本件は、被告の従業員であった原告が職務発明として尿中の微量蛋白の測定に関する発明を行い、特許権を被告に譲渡したことに基づき、特許法35条に基づく相当の対価の支払いを求めた事案である。主要な争点は、原告が本件各発明の発明者であるか、被告が受けるべき利益の額、被告の貢献度、相当対価額であった。裁判所は、原告が発明者であると認め、被告に対し150万4000円の支払いを命じた。その他の請求は棄却され、訴訟費用は被告と原告で分担することとなった。判決は、原告の発明者性を認めた上で、被告の支払義務を明確にしたものである。
- 1 -平成24年3月29日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成22年(ワ)第2535号職務発明補償金請求事件口頭弁論終結日平成23年12月20日判決埼玉県川越市<以下略>原告 A同訴訟代理人弁護士西田研志同磯野清華同神保宏充同中澤佑一同友村智子同補佐人弁理士中村和男大阪市<以下略>被告和光純薬工業株式会社同訴訟代理人弁護士川田篤同訴訟復代理人弁護士萩原新 主文 1 被告は,原告に対し,150万4000円及びこれに対する平成22年2月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを23分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 - 2 - 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,3464万8000円及びこれに対する平成22年2月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告の従業員であった原告が,在職中に職務発明として,尿中の微量蛋白の測定等において亜硝酸イ に対する平成22年2月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告の従業員であった原告が,在職中に職務発明として,尿中の微量蛋白の測定等において亜硝酸イオンの影響による誤差の発生を回避するための発明をし,当該発明について特許を受ける権利を被告に譲渡したとして,被告に対し,特許法35条(平成16年法律第79号による改正前のもの。以下同じ。)3項所定の相当の対価の支払を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者ア被告は,試薬,化成品,臨床検査薬(体外診断用医薬品)の生産,売買及び輸出入等を業とする株式会社である(目的につき弁論の全趣旨)。 イ原告は,昭和46年3月に芝浦工業大学工業化学科を卒業し,同年4月に被告に入社して東京研究所に配属された後,一般化学分析の業務を経て,昭和47年4月から,臨床検査薬の開発に従事するようになった。原告は,昭和59年3月には大阪研究所東京分室の主任研究員に就任して自己の研究室を持つようになり,昭和62年2月1日には東京研究本部応用研究所に配置換えとなったが,平成15年4月に試薬化成品事業部試薬研究所に - 3 -配置換えとなるまで,臨床検査薬の開発に従事し続け,平成19年6月に被告を退職した(昭和59年,62年の異動につき甲24の1・2)。 ウ Bは,昭和39年3月に室蘭工業大学工業化学科を卒業し,同年4月に被告に入社して東京研究所等に配属された後,昭和62年2月1日に東京研究本部応用研究所の所長に就任するとともに,原告の上司にもなり,平成13年6月に被告を退職した(甲29,乙35)。 (2) 本件各発明とその意義等ア被告は,別紙特許権目録記載の特許権(以 研究本部応用研究所の所長に就任するとともに,原告の上司にもなり,平成13年6月に被告を退職した(甲29,乙35)。 (2) 本件各発明とその意義等ア被告は,別紙特許権目録記載の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許請求の範囲第1項等の発明を「本件発明1」等といい,併せて「本件各発明」という。また,本件各発明に係る特許を「本件特許」といい,本件特許に係る明細書(別紙特許公報参照)を「本件明細書」という。)を有していた。なお,本件特許権は,平成19年3月25日,存続期間の満了により消滅した。 別紙特許公報には,発明者として,原告及びB(以下「原告ら」という。)が記載されている。 イ腎臓疾患の診断に用いる尿中の蛋白や中枢神経系の炎症等の診断に用いる髄液中の蛋白を分析する方法には,その有無のみを判定する定性法とその濃度まで判定する定量法とがある。 定性法には,健康診断でのスクリーニング等のため,試験紙で陰性又は陽性等を判定する試験紙法がある。 これに対し,定量法には,スルホサリチル酸やトリクロロ酢酸を用いる比濁法やクマシーブリリアントブルーG-250を用いる比色法がある。 - 4 -しかし,比濁法や比色法には,蛋白種間差が大きいために検量線が湾曲したり,試験管やセル等の器具類が汚染されたりするなどという問題があった。これらの問題を解決するため,ピロガロールレッド・モリブデン錯体を用いる比色法が開発されたものの,この方法も,試料に含まれるキレート系物質により,試薬の着色度(試薬ブランク)が低下し,蛋白含量に負誤差が生じるという問題があった。この問題を解決するため,被告においては,キレート剤等を添加するという方法を発明し(以下,この発明を「本件先行発明」という。),昭和59年12月に特許出願をし 量に負誤差が生じるという問題があった。この問題を解決するため,被告においては,キレート剤等を添加するという方法を発明し(以下,この発明を「本件先行発明」という。),昭和59年12月に特許出願をした。しかし,この方法にも,試料に含まれる亜硝酸イオンによりなお蛋白含量に負誤差が生じるという問題があった。そこで,スルファニル酸等,特定のアミノ基を有した有機化合物を添加することによって上記問題を解決したのが本件各発明である。(ピロガロールレッド・モリブデン錯体を用いる比色法の開発理由及び昭和59年12月の特許出願につき甲2)(3) 被告による本件特許権の取得に至る経緯等ア被告の従業員は,本件特許の出願日である昭和62年3月25日に先立ち,本件各発明をした(原告が本件各発明の発明者であるか否かについては,後記のとおり,争いがある。)。 本件各発明は,被告の業務範囲に属し,かつ,発明をするに至った行為が被告における当該従業員の職務に属するものであるから,特許法35条1項所定の職務発明に当たる。 イ被告においては,本件特許の出願当時,被告の従業員がした職務発明に関し,「従業員発明考案取扱規定」(以下「本件規定」という。)が定め - 5 -られていた。 本件規定には,従業員の職務発明について特許を受ける権利が被告に承継されるとともに,被告が職務発明をした従業員に対して,特許出願時に発明者1名につき1000円,設定登録時に特許1件につき1万円(共同発明の場合は均等割)の各報奨金を支払う旨の定めがある。 ウ被告は,本件規定に基づき,本件各発明について特許を受ける権利を原告らから承継したとして,昭和62年3月25日,本件各発明について特許出願をし,平成11年8月13日,本件特許権の設定登 ウ被告は,本件規定に基づき,本件各発明について特許を受ける権利を原告らから承継したとして,昭和62年3月25日,本件各発明について特許出願をし,平成11年8月13日,本件特許権の設定登録を得た。 これを受け,原告は,本件規定に基づき,本件特許の出願後に1000円と本件特許権の設定登録後に5000円(1万円をBとの間で均等割にしたもの)の合計6000円を被告から受領した。 エ被告は,昭和62年から平成18年ころまでの間,本件発明3を実施した尿・髄液中の蛋白含量を測定する臨床検査薬「マイクロTP-テストワコー」及び「マイクロTP-AR」(以下「本件各検査薬」という。)を販売し,●(省略)●の売上げを得た(本件各検査薬の機能につき甲3・4)。 また,●(省略)● 2 争点及び当事者の主張本件の争点は,①本件各発明の発明者は原告か,②本件各発明により被告が受けるべき利益の額,③本件各発明がされるについて被告が貢献した程度,④相当対価額である。 (1) 争点①(本件各発明の発明者は原告か) - 6 -(原告の主張)ア原告の発明者性被告では,前記1(前提事実)(2)イのとおり,ピロガロールレッド・モリブデン錯体を用いる比色法において,キレート剤等を添加するという本件先行発明をし,昭和60年8月ころから,本件先行発明を実施した臨床検査薬「マイクロTP-テストワコー」及び「マイクロTP-AR」を順次販売していたが,試料に含まれる亜硝酸イオンによりなお蛋白含量に負誤差が生じるという問題があった。 原告は,昭和61年9月19日ころ,臨床検査薬事業本部開発部のC主任との打合せにおいて,2~3日蓄尿した細菌尿は亜硝酸の濃度が50~100mg/ 量に負誤差が生じるという問題があった。 原告は,昭和61年9月19日ころ,臨床検査薬事業本部開発部のC主任との打合せにおいて,2~3日蓄尿した細菌尿は亜硝酸の濃度が50~100mg/dlとなり,蛋白含量に負誤差が生じることがあるため,「マイクロTP-AR」を購入することができないと東京医科歯科大学附属病院から言われた旨を聞いた。これに対し,原告は,スルファニル酸を添加することにより亜硝酸をスルホベンゼンジウゾニウム塩として除去することを思い付いた。そこで,原告は,C主任が帰った後,まず,臨床検査薬「マイクロTP」に自分の尿や蛋白標準液,濃度100mg/dlの亜硝酸溶液を適宜添加していったところ,亜硝酸溶液によって上記検査薬の色が褐色から黄色に変化し,亜硝酸イオンによって試薬の着色度(試薬ブランク)が低下することを確認した。原告は,次に,スルファニル酸を添加した臨床検査薬「マイクロTP」に濃度100mg/dlの亜硝酸溶液を添加したところ,上記検査薬の色が褐色から変化せず,スルファニル酸によって亜硝酸イオンの影響を回避し得ることを確認した。 - 7 -原告は,昭和61年9月26日以降,スルファニル酸以外の有機アミノ化合物を添加した臨床検査薬「マイクロTP」に亜硝酸溶液を添加する実験を繰り返すことにより,除去作用があって薬液の色を変化させないものを選別するとともに,同年11月14日以降,薬液の経日安定性を確認する試験も順次行っていった。その後,原告は,昭和62年2月5日,本件明細書の原案を作成し,遅くとも同日までに,試薬に特定のアミノ化合物を添加することにより,亜硝酸をジアゾニウム化合物に変換して除去するとともに,蛋白の分析にも影響しない本件各発明を完成させた。 イ B等の発明者性別 に,試薬に特定のアミノ化合物を添加することにより,亜硝酸をジアゾニウム化合物に変換して除去するとともに,蛋白の分析にも影響しない本件各発明を完成させた。 イ B等の発明者性別紙特許公報に本件各発明の発明者として記載されているBは,前記1(前提事実)(1)ウのとおり,本件特許の出願当時,東京研究本部応用研究所の所長を務めるとともに,原告の上司も兼ねており,被告においては管理者も発明者として出願することを慣例としていたため,発明者として記載されたにすぎない。Bは,本件各発明の完成当時,まだ原告の上司ではなかった上,合成の分野が専門であって,臨床検査薬の分野は専門外であったから,本件各発明を着想し得ず,原告からBに相談もしていない。 本件各発明で検討された有機アミノ化合物は,写真薬等の開発に用いられたものが多い。これは,被告が,昭和30年代から,写真薬の開発を行っていたことから,原告も,昭和50年ころから,比色法における臨床検査薬の開発に合成や写真化学の技術を日常的に採り入れていたことによるものであって,Bの発明者性を裏付けるものではない。このことは,特許庁から本件特許の拒絶理由が通知された際,被告の特許部が原告だけに対 - 8 -応を求めたことからも,明らかである。 したがって,Bは,本件各発明の技術的思想の創作に貢献しておらず,本件各発明の発明者ではない。 なお,東京医科歯科大学附属病院は,本件各発明の課題を提供しただけであり,大阪大学も,本件各発明を実施した試作品を試用してもらっただけであるから,大学関係者は,本件各発明の発明者ではない。 ウ小括以上のとおり,本件各発明の発明者は,原告だけである。 (被告の主張)ア本件各発明の発明者が誰であるか から,大学関係者は,本件各発明の発明者ではない。 ウ小括以上のとおり,本件各発明の発明者は,原告だけである。 (被告の主張)ア本件各発明の発明者が誰であるかは,知らない。 イ B等の発明者性についてBは,大学で「分析化学」を専攻するとともに,東京大学の薬品分析学教室にも国内留学するなど,分析の分野にも詳しかった上,東京研究所における原告の先輩であり,昭和49年ないし50年には,臨床検査薬の開発を統括して原告を指導していた。また,Bは,昭和56年ないし58年ころには,スルファニル酸に亜硝酸を反応させて得たジアゾニウム塩にヒドロキシカルボン酸又はそのエステルをカップリングさせて合成した写真用薬品「M-6a」に係る製造方法の開発及び改良に従事していた。さらに,Bの専門である有機合成の分野では,尿にスルファニル酸を添加して尿中の亜硝酸をジアゾ化合物にし,これをカップリング剤と反応させて色素を形成させることにより,尿中の亜硝酸を測定するグリース法や,スルファニル酸等のアミンを添加して過剰な亜硝酸を除去する方法が周知 - 9 -であった。加えて,原告がスルファニル酸以外に検討した有機アミノ化合物は,Bの専門であった写真薬等の開発に用いられるものが多い。被告においては,管理職と研究員とが日常的に接触しているため,共同で発明した管理者を発明者として出願しているのであって,発明をしていない単なる管理者であるにすぎない者を発明者として出願しているわけではない。 これらの事実を総合すれば,Bは,原告から相談を受けて本件各発明を着想し,原告に対して本件各発明に関する具体的な提案や有機アミノ化合物の提供をした可能性が高く,Bが本件各発明の発明者であった可能性がある。 ば,Bは,原告から相談を受けて本件各発明を着想し,原告に対して本件各発明に関する具体的な提案や有機アミノ化合物の提供をした可能性が高く,Bが本件各発明の発明者であった可能性がある。 なお,本件各発明の課題を提供した東京医科歯科大学や本件各発明を先行して実施していた大阪大学の職員等が本件各発明の発明者であった可能性もある。 ウ原告の発明者性について原告は,本件各発明につき,スクリーニング試験や経日安定性試験といった周辺的な実験を行っただけで,亜硝酸陽性の尿を用いた核心的な実験を行っておらず,本件各発明の発明者ではない疑いがある。特許庁から本件特許の拒絶理由が通知された際,被告の特許部が原告だけに対して対応を求めたのは,原告が担当部署の責任者であったからにすぎない。 エ小括以上のとおりであるから,本件各発明の発明者が原告であるということはできない。 (2) 争点②(本件各発明により被告が受けるべき利益の額) - 10 -(原告の主張)ア本件各発明により被告が受けるべき利益本件各発明により被告が受けるべき利益は,本件特許の独占権に基づく利益を指すから,●(省略)●被告が自ら実施することにより得られた売上高につき,第三者に実施許諾をしたとしたら得られたであろう実施料(自己実施による独占の利益)の合計額となる。 イ自己実施による独占の利益(ア) 本件発明1・2についてa 想定実施料に係る独占の利益前記1(前提事実)(3)エのとおり,被告は,物の発明である本件発明3を実施した本件各検査薬を販売しており,検査機関等の購入者は,方法の発明である本件発明1・2を実施して蛋白を分析することになる。この 1(前提事実)(3)エのとおり,被告は,物の発明である本件発明3を実施した本件各検査薬を販売しており,検査機関等の購入者は,方法の発明である本件発明1・2を実施して蛋白を分析することになる。このため,本件各検査薬の売上高には,本件発明3の実施料相当額の利益だけでなく,本件発明1・2の想定実施料分も含まれている。 被告は,特許法35条1項所定の法定通常実施権だけでは購入者に本件発明1・2の実施を許諾することができず,その実施料を得ることもできなかったから,本件発明1・2の想定実施料分は,その全額が独占の利益となる。 b 想定実施料率被告が●(省略)●から得ていた実施料は,前記と同様,検査機関等の購入者が本件発明1・2を実施して蛋白を分析することになるため,本件発明3の実施料だけでなく,●(省略)●が購入者から得る - 11 -本件発明1・2の実施料分も含んでいる。被告が●(省略)●であったところ,本件発明3によって製造される試薬は本件発明1・2によって使用される分析方法の手段にすぎないことを考慮すれば,本件発明1・2の実施料率は,●(省略)●を下らない。 c したがって,本件発明1・2に係る独占の利益の額は,次の計算式のとおり,6400万円となる。 (計算式)●(省略)●×●(省略)●=6400万円(イ) 本件発明3についてa 超過売上高(a) 仮想実施料前記(ア)のとおり,本件各検査薬の売上高は,本件発明3の実施料相当額の利益(仮想実施料)を含んでいる。 (b) 超過割合被告は,特許法35条1項所定の法定通常実施権だけでも本件発明3を実施して本件各検査薬を販売することが 施料相当額の利益(仮想実施料)を含んでいる。 (b) 超過割合被告は,特許法35条1項所定の法定通常実施権だけでも本件発明3を実施して本件各検査薬を販売することができ,その実施料相当額の利益を得ることができた。 この点につき,①臨床検査薬「マイクロTP-テストワコー」(用手法用)及び「マイクロTP-AR」(自動分析装置用)の施設採用率は,本件発明3を実施する前の昭和60年ころは30%程度にすぎなかったのが,本件発明3を実施した後の平成18年ころには前者を中心に約86%にまで上がった。被告の他の臨床検査薬は,本件各検査薬のような施設採用率の上昇を示していない。これに対 - 12 -し,大塚アッセイ研究所が販売していたクマシーブリリアントブルーG-250を用いた比色法による臨床検査薬「トネインTPテスト」の施設採用率は,昭和60年ころは20%程度であったのが,平成18年ころには約4%にまで下がった。また,②本件各発明は,人命を預かる体外診断用医薬品に関する重要な発明である上,比色法一般に適用することができ,適用範囲が広い。 これらの事実を総合すれば,本件各検査薬の売上高から本件発明1・2に係る独占の利益の額を控除した額に占める本件発明3に係る超過売上高の割合は,30%を下らない。 なお,①尿中の蛋白を分析する方法は,定性法の方が定量法よりも普及しているが,定性法はスクリーニング検査で用いられるのに対し,定量法は精密検査で用いられ,使用する目的や局面が異なる。 また,②尿中の亜硝酸イオンにより蛋白含量に負誤差が生じることは,2~3日冷暗所で防腐剤を入れずに細菌尿等を蓄尿した場合,亜硝酸が短期間では分解しきれず,その濃度が50~100mg/dlと なる。 また,②尿中の亜硝酸イオンにより蛋白含量に負誤差が生じることは,2~3日冷暗所で防腐剤を入れずに細菌尿等を蓄尿した場合,亜硝酸が短期間では分解しきれず,その濃度が50~100mg/dlとなり,蛋白含量に負誤差を生じさせることがあるから,本件各発明には必要性がある。さらに,③実施許諾の申入れが●(省略)●以外になかったのは,添付文書に●(省略)●を記載する必要がなく,無断使用しても分からないからである。●(省略)●が実施許諾を申し入れたのは,●(省略)●被告が警告したからである。したがって,①定性法の方が普及していることや②尿中の亜硝酸イオンにより蛋白含量に負誤差が生じにくいこと,③実施許諾の申入れ - 13 -が少なかったことは,本件各発明による独占の利益を否定する根拠にはならない。 b 仮想実施料率前記(ア)bのとおり,被告が●(省略)●から得ていた実施料の率●(省略)●のうち,本件発明1・2の実施料率が●(省略)●を占めることを考慮すれば,本件発明3の実施料率は,●(省略)●といえる。 c したがって,本件発明3に係る独占の利益の額は,次の計算式のとおり,●(省略)●となる。 (計算式)(●(省略)●-6400万円)×0.3×●(省略)●=●(省略)●ウ小括以上のとおり,本件各発明により被告が受けるべき利益の額は,次の計算式のとおり,6930万8000円となる。 (計算式)●(省略)●+6400万円+●(省略)●=6930万8000円(被告の主張)ア自己実施による独占の利益について(ア) 本件発明1・2について被告が本件各発明について特許を受ける権利を承継しなかったとしても,本件 (被告の主張)ア自己実施による独占の利益について(ア) 本件発明1・2について被告が本件各発明について特許を受ける権利を承継しなかったとしても,本件各検査薬には本件特許権についての特許法35条1項所定の法定通常実施権が及ぶため,購入者が本件発明1・2を実施しても,それは実施権の範囲内の行為である。 - 14 -したがって,本件発明1・2に係る独占の利益は,存在しない。 (イ) 本件発明3について①尿中の蛋白を分析する方法は,費用や手間,時間の観点から,定性法の方が定量法よりも普及していた。定量法においても,前記1(前提事実)(2)イのとおり,比濁法やクマシーブリリアントブルーG-250を用いる比色法等といった代替技術があった。実際,大塚アッセイ研究所は,昭和60年ころから,上記比色法を用いた臨床検査薬「トネインTPテスト」を販売していた。 また,②尿中に亜硝酸イオンが含まれるのは,尿路感染症を発症したまれな場合に限られる。蓄尿の場合も,冷暗所で防腐剤を入れて保存される上,亜硝酸は排尿後6時間で分解されるから,亜硝酸の濃度が50~100mg/dlとなることは考えにくい。尿中の亜硝酸イオンが蛋白含量に与える負誤差も,2%にすぎず,許容される誤差9%の範囲内であった。このため,亜硝酸イオンにより蛋白含量に負誤差が生じることは,実務上問題とされていなかった。しかも,本件各発明は,本件先行発明を前提として,わずかな改良を付加した発明にすぎなかった。このため,本件各発明は,必要性に乏しい発明であり,被告も●(省略)●本件各発明の作用効果を宣伝していなかった。 そのようなこともあって,③被告は,一般的な実施料を支払ってもらえれ 。このため,本件各発明は,必要性に乏しい発明であり,被告も●(省略)●本件各発明の作用効果を宣伝していなかった。 そのようなこともあって,③被告は,一般的な実施料を支払ってもらえれば,本件各発明の実施を許諾する方針であったにもかかわらず,●(省略)●に実施許諾の申入れはなかった。 本件各検査薬の施設採用率が上がったのは,主に,被告が,臨床検査 - 15 -薬業のトップメーカーとして,高い知名度を有するとともに,昭和56年ころから,検査機関等に対して生化学分野の自動分析装置を貸与する事業を進めた結果,その普及と同時にこれに用いる本件各検査薬を含めた臨床検査薬の販売が促進されたことによるものである。また,大塚アッセイ研究所が販売していた臨床検査薬「トネインTPテスト」の施設採用率が下がったのは,セルの自動洗浄後も色素が残り,自動分析装置に適していなかったことによるものである。したがって,本件各検査薬の施設採用率が上がったのは,本件各発明によるものではない。 したがって,本件発明3に係る独占の利益も,存在しない。 イ小括以上のとおりであるから,本件各発明により被告が受けるべき利益の額は,●(省略)●から得られた実施料●(省略)●に限られる。 (3) 争点③(本件各発明がされるについて被告が貢献した程度)(被告の主張)ア本件各発明に対する被告の貢献本件各発明に対する被告の貢献は,研究施設・研究機器・研究材料等の提供や本件各発明の権利化から事業化まで,幅広く存在する。 すなわち,被告は,試薬メーカーとしての研究施設・研究機器・研究材料等を有しているため,原告らは,様々な有機化合物や異常尿等の試料を容易に入手することができた。 まで,幅広く存在する。 すなわち,被告は,試薬メーカーとしての研究施設・研究機器・研究材料等を有しているため,原告らは,様々な有機化合物や異常尿等の試料を容易に入手することができた。 また,被告においては,従前から,尿中蛋白の臨床検査薬に関する研究が行われていたため,本件各発明もそのような研究の蓄積の上にされたも - 16 -のである。 さらに,被告の特許部は,本件各発明に関し,拒絶理由通知に対して提出した補正書・意見書の各内容を原告らに提案したり,●(省略)●との間でライセンス契約の交渉を行ったりして,本件各発明の権利化や事業化にも貢献した。 イ本件各発明に対する原告らの貢献本件各発明は,原告らの職責に当然含まれる上,本件先行発明を前提とした付加的な発明にすぎない。しかも,本件各発明は,亜硝酸イオンに有機アミノ化合物を添加してジアゾニウム塩を生成するという有機化学合成の基本的な技術を用いたものにすぎず,この技術は,被告の東京研究所等において写真薬の開発・製造に用いられていた。このため,本件各発明は,被告の担当研究者であって課題さえ与えられれば,誰でも容易に発明をすることができるものであった。 また,本件各発明の製品化は,製造部が臨床検査薬「マイクロTP-テストワコー」及び「マイクロTP-AR」に●(省略)●を添加するだけであるから,原告らの関与は従属的なものにとどまる。 ウ小括以上を総合すれば,本件各発明がされるについて被告が貢献した程度は,100%であり,少なくとも95%を下るものではない。 (原告の主張)ア本件各発明に対する被告の貢献について本件各発明に対する被告の貢献は,研究施設・研究機器・研究材料 100%であり,少なくとも95%を下るものではない。 (原告の主張)ア本件各発明に対する被告の貢献について本件各発明に対する被告の貢献は,研究施設・研究機器・研究材料の提 - 17 -供だけである。 すなわち,被告が原告に提供した研究施設は,東京研究所内にある約94㎡の研究実験室だけである。また,被告が原告に提供した研究機器は,他の研究にも用いられる分光光度計(購入費565万円。昭和55年購入,償却済み。)とpHメーター(購入費約20万円),天びん(購入費約30万円)だけである。さらに,被告が原告に提供した研究材料は,研究実験室内の在庫品であった臨床検査薬「マイクロTP-テストワコー」及び「マイクロTP-AR」並びに●(省略)●及び亜硝酸ナトリウム等の化合物だけであり,材料費も1万円以下である。 なお,被告は,昭和62年から本件各検査薬を販売するに当たり,臨床検査薬「マイクロTP-テストワコー」及び「マイクロTP-AR」に●(省略)●を添加しただけであって,製造設備を新設・改造したことはなく,宣伝活動もしていない。また,被告が原告の研究室に配属した部下も,近く結婚により退職する女性の新人か海外等の他部署への配置換えを控えた研修者が主であった。さらに,原告は,他の研究員と異なり,国内の大学に留学させてもらったこともない。 イ本件各発明に対する原告の貢献について被告は,尿蛋白の測定に関しては,従前,公知文献に従った濃度2%のスルホサリチル酸溶液を調整液として販売していただけであり,被告における技術の蓄積はほとんどなかった。しかも,亜硝酸と含窒素有機化合物からジアゾニウム塩を生成する化学反応は,反応性が高いため,精密分析に用いる臨床検査薬には用いないのが常 ていただけであり,被告における技術の蓄積はほとんどなかった。しかも,亜硝酸と含窒素有機化合物からジアゾニウム塩を生成する化学反応は,反応性が高いため,精密分析に用いる臨床検査薬には用いないのが常識であった。そのような状況下 - 18 -で,原告は,本件各発明をした。 また,原告は,本件各発明に関し,明細書の原案や拒絶理由通知に対して提出した補正書の草案を作成し,本件各発明の権利化に貢献した。 さらに,原告は,製造移管作業を担当したり,各種講演会で講演したり,●(省略)●との間でライセンス契約を締結する契機となった特許権侵害状況調査を担当したりして,本件各発明の製品化や事業化にも貢献した。 したがって,本件各発明に対する原告の貢献は絶大である。 ウ小括以上を総合すれば,本件各発明がされるについて被告が貢献した程度は,50%を超えるものではない。 (4) 争点④(相当対価額)(原告の主張)ア本件各発明の相当対価額は,次の計算式のとおり,本件各発明により被告が受けるべき利益の額6930万8000円に,本件各発明がされるについて原告が貢献した程度である50%を乗じた3465万4000円となり,被告の未払額は,既払の報奨金6000円を控除した3464万8000円となる。 (計算式)6930万8000円×(1-0.5)=3465万4000円3465万4000円-6000円=3464万8000円イよって,原告は,被告に対し,特許法35条3項に基づき,相当の対価の未払額である3464万8000円及びこれに対する弁済期(訴状送達の日の翌日)である平成22年2月2日から支払済みまで民法所定の年5 - 19 -分の割合に 35条3項に基づき,相当の対価の未払額である3464万8000円及びこれに対する弁済期(訴状送達の日の翌日)である平成22年2月2日から支払済みまで民法所定の年5 - 19 -分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張)争う。本件各発明の相当対価額は,次の計算式のとおり,本件各発明により被告が受けるべき利益の額●(省略)●に,本件各発明がされるについて原告が貢献した程度である0ないし5%とBとの発明者間貢献度50%(民法250条)を乗じた0円ないし●(省略)●となり,被告の未払額は,既払の報奨金6000円を控除した0円ないし●(省略)●となる。 (計算式)●(省略)●×(1-0.95)×0.5=●(省略)●●(省略)●-6000円=●(省略)●第3 当裁判所の判断 1 争点①(本件各発明の発明者は原告か)について(1) 証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。 ア被告における臨床検査薬の開発経緯等(甲7の3,20の2・6・10・15,24の1,29,31,33,乙35,原告本人,弁論の全趣旨)(ア) 被告では,昭和42年から臨床検査薬の開発を始め,昭和47年ころまでに商品化をおおむね完了した。このため,被告では,同年以降,従来の用手法用の臨床検査薬に替えて,主に血液の生化学検査で用いることを念頭に置いた自動分析装置用の臨床検査薬を開発するようになった。 そのような中,原告も,昭和47年4月に,一般化学分析を担当していた研究室から臨床検査薬の開発を担当する研究室に異動し,昭和44 - 20 -年ころから主任研究員を務めていたBの下で,2名の同僚と共に,前記自動分析装置用の 月に,一般化学分析を担当していた研究室から臨床検査薬の開発を担当する研究室に異動し,昭和44 - 20 -年ころから主任研究員を務めていたBの下で,2名の同僚と共に,前記自動分析装置用の臨床検査薬の開発に従事するようになった。 (イ) 原告が昭和47年4月に配属された研究室は,かつて,写真薬等の合成を担当していたため,写真薬に関する試薬が多数残されていた。昭和51年には尿や髄液中の蛋白を分析する方法としてクマシーブリリアントブルーG-250を用いる比色法が発表されており,比色法は,写真薬の発色原理を応用し得るものであった。このため,原告の所属する研究室では,上司からの指示の下,臨床検査薬等の開発に写真化学の技術を採り入れながら,商品開発や特許権の取得を進めていった。 (ウ) Bは,昭和52年7月に,合成等を担当する技術課に異動し,原告の上司ではなくなった。原告は,その後も,臨床検査薬の開発を続け,昭和59年3月に,大阪研究所東京分室の主任研究員に就任して自己の研究室を持つようになった。 イ本件各発明の完成に至る経緯等(甲1,2,7の3・4,9,17,18・23の各1ないし3,24の2,25,29,33,35,乙1,5,6の2・3,14の1・2,18,21,36,原告本人,弁論の全趣旨)(ア) クマシーブリリアントブルーG-250を用いる比色法は,試験管やセル等の器具類を汚染するという問題があったため,昭和58年に至っても,定量法のうち2割程度の採用率にとどまっていた。 しかし,昭和58年,前記の問題を解決したピロガロールレッド・モリブデン錯体を用いる比色法が発表され,以後は,当該比色法が急速に普及していった。 - 21 -(イ) 原告は,昭和59年夏,東京 8年,前記の問題を解決したピロガロールレッド・モリブデン錯体を用いる比色法が発表され,以後は,当該比色法が急速に普及していった。 - 21 -(イ) 原告は,昭和59年夏,東京大学医学部附属病院から,ピロガロールレッド・モリブデン錯体を用いる比色法につき,尿中の蛋白含量に負誤差が生じる問題を解決するよう依頼された。 原告の研究室で検討した結果,尿に含まれるキレート系物質により,試薬の着色度(試薬ブランク)が低下し,蛋白含量に負誤差が生じることが判明した。そこで,原告の研究室では,キレート剤等を添加し,これ以上試薬ブランクが低下しないようにして蛋白含量に負誤差が生じないようにする方法を開発し,東京大学と千葉大学の各医学部附属病院に試作品を試用してもらった上で,昭和59年12月,被告が本件先行発明として特許出願をした。 (ウ) 被告は,昭和60年夏には本件先行発明を実施した主に用手法用の臨床検査薬「マイクロTP-テストワコー」の販売を開始するとともに,翌61年夏には自動分析装置用に●(省略)●「マイクロTP-AR」の販売を開始したものの,原因不明の負誤差に関する問合せが続いていた。 (エ) 原告は,昭和61年9月19日ころ,臨床検査薬事業本部開発部のC主任との打合せにおいて,2~3日蓄尿した細菌尿は亜硝酸の濃度が50~100mg/dlとなり,蛋白含量に負誤差が生じることがあるため,臨床検査薬「マイクロTP-AR」を購入することができないと東京医科歯科大学附属病院から言われた旨を聞いた。 これに対し,原告は,かつてスルファニル酸を用いてビリルビンを測定する臨床検査薬の開発に従事していた経験から,スルファニル酸を添 - 22 -加することにより亜硝酸をスルホベンゼンジ これに対し,原告は,かつてスルファニル酸を用いてビリルビンを測定する臨床検査薬の開発に従事していた経験から,スルファニル酸を添 - 22 -加することにより亜硝酸をスルホベンゼンジアゾニウム塩として除去することを思い付いた。 そこで,原告は,まず,再現実験として,臨床検査薬「マイクロTP」に自分の尿や蛋白標準液,濃度100mg/dlの亜硝酸溶液を適宜添加していったところ,亜硝酸溶液によって上記検査薬の色が褐色から黄色に変化し,亜硝酸イオンによって試薬ブランクが低下することを確認した。 原告は,尿や蛋白が試薬ブランクの低下に関与してないことが判明したため,次に,スルファニル酸だけを添加した臨床検査薬「マイクロTP」に濃度100mg/dlの亜硝酸溶液を添加したところ,上記検査薬の色が褐色から変化せず,スルファニル酸によって亜硝酸イオンの影響を回避し得ることを確認した。 (オ) 原告は,昭和61年9月26日に,C主任に対して「マイクロTP」について生じる負誤差の問題が解決した旨を伝えたところ,C主任から,技術サービスセンターでの確認作業を先行したいとして,試作品の提供を求められた。そこで,原告は,臨床検査薬「マイクロTP-テストワコー」にスルファニル酸を添加したものをC主任に渡した。 (カ) 原告は,昭和61年9月26日以降,スルファニル酸以外の有機アミノ化合物を添加した臨床検査薬「マイクロTP」に亜硝酸溶液を添加する実験を44種類の有機アミノ化合物について行い,実験データをデータ集に記録しながら,亜硝酸を除去し得る有機アミノ化合物を選別していった。 また,原告は,昭和61年11月14日以降,薬液の経日安定性を確 - 23 -認する試験も行いながら,亜硝酸を除去し得る有機 硝酸を除去し得る有機アミノ化合物を選別していった。 また,原告は,昭和61年11月14日以降,薬液の経日安定性を確 - 23 -認する試験も行いながら,亜硝酸を除去し得る有機アミノ化合物を,同月27日ころには18種類に,同年12月8日には9種類に,同月11日には最終的な6種類に,順次絞り込んでいき,実験データをデータ集に記録し,実験結果を実験ノートに整理するなどした。 (キ) 原告は,昭和62年1月に,経日安定性を確認する試験が約2か月経過し,臨床検査薬「マイクロTP」の処方を変更するめどが立ったため,技術サービスセンターで得られた亜硝酸が陽性や陰性の人尿を用いた実験データをも参照しながら,自宅で本件各発明に係る明細書案を起案した。 (ク) 被告では,昭和62年2月1日に,組織替えが行われ,原告の研究室である大阪研究所東京分室A研究室が東京研究本部応用研究所開発第三課となり,原告の上司であったD大阪研究所東京分室長が品質管理部長に異動し,技術部長であったBが応用研究所長兼開発第三課長に異動して原告の上司となった。 そこで,原告は,昭和62年2月5日に,本件各発明を本件先行発明の補強と位置付けた上で発明者を原告らとする特許出願依頼書や明細書案等をBに提出して決裁を得た。また,本件各発明の試作品は,大阪大学に試用してもらっていたところ,好評を博し,日常的に使用されるようになっていたため,原告は,同じころ,関係部署に対して速やかに臨床検査薬「マイクロTP」の処方を変更するよう指示した。 (2) 発明とは,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいうところ(特許法2条1項),特許法35条3項に基づいて相当の対価の支払 - 24 -を請求し得る発明者とは,特許請求 (2) 発明とは,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいうところ(特許法2条1項),特許法35条3項に基づいて相当の対価の支払 - 24 -を請求し得る発明者とは,特許請求の範囲の記載に基づいて定められた技術的思想の特徴的部分の創作行為に現実に加担した者をいうものと解するのが相当である。 ア原告の発明者性について(ア) 前記(1)イ(エ)・(カ)のとおり,原告は,尿等の試料に含まれる亜硝酸イオンにより蛋白含量に負誤差が生じるという本件各発明の課題につき,スルファニル酸等,特定のアミノ基を有する有機化合物を添加するという解決手段を着想するとともに,上記有機化合物を添加した臨床検査薬「マイクロTP」に亜硝酸溶液を添加するという実験によってその効果を確認したのであるから,本件特許に係る特許請求の範囲に基づいて定められた技術的思想の特徴的部分の創作行為に現実に加担した者ということができ,原告が本件各発明の発明者であることは明らかである。 (イ) この点につき,被告は,原告が亜硝酸陽性の尿を用いた核心的な実験を行っていないから,本件各発明の発明者ではない疑いがある旨主張する。 しかしながら,前記(1)イ(エ)のとおり,原告は,臨床検査薬「マイクロTP」に自分の尿や亜硝酸溶液を添加した再現実験を行っている。また,そもそも,本件特許に係る特許請求の範囲に,尿を試料とする記載はなく,本件明細書には,従来技術における問題(4欄29行~33行)や実施例(21欄~26欄)として,尿を試料とした説明があるにすぎない。したがって,原告が亜硝酸陽性の尿を用いた実験を行っていないことは,原告の発明者性を左右するものではない。 - 25 -したがって,原告が本件各発明の発明者 があるにすぎない。したがって,原告が亜硝酸陽性の尿を用いた実験を行っていないことは,原告の発明者性を左右するものではない。 - 25 -したがって,原告が本件各発明の発明者ではない疑いがある旨の被告の主張は,これを採用することができない。 イ B等の発明者性について(ア) 前記(1)イのとおり,Bは,昭和61年9月から昭和62年2月までの間,被告の技術部長や応用研究所長兼開発第三課長といった管理職を務めていた者にすぎず,本件各発明の解決手段を着想したものとも,実験によってその効果を確認したものとも認めることができないから,本件特許に係る特許請求の範囲に基づいて定められた技術的思想の特徴的部分の創作行為に現実に加担した者ということができず,Bが本件各発明の発明者であるということができないことは明らかである。 また,東京医科歯科大学や大阪大学の職員等が本件各発明の解決手段を着想したことや,実験によってその効果を確認したことについても,証拠が全くない。 (イ) この点につき,被告は,Bが分析の分野に詳しく,原告の上司を務めたこともある先輩であったことや,本件各発明にはBの専門である有機合成の技術が多く用いられていること,被告においては管理職と研究員が日常的に接触していること等から,Bが原告から相談を受けて本件各発明を着想し,原告に対して本件各発明に関する具体的な提案や実験材料の提供をした可能性が高く,Bが本件各発明の発明者であった可能性がある旨主張する。 確かに,前記(1)ア(ア)ないし(ウ)のとおり,Bは,昭和44年ころから,臨床検査薬の開発を指導するとともに,昭和47年4月から昭和5 - 26 -2年6月までの間,原告の上司を務めていた上,証拠(甲1 1)ア(ア)ないし(ウ)のとおり,Bは,昭和44年ころから,臨床検査薬の開発を指導するとともに,昭和47年4月から昭和5 - 26 -2年6月までの間,原告の上司を務めていた上,証拠(甲1,乙35)によれば,本件各発明に係る含窒素有機化合物には,Bの専門である写真薬の原料や添加物が複数含まれていることが認められる。また,前記(1)イ(ク)のとおり,原告は,本件各発明の発明者を原告及びBとする特許出願依頼書を作成した上,証拠(乙1)によれば,当該依頼書には発明者記入欄の注意事項として「単なる協力者は入れないで下さい。」という記載があることも認められる。 しかしながら,前記(1)ア(イ)のとおり,原告の所属する研究室では,かねてから,臨床検査薬等の開発に写真化学の技術を採り入れながら,商品開発や特許権の取得を進めていた上,証拠(甲19,20の1ないし35,21,22,29,乙29ないし31,35)及び弁論の全趣旨によれば,Bは本件各発明やその発明に至る経緯を覚えていない旨陳述していること,被告においては,研究員による職務発明の大半について,当該研究員とその上司である管理者や研究所長の共同発明として特許出願されてきたことも認めることができ,これらの事実に照らして考えると,前記認定の事実から,Bが本件各発明を着想したとも,本件各発明に関する具体的な提案や実験材料の提案をしたとも推認することはできず,他にこの事実を認めるに足りる証拠はない。 したがって,Bが本件各発明の発明者であるという被告の主張は,これを採用することができない。 ウ小括以上によれば,本件各発明の発明者は,原告だけであると認めるのが相 - 27 -当である。 2 争点②(本件各発明により被告が受けるべき利益 ことができない。 ウ小括以上によれば,本件各発明の発明者は,原告だけであると認めるのが相 - 27 -当である。 2 争点②(本件各発明により被告が受けるべき利益の額)について(1) 自己実施による独占の利益の有無について特許法35条4項の「その発明により使用者等が受けるべき利益」とは,使用者等に承継させた特許を受ける権利若しくは特許権又は使用者等のために設定した専用実施権に係る職務発明により使用者等が受けるべき利益をいう(同条3項参照)。 このため,当該職務発明について特許がされた場合,特許法35条4項の「その発明により使用者等が受けるべき利益」とは,当該特許発明の実施権を専有する効力により使用者等が受けるべき利益(いわゆる独占の利益。以下「独占の利益」という。)を指すものと解される(同法68条参照)。具体的には,特許権を取得した使用者等が第三者に対して当該特許発明の実施を許諾することによって得られる実施料収入(いわゆる第三者実施による独占の利益)はもちろん,特許権を取得した使用者等が自ら当該特許発明を実施することにより同法35条1項所定の法定通常実施権を行使して得られる売上高を超過して得られた売上高(いわゆる超過売上高。以下「超過売上高」という。)につき,第三者に対して当該特許発明の実施を許諾していたら得られたであろう実施料収入(いわゆる自己実施による独占の利益)をいうものと解される。 なお,被告は,本件においては,①本件各発明には定性法や比濁法等の代替技術があったこと,②本件各発明は必要性に乏しかったこと,③一般的な実施料を支払ってもらえれば,本件各発明の実施を許諾する方針(いわゆる - 28 -開放的ライセンスポリシー)であったにもかかわらず,●( と,②本件各発明は必要性に乏しかったこと,③一般的な実施料を支払ってもらえれば,本件各発明の実施を許諾する方針(いわゆる - 28 -開放的ライセンスポリシー)であったにもかかわらず,●(省略)●以外に実施許諾の申入れがなかったことを理由に,被告の自己実施分について独占の利益はない旨主張する。 しかしながら,当該特許発明の価値が極めて低く,これを使用する者を全く想定し得ない場合や,代替技術が極めて多数存在するため,市場全体から見て当該特許の存在を無視し得るような特段の事情がある場合を除き,単に当該特許発明には,代替技術があり,必要性に乏しく,開放的ライセンスポリシーが採られているというだけでは,程度の差はともかく,依然として当該特許発明を承継した使用者等に独占の利益はあるというべきである。 これを本件についてみると,前記第2の1(前提事実)(3)エのとおり,被告は,平成12年10月から平成18年ころまでの間,本件特許権につき,●(省略)●に通常実施権を設定していたのであって,本件各発明の価値が極めて低く,これを使用する者を全く想定し得ないことや,代替技術が極めて多数存在し,市場全体から見て本件特許の存在を無視し得るといった前記特段の事情があることを認めるに足りる証拠はない。 したがって,本件各発明により被告が受けるべき利益は,被告が●(省略)●に実施許諾することにより得られた実施料(第三者実施による独占の利益),及び,被告が自ら本件各検査薬を販売することにより得られた超過売上高につき,第三者に対して本件各発明の実施を許諾していたら得られたであろう実施料収入(自己実施による独占の利益)の合計額となる。 以下,自己実施による独占の利益の額につき,検討する。 (2) 自己実施による独占の利益 明の実施を許諾していたら得られたであろう実施料収入(自己実施による独占の利益)の合計額となる。 以下,自己実施による独占の利益の額につき,検討する。 (2) 自己実施による独占の利益の額について - 29 -ア本件発明1・2について前記第2の1(前提事実)(2)アのとおり,被告は,亜硝酸イオンが共存する検体中の残留塩素,塩素イオン,硝酸イオン,リン酸イオン又は微量蛋白質を測定するための試薬という物の発明である本件発明3と,その試薬を用いた成分の分析方法という方法の発明である本件発明1・2に係る本件特許権を有している。そして,同(3)エのとおり,被告は,本件発明3を実施した本件各検査薬を販売しており,検査機関等の購入者は,方法の発明である本件発明1・2を実施して蛋白を分析することになる。このため,本件各検査薬の売上高には,本件発明1・2の実施料相当額の利益の要素をも含んでいるというべきである。 もっとも,独占の利益は,職務発明について特許がされた場合,特許発明の実施権を専有する効力に対応して生じるものであるところ,本件各検査薬を購入した者による本件発明1・2の実施は,本件発明3の実施に包含される関係にあるから,本件発明1・2による独占の利益も,本件発明3を実施して本件各検査薬の販売をしたことによる独占の利益に包含される関係にあるというべきである。 したがって,本件発明3による独占の利益と重複しない本件発明1・2による独占の利益を観念することはできず,次の本件発明3による独占の利益について検討すれば足りる。 イ本件発明3について(ア) 超過売上高について被告は,本件発明3について特許を受ける権利を原告から承継しなく - 30 - 利益について検討すれば足りる。 イ本件発明3について(ア) 超過売上高について被告は,本件発明3について特許を受ける権利を原告から承継しなく - 30 -ても,被告は,物の発明である本件発明3について法定通常実施権を有するから(特許法35条1項),被告が本件発明3を自己実施することによる独占の利益は,前記(1)のとおり,被告が本件発明につき特許法35条1項所定の法定通常実施権を有することにより本件各検査薬を販売することができた売上高を超過して得られた超過売上高につき,第三者に対して本件特許権の実施を許諾していたら得られたであろう実施料収入に限られることになる。 (イ) 超過割合についてa 証拠によれば,次の事実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。 (a) 施設採用率(甲1,3,4,7の1ないし16,10,33,35,乙5,6の1ないし3,14の2,16,18,21,36)社団法人日本臨床衛生検査技師会が調査した平成3年度から平成18年度までの尿蛋白定量検査に関する施設採用率の推移は,別紙一覧表のとおりである。平成3年度から平成18年度までの間に,比濁法は約27%から約1%まで大きく減少しているのに対し,比色法は約64%から約95%まで大きく増加している。比色法の中では,クマシーブリリアントブルーG-250を用いるものは約15%から約4%まで減少したり,●(省略)●わずかに増加しているのに対し,ピロガロールレッド・モリブデン錯体を用いる本件各検査薬は約49%から約86%まで大きく増加している。 比色法が増加したのは,蛋白種間差が小さいために検量線が湾曲 - 31 -せず,より正確な測定をすることができた 本件各検査薬は約49%から約86%まで大きく増加している。 比色法が増加したのは,蛋白種間差が小さいために検量線が湾曲 - 31 -せず,より正確な測定をすることができたからであり,中でもピロガロールレッド・モリブデン錯体を用いる本件各検査薬が増加したのは,試験管やセル等の器具類が汚染されないことや,用手法用と自動分析装置用の両製品をそろえていること等によるものである。 この点につき,被告は,本件各検査薬の施設採用率が増加したのは,主に被告の臨床検査薬業のトップメーカーとしての知名度や生化学分野の自動分析装置を貸与する事業を進めたことによるものである旨主張する。しかしながら,被告が臨床検査薬業のトップメーカーであることを認めるに足りる証拠はない。また,証拠(甲3,4,5の1・2,29,乙7の1ないし3,14の2,16,36,原告本人,弁論の全趣旨)によれば,定量法は,血液の生化学検査ではなく,尿便等の一般検査に属し,検体数が少ないなどといった理由により,比色法の下で自動分析装置の導入が進みつつも,なお用手法による測定が原則であり,自動分析装置を生化学検査と共用することも困難であることが認められるから,本件各検査薬の施設採用率が増加したのは,主に被告が生化学分野の自動分析装置を貸与する事業を進めたことによるものともいい難い。したがって,被告の上記主張は,これを採用することができない。 (b) 亜硝酸イオンにより蛋白含量に負誤差が生じる可能性(甲1,29,35,乙6の2・3,14の1,15,33,34,39,弁論の全趣旨)尿の定量法は,24時間以内に蓄尿した尿を試料とすることが推 - 32 -奨されているが,複雑な定量等,長期保存が必要になることもある 5,33,34,39,弁論の全趣旨)尿の定量法は,24時間以内に蓄尿した尿を試料とすることが推 - 32 -奨されているが,複雑な定量等,長期保存が必要になることもある。 亜硝酸は,尿路感染症等を患った場合の細菌尿中に存在し,一般的には時間の経過と共に分解されやすいが,逆に増殖することもあり,2,3日経過した尿は,50~100mg/dlの濃度に達することもある。かつては,トリオール等の防腐剤を入れることもあったが,近年は適切な防腐剤がない状態にある。 尿中の亜硝酸が100mg/dlの濃度に達すると,大半の蛋白含量がマイナスの数値になり,大きな負誤差が生じる。 (c) 代替手段(甲1)本件各発明の解決手段である亜硝酸イオンが目的とする反応に影響を与える前にこれを除去するには,過酸化水素や過マンガン酸塩等で酸化分解してこれを除去する方法がある(本件明細書,4欄36行・37行)。 もっとも,前記方法は,測定操作のステップ数の増加や操作の煩雑化等を伴うため,本件各発明に替わる適切な代替手段があったとはいえない。 (d) 実施許諾例(甲3,4,10,11,弁論の全趣旨)本件各発明につき,●(省略)●以外の実施許諾例はない。 もっとも,本件発明3に係るスルファニル酸等,特定のアミノ基を有する有機化合物は,常に添付文書に記載されるとは限らず,また,被告が他社の臨床検査薬を入手し,分析するなどしていたとも認められない。●(省略)●を添加している旨記載していたため, - 33 -これを原告が発見し,被告が同社に対して警告したことに基づくものである。 b 検討 とも認められない。●(省略)●を添加している旨記載していたため, - 33 -これを原告が発見し,被告が同社に対して警告したことに基づくものである。 b 検討本件各発明は,試料に含まれる亜硝酸イオンにより蛋白含量に負誤差が生じるという問題につき,スルファニル酸等,特定のアミノ基を有した有機化合物を添加することによって解決したものである。その適用対象は,尿や髄液中の蛋白の分析だけに限られない。また,蓄尿の方法によっては,亜硝酸イオンにより蛋白含量に負誤差が生じる上,実際,前記1(1)イ(ウ)のとおり,本件各検査薬が販売される前は,尿中の亜硝酸イオンによるものともうかがわれる原因不明の問合せが続いていたところ,本件各発明に替わる適切な代替手段があったともいえないから,本件各発明の必要性は高かったものといえる。このため,本件各発明と本件特許がなければ,被告の販売していた臨床検査薬「マイクロTP」の施設採用率は約86%まで増加することはなかった可能性が高く,本件各発明と本件特許により,本件各検査薬の施設採用率は約86%にまで至ったものというべきである。 以上の事情を総合的に考慮すると,本件各検査薬の売上高に占める本件各発明に係る超過売上高の割合は,30%を下らないというべきである。 ウ想定実施料率について証拠(乙8の1)によれば,被告が●(省略)●との間で締結した通常実施権の設定に係る契約の実施料率は,販売額の●(省略)●であったこ - 34 -とが認められるから,本件発明3に係る超過売上高の想定実施料の率は,これを●(省略)●と認めるのが相当である。 エ本件発明3による独占の利益の額について以上によれば,本件発明3による独占の利益の ,本件発明3に係る超過売上高の想定実施料の率は,これを●(省略)●と認めるのが相当である。 エ本件発明3による独占の利益の額について以上によれば,本件発明3による独占の利益の額は,次の計算式のとおり,1510万円となる。 (計算式)●(省略)●+●(省略)●×0.3×●(省略)●=1510万円(3) 本件各発明による独占の利益の額について前記(2)アのとおり,本件発明1・2による独占の利益は,本件発明3による独占の利益に包含される関係にあるから,本件各発明による独占の利益の額は,1510万円であるというべきである。 3 争点③(本件各発明がされるについて被告が貢献した程度)について前記第2の1(前提事実)及び第3の1(1)のとおり,本件各発明は,被告が臨床検査薬の開発・製造業者として研究員の原告に研究施設や研究機材を提供し,尿・髄液中の蛋白含量を測定する臨床検査薬「マイクロTP」を開発して販売する中で,ユーザーの大学病院から原因を含む発明の課題が提供されてなされたものである。しかも,証拠(甲12,29)によれば,本件各発明は,ジアゾ反応という有機化学の分野では基本的な化学反応を応用してなされたものであることが認められる上,前記1(1)のとおり,本件各発明の作用効果の確認も,スルファニル酸等,検査薬に特定のアミノ基を有した有機化合物を添加して色調が変化しないことを確認するだけで行えたものである。このため,本件各発明は,解決手段さえ着想することができれば,その完成は容易な発明であったものといえる。また,弁論の全趣旨によれば,原告は,本件各発明の完 - 35 -成のために,購入費565万円の分光光度計や購入費約20万円のpHメーター,購入費約30万円の天びんといった研究機器を いえる。また,弁論の全趣旨によれば,原告は,本件各発明の完 - 35 -成のために,購入費565万円の分光光度計や購入費約20万円のpHメーター,購入費約30万円の天びんといった研究機器を用いたことが認められる上,前記1(1)のとおり,原告は,臨床検査薬「マイクロTP」やスルファニル酸を含めたアミノ基を有する45種類の有機化合物等といった研究材料を用いるとともに,技術サービスセンターに亜硝酸が陽性や陰性の人尿を用いた実験を行ってもらっている。さらに,前記1(1)のとおり,本件各発明は,被告に新商品をもたらしたものではなく,既に被告が販売中の比色法を用いた尿・髄液中の蛋白含量を測定する臨床検査薬「マイクロTP」の処方変更をもたらした付加的な発明にすぎない。 もっとも,証拠(甲12)及び弁論の全趣旨によれば,ジアゾニウム塩を生成するジアゾ反応は,反応性が高いため,定量分析を行う臨床検査薬に用いることは思い付きにくいことが認められる上,本件各発明は,基本的な化学反応を応用した比色法一般に適用し得る広範な発明でありながら,同一の先行発明が存在しなかったのであるから,本件各発明を着想するには発想の転換を要するものであったと推認することができる。また,前記1(1)のとおり,原告が用いた研究施設や研究機器,研究材料は,亜硝酸が陽性や陰性の人尿を除けば,本件各発明のために新規に用意されたものではなく,既存のものを用いたにすぎない。さらに,前記2(2)イ(イ)a(a)のとおり,原告は,本件各発明を通じ,被告が少なくとも16年間にわたり尿中蛋白の定量法において首位の施設採用率を維持することに貢献したものである。加えて,前記1(1)イ(キ)及び2(2)イ(イ)a(d)のとおり,原告は,本件各発明の明細書案を起案し,また,●(省略)●による 定量法において首位の施設採用率を維持することに貢献したものである。加えて,前記1(1)イ(キ)及び2(2)イ(イ)a(d)のとおり,原告は,本件各発明の明細書案を起案し,また,●(省略)●による本件各発明の無断実施を発見して同社に対する有償の実施許諾に - 36 -つなげるなど,本件各発明の権利化や事業化に相応の寄与をしたものでもある。 以上の事情を総合的に考慮すると,本件各発明がされるについて被告が貢献した程度は,90%と認めるのが相当である。 4 争点④(相当対価額)本件各発明の相当対価額は,次の計算式のとおり,本件各発明により被告が受けるべき利益の額1510万円に,本件各発明がされるについて原告が貢献した程度である10%を乗じた151万円となり,被告の未払額は,既払の報奨金6000円を控除した150万4000円となる。 (計算式)1510万円×(1-0.9)=151万円151万円-6000円=150万4000円 5 結論以上によれば,原告の請求は,被告に対し,特許法35条3項所定の相当の対価の未払額150万4000円及びこれに対する弁済期(訴状送達の日の翌日)である平成22年2月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官阿部正幸 裁判官志賀勝 - 37 - 裁判官小川卓逸 別紙特許公報及び別紙 裁判官志賀勝 - 37 - 裁判官小川卓逸 別紙特許公報及び別紙一覧表省略 - 38 -(別紙)特許権目録 特許番号第2965563号発明の名称成分の分析方法出願日昭和62年3月25日登録日平成11年8月13日(1) 特許請求の範囲第1項「亜硝酸イオンを必要とせず,且つ亜硝酸イオンの存在により影響を受ける,成分の分析方法に於て,共存する亜硝酸イオンが目的とする反応に影響を与える前にこれと反応し得る,下記(イ)~(ニ)からなる群より選ばれた1種又は2種以上の含窒素有機化合物の存在下に測定を行うことを特徴とする成分の分析方法。 (イ)式-1 (但し,R1~R5は夫々独立してスルホン酸基,カルボキシル基,水酸基,スルホニルアミノ基,ハロゲン原子,炭素数1~4のアルキル基,ニトロ基又は水素原子を示し,R6は炭素数1~4のアルキル基,炭素数1~4のヒドロキシアルキル基,アミノ基又は水素原子を示す。)で示されるアニリン誘導体及びその可溶性塩類。 - 39 -(ロ)式-2R7-NH-R8[但し,R7及びR8は夫々独立して炭素数1~4のアルキル基,炭素数1~4のヒドロキシアルキル基,炭素数1~4のアミノアルキル基又は水素原子を示す(但し,R7とR8が共に水素原子である場合を除く。)。]で示される脂肪族アミン類及びその可溶性塩類。 (ハ)式-3R9-NHNH2(但し,R9 は炭素数1~4のアルキル基又は水素原子を示す。)で示 8が共に水素原子である場合を除く。)。]で示される脂肪族アミン類及びその可溶性塩類。 (ハ)式-3R9-NHNH2(但し,R9 は炭素数1~4のアルキル基又は水素原子を示す。)で示されるヒドラジン誘導体及びその可溶性塩類。 (ニ)式-4 (但し,R10~R12は夫々独立して水素原子,炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基を示す。)で示されるチオ尿素誘導体及びその可溶性塩類。」(2) 特許請求の範囲第2項「成分の分析方法が,微量蛋白の分析方法である特許請求の範囲第1項に記載の分析方法。」(3) 特許請求の範囲第3項「亜硝酸イオンが共存する検体中の残留塩素,塩素イオン,硝酸イオン,リン酸イオン又は微量蛋白質を測定するための試薬であって,下記(イ)~(ニ)からな - 40 -る群より選ばれた1種又は2種以上の含窒素有機化合物を含んでなることを特徴とする測定試薬。 (イ)式-1 (但し,R1~R5は夫々独立してスルホン酸基,カルボキシル基,水酸基,スルホニルアミノ基,ハロゲン原子,炭素数1~4のアルキル基,ニトロ基又は水素原子を示し,R6は炭素数1~4のアルキル基,炭素数1~4のヒドロキシアルキル基,アミノ基又は水素原子を示す。)で示されるアニリン誘導体及びその可溶性塩類。 (ロ)式-2R7-NH-R8[但し,R7及びR8は夫々独立して炭素数1~4のアルキル基,炭素数1~4のヒドロキシアルキル基,炭素数1~4のアミノアルキル基又は水素原子を示す(但し,R7とR8が共に水素原子である場合を除く。)。]で示される脂肪族アミン類及びその可溶性塩類。 (ハ)式-3R9-NHNH2(但し,R9は炭素数1~4のアルキル基又は水素原子を示す ,R7とR8が共に水素原子である場合を除く。)。]で示される脂肪族アミン類及びその可溶性塩類。 (ハ)式-3R9-NHNH2(但し,R9は炭素数1~4のアルキル基又は水素原子を示す。)で示されるヒドラジン誘導体及びその可溶性塩類。 - 41 -(ニ)式-4 (但し,R10~R12は夫々独立して水素原子,炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基を示す。)で示されるチオ尿素誘導体及びその可溶性塩類。」
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