昭和35(う)1581 贈賄収賄業務上横領等被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和36年6月29日 福岡高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件各控訴を棄却する。          理    由  本件各控訴の趣意は、記録に編綴の弁護人免出礦(被告人A、同B、同C、同D 関係)、弁護人荒木新一(被告人B関係)、弁護

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判決文本文10,482 文字)

主文 本件各控訴を棄却する。 理由 本件各控訴の趣意は、記録に編綴の弁護人免出礦(被告人A、同B、同C、同D関係)、弁護人荒木新一(被告人B関係)、弁護人高良一男(被告人E関係)各自提出の控訴趣意書に記載のとおりであるから、これを引用する。 弁護人免出礦の控訴趣意第二、一、1、について。 所論は、原判示(被告人A外三名関係の判決、以下同じ)第二、(一)の電気洗濯機は被告人Aが被告人Eの妻Fに贈つたもので、同被告人に対しその職務に関して供与したものではないと主張する。 しかし原判決挙示の関係各証拠によれば、被告人Aは有限会社Aタクシーの発起人代表として昭和三〇年三月二五日頃福岡陸運局長宛の一般乗用旅客自動車運送事業経営免許申請書を能本県陸運事務所に提出していたところ、右申請書の形式的審査、福岡陸運局長に対する進達、調査回答等の職務権限を有する同事務所長たる被告人Eが電気洗濯機を欲しがつていることを聞知したので同被告人にこれを贈つて右営業免許に関し便宜な取計いを受けようと考え、同年七月頃電気洗濯機一台を三輪車に積んで自ら同被告人の自宅に赴き、同被告人不在のためその妻Fに対し「隈府のAですが電気洗濯機を持つて来ましたから使つて下さい、御主人に宜敷伝えて下さい」と申向けてこれを贈呈し、以て被告人Eに対しその職務に関して電気洗濯機一台を供与した事実を肯認するに十分である。右洗濯機が留守居をしていた被告人の妻に手渡され且つ専ら同女がこれを使用する立場にある一事を捉えてその供与を受けたものが同被告人でなくして妻であるとする所論は、被告人Aの真意に目を蔽い外形に捉われた形式論理たるの機を免れない。記録を精査しても原判決に所論の如き事実誤認は存しない。論旨は理由がない。 同控訴趣意第二、一、2、について。 であるとする所論は、被告人Aの真意に目を蔽い外形に捉われた形式論理たるの機を免れない。記録を精査しても原判決に所論の如き事実誤認は存しない。論旨は理由がない。 同控訴趣意第二、一、2、について。 所論は、原判示第二、(二)、(三)の現金二万円と一万円はいずれも被告人Aが熊本県陸運事務所の接待費その他の諸経費に充てるため同事務所に寄附したものであつて被告人Eに供与したものでないと主張する。 しかし原判決挙示の関係証拠によれは、被告人Aはかねて熊本県陸運事務所に提出していた福岡陸運局長宛の一般乗用旅客自動車運送事業経営免許申請が昭和三〇年八月三一日附を以て免許されたので、これに対する謝礼並ひに将来便宜な取計いを依頼するための謝礼として同所長たる被告人Eに現金を贈ることとし、同年一一月上旬同事務所に赴き輸送課庶務係長Gに対し「免許になつて色々御世話になりました、これで所長さんあたりと一杯飲んで下さい」と申向け金二万円を渡してこれを被告人Eに手交させ、更に同被告人に「Gさんにお願してもきましたから一緒に飲みに行つて下さい」と申向け、以て右Gを介し右被告人に対してその職務に関し金二万円を供与した事実及び昭和三一年三月一三日頃同事務所に有限会社Aタクシーの小型車輌一台増車に伴う事業計画変更認可申請書を提出したところ同月一六日認可になつたので、右所長たる被告人Eに対しその謝礼等として現金を贈ることとし、同年四月三〇日頃同事務所に赴き庶務係長Gに対し「その節は増車のことで色々御世話になりました、所長さん方々と一杯飲んで下さい」と申向けて金一万円を渡して同被告人に手交させ、以て同人を介し右被告人に対してその職務に関し金一万円を供与した事実をそれぞれ肯認するに十分であり、右金二万円の供与が免許の日から二ケ月以上経過の後であることや右各金員が庶務係長G 被告人に手交させ、以て同人を介し右被告人に対してその職務に関し金一万円を供与した事実をそれぞれ肯認するに十分であり、右金二万円の供与が免許の日から二ケ月以上経過の後であることや右各金員が庶務係長Gを介して手交されたことは未だ以てそれが被告人Eに対しその職務に関してなされたことを否定すべき資料とはなし難い。記録を精査してもGの検察官に対するこの点に関する供述が所論の如く捜査官の誘導によるものとは認められずその他右供述の任意性、信用性を疑うべき事情は見出し難く、原判決に所論の如き事実誤認は存しない。論旨は理由がない。 同控訴趣意第二、二及び弁護人荒木新一の控訴趣意について。 所論は、いずれも原判示第三の三万円は被告人Bが被告人E個人に供与したものではなく、庶務係長Gの要求により熊本県陸運事務所に機密費として寄附したものであると主張する。 しかし、記録を精査し原判決挙示のGの検察官に対する各供述調書、裁判官の同人に対する起訴前の証人尋問調書を仔細に検討すれば、右各調書の信用性を疑うべき事情は見出し難い。そして挙示の関係各証拠就中前示各調書によれば、被告人Bは昭和三〇年七月二五日頃熊本県陸運事務所に福岡陸運局長宛の一般乗用旅客自動車運送事業免許申請書を提出していたところ、同年一一月一六日頃その免許を受けたので同月下旬頃同事務所の関係係官にお礼に廻り、次いで熊本市a町H旅館に同所長たる被告人Eを尋ね前示免許のお礼を述べて御馳走した上、更に免許の謝礼として同被告人に現金を贈ることとし、庶務係長Gに対し「免許に色々御世話になりましたからこれを所長に取次いで一杯飲んで下さい」と申向けて現金三万円入の封筒を同人に渡し、同人は翌日同事務所において右の旨を被告人Eに伝えて右三万円を手交し、かくて被告人BはGを介して被告人Eに対しその職務に関して金三万円 いで一杯飲んで下さい」と申向けて現金三万円入の封筒を同人に渡し、同人は翌日同事務所において右の旨を被告人Eに伝えて右三万円を手交し、かくて被告人BはGを介して被告人Eに対しその職務に関して金三万円を供与したものにして、これを同事務所にその機密費として寄附したのではない事実を肯認するに十分である。所論はいずれも原審の採用しない証拠に基き原審が適法になした事実認定を論難するもので採用し難く、原判決に所論の如き採証の誤、事実誤認は存しない。論旨は理由がない。 弁護人免出礦の控訴趣意第二、三について、所論は、原判示(被告人D関係の判決)二万円は被告人DがGに貸与したもので、被告人Eに対しその職務に関して供与したものではないと主張する。 しかし原判決挙示の各証拠によれば、有限会社Iタクシー代表取締役たる被告人Dは同業者Jタクシーの進出に対抗するため熊本市b町の国立病院前に営業所を新設する計画を立て昭和三二年二月一八日頃該営業所新設に伴う一般乗用旅客自動車運送事業計画変更認可申請書を熊本県陸運事務所に提出していたので翌一九日頃同事務所に赴き右認可につき便宜な取計いを依頼するため同所長たる被告人Eに現金を贈ることとし、庶務係長Gに対し「営業所新設のことでお世話になりますからこ九を所長にやつて下さい」と申向けて現金二万円入の封筒を渡し、同人は翌日同事務所において右被告人に右の旨を伝えてこれを手交し、かくて被告人Dは被告人Eに対しその職務に関して金二万円を供与した事実を肯認するに十分である。なるほど、被告人D、同E及びGの司法警察員に対する各供述調書を検討すれば、いずれも所論の如き供述の変遷と相違のあることは否み得ないが、記録を精査すれば該事実は未だ以て被告人D、Gの検察官に対する各供述調書、裁判官の同人に対する起訴前の証人尋問調書の任意性、信用 すれば、いずれも所論の如き供述の変遷と相違のあることは否み得ないが、記録を精査すれば該事実は未だ以て被告人D、Gの検察官に対する各供述調書、裁判官の同人に対する起訴前の証人尋問調書の任意性、信用性を疑うべき資料とはなし難く、その他かかる疑をさしはさむべき事情は見出し得ない。原判決に所論の如き採証の誤、事実誤認は存しない。論旨は理由がない。 同控訴趣意第二、四について。 所論は、原判示(被告人A外三名関係の判決)第一の二万円は授受されていないのに拘らず原判決は被告人Cと被告人Eの検察官及び司法警察員に対する虚偽の各自白を採用してこれを肯定し、しかも憲法第三八条第三項に違反し被告人本人の自白のみによつて犯罪事実を認定した違法があると主張する。 よつて記録を精査するに、被告人C、同Eはいずれも原審第六回公判において両名が原判示現金二万円を授受したことは相違ない旨を自白しており、只その趣旨を争い熊本県陸運事務所の経費に充てるためのものであつたと弁解しているのであり、所論の如き不純な動機から右自白をしたものとは認められない事実並びに被告人Cは司法警察員の四回に亘る取調と検察官の取調に際し終始一貫して営業免許の謝礼等としてLにおいてEに現金二万円をやつた旨自白している事実を参酌して、右各供述調書及び被告人Eの検察官に対する自白の供述調書を仔細に検討し、更に原審証人Kの証言を併せ考察すれば、捜査官が右被告人両名の取調に際し所論の如き強制、脅迫、誘導、甘言等を用いて虚偽の自白を求めた形跡は見出し難く、その他右各供述調書の自白の任意性、信用性を疑うべき事情は窺われない。そして、原判決挙示の関係各証拠によれば被告人CはM株式会社発起人代表としてさきに熊本県陸運事務所に提出していた福岡陸運局長宛の一般旅客自動車運送事業経営免許申請が昭和三〇年五月一二日 窺われない。そして、原判決挙示の関係各証拠によれば被告人CはM株式会社発起人代表としてさきに熊本県陸運事務所に提出していた福岡陸運局長宛の一般旅客自動車運送事業経営免許申請が昭和三〇年五月一二日附を以て免許されたので、同月下旬同事務所に赴いて同所長たる被告人Eに免許の謝辞を述べた後、同被告人を熊本市c町の旅館Lに招待した上右営業免許の謝礼や今後タクシー営業につき便宜な取計いを依頼する趣旨を以て同被告人に対し「これは私のほんの志だけですがお礼のしるしですから納めて下さい」と申向けて白紙包の現金二万円を手渡し、以て同被告人に対しその職務に関して右金二万円を供与した事実を肯認するに十分である。そして原判決は被告人Cの検察官に対する自白の供述調書以外に相被告人Eの検察官に対する自白の供述調書等を補強証拠として右事実(原判示第一事実)を肯定したものであつて、被告人C本人の自白のみによつて有罪を認めたものではないから、憲法第三八条第三項違反の違法は存しない。 記録を精査しても原判決に所論の如き採証の誤、事実誤認は存しない。論旨は理由がない。 弁護人高良一男の控訴趣意第一点(一)について。 所論は、一般乗用旅客自動車運送事業経営免許申請等についての熊本県陸運事務所長の権限は申請書の形式的審査、陸運局長に対する進達、認可書の交付にとどまり同所長の自由裁量権はなく、また認可に際して被告人Eが側面より運動した事実もないと主張する。 しかし、同被告人関係の原判決挙示の関係証拠就中俵口東海の検察官に対する供述調書によれば熊本県陸運事務所長は福岡陸運局長宛に提出される一般乗用旅客自動車運送事業経営免許申請書、事業計画変更認可申請書の受理、形式的審査、同局長に対する進達のみならず、右申請事項に関する同局長の照会に対する調査回答及び熊本県知事宛に提出せられ される一般乗用旅客自動車運送事業経営免許申請書、事業計画変更認可申請書の受理、形式的審査、同局長に対する進達のみならず、右申請事項に関する同局長の照会に対する調査回答及び熊本県知事宛に提出せられる車両増減に伴う事業計画変更認可申請に関する審査及びこれが認可の代決権限を有していた事実が認められるから、右申請者において陸運事務所長たる被告人Eに対し申請事項につき便宜な取計いを依頼する余地がないとはいい難く、同被告人が陸運局長の認可が得られるよう積極的に運動した事実がないとしても、これを以て直ちに同被告人に対する賄賂の供与も否定すべき資料とはなし難い。論旨は理由がない。 同控訴趣意第一点(三)、1、について。 所論は、原判示(被告人E関係の判決、以下同じ)第一の現金二万円については被告人Eは被告人Cよりこれを受取つたことなく、この点に関する右各被告人の捜査官に対する自由は虚偽のものであり、また仮りに右現金の授受がなさ九たとしてもそれは熊本県陸運事務所に対する寄附金であると主張する。 本論旨に対する判断は、弁護人免出礦の控訴趣意第二、四に対する判断と同一であるからこれを引用する。 同控訴趣意第一点、(三)、2について。 所論は、電気洗濯機は一般乗用旅客自動車運送事業免許申請書を提出してより四ケ月を経過し該手続が被告人Eの職務権限と全く離れ九時期において贈られたものであるから、収賄罪を構成しないと主張する。 しかし、原判決挙示の関係証拠によれば原判示第二の電気洗濯機は一般乗用旅客自動車運送事業経営免許申請書を熊本県陸運事務所に提出していた被告人Aが、右免許に関し同所長たる被告人Eの好意ある取計いを依頼する趣旨を以て同被告人に供し、同被告人も亦該趣旨を察知してこれを収受したものであり、しかも申請後四ケ月を経過し当時右申請書が既に福岡陸運局 が、右免許に関し同所長たる被告人Eの好意ある取計いを依頼する趣旨を以て同被告人に供し、同被告人も亦該趣旨を察知してこれを収受したものであり、しかも申請後四ケ月を経過し当時右申請書が既に福岡陸運局長に進達されていたとしても、未だ免許前であつて同被告人はなお同局長の調査依頼に回答し或は免許書を交付する等の職務権限を有していた事実が認められるから、同被告人はその職務に関して右電気洗濯機を収受したものと断ずべきのみならす、仮りに右免許手続が終了し同被告人の関与する余地がなくなつた後においてその供与を受けたとしても、同被告人は右申請書の受理、進達、調査回答等の職務権限を有し、しかも前記供与の趣旨を察知していたものであるから、その職務に関してこれを収受したものといわねばならない。原審が被告人の右所為を収賄罪に問擬したのはまことに相当であり、原判決に所論の如き事実誤認は存しない。論旨は理由がない。 同控訴趣意第一点(二)及び(三)、3、について。 所論は、原判示第三の二万円及び第五の三万円はいずれも被告人Eに供与されたものではなくて、当時熊本県陸運事務所は会議費や接待費の捻出に困つていたのでその財源に充てるため同事務所に寄附されたものであると主張する。 しかし、原判決挙示の関係各証拠によれば原判示第三、第五のとおり被告人Eの収賄の各事実は優に認められ、原判決に所論の如き事実誤認は存しない。論旨は理由がない。なお詳細については弁護人免出礦の控訴趣意第一、一、2及び同弁護人の控訴趣意第二、二、弁護人荒木新一の控訴趣意に対する前示判断により諒解すべきである。 同控訴趣意第二点、1、について。 所論は、被告人Eは被告人Aが小型車両一台増車について事業計画変更認可申請書を提出したこと及びそれが認可されたことを知らなかつたものであるから、原判示第四の一 同控訴趣意第二点、1、について。 所論は、被告人Eは被告人Aが小型車両一台増車について事業計画変更認可申請書を提出したこと及びそれが認可されたことを知らなかつたものであるから、原判示第四の一万円が同被告人の職務に関して授受されるいわれはなく、仮りに然らずとするも右一万円は熊本県陸運事務所に対する寄附であると主張する。 なるほど被告人Aの認可申請に対する一般乗用旅客自動車運送事業計画変更(小型一両増車)認可についてと題する熊本県陸運事務所の書面(証第一号)によれば、該認可は所論の如く当日所長たる被告人E不在のため輸送課長Nが代決したものなることが認められるけれども、右書類の決裁欄における不在後覧という記載に徴すれば同被告人は後日これを閲覧して右申請と許可を諒承していたことが看取される。のみならず、原判決挙示の関係証拠就中Gの検察官に対する供述調書、裁判官の同人に対する起訴前の証人尋問調書、被告人Aの検察官に対する供述調書によれば、被告人Aは昭和三一年三月一三日熊本県陸運事務所に提出していた熊本県知事宛の有限会社Aタクシーの小型車両一台増車に伴う事業計画変更認可申請が同月一六日認可になつたので、同所長たる被告人Eにその謝礼をなすこととし、同年四月三〇日頃同事務所に赴き庶務係長Gに対し「その節は増車のことで色々御世話になりました、所長さん方々と一杯飲んで下さい」と申向けて金一万円を渡したので同人は即日同被告人に右の旨を伝えて該一万円を手交した事実が認められるから、同被告人は右金員を収受し大際それが被告人Aの増車に伴う事業計画変更申請認可に対する謝礼であることを察知していんものというべく、しかして、右輸送課長Nがした前記認可は本来熊本県知事の認可代決権限を有する熊本県陸運事務所長たる被告人Eの権限を代行したものであるから、同被告人はその る謝礼であることを察知していんものというべく、しかして、右輸送課長Nがした前記認可は本来熊本県知事の認可代決権限を有する熊本県陸運事務所長たる被告人Eの権限を代行したものであるから、同被告人はその職務に関して右一万円を収受したものといわねばならない。論旨は理由がない。 同控訴趣意第二点、2について。 所論は、原判示第六の二万円は被告人DがGに貸与したものか、然らずんば同被告人が上の県陸運事務所に寄附したものであると主張する。 本論旨に対する判断は、弁護人免出礦の控訴趣意第二、三に対する判断と同一であるからこれを引用する。 同控訴趣意第三点、1、について。 所論は、原判示第七の金七万円は被告人Eが熊本県陸運事務所に雑役務費として配付された一〇万円中より福岡陸運局の諒解を得て必要経費である接待費に流用したものであり、しかもこれは同一目内の細目間の流用で同被告人の権限に属し、同被告人はかかる流用が許されたものと信じていたのであるから、違法の認識を欠き横領罪を構成しないと主張する。 しかし、原判決挙示の関係各証拠によれば被告人Eは上級官庁よりの来客の接待以外に個人的に頻りに料亭旅館に出入して遊興飲食しその支払資金の捻出に窮していたところ、昭和三〇年一二月下旬頃庁用自動車修理費予算一〇万円が配付されたので、輸送課長N、庶務係長Gと相図り内金七万円を当時未払となつていた右遊興飲食費の支払に充てることとし、両名に指示してO交通株式会社係員に依頼して熊本陸運事務所が同会社に庁用自動車修理費一〇万円を支払つた旨の虚偽の修理見積書、請求書、領収書等を作成して貰つて右予算を現金化した上、内金三万円をP自動車販売株式会社に対する庁用自動車修理残金の一部支払に充て、その残額七万円を被告人の前示遊興飲食費に支払わしめた事実が肯認されるから、該金員につき被 て貰つて右予算を現金化した上、内金三万円をP自動車販売株式会社に対する庁用自動車修理残金の一部支払に充て、その残額七万円を被告人の前示遊興飲食費に支払わしめた事実が肯認されるから、該金員につき被告人が業務上横領罪の責に任ずべきは多言を要しない。なるほど、記録によれば当時熊本県陸運事務所に対しては接待費の予算配付がなく、上級官庁よりの来客に対し、公費を以て接待できなかつたことは否み得ないが、かかる来客を料亭、旅館等に招待して饗応することが当時同事務所の業務運営上不可欠の必要事であつたと認むべき根拠がないから、自動車修理費を右接待費に流用支出した事を以てもとより同被告人に不法領得の意思がなかつたものと断定し得ないのみならず、原判決挙示の関係各証拠に当時同被告人が頻りに料亭、旅館に出入して個人的に遊興飲食し種々策を弄してその支払資金を捻出していた事実を併せ考察すれば、同被告人が上級官庁よりの来客を料亭、旅館に招待して饗応したとしても、それは自己の放慢専恣な遊興飲食の一環としてさして必要もないのに接待に藉口して飲食したものと断ずるのが相当である。従つて本件七万円を以て支払に充てられた遊興飲食費中に被告人の個人的飲食費の外、仮りに右接待費と称するものが多少含まれていたとしても、該支払がすべて横領罪を構成することに変りはないのである。 そして、挙示の証拠によれば同被告人が自動車修理費をかかる飲食費や接待費に流用することを福岡陸運局が予め諒承していた事実は認め難く、被告人においてかかる流用が予算の操作として許されるものと信じていたとしても、それは単なる法律の錯誤というべく違法の認識は犯意の成立要件ではないからかかる事由は毫も横領罪の成立に消長を及ぼすものではない。記録を精査しても原判決に所論の如き擬律錯誤、事実誤認は存しない。論旨は理由がない。 律の錯誤というべく違法の認識は犯意の成立要件ではないからかかる事由は毫も横領罪の成立に消長を及ぼすものではない。記録を精査しても原判決に所論の如き擬律錯誤、事実誤認は存しない。論旨は理由がない。 同控訴趣意第三点、2、について。 所論は、当時熊本県陸運事務所には係官が不足し自動車臨時運行許可申請事務が渋滞していたので、被告人Eは専ら右事務を促進するため業者に実情を打明け右申請に際し正規の手数料の外に五〇円の出捐を受けこれを以て別に係員を採用して申請事務を処理して来たものであり、かかる行為が罪となるとは夢想だにしなかつたもので違法の認識を欠いているから、第三者収賄罪は成立しないと主張する。 しかし、原判決挙示の関係各証拠によれば原判示第八事実は優に認められ、更に右証拠に原審において取り調べた広田友春の検察官に対する供述調書、Gの司法警察員に対する昭和三二年三月二〇日附供述調書を参酌してこれを敷衍すれば次の各事実が認められる。すなわち熊本県陸運事務所においては従来自動車臨時運行許可申請に関する事務処理が渋滞し勝ちであつたため、同所長たる被告人Eは正規の係官以外に一名の係員を置いてこれが事務処理を促進させることとし、その財源を捻出するため右申請をすべてQ自動車組合を経由させ且つ申請に際しては正規の手数料以外に普通自動車一台につき五〇円、自動二輪車一台につき二五円、軽自動車一台につき一〇〇円を右組合に納入させて組合より係員増員費用の補給を受けることとし、昭和三〇年三月同事務所に自動車販売業者等十数名を集め右の旨を告げてその承諾を得たのである。しかして爾来業者はすべて右組合を経由して同事務所に自動車臨時運行許可申請をなし、申請の都度正規の手数料以外に二五円乃至一〇〇円を同組合に納入し更に組合は該収入金より係員一名分の費用を同事務所に提供し かして爾来業者はすべて右組合を経由して同事務所に自動車臨時運行許可申請をなし、申請の都度正規の手数料以外に二五円乃至一〇〇円を同組合に納入し更に組合は該収入金より係員一名分の費用を同事務所に提供し、同被告人は該提供金を以て係員を採用して自動車臨時運行許可申請事務の処理に当らしめて来たのである。ところが、同被告人は自己や同事務所職員の正規に認められない交際費、飲食費等の額が著しく嵩んだためその捻出を図り右組合の法定外収入金の全額を同事務所に供与させようとし、同年一二月中旬より自動車臨時運行許可申請を一切前示組合を経由しないで直接同事務所になさしめてこれを許可すると共に、申請人が納める多額の右法定外収入金をすべて同事務所に供与させた上、該金員中より右組合に毎月一万円を配分し且つ係員一名の給料を支払う外、その大部分を挙げて自己や同事務所職員の正規に認められない飲食費、交際費等の支払に充当して来たのである。また一方、各自動車販売業者等が自動車臨時運行許可申請に際し正規の手数料以外に前示金員を同事務所に供与した所以のものは畢竟自己が提出する自動車臨時運行許可申請に対し可及的速かにその許可を得んがための謝礼の趣旨に外ならなかつたものであり、また同事務所長たる被告人Eはその趣旨を諒承していたのである。 <要旨>以上によりみると、自動車臨時運行許可申請に対する許可は熊本県陸運事務所長たる被告人Eの職務</要旨>権限に関する事項であり、自動車販売業者等の右許可申請は正当な職務行為発動の要請ではあるがいわゆる請託に該当し、許可申請の際の同事務所に対する正規の手数料以外の金員の供与は右許可に対する代償たる性質を具有するものであるから、熊本県陸運事務所長たる被告人Eが自動車販売業者の自動車臨時運行許可申請に際し右業者より同事務所に正規の手数料以外に職員の交 料以外の金員の供与は右許可に対する代償たる性質を具有するものであるから、熊本県陸運事務所長たる被告人Eが自動車販売業者の自動車臨時運行許可申請に際し右業者より同事務所に正規の手数料以外に職員の交際費等に当てるべき金員を供与させて申請を許可すれば、刑法第一九七条の二の第三者収賄罪が成立するものといわねばならない。 そして、同被告人が右所為を罪とならないものと信じていたとしても、それは単なる法律の錯誤であつで違法の認識を欠いたに過ぎないから犯意の成立を阻却するいわれはなく、かかる事由は毫も本罪の成立に消長を及ぼすものではない。記録を精査しても原判決に法令適用の誤、事実誤認は存しない。論旨は理由がない。 そこで、刑事訴訟法第三九六条に則り本件各控訴を棄却することとし主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官藤井亮裁判官中村荘十郎裁判官臼杵勉)

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