本件は、D精粉株式会社がE工業株式会社に商品を売り渡し、その後E工業が破産したことに伴い、E工業の破産管財人が本件転売代金債権を譲渡した事案である。主要な争点は、D精粉が動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使するためには、債権譲渡後に差押えを行う必要があるかどうかであった。裁判所は、民法304条1項の趣旨を踏まえ、物上代位権の行使には譲渡後に対抗要件を備えた後でなければならないと判断した。これにより、D精粉は上告人に対して本件転売代金債権の支払義務を負うとされた。判決は、原審の判断を是認し、上告を棄却した。
主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告代理人中村築守の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について 1 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。 (1) D精粉株式会社は,E工業株式会社に対し,第1審判決別表6記載のとおり商品を売り渡し,同社は,上告人に対し,同別表3記載のとおりこれを転売した(以下,この転売契約に基づく売買代金債権のことを「本件転売代金債権」という。)。 (2) E工業は,平成14年3月1日,東京地方裁判所において破産宣告を受け,F弁護士が破産管財人に選任された。 (3) 上記破産管財人は,平成15年1月28日,破産裁判所の許可を得て,被上告人に対し,本件転売代金債権を譲渡し,同年2月4日,上告人に対し,内容証明郵便により,上記債権譲渡の通知をした。 (4) D精粉は,東京地方裁判所に対し,動産売買の先取特権に基づく物上代位権の行使として,本件転売代金債権について差押命令の申立てをしたところ,同裁判所は,平成15年4月30日,本件転売代金債権の差押命令を発し,同命令は同年5月1日に上告人に送達された。 2 本件は,上記事実関係の下において,被上告人が,上告人に対し,本件転売代金債権について支払を求める事案である。 3 民法304条1項ただし書は,先取特権者が物上代位権を行使するには払渡し又は引渡しの前に差押えをすることを要する旨を規定しているところ,この規定は,抵当権とは異なり公示方法が存在しない動産売買の先取特権については,物上- 1 -代位の目的債権の譲受人等の第三者の利益を保護する趣旨を含むものというべきである。そうすると,【要旨】動産売買の先取特権者は,物上代位の目的債権が譲渡され,第三者に対する対抗要 は,物上- 1 -代位の目的債権の譲受人等の第三者の利益を保護する趣旨を含むものというべきである。そうすると,【要旨】動産売買の先取特権者は,物上代位の目的債権が譲渡され,第三者に対する対抗要件が備えられた後においては,目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできないものと解するのが相当である。 4 前記事実関係によれば,D精粉は,被上告人が本件転売代金債権を譲り受けて第三者に対する対抗要件を備えた後に,動産売買の先取特権に基づく物上代位権の行使として,本件転売代金債権を差し押さえたというのであるから,上告人は,被上告人に対し,本件転売代金債権について支払義務を負うものというべきである。 以上と同旨の原審の判断は正当として是認することができる。所論引用の判例(最高裁平成9年(オ)第419号同10年1月30日第二小法廷判決・民集52巻1号1頁,最高裁平成8年(オ)第673号同10年2月10日第三小法廷判決・裁判集民事187号47頁)は,事案を異にし,本件に適切ではない。論旨は,採用することができない。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官上田豊三裁判官濱田邦夫裁判官藤田宙靖)- 2 -
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