本件は、控訴人組合が控訴人会社に対し不当労働行為を理由に救済申立てを行い、中央労働委員会が一部認めた命令の取消しを求めた事案である。主要な争点は、控訴人会社が組合員に対して脱退を強要したこと、雇用契約の更新をしなかったこと、団体交渉の申入れを拒絶したことが不当労働行為に該当するかどうかであった。裁判所は、控訴人会社の主張を退け、原判決の判断を支持し、控訴人らの請求は理由がないとした。判決は、控訴人らの各控訴を棄却し、控訴費用は各控訴人の負担とすることを決定した。
主文 1 本件各控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は各控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨(控訴人会社) 1 原判決中控訴人会社敗訴部分を取り消す。 2 中央労働委員会が平成18年(不再)第9号事件について平成19年5月9日にした命令の主文Ⅰ項を取り消す。 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 (控訴人組合) 1 原判決中控訴人組合敗訴部分を取り消す。 2 中央労働委員会が平成18年(不再)第9号事件について平成19年5月9日にした命令の主文Ⅱ項を取り消す。 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要 1 控訴人組合が,(1)控訴人会社の人事部長が控訴人組合の組合員に対して脱退を強要したこと,(2)控訴人会社が上記組合員について,雇用契約を更新しなかったこと,(3)控訴人会社が団体交渉の申入れを拒絶したことが不当労働行為に当たるとして,三重県労働委員会に救済申立てをし,同申立てが棄却されたので,さらに,中央労働委員会に再審査の申立てをしたところ,同委員会は,上記(1)(3)について不当労働行為であると認め,当該部分に係る救済命令を発し,上記(2)については不当労働行為に当たらないとして,当該部分に係る再審査申立てを棄却した。 本件は,控訴人会社が,中央労働委員会の上記命令のうち,救済命令を発した部分の取消しを求め(原審第390号事件),控訴人組合が,上記命令のう ち,再審査申立てを棄却した部分の取消しを求めた(原審第566号事件)ものである。 2 原判決は,控訴人らの各請求を棄却したので,控訴人らが,それぞれの敗訴部分を不服として控訴をした。 3 前提となる事実,争点及び争点に関する当事者の主 (原審第566号事件)ものである。 2 原判決は,控訴人らの各請求を棄却したので,控訴人らが,それぞれの敗訴部分を不服として控訴をした。 3 前提となる事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の1から3に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決12頁21行目の「日曜部」を「日曜日」に改める。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人らの各請求はいずれも理由がないと判断するが,その理由は,次項以下に控訴理由に対する説示を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決25頁24行目の「乙A2」を「乙A」に,同頁26行目の「同月24日付け」を「同年2月24日付け」に,同26頁17行目の「同月15日」を「同年3月15日」にそれぞれ改める。 2 控訴人会社は,控訴理由において,(1)P1には控訴人会社での雇用継続の意思がなく,控訴人組合が,P1の雇用契約終了後も控訴人会社に対して団体交渉を求め,救済命令を申し立てるのは,控訴人会社に金銭を支払わせることを目的とするものである,(2)控訴人会社人事部長P2(以下「P2部長」という。)が平成15年6月17日にP1と面談した理由は,団体交渉の申入れがあったことから,P1がどのようなことで悩んでいるかなどの事実関係を聴取しようとしたものであって,団体交渉の申入れがあったからといって,会社担当者が組合員と接触することが許されないことはない,(3)P1の陳述書等の記述内容は虚偽であって信用性がなく,P2部長の供述は信用できるなど主張して,原判決が,P2部長の上記面談時におけるP1に対する言動を支配介入であると認定判断した点を非難する。 書等の記述内容は虚偽であって信用性がなく,P2部長の供述は信用できるなど主張して,原判決が,P2部長の上記面談時におけるP1に対する言動を支配介入であると認定判断した点を非難する。 しかし,P2部長の平成15年6月17日のP1との面談及び翌18日の電話におけるP1に対する言動が不当労働行為(支配介入)に当たるとした原判決の認定判断は,原判決挙示に係る関係証拠に照らして正当と是認できる。付言すれば,控訴人組合が救済命令を申し立てた動機が金銭の支払を得ることであるとの主張は,およそこれを認めるに足りる証拠がないばかりでなく,本件訴訟において関連性のない事実主張である。P2部長がP1との面談を求めた動機に同人の悩みを聴くということがあったとしても,控訴人組合からの通告書を示して団体交渉を求められた事項の話題を向けるなど,主たる動機がP1に対する説得活動であったと認めるに足りる事情があり,面談翌日に作成されて控訴人組合に送信された報告書(乙A16,17)等を裏付けとして,P1の陳述書の記載及び労働委員会における供述を採用し,P2部長の陳述書の記載及び労働委員会における供述を採用しなかった原判決の判断は正当である。 したがって,控訴人会社の上記主張は採用できない。 3 控訴人会社は,控訴理由において,これまでの団体交渉の経過,その後のP1の行動,P1を原告とし,控訴人会社を被告とする地位確認・損害賠償請求事件が係属していること等の事情に照らすと,団体交渉による協議を尽くすことによって解決できる問題でないから,団体交渉に応諾することを命ずる救済命令は,救済の利益がない旨主張する。 本件命令が,控訴人会社に応諾を命じた団体交渉の交渉事項は,①P1の日曜休日の取扱いの変更の経緯・理由及び同人の契約更新問題の解決方法等 ことを命ずる救済命令は,救済の利益がない旨主張する。 本件命令が,控訴人会社に応諾を命じた団体交渉の交渉事項は,①P1の日曜休日の取扱いの変更の経緯・理由及び同人の契約更新問題の解決方法等,②P1に対するセクシュアルハラスメント行為の事実関係,その責任の所在及び今後の防止策等,③夕方の休憩がとれなかった日の時間外勤務に対する賃金の支払というものである。P1の控訴人会社に対する雇用契約上の地位の確認,セクシュアルハラスメント行為を理由とする損害賠償請求訴訟が係属しているとしても,訴訟以外における交渉による紛争の解決の道が閉ざされる理由はなく,訴訟の係属を理由として団体交渉を拒絶することはできず,救済の利益 がないとすることはできない。また,控訴人会社が指摘するその他の事情をしん酌しても,なお,団体交渉による解決を図ることが無意味である状況にあるとは認められない。 したがって,控訴人会社の上記主張は採用できない。 4 控訴人組合は,控訴理由において,(1)P1と控訴人会社との雇用関係が期間の定めのない雇用関係又はそれに等しいもので,特段の意思表示がなくても更新する契約関係にあった,(2)控訴人会社による雇用打切りは,控訴人組合に対する嫌悪と排除の動機に基づいて行われたものである,(3)P1について土曜日及び日曜日の出勤を絶対的に義務づける根拠はなく,控訴人会社による雇用打切りは信義に反し,権限濫用であるなどと主張し,控訴人会社によるP1の雇用打切りを不当労働行為(不利益取扱い)と認めなかった原判決を非難する。 しかし,この点に関する原判決の認定判断は,原判決挙示に係る関係証拠に照らして正当と是認することができる。P1と控訴人会社との雇用関係は,乙B1のパート・アルバイト勤務条件基準(同補足①を含む。),同 かし,この点に関する原判決の認定判断は,原判決挙示に係る関係証拠に照らして正当と是認することができる。P1と控訴人会社との雇用関係は,乙B1のパート・アルバイト勤務条件基準(同補足①を含む。),同2の雇用契約更新と題する書面によれば,6か月の期間を定めたものと認めるのが相当であり,これまで当事者間の合意によって8回にわたり更新されてきた経緯に照らせば,P1にとっては,契約の更新に対する期待が保護に値する状況に至っていると認められ,使用者において,正当な理由がなく契約の更新をしないことは許されないといえる。しかし,控訴人会社が,P1に対し,更新契約の締結の打診をし,Aパート,Bパート,アルバイトの3種類の雇用契約書,誓約書,勤務条件基準書を送付したにもかかわらず,P1においては,従来の条件で働き続けること及び詳しい条件は組合と協議し決定してもらいたい旨回答し,控訴人組合も,P1の雇用関係は期間の定めのない雇用契約と変わらないものであるとして,雇用契約書にサインをしないことを理由に契約解除することは違法であるという主張をするばかりで,具体的な協議に入らなかった等の 経緯に照らせば,控訴人会社が,雇用期間の満了時までに,P1との間で勤務条件を決定するための必要な更新手続が存しなかったことのゆえに本件雇止めに行ったことはやむを得ないものであり,信義則違反や権限濫用に当たるものということはできない。そして,P1について,P3店長が,一時,日曜日の出勤について配慮したシフト表を作成していた経緯があるとしても,他に特段の事情も認められない本件においては,土曜日及び日曜日の出勤が原則義務づけられているAパートとして更新を続けていたP1が日曜日の出勤について特別の取扱いを受けることが雇用契約の内容となったとは認めることはできない。 し ては,土曜日及び日曜日の出勤が原則義務づけられているAパートとして更新を続けていたP1が日曜日の出勤について特別の取扱いを受けることが雇用契約の内容となったとは認めることはできない。 したがって,本件雇止めが不当労働行為に当たらないとした原判決の判断に誤りはなく,控訴人組合の上記主張は採用することができない。 5 以上の次第で,控訴人らの各請求をいずれも棄却した原判決は相当であり,本件各控訴は理由がないからこれをそれぞれ棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第4民事部 裁判長裁判官稲田龍樹 裁判官浅香紀久雄 裁判官内堀宏達
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