平成26(行ウ)48

裁判年月日・裁判所
平成28年11月16日 広島地方裁判所
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本件は、原告らが特定秘密の保護に関する法律(平成25年法律第108号)の無効確認を求め、国家賠償法に基づく損害賠償を請求した事案である。原告は、本件法律が憲法に違反し、表現の自由や情報収集活動に対して萎縮的効果をもたらすと主張した。主要な争点は、本件無効確認請求が法律上の争訟に該当するかどうかであり、裁判所は原告の主張を認め、無名抗告訴訟としての適法性を認めた。しかし、最終的に本件法律が無効であるとの判断は下されず、原告の請求は却下された。判決は、原告らのその余の請求も棄却し、訴訟費用は原告の負担とするものであった。

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判決文本文20,583 文字)

主文 1 本件訴えのうち,特定秘密の保護に関する法律(平成25年法律第108号)が無効であることの確認を求める部分を却下する。 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 特定秘密の保護に関する法律(平成25年法律第108号)が無効であることを確認する。 2 被告は,原告Aに対し,10万円を支払え。 3 被告は,その余の原告らに対し,それぞれ10万円及びこれに対する平成25年12月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,原告らが,特定秘密の保護に関する法律(平成25年法律第108号。以下「本件法律」という。)が憲法に違反すると主張し,いわゆる無名抗告訴訟として,本件法律が無効であることの確認を求める(以下「本件無効確認請求」という。)とともに,本件法律により精神的苦痛を受けていると主張し,被告に対し,国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づく損害賠償として,原告Aについては10万円,その余の原告らについてはそれぞれ10万円及びこれに対する本件法律が成立した日である平成25年12月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた(以下「本件損害賠償請求」という。)事案である。 2 前提事実(争いがない事実又は後掲証拠等により容易に認められる事実)本件法律は,平成25年12月6日に国会において成立し,同月13日に公布され,平成26年12月10日に施行された。 「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準」(以下「本件運用基準」という。)は,本件法律18条1項に基づき,平成26年10月14日の閣議決 れた。 「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準」(以下「本件運用基準」という。)は,本件法律18条1項に基づき,平成26年10月14日の閣議決定により定められた。 本件運用基準では,本件法律の運用に当たって留意すべき事項などの「Ⅰ基本的な考え方」,特定秘密の指定の要件の該当性判断基準などの「Ⅱ特定秘密の指定等」,「Ⅲ特定秘密の指定の有効期間の満了,延長,解除等」,「Ⅳ適性評価の実施」,「Ⅴ特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施の適正を確保するための措置等」などが示されている。(乙1)「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(以下「ツワネ原則」という。)は,国家安全保障上の理由による情報の非公開に関する指針等について,70か国以上の500人を超える専門家との協議を経て,22の団体によって起草され,平成25年6月12日に発表された(甲12)。 3 争点及びこれに対する当事者の主張争点1(本件無効確認請求に係る訴えは適法か)(原告らの主張)ア法律上の争訟性について本件法律の存在自体が,原告らの表現の自由や情報収集活動に対して,萎縮的効果を生じさせており,具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する具体的な紛争とみるべき状況になっている。そして,この状況は,本件法律が違憲無効であることが確認されれば解消するものであり,法令の適用により終局的に解決することができる。さらに,裁判所は,法令が違憲かどうかを判断し得るのであるから,事柄の性質上,司法審査に適しないような事情はない。 したがって,本件無効確認請求に係る訴えは,法律上の争訟に当たる。 イ無名抗告訴訟としての適法性について ある法令が存在し,国民が行おうとする行為にそ しないような事情はない。 したがって,本件無効確認請求に係る訴えは,法律上の争訟に当たる。 イ無名抗告訴訟としての適法性について ある法令が存在し,国民が行おうとする行為にその適用を受けるかど うかが不分明な場合,国民は,自己の解釈が正しいという確信に基づいて行動すれば,その解釈が誤っていた場合に不利益を受ける可能性がある。このような不利益を受ける危険を避けるために,解釈が分かれる行為をしないという選択もあるが,これでは,国民が憲法上保障されていると信じる行為であっても放棄せざるを得なくなり,国民の自由を最大限保障しようとする憲法の理念に反する。このような場合における救済として,米国における「宣言判決」の制度と同様に,宣言判決請求訴訟が無名抗告訴訟の一類型として認められるべきである。 したがって,本件無効確認請求に係る訴えは,上記のような無名抗告訴訟として,確認の利益も認められ,適法である。 国会が「行政庁」に含まれないとしても,行政庁の処分による不利益取扱いと同様に,国会の行為により国民が不利益取扱いを受けるときにこれを座視して不利益を甘受すべきとするのは憲法13条の精神に反するから,国会の立法行為が「行政庁」の行為とはいえないとしても,無名抗告訴訟が認められるべきである。 立法行為の実質が,専ら原告らの特定個人に向けられたものであって,かつ,その個人に対する法の執行行為にほかならないと考えられる場合には,本件法律及びその立法行為は処分性があるといえる。 本件法律の施行により,原告らは,日常的な調査活動を行おうとすると本件法律の罰則規定が適用されるおそれがあり,原告らの調査活動に対する萎縮効果が生じている。原告らが日常的な調査活動をそのような脅威の下で行わざるを得なく 原告らは,日常的な調査活動を行おうとすると本件法律の罰則規定が適用されるおそれがあり,原告らの調査活動に対する萎縮効果が生じている。原告らが日常的な調査活動をそのような脅威の下で行わざるを得なくなることは,表現の自由や情報の取得活動の自由が侵害されているものであり,本件法律の施行による効果として,原告らの権利ないし利益を直接的かつ現実的に侵害するものといえる。 本件法律が一般的法規範であるから,限られた特定の者に対してのみ適用されるものではないとの評価は誤りである。 したがって,本件法律自体及びその立法行為は,処分性がある。 本件法律の制定により,行政機関が情報公開請求を受けたときに,特定秘密に当たるかどうかを調査し,それに当たれば公開しないとすることによって,表現の自由を侵害する行為が行われることが法律上一義的に明白になっている。 また,本件法律の制定により,上記のとおり行政機関が表現の自由を侵害する行為を行うことが明らかにされていることによって,原告らは,表現の自由が侵害されていると感じ,萎縮的効果が生じているから,国民に重大な損害ないし危険が切迫しているといえる。 さらに,本件法律の存在自体が問題であるから,本件無効確認請求に係る訴えにより,本件法律が違憲無効であることの判断を求めるよりほかに上記の状態を回復する方法はない。 したがって,本件無効確認請求に係る訴えは,無名抗告訴訟の要件である一義的明白性,緊急性及び補充性の要件を満たしているから,適法である。 ウ本件無効確認請求に係る訴えは,憲法32条の裁判を受ける権利に基づくものであり,主権者である国民が憲法違反を理由として提訴しているから,適法である。 (被告の主張)ア法律上の争訟性について本件法律 係る訴えは,憲法32条の裁判を受ける権利に基づくものであり,主権者である国民が憲法違反を理由として提訴しているから,適法である。 (被告の主張)ア法律上の争訟性について本件法律は,原告らに対して具体的に適用されておらず,適用される具体的状況にもない。本件無効確認請求は,原告らの具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する具体的な紛争について,その審判を求めるものでないことは明らかであるから,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係を離れて,一般的抽象的に本件法律の無効確認を求めるものである。 したがって,本件無効確認請求は,法律上の争訟に当たらない。 イ無名抗告訴訟としての適法性について 無名抗告訴訟も抗告訴訟の一類型であるから,その対象となる行為は,「行政庁の公権力の行使」に当たることを要する。しかしながら,「行政庁」とは,法令により「公権力の行使」を行う権限を付与されたものを意味し,立法作用を行う立場における国会は「行政庁」に当たらない。 抗告訴訟の対象となる行政処分とは,公権力の主体たる国または公共団体が法令に基づき行う行為のうち,その行為によって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうところ,本件法律は,特定秘密の指定及び取扱者の制限その他の特定秘密の保護に関する必要な事項について,一般的な基準を定立するものであるから,法令の規定に基づきその執行行為として行われる行政庁の行政処分とは性質を異にしており,本件法律が制定されたことにより,直ちに直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものではない。 したがって,国会の本件法律の立法行為は,処分性がない。 行政訴訟としての無効等確認 ちに直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものではない。 したがって,国会の本件法律の立法行為は,処分性がない。 行政訴訟としての無効等確認の訴えは,「法律上の利益を有する者」,すなわち,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者でなければ原告適格が認められないところ,本件法律は特定秘密の指定及び取扱者の制限その他の特定秘密の保護に関する必要な事項について一般的な基準を定立するものにすぎず,本件法律の各規定をみても原告らの個別的利益を保護しているとは解されない。 したがって,原告らは,本件法律の無効確認を求める原告適格がない。 本件法律の制定に関して,行政機関が何らかの作為又は不作為の義務を負うことが法律上一義的に明白であるとはいえないから一義的明白性の要件を満たさない。 また,行政機関の作為又は不作為によって国民に重大な損害ないし危険が切迫しているともいえないから,緊急性の要件も満たさない。 したがって,本件無効確認請求に係る訴えは,無名抗告訴訟の訴訟要件を欠き,不適法である。 宣言判決請求訴訟は,我が国において確立された訴訟類型ではない。 また,宣言判決請求訴訟についても,法律上の争訟性,原告適格などの訴訟要件のほか無名抗告訴訟の要件を満たす必要があるとされるところ,上記のとおり,本件無効確認請求に係る訴えは,これらの要件を満たさないから,不適法である。 争点2(本件法律に係る立法行為が国賠法上違法となるか)(原告らの主張)ア本件法律に係る立法行為が国賠法上違法となること 本件法律は,後記のとおり憲法に違反していることが一義的に明確であるから,国会 る立法行為が国賠法上違法となるか)(原告らの主張)ア本件法律に係る立法行為が国賠法上違法となること 本件法律は,後記のとおり憲法に違反していることが一義的に明確であるから,国会における本件法律の立法行為は,国賠法上違法である。 立法行為は,憲法訴訟が提起されない限り,いわば立法者の終局的意思表示であるから,立法内容の違憲は即ち国賠法上の違法というべきであり,国会議員は,立法をなすに当たっては違憲という重大な結果を生じないように慎重に審議,検討すべき高度の注意義務を負うから,立法内容が違憲であれば,国会議員に注意義務違反があるというべきである。 平穏に生活する法的利益は,憲法13条の幸福を追求する権利の一内容であり,これを保護対象とする刑法の規定が存在することから,法的保護に値する利益である。 特定秘密の内容が秘密として保護されるべきものかどうかを検証するシステムを制度的に保障しないまま,特定秘密にアクセスする行為自体を処罰対象とすることは,特定秘密を取り扱う者が冤罪を作り出すことを可能にするシステムを持つことを意味するから,本件法律が存在す るだけで,原告らは,処罰されたり逮捕されたりするおそれがあるために萎縮し続けることになり,平穏に生活する法的利益を侵害される。 したがって,原告らは,本件法律に係る立法行為により,平穏に生活する法的利益を違法に侵害され,精神的苦痛を受けており,これに対する慰謝料としては原告ら1人当たり10万円が相当である。 イ本件法律が憲法等に違反していること 平和主義違反本件法律は,戦前の軍機保護法が戦争遂行体制の維持及び存続のために不可欠であったという歴史的事実からすれば,軍事立法としての基本的性格を持っており,憲法9条の改 と 平和主義違反本件法律は,戦前の軍機保護法が戦争遂行体制の維持及び存続のために不可欠であったという歴史的事実からすれば,軍事立法としての基本的性格を持っており,憲法9条の改憲と直結する。 したがって,本件法律は,憲法前文及び9条の平和主義に反する。 国民主権原理違反a 国民が政治に関して適切な判断をするためには,重要事項につき正確な情報を入手できることが重要であり,国民は,安全保障の重要事項に関して,主権者として知る権利が保障される必要がある。 しかし,本件法律は,特定秘密にアクセスすること自体を犯罪として重罰を科すものであるし,本件法律の施行により,情報公開制度や公益通報者保護制度は大きく後退し,特定秘密に関する報道機関の取材や市民活動を行う上での調査活動は著しく困難となる。また,行政機関の長が,国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがあると認めたときには,国会法の規定に基づく各議院の審査又は調査に対しても,特定秘密が提供されない場合があるというのであるから,国会の内閣に対するコントロールは有効に機能しなくなり,議会制民主主義は著しく弱体化する。さらに,会計検査院に対しても特定秘密が提供されない場合があるというのであるから,特定秘密を指定できる行政機関の長に憲法の規制の及ばない特権を与えることに等しく,憲法秩序を 破壊するものである。 したがって,本件法律は,国民主権原理に反するものである。 b なお,被告は,特定秘密として指定される情報について,もともと国家公務員法等による守秘義務の対象とされているものであると主張するが,そうであれば,本件法律を必要とする理由はなく,立法事実を欠くことになる。 また,被告は,特定秘密に指定された情報であっても 務員法等による守秘義務の対象とされているものであると主張するが,そうであれば,本件法律を必要とする理由はなく,立法事実を欠くことになる。 また,被告は,特定秘密に指定された情報であっても,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号。以下「情報公開法」という。)により開示される余地があるなどと主張するが,本件法律は,特定秘密を取り扱う者の主観的な判断で永久に秘密にする道を定め,情報公開制度を形骸化させるものであり,本件法律の下で,情報公開法に基づく不服申立てをしたとしても,開示される結果になるとは考えがたい。 憲法13条,19条違反a 本件法律は,適性評価制度の導入により,評価対象者について特定秘密を扱う者としてふさわしいかどうかを審査するものであり,その評価項目は,思想・信条を含め広範囲にわたる上,公務員だけでなく,業務委託を受けた民間業者やその従業員も評価対象者となるから,プライバシーの権利を侵害するものである。 b 適性評価は,特定有害活動及びテロリズムとの関係に関する事項(評価対象者の家族と同居人の氏名,生年月日,国籍及び住所についての調査を含む。)や,犯罪及び懲戒の経歴に関する事項について調査を行うものとされているところ,これらの調査は,個人の思想の自由と関連する事項について推知するものであり,思想調査を横行させることになるから,思想良心の自由を侵害するものである。 憲法14条1項違反 適性評価対象者は特権階級になるおそれがある。 本件法律の法案の検討段階では,適性評価を受けることを拒否し又は適性を有しないと評価された者に対して不利益な取扱いをしてはならない旨の規定があったのに,本件法律ではその規定が削除されていることからすれば,適性評価を受 段階では,適性評価を受けることを拒否し又は適性を有しないと評価された者に対して不利益な取扱いをしてはならない旨の規定があったのに,本件法律ではその規定が削除されていることからすれば,適性評価を受けることを拒否し又は適性を有しないと評価された者は,一定以上の官職などに付くことができなくなり,配置転換,分限免職又は整理解雇などの不利益処分を受けることが想定される。 そうすると,適性評価の対象とされた者は,同意しなければ仕事ができないことになるから,適性評価に対して真意に基づく同意をすることはあり得ない。 適性評価制度は,その調査事項が秘密漏えいを防止することとなる理由を明示しておらず,憲法14条1項に違反する。 憲法23条違反本件法律が定める特定秘密漏えい罪は,特定秘密の取扱業者だけでなく,業務知得者の漏えいをも対象としている。安全保障の名の下で軍事研究が行われた場合,その研究内容は秘匿され,研究者相互間での研究内容の共有や吟味の機会が失われるし,学会等での発表も規制対象となり,大学における自由な研究が阻害される。本件法律の施行により,従前,自由に学会で発表できていたものが発表できなくなるということ自体が学問の自由を弾圧するものである。 したがって,本件法律は,学問の自由を侵害するものである。 憲法21条違反a 本件法律により,行政機関の長の恣意的判断によって特定秘密に指定されれば,広範な情報が秘匿され,報道機関への情報提供や報道機関の取材活動が処罰の対象となるから,公務員や民間企業の従業員の表現の自由が制限され,報道機関やジャーナリストの取材活動,市民 による調査・情報収集活動が萎縮し,自主規制が広がることになる。 独立公文書管理監は,特定秘密に指定したことの当 員の表現の自由が制限され,報道機関やジャーナリストの取材活動,市民 による調査・情報収集活動が萎縮し,自主規制が広がることになる。 独立公文書管理監は,特定秘密に指定したことの当否を行政機関から独立した立場で判断できないから,その判断の適正性は保証されないし,情報監察室は,独立公文書管理監を補佐する立場であるが,本件法律原案を作成した張本人により構成されるから,独立した公正な立場ではない。また,内閣保全監視委員会は,事務次官クラスの幹部職員により構成され,政府そのものであるから,独立性も第三者性もない。さらに,行政機関の長が「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがあると認めたとき」には,特定秘密が国会にすら提供されない仕組みとなっているから,情報監視審査会にすべての特定秘密が開示されて,その適否を判断できるような仕組みになっているとは考えられない。このように,特定秘密の指定等について,独立した公正な第三者機関によるチェックはない。 したがって,本件法律は,知る権利,報道・取材の自由及び表現の自由を侵害するものである。 b 表現の自由は,民主政の過程を確保する重要な権利であり,優越的地位が認められるため,最大限尊重されなければならず,これに対する制約は必要最小限でなければならないところ,その許容される制約のぎりぎりのところがツワネ原則であるから,ツワネ原則を満たしていない本件法律は,表現の自由を侵害するものである。 c なお,被告は,通常の取材行為については正当業務行為となり,処罰対象とならないなどと主張するが,本件法律22条1項及び同条2項の規定は,単なる解釈規定であって,取材活動に対する萎縮効果を取り除くものではないし,警察や検察の恣意的な判断により,「出版又は報道の業務に従事 ないなどと主張するが,本件法律22条1項及び同条2項の規定は,単なる解釈規定であって,取材活動に対する萎縮効果を取り除くものではないし,警察や検察の恣意的な判断により,「出版又は報道の業務に従事する者」に含まれないとして,フリージャーナリストや市民活動をする者が逮捕・勾留されたり,特定秘密の取得罪 の適用が行われたりするおそれがあり,特定秘密の指定の当否を的確に判断できる第三者機関も存在しないから,本件法律の危険性は除去されない。 憲法31条違反a 適正手続保障の違反政府は,特定秘密の指定等の運用基準を定め又は変更する場合に,有識者会議として設置される「情報保全諮問会議」の意見を聴くこととされているが,そのメンバーのほとんどが本件法律に賛成する者であり,政府にとって都合の良い人選がされており,第三者機関によるチェックがされないシステムとなっている。 したがって,本件法律は,適正手続の保障に違反する。 b 罪刑法定主義違反特定秘密の内容のうち,防衛に関する事項については,自衛隊の運用,装備及び施設はすべて含まれ,防衛秘密の件数は約3万件,点数は16万点以上とされている。外交に関する事項のうち,安全保障に関する事項は,ほとんど無限定であるし,特定有害活動の防止に関する事項については,「外国の利益を図る目的」が曖昧であり,「その他の活動」は無限定である。テロリズムの防止に関する事項については,テロリズムの概念は曖昧で政治的なレッテルになり,ムスリムを調査対象とする実態があるし,対テロ対策情報の中で重要な情報は原発情報であるとされている。本件法律24条の特定秘密取得罪には,「管理を害する行為」という包括的で不明確な構成要件が定められている。 このように,本件法律が定める ,対テロ対策情報の中で重要な情報は原発情報であるとされている。本件法律24条の特定秘密取得罪には,「管理を害する行為」という包括的で不明確な構成要件が定められている。 このように,本件法律が定める罰則規定は,その文言が極めて曖昧である。 また,本件法律は,処罰の範囲が過失犯や未遂犯だけでなく,市民が特定秘密に直接アクセスすること自体を犯罪とし,また,特定秘密 の漏えい及び取得の罪の共謀,教唆及び煽動も処罰対象としており,処罰範囲が広汎にわたり,その内容も適正でなく,重罰を科すものである。 さらに,本件法律は,行政機関の長が処罰による保護の対象となる特定秘密を広範囲にわたって指定することとし,処罰の対象を行政機関に白紙委任している。 したがって,本件法律は,罪刑法定主義に反する。 c 刑事裁判における適正手続保障の違反本件法律の罰則規定に違反したとして起訴され刑事裁判になった場合,被告人や弁護人に対して,漏えい対象とされる特定秘密の内容が開示されないおそれがある。また,弁護人が弁護活動のために特定秘密に接近しようとして関係者への事情聴取や資料収集をすることが,特定取得行為罪や独立教唆等により処罰対象とされる可能性があり,弁護活動が萎縮し,制約を受けることになる。そうすると,弁護人は,刑事裁判において,特定秘密として保護に値するかどうかを争うことがおよそ困難となり,防御活動を行うことが困難になる上,裁判の公開が制限されるおそれもある。さらに,本件法律は,裁判官に対しても,一定の場合以外には特定秘密の内容を提供しないとしているから,裁判所は,行政機関の長が特定秘密に指定した判断を追認するだけの機関となり,司法権の独立が保障されないことにもなる。 ツワネ原則は,いかな 外には特定秘密の内容を提供しないとしているから,裁判所は,行政機関の長が特定秘密に指定した判断を追認するだけの機関となり,司法権の独立が保障されないことにもなる。 ツワネ原則は,いかなる場合でも,被告人が証拠について精査,反論する機会を持たないまま,有罪判決を下したり,自由を剥奪すべきでないとし,公的機関は被告人と弁護人に対し,その個人が問われている容疑と,公正な裁判を確実に行うために必要な他の情報を,たとえ機密扱いの情報であっても,公共の利益を考慮した上で開示するべきであるとし,公正な裁判を保障するために必要な情報の開示を公的 機関が拒んだ場合,裁判所は審理を停止又は起訴を棄却すべきであるとしている。 したがって,本件法律は,刑事裁判における特定秘密の被告人及び弁護人への開示や防御権保障に関する規定を欠いており,被告人の裁判を受ける権利や弁護人選任権を実質的に侵害しているから,適正手続保障に違反する。 憲法90条違反会計検査院は,内閣官房に対し,決算の検査に当たり,特定秘密を含む文書の提供を検査対象の省庁から受けられない事態があり得るとして,本件法律の問題を指摘したが,本件法律の規定は修正されず,会計検査院の求めがあれば提供する取扱いをする旨の通達を出す旨を会計検査院との間で合意したにもかかわらず,それが出されていないから,本件法律は,憲法90条に違反する。 その他の憲法違反本件法律は,憲法11条,15条2項,18条,25条,97条,98条1項,99条に違反する。 ツワネ原則違反ツワネ原則は,政府には公的機関の情報にアクセスする権利を制限する正当性を証明する責務があること,政府の人権法・人道法違反の事実など,政府が秘密にしてはならない情報 ツワネ原則違反ツワネ原則は,政府には公的機関の情報にアクセスする権利を制限する正当性を証明する責務があること,政府の人権法・人道法違反の事実など,政府が秘密にしてはならない情報があること,情報は必要な期間のみ限定して秘密指定されるべきであり,最長期間を法律で定めるべきであること,安全保障部門には独立した監視機関が設けられるべきであること,内部告発者は保護されるべきであり,情報漏えい者を訴追する場合は限定されるべきであること,公務員でない者が秘密情報の受取り等により訴追されるべきでないこと,情報流出の調査において情報源等を明らかにすることを強制されるべきでないことなどを定めていると ころ,本件法律は,ツワネ原則に沿った内容になっていない。 (被告の主張)ア本件法律に係る立法行為が国賠法上違法となるとの主張について 国賠法1条1項の「違法」が認められるためには,公権力の行使が,公務員が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背し,個別の国民の具体的な法律上保護された利益を侵害することが必要である。 原告らは,「平穏に生活する法的利益」の侵害を主張するが,「平穏に生活する法的利益」の法的根拠及び内容は明らかでないし,原告らの主張によっても,本件法律の成立によって萎縮という漠然とした不安ないし危惧を抱いているにすぎず,具体的な法律上保護された利益の侵害はない。 原告らが適性評価の調査対象となることは想定されないし,本件法律が制定及び施行されたことによって原告らの知る権利,学問の自由並びに報道及び取材の自由に制約が生じたなどの事情はなく,原告らについて,本件法律の罰則規定が具体的に適用されたことはないし,これが適用される具体的な状況にもない。 したがって,原告らの主張は に報道及び取材の自由に制約が生じたなどの事情はなく,原告らについて,本件法律の罰則規定が具体的に適用されたことはないし,これが適用される具体的な状況にもない。 したがって,原告らの主張は,本件における国賠法1条1項の違法を基礎づける事情とはなり得ない。 国会議員の立法行為又は立法不作為が国賠法1条1項の適用上違法となるかどうかは,国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題であって,当該立法の内容又は立法不作為の違憲性の問題とは区別されるべきものであるから,立法の内容が憲法の規定に違反するものであったとしても,そのことにより国会議員の立法行為が直ちに違法の評価を受けるものではない。 国会議員は,立法に関しては,原則として,国民全体に対する関係で 政治的責任を負うにとどまり,国会議員の立法行為は,立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず,国会があえて当該立法を行うというような容易に想定し難い例外的な場合でない限り,国賠法1条1項の適用上,違法の評価を受けないというべきである。 そして,後記のとおり,本件法律は憲法に違反するものではなく,本件法律に関する国会議員の立法行為は,国賠法上違法の評価を受けるものではない。 イ本件法律が憲法等に違反するとの主張について 平和主義違反の主張について本件法律は,「当該行政機関の所掌事務に係る別表に掲げる事項に関する情報であって,公になっていないもののうち,その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため,特に秘匿することが必要であるもの」について,その漏えいの防止を図ることを直接の目的として,「当該情報の保護に関し,特定秘密の指定及び取扱者の制限 の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため,特に秘匿することが必要であるもの」について,その漏えいの防止を図ることを直接の目的として,「当該情報の保護に関し,特定秘密の指定及び取扱者の制限その他の必要な事項を定める」(同法1条)ものにすぎないから,憲法9条及び平和主義に違反するものではない。 国民主権原理違反の主張について特定秘密として指定される情報は,特定秘密に指定されると否とにかかわらず,既に国家公務員法等において守秘義務の対象とされている。 もっとも,本件法律は,安全保障上の重要機密情報を管理する法的ルールを定め,当該情報を適正に管理するとともに,諸外国との間で重要機密情報を共有することができる環境を速やかに整える必要があったことから,制定されたものであり,十分な立法事実がある。 特定秘密に指定された情報が記載された行政文書であっても,情報公開法が適用され,同法に基づく開示請求がされた場合には,当該文書の開示又は不開示の判断は同法に則って行われることになる。そして,特 定秘密に指定された情報が記載された公文書が不開示とされたとしても,当該不開示決定について不服申立てがされた場合は,情報公開・個人情報保護審査会が調査審議を行い,その結果,特定秘密を開示すべき旨が答申されれば,特定秘密の指定を解除して開示することになる。 政府から国会への情報については,本件法律が制定される以前から,国会法104条において,内閣等の各議院等に対する必要な報告又は記録の提出義務を規定する一方で,上記報告又は記録の提出が国家の重大な利益に悪影響を及ぼす場合等に,政府の保有する情報を国会に提供しないことを許容していた。そして,本件法律10条は,国会法104条等の規定により特定秘密を利用する場合において,例 の提出が国家の重大な利益に悪影響を及ぼす場合等に,政府の保有する情報を国会に提供しないことを許容していた。そして,本件法律10条は,国会法104条等の規定により特定秘密を利用する場合において,例外的に「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれ」があるときには,特定秘密の提供をしないこととしているが,例外的に特定秘密の提供をしない場合とは,外国の情報機関から提供された情報であって,第三者に提供することについて,提供者の承諾が得られていない情報等とされており,このような場合に限定して例外的に国会に情報を提供しないとすることには,合理性がある。 本件法律10条1項1号イは,各議院等が国会法等の規定により行う審査又は調査であって,同法の規定により公開しないとされたものにおいて特定秘密を利用する場合に,国会が定める保護措置が講じられ,かつ,我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたときには,特定秘密を提供するものと定めていることなどからすれば,国会に特定秘密が提供され,国会の審議がより充実することが見込まれるから,議会制民主主義が著しく弱体化するとはいえない。 したがって,本件法律は,国民主権原理に違反するものではない。 憲法13条,19条違反の主張についてa プライバシーの権利とは,「私生活をみだりに公開されない法的保 障ないし権利」と定義されるところ,適性評価においては,評価対象者個人の私生活に関わる事項が含まれているものの,その実施については,評価対象者に対して,適性評価を実施する旨,調査項目,調査方法及び個人情報の取扱い等の説明を詳細に記載した告知書を交付した上,適性評価の実施についての同意書への自署又は記名押印による明示的な同意を得なければならず,本人の意思に反して情報収 調査項目,調査方法及び個人情報の取扱い等の説明を詳細に記載した告知書を交付した上,適性評価の実施についての同意書への自署又は記名押印による明示的な同意を得なければならず,本人の意思に反して情報収集がされることはない。そして,適性評価の実施について同意しなかったとしても,その事実は不同意者に対して何ら不利益を及ぼすものではなく,本件法律及びその運用基準は,適性評価の実施に対する評価対象者の同意が任意にされることを担保する仕組みを採用している。 また,適性評価制度は,評価対象者が特定秘密の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれの有無を判断するためのものであり,収集した情報を公開することを目的とした制度ではなく,適性評価の結果や適性評価の実施に当たって取得する個人情報等については,国家公務員法上の懲戒事由等に該当する場合を除き,特定秘密の保護以外の目的で使用することが禁止されている。 したがって,適性評価制度は,プライバシーの権利を侵害するものではない。 b 適性評価は,調査事項が,評価対象者が特定有害活動やテロリズムとどのような関係を有しているかなどの点に限られており,評価対象者の思想調査を目的として行うものではなく,本人の意思に反して情報収集が行われることはない。 したがって,適性評価制度は,調査対象者の思想及び良心の自由を侵害するものではない。 憲法14条1項違反の主張について適性評価制度は,外国情報機関等が行政機関の職員の職務内容や役職 から当該秘密にアクセスできる者を選定して工作をすることなどにより,秘密が漏えいすることを防止するために必要であり,調査事項は限られ,評価対象者の思想調査を目的として行うものではなく,評価対象者の人種,信条,性別,社会的身 る者を選定して工作をすることなどにより,秘密が漏えいすることを防止するために必要であり,調査事項は限られ,評価対象者の思想調査を目的として行うものではなく,評価対象者の人種,信条,性別,社会的身分又は門地そのものを調査対象とするものではない。 また,評価対象者の性別,職業及び国籍の確認は,それらの事項によって直ちに特定秘密の漏えいのおそれの有無を判断するものではなく,評価対象者の個別具体的な事情を考慮して総合的に判断するものであり,本件運用基準において,適性評価に関わる者は憲法14条を遵守し,基本的人権を不当に侵害することのないようにしなければならないとされている。 したがって,適性評価制度は,憲法14条1項に違反するものではない。 憲法23条違反の主張について学問の自由とは,国家権力が,学問研究,研究発表,学説内容などの学問的活動とその成果について,それを弾圧し,あるいは禁止することは許されないことを意味するところ,行政機関以外の者が独自に保有している情報が特定秘密に指定されることはないから,大学の研究者が特定秘密を保有するのは,行政機関の長との契約に基づき,本件法律の規定によりそれを保有し又は提供された場合に限られる。そのような場合に,仮に研究の内容やその発表等について何らかの制約があったとしても,それは私的自治の領域における当該契約の内容の問題であって,国家権力による侵害とは異なる。 また,特定秘密は,国家公務員法の守秘義務の対象とされていた情報の一部が指定されるから,本件法律の施行により,従来は制約がなかった研究の内容等について,新たに制約が課されることはなく,従前であ れば自由に学会で発表できていたものができなくなるということはない。 したがって,本件法 により,従来は制約がなかった研究の内容等について,新たに制約が課されることはなく,従前であ れば自由に学会で発表できていたものができなくなるということはない。 したがって,本件法律は,学問の自由を侵害するものではない。 憲法21条違反の主張について本件法律は特定秘密の要件を定めており,本件運用基準は,特定秘密の要件該当性について,項目を限定及び細分化し,要件該当性の判断を厳格にすべきものとし,行政機関の法令違反の事実を指定し又はその隠蔽を目的として指定してはならないものとしている。 また,特定秘密は既に国家公務員法等により守秘義務が課されていた情報の一部にすぎず,これまで国民に開示されてきた情報を新たに秘匿するものではない。 そして,独立公文書管理監は,内閣府に設置され,本件法律附則9条に規定する独立した公正な立場において,特定秘密の指定等の適正を確保するための検証,監察をし,必要な場合には行政機関の長に対して是正を求めることができ,行政機関の長はこの求めに対して適切な措置を講じるものとされている。また,行政機関から独立し,特定秘密の指定が適正に行われているかを常時監視する機関として,情報監視審査会が衆参両議院に置かれているなど,国会による適切な監視がされる態勢も構築されており,これらの機関により特定秘密の指定に係る重層的な検証や監視等が行われている。 さらに,本件法律は,出版又は報道の業務に従事する者の取材行為について,専ら公益を図る目的を有し,かつ,法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限り,正当な業務による行為とする旨を規定しており,通常の取材行為は処罰対象とならないから,取材活動が不当に制限されることはない。 そのほか,特定秘密が記載さ 方法によるものと認められない限り,正当な業務による行為とする旨を規定しており,通常の取材行為は処罰対象とならないから,取材活動が不当に制限されることはない。 そのほか,特定秘密が記載された行政文書は情報公開法に基づいて開 示される余地があるし,本件法律及びその運用基準において,特定秘密の指定には有効期間が定められ,その期間延長については原則として上限が設けられるとともに,行政機関の長に対して有効期間の延長の際における要件充足性の確認を義務付けているほか,特定秘密の指定の解除等がされた行政文書で保存期間が満了したものを国立公文書館等に移管することなどが定められている。 したがって,本件法律は,知る権利,報道・取材の自由及び表現の自由を侵害するものではない。 憲法31条違反の主張についてa 独立公文書管理監や情報監視審査会など,特定秘密の指定等の実施の適正を確保するための十分な仕組みは設けられている。 b 特定秘密は,行政機関の長が,本件法律に明記された3つの要件を満たす場合に初めて指定することができ,防衛に関する事項等の特定秘密の指定対象となる事項は,運用基準において55の細目に限定されているから,行政機関の長が恣意的に特定秘密を指定することはできず,安全保障に関する事項が無限定に特定秘密に指定されることはない。 「特定有害活動」及び「テロリズム」という要件については,本件法律12条2項において明確に定義されており,曖昧ではない。 本件法律24条の不正取得罪については,今後の情報通信技術等の急速な進歩によって可能となる手法を用いた悪質な手口による特定秘密の取得に対しても対応するため,限定列挙の形をとらず,「その他の特定秘密を保有する者の管理を害する行為」をも不正取 の情報通信技術等の急速な進歩によって可能となる手法を用いた悪質な手口による特定秘密の取得に対しても対応するため,限定列挙の形をとらず,「その他の特定秘密を保有する者の管理を害する行為」をも不正取得行為として規定しているが,その文言の前に「財物の窃取若しくは損壊」などと不正行為を例示しているから,「その他の特定秘密を保有する者の管理を害する行為」とは,上記例示に比肩する行為であると合理的 に解釈することができ,一般国民の予見を不当に奪うことはない。 本件法律23条以下の規定により公務員等以外の者が処罰対象となるのは,外国等の利益等を図る目的で,欺罔,暴行若しくは脅迫等により,特定秘密を取得した場合や,特定秘密を取り扱う公務員等をそそのかして特定秘密を漏えいさせた場合に限られるし,この場合には,特定秘密であることを知ってこれらの行為を行う必要があるから,外国情報機関等に協力し,特定秘密をあえて入手したような例外的な場合を除き,公務員等以外の者が本件法律による処罰の対象となることはない。 不正取得行為を処罰対象としているのは,特定秘密の入手を企図する者が欺罔,暴行又は脅迫により特定秘密を取得する場合や,窃取等により特定秘密を直接取得する場合など,特定秘密の取扱者等による漏えい行為を処罰するだけでは不十分だからである。 共謀,教唆及び煽動は,特定秘密の漏えいをもたらす危険性の大きい行為であるから,本件法律の処罰対象として規定したものであり,十分に合理性がある。 刑法に規定されている窃盗罪や,不正競争防止法に規定される営業秘密の故意の開示等の罪などの法定刑が懲役10年以下とされていることに照らし,国の安全保障に関する秘密の漏えいが,懲役1年以下とされる国家公務員法の守秘義務違反の罪と同等にとどま 法に規定される営業秘密の故意の開示等の罪などの法定刑が懲役10年以下とされていることに照らし,国の安全保障に関する秘密の漏えいが,懲役1年以下とされる国家公務員法の守秘義務違反の罪と同等にとどまることは,均衡を失するし,特定秘密の漏えいを抑止する観点からも十分ではないことから,本件法律の罰則を懲役10年以下としたものであり,他の法律と比して著しく重い刑罰とはいえない。 したがって,本件法律の罰則規定については,一定の行為に限られ,構成要件が明確に定められており,処罰範囲が不当に拡大されるものではなく,重罰を科すものでもないから,罪刑法定主義に違反するも のではない。 憲法90条違反の主張について否認ないし争う。 その他の憲法違反の主張について原告らは,本件法律が憲法11条,13条,14条1項,15条2項,18条,25条,97条,98条1項,99条に違反すると主張するが,抽象的な主張にとどまりその具体的な根拠はない。 ツワネ原則違反の主張についてツワネ原則は,アメリカ合衆国の私的機関が平成25年6月に各国の立法等の指針を提言したものであり,あくまで私的機関の独自の見解にすぎず,法的拘束力を有しないから,仮に本件法律がツワネ原則に反するとしても,違憲又は違法の問題は生じない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1について 裁判所法3条1項の規定にいう「法律上の争訟」として裁判所の審判の対象となるのは,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争に限られるところ,このような具体的な紛争を離れて裁判所に対して抽象的に法令が憲法に適合するかしないかの判断を求めることはできない。即ち,具体的な争訟事件が提起されないのに将来を予想して憲法及びその他の れるところ,このような具体的な紛争を離れて裁判所に対して抽象的に法令が憲法に適合するかしないかの判断を求めることはできない。即ち,具体的な争訟事件が提起されないのに将来を予想して憲法及びその他の法律命令等の解釈に存在する疑義論争に関し抽象的な判断を下すことはできない(最高裁昭和27年(マ)第23号同年10月8日大法廷判決・民集6巻9号783頁,最高裁昭和61年(オ)第943号平成元年9月8日第二小法廷判決・民集43巻8号889頁,最高裁平成2年(行ツ)第192号同3年4月19日第二小法廷判決・民集45巻4号518頁各参照)。 したがって,裁判所に対して抽象的に法令が憲法に適合するかしないかの判断を求めるに過ぎない訴訟は,不適法である。 もっとも,立法作用に属する法令の制定行為自体の違法を訴訟物とする訴訟であっても,それが,具体的な紛争を前提として提起された場合において,当該制定行為が,他に行政庁の処分を待つことなく特定の法律効果を直接的に発生させるものであり,かつ,限られた特定の者らに対して,その者らが法令の規定に従って従来から有していた一定の法的地位を奪う結果を生じさせるなどの事情があって,当該制定行為の適法性を争い得るとすることに合理性があると認められるのであれば,当該制定行為は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たり得ると解される(最高裁平成21年(行ヒ)第75号同年11月26日第一小法廷判決・民集63巻9号2124頁参照)。 本件法律は,特定秘密の指定及び解除,取扱者の制限及び適性評価等,特定秘密の漏えいの防止を図るために必要な一般的事項を定めるとともに,同法の適正な運用を図るための一般的基準を定めようとするものであり,行政庁の処分を待つことなく特定の個人の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に直 防止を図るために必要な一般的事項を定めるとともに,同法の適正な運用を図るための一般的基準を定めようとするものであり,行政庁の処分を待つことなく特定の個人の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に直接の影響を及ぼす規定が含まれているとは認められない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件法律の立法行為は抗告訴訟の対象となる行政処分であるとはいえない。 原告らは,本件法律の規定が原告らに対し具体的に適用されていない状況で,将来を予想して裁判所に対して抽象的に本件法律が憲法に違反するかどうかの判断を求めている。 したがって,本件無効確認請求は,原告らの具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争ということはできないから,裁判所法3条1項の「法律上の争訟」ということはできず,無名抗告訴訟としての適法性を検討するまでもなく,不適法であるといわざるを得ない。 2 争点2について 国家賠償請求は,公務員の公権力の行使等による不法行為に基づく損害賠償請求として,民法の特則をなすものであり,不法行為が成立するためには, 一般に損害賠償を請求する者において法的保護の対象となる利益が違法に侵害されたことを要すると解される(最高裁昭和57年(オ)第902号同63年6月1日大法廷判決・民集42巻5号277頁,最高裁昭和61年(オ)第329号等平成3年4月26日第二小法廷判決・民集45巻4号653頁,最高裁平成17年(受)第2184号同18年6月23日第二小法廷判決・裁判集民事220号573頁,最高裁平成19年(受)第808号等同20年6月12日第一小法廷判決・民集62巻6号1656頁各参照)。 原告らは,本件法律は憲法に違反していることが一義的に明確であるところ,本件法律が存在するだけで,原告らが冤罪 808号等同20年6月12日第一小法廷判決・民集62巻6号1656頁各参照)。 原告らは,本件法律は憲法に違反していることが一義的に明確であるところ,本件法律が存在するだけで,原告らが冤罪により処罰されたり逮捕されたりするおそれがあるため萎縮し続けることになり,憲法13条の幸福を追求する権利の一内容である平穏に生活する法的利益を侵害されると主張している。 しかしながら,憲法13条を根拠とするとしても,原告らが何を萎縮しているのか具体的に明らかではないから,原告らの法的利益が侵害されたものと認めることができない。また,原告らが処罰されたり逮捕されたりするおそれについても,抽象的な主張にとどまるのであり,法的利益が侵害されているものとは認めることができない。 原告らは,その他,本件法律が違憲であるなどの主張をしているところ,原告らの法的利益の侵害の観点から,さらに検討する。 平和主義違反,国民主権原理違反,憲法13条,19条違反,憲法14条1項違反及び憲法23条違反の主張について原告らの主張は,自らの法的利益が現に侵害されていることを主張するものではないので,これらを検討する必要がない。 憲法21条違反の主張について原告らの主張は,自らの法的利益が現に侵害されていることを主張するものではないか,自らの法的利益が現に侵害されていることを主張するもので あっても,その主張内容が一般的,抽象的であって具体的な侵害が認められないものである。したがって,本件法律が憲法21条に違反するかどうかを検討する必要がない。 憲法31条違反,憲法90条違反,その他の憲法違反及びツワネ原則違反の主張について原告らの主張は,自らの法的利益が現に侵害されていることを主張するものではないの 討する必要がない。 憲法31条違反,憲法90条違反,その他の憲法違反及びツワネ原則違反の主張について原告らの主張は,自らの法的利益が現に侵害されていることを主張するものではないので,これらを検討する必要がない。 以上によれば,本件法律が存在することによって,原告らの法的利益が侵害されているとは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,原告らの本件損害賠償請求はいずれも理由がない。 3 結論よって,原告らの訴えのうち本件無効確認請求は不適法であるから,これを却下し,その余の請求は理由がないからこれらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 広島地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官小西洋 裁判官平井健一郎 裁判官加藤弾

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