令和3(行コ)64 所得税更正処分等取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和4年7月20日 大阪高等裁判所
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判決文本文12,531 文字)

言渡令和4年7月20日交付令和4年7月20日裁判所書記官 - 1 -令和3年(行コ)第64号所得税更正処分等取消請求控訴事件(原審大阪地方裁判所平成31年(行ウ)第51号) 主文 1 原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。 2 上記取消しにかかる被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、第1、2審とも、被控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴の趣旨主文と同旨 2 控訴の趣旨に対する答弁本件控訴を棄却する。 第2 事案の概要 1 控訴に至る経緯等⑴ 本件は、承継前一審原告Aが、平成26年分の所得税及び復興特別所得税 (以下「所得税等」と総称する。)について、収入の計上の誤り等を理由とする更正の請求(以下「本件更正請求」という。)をしたところ、処分行政庁から、更正すべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)を受けたほか、Aの子である被控訴人B及び同Cを賃貸人として第三者に賃貸されたA所有土地の賃料に係る収益はAに帰属するとして、増額更正処分 (以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい、本件更正処分と併せて「本件更正処分等」という。また、本件通知処分と本件更正処分等を併せて「本件各処分」という。)を受けたことから、控訴人に対し、本件各処分の取消しを求める事案である。 ⑵ 原審は、本件訴えのうち、①本件通知処分の取消請求に係る部分及び②本 - 2 -件更正処分のうち更正の請求額を超えない部分(不動産所得の金額1804 消しを求める事案である。 ⑵ 原審は、本件訴えのうち、①本件通知処分の取消請求に係る部分及び②本 - 2 -件更正処分のうち更正の請求額を超えない部分(不動産所得の金額1804万5491円及び納付すべき税額(予定納税額控除前のもの)472万7600円を超えない部分)の取消請求に係る部分について、いずれも訴えの利益を欠く不適法なものであるとして却下し、③本件更正処分の取消請求のうち本件更正請求における請求額(不動産所得の金額1804万5491円、 納付すべき税額(予定納税額控除前のもの)472万7600円)を超える部分及び本件賦課決定処分の取消請求についてはこれらを認容する判決(原判決)を言い渡したところ、控訴人が敗訴部分を不服として控訴した。 したがって、当審においては、上記認容部分(③)に対する控訴人の控訴の当否のみが審理判断の対象となるものである。 なお、Aは原審口頭弁論終結後の令和3年▲月▲日に死亡したため、その長男である被控訴人B、長女である被控訴人C及び養女である被控訴人D(各法定相続分3分の1)が、共同相続人として訴訟承継し、当審において、Aの上記③の各請求につき、第一審判決主文2項を「処分行政庁が、平成29年3月23日付けでしたAの平成26年分の所得税及び復興特別所 得税の更正処分のうち、不動産所得の金額1804万5491円及び納付すべき税額472万7600円を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。」と更正すべき旨を申し立てた。 2 関係法令等の定め、前提事実、主たる争点及び主たる争点に関する当事者の主張は、以下のとおり原判決を補正し、次項に当審における当事者の主張を加 えるほかは、原判決の「事実及び理由」の第2の2(関係法令等の定め)、3(前提 主たる争点及び主たる争点に関する当事者の主張は、以下のとおり原判決を補正し、次項に当審における当事者の主張を加 えるほかは、原判決の「事実及び理由」の第2の2(関係法令等の定め)、3(前提事実)、4(主たる争点。ただし、⑴及び⑵を除く。)及び5(主たる争点に関する当事者の主張。ただし、⑴及び⑵を除く。)のとおりであるから、これを引用する。なお、以下引用部分においては全て「原告」を「A」と、「B」を「被控訴人B」と、「C」を「被控訴人C」と、それぞれ読み替える。 ⑴ 原判決4頁19、20行目の「以下「B」という。」及び21、22行目 - 3 -の「(以下「C」という。)」をいずれも削除し、23行目の「既に死亡しており」から24行目末尾までを以下のとおりに改める。 「平成18年▲月に死亡しており、Aの子は被控訴人B及び同Cのほか、被控訴人Bの配偶者で平成28年▲月▲日にAと養子縁組の届出をした被控訴人D(昭和▲年▲月生)の3名である(弁論の全趣旨)。」 ⑵ 同6頁6行目の「合わせて」を「併せて」に改め、7行目の「「α土地」」の次に「と」を、9行目の「以下,」の次に「上記駐車場を「本件各駐車場」と総称し、」を、それぞれ加え、9、10行目の「本件各駐車場収入」を「本件各駐車場の収益」に改め、以下、引用にかかる「本件各駐車場収入」はいずれも「本件各駐車場の収益」と読み替える。 同8頁21行目冒頭から9頁14行目末尾までを以下のとおりに改める。 「 β土地使用貸借契約書の記載内容は、本判決別紙1のとおりであり、貸主欄にAの署名押印が、借主欄に被控訴人Bの署名押印がある(甲1)。 α土地使用貸借契約書の記載内容は、本判決別紙2のとおりであり、貸主欄にAの署名押印が、借主欄に被控訴人Cの署名押印がある(甲2 貸主欄にAの署名押印が、借主欄に被控訴人Bの署名押印がある(甲1)。 α土地使用貸借契約書の記載内容は、本判決別紙2のとおりであり、貸主欄にAの署名押印が、借主欄に被控訴人Cの署名押印がある(甲2)。」 同9頁18行目冒頭から24行目末尾までを以下のとおりに改める。 「 Aは、平成26年1月25日、被控訴人Bとの間で、β土地上に敷設されたアスファルト舗装・車止め・フェンスを被控訴人Bに贈与する旨の契約を締結し(乙8の1、33の1)、同日、被控訴人Cとの間で、α土地上に敷設されたアスファルト舗装を被控訴人Cに贈与する旨の契約(以下、上記各 アスファルト舗装部分を「本件各舗装部分」と、上記各贈与契約を「本件各贈与契約」と、それぞれ総称し、本件各贈与契約に係る各贈与契約書を「本件各贈与契約書」という。ただし、本件各贈与契約の効力等については、後記のとおり当事者間に争いがある。)を締結した(乙8の2、33の2)。」同9頁26行目、10頁1行目及び2行目の「B又はC」をいずれも「各 受贈者」に改める。 - 4 -同10頁6行目の「Bは、」の次に「Aからβ土地にかかる賃貸借契約の賃貸人たる地位を承継した」を、同行目の「以降、」の次に「平成27年7月1日までの間に」を、それぞれ加える。 ⑹ 同12頁22行目の末尾に改行の上、以下のとおり加える。 「⑾ Aは令和3年▲月▲日死亡した。Aの法定相続人は被控訴人ら3名であ る(弁論の全趣旨)。」⑺ 同21頁2行目、22頁6行目、23頁24行目及び24頁11行目の「本件舗装」をいずれも「本件各舗装部分」に改める。 ⑻ 同30頁8行目の「原告が所有する」を「当時Aが所有していた」に、25行目の「である」を「であった」に、それぞれ改める。 目の「本件舗装」をいずれも「本件各舗装部分」に改める。 ⑻ 同30頁8行目の「原告が所有する」を「当時Aが所有していた」に、25行目の「である」を「であった」に、それぞれ改める。 2 当審における当事者の主張⑴ 本件各使用貸借契約が有効に成立したかア被控訴人らの主張本件各贈与契約により、本件各土地に敷設された本件各舗装部分の所有権を取得したことを前提とする、同舗装部分の底地の使用貸借契約が 有効に成立していることは、原判決の判示のとおりである。 本件各舗装部分には、社会的・経済的にみて財産的価値があることは明らかであり、税法上、前記舗装部分を構築物として減価償却が認められていること(減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表一)に照らしても、資産としての財産的価値が認められているといえるから、前記 舗装部分を贈与する契約は少なくとも税法上は有効である。したがって、本件各舗装部分は贈与契約の対象となり、同舗装部分上で駐車場を営むことを目的とする本件各使用貸借契約も有効に成立している。 控訴人は、本件各舗装部分が土地に付合する旨を主張するけれども、民法は、権原者が不動産に付合させた物の一部について物権が成立し得 ることを認めている(民法242条ただし書)。さらに、付合が直ちに - 5 -生じることなく、独立した動産としての存在を失わないこともあり得るのであって、本件各贈与契約が原始的に無効となることはない。 仮に、本件各贈与契約による本件各舗装部分の所有権取得の物権的な効果に何らかの障害があったとしても、当事者の合理的意思としては、将来その障害が除去されればこれを与えるという停止条件付贈与契約が 成立していたと考えるべきである。すなわち、本件各舗装部分の付合が問題なのであれば、 ったとしても、当事者の合理的意思としては、将来その障害が除去されればこれを与えるという停止条件付贈与契約が 成立していたと考えるべきである。すなわち、本件各舗装部分の付合が問題なのであれば、同舗装部分が分離された場合にAは被控訴人B及び同Cに贈与するという停止条件付贈与契約が成立していたと考えるべきである。 仮に本件各舗装部分が土地に付合しているため、同部分に関する本件 各贈与契約が無効とされたとしても、付合した前記舗装部分を含む本件各土地を目的とする使用貸借契約(以下、この内容の使用貸借契約を含めて本件各使用貸借契約ということがある。)が有効に成立している旨を予備的に主張する。 あるいは、本件各贈与契約時のAの意思としては、本件各舗装部分や 車止めブロック、フェンスを用いて本件各駐車場を営んでもらおうとしていたし、そのことを受贈者たる被控訴人B及び同Cも合意していたのであるから、本件各贈与契約は、無償で、本件各土地上に地上権を設定する贈与契約であったとも考えられ、本件各使用貸借契約は、本件各舗装部分を含む本件各土地を被控訴人B及び同Cに使用させることを目的 とするものとして有効に成立している。 イ控訴人の主張被控訴人らは、本件各贈与契約が無効であったとしても、Aと被控訴人Bないし同Cとの間に、付合した本件各舗装部分を含む本件各土地を目的とする使用貸借契約が有効に成立している旨主張する。 しかしながら、Aと被控訴人Bないし同Cが、法的な合意内容を明確に - 6 -するために本件各使用貸借契約書等をわざわざ作成したにもかかわらず、同契約書等における法的な合意内容と異なる黙示の合意(Aが、被控訴人B及び同Cに対し、本件各土地を駐車場として賃借人に使用させ、賃料を収 めに本件各使用貸借契約書等をわざわざ作成したにもかかわらず、同契約書等における法的な合意内容と異なる黙示の合意(Aが、被控訴人B及び同Cに対し、本件各土地を駐車場として賃借人に使用させ、賃料を収受するという方法で使用収益することについて承諾していたこと)を別途行ったと認めるに足りる特段の事情は認められない。したがって、Aと 被控訴人Bないし同Cとの間に、付合した本件各舗装部分を含む本件各土地を目的とする使用貸借契約が成立していたとは認められない。 仮にかかる使用貸借契約が成立していたとしても、平成26年2月以降の賃料はAに帰属する。 ⑵ 仮に本件各使用貸借契約が有効に成立している場合、本件各駐車場の収益 がAに帰属するかア控訴人の主張土地所有者が当該土地について親族等との間で使用貸借契約を締結して、親族等が当該土地を駐車場として賃貸している場合であっても、その実質は土地所有者の承諾の下でその親族等が当該土地を駐車場として賃貸する 場合と異なるところはなく、その形式上、使用貸借契約を締結しているという一事のみをもって、当該土地から得られる収益(使用借主が第三者に同土地を賃貸して得られる収益等)が必ず使用借主に帰属するものと考えることはできないというべきである。仮に、親族等による駐車場の賃貸が、土地所有者の承諾によるものであるか、使用貸借契約の締結によるものか という一事をもって結論を異にするということになるというのであれば、土地所有者は、自らの出資により土地を取得しているにもかかわらず、当該土地から生じる収益について、形式的に使用貸借契約を介在させることで、所得の帰属を他者に容易に移転することができ、本来土地所有者に課されるべき所得税の負担を免れることになる。このような解釈は、実質所 じる収益について、形式的に使用貸借契約を介在させることで、所得の帰属を他者に容易に移転することができ、本来土地所有者に課されるべき所得税の負担を免れることになる。このような解釈は、実質所 得者課税の原則を有名無実化することにつながりかねず、相当でないこと - 7 -は明らかである。 そして、課税実務の運用においても、父親の土地を無償で借り、月極駐車場(青空駐車場のような簡易なもの)として賃貸し、それによって得られる利益を自ら費消している者について、同人が形式的・表面的に賃借人から得ているように見える利益は父親に帰属すると広く解されている。 以上の観点からすれば、仮に本件において、本件各使用貸借契約が有効であったとしても、その実質からみて、本件各駐車場の収益が誰に帰属しているかを判断すべきであり、本件の事実関係の下では、本件各駐車場の収益は本件各土地の「真実の権利者」であったAに帰属すると解すべきである。 イ被控訴人らの主張本件各駐車場の収益が被控訴人B又は同Cに帰属することは原判決判示のとおりである。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 認定事実は、以下のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」の第3の3⑴(41頁10行目から49頁25行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決42頁10行目の「Bは」の前に以下のとおり加える。 「被控訴人B及び同Cは、いずれもA所有の土地建物に無償で居住し、同土 地建物の固定資産税はAが支払っていた。」⑵ 同42頁15行目の「証人B」の前に「乙16、19、」を加える。 ⑶ 同43頁3行目冒頭から4行目の「あった。)」までを削除する。 ⑷ 同44頁1行目の「ア」及び8行目の「 ていた。」⑵ 同42頁15行目の「証人B」の前に「乙16、19、」を加える。 ⑶ 同43頁3行目冒頭から4行目の「あった。)」までを削除する。 ⑷ 同44頁1行目の「ア」及び8行目の「イ」をいずれも削除する。 2 判断枠組み ⑴ 所得税法は、所得の帰属に関する通則(第1編第4章)中、12条におい - 8 -て、資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する旨規定する(実質所得者課税の原則)。同条は、課税物件(収益)の法律上(私法上)の帰属につき、その形式と実質が相違している 場合には、実質に即して帰属を判定すべきとする趣旨のものであると解される。 ⑵ 本件各土地の所有者はAであると認められるが、平成26年2月以降、β土地については被控訴人BがAから同土地の賃貸借契約にかかる賃貸人たる地位を承継し、さらにその後締結したβ土地賃貸借契約(甲5の1ないし 8)に基づき、α土地については被控訴人Cがα土地賃貸借契約(甲6、乙21)に基づき、それぞれ賃貸人として賃借人らから賃料(本件各駐車場の収益)を収受し、これらの収益権の根拠として、本件各使用貸借契約に基づく使用借権を主張する。 この点について、本件各使用貸借契約が有効に成立したと認められる場合 には、被控訴人B及び同Cが、本件各土地から「生ずる収益の法律上帰属するとみられる者」に当たることになるから、更に被控訴人B及び同Cが「単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合」に当たるか否かを検討すべきことになる。 他方、本件各 られる者」に当たることになるから、更に被控訴人B及び同Cが「単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合」に当たるか否かを検討すべきことになる。 他方、本件各使用貸借契約が有効に成立したと認められない場合には、被 控訴人B及び同Cが本件各土地の収益権を有しないことは明らかであるから、本件各駐車場の収益にかかる所得は所有者であったAに帰属することになる。 ⑶ そこで、以下、本件各使用貸借契約が有効に成立したか否かについて検討し(後記3)、有効に成立したと認められる場合には、被控訴人B及び同Cが「単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の者がその収 益を享受する場合」に当たるか否かを検討する(後記4)。 - 9 - 3 本件各使用貸借契約が有効に成立したか否か⑴ 本件各舗装部分等の所有を目的とする本件各使用貸借契約の成否ア本件各使用貸借契約は本件各贈与契約と同時に締結され、同契約書においては、被控訴人B及び同Cが本件各舗装部分を含む贈与物件上で駐車場賃貸事業を営むとされていることからすれば、それらの契約を締結した当 事者の意思は、被控訴人B及び同CがAから贈与されたところの本件各土地に敷設された本件各舗装部分等を本件各土地上に適法に保有する目的でAから本件各土地を使用貸借することを約したものというべきである。 イしかし、証拠(乙37)によれば、アスファルト舗装は、路盤にアスファルト混合物を敷き均して、転圧機械により所定の密度が得られるまで締 固め、所定の形状に平坦に仕上げるものであり、アスファルト舗装された地面のうち、アスファルト混合物が含まれる表層及び基層部は、土地の構成部分となり、独立の所有権が成立する余地はないというべきである。 した 定の形状に平坦に仕上げるものであり、アスファルト舗装された地面のうち、アスファルト混合物が含まれる表層及び基層部は、土地の構成部分となり、独立の所有権が成立する余地はないというべきである。 したがって、Aにおいて、本件各贈与契約のうち本件各舗装部分の所有権を被控訴人B及び同Cに移転させることは原始的に不能であることは明 らかであるから、本件各贈与契約のうち前記舗装部分等を対象とする部分はいずれも無効といわなければならない。そうすると、本件各使用貸借契約書の作成により、当事者が当初意図したところの被控訴人B及び同Cが本件各舗装部分を所有することを目的とした本件各使用貸借契約が成立したと解釈する余地はないというべきである。 ウなお、この点について被控訴人らは、本件各舗装部分が構築物として減価償却の対象となる以上、独立の財産的価値を有する旨を主張するけれども、減価償却は、適正な費用配分を行なうことによって、毎期の損益計算を正確ならしめ、所得計算の適正を期することを目的とする税務上の制度であるから、物権法上の概念とは必ずしも一致させねばならないものでは なく、付合して独立した所有権の客体とはならないものであっても、減価 - 10 -償却を認める法制度を採ることはできるのであるから、被控訴人らの上記主張は採用できない。 また、被控訴人らは、本件各舗装部分が分離された場合にこれを贈与するという停止条件付贈与契約を主張するけれども、本件各贈与契約締結当時、A、被控訴人B及び同Cが、前記舗装部分が分離された場合にこれを 再利用することを前提としていたと認めるに足りる証拠はなく、同主張は採用し難い。 ⑵ 付合した本件各舗装部分を含む本件各土地を目的とする本件各使用貸借契約の成否アしかし、先に述 再利用することを前提としていたと認めるに足りる証拠はなく、同主張は採用し難い。 ⑵ 付合した本件各舗装部分を含む本件各土地を目的とする本件各使用貸借契約の成否アしかし、先に述べたところの、被控訴人B及び同Cが本件各舗装部分等 を所有するという本件各使用貸借契約の目的は、本件各贈与契約が同時に締結されたことや同契約書の記載から合理的に解釈されることに止まり、本件各使用貸借契約書上は、付合している本件各舗装部分をも含む本件各土地を使用貸借したものと解したとしても、特段整合しない記載は認められない。むしろ、同契約書には、使用貸借の目的は、被控訴人Bや同Cが 本件各土地を駐車場として使用することにある旨記載されていることからして、本件各使用貸借契約の対象を、付合した本件各舗装部分をも含む本件各土地と解した方が自然で合理的とも評価できるのである。そして、本件各贈与契約書にも、被控訴人B及び同Cが本件各舗装部分上で駐車場賃貸事業を営むことが記載されていて、本件各舗装部分の所有権の帰属につ いて当事者に法律の錯誤があったものの、本件各取引の結果、本件各使用貸借により、付合した同部分も含めた本件各土地上で被控訴人B及び同Cが駐車場賃貸事業を営むことは当事者双方が明確に認識していたのであるから、本件各使用貸借契約書の作成により本件各使用貸借契約が成立したと認定できるのであれば、その内容は本件各舗装部分を含む本件各土地を 使用貸借させるものであると解するのが合理的というべきである。 - 11 -イそこで、付合した本件各舗装部分を含む本件各土地を目的とする本件各使用貸借契約の成否についての当裁判所の判断は、以下のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」の第3の3⑵及び⑶(49頁26行 そこで、付合した本件各舗装部分を含む本件各土地を目的とする本件各使用貸借契約の成否についての当裁判所の判断は、以下のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」の第3の3⑵及び⑶(49頁26行目から61頁14行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 原判決56頁20、21行目の「処分証書の法理にいう「特段の事情」 が認められるか否か」を「同契約書の記載内容にかかる合意の成立を否定すべき特段の事情の有無」に、23行目の「経験則に照らせば」から57頁4行目末尾までを以下のとおりに、それぞれ改め、57頁5行目の「そして、」を削除する。 「同契約書の記載及び体裁からすれば、同契約書に当事者として表示さ れた者が、同契約書を作成することによって、その記載にかかる法律行為をしたものというべきであるから、別異に解すべき特段の事情が認められない限り、Aと被控訴人Bとの間でβ土地使用貸借契約が、Aと被控訴人Cとの間でα土地使用貸借契約が、それぞれ成立したものと認めるのが相当である。そこで、以下、上記特段の事情の有無について検討 する。」同57頁5、6行目「「特段の事情」」を「特段の事情」に改め、以下、「「特段の事情」」は全て同様に改める。 同57頁24行目冒頭から58頁15行目末尾までを以下のとおり改める。 「この点については、本件各贈与契約のうち本件各舗装部分に関する部分が無効であるが、その結果、本件各使用貸借契約が本件各舗装部分を含む本件各土地を使用貸借させるものと合理的に解釈できることは、先に述べたとおりである。」同61頁9行目の「なお、」の後に「本件各使用貸借契約書上、賃貸 借を前提とするかのような文言が用いられているとともに、」を、10 - 12 -行目 先に述べたとおりである。」同61頁9行目の「なお、」の後に「本件各使用貸借契約書上、賃貸 借を前提とするかのような文言が用いられているとともに、」を、10 - 12 -行目の「支払う」の前に「賃料として」を、それぞれ加える。 同61頁14行目の末尾に改行の上、以下のとおり加える。 「 以上によれば、被控訴人B及び同Cは、本件各土地について、本件各使用貸借契約に基づく収益権としての使用借権を有するから、本件駐車場から「生ずる収益の法律上帰属するとみられる者」に当たることとな る。」 4 被控訴人B及び同Cが「単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合」に当たるか⑴ 所得税法12条は、租税負担の公平を図るため、資産から生ずる収益の帰属について、名義又は形式とその実質が異なる場合には、当該資産の名義又 は形式にかかわらず、当該資産の真実の所有者に帰属させようとした趣旨と解される。そして、所得税基本通達12-1が「法第12条の適用上、資産から生ずる収益を享受する者がだれであるかは、その収益の基因となる資産の真実の権利者がだれであるかにより判定すべきである。」と規定しているのもこれと同じ趣旨と解され、合理的なものと解すべきである。 ⑵ 不動産所得である本件各土地の駐車場収入は、本件各土地の使用の対価として受けるべき金銭という法定果実であり(民法88条2項)、駐車場賃貸事業を営む者の役務提供の対価ではないから、所有権者がその果実収取権を第三者に付与しない限り、元来所有権者に帰属すべきものである。 そして、本件で被控訴人B及び同Cが本件各土地の法定果実を収取できる 根拠は使用借権(民法593条)であるが、使用借主は、その無償性から、本来使用貸主 、元来所有権者に帰属すべきものである。 そして、本件で被控訴人B及び同Cが本件各土地の法定果実を収取できる 根拠は使用借権(民法593条)であるが、使用借主は、その無償性から、本来使用貸主の承諾を得ない限り、法定果実収取権を有しないところ(同法594条2項)、本件においては、既に本件各土地の所有権に基づき駐車場賃貸事業を営んで賃料収入を取得していたAが、子である被控訴人B及び同Cに本件各土地を使用貸借し、法定果実の収取を承諾して、その事業を前記 被控訴人らに承継させたというのであるから、本件各取引は、Aが本件各土 - 13 -地の所有権の帰属を変えないまま、何らの対価も得ることなく、そこから生じる法定果実の帰属を子である前記被控訴人らに移転させたものと評価できる。しかも、使用貸借における転貸の承諾、すなわち法定果実収取権の付与は、その無償性から、その承諾を撤回し、将来に向かって付与しないことができると考えられることからすると、そもそもAから使用貸借に基づく法定 果実収取権を付与されたことで、当然に実質的にも本件各土地からの収益を享受する者と断ずることはできないというべきである。 さらに本件各取引がなされた経緯についてみると、前記認定事実によれば、被控訴人Bは、本件税理士法人にAの相続にかかる相続税対策について相談し、被控訴人B及び同CがAの財産を相続する際、相続税の納付のために遺 産(不動産)の売却を余儀なくされるような事態を避けるため、A及び被控訴人Cらに対してもその趣旨を説明の上、本件各使用貸借契約を含む本件各取引を締結して、Aが従前から営んでいた賃料収入の蓄積による同人名義の将来の遺産の増加を抑制することを企図するとともに、当面の所得税の節税をも企図したものであることが認められる。 本件各取引を締結して、Aが従前から営んでいた賃料収入の蓄積による同人名義の将来の遺産の増加を抑制することを企図するとともに、当面の所得税の節税をも企図したものであることが認められる。 そして、本件各取引の結果、Aから本件各使用貸借に基づく法定果実収取権を付与され、本件各土地上で駐車場賃貸事業を営むことになった被控訴人B及び同Cは、本件各取引等に関し、特段の出捐をしたとは認めるに足りないし、Aが管理業務を有償で委任していた管理会社に引き続き同業務を有償で委任したことにより、その管理に必要な役務を提供したとも認めるに足り ない。しかも、Aは、本件各土地以外にも、同人らに対し、自己所有の土地建物に無償で居住させた上、その固定資産税もAが負担するなどして、それらの不動産の使用収益の利益を付与していたことも、本件各取引に基づく本件各土地に関する法定果実収取権の付与と同質のものであって、それらによって同人らがAから親族間の情誼により相当の援助を受けていた関係にあっ たというべきである。 - 14 -そうすると、本件各取引は、Aの相続にかかる相続税対策を主たる目的として、Aの存命中は、本件各土地の所有権はあくまでもAが保有することを前提に、本件各土地によるAの所得を子である被控訴人B及び同Cに形式上分散する目的で、同人らに対して本件各使用貸借契約に基づく法定果実収取権を付与したものにすぎないものと認められる。 したがって、たとえ、本件各取引後、本件各土地の駐車場の収益が被控訴人B及び同Cの口座に振り込まれていたとしても、そのようにAが子である被控訴人B及び同Cに対する本件各土地の法定果実収取権の付与を継続していたこと自体が、Aが所有権者として享受すべき収益を子に自ら無償で処分している結果であると評価でき しても、そのようにAが子である被控訴人B及び同Cに対する本件各土地の法定果実収取権の付与を継続していたこと自体が、Aが所有権者として享受すべき収益を子に自ら無償で処分している結果であると評価できるのであって、やはりその収益を支配してい たのはAというべきであるから、平成26年2月以降の本件各駐車場の収益については、被控訴人B及び同Cは単なる名義人であって、その収益を享受せず、Aがその収益を享受する場合に当たるというべきである。 5 本件更正処分の適法性について前記のとおり、本件各駐車場に係る平成26年2月から同年12月までの 所得はいずれもAに帰属すると認められる。そして、証拠(乙1、9)によると、Aの平成26年分の所得税等の総所得金額及び納付すべき税額は本件更正処分のとおりと認められるから、本件更正処分は適法であり、被控訴人らの請求は理由がないことに帰する。 第4 結論 以上の次第で、被控訴人らの請求はいずれも棄却するのが相当であるから、これと異なる原判決を取り消すこととし、主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第10民事部 裁判長裁判官中垣内健治 - 15 - 裁判官福井美枝 裁判官國分晴子

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