平成15(行コ)109 固定資産評価審査棄却決定取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成13年(行ウ)第164号)

裁判年月日・裁判所
平成16年2月19日 東京高等裁判所 租税
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本件は、被控訴人らが新宿区の土地に関する固定資産税の課税標準価格について、東京都知事の決定に不服を申し立てた事案である。主要な争点は、固定資産税の課税標準が賦課期日における適正な時価であるべきか、またその審査手続において審理不尽の違法があったかどうかであった。裁判所は、原判決が被告の主張を誤って解釈し、審査対象とすべき賦課期日の価格決定についての判断を行っていないとした点を否定し、登録価格が適正な時価の範囲内にあると判断した。最終的に、原判決を取り消し、被控訴人らの請求を棄却する結論に至った。

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判決文本文30,196 文字)

- 1 -主文 原判決を取り消す。 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,1,2審とも,被控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1控訴の趣旨主文同旨第2事案の概要本件は,被控訴人らが,その共有に係る新宿区α×番3宅地231・14平方メートル(以下「本件土地」という。)について,東京都知事によって平成12年度における価格を8584万3770円と決定された上,東京都新宿都税事務所長により上記価格(以下「本件登録価格」という。)が土地課税台帳に登録されたことに不服があるとして,控訴人に審査の申出をしたところ,これを棄却する旨の決定(以下「本件決定」という。)を受けたため,本件決定には審理不尽の違法があると主張して,その取消しを求めた事案である。事案の概要は,当事者双方の当審における主張を次のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」中の「第2事案の概要」欄に記載のとおりであるから,これを引用する。 (控訴人の主張) 原判決は,「固定資産税の課税標準は,賦課期日における当該固定資産の価格と解すべきものであり,これに反する被告の主張を採用するこ- 2 -とはできない。したがって,本件審査においても,本件登録価格が,本件土地の賦課期日における価格として適正なものであったかどうかが審査されるべきものであったことになる。しかしながら,被告は,『本件審査においては,価格調査基準日における価格決定の適否を審査すれば足りる。』という趣旨の主張をしているのにとどまり,また,甲第1号証(被告の決定書)によっても,被告が,価格調査基準日における価格決定の適否のみを審査,判断していることは明らかである。そうだとすると,被告は,本件審査において,本来審査の対象とすべき賦課期日における本件土地の価格決定の適否については何ら 調査基準日における価格決定の適否のみを審査,判断していることは明らかである。そうだとすると,被告は,本件審査において,本来審査の対象とすべき賦課期日における本件土地の価格決定の適否については何ら審査,判断をしていないこととなり,この点には重大な審理不尽の違法があるといわざるを得ないのであるから,本件決定は,その余の主張事実について判断するまでもなく違法として取消しを免れないものというべきである。」と判示する。 しかし,最高裁平成15年6月26日判決(判例時報1830号29頁)が判示するように,「固定資産税の課税標準である固定資産の価格である適正な時価が,基準年度に係る賦課期日におけるものを意味する」としても,そのことが直ちに「被告は,本件審査において,本来審査の対象とすべき賦課期日における本件土地の価格決定の適否については何ら審査,判断をしていないこととなり,この点には重大な審理不尽の違法がある」ということにはならない。なぜなら,同最高裁判決は,課税台帳等に登録された価格と,賦課期日における当該土地の客観的な- 3 -交換価値とを比較して,登録価格が客観的な交換価値を上回れば,当該価格の決定は実質的に違法になると判示したにすぎない。換言すれば,登録価格と比較するものは,賦課期日の価格であって,評価事務に要する期間を考慮して賦課期日からさかのぼった時点(価格調査基準日)の価格と比較して決するわけではないと判示するにすぎず,控訴人が本件においてしたような審査が手続的に違法になると判示しているわけではない。 仮に,比較すべき対象を誤れば,それだけで,決定が審理不尽として手続違法になるとすれば,賦課期日から一定期間をさかのぼった時点(価格調査基準日)の価格と登録価格とを比較して,登録価格が違法か否かを審査していた控訴人を始めとする全 れだけで,決定が審理不尽として手続違法になるとすれば,賦課期日から一定期間をさかのぼった時点(価格調査基準日)の価格と登録価格とを比較して,登録価格が違法か否かを審査していた控訴人を始めとする全国の固定資産評価審査委員会の審査は,すべて手続違法として取消しを免れないということになりかねないが,こうした結論が妥当性を欠くことは明らかである。 これに対し,原判決は,「被告の主張は,『少なくとも,価格審査においては,賦課期日から一定期間を遡った日における価格決定の当否を審査すれば足りる。』という趣旨に理解することもできないわけではないが,登録価格の適否を審査すべき価格審査において,本来問題とすべき時点とは異なる時点の価格決定の適否を審査するのは無意味というべきであるから,この主張を採用することもできない。」と判示している。 しかし,平成11年から12年ころにかけての地価の下落率が,アローアンスの3割(固定資産税評価は,適正な時価の7割評価であるため,- 4 -賦課期日時点の価格そのものと比較しなくても,3割の余裕があるとするもの)を大きく下回っていたことは,公知の事実であるから,控訴人が,本件審査において,賦課期日である平成12年1月1日における価格について審査・判断していないからといって,そのことだけで,重大な審理不尽の違法があることにはならない。 そうだとすれば,原判決は,登録価格といつの時点の価格とを比較すべきかという実質的違法の問題と,登録価格の算定の基準日が誤っていれば,重大な審理不尽の違法があるといえるのかという手続違法の問題を混同しており,誤りというべきである。 本件登録価格が適正な時価であること仮に,本件決定の審査手続において,比較すべき価額時点に誤りがあったとしても,本件登録価格は,実質的に,平成12年1月1日時点 しており,誤りというべきである。 本件登録価格が適正な時価であること仮に,本件決定の審査手続において,比較すべき価額時点に誤りがあったとしても,本件登録価格は,実質的に,平成12年1月1日時点の適正な時価の範囲内にあるから,本件決定は適法である。すなわち,(1)地価の下落率を算出するに当たっては,地価公示価格及び東京都地価調査価格を参考にするのが,適当である。そして,新宿-××(新宿区α×番2)の公示価格は,平成11年1月1日時点で1平方メートル当たり52万円,平成12年1月1日時点で同51万2000円であり,新宿×-×(新宿区β×番1外2筆)の東京都基準値価格による推定値は,平成11年1月1日時点で同73万円,平成12年1月1日時点で同70万5000円であるから,平成11年1月1日から平成12年1月1日までの地価下落率は,1.5- 5 -パーセントないし3.4パーセントの範囲内にあることが認められる。しかも,評価にあたって,平成11年1月1日から価格調査基準日である同年7月1日までの地価下落率は,既に織り込み済みであるから,7割評価によるアローアンスを考慮すると,本件登録価格が客観的時価の範囲内にあることは明らかである。 (2)被控訴人らは,本件土地が間口約8メートル足らずで,奥行きが約30メートルもある「うなぎの寝床」のような形状をしていることが重大な価格低下要因となる旨主張しているが,控訴人は,本件土地の評価にあたり,奥行補正率として0.98,奥行長大補正として0.96を勘案し,全体として0.94の補正率を乗じているのであり,上記形状による価格低下を十分に見込んでいるから,被控訴人らの批判は失当である。上記の補正率が十分なものであることは,相続税に関する財産評価基本通達において,奥行29.5メートルの土地の奥行補正 ,上記形状による価格低下を十分に見込んでいるから,被控訴人らの批判は失当である。上記の補正率が十分なものであることは,相続税に関する財産評価基本通達において,奥行29.5メートルの土地の奥行補正率が0.99と固定資産税評価基準等よりも補正の度合いが小さいことからも裏付けられる(乙13号証)。 (3)被控訴人らは,本件土地は,その約2分の1が準工業地域に属し,その実効容積率は300パーセントであるのに対し,その余の約2分の1は第2種住居地域(実効容積率200パーセント)に属しているから,本件土地の容積率は,平均して250パーセントと評価すべきである旨主張している。たしかに,評価基準等によれば,対象土地の容積率の異なる2以上の地域にまたがる場合には,容積率- 6 -の相違は価格に反映されないことになるかもしれない。しかし,評価基準等は,各対象土地を個別評価することなく,諸制約のもとで大量の土地について可及的に適正な評価をするための技術的方法であり,土地の価格要素のすべてを網羅するものではなく,また,個別評価と同様の正確性を有するものでもなく,大量処理に適した典型的な価格形成要素についての大数的基準による評価を積み重ねて客観的時価に接近する方法であるから,個別的算定要素が必ずしも実情にそうものでなかったとしても,評価基準等に準拠した評価額が客観的な時価を超えないときは,同評価をもって違法ということはできない。したがって,容積率にかかる補正をしなかったことをもって,直ちにこうした評価方法が違法になるわけではないというべきである。 仮に,被控訴人らが主張するように,容積率を加重平均の250パーセントと評価するとしても,東京都土地価格比準表によれば,格差率は2パーセントであるにすぎず,その相違は,これを捨象しても不合理とはいえない程度の 人らが主張するように,容積率を加重平均の250パーセントと評価するとしても,東京都土地価格比準表によれば,格差率は2パーセントであるにすぎず,その相違は,これを捨象しても不合理とはいえない程度のものと考えられるから,評価基準等の趣旨に照らすと,評価基準等が容積率に係る補正を定めていないからといって,不合理なものということはできない(乙6号証91頁)。 時機に後れた攻撃防御方法の主張について被控訴人らは,本件登録価格の適正さに関する控訴人の主張は,いずれも時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきであると主張する。 - 7 -しかし,原審においては,本件決定に審理不尽の手続違法があったか否かが争点となっていたのであって,本件登録価格が,本件土地の賦課期日における価格として適正なものであったか否かは争点となっていなかった。したがって,控訴人が,控訴審において,本件登録価格の適正さに関して主張したとしても,新たな争点に関する主張として,当然に許されるというべきである。 控訴人の上記主張は,仮に,本件標準宅地の価格の適正さ及び本件登録価格の適正さについて価格時点の誤りがあり,これが審理不尽と評価されるとしても,登録価格が,実質的に適正な時価の範囲内であれば,決定は適法であるという考えに基づいているのであって,被控訴人らが審理不尽に争点を限定していた原審において,控訴人が本件登録価格の適正さについて主張していなかったとしても,何ら不当ではないというべきである。 このことは,原審裁判所から,本件登録価格の適正さについて主張立証しないのかという釈明を受けながら,控訴人がその意思はないと表明したこと,及び,控訴審における主張の時期によっても,影響を受けることはない。なぜなら,原審においては,審理不尽の有無のみが争点とされていたところ,原審 明を受けながら,控訴人がその意思はないと表明したこと,及び,控訴審における主張の時期によっても,影響を受けることはない。なぜなら,原審においては,審理不尽の有無のみが争点とされていたところ,原審裁判所の釈明は実質違法の有無を明らかにするように求めるものであったことから,これに答えないとしたにすぎないし,控訴審においても,当初,争点整理の準備手続の進行を見守っていたところ,裁判所から実質的に登録価格が適正な時価の範囲内にあるか- 8 -否かも主張立証するようにとの釈明を受けて主張するに至ったからである。 (被控訴人らの主張) 控訴人の主張1について前記最高裁平成15年6月26日判決によれば,固定資産評価審査委員会は,標準宅地の価格が賦課期日における適正な時価であったかどうかや,登録価格が賦課期日における適正な時価であったかどうかを審理判断すべきことになり,控訴人がそれらについて何ら審理判断しなかった以上,重大な審理不尽の違法があるといわなければならない。すなわち,上記最高裁判決は,「土地課税台帳等に登録された価格が賦課期日における当該土地の客観的な交換価値を上回れば,当該価格の決定は違法となる」と判示し,また,「当該宅地の価格が,賦課期日における客観的な交換価値を超えるものではないと推認することができるためには,標準宅地の適正な時価として評定された価格が,標準宅地の賦課期日における客観的な交換価値を上回っていないことが必要である」と判示しており,そうである以上,固定資産課税台帳に登録された価格に関する不服を審査決定するために設置された固定資産評価審査委員会においては,登録価格が,賦課期日における当該土地の客観的な交換価値(適正な時価)を上回るか否かを審理判断する義務を負うのは当然であり,その点について何らの審理判断もしてい た固定資産評価審査委員会においては,登録価格が,賦課期日における当該土地の客観的な交換価値(適正な時価)を上回るか否かを審理判断する義務を負うのは当然であり,その点について何らの審理判断もしていなければ,手続的に違法とならざるを得ない。 - 9 -さらに,上記最高裁判決は,「法349条1項の文言からすれば,同項所定の固定資産税の課税標準である固定資産の価格である適正な時価が,基準年度に係る賦課期日におけるものを意味することは明らか」と判示しており,そのように明らかであるにもかかわらず,賦課期日における価格の審理判断を一切拒み続けてきた控訴人の責任は重大である。 自らそのような違法を続けていながら,「賦課期日から一定期間をさかのぼった時点の価格と登録価格とを比較して,登録価格は違法といえるかを審査していた控訴人をはじめとする全国の固定資産評価審査委員会の審査は,すべて手続違法として取消しを免れないということになりかねないが,こうした結論が妥当性を欠くことは明らかである。」などと,論証もないまま主張することは,いささかごう慢な対応というべきで,まず,控訴人が自らの誤りを正すべきである。 控訴人は,平成11年から12年ころにかけての地価の下落率が,アローアンスの3割を大きく下回っていたことは,公知の事実であると主張するが,下落率について,公知の事実などと主張すること自体,固定資産評価審査委員会としてあるまじき主張である。下落率それ自体が,控訴人の審理判断すべき事項であり,証拠に基づいて,客観的かつ適正に認定判断すべき事実であり,上記の主張は重大な審理不尽の違法を否定する主張たり得ない。 控訴人の主張2(本件登録価格が適正な時価であること)について(1)本件土地の登録価格が,賦課期日における適正な時価を超えない旨- 10 -の控訴 な審理不尽の違法を否定する主張たり得ない。 控訴人の主張2(本件登録価格が適正な時価であること)について(1)本件土地の登録価格が,賦課期日における適正な時価を超えない旨- 10 -の控訴人の主張2は,主張自体失当である。 すなわち,審査申出人は,固定資産評価審査委員会において適正な審理判断を受ける手続的権利を有しているものであり,その手続的権利の侵害は正されなければならない。したがって,固定資産評価審査委員会における審査資料から,標準宅地の価格及び登録価格がそれぞれ賦課期日における価格として適正なものであったことが一見して明白である場合は別であるが,そうでない場合は,標準宅地の価格が賦課期日の価格を上回っていることが原因となって,登録価格が客観的時価を上回る可能性があるのであるから,当該審査決定を違法として取り消すのでなければ,固定資産評価審査委員会において適正な審理判断を受ける審査申出人の手続的権利が保障されたことにはならない。 本件では,控訴人における審査において,本件標準宅地の価格及び本件登録価格がそれぞれ賦課期日における価格として適正なものであったかどうかについて一切審理判断されなかった上,被控訴人らは,本件土地について価格低下要因を主張立証していたものであって,控訴人における審査資料自体から,標準宅地の価格及び登録価格がそれぞれ賦課期日における価格として適正なものであったことが一見して明白である場合とはいえないのであるから,本件決定は違法として取り消されるべきである。そうでなければ,控訴人において適正な審理判断を受ける被控訴人らの権利は保障されないことになる。 (1)控訴人は,「本件土地の平成11年7月1日から平成12年1月1- 11 -日までの時点修正率がマイナス2パーセントに充たないことからして,形状及び容 控訴人らの権利は保障されないことになる。 (1)控訴人は,「本件土地の平成11年7月1日から平成12年1月1- 11 -日までの時点修正率がマイナス2パーセントに充たないことからして,形状及び容積率の価格低下要因を総合的に考慮しても,せいぜい合計して数パーセントに(ママ)減価にすぎないというべきであるから,本件登録価格が客観的時価を上回る結果となる可能性はないということができる」と主張する。しかし,この主張も,控訴人の本件決定理由に全く記載されていない。しかも,本件土地の当該時点修正率がマイナス2パーセントに充たないとの主張は全く証明されていないし,さらに形状及び容積率の価格低下要因についての控訴人の主張も何ら証明されていない。さらに,控訴人は,価格調査基準日における本件標準宅地の客観的時価を審査したと主張するものの,それが価格調査基準日における客観的時価である理由を示していないし,客観的時価であるか否かも証明されるべき事実であるから,証明もなしにこれを前提として推論することは許されない。したがって,控訴人の本件における審査資料及び本件決定書の理由からは,本件標準宅地の価格の適正さ及び本件登録価格の適正さが審理判断されたものとは認められず,審理不尽として取消しを免れないというべきである。また,本件登録価格が客観的時価を上回る結果となる可能性がないとの控訴人の主張についても,上述したように,控訴人自身が,本件標準宅地及び本件土地についての賦課期日における客観的時価を何ら審理判断していないし,控訴人の本件訴訟における主張においても,それらの客観的時価についての具体的主張を全く提出していないのであるから,本- 12 -件標準宅地の価格や本件登録価格が客観的時価を上回る結果となる可能性がないと認定することは到底できないというべきであ 客観的時価についての具体的主張を全く提出していないのであるから,本- 12 -件標準宅地の価格や本件登録価格が客観的時価を上回る結果となる可能性がないと認定することは到底できないというべきである。よって,いずれの点からしても,本件決定は,審理不尽の違法があるので取り消されるべきである。 (3)控訴人は,「本件土地の評価にあたり,奥行補正率として0.98,奥行長大補正として0.96を勘案し,全体として0.94の補正率を乗じているのであり,上記形状による価格低下を十分に見込んでいる」と主張する。しかし,控訴人の上記主張は,控訴人の本件決定理由に全く記載されていない上,上記補正率を適用した結果としての登録価格が,賦課期日における本件土地の客観的時価を下回るか否かは全く示されていないから,控訴人の上記主張は抗弁として失当である。 控訴人は,相続税に関する財産評価基本通達の奥行補正率についても述べているが,その補正率は,固定資産評価基準等の補正率と同様に,あくまでも評価額を算出するための手段に過ぎず,それらを適用した結果としての評価額が,本件土地の客観的時価を下回るか否かは別途証明されなければならないから,補正率についての上記主張も失当というほかない。さらに,価格低下要因についての主張は,評価基準等の一般的合理性を争う主張でもあるので,評価基準等の補正率の合理性について審理判断すべきであるが,その点についても,本件決定理由には何も記載されておらず,その意味でも,控訴人の上記主張は失当である。 - 13 -(4)控訴人は,「評価基準等に準拠した評価額が客観的な時価を超えないときは,同評価をもって違法ということはできないから,容積率にかかる補正をしなかったことをもって,直ちにこうした評価方法が違法になるわけではないというべきである。」と主 価額が客観的な時価を超えないときは,同評価をもって違法ということはできないから,容積率にかかる補正をしなかったことをもって,直ちにこうした評価方法が違法になるわけではないというべきである。」と主張する。しかし,この主張は支離滅裂である。「評価額が客観的な時価を超えないときは」と前提条件を設定しているが,そのような前提条件を設定すること自体が,控訴人の認識を象徴的に暴露している。その前提条件は,控訴人が証拠によって証明すべき事実の一つであって,証明もしないまま前提条件に据えることなどできるものではない。「評価額が客観的時価を超えない」ことを前提条件として設定してしまう以上,控訴人がそれについて審理判断しないことは当然の帰結である。 控訴人は,東京都土地価格比準表を持ち出して,容積率の格差率を捨象しても不合理とはいえない程度のものと考えられると主張する。 しかし,この主張も,控訴人の本件決定理由に全く記載されていない上,東京都土地価格比準表もあくまで手段に過ぎず,その格差率を適用した結果としての価格が,本件土地の客観的時価を下回るか否かは全く示されていないから,既に述べたように,上記主張も抗弁として失当である。 また,評価基準等が容積率の格差率を捨象していることについての一般的合理性についても,本件決定理由には何も記載されておらず,その意味でも,控訴人の主張は失当である。 - 14 - 控訴人の主張3(時機に後れた攻撃防御方法の主張)について控訴人は,「念のため,本件土地の登録価格が本件土地の形状及び容積率に伴う価格低下要因を考慮しても,客観的価格を上回ることがないことを次に論ずることにする」と主張するが,そもそも「本件土地の登録価格が賦課期日における客観的時価を上回るか否か」(以下「本件登録価格の適正さ」という)は,本件審査申出 観的価格を上回ることがないことを次に論ずることにする」と主張するが,そもそも「本件土地の登録価格が賦課期日における客観的時価を上回るか否か」(以下「本件登録価格の適正さ」という)は,本件審査申出の中心争点の一つであった。 しかるに,控訴人は,この本件登録価格の適正さについて審理判断をせず,原審裁判所から本件登録価格の適正さについて主張立証しないのかとの釈明を受けたのに,その意思はないとの意向を表明して,何ら主張立証を行わなかった。この点について,控訴人は,審理不尽のみが本件裁判の争点であると弁明しているが,本件裁判の争点である審理不尽とは,本件標準宅地の価格の適正さ及び本件登録価格の適正さについての審理不尽を含むものであるから,本件登録価格の適正さについて審理判断したとすれば,控訴人としては,これを真先に主張してしかるべきである。しかも,控訴人は,平成15年3月26日に原判決を言い渡され,同年3月31日に本件控訴を提起したにもかかわらず,控訴審の第1回期日である同年7月1日の当日になってようやく控訴理由の一部を記載した控訴人準備書面(1)を提出し,控訴理由の残りを記載した控訴人準備書面(2)を同年11月4日の期日当日になってようやく提出した。 以上の経過にかんがみれば,そもそも本件登録価格の適正さに関する控訴人の主張は,いずれも時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべ- 15 -きである。 第3当裁判所の判断 本件登録価格算定の基準時について当裁判所も,固定資産税の課税標準である固定資産の価格の算定基準日は,固定資産税の賦課期日とすべきであって,他の時点(価格調査基準日)を基準にすべきではないと判断するが,その理由は,原判決の「事実及び理由」中の「第3争点に対する判断」の「1本件登録価格算定の基準日について」の欄(た すべきであって,他の時点(価格調査基準日)を基準にすべきではないと判断するが,その理由は,原判決の「事実及び理由」中の「第3争点に対する判断」の「1本件登録価格算定の基準日について」の欄(ただし,原判決9頁15行目冒頭から13頁13行目の「できない。」までの部分)に記載のとおりであるから,これを引用する。 ところで,平成14年法律第17号による改正前の地方税法410条は,市町村長(同法734条1項により特別区においては東京都知事。)は,固定資産の価格等を毎年2月末日までに決定しなければならないと規定するところ,市町村長において,大量に存する固定資産の評価事務に要する期間を考慮して,賦課期日から一定期間さかのぼった時点を価格調査基準日とし,同日の標準宅地の価格を賦課期日における価格の算定資料とすること自体は,法の禁止するところではないと解するのが相当である(最高裁平成15年6月26日判決判例時報1830号29頁参照)。 控訴人の審理不尽について(1)東京都知事が,本件土地について本件登録価格を決定した経緯,- 16 -及び控訴人が,本件審査申出を審理し,本件決定をした経緯等は,次のとおりである。 1)東京都知事は,地方税法388条1項に基づいて定められた固定資産評価審査基準(昭和38年自治省告示第158号。以下「評価基準」という。)及び「東京都固定資産(土地)評価事務取扱要領」(昭和38年5月22日主税局長決裁。以下「取扱要領」といい,評価基準及び取扱要領を総称して「評価基準等」という。)に従って,固定資産の価格を決定しなければならないこととされている(同法403条1項)。 そして,評価基準等は,主として市街地的形態を形成する地域における宅地については,市街地宅地評価法によって各筆の宅地について評点数を付設し,これに評 ならないこととされている(同法403条1項)。 そして,評価基準等は,主として市街地的形態を形成する地域における宅地については,市街地宅地評価法によって各筆の宅地について評点数を付設し,これに評点1点当たりの価額を乗じて,各筆の宅地の価額を求めるものとしており,この市街地宅地評価法は,大要,次のとおりとなっている。①まず,用途地区を区分する。②次に,各用途地区について,その状況が相当に相違する地域(以下「状況類似地区」という。)ごとに,その主要な街路に沿接する宅地のうちから標準宅地を選定する。③標準宅地について,売買実例価額から評定する適正な時価を求め,これに基づいて当該標準宅地の沿接する街路について路線価を付設し,これに比準してその他の街路の路線価を付設する。④路線価を基礎とし,画地計算法を適用して各筆の宅地の評点数を付設するものである(乙1号証)。 - 17 -2)自治事務次官は,平成6年度の土地の価格の評価替えに当たり,各都道府県知事あてに,「『固定資産評価基準の取扱いについて』の依命通達の一部改正について」(平成4年1月22日自治固第3号。以下「7割評価通達」という。)を発出し,宅地の評価に当たっては,地価公示法による地価公示価格,国土利用計画法施行令による都道府県地価調査価格及び不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定評価から求められた価格を活用することとし,これらの価格の一定割合(当分の間この割合を7割程度とする。)を目途とすることを通達した(顕著な事実)。 3)証拠(乙1ないし9号証)及び弁論の全趣旨によれば,東京都知事は,上記の評価基準等及び7割評価通達に従って,次のとおりの手順により,平成12年度の本件土地についての本件登録価格8584万3770円を算出決定したことが認められる。 ア本件土地は,主として市街 は,上記の評価基準等及び7割評価通達に従って,次のとおりの手順により,平成12年度の本件土地についての本件登録価格8584万3770円を算出決定したことが認められる。 ア本件土地は,主として市街地的形態を形成する地域における宅地であるから,市街地宅地評価法により評価する。 イ本件土地の状況類似地区にあり,かつ,正面路線に沿接する地域にある標準宅地a(新宿区γ×番1所在,平成11年1月1日時点の鑑定価格59万円)を選定し,7割評価通達に基づきその7割程度の価格を41万3000円とし,他方,本件土地の状況類似地区にあり,かつ,側方路線に沿接する地域にある標準宅地b(新宿区α×番2所在,平成11年1月1日時点の地価公示価- 18 -格52万円)を選定し,その7割程度の価格を36万4000円とした。 ウ上記各標準宅地の価格に基づき,それぞれの標準宅地に沿接する街路の路線価を,標準宅地aにつき41万3000点,標準宅地bにつき36万4000点と付設した。 エ次に,標準宅地aと本件土地に沿接する正面路線とを比較し,容積率(標準宅地aも本件土地も共に容積率300パーセントとみた。)等の行政的条件100パーセントなどを総合した格差率95パーセントを上記路線価に乗じて正面路線の路線価を39万2000点と付設した。 オまた,標準宅地bと本件土地に沿接する側方路線とを比較し,容積率(標準宅地bも本件土地も共に容積率160パーセントとみた。)等の行政的条件100パーセントなどを総合した格差率99パーセントを上記路線価に乗じて側方路線の路線価を36万点と付設した。 カ画地計算法に基づいて検討すると,正面路線からの本件土地の奥行きは29.5メートルであるから,取扱要領別表1により奥行価格補正率0.98を,奥行距離29.5メートルを間口距離9メ と付設した。 カ画地計算法に基づいて検討すると,正面路線からの本件土地の奥行きは29.5メートルであるから,取扱要領別表1により奥行価格補正率0.98を,奥行距離29.5メートルを間口距離9メートルで除した数値は約3.27であるから,取扱要領付表5により奥行長大補正率0.96をそれぞれ適用することになり,正面路線の上記路線価39万2000点にこれらの補正率を乗じ- 19 -ると,基本単価は36万8480点となる。 キ側方路線からの本件土地の奥行きは9メートルであるから,取扱要領別表1により奥行価格補正率0.97を,側方路線の用途地区は低層普通住宅地区であるから,取扱要領付表2により側方路線影響加算率0.04をそれぞれ適用することになり,側方路線の上記路線価36万点にこれらの率を乗じると,加算評点は1万4400点となる。 ク上記基本単価36万8480点に上記加算評点1万4400点を加えた38万2880点が平成11年1月1日時点の単位地積当たり評点となる。これに平成11年1月1日から平成11年7月1日までの時点修正率0.97を乗じると平成11年7月1日時点の単位地積当たり評点37万1393点が算出され,これに本件土地の地積231.14平方メートルを乗じると,平成11年7月1日時点の総評点8584万3778点が算出され,これを1点当たり1円で換算した上,10円未満を切り捨てて,平成11年7月1日時点の本件土地の評価額8584万3770円が算出される。 ケそして,東京都知事は,平成11年7月1日が価格調査基準日とされていることから,上記評価額8584万3770円をそのまま平成12年度の本件土地の価格と決定した。 4)証拠(甲1号証,2号証の1,2)によれば,被控訴人らは,平- 20 -成12年6月27日上記決定に基づく本件 記評価額8584万3770円をそのまま平成12年度の本件土地の価格と決定した。 4)証拠(甲1号証,2号証の1,2)によれば,被控訴人らは,平- 20 -成12年6月27日上記決定に基づく本件登録価格につき控訴人に対し審査の申出をしたので,控訴人は,平成12年12月22日及び平成13年3月7日に口頭審理を行い,被控訴人らの代理人は,上記口頭審理において,①控訴人は評価基準等に拘束されないで賦課期日における固定資産の適正な価格を評価審査すべきである旨を強調し(甲2号証の1の22ないし29頁),②本件土地について取扱要領別表1により奥行価格補正率0.98を,取扱要領付表5により奥行長大補正率0.96をそれぞれ適用するのは,その地形上不相当であり,0.7とか0.55の補正率にすべきであると主張し(甲2号証の1の48頁,甲2号証の2の53頁),③セットバック部分については現に道路として使用されていなくても何らかの補正をすべきであると主張し(甲2号証の1の58頁,甲2号証の2の52頁),④本件土地上に建物を建築する際の実効容積率は,その準工業地域部分は300パーセントだが,第2種住居地域部分は200パーセントであり,両者の平均値が250パーセントとなるから,標準宅地aから本件土地の正面路線の路線価を算出する際の格差率を95パーセントとするのは相当ではない旨主張し(甲2号証の1の62ないし64頁,甲2号証の2の38ないし46頁),⑤本件土地の面積が広いこと,上記地形及びセットバック部分による減価や半年間で2~3パーセントの地価下落率を考慮すると3割のアローアンスの範囲を越えてしまい,その結果本件登録価格が賦- 21 -課期日の時価を超過する違法なものとなる旨主張した(甲2号証の2の56頁)こと(しかしながら,被控訴人らが,②ないし⑤ 3割のアローアンスの範囲を越えてしまい,その結果本件登録価格が賦- 21 -課期日の時価を超過する違法なものとなる旨主張した(甲2号証の2の56頁)こと(しかしながら,被控訴人らが,②ないし⑤の主張を裏付ける客観的資料を控訴人に対して提出したと認めるに足りる証拠はない。),他方,評価庁の職員は,上記口頭審理において,上記③の主張に対して,セットバック部分について現に道路として使用されていない場合にも補正をすることとすると,既に道路として使用されている者との間に不均衡が生じると反論し(甲2号証の2の51頁),上記④の主張に対して,実効容積率と地価とは正比例する関係にはなく,180万筆もの土地の評価に実効容積率の加重平均による補正を取り込むのは困難なので,これを実施していない旨反論した(甲2号証の2の39頁)こと,控訴人は,その後合議をした上,平成13年3月30日付けで本件審査申出を棄却する本件決定をしたこと,その決定書の「第5当委員会の判断」中の「1申出人の主張に対する当委員会の見解」の「オ」の欄には,「平成12年度の土地の評価額は,評価基準等の定める所要の評価手続を踏まえた上で決定され,土地課税台帳等に登録されたものである限り,違法,不当なものとはいえない。」と記載され,「2本件土地の評価額について」の欄には,「当委員会は,本件土地の評価について,評価基準等に即して適正・妥当になされているか否かについて,関係資料等に基づき精査・検討した。その結果,評価庁が行った本件土地の評価額の具体的算出手続は,地目の認定,用途- 22 -地区・状況類似地区の区分,標準宅地の選定,路線価の付設,画地計算,時点修正率の適用等,いずれも評価基準等に即して適切になされており,本件土地の評価は適正・妥当であると判断する。したがって,本件土 地区・状況類似地区の区分,標準宅地の選定,路線価の付設,画地計算,時点修正率の適用等,いずれも評価基準等に即して適切になされており,本件土地の評価は適正・妥当であると判断する。したがって,本件土地の評価額に対する申出人の主張は認められない。」と記載されていることが認められる。 5)証拠(乙2ないし4号証),弁論の全趣旨及び顕著な事実によれば,前記標準宅地bの公示価格は,平成11年1月1日時点で1平方メートル当たり52万円,平成12年1月1日時点で同51万2000円であり,その地価下落率は1.5パーセントとなり,前記標準宅地aの鑑定評価時に規準した基準地である新宿区β×番1外2筆の東京都基準値価格による推定値は,平成11年1月1日時点で同73万円,平成12年1月1日時点で同70万5000円であり,その地価下落率は3.4パーセントとなることが認められるから,本件土地についての平成11年1月1日から平成12年1月1日までの地価下落率は,多くとも3.4パーセント程度であると推認できる。 (2)以上の事実等を前提にして,控訴人の審理不尽の有無について検討する。 1)1で述べたとおり,地方税法によれば,固定資産税の課税標準である固定資産の価格の算定基準日は賦課期日であるところ,控訴人は,地方税法349条1項の規定の解釈を誤り,その算定基準日を- 23 -価格調査基準日であると解して本件の審査に臨んだことが明らかである。 しかしながら,準司法機関として独立して法規を解釈適用できる控訴人が,自らの判断で,正解ではないにせよ地方税法349条1項の規定を控訴人主張のとおりに解釈した上で,本件決定をしたからといって,控訴人に審理不尽の違法があったということにはならないばかりか(この点の誤りは,司法手続によって是正すべきことが法律上予定されている。 控訴人主張のとおりに解釈した上で,本件決定をしたからといって,控訴人に審理不尽の違法があったということにはならないばかりか(この点の誤りは,司法手続によって是正すべきことが法律上予定されている。),前記認定事実によれば,本件土地についての平成11年1月1日から平成12年1月1日までの地価下落率は,多くとも3.4パーセント程度であるから,平成11年7月1日の価格調査基準日から平成12年1月1日の賦課期日までの半年間の地価下落はこれ以下の範囲にとどまっていたといえるから,7割評価通達により,本件土地の評価を上記のとおり7割の評価にとどめたことを勘案すると,控訴人の上記法規解釈の誤りが,本件決定に影響を及ぼすものでなかったことが明らかである。よって,上記の点をもって,本件決定に審理不尽の違法があるということはできない。 2)次に,被控訴人らは,本件口頭審理において,前記(1)4)の①から⑤の主張をしていたことが明らかであるから,この点についての審理不尽の有無を検討する。 控訴人は,前記のとおり2回にわたり口頭審理を開き,被控訴人- 24 -らの主張を聴取し,立証の機会を与えた上で,結局,「平成12年度の土地の評価額は,評価基準等の定める所要の評価手続を踏まえた上で決定され,土地課税台帳等に登録されたものである限り,違法,不当なものとはいえない。」として,審査の申出を棄却したものであるが,この間において,控訴人が,被控訴人らの主張を制限したり,立証を制限したりした形跡は認められない。 ところで,東京都知事が本件登録価格を決定するに当たって依拠したと見られる乙1号証によると,評価基準等に規定する市街地宅地評価法は,各種の宅地の形状や態様に応じて適用できるもので,しかも宅地の評価方法として一般的な合理性があるものと認められる。したがって したと見られる乙1号証によると,評価基準等に規定する市街地宅地評価法は,各種の宅地の形状や態様に応じて適用できるもので,しかも宅地の評価方法として一般的な合理性があるものと認められる。したがって,評価基準等に従って決定した宅地価格は,評価基準等が定める評価方法によっては宅地の価格を適切に算定することができない特別の事情がある場合又は評価基準等が定める補正率等を超える減価を要する特別の事情がある場合を除いては,その適正な時価に相当程度接近したものであると推認するのが相当であり,また,7割評価通達に則り標準宅地の評価に当たって3割の減額をしていることをも考慮すると,このようにして算出された価格をそのまま登録価格として記載しても,当該登録価格は固定資産の適正な時価を越えることにはならないというべきである。そして,この見地に立脚して,本件についてみると,被控訴人らの口頭審理における主張は,前記②ないし④の主張(①の主張が失当であることは- 25 -上記説示から明らかであり,⑤は個別具体的主張ではない。)にとどまっており,上記の特別の事情に該当すべき事実を主張していないし,それに沿う証拠も提出していない。そうすると,控訴人の本件決定当時,上記「評価基準等が定める評価方法によっては宅地の価格を適切に算定することができない特別の事情がある場合又は評価基準等が定める補正率等を超える減価を要する特別の事情がある場合」であったとはいえず,被控訴人らの上記主張には,理由がないことが明らかであったというべきである。そして,控訴人は,本件土地の価格評価が評価基準等に従ってなされたかという視点で,本件を十分に検討して,審査申出を棄却すべきであるとの結論に達したのであるから,結局,控訴人の本件決定については,審理不尽の違法はなかったというべきである。 基準等に従ってなされたかという視点で,本件を十分に検討して,審査申出を棄却すべきであるとの結論に達したのであるから,結局,控訴人の本件決定については,審理不尽の違法はなかったというべきである。 第4 結論 以上によれば,その余の点を検討するまでもなく,被控訴人らの本件請求は失当であるからこれを棄却すべく,これと結論を異にする原判決は相当でないからこれを取り消すこととし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第2民事部裁判長裁判官森脇勝裁判官中野信也- 26 -裁判官綿引穣- 27 -(原裁判等の表示)主文 原告らの共有に係る別紙物件目録記載の土地に対する平成12年度の固定資産課税台帳登録価格につき、被告が平成13年3月30日付けでした原告らの審査の申出を棄却する旨の決定を取り消す。 訴訟費用は、被告の負担とする。 事実及び理由 第1請求主文と同旨第2事案の概要本件は、原告らが、その共有に係る別紙物件目録記載の土地に対する平成12年度の固定資産課税台帳登録価格を不服として被告に審査の申出をしたところ、これを棄却する旨の決定を受けたため、「被告の決定には審理不尽の違法がある。」と主張して、その取消しを求める事案である。 前提事実以下の事実は当事者間に争いがないか、証拠上容易に認めることができる(証拠によって認めた事実は、認定事実の後に、認定の根拠となった証拠をかっこ書きする。)。 1)原告らは、別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を共有している。 - 28 -2)東京都知事は、平成12年3月31日付けで平成12年度における本件土地の価格を8584万3770円と決定し、東京都新宿都税事務所長は、同日付けで土地課税台帳に上記価格(以下「本件登録価格」という。)を登録した(甲1 12年3月31日付けで平成12年度における本件土地の価格を8584万3770円と決定し、東京都新宿都税事務所長は、同日付けで土地課税台帳に上記価格(以下「本件登録価格」という。)を登録した(甲1)。 3)原告は、同年6月27日、本件登録価格を不服として被告に対する審査の申出(以下「本件審査申出」という。)を行ったところ、被告から、平成13年3月30日付けで本件審査申出を棄却する旨の決定(以下「本件決定」という。)を受けたため、同年6月26日、本訴を提起した。 争点と争点に関する当事者双方の主張本件の争点は、本件決定には審理不尽の違法があるかどうかであり、この点に関する当事者双方の主張は次のとおりである。 1)原告ア)被告による審理不尽について(ア)固定資産税の課税標準である土地の価格とは、適正な時価をいうのであるから(地方税法341条5号)、被告における審査(以下、これを「価格審査」という。)の対象も、審査の対象となった土地の土地課税台帳又は土地補充台帳への登録価格(以下「登録価格」という。)が、適正な時価を上回るものではないかどうかという点にあるものというべきである。そして、固定資産の評価は、総務大臣が定める固定資産評価基準(以下、「評価基準」という。なお、- 29 -東京都においては、評価基準に基づき、東京都固定資産(土地)評価事務取扱要領(昭和38年5月22日38主税固発第174号主税局長通達を定めているので、以下、これを「取扱要領」といい、評価基準と取扱要領を併せて「評価基準等」ということとする。)に基づいて行われなければならないとされているものの(地方税法389条、403条)、この評価基準等も、適正な時価を算定するに足りる合理的なものである限りにおいて規範性を有するのにすぎず、評価基準等に従った評価がされてい ばならないとされているものの(地方税法389条、403条)、この評価基準等も、適正な時価を算定するに足りる合理的なものである限りにおいて規範性を有するのにすぎず、評価基準等に従った評価がされていたとしても、その結果が、土地の時価を超えるものになっている場合には、その評価は違法というべきであるから、評価審査においては、土地の評価が評価基準等に従って行われていたかどうかのみを審査すれば足りるものではなく、その評価額が時価を超えるものではないかどうかをも審査しなければならないものというべきである。 この観点から考えた場合、評価審査に当たっては、次の4点を審査する必要があり、これらの点について十分な審査が尽くされていない場合には、審理不尽の違法があるものというべきである。 ①土地の価格決定が、評価基準等に従って行われているかどうか②評価基準等に一般的な合理性があるかどうか③標準宅地の価格が賦課期日における適正な時価であるかどうか④結果としての登録価格が、賦課期日における対象土地の時価を上回るかどうか。 - 30 -そして、上記の点を考慮すると、②ないし④の点を審査するに当たっては、評価基準等に拘泥することなく、登録価格の決定が客観的に適正なものであるかどうかという観点からの審査をすることが不可欠であるというべきである。 (イ)ところが、原告の本件審査申出に基づく審査手続(以下「本件審査」という。)においては、原告が、①本件土地は、間口が8メートル足らずであるのに対し、奥行きが約30メートルもある「うなぎの寝床」のような形状をした土地であって、その点が、重大な価格低下要因になる、②容積率は加重平均にすべきである、③セットバック部分を価格評価において考慮すべきであるなどといった具体的な問題点を指摘して審査を求めたにもかかわらず、被告は、補 の点が、重大な価格低下要因になる、②容積率は加重平均にすべきである、③セットバック部分を価格評価において考慮すべきであるなどといった具体的な問題点を指摘して審査を求めたにもかかわらず、被告は、補正率が評価基準等に定める範囲内のものであるかどうかや、原告の主張事由に該当する補正率が定められているかどうかといった形式的な審査を行うのに終始し、本件土地の登録価格が、客観的に適正な時価を上回っていないかどうかという観点からの審査は一切行わなかった。このことは、本件決定書(甲1)の理由の記載が、評価基準等の当て嵌めのみに終始した極めて形式的なものになっていることからも明らかである。 以上によれば、本件審査における被告の審査は、上記(ア)に記載した審査事項を無視した極めて不十分なものであって、審理不尽の違法があることは明らかである。 - 31 -イ)本件登録価格算定の基準時について地方税法349条1項は、「基準年度に係る賦課期日に所在する土地又は家屋(かっこ内省略)に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋の基準年度に係る賦課期日における価格(かっこ内省略)で土地課税台帳若しくは土地補充課税台帳(かっこ内省略)又は家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳(かっこ内省略)に登録されたものとする。」と定めているところ、賦課期日における「価格」とは、適正な時価をいうのであるから(地方税法341条5号)、結局、土地又は家屋に対して賦課される基準年度の固定資産税の課税標準は、賦課期日(当該年度の初日の属する年の1月1日。 地方税法359条。)における当該土地又は家屋の適正な時価であることは明らかである。 しかしながら、被告は、「上記の賦課期日における価格とは、土地又は家屋の評価に必要な一定期間を遡った日(以下、これを「価格調査基 。)における当該土地又は家屋の適正な時価であることは明らかである。 しかしながら、被告は、「上記の賦課期日における価格とは、土地又は家屋の評価に必要な一定期間を遡った日(以下、これを「価格調査基準日」という。)における価格を指し、賦課期日における価格を指すものではないから、価格審査においても、価格調査基準日における本件土地の価格の評価が適正であるかどうかを審査すれば足り、賦課期日における本件土地の価格の評価が適正であるかどうかを審査する必要はない。」と主張して、賦課期日における本件土地の価格評価が適正であるかどうかについては全く審査をする必要はないし、現に審査をしなかったことを明言している。そうだとすると、被告が行っ- 32 -た審査は、価格評価の適否を判断すべき時点を全く誤っている点において根本的な誤りがあるものというべきであり、この一事をもってしても審理不尽の違法があることは明らかである。 2)被告ア)審理不尽の主張について(ア)固定資産税の課税標準である土地の登録価格とは、当該土地の適正な時価をいうことは原告が主張するとおりであるが、この適正な時価を算定するために評価基準が定められ、東京都においても、この評価基準に基づき、評価要領を定めている。そして、課税標準である土地の価格決定は、地方税法上、評価基準に基づいてされるべきものと定められている上に、評価基準や評価要領は、長年の固定資産評価事務の蓄積を通じてその内容の合理性が確立され、向上されてきたものといえる。また、この評価基準等に基づく評価は、一定の評価手法に基づき、ある程度画一的に行われるものであるため、土地の個別的な事情がすべて反映されるとは限らない面があることは事実であるが、短期間の間に大量の土地の評価をしなければならない固定資産評価事務の性質上、そのような結 画一的に行われるものであるため、土地の個別的な事情がすべて反映されるとは限らない面があることは事実であるが、短期間の間に大量の土地の評価をしなければならない固定資産評価事務の性質上、そのような結果となることについてはある程度やむを得ない側面があることや、課税の公平という観点からすれば、土地の評価は、同一の基準に基づいて行われるのが望ましいこと、いわゆる7割評価の原則による控えめな算定の下においては、ある程度画一的な評価手法によって個別的な事情が捨象- 33 -される傾向があるとしても、それによって評価額が客観的な時価を上回ることとなる可能性は低いものと考えられることなどの事情を考慮すると、評価基準等は、土地の登録価格算定手法として一般的な合理性を有し、特段の事情がない限り、評価基準等に基づいてされた土地の評価は合理的なものであると推定することができるものというべきである。 もっとも、評価基準等に基づく評価が常に適正な時価の範囲内にとどまっているとは限らないこと、及び適正な時価を上回る評価は、それが評価基準等に基づくものであるとしても違法となることは被告としても否定するものではないが、評価基準等の内容に照らしてみれば、そのような時価を上回る評価がされる原因は、標準宅地の価格評価が適正な時価に基づくものではなかったか、評価基準等に規定された補正率・格差率等が妥当性を欠いていた(本来行うべき補正についての補正項目が存在しなかった場合も含む。)ことによるものと考えられるから、評価基準等に基づく評価が時価を上回る疑いが生じた場合には、上記の2点についても検討をする必要があるものというべきである。 以上に照らしてみると、評価審査において審査をすべき内容は、次のとおりとなる。 ①土地の価格決定が評価基準等に基づいて行われているかどうか② 点についても検討をする必要があるものというべきである。 以上に照らしてみると、評価審査において審査をすべき内容は、次のとおりとなる。 ①土地の価格決定が評価基準等に基づいて行われているかどうか②評価基準等が一般的合理性を有するかどうか- 34 -③標準宅地の価格が価格調査基準日における適正な時価であるかどうか④評価基準等に規定された補正率・格差率等が合理性を有するかどうか(本来行うべき補正についての補正項目が存在しないかどうかを含む。)なお、原告は、評価審査においては、評価基準等に拘泥することなく、価格評価がその対象土地の適正な時価を上回るものではないかどうかを客観的に判断すべきであるという趣旨の主張をしているが、その主張が、評価基準等を無視して独自の観点から価格評価をし直すべきであるという趣旨であるとすれば、それは、地方税法の規定や評価基準等の存在意義を無視した主張であって相当ではない。 (イ)被告は、本件審査においても、上記のような観点から本件登録価格が適正な時価を上回るものではないかどうかを審査したものであって、原告が主張するような審理不尽の違法はない。 原告は、「本件審査においては、原告が指摘した価格低減事由を無視した審査が行われたものである。」という趣旨の主張をする。 しかしながら、被告は、原告の主張を一切無視した審査をしたものではなく(原告の主張を無視するのであれば、主張立証そのものを制限していたはずであるが、そのような制限は全くしていない。)、原告が指摘した事由も考慮した上、本件においては、それらは、価格決定を違法とするに足りるものではないと判断したものである。 - 35 -原告は、「本件決定の裁決書の理由記載からしても、被告が原告の主張事由について何ら考慮をしなかったことは明らかである。」とも主張するが、裁決 に足りるものではないと判断したものである。 - 35 -原告は、「本件決定の裁決書の理由記載からしても、被告が原告の主張事由について何ら考慮をしなかったことは明らかである。」とも主張するが、裁決書の理由において、被告の判断過程をすべて記載する必要はないのであるから、裁決書の理由の記載のみを基にして上記のような主張をするのは、根拠薄弱というべきである。原告が指摘するセットバック、容積率等の補正の妥当性については、既に裁判所において争点となったことがあり、被告は、それらの判決の結果等を勘案して本件土地の固定資産税評価額を算出したものである。 イ)本件登録価格算定の基準時について原告は、「被告は、本件土地の賦課期日における評価の適否を審査していないから審理不尽の違法がある。」とも主張するが、価格審査においては、本件土地の賦課期日における価格ではなく、価格調査基準日における価格の評価が適正であるかどうかを審査すれば足りるものであるから、原告の主張は失当である。 すなわち、地方税法349条1項は、土地又は家屋に対して課する基準年度の課税標準は、当該土地又は家屋の基準年度に係る賦課期日における価格で土地課税台帳等に「登録」されたものをいうと定めているところ、市町村長は、この価格を毎年2月末日までに決定しなければならないとされているのであるから(地方税法410条)、仮に課税標準としての土地又は家屋の価格とは賦課期日における価格であ- 36 -るとすると、大量の土地や家屋について、1月1日の時点における価格を2月末日までの僅か2か月の間にすべて決定しなければならないこととなり、そのようなことは不可能であるというほかはない。しかしながら、地方税法が、このような不可能を強いることを前提とした定めを置いたものと解するのは不合理であるから、同法は、 なければならないこととなり、そのようなことは不可能であるというほかはない。しかしながら、地方税法が、このような不可能を強いることを前提とした定めを置いたものと解するのは不合理であるから、同法は、大量の土地や家屋について評価を行うのに必要な一定期間を遡った日を価格調査基準日として定め、その日における時価をもって固定資産税の課税標準とすることを許容したものと解すべきであり、前示の地方税法349条1項が、賦課期日における価格そのものではなく、「登録」された価格を課税標準とする旨を定めているのも、上記のような理解を前提としたものであると解される。また、平成5年法律第4号による改正後の地方税法附則17条の2及び18条は、同改正後における土地の評価替え(いわゆる7割評価)に伴う価格評価の上昇に対する特例措置として、平成4年7月1日を価格調査基準日とする各都道府県の基準宅地価格を基礎として平成5年度課税標準に対する上昇率を算定し、それにより平成6年度から平成8年度までの課税標準を決定する旨を定めているのであるから、このことからしても、地方税法が、価格調査基準日における不動産の価格をもって課税標準とすることを予定し、許容していることは明らかである。 以上のとおり、固定資産税の課税標準である土地の「価格」とは、価格調査基準日における適正な価格を指し、本件審査においても、価- 37 -格調査基準日における価格算定の適否を審査すれば足りるのであって、被告は、この点についての審査を行っているのであるから、審理不尽の違法はない。 第3争点に対する判断 本件登録価格算定の基準日について上記のとおり、本件の争点は、本件審査について審理不尽の違法があるかどうかという点にあるが、本件においては、固定資産税の課税標準である土地の価格の算定基準日を固定資産 件登録価格算定の基準日について上記のとおり、本件の争点は、本件審査について審理不尽の違法があるかどうかという点にあるが、本件においては、固定資産税の課税標準である土地の価格の算定基準日を固定資産税の賦課期日とするのか価格算定基準日とするのかについても当事者双方に争いがある。そして、この点は、本件審査においては、本件登録価格の適否をどの時点の価格を基準にして判断すべきかという審査の前提事項に関する争いであるといえるので、まずこの点について判断する(なお、本件登録価格は、基準年度における価格であるため、以下においては、基準年度における登録価格算定の基準日について判断を示すこととするが、第二年度、第三年度についても、基本的に同様に考えることができるものである。)。 1)地方税法349条1項は、「基準年度に係る賦課期日に所在する土地又は家屋(かっこ内省略)に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋の基準年度に係る賦課期日における価格(かっこ内省略)で土地課税台帳若しくは土地補充課税台帳(かっこ内省略)又は家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳(かっこ内省略)に登録されたものとする。」と定めているところ、ここでは、固定資産税の- 38 -課税標準は、当該土地又は家屋の基準年度に係る「賦課期日における価格」であると明確に規定されているのであるから、価格算定の基準日は、賦課期日であることは明らかである。 被告は、「賦課期日における価格」であって固定資産課税台帳に「登録された」ものを課税標準とする旨が定められているところから、上記規定は、賦課期日から一定期間遡った日を価格算定基準日と定め、その日における価格を課税標準とすることを許容しているという趣旨の主張をする。しかしながら、上記規定が、課税標準を、賦課期日における価格で 定は、賦課期日から一定期間遡った日を価格算定基準日と定め、その日における価格を課税標準とすることを許容しているという趣旨の主張をする。しかしながら、上記規定が、課税標準を、賦課期日における価格ではなく、「登録された」ものとする旨を定めているのは、固定資産税については、いわゆる「台帳課税主義」が採用され、固定資産課税台帳に価格を登録することによって固定資産税の課税要件を客観的に明確にし、それを縦覧に供して納税者に価格を争う機会を与えるとともに、課税関係を早期に確定させることを目的とした制度が設けられた結果、客観的な時価が直ちに課税標準となるのではなく、それが固定資産課税台帳に登録されて初めて課税標準としての意義を有することとなることを意味しているのにすぎず、価格算定の基準日を何時にするかという問題とは何の関わりもないものというべきである。しかも、上記規定が「登録」されるべき価格として定めているのは、あくまでも賦課期日における価格なのであって、賦課期日から一定期間を遡った日における価格ではないのであるから、「登録されたものとする」との文言を根拠として、被告主張のような解釈を導き出すことは到底無理であるといわざ- 39 -るを得ない。 2)また、被告は、「市町村長は、固定資産の価格を毎年2月末日までに決定しなければならないとされているのであるから(地方税法410条)、仮に課税標準としての土地又は家屋の価格とは賦課期日における価格であるとすると、大量の土地や家屋について、1月1日の時点における価格を2月末日までの僅か2か月の間にすべて決定しなければならないこととなり、そのようなことは不可能であるというほかはないところ、地方税法が、このような不可能を強いることを前提とした定めを置いたものと解することはできない。」という趣旨の主張をする。 ればならないこととなり、そのようなことは不可能であるというほかはないところ、地方税法が、このような不可能を強いることを前提とした定めを置いたものと解することはできない。」という趣旨の主張をする。たしかに、2か月間の間に、大量の土地や建物についての評価を行わなければならないということに困難が伴うであろうことは否定できないけれども、このことは、地方税法の固定資産税の課税に関する規定が制定された当時から当然に予想された事柄なのであるから、仮にこの点についての配慮が必要であると考えられていたのであるとすれば、価格算定の基準日について特別の定めを置くなどの立法措置がされていて然るべきであるし、そのことは容易であったはずである。しかしながら、地方税法には、そのような点に関する明示的な規定は何ら存在せず、むしろ、賦課期日における価格を課税標準とする旨の定めが置かれていることは1)記載のとおりなのであるから、地方税法は、上記のような困難性にもかかわらず、賦課期日における価格を調査した上で、2月末日までにこれを決定することを要求しているものと解するほかはない(なお、賦課期日か- 40 -ら一定期間を遡った日を価格調査基準日とすることを認めるのであれば、少なくとも、何時の時点を価格調査基準日として定めるのかについての規定が置かれなければならないはずである。そうしなければ、価格調査のために必要な期間というものは、一義的に定められるような性質のものではないのであるから、各地方自治体の価格算定事務の量と、そのための処理能力等によって価格決定に必要な期間に違いが生じ、価格調査基準日にばらつきが生じる結果、どの地方に土地や建物を所有しているかによって、価格算定の時期が異なるという結果にもなりかねないことになるからである。被告が、価格評価の点においては、統 生じ、価格調査基準日にばらつきが生じる結果、どの地方に土地や建物を所有しているかによって、価格算定の時期が異なるという結果にもなりかねないことになるからである。被告が、価格評価の点においては、統一的で公平な評価の必要性を強調していながら、価格算定の基準日については、上記の点についてどのように考えるのかを明確にすることもなく、統一性や公平を欠く評価をもたらしかねない主張をするのは矛盾といわざるを得ないことも指摘しておきたい。)。 なお、土地や建物の価格を決定するのに当たり、賦課期日から一定期間を遡った日を一応の価格調査基準日として定め、その時点における価格を決定した上で、それから賦課期日までの価格変動の可能性について予想を立て、それを加味して賦課期日における価格を決定することも可能なはずである。そして、7割評価の原則の下においては、予想に反する価格の大幅な下落が起こったとしても、そのかなりの部分は、3割のアローワンスの中に吸収される可能性が高いものといえるのであるから、上記のような価格算定方法は、決して非現実的なものであるとはいい難- 41 -い(なお、一般の宅地の鑑定評価に当たっては、将来の価格変動の予測は極めて困難であるから、これを鑑定評価の要因とはすべきではないとされているが、時価そのものを求めることが要求される通常の不動産鑑定評価と、7割評価の原則の下で、3割のアローワンスをもって行われる評価とを同列に論ずる必要はなく、上記の点から、将来の価格変動を予想した評価を行うことは不相当であるという必要はない。)。この観点からしても、被告主張の点を根拠として、価格算定の基準日を遡らせなければならない必然性はないものというべきである。 3)被告は、「平成5年法律第4号による改正後の地方税法附則17条の2及び18条は平成4年7月1日 告主張の点を根拠として、価格算定の基準日を遡らせなければならない必然性はないものというべきである。 3)被告は、「平成5年法律第4号による改正後の地方税法附則17条の2及び18条は平成4年7月1日を価格調査基準日とする各都道府県の基準宅地価格を基礎として平成5年度課税標準に対する上昇率を算定し、それにより平成6年度から平成8年度までの課税標準を決定する旨を定めており、この点に照らしてみても、固定資産税の課税標準は、賦課期日における価格ではなく、価格調査基準日における価格とすることが予定されている。」という趣旨の主張もする。しかしながら、現行地方税法附則17条の2及び18条中には、賦課期日から遡った一定の日を価格調査基準日として基準宅地の価格を算定し、その後の地価の上昇率や下落率を算出すべき旨を明示的に定めた文言は存在せず、被告が、そのような解釈をしているのにすぎないのであるから(被告は、上昇率や下落率は、価格調査基準日の価格に基づかなければ算定が困難であるという点を根拠として、上記のような解釈をするのであろうが、そのような- 42 -解釈に根拠があるものとはいえないことは、すでに1)、2)項において説示したとおりである。)、附則の規定が上記の結論を左右するに足りる決定的な論拠になるということはできない。そして、以上のことは、平成5年改正時における地方税法附則17条の2及び18条についても、その後の附則の規定についても、同様にいい得る事柄である。 4)以上の次第であって、固定資産税の課税標準は、賦課期日における当該固定資産の価格と解すべきものであり、これに反する被告の主張を採用することはできない。したがって、本件審査においても、本件登録価格が、本件土地の賦課期日における価格として適正なものであったかどうかが審査されるべきものであっ のであり、これに反する被告の主張を採用することはできない。したがって、本件審査においても、本件登録価格が、本件土地の賦課期日における価格として適正なものであったかどうかが審査されるべきものであったことになる(被告の主張は、「少なくとも、価格審査においては、賦課期日から一定期間を遡った日における価格決定の当否を審査すれば足りる。」という趣旨に理解することもできないわけではないが、登録価格の適否を審査すべき価格審査において、本来問題とすべき時点とは異なる時点の価格決定の適否を審査するのは無意味というべきであるから、この主張を採用することもできない。)。 しかしながら、被告は、「本件審査においては、価格調査基準日における価格決定の適否を審査すれば足りる。」という趣旨の主張をしているのにとどまり、また、甲第1号証(被告の決定書)によっても、被告が、価格調査基準日における価格決定の適否のみを審査、判断していることは明らかである。そうだとすると、被告は、本件審査において、本- 43 -来審査の対象とすべき賦課期日における本件土地の価格決定の適否については何ら審査、判断をしていないこととなり、この点には重大な審理不尽の違法があるといわざるを得ないのであるから、本件決定は、その余の主張事実について判断するまでもなく違法として取消しを免れないものというべきである。 なお、以上のような検討結果に対しては、「固定資産評価審査委員会の審査決定取消訴訟においては、究極的には、対象となった固定資産の評価の適否が問題とされるべきものであるから、仮に審査手続に審理不尽の違法があるとしても、評価が適正であれば、審査決定を違法として取り消すまでのことはない。」との反論があり得るかもしれない。しかしながら、被告は、本訴第7回口頭弁論期日において、「本件土地の賦 不尽の違法があるとしても、評価が適正であれば、審査決定を違法として取り消すまでのことはない。」との反論があり得るかもしれない。しかしながら、被告は、本訴第7回口頭弁論期日において、「本件土地の賦課期日における価格については主張する意思はない。」との意向を表明し、上記のような観点から本件決定の適法性を主張立証する意思を示さなかったのであるから、仮に上記のような見解が成り立つとしても、本件においては、この観点から本件決定を適法とする余地はないものである。 また、原告は、本件登録価格が適正を欠く理由として、①本件土地は、間口が8メートル足らずであるのに対し、奥行きが約30メートルもある「うなぎの寝床」のような形状をした土地であって、その点が、重大な価格低下要因になる、②容積率は加重平均にすべきであるなどといった主張をしているところ、①で主張されているような本件土地の特異な形状は、本件土地の利用や処分のための制約要因となり、その客観的な経済的価値- 44 -に対しても、相当程度の低下要因にもなり得ることは十分に予想し得るところである。また、証拠(甲2の1、2)によれば、②の主張の具体的内容は、「本件登録価格の決定に当たっては、本件土地は準工業地域に属し、その容積率は300パーセントであることが前提とされているところ、本件土地は、その約2分の1が準工業地域に属しているのみであって、その余の約2分の1は第二種住居専用地域(容積率200パーセント)に属しているのであるから、本件土地の容積率は、加重平均をして250パーセントと評価すべきである。」というものであったことが認められるところ、土地の容積率は、その価格評価に当たって重要な要素になり得るのであるから、これに50パーセントの違いが生ずるとすれば、この点も、本件土地の客観的な経済価値に対す ものであったことが認められるところ、土地の容積率は、その価格評価に当たって重要な要素になり得るのであるから、これに50パーセントの違いが生ずるとすれば、この点も、本件土地の客観的な経済価値に対する重要な低下要因になり得るものであるというべきである。このように、少なくとも、上記①、②の点は、本件土地に対する相当程度の価格低下要因になり得る可能性がある事情といえるのにもかかわらず、被告において、本件土地の価格評価に関しては、これらが無視し得る程度の影響を及ぼすのにすぎないことをうかがわせるような具体的な主張立証は何ら行っていないのである。このことを加味して考えると、本件においては、価格算定の基準時に関する判断に誤りがあるばかりではなく、上記①、②の価格低下要因を十分に考慮していない誤りがある可能性も否定できないものというべきであり、これらの点が相俟って、7割評価によるアローワンスを考慮しても、本件登録価格が客観的時価を上回る結果となっている可能性を排除することはできない。したがって、こ- 45 -の点からしても、上記の反論は採用することができないものというほかはなく、被告において、上記①及び②の点を再検討した上、本件登録価格が賦課期日における客観的時価を上回るものでないか否かを改めて審査する必要があるといわざるを得ない。 第4 結論 以上の次第で、原告の請求は理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部藤山雅行裁判長裁判官鶴岡稔彦裁判官加藤晴子裁判官 鶴岡稔彦裁判官 加藤晴子裁判官

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