本件は、被告人が上告した刑事事件であり、争点は被害者の供述の信用性と事実誤認に関するものである。被告人及び弁護人は、上告趣意として事実誤認を主張したが、裁判所はこれを認めず、刑訴法405条に基づく上告理由には該当しないと判断した。裁判所は、被害者Aの供述に一部事実に反する点があることを認めつつも、現場写真や目撃者の証言など多くの証拠によって被害状況の供述部分の信用性が支えられているとし、原判決の説示に対する異議を退けた。したがって、刑訴法411条の適用は認められず、上告は棄却されることとなった。最終的に、裁判官全員一致の意見で上告を棄却する旨の決定が下された。
主文 本件上告を棄却する。 理由 被告人本人及び弁護人宇賀神直、同桐山剛、同高藤敏秋、同南野雄二、同伊賀興一の各上告趣意(昭和五七年一一月一日付及び同五八年二月二六日付各上告趣意補充書を含む。)は、いずれも事実誤認の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。 なお、記録によると、本件の被害者Aの供述中には、被害直後の自己の行動の点などにつき、一部事実に反する部分のあることが窺われ、その理由に関する原判決の説示には必ずしも首肯し難い点もあるが、これらの点を考慮に容れても、同女の転倒直後の状況を撮影したいわゆる現場写真一八及びその転倒状況を目撃した目撃者らの供述など多くの証拠によつて支えられた同女の被害状況に関する供述部分の信用性は、これを否定し難いというべきであるから、本件については、いまだ刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。 よつて、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。 昭和五九年二月一七日最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官木下忠良裁判官鹽野宜慶裁判官宮崎梧一裁判官大橋進裁判官牧圭次- 1 -
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