本件は、被告人の自白に基づく横領罪の認定に関する上告事件である。被告人は、自由によって犯罪事実を認定するためには補強証拠が必要であると主張し、自白が架空でないことを裏付ける証拠が求められるとした。しかし、裁判所は、補強証拠は犯罪事実の全てを証明する必要はなく、一部の認定に対する証拠が自白以外にも存在すれば、認定が可能であると判断した。具体的には、被告人が他者から金銭を受け取った事実を示す供述調書が存在し、これにより自白のみによる有罪認定ではないとされた。結論として、上告は棄却され、原判決が支持された。
主文 本件上告を棄却する。 理由 弁護人菊地養之輔の上告趣意について。 被告人の自由によつて犯罪事実を認定するには補強証拠を必要とするが、その補強証拠は自白が架空のものでないことを裏書きするものであれば足りるのであつて、犯罪事実の全部に亘ることを要するものではない。犯罪事実の一部分の認定に対する証拠は被告人の自白以外にはないとしても、これをもつて、判示事実を被告人の自白のみによつて認定したものということを得ないことは当裁判所大法廷判決の示すとおりである(昭和二二年(れ)一五三号同二三年六月九日判決)。本件において原判決の引用する第一審判決の証拠説明によれば、所論横領の事実を認定する証拠としては、被告人の自白の外に被告人が判示日時頃Aから金三二五〇円を受領して保管した事実を窺うことのできるAの司法警察員に対する供述調書をも挙げているので、原判決の引用する第一審判決は被告人の自白のみによつて有罪とした趣旨ではない。されば、所論憲法三八条三項違反の主張は、その前提となる事実を欠くてとによつて問題とならない。 よつて、刑訴四〇八条に従い裁判官全員の一致した意見により主文のとおり判決する。 昭和二六年八月九日最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官長谷川太一郎裁判官井上登裁判官島保裁判官河村又介- 1 -
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