本件は、奈良県知事が産業廃棄物処理施設の設置を許可したことに対し、周辺住民がその許可の効力を停止するよう求めた事案である。申立人らは、許可が法律に適合せず、健康や所有権が侵害される恐れがあると主張し、行政事件訴訟法に基づいて効力停止を求めた。主要な争点は、申立人らの申立適格の有無、緊急の必要性、公共の福祉への影響などであった。裁判所は、申立人らが法律上の利益を有する者であり、周辺住民の健康や生活環境が直接的に影響を受ける可能性があることを認め、許可の効力を本案判決が確定するまで停止することを決定した。判決は、申立人らの主張を支持し、許可の効力を一時的に停止することを命じた。
主文 本件申立てのうち,申立人Aに係る部分を却下する。 奈良県知事が,相手方訴訟参加人に対し,平成21年8月10日付け許可番号○をもってした産業廃棄物処理施設の設置に係る許可の効力は,本案判決が確定するまで停止する。 申立費用は,申立人Aに生じた費用と相手方に生じた費用の15分の1を申立人Aの負担とし,申立人B,同C,同D,同E,同F,同G,同H,同I,同J,同K,同L,同M,同N及び同Oに生じた費用と相手方に生じたその余の費用を相手方の負担とする。 理由 第1申立ての趣旨主文第2項同旨第2事案の概要 本件は,奈良県知事が,平成21年8月10日,相手方訴訟参加人(以下「参加人」という。)に対して,別紙1「本件施設の概要」記載の産業廃棄物処理施設(以下「本件施設」という)の設置許可処分(以下「本件処分」と。 いう)をしたところ,同記載の設置場所(以下「本件予定地」という)の。 。 周辺に居住し若しくは農業を営み,又は,同所の周辺に土地を所有している申立人らが,本件処分は,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「法」という)15条の2第1項等に規定されている許可条件に適合せず違法であり,。 同処分により本件施設の設置工事等が開始されれば申立人らの所有権や健康等が害され,又は害されるおそれがあり,その被害回復は事実上不可能となる旨主張して,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という)25条2項に基づき,。 本案判決が確定するまで同処分の効力の停止を求めた事案である。 前提事実(争いのない事実及び本件記録により一応認められる事実)。 (1)申立人Aは,奈良県五條市αの区民で組織する権利能力なき社団である その余の申立人らは,別紙2の1写真に記載された番号付近の各土地を所有して柿や梅を栽培し,又は,別紙3の1写真に 実)。 (1)申立人Aは,奈良県五條市αの区民で組織する権利能力なき社団である その余の申立人らは,別紙2の1写真に記載された番号付近の各土地を所有して柿や梅を栽培し,又は,別紙3の1写真に記載された番号付近の各土地に居住する者らである(別紙2の1及び別紙3の1の各写真の各番号は,それぞれ別紙2の2及び別紙3の2の各表に記載された各番号と対応する。 また,上記各写真に記載された同心円は,本件予定地からの距離を示している。疎甲9ないし21,28ないし34,55,56。 )奈良県知事は,法15条1項に基づく産業廃棄物処理施設設置の許可権限を有している。 参加人は,産業廃棄物の収集業及び処分業等を目的とする資本金1000万円の株式会社である。 (2)参加人は,平成20年7月14日,奈良県知事に対し,本件予定地を設置場所として産業廃棄物最終(埋立)処分場・安定型の設置許可申請(以下「本件申請」という)をした(疎甲1。 。 )(3)申立人らは,平成21年1月19日,相手方を被告として,奈良県知事は本件申請に対し許可をしてはならない旨の差止めを求める訴え(当庁同年(行ウ)第3号産業廃棄物処理施設設置許可差止請求事件。以下「本件本案訴訟」という)を提起した。 。 (4)奈良県知事は,本件申請に応じ,平成21年8月10日付けで,参加人に対し,法15条1項に基づき,本件施設の設置を許可する旨の処分をした(疎甲52。本件処分。 )(5)申立人らは,本件処分がされたため,同月24日,同処分の取消しを求める旨訴えを変更するとともに,本件申立てを行った。 争点 (1)申立人らの申立適格の有無(2)重大な損害を避けるための緊急の必要の有無(行訴法25条2項本文)(3)公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれの有無(行訴法25条4項) (4 争点 (1)申立人らの申立適格の有無(2)重大な損害を避けるための緊急の必要の有無(行訴法25条2項本文)(3)公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれの有無(行訴法25条4項) (4)本案について理由がないとみえるか(行訴法25条4項) 争点に関する当事者の主張本件申立てに関する申立人らの主張は,別紙アの1及び2,これに対する相手方の主張は,別紙イの1ないし3,参加人の主張は,別紙ウの1及び2各記載のとおりである。 第3当裁判所の判断 争点(1)(申立人らの申立適格の有無)について(1)執行停止の申立ては,本案である取消訴訟が適法な訴えとして提起されていることをその適法要件としているから(行訴法25条2項,執行停止)の申立適格を有するのは,本案訴訟の原告適格を有する者であると解されるところ,本案訴訟において原告適格が認められるのは,当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」である(同法9条1項。 )そして「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若,しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいい,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。 そして,処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的 るものというべきである。 そして,処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに 当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項。 )(2)産業廃棄物処理施設を設置しようとする者は,都道府県知事に対して所定の事項を記載した申請書を提出し,その許可を受けなければならないところ(法15条1項2項,特に,当該施設が最終処分場である場合は,その)設置により周辺地域に災害が発生することを未然に防止するため,同申請書),に災害防止のための計画を記載しなければならないとされ(同条2項8号これを受けた廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(以下「規則」という)11条4項は,災害防止のための計画に係る事項として記載すべき。 ものとして,産業廃棄物の飛散及び流出の防止に関する事項(1号,公共)の水域及び地下水の汚染の防止に関する事項(2号,火災の発生の防止に)関する事項(3号)等を規定している。 そして,法15条の2第1項は,上記の知事の許可につき,当該産業廃棄物処理施設の設置に関する計画が環境省令で定める技術上の基準に適合していること(1号)や,当該施設の設置や維持管理に関する計画が周辺地域の生活環境の保全及び環境省令で定める周辺の施設について適正な配慮がなされたものである 計画が環境省令で定める技術上の基準に適合していること(1号)や,当該施設の設置や維持管理に関する計画が周辺地域の生活環境の保全及び環境省令で定める周辺の施設について適正な配慮がなされたものであること(2号)を要件とし,当該産業廃棄物処理施設が安定型最終処分場である場合,同項1号の技術上の基準については,一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める省令2条によって廃棄物の流出防止や安定型産業廃棄物以外の廃棄物の付着又は混入の有無を確認するための水質検査等に関する基準が詳細に定められている。 法15条の2第1項は,法15条2項8号の規定と併せ読めば,周辺地域に災害が発生することを未然に防止するという観点からも上記の技術上の基準に適合するかどうかの審査を行うことを定めているものと解するのが相当である。 そして,人体に有害な物質を含む産業廃棄物の処理施設である最終処分場については,設置許可処分における審査に過誤,欠落があり有害な物質が許容限度を超えて排出された場合には,その周辺に居住するなどしている者の生命,身体に重大な危害を及ぼすなどの災害を引き起こすことがあり得る。 このような法15条及び15条の2の趣旨・目的及び上記の災害による被害の内容・性質等を考慮すると,同条等は,産業廃棄物最終処分場について,その周辺に居住するなどし,当該施設から有害な物質が排出された場合に直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民の生命,身体の安全等を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当である。 以上の見地から考えると,当該施設から有害な物質が排出され,大気や水源等が汚染されることにより生命又は身体に係る重大な被害を直接に受けることが想定される範囲に居住するなどしている者は,当該施 ある。 以上の見地から考えると,当該施設から有害な物質が排出され,大気や水源等が汚染されることにより生命又は身体に係る重大な被害を直接に受けることが想定される範囲に居住するなどしている者は,当該施設設置許可の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」として,本案訴訟における原告適格を有し,同許可の効力の執行停止の申立適格を有するものというべきである。 そして,上記範囲にあるか否かについては,当該施設の種類・規模,当該施設周辺の地形,予想される災害の規模・範囲,住民らの生活状況,住民らの居住地等と当該施設との位置関係等の具体的諸条件を総合考慮の上,社会通念に照らして合理的に判断すべきである。 (3)本件記録によれば,本件施設で処理する産業廃棄物の種類は,別紙1「本件施設の概要」の「処理する廃棄物の種類」欄記載のとおり,安定型産業廃棄物5種類である。安定型産業廃棄物自体は,産業廃棄物の中では,環境に及ぼす影響の度合は比較的小さいとされるが,廃棄物に付着又は混入した有機物が腐敗,分解するなどした場合,鉛等の重金属等が溶出するおそれがある(疎甲57。 ) また,本件施設で処理する産業廃棄物のうち,廃プラスチック類,ガラスくず等及び工作物の新築,改築又は除去に伴って生じたコンクリートの破片その他これに類する不要物には石綿含有産業廃棄物(工作物の新築,改築又は除去に伴って生じた廃石綿等以外の産業廃棄物であって,石綿をその重量の0.1%を超えて含有するもの。廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令6条1項1号ロ,規則7条の2の3)が含まれる。石綿については,その吸引を原因とする主な疾病として,肺がん、中皮腫等が挙げられる。 また,本件施設は,別紙3の1写真の「第二処分場(本件施設)付近の」谷間に位置し,周辺地域の水は,谷間から一級河川β川 ついては,その吸引を原因とする主な疾病として,肺がん、中皮腫等が挙げられる。 また,本件施設は,別紙3の1写真の「第二処分場(本件施設)付近の」谷間に位置し,周辺地域の水は,谷間から一級河川β川を経て,農業用ダムのγダム(本件施設の約3km下流に位置する)に貯水され,δ川へ流入している。 申立人らは,いずれも,本件施設の下流域で居住し,あるいは土地を所有して柿や梅を栽培している(疎甲3の1。 )参加人が奈良県知事に提出した申請書に添付された維持管理計画書や災害防止計画によれば,本件施設においては,産業廃棄物の飛散流出防止のため,),貯留構造物を設置し,十分な覆土(2mごとに0.5m・転圧を施すこと公共の水域及び地下水の汚染防止のため,処分場周縁の地下水及び採取設備により採水された浸透水について法令で義務づけられた検査項目・回数を測定・記録し,法令の基準に適合しないなど水質の悪化が認められる場合,その原因調査を行い,水質環境保全上必要な措置を講じること等が定められ,また,参加人が作成提出した産業廃棄物処理施設設置に係る生活環境影響調査報告書においても,大気汚染対策として,適宜場内散水を行い,粉じんの飛散を軽減すること,水質汚濁対策として,本件施設から発生する雨水については,集水桝に集水し,埋設した有孔管を通じて沈砂池に貯留し濁水発生を防止すること等の対策を採ることとされている(疎甲1。 )なお,上記報告書には,排水(浸透水)による影響範囲について,奈良県 産廃要綱の水利同意の範囲を基に,2kmが目安である旨記載されている。 以上の事実によれば,本件処分における審査に過誤,欠落があり,本件施設の大気汚染対策又は水質汚染対策が十分に機能せず,同施設から有害な産業廃棄物が大気中に飛散し,あるいは同施設からの浸透水やその周辺の地下水 によれば,本件処分における審査に過誤,欠落があり,本件施設の大気汚染対策又は水質汚染対策が十分に機能せず,同施設から有害な産業廃棄物が大気中に飛散し,あるいは同施設からの浸透水やその周辺の地下水が汚染されて下流域に流入した場合,同施設の周辺の一定の地域に居住し,あるいは土地を所有して農業を営む者は,これらを継続的に吸引ないし摂取する環境にあり,同施設から人体に有害な物質を含有する飛散物や汚染水が許容限度を超えて排出されると,生命又は身体に係る重大な被害を直接に受けるおそれがあるから,本件処分の取消を求めるにつき「法律上の利益を有する者」として,本件本案訴訟における原告適格を有し,同許可の効力の執行停止の申立適格を有するというべきである。 そして,本件施設の処理能力や上記報告書の排水(浸透水)による影響範囲の記載に照らせば,申立人Aを除く申立人ら(以下,併せて「申立人Bら」という)は,いずれも本件予定地の下流約2km未満の土地に居住し,。 又は,土地を所有して柿や梅を栽培しているから,同施設から人体に有害な産業廃棄物が大気中に飛散し,あるいは同施設からの汚染水が下流域に流入した場合,これらを継続的に吸引ないし摂取する環境にあるということができ,同施設から有害な物質を含有する飛散物や汚染水が許容限度を超えて排出されると,生命又は身体に係る重大な被害を直接に受けるおそれがあるというべきである。 したがって,申立人Bらは,本件処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」として,本件本案訴訟における原告適格を有し,同許可の効力の執行停止の申立適格を有すると認めることができる。 これに対し,権利能力なき社団である申立人Aについては,生命又は身体に係る被害を観念することができない。 なお,申立人らは,所有権の侵害ないし侵害のおそれを理由とし 適格を有すると認めることができる。 これに対し,権利能力なき社団である申立人Aについては,生命又は身体に係る被害を観念することができない。 なお,申立人らは,所有権の侵害ないし侵害のおそれを理由として申立適 格を有するとも主張する。 しかし,法15条等の趣旨,目的等からすれば,同条等が,産業廃棄物処理施設周辺の前記範囲内において居住する者等の生命,身体の安全とは別に,当該施設周辺の個々人又は団体が有する所有権その他の財産上の権利,利益をも保護すべきものとする趣旨を含むものと解することはできない。したがって,申立人らの上記主張は採用することができない。 (4)以上により,申立人Aによる本件申立ては,申立適格を欠くから,その余の点について判断するまでもなく失当である。 争点(2)(重大な損害を避けるための緊急の必要の有無)について(1)行政処分の効力の停止は,当該行政処分により生ずる「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」にすることができるものであるところ(行訴法25条2項,その損害の重大性の判断にあたっては,損害の回復の困)難の程度を考慮し,損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとされている(同条3項。 )(2)そこで,検討するに,前記のとおり,本件処分により本件施設は設置されることとなるところ,同処分における審査の過誤,欠落により同施設から人体に有害な物質を含有する飛散物や汚染水が許容限度を超えて排出された場合,申立人Bらが生命又は身体に係る重大な被害を直接に受けるおそれがあることは,前記のとおりである。 そして,本件記録によれば,参加人の代表取締役であるPは,本件予定地に隣接する場所において,事前に付近住民の代表者らと公害防止協定を結んだ上,平成2年2月21日,奈良県知事に対し,本件施設と同様の そして,本件記録によれば,参加人の代表取締役であるPは,本件予定地に隣接する場所において,事前に付近住民の代表者らと公害防止協定を結んだ上,平成2年2月21日,奈良県知事に対し,本件施設と同様の産業廃棄。 ,物の安定型最終処分場(以下「第一処分場」という)の設置許可届出をしその後,同知事の許可を受けて,参加人と共に同処分場において埋立処分業を行っていたが,許可された処理能力面積や容量を大幅に超えて産業廃棄物の埋立を行い,埋め立てられた廃棄物の十分な転圧や覆土を行わず「産廃, 富士」と呼ばれるほどの容量となっただけでなく,届出された安定5品目以外の有機物等が数多く混入していたため,その腐敗,分解などにより鉛や鉄,マンガン等の重金属等が溶出している(疎甲2の1ないし3,3の1及び2,57ないし59。 )申立人らの一部は,他の付近住民らと共に,P及び参加人に対し,上記産廃富士の一部(村道の高さを超えるもの)の撤去を求めて,奈良地方裁判所五條支部に訴えを提起したところ(同庁平成×年(ワ)第×号公害防止協定に基づく廃棄物撤去請求事件,認容判決を得,その後,平成12年11月2)9日,同事件の控訴審(大阪高等裁判所平成×年(ネ)第×号)において,当事者間で上記認容判決と同内容の和解が成立した(甲3の1及び2。 )上記和解により,参加人及びPは,上記産廃富士の一部を撤去することを約束したにもかかわらず,これを履行せず,同産廃富士は,現在も放置されたままになっている(甲5の1及び2,7の1ないし6,59,62。 )さらに,本件処分には「五條市ε×番地外7筆にある市道高以上に存す,る産業廃棄物(上記産廃富士を指す)の撤去は,本許可に基づき埋立処分。 が可能な時から本許可に基づく場所へ1ヶ年の間に行うこと」との条件(別紙1「本件施設の概要 番地外7筆にある市道高以上に存す,る産業廃棄物(上記産廃富士を指す)の撤去は,本許可に基づき埋立処分。 が可能な時から本許可に基づく場所へ1ヶ年の間に行うこと」との条件(別紙1「本件施設の概要」記載の「許可条件)が付されているが,上記のと」おり,上記産廃富士の中には,安定型産業廃棄物以外の有機物等も含まれており,その分解等によって重金属等が発生していることが認められ,上記条件に従うと,本件施設には,当初から安定型産業廃棄物以外の有害な廃棄物が埋め立てられることになり,違反したまま操業となる。 以上に照らせば,申立人Bらが直接被るおそれのある生命又は身体に係る重大な被害はいったん発生すると,同申立人らの生命,身体の安全等に対し償うことができない損害を生じさせるものであり,しかも参加人及びその代表取締役であるP(以下「参加人ら」という)についての第一処分場をめ。 ぐる前記の事情にかんがみれば,その蓋然性は極めて高く,金銭賠償によっ て回復することは困難というべきである。 このような損害の回復の困難の程度,損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質を勘案すると,本件は,「重大な損害を避けるため,緊急の必要が」。 あるとき(行訴法25条2項本文)に当たるものと認めるのが相当である相手方は,本件申請において,石綿の飛散については,環境省が定める石綿含有廃棄物処理マニュアルに沿った対策を講じており,水質汚濁については,そもそも本件施設で処理されるのは安定型産業廃棄物であって水質に悪影響を及ぼすことはないし,法定の基準を満たす水質汚濁防止対策も講じており,本件処分によって重大な損害が生じることはあり得ない,本件施設については,本件処分後も工事終了後の施設設置完了検査や産業廃棄物処分業許可等,本件と別個の行政処分等を経る必要があるところ, じており,本件処分によって重大な損害が生じることはあり得ない,本件施設については,本件処分後も工事終了後の施設設置完了検査や産業廃棄物処分業許可等,本件と別個の行政処分等を経る必要があるところ,申立人らの主張は,将来の法令違反や許可条件違反といった相手方が同施設稼働後に行うおそれのある行為を仮定し,そこから生じる損害を問題にしているにすぎず,そのような損害については,違反があった時点で事後的な許可取消等の対象となるにすぎないから,本件については,重大な損害や緊急の必要性の疎明がなされていない旨主張する。 確かに,産業廃棄物最終処分場については,設置許可のみならず,設置工事完了後の施設設置完了検査,産業廃棄物処分業許可等を受けなければ稼働することができないが,法は,上記各規制を段階的に行うことを予定しており,都道府県知事は,設置許可の段階で,申請者が,申請書やその添付資料の内容どおりに当該産業廃棄物処理施設を設置,維持管理するか否かを審査しなければならないのであるから,後に使用前検査や処分業許可の段階で審査される事項であるからといって将来の義務違反行為のおそれの有無が設置段階の審査事項から除外されることにはならない。しかも,参加人らの第一処分場をめぐる前記の違反状態が放置されたままになっている事情にかんがみると,参加人らは,本件施設設置工事を完了させて,相手方主張の後続行 政処分を経ずに本件施設を稼働させるおそれがあり,また,これに対する相手方の適切な措置も期待することができない。 したがって,相手方の前記主張は採用することができない。 争点(3)(公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれの有無)について相手方は,本件処分には,条件(別紙1「本件施設の概要」記載の「許可条件)が付されており,これが履行されることにより前記産廃富士の 争点(3)(公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれの有無)について相手方は,本件処分には,条件(別紙1「本件施設の概要」記載の「許可条件)が付されており,これが履行されることにより前記産廃富士の問題が解」決するのであるから,同処分の効力が執行停止されると,本件本案訴訟が解決するまで上記の問題が解決せず,公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあると主張する。 しかしながら,そもそも前記産廃富士は参加人らが第一処分場の許可条件に反して自ら生じさせたものであり,その撤去については,前記のとおり,本件処分の相当以前から参加人らがその義務を負っているのであって,本件処分の効力の有無によってその履行が左右される筋合いのものではなく,公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとは到底認めることができないから,上記主張は採用することができない。 そして,本件において,他に本件処分の執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるという具体的な事情を認めるに足りる疎明もない。 争点(4)(本案について理由がないとみえるか)について相手方は,本件処分にあたっては,慎重に審査しており,実体法的にも手続法的にも何ら違法はなく,本案について理由がないとみえるときに当たると主張する。 しかし,本案について理由があるか否かは,本案訴訟において,主張立証が尽くされた上慎重に判断されるべき事柄である。したがって,行訴法25条4項の前記要件は,相手方において本件処分の適法要件の具備を疎明した場合に限られるというべきである。 本件においては,申立人らは,①参加人は産業廃棄物処理施設設置及び維持 管理を的確にかつ継続して行う者ではない(法15条の2第1項3号,規則12条の2の3,②参加人とその代表者Pには,その業務に関し不正又は不誠)実な行為をする恐れがあ 棄物処理施設設置及び維持 管理を的確にかつ継続して行う者ではない(法15条の2第1項3号,規則12条の2の3,②参加人とその代表者Pには,その業務に関し不正又は不誠)実な行為をする恐れがあると認めるに足りる相当な理由がある(法15条の2第1項4号,14条5項2号イ・ニ,7条5項4号ト,③本件施設の維持管)理に関する計画が周辺地域の生活環境の保全について適切な配慮をしているとはいえない(法15条の2第1項2号)と主張して,本件処分の適法性を争い,これに沿う疎明資料を一応提出している。 そして,上記①ないし③の事情はいずれか一つでも該当すれば,知事は設置許可をしてはならないことになるから,申立人らの上記主張の当否の判断についてはさらなる審理を尽くす必要があり,少なくとも現段階でその当否を決することは困難である。 以上によれば,相手方が提出した疎明資料のみから,現段階で本件処分は適法要件を具備しているとして,本件が「本案について理由がないとみえるとき」に当たるとまではいい難い。 以上によれば,申立人Aの本件申立ては不適法であるからこれを却下し,申立人Bらの本件申立ては理由があるからこれらを認容することとして,主文のとおり決定する。 平成21年11月26日奈良地方裁判所民事部裁判長裁判官一谷好文裁判官小川紀代子 裁判官船戸容子
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