果に基づいて指摘する種々の問題点(前記(2)ないし(11))は,いずれも,構造基準及び維持管理基準の充足性を妨げる事由には当たらないというべきであり,前記(1)で指摘した事情に照らすと,本件施設が構造基準に適合すること,及び,被告により不適正な維持管理がなされない限り,継続的に維持管理基準を充足することができることが推認できる。 本件施設の維持管理の適正についてそこで,次に,本件施設の維持管理の適正につき,被告が本件施設の処理能力を超えて廃棄物を焼却するなどの不適正な操業ないし維持管理を行い,維持管理基準に違反するような事態が生じないかという観点から検討する。 (1)経理的基礎についてア前記1(2)イのとおり,平成12年の廃棄物処理法及び同法施行規則改正により,申請者が経理的基礎を有していることが産業廃棄物処理施設の設置許可の要件の1つとして追加されたところ,これは,設置者が倒産した場合にとどまらず,設置者の経理的な基礎が不十分である場合には,産業廃棄物処理施設の設置及び維持管理には多額の資金を要することなどにかんがみ,不適正な操業(当該産業廃棄物処理施設における廃棄物の処理)がなされるおそれが大きいことから,これを防止する目的に出たものと解される。 そうすると,産業廃棄物処理施設の設置者又は産業廃棄物処理業者(以下「産業廃棄物処理業者等」といい,単に「処理業者等」ということもある。)が経理的基礎を欠くことは,当該産業廃棄物処理業者等によって不適正な操業が行われ,維持管理基準に違反す 産業廃棄物処理業者(以下「産業廃棄物処理業者等」といい,単に「処理業者等」ということもある。)が経理的基礎を欠くことは,当該産業廃棄物処理業者等によって不適正な操業が行われ,維持管理基準に違反するような事態が生ずることを推認させる間接事実となり得る。 もっとも,ある処理業者等につき,単に経営上の不安定要素があるからといって,直ちに不適正な操業がなされることが想定されるものでなく,当該処理業者等において,予定された通常の運転管理方法に従って施設を維持管理し,計画上の処理量の範囲内で廃棄物を処理したのでは,採算がとれず,いずれ経営が成り立たなくなることが見込まれる場合や,当該処理業者等が兼業している他の事業で赤字が見込まれ,産業廃棄物処理業でその欠損を補う必要がある場合等において,企業の経営を立ち行かせるために違法又は不適正な操業を行ってもやむを得ないという判断が,法令に従って適正に操業を行うべき要請に先行したときに初めて違法又は不適正な操業がなされるものと考えられる。 そうすると,不適正な操業がなされることが推認できる程度に経理的基礎を欠くというためには,当該処理業者等の事業計画が採算性のないものである場合や,現に当該処理業者等が他の事業で大幅な欠損を生じ,その回復が見込まれない状態にある場合,あるいはそのような状態に陥ることが見込まれる場合等,当該処理業者等において継続的に適正な操業を行うことがおよそ期待できないような経理的事情がある場合であることを要するというべきである。 イ原告らは,被告の産業廃棄物処理業における採算計画が不合理である旨主張するので,まずこの点につき検討する。 (ア)廃棄物の処理単価について原告らは,被告が廃棄物の処理単価を36.8円/kgないし40. 9円/kgとして採算計画を立てているところ,そのような処 旨主張するので,まずこの点につき検討する。 (ア)廃棄物の処理単価について原告らは,被告が廃棄物の処理単価を36.8円/kgないし40. 9円/kgとして採算計画を立てているところ,そのような処理単価での受入れが実現可能であることを示す具体的な根拠がなく,処理単価が不当に高額に設定されている旨主張する。 証拠(乙132)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,本件施設の竣工に先立ち,本件施設における廃棄物の受入れに関し,搬入元となる予定の事業者との間で,仮の契約として「覚書」及び「産業廃棄物処理委託契約書」を取り交わしたこと,その際,廃棄物の種類別の処理単価を,廃油につき26円/kg,木くずにつき26円/kg,廃プラスチック類につき40円/kg,紙くずにつき30円/kg,繊維くずにつき30円/kg,金属くずにつき26円/kg,ガラスくず及び陶磁器くずにつき26円/kg,汚泥につき35円/kg,動植物性残さにつき45円/kgと設定したことが認められる。 また,前記3(5)ア(ア)で認定したとおり,被告は,焼却する廃棄物の種類別処理量(合計は1800kg/h)を,廃油につき180kg/h,木くずにつき670kg/h,廃プラスチック類につき630kg/h,紙くずにつき59kg/h,繊維くずにつき12kg/h,金属くずにつき5kg/h,ガラスくず及び陶磁器くずにつき4kg/h,汚泥につき50kg/h,動植物性残さにつき50kg/h,感染性産業廃棄物につき140kg/hと計画している。 そこで,上記の計画を前提に処理単価の平均値を試算すると(感染性産業廃棄物の処理単価については,採算計画書(乙145)の予測値である80円/kgを採用する。),36.0円/kg(26×180/1,800+26×670/1,800+30×630/1,800+30×59 棄物の処理単価については,採算計画書(乙145)の予測値である80円/kgを採用する。),36.0円/kg(26×180/1,800+26×670/1,800+30×630/1,800+30×59/1,800+30×12/1,800+26×5/1,800+26×4/1,800+35×50/1,800+45×50/1,800+80×140/1,800=36.0)となる。 上記の単価設定を前提とすれば,処理単価の平均値を36.0円/kgから引き上げるためには廃プラスチック類,動植物性残さ及び感染性廃棄物の処理量を相対的に増やす必要があり,被告は,採算計画上,標準価格帯の廃棄物(証拠(乙132)によれば,廃プラスチック類,廃油,汚泥及び動植物性残さを指すものとうかがわれる。)の割合を1年目42%,2年目55%,3年目60%,4年目65%,5年目70%と順次引き上げ,高価格帯の廃棄物(感染性産業廃棄物)の割合を1年目8%,2年目以降10%としており(乙145),現に,標準価格帯の廃棄物及び高価格帯の廃棄物の処理量を増やしていくための営業活動に取り組むことを予定していることが認められる(乙132)。そうすると,36.8円/kgないし40.9円という価格帯は,被告の営業活動次第では実現可能なものと考えられるから,この点で採算計画があながち不合理なものとはいえない。 また,仮に処理単価が36.0円/kgであり,2年目以降も増加しなかった場合を想定して採算計画書の数値を置き換えても,2年目以降営業利益がプラスとなり,3年目以降経常利益もプラスとなるため,本件施設における産業廃棄物処理業の事業計画は,十分に採算性があるものと認められるから,仮に採算計画どおりに36.8円/kgないし40.9円という価格帯を実現できなかったとしても,問題は生じないと考 件施設における産業廃棄物処理業の事業計画は,十分に採算性があるものと認められるから,仮に採算計画どおりに36.8円/kgないし40.9円という価格帯を実現できなかったとしても,問題は生じないと考えられる。 (イ)43.2t/日の処理量の実現可能性について原告らは,本件施設の試運転において1日当たり43.2tの廃棄物を処理した日がないことから,本件施設を稼働させた場合に排ガスに係る各種の測定値を維持管理計画値あるいは維持管理基準値以下に抑えるようとすれば,採算計画書どおり廃棄物の受入れ及び焼却をすることが不可能である旨主張する。 しかし,被告は,廃棄物の処理量について,1年目は処理能力(43. 2t/日)の75%,2年目及び3年目は処理能力の80%,4年目以降は処理能力の85%として採算計画を立てていることが認められ(乙145),そもそも43.2t/日の処理量で本件施設を稼働させようとしていないのであるから,原告らの指摘する点は被告の採算計画に影響を及ぼすものでない。 したがって,原告らの上記主張は採用できない。 (ウ)燃料費について原告らは,常に二次バーナーを作動させ続けなければ必要な炉内温度を保つことができず,計画外の燃料費が生ずるところ,被告の採算計画書ではこれが考慮されていない旨主張する。 しかし,本件炉において,適正量の廃棄物を投入して燃焼させた場合に,二次バーナーを頻繁に作動させることなく800℃以上のガス温度を保つことができること,及び,試運転時に,排ガス温度を800℃以上に保つために二次バーナーや昇温バーナーをほぼ常態的に作動させているような状態にあったわけではないことは,前記3(6)イ及びウで説示したとおりであり,採算計画が狂うほどに多額の燃料費が生ずるとは認め難いから,原告らの上記主張は採用できない。 (エ) 動させているような状態にあったわけではないことは,前記3(6)イ及びウで説示したとおりであり,採算計画が狂うほどに多額の燃料費が生ずるとは認め難いから,原告らの上記主張は採用できない。 (エ)中和薬剤の使用量について原告らは,試運転において,中和薬剤が採算計画書における使用量よりも多く使用されていることから,中和薬剤の年間費用も増加し,被告の採算計画が大きく狂う旨主張する。 しかし,前記3(7)イ(ウ)で説示したとおり,中和薬剤の使用量については稼働時間当たりの使用量で議論をするのが相当であるところ,計画された中和薬剤使用量が平均70kg/hであるのに対し,第3回試運転において24時間連続的に運転を実施した日の稼働時間当たりの中和薬剤投入量は86.6kg/hないし89.0kg/hであったが,これについては,中和薬剤を付着させるろ布が,累計使用時間が短く,比較的新しいものである場合には,ろ布表面の中和薬剤が払落し動作によることなく剥離,脱落してしまう割合が高いため,一定の薬剤層を保つために2割ないし3割程度多めに中和薬剤を投入しておく必要があったという説明がなされている。 そうすると,累計運転時間が一定程度(被告の説明によれば600時間程度)経過すれば,薬剤投入量は,70kg/h程度に抑えることができると考えられ,採算計画が狂うほどに中和薬剤の年間費用が増加するとは認め難い。 したがって,原告らの上記主張は採用できない。 (オ)廃棄物の2度破砕について原告らは,被告が新たに2度破砕という処理工程を追加したことから,電気費,人件費等の費用が大きく変わり,2度の破砕に要する時間から,処理可能量も当然変わるはずであるが,これらの点が被告の採算計画に全く反映されていない旨主張する。 しかし,2度破砕の対策は,前記3(8)イで認定したとお が大きく変わり,2度の破砕に要する時間から,処理可能量も当然変わるはずであるが,これらの点が被告の採算計画に全く反映されていない旨主張する。 しかし,2度破砕の対策は,前記3(8)イで認定したとおり,「破砕物の長辺が200mmを超えるものの割合がコンベアー(破砕機からの排出用)上の目視により30%以上認められた場合には,破砕機の能力の範囲内で2度破砕する」というものであり,新たな破砕機を設けたり,新たな人員を配置するものではないから,電気費及び人件費が大幅に増えるとは認められない。また,破砕物の長辺が200mmを超えるものの割合が目視により30%以上認められた場合という一時的な場合に講ずる対策であり,しかも破砕機の能力の範囲内で処理するのであるから,これによって処理可能量が落ち込むものとも認められない。 したがって,原告らの上記主張は採用できない。 (カ)パチンコ遊技台のリサイクル環境の変化について原告らは,パチンコ業界においてパチンコ遊技台のリサイクル率が上昇する気運にあることから,被告が廃棄物として処理するパチンコ台が減少し,被告の採算計画に狂いが生じる旨主張する。 しかし,そもそも現状のパチンコ遊技台のリサイクル率及びそれが上昇傾向にあることを認めるに足りる的確な証拠がない上,被告は,被告代表者が設立した株式会社O及び有限会社Pにおけるパチンコ及びスロットマシンの遊技台のリサイクル事業の経験を通じて,リサイクルが進んだとしても現状ではすべての部品がリサイクルされることにはならず,当分の間は焼却処分を要する部品が生じると予測していることが認められるから(乙31,56,130),仮にリサイクル率が上昇したとしても,直ちに本件施設における廃棄物の処理量に影響を及ぼすとは認め難い。また,被告はパチンコ遊技台のうちプラスチック部品のみ が認められるから(乙31,56,130),仮にリサイクル率が上昇したとしても,直ちに本件施設における廃棄物の処理量に影響を及ぼすとは認め難い。また,被告はパチンコ遊技台のうちプラスチック部品のみを焼却処分の対象として想定しており,そのプラスチック部品の量も,本件施設での焼却処理を計画している廃プラスチック類の10%程度にすぎないと予測しているのであるから(乙130),仮にリサイクル率の上昇の伴い廃プラスチック類として焼却処分されるプラスチック部品の受入量が減少したとしても,採算計画に大きな影響を及ぼすとは認められない。 したがって,原告らの上記主張は採用できない。 (キ)以上によれば,採算計画書(乙145)に示された被告の産業廃棄物処理業における採算計画が,全体として不合理なものとはいえないというべきである。 ウ次に,被告の財務状況の観点から,継続的に適正な操業を行うことがおよそ期待できないような経理的事情が存するか否か検討する。 (ア)証拠(甲27)によれば,平成12年の廃棄物処理法の改正により,産業廃棄物処理施設の設置許可については,申請者の能力に関する要件が追加され,旧厚生省から平成12年9月29日付けで,衛産79号通知(甲27)が出されたことが認められる。そして,衛産79号通知の4項「経理的基礎」の(6)では,「事業を的確かつ継続して行うに足りる経理的基礎を有すると判断されるためには,利益が計上できていること又は自己資本比率が3割を超えていることが望ましいものと考えられる」とされ,「利益が計上できているか否かについては過去3年程度の損益平均値をもって判断することとし,欠損である場合にあっても直前期が黒字に転換しているか否かを勘案して判断すること」とされている。 他方,証拠(乙180添付書類の7項)によれば,被告の経常利 程度の損益平均値をもって判断することとし,欠損である場合にあっても直前期が黒字に転換しているか否かを勘案して判断すること」とされている。 他方,証拠(乙180添付書類の7項)によれば,被告の経常利益は,平成17年8月期において8億4308万6308円,平成18年8月期において7億0614万7919円,平成19年8月期において6億3678万6570円であることが認められ,過去3年の決算においていずれも利益を計上していることが認められる。また,証拠(乙180添付書類の7項)によれば,被告の自己資本比率は,平成17年8月期において13.67%,平成18年8月期において12.72%,平成19年8月期において12.02%であることが認められる上,上記認定事実によれば,3期の経常利益の平均値は7億2867万3599円となる。これを愛知県における審査の考え方(乙124)に当てはめると,直前期の自己資本比率が10%以上,直前3年間の経常利益平均値がプラス,直前期の経常利益が黒字であり,原則として経理的基礎ありと認定されることとなる。 さらに,中小企業診断士であるQの意見書(乙144)においても,①収益性について,売上高対営業利益率及び売上高対経常利益率が業界平均より高く良好な数値を維持しており,収益性の総合指標である経営資本対営業利益率についても業界平均と比べて極めて良好な数値を維持しているとされ,②安全性について,自己資本比率及び流動比率が低い状態にあるが,債務償還年数及び借入金対月商倍率が業界平均より格段に良く,金融機関の信用度が高く借入れの余力もあることから,安全を多面的に分析する限り,財務基盤は健全であるとされている。 そうすると,被告の財務状況の観点から,その経理的基礎について法律上問題は認められず,継続的に適正な操業を行うことがおよそ ることから,安全を多面的に分析する限り,財務基盤は健全であるとされている。 そうすると,被告の財務状況の観点から,その経理的基礎について法律上問題は認められず,継続的に適正な操業を行うことがおよそ期待できないような経理的事情が存するとはいえないというべきである。 (イ)これに対し,原告らは,財務分析における各種の財務指標から,被告は①借入金依存体質が顕著であり,②経営の安定性に欠け,③成長の鈍化ないし収益性の低下が顕著であり,短期的な収益状況ないし財務状況の改善が見込めない財務状況である旨主張する。 しかし,流動比率が低い点については,平成17年8月期に27.09%であったものが,平成18年8月期では65.45%,平成19年8月期では53.48%となっていることが認められ(乙180添付書類の第7項),平成19年度版TKC経営指標(甲158)によるパチンコホール業の業界平均値である84.20%よりは低いものの,改善傾向にあるといえる。そして,前示のとおり,債務償還年数及び借入金対月商倍率がパチンコホール業の業界平均値より格段に良いことから,金融機関の信用度が高く借入れの余力もあることされていることを考慮すると,被告が資金繰りのつかないような困窮した状況に陥るとは考え難い。 また,収益性の低下については,なるほど,被告の売上高対営業利益率は,平成17年8月期に4.76%であったものが,平成18年8月期では2.54%,平成19年8月期では2.65%となっていること,売上高対経常利益率は,平成17年8月期に4.49%であったものが,平成18年8月期では2.61%,平成19年8月期では2.35%となっていることが認められ(乙180添付書類の7項),平成17年8月期と比べると低下してきている傾向にあるといえる。しかし,平成19年度版TKC経 期では2.61%,平成19年8月期では2.35%となっていることが認められ(乙180添付書類の7項),平成17年8月期と比べると低下してきている傾向にあるといえる。しかし,平成19年度版TKC経営指標(甲158)によるパチンコホール業の業界平均値を見ると,売上高対営業利益率が2.0%,売上高対経常利益率が2.0%であり,また,収益性の総合指標とされる経営資本対営業利益率についても,被告のそれが平成18年8月期では15.13%,平成19年8月期では15.02%となっているのに対し,19年度版TKC経営指標によるパチンコホール業の業界平均値は5.3%であることが認められる(甲158,乙180添付書類の7項)。そうすると,被告の収益性はなお業界平均より良好な水準を維持しているといえる。これに加えて,損益分岐点分析において被告の平成18年8月期の損益分岐点比率が76%とされており(甲125),これは売上高が24%以上減少した場合に初めて利益がマイナスになることを示している。そうすると,被告の収益性はなお良好な水準にあるといえ,経常利益が赤字になることが見込まれるわけでもない。 その他,原告らが財務分析に基づいて縷々主張する点は,被告が近い将来,資金繰りのつかないような困窮した状況に陥ったり,パチンコ遊戯場経営の部門で大幅な欠損を生じ,その回復が見込まれない状態に陥ったりする現実的かつ具体的な危険を示すものではなく,継続的に適正な操業を行うことがおよそ期待できないような経理的事情には当たらないというべきである。 (ウ)原告らは,証人Qが,その証言及び意見書(乙144)において,各種の財務指標を赤字企業を含んだ同業者全体と比較していることにつき,財務状況の良い同業者と比較しなければ財務状況の位置付けが明らかにならず,比較の意味がないなどと 及び意見書(乙144)において,各種の財務指標を赤字企業を含んだ同業者全体と比較していることにつき,財務状況の良い同業者と比較しなければ財務状況の位置付けが明らかにならず,比較の意味がないなどと論難する。 しかし,財務状態の良好な同業者と比較することは,被告が財務状態の良好な事業者であることを前提に,良好な同業者の中での被告の位置付けを明らかにする上では意味があろうが,ここで要求されているのは,被告が同業者の中でも経理的基礎に欠けることのない良好な事業者といえるのかどうかという観点からの判断であるから,その判断をするに当たって赤字企業も含む同業者全体と比較検討する手法をとるのはむしろ当然のことであり,何ら不適切な手法とはいえない。 エ以上によれば,経理的な観点から,被告が本件施設の処理能力を超えて廃棄物を焼却するなどの不適正な操業ないし維持管理を行うことを推認することはできない。 (2)被告の人的体制についてア証拠(甲101,乙146)及び弁論の全趣旨によれば,本件施設には全体で14名の管理者,運転員,作業員等が配置されていること,管理者は,事業所長1名(H),プラント管理者3名,廃棄物受入・搬出管理者1名,定期点検主任(管理者)1名の計6名であり,これらの管理者は,焼却炉メーカー(株式会社A)の技術者であったこと,夜間(午後5時ないし翌日午前8時)には3名配置する体制をとっており,うち1名がプラント管理者であることが認められる。 そうすると,本件施設は本件炉の設計段階から関与している技術者らによって管理運営されるものであり,その有する本件炉ないし傾斜回転床炉に関する専門的な知識及び技能に基づいて,本件施設が適切に維持管理されることが期待できるというべきである。とりわけ,事業所長であるHが本件炉に関する専門的な知識及び技能を る本件炉ないし傾斜回転床炉に関する専門的な知識及び技能に基づいて,本件施設が適切に維持管理されることが期待できるというべきである。とりわけ,事業所長であるHが本件炉に関する専門的な知識及び技能を有していることは,同人の意見書(乙122,125,126,135,140,167,171,173,182,187)等の記載及び弁論の全趣旨から十分にうかがわれる。また,Hらの技術者が,本件施設の操業の過程で問題が生じた場合に,原因分析をし,対策を講ずるだけの知識及び技能を十分に備えていることについても,HCl濃度の維持管理計画値超過やCO濃度の維持管理基準値超過に対する原因分析及び対策の内容(乙172の1,194。前記1(5)イ(ウ),前記3(8)イ参照)等から推認されるところである。 加えて,証拠(乙177,178,179の3-1項)及び前記3(5)ア(ア),前記3(8)イで認定した事実等を総合すると,本件施設の管理運営については,CO濃度警報,HCl濃度警報,バグフィルター差圧警報をはじめとする異常を感知した場合の各種警報が中央システム盤に表示されるほか,酸素濃度,CO濃度(瞬時値)等の数値をリアルタイムで監視し,中央システム盤等を通じて炉内の燃焼状態の変動に即座に対応できる運転管理システムを整えていることが認められ,このような設備面でのバックアップ体制が,少ない人員(夜間では3名)での運転管理を可能にしていると推認できる。 そうすると,被告の人的体制という観点からも,本件施設について不適正な維持管理が行われ,維持管理基準に違反する事態が生ずることは容易に想定し難いというべきである。 イもっとも,前記認定のとおり,傾斜回転床炉という炉形式を持つ施設が本件施設の外に3つしかなく,焼却炉としての安全性を確認しうる実例が少ないことに加え,被 とは容易に想定し難いというべきである。 イもっとも,前記認定のとおり,傾斜回転床炉という炉形式を持つ施設が本件施設の外に3つしかなく,焼却炉としての安全性を確認しうる実例が少ないことに加え,被告が本件施設の試運転において,中和薬剤を飛散させる事故や錆混じりの水滴を飛散させる事故を起こしていること,HCl濃度の維持管理計画値超過やCO濃度の維持管理基準値超過等により2度の改善命令を受けていること(証拠(甲179)によれば,試運転段階で2度の改善命令を受けることが異例の事態として新聞報道されている。)などに照らすと,原告らを含む周辺住民が本件施設の安全性につき不安や危惧を抱くことにも十分な理由がある。 この点に関し,被告は,維持管理基準及び維持管理計画に従って本件施設の維持管理をする法律上の義務を負うものであるが(廃棄物処理法15条の2の2),その義務の遵守がより確実なものとなるためには,本件施設が稼働された場合に,その操業状況が,行政機関を含む第三者により不断に監視されることが重要であることはいうまでもなく,また,生命の安全・身体の健康等に影響を受けうる立場にある周辺住民においては,その操業状況について,情報の開示を受けるべき利益を有している(人格権侵害のおそれが具体的に想定されうる場合には,人格権に基づく妨害予防請求権として,情報の開示を請求しうる場合があると解するのが相当というべきところ,本件施設は,操業状況によっては,人格権侵害のおそれが具体的に想定されうることから,そうした場合に当たりうるというべきである。)。 したがって,被告は,周辺住民に対し,操業状況が明らかとなる各種の記録を公開することが今後とも継続的に求められているというべきところ,被告は,本件訴訟において,法令上利害関係者の閲覧に供することが義務付けられた燃焼 ,周辺住民に対し,操業状況が明らかとなる各種の記録を公開することが今後とも継続的に求められているというべきところ,被告は,本件訴訟において,法令上利害関係者の閲覧に供することが義務付けられた燃焼室内及び集じん器流入前の燃焼ガス温度,CO濃度及びダイオキシン類濃度の測定結果等(廃棄物処理法15条の2の3,8条の4,同法施行規則12条の7の3第1号)を超えて,1時間ごとの廃棄物処理量,中和薬剤の投入量及び燃油の使用量,HCl濃度の推移等の記録を証拠として提出し,各種の記録を公開する姿勢を示している。その上で,被告は,本件施設が法令の規制に従った運用に耐えうる施設であることについて説明を尽くそうとしており,不安や危惧を抱える原告らの立場にも一定の配慮を示しているといえる。 そして,本件炉が,上記のとおり焼却炉としての安全性を確認しうる実例が少ない炉形式であり,必ずしもその安全性が実証されているわけではないことにかんがみると,本件施設の操業により原告らの生命の安全・身体の健康が侵害される蓋然性の有無を判断するに当たっては,周辺住民に対する記録の公開がなされ,行政機関を含む第三者による監視機能が働いているかどうかの点も考慮に入れるべきである。 後記5(4)のとおり,当裁判所は,原告らの受忍限度を超えてその生命の安全・身体の健康が侵害される蓋然性を認めるに足りる立証がないものと判断するが,その判断に当たっては,被告が上記のとおり本件施設の操業状況に関する記録を公開する姿勢を示していることをも重要な要素として考慮したものであることを付言しておく。 前記3及び4の検討によれば,本件施設が構造基準に適合し,かつ,本件施設を稼働させた場合に継続的に維持管理基準を充足できることが相当な資料,根拠に基づき立証されたといえるから,前記のとおり,本件施設か 記3及び4の検討によれば,本件施設が構造基準に適合し,かつ,本件施設を稼働させた場合に継続的に維持管理基準を充足できることが相当な資料,根拠に基づき立証されたといえるから,前記のとおり,本件施設から相当量のダイオキシン類が排出されることにより,原告らの受忍限度を超えてその生命の安全・身体の健康が侵害される蓋然性があることについての事実上の推定が破れ,原告らにおいて,その生命の安全・身体の健康が侵害される蓋然性について更なる立証をしなければならないというべきである。 そこで,原告らの主張及び立証に照らし,本件施設が構造基準及び維持管理基準に適合するものであっても,なお上記侵害の蓋然性が認められるかの点につき,以下検討する。 (1)ダイオキシン類の到達予測について原告らは,3次元流体モデルを用いた予測に基づき,気象条件いかんでは,大気環境基準を上回るダイオキシン類が原告らの居住地又は就業地に到達する旨主張する。証人Rも同旨の証言をし,Rが取締役調査部長を務める株式会社B(以下「B」という。)も同旨の報告書(甲53,167)を提出している。 アまず,原告らが3次元流体モデルを用いて予測している点について,証拠(甲53,152の3)によれば,プルーム・パフモデルが地形,建物及び構造物が大気拡散に与える影響を捨象した大気拡散の予測手法であるのに対し,3次元流体モデルは,地形,建物及び構造物が大気拡散に与える影響を考慮することができる大気拡散の予測手法であることが認められる。 そうすると,現実の地形,建物等の形状,位置,高さ等が正確にデータ化されているかの点については検証される必要があるものの,その点を措けば,3次元流体モデルは,より実態に即した到達予測が可能な予測手法といえるから,以下,3次元流体モデルに基づいて検討することとする。 イ( いるかの点については検証される必要があるものの,その点を措けば,3次元流体モデルは,より実態に即した到達予測が可能な予測手法といえるから,以下,3次元流体モデルに基づいて検討することとする。 イ(ア)もっとも,Bの報告書(甲53,167)による試算を採用しても,本件施設から排出されるダイオキシン類濃度が,維持管理計画値として遵守が義務付けられている0.1ng-TEQ/N㎥以下であれば,なお大気環境基準に適合する。すなわち,同報告書によれば,排出されるダイオキシン類濃度を0.1ng-TEQ/N㎥と仮定した場合の検証において,プルーム・パフモデルを用いて得られる年平均の最大着地濃度が0.0006pg-TEQ/㎥超0.0007pg-TEQ/㎥未満である。そうすると,仮に3次元流体モデルとプルーム・パフモデルとで最大着地濃度に140倍の開きがあるとしても,実際に排出されるダイオキシン類濃度として0.1ng-TEQ/N㎥が維持されている場合に3次元流体モデルを用いて得られる年平均の最大着地濃度は,最大でも0.098pg-TEQ/㎥{0.0007(pg-TEQ/㎥)×140=0.098(pg-TEQ/㎥)}と推定され,大気環境基準である0.6pg-TEQ/㎥を優に下回る。 (イ)この点に関し,原告らは,事業者の行うダイオキシン類濃度の測定には問題があり,年間を通じて0.1ng-TEQ/N㎥が維持されるとの想定は現実的でないから,法規制値である1ng-TEQ/N㎥である場合や,その10倍の10ng-TEQ/N㎥である場合も想定すべきである旨主張し,Bの報告書(甲53)も同旨の指摘をしている。 しかし,本件施設から排出される排ガス中のダイオキシン類濃度が維持管理計画値である0.1ng-TEQ/N㎥を大幅に下回っており,その測定結果が信頼できるも の報告書(甲53)も同旨の指摘をしている。 しかし,本件施設から排出される排ガス中のダイオキシン類濃度が維持管理計画値である0.1ng-TEQ/N㎥を大幅に下回っており,その測定結果が信頼できるものであることは前記3(7)で説示したとおりである。そして,維持管理計画値の遵守については,法律上の義務であって(廃棄物処理法15条の2の2),愛知県による改善命令及び使用停止命令によって担保されており(同法15条の2の6第1号。命令違反に対する罰則につき同法26条2号),また春日井市との基本協定に規定された操業停止命令(基本協定5条3項)によっても法的に担保されているのであるから,仮に維持管理計画値の超過があった場合には,被告が本件施設の操業を停止して対策を講ずることになることは明らかである。また,被告がダイオキシン類測定に対して意図的に炉内温度を上げたとまで認められないことは前記3(7)イ(イ)で説示したとおりであり,その他被告がダイオキシン類測定の際に通常と異なる制御を行って理想的な燃焼状態を作出したことを認めるに足りる証拠はない。原告らは,Bが他の産業廃棄物焼却炉及び地方公共団体の焼却炉について実施した調査によれば,ダイオキシン類の年平均濃度の推定値は,事業者の自主測定に係るダイオキシン類濃度よりも1桁から6桁多い数値となっていることを根拠に上記のとおり主張するが,Bの報告書(甲53)によっても年平均濃度がどのように推定されたか明らかにされていないし,その調査結果が当然に本件施設に妥当するものでもない。 したがって,原告らの上記主張は,論拠に乏しいといわざるを得ず,採用できない。 (ウ)加えて,3次元流体モデルとプルーム・パフモデルとで最大着地濃度に140倍の開きがあったというのは,北北西風で風速2.5m/sという限定的な条件下の 乏しいといわざるを得ず,採用できない。 (ウ)加えて,3次元流体モデルとプルーム・パフモデルとで最大着地濃度に140倍の開きがあったというのは,北北西風で風速2.5m/sという限定的な条件下の検証結果であるが,風向き及び風速が年間を通じて不変ということは現実にはあり得ず,少なくとも,1年を複数の期間に区分し,それぞれの期間ごとの平均的な風向き及び風速を前提に最大着地濃度を予測し,その加重平均を取るなどして,風向き及び風速の変動を考慮した検証がなされる必要がある。そして,この点を考慮すると,年平均の最大着地濃度に140倍もの開きが生ずるとは考え難い。 ウ以上によれば,3次元流体モデルに基づく検討によっても,本件施設の操業により,大気環境基準を上回るダイオキシン類が原告らの居住地又は就業地に到達する蓋然性を認めることはできない。 (2)原告らは,ダイオキシン類以外の有害物質ないし重金属類の排出の可能性についても言及するが,排出の量や可能性の程度について具体的な立証はない。 (3)以上のほか,原告らが縷々主張する事情(①被告による住民説明会の開催回数,対象者及び説明内容が不十分であること,②中和薬剤を飛散させる事故や錆混じりの水滴を飛散させる事故に対する被告の対応に不備があったこと,③被告が裁判所に対して虚偽の説明を行ったことなど)は,いずれも,本件全証拠又は弁論の全趣旨によっても認めるに足りないか,原告らの生命の安全・身体の健康の侵害と直接結び付かず,侵害の蓋然性を推認させるに足りないものである。 (4)したがって,原告らの受忍限度を超えてその生命の安全・身体の健康が侵害される蓋然性については,これを認めるに足りる立証がないといわざるを得ない。 結論 以上によれば,原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし えてその生命の安全・身体の健康が侵害される蓋然性については,これを認めるに足りる立証がないといわざるを得ない。 結論 以上によれば,原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第7部裁判長裁判官田近年則裁判官細井直彰裁判官井上博喜は,転補のため,署名押印することができない。 裁判長裁判官田近年則(別紙)施設目録設置場所愛知県春日井市(以下略)同市(以下略)同市(以下略)同市(以下略)同市(以下略)同市(以下略)同市(以下略)同市(以下略)同市(以下略)施設の種類廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令7条3号に規定する汚泥の焼却施設,同条5号に規定する廃油の焼却施設,同条8号に規定する廃プラスチック類の焼却施設及び同条13号の2に規定する産業廃棄物の焼却施設(同一施設)【以下別紙の添付省略】

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