平成18(行コ)267 遺族共済年金決定請求棄却処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成16年(行ウ)第232号)

裁判年月日・裁判所
平成19年5月31日 東京高等裁判所 その他
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本件は、地方公務員共済組合から退職年金を受給していた元組合員が行方不明となり、失踪宣告により死亡したとみなされたことに起因する。元組合員の妻が遺族共済年金の決定請求を行ったが、組合から遺族に該当しないとの理由で請求が棄却された。原審は、妻が遺族共済年金の受給権を有すると認定し、処分を取り消したが、国家賠償法に基づく損害賠償請求は認めなかった。一審原告は、手続法違反や精神的苦痛を理由に控訴したが、控訴審では一審原告の主張が認められず、請求は棄却された。判決は、手続法の適用や一審被告の行為が違法でないと判断し、損害賠償請求を否定した。

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判決文本文78,488 文字)

- 1 -主文 一審原告の控訴に基づき,原判決中,一審原告敗訴部分を次のとおり変更する。 (1)一審被告は,一審原告に対し,20万円及びこれに対する平成16年6月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)一審原告のその余の請求を棄却する。 一審被告の控訴を棄却する。 訴訟費用は,第1,2審を通じこれを100分し,その3を一審原告の負担とし,その余を一審被告の負担とする。 事実 及び理由第1当事者の求めた裁判 一審原告(一審原告の控訴について)(1)原判決中,一審原告敗訴部分を取り消す。 (2)一審被告は,一審原告に対し,100万円及びこれに対する平成16年6月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3)訴訟費用は,第1,2審とも一審被告の負担とする。 (一審被告の控訴について)主文2項と同旨 一審被告(一審原告の控訴について)一審原告の控訴を棄却する。 (一審被告の控訴について)(1)原判決中,一審被告敗訴部分を取り消す。 (2)一審原告の請求を棄却する。 (3)訴訟費用は,第1,2審とも一審原告の負担とする。 - 2 -第2事案の概要 本件は,地方公務員共済組合(以下「組合」という。)である一審被告から退職年金を受給していた元組合員P1が行方不明となり,失踪宣告によって死亡したものとみなされたことから,同人と別居していた戸籍上の妻である一審原告が,一審被告に対し,遺族共済年金の決定請求をしたところ,一審被告から,一審原告が遺族に該当しないとの理由で決定請求を棄却する旨の処分(以下「本件処分」という。)を受けたため,①本件処分には一審原告の遺族該当性に関して事実誤認があり,また行政手続法(以下「手続法」ともいう。)に違反する手続上の瑕疵があると 請求を棄却する旨の処分(以下「本件処分」という。)を受けたため,①本件処分には一審原告の遺族該当性に関して事実誤認があり,また行政手続法(以下「手続法」ともいう。)に違反する手続上の瑕疵があると主張して,その取消しを求めるとともに,②決定請求手続における一審被告職員の不法行為(行政手続法違反)によって精神的苦痛を被ったと主張して,一審被告に対し,国家賠償法1条1項に基づいて,慰謝料100万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成16年6月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は,一審原告がP1の遺族共済年金の受給権を有する遺族に該当する者であるとして本件処分を取り消したが,一審原告の一審被告に対する国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求については,これを広義の不法行為による損害賠償請求と解し,一審原告に本件処分の取消しによってもなお損害賠償によって慰謝されるべき精神的苦痛が存するものとは認められないとして,その請求を棄却した。一審原告と一審被告は,それぞれその敗訴部分を不服として各控訴をした。 本件における関係法令等の定め,前提となる事実,争点及びこれに関する当事者の主張は,当事者の当審における補足的主張を後記3,4のとおり付加するほかは,原判決事実及び理由の「第2事案の概要」欄の1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決8頁8行目の「なお」から同頁9行目末尾までを「なお,遺族該当性の判断を本件認定基準の定める- 3 -ところによってすることが合理的かつ相当であるとする一審被告の主張について,一審原告は明らかに争っていない。)。」に,同25頁5行目の「平成15年7月26日」を「平成15年7月29日」に,同27頁4行目から7行目までを「(3) かつ相当であるとする一審被告の主張について,一審原告は明らかに争っていない。)。」に,同25頁5行目の「平成15年7月26日」を「平成15年7月29日」に,同27頁4行目から7行目までを「(3)争点③(国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求の成否等)争点の第3は,一審被告の賠償責任の有無に関し,一審被告職員に手続法違反の行為があったとして,一審被告は国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負うかどうか,負うとして,一審原告の被った損害の額である。」に,それぞれ改める。 一審原告の主張(1)一審被告職員の手続法違反についてア原判決は,申請しようとする者が申請の意思を明らかにし,申請書を提出を希望している場合において,行政庁が申請書の提出を拒否することは手続法7条の趣旨に反し違法なものであるとしながらも,一審被告が事前審査方式を採る理由が申請をしようとする者に結果的に無駄となることもある煩雑な手続上の負担をできるだけ避けさせるためであり,事前審査の終了前でもとにかく請求したいという者に対しては決定請求書の交付を拒むものではないから,一審被告の事前審査方式は,およそ合理性のない制度であるとまでいうことは困難であると判示するが,一審被告の事前審査方式の違法性を明確に認めなかった原判決の上記判断は不当である。 一審被告の事前審査方式は,イレギュラーケースについては申請書(決定請求書)を書かせないで審査して,事前審査で認容されたら初めて決定請求書を書かせるという方式であるが,申請者にとって,申請書を作成することはさほど労力を要するものでないし,また,申請書を提出して請求することで,その後の審査の公正性・透明性に疑義を持たずに判定者を信頼して審査に委ねられるのであるから,申請書の提出が認められない場合に比べ精神的な負担は少ない。遺族 し,また,申請書を提出して請求することで,その後の審査の公正性・透明性に疑義を持たずに判定者を信頼して審査に委ねられるのであるから,申請書の提出が認められない場合に比べ精神的な負担は少ない。遺族厚生年金の場合のように,申請意思を- 4 -示したら直ちにレギュラーとイレギュラーに分けることはせず,まず審査基準を与えて共通の申請書式で審査申請させることが,判定者の恣意的審査を防ぎ,手続法の公正性・透明性に適う手続であり,その上で必要なら個別のイレギュラーケースにつき追加調査すればよいわけであるから,遺族厚生年金と審査基準を共通するという一審被告においては,申請意思を示した全申請者に直ちに共通の申請書式を交付すべきであり,一審被告は,審査基準は遺族厚生年金の審査基準に則るとしながら,その運用においては遺族厚生年金と全く異なる運用をしているものであって,一審被告の事前審査方式は,申請者にとっては不利益こそあれ何の利益ももたらさない不合理な方式であり,この方式は,申請書を提出させて予備審査をした後,見込みがないからとして取り下げさせるやり方よりも更に違法性の高い審査方式であって,申請機会を事実上奪われた申請者が申請を放棄することを期待する意味合いを持つ点で重大な違法行為であり,手続法の趣旨に背反するものである。 イ原判決は,一審原告が一般的な標準処理期間の開示を求めたと認めるに足りる証拠はなく,一審被告職員の行為に標準処理期間の公表義務違反があったと認められないと判示し,公表努力義務を定めた手続法6条について,申請者が要求しなければ開示せずとも違法ではないと判示するが,原判決の上記判断は不当である。 標準処理期間の制定が努力義務になっているのは,許認可の性質によっては行政庁の努力以外の面で標準処理期間が定めにくい業務もあるからであって 違法ではないと判示するが,原判決の上記判断は不当である。 標準処理期間の制定が努力義務になっているのは,許認可の性質によっては行政庁の努力以外の面で標準処理期間が定めにくい業務もあるからであって,本件はそれには該当しない。一審原告の場合は,申請意思を示してから申請書式をもらうに多大な努力をしても,これを受領した平成15年8月30日まで63日を要し,さらに書式を得て申請書(決定請求書)は作成したが,これが受理された同年9月16日までに更に17日を要したという,一審被告職員の手続法7条違反が大きく影響し,標準処理期間- 5 -を開示してもらっても,ほとんど意味がない状態になっていた。しかも,本来は公表義務があるから,足立社会保険事務所のように事務所内に公表されていれば,要求しなくても知り得,申請者は「標準処理期間の定めがあるのに,申請者に申請書式も交付しないのはおかしい」と抗議できて別の展開があったかもしれない。手続法6条の立法趣旨が申請の迅速で的確な処理の確保であることにかんがみれば,申請者が開示を求めなかったからといって,公表も開示もしなくて許されるというのは手続法の精神に反する。 ウ原判決は,一審被告職員に手続法8条違反の行為があったといえない旨判示するが,本件処分において棄却理由を述べた文面は,一般論としては専ら本件認定基準のうち一審原告に不利に該当する片言隻語を集めて,請求棄却に向けて強引に当てはめたものであり,手続法の精神に合致したものとはいえない。 エ手続法9条は,許認可に係る情報において弱者の申請者(国民)のために,行政機関に対し,法に基づく義務である審査基準や標準処理期間が明らかにされていることは当然として,さらに,申請しようとする者や申請者の求めに応じ,申請書の記載及び添付書類に関する事項その他の申請に必要 機関に対し,法に基づく義務である審査基準や標準処理期間が明らかにされていることは当然として,さらに,申請しようとする者や申請者の求めに応じ,申請書の記載及び添付書類に関する事項その他の申請に必要な情報や審査の途中経過等の情報の提供にできる限り努めなければならない旨の努力目標を課しているものであるから,本来公表義務がある条文に関して「申請者が要求しなかったから開示しなかった」とはいえないことは明白であり,公表か少なくとも申請者には進んで開示するというのが行政機関の法的義務に適う方法である。また,一審原告が,平成15年8月25日に一審被告のP2職員に「事前審査がいつ終わるか」と尋ねても答えず,同年9月11日に一審被告のP3職員に「乙8の4頁別紙2に今となってなぜ第三者の証明を求めるのか,なぜ別表3を割愛して示すのか」と尋ねても,「こちらが要求することにこちらが要求する方法で回答- 6 -されたい」などと対応したことは手続法9条違反である。 (2)国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求の成否等について原判決は,一審被告の各条及び立証趣旨に反する点があったことを認めつつも,本件処分の取り消しによって慰謝されるべき精神的苦痛が一審原告に存するものとは認められないとして,一審原告の損害賠償請求を棄却したが,原判決が同請求を棄却した最大の理由は「一審被告の事前審査方式がおよそ合理性のない制度であるとまでいうことは困難である」としてその違法性を明確に認めなかった点にある。しかし,一審被告の事前審査方式が合理性を欠く違法な制度であることは上記のとおりであるし,一審被告の行為が手続法5条ないし9条に違反し,かつ違法であることは明らかである。本件では,一審原告が申請意思を示しているにもかかわらず,一審被告職員は,一審原告に申請行為そのものを拒否して るし,一審被告の行為が手続法5条ないし9条に違反し,かつ違法であることは明らかである。本件では,一審原告が申請意思を示しているにもかかわらず,一審被告職員は,一審原告に申請行為そのものを拒否してさせず,認定基準も示さなかったものであって,行政庁の職員としての職務上の基本的な義務を怠ったものであり,単に認定事務が滞ったという場合に比して,はるかに違法性が高く,しかも故意に基づく違法行為である。3か月にわたって手続法の精神・立法趣旨・申請の処理に係る手続法5条ないし9条に大幅に違反した一審被告職員の行為によって,一審原告は,当時はもちろん現在においても精神的苦痛を被っており,その損害は慰謝されていない。一審被告に国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を否定した原判決の判断は不当である。 なお,一審被告は,一審原告が「内心の静穏な感情」を被侵害利益であると主張しているものと解しているが,一審原告は,手続法を中心とする現行法の下で申請が適正に扱われる権利を侵害されてきたことに基づく精神的損害を主張しているものであり,一審原告は「内心の静穏な感情」が害されたことを被侵害利益として主張しているわけではない。 一審被告の主張(1)遺族該当性について- 7 -ア原判決は,遺族該当性の要件は「生計を共にしていた」ことであり,本件認定基準は厳格に解釈適用すべきではなく,このことは本件認定基準が,「実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなった場合」には,これらの要件によらない柔軟な認定を認めているのも上記のような趣旨を含むものと解される旨判示するが,本件認定基準の全体の趣旨からすれば,「実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には,この限りではない。」とあるのは,本件認定基準 むものと解される旨判示するが,本件認定基準の全体の趣旨からすれば,「実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には,この限りではない。」とあるのは,本件認定基準どおりに遺族の認定を行うと遺族に該当することとなる場合に,その認定の結果が実態とかけ離れて,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には,本件認定基準による認定に一定の抑制をかけ,遺族として認定を行わないことがあり得ることを規定したものであって,この規定が原判決が判示するような趣旨を含むものと解すことはできない。また,本件認定基準が法施行令の具体的運用の一基準として定められている以上,本件における遺族該当性の判断おいても本件認定基準の趣旨に沿った上での相当程度厳格な運用が求められるものというべきであり,そのような厳格な認定を行うことは地方公務員等共済組合法(共済法)1条に定める適切な給付を公的年金制度の保険給付として行うこととされているところの,同法の趣旨から導かれる要請にかなうところである。 したがって,遺族該当性の判断にあたり,本件認定基準を厳格に解釈適用すべきでないとする原判決の判断は誤りである。 イ原判決は,本件認定基準にいう「生活費,療養費等の経済的な援助が行われていること」との要件について,組合員等からの経済的援助がなければ生活水準の維持に支障を来すことになったであろうという程度の関係が存していたことは必要であると考えられるとはしたものの,他の諸事情と相まって「生計を共にしていた」と認められる程度の経済的援助であれば足りるとし,一審原告についてはこの要件を充たしている旨判示するが,- 8 -原判決の上記判断は以下述べるとおり誤りである。 (ア)共済法に基づく遺族年金制度は,組合員等の死亡に際して,これによる稼働能力の喪失を 告についてはこの要件を充たしている旨判示するが,- 8 -原判決の上記判断は以下述べるとおり誤りである。 (ア)共済法に基づく遺族年金制度は,組合員等の死亡に際して,これによる稼働能力の喪失を共済給付によって補填し,組合員等の収入によって維持していた遺族の生活保障を目的とするものであるから,組合員等の収入によって生計を維持していたことは遺族該当性を肯定する本質的要件であって,原判決が判示するような「生計を共にしていた」との評価を基礎付ける一徴表として考慮されるにすぎないものではない。そして,組合員等の収入によって生計を維持していたと認められるためには,組合員等からの経済的援助(出捐)が当該遺族の生計を維持するために相当な部分を占め,組合員等からの経済的援助(出捐)が失われるときは当該遺族の生計の維持に支障を来すこととなる関係が存在すること,換言すれば,当該組合員等からの経済的援助(出捐)がなくなることによって当該遺族の生計を維持するにつき相当に困難な状況を招くに至る程度の寄与がなされることを要するものであり,しかも,上記の経済的援助の要件該当性は,組合員等の死亡時(本件においてはP1が行方不明になった時)を基準時として判断されるべきである。 (イ)そして,①原判決がいう居宅の無償提供(無償居住)は生計維持関係認定の基礎となる経済的援助には該当しないこと,②昭和61年3月までの入金の余剰金を源資とする私的年金の受給も平成7年5月当時における経済的援助とはいえないこと,③一審原告が主張する夫婦預金の存在及びこれを源資とする私的年金の加入自体,いずれも措信することができない上,仮にこれが存在したとしても,これを源資とする私的年金の受給は平成7年4月当時における経済的援助とはいえないこと,④加給年金分の送金についても,その趣 加入自体,いずれも措信することができない上,仮にこれが存在したとしても,これを源資とする私的年金の受給は平成7年4月当時における経済的援助とはいえないこと,④加給年金分の送金についても,その趣旨からして平成7年に送金が予定されていたものではないし,仮に送金が予定されていたとしても,その額自体からしても,その入金がなくとも一審原告の生計を維持- 9 -するにつき相当に困難な状況を招くものではないこと,これらの事情からして,本件においては,P1から一審原告に対し生計維持関係が認められるための経済的援助があったとはいえない。 ウ原判決は,P1と一審被告の別居がP1の暴力が原因だったとした上,P1が14年の別居期間中に一審原告に謝罪するなどして,P1の暴力に対する一審原告の恐怖心を完全に喪失させたことをうかがわせる事情があったとは認められないとし,その別居は平成7年5月の時点においてもなお,「止むを得ない事情」による別居であったと評価できる旨判示しているが,P1が家を出て住民票上の住所を異動した昭和56年7月から行方不明になった平成7年5月までの14年間も別居を継続し,その間,P1は一審原告が居住する自宅に一度も立ち寄ることもなく,P1・一審原告双方から別居状態を解消する行動がとられることは全くなかったものであり,その別居状態は常態化し,固定化されていたものであるから,平成7年5月当時においては,「止むを得ない事情」により別居していたとはいえないし,まして「その事情が消滅したときは,起居を共にし,消費生活上の家計を一つにすると認められるとき」といえないことは明らかであり,原判決の上記判断は誤りである。 原判決は,14年間の別居中,P1が一審原告に謝罪するなどしていないことを問題とするが,別居中にP1が一審原告に暴力を振るおうとした 」といえないことは明らかであり,原判決の上記判断は誤りである。 原判決は,14年間の別居中,P1が一審原告に謝罪するなどしていないことを問題とするが,別居中にP1が一審原告に暴力を振るおうとしたことがあったのであればともかく,そのような事実は全くなかったし,かえって,P1は,昭和61年3月までは誠実に送金を継続し,平成3年から平成4年には両者の負担で山小屋の新築までしているのであって,それにもかかわらずP1・一審原告双方から別居状態を解消する行動が全くとられていないことは,平成7年5月当時,P1・一審原告双方とも同居の意思を全く喪失してしまったことを明確に示しているものであり,そのことは,P1が一審原告に宛てた平成6年9月2日付けの手紙(乙1の6)- 10 -の文面やその後,一審原告に連絡することなく行方不明となっていることからも裏付けられる。 エ原判決は,P1が,平成元年以降,別荘である山小屋において年1回程度の頻度で一審原告に会っていたり,また,P1と一審原告において,手紙・葉書のやり取りや電話連絡は別居期間を通じて頻繁にあり,その内容も家族としての心のつながりを感じさせる内容も含まれているとして,定期的な音信があったと判示しているが,上記ウのとおりP1は14年間もの間一度も自宅に立ち寄ることもなく,一審原告がP1と顔を合わせたのはわずか7,8回であることや,夫婦にとって重大事であるならば,面談して相談するのが当然であり,そうすることに何ら支障がなかったはずであるのに,加給年金分の送金などについても,一審原告は自らP1と話し合うこともなく,長女を通じてその要請をしており,P1と一審原告との間に夫婦としての意思疎通がされていなかったのは明らかであり,夫婦としての音信・訪問があったとはいえないから,原判決の上記判断は誤りであ ともなく,長女を通じてその要請をしており,P1と一審原告との間に夫婦としての意思疎通がされていなかったのは明らかであり,夫婦としての音信・訪問があったとはいえないから,原判決の上記判断は誤りである。 (2)一審被告職員の行政手続法違反の不存在についてア原判決は,平成15年7月7日に一審原告が受給資格の認定基準を明らかにするよう求めたにもかかわらず,一審被告職員が認定基準に関する明確な回答を行っていないとして,手続法5条3項違反があると判断している。しかし,平成15年7月7日のP4職員,P5職員との面談時に一審原告が質問したのは「別居の理由書にどう書けば遺族として認められるか。」という模範解答の書き方であり,審査基準を明らかにすることではない。少なくとも一審被告職員が審査基準を尋ねられているとは受け取らなかったとしてもやむを得ないものであった。遺族の認定は客観的事実に基づいてされるべきものであって,模範解答の書き方を尋ねられても,一審被告職員としては「事実をありのままに書いて下さい」としか回答でき- 11 -ないのは当然のことであって,これをもって認定基準に関する明確な回答をしなかったとして,手続法5条3項違反と評価するのは誤りである。 イ原判決は,一審被告の事前審査方式について一応の合理性を認めつつも,この方式による場合にはあらかじめ申請希望者に対してこの方式に服さずに直ちに請求書を提出することもできること等を十分に説明しておくべきところ,本件の場合,これがなされていないから手続法7条の趣旨違反であると判示する。しかし,手続法7条は,申請が権限のある機関の事務所(窓口)に到達したにもかかわらず,申請を「受け付けない」,「受理しない」等の取扱いをし,その間に申請の取下げや申請内容の変更を求める行政指導を行ったり,処理を遅延さ ,申請が権限のある機関の事務所(窓口)に到達したにもかかわらず,申請を「受け付けない」,「受理しない」等の取扱いをし,その間に申請の取下げや申請内容の変更を求める行政指導を行ったり,処理を遅延させる等の事態を排除する規定であり,一審被告の事前審査方式では,請求書が提出されていなくとも,この事前審査手続の中で受給資格要件の審査が行われるものであり,申請の取下げ等の行政指導等を行うものでないのはもとより,申請を放置しておくものではないから,何ら手続法7条の趣旨を没却するものではない。 現に,本件においても,一審被告は,平成15年7月4日付け事務連絡を一審原告に送付して必要な審査を開始し,同年8月29日には同日付け事務連絡で遺族共済年金請求書を一審原告に送付し,さらに同年9月10日付け事務連絡で「生計維持関係を証明する書類の補てんしていただきたいもの」の提出を一審原告に求め,同年9月16日に一審原告からの追加資料が提出されたことを受けて,同月26日に本件処分を行っているものであって,その間,一審被告職員が,一審原告に対し,申請の取下げ等の行政指導等を行ったことなどはないし,一審原告から遺族共済年金決定請求書が提出されていないことを理由に申請を放置した事実などもないから,一審被告職員に手続法7条の趣旨違反はない。 ウ原判決は,一審原告からの平成15年8月5日及び同月25日における決定請求書の交付時期の見通し,すなわち事前調査の終了時期の見通しの- 12 -問い合わせに対し,できる限り具体的な時期の見通しを示すよう努めるべきであるのに,一審被告の職員はこれを行っていないとして,手続法9条の趣旨にそぐわない不適切な行為があったと判断している。しかし,平成15年8月5日及び同月25日の一審原告の発言は,直接的には事前調査が終了して決定請求書 職員はこれを行っていないとして,手続法9条の趣旨にそぐわない不適切な行為があったと判断している。しかし,平成15年8月5日及び同月25日の一審原告の発言は,直接的には事前調査が終了して決定請求書が交付される時期を尋ねるものであって,本件処分の見通しを尋ねるものでない上,一審被告は,同年9月1日到達の一審原告の葉書に対応して,同月10日付け事務連絡により処分の見通しを回答しており,これら一連の対応からすれば,一審被告は手続法9条1項所定の努力義務を尽くしていると評価されるべきである。 (3)国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求の成否等について上記のとおり,一審被告が一審原告について事前審査方式を適用したことについては手続法違反はないが,仮にその適用及び平成15年8月29日付け事務連絡により請求書を交付するまで,一審原告に請求書を交付しなかったことが手続法7条の趣旨違反となるとしても,このことが国家賠償法に基づく損害賠償請求の根拠とならないことは以下のとおりである。 ア一審原告が主張する被侵害利益は「内心の静穏な感情」であると解されるところ,「内心の静穏な感情」は一般的にはその侵害により国家賠償法に基づく損害賠償請求権を発生させるものではない。 イ一審原告は,一審被告が請求書を交付しなかったという一審被告の不作為を問題としているのであるから,国家賠償法上の違法が肯定されるためには一審被告に作為義務が認められなければならないところ,手続法7条の義務はあくまで手続上の申請権に対応する義務であり,申請者の地位にある者の「内心の静穏な感情」等の私的利益を保護するものではないから,国家賠償法上の違法の前提となる作為義務を同条から導くことはできない。 ウまた,一審被告の事前審査方式は,申請しようとする者の任意の協力がある限り違法ではなく, 私的利益を保護するものではないから,国家賠償法上の違法の前提となる作為義務を同条から導くことはできない。 ウまた,一審被告の事前審査方式は,申請しようとする者の任意の協力がある限り違法ではなく,条理上の作為義務違反として違法となるには,少- 13 -なくとも申請しようとする者が事前審査方式について真摯かつ明確な拒否をしていることが必要であるが,一審原告は,一審被告が平成15年8月29日に請求書を交付するまで一審被告の事前審査方式を明確に拒否していなかったのであるから,一審被告に条理上の作為義務違反はないから,一審被告が一審原告に請求書を交付しなかったことは国家賠償法に基づく損害賠償請求の根拠とはならない。 第3当裁判所の判断 当裁判所は,一審原告の請求のうち,本件処分の取消しを求める請求は理由があり,損害賠償請求については,一審被告に対し20万円及びこれに対する平成16年6月19日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり,その余は失当であると判断する。その理由は以下のとおりである。 (1)争点①(遺族該当性)についての判断は,当審における一審被告の主張に対する判断を次のとおり付加するほかは,原判決事実及び理由の「第3当裁判所の判断」欄の1に記載のとおりであるから,これを引用する。 (一審被告の主張に対する判断)ア一審被告は,遺族該当性の判断において,本件認定基準を厳格に解釈適用すべきでないとする原判決の判断は誤りであり,本件認定基準の趣旨に沿った相当程度厳格な認定が行われるべきであり,本件認定基準の総論ただし書に「実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には,この限りではない。」とあるのは,本件認定基準どおりに遺族の認定を行うと遺族に該当することとなる場合 論ただし書に「実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には,この限りではない。」とあるのは,本件認定基準どおりに遺族の認定を行うと遺族に該当することとなる場合に,その認定の結果が実態とかけ離れて,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には,本件認定基準による認定に一定の抑制をかけ,遺族として認定を行わないことがあり得ることを規定したものである旨主張する。 しかし,共済法2条1項3号は,遺族共済年金の受給権者である遺族に- 14 -ついて,「組合員等の配偶者,子,父母,孫及び祖父母で,組合員等の死亡の当時(失踪の宣告を受けた組合員であった者にあっては,行方不明となった当時。)その者によって生計を維持していたものをいう。」と定義し,同条2項では,上記の,組合員等によって生計を維持することの認定に関し必要な事項は政令で定めるとし,これを受けて地方公務員等共済組合法施行令(施行令)4条は,組合員等によって生計を維持していた者は,当該組合員等の死亡当時その者と「生計を共にしていた者」のうち総務大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のものその他これに準じる者として総務大臣が定める者とするものと定めている。そして,上記の「総務大臣の定める金額」は850万円とし,そのほかの遺族に係る生計を維持することの認定に関しては厚生年金保険における生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いの例によるものとして,その取扱い例として本件認定基準が設けられている。このような法令等と本件認定基準の関係にかんがみれば,本件認定基準は施行令4条に定める「生計を共にしていた」との要件に関わるものであることは明らかであり,しかも認定基準という性格上,本件認定基準が全ての事例における具体的な内容を網羅し得る がみれば,本件認定基準は施行令4条に定める「生計を共にしていた」との要件に関わるものであることは明らかであり,しかも認定基準という性格上,本件認定基準が全ての事例における具体的な内容を網羅し得るものといえないことは容易に想定することができる。 本件認定基準の総論ただし書に「実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこことなる場合には,この限りではない」とあるのは,上記のように本件認定基準が施行令に定める「生計を共にしていた」という要件に該当する全ての具体的な内容を網羅し得るものといえないことから,審査要件の文言に拘泥して本件認定基準を形式的に適用するのではなく,事案によっては社会通念上の妥当性を考慮した柔軟な認定をすることを許容したものと解される。 遺族該当性の判断において,本件認定基準をあまりに厳格に解釈適用するのは相当でなく,事案によっては柔軟な認定をするのが相当であるとし- 15 -た原判決の判断は,本件事案に即すれば相当であり,その判断において本件認定基準の趣旨に沿った相当程度厳格な認定が行われるべきであるなどとする一審被告の上記主張は独自の見解であり採用できない。 イ一審被告は,原判決が本件認定基準にいう「生活費,療養費等の経済的な援助が行われていること」との要件について,他の諸事情と相まって「生計を共にしていた」と認められる程度の経済的援助であれば足りると判示した点は不当であり,上記要件については,当該組合員等からの経済的援助がなくなることによって当該遺族の生計を維持するにつき相当に困難な状況を招くに至る程度の寄与がなされることを要するものと解すべきある旨主張する。 しかし,本件認定基準が施行令4条に定める「生計を共にしていた」との要件に関わるものであり,遺族該当性の判断において同基準をあまりに厳 度の寄与がなされることを要するものと解すべきある旨主張する。 しかし,本件認定基準が施行令4条に定める「生計を共にしていた」との要件に関わるものであり,遺族該当性の判断において同基準をあまりに厳格に解釈適用することが相当でないことは上記ア説示のとおりであるし,また,生計維持・生計同一要件と並ぶ一方の要件である収入要件において上限額が年額850万円と比較的緩やかな基準設定となっていることと対比して,生計維持・生計同一要件についてのみ一審被告の上記主張のような厳格な基準が設定されているとは考えられず,本件認定基準にいう「生活費,療養費等の経済的な援助が行われていること」との要件は,原判決が説示するように,少なくとも組合員等からの経済的援助がなければ,生活水準の維持に支障を来すこととなったであろうという程度の関係が存していたことは必要であるものの,他の諸事情と相まって「生計を共にしていた」と認められる程度の経済的援助であれば足りるものと解するのが相当であり,一審被告の上記主張は採用できない。 また,一審被告は,一審原告につき上記の生計維持・生計同一要件を充たしていると判断した原判決は誤りであると主張し,その根拠として上記第2,4(1)イ(イ)①ないし④のとおり主張するが,一審被告の主張は,上- 16 -記の生計維持・生計同一要件について誤った見解を前提とするものである上,上記①ないし④の主張は,原判決を正解しないか独自の見解をいうものにすぎず,いずれも採用できない。 一審原告につき上記の生計維持・生計同一要件を充たしていると判断した原判決に誤りはない。 ウ一審被告は,P1が行方不明となるまで一審原告と14年間も別居し,その間,一度も自宅に立ち寄ることなく,双方とも別居解消の行動をとっていないことなどを根拠として,その別居は平成7年5月 はない。 ウ一審被告は,P1が行方不明となるまで一審原告と14年間も別居し,その間,一度も自宅に立ち寄ることなく,双方とも別居解消の行動をとっていないことなどを根拠として,その別居は平成7年5月当時においては「止むを得ない事情」により別居していたとはいえないし,まして「その事情が消滅したときは,起居を共にし,消費生活上の家計を一つにすると認められるとき」といえないとして,これを「止むを得ない事情」による別居であるとした原判決の判断は誤りである旨主張する。 しかしながら,前記認定(原判決を引用)のとおり,P1と一審原告の別居は,離婚を前提として開始されたものではなく,P1の暴力を原因として,その冷却期間として開始されたものであるし,確かにその別居期間は14年にも及んではいるものの,その間にP1から一審原告に対し種々の経済的援助がされていることや両者の負担で共同で山小屋を新築していること,さらに,その間,手紙等のやり取りや電話連絡も頻繁にされていることにかんがみれば,別居にもかかわらずP1と一審原告との間には夫婦としての一定のつながり,家族共同体としての意識があったものというべきであるし,また,別居期間中に双方とも別居解消に向けた行動をとってはいないものの,逆に離婚の話やそれをうかがわせる行動も一切とられた形跡も証拠上認められないことからすれば,14年間にわたる長期の別居は,P1の暴力が原因となって開始され,その後双方の性格的な面も影響して同居のきっかけが掴めないまま長期にわたり別居状態が推移したものとみるのが相当であるから,その別居は平成7年5月当時においても- 17 -「止むを得ない事情」による別居であると評価するのが相当である。 また,一審被告は,別居中にP1が一審原告に暴力を振るおうとしたことがあったのであればともかく,その 年5月当時においても- 17 -「止むを得ない事情」による別居であると評価するのが相当である。 また,一審被告は,別居中にP1が一審原告に暴力を振るおうとしたことがあったのであればともかく,そのような事実は全くなかったし,かえって,P1は,昭和61年3月までは誠実に送金を継続し,平成3年から平成4年には両者の負担で山小屋の新築までしているのであって,それにもかかわらずP1・一審原告双方から別居状態を解消する行動が全くとられていないことは,平成7年5月当時,P1・一審原告双方とも同居の意思を全く喪失してしまったことを明確に示しているものであり,そのことは,P1が一審原告に宛てた平成6年9月2日付けの手紙(乙1の6)の文面やその後,一審原告に連絡することなく行方不明となっていることからも裏付けられる旨主張する。 しかしながら,別居期間中に一審原告がP1から暴力を受けた事実を認め得る証拠はないものの,一審原告のように配偶者から暴力を受けた経験がある者の心理として,その後,その相手と手紙や電話等を通じた交流をすることはできたとしても,再びその相手と同居するについては相当の覚悟を必要とすることは容易に推認できるところであり,また,一審被告が指摘するP1による昭和61年3月までの送金や共同出資による山小屋新築の事実は,むしろ別居にもかかわらず両者の間に夫婦としての一定のつながり,家族共同体としての意識があったことを示すものといえるから,別居中にP1・一審原告の双方から別居解消に向けた行動が取られていないからといって,これをもって直ちにP1,一審原告の双方ともに同居の意思を全く喪失してしまったとはいえない。さらに,乙1の6の手紙には,「私の行く先は目安はありませんが,α,βにはいたくありません。何とか探します。」との記載があるものの,その一方 双方ともに同居の意思を全く喪失してしまったとはいえない。さらに,乙1の6の手紙には,「私の行く先は目安はありませんが,α,βにはいたくありません。何とか探します。」との記載があるものの,その一方では「何か,あなたの考えや,感じたことがあれば手紙ででも助言ください。デンワは,P6が朝~お昼まで在宅しているので,それを承知で。よろしくたのみます。」と- 18 -の記載もあることにかんがみれば,この手紙がP1において一審原告と同居する意思がないことを示す証拠といえないことは明らかであるし,P1が一審原告に連絡なく行方不明になっている点も,P1の行方不明の原因が証拠上明らかでない以上,P1に一審原告と同居する意思がないことを示す根拠とはなり得ない。 エ一審被告は,P1と一審被告との間に定期的な音信があったとする原判決の認定は誤りであり,P1は14年間もの間一度も自宅に立ち寄ることもなく,一審原告がP1と顔を合わせたのはわずか7,8回であることや,夫婦にとって重大事である加給年金分の送金などについても,自らP1と話し合うこともなく,長女を通じてその要請をしているのであるから,P1と一審原告との間に夫婦としての意思疎通がされていなかったのは明らかである旨主張する。 しかしながら,P1と一審原告の別居の原因がP1の暴力であったことにかんがみれば,夫婦にとって重要な事項に関しても,手紙や電話等で意思の疎通を図ることは不自然とはいえないし,前記認定(原判決を引用)のとおり,P1と一審原告とは,別居中にP1が一審原告の住居を訪れたことは一度もなかったものの,平成元年以降,別荘である山小屋において年1回の頻度で顔を合わせていること,手紙・葉書のやり取りや電話連絡は別居期間中を通じて頻繁にあり,その内容も事務的なものに終始していたわけではなく,家族 の,平成元年以降,別荘である山小屋において年1回の頻度で顔を合わせていること,手紙・葉書のやり取りや電話連絡は別居期間中を通じて頻繁にあり,その内容も事務的なものに終始していたわけではなく,家族としての心のつながりを感じさせる内容のものも含まれていたのであるから,両者の間に定期的な音信があったことは明らかである。 オ一審被告の上記各主張はいずれも採用できない。 (2)争点②(手続法違反の有無)及び争点③(国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求の成否等)についてア争点②についての判断の前提となる事実認定は,原判決事実及び理由の- 19 -「第3当裁判所の判断」欄の2(1)のとおりである(ただし,原判決44頁23行目の「甲58,」の次に「甲96,」を加える。)からこれを引用する。 イ前記争点①についての判断のとおり,本件処分は,手続的瑕疵の有無について判断するまでもなく違法な処分として取り消されるべきものであるから,一審原告主張の手続法違反の点は,一審被告職員の行為が,一審被告の一審原告に対する損害賠償責任を生じさせるか否かの観点から検討すれば足りる。 ウ手続法5条違反の主張について手続法5条違反の主張についての判断は,原判決事実及び理由の「第3当裁判所の判断」欄の2(2)アのとおりである(ただし,同55頁25行目末尾の次に行を改め,「一審原告は,一審被告が遺族の認定に関する一審被告としての審査基準を作成していないとの主張はしておらず,一審原告の主張は,一審被告において遺族の認定に関する本件認定基準が確固として事実上運用されていないという趣旨のものであるというが(一審原告の控訴状11頁),一審原告が前者の主張をしていることは明らかであり(原審における一審原告準備書面(6)30頁以下),一審原告の主張が後者のような趣旨の ないという趣旨のものであるというが(一審原告の控訴状11頁),一審原告が前者の主張をしていることは明らかであり(原審における一審原告準備書面(6)30頁以下),一審原告の主張が後者のような趣旨のものであったとしても,それは審査基準の解釈運用の当否の問題であって,手続法5条違反の問題ではない。」と加える。)から,これを引用する。 エ手続法6条違反,7条違反,8条違反,9条違反の主張及びその他の主張について手続法6条違反,7条違反,8条違反,9条違反の主張及びその他の主張についての判断は,原判決事実及び理由の「第3当裁判所の判断」欄の2(2)イないしカのとおりであるから,これを引用する。 手続法7条違反,9条違反についての一審原告の主張(当審における主- 20 -張を含む。)は上記判断を超える部分は採用できない。手続法6条違反についての一審原告の主張(当審における主張を含む。)については,標準処理期間を申請者あるいは申請予定者に対して秘密にしないという趣旨からは,少なくとも事務所に掲示する,事務所に備え置き来所者が自由に取れる説明書等への記載,申請者全員に例外なく交付する手続案内書等への記載等の方法によることが望ましいけれども,申請者,申請予定者の求めに応じて提示するという方法によることが許されないものではなく,一審原告の主張は採用できない。 手続法8条違反についての一審原告の主張(当審における主張を含む。)は採用できない。 オ一審被告は,手続法5条3項違反について,当審において前記第2,4(2)アのとおり主張する。しかし,一審原告が,平成15年7月7日に,P4職員及びP5職員に,遺族共済年金受給資格の認定基準を明らかにするように求めたという趣旨の一審原告の主張及び供述が事の成り行きとして自然であることは前記の通り(原判決引用 平成15年7月7日に,P4職員及びP5職員に,遺族共済年金受給資格の認定基準を明らかにするように求めたという趣旨の一審原告の主張及び供述が事の成り行きとして自然であることは前記の通り(原判決引用。事実及び理由「第3当裁判所の判断」2(1)オ)であり,その際,一審原告がいわゆる模範解答の書き方を尋ねたとの主張に沿う証拠は信用できない。 次に,一審被告は,手続法7条違反について,当審において前記第2,4(2)イのとおり主張する。しかし,地方公務員等共済組合法施行規程(昭和37年総理府・文部省・自治省令第1号)134条1項は「(地方公務員等共済組合)法99条の規定により遺族共済年金の決定を請求しようとする者は,次に掲げる事項を記載した遺族共済年金決定請求書を組合に提出しなければならない。(1号ないし10号略)」と規定しているのであり(乙7),決定を請求しようとする者は所定の事項を記載した決定請求書を組合に提出しなければならず,決定請求書を提出しなければ決定を請求したことにならない。したがって,決定の請求をするために窓口に来訪- 21 -してその意思を明らかにした者に,決定請求書用紙を交付しなかったり,事前審査方式により手続を進めることにこだわり,一審被告が事前審査方式を行う理由及びこれに服さずに直ちに決定請求書を提出することもできる旨,さらには事前審査方式を行う場合とそうでない場合とでそれぞれの申請に要する期間がどの程度になるのかなどを事前審査に入る前に十分に説明し,そのような説明を受けた申請希望者が事前審査方式に服することに同意した場合でないのに,決定請求をすることを希望する者に決定請求書用紙を交付しなかったり,要件を満たしていると認められる場合に決定請求書を渡していると説明するのみで決定請求書用紙を交付しなかったりすることは, ないのに,決定請求をすることを希望する者に決定請求書用紙を交付しなかったり,要件を満たしていると認められる場合に決定請求書を渡していると説明するのみで決定請求書用紙を交付しなかったりすることは,決定の請求を受け付けない,受理しないとの処理をしているのと同じである。決定請求書が提出されないからといって審査をせずに放置するものではなく,事前審査手続きの中で受給資格要件の審査が行われているとしても,また,申請の取下げや申請内容の変更等の行政指導をするものでないとしても,手続法7条の趣旨を没却するものというべきである。 更に,一審被告は,手続法9条違反について,当審において前記第2,4(2)ウのとおり主張する。しかし,平成15年8月5日及び同月25日の一審原告の発言は直接的には事前調査が終了して決定請求書が交付される時期を尋ねるものであって本件処分の見通しを尋ねるものでないとの主張自体,まだ決定請求書が提出されていないのだから正式の申請はなく手続法9条の適用はないとの趣旨であればその不当であることは明かであるし,事前調査が終了して決定請求書の交付される時期の見通しを尋ねられたのであるから具体的なその時期の見通しを示すように努めるべきであるのにそれを履行していないことは前記のとおり(原判決引用。事実及び理由第3,2(2)オ(ア))である。一審被告の主張は採用できない。 カ以上のとおり,一審被告職員には,手続法5条3項の規定に違反する職- 22 -務上の義務懈怠,同法7条の趣旨に違反する職務上の義務懈怠及び同法9条1項の趣旨にそぐわない不適切な行為があったというべきであるが,一審被告職員に同法6条,8条に違反する行為があったということはできない。 キ争点③(国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求の成否等)について(ア)一審被告は,地方 があったというべきであるが,一審被告職員に同法6条,8条に違反する行為があったということはできない。 キ争点③(国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求の成否等)について(ア)一審被告は,地方公務員等共済組合法に基づいて設けられた公共組合であるから,国家賠償法1条1項所定の公共団体に該当する。一審被告が,受給権者からの請求に基づいて,給付を受ける権利を決定することは公権力の行使に当たるから,その請求に対する審査及びそれに付随する受付,窓口対応,調査を行う一審被告の職員は公権力の行使に当たる公務員に該当する。本件で手続法違反が問題となる,一審原告からの遺族共済年金の決定請求にかかる対応は,いずれも一審被告の職員がその職務を行うについて行ったあるいは行わなかったものであり,故意,少なくとも過失によるものと認められる。 公権力の行使に当たる公務員がその職務を行うについて行政手続法に定めた義務に反したとしても,当然に申請者等に違法に損害を与えたことになるものではない。義務違反の態様,違反した義務のその手続における重要性,申請の結果に及ぼした影響,そのことによって申請者等の受けた財産的損失の有無,程度,精神的苦痛の有無,程度を考慮して,違法な損害に該当するか否かを判断すべきものである。 (イ)上記のとおり,一審被告の職員には,手続法5条3項に違反する職務上の義務懈怠行為,同法7条の趣旨に違反する行為及び同法9条1項の趣旨にそぐわない不適切な行為があったものである。しかしながら,一審原告は,これらの一審被告職員の違法行為等にもかかわらず,結果的には本件認定基準に沿って一審被告に対する主張立証を一応尽くすことができたものと認められ,また,最初の決定請求の申出から本件処分- 23 -が行われるまでに要した審査の期間も,標準処理期間である2か は本件認定基準に沿って一審被告に対する主張立証を一応尽くすことができたものと認められ,また,最初の決定請求の申出から本件処分- 23 -が行われるまでに要した審査の期間も,標準処理期間である2か月と比べればこれを超過しているものの,それでも1か月程度の超過で済んでおり,さらに,その結果としての本件処分は,一審原告を遺族と認定しなかった誤った内容のものではあったが,原判決によって取り消され,当審判決もその判断を維持するものであり,一審被告が判断を誤ったのは,上記の各手続法違反等に起因するものではなく,主として証拠によって認定された事実の評価の相違によるものと認められる。そして,これらの事実に,手続法9条1項は,行政庁は,申請者の求めに応じ,当該申請にかかる審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければならない旨を定めるものであること,手続法5条3項違反については,遅まきながら平成15年9月11日に一審被告から一審原告に審査基準が送付されていること,を合わせ考えると,手続法5条3項違反及び同法9条1項の趣旨にそぐわない不適切な行為については,本件処分の取消しによってもなお損害賠償によって慰謝されるべき精神的苦痛が原告に存するものとは認められない。 (ウ)他方,地方公務員等共済組合法施行規程134条1項は「(地方公務員等共済組合)法99条の規定により遺族共済年金の決定を請求しようとする者は,次に掲げる事項を記載した遺族共済年金決定請求書を組合に提出しなければならない。」と規定しているのであり,決定を請求しようとする者は所定の事項を記載した決定請求書を組合に提出しなければならず,決定請求書を提出しなければ決定を請求したことにならない。したがって,決定の請求をするために窓口に来訪してその意思を明らかにした一 る者は所定の事項を記載した決定請求書を組合に提出しなければならず,決定請求書を提出しなければ決定を請求したことにならない。したがって,決定の請求をするために窓口に来訪してその意思を明らかにした一審原告に,決定請求書用紙を交付しなかったり,事前審査方式により手続を進めることにこだわり,一審被告が事前審査方式を行う理由及びこれに服さずに直ちに決定請求書を提出することもできる旨,さらには事前審査方式を行う場合とそうでない場合とでそれぞれの申請- 24 -に要する期間がどの程度になるのかなどを事前審査に入る前に一審原告に十分に説明し,そのような説明を受けた一審原告が事前審査方式に服することに同意した場合でないのに,決定請求をすることを希望する一審原告に平成15年8月30日まで決定請求書用紙を交付しなかったり,要件を満たしていると認められる場合に決定請求書を渡していると説明するのみで前記の日まで決定請求書用紙を交付しなかったりすることは,決定の請求を受け付けない,受理しないとの処理をしているのと同じであり,決定の請求が受け付けられ,審査手続きが開始するか否かの根本に関わることである。一審原告が決定請求書用紙の交付を受けられないことに不安,不審を抱いたことはもっともであり,その不安,不審の程度が極めて大きかったことは,老齢の一審原告が,7月,8月の暑い時期に,一審被告を再三訪問するのみでなく,手続の素人なりに考えて,社会保険庁,足立区役所,文部科学省(一審被告の監督官庁),足立社会保険事務所,葛飾区役所,総務省等の相談窓口を,時間と交通費をかけて訪れて相談していること(甲96)から推認することができる(一審原告がそれらの相談窓口を訪問したのは,審査基準を知りたいという思いもあったものと解されるが,決定請求書用紙の交付を受けられないことの 訪れて相談していること(甲96)から推認することができる(一審原告がそれらの相談窓口を訪問したのは,審査基準を知りたいという思いもあったものと解されるが,決定請求書用紙の交付を受けられないことの不安,不審を解決することが大きな動機であったと認められる。)。 一審被告の職員(一審被告本部年金部審査第一課のP2職員,P4職員,P5職員,P7職員等)による手続法7条に定められた義務の趣旨に違反する行為によって,一審原告の受けた極めて大きい不安,不審の念による精神的苦痛,これに対応するため上記のような各官公署を訪れて相談せざるを得なかったことによる精神的苦痛は,上記(イ)に上げた事情を考慮してもなおこれに対する損害賠償が必要な違法な損害に当たる。 - 25 -そして,これらの精神的苦痛に対する慰謝料は20万円が相当である。 (エ)一審被告は,一審原告が主張する被侵害利益は「内心の静穏な感情」であるとすることを前提に,「内心の静穏な感情」は一般的にはその侵害により国家賠償法に基づく損害賠償請求権を発生させるものではない,手続法7条の義務はあくまで手続上の申請権に対応する義務であり,申請者の地位にある者の「内心の静穏な感情」等の私的利益を保護するものではないから,国家賠償法上の違法の前提となる作為義務を同条から導くことはできない旨主張する。 しかし,一審原告は,行政手続法を中心とする現行法の下で申請が適正に扱われる権利を侵害されてきたことに基づく精神的損害を主張しているものであり,当裁判所も,一審原告の主張を,一審原告の遺族共済年金の決定請求手続において,行政手続きの一般法である行政手続法に従って適正に扱われる権利を侵害されたことに基づく精神的損害を主張しているものと解し,これを前記判断の限度で認容しているものであり,一審被告の主張は,そ おいて,行政手続きの一般法である行政手続法に従って適正に扱われる権利を侵害されたことに基づく精神的損害を主張しているものと解し,これを前記判断の限度で認容しているものであり,一審被告の主張は,その前提自体が誤っている。 一審被告は,一審被告の事前審査方式は,申請しようとする者の任意の協力がある限り違法ではなく,条理上の作為義務違反として違法となるには,少なくとも申請しようとする者が事前審査方式について真摯かつ明確な拒否をしていることが必要であると主張するが,当裁判所は,前記判断(原判決を引用(事実及び理由「第3当裁判所の判断」欄の2(2)ウ)及び前記(ウ))のとおり,一審被告が事前審査方式を行う理由及びこれに服さずに直ちに決定請求書を提出することもできる旨,さらには事前審査方式を行う場合とそうでない場合とでそれぞれの申請に要する期間がどの程度になるのかなどを事前審査に入る前に一審原告に十分に説明し,そのような説明を受けた一審原告が事前審査方式に服することに同意した場合に限って,事前審査方式による手続を進めることが相- 26 -当となるのであり,それが手続法7条の趣旨にかなった運用であると解するものであり,一審被告の主張は,手続法7条の趣旨を正しく理解しないもので,到底採用できない。 よって,一審原告の控訴に基づいて,上記判断と一部結論を異にする原判決を変更し,一審被告の控訴は理由がないので棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第14民事部裁判長裁判官西田美昭裁判官犬飼眞二裁判官小池喜彦は差し支えのため,署名押印できない。 裁判長裁判官西田美昭(原裁判等の表示)主文 被告が原告に対し平成15年9月26日付けでした遺族共済年金の決定請求を棄却する旨の処分を取り消す。 原告 のため,署名押印できない。 裁判長裁判官西田美昭(原裁判等の表示)主文 被告が原告に対し平成15年9月26日付けでした遺族共済年金の決定請求を棄却する旨の処分を取り消す。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は100分し,その4を原告の,その余を被告の各負担とする。 事実 及び理由- 27 -第1請求 主文第1項と同旨(以下同項記載の処分を「本件処分」という。) 被告は,原告に対し,金100万円及びこれに対する平成16年6月19日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,地方公務員共済組合(以下「組合」という。)である被告から退職年金を受給していた元組合員が行方不明となり,失踪宣告によって死亡したものとみなされたことから,同人と別居していた戸籍上の妻である原告が,被告に対し,遺族共済年金の決定請求をしたところ,被告から,原告が遺族に該当しないとの理由で決定請求を棄却する旨の本件処分を受けたため,①本件処分には原告の遺族該当性に関して事実誤認があり,また行政手続法に違反する手続上の瑕疵があると主張して,その取消しを求めるとともに,②決定請求手続における被告職員の不法行為(行政手続法違反)によって精神的苦痛を被ったと主張して,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づいて,慰謝料100万円とこれに対する民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 関係法令等の定め本件に関係する法令等の定めは,次のとおりである。 (1)地方公務員等共済組合法(以下「共済法」という。)ア被告及び被告の業務被告は,公立学校の職員並びに都道府県教育委員会及びその所管に属する教育機関の職員をもって組織する組合である(共済法3条1項2号)。 組 等共済組合法(以下「共済法」という。)ア被告及び被告の業務被告は,公立学校の職員並びに都道府県教育委員会及びその所管に属する教育機関の職員をもって組織する組合である(共済法3条1項2号)。 組合は,共済法で定めるところにより,組合員の退職,障害又は死亡に関し,長期給付を行うものとし(共済法42条),長期給付は,退職共済年金,障害共済年金,障害一時金及び遺族共済年金とする(共済法74条)。 給付を受ける権利は,その権利を有する者(以下「受給権者」という。)- 28 -の請求に基づいて,組合が決定する(共済法43条1項)。 イ遺族共済年金退職年金(昭和60年法律第108号による共済法改正前のもの)の受給権者が死亡したときは,その者の遺族に遺族共済年金を支給する(共済法99条1項4号,昭和60年法律第108号附則28条1項)。遺族とは,組合員又は組合員であった者(以下「組合員等」という。)の配偶者,子,父母,孫及び祖父母で,組合員等の死亡の当時(失踪の宣告を受けた組合員であった者にあっては,行方不明となった当時。後記(2)において同じ)その者によって生計を維持していたものをいう(共済法2条1項3号)。組合員等によって生計を維持することの認定に関し必要な事項は,政令で定める(共済法2条2項。同項に基づく政令の定めは後記(2)のとおり)。 ウ支払未済の給付受給権者が死亡した場合において,その者が支給を受けることができた給付でその支払を受けなかったものがあるときは,これをその遺族(前記イの遺族と同じ)に支給し,支給すべき遺族がないときは,当該死亡した者の相続人に支給する(共済法47条1項)。給付を受けるべき同順位者が2人以上あるときは,その全額をその1人に支給することができるものとし,この場合において,その1人にした支給は,全員に対し 亡した者の相続人に支給する(共済法47条1項)。給付を受けるべき同順位者が2人以上あるときは,その全額をその1人に支給することができるものとし,この場合において,その1人にした支給は,全員に対してしたものとみなす(同条2項)。 (2)地方公務員等共済組合法施行令(以下「施行令」という。)4条共済法2条1項3号に掲げる組合員等の死亡の当時その者によって生計を維持していた者は,当該組合員等の死亡の当時その者と生計を共にしていた者のうち総務大臣の定める金額以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外のものその他これに準ずる者として総務大臣が定める者とする。 (3)地方公務員等共済組合法運用方針(昭和37年10月3日自治甲公第10- 29 -号。以下「運用方針」という。)共済法2条関係(施行令4条)「総務大臣の定める金額」(施行令4条)は,年額850万円とする。なお,以上のほか,遺族に係る生計を維持することの認定に関しては,厚生年金保険における生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いの例によるものとする。 (4)生計維持・生計同一関係に係る認定基準及びその取扱いについて(昭和61年4月30日庁保険発第29号各都道府県民政主管部(局)保険・国民年金主管課(部)長宛社会保険庁年金保険部国民年金・業務第1・2課長連名通知「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」別添。以下「本件認定基準」という。)ア総論遺族厚生年金の受給権者に係る生計維持関係の認定については,生計同一要件(後記イ)及び収入要件(後記ウ)を満たす場合に死亡した被保険者又は被保険者であった者と生計維持関係があるものと認定するものとする。ただし,これにより生計維持関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる 保険者又は被保険者であった者と生計維持関係があるものと認定するものとする。ただし,これにより生計維持関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には,この限りでない。 イ生計同一に関する認定要件(ア)生計維持認定対象者に係る生計同一関係の認定にあたっては,次に該当する配偶者又は子は,生計を同じくしていた者に該当するものとする。 a住民票上同一世帯に属しているときb住民票上世帯を異にしているが,住所が住民票上同一であるときc住所が住民票上異なっているが,次のいずれかに該当するとき(a)現に起居を共にし,かつ,消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき- 30 -(b)単身赴任,就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっているが,次のような事実が認められ,その事情が消滅したときは,起居を共にし,消費生活上の家計を一つにすると認められるとき①生活費,療養費等の経済的な援助が行われていること。 ②定期的に音信,訪問が行われていること。 (イ)認定の方法前記(ア)の事実の認定については,受給権者から別表1(後記エ)の書類の提出を求め行うものとする。 ウ収入に関する認定要件(ア)生計維持認定対象者に係る収入に関する認定にあたっては,次のいずれか(省略)に該当する者は,厚生大臣の定める金額(年額850万円)以上の収入を将来にわたって有すると認められる者以外の者に該当するものとする。 (イ)認定の方法前記(ア)の認定については,受給権者からの申出及び生計維持認定対象者の状況に応じ別表2(省略)の書類の提出又は提示を求め行うものとする。 エ別表1(生計同一に関する認定関係)認定対象者の状況区分提出書類前記イcaそれぞ 申出及び生計維持認定対象者の状況に応じ別表2(省略)の書類の提出又は提示を求め行うものとする。 エ別表1(生計同一に関する認定関係)認定対象者の状況区分提出書類前記イcaそれぞれの住民票(世帯全員)の写(ア)(b)b民生委員等第三者の証明書又は別表3(後記オ)に掲げる書類c別居していることについての理由書オ別表3(第三者の証明書に代わる書類)- 31 -事項提出書類①健康保険等の被扶養者になっ・健康保険被保険者証等の写ている場合②給与計算上,扶養手当等の対・給与簿又は賃金台帳等の写象になっている場合③税法上の扶養親族になってい・源泉徴収票又は課税台帳等の写る場合④定期的に送金がある場合・現金封筒,預金通帳等の写⑤その他①~④に準ずる場合・その事実を証する書類(5)行政手続法(以下「手続法」という。)ア審査基準(5条)行政庁は,審査基準(申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準)を定めるものとし(手続法5条1項),審査基準を定めるに当たっては,許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならず(同条2項),行政上特別の支障があるときを除き,法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなければならない(同条3項)。 イ標準処理期間(6条)行政庁は,標準処理期間(申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間)を定めるよう努めるとともに,これを定めたときは,申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない(手続法6条)。 ウ申請に対 標準的な期間)を定めるよう努めるとともに,これを定めたときは,申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない(手続法6条)。 ウ申請に対する審査・応答(7条)- 32 -行政庁は,申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず,かつ,法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については,速やかに,申請者に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め,又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない(手続法7条)。 エ理由の提示(8条)行政庁は,申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は,申請者に対し,同時に,当該処分の理由を示さなければならず(手続法8条1項),当該処分を書面でするときは,その理由は,書面により示さなければならない(同条2項)。 オ情報の提供(9条)行政庁は,申請者の求めに応じ,当該申請に係る審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければならず(手続法9条1項),申請をしようとする者又は申請者の求めに応じ,申請書の記載及び添付書類に関する事項その他の申請に必要な情報の提供に努めなければならない(同条2項)。 前提となる事実(当事者間に争いがない。)(1)原告とP1は,昭和31年12月27日に婚姻の届出をした夫婦であるが,昭和56年7月1日に別居し,住民票上の住所を異にしていた。P1は,被告の組合員であった者であり,昭和61年3月に東京都の中学校教諭職を退職し,退職年金(昭和60年法律第108号による共済法改正前のもの)を受給していたが,平成7年5月に行方不明となり,平成15年6月27日,失踪宣告の裁判が確定して,死亡したものとみなされた(死亡とみなされる日 金(昭和60年法律第108号による共済法改正前のもの)を受給していたが,平成7年5月に行方不明となり,平成15年6月27日,失踪宣告の裁判が確定して,死亡したものとみなされた(死亡とみなされる日は平成▲年▲月▲日)。 (2)原告は,遺族共済年金の給付を受けるため,平成15年6月30日以降,何度も被告の事務所を訪れ,同年9月16日,被告に対し,遺族共済年金の- 33 -決定請求書を提出したが,被告は,同年9月26日,原告がP1の遺族には該当しないものと認定し,原告の請求を棄却する旨の本件処分をした(処分通知書の原告への到達は同年9月27日)。 (3)原告は,本件処分を不服として,平成15年11月25日,公立学校共済組合審査会に対し,審査請求をしたが,平成16年2月23日,同審査会から,原告の審査請求を棄却する旨の裁決を受けたため(裁決書の原告への到達は同年3月4日),同年5月31日,本件訴訟を提起した。 争点及び当事者の主張(1)争点①(遺族該当性)争点の第1は,本件処分の取消原因の有無に関し,原告がP1の「遺族」(共済法2条1項3号),すなわち,P1が行方不明となった当時P1によって生計を維持していたものに該当するかどうかであり,より具体的には,運用方針によってその例によることとされている本件認定基準中,生計同一要件に関する前記1(4)イ(ア)c(b)の基準,すなわち,「単身赴任,就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっている」が,「生活費,療養費等の経済的な援助が行われていること」や「定期的に音信,訪問が行われていること」が認められ,「その事情が消滅したときは,起居を共にし,消費生活上の家計を一つにすると認められるとき」に該当するかどうかである(なお,本件認定基準によって遺族の該当性を認定すること 行われていること」が認められ,「その事情が消滅したときは,起居を共にし,消費生活上の家計を一つにすると認められるとき」に該当するかどうかである(なお,本件認定基準によって遺族の該当性を認定することの合理性・相当性については,当事者間に争いがない。)。 ア原告の主張(ア)別居の原因について原告とP1の別居は,P1の暴力を原因とするものであり,原告が家庭裁判所に夫婦関係調整の調停を申し立てた結果,P1が東京都足立区の自宅(原告の現住居)を出るという形をとったが,夫婦関係をそれ以上こじらせないための回避措置としての別居であり,婚姻関係が破綻し- 34 -たことを理由とするものではなかった。当時原告は,P1が暴力を振るった理由を説明し,二度と暴力を振るわないと約束してさえくれれば,P1との関係を修復して戻ってきてもらってよいと考えていたので,別居が14年間にわたることは想像すらしていなかった。P1も原告が頭を下げてくることを希望していたと推測され,長期の別居は想定していなかったと思われるが,プライドの高いP1は暴力の件を謝ることがなく,今後暴力を振るわないと約束することもなかったため,別居期間が結果的に長期にわたることとなった。 被告は,平成6年9月6日付けのP1の葉書(乙4の4の8)がP1の気力の減退を示しており,別居の原因が仮に暴力であったとしても,その事情は既に解消していたと主張するが,暴力を振るわれた側の原告にとっては,P1が弱音を吐いてきたからといって,直ちに暴力の可能性がなくなったものと理解して同居するということは容易にできるものではなかった。しかも,夫婦のDV事案において,暴力を振るった夫が妻に対して弱音を吐いたりして気を惹こうとすることはしばしば見られるところであり,気力の減退を示したから暴力の事情が消滅したとは簡 のではなかった。しかも,夫婦のDV事案において,暴力を振るった夫が妻に対して弱音を吐いたりして気を惹こうとすることはしばしば見られるところであり,気力の減退を示したから暴力の事情が消滅したとは簡単に判断できるものではない。 したがって,原告にとっては,平成7年5月に至るまで「止むを得ない事情」による別居が続いていたものといえる。 (イ)経済的援助についてP1は,原告が居住する自宅や別荘である山小屋の維持費(固定資産税等)を支払い,自宅が借地であったため地代も供託してきた。収入のほとんどない原告にとって住居を無償で提供され,固定資産税,地代等をすべて支払ってもらえることは,生活するに当たって重要な事実であり,このようなP1の援助があってこそ,別居当時には大学2年生であった二男及び高校3年生であった長女を大学卒業まで育て上げることが- 35 -できたのである。被告は,税金や地代の支払は自己の権利を確保するためであって,原告を扶養する意思があってのことではないと主張するが,単なる自分の権利保全であれば自宅建物等の登記済権利証や地代の供託書は自分で保管するはずのものであるところ,P1はこれらを原告に保管させていた(甲19,甲90の1,2,甲91,乙1の14の1,2,乙1の15の1,2)。また,被告は,自宅は実質夫婦財産であるから,原告にも住む権利があり,これをもってP1からの経済的援助とはいえないと主張するが,原告の実質共有持分は2分の1にすぎず,当然に無償で住み続ける権利があるとはいえないし,それであればむしろ税金や地代等も2分の1を負担しなければならないところ,P1が自分からすべて負担したのである。 また,P1は,別居後P1が定年退職する昭和61年3月まで,毎月欠かさず月16万ないし20万円及びボーナス等の半分を二男及び長女名 しなければならないところ,P1が自分からすべて負担したのである。 また,P1は,別居後P1が定年退職する昭和61年3月まで,毎月欠かさず月16万ないし20万円及びボーナス等の半分を二男及び長女名義の預金口座(通帳をP1が管理し,キャッシュカードを原告が管理していた。)に入金し,原告及び子どもらの生活費の援助を行ってきた。 当時P1の給料は手取りで年500万ないし550万円くらいであったと推測されることからすれば,上記のような少なからぬ入金が原告を含めた3人(昭和59年4月以降は原告と長女の2人)の生活費援助の趣旨であったことが明らかである。昭和61年4月から平成4年2月までは一時入金が途絶えていたが,これはP1が退職して年金生活者となり収入が減少したためであり,この間原告が生活費を請求しなかったのは,それまでのP1の送金を貯めた預金や別居時に原告が管理していた夫婦預金を取り崩して生活できたからである。P1が昭和61年3月までは十分な入金をしてくれた上,二男も長女も奨学金を受けたことから学費が浮いたので,P1の入金分から400万円くらいの預金(ボーナスの半額に手をつけずに済んだ。)ができていた。また,原告が別居時に管- 36 -理していた夫婦預金は800万円程度であったが(P1名義540万円,原告名義320万円くらい。甲61ないし87),昭和58年8月に約100万円を自宅修繕費に充てたので,約700万円が残っていた。長男はP1と一緒に住んでおり,二男は昭和59年4月に就職して自宅を離れ,長女も昭和61年4月に就職したので,その後は原告自身の生活費としてはさほどの額はかからなかった。特に当時は預貯金の利息が高金利でついたため,住居費や地代,税金の負担のかからない原告は,利息だけでもほぼ生活費の大半をまかなうことができた。昭和63年に 生活費としてはさほどの額はかからなかった。特に当時は預貯金の利息が高金利でついたため,住居費や地代,税金の負担のかからない原告は,利息だけでもほぼ生活費の大半をまかなうことができた。昭和63年に610万円を年金保険等(甲10の1ないし13の3)に回してもなお,相当程度の預貯金が残存していた。P1の方がしばらく生活費を送金しなかったのも,夫婦預金があることを知っていたからであり,夫婦関係調整の調停の際には,P1は夫婦預金を原告が生活費として使うことを容認していた。夫婦預金の取り崩しによる生活の維持は実質的に婚姻費用分担による扶養に当たるのであって,P1の経済的援助と同視し得るものである。そして,原告は,金利が下がる中,預金を取り崩す生活が続き,預金が減ってきたことから,平成4年にP1に対し,生活が苦しいので妻のいる年金加入者に対して付加されている加給年金分を送って欲しい旨を申し入れたところ(その時長女が口添えをしてくれた。),P1はこれを了承し,平成4年3月から,昭和61年に遡って前記の長女名義の預金口座(P8銀行のもの。甲7,甲34)に加給年金分を入金してくれるようになり,平成4年には115万3600円(昭和61ないし平成3年分),平成5年には41万4900円(平成4,5年分),平成6年には21万5400円(平成6年分)を入金している。 被告は,平成4年以降のP1の送金には長女への援助分が含まれていると主張するが,留学中の長女への援助(月額5万円)が送金されていたのはP9の長女名義の預金口座であって(甲20の1,2,甲21ない- 37 -し23,甲42),P8銀行の預金口座の入金の中には長女への援助分は含まれていない。 以上のとおり,P1が失踪した平成7年5月当時の原告は,住居を無償で提供されていたことに加え,自分の公的年金の -し23,甲42),P8銀行の預金口座の入金の中には長女への援助分は含まれていない。 以上のとおり,P1が失踪した平成7年5月当時の原告は,住居を無償で提供されていたことに加え,自分の公的年金のほかは,夫婦預金の取り崩し分や,預金を運用した私的保険の満期金,加給年金分としてのP1の入金分によって主たる生活費を得ていたのであるから,結局P1の経済的援助により生活していたというべきである。 被告は,原告が長女や二男の援助により生計を営んでいたと主張するが,原告は長女からも二男からも経済的援助を受けておらず,原告がP1の健康保険上の被扶養者からはずれたのはP1が定年退職して横浜市の国民健康保険に入ったからであり,税法上は平成元年にP1と長女の話し合いで長女に税控除を譲ったからであり,P1が失踪した平成7年5月当時に二男の健康保険上の被扶養者になっていたのは平成5年8月から平成7年6月までの長女の留学期間に限って便宜的に二男の健康保険に入れてもらったものにすぎない。平成7年5月当時においては,長女は留学のため失業しており,二男は平成6年8月から3人の扶養家族を伴ってのロンドン勤務になったから,原告に対して援助する余裕はなかった。 また,被告は,原告自身に生計を維持するに足る資産・収入があったとも主張するが,①原告は別居後は断続的に家庭教師の仕事しかしておらず,あったとしても小遣い程度の収入であったのであり,②平成4年に建てた山小屋の建築費の原告負担分は,預かっていた夫婦預金から一時立替払いし,原告の両親の遺産に絡む裁判で平成7年に共同相続人から得た現金(実質遺産)から補てんしたのであり(平成4年の遺産分割審判当時既に共同相続人が1000万円近くの預金を引き出したらしい事実はつかんでいたものの,確証がなかったため審判には反映されてい- 得た現金(実質遺産)から補てんしたのであり(平成4年の遺産分割審判当時既に共同相続人が1000万円近くの預金を引き出したらしい事実はつかんでいたものの,確証がなかったため審判には反映されてい- 38 -なかったが,裁判をすれば取得できる見込みはあった。),③自宅の大修理に関するP1の手紙(乙4の4の4)に対しては,原告から,山小屋の別途新築だけでも大変なのに自宅の修理までする余裕はないとの趣旨の返事をして(甲41の1,2),話はそれで終わっており,④平成4年から平成7年にかけての原告名義の預金口座への振込(甲8)は,山小屋建築費のP1負担分を一旦原告に送金し原告分と合わせて支払ったもの(平成4年12月の300万0244円。甲53),前述の共同相続人からの入金分(平成7年3月13日の376万0284円),遺産分割審判及び前述の裁判の各費用(旅費日当)などであり,何ら原告の資産・収入の証明になるものではない。 (ウ)別居後の交流について原告とP1は,別居後もP1が失踪するまで,電話,手紙,葉書などを頻繁にやり取りして交流を続けてきた。手紙,葉書については,原告の手元に残っているもののうち証拠で提出しているものだけでも36通にのぼっている。被告は,P1の手紙の内容は事務的なものが多いと主張するが,自分の近況を書いたものや原告らの様子を尋ねたものなどもあり(甲19,乙1の6,乙4の4の7など),決して冷淡という雰囲気ではない。事務的な内容が多いのは,P1が大正生まれで教師という職業に就いていたこともあり,若い人のようにストレートな愛情表現をする人間ではなかったことと,原告に自宅等の管理を委ね,子どもの教育を託しているのは家長として原告に指示をして実務的なことをさせているという意識から,それらに関連する内容が自ずと多くなったというこ する人間ではなかったことと,原告に自宅等の管理を委ね,子どもの教育を託しているのは家長として原告に指示をして実務的なことをさせているという意識から,それらに関連する内容が自ずと多くなったということにすぎない。 また,原告とP1は,P1の失踪から遠くない平成3年から平成6年にかけての時期に,費用折半の約束で山小屋を新築することを決め(乙4の4の2),工事の契約者は原告のみで(甲53),共有名義で原告- 39 -が表示登記手続をし(甲29),不動産取得税は全額P1が支払ったが(乙4の4の7),このような過程は,この間の夫婦の生計同一を証明する事実である。当時P1と原告が生計同一状態にあり,将来もそのような関係が続く見込みがあったのでなければ,この時期に共同して共有名義の建築物を建てるはずもないのである。 (エ)まとめ以上のとおり,原告とP1の夫婦は,別居期間こそ14年にわたっているものの,その間ほぼ定期的といえる音信があり,双方で情報を共有していたから意思の疎通もあった上,経済的援助もなされていたものである。しかも平成4年には共同で共有名義の山小屋を新築している。その上別居の理由が「暴力」という特殊なもので,容易に別居を解消できないものの,原告はP1に経済的に依存し,P1は原告に精神的に依存し,かつ家長として妻たる原告に夫婦財産の管理や子どもの養育の実務を命じるという意識を持っていたから,夫婦としてのつながりが存在し,決して破綻とはいえない共同関係にあった。P1は内縁の妻を持つこともなかったので,将来復縁して同居に至る可能性も高かったのであり,失踪の9か月前に当時同居していた長男と別に住もうと考えている旨の手紙(乙1の6)を原告に送り,一種原告の関心を引こうとしていることもこのことをうかがわせる。被告は,「βには居たくありません あり,失踪の9か月前に当時同居していた長男と別に住もうと考えている旨の手紙(乙1の6)を原告に送り,一種原告の関心を引こうとしていることもこのことをうかがわせる。被告は,「βには居たくありません。何とか探します。」とのP1の記述をもって原告と同居する意思がなかったとしているが,このような行き先の相談をわざわざ手紙で原告に書いてよこしていたということ自体が重要であって,原告の関心を引くためでなければ何らこのような相談を持ちかけてくる必要はなかったものである。原告とP1間には生計維持関係ないし生計同一関係が存在したものというべきである。 また,遺族共済年金が遺族の扶養を直接の目的とするものであるとし- 40 -ても,組合員が在職中に支払っていた掛金を主たる原資としているものであることも否定できない。P1の在職期間36年のうち,25年間は原告が同居し,共済掛金の支払に寄与・貢献してきたのであるから,この点からみても原告が「遺族」としての年金支給を全く受けられないことは極めて不当である。 したがって,原告が「遺族」に当たらないとした被告の本件処分は取り消されるべきである。 イ被告の主張(ア)「止むを得ない事情」及び「その事情が消滅したときは,起居を共にし,消費生活上の家計を一つにすると認められるとき」についてP1が家を出て住民票上の住所を異動した昭和56年7月から行方不明となった平成7年5月までの間,14年間も別居を継続し,しかもその間,P1は足立区の自宅に一度も立ち寄ることもなく,原告がP1と顔を合わせたのはわずか7,8回であり,そのうち最後に顔を合わせたのは平成6年に偶然東京都内の安売店で出会っただけであり,その余の山小屋で顔を合わせた時も,事前に原告が日程を連絡していたとはいえ,それは山小屋の利用調整のためであり,P1と山 ち最後に顔を合わせたのは平成6年に偶然東京都内の安売店で出会っただけであり,その余の山小屋で顔を合わせた時も,事前に原告が日程を連絡していたとはいえ,それは山小屋の利用調整のためであり,P1と山小屋で会うためではなかった。14年間の別居中には二男の結婚もあるが,原告とP1が顔を合わせたのが山小屋と安売店のみであったとすれば,P1が二男の結婚式に原告とともに夫婦として出席することもなかったのである。その上原告・P1双方から別居状態を解消する行動がとられることは全くなかったものであり,別居状態は常態化し,固定化していたものである。現に,P1が原告に宛てた平成6年9月2日付けの手紙(乙1の6)では,「私の行く先は,目安がありませんが,α,βには居たくありません。 何とか探します。」と記載し,原告と同居する意思がないことを明らかにし,その後平成7年5月には何ら原告に連絡することもなく行方不明- 41 -となっているのであって,将来的に原告とP1とが「起居を共にし,消費生活上の家計を一つにする」可能性が全くなくなっていたことは明らかである。 原告は,P1との別居はP1の暴力によるものと主張するが,平成7年5月当時には既に別居が14年間に及んでいる上,同時点ではP1は70歳近くになっており,P1が原告に宛てた平成6年9月6日付けの葉書(乙4の4の8)には,「長男と離れ,私が家を出ることにしたことは,話し合い,一緒にいることにもどしました。私は精神的にも,体力的にも弱くなってしまったからです。独りより,二人のほうが力になるのだろうということも,仕方ありません。」と記載して気力の減退を示しており,別居の原因が仮に暴力であったとしても,その事情は既に解消していたものである。 したがって,平成7年5月当時においては,「止むを得ない事情」により別居 りません。」と記載して気力の減退を示しており,別居の原因が仮に暴力であったとしても,その事情は既に解消していたものである。 したがって,平成7年5月当時においては,「止むを得ない事情」により別居していたとはいえないし,ましてや「その事情が消滅したときは,起居を共にし,消費生活上の家計を一つにすると認められる」とはいえない。 (イ)「生活費,療養費等の経済的な援助が行われていること」について生計同一関係が認められるためには,「生活費,療養費等の経済的な援助が行われていること」(狭義の生計維持要件)が必要であり,これに該当するというためには,少なくとも組合員等からの収入がなくなることによって,当該世帯の生計を維持するにつき相当に困難な状態を招くに至る程度の寄与がなされていることを要するものである。 原告は,P1が原告の居住する自宅(借地)の維持費を支払っていることは重要な経済的援助であると主張するが,自宅がP1所有名義となっているのであれば,その財産維持のためこれを負担するのは当然であり,これをもって原告に対する経済的援助ということはできない。また,- 42 -遺族共済年金の支給は,組合員等が死亡した場合,その者によって生計を維持されていた者に対し,組合員等の死亡当時に得られていた収入の喪失を補てんする趣旨であり,組合員等の所有する自宅に居住していた配偶者は,組合員等が死亡すれば当該自宅を相続して引き続き居住できるのであって,組合員等の死亡により自宅への居住利益が喪失するわけではなく,かかる利益は遺族共済年金の支給要件たる生計同一関係に係る経済的援助として考慮すべきものではない。本件の場合,P1は自らの意思により家を出ており,同人の原告宛手紙(乙1の7)の中には自分名義の家に原告が居住することについては必ずしもその意思に沿うもの る経済的援助として考慮すべきものではない。本件の場合,P1は自らの意思により家を出ており,同人の原告宛手紙(乙1の7)の中には自分名義の家に原告が居住することについては必ずしもその意思に沿うものではなかったことが示されており(「今,住んでいて,そちらが,住みつづけるのでしょうから,私は,何とも言いようはありません。」との部分),また長女が留学していた期間を除き,原告と長女は昭和61年からP1が失踪するまでの間同居していたことからすると,P1としては,原告が自宅に居住することについて不満であるとの感情は持ちつつ,父親としての心情からわが子である長女と同居している原告に対し家を出るよう言うことができなかったものであり,このため自分自身の権利の行使を行わず,その反射的結果として原告はP1名義の家に住み続けたものであって,これをもってP1から原告に対し経済的援助を行っていたと評価することはできない。しかも,足立区の自宅はP1が原告と結婚した後である昭和35年に住宅ローンで新築したものであり,P1と原告が協力して取得した不動産であって,少なくとも実質的には両名の共有財産であり,共有者として原告に使用する権利があるのであって,その権利に基づいて居住していたものであるから,これをもってP1から原告への経済的援助ということはできない。 原告は,P1が昭和61年まで定期的に生活費を送金していたと主張するが,生計同一関係の有無はP1が行方不明となった平成7年5月当- 43 -時で判断されるべきものであって,昭和61年以前の送金の有無は関係がない。しかも上記送金は,二男名義の預金口座及び長女名義の預金口座にそれぞれ送金され,長女の大学卒業・就職と同時に打ち切られており,その趣旨は原告への経済援助ではなく,二男及び長女に対する生活費・学費の援助である 送金は,二男名義の預金口座及び長女名義の預金口座にそれぞれ送金され,長女の大学卒業・就職と同時に打ち切られており,その趣旨は原告への経済援助ではなく,二男及び長女に対する生活費・学費の援助である。現に,上記送金打ち切りに際して,原告とP1との間で今後の原告の生活についての相談は全くされていない。また原告は,P1が平成4年以降は加給年金分を原告に送金していたと主張するが,当該金員は長女の預金口座に入金されているものであるところ,同口座の預金通帳(甲7,甲34)からはP1による送金であることは確認できないし,仮にP1からの送金であったとしても,年額としては20万円程度であり,その上平成7年には加給年金分の送金はなされなかったのであって,この程度の額の送金があっても,これをもって生計同一関係が認められるための経済的援助とはいえない。しかも,上記の加給年金分の送金は長女がアメリカ合衆国に留学することになって原告が1人で生活することになることから,長女がP1に要請して開始することになったものであるが,長女が平成7年6月に留学から帰国することはもともと予定されており,そのことはP1も承知していたことであって,加給年金分の送金が長女において安心して留学できるようにとの目的でなされていた以上,P1が失踪した平成7年にはもともと加給年金分の送金が予定されていたとは考えられず,現に平成7年には加給年金分の送金はなされていないのであって,平成6年8月までしかなされていない加給年金分の送金をもって原告とP1との生計同一関係を認めることができないことは明らかである。その上,長女は平成5年9月からアメリカ合衆国に留学しているところ,P1から原告に宛てた平成6年9月2日付けの手紙(乙1の6)には,「P10(長女)への月額の援助は5万円ですが,最後まで続けら る。その上,長女は平成5年9月からアメリカ合衆国に留学しているところ,P1から原告に宛てた平成6年9月2日付けの手紙(乙1の6)には,「P10(長女)への月額の援助は5万円ですが,最後まで続けられます。」と記載されており,長- 44 -女の預金口座への上記送金には長女への援助も含まれているものであり,上記送金をもって原告とP1との生計同一関係があったとは認められないことはこの点からしても明らかである。 P1は平成元年以降平成7年5月まで「控除対象配偶者なし」と被告に届出をし,一方,原告は平成7年5月当時健康保険関係につき二男の被扶養者となっていた(健康保険においては直系尊属が被扶養者と認定されるためには,「主としてその被保険者により生計を維持するもの」に該当することが必要である。健康保険法3条7項)。原告は,被告に提出した平成15年8月5日付け申立書(乙2の1)において,昭和61年4月以降P1から送金がなかった理由について,「(原告は)まだ多少収入もあり,わずかながら遺産を手にすることになったからである。」と述べており,平成7年5月当時には,自らの資産と二男の経済的援助によりその生計を維持していたものである。 原告が自ら生計を維持するに足る資産を有していたことは以下の事情からも明らかである。①原告の平成7年当時の課税証明書上の所得は国民年金と私的年金を合わせて年額70万円程度であったが,平成3年から平成4年にかけて総額1100万円もの経費を要する山小屋を原告においてその経費の2分の1を負担して新築している。②P1から原告に宛てた平成4年8月12日付けの手紙(乙4の4の4)では,原告が足立区の自宅の大修理(実質建替)を計画していることが示され,その上,「そちらで,お考えのことなのですが,高額の修理費,負担者が誰になるか,費用の捻 8月12日付けの手紙(乙4の4の4)では,原告が足立区の自宅の大修理(実質建替)を計画していることが示され,その上,「そちらで,お考えのことなのですが,高額の修理費,負担者が誰になるか,費用の捻出方法など,それ次第で,税金(修理後の)はどうなるか,など,(私に)十分気をつけて対処するように言われました。」と記載されていて,上記の大修理(実質建替)の経費を原告が負担することを前提としていることも示されている。③原告はP1から送金がなされていない時期である昭和63年に,610万円もの資金を,資金が相- 45 -当の期間固定してしまう養老保険料及び個人年金保険料の支払に充てている(甲10の1ないし甲13の3)。④原告名義の預金口座(甲8)には,平成4年に合計300万2640円,平成5年に合計31万1397円,平成7年にいたっては合計494万9942円もの金額が振り込まれており,しかもこの中にはP11信用金庫からの振込もあり,原告は同信用金庫にも預金を有している。⑤原告は昭和61年から平成4年までの7年もの期間,P1からの送金を受けることなく,その生計を維持してきていたのであり,しかもその間,国民年金の支給も,私的年金の支払も受けていなかったのであって(国民年金の支給開始は平成5年8月,私的年金の支払開始は平成6年8月),仮に原告主張のとおり二男・長女から経済的援助を受けていなかったとすれば,少なくともその間は自らの資産ないし収入によって生計を維持していたと解すほかはない。⑥原告が平成9年に申し立てた婚姻費用分担の審判において,「申立人の生活費は自分の国民年金年間受給額約20万円と個人年金年額約20万円の他,同居している長女から月額15万円余りの援助を受けながら生活している。しかし,申立人は生活費が不足しがちであり,不足分はアルバイ 費は自分の国民年金年間受給額約20万円と個人年金年額約20万円の他,同居している長女から月額15万円余りの援助を受けながら生活している。しかし,申立人は生活費が不足しがちであり,不足分はアルバイトや預貯金を取り崩して生活していると述べる」とされていたのであり(甲9),要するに原告の生活費は年額220万円(P1が負担していたという自宅・山小屋の税金,地代,管理費等の費用年額25万7600円を除外しても約200万円)を上回っていたのであって,平成7年当時,国民年金・私的年金と年額20万円程度の加給年金分の送金で生計を維持していたはずはなく(そもそも平成7年には加給年金分の送金はない。),仮に原告主張のとおり二男・長女からの経済的援助がなかったとすれば,生計維持の主たる財源が原告自身の資産ないし収入にあったことは明らかである。⑦原告は昭和40年までは教員としての職を有し,自らの収入(退職時には退職金もあったはず- 46 -である。)を得ていたものであり,その後も非常勤講師・家庭教師等をして収入を得ていたものであり,自らの資産を形成することは十分に可能であったものである。 原告は,昭和61年から平成4年まで送金が途絶えていた間はP1の送金を貯めた預金や別居時に原告が管理していた夫婦預金を取り崩して生活していたと主張するが,原告はこのようなことは被告宛の平成15年7月17日付け回答書(乙1の1)にも,同年8月5日付け申立書(乙2の1)にも,さらに同年9月16日付け回答書(乙4の1)にも記載しておらず,かえって,前記のとおり,同年8月5日付け申立書(乙2の1)では,「まだ多少収入もあり,わずかながら遺産を手にすることになった」としていたのであって,上記主張はこれと矛盾するものであるし,そもそもこれはP1が行方不明となった平成7年5月当時 (乙2の1)では,「まだ多少収入もあり,わずかながら遺産を手にすることになった」としていたのであって,上記主張はこれと矛盾するものであるし,そもそもこれはP1が行方不明となった平成7年5月当時の経済的援助ではない。また原告は,山小屋建築費の半額は550万円であり,父母の遺産等からこれにかなり近い現金が入る見込みがあったことから,とりあえず夫婦預金から出すことにしたとも主張するが,原告が平成3年に申し立てた遺産分割(甲39)では,父母の遺産のうち現預金は合計197万4648円しかなく,これを相続人3人で分割するのであるから,原告が上記のような現金を取得する見込みなどそもそもあるはずがなく,現に平成4年8月に出された審判では原告の取得した現預金はわずか3万0817円であるばかりか,かえって共同相続人に144万9470円を支払うこととなっているのであって,原告の上記主張は全く客観的事実に反するものである。原告の主張によれば,夫婦預金が別居時に約800万円であったが,そのうち100万円を自宅の修理に使い,昭和63年に残り700万円のうち610万円を年金保険等に積み立てたというのであるから,昭和63年当時には約100万円弱となっていたものである。原告はほかに昭和61年までのP1から- 47 -の送金を貯めたものが約400万円あったとも主張するが,これを合わせても預金は約500万円弱である。この中から,前述した共同相続人への支払(144万9470円)をすれば残額350万円弱にしかならないのであって,ほかに資産がなければ山小屋の建築に550万円も支出することができるはずがないのである。 以上のとおり,P1が行方不明となった平成7年5月当時,P1から原告に対し,それがなくなれば原告の生計維持に困難を生じさせるほど寄与する経済的援助がなされて 出することができるはずがないのである。 以上のとおり,P1が行方不明となった平成7年5月当時,P1から原告に対し,それがなくなれば原告の生計維持に困難を生じさせるほど寄与する経済的援助がなされていたことはないのであって,その一事からしても生計同一関係は認められないものである。 (ウ)「定期的に音信,訪問が行われていること」について原告とP1との間には,別居期間中にP1から原告への手紙・葉書での連絡はある程度なされているものの,そのほとんどは山小屋の費用負担等についての送金通知など事務的なものである。そして,これら事務的な事項についてのやり取りですら手紙又は葉書を用いていることは,P1と原告との人間関係が,直接会ったり,電話による会話を拒ませるものであったことを示すものである。 しかもP1は昭和56年7月以降,足立区の自宅に立ち寄ることは一切なく,またP1が行方不明となった平成7年5月まで別居解消の話し合いがなされたことは全くなかったものである。 したがって,原告とP1との間には,平成7年5月当時,夫婦としての意思疎通がなされていたと判断するほどの定期的な音信・訪問はなかったものである。 (エ)まとめ以上のとおり,原告とP1との間には,平成7年5月当時,生計同一関係は認められず,結局,共済法2条1項3号の生計維持要件を欠くものであって,本件処分は適法である。 - 48 -(2)争点②(手続法違反の有無)争点の第2は,本件処分の取消原因の有無及び被告の賠償責任の有無に関し,本件処分に係る手続において,被告職員に手続法5条ないし9条違反の行為があったかどうかである。 ア原告の主張(ア)手続法5条違反被告は,手続法施行後も,遺族の認定に関する被告としての審査基準を作成しておらず,担当職員が本件認定基準等を含む現行諸規定をその 行為があったかどうかである。 ア原告の主張(ア)手続法5条違反被告は,手続法施行後も,遺族の認定に関する被告としての審査基準を作成しておらず,担当職員が本件認定基準等を含む現行諸規定をその時々で恣意的に取捨選択して,適用し運用していた。仮に本件認定基準が被告としての審査基準に当たるとしても,被告は,これを公にせず,窓口に据え置いてもおらず,原告の来訪当初からの再三の問い合わせに対しても明らかにしようとしなかった。このため,原告が本件認定基準を知ったのは相当日数が経過してからであり,しかも他機関からの教示によるものであった。被告が本件認定基準の完全なものを原告に交付したのは,本件処分の通知書に同封したものが初めてであった。 また,被告は,原告が来訪の当初から決定請求の意思を示し,決定請求書の交付を求めていたにもかかわらず,複雑な事案であるとして遺族認定を先行させる「事前審査方式」を採用し,2か月もの間原告に決定請求書を交付せず,請求行為をさせなかった。 以上の被告の行為は,審査基準の作成・公表を定めた手続法5条に違反している。 (イ)手続法6条違反被告は,手続法施行後,本部直接請求の遺族共済年金決定までの標準処理期間は2か月と定めているようであるが,申請者には公表されておらず,本件でも原告に告げることなく,決定請求の意思を示してから約3か月も経って唐突に本件処分をした。これは,標準処理期間の公表を- 49 -定めた手続法6条に違反している。 (ウ)手続法7条違反前記(ア)のとおり,被告は,原告が来訪の当初から決定請求の意思を示し,決定請求書の交付を求めていたにもかかわらず,複雑な事案であるとして遺族認定を先行させる「事前審査方式」を採用し,2か月もの間原告に決定請求書を交付せず,請求行為をさせなかった。これは,行政庁 し,決定請求書の交付を求めていたにもかかわらず,複雑な事案であるとして遺族認定を先行させる「事前審査方式」を採用し,2か月もの間原告に決定請求書を交付せず,請求行為をさせなかった。これは,行政庁の審査応答義務は申請が到達した時に生ずる旨を規定した手続法7条に違反している。 (エ)手続法8条違反被告は,前記(ア)のとおり恣意的に引用した審査基準で原告の決定請求を棄却し,本件認定基準に則った棄却理由を本件処分の通知書に記載しなかった。これは,処分理由の提示を定めた手続法8条に違反している。 (オ)手続法9条違反被告は,原告が申請意思を示してからも正式な審査を開始せず,決定請求書の交付すら拒絶し続け,処分時期の見通しも全く明らかにしなかった。また,原告は被告職員に対し審査基準の開示を求めたのであるが,仮にこれを被告職員がその証言するように「どう書けば遺族と認定されるかという模範解答の書き方」の教示を求めるものと解したのだとしても(原告がそのような求めをすることはありえないが),被告職員は手続法9条2項に従って申請に関する可能な範囲の情報を与える努力をすべきであった。したがって,被告は,手続法9条に規定する情報提供等の努力義務も果たしていなかったことが明らかである。 (カ)まとめ以上のような被告の原告に対する異例の対応は,原告の長男がP1の支払未済年金の支給を求めて被告の事務所を訪れた際,被告の職員に対- 50 -し行った暴行・脅迫行為の影響によって,原告の遺族共済年金受給資格の審査過程の中に長男を納得させる対策(原告の遺族該当性を否定して長男に支払未済年金の相続分を支給すること)を持ち込んだことが最大の原因である。 以上のような手続法違反は,本件処分の取消原因(手続的瑕疵)となるものであるとともに,後記(3)のとおり,被告職 して長男に支払未済年金の相続分を支給すること)を持ち込んだことが最大の原因である。 以上のような手続法違反は,本件処分の取消原因(手続的瑕疵)となるものであるとともに,後記(3)のとおり,被告職員の原告に対する不法行為を構成するものというべきである。 イ被告の主張(ア)手続法5条違反の主張について手続法5条3項の趣旨は,申請をしようとする者あるいは申請者に対して審査基準を秘密にしないとの趣旨であり,対外的に積極的に周知することまで義務付けるものではなく,関係者の求めに応じて開示することも許されるものである。そして,手続法5条3項違反を理由として処分が違法になることがあるとしても,それは処分がなされるまで行政庁において審査基準を明らかにせず,このため請求者において必要な請求理由の主張・資料の提出ができなかったという場合である。 本件の場合,原告からは少なくとも平成15年7月26日の被告職員との面談まで原告から審査基準を明らかにするよう求められたことはなかったものであり,その際被告職員が口頭で本件認定基準を明らかにし,また同年9月10日付け事務連絡において本件認定基準の文書を原告に送付しているのであって,被告の対応に手続法5条3項違反はない。 なお,原告は,被告が審査基準を設定していないと主張するが,被告は,本件認定基準を審査基準としているものである。そもそも原告は被告が本件認定基準を審査基準としていることを認めていたものであって(原告準備書面(1)第2の2),原告の上記主張は自白の撤回に当たり許されない。 - 51 -(イ)手続法6条違反の主張について手続法6条の趣旨は同法5条3項と同旨であり,関係者の求めに応じて開示することも許される。そして,仮に同法6条違反があったとしても,そもそも標準処理期間を定めること自体が努力義 条違反の主張について手続法6条の趣旨は同法5条3項と同旨であり,関係者の求めに応じて開示することも許される。そして,仮に同法6条違反があったとしても,そもそも標準処理期間を定めること自体が努力義務でしかないのであって,同条違反があったとしても本件処分を違法ならしめるものではない。 本件の場合,被告は原告から処分の見通しについての情報提供を求められたが(これについては,被告は平成15年9月10日付け事務連絡により回答している。),標準処理期間の開示を求められたことはなく,しかも,被告は同事務連絡とともに原告に送付した資料(甲38)の末尾の「備考」欄に標準処理期間(2か月)を記載して明らかにしており,手続法6条違反はない。 (ウ)手続法7条違反の主張について手続法7条違反は,不作為の違法の理由とはなっても,原告の申請に対する応答としてなされている本件処分の違法理由となるものではない。 被告においては,申請しようとする者に結果的に無駄となることもある煩雑な手続上の負担をできるだけ避けるため,年金の受給資格要件について可能な限り事前に申請しようとする者から聴取し,審査資料を提出してもらい,受給資格要件の存否を審査し,その審査結果が出た時点でこれを申請しようとする者に通知し,請求書を提出してもらうとの事前審査制度をとっている。この事前審査制度は,年金請求者の手続上の負担を軽減するためのものであり,その対象もあくまで別居や重婚的内縁関係があるといった複雑な事案に限って行っているものであって,手続上も請求書が提出されていなくとも,この事前審査手続の中で受給資格要件の審査が行われるものであり,何ら手続法7条の趣旨を没却するものではない。 - 52 -被告は,事前審査を行う場合,事前審査が終わって,その結果を通知する際,請求書を併せて送付して で受給資格要件の審査が行われるものであり,何ら手続法7条の趣旨を没却するものではない。 - 52 -被告は,事前審査を行う場合,事前審査が終わって,その結果を通知する際,請求書を併せて送付している。しかし,申請しようとする者が事前審査の終了前であっても,とにかく請求しておきたいというのであれば,これを拒否するものではない。現に,被告は平成15年8月29日付け事務連絡により,原告に請求書を送付しているところである。被告が同日まで原告に請求書を交付しなかったのは,それまでは原告が直ちに請求書の交付を求めるとの態度を明確にせず,被告において原告が被告の事前審査制度を了解しているものと認識していたからであって,原告の要求を一方的に拒絶していたというものではない。 (エ)手続法9条違反の主張について手続法9条は,努力義務を規定したものにすぎず,その違反は本件処分の違法理由となるものではない。 本件の場合,被告は,平成15年8月29日付け事務連絡により原告に請求書類を送付し,また同年9月10日付け事務連絡により情報提供も行っているのであって,手続法9条違反がないことは明らかである。 (3)争点③(被告職員による不法行為の成否等)争点の第3は,被告の賠償責任の有無に関し,被告職員に手続法違反の行為があったとして,これが原告に対する不法行為を構成するかどうか,及び不法行為が成立するとして,原告の被った損害の額である。 ア原告の主張前記(2)のとおりの被告職員の違法行為により,原告は2か月間ほとんど徒労といってよい労力を余儀なくされた。正式の決定請求手続をとるまでの2か月間被告に足を運んだことは8度に及び,その都度人を威圧したり,愚弄するような被告職員の態度に傷つけられた。また,審査基準や処分時期の見通しを全く明らかにしてもらえなかったため 手続をとるまでの2か月間被告に足を運んだことは8度に及び,その都度人を威圧したり,愚弄するような被告職員の態度に傷つけられた。また,審査基準や処分時期の見通しを全く明らかにしてもらえなかったために,書面の作成や資料の収集に必要以上の労力と時間を割かざるを得なかった。その挙げ句- 53 -の短期間(わずか10日間)での棄却決定であり,原告は被告職員の故意又は過失に基づく違法行為により多大な精神的苦痛を被った。この損害は少なくとも金100万円を下らない。したがって,被告は原告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料として金100万円を支払うべき責任がある。 イ被告の主張原告の主張は争う。被告職員に違法行為はなく,故意・過失もない。 第3当裁判所の判断 争点①(遺族該当性)について(1)前記第2の2の事実のほか,証拠(各付記のもののほか,甲33,甲40,甲55,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。 アP1(大正▲年▲月▲日生)と原告(昭和▲年▲月▲日生)(甲1)は,ともに公立中学校の教師をしていた昭和31年12月27日に婚姻し,その後原告は昭和39年11月に退職したが(退職時の原告の給与月額は4万2900円で,原告は退職の際に退職一時金を取得した。),P1は昭和61年3月の定年まで引き続き教員職にあった。この間,昭和▲年▲月▲日には長男P6(以下単に「長男」という。)が,昭和▲年▲月▲日には二男P12(以下単に「二男」という。)が,昭和▲年▲月▲日には長女P10(以下単に「長女」という。)がそれぞれ生まれた。 イP1と原告は,昭和34年に原告の現住居地である東京都足立区γの土地を賃借し,昭和35年にP1名義で18年の住宅ローンを組んで持ち家を建て,長男,二男,長女とともに居住していたが,昭和56年3月 イP1と原告は,昭和34年に原告の現住居地である東京都足立区γの土地を賃借し,昭和35年にP1名義で18年の住宅ローンを組んで持ち家を建て,長男,二男,長女とともに居住していたが,昭和56年3月,長男が大学を卒業して横浜市に転居し,次いで同年7月1日,P1が上記の自宅を出て原告との別居生活を開始し(別居に至る経緯は後記ウのとおり),以後P1は,平成7年5月に行方不明となるまで,横浜市α内で長男と同居していた。一方,原告は,P1が家を出た後も二男(当時大学2- 54 -年生)及び長女(当時高校3年生)とともに上記自宅に居住していたが,昭和57年4月には長女が大学に進学して千葉市内の学生寮に居を移し(昭和61年3月まで),昭和59年4月には同年3月に大学を卒業した二男が就職して神戸市に転居した(昭和61年7月まで)。その後,長女は,昭和61年3月に大学を卒業し,同年4月からは就職して自宅に戻り,以後,アメリカ合衆国に留学していた期間(平成5年8月から平成7年6月まで)を除いて,原告と同居していた(その後平成11年2月に婚姻して原告と別居)。また,二男は,昭和61年7月に転勤とともに一旦自宅に戻って原告と同居したが,同年10月に婚姻して埼玉県和光市に転居し,平成6年8月からは英国に転勤となり,平成10年に帰国するまで同国に居住していた。 ウP1は,昭和55年5月ころから,原告に対して度々殴る蹴るの暴力を振るうようになり,原告は,昭和56年3月,東京家庭裁判所に夫婦関係調整の調停を申し立てた。P1は,調停委員に対し,離婚の意思のないことを述べたが,家庭裁判所調査官等の説得により,原告との別居を承諾し,昭和56年7月1日,自宅を出た。 エP1と原告が別居を始めた当時,夫婦の資産としては,足立区γのP1名義の自宅建物のほか,昭和50年 べたが,家庭裁判所調査官等の説得により,原告との別居を承諾し,昭和56年7月1日,自宅を出た。 エP1と原告が別居を始めた当時,夫婦の資産としては,足立区γのP1名義の自宅建物のほか,昭和50年に建てた山小屋(長野県δ),並びに額面合計867万円の郵便定額貯金及び公社債(うちP1名義のもの547万円,原告名義のもの320万円。以下「夫婦預金」という。)があった(甲61ないし甲87)。P1は,原告との別居後も平成7年5月に行方不明となるまで,自宅の固定資産税(甲43)及び地代並びに山小屋(後に新築したものも含む。)の固定資産税,管理料,水道料等の維持費を負担していた(原告がP1の行方不明後に申し立てた婚姻費用分担の審判(平成10年10月29日付け)(甲9)においては,これらの費用の総額は審判の当時で年額25万7600円であったと認定されている。)。 - 55 -このうち自宅の地代についてはP1が昭和53年6月以来供託を続けているところ,P1は原告との別居後も供託書を原告に送付し,原告がこれを保管していた(甲16,甲19,乙1の14の1ないし乙1の15の2)。 また,自宅及び山小屋の登記済権利証(甲90の1ないし甲91)も原告が保管していた。夫婦預金は,昭和58年6月から平成3年2月までの間に順次満期が到来することとなっていたもので,郵便定額貯金の満期受取額及び公社債の元利金の合計額を合わせると1600万円余りに及ぶものであった。P1は,原告との別居に際し,原告が夫婦預金を取り崩すことを承諾し,原告はその旨を家庭裁判所を介して聞いた。 オP1は,別居直後の昭和56年8月から昭和57年3月までの間は,P8銀行の原告名義の預金口座(甲4,甲5)に例月分として毎月約12万円と年末期手当の半額に相当する38万5000円を振込入金し,昭和5 は,別居直後の昭和56年8月から昭和57年3月までの間は,P8銀行の原告名義の預金口座(甲4,甲5)に例月分として毎月約12万円と年末期手当の半額に相当する38万5000円を振込入金し,昭和57年4月からは,父親として子を見捨てていないことを示すために子名義の預金口座に送金してほしいとの原告の申し入れを受け,同銀行に二男名義の預金口座と長女名義の預金口座(甲6,甲7,甲34)を作り,通帳はP1が保管し,キャッシュカードは原告に託して,二男名義の預金口座には例月分として毎月約11万円と各期手当等臨時収入の半額を,長女名義の預金口座には例月分として毎月約9万円をそれぞれ入金し(甲15)(例月分の合計額約20万円はP1の月収の約3分の2に相当した。),二男が就職した昭和59年4月からは,長女名義の預金口座に例月分として毎月約16万5000円(これはP1の月収の約2分の1に相当した。)と各期手当等臨時収入の半額を入金した。これらのほかに,二男,長女及び原告に対し,臨時の小遣いを入金することもあった(甲15,甲45の1,2)。P1は,昭和61年3月の定年退職に当たり,原告に対し,電話で,「年金生活になって収入が半分になって大変だ。何かあったら言ってきてください。」と伝え,同年4月以降,長女名義の預金口座へ- 56 -の入金を停止したが,平成4年3月からは,留学を翌年に控えた長女と原告からの要請を受けて,自己の退職年金のうち昭和61年にまで遡った各年分の加給年金額に相当する金額として(乙1の7ないし乙1の8の7),平成4年3月9日には20万2400円(平成3年分),同年4月24日には18万6800円(昭和61年分),同年6月25日には18万7900円(昭和62年分),同年8月26日には18万8100円(昭和63年分),同年10月26日には 円(平成3年分),同年4月24日には18万6800円(昭和61年分),同年6月25日には18万7900円(昭和62年分),同年8月26日には18万8100円(昭和63年分),同年10月26日には19万2000円(平成元年分),同年12月18日には19万6400円(平成2年分),平成5年2月22日には20万2400円(平成4年分),同年8月16日には21万2500円(平成5年分),平成6年8月15日には21万5400円(平成6年分)をそれぞれ長女名義の預金口座に入金した。なお,P1は,長女の留学中は,長女に対する援助として,長女名義のP9の預金口座に,例月分5万円(4か月分20万円をまとめて入金)のほか,臨時の必要な金額を入金していた(甲20の1ないし甲23,甲42)。 カ原告は,P1との別居後は,前記オのP1からの入金額のほか,原告自身が都立高校産休補助教員として稼働して得た給与(昭和56年度のみ),家庭教師のアルバイト分(月額収入2万ないし6万円程度),夫婦預金の取り崩し分等で生活費等を賄っていた。P1が長女名義の預金口座への入金を停止した昭和61年ころには,夫婦預金は,昭和58年ころに自宅の改修をした残りの700万円余りが原告の手元にあり,これに加えて,二男及び長女がともに日本育英会から奨学金の貸与を受け(甲46の1,2,甲48),長女についてはさらに大学の入学金と2年間の授業料の免除を受けたことなどから,P1から二男及び長女名義の各預金口座への4年間の入金額のうち,各期手当等の半額分約400万円が蓄えとして残っていた。原告は,昭和63年には,老後に備えるために,これらの預貯金のうち満期にならない原告名義の預貯金を除くその余のものの中から610万- 57 -円を支出し,これを平成5年以降に順次満期等が到来する養老保険及び個 63年には,老後に備えるために,これらの預貯金のうち満期にならない原告名義の預貯金を除くその余のものの中から610万- 57 -円を支出し,これを平成5年以降に順次満期等が到来する養老保険及び個人年金保険(いずれもP13相互会社のもの)の保険料に充ててこれらの保険に加入した(甲10の1,2,甲11の1,2,甲12の1,3)。 これにより,原告は,平成5年6月28日には満期保険金285万8109円,平成12年11月27日には据置保険金137万2787円をそれぞれ受領し,平成6年から平成15年までの10年間には毎年8月28日に各50万9370円の年金の支払を受けた(甲12の1,甲13の1ないし3)。また,原告は,平成5年8月,国民年金の繰上支給を申請して受給権を取得し(乙4の2),同月以降,年額約20万円の老齢基礎年金を受給している(乙1の23)。 キP1は,原告との別居後も引き続き原告を健康保険上の被扶養者としていたが,昭和61年3月に定年退職した際,長男とともに横浜市αで国民健康保険に加入したため,原告をP1の健康保険上の被扶養者にすることができなくなった。そこで,原告は,当時大学を卒業して就職し原告と再び同居することになった長女の健康保険上の被扶養者となり,その後,平成5年7月に長女が留学のために退職し健康保険から脱退した際,独居となる原告を心配した長女からの要請を受けた二男が,一時原告を自己の健康保険上の被扶養者としたが,長女が平成7年6月に帰国すると,再び原告は長女の健康保険上の被扶養者となった。また,P1は,被告に対する税法上の扶養親族(控除対象配偶者)の届出において,昭和63年までは原告を届け出ていたが,長女の税法上の扶養親族の届出と重複しているとの指摘を受けたことから,平成元年以降は「控除対象配偶者なし」と届け出て 扶養親族(控除対象配偶者)の届出において,昭和63年までは原告を届け出ていたが,長女の税法上の扶養親族の届出と重複しているとの指摘を受けたことから,平成元年以降は「控除対象配偶者なし」と届け出ていた(乙5)。ただし,配偶者の有無そのものについては,被告に対して一貫して「妻有」と届け出ており,平成6年9月に被告に提出した扶養親族等申告書にも「異動なし」(すなわち「妻有」の届出は変わらず)と記載していた(乙5)。 - 58 -クP1と原告は,相談の上,平成3年から同4年にかけて,老朽化した旧山小屋と同じ敷地(借地)内に山小屋をもう一棟新築した(共有名義)。 総費用は約1100万円で,P1と原告が半額ずつを負担した。P1は,自己負担分の費用を随時前記オのP8銀行の長女名義の預金口座に入金していたところ(乙1の9の1,乙1の9の3ないし乙1の10の4),平成4年10月9日,第3回目の工事費として154万5000円を入金し(甲7,乙1の10の2),原告がこれと原告の負担分とを合わせた金額を一旦原告名義の預金口座に入金して,同年12月2日,工事代金300万0244円を工事会社に振込送金した(甲53はその領収証)。原告名義の預金口座(甲8)への平成4年12月1日から2日にかけての合計300万2640円の入金及び同年12月2日の300万0544円(うち手数料300円)のカード振込による出金は,以上の経緯によるものである。その後,P1は,平成5年10月30日付けの委任状(甲29)により登記手続の一切を原告に委任し,平成6年7月22日には不動産取得税を納付した(乙4の4の7)。 ケ原告の両親は,鳥取県内に居住していたところ,昭和▲年▲月に原告の父が,平成▲年▲月に原告の母が相次いで死亡し,平成3年に鳥取家庭裁判所に遺産分割の調停等が申し立てられ, した(乙4の4の7)。 ケ原告の両親は,鳥取県内に居住していたところ,昭和▲年▲月に原告の父が,平成▲年▲月に原告の母が相次いで死亡し,平成3年に鳥取家庭裁判所に遺産分割の調停等が申し立てられ,平成4年8月13日,遺産分割等の審判が行われた。相続人は原告(長女),P14(二女),P15(三女)の3名で(甲44),上記遺産分割の審判により,原告は,実家の土地建物(鳥取県岩美郡ε所在,分割時の評価額合計1410万円)と合計3万0817円の預金及び現金などを取得する一方,P14に対する清算金144万9470円を負担することとなった(甲39)。上記遺産分割の審判のころから,P14による遺産(預金)の取り込みの疑いがあったところ,その後原告の提訴を受けた鳥取地方裁判所からの調査嘱託によって約1000万円の預金の引出があったことが判明し,原告は,平成- 59 -7年,P14に対し引き出した預金額の一部の支払を命ずる勝訴判決を得た。原告名義の預金口座(甲8)に平成7年3月13日に振り込まれた376万0284円(P14からのもの)は上記判決で確定した債務の履行分,平成5年4月8日に振り込まれた13万3503円(P15からのもの)及び10万1572円(P14からのもの),平成7年12月21日に振り込まれた66万2962円(P14からのもの)並びに同日及び同月27日に振り込まれた合計52万6696円(P11信用金庫からのもの)は,いずれも上記遺産分割の調停・審判及び民事訴訟について原告に発生した旅費と日当の負担分である(P11信用金庫はP14の預金引出行為に加担したとして原告に訴えられ敗訴していた。)。なお,同預金口座に平成5年12月3日にP16株式会社から振り込まれた7万6322円は,原告が同社のバスに乗っていて急停車されたため転倒して負傷した 為に加担したとして原告に訴えられ敗訴していた。)。なお,同預金口座に平成5年12月3日にP16株式会社から振り込まれた7万6322円は,原告が同社のバスに乗っていて急停車されたため転倒して負傷したことに対する賠償金である。 コP1と原告は,別居後も月に2,3回程度の頻度で手紙や葉書のやり取りを行っており,P1から原告に宛てたものとしては,昭和57年6月15日付けのものを初めとして,最後の平成7年5月2日付けのものまで,併せて35通の手紙や葉書が現存し(甲15ないし甲19,甲24の1ないし甲26の2,甲32の1,2,乙1の6,乙1の7ないし乙1の8の3,乙1の8の5ないし乙1の9の3,乙1の9の5ないし乙1の10の5,乙1の12,乙4の4の1ないし乙4の4の9。このうち乙1の10の5と乙4の4の7は同じものである。),また原告からP1宛てのものも3通が現存している(甲27の1ないし甲28,甲41の1,2)。P1から原告宛てのものは,山小屋の新築に関する打合せや入金通知などの内容のものが大半を占めるが,留学中の長女が知らせてきた近況をP1自身の感想を交えて記載したもの(平成6年4月15日付けの手紙(甲19)),P1が整形外科にかかり重いリュックや力仕事は故障のもとにな- 60 -りかねないので家にいる旨(山小屋に行かないことを伝える趣旨と思われる。)を記載したもの(平成6年7月20日ころ投函の葉書(乙4の4の7)),長男との同居が継続困難となった事情などを記載したもの(平成6年9月2日付けの手紙(乙1の6))などもあり,また連日にわたって投函したと思われるものもある(例えば,甲18の1ないし3の封書,甲25の1,2の葉書及び乙4の4の3の葉書は,平成4年5月27日,28日,29日の連日に郵便局が受け付けたものである。)。また,電話 投函したと思われるものもある(例えば,甲18の1ないし3の封書,甲25の1,2の葉書及び乙4の4の3の葉書は,平成4年5月27日,28日,29日の連日に郵便局が受け付けたものである。)。また,電話のやり取りも月1回程度以上はあり,旅行に行った話や子の就職・進学等の話を交わしていた(P1と原告が電話連絡をしていた事実は,P1が原告に宛てた平成6年9月2日付けの手紙(乙1の6)の中で,「デンワは,P6が朝~お昼まで在宅しているので,それを承知で,よろしくたのみます。」と記載して,暗に長男のいないときに電話をくれるよう原告に求めていることからも,うかがうことができる。)。昭和63年ころには,P1が外国旅行の際に買い求めたスカーフとブローチを原告にプレゼントし,逆に原告の方でも長女とともに九州旅行をした際に土産として博多帯を買い求めてP1に送ったこともあった。P1が原告との別居後に自宅に立ち寄ることはなかったが,平成元年9月に原告が長女とともに山小屋を訪れた際,同所で別居以来初めてP1と会い,その後も原告は山小屋でP1と5,6回程度会っていた。平成6年の秋ころには,東京都内の安売店で偶然会い,立ち話をした(これがP1と原告が会った最後の機会となった。)。 (2)本件認定基準について本件認定基準は,前記のとおり,別居中の配偶者であっても,当該別居に「単身赴任,就学又は病気療養等の止むを得ない事情」があり,「生活費,療養費等の経済的な援助が行われていること」や「定期的に音信,訪問が行われていること」が認められ,「その事情が消滅したときは,起居を共にし,- 61 -消費生活上の家計を一つにする」と認められるときは,組合員等と生計を同じくしていた者に該当するものと認定すべきことを定めている。しかしながら,このような本件認定基準に定める生計同 し,- 61 -消費生活上の家計を一つにする」と認められるときは,組合員等と生計を同じくしていた者に該当するものと認定すべきことを定めている。しかしながら,このような本件認定基準に定める生計同一要件が,施行令4条に定める「生計を共にしていた」との要件に関わるものであることは明らかであり,要は,諸般の事情を総合考慮したときに,当該配偶者が組合員等と「生計を共にしていた」と認められるかどうかが重要なのであるから,上記のような生計同一要件を一応の基準としつつも,これをあまりに厳格に解釈適用するのは相当ではないものといわなければならない。この点,本件認定基準自身が,その定める生計同一要件及び収入要件によることが「実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合」には,これらの要件によらない柔軟な認定を認めているのも,上記のような趣旨を含むものと解することができる。 したがって,例えば,別居に「止むを得ない事情」があるかどうかという点についていうと,特に配偶者の場合,戸籍上届出のある配偶者であっても,別居が相当長期間に及ぶなど,その婚姻関係が実体を失って形骸化し,かつ,その状態が固定化して近い将来解消される見込みのないとき,すなわち,事実上の離婚状態にある場合には,もはや遺族共済年金を受給すべき「配偶者」に該当しないものと解されるところ(最高裁昭和58年4月14日第一小法廷判決・民集37巻3号270頁参照),別居が「止むを得ない事情」によるものであったかどうかということは,このような「配偶者」性の判断において既に考慮されているはずの事項であるから,このような意味での「配偶者」であることが肯定された者について,さらにその生計同一要件の具備を判断する場合においてまで,別居の理由を殊更に重要視するのは相当とはいえな れているはずの事項であるから,このような意味での「配偶者」であることが肯定された者について,さらにその生計同一要件の具備を判断する場合においてまで,別居の理由を殊更に重要視するのは相当とはいえない。 また,音信・訪問が「定期的」に行われていたかどうかという点についても,厳密な意味で定期的であったとはいえないまでも,経済的援助等の他の- 62 -諸事情と相まって「生計を共にしていた」と認められる程度に相応の頻度及び内容をもった音信・訪問等が行われていれば足りるものというべきである。 特に「生活費,療養費等の経済的な援助が行われていること」との要件については,被告はこれを狭義の生計維持要件と称し,これに該当するためには少なくとも組合員等からの収入がなくなることによって,当該世帯の生計を維持するにつき相当に困難な状態を招くに至る程度の寄与がなされていることを要するものであると主張するのであるが,生計同一要件と並ぶ一方の要件である収入要件においてさえ,前記のとおり,上限額が年額850万円と比較的緩やかな基準設定となっていることにかんがみれば,被告が主張するような厳格な考え方をとるのは相当ではなく,この点についても,他の諸事情と相まって「生計を共にしていた」と認められる程度の経済的援助であれば足りるものというべきである。もっとも,別居中の配偶者が,別居中であるにもかかわらず,「生計を共にしていた」と認められるためには,少なくとも組合員等からの経済的援助がなければ,生活水準の維持に支障を来すこととなったであろうという程度の関係が存したことは必要であると考えられる。 (3)本件の検討以上のことを踏まえ本件について検討すると,以下に述べるとおり,原告はP1が行方不明となった当時において生計同一要件を充たしており,したがってP1と「生計を共にし 考えられる。 (3)本件の検討以上のことを踏まえ本件について検討すると,以下に述べるとおり,原告はP1が行方不明となった当時において生計同一要件を充たしており,したがってP1と「生計を共にしていた」ものと認めることができる。 ア原告とP1とが事実上の離婚状態にはなく,原告が遺族共済年金の受給権者となり得る「配偶者」に該当することについては,被告も特に争ってはいない(仮に,被告の主張が原告の「配偶者」性をも問題とする趣旨であるとしても,以下に述べるような別居に至る事情,別居期間中のP1から原告への経済的援助の状況,P1と原告との音信その他の交流の状況等に照らせば,両者の婚姻関係が実体を失って形骸化し,事実上の離婚状態- 63 -にあったとまでいうことはできないものというべきである。)。したがって,生計同一要件該当性の判断において原告とP1との別居の理由を殊更に重要視するのは相当とはいえないが,念のため検討すると,前記認定事実によれば,原告とP1の別居は,離婚を前提としたものではなく,P1の暴力を原因とし,いわばその冷却期間として開始されたものであると認められるのであり,その後P1が失踪するまでの別居期間は14年という長期にわたることとなったものの,その間,P1が原告に謝罪するなどして,P1の暴力に対する原告の恐怖心を完全に喪失させたことをうかがわせるような事情は認められない(この点,原告は本人尋問の中で,P1がもし同居するならばどうしても,もう暴力をしない,あのときの暴力はどういう訳で暴力をしたのかということを言ってもらわないと,原告としてはとても安心できないという気持ちであった,と供述しているところである。)。そうすると,原告とP1の別居は,P1が行方不明となった平成7年5月の時点においてもなお,「止むを得ない事情」による としてはとても安心できないという気持ちであった,と供述しているところである。)。そうすると,原告とP1の別居は,P1が行方不明となった平成7年5月の時点においてもなお,「止むを得ない事情」による別居であったと評価することが可能である。 被告は,平成7年5月時点でP1が70歳近くになっていたことや,P1が原告に宛てた平成6年9月6日付けの葉書(乙4の4の8)の中でP1が気力の減退を示していることを指摘して,別居の原因となった事情(P1の暴力)は既に解消していたと主張するが,この程度のことでP1の暴力の危険や,これに対する原告の恐怖心が全くなくなっていたと判断するのは早計であるといわざるを得ない。 イ次に,P1が行方不明となった平成7年5月ころの原告の生活状況をみてみると,前記認定のとおり,原告は,その当時,P1所有名義の居宅に無償で居住し(これは別居開始以来のことである。),P1から取り崩しの承諾を得ていた別居前からの夫婦預金と,P1が別居後退職時までに原告管理の預金口座に入金していた金員の残りの一部を,保険料として支払- 64 -ったことに基づく私的年金年額約50万円の支給を受け,さらに上記預金口座に入金を再開したP1から加給年金分として年額約20万円の入金を受けていたものである。したがって,他方において原告が,公的年金年額約20万円と月額2万ないし6万円程度のアルバイト収入を得ていたことを考慮しても,P1からの経済的援助(住居の無償提供,夫婦預金取り崩しの承諾及びP1退職時までの入金を含む。)がなければ,原告の生活水準の維持に支障を来すこととなったであろう関係が存したことは明らかである。 被告は,原告がP1所有名義の居宅に無償で居住していたことに関し,P1が自宅の維持費を支払うのは財産維持のための当然の行為であること,組合 来すこととなったであろう関係が存したことは明らかである。 被告は,原告がP1所有名義の居宅に無償で居住していたことに関し,P1が自宅の維持費を支払うのは財産維持のための当然の行為であること,組合員等の所有する自宅に居住していた配偶者は組合員等が死亡しても当該自宅の相続によって居住利益を失うことがないから,このような利益を遺族の収入の補てんを目的とする遺族共済年金の支給要件に係る経済的援助として考慮するのは相当ではないこと,原告の自宅は実質的にはP1と原告夫婦の共有財産であるから,共有者としての原告には使用する権利があり,原告の居住はその権利に基づくものであることなどから,住居の無償提供はP1の経済的援助ではないと主張する。しかしながら,原告の自宅が実質的に夫婦の共有財産とみる余地があるとしても,当然に一方の配偶者である原告のみが無償で使用できるわけではないから,他方の配偶者であるP1からの無償提供は,やはり原告に対する経済的援助に当たると解すべきであるし,生計同一要件における「経済的援助」は,「生計を共にしていた」との評価を根拠づける一徴表として考慮されるものであることからすると,夫が自己所有の自宅を無償で妻に提供しているとの事実は,夫婦間において家族共同体としての意識のつながりが失われていないことを示す重要な徴表であるということもできる。被告が指摘するP1の原告宛ての手紙(乙1の7)については,被告が指摘する箇所に引き続いて,- 65 -「弁護士は『柱一本残せば,よい』とのことです。求められれば,その時点で,考えなどは,おしらせします。」との記載があることからすると,この手紙は,自宅の改修についての相談を原告から受けたP1が,基本的には原告の判断に任せる旨の回答をしたにすぎないものと解する余地があり,必ずしも原告の居住がP1 。」との記載があることからすると,この手紙は,自宅の改修についての相談を原告から受けたP1が,基本的には原告の判断に任せる旨の回答をしたにすぎないものと解する余地があり,必ずしも原告の居住がP1の意思に沿わないものであることを示したものとはいえない。 被告は,夫婦預金についてはそもそもその存在自体が疑問であり,また退職時までの入金については,二男名義及び長女名義の預金口座に入金され長女の大学卒業・就職と同時に打ち切られていることからすると,その趣旨は原告への経済的援助ではなく,二男及び長女への生活費・学費の援助であり,さらにこれらはいずれもP1が行方不明となった平成7年5月当時の経済的援助ではないと主張する。しかしながら,前記認定のとおり,夫婦預金が存在したことは証拠上明らかであり(甲61ないし甲87),また退職時までの入金の額がP1の月収の2分の1ないし3分の2という相当に高額なものであったことや,入金に係る預金口座の通帳を原告が保管していたことなどからすると,入金の趣旨は原告を含めた家族3人への経済的援助であったと解するのが自然であり,さらに原告はこれらの金員の一部を原資(保険料)とすることによって,平成7年5月当時における私的年金年額約50万円の支給を受けることができたのであるから,やはりこれはその当時におけるP1からの経済的援助とみるのが相当である。 被告は,平成4年以降の加給年金分の入金について,P1による入金であること自体がそもそも疑問であり,また仮にP1からの入金であったとしても,長女が安心して留学できるようにとの目的でなされていた以上,長女が帰国する平成7年にはもともと入金が予定されていたとは考えられず,さらに長女名義の預金口座への入金には留学中の長女への援助も含まれていたと主張する。しかしながら,前記認定のとおり ていた以上,長女が帰国する平成7年にはもともと入金が予定されていたとは考えられず,さらに長女名義の預金口座への入金には留学中の長女への援助も含まれていたと主張する。しかしながら,前記認定のとおり,平成4年以降の- 66 -加給年金分の入金がP1からのものであることは,P1から原告に宛てた手紙・葉書の記載によっても明らかであり(乙1の7ないし乙1の8の7),また長女及び原告から要請のあった平成4年以降の分のみならず,入金を一時やめていた昭和61年にまで遡って毎年分の入金がされていることや,平成5年分及び平成6年分については,当該各年の8月にそれぞれ入金がされていることなどからすると,長女が安心して留学できるようにとの趣旨を超えて,継続して原告を援助する趣旨の入金であったと解するのが相当であり,平成7年分についても,同年5月のP1の失踪がなければ,例年どおり同年8月に入金があったものと推認することができるのであり,さらに,前記認定のとおり,留学中の長女への援助は他の銀行の預金口座に入金されていたものであり,加給年金分の入金の中に明らかに長女への援助分も含まれていたと解することは困難であるから,被告の上記主張はいずれも採用することができない。 被告は,原告が平成7年5月当時,P1の税法上の控除対象配偶者となっていなかった一方で,二男の健康保険上の被扶養者となっていたこと,P1からの仕送りが途絶えていた昭和61年から平成4年までの間に,養老保険料等610万円(昭和63年),山小屋新築費用の半額550万円(平成3年ないし同4年)などの多額の出費があることなどを根拠として,P1が行方不明となった平成7年5月当時には,原告は自らの資産と二男の経済的援助によりその生計を維持していたものであると主張する。しかしながら,まず原告がP1の税法上の控 あることなどを根拠として,P1が行方不明となった平成7年5月当時には,原告は自らの資産と二男の経済的援助によりその生計を維持していたものであると主張する。しかしながら,まず原告がP1の税法上の控除対象配偶者でなく二男の健康保険上の被扶養者となっていた事情は前記認定のとおりであり,このことから直ちに原告の資産の存在や二男からの経済的援助の事実が推認されるものではない。また,昭和61年から平成4年までの間の多額の出費についても,これらはそもそも平成7年5月当時における原告固有の資産の存在を推認させる事実ではない上(むしろ多額の出費はその後の資産の減少を- 67 -推認させるものである。),前記認定のとおり,原告の手元には,もともと元利金を合わせると1600万円余りにも及ぶ多額の夫婦預金があったことに加え,昭和61年3月の時点では,それまでのP1からの十分な入金によって約400万円の余剰を生じていたほどであり,昭和63年に養老保険及び個人年金保険に加入した後は,平成5年に280万円程度の満期保険金,平成6年以降には毎年50万円程度の個人年金を受け取ることが見込まれていたことからすると,原告がまず夫婦預金の中から自宅改修費の約100万円(昭和58年ころ)を支払い,さらにその残りとP1からの入金の余剰金約400万円とを合わせた預貯金の中から上記の保険料610万円及び山小屋新築費用の半額550万円を支出したとしても,残りの預貯金の元利金とアルバイト収入(月額2万ないし6万円程度)によって,昭和61年から平成4年までの間の原告の生活費をまかなうことは十分に可能であったものと認められるから,上記のような多額の出費が直ちに原告固有の資産の存在の根拠となるものではない。原告名義の預金口座(甲8)への平成4年から同7年にかけての振込入金の経緯は,前 十分に可能であったものと認められるから,上記のような多額の出費が直ちに原告固有の資産の存在の根拠となるものではない。原告名義の預金口座(甲8)への平成4年から同7年にかけての振込入金の経緯は,前記認定のとおりであり,これらもまた平成7年5月時点での原告固有の資産の存在の根拠となるものではない。その他,P1から原告に宛てた平成4年8月12日付けの手紙(乙4の4の4)の中に,自宅の大修理の経費を原告が負担することを前提としているように読める記載があることや,原告が昭和39年11月まで教職につき,その後も非常勤講師・家庭教師等をして収入を得ていたことなども,同様に,それのみでは平成7年5月時点での原告固有の資産の存在を推認させるには足りない。なお被告は,原告が平成9年に申し立てた婚姻費用分担の審判(甲9)において,「申立人の生活費は自分の国民年金年間受給額約20万円と個人年金年額約20万円の他,同居している長女から月額15万円余りの援助を受けながら生活している。」と認定されていることを根拠に,当時の原告の生活費は年額- 68 -220万円(自宅及び山小屋の維持管理費用を除いても約200万円)であったとし,これを前提に平成7年当時の原告が公的・私的年金及び加給年金分の合計約90万円程度の収入で生計を維持していたはずがないとも主張するが,そもそも上記の審判は,個人年金の金額を誤っているほか(「約20万円」としているが,「約50万円」とすべきところである。),長女からの援助の額をどのような根拠をもって認定したのかが明らかでなく,これを直ちに真実のものと認めることは困難であるから,被告の上記主張はその前提を欠くものといわざるを得ない。 ウ次に,原告とP1との音信・訪問等による交流の状況をみると,前記認定のとおり,P1が別居中に原告の住居を ものと認めることは困難であるから,被告の上記主張はその前提を欠くものといわざるを得ない。 ウ次に,原告とP1との音信・訪問等による交流の状況をみると,前記認定のとおり,P1が別居中に原告の住居を訪れる(自宅に戻る)ことはなかったものの,平成元年以降,別荘である山小屋において,年1回程度の頻度では原告と会っていたのであり,また手紙・葉書のやり取りや電話連絡は,別居期間を通じて頻繁にあり,その内容も決して事務的なものに終始していたわけではなく,家族としての心のつながりを感じさせる内容のものも含まれていたことが認められる。以上のほか,P1が自宅の地代の供託書を別居後も原告に送付して原告がこれを保管していた事実や,別居の開始から約10年後の平成3年ないし同4年にかけての時期(P1の失踪した平成7年から数えると3年ないし4年前の時期)において,原告とP1が相談して共有名義の山小屋を新築し,その後これを共同で使用していた事実などは,原告とP1とが別居中も互いに家族共同体としての意識を失わず,その意識をP1の失踪時に近い時期まで持続させていたことの表れとみることもできる。 エ以上を総合すると,P1が行方不明となった平成7年5月当時においても,原告とP1との間には経済面及び精神面での家族としてのつながりが認められ,別居の原因となったP1の暴力という事情が解消された場合には,再び起居を共にし,消費生活上の家計を一つにする蓋然性が高かった- 69 -ものということができる。 被告は,原告・P1双方から別居状態を解消する行動がとられたことはなく,P1が原告に宛てた平成6年9月2日付けの手紙(乙1の6)では原告と同居する意思がないことを明らかにしており,その後平成7年5月には何ら原告に連絡することもなく行方不明となっていることからすると,原告とP1 に宛てた平成6年9月2日付けの手紙(乙1の6)では原告と同居する意思がないことを明らかにしており,その後平成7年5月には何ら原告に連絡することもなく行方不明となっていることからすると,原告とP1の別居状態は常態化・固定化し,将来的に原告とP1とが「起居を共にし,消費生活上の家計を一つにする」可能性はなくなっていたと主張する。しかしながら,原告・P1双方から別居状態を解消する行動がとられたことがなかったことに関しては,原告が,本人尋問の中で,原告の方は暴力が怖いのでなかなか同居することができず,P1の方はプライドが高いので妻の方から何か言ってきてくれるのを待っているうちに長い時間がかかったのではないかと思うと供述し,また,P1が原告に宛てた上記手紙に関しても,原告が,本人尋問の中で,P1が手紙で今にも長男との同居をやめてどこか家を探すと言いながら,「何か,あなたの考えや,感じたことがあれば手紙ででも助言ください。デンワは,P6が朝~お昼まで在宅しているので,それを承知で,よろしくたのみます。」と記載していること(乙1の6)からすると,原告と同居したいのにはっきりそうと言えないP1が暗にその気持ちを原告に伝えようとしたものではないかと思う旨を供述しているところであり,いずれも約25年にわたる同居生活の中で夫の性格をよく知っていたものと推認される妻の発言として一概に排斥することのできない重みをもった供述というべきである。したがって,これらの事情を必ずしも別居状態の常態化・固定化の根拠とみるのは相当ではない。さらに,P1が行方不明となった原因は明らかになっておらず,P1の意に反する失踪であったことも十分に考えられるのであるから,原告に対して何らの連絡もなかったからといって,このことから直ちにP1の側に別居解消の意思がなかったとすることは らかになっておらず,P1の意に反する失踪であったことも十分に考えられるのであるから,原告に対して何らの連絡もなかったからといって,このことから直ちにP1の側に別居解消の意思がなかったとすることはできない。 - 70 -(4)本件処分の適法性以上のとおり,原告は,P1が行方不明となった当時において,施行令4条に定める「生計を共にしていた」との要件に該当するものである。したがって,この点についての判断を誤り,原告を共済法2条1項3号の「遺族」に該当しないものと認定した本件処分は,違法であり,取り消されるべきである。 争点②(手続法違反の有無)及び争点③(被告職員による不法行為の成否等)について(1)前記第2の2の事実のほか,証拠(各付記のもののほか,甲56,甲58,乙10ないし乙14,証人P7,証人P5,証人P2,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。 ア原告は,平成15年6月27日にP1の失踪宣告の裁判が確定したことから,同年6月30日,足立区役所において失踪届を提出したところ(甲37の4),区の担当者から,P1の失踪宣告を記した戸籍が同年7月4日に調うので,それから遺族年金等の申請をすればよいのではないかとの助言を受けた。 イそこで,原告は,戸籍が調い次第速やかに遺族共済年金の決定請求をしたいと考え,その準備のため,平成15年6月30日,被告の事務所を訪れ,応対した被告職員のP7係長(以下「P7職員」という。)に対し,遺族共済年金の決定請求書の交付を求めた。被告においては,年金受給者が死亡した場合で,長期間の別居や重婚的内縁関係など生計維持関係を調査しなければ遺族の認定ができないときには,遺族共済年金の決定請求書の交付に先立ち,事前に生計維持関係についての事実関係を調査することとしているところ,原 の別居や重婚的内縁関係など生計維持関係を調査しなければ遺族の認定ができないときには,遺族共済年金の決定請求書の交付に先立ち,事前に生計維持関係についての事実関係を調査することとしているところ,原告の場合には,長期間の別居と失踪宣告による死亡という事情があったことから,P7職員は,事前調査の必要を認め,原告に対し,追って調査書を郵送し必要な書類を求めるので提出してほしい,- 71 -遺族と認定されれば決定請求書を送付する旨を説明し,原告が提示した失踪宣告確定証明書,失踪宣告審判書謄本,失踪届の各写しを受領するとともに(これらは同年9月12日に原告に返却された。甲37の1ないし4),原告が所持していた戸籍の附票等の写しをとった。その際,原告とP7職員との間で原告の長男のことが話題となり(長男と被告との関係については後記ソのとおり),原告が東京地方検察庁の処分通知書(甲57の1,2)(長男は平成9年12月に原告に対する傷害の事実で起訴され罰金刑を受けていた。)を提示し,「このとおりなので,もし長男が迷惑をかけるようなら,私たちに遠慮せずに警察に通報してください。」と言ったところ,P7職員は上記処分通知書の写しをとった(甲37の5)。 ウ平成15年7月1日にも原告が被告の事務所を訪れ,P7職員が前日にとった戸籍の附票等の写しには「無効」の文字が浮き出ているので必要であれば後日正式なものを提出すると述べて写しの返却を求めたため,P7職員はこれを原告に返却した。またその際,原告がP7職員に対し,再度遺族共済年金の決定請求書の交付を求めたが,P7職員は,遺族と確認されれば決定請求書を交付するとの前日の説明を繰り返した。 エ原告が平成15年7月4日にP1の失踪宣告を記した戸籍の全部事項証明書をとり(甲1),同日,被告に電話をして,応対した被告 は,遺族と確認されれば決定請求書を交付するとの前日の説明を繰り返した。 エ原告が平成15年7月4日にP1の失踪宣告を記した戸籍の全部事項証明書をとり(甲1),同日,被告に電話をして,応対した被告職員のP5係員(以下「P5職員」という。)に対し,P7職員が言っていた調査書の送付を催促したところ,同年7月7日,原告のもとに,「遺族共済年金受給権の認定について」と題する事務連絡文書(同年7月4日付けでP7職員が発送したもの)(甲35の1,2,乙6)が郵送されてきた。これは,戸籍謄本,住民票,所得証明書等のほか,原告とP1が別居に至った理由を記した書面の提出を求めるものであり,同年7月22日を提出の期限とするものであった。被告が原告とP1の別居理由を記した書面の提出を求めたのは,当該別居が本件認定基準にいう「止むを得ない事情」によ- 72 -るものかどうかを確認するためであり,被告としてはこの点の確認をまずした上で,さらに経済的援助や音信・訪問の有無についての調査に進むことを予定していた。 オ原告は,足立区の広報活動により,別居の場合に遺族年金を受給するには生計維持関係の証明が必要という程度の知識があったので,前記エの事務連絡文書で生計維持関係の証明が要求されていないことを不審に思い,平成15年7月7日,被告の事務所を訪れた。このときには,被告職員のP2審査第一課長(以下「P2職員」という。)の指示によりP7職員から原告の担当を引き継いだ被告職員のP4課長補佐(以下「P4職員」という。)及びP5職員が原告に応対した。原告の担当を替えたのは,別居と失踪宣告という複雑な事案であったために習熟度の高い複数の職員に担当させることが主な理由であったが,後記ソのような原告の長男の問題への対応をも配慮したものであった。原告は,P4職員及びP5職員 居と失踪宣告という複雑な事案であったために習熟度の高い複数の職員に担当させることが主な理由であったが,後記ソのような原告の長男の問題への対応をも配慮したものであった。原告は,P4職員及びP5職員に対し,上記事務連絡文書の中で生計維持関係について尋ねていない理由を問い質し,遺族共済年金受給資格の認定基準を明らかにするよう求めたが,同職員らからは認定基準に関する明確な回答が得られなかった。 (原告がこの時点で生計維持関係の証明が必要という程度の知識があったことは,後記カの原告の提出書類(乙1の1)の中に「P17とP1の生計維持関係の証明」と題する主張があったことからしても明らかである。 そして,前記エの事務連絡文書で生計維持関係の証明が要求されていないことを不審に思った原告が,被告の事務所を訪れて,その点を質していく中で,被告職員に対して審査基準の開示を求めたという趣旨の原告の主張及び供述は,事の成り行きとして自然というべきであるから,少なくとも上記認定事実の限度ではこれを採用することができる。証人P5も,「別居の理由書にどう書けば,遺族として認められるのかということを聞かれました。」と証言して,その限度では原告が審査基準に関わる質問をした- 73 -ことを認めており,同証人の証言で上記認定事実に反する部分は採用することができない。)カ原告は,前記エの事務連絡文書で提出を求められていた書類(生計維持ないし生計同一関係の主張を含む。)及び関係資料(乙1の1ないし24)を用意し,平成15年7月17日,被告の事務所を訪れ,応対したP4職員及びP5職員に対しこれらの書類等を提出した。その際,P4職員から,同年7月7日の面談の際に提出を求めていた改製前の戸籍(P1の戸籍は平成8年5月3日に改製されている。甲1)が提出されていないとの指摘を 5職員に対しこれらの書類等を提出した。その際,P4職員から,同年7月7日の面談の際に提出を求めていた改製前の戸籍(P1の戸籍は平成8年5月3日に改製されている。甲1)が提出されていないとの指摘を受けたため,原告は,即日,改製前の戸籍をとって被告宛てに郵送した(甲36の2)。 キ原告は,前記カの書類等を提出した翌日から,遺族共済年金受給資格の認定基準を知るために各所に対して問い合わせを行い,平成15年7月25日には被告の監督官庁である文部科学省のP18担当官にも尋ねてみたが,同担当官は,被告のP4職員に説明を求めるようにと言うのみで,同担当官からもP4職員に話をしておくことは約束したものの,認定基準を示すことはなかった。そこで,同年7月28日,原告が足立社会保険事務所の相談コーナーにおいて,厚生年金保険の場合の遺族年金受給資格の認定基準について尋ねたところ,担当者は,本件認定基準を含む法令等の該当箇所にマーカーで印をした資料と遺族給付裁定請求書(乙2の2)及び生計同一関係の申出書(乙2の3)を原告に手渡し,「あなたは異例の扱いを受けているようだ。すぐに上の人に事情を訴えなさい。」との助言をした。原告は,このことを電話でP18担当官に伝えるとともに,同担当官に対し被告にもこれを伝えるよう依頼した。同日,文部科学省から被告のP4職員に電話があり,被告の職員であるP19管理課長(以下「P19職員」という。)とP4職員が同省に赴いたところ,原告が被告の対応に不満を持っているので原告を呼んで説明してあげてほしいとの指示を受- 74 -けた。そこで,P4職員は,原告の話を聞くために,同日,原告に電話連絡をして,被告の事務所への来所を求めた。 ク平成15年7月29日,被告の事務所を訪れた原告に対し,P2職員,P4職員及び被告の職員であるP3 ,P4職員は,原告の話を聞くために,同日,原告に電話連絡をして,被告の事務所への来所を求めた。 ク平成15年7月29日,被告の事務所を訪れた原告に対し,P2職員,P4職員及び被告の職員であるP3課長補佐(以下「P3職員」という。)の3名が応対しようとしたところ,原告から1名での応対を求められたため,P2職員が原告と面談した。原告は,前日に足立社会保険事務所で入手した本件認定基準等の資料,遺族給付裁定請求書及び生計同一関係の申出書をP2職員に示し,同社会保険事務所の対応と比較して,これらの書類を渡さない被告職員の対応の悪さを非難した。P2職員は,被告においても厚生年金保険の場合と同じ認定基準(本件認定基準)に従って認定事務を行っていることを原告に口頭で伝えるとともに,別居状態にある場合や重婚的内縁関係にある場合には,事前に遺族の要件を満たしているかどうかについて認定するため個別のケースごとに質問事項を定め事務連絡で事前調査をお願いしており,その結果,要件を満たしていると認められる場合に決定請求書を交付しているとの被告の遺族認定事務手順を説明した。また,その際,P2職員は,P1の支払未済の退職年金(約1800万円)のことに触れ,原告に対し,未支給年金は原告が遺族に認定されたら原告に全額渡し,認定されなかったら相続人に相続分に従って分割支給する旨を説明した。 ケ原告は,平成15年7月28日のP4職員からの電話連絡又は翌29日のP2職員との面談において,生計同一関係の申出をすることについての承諾を得たことから,生計同一関係の申出に係る文書及び関係資料(乙2の1ないし6)を用意し,同年8月5日,被告の事務所を訪れて,応対したP2職員及びP5職員に対し,これらの文書等を提出するとともに,持参した手紙・葉書の多数の束を提示した。さらに原告は 係資料(乙2の1ないし6)を用意し,同年8月5日,被告の事務所を訪れて,応対したP2職員及びP5職員に対し,これらの文書等を提出するとともに,持参した手紙・葉書の多数の束を提示した。さらに原告は,P2職員に対し,決定請求書をいつ渡すのかとの質問をし,P2職員は,遺族認定が終わっ- 75 -て遺族と認定された場合に決定請求書を送付すると答えた。 コ原告は,その後も被告の原告に対する遺族認定手続への不審の念を払拭することができず,なお調べているうちに,手続法という法律の存在を知り,平成15年8月25日,まずP2職員に電話をして,追加資料の有無の確認と審査の進行状況及び決定請求書の交付時期の見通しについての問い合わせを行い,P2職員から追加資料は今のところ考えていない旨,審査についてはなるべく急いで進める旨,遺族としての要件を満たしていることが認定されれば決定請求書を送付する旨の回答を得た上で,総務省行政管理局行政手続室に電話をして,同室のP20担当官に相談した。P20担当官は,原告に対し,「あなたがまだ申請書を出していないなら,どんなに証明を尽くしていようと,あなたはこの2か月,何もしなかったのと同じなのですよ。」と述べて,申請意思を示してから2か月も申請書を提出させないこと,審査基準についての情報を与えないこと,たとえ事前審査であってもそれを申請者に告げず申請書を提出させないこと等は手続法に照らし問題がある旨を説明し,被告に対しても,同年8月27日,行政手続室に赴いた被告のP19職員らに対し,被告の事前審査による事務処理方式の問題点を指摘した。 サ平成15年8月29日,被告の職員であるP21総務課長(以下「P21職員」という。)から原告に対し,希望があれば遺族共済年金の決定請求書類を送付する旨の電話があり,原告が決定請求書類の 摘した。 サ平成15年8月29日,被告の職員であるP21総務課長(以下「P21職員」という。)から原告に対し,希望があれば遺族共済年金の決定請求書類を送付する旨の電話があり,原告が決定請求書類の送付及び初めての請求者に与える情報の提供を求めたところ,同日付け事務連絡文書とともに遺族共済年金決定請求書(乙7)その他の書類が,翌30日に原告に郵送されてきた。 シさらに原告が,平成15年8月30日にP21職員に宛てて出した葉書(同年9月1日到達)(乙3)により,遺族共済年金の決定請求に係る情報提供の要請と請求書提出後の処分日程の見通しについての照会を行うと- 76 -ともに,同年9月9日には,遺族共済年金決定請求書(甲88)を作成した上で,P21職員に電話をし,上記照会等に対する回答の督促と決定請求書提出の申出をしたところ,P21職員からは,担当の審査第一課から追完してもらいたいものがあるとのことで連絡があるまで決定請求書の提出を待ってもらいたい旨,及び処分の見通しについては追って知らせる旨の回答があり,同年9月11日,原告のもとに,「遺族共済年金の決定請求について」と題する事務連絡文書(同年9月10日付けでP2職員が発送したもの)(乙8)が,本件認定基準の全文を記載した資料等とともに郵送されてきた。この事務連絡文書は,遺族共済年金決定請求書のほか,「生計維持関係を証明する書類で補てんしていただきたいもの」として,①行方不明になった平成7年当時において,今まで提出されたもの以外で,P1から受けた経済援助に係る申立て及びそれを証する書類,②別居状況を解消しようとする交渉の有無の申立てとそのことを証明する書類及び婚姻を継続するための意思の疎通をあらわす音信を証明する書類並びに定期的に訪問が行われていたことの第三者の証明,③市(区)町村 居状況を解消しようとする交渉の有無の申立てとそのことを証明する書類及び婚姻を継続するための意思の疎通をあらわす音信を証明する書類並びに定期的に訪問が行われていたことの第三者の証明,③市(区)町村長が発行する原告の平成7年当時の所得証明書と平成7年当時の健康保険の適用関係を確認できる書類,④所定の書式の「生計関係証明書」(民生委員等第三者の証明のあるもの)の提出を求めるものであるとともに,処分の時期の見通しについて,請求書及び追加資料等を受け付けた後,遺族認定における生計維持関係の有無を審査の上,更に資料の補てんを必要としない場合は,10日前後をもって通知する予定である旨を教示するものであった。 被告が上記のような「生計維持関係を証明する書類で補てんしていただきたいもの」の提出を求めたのは,その時点では被告の内部において原告の決定請求を棄却する旨の処分原案が既に固まっていたものの,原告に対し最終確認をしておくためであった。また,上記事務連絡文書には,原告に対する情報提供として,被告が遺族共済年金決定請求者に送付している- 77 -「遺族共済年金の決定請求手続について」と題する事務連絡の文書書式(甲38)が同封されており,同文書書式の末尾には「備考」として「当組合に必要書類が提出されてから,決定までに2ヶ月ほどかかる場合もあります。ご了承ください。」との記載がある。 (原告は,上記9月10日付けの事務連絡文書に添付された本件認定基準は別表3が脱落している不完全なものであったと主張するが,後記スの原告提出の追加資料(乙4の1)の中に,「その他生計維持関係については,15,7,17及び8,5付文書に述べた。『民生委員等の証明又は第3表に掲げる書類(自分で客観的資料を提出する)』とP2氏同封の『生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いにつ 計維持関係については,15,7,17及び8,5付文書に述べた。『民生委員等の証明又は第3表に掲げる書類(自分で客観的資料を提出する)』とP2氏同封の『生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて』38~39頁にあるので,これで足りると思う。」との記載があることからすると,原告に送付された上記事務連絡文書には本件認定基準に係る通知文書の全文(乙8の9枚目から12枚目まで)が「39頁」の別表3を含めて添付されていたことが認められるから,原告の上記主張を採用することはできない。)ス前記シの平成15年9月10日付けの事務連絡文書を受け取った原告は,同年9月11日,P3職員に電話をかけ,定期的な訪問と生計同一について今となっては不可能な第三者の証明を求めることの不当性について抗議するとともに,同年9月12日,被告の事務所においてP19職員と面談し,被告職員の対応についての不満を述べ,原告としては既に生計同一関係を証明するに必要な書類は提出済みであると考えている旨を説明した。 P19職員は,本件認定基準などの関係規定の写しをとって原告に交付し,また原告に対して,「この組合にはあなた方夫婦を形骸化した夫婦と思っている者はいませんよ。」と述べた。原告は,P19職員のこの発言を原告の決定請求を認容する趣旨と理解し,同年9月16日,追加資料(乙4の1ないし乙4の4の9)を添えて,遺族共済年金決定請求書を被告に提出した。 - 78 -セ被告は,平成15年9月26日付けで原告の決定請求を棄却する旨の本件処分を行ったが,本件処分の通知書(甲2)には,①本件認定基準により遺族共済年金の受給要件について審査した旨,②「止むを得ない事情」及び「その事情が消滅したときは,起居を共にし,消費生活上の家計を一つにすると認められるとき」については,P1自身が住 認定基準により遺族共済年金の受給要件について審査した旨,②「止むを得ない事情」及び「その事情が消滅したときは,起居を共にし,消費生活上の家計を一つにすると認められるとき」については,P1自身が住民票を異動した昭和56年7月から行方不明となった平成7年5月までの14年間,P1は足立区の自宅に一度も立ち寄ることもなく,双方に別居状態を解消する意思も見当たらないことから,別居状態は固定化していると考えられ,冷却期間とは認められず,消費生活上の家計はそれぞれ独立したものであると判断する旨,別居して14年が経過した行方不明当時においてもなお冷却期間としての別居の事情が消滅する時期を特定できない状態にあることから,「止むを得ない事情」に該当しないものと判断する旨,③「生活費,療養費等の経済的な援助が行われていること」については,P1から原告に送金のあった金額は行方不明になった前年に21万5400円,平成7年に9万7400円であったことが確認できる一方,当時の原告自身の収入は国民年金,私的年金を合わせると月額で5万8500円であるとされていること,医療保険の適用においてP1が行方不明となった平成7年5月当時は二男の被扶養者になっていること及びP1が被告に提出した扶養親族等申告書においても平成元年から行方不明となる平成7年まで原告を税法上の控除対象配偶者として申告していない事実から,P1が行方不明になった当時,原告は原告自身の収入及び二男の援助により生計を営んでいたものと判断する旨,原告が家賃を負担することなしにP1名義の家に住むことについては,婚姻関係の継続期間中における原告の寄与分の一部と考えられることから,家賃に換算するべきものではない旨,自宅及び山小屋等のP1名義の不動産の維持管理費等に係る費用の負担のための送金については,自己名義の 係の継続期間中における原告の寄与分の一部と考えられることから,家賃に換算するべきものではない旨,自宅及び山小屋等のP1名義の不動産の維持管理費等に係る費用の負担のための送金については,自己名義の財産を維持・管理するのに必要な範囲のものであ- 79 -り,別居していた14年間にP1が足立区の自宅に一度も立ち寄ることがなかったことから,原告の生計を維持するためのものではないと判断する旨,④「定期的に音信,訪問が行われていること」については,別居期間中,P1からの手紙及び葉書による音信は事実として認められるが,定期的な訪問については,P1が足立区の自宅に一度も立ち寄ることがなかったことから,認められないものである旨,⑤以上のことから,P1が行方不明となった当時,原告とP1は,婚姻関係の継続は認められるものの生計同一の状況にあったとは認められず,原告はP1によって生計を維持していたものと認められないことから,共済法2条1項3号に規定する遺族には該当しないものと認定し,原告からの遺族共済年金の決定請求を棄却するものである旨の記載がある。 ソ原告の長男は,平成12年に被告の事務所を訪れ,P1の支払未済の退職年金の支給を求めたが,その際,被告の職員に対し,首を絞める暴行を加えた。また,原告の長男は,平成15年にも同年7月3日以降被告の事務所を6度にわたって訪れ,P1の支払未済の退職年金の支給を求めたが,7月3日には応対したP4職員及びP3職員に対し「年金をくれないと殺す。」と言って脅迫し,被告はそのことで神田警察署に相談した。被告は,原告(平成15年9月19日請求。甲54,甲59)及び長男から支払未済の給付請求を受けていたところ,本件処分後の平成15年10月1日付けで二男及び長女に対しても「支払未済の給付請求書」の提出を求め(甲93,甲9 年9月19日請求。甲54,甲59)及び長男から支払未済の給付請求を受けていたところ,本件処分後の平成15年10月1日付けで二男及び長女に対しても「支払未済の給付請求書」の提出を求め(甲93,甲94),P1の支払未済の退職年金を各相続人に分割支給した。 タ被告の理事長が被告の各支部長宛てに平成6年10月31日付けで発出した「行政手続法の施行に伴う長期給付に係る標準処理期間の設定について」と題する通知文書(乙9)には,遺族共済年金に係る標準処理期間(本部直接請求)について,決定までの期間を2か月と設定した旨の記載があり,また,審査基準の設定について,現行諸規定により整理されてい- 80 -るため特段の措置を講ずる必要はない旨の記載がある。 (2)本件の検討前記1のとおり,本件処分は,手続的瑕疵の有無について判断するまでもなく,違法な処分として取り消されるべきものであるから,原告主張の手続法違反の点は,専らこれにより被告職員の原告に対する不法行為が成立するかどうかという観点から検討すれば足りることになる。そして,このような観点から検討した結果は次のとおりであり,被告職員の行為には手続法違反の点が認められるものの,これにより原告に損害が発生したとまでは認めることができず,原告の損害賠償請求は理由がないものというべきである。 ア手続法5条違反の主張について(ア)手続法5条3項が審査基準の公表を行政庁に義務付けた趣旨は,審査基準を申請者の知り得る状態に置くことにより,許認可等の処分結果について一定の予見可能性を与えるとともに,行政庁の判断過程の透明性の向上を図ることにあるものと解され,このような趣旨からすると,審査基準を公にしておく具体的方法としては,申請希望者の求めに応じて提示するという方法をとることも許されるものというべきであるが 透明性の向上を図ることにあるものと解され,このような趣旨からすると,審査基準を公にしておく具体的方法としては,申請希望者の求めに応じて提示するという方法をとることも許されるものというべきであるが,本件においては,前記認定のとおり,平成15年7月7日の原告と被告職員との面談において,遺族共済年金の決定請求をしようとしていた原告が受給資格の認定基準を明らかにするよう求めたにもかかわらず,被告職員は認定基準に関する明確な回答をしなかったというのであるから,このような被告職員の行為は,手続法5条3項の規定に違反し,職務上の義務を怠ったものといわざるを得ない。 (イ)なお,原告は,被告が遺族の認定に関する被告としての審査基準を作成していないとも主張するが,手続法5条1項の規定に基づく審査基準の設定は,上級行政庁等の他の行政庁に係る運用通達等をそのまま借用し自らの基準として用いる方法によることも許されるものと解される- 81 -ところ,共済法上の遺族に係る生計を維持することの認定に関しては,共済法を所管する総務省の運用方針において,厚生年金における生計維持関係等の認定基準,すなわち本件認定基準によるべきものとされており,これを受けて被告においても,前記のとおり,各支部長宛ての理事長通知文書の中で,審査基準の設定については,現行諸規定により整理されているため特段の措置を講ずる必要はないものとして,本件認定基準をもって自らの審査基準とする方針を明確にしているものと解されるのであるから,被告が被告としての審査基準を作成していないとの原告の主張は失当であるというほかない(原告は,担当職員が本件認定基準等を含む現行諸規定を恣意的に取捨選択して適用し運用していたとも主張するが,それは審査基準の解釈運用の当否の問題であって,審査基準そのものの設定の あるというほかない(原告は,担当職員が本件認定基準等を含む現行諸規定を恣意的に取捨選択して適用し運用していたとも主張するが,それは審査基準の解釈運用の当否の問題であって,審査基準そのものの設定の問題とは次元を異にするものである。)。 (ウ)また,原告は,被告の事前審査方式が手続法5条に違反しているとも主張しており,これは,事前審査方式についての手続上の運用基準の設定・公表の有無を問題とする趣旨の主張とも解されるが,これは,実体上の判断基準である審査基準の設定・公表について定めた手続法5条の問題ではなく,後記ウの手続法7条の問題として取り上げるべきものである。 イ手続法6条違反の主張について手続法6条が標準処理期間を設定した場合にその公表を行政庁に義務付けた趣旨も,手続法5条3項と同様に,予測可能性の付与と申請の処理の透明性の向上を図ることにあるものと解され,標準処理期間を公にしておく具体的方法としても,同様に,申請希望者の求めに応じて提示するという方法をとることが許されるものというべきところ,本件においては,前記認定のとおり,原告が原告に対する具体的な処分の時期の見通しに関し,平成15年8月5日及び同年8月25日に決定請求書の交付時期の見通し,- 82 -すなわち事前審査(その内容は後記ウのとおり)の終了時期の見通しを被告職員に問い合わせた事実,及び同年8月30日付けの葉書をもって決定請求に対する決定処分の時期の見通しを被告職員に照会した事実は認められるものの,一般的な標準処理期間の開示を求めたことを認めるに足りる証拠はなく,被告職員の行為に標準処理期間の公表義務違反があったとまでは認められない(もっとも,後記オのとおり,手続法9条の情報提供義務との関係では不適切な行為があったと認められる。)。 ウ手続法7条違反の主張につ 員の行為に標準処理期間の公表義務違反があったとまでは認められない(もっとも,後記オのとおり,手続法9条の情報提供義務との関係では不適切な行為があったと認められる。)。 ウ手続法7条違反の主張について手続法7条は,各種の申請の処理について透明性の向上と迅速・公正な対応を図ることが国民の行政に対する信頼を確保する上で重要であることにかんがみ,行政庁について,申請が到達したときに遅滞なく当該申請の審査を開始する義務が生ずる旨を端的に規定したものと解される。このような同条の趣旨にかんがみると,申請をしようとする者が申請の意思を明らかにし,申請書の提出を希望している場合において,行政庁が申請書の提出を拒否することは,同条の趣旨に実質的に違反する違法なものというべきである。 被告において,別居状態にある場合や重婚的内縁関係にある場合に,遺族の認定手続を事実上先行させ,遺族と認定された場合に決定請求書を申請者に交付してその提出を求めるという事前審査方式を採っていることは前記認定のとおりである。そして,被告の主張によると,このような事前審査方式を採る理由は,申請をしようとする者に結果的に無駄となることもある煩雑な手続上の負担をできるだけ避けるためであり,申請をしようとする者が事前審査の終了前であってもとにかく請求しておきたいというのであれば決定請求書の交付を拒むものではないというのであるから,そのようなものである限り,被告の事前審査方式がおよそ合理性のない制度であるとまでいうことは困難である。しかしながら,このような取扱いは,- 83 -あくまでも申請希望者が任意に応じる限りにおいて許容されるものというべきであるから,被告としては,申請希望者に対し,事前審査方式に服するのか,それともこれに服さずに決定請求書を直ちに提出するのかの選択の機会を 請希望者が任意に応じる限りにおいて許容されるものというべきであるから,被告としては,申請希望者に対し,事前審査方式に服するのか,それともこれに服さずに決定請求書を直ちに提出するのかの選択の機会を与えるために,被告が事前審査方式を行う理由及びこれに服さずに直ちに決定請求書を提出することもできる旨,さらには事前審査方式を行う場合とそうでない場合とでそれぞれの申請の処理に要する期間がどの程度になるのかなどを,事前審査に入る前に十分に説明しておくべきであり,そのような説明を受けた申請希望者が事前審査方式に服することに同意した場合に限って,同方式による手続を進めることが相当であり,それが手続法7条の趣旨にかなった運用であるというべきである。本件の場合には,証拠上,このような事前の説明,殊に,事前審査方式に服することなく直ちに決定請求書を提出することもできる旨の説明,及びそれぞれの方式をとった場合の処分時期の見通しについての説明が原告に対し行われたものとは認められないばかりか,平成15年7月中には,原告の意向が早期に決定請求書を提出し,被告の判断を求めることにあることは容易に認識し得る状況にあったにもかかわらず,同年8月下旬に総務省の担当官から指摘を受けるまで事前審査方式に拘泥し続けたものといわざるを得ないのであるから,この点において,被告職員の行為は,手続法7条の趣旨に違反し,職務上の義務を怠ったものといわざるを得ない。 エ手続法8条違反の主張について手続法8条が処分理由の提示を行政庁に義務付けた趣旨は,行政庁の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに,処分理由を申請者に知らせることによって不服申立ての便宜を図ることにあると解されるところ,前記認定のとおり,本件処分の通知書には,本件認定基準に沿って判断した旨の理由が判断 恣意を抑制するとともに,処分理由を申請者に知らせることによって不服申立ての便宜を図ることにあると解されるところ,前記認定のとおり,本件処分の通知書には,本件認定基準に沿って判断した旨の理由が判断に当たって考慮した事実の摘示とともに詳細に記載されており(この点で本件認定基準に則った棄却理由を記載して- 84 -いないとする原告の主張は失当である。),上記の理由提示の目的は達せられているものということができるから,被告職員に手続法8条違反の行為があったということはできない。 オ手続法9条違反の主張について(ア)手続法9条1項が申請者の求めに応じ申請に係る審査の進行状況や処分時期の見通しを示すべき努力義務を行政庁に課した趣旨は,同法6条に基づく標準処理期間の開示によって申請の処理に要する時間についての一般的な目安は示されるものの,実際に申請を行った者にとっては自己に対する具体的な処分の時期にこそ関心があるものであることから,同法6条を補完するものとして,処分時期の見通し等を知りたいという申請者の要求に対し行政庁は答えるよう努めるべきことを明らかにしたものであり,その背景には,行政は国民に対して基本的に懇切な態度をもって臨むべきであるとの考え方が存在するものと解される。このようなことからすると,本件においても,被告職員は,原告からの平成15年8月30日付けの葉書による処分日程の見通しの照会に対してのみならず,同年8月5日及び同月25日における決定請求書の交付時期の見通し,すなわち事前審査の終了時期の見通しに関する問い合わせに対しても,なるべく急いで審査を進めるとのみ答えるのではなく,できる限り具体的な時期の見通しを示すよう努めるべきであったというべきである。特に同年8月25日の時点においては,原告が最初に決定請求の申出をした同年 べく急いで審査を進めるとのみ答えるのではなく,できる限り具体的な時期の見通しを示すよう努めるべきであったというべきである。特に同年8月25日の時点においては,原告が最初に決定請求の申出をした同年6月30日から起算して既に標準処理期間の2か月に近い日にちが経過していたのであるから,標準処理期間と同程度の期間での処理が可能なのかどうか(これはそもそも事前審査に入る前に説明しておくべきものであるが,原告に対してこの点の説明がなかったことは前記ウに指摘したとおりである。),更に日にちを要するのであればその理由について,原告に対し十分な説明を行うべきであったものというべ- 85 -きところ,このような説明が原告に対し行われたものとは認められない。 したがって,これらの点において,被告職員の行為は,手続法9条1項の趣旨にそぐわない不適切なものであったといわざるを得ない。 (イ)手続法9条違反に関する原告のその余の主張は,要するに,十分な説明なく事前審査方式による手続を進めたことと,審査基準の開示の要求に対して速やかにこれを開示しなかったことを問題としているものと解されるから,実質的には手続法7条違反の主張(前記ウ)及び同法5条違反の主張(前記ア)と同じ主張と考えられる。これらの主張に対する検討の結果は既に説示したとおりである。 カその他の主張について(ア)以上のほか,原告は,被告職員の原告に対する異例の対応は,原告の長男が被告の職員に対し行った暴行・脅迫行為に影響され,原告の遺族該当性を否定し,長男に支払未済年金の相続分を受給させようとの意図に出たものである旨の主張をする。しかしながら,前記認定のとおり,被告における原告の担当が原告の長男の問題への対応をも配慮して交替されていること,遺族共済年金の受給資格に係る遺族認定の手続の中で被告 出たものである旨の主張をする。しかしながら,前記認定のとおり,被告における原告の担当が原告の長男の問題への対応をも配慮して交替されていること,遺族共済年金の受給資格に係る遺族認定の手続の中で被告職員が支払未済年金の受給権者及び支給の方法についても言及していること,支払未済年金について原告と長男から給付請求がされていることを前提とする相続人への分割支給の手続が本件処分の直後に進められていることなど,原告に対する遺族認定の手続と原告の長男に対する支払未済年金の支給手続との関連性をうかがわせる事情も認められないではないものの,明らかに原告主張のような意図が被告職員にあったとまで認めるに足りる証拠はない。原告は,以上のような事情のほか,平成15年6月30日に被告職員が「あなたは遺族年金をもらえないとして,未済年金をP6さんにあげる気はありますか。」と述べたこと,同年7月7日に被告職員が「(書類提出の)期限を切るのは,申請者が複- 86 -数の場合,一方に長く待たせるのは悪いからです。」と述べたこと,被告職員が遺族認定に必要のない改製前の戸籍の提出を求めたのは相続人の範囲確定のためであり支払未済年金の支給事務の必要からであったと考えられることなどを指摘するが,6月30日や7月7日の被告職員の発言については,そのような事実があったとする原告の陳述書及び供述があるのみで,その裏付けとなり,かつこれらの事実を否定する被告職員の陳述書及び証言を排斥できるだけの証拠はなく,また改製後の戸籍(甲1)には,例えば二男についての記載がなく,遺族の要件に係る生計維持関係の認定のためには家族構成の確認が必要であることなどを考慮すると,改製前の戸籍の提出が必ずしも遺族認定に必要のないものとはいえない。 (イ)また,原告は,被告職員が原告に対し,威圧したり, 維持関係の認定のためには家族構成の確認が必要であることなどを考慮すると,改製前の戸籍の提出が必ずしも遺族認定に必要のないものとはいえない。 (イ)また,原告は,被告職員が原告に対し,威圧したり,愚弄するような態度をとったとも主張し,これに沿う陳述書も提出するが,これを裏付けるに足りる証拠はない。被告職員の陳述書及び証言はこれらの事実を否定しており,原告の主張・供述のみを採用することはできない。 キ不法行為の成否について以上のように,原告の手続法違反の主張に関しては,被告職員に手続法5条3項の規定に違反する行為,同法7条の趣旨に違反する行為及び同法9条1項の趣旨にそぐわない不適切な行為があったことは認めざるを得ない。しかしながら,原告は,このような被告職員の違法行為等にもかかわらず,結果的には本件認定基準に沿って被告に対する主張立証を一応尽くすことができたものと認められ,また,最初の決定請求の申出から本件処分が行われるまでに要した審査の期間も,標準処理期間である2か月と比べればこれを超過しているものの,それでも1か月程度の超過で済んでおり,さらに,その結果としての本件処分は,原告を遺族と認定しなかった誤った内容のものではあったが,前記1のとおり,それも本判決によって- 87 -取り消されるものである。したがって,本件処分の取消しによってもなお損害賠償によって慰謝されるべき精神的苦痛が原告に存するものとは認め難く,原告に対する不法行為の成立をいう原告の主張は理由がないものというべきである。 第4結論以上の次第で,原告の請求のうち,本件処分の取消しを求める請求は理由があるから認容し,その余の請求(損害賠償請求)は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条本文を適用して,主 件処分の取消しを求める請求は理由があるから認容し,その余の請求(損害賠償請求)は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条本文を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部鶴岡稔彦裁判長裁判官古田孝夫裁判官潮海二郎裁判官

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