主文 1審原告及び1審被告Aの本件各控訴をいずれも棄却する。 控訴費用のうち,1審原告及び1審被告Bに生じた費用は1審原告の負担とし,1審被告Aに生じた費用は1審被告Aの負担とし,補助参加人に生じた費用はこれを3分し,各1ずつを1審原告,1審被告A及び補助参加人の負担とする。 事実及び理由 第1当事者の求めた裁判 1審原告(1)控訴の趣旨ア原判決中,1審原告敗訴部分を取り消す。 イ1審被告らは,1審原告に対し,連帯して761万0008円及びこれに対する平成12年9月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ウ訴訟費用は,第1,2審とも1審被告らの負担とする。 (2)1審被告Aの控訴の趣旨に対する答弁ア1審被告Aの本件控訴を棄却する。 イ訴訟費用は,第1,2審とも1審被告Aの負担とする。 1審被告A(1)控訴の趣旨ア原判決中,1審被告A敗訴部分を取り消す。 イ1審原告は,1審被告Aに対し,394万1351円及びこれに対する平成12年11月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ウ訴訟費用は,第1,2審とも1審原告の負担とする。 (2)1審原告の控訴の趣旨に対する答弁 ア1審原告の本件控訴を棄却する。 イ訴訟費用は,第1,2審とも1審原告の負担とする。 1審被告B(1)1審原告の本件控訴を棄却する。 (2)訴訟費用は,第1,2審とも1審原告の負担とする。 第2事案の概要 本件の事案の概要は,以下のとおりである。 1審原告は,本訴として,1審被告A及び亡C(訴訟承継前の1審被告。以下「亡C」という。)が占有・共有する原判決別紙物件目録2記載の斜面状の土地(以下「本件崩落地」という。)に隣接して同目録1記載1の土地(以下「本件被害地」という。)及び同目 訟承継前の1審被告。以下「亡C」という。)が占有・共有する原判決別紙物件目録2記載の斜面状の土地(以下「本件崩落地」という。)に隣接して同目録1記載1の土地(以下「本件被害地」という。)及び同目録1記載2ないし4の建物3棟(以下「本件被害建物」という。)を所有(同目録記載3の建物は共有)していたところ,平成12年9月12日のいわゆる東海豪雨の際に,本件崩落地が崩落して本件被害地及び本件被害建物に土砂(以下「本件土砂」という。)が流入し(以下「本件崩落事故」という。),本件被害建物等が損壊したことについて,本件崩落事故は,1審被告A及び亡Cによる本件崩落地上の1.7mの盛り土の設置・保存の瑕疵が原因であるとして,1審被告A及び亡Cに対し,民法719条,717条1項に基づき,連帯して損害賠償金761万0008円及び本件崩落事故発生日の翌日である同月13日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 これに対し,1審被告ら(亡Cの死亡により1審被告Bが訴訟承継した。)は,上記盛り土の事実を否認し,本件崩落事故は本件崩落地の北東側に隣接する市道の山側に設けられたU型側溝(以下「本件側溝」という。)から本件崩落地への溢水が,本件崩落地と本件被害地の境界付近に存在する1審原告設置のブロック塀(以下「本件ブロック塀」という。)にせき止められて貯留した後,本件ブロック塀が水圧等に耐えられずに倒壊したため,土砂の流出により 力学的安定が崩れ,せん断破壊による円弧滑りとなって生じたものであるとしてこれを争い,1審被告Aは,反訴として,本件崩落事故発生後に本件被害地に流入した本件土砂の除去作業を行ったことにつき,1審被告Aは,本件崩落事故の発生について責任はなく,本件土砂の除去作業に係る費用を負担する理由はないのにこれを負担し 本件崩落事故発生後に本件被害地に流入した本件土砂の除去作業を行ったことにつき,1審被告Aは,本件崩落事故の発生について責任はなく,本件土砂の除去作業に係る費用を負担する理由はないのにこれを負担し,これにより1審原告は上記費用を法律上の原因なく利得したと主張して,1審原告に対し,不当利得に基づき,上記費用相当額394万1351円及びこれに対する不当利得の生じた日の翌日である平成12年11月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 原審は,本件崩落事故当時,本件崩落地に1.7mの盛り土が存在したと認めるには足りず,本件崩落事故はせん断破壊によって生じたものと認められるが,これについて,本件ブロック塀によってせき止められた雨水が貯留したこと,本件側溝から溢水が生じたことのいずれもその原因と断定することはできず,また本件崩落事故が不可抗力の天災によるものともいえないから,1審被告Aが本件土砂を自己の費用で除去したとしても,1審原告がその費用につき法律上の原因なく利得を得たとは認められないとして,1審原告の本訴請求及び1審被告Aの反訴請求のいずれも棄却したため,双方がこれを不服として控訴したものである。 前提事実,争点及びこれに対する当事者の主張は,以下のとおり補正し,当審における補充主張を加えるほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」2,3に記載のとおりであるから,これを引用する。 (当審における補充主張)(1)土地工作物の設置・保存の瑕疵についてア1審原告本件崩落地に1.7mの盛り土が存在しなかったとしても,少なくとも,1審被告らは,平成7年11月ころ,本件土地の北西上部を約30%くら い伐採し,一部切り土して10㎥前後の土を搬入して上部を少し平らにした。そして最大部分で約1 在しなかったとしても,少なくとも,1審被告らは,平成7年11月ころ,本件土地の北西上部を約30%くら い伐採し,一部切り土して10㎥前後の土を搬入して上部を少し平らにした。そして最大部分で約1mの盛り土をしたが,これが崩落しないように,盛り土の下部を丸杭及び棚板4枚で受け止める土留を設置したにすぎなかった。 1審被告らが本件崩落事故後に設置したようなよう壁(甲37の1ないし7)を設置していれば本件崩落事故の発生を防止できたのに,上記のような土留しか設置しなかったのであるから,上記盛り土及び土留に設置・保存の瑕疵があったことは明らかである。 イ1審被告ら本件崩落事故は,上記盛り土や土留の下にある八事層の地山から根こそぎ崩落したものであり,本件土地の北西上部の盛り土や土留の存在とは全く関係がない。 また,本件崩落事故は未曾有の集中豪雨による明らかな天災であるから,本件崩落事故後に設置したようなよう壁が存在したとしても,本件崩落を防止できたかどうかは判らない。 (2)不当利得返還請求についてア1審被告A東海豪雨は降雨量が観測史上最大の未曾有の豪雨であるから,少なくとも本件側溝から相当量の溢水が生じたことは間違いなく,かつ1審原告の主張する崩落原因が明確に否定されるのであるから,特段の事情のない限り,雨水の貯留もしくは大量の流水によってせん断破壊を生ぜしめるだけの雨水が本件土地に流入したものと推認されなければならない。 したがって,本件崩落事故が本件ブロック塀の存在又は本件側溝からの溢水が原因であるか,未曾有の集中豪雨による不可抗力の天災であるかは別として,1審被告Aが1審原告方に流入した本件土砂の除去費用を負担すべき法律上の原因はない。 仮に本件崩落事故の原因が特定できないとしても,不当利得返還請求においては,利得を得た者 であるかは別として,1審被告Aが1審原告方に流入した本件土砂の除去費用を負担すべき法律上の原因はない。 仮に本件崩落事故の原因が特定できないとしても,不当利得返還請求においては,利得を得た者が法律上の原因のあることを立証しなければならないから,1審原告が,本件土砂の除去費用の負担を免れたことにつき法律上の原因のあることを立証しない限り,法律上の原因なくして不当に利得したものというべきである。 イ1審原告不当利得返還請求において,法律上の原因のないことは請求者が立証する必要がある。 1審原告が設置した本件ブロック塀により雨水がせき止められて貯留したことにより本件崩落が発生したものとは認められないのであるから,1審原告が,1審被告ら所有の本件崩落地上にあった本件土砂の除去費用を負担する義務はない。 また,1審原告方に流入した土砂は1審被告らの所有物であるから,1審原告は,1審被告らに対し,所有権に基づく妨害排除請求として,本件土砂の除去を求める権利を有しているから,1審被告らは,1審原告に対し,本件土砂の除去費用を負担する法律上の義務を負っていたものである。 さらに,1審被告Aが自らの費用で本件土砂を撤去したのは,上記義務の履行として行ったもので,その時点において,1審原告と1審被告らとの間で,1審被告らが自らの費用で本件土砂を撤去する旨の合意が成立していた。 したがって,いずれにしても,1審被告Aが自らの費用で本件土砂を撤去したことには法律上の原因があり,1審被告Aの1審原告に対する不当利得返還請求は理由がない。 第3当裁判所の判断当裁判所も,1審原告の本訴請求及び1審被告Aの反訴請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,以下のとおり補正する(当審における補 充主張に対する判断を含む。)ほかは,原判決「事実及び理 当裁判所も,1審原告の本訴請求及び1審被告Aの反訴請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,以下のとおり補正する(当審における補 充主張に対する判断を含む。)ほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第3当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決16頁22行目の次に改行して,以下のとおり加える。 「これに対し,1審原告は,本件崩落事故現場より約4m北西に離れた場所であるボーリング調査の「№1孔(上部ボーリング)」にも腐植土は残存していないのであるから,本件崩落事故現場から腐植土が検出されなかったにもかかわらず,元の地山が崩落せずに残存しているといえるためには相応の合理的な理由が必要であるというのは,上記ボーリング調査の結果を看過した誤った判断である旨主張する。 しかしながら,1審原告自身,1審被告らが他所から搬入した土砂で盛り土を行い,本件崩落事故直後には元の地山の表土を示す厚い腐植土が存在していた旨主張し,それを裏付ける写真等の証拠を提出していたことは後記(引用に係る原判決18頁23行目から同19頁2行目)のとおりである。そして,1審原告の申請に従って原審裁判所が採用した鑑定においても,その申請に従って元の地山の表土の存否や,それが残存している場合の形状等を鑑定事項の一部としていたことは記録上明らかである。このように,1審原告は,腐植土の存在は元の地山が崩落せずに残存していることを示す有力な事情の一つと主張していたことは明らかであるから,ボーリング調査により本件崩落事故現場において残存する腐植土を認めることができなかった以上,元の地山が残存しているというためには相応の合理的な理由が必要である旨の判断が誤りであるということはできない。」 同17頁19行目の次に改行して,以下のとおり加える。 「こ ができなかった以上,元の地山が残存しているというためには相応の合理的な理由が必要である旨の判断が誤りであるということはできない。」 同17頁19行目の次に改行して,以下のとおり加える。 「これに対し,1審原告は,本件崩落地周辺の地質は約100万年から200万年もの長期間にわたって堆積しているのであるから,元の地山が残存している場合には,わずか3.5m間隔で存在する3か所のボーリング地点で崩落後に盛られた現在の盛り土の厚さが変化するとは考えられないのに対し, 1審被告らが主張するようないわゆる円弧滑りが崩落の原因であれば,本件崩落事故現場中央部は元の地山がえぐれるように窪地になって現在の盛り土の厚さが変化するはずであるから,本件崩落事故が1.7mの盛り土が存在してそれが崩落したものか,元の地山が崩落したものであるかの判断においては,各ボーリング地点の盛り土の厚さが一定であることは重要である旨主張する。 しかしながら,1審原告の上記主張は,崩落後の地面上にそのまま現在の盛り土を行ったことを前提にするものであるところ,崩落後の地面上にそのまま現在の盛り土を行ったと認めるに足りる証拠はなく,かえって,崩落後に整地をして現在の盛り土を行ったものと認められる(乙13,弁論の全趣旨)。なお,鑑定人Dも,腐植土が見られない理由につき,整地して盛り土を行った際にそれが失われたか,近傍の土砂と混ざった可能性があるとして,本件崩落事故後,本件崩落地を整地して盛り土を行ったことを前提とした説明をしている(D鑑定書4(1))。 したがって,1審原告の上記主張は前提を欠くものであるから,これを採用することはできない。」 同22頁7行目の次に改行して,以下のとおり加える。 「なお,1審原告は,盛り土の下部に崩落事故後に設置したようなよう壁(甲37の1 前提を欠くものであるから,これを採用することはできない。」 同22頁7行目の次に改行して,以下のとおり加える。 「なお,1審原告は,盛り土の下部に崩落事故後に設置したようなよう壁(甲37の1ないし7)を設置しなかったことが設置・保存の瑕疵に当たる旨主張するが,そのように判断すべき証拠は一切なく,1審原告の上記主張は採用できない。 したがって,1審原告の上記主張は採用できない。」 同22頁16行目から同23頁12行目を削除する。 同23頁13行目を「(2)1審被告Aの主張する崩落形態について」と改める。 同26頁15行目を削除し,同16行目の「a」を「(ア)」と,同27頁2 行目の「b」を「(イ)」と,それぞれ改める。 同27頁10行目の次に改行して,以下のとおり加える。 「1審原告はまた,E鑑定は平常時の斜面安全率を「土のせん断強度c=2. 0tf/㎡,φ=25°」としており,φ(せん断抵抗角)についてボーリング調査の結果に基づくN値を前提としたものではないから,その安定解析の結果は信用性に乏しい旨主張するが,E鑑定の上記部分は,最悪の条件によっても斜面が安全であることを示したにすぎないから,せん断抵抗角がボーリング調査の結果に基づくN値を前提としないとしても,これをもって安定解析の結果が信用性に乏しいということにはならないというべきである。」 同27頁11行目から13行目を,以下のとおり改める。 「(ウ)以上によれば,E鑑定の前記ア(ウ)の斜面安定解析の結果には合理性がある。そして,上記1の認定,判断のとおり,元の地山上の1.7mの盛り土が崩落したものとは認められず,本件全証拠によっても,これら以外に斜面崩落の原因を窺わせる事情は認められないことを総合すると,本件崩落地においては,E鑑定の上記解析結果のとお 山上の1.7mの盛り土が崩落したものとは認められず,本件全証拠によっても,これら以外に斜面崩落の原因を窺わせる事情は認められないことを総合すると,本件崩落地においては,E鑑定の上記解析結果のとおり,せん断破壊による斜面崩落が発生したものと認めるのが相当である。 そこで,次に斜面の先を浸食・除去した雨水の原因について判断する。」 同27頁13行目の次に改行して「(3)雨水による崩落原因について」を加え,同14行目の「(イ)」を「ア」と,同21行目の「生じたこと」を「生じたことを」とそれぞれ改める。 同28頁8行目の「流入したとしても,」の次に「それのみで」を加え,同9行目の「それによって」を「それのみによって」と,同11行目から13行目を以下のとおり,それぞれ改める。 「イ本件ブロック塀による雨水貯留の有無について次に,1審原告宅の本件ブロック塀によって雨水がせき止められて本件 崩落地斜面先に貯留したことにより,斜面の先が除去されたか否かについて判断する。 証拠(甲16,乙3,1審原告,1審被告A)によれば,本件ブロック塀によって雨水が貯留した状況を現認した者はいないこと,平成9年に本件ブロック塀付近の本件崩落地側に内径10㎝の透水管が設置され,以後はブロック塀の付近において水が抜けるようになったことが認められるところ,本件崩落事故時におけるブロック塀の設置状況の詳細が不明であり,本件被害地の西側隣地のブロック塀との間の隙間から雨水が流出していった可能性も考え得ること(甲35),その時に隙間に堆積した土砂が雨水をせき止める働きをしたかどうかは不明であること,上記のとおり,本件側溝からの具体的な溢水量は不明であることを総合すると,本件崩落事故時において,本件崩落地の斜面の先に本件ブロック塀にせき止められた雨水が貯留した可 したかどうかは不明であること,上記のとおり,本件側溝からの具体的な溢水量は不明であることを総合すると,本件崩落事故時において,本件崩落地の斜面の先に本件ブロック塀にせき止められた雨水が貯留した可能性は否定できないものの,それにとどまるものであり,仮に貯留したとしても,その時間や量などの詳細は不明といわざるを得ないというべきである。」 同28頁14行目から同29頁4行目までを,以下のとおり改める。 「ウ未曾有の豪雨による天災との主張について以上に判示したとおり,本件崩落事故は,雨水により斜面の先が除去された結果,せん断破壊により発生したものと判断するのが合理的であるが,斜面の先を除去する結果になったのが,本件側溝からの溢水によるものか,本件ブロック塀にせき止められて貯留した雨水によるものか,あるいは降り続けた雨水によるものかといった詳細は,これを特定することができないものといわなければならない。 しかしながら,前提事実で認定したとおり,本件崩落事故は,平成12年9月12日午後0時30分ころに発生したものであるところ,いわゆる東海豪雨は,その前日から本件崩落事故発生当日にかけて降った記 録的豪雨であり,本件崩落地からわずか3~400m程度西に位置する名古屋地方気象台において,同月11日午後6時ころから観測された1時間の雨量は観測史上最大であったのみならず,同日の1日雨量及び同日午前5時から同月12日午前5時までの最大24時間雨量は,従来の観測値の約2倍に近いほどの未曾有の豪雨であったものであり,本件崩落事故発生時と対比すると,その前日から当日の本件崩落事故発生時までの未曾有の豪雨の累積が本件崩落事故に影響を与えたことは容易にこれを推認することができるというべきである。 そうすると,本件側溝からの溢水,本件ブロック塀にせき止 前日から当日の本件崩落事故発生時までの未曾有の豪雨の累積が本件崩落事故に影響を与えたことは容易にこれを推認することができるというべきである。 そうすると,本件側溝からの溢水,本件ブロック塀にせき止められた貯留雨水や,斜面の先に降り続けた雨水など,これらのすべて,あるいはその一部が重なって斜面の先を浸食し,それを除去したものと推認するのが相当というべきである。 そして,東海豪雨は上記のとおり未曾有の豪雨であり,その程度に照らせば,通常予測し得る範囲を超えたものということができるから,本件側溝の処理能力や本件ブロック塀の存在及び強度が通常有すべき安全性を欠くなど,本件崩落事故と何らかの関連を有していたか否かを検討するに際しては,東海豪雨を前提とするのは相当でなく,せいぜいこれまでの最大雨量を前提とするのが相当というべきである。 しかして,本件崩落事故からその4,5年前までだけでも,本件崩落地付近に最大24時間雨量が150㎜以上であったことが数回あり,本件崩落事故の前年である平成11年9月14日にも,1時間雨量65. 5㎜という観測史上10位に当たる豪雨があったが,本件崩落地にこれまで何らの問題が生じたことはなかったものである(甲35,乙16)から,本件側溝の処理能力や,本件ブロック塀の存在及び強度に通常有すべき安全性を欠くなどの問題があったと認めることはできない。また,本件崩落地には,1審原告が主張するような1.7mの盛り土があった ことを認めることはできず,これまでの豪雨に対する上記状況に照らしても,本件崩落地の土地自体の管理に何らかの問題があったということもできない。 そうすると,本件側溝からの溢水や斜面に直接降り込んだ雨水によって貯留雨水が生じ,それと土砂によって本件ブロック塀が倒壊したとしても,これをもって本件側溝の処理能力 があったということもできない。 そうすると,本件側溝からの溢水や斜面に直接降り込んだ雨水によって貯留雨水が生じ,それと土砂によって本件ブロック塀が倒壊したとしても,これをもって本件側溝の処理能力や本件ブロック塀の存在や強度に問題があったということはできず,また,本件崩落地の管理にも問題があったということはできないのであるから,結局,本件崩落事故は不可抗力によるものであったと推認するのが相当というべきである。 (4)不当利得返還請求についてア証拠(乙7,8の1ないし3,訴訟承継前の証人B,1審原告,1審被告A)及び弁論の全趣旨によれば,1審被告らは,1審原告から,本件被害地に流入した本件土砂の処理等に関して連絡を受け,平成12年9月23日,1審原告宅に赴き,本件土砂の処理等に関する要請を受け入れ,1審被告らの責任においてこれを除去する旨承諾したこと,1審被告らは,株式会社F(以下「F」という。)に対し,本件崩落地や本件被害地の復旧や土砂の除去等に関する作業を依頼し,そのころ,Fは上記作業を了したこと,作業終了後も1審被告らから1審原告に対し,実際に代金の負担を求めたことはなかったことが認められる。 イ以上の認定事実によれば,1審原告方に流入した本件土砂は,1審被告ら所有の本件崩落地から流入した1審被告らの所有物であるところ,被害を受けた1審原告が,1審被告らに対し,本件土砂の処理等を要請したのであるから,1審原告は1審被告らの費用負担で本件土砂を除去することを要請したものと解するのが合理的である。 しかして,1審被告らは1審原告の上記要請に対し,その費用負担について別途精算するなどの特段の留保もなくこれを承諾して実行したの であるから,1審被告らの費用負担により本件土砂を除去する旨承諾したものと認めるのが相当というべきであ 請に対し,その費用負担について別途精算するなどの特段の留保もなくこれを承諾して実行したの であるから,1審被告らの費用負担により本件土砂を除去する旨承諾したものと認めるのが相当というべきである。1審被告らが,その後も1審反訴に至るまで1審原告に対し費用負担を求めていないことはこれを裏付けるものということができる。 そうすると,本件土砂の除去費用について,1審被告Aの負担により,1審原告がその負担を免れる利得を得たとしても,それは双方の合意という法律上の原因に基づくものということができるから,1審被告Aの1審原告に対する不当利得返還請求は理由がないといわなければならない。」第4 結論 以上によれば,1審原告の1審被告らに対する各請求及び1審被告Aの1審原告に対する反訴請求はいずれも理由がなく,これと結論を同じくする原判決は相当である。 よって,1審原告及び1審被告Aの本件各控訴はいずれも理由がないから,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第1部裁判長裁判官坂本慶一裁判官山崎秀尚裁判官山下美和子
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