平成8(行ツ)58 選挙無効

裁判年月日・裁判所
平成8年9月24日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 名古屋高等裁判所 平成7(行ケ)3
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本件は、名古屋市議会の議員定数配分に関する適法性が争われた事案である。上告人は、議員定数が人口に対して不均衡であり、選挙権の平等に反すると主張した。主要な争点は、公職選挙法第15条第8項に基づく議員定数の配分が適法かどうかであり、裁判所は、定数配分が人口比例原則に反する点があるものの、合理的な裁量の範囲内であると判断した。具体的には、議員一人当たりの人口の最大較差が一対一・七三であることから、投票価値の不平等が一般的に合理性を有するものとは考えられない程度には達していないとした。最終的に、上告は棄却され、本件条例の定数配分規定は適法であると認定された。

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判決文本文3,745 文字)

主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人らの負担とする。 理由 上告人兼上告代理人竹内浩史、同杉浦龍至、同福島啓氏、同鈴木良明、同平井宏和、同西野昭雄、上告代理人新海聡、同井口浩治、同佐久間信司、同杉浦英樹、同滝田誠一、同山田秀樹の上告理由について一地方自治法二五二条の一九第一項の指定都市(以下「指定都市」という)の議会の議員の定数、選挙区及び選挙区への定数配分は、現行法上、次のとおり定められている。まず、市町村議会の議員定数については、同法九一条一項により、各市町村の人口数に応じた定数の基準等が定められているが、同条二項により、条例で特にこれを減少することができるものとされている。次に、公職選挙法(以下「公選法」という)は、指定都市の議会の議員の選挙につき、区の区域をもって選挙区とすることとしている(同法一五条六項ただし書)。指定都市の一つの区の区域が二以上の衆議院小選挙区選出議員の選挙区に属する区域に分かれている場合には、当該各区域を区の区域とみなすことができることとされてはいるが(公職選挙法施行令六条の二)、都道府県議会の議員の選挙区のような合区は認められていない。 各選挙区において選挙すべき議員の数は、人口に比例して、条例で定めなければならないが(公選法一五条八項本文)、特別の事情があるときは、おおむね人口を基準とし、地域間の均衡を考慮して定めることができるとされている(同項ただし書)。 ところで、憲法の定める選挙権の平等の原則は、地方公共団体の議会の議員の選挙に関し、選挙権行使の資格における差別を禁止するにとどまらず、選挙権の内容の平等、換言すれば、議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等、すなわち投票価値の平等をも要求するものと解すべきであり、公選法 権行使の資格における差別を禁止するにとどまらず、選挙権の内容の平等、換言すれば、議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等、すなわち投票価値の平等をも要求するものと解すべきであり、公選法一五条八項は、- 1 -憲法の右要請を受け、地方公共団体の議会の議員の定数配分につき、人口比例を最も重要かつ基本的な基準とし、各選挙人の投票価値が平等であるべきことを強く要求しているものと解される。もっとも、前記のような指定都市の議会の議員の定数、選挙区及び選挙区への定数配分に関する現行法の定めからすれば、区のうち配当基数(当該指定都市の人口を当該市議会の議員定数で除して得た数をもって当該区の人口を除して得た数)が一を大きく下回るものについても、これを一選挙区として定数一人を配分すべきことになるから、このような選挙区と他の選挙区とを比較した場合には、投票価値の較差が相当大きくなることは避けられないところである。 また、公選法一五条八項ただし書は、特別の事情があるときは、各選挙区において選挙すべき議員の数を、おおむね人口を基準とし、地域間の均衡を考慮して定めることができるとしているところ、右ただし書の規定を適用していかなる事情の存するときに右の修正を加えるべきか、また、どの程度の修正を加えるべきかについて客観的基準が存するものでもない。したがって、議員定数の配分を定めた条例の規定(以下「定数配分規定」という)が公選法一五条八項の規定に適合するかどうかについては、指定都市の議会の具体的に定めるところが右のような選挙制度の下における裁量権の合理的な行使として是認されるかどうかによって決するほかはない。 しかし、定数配分規定の制定又はその改正により具体的に決定された定数配分の下における選挙人の投票の有する価値に不平等が存し、あるいはその後の人口の変動 て是認されるかどうかによって決するほかはない。 しかし、定数配分規定の制定又はその改正により具体的に決定された定数配分の下における選挙人の投票の有する価値に不平等が存し、あるいはその後の人口の変動により右不平等が生じ、それが指定都市の議会において地域間の均衡を図るなどのため通常考慮し得る諸般の要素を斟酌してもなお、一般的に合理性を有するものとは考えられない程度に達しているときは、右のような不平等は、もはや当該議会の合理的裁量の限界を超えているものと推定され、これを正当化すべき特別の理由が示されない限り、公選法一五条八項違反と判断されざるを得ないものというべきである。以上は、当裁判所の判例の趣旨とするところである(最高裁昭和五八年(行- 2 -ツ)第一一五号同五九年五月一七日第一小法廷判決・民集三八巻七号七二一頁、最高裁昭和六三年(行ツ)第一七六号平成元年一二月一八日第一小法廷判決・民集四三巻一二号二一三九頁、最高裁平成元年(行ツ)第一五号同年一二月二一日第一小法廷判決・民集四三巻一二号二二九七頁、最高裁平成二年(行ツ)第六四号同三年四月二三日第三小法廷判決・民集四五巻四号五五四頁、最高裁平成四年(行ツ)第一七二号同五年一〇月二二日第二小法廷判決・民集四七巻八号五一四七頁参照)。 二そこで、本件における議員定数配分の適否について検討する。 原審の適法に確定したところによれば、平成七年四月九日施行の本件名古屋市議会議員一般選挙当時の名古屋市議会の議員の定数及び各選挙区において選挙すべき議員の数に関する条例(昭和四二年名古屋市条例第四号。以下「本件条例」という)における定数及び定数配分の状況は、以下のとおりである。本件選挙当時の名古屋市の人口(平成二年国勢調査人口。以下同じ)からすれば、地方自治法二五二条の一九第一項に基づく定数は八八 本件条例」という)における定数及び定数配分の状況は、以下のとおりである。本件選挙当時の名古屋市の人口(平成二年国勢調査人口。以下同じ)からすれば、地方自治法二五二条の一九第一項に基づく定数は八八人となるが、本件条例による現実の定数は七八人にとどまっている。選挙区間における議員一人当たりの人口の最大較差は一対一・七三(名東区対熱田区又は中区。以下、較差に関する数値はいずれも概数)であり、いわゆる逆転現象は一四通り、そのうち定数二人以上の差のある顕著な逆転現象は四通りあった。そして、本件選挙当時における各選挙区の人口、配当基数及び配当基数に応じて定数を配分した人口比定数(公選法一五条八項本文の人口比例原則に基づいて配分した定数)は、原判決添付別表二のとおりであり、いずれの選挙区においても人口比定数は二人以上であり、右人口比定数による選挙区間における議員一人当たりの人口の最大較差は一対一・四三となる。 地方公共団体の議会の議員の定数配分については、選挙区の人口と配分された定数との比率の平等が最も重要かつ基本的な基準となるところ、本件において、右の比率の最大較差は、右のとおり、一対一・七三という値にとどまっている。右の- 3 -値は人口比定数によった場合の最大較差を上回るものであるが、公選法一五条八項ただし書の定めがある以上、現実の議員一人当たりの人口の最大較差が人口比定数による最大較差を上回っているというだけで、直ちに違法ということができないことは当然であり、また、人口比例原則に則った最大剰余法による定数配分を前提とすると、人口比定数が二人以上となる選挙区相互間においても、場合によっては、議員一人当たりの人口に右の程度の較差が生ずることもあり得るところである。 そうすると、本件条例による定数配分には、逆転現象が少なからず存在するな 上となる選挙区相互間においても、場合によっては、議員一人当たりの人口に右の程度の較差が生ずることもあり得るところである。 そうすると、本件条例による定数配分には、逆転現象が少なからず存在するなど人口比例原則に反する点があることは否定し難いとはいえ、公選法が定める前記のような指定都市の議会の議員の選挙制度の下においては、本件選挙当時における右のような投票価値の不平等は、前示の諸般の要素を斟酌してもなお一般的に合理性を有するものとは考えられない程度に達していたものとはいえず、同議会に与えられた裁量権の合理的な行使の限界を超えるものと断ずることはできない。したがって、本件条例の定数配分規定は、公選法一五条八項に違反するものではなく、適法というべきである。 三以上によれば、本件条例の定数配分規定が公選法一五条八項に違反するものではないとした原審の判断は、結論において正当なものとして是認することができる。右判断は、所論引用の各判例に抵触するものではない。論旨は、独自の見解に立って右判断における法令解釈の誤りをいうか、又は原判決の結論に影響しない事項をとらえてこれを論難するものにすぎず、採用することができない。 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官可部恒雄裁判官園部逸夫- 4 -裁判官大野正男裁判官千種秀夫裁判官尾崎行信- 5 - 正男裁判官 千種秀夫裁判官 尾崎行信

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