【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する 理 由 弁護人石井一郎の上告趣意第一点は「原判決ハ被告ニ対シ懲役三年ノ刑ヲ言渡シ テ居ル然シ記録ニ依レバ被告ハA其他ノ者ト同行シテ
主文 本件上告を棄却する 理由 弁護人石井一郎の上告趣意第一点は「原判決ハ被告ニ対シ懲役三年ノ刑ヲ言渡シテ居ル然シ記録ニ依レバ被告ハA其他ノ者ト同行シテ被害者B方ニ侵入シ同人所有ノ現金約三千円ヲ受取ツタト言フニ止マリ被告自身ハ暴行脅迫ヲ行ツテ居ラナイ、又彼等ト行動ヲ共ニスルニ至ツタ動機モAニ呑マサレタ酒ニ酔ツテ冗談半分ニツイテ出掛ケタモノデアリ犯罪ニ於ケル行為モ地位モ軽イモノデ従ツテ其ノ刑事責任モ亦軽イト言ハネバナラヌ又其ノ被害ヲ完全ニ弁償シテ居ルコトハ被害者Bノ嘆願書ト題スル書面ニ依ツテ(該書面ハ記録七七丁ノ間ニ挾マレテ居ル)明ラカデアル、被告人ノ人柄其他ニ付イテハF小学校長Cノ嘆願書並ニDノ嘆願書ニ依ツテモ明ラカナ如ク何レモ被告が良好ナ人物デアレコトヲ証明シテ居ル、又被告ガ完全ニ悔悟シテ居り保釈後直チニ第兵電丸乗組員トシテ真面目ニ働イテ居ルコトモEニヨル身分証明書ト題スル書面ニ依ツテ明ラカデアル加ヘテ被告ノ年令カ二十二才デアツテ前途有為ノ青年デアルコト並ニ家庭ノ状況モ申シ分ノナイモノデアルコトモ明カデアル此等ノ点ヲ綜合シテ考ヘレバ被告ハ所謂機会的犯罪人ト言ウニ止マリコレラ刑務所へ送ツテ社会ト隔離シナクテハナラヌト言ウ必要ハ毫モ見ラレナイ、然ラバ本件ニ於テハ正ニ刑ノ執行ヲ猶予シテ被告ノ更生ヲ図ツテヤルノガ当然デアル、然ルニ原判決ニ於テ之ヲ三年ノ実刑ニ処シタコトハソレガ法定刑ノ範囲内デアルトハイへ前述シタ条件ノ下ニ於テハ通常ノ人間的感情ヲ以テシテハ甚ダ残虐ナ刑罰ト言ウコトが出来此ノ点憲法第三十六条ニ違反スルモノト言ウベク原判決ハ破棄サルベキモノデアル」と云うにある。 しかし所論は原審が被告人に対して刑の執行猶予の言渡をするのが当然であるに拘はらず実刑を科したのは残虐な刑罰であつて憲 十六条ニ違反スルモノト言ウベク原判決ハ破棄サルベキモノデアル」と云うにある。 しかし所論は原審が被告人に対して刑の執行猶予の言渡をするのが当然であるに拘はらず実刑を科したのは残虐な刑罰であつて憲法第三十六条に違反するものであ- 1 -ると主張するのであるが、実刑を科することが被告人の側からみて過重の刑であるとしても、これを以つて憲法第三十六条にいわゆる残虐な刑罰に当たらないことは既に当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第三二三号昭和二三年六月二三日大法廷判決)としておるのであるから所論は結局事実審である原審の職権に属する刑の量定を論難するに帰着し上告適法の理由とならないのである。 同第二点は「記録ヲ調査スルト被害者Bノ嘆願書ト題スル書面ガ記録七七丁ノ紙ニ挾マレテ居ル本書面ハ昭和二十二年四月十四日付ノ受付印ハアルガ、記録ニ編綴サレテ居ラス又丁数モ記入シテナイ然シ乍ラ本書面ハ本件ニ於ケル被害ノ弁償ヲ証明スルモノデ其ノ性質上、刑ノ最定ニ重大ナ影響ヲ及ボスモノナルコト明瞭ナ重要ナ証拠書類デアル刑ノ量定ハ裁判所ノ自由デアルトハ言へ被害弁償ノ有無ハ之ヲ無視スルコトハ許サレナイト信ズル、然ルニ被害ヲ弁済シタ証拠書類が正式ニ記録ニ編綴サレテ居ナイト言フコトハ此ノ書類ヲ裁判所が判断ノ資料ニ供シタト言ウコトニナラナイ、原判決ハ犯情ニ憫諒スベキ点ガアルカラ酌量減軽シテト言ツテ居ルガ此ノ重要ナ書類ヲ看過シテ居テハ果シテ酌量シタカ何ウカ不明ト言ウベキデアル。即此ノ点原判決ハ審理不尽ト言ウベキデ破棄サルベキデアル」といふのである。 被害者Bの嘆願書と題する書面が記録七七丁の紙に挾まれ昭和二十二年四月十四日付の受付印はあるが記録に編綴されてもおらず、又丁数も記入してないことは所論のとおりであり右嘆願書は第一審裁判所宛のものである、そして第一審の第二回公判は昭 七七丁の紙に挾まれ昭和二十二年四月十四日付の受付印はあるが記録に編綴されてもおらず、又丁数も記入してないことは所論のとおりであり右嘆願書は第一審裁判所宛のものである、そして第一審の第二回公判は昭和二十二年四月十一日で判決言渡は同月十八日であるから右書面は第一審の弁論終結後判決言渡前に第一審裁判所に差し出されたものと認められる。しかし記録を調査してみても右書面が訴訟関係人から原審の公判期日前に証拠書類として原審に提出された事迹を認めることはできないし、又原審公判に証拠書類として提出されたことも全然認められないのである。それであるから原審が右書面を証拠書類として取調べなかつたことは当然であつて何等審理不尽の違法はない。しかも原- 2 -審の最終弁論において弁護人から被害の弁償をしたことを主張しておるのであるから被害弁償の事実が量刑上考慮されていることも当然といえるのであるから、論旨は理由なきものである。 よつて本件上告は理由がないから刑事訴訟法第四百四十六条により主文の如く判決する。 この判決は裁判官全員一致の意見によるのである。 検察官福尾彌太郎関与昭和二三年九月二五日最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官塚崎直義裁判官霜山精一裁判官栗山茂裁判官小谷勝重裁判官藤田八郎- 3 -
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