平成11(行ウ)234 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成13年6月14日 東京地方裁判所 住民訴訟
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本件は、東京都六市競艇事業組合の職員に対する特殊勤務手当の支給の合法性が争われた事件である。原告は、同組合の職員に対して支給された特殊勤務手当が地方自治法や地方公務員法に違反し、支給の根拠が不適切であると主張し、被告に対してその返還を求めた。主要な争点は、特殊勤務手当の支給が法令に基づいているかどうかであり、裁判所は、手当の支給が条例に基づくものであり、適法であると判断した。結果として、原告の請求は一部認められ、被告らに477万2000円の支払いが命じられ、その他の請求は棄却された。

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判決文本文23,904 文字)

主文 被告らは,東京都六市競艇事業組合に対し,連帯して,金477万2000円を支払え。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,これを5分し,その1を被告らの負担とし,その余を原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告らは,東京都六市競艇事業組合に対し,連帯して,金2235万7351円を支払え。 第2 事案の概要本件は,東京都六市競艇事業組合(以下「六市事業組合」という。)を構成する町田市の住民である原告が,平成10年8月から平成11年4月にかけて同組合の職員に対してされた特殊勤務手当の支給について,その支給の根拠は,規則に定められたところによるものであって,地方自治法204条3項,204条の2及び地方公務員法24条6項,25条1項に定める給与条例主義に違反し,また,支給の対象となった勤務も,何ら特殊性がないから,これらの手当の支給は違法であると主張して,同組合の事務局長であり前記支給に係る支出負担行為者である被告A及び同組合の管理者であり前記支給に係る本来的権限者である被告Bに対し,地方自治法242条の2第1項4号に基づいて,前記の期間に支払われた特殊勤務手当相当額の賠償を求めるものである。 1 法令の定め等(1) 一部事務組合の職員に対する特殊勤務手当の支給に関する法律の定めア普通地方公共団体は,条例で,前項の職員に対し,扶養手当,調整手当,…特殊勤務手当…を支給することができる。(地方自治法204条2項)イ給料,手当及び旅費の額並びにその支給方法は,条例でこれを定めなければならない。(地方自治法204条3項)ウ普通地方公共団体は,いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基く条例に基かずには,これを第203条第1項の職員及び前条第1項の職員に支給することができない。(地方自治法20 治法204条3項)ウ普通地方公共団体は,いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基く条例に基かずには,これを第203条第1項の職員及び前条第1項の職員に支給することができない。(地方自治法204条の2)エ地方公共団体の組合については,法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか,都道府県の加入するものにあつては都道府県に関する規定,市及び特別区の加入するもので都道府県の加入しないものにあつては市に関する規定,その他のものにあつては町村に関する規定を準用する。(地方自治法292条)オ職員の給与,勤務時間その他の勤務条件は,条例で定める。(地方公務員法24条6項)カ職員の給与は,前条第六項の規定による給与に関する条例に基いて支給されなければならず,又,これに基かずには,いかなる金銭又は有価物も職員に支給してはならない。(地方公務員法25条1項)(2) 東京都六市競艇事業組合職員の給与に関する条例(昭和48年東京都六市競艇事業組合条例第8号。以下「本件条例」という。)は,下記のとおり規定している。 記特殊勤務手当は,著しく困難な勤務その他著しく特殊な勤務で,給与上特別の考慮を必要とし,かつ,勤務の特殊性を給料で考慮することが適当でないと認められるものに従事する職員には,その勤務の特殊性に応じて特殊勤務手当を支給する。 (本件条例12条の2第1項)(3) この特殊勤務手当の種類,支給の範囲等についての本件条例の規定は,平成11年3月31日東京都六市競艇事業組合条例第6号による改正(以下,この改正を「本件改正」といい,本件改正前の本件条例を「改正前の条例」,本件改正後の本件条例を「改正後の条例」という。)が行われ,平成11年3月31日,施行された。 ア本件改正前の定めa 特殊勤務手当の種類,支給さ 」といい,本件改正前の本件条例を「改正前の条例」,本件改正後の本件条例を「改正後の条例」という。)が行われ,平成11年3月31日,施行された。 ア本件改正前の定めa 特殊勤務手当の種類,支給される職員の範囲,支給額その他,特殊勤務手当の支給に関し必要な事項は,別に規則で定める。(改正前の条例12条の2第2項)b 上記本件条例12条の2第2項を受けた規則として,東京都六市競艇事業組合職員の特殊勤務手当支給規則(昭和55年東京都六市競艇事業組合規則第3号。以下「本件規則」という。)が設けられ,次のとおり定められている。 i 特殊勤務手当の種類は,次の各号に定めるところによる。 ① 開催手当② 庁用自動車運転手当③ 特別繁忙手当(本件規則2条)ii 支給範囲及び額は,別表に定めるところによる。(本件規則3条)iii 上記にいう本件規則の別表は,特殊勤務手当の支給範囲及び支給額について,次のとおり定めている。なお,前検日とは,競艇が開催される日の前日をいうものである。 ① 開催手当競艇の開催日及び前検日に勤務する職員に対し,日額として給料月額の100分の1.5② 庁用自動車運転手当業務上庁用自動車の運転に従事する職員に対し,日額200円を,③ 特別繁忙手当 12月29日から1月3日までに従事する職員に対し,日額1万円を,イ本件改正後の定めa 特殊勤務手当の種類,支給される職員の範囲及び支給額は,別表第2のとおりとし,給料の支給方法に準じて支給する。(改正後の条例12条の2第2項)b 前2項に定めるもののほか,特殊勤務手当の支給に関し必要な事項は,別に規則で定める。(改正後の条例12条の2第3項)c そして,改正後の条例の別表第2は,特殊勤務手当の種類,支給される職員の範囲及び支給額について,次のとおり定め 務手当の支給に関し必要な事項は,別に規則で定める。(改正後の条例12条の2第3項)c そして,改正後の条例の別表第2は,特殊勤務手当の種類,支給される職員の範囲及び支給額について,次のとおり定めている。 i 開催手当競走開催日に勤務する職員に対し,日額として給料月額の100分の1.5(ただし,1月1日から同月3日まで及び12月29日から同月31日までの間にあっては,1日につき1万円を加算する。)ii 庁用自動車運転手当職務として庁用自動車を運転する職員に対し,日額200円ウまた,前記東京都六市競艇事業組合条例第6号は,その附則において,本件改正による規定の適用の始期及び過去に支給された特殊勤務手当について,それぞれ次のとおり規定している。 a この条例による改正後の東京六市競艇事業組合職員の給与に関する条例の規定は,平成11年4月分の手当から適用する。(同条例附則2項)b この条例の施行の日前に東京都六市競艇事業組合職員の特殊勤務手当支給規則(昭和53年規則第3号)に基づいて支給した同種の手当は,改正後の条例に基づいて支給した手当とみなす。(同条例附則3項)(以下,上記bの同条例附則3項の規定を「本件経過規定」という。)。 2 前提となる事実(証拠等を掲記した以外の事実は,当事者間に争いのない事実である。)(1)ア六市事業組合は,昭島市,小金井市,調布市,八王子市,町田市及び武蔵野市から構成される一部事務組合であり,東京都渋谷区代々木に本部事務所を置き,江戸川競艇場において競艇事業を行っている。(弁論の全趣旨)イ原告は,町田市の住民である。 ウ被告Bは,昭和63年3月以降,六市事業組合の管理者の地位にある者である。 被告Aは,平成10年4月以降,同組合の事務局長の地位にある者であり,六市事業組合の特殊勤務手 ,町田市の住民である。 ウ被告Bは,昭和63年3月以降,六市事業組合の管理者の地位にある者である。 被告Aは,平成10年4月以降,同組合の事務局長の地位にある者であり,六市事業組合の特殊勤務手当の支給に関し,専決として支出負担行為をする権限を有する者である。 (2) 六市事業組合では,平成10年8月から平成11年4月にかけて,毎月の給与支給日である毎月20日に,職員に対し,それぞれ前月分の勤務実績に基づき,本件規則5条及び同規則別表に定める基準に従って,前月分の特殊勤務手当として,合計で以下のとおりの金員(合計2235万7351円)が支給された。 平成10年8月 241万6903円同年9月 185万8786円同年10月 298万0160円同年11月 149万4816円同年12月 254万2444円平成11年1月 401万7908円同年2月 222万8167円同年3月 232万2968円同年4月 249万5199円(以下,これらの特殊勤務手当を併せて「本件手当」といい,本件手当のうち,開催手当に係るものを「本件開催手当」,庁用自動車運転手当に係るものを「本件運転手当」,特別繁忙手当に係るものを「本件特別繁忙手当」という。)(3) 被告Aは,本件手当の支給について,六市事業組合の規程に基づき,専決として各支出負担行為(以下「本件各支出負担行為」という。)を行った。(弁論の全趣旨)(4) 原告は,平成11年8月2日付けで,六市事業組合監査委員に対し,同組合における特殊勤務手当の支給は自治省(当時)のした同手当に関する定義から著しく乖離しており不当であるなどとして,同組合の給与条例(改正後 ,平成11年8月2日付けで,六市事業組合監査委員に対し,同組合における特殊勤務手当の支給は自治省(当時)のした同手当に関する定義から著しく乖離しており不当であるなどとして,同組合の給与条例(改正後の条例)を改正し,平成10年度に支給された特殊勤務手当を同組合に返還させること等を求めて監査請求をした。 これに対し,六市事業組合監査委員は,同年9月30日,本件手当は,同組合の管理者が条例に基づいて議決された予算により支給しているとして,上記監査請求を棄却した。(甲1)(5) 原告は,上記監査の結果を不服として,同年10月19日,地方自治法242条の2第1項4号の規定に基づき,六市事業組合に代位して,本件訴訟を提起した。(当裁判所に顕著な事実) 3 当事者の主張(原告の主張)(1) 改正前の条例12条の2第2項の規定は,特殊勤務手当について,本来,条例で定めるべき事項をすべて規則に白紙委任したものであり,給与条例主義に反する違法,無効な規定である。 本件手当の支給は,この違法,無効な規則に基づいてされたものであるから,違法なものである。 (2) 本件手当の支給は,次のとおり,本件条例12条の2第1項の規定する要件を満たさない勤務に対して支給されたものであるから,この点からも違法である。 ア本件開催手当について六市事業組合が競艇を開催するのは同組合の当然の業務である。 そして,競走開催日であっても,同組合の職員(以下「本件職員」という。)のおよそ半数は競艇現場とは遠く離れた東京都渋谷区内の事務所で通常の事務を執っているにすぎない。また,現場に出かける残りの半数の職員も,自らボートに乗り危険な操縦をするわけではなく,特殊技能を必要とするコンピューターの操作や危険を感ずる場内警備や清掃・管理等は業者に委託しているし,小松川警察署警官 場に出かける残りの半数の職員も,自らボートに乗り危険な操縦をするわけではなく,特殊技能を必要とするコンピューターの操作や危険を感ずる場内警備や清掃・管理等は業者に委託しているし,小松川警察署警官が警らのため出張して来ているのであるから,結局のところ,単に事務的に監視し事務処理をしているにすぎない。 イ本件運転手当について運転手が自動車を運転するのは当然であるし,事務職員が運転しても,その際,当該職員は本来の事務を離れており,特別の業務をしているわけではない。今日,自動車の運転は大多数の国民の普遍的技術であって,特別な技術を要するものではない。 (3) 瑕疵の治癒の不存在について行政法規には遡及効はなく,また,事後の立法によって過去の行為を適法としたり,違法としたりすることができないのが法治主義の大原則である。しかも,本件訴訟で問題となっているのは,違法な支出をした被告らの責任であるところ,六市事業組合の議会(以下,単に「議会」という。)には,これを遡って帳消しにする権限はない。 (4) 被告らの過失等について自治省(当時)は,かねてより,全国の地方自治体に対し,特殊勤務手当の適正な支給を求める通達を発しており,被告らはこれを認識していたから,被告らは,本件手当の支給が違法なものであることを容易に知り得たはずである。 したがって,本件手当を支給したことにつき,支出負担行為者である被告Aには重過失があり,管理者として本来的権限を有していた被告Bには指揮監督義務違反の過失があるというべきである。 (被告らの主張)(1) 地方自治法及び地方公務員法は,いわゆる給与条例主義を採用しているが,これは,地方公務員の給与のいかんについては,それを負担している住民の代表である議会の判断にかからしめようとの趣旨によるものである。 改正前の条 方公務員法は,いわゆる給与条例主義を採用しているが,これは,地方公務員の給与のいかんについては,それを負担している住民の代表である議会の判断にかからしめようとの趣旨によるものである。 改正前の条例において,特殊勤務手当の種類,支給される職員の範囲,支給額その他,特殊勤務手当の支給に関し必要な事項が条例で定められず,規則に委任されたのは,これらについては,非常勤である議会議員ではなく,直接職員を指揮・管理する立場にある管理者が,組合事業の効率的な推進,職員のモラル等を勘案しつつ定めることが適当であると議会が判断したことによるものである。 地方公共団体の事務は国の事務に比べ,また地方公共団体相互間においても多種多様であるから,特殊勤務手当の内容を規定するに当たっては,条例の制定機関である地方議会に広い裁量権が与えられていると解されるところであり,また,給与条例主義は,特殊勤務手当の支給要件・対象・金額等のすべてを条例で定めなければならないというものではなく,必要に応じ細部を規則等に委任することができると解されている。 上記のような規則への委任は,往々にしてみられるところであり,当不当の問題はあっても違法とはいえず,本件手当の支給は,総合的にみて条例に基づき支給されたものということができる。 (2) 仮に,特殊勤務手当の具体的内容を本件規則に委任していた点で給与条例主義に反する瑕疵があったとしても,それは明白かつ重大な瑕疵とはいえず,その瑕疵のゆえに本件条例が無効となっていたものではないというべきである。 そうすると,被告らとしては,本件条例が改正されるまではこれに従う義務があるから,本件規則に基づいて本件手当を支給すべき義務を負っていたものであり,その支給が違法であったということにはならない。 (3) 本件条例12条の2第1項は,特殊 改正されるまではこれに従う義務があるから,本件規則に基づいて本件手当を支給すべき義務を負っていたものであり,その支給が違法であったということにはならない。 (3) 本件条例12条の2第1項は,特殊勤務手当の支給の対象となる勤務について,①著しく困難な勤務その他著しく特殊な勤務であり,②給与上特別の考慮を必要とし,③勤務の特殊性を給料で考慮することが適当でない,との3つの要件(以下「本件3要件」という。)を規定しているところ,本件規則別表の定める各手当は,その勤務が,次のとおり,いずれも本件3要件を満たすものであるとの判断に基づいて規定されたものである。 ア開催手当についてa 本件職員は,全員,開催日であれば,土日祝日の区別なしに出勤しなければならず,しかも,開催日は開催の2か月から5か月前にならないと決定しないし,天候による中止・順延により開催日が延びることがあるため,長期的なレクリエーション等のプランが立てられないという,二重,三重に不安定な状況になっている。 しかも,六市事業組合の事業は,実質的にはギャンブルであるため金銭が絡んでおり,かつ,ギャンブルの通性としていわゆる勝つ人よりも負ける人の方が多数であるため競艇場内には潜在的に不満が漂っていることから,わずかなミスからファンによる騒擾事件へと発展する可能性があり,それゆえ,開催日には本件職員全員が最大限の精神的緊張を強いられるという勤務の特殊性がある。 現に,六市事業組合の施行している江戸川競艇では,平成9年に2件の比較的大きな事件が起きているし,そこまで至らないまでも,スタートの適否,走法の適否の判定等を巡って抗議等が日常的に起きており,これが騒擾事件へと発展しないよう,ファンへの対応について本件職員全員が常に大きな精神的緊張を強いられている。 b 開催日の前日である前検 否,走法の適否の判定等を巡って抗議等が日常的に起きており,これが騒擾事件へと発展しないよう,ファンへの対応について本件職員全員が常に大きな精神的緊張を強いられている。 b 開催日の前日である前検日は,各選手への艇の割当て,出走表の作成・点検,券売機や払戻機の稼働点検等,翌日早々から競技をスタートできるようすべての準備を整える日であるが,本件改正前においては,前検日を開催日と一体として捉え,開催日同様休暇を認めていなかったこと,騒擾発生防止に向けての点検や用意に細心の注意が要求されていたことから,本件改正前においては前検日も開催日と一体として開催手当の対象としていたものである。 c 六市事業組合は,江戸川の流水の一部を区切って直接に競技水域として利用しているところ,このため,開催日(開催予定日)における開催の可否の判断が,当日の風向風力の状況や気象条件により左右されるところが他の施行者よりもはるかに大きい。そのため,各開催日の前日(前検日)には,組合の管理職1名,一般職2名の合計3名が競艇場の近くに泊まり込み,早朝起床のうえ当日午前6時半現在における流水の状態を把握し,さらに,前日及び当日の気象状況及び天気予報等を勘案して開催するか否かを決定したうえ,午前7時までにマスコミ関係者(予想紙発行機関その他),関係交通機関,警備当局及び全職員に対し連絡を終えるという特殊な勤務を行わなければならない。 このように早期に判断し,開催の有無を明確にしなければ,開催中止の場合にそれを知らずに来場したファンから苦情が寄せられるし,開催決定後に天候の変化によって競技を中止した場合もファンからの苦情や騒擾につながるので,慎重かつ的確な判断が要求されている。本件職員は順番でこのような泊まり込みを行っているが,これに対しては宿泊費のみが支給されており,このこ て競技を中止した場合もファンからの苦情や騒擾につながるので,慎重かつ的確な判断が要求されている。本件職員は順番でこのような泊まり込みを行っているが,これに対しては宿泊費のみが支給されており,このことは,特殊勤務手当の額の決定に当たって一つの要素と考えられているものである。 なお,本件職員の職務が一般行政職とは異なるものであることから,これに対して異なった給料表を設けることで給料において考慮することも考えられるが,その勤務の特殊性が開催日と直結していることから,開催日の日数と比例させることとし,特殊勤務手当としているものである。 イ庁用自動車運転手当自動車の運転に際しては,交通事故を起こさないよう特別の注意が必要とされるところ,専門の運転手については給料表で配慮されているのに対し,一般職員が運転する場合には給料表上の配慮がないため,特殊勤務手当で対応しているものである。 ウ特別繁忙手当いわゆる年末年始時期であり一般の公務員は休みであって,年明けの準備にいそしみ,又は新年気分を楽しんでいる時期に出勤するという勤務の特殊性に着目し,特殊勤務手当の対象としているものである。 エ開催手当,特別繁忙手当と休日手当との併給について開催日が休日に当たった場合,労働基準法37条1項によれば,使用者は割増賃金を支払わなければならないところ,開催手当はこのような割増賃金をカバーしていないことから,六市事業組合は,①開催日が日曜日の場合,職員の同意を得て,割増賃金を支給せずに振替休日を取ることとする,②日曜日以外の祝日の場合,職員のローテーション上,振替が困難であるため,条例で定められている休日勤務手当を支給する,③年末年始については,休日勤務手当に加えて特別繁忙手当を支給する,という取扱いをしている。 年末年始について休日勤務手当に加え特別 替が困難であるため,条例で定められている休日勤務手当を支給する,③年末年始については,休日勤務手当に加えて特別繁忙手当を支給する,という取扱いをしている。 年末年始について休日勤務手当に加え特別繁忙手当を支給していた理由は,年末年始が通常の休日と異なり,職員としては年末の家内整理や新年の挨拶等で最も休暇を必要とする時期であり,また,多くの場合,年間を通じまとまった休暇の取れる唯一の機会であることに配慮しているものである。 (4) 本件改正による瑕疵の治癒についてア六市事業組合において,特殊勤務手当の規定を一部本件規則に委任していることが給与条例主義に反するのではないかという指摘があったことから,議会が,従来本件規則で規定されていたのと同様の内容を改正後の条例で定めるとともに,本件経過規定を置いたものである。 前述のとおり,議会には,給与に関して一定の裁量権が認められているところ,本件経過規定は,住民の代表機関である議会が,従来からの特殊勤務手当の支給が適正であったことを条例の改正により確認するとともに,本件条例の改正前にされた支給についてもそれが議会の意思に適合していたものであることを遡って確認したものであり,仮に本件改正前にされた支給が給与条例主義に違反していたとしても,その瑕疵は治癒されたというべきである。 イ本件経過規定により,「改正後の条例に基づいて支給される特殊勤務手当」と同種の手当について,「改正後の条例に基づいて支給した手当」とみなされることになると解されるところ,「同種の手当」の内容ないし範囲について検討するに,まず,文理的にみて,改正後の条例と同名かつ同趣旨である開催手当及び庁用自動車運転手当がこれに当たるというべきである。 特別繁忙手当については,改正後の条例においてその名称はなくなったが,改正後の条例の 文理的にみて,改正後の条例と同名かつ同趣旨である開催手当及び庁用自動車運転手当がこれに当たるというべきである。 特別繁忙手当については,改正後の条例においてその名称はなくなったが,改正後の条例の開催手当中にこれに相当するものが含まれていることから,本件改正前に本件規則に基づいて支給された特別繁忙手当も「同種の手当」に含まれるものと解される。 なお,本件改正前において,前検日も開催手当と一体のものとして開催手当が支給されていたことは前記のとおりであるところ,近年,競艇事業の収支が厳しくなってきたことから,本件改正に際して特殊勤務手当の見直しを行い,前検日については休暇を認めないという拘束を外し,同時に開催手当の対象からも外したものにすぎないから,本件改正前に行われていた前検日に対する開催手当の支給も,「同種の手当」に含まれるものと解すべきである。 仮に特別繁忙手当及び前検日に対する開催手当について,これを「同種の手当」とみなさないのであれば,その旨を附則の中で明記し,解釈上の混乱を避けるのが当然であるが,そのような除外規定がないことは,本件改正前に本件規則に基づいて支給されていた特殊勤務手当については,特にその一部を除外することなく同種の手当として,改正後の条例に基づいて支給した手当とみなすというのが本件経過規定の趣旨と考えられる。 (5) 被告らに過失等がないことについて被告らが現職に就任した時には,既に前記1(3)アのとおり特殊勤務手当が支給されるという体系が確立され,長年にわたりそれが維持されてきたし,会計や出納担当職員,条例制定権者である議会から何ら疑問が提起されたことはなかったうえ,執行機関として条例の規定に従って行政運営を行わなければならないこと,本件条例の瑕疵は当時としては必ずしも明白でなかったことからして,被告らは 者である議会から何ら疑問が提起されたことはなかったうえ,執行機関として条例の規定に従って行政運営を行わなければならないこと,本件条例の瑕疵は当時としては必ずしも明白でなかったことからして,被告らは,本件規則に従って本件手当を支給する義務を負っていたものである。 さらに,行政は日常的な行為の繰り返しによる流れとして運営され,多くの決裁書類が日々決裁者の下に回されるのであるから,その一つ一つについて決裁者が法的根拠まで遡って検討していては行政事務の停滞を招くことになるし,特に,人件費は政策費ではなく義務費であり,主に計数的な誤りがないかどうかを中心に審査・決裁が行われているのが実情である。したがって,被告らが従来の体系に疑問を持ち,問題点の是正を行うべく行動することを要求することは,管理職にある者としての通常の能力を超える要求であり,そのような行動をとることについて期待可能性はなかったというべきである。 4 争点以上によれば,本件の争点は,次の各点である。 (1) 本件手当の支給は,地方自治法204条3項,地方公務員法24条6項等の定める給与条例主義に違反するものか否か。(争点1)(2) 本件手当の支給が前記の給与条例主義に違反するものであるとした場合,本件経過規定が設けられたことによって,その瑕疵は治癒されたかといえるか否か。(争点2)(3) 本件手当の支給は,それぞれ本件3要件を満たしているか否か。(争点3)(4) 本件手当の支給に違法があるとした場合,六市事業組合が被った損害額(争点4)(5) 本件手当の支給が違法なものである場合,支出負担行為者である被告Aには重過失があったか否か,被告Bにはこれを阻止しなかった点に指揮監督上の義務違反の過失があったか否か。(争点5)第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件手当の支給は,給与 支出負担行為者である被告Aには重過失があったか否か,被告Bにはこれを阻止しなかった点に指揮監督上の義務違反の過失があったか否か。(争点5)第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件手当の支給は,給与条例主義に違反するものか否か。)について(1) 前記のとおり,特別地方公共団体である一部事務組合の職員に対する給与については,給与条例主義が採られており,一部事務組合は,その職員に対し,いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずに支給することができず(地方自治法204条の2,292条,地方公務員法25条1項),給料,手当及び旅費の額並びにその支給方法は,条例でこれを定めなければならないものとされている(地方自治法204条3項,292条,地方公務員法24条6項)。 このように給与条例主義が採られた趣旨は,地方公共団体の職員に対して給与を権利として保障するとともに,給与の決定を,住民の代表である議会の条例制定を通じて,そのコントロールの下に置くことによって,給与の適正かつ公正な支給を確保するという点にあるものと解される。 そして,このような給与条例主義が採られた趣旨からすれば,給与の種類,額,支給方法等の給与に関する基本的事項については,条例自体においてこれを定める必要があるというべきであるが,他方,具体的な給与の支給時期の調整のような技術的,細目的な事項については,これを規則等にゆだねたとしても,上記の趣旨が損なわれるおそれはなく,かえって,給与の支給に関する事項の一切を条例で定めなければならないとすれば,給与の支払と勤務の実情とが乖離したり,給与形態が硬直化する等の弊害が懸念されることからすれば,技術的,細目的な事項については,規則等にゆだねることが許容されているものと解するのが相当である。 したがって,給与の種類,額, 乖離したり,給与形態が硬直化する等の弊害が懸念されることからすれば,技術的,細目的な事項については,規則等にゆだねることが許容されているものと解するのが相当である。 したがって,給与の種類,額,支給方法等の給与に関する基本的事項については,たとえ規則等の定めにゆだねる方が適当であるとの議会の判断が存するとしても,これらの事項までを規則等の定めにゆだねることは,条例制定を通して職員に対する給与の決定をコントロールの下に置くこととした給与条例主義に悖るものであり,許されないというべきである。 (2) ところで,地方自治法は,条例で,職員に対し,特殊勤務手当を支給することができると定めており(地方自治法204条2項),改正前の条例においても,「特殊勤務手当は,著しく困難な勤務その他著しく特殊な勤務で,給与上特別の考慮を必要とし,かつ,勤務の特殊性を給料で考慮することが適当でないと認められるものに従事する職員には,その勤務の特殊性に応じて特殊勤務手当を支給する」(同条例12条の2第1項)と規定していることは,前記のとおりである。 しかし,改正前の条例においては,「特殊勤務手当の種類,支給される職員の範囲,支給額その他,特殊勤務手当の支給に関し必要な事項は,別に規則で定める」(同条2項)として,特殊勤務手当に関する基本的事項についての定めを無条件に規則にゆだねており,これらを決定するにあたり手がかりとなる定めもおよそ置いていない。 したがって,このような特殊勤務手当の支給に関する改正前の条例12条の2第2項並びに本件規則2条及び3条の各定めは,前述した給与条例主義の趣旨に明らかに反するものであり,地方自治法204条3項,204条の2,292条,地方公務員法24条6項,25条1項に違反するものとして無効といわざるを得ない。 (3) そして,地方 た給与条例主義の趣旨に明らかに反するものであり,地方自治法204条3項,204条の2,292条,地方公務員法24条6項,25条1項に違反するものとして無効といわざるを得ない。 (3) そして,地方公共団体は,法令に違反しない限りにおいて条例を制定することができるにすぎないものであるところ(地方自治法14条1項,292条),無効である上記各規則を根拠としてされた本件手当の支給に関する支出負担行為は,違法であるといわざるを得ない。 2 争点2(本件改正により,本件手当の支給が給与条例主義に違反する旨の瑕疵は治癒されたか否か。)について(1) 本件経過規定は,改正後の条例の施行日前に本件条例12条の2に基づいて支給された特殊勤務手当のうち,改正後の条例において規定されている特殊勤務手当と「同種の手当」といえるものについて,遡って,改正後の条例に基づいて支給した手当とみなすというものである。 そして,このように過去に遡って改正後の条例に基づいて支給した手当とみなすこととしたとしても,そのことによって,国民の権利を侵害したり,国民に義務を課するものではないから,本件経過規定によって,このような遡及適用をすることが許されないとする理由はなく(最高裁判所昭和33年4月25日第2小法廷判決・民集12巻6号912頁参照),地方公共団体の議会は,条例の制定及び改廃について広範な裁量を有しており,その議決により権利の放棄をすることができる(地方自治法96条1項10号)ことからすれば,既にされた支出について議会がこれを適法なものとすることが,議会に与えられた権限を超えるものということもできない。そして,地方公共団体における給与の適正かつ公正な支給を確保すべく,その支給につき議会のコントロール等を及ぼすという給与条例主義の趣旨にかんがみれば,議会自らが上記手 えるものということもできない。そして,地方公共団体における給与の適正かつ公正な支給を確保すべく,その支給につき議会のコントロール等を及ぼすという給与条例主義の趣旨にかんがみれば,議会自らが上記手当の支給について明確な条例上の根拠を与えるべく,本件改正を行い,本件経過規定を含む改正後の条例を制定した以上,本件手当の支給が給与条例主義に違反する違法なものであったとしても,改正後の条例に基づいて支給した手当とみなされる範囲で,かかる違法は遡って治癒されたものと解すべきである(最高裁判所平成5年5月27日第1小法廷判決・裁判集民事169号89頁参照)。 (2) そこで,進んで,本件手当のうち,本件改正により給与条例主義違反の瑕疵が治癒されることになるものはどれであるか,すなわち,改正後の条例において規定されている特殊勤務手当と「同種の手当」といえるものはどれであるかについて,検討する必要があるところ,「同種の手当」か否かは,単にその名目だけはなく,支給の要件及びその内容等の点から,実質的にみて,改正後の条例別表第2に定められた特殊勤務手当と同種のものといえるか否かによって判断するのが相当である。 ア本件開催手当について改正後の条例別表第2は,開催手当として,競走開催日に勤務する職員全員に対して日額として給料月額の100分の1.5を支給する旨定めているところ,かかる規定の文言に照らし,本件開催手当のうち,競艇の開催日の勤務に対して支給されていたもの(以下「開催日開催手当」という。)については,改正後の開催手当と支給対象及び支給額はこれと実質的に同一であり,これと「同種の手当」といえるが,前検日の勤務に対して支給されていたもの(以下「前検日開催手当」という。)については,改正後の条例において開催手当の支給対象から外されていることからして, 一であり,これと「同種の手当」といえるが,前検日の勤務に対して支給されていたもの(以下「前検日開催手当」という。)については,改正後の条例において開催手当の支給対象から外されていることからして,「同種の手当」には当たらないものと解するのが相当である。 被告らは,前検日開催手当についても,改正後の開催手当と「同種の手当」と解すべきであると主張するが,証人Cの証言によれば,本件改正の前後を問わず,本件職員は,前検日に有給休暇を取らないようにとの指導が行われていたものの,制度的に前検日の有給休暇の取得が禁じられていたわけではなく,有給休暇を取得することも制度上は可能であったことが認められるから,前検日については休暇を認めないという拘束を外すと同時に開催手当の対象からも外した旨の被告らの主張は,その前提事実が認められないというべきであるし,仮に前検日に有給休暇を取ることが不可能であったとしても,前検日と競走開催日とでは,業務内容に歴然とした差があることは,被告らの主張自体からも明らかであるから,開催日についてのみ支給するとされている改正後の開催手当と前検日開催手当とが「同種の手当」と認めることは到底できないというべきである。 また,本件改正に係る六市事業組合議会の臨時会会議録(甲5)及び改正後の条例別表第2の文言からしても,改正後の開催手当においては支給の対象とならない前検日開催手当が,改正後の条例に基づいて支給されることとなる開催手当と「同種の手当」と理解することは困難である。 イ本件運転手当について改正後の条例別表第2は,庁用自動車運転手当として,職務として,庁用自動車を運転する職員に対し,日額200円を支給する旨定めているところ,本件運転手当は,その支給対象及び支給額からみてこれと実質的に同一であるから,本件改正後の庁用自動車運 として,職務として,庁用自動車を運転する職員に対し,日額200円を支給する旨定めているところ,本件運転手当は,その支給対象及び支給額からみてこれと実質的に同一であるから,本件改正後の庁用自動車運転手当と「同種の手当」であると解するのが相当である。 ウ本件特別繁忙手当について改正後の条例別表第2は,特別繁忙手当について何ら規定していないものの,1月1日から同月3日まで及び12月29日から同月31日までの間における競走開催日に勤務する職員全員に対しては,開催手当の支給額を1日につき1万円加算することとされており,これは,本件特別繁忙手当(ただし,上記期間中の競走開催日に勤務する職員に対して支給されるものに限る。)と実質的に同一であるから,上記特別繁忙手当は,これと「同種の手当」に当たるものと解するのが相当である。 もっとも,本件規則別表によれば,12月29日から1月3日までに従事する職員に対し,日額1万円の特別繁忙手当が支給されることとされていたが,改正後の条例別表第2によれば,同時期における競走開催日に勤務する職員に対し,通常の金額に加え日額1万円を加算した開催手当が支給されることとされ,従前支給されていた特別繁忙手当のうち,競走開催日以外の日に従事した職員に対して支給されていたものについては,本件改正後には何らの手当も支給されないこととなったものであるから,これについては,「同種の手当」には当たらないものである。すなわち,競艇が開催されていない平成11年1月1日から同月3日までの間に業務に従事した職員に対して特別繁忙手当が支払われたとしても,改正後の条例別表第2による開催手当の加算対象とされていないことから,「同種の手当」ということはできない。しかしながら,本件全証拠によっても,平成11年1月1日から同月3日までの間に勤務し しても,改正後の条例別表第2による開催手当の加算対象とされていないことから,「同種の手当」ということはできない。しかしながら,本件全証拠によっても,平成11年1月1日から同月3日までの間に勤務した職員がいることを認めるに足りる証拠はない。そうであるとすれば,結局のところ,本件特別繁忙手当のすべてについて,本件改正後の手当と「同種の手当」に当たるといって差し支えないというべきである。 (3) 以上によれば,本件手当のうち,前検日開催手当の支給を除くものは,前記の給与条例主義に違反する点の瑕疵は治癒されたものと認められるが,前検日開催手当の支給については,本件経過規定によっても,その瑕疵は治癒されていないというべきである。 3 争点3(本件手当は,本件3要件を満たさない業務に対し支給されたものとして違法となるか否か。)について(1) いかなる勤務を特殊勤務手当の対象とするかということは,地域の実情等に応じて合理的に決せられるべく,各地方公共団体の議会の合理的な裁量にゆだねられているというべきではあるが,その裁量も絶対無制約なものではなく,地方自治法204条2項が地方公共団体が職員に対して支給し得る手当の種類を制限列挙していること,国家公務員に対して支給される特殊勤務手当との均衡(地方公務員法24条3項参照)等にかんがみると,特殊勤務手当は,著しく困難な勤務その他著しく特殊な勤務で,給与上特別の考慮を必要とし,かつ,勤務の特殊性を給料で考慮することが適当でないと認められるものに従事する職員に対し,その勤務の特殊性に応じて支給されるものに限られていると解するのが相当である(一般職の職員の給与に関する法律13条,最高裁判所平成7年4月17日第1小法廷判決・民集49巻4号1119頁参照)。そして,現に,本件条例においても,「特殊勤務手当は,著 ると解するのが相当である(一般職の職員の給与に関する法律13条,最高裁判所平成7年4月17日第1小法廷判決・民集49巻4号1119頁参照)。そして,現に,本件条例においても,「特殊勤務手当は,著しく困難な勤務その他箸しく特殊な勤務で,給与上特別の考慮を必要とし,かつ,勤務の特殊性を給料で考慮することが適当でないと認められるものに従事する職員には,その勤務の特殊性に応じて特殊勤務手当を支給する。」(同条例12条の2第1項)として,特殊勤務手当の支給の対象となる勤務は,①著しく困難な勤務その他著しく特殊な勤務であること,②給与上特別の考慮を必要とすること,③勤務の特殊性を給料で考慮することが適当でないこととの3つの要件(本件3要件)を具備する必要があることを規定している。 したがって,特殊勤務手当の支給に関し,たとえ条例に定めがあるとしても,上記の要件(本件3要件)を満たさない勤務に対して支給する旨の条例の定めは,議会に与えられた裁量権を著しく濫用又は逸脱するものとして無効というほかなく,そのような規定に基づく特殊勤務手当の支給は,違法というべきである。 そこで,以下,改正後の条例に定める各特殊勤務手当の支給要件が本件3要件を満たすものであるか否かを検討する。 (2) 改正後の条例が定める開催手当についてア証拠(乙6,同8ないし同10,同12,証人C)及び弁論の全趣旨によれば,競走開催日において,①本件職員34名のうち,27名は,江戸川競艇場に出向き,投票委員,警備委員,番組編成委員等として勤務するが,残りの7名は,総務委員として東京都渋谷区代々木にある本部事務所に待機して執務すること,②江戸川競艇場で勤務する27名は,いったん緊急事態が発生すると,各委員ごとに緊急事態の度合いに応じて,騒擾の発生及び拡大を防止し,観客の誘導や負傷者 代々木にある本部事務所に待機して執務すること,②江戸川競艇場で勤務する27名は,いったん緊急事態が発生すると,各委員ごとに緊急事態の度合いに応じて,騒擾の発生及び拡大を防止し,観客の誘導や負傷者の保護等を迅速に行うための任務につくこと,③本部事務所に残る7名の総務委員のうち3名は,投票委員にも充てられており,江戸川競艇場においていったん緊急事態が発生しそうな雲行きとなれば,直ちに江戸川競艇場に駆けつけ,前記②の任務に参加するが,残りの4名は,本部事務所に残り,江戸川競艇場,報道関係及び警察当局との間の連絡調整を行うものであること(もっとも,平成10年7月から平成11年3月までの間に,江戸川競艇場において騒擾事件が発生したり,そのために,本部事務所にいる総務委員が江戸川競艇場に駆けつけて,興奮したファンと応対し,騒動を沈静化させる業務に従事した事実はない。),④開催日に観戦に訪れるファンは,5000人から6000人であるが,江戸川競艇場は,江戸川の水面を利用して競艇場としているため,風の影響で波が立ちやすく,そのため開催が事前又は途中で中止されたり,選手の事故が起きてそれによって順位が変更になったりすることが他の競艇場よりも多く,ギャンブルの特性と相まって,日頃からファンの不満がうっ積しており,スタートの適否,走法の適否の判定等を巡って抗議等が少なからずあり,平成9年にも,2件の比較的大きな事件が起き,そのような騒ぎが発生した際には,興奮したファンが職員のネクタイをつかまえたり足蹴にしたりするなどの暴行を働くことがあったこと,⑤このような暴動や抗議の兆しがある場合,職員は,これが大規模な騒擾事件へと発展しないよう,ファンに対して直接説明をする等してその沈静化に努める必要があり,江戸川競艇場で勤務する職員は,江戸川競走場緊急事態対策要綱 や抗議の兆しがある場合,職員は,これが大規模な騒擾事件へと発展しないよう,ファンに対して直接説明をする等してその沈静化に努める必要があり,江戸川競艇場で勤務する職員は,江戸川競走場緊急事態対策要綱等に従い,大きな精神的緊張をもって執務していることがそれぞれ認められる。 イこれらの事実関係の下では,開催日には,小松川警察署警官が警らのために出張して来ており,特殊技能を必要とするコンピューターの操作や場内警備,清掃・管理等を業者に委託しているといった事情があるとしても,江戸川競艇場において執務する27名の職員は,前記のような競艇事業に伴う特殊な事情から,騒擾の発生及び拡大を未然に防止し,これが発生した場合には,観客の誘導や負傷者の保護等を迅速に行うため,細心の注意をもって勤務し,時には,興奮したファンからネクタイをつかまれたり足蹴にされたりするなどの暴行を受ける危険もある中で,不満を持ったファンに対しても的確に対応をとらなければならないなど,高度の緊張を強いられた勤務を行わなければならないものであるから,「著しく困難その他著しく特殊な勤務」に従事していると評価することができる。そして,このような勤務の特殊性は,競艇の開催という事実と直結しており,これを現実の開催日数と比例させる方が給料において考慮するよりも適当であると考えられるから,本件改正に当たり,開催手当が本件3要件を満たすとした議会の判断が著しく妥当性を欠くものとはいえない。したがって,これらの職員に対する本件開催手当の支給は,違法な支出であるとは認められない。 また,改正後の開催手当は,1月1日から同月3日まで及び12月29日から同月31日までのいわゆる年末年始については,1日につき1万円を加算することとしているが,他のほとんどの公務員だけでなく,多くの事業所においても,一斉 は,1月1日から同月3日まで及び12月29日から同月31日までのいわゆる年末年始については,1日につき1万円を加算することとしているが,他のほとんどの公務員だけでなく,多くの事業所においても,一斉に休暇を取り得るこの時期に,競艇が開催されるために出勤しなければならないという点を考慮すれば,この間の勤務について上記のような手当額の加算をすることとした議会の判断が著しく妥当性を欠くものとまでは認められない。 これに対し,本部事務所において勤務する7名の総務委員については,万が一騒擾が起こった際の応援及び後方支援に当たらなければならないということがあるとしても,本件手当の支給対象となった期間中に現実に江戸川競艇場での騒擾の対応のために駆けつけたことはなく,上記のような応援等が必要になる頻度は決して高いものではないことも考慮すれば,これらの職員が,開催日に特別の精神的な緊張を強いられた勤務を行っていたものとは認め難く,その勤務が,「著しく困難その他著しく特殊な勤務」に当たるとして,特殊勤務手当を支給しなければならないような事情は認められない。 そうすると,現実の執務状況を考慮せず,開催日の当日どのような勤務を行うかによって区別をすることなく,職員全員に対して開催手当を支給する旨を定める改正後の条例別表第2は,このように本件3要件を満たさない者に対してまで開催手当を支給する旨を定めた限度で,議会に与えられた裁量権を著しく濫用又は逸脱したものとして無効というほかなく,したがって,本部事務所において勤務する7名に対して支給された本件開催手当(以下「総務委員開催手当」という。)は,適法な条例の根拠を欠く違法な支出というべきである。 ウところで,被告らは,本件職員は,全員,開催日であれば土日祝日の区別なしに出勤しなければならず,しかも,開催日は開 員開催手当」という。)は,適法な条例の根拠を欠く違法な支出というべきである。 ウところで,被告らは,本件職員は,全員,開催日であれば土日祝日の区別なしに出勤しなければならず,しかも,開催日は開催の2か月から5か月前にならないと決定しないし,天候による中止・順延により開催日が延びることがあるため,長期的なレクリエーション等のプランが立てられないという,2重,3重に不安定な状況になっているとして,本件職員全員の職務が特殊である旨主張する。 しかしながら,被告らの主張するこれらの事由は,開催日であれば土日祝日の区別なく出勤しなければならないということも含め,いずれも競艇事業の開催と直結した特殊な勤務であるというよりも,競艇事業組合の職員であることからくる一般的,継続的かつ恒常的な制約であって,本来給料において考慮すべきものというべきであるし,土日祝日の出勤に対しては休日手当の支給や休日の振替等により対処すべきであるから,これらの事由をもってしても,本部事務所で執務する7名の職員の職務が本件3要件を満たすものということはできない。 また,被告らは,各開催日の前日(前検日)には,組合の管理職1名,一般職2名の合計3名が競艇場の近くに泊まり込み,早朝起床のうえ当日午前6時半現在における流水の状態を把握し,さらに,前日及び当日の気象状況及び天気予報等を勘案して開催するか否かを決定したうえ,午前7時までにマスコミ関係者(予想紙発行機関その他),関係交通機関,警備当局及び全職員に対し連絡を終えるという特殊な勤務を行わなければならないが,これに対しては宿泊費のみが支給されており,このことは,特殊勤務手当の額の決定に当たって一つの要素と考えられている旨主張する。 しかしながら,上記7名の総務委員が平成10年7月から平成11年3月までの間にこのような のみが支給されており,このことは,特殊勤務手当の額の決定に当たって一つの要素と考えられている旨主張する。 しかしながら,上記7名の総務委員が平成10年7月から平成11年3月までの間にこのような勤務を現実に行ったことの立証はないし,そのような職務内容そのものは危険性を伴うものでもなく,著しく困難な勤務その他著しく特殊な勤務には当たらないものであるから,宿泊費や時間外手当の支給等で対応すべきものというべきである。 これらの点に関する被告らの主張はいずれも採用できない。 (3) 本件運転手当についてア証拠(乙9,同10,証人C)及び弁論の全趣旨によれば,①六市事業組合においては,庁用自動車の運転を専門に行う技官を採用しておらず,一般の職員が必要に応じて職務としてこれを運転していること,②そのため,庁用自動車の運転という業務に従事したことが給料や他の手当において考慮されていないこと,③一般職員が運転する自動車には,同組合の管理者等を乗せる他,競走開催日にファンを競艇場へ輸送するためのファン輸送車があること,④ファン輸送車は,競走開催日には毎日運行されていることがそれぞれ認められる。 イ上記の各事実と,江戸川競艇場では日頃からファンの不満がうっ積しており,スタートの適否,走法の適否の判定等を巡って抗議等が少なからず起きていることからして,ファン輸送車の運転も,自動車の運転に通常伴う心身の負担にとどまらず,このように不満を持ったファンとも身近に接触する可能性も高いために特別の精神的な緊張を強いられる側面があることは否定できないから,庁用自動車運転手当の日額が200円であることをも併せ考慮すれば,庁用自動車等の運転が,そのような金額の手当に見合う程度の勤務の特殊性を有するものであるとして,これについて前示のとおりの特殊勤務手当を支給すると 手当の日額が200円であることをも併せ考慮すれば,庁用自動車等の運転が,そのような金額の手当に見合う程度の勤務の特殊性を有するものであるとして,これについて前示のとおりの特殊勤務手当を支給するとした議会の判断が著しく妥当性を欠くとまではいえない。 なお,自動車の運転中,職員がその本来の職務を離れていることは原告の指摘するとおりであるが,そもそも当該運転自体,職務として行っているのであるから,このことが前記評価を左右するものではない。 したがって,本件運転手当の支給は,違法なものとは認められない。 4 争点4(六市事業組合が被った損害額)について(1) 以上に述べたとおり,本件手当のうち,前検日開催手当及び総務委員開催手当の各支給は違法である。 (2) ところで,証拠(乙4,証人C)及び弁論の全趣旨によれば,六市事業組合は,平成10年7月から平成11年3月までの間に競艇を18回開催することとなっており,前検日は,少なくとも18日はあったこと,前検日開催手当は,職員全員に支給されていたところ,前記期間の本件職員数は34人であることがそれぞれ認められる。 また,証拠(甲10,証人C)によれば,六市事業組合においては,開催手当の支給額を3000円の定額にするという改正案が提案され,これによると現行の開催手当より一般の職員について3,4割ほど支給額が低くなることが認められることからすれば,前検日開催手当として支給された金額は,平均すると職員1人当たり1日4000円を下らないものと認めるのが相当である。 したがって,平成10年8月から平成11年4月までの間に支給された前検日開催手当の総額は,4000円×34人×18日=244万8000円を下らないものと認められる。 (3) また,証拠(乙4)及び弁論の全趣旨によれば,平成10年7月から平 での間に支給された前検日開催手当の総額は,4000円×34人×18日=244万8000円を下らないものと認められる。 (3) また,証拠(乙4)及び弁論の全趣旨によれば,平成10年7月から平成11年3月までの間に競艇が開催されたのは合計83日であることが認められ,また,前記(2)に述べたのと同様の理由により,総務委員開催手当として支給された金額は,平均すると職員1人当たり1日4000円を下らないものと認められる。 したがって,平成10年8月から平成11年4月までの間に支給された総務委員開催手当の総額は,4000円×7人×83日=232万4000円を下らないものと認められる。 (4) 上記の違法に支出された各手当の総合計額は,477万2000円となる。 5 争点5(支出負担行為者である被告Aに重過失があったか否か,被告Bにはこれを阻止しなかった点に指揮監督上の義務違反の過失があったか否か。)について(1) 次に,前検日開催手当(244万8000円)及び総務委員開催手当(232万4000円)の支出負担行為を行った被告Aの重過失の有無及びこれを阻止しなかった被告Bの指揮監督上の義務違反の過失の有無について検討する。 なお,総務委員開催手当については,前記のとおり本件3要件を満たさない違法な支出であるが,同手当の支給は,そもそもその支給時において給与条例主義に違反する違法な支出であったこと,過失の有無は行為時の事情を基に判断すべきことからして,これについては,給与条例主義違反の支給をしたことについての過失の有無等をまず検討すべきであると解される。 (2) 被告らは,①被告らの現職就任時には,特殊勤務手当が支給されるという体系が確立され,長年にわたりそれが維持されてきたし,会計や出納担当職員,条例制定権者である議会から何ら疑問が提 解される。 (2) 被告らは,①被告らの現職就任時には,特殊勤務手当が支給されるという体系が確立され,長年にわたりそれが維持されてきたし,会計や出納担当職員,条例制定権者である議会から何ら疑問が提起されたことはなかったうえ,執行機関として条例の規定に従って行政運営を行わなければならず,本件条例の瑕疵は,当時としては必ずしも明白でなかったことからして,被告らは,本件規則に従って本件手当を支給する義務を負っていたこと,②行政は日常的な行為の繰り返しによる流れとして運営され,多くの決裁書類が日々決裁者の下に回されるのであるから,その一つ一つについて決裁者が法的根拠まで遡って検討していては行政事務の停滞を招くことになるし,特に,人件費は政策費ではなく義務費であり,主に計数的な誤りがないかどうかを中心に審査・決裁が行われているのが実情であるから,被告らが従来の体系に疑問を持ち,問題点の是正を行うべく行動することを要求することは,管理職にある者としての通常の能力を超える要求であり,そのような行動をとることについて期待可能性はなかった旨主張する。 しかしながら,地方公共団体は,その職員に対し,いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずに支給することができず,給料,手当及び旅費の額並びにその支給方法は,条例でこれを定めなければならないことは,前記のとおり,地方自治法204条3項,204条の2,292条,地方公務員法24条6項,25条1項に明記された給与支払上の原則であり,前記1(1)に記載した規則への委任の限界についての考え方も,本件各支出負担行為が行われた当時において,既に学説上も通説的考え方であっただけでなく,同様の見解に立つ裁判例が既にいくつも存在していたことからして,本件条例12条の2第2項が給与条例主義に違反するものであ 負担行為が行われた当時において,既に学説上も通説的考え方であっただけでなく,同様の見解に立つ裁判例が既にいくつも存在していたことからして,本件条例12条の2第2項が給与条例主義に違反するものであったことは明白であり,被告らの六市事業組合での地位を併せ考えれば,被告らにおいてこれを容易に知り得たはずであって,被告らが従来の体系に疑問を持ち,問題点の是正を行うべく行動することについて期待可能性がなかったとはいえず,被告らは,本件条例12条の2第2項及び本件規則に基づいて本件手当の支給を続けることに疑義のあることは容易に認識し得たものというべきである。 したがって,被告Aは,専決による支出負担行為者として尽くすべき注意義務を怠り,誤った条例の解釈に基づいて漫然と支出負担行為を行い,本件手当の支給を継続したものであるから,重大な過失により,違法な支出をしたものと評価せざるを得ないし,被告Bは,管理者として尽くすべき注意義務を怠り,被告Aの前記各支出負担行為を阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,過失により違法な前記各支出負担行為を阻止しなかったものといわざるを得ない。 第4 結論以上の次第で,原告の請求は,金477万2000円を六市事業組合に対し支払うことを求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条本文,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官市村陽典裁判官森英明裁判官篠田賢治 田賢治

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