平成12(行ウ)353 平成12年(行ウ)第353号 事件記録閲覧謄写許可処分取消請求事件(以下「甲事件」という。)平成12年(行ウ)第354号 公正取引委員会審判事件記録閲覧謄写許可処分取消請求事件(以下「乙事件」という。)平成13年(行ウ)第8号 公正取引委員会審判記録閲覧謄写許可執行取消請求事件(以下「丙事件」という。)

裁判年月日・裁判所
平成13年10月17日 東京地方裁判所 その他
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本件は、地方公共団体が発注したごみ焼却施設に関する入札談合について、被告が行った審判事件の記録の閲覧謄写を求める原告らの訴えが争われた事案である。原告らは、被告が行った審判記録の閲覧謄写を許可する処分が違法であるとして、その取消しを求めた。主要な争点は、閲覧謄写に応じる行為が行政処分に該当するか、原告の適格性、訴えの利益、及び本件各処分の違法性であった。裁判所は、原告らの訴えを却下し、訴訟費用は原告らの負担とする判決を下した。これにより、原告らの主張は認められず、被告の処分は適法であると判断された。

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判決文本文15,214 文字)

主文 1 甲事件原告の訴えのうち、主位的請求並びに予備的請求1及び2をいずれも却下する。 2 乙事件原告の訴えのうち、主位的請求及び予備的請求1をいずれも却下する。 3 甲事件原告の予備的請求3、乙事件原告の予備的請求2及び丙事件原告らの請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 申立て 1 甲事件原告(1) 主位的請求被告が、参加人A、同B、同C、D及びEに対し、平成12年12月7日付けでした、公正取引委員会平成11年(判)第4号事件(以下「本件審判事件」という。)の事件記録の閲覧謄写を許す旨の各処分を取り消す。 (2) 予備的請求1被告が、参加人A、同B、同C、D及びEに対し、平成13年1月15日までにした、本件審判事件の事件記録の閲覧謄写を許す旨の各処分を取り消す。 (3) 予備的請求2被告が、参加人A、同B、同C及びDに対し、平成13年1月19日までにした、本件審判事件の事件記録の閲覧謄写を許す旨の各処分を取り消す。 (4) 予備的請求3被告が、参加人A、同B、同C及びDに対し、平成13年3月12日付けでした、本件審判事件の事件記録の閲覧謄写を許す旨の各処分を取り消す。 2 乙事件原告(1) 主位的請求被告が、参加人A、同B、同C及びDに対し、平成12年12月7日までにした、本件審判事件の事件記録の閲覧謄写を許す旨の各処分を取り消す。 (2) 予備的請求1被告が、参加人A、同B、同C及びDに対し、平成13年1月19日までにした、本件審判事件の事件記録の閲覧謄写を許す旨の各処分を取り消す。 (3) 予備的請求2被告が、参加人A、同B、同C及びDに対し、平成13年3月12日ころにした、本件審判事件の事件記録の閲覧謄写を許す旨の各処分を取り消す。 3 丙事件原告ら の各処分を取り消す。 (3) 予備的請求2被告が、参加人A、同B、同C及びDに対し、平成13年3月12日ころにした、本件審判事件の事件記録の閲覧謄写を許す旨の各処分を取り消す。 3 丙事件原告ら被告が、参加人A、同B、同C及びDに対し、平成13年3月12日までにした、本件審判事件の事件記録の閲覧謄写を許す旨の各処分を取り消す。 4 被告及び参加人ら(1) 本案前の答弁原告らの本件訴えをいずれも却下する。 (2) 本案の答弁原告らの本件訴えをいずれも棄却する。 第2 事案の概要本件は、地方公共団体が発注するごみ焼却施設に係る入札談合について被告が開始した審判事件の被審人である原告らが、被告が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「法」という。)69条に基づいて参加人らほか2名に対してした同審判事件の審判記録の謄写の申請に応じる旨の処分(以下「本件各処分」という。)が違法であるとして、その取消しを求めた事案である。 1 法令の定め法69条は、事件記録の閲覧・謄写等に関し、「利害関係人は、公正取引委員会に対し、審判開始決定後、事件記録の閲覧若しくは謄写又は課徴金納付命令書若しくは審決書の謄本若しくは抄本の交付を求めることができる。」と定めている。 2 前提事実(括弧内に認定根拠を掲記したほかは、各当事者間に争いがないか、相手方が明らかに争わない事実である。)(1) 被告は、平成11年9月8日、本件審判事件の審判開始決定を行い、現在、審判が係属している。 本件審判事件は、原告らごみ焼却炉メーカーによる地方公共団体のごみ焼却炉発注のための入札における談合の有無を審判対象事実とするものであり、原告らは、いずれも、本件審判事件の被審人として、当該事実の存在を否認して争っている。 (2) 参加人Aは平成12年6月30日に、 炉発注のための入札における談合の有無を審判対象事実とするものであり、原告らは、いずれも、本件審判事件の被審人として、当該事実の存在を否認して争っている。 (2) 参加人Aは平成12年6月30日に、参加人Bは同年7月21日に、Dは同年8月7日に、参加人Cは同年10月12日に、Eは同年12月5日に、それぞれ、被告に対して、法69条に基づき、本件審判事件の審判記録の謄写の申請をした(以下「本件各申請」といい、参加人ら、D及びEを「本件各申請人」という。)。 本件各申請人は、いずれも本件各申請時において上記のごみ焼却炉を発注した各地方公共団体の住民であり、上記の審判対象事実に関連する住民監査請求を行い、地方自治法242条の2に基づき、原告らを被告として住民訴訟を提起している者である。 このうち、参加人ら及びDの住民監査請求及び住民訴訟の内容は、参加人Aはその住所地の地方公共団体である横浜市につき、参加人Bはその住所地の地方公共団体である東京都につき、参加人Cはその住所地の地方公共団体である多摩ニュータウン環境組合につき、Dはその住所地の地方公共団体である兵庫県尼崎市につき、各地方公共団体が指名競争入札等の方法により発注したストーカ式燃焼装置を採用するごみ焼却施設の建設工事に関して、原告らが、事前に話し合って受注予定者を決定し、受注予定者以外の4社は受注予定者が定めた価格で受注できるよう協力する旨の合意をし、原告ら各社の談合担当者が毎月1回程度受注調整と称する会合を行って、各地方公共団体の発注する個々のごみ焼却施設建設工事について入札談合行為を行い、これにより各地方公共団体に損害を被らせたことが各地方公共団体に対する不法行為を構成し、当該地方公共団体の長が同不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠っていて、これが地方自治法242条1項の「 、これにより各地方公共団体に損害を被らせたことが各地方公共団体に対する不法行為を構成し、当該地方公共団体の長が同不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠っていて、これが地方自治法242条1項の「怠る事実」に当たるとして、地方自治法242条1項に基づき監査請求を行い、さらに同法242条の2第1項4号に基づき各地方公共団体に代位して原告ら等に対する損害賠償請求訴訟を提起したもので、これらの訴訟は現在も係属している(乙1ないし4、弁論の全趣旨)。 (3) 本件各申請における謄写の対象は、審判記録(第1回ないし第4回。ただし参加人Cについては第5回を含む。)、書証(査第1号証ないし第139号証。 ただし参加人Cについては第140号証を含む。)、③その他審査官・被審人双方から提出されたすべての書面であった。 また、参加人ら及びDは、被告に対し、本件各申請に当たり、謄写した事件記録を本件審判事件又はこれに係る損害賠償請求訴訟以外の目的に使用することはしないこと、閲覧・謄写した事件記録を申請者(代理人又は受任者が申請者の場合は本人を含む。)以外の者に閲覧させたり、謄写させたりすることはしない旨の誓約をした(甲イ1ないし4、甲ロ1の1ないし4)。 (4) 被告は、本件審判事件の被審人らである原告らに対し、平成12年12月7日付けで、「審判に係る事件記録について(照会)」と題する書面を送付した。 この書面の内容は、被告が、審判調書、準備書面(釈明・求釈明を含み、未採用証拠の採否についての意見に係るものを除く。)及び採用された証拠の閲覧謄写に応ずることに関して、原告らにおいて秘匿を要する特段の事項があれば承知したいとして、①秘匿を要する部分を特定し、その必要について具体的な理由を付して、同年12月22日までに提出する旨を依頼するとともに、②同日までに回答がな らにおいて秘匿を要する特段の事項があれば承知したいとして、①秘匿を要する部分を特定し、その必要について具体的な理由を付して、同年12月22日までに提出する旨を依頼するとともに、②同日までに回答がないときは、秘匿を要する部分はないものと理解して、閲覧謄写に応ずる作業を進める旨を伝達するものであった(甲イ5、甲ロ2、甲ハ1)。 (5) 上記の照会に対して、原告らは、平成12年12月22日、本件各申請に応ずること自体が違法である旨の回答をしたが、その回答は秘匿を要する部分の摘示を伴わないものであった(甲ロ6の1、甲ハ2)。 (6) 被告は、閲覧謄写に応ずる事件記録の範囲について検討し、原告らに対し、平成13年1月19日付けで、「審判に係る事件記録の謄写について(通知)」と題する書面を送付し、閲覧謄写の範囲を別紙1のとおりとすることを通知した(別紙1につき、甲イ6、甲ロ4、甲ハ3の1)。 (7) これに対して、乙事件原告は、平成13年2月5日付けの文書において、被告に対し、全ての部分の秘匿を要するとしつつ、正当な利害関係人に対しても秘匿すべき部分が秘匿されていないとして、秘匿を要する部分を特定して主張した。 (8) 被告は、平成13年3月12日付けで、原告らに対し、「審判に係る事件記録の謄写について(通知)」と題する書面を送付し、閲覧謄写の範囲を変更し、別紙2のとおりとすることを通知した(別紙2につき、甲イ7の1、甲ロ5)。また、被告は、同日付けで、参加人ら及びDに対して、同年3月22日以降、閲覧謄写に応ずる旨を通知した。 3 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は、(1)閲覧謄写に応ずる行為の行政処分性、(2)原告適格、(3)訴えの利益、(4)本件各処分の違法性(参加人ら、D及びEが法69条の「利害関係人」に該当するか否か)であり、(1 主張本件の争点は、(1)閲覧謄写に応ずる行為の行政処分性、(2)原告適格、(3)訴えの利益、(4)本件各処分の違法性(参加人ら、D及びEが法69条の「利害関係人」に該当するか否か)であり、(1)ないし(3)が本案前の争点、(4)が本案の争点であって、各争点に関する原告ら、被告及び参加人らの各主張は別紙3のとおりである。 第3 争点に対する判断 1 争点1(本件各処分の行政処分性)について(1) 抗告訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」とは、公権力の主体である国又は公共団体が行う行為のうち、この行為によって、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。 (2) しかるところ、法69条は、「利害関係人」に該当する者に対して、閲覧謄写の申立権を付与しており、被告が閲覧謄写申請に応ずる行為又は拒絶する行為は、国民が当該申請に係る事件記録を閲覧謄写をする権利の有無を確定する行為であるから、抗告訴訟の対象たる行政処分に該当するというべきである。 (3) 被告は、その主張において、本件のような閲覧謄写の申請に対し、被告内部において、申請人が事件記録の閲覧謄写を認められる資格を有する者であるかどうか、また、どの範囲で閲覧謄写に応じるかを判断しているが、その結果、もともと閲覧謄写を行うことができる者がそれを実際に行うことが可能となるにすぎない旨主張している。しかし、この閲覧謄写を認めるべき資格の有無や閲覧謄写を認めるべき範囲は、法69条により一義的に明確になっているとは言い難いことから、これらを行政庁たる被告が判断し、これらの点に関する行政庁としての意思決定をしているのであって、それを申請人に告知しない限り、申請者は、たとえ本来閲覧謄写が認められる資格を有する者であっても、閲覧謄 れらを行政庁たる被告が判断し、これらの点に関する行政庁としての意思決定をしているのであって、それを申請人に告知しない限り、申請者は、たとえ本来閲覧謄写が認められる資格を有する者であっても、閲覧謄写を認められることはないし、反面この告知を受けた者はその内容に応じた閲覧謄写が認められることとなるのであるから、この意思決定は行政処分性を有し、外部的に表象され得る状態となったときに成立し、申請人への告知によってその効力が生ずると解すべきである。 また、前記第2、2の事実関係によると、参加人ら及びDの申請に対する被告の意思決定は、原告らに対する平成13年1月19日付けの書面によって外部的に表象され得る状態となった段階で行政処分として成立したが、これは参加人ら及びDにそれぞれ告知されないままに終わり、同年3月12日付けの書面によってその内容が変更され、これが参加人ら及びDに告知されて行政処分としての効力が生じたものというべきである。 そうすると、平成13年1月19日付け通知の以前には閲覧謄写を認める行政処分は存在しないし、同日付けの行政処分は成立したものの、その効力を生ずる前に同年3月12日付けの処分(以下、この処分のみを「本件各処分」という。)によってその内容が変更されており、このような場合、行政庁としては前者の処分は効力を生じさせないままとし、これとは別個に後者の処分をしたとみるべきであるから、現に効力を有するのは本件各処分のみであるというべきである。そうすると、原告らとしては、本件各処分の取消しのみを求めれば足り、同年1月19日付けの処分の取消しを求める利益はない。 したがって、甲事件原告の主位的請求、予備的請求1及び2並びに乙事件原告の主位的請求及び予備的請求1はいずれも不適法なものというほかない。 2 争点2(原告適格)について( しを求める利益はない。 したがって、甲事件原告の主位的請求、予備的請求1及び2並びに乙事件原告の主位的請求及び予備的請求1はいずれも不適法なものというほかない。 2 争点2(原告適格)について(1) 行政事件訴訟法9条は、処分の取消しの訴えは当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り提起することができる旨定めており、「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうと解される。そして、上記において「法律上保護された利益」とは、当該処分の根拠となった行政法規が私人等権利主体の個人的利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保障されている個別的、具体的利益をいうものであり、当該係争利益が当該処分との関係で法律上保護された利益といえるか否かは、当該処分の根拠となった行政法規の趣旨、目的、当該処分が当該係争利益に与える法律上の効果、当該係争利益の内容、性質等を考慮して判断すべきものである。 (2) そこで本件について検討するに、確かに、法69条は、利害関係人が閲覧謄写することができる事件記録の範囲や、事件記録を提出した被審人等への通知及び意見聴取等の手続を定めてはいない。しかしながら、一般に、事件記録には、被審人たる事業者の秘密やその従業員のプライバシーが含まれる可能性が高い。その無制限な開示が認められれば、当該被審人の個人的法益が害される蓋然性が高く、法が事件記録を閲覧謄写し得る者を利害関係人に限定しているのは、このような被審人の利益を保護することをも目的とするものであると考えられる。また、事業者の秘密については、法39条により、公正取引委員会の委員長、委員及びその職員等に対して、秘密保持義務が課せられており うな被審人の利益を保護することをも目的とするものであると考えられる。また、事業者の秘密については、法39条により、公正取引委員会の委員長、委員及びその職員等に対して、秘密保持義務が課せられており、当該規定は事業者の利益をも保護する趣旨に出たものと解されること、証拠(甲イ5、甲ロ2、甲ハ1)及び弁論の全趣旨によれば、被告においては、法69条に基づく閲覧謄写申請があった場合には、事実上、事件記録を提出した被審人等への通知及び意見聴取を行い、その回答を得た上で閲覧謄写の範囲を決める手続をとっており、本件においてもこの手続が行われていることが認められ、この手続は、上記の法の趣旨に則ってなされているものと解されることに照らせば、被審人は、利害関係人に閲覧謄写を認める処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に該当するというべきであり、本件審判事件の被審人である原告らは、本件各処分の取消しを求めるにつき原告適格を有するものと認められる。 3 争点3(訴えの利益)について被告の主張が何をもって本件につき訴えの利益を問題とするものかは必ずしも明らかでないが、本件各処分が抗告訴訟の対象としての行政処分性を有するものであることは前記1のとおりであるから、原告らについては、本件各処分の取消しを求める法律上の利益が認められ、その利益は何ら消滅していないから、法自体に事件記録の閲覧謄写を認めない被告の行為に対する不服申立てに関する規定がないとしても、そのことが原告らによる本件訴えの提起を妨げるものではないから、この点に関する被告の主張には理由がない。 4 争点4(本件各処分の違法性-本件各申請人の「利害関係人」該当性)について(1) 法69条が閲覧謄写を認めている「利害関係人」とは、当該事件の被審人のほか、法59条、60条により審判手続に参加し得る 点4(本件各処分の違法性-本件各申請人の「利害関係人」該当性)について(1) 法69条が閲覧謄写を認めている「利害関係人」とは、当該事件の被審人のほか、法59条、60条により審判手続に参加し得る者及び当該事件の対象をなす違反行為の被害者をいうものと解される(最高裁昭和50年判決)。乙事件原告及び丙事件原告らは、ここにいう被害者は、法25条による権利行使を容易にするために「利害関係人」に含められているのであるから、確定した審決によって認定された違反行為による被害者のみをいうのであり、審決確定以前においては、ここにいう被害者は存在しないと主張する。しかし、法69条は、閲覧謄写を求め得る時期について、この主張のような限定をしていないし、違反行為の被害者は審決確定以前から民法709条に基づき損害賠償請求をすることが可能であるから、審判対象の行為によって被害を受けたと考えられる者は、審決確定前から、自己が法違反行為によって被害を受けたか否かを確認して民法709条に基づく請求をするか否かを決断し、また既に提起した損害賠償請求訴訟において自己に有利な訴訟活動をするために、審判記録の閲覧謄写を請求する利害関係を有していると解するのが相当であり、上記主張は採用できない。 また、同原告らは、被告が自ら策定したガイドラインや東京都監査委員からの照会に対し、上記の結論とは異なる見解を示していたと主張するが、原告らが、審判事件に提出した資料は同事件において自らを有利に導くためのものであるから、その性質上、被告の上記見解が示されたことによってはじめて提出されることとなったとは通常は認め難く、本件においても、そのような因果関係を認めるに足りる事情はないから、被告が以前にそのような見解を示していたとしても、現時点において、正しい法解釈に基づく行動を採ることは、何 ったとは通常は認め難く、本件においても、そのような因果関係を認めるに足りる事情はないから、被告が以前にそのような見解を示していたとしても、現時点において、正しい法解釈に基づく行動を採ることは、何ら禁反言の原則に反するものではない。 (2) 法違反事件の審判対象たる行為によって損害を被るのは、同行為に基づいて被審人と契約をした地方公共団体であって、同地方公共団体の住民は、単に住民であるという地位においては、審判手続に参加し得る者や当該違反行為の被害者のいずれにも該当しないことが明らかである。しかしながら、当該違反行為と同一性を有する事実を基礎として被審人を被告として地方自治法242条の2第1項4号後段が定める住民訴訟としての損害賠償請求訴訟を提起し同訴訟が現に係属している場合には、当該住民は、当該地方公共団体に代位してその損害賠償請求権を行使する法的地位を付与されているのであり、当該訴訟の帰すうによって当該地方公共団体自体が損害賠償請求権を有するか否かが確定し、当該地方公共団体もその訴訟の結論に拘束されるに至るのであるから、当該住民は、提起した当該訴訟の判決の確定を待つまでもなくその訴えが不適法であることが明らかであるような特段の事情のない限りは、「被害者」たる法的地位を取得した者として、「利害関係人」に該当すると解するのが相当である。 すなわち、住民によって監査請求がされたにもかかわらず当該地方公共団体自身では加害者に対する損害賠償請求訴訟を提起しない場合に、住民は、地方自治法242条の2の定めにより、いわゆる法定訴訟担当の一場合として、被害者たる地方公共団体の有する損害賠償請求権そのものを訴訟物とする訴訟を提起し、これを追行するものであり、そのため、当該訴訟が係属しているときは他の住民は別訴をもって同一の請求をすることができず( 害者たる地方公共団体の有する損害賠償請求権そのものを訴訟物とする訴訟を提起し、これを追行するものであり、そのため、当該訴訟が係属しているときは他の住民は別訴をもって同一の請求をすることができず(地方自治法242条の2第4項)、当該訴訟の結果としての判決の既判力は当該地方公共団体に及ぶものと解され(民事訴訟法115条1項2号)、住民が勝訴した場合には弁護士報酬の相当額の支払を当該地方公共団体に請求することができ(地方自治法242条の2第7項)るのであるから、当該住民の訴訟追行は、正に被害者が有する権利を行使しているものにほかならない。そして、最高裁昭和50年判決は、当該事件の対象をなす違反行為の被害者の権利を擁護するために同被害者を法69条の「利害関係人」に含めたものと解され、ここでいう被害者の権利の主たるものは当該事件の被審人等に対する損害賠償請求であると考えられるのであるから、その意味において、被害者の損害賠償請求権そのものを訴訟上行使する当該住民は、そのような訴訟上の地位を有する限りにおいて、当該事件の審判対象たる行為による「被害者」の地位を取得したものということができるのである。 (3) 最高裁昭和53年判決は、①住民訴訟の原告は、地方公共団体そのものの利益のためにではなく、もっぱら原告を含む住民全体の利益のために、いわば公益の代表者として地方財務行政の適正化を主張するものであること、②実質的に見れば、権利の帰属主体たる地方公共団体と同じ立場においてではなく、住民としての固有の立場において、財務会計上の違法な行為又は怠る事実に係る職員等に対し損害の補填を要求することが訴訟の中心的目的となっていること、③民法423条に基づく訴訟等とは異質のものであることを判示するが、①及び②の点については、同判決が判示するように、地方自治法24 等に対し損害の補填を要求することが訴訟の中心的目的となっていること、③民法423条に基づく訴訟等とは異質のものであることを判示するが、①及び②の点については、同判決が判示するように、地方自治法242条の2が定める住民訴訟の訴権は、法律によって特別に認められた参政権の一種としての位置付けがされるべきものであるから、そうした制度的縁由からすれば、住民としての固有の立場において、あるいは公益の代表者として損害の填補を要求するものである旨を述べるものにすぎないのであって、そのような実質的目的のために設けられる制度には様々な選択肢があり得たところ、法技術的観点を踏まえて実際に立法された制度をみると、現行の地方自治法は、上記目的のために、住民が自らの固有の利益を求める制度ではなく、客観訴訟としての住民訴訟において、地方公共団体が被害者として有する権利そのものを住民が代位行使するという制度を選んだものであることは明らかであって、そのことは何ら上記制度的縁由ないし目的と矛盾するものではない。 また、③の点も、民法423条に基づく訴訟等とは異質のものであるとするのは、住民が、いわば公益の代表者として、客観訴訟としての住民訴訟において地方公共団体の損害賠償請求権を代位行使するものである点で、主観訴訟として、自己の権利の充足のために訴訟追行がされる民法423条に基づく訴訟等とは異なるものの、住民が地方公共団体の権利そのものを行使するという制度であることには変わりはない。 したがって、法違反行為と同一性を有する事実を基礎として被審人を被告として地方自治法242条の2第1項4号後段が定める住民訴訟としての損害賠償請求訴訟を提起し現にそれが係属している場合の当該住民が、「被害者」たる法的地位を取得した者として「利害関係人」に該当すると解釈することは、自らの債権 2第1項4号後段が定める住民訴訟としての損害賠償請求訴訟を提起し現にそれが係属している場合の当該住民が、「被害者」たる法的地位を取得した者として「利害関係人」に該当すると解釈することは、自らの債権を確保するための債権者代位権の行使と同一視するものではなく、当該住民が通常ならば地方公共団体が有する公益の代表者としての地位を有し、その地位に基づき地方公共団体の債権を行使することを肯定し、その限度で地方公共団体の被害者としての地位を取得しているものとみるにすぎないから、何ら最高裁昭和53年判決の判示するところと矛盾するものではない。 また、このように解しても、地方自治法は、住民が住民訴訟を提起できる対象は財務会計行為に限定するとともに(地方自治法242条の2第1項、242条1項)、住民監査請求の前置(同法242条の2第1項)や出訴期間の制限(同2項)など厳格な手続要件を定めた上で住民訴訟の提起を認めているのであるから(同1項1号)、法69条の「利害関係人」の範囲を不当に拡げるものとはいえないし、むしろ、上記のような厳格な手続を経て適法に提起される住民訴訟の原告については、地方公共団体に代わって、公益の代表者としてふさわしい訴訟活動ができるように、当該地方公共団体が入手し得る資料についてはこれを当該住民が入手する手段が確保されてしかるべきである。 このような観点からすると、「利害関係人」に該当するのは適法な住民訴訟を提起した者に限るとの考え方も想定されないでもない。しかし、住民訴訟が適法に提起されたか否かを行政庁である被告に判断させるのは、被告に難きを強いるものといわざるを得ず、あえてこのような要件を設定すると、住民訴訟についての裁判所の判断があるまで閲覧謄写請求の判断を留保せざるを得なくなり、このことは住民訴訟によって住民が地方公共団体 きを強いるものといわざるを得ず、あえてこのような要件を設定すると、住民訴訟についての裁判所の判断があるまで閲覧謄写請求の判断を留保せざるを得なくなり、このことは住民訴訟によって住民が地方公共団体の有する損害賠償請求権を行使する途を拓いている地方自治法の趣旨を没却するに等しく、他方、閲覧謄写の対象物は、公開の審判手続の記録やいったん公開の審判廷に提出された資料であることにかんがみると、前記のとおり、既に住民訴訟を提起した住民は、当該訴訟が不適法なものであることが明らかであるような特段の事情がない限り、法69条にいう「利害関係人」に該当すると解するのが、同条の閲覧謄写制度と住民訴訟制度の双方を整合的に解釈した結論というべきである。 (4)しかるところ、証拠(甲ハ9、丙1の2)及び弁論の全趣旨によれば、本件審判事件において違反事実とされているのは、原告らが、遅くとも平成6年4月以降、地方公共団体が指名競争入札等の方法により発注する、ストーカ式燃焼装置を採用する全連続燃焼式及び准連続燃焼式ごみ焼却施設の建設工事について、受注機会の均等化を図るため、地方公共団体が建設を計画していることが判明した工事について、原告ら各社が受注希望の表明を行い、話合い等により原告らの間で受注予定者を決定し、原告らの間で受注予定者を決定した工事について原告ら以外の者が指名競争入札等に参加する場合には、受注予定者は自社が受注できるように原告ら以外の者に協力を求め、受注すべき価格は受注予定者が定め、受注予定者以外の者は受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力するなどして、地方公共団体発注の前記建設工事の大部分を受注していたとして、原告らが、共同して、地方公共団体発注の前記建設工事について、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにすることにより、公共の利 て、地方公共団体発注の前記建設工事の大部分を受注していたとして、原告らが、共同して、地方公共団体発注の前記建設工事について、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、同建設工事の取引分野における競争を実質的に制限し、法2条6項に規定する不当な取引制限を行い、法3条に違反したというものであることが認められる。 また、前記第2、2(2)の事実によれば、参加人ら及びDは、それぞれ自らの住所地の地方公共団体が指名競争入札等の方法により発注したストーカ式燃焼装置を採用するごみ焼却施設の建設工事につき、原告らが行った入札談合行為は各地方公共団体に対する不法行為を構成し、各地方公共団体に損害を被らせたが、当該地方公共団体の長が同不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠っていて、これが地方自治法242条1項の「怠る事実」に当たるとして、監査請求をした上で、地方自治法242条の2第1項4号に基づき各地方公共団体に代位して原告ら等に対する損害賠償請求訴訟を提起し、これらの訴訟が現在も係属していることが認められる。 これらの事実によれば、参加人ら及びDは、いずれも本件審判事件の審判対象たる行為によって損害を被ることとなる地方公共団体の住民として、当該行為と同一性を有する事実を基礎として、本件審判事件の被審人である本件の原告らを被告として地方自治法242条の2第1項4号後段が定める住民訴訟としての損害賠償請求訴訟を提起して現に不適法として却下されずに係属しているものと認められる。 この点につき、原告らは、本件審判事件の対象となっている違反行為が、全国的な談合に関する基本ルールについての合意の有無に係るものであって個々の施設に関する談合入札に係るものではない旨主張するが、そうであるとしても、基本ルールについての合意と なっている違反行為が、全国的な談合に関する基本ルールについての合意の有無に係るものであって個々の施設に関する談合入札に係るものではない旨主張するが、そうであるとしても、基本ルールについての合意と個々の施設に関する談合入札に係る合意は、いわば総論と各論との関係にあるというべきであり、前者の合意は後者の合意を基礎付けるものであって、両者は密接不可分の関係にあり、そうであるからこそ、上記住民訴訟においては、前者を後者とともに不法行為の内容として主張しているものであり、したがって、本件審判事件と上記各住民訴訟は、いずれも、少なくとも前者の基本合意を審理の対象としているものであるから、当該違反行為と本件各申請者により提起された損害賠償請求の基礎となる事実との間において必要とされる上記の同一性に欠けるところはないというべきである。 (5) そして、本件においては、本件各処分の時点において、これらの訴訟につき不適法却下の判決が直ちになされる状態にあることが明らかである等本件各申請人が提起した訴訟が判決の確定を待つまでもなくその訴えが不適法であることが明らかであるような特段の事情があったものとは認められない。 この点について、原告らは、参加人ら及びDが提起している各住民訴訟においては、いずれも監査請求期間徒過及び正当理由の存否という本案前の問題が最大の争点として争われており、今後、各住民訴訟において、閲覧謄写した記録を証拠として必要とする実体審理に入ることなく訴え却下の判決が下される可能性も十分に存する旨主張する。しかし、参加人ら及びDは、前記(4)に判示のとおり、入札談合行為を地方公共団体に対する不法行為とし、同不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を当該地方公共団体の長が怠っているとして、これが地方自治法242条1項の「怠る事実」に当たるものと のとおり、入札談合行為を地方公共団体に対する不法行為とし、同不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を当該地方公共団体の長が怠っているとして、これが地方自治法242条1項の「怠る事実」に当たるものとして監査請求を行い、住民訴訟を提起しており、このような場合について、当該談合によって入札後に締結される契約が当然に違法無効なものとなるわけではないから、監査請求の内容が財務会計行為としての契約の違法を主張せず、契約によって適法に代金支払義務が生じたことを前提として、これを損害として監査請求を行う以上、同条2項の定める監査請求期間の制限が及ばないと解することには十分に根拠があると考えられる。また、この点については、本件各処分時はもちろん、現時点においても、裁判所の判断としては、各高等裁判所において判断が分かれていることは当裁判所に顕著な事実である。したがって、監査請求期間の制限により本件各申請人らの提起した訴えが却下される可能性があるとしても、これをもって、当該訴訟の判決の確定を待つまでもなくその訴えが不適法であることが明らかであるとはいえない。 なお、丙事件原告らは、被害者たる地方公共団体は法25条に基づく訴訟を提起する選択肢を有しているのであるから、地方公共団体について怠る事実はなく、本件各申請者が提起した住民訴訟は不適法却下を免れないことは自明であると主張するが、同原告らの主張を前提としても、既に発生している民法に基づく損害賠償請求権の行使をしていない以上、当該地方公共団体に怠る事実がないと認めることができるか否かには疑問があり、少なくとも本件各申請人が提起した住民訴訟が不適法なものであることが明らかであるとはいえない。 (6) したがって、参加入ら及びDは、「利害関係人」に該当するというべきであり、他に法69条に違反する事由がある旨の主 申請人が提起した住民訴訟が不適法なものであることが明らかであるとはいえない。 (6) したがって、参加入ら及びDは、「利害関係人」に該当するというべきであり、他に法69条に違反する事由がある旨の主張立証はない(なお、原告らは、本件口頭弁論終結後に、Dが転居により同人の提起した住民訴訟の原告適格を失った旨の資料を提出しているが、同資料によっても同転居は本件各処分後のことであると認められ、そのような処分後の事情は被告が職権によって処分を取り消すか否かに当たって考慮すべき事情にすぎず、本件各処分がその処分時において違法であることを基礎づける事実となり得ないから、仮に、同転居の事実を斟酌するとしても、上記結論を左右するものではない。)。 (7)甲事件原告は、本件各処分が法39条の定める守秘義務に反するかのような主張をするほか、原告らはいずれも閲覧謄写によって不利益を受ける旨主張し、特に丙事件原告らは、本件審判事件が未だ成熟過程にあり、その段階で記録を第三者に開示することは被審人の当事者権を侵害すると主張する。しかし、法39条は、公正取引委員会の委員長、委員及び職員等に対して、職務に関して知得した事業者の秘密を他に漏し、又は窃用してはならない旨規定しているところ、法69条はこれに対する例外規定と解すべきであり、しかも同条には民事訴訟法92条のような秘密保護を義務付ける定めがないのであるから、被告が原告らが主張する点を考慮した上で自らの責任の下に法69条に基づいて閲覧謄写を認めることは、法39条に違反するものでないことが明らかである。 また、被告は、以上のような趣旨から、その裁量によって閲覧謄写を認める範囲を決定することができ、申請内容に応じてその範囲を変動させることもできると解すべきであって、本件各処分においても一定限度で閲覧謄写を制限してい のような趣旨から、その裁量によって閲覧謄写を認める範囲を決定することができ、申請内容に応じてその範囲を変動させることもできると解すべきであって、本件各処分においても一定限度で閲覧謄写を制限していることが認められるが、そのことについて被告に裁量権を濫用又は逸脱したと認めるに足りる具体的な事情は見当たらない。 第4 結論よって、甲事件原告の訴えのうち主位的請求、予備的請求1及び2並びに乙事件原告の訴えのうちの主位的請求及び予備的請求1に係る部分はいずれも不適法な訴えであるからこれを却下し、甲事件原告の予備的請求3、乙事件原告の予備的請求2及び丙事件原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、65条1項本文、66条を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官藤山雅行裁判官村田斉志裁判官日暮直子

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