本件は、特許庁による審決の取消しを求めた訴訟であり、原告らは「歯ブラシの製造方法」に関する特許出願が拒絶されたことに対して不服を申し立てた。主要な争点は、特許庁が本願補正発明が既存の技術に基づいて容易に発明できるものであると判断した点である。裁判所は、引用発明と本願補正発明の相違点を詳細に検討し、特に植毛機の構造や製造工程の違いを考慮した。結果として、原告らの請求は棄却され、特許庁の審決は適法であるとされた。判決は、原告らが負担する訴訟費用についても言及し、上告のための付加期間を30日と定めた。
平成24年5月31日判決言渡平成23年(行ケ)第10262号審決取消請求事件平成24年3月6日口頭弁論終結判決原告 X1原告 X2上記両名訴訟代理人弁理士長谷部善太郎同山田泰之被告特許庁長官指定代理人亀丸広司同寺澤忠司同新海岳同芦葉松美 主文 1 原告らの請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 事実 及び理由第1 請求特許庁が不服2009-20909号事件について平成23年3月28日にした審決を取り消す。 第2 当事者間に争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯平成16年5月11日(パリ条約による優先権主張平成15年6月9日,韓国),名称を「歯ブラシの製造方法」とする発明について,特許出願(特願2006-5 16908号。以下「本願」という。)がされ,平成21年6月25日付けで拒絶査定を受けた。これに対し,原告らは,平成21年10月29日,上記拒絶査定に対する不服審判請求(不服2009-20909号)をするとともに,同日付けで特許請求の範囲について手続補正をした(以下「本件補正」という。)。 特許庁は,平成23年3月28日,本件補正を却下し,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし(付加期間90日),その けで特許請求の範囲について手続補正をした(以下「本件補正」という。)。 特許庁は,平成23年3月28日,本件補正を却下し,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし(付加期間90日),その謄本は同年4月12日に原告らに送達された。 2 特許請求の範囲の記載本件補正後の請求項1の記載は,次のとおりである(下線部は補正個所を表す。 以下,同請求項に記載された発明を「本願補正発明」という。)。 「歯ブラシ毛(h)をヘッドインサート(10)と結合させた状態で歯ブラシ柄製造用金型に装着させた後,樹脂を金型の内部に注入して射出成形して,歯ブラシ毛(h)と歯ブラシ柄を一体化させる歯ブラシの製造方法であって,射出成形機から分離された植毛機によって歯ブラシ毛(h)を通孔(11)が形成された厚さ1. 5~3.0㎜のプラスチック材のヘッドインサート(10)の裏面に1~3㎜突出するように植え込んだ後,該突出した歯ブラシ毛(h)を熱融着させることで歯ブラシ毛(h)が固定されたヘッドインサート(10)を製造する工程,射出成型機によって歯ブラシ毛hが射出機に付着された金型の外部に位置するように,歯ブラシ毛(h)が固定されたヘッドインサート(10)を自動移動挿入装置により歯ブラシ柄製造用金型に装着させ,樹脂を金型の内部に注入して射出成形する工程よりなることを特徴とする歯ブラシの製造方法。」 3 審決の理由審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。要するに,①本願補正発明は,欧州特許出願公開第0972465号明細書(以下「引用例1」といい,引用例1に記載された発明を「引用発明」という。なお,引用例1の図1,10,11,14,23~26は別紙のとおりである。),特開2000-287755号公報(以 下「引用例2」という。),特開平4-29 記載された発明を「引用発明」という。なお,引用例1の図1,10,11,14,23~26は別紙のとおりである。),特開2000-287755号公報(以 下「引用例2」という。),特開平4-298312号公報記載の技術事項及び周知技術に基づき,容易に発明をすることができたものであり,特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則3条1項により,なお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項に違反し,却下すべきものである,②本件補正前の請求項1(平成21年6月11日付けの手続補正書により補正された請求項1)記載の発明(以下「本願発明」という。)は,引用発明,引用例2記載の技術事項及び周知技術に基づき,容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項により特許を受けることができない,というものである。 審決は,上記結論を導くに当たり,引用発明の内容,引用発明と本願補正発明との一致点,相違点について,次のとおり認定した。 (1) 引用発明の内容「繊維束4をホルダー10と結合させた状態でブラシボディ5を成形する金型に装着させた後,合成材料を金型の内部に注入して,繊維束4とブラシボディ5を一体化させる歯ブラシの製造方法であって,ガイダンスプレート25を有する器具24及びキャリア2によって繊維束4を開口部27が形成されたホルダー10の裏面に突出するように植え込んだ後,該突出した繊維束4を熱融着させることで繊維束4が固定されたホルダー10を製造する工程,射出成形機によって繊維束4が射出機に付された金型の外部に位置するように,繊維束4が固定されたホルダー10をブラシボディ5を製造する金型に装着させ,合成材料を金型の内部に注入して射出 を製造する工程,射出成形機によって繊維束4が射出機に付された金型の外部に位置するように,繊維束4が固定されたホルダー10をブラシボディ5を製造する金型に装着させ,合成材料を金型の内部に注入して射出成形する工程よりなる歯ブラシの製造方法。」(2) 一致点「歯ブラシ毛をヘッドインサートと結合させた状態で歯ブラシ柄製造用金型に装着させた後,樹脂を金型の内部に注入して射出成形して,歯ブラシ毛と歯ブラシ柄を一体化させる歯ブラシの製造方法であって,植毛機によって歯ブラシ毛を通孔が形成されたヘッドインサートの裏面に突出するように植え込んだ後,該突出した歯 ブラシ毛を熱融着させることで歯ブラシ毛が固定されたヘッドインサートを製造する工程,射出成型機によって歯ブラシ毛が射出機に付着された金型の外部に位置するように,歯ブラシ毛が固定されたヘッドインサートを歯ブラシ柄製造用金型に装着させ,樹脂を金型の内部に注入して射出成形する工程よりなる歯ブラシの製造方法。」(3) 相違点ア相違点1本願補正発明の植毛機は,射出成形機から分離されたものであるのに対し,引用発明の植毛機(ガイダンスプレート25を有する器具24及びキャリア2)には,射出成形機から分離されたものとすることの記載がない点。 イ相違点2本願補正発明のヘッドインサートは,厚さ1.5~3.0㎜のプラスチック材であり,その裏面に歯ブラシ毛が1~3㎜突出するのに対し,引用発明のヘッドインサート(ホルダー10)の厚さ及び材質については特段の記載はなく,裏面に歯ブラシ毛(繊維束4)が突出するものの突出長さは定かでない点。 ウ相違点3本願補正発明は,ヘッドインサートを自動移動挿入装置により歯ブラシ柄製造用金型に装着させるのに対し,引用発明は,ヘッドインサート(ホルダー10)を歯 るものの突出長さは定かでない点。 ウ相違点3本願補正発明は,ヘッドインサートを自動移動挿入装置により歯ブラシ柄製造用金型に装着させるのに対し,引用発明は,ヘッドインサート(ホルダー10)を歯ブラシ柄製造用金型(ブラシボディ5を成形する金型)に装着させるものの自動移動挿入装置を用いることの記載はない点。 第3 取消事由に関する当事者の主張 1 原告らの主張(1) 取消事由1(引用発明の認定の誤り)審決の引用発明の認定には,以下のとおり誤りがある。 すなわち,引用例1の段落【0041】,【0042】,【0047】及び図1,10,11,23等によれば,引用例1におけるホルダー10は,金型や成形溝の一 部を形成する部材であって,製造されたブラシの一部になるものではない。また,引用発明は,植毛機とこれに対応する金型とが一つの装置内に設けられて複合した装置となっており,植毛・熱融着工程及び射出成形工程が同一の装置内において行われるものである。さらに,引用例1には,繊維束4をホルダー10と結合させた状態でブラシボディ5を形成する金型に装着させることは,記載も示唆もされていない。なお,引用例1の図26に示す方法は,図24に示す方法から金型の一部10Bの使用を省略したものであり,その他の構成を変えるものではないところ,図24に示す方法は,射出成形機とは別の装置によりホルダー10に繊維束4を挿入し固定する方法ではなく,射出成形機においてホルダー10に繊維束4を挿入し固定する方法であるから,図26に示す方法も射出成形機においてホルダー10に設けた孔に繊維束4を挿入し固定するものである。 したがって,審決の引用発明の認定には誤りがある。 (2) 取消事由2(相違点1の認定の誤り)審決の相違点1の認定には,以下のとおり誤 0に設けた孔に繊維束4を挿入し固定するものである。 したがって,審決の引用発明の認定には誤りがある。 (2) 取消事由2(相違点1の認定の誤り)審決の相違点1の認定には,以下のとおり誤りがある。 すなわち,引用発明は,射出成形機に付いている多数の金型又は金型内に設けたホルダーに歯ブラシ毛を供給した後,金型又はホルダーの内部に突出した歯ブラシ毛を熱融着して歯ブラシ毛を供給するため,いわゆるインプラントモールディングアンカーレス植毛機を用いて,金型に設けられた歯ブラシ毛挿入孔を塞いだ状態で樹脂を金型の内部に射出して,歯ブラシ毛と歯ブラシ柄とが一体化された歯ブラシを製造する方法である。このため,引用発明においては,ブラシ本体の一部10A(本願補正発明のヘッドインサート(10)に相当)が使用される場合でも,本願補正発明のように射出成形機とは別の装置としての一般植毛機において歯ブラシ毛と結合されるのではなく,インプラントモールディングアンカーレス植毛機に付いている金型内で歯ブラシ毛と熱融着によって結合されるように構成されている。 以上のとおり,本願補正発明は,射出成形機が植毛機から分離された装置による歯ブラシの製造方法であるのに対し,引用発明は,射出成形機と植毛機が一体とな った装置による歯ブラシの製造方法である点で相違しており,審決の相違点1の認定には誤りがある。 (3) 取消事由3(相違点1に係る容易想到性判断の誤り)審決の相違点1に係る容易想到性判断には,以下のとおり誤りがある。すなわち,ア引用例1の図24によれば,引用発明は,金型であるホルダー内にブラシ本体の一部10Aを設け,その後に繊維束4をホルダー10とブラシ本体の一部10Aに設けた孔に挿入させるものであるところ,このような構成において,ブラシ本 れば,引用発明は,金型であるホルダー内にブラシ本体の一部10Aを設け,その後に繊維束4をホルダー10とブラシ本体の一部10Aに設けた孔に挿入させるものであるところ,このような構成において,ブラシ本体の一部10Aの孔に予め挿入した繊維束4の固定されていない先端をホルダー10に形成されている孔に挿入することは極めて困難である。したがって,引用発明に引用例2記載の発明及び周知技術を適用しても,本願補正発明の相違点1に係る構成に想到することは容易とはいえない。 イ本願補正発明は,以下のとおり,引用発明に比して顕著な作用効果を奏する。 すなわち,引用発明は,使用される装置の構成上,植毛工程,熱融着工程及び射出成形工程を同時に行うことができず,高価なインプラントモールディングアンカーレス植毛機の稼働率が低いとの問題があったのに対し,本願補正発明では,一般植毛機を使用し,生産された半製品について,連続的に一般射出成形機で射出成形工程を行うことができる。また,引用発明においては,植毛工程,熱融着工程及び射出成形工程が一つの装置内で行われるので,いずれか一つに問題が生ずると全工程を中断しなければならないとの問題があったのに対し,本願補正発明では,多数の一般植毛機で植毛工程及び熱融着工程が行われるので,いずれか一つの植毛機に問題が発生しても全工程に及ぼす影響が小さい。さらに,本願補正発明では,歯ブラシ毛が固定されたヘッドインサートを予め生産して備蓄することや,かかる半製品を人件費の安い国へ輸出し,射出成形工程を行うこともできる。そして,本願補正発明は,安価な一般植毛機及び射出成形機を使用するため,製品の仕様変更や生産量の調整を容易にすることができる。 なお,引用発明は,植毛工程と射出成形工程が別の工程で行われるとしても,こ れらの工程は同一 一般植毛機及び射出成形機を使用するため,製品の仕様変更や生産量の調整を容易にすることができる。 なお,引用発明は,植毛工程と射出成形工程が別の工程で行われるとしても,こ れらの工程は同一の装置において行われる。また,引用例2は,ブラシ製品製造工程と射出成形工程が別工程で行われるとしても,ブラシ製品製造工程と射出成形工程が別の装置によりなされることは記載も示唆もされていない。 ウ以上のとおり,本願補正発明は,引用発明とはその構成が異なり,その構成上の相違により,顕著な作用効果を奏するものであって,引用発明に引用例2記載の技術事項及び周知技術を適用することにより,容易に想到できたとはいえない。 (4) 取消事由4(本願発明に係る容易想到性判断の誤り)上記(1)ないし(3)と同様に,審決の本願発明に係る容易想到性判断には誤りがある。 2 被告の反論(1) 取消事由1(引用発明の認定の誤り)について引用例1の段落【0044】によれば,引用例1において,ホルダー10が,ブラシボディ5の事前に形作られた箇所となり,製造されたブラシの一部となることが開示されている。また,引用例1の図10及び図14においては,上方に一点鎖線でブラシボディ5を形成する金型が示され,その下方に離れて繊維束4をホルダー10と結合させる機構が示されおり,ブラシボディ5を形成する金型と繊維束4をホルダー10と結合させる機構とが分離していること,図10の植毛工程の後,ホルダー10が上方の一点鎖線で示される金型にセットされて射出成形されるものであることが示されている。さらに,引用例1の図23には,植毛工程に引き続き熱融着工程が行われることが記載ないし示唆されており,ホルダー10に植毛した繊維束4を熱融着しなければ,ホルダー10をハンドリングすることは れている。さらに,引用例1の図23には,植毛工程に引き続き熱融着工程が行われることが記載ないし示唆されており,ホルダー10に植毛した繊維束4を熱融着しなければ,ホルダー10をハンドリングすることは困難であるから,射出成形の工程に先立って植毛工程や熱融着工程が行われることも記載ないし示唆されている。 以上のとおり,引用例1には,ホルダー10が製造されたブラシの一部になるインサート部材である実施例が記載されており,審決が引用発明について,「繊維束4をホルダー10と結合させた状態でブラシボディ5を成形する金型に装着させた」 と認定した点に誤りはない。 (2) 取消事由2(相違点1の認定の誤り)について審決の相違点1の認定には,以下のとおり誤りはない。 すなわち,本願の特許請求の範囲及び明細書には,「一般植毛機」,「インプラントモールディングアンカーレス植毛機」との記載はなく,原告らの主張は本願及び引用例1に基づかない主張であって失当である。また,審決は,射出成形機と植毛機が別装置であるとは認定しておらず,植毛及び熱融着を行う工程と射出成形の工程とが別工程であるとの限度で認定したものである。さらに,引用例1には,植毛機と射出成形機が一体であるとの記載はないから,審決が「本願補正発明の植毛機は,射出成形機から分離されたものであるのに対し,引用発明の植毛機(ガイダンスプレート25を有する器具24及びキャリア2)には,射出成形機から分離されたものとすることの記載がない点。」と認定した点に誤りはない。 (3) 取消事由3(相違点1に係る容易想到性判断の誤り)について審決の相違点1に係る容易想到性判断には,以下のとおり誤りはない。すなわち,ア引用例1の図26の実施例は,隣接する繊維束4が互いに接続される方法ではなく,図2 易想到性判断の誤り)について審決の相違点1に係る容易想到性判断には,以下のとおり誤りはない。すなわち,ア引用例1の図26の実施例は,隣接する繊維束4が互いに接続される方法ではなく,図23のように個々の繊維束4の先端部が熔解されることによりホルダー10に結合されるものであり,この繊維束4を結合させたホルダー10がその後ブラシボディ5を成形する金型に装着されることが示されている。また,引用例1においては,射出成形の工程の前に植毛工程や熱融着工程があることが記載ないし示唆されており,引用発明において,別工程として示される植毛及び熱融着を行う工程と射出成形の工程に対し,引用例2に記載ないし示唆されている,それぞれの工程を別装置で行う技術を適用しても,原告らが主張するような困難な工程が発生するものではなく,植毛機を射出成形機から分離されたものとすることは容易に想到し得たものである。 イ原告らが主張する本願補正発明の作用効果は,植毛及び熱融着を行う工程と射出成形の工程とを分離して別の装置で行うことによる作用効果であり,かかる作 用効果は引用例2に記載ないし示唆されている。 ウしたがって,審決の相違点1に係る容易想到性判断に誤りはない。 (4) 取消事由4(本願発明に係る容易想到性判断の誤り)について上記(1)ないし(3)と同様に,審決の本願発明に係る容易想到性判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断当裁判所は,本件補正は独立特許要件を満たさないとして,これを却下し,本願発明は,引用発明,引用例2記載の技術事項及び周知技術に基づき,容易想到であるとした審決の判断に誤りはないものと判断する。その理由は,以下のとおりであるが,事案に鑑み,取消事由1ないし3については併せて検討する。 1 事実認定(1) 本願補正 術に基づき,容易想到であるとした審決の判断に誤りはないものと判断する。その理由は,以下のとおりであるが,事案に鑑み,取消事由1ないし3については併せて検討する。 1 事実認定(1) 本願補正発明に係る特許請求の範囲について本願補正発明に係る特許請求の範囲の記載は,前記第2の2記載のとおりである。 すなわち,本願補正発明は,歯ブラシ毛をヘッドインサートと結合させた状態で歯ブラシ柄製造用金型に装着させた後,樹脂を金型の内部に注入して射出成形して,歯ブラシ毛と歯ブラシ柄を一体化させる歯ブラシの製造方法であって,射出成形機から分離された植毛機によって歯ブラシ毛をプラスチック材のヘッドインサートに植え込んだ後,熱融着させることで歯ブラシ毛が固定されたヘッドインサートを製造する工程と,上記ヘッドインサートを自動移動挿入装置により歯ブラシ柄製造用金型に装着させ,樹脂を金型の内部に注入して射出成形する工程とからなることを特徴とする歯ブラシの製造方法に係る発明である。 (2) 引用例1の記載引用例1(甲8の1ないし3)には,以下の記載がある(なお,段落【0047】以外は訳文のみを示す)。 【0001】本発明は,ブラシを製造する方法とその装置,特にこの方法の適用に適したブラシ製造装置に関する。 【0002】ブラシ,特に歯ブラシの製造のために,本質的に2つの技術が知ら れている。 【0030】図10,11は実施例を図式的に示したものだが,そこでは,繊維束4が充填されたキャリア2が図示されない搬送手段によってホルダー10に向かって運ばれており,前記キャリア2のもう一方の側において,繊維束4を前記キャリア2からホルダー10の中に動かすように,器具24が提供されている。 【0031】上記目的のために,器具24は,前記キャリア2内の開口部3の 前記キャリア2のもう一方の側において,繊維束4を前記キャリア2からホルダー10の中に動かすように,器具24が提供されている。 【0031】上記目的のために,器具24は,前記キャリア2内の開口部3のパターン(このパターンは,ホルダー10内に設けられた孔や通路27のパターンである)に各々対応するパターンに従って,その上に排出ピン26が設けられたガイダンスプレート25からなっており,例えばこれらの排出ピン26は共通の支持部材28の上に取り付けられている。 【0032】図11に示しているように,これらの繊維束4の自由な先端部が適切な長さを持った上記開口部27から突出するように繊維束4をホルダー10の中に移動させるためには,キャリア2の開口部3の中の排出ピン26を移動させるだけで充分である。 【0040】上記のような状態で繊維束4がホルダー10の中に提供される場合,図23に示されているように当該繊維の自由な先端部は例えば熱の影響によって一緒に熔解することが好ましく,その結果,同時に当該繊維束はホルダー内に保持される。 【0041】図24に表される実施例によると,金型に事前に形成されたブラシ本体の一部10Aを用いることも可能であり,その場合,金型の一部10Bと一緒に固定されたホルダー10を形成する。 【0042】これは,圧縮した状態,好ましくは加熱された状態で,一つの孔を得るように,突出したホルダー10の繊維束を単繊維束の繊維が一緒に熔解されるだけでなく,同時に,隣接する繊維束の繊維が相互に接続されているような長さから選択することができる。 【0044】図26は図25の実施例の一つを示しているが,上記の10Bが削 除され,その結果としてホルダー10はブラシボディ5の事前に形作られた箇所だけからなっている。 【0045】完全なブラ 044】図26は図25の実施例の一つを示しているが,上記の10Bが削 除され,その結果としてホルダー10はブラシボディ5の事前に形作られた箇所だけからなっている。 【0045】完全なブラシボディ5用の金型を用いる代わりに,ブラシボディ5の一部分34だけのための金型を用いることもまた可能であるのは,自明である。 図27で矢印P1として図式的に示しているが,製造業者と消費者のいずれもが,例えばクリッキングや溶接などの適切な技術により,事前形成された部分34を当該ブラシボディ5の残余部分に固定できる。 【0047】Itisclearthatinallembodimentsofthefigures 10 to 17,23,24and 26 to 28, theholder 10 alwaysformspartofthemouldorbordersthecavityofthemould, whereby, accordingtothisinvention, itisalwaysintendedbyreference 35, isfilledupbyinjectingsyntheticmaterialinitbyinjectionmoulding.図10~17,23,24,26~28の全ての実施例においてホルダー10は常に金型の一部を構成し又は金型空間の境界を画成しており(判決注・甲8の2における「常に金型や成形溝の境界の一部を形成しており」は誤訳と認める。),本発明では符号35よって示しているが,射出成形によって,その中に合成材料が注入されていることは明らかである。 (3) 引用例2の記載引用例2(甲9)には,以下の記載がある。 【請求項1】合成樹 明では符号35よって示しているが,射出成形によって,その中に合成材料が注入されていることは明らかである。 (3) 引用例2の記載引用例2(甲9)には,以下の記載がある。 【請求項1】合成樹脂製モノフィラメントからなる用毛または用毛束を用毛支持体に1つまたは複数埋設したブラシ製品を製造するための方法であって,前記用毛または用毛束を挿通するための挿通孔を射出成形用金型の表裏を貫いて形成し,該挿通孔に所定長さからなる用毛または用毛束を挿通した後,金型のキャビティ内に合成樹脂の融液を充填して用毛支持体を射出成形し,前記挿通孔に挿通された用毛または用毛束を用毛支持体の表裏両面から所定の長さ だけ外部へ突出させた状態で固設することを特徴とするブラシ製品の製造方法。 【請求項2】請求項1記載のブラシ製品の製造方法において,前記用毛支持体の表裏両面から外部に突出する用毛または用毛束のうち,用毛支持体の裏面側から突出する用毛または用毛束の端部を加熱溶融し,用毛支持体の裏面に溶融肥大部を形成することを特徴とするブラシ製品の製造方法。 【0016】(2)キャビティの形成工程(図1(b)参照)次に,可動側金型2を,図示しない移動機構によって,用毛支持体10の厚さL(図1(f)参照)に相当する距離だけ移動する。これによって,固定側金型1と可動側金型2との間に,用毛支持体10を形づくるためのキャビティ5が形成される。 なお,用毛支持体10の厚さLは特に制限はないが,例えば歯ブラシの場合,1~5㎜,より好ましくは2~4㎜がよい。 【0021】(6)完成品(図1(f)参照)上記のようにして溶融肥大部8を形成した後,用毛3を埋設された用毛支持体10を固定側金型1から取り出す。これによって,図1(f)に示すようなブラシ製品11が完 1】(6)完成品(図1(f)参照)上記のようにして溶融肥大部8を形成した後,用毛3を埋設された用毛支持体10を固定側金型1から取り出す。これによって,図1(f)に示すようなブラシ製品11が完成する。 【0041】本発明方法で製造された前記ブラシ製品をさらに二次加工することによって,柄付きの歯ブラシを製造した場合の例を図4および図5に示す。 【0042】図4は,本発明方法で製造された前記ブラシ製品11を,さらに,ヘッド部41およびこれに続く首部42,ハンドル部43を形どった二次成形用の別の金型に装填して射出成形し,ブラシ製品11をヘッド部41に埋め込んだ一体型歯ブラシとした場合の例である。 2 判断(1) 取消事由1ないし3(引用発明及び相違点1の認定の誤り,相違点1に係る容易想到性判断の誤り)についてア引用例1の段落【0041】,【0044】,【0045】,【0047】の記載及び図24,26によれば,①図24には,図1,10,11,14に記載された 実施例とは異なり,ホルダー10を金型として使用すること以外の実施例が示されていること,②図24を前提とした図26には,ブラシ本体の一部10Aとともにホルダー10を形成した金型の一部10Bが取り除かれた結果,ホルダー10がブラシボディ5の事前に形作られた箇所だけからなるものとして示されていること,③図26においては,ホルダー10(図24における10Aに相当)が,金型とともに合成材料35を取り囲み,金型空間の境界を画成していること,④図26は,図24のように10A及び10Bからなるホルダー10が形成された後,何らかの工程により10Bが取り除かれ,図24とは異なる別の金型及び金型空間を画成することが示されていることが認められる。 また,引用例1の図24の実施例におい からなるホルダー10が形成された後,何らかの工程により10Bが取り除かれ,図24とは異なる別の金型及び金型空間を画成することが示されていることが認められる。 また,引用例1の図24の実施例においては,金型及び金型空間の境界を画成する構成からみて,ホルダー10に繊維束を結合した後,そのままブラシボディ5の他の部分を成形する金型を組み合わせてブラシボディ全体の成形を行うものと解されるのに対し,図26の実施例は,図24の実施例とは金型及び金型空間を画成する構成が異なり,天地が逆に図示されていることからすれば,植毛・熱融着工程と射出成形工程が別工程で行われているものと解される。 以上によれば,引用発明においては,必ずしも植毛を含む前工程と,ブラシボディ全体を成形する射出成形工程が一体的に実施されているとはいえず,両工程が分離される場合も含まれているものと解される。 他方,甲9の上記記載によれば,引用例2には,合成樹脂製の用毛支持体10に用毛3を溶融肥大部8により固定したブラシ製品11を,更にヘッド部41及びこれに続く首部42,ハンドル部43を形取った二次成形用の別の金型に装填し射出成形してヘッド部41,首部42,ハンドル部43からなる歯ブラシとすることが記載されているところ,二次成形用の別の金型に装填して射出成形する工程は,合成樹脂製の用毛支持体10に用毛3を溶融肥大部8により固定してブラシ製品11を作る工程とは別の工程として説明されている。そして,引用例2において,用毛支持体10に用毛3を溶融肥大部8により固定して,ブラシ製品11とする工程は 植毛機が行う工程であり,ブラシ製品を二次成形用の別の金型に装填して射出成形することにより歯ブラシを作る工程は,植毛機とは別の射出成形装置が行う工程と解され,両工程を一体の装置で行うことは記 植毛機が行う工程であり,ブラシ製品を二次成形用の別の金型に装填して射出成形することにより歯ブラシを作る工程は,植毛機とは別の射出成形装置が行う工程と解され,両工程を一体の装置で行うことは記載も示唆もされていないから,両工程は別装置で行うことが前提とされているものといえる。 以上によれば,事前に繊維束4と結合されたホルダー10が製造されたブラシの一部となる引用発明に,引用例2に記載された植毛・熱融着工程と射出成形工程を別装置で行う技術を適用すれば,本願補正発明の相違点1に係る構成に想到することは容易といえる。また,相違点1に係る構成により奏する生産性の向上等の効果は,植毛・熱融着工程と射出成形工程を別工程とすることにより奏する効果であり,引用例1,2の記載から予測可能なものであり,格別顕著なものとはいえない。 したがって,審決の引用発明及び相違点1の認定,相違点1に係る容易想到性判断に誤りはない。 イ原告らの主張について原告らは,①引用例1のホルダー10は,金型や成形溝の一部を構成する部材であって,製造されたブラシの一部になるものではない,②引用発明は,植毛機とこれに対応する金型とが一つの装置内に設けられ複合した装置となっており,植毛工程,熱融着工程及び射出成形工程が共に同一の装置内において行われるものである,③引用例1には,繊維束4をホルダー10と結合させた状態でブラシボディ5を形成する金型に装着することは開示されていない,と主張する。 しかし,原告らの上記主張は失当である。すなわち,上記のとおり,引用例1には,金型に事前に形成されたブラシ本体の一部10Aを用いる場合において,ブラシ本体の一部10Aが金型の一部10Bと一緒に固定されたホルダー10を形成しており,当該金型の一部10Bが取り除かれると,その結果としてホルダ 成されたブラシ本体の一部10Aを用いる場合において,ブラシ本体の一部10Aが金型の一部10Bと一緒に固定されたホルダー10を形成しており,当該金型の一部10Bが取り除かれると,その結果としてホルダー10は,ブラシボディ5の事前に形作られた箇所だけからなるものとなり,ブラシの一部となることが記載されている。また,上記のとおり,引用発明においては,必ずしも植毛を含む前工程と,ブラシボディ全体を成形する射出成形工程が一体的に実施さ れるとはいえず,両工程が分離される場合も含んでいるものと解される。さらに,引用例1には,繊維束4をホルダー10と結合させた状態でブラシボディ5を形成する金型に装着することまでは開示されていないとしても,上記のとおり,引用例2には,植毛・熱融着工程と射出成形工程を別装置で行うことが示唆されており,引用発明において,植毛・熱融着工程と射出成形工程に別装置を用いた場合,繊維束4をホルダー10と結合させた状態でブラシボディ5を形成する金型に装着することに想到することは容易といえる。 ウ小括したがって,審決が,本件補正発明は,引用発明に引用例2記載の技術事項を適用することにより容易に想到することができたとして,独立特許要件違反を理由に本件補正を却下した点に誤りはない。 (2) 取消事由4(本願発明に係る容易想到性判断の誤り)について本願発明に係る請求項1の記載は,次のとおりである。すなわち,「歯ブラシ毛hをヘッドインサート10と結合させた状態で歯ブラシ柄製造用金型に装着させた後,樹脂を金型の内部に注入して射出成形して,歯ブラシ毛hと歯ブラシ柄を一体化させる歯ブラシの製造方法であって,射出成形機から分離された植毛機によって歯ブラシ毛hを通孔11が形成された厚さ1.5~3.0㎜のプラスチック材のヘッドインサ して,歯ブラシ毛hと歯ブラシ柄を一体化させる歯ブラシの製造方法であって,射出成形機から分離された植毛機によって歯ブラシ毛hを通孔11が形成された厚さ1.5~3.0㎜のプラスチック材のヘッドインサート10の裏面に1~3㎜突出するように植え込んだ後,該突出した歯ブラシ毛hを熱融着させることで歯ブラシ毛hが固定されたヘッドインサート10を製造する工程,射出成型機によって歯ブラシ毛hが射出機に付着された金型の外部に位置するように,歯ブラシ毛hが固定されたヘッドインサート10を歯ブラシ柄製造用金型に装着させ,樹脂を金型の内部に注入して射出成形する工程よりなることを特徴とする歯ブラシの製造方法。」というものである。 上記のとおり,本願発明は,本願補正発明から「自動移動挿入装置により」との記載を除き,各事項に付された符号を訂正したものであるところ,上記(1)と同様に,本願発明は,引用発明に引用例2記載の技術事項を適用することにより容易に想到 することができたといえるから,審決の本願発明に係る容易想到性判断にも誤りはない。 3 結論以上のとおり,原告らの主張する取消事由には理由がなく,他に審決にはこれを取り消すべき違法は認められない。その他,原告らは,縷々主張するが,いずれも,理由がない。よって,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官飯村敏明 裁判官八木貴美子 裁判官 八木貴美子 裁判官知野明(別紙)
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