本件は、原告Aが被告学校法人甲学園に対し、懲戒解雇の無効を主張し、乙大学教授としての地位確認及び給与等の支払いを求めた事案である。主要な争点は、懲戒解雇の理由が合理的かつ相当であるかどうかであり、原告は懲戒解雇の手続きに瑕疵があると主張した。裁判所は、被告学園の懲戒解雇の理由が社会通念上相当でないと判断し、原告の地位確認を認め、給与の支払いを命じた。一方で、原告のその他の請求は棄却され、被告の請求も棄却された。判決は、原告Aの労働契約上の権利を確認し、一定の金員の支払いを命じるものであった。
令和2年10月26日判決言渡し同日原本領収裁判所書記官平成28年(ワ)第5914号地位確認等請求事件(以下「第1事件」という。),平成29年(ワ)第2218号賞与等返還等請求事件(以下「第2事件」という。)口頭弁論終結日令和2年7月29日判決 主文 1 原告Aが,被告学校法人甲学園(以下「被告学園」という。)に対し,被告学園が設置する乙大学の教授としての労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 2 被告学園は,原告Aに対し,下記の各支払期日(19日が休日の時はそ の直前の平日)に下記の各金員及び各支払期日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を各支払期日の翌日から支払済みまで年3分の割合による金員をそれぞれ支払え。 平成28年7月19日限り15万1998円 平成28年8月19日限り78万9219円平成28年9月19日限り111万9219円平成28年10月から平成29年2月まで毎月19日限り各78万9219円平成29年3月19日限り135万9219円 平成29年7月及び同年8月の毎月19日限り各70万0900円平成29年9月19日限り94万0900円平成29年10月から平成30年2月まで毎月19日限り各70万0900円平成30年3月19日限り94万0900円 平成30年4月から同年8月まで毎月19日限り各71万0200 円平成30年9月19日限り95万0200円平成30年10月から平成31年2月まで毎月19日限り各71万0200円平成31年3月19日限り95万0200円 平成31年4月から令和元年8月まで毎月19日限り各71万7500円令和元年9月19日 成31年2月まで毎月19日限り各71万0200円平成31年3月19日限り95万0200円 平成31年4月から令和元年8月まで毎月19日限り各71万7500円令和元年9月19日限り95万7500円令和元年10月から令和2年2月まで毎月19日限り各71万7500円 令和2年3月19日限り95万7500円平成29年7月10日限り456万9050円平成30年7月10日限り460万4240円平成31年3月19日限り1万3750円令和元年7月10日限り465万3150円 令和2年3月19日限り1万3890円令和2年4月から同年7月まで毎月19日限り各72万4000円令和2年7月10日限り471万0720円 3 原告Aのその余の請求をいずれも棄却する。 4 被告学園の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,これを20分し,その19を被告学園の,その余を原告Aの負担とする。 6 この判決は,第2項に限り仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 (原告Aの第1事件の請求・下線部分が請求の一部棄却に係る部分) 1 主文第1項同旨 2 被告学園は,原告Aに対し,下記の各支払期日(19日が休日の時はその直前の平日)に下記の各金員及び各支払期日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を翌日から支払済みまで年3分の割合による金員をそれぞれ支払え。 平成28年7月19日限り15万1998円平成28年8月19日限り78万9219円平成28年9月19日限り111万9219円平成28年10月から平成29年2月まで毎月19日限り各78万9219円 平成29年3月19日限り135万9219円平成29 9円平成28年9月19日限り111万9219円平成28年10月から平成29年2月まで毎月19日限り各78万9219円 平成29年3月19日限り135万9219円平成29年4月から同年6月まで並びに同年7月及び同年8月の毎月19日限り各70万0900円平成29年9月19日限り103万0900円平成29年10月から平成30年2月まで毎月19日限り各70万09 00円平成30年3月19日限り103万0900円平成30年4月から同年8月まで毎月19日限り各71万0200円平成30年9月19日限り104万0200円平成30年10月から平成31年2月まで毎月19日限り各71万02 00円平成31年3月19日限り104万0200円平成31年4月から令和元年8月まで毎月19日限り各71万7500円令和元年9月19日限り104万7500円 令和元年10月から令和2年2月まで毎月19日限り各71万7500 円令和2年3月19日限り104万7500円平成29年7月10日限り456万9050円平成30年7月10日限り460万4240円平成31年3月19日限り1万3750円 令和元年7月10日限り465万3150円令和2年3月19日限り1万3890円令和2年4月から同年7月まで毎月19日限り各72万4000円令和2年7月10日限り471万0720円 3 被告学園は,原告Aに対し,330万円及びこれに対する平成28年7月1 2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は被告学園の負担とする。 5 第2項及び第3項につき仮執行宣言(被告学園の第2事件の請求) 1 原告Aは,被告学園 2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は被告学園の負担とする。 5 第2項及び第3項につき仮執行宣言(被告学園の第2事件の請求) 1 原告Aは,被告学園に対し,300万2440円及びこれに対する平成28 年7月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告Aは,被告学園に対し,別紙物件目録記載の各物件を引き渡せ。 3 原告Aは,被告学園に対し,1382万8898円及びこれに対する平成28年7月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は原告Aの負担とする。 5 仮執行宣言第2 事案の概要等 1 事案の概要原告Aは,乙大学を設置する被告学園との間で,平成17年4月1日に乙大学総合政策学部講師として採用されて労働契約(以下「本件労働契約」と いう。)を締結し,平成23年4月1日に同学部教授に,平成27年4月1日 に同学部学部長になったが,被告学園から平成28年7月11日付けで懲戒解雇の意思表示を受けた(以下「本件懲戒解雇」という。)ものである。 本件の第1事件は,原告Aが,被告学園に対し,本件懲戒解雇が無効であることを前提として,ア本件労働契約に基づき,乙大学の教授としての労働契約上の権利を有す る地位にあることの確認イ本件労働契約又は本件懲戒解雇という不法行為に基づき,本件懲戒解雇から令和2年7月分までの給与及び賞与等又はその相当額の損害賠償並びにうち令和2年3月分までに対する各支払期日の翌日から支払済みまで平成29年法律第44号附則17条3項により同法による改正前の民法(以 下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金,うち令和2年4月分から同年7月分までに対する各支 済みまで平成29年法律第44号附則17条3項により同法による改正前の民法(以 下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金,うち令和2年4月分から同年7月分までに対する各支払期日の翌日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正後の民法(以下「改正後民法」という。)所定の年3分の割合による遅延損害金の支払ウ本件懲戒解雇が不法行為に該当すると主張して,損害賠償500万円の 一部請求として330万円及びこれに対する本件懲戒解雇の翌日である平成28年7月12日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 被告学園は,本件懲戒解雇の理由として,要旨①原告Aが,平成25年8 月31日から平成26年9月1日までの間,大韓民国(以下「韓国」という。)の延世大学を研究機関とする在外研究を申請し,承認された(以下,原告Aの上記期間の在外研究を「本件在外研究」という。)にもかかわらず,そのうち平成25年9月5日から平成26年2月28日までの6か月の間,無断で韓国を離れてハワイに滞在していたこと(以下「本件在外研究事案」という。), ②原告Aが,平成27年10月24日に学生の個人情報が入ったパーソナル コンピューター(PC)を紛失したこと(以下「本件PC紛失事案」という。),③原告Aが,平成28年2月1日に行われた乙大学の入学試験において,学部長として待機出勤義務があるにもかかわらず欠勤したこと(以下「本件入試欠勤事案」といい,これらの3件の事案を併せて「本件3事案」という。)を主張しているほか,給与の支払請求の一部について支払義務を否認し,あ るいは消滅時効を援用している。 原告Aは,本件在外研究事案のうち原告Aが問題とされる期間にハワイに 本件3事案」という。)を主張しているほか,給与の支払請求の一部について支払義務を否認し,あ るいは消滅時効を援用している。 原告Aは,本件在外研究事案のうち原告Aが問題とされる期間にハワイに滞在していた事実,本件PC紛失事案の事実及び本件入試欠勤事案のうち原告Aが入学試験の日に出勤しなかった事実を認める一方,その余の事実及びその評価を争い,本件懲戒解雇には客観的合理的な理由がなく,社会通念上 相当ではないと主張しているほか,本件懲戒解雇の手続に違法の瑕疵があったと主張している。 本件の第2事件は,被告学園が,原告Aに対し,本件懲戒解雇が有効であることを前提として,ア被告学園が原告Aに対して支払済みの賞与の一部が法律上の原因なく過 払になっていると主張して,不当利得返還請求権に基づき当該過払部分300万2440円及びこれに対する本件懲戒解雇により原告Aが悪意となった平成28年7月11日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延利息の支払イ原告Aが被告学園の特定研究助成費等又は科学研究費助成事業を利用し て購入し,被告学園が所有権を取得した別紙物件目録記載の物品5点(以下「本件物品」といい,各物品を「本件物品1」などという。)の所有権に基づく返還ウ原告Aが,被告学園に対して,本件在外研究の期間中に無断で韓国を離れてハワイに滞在する予定であることを秘し,韓国の延世大学で本件在外 研究を行う旨申請して被告学園を欺罔し,被告学園をしてその旨誤信させ て在外研究費並びに本件在外研究の期間中の給与及び賞与を支出させたことが不法行為に該当すると主張して,在外研究費243万3720円,給与及び賞与合計1014万5178円並びに弁護士費用125万円の総計1382万8898円及び 究の期間中の給与及び賞与を支出させたことが不法行為に該当すると主張して,在外研究費243万3720円,給与及び賞与合計1014万5178円並びに弁護士費用125万円の総計1382万8898円及びこれに対する不法行為後である平成28年7月11日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金 の支払を求めた事案である。 原告Aは,要旨①本件懲戒解雇は無効であるから賞与に過払は生じない,②被告学園は本件物品のうち消耗品に該当する本件物品1の所有権を取得しないし,原告Aは,本件物品のうち故障により廃棄した物以外は,その物又 は代替品を返還済みである,③原告Aが延世大学で本件在外研究を行う旨申請したことは欺罔行為と評価できないから,不法行為は成立しないと主張している。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲の証拠又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実) 当事者及び本件労働契約ア被告学園は,乙大学を設置する学校法人であり,乙大学には,平成28年当時,大学院などの他,文学部,国際英語学部,国際教養学部,心理学部,現代社会学部,法学部,総合政策学部,経済学部,経営学部,工学部及びスポーツ科学部が設置されていた。(甲10,12,13) 被告学園の理事長は,平成25年10月1日に就任したB理事長である。 イ原告Aは,平成17年4月1日に乙大学総合政策学部講師として採用されて本件労働契約を締結し,平成20年4月1日に同学部准教授に,平成23年4月1日に同学部教授に,平成27年4月1日に同学部学部長(任期は,平成29年3月31日まで)にそれぞれ就任したものである。(乙4 2~44) 本件在外研究事案ア乙大学内外研究員規程には,次の定めがある。また,乙大学内外研究員 任期は,平成29年3月31日まで)にそれぞれ就任したものである。(乙4 2~44) 本件在外研究事案ア乙大学内外研究員規程には,次の定めがある。また,乙大学内外研究員規程施行細則5条2項は,在外研究員に対し,出発届,緊急連絡表,帰国届,研究経過報告書及びパスポートの写し(出国印・帰国印の頁)等を,所属学部長を経て学長に提出することを義務付けている。(甲27,乙5~ 6の7)(目的)1条乙大学(以下「本学」という。)は,専任の教育職員の学術研究及び教育の向上を期するため,研究に専従する内外研究員の制度を設ける。 (選考) 2条1項内外研究員は,専任の教育職員であって,一定の期間,国内及び国外において学術の研究又は調査に従事することを適当と認められる候補者を各教授会が,本務として研究科に属するものについては各研究科委員会が選定し,これを学長に届け出るものとする。 2項学長は,国際交流委員会に諮り決定する。 (研究計画の変更)5条1項内外研究員が病気,その他やむを得ない事由により,研究計画に著しい変更を加えようとするときは,その旨を,各教授会又は研究科委員会の議を経て,学長に届け出てその許可を受けなけれ ばならない。 (職務免除)6条内外研究員については,研究期間中授業を免除し,役職にある者は委嘱を解くことができる。 (給与) 7条1項内外研究員に対する給与は,本俸・扶養手当・住宅手当及び賞 与の合計額とする。ただし,派遣期間中の定時昇給及びその期間中に給与改訂があったときは,これを適用する。 (内外研究費の支給)8条内外研究員に対しては,細則に定める内外研究費を支給する。 (兼職の禁止) 9条内外研究員は,研 給及びその期間中に給与改訂があったときは,これを適用する。 (内外研究費の支給)8条内外研究員に対しては,細則に定める内外研究費を支給する。 (兼職の禁止) 9条内外研究員は,研究期間中他の職務に従事してはならない。ただし,やむを得ない事由のあるときは,学長は,当該教授会又は研究科委員会の議を経て,兼職を許可することができる。 (内外研究員の義務)10条1項内外研究員は,細則に定める必要書類を所属学部長又は研究 科長を経て,期日までに学長に提出しなければならない。 2項内外研究員は,その研究又は調査の成果をもって,本学における研究及び教育の向上に寄与するよう務めなければならない。 (資格のはく奪・研究の中止) 11条1項内外研究員が本学の命に服さないとき,又は内外研究員として不適当と認められる事情が生じたときは,学長は,当該教授会又は研究科委員会の議を経て,内外研究員たる資格をはく奪することができる。 イ原告Aは,平成24年4月初め頃,総合政策学部学部長に対して平成2 5年8月31日から平成26年9月1日まで韓国の延世大学で在外研究を行う旨の研究計画書等を提出して乙大学の在外研究員に応募した。同学部教授会は,平成24年4月11日,これを承認したことから,同学部学部長は,同月25日,乙大学国際センター長に対し,上記研究計画書を添付してその旨を報告した。被告学園の国際交流委員会は,同年6月27日, これを承認し,乙大学学長は,同年7月5日付けで総合政策学部長に対し てその旨を通知した。(乙8の1及び2,乙71の1及び2)ウ原告Aは,平成25年8月31日,本件在外研究のため韓国に出国したが,同年9月5日,ハワイに渡航して平成26年2月28日まで同地に滞在し, の旨を通知した。(乙8の1及び2,乙71の1及び2)ウ原告Aは,平成25年8月31日,本件在外研究のため韓国に出国したが,同年9月5日,ハワイに渡航して平成26年2月28日まで同地に滞在し,同年3月1日,再び韓国に渡航し,同年9月1日,韓国から日本に入国した。(乙11~14の3) エ原告Aは,平成25年8月23日,被告学園に対して在外研究費振込依頼書を提出し,被告学園から,本件在外研究期間中,在外研究費として243万3720円を受給したほか,給与及び賞与として1014万5178円を受給した。(乙15~17,72)本件PC紛失事案 ア乙大学個人情報保護に関する規程には,次の定めがある。(甲21,乙19の1)(定義)3条1項個人情報とは,本学が業務上取得し,又は作成したもののうち,特定の個人が識別され,若しくは識別され得るものをいう。 (責務)15条5項教職員又は教職員であった者は,業務上知り得た個人情報の内容を他人に漏らし,又は不当な目的に使用してはならない。 (個人情報管理者)16条所属長は,個人情報の適正な管理及び安全保護を図るため,個人 情報管理者を置かなければならない。 (適正管理)17条個人情報管理者は,記録文書の安全保護及び正確性の維持のため,次の各号に掲げる事項について,適正な措置を講じなければならない。 紛失,き損,破壊その他の事故の防止 イ乙大学学部個人情報保護運用内規には,次の定めがある。(甲22,乙19の2)(個人情報)2条規程第3条第1号に定める個人情報には,住所及び電話番号等の本人が提供するもののほか,試験の点数,論文の評価等教員が付与する ものを含む。 (適正管理)10条規程17条に定 報)2条規程第3条第1号に定める個人情報には,住所及び電話番号等の本人が提供するもののほか,試験の点数,論文の評価等教員が付与する ものを含む。 (適正管理)10条規程17条に定める記録文書の安全保護及び正確性の維持のため,個人情報を取り扱う教員に対して,個人情報管理者は次の各号に定める対策を講じるよう指導するものとする。 盗難対策について個人情報を含んだパソコンについては盗難等を想定して,アカウント管理やファイルアクセス制限又は暗号化等の対策を講じること(学外への持ち出し) 11条規程第17条に定める記録文書の安全保護のため,次の各号に定める場合を除き学外への持ち出しを禁止する。なお,次の各号に該当する持ち出し期間中は,持ち出した教員が安全管理の責任を負うものとする。 教育業務遂行上キャンパス間を移動する必要のあるとき 教員・非常勤講師等が事情により教育業務を学内で行えないとき学外で実施される行事への参加者名簿等を利用するとき所属長の許可を得ているときウ原告Aは,平成27年10月24日7時30分頃,ゼミ合宿出発前に乙 大学構内において,私有のPCのほか,被告学園のインターネットシステ ムに接続するためのID及びパスワードなどが記載されたシステム手帳を,それらを入れたキャリーバッグごと紛失した。上記PCには,原告Aのゼミの履修者名簿1期生から10期生まで121名分並びに同年度春学期の「C」の履修者の氏名及び学籍番号が記録されていた。そこで,原告Aは,同月27日付けで,乙大学個人情報保護委員会に対して履修者名簿に関す るデータ紛失を報告し,同年11月26日,同委員会調査チームから事情聴取を受けた。(甲20,乙20,21)本件入試 は,同月27日付けで,乙大学個人情報保護委員会に対して履修者名簿に関す るデータ紛失を報告し,同年11月26日,同委員会調査チームから事情聴取を受けた。(甲20,乙20,21)本件入試欠勤事案ア乙大学入学試験実施規程には,次の定めがある。(乙22の2)(入学本部の設置) 6条1項学長は,入試委員会の定める計画に基づき,入試を支障なく遂行するため,入試の開始に際し入試本部を設置する。 2項入試本部は,学長,各学部長,事務局長及び広報部長入試担当をもって組織する。 3項学長は,各学部長を統轄し,事務局長及び広報部長入試担当は, 学長を補佐する。 4項学長は,入試の実施に関して疑義を生じた場合は,各学部長の協力により,直ちに統一的方針を確定し,速やかに実施関連部署に伝達しなければならない。 5項学長は,入試の完了を確認したときは,入試本部を解散する。 イ原告Aは,乙大学総合政策学部学部長として,乙大学2016年度入試に当たり,入学試験日である平成28年2月1日9時45分に出勤することとされていたが,同日,欠勤した。(乙23)本件物品ア乙大学特定研究助成規程には,次の定めがある。(乙65,73) (助成費の使途) 10条1項助成費は,提出された研究計画書に基づき,研究の遂行上直接必要な次の経費に充てるものとするが,研究企画調査の助成費については,次の第1号の使途を除外する。 設備備品費消耗品費(複写・印刷費,現像・焼付・引伸費用,図書資 料費,論文掲載料,印刷代等を含む)2項助成費によって購入した設備備品は,本学の所属とする。 イ乙大学特定研究助成費取扱い要領には,次の定めがある。(乙74)「3.助成費の支出費目は,助成費 費,論文掲載料,印刷代等を含む)2項助成費によって購入した設備備品は,本学の所属とする。 イ乙大学特定研究助成費取扱い要領には,次の定めがある。(乙74)「3.助成費の支出費目は,助成費申請書の計画の中で記載された費目によるものとし,支出にあたっては以下の点に留意する。 設備備品費設備備品は1点の単価が10万円以上かつ耐用年数1年以上のものとする。 (10万円未満,1年未満のものは「消耗品」)。設備備品及び3万円以上10万円未満の消耗品は,提出された特定研究助成費申請書 に基づき,当該年度11月末日までに購入する。 消耗品費複写・印刷費,現像・焼付・引伸費用,論文掲載料,印刷代,ソフト代,図書資料費(登録申請不要)」ウ原告Aは,平成19年1月25日,被告学園に対して特定研究助成費 として本件物品1(代金4万1960円のデジタルカメラ)の物件申請を行い,その頃,消耗品費としてその代金の支払を受けた。(乙66の1ないし4)原告Aは,平成21年3月31日,被告学園に対して科学研究費補助金により購入した本件物品2(代金4万3000円のプリンタ)の寄付 申請を行い,被告学園は,同年4月8日,寄贈物件としてその所有権を 取得した。(乙67の1ないし3)被告学園は,平成22年5月27日,本件物品3(代金74万9000円のPC)を購入し,平成23年9月22日,これを原告Aの研究室に設置した。(乙68の1ないし5)原告Aは,平成22年2月25日,被告学園に対して科学研究費補助 金により購入した本件物品4(代金4万6830円のデジタルカメラ)の寄付申請を行い,被告学園は,同年3月8日,寄贈物件としてその所有権を取得した。(乙69の1ないし3)被告学園は,平 助 金により購入した本件物品4(代金4万6830円のデジタルカメラ)の寄付申請を行い,被告学園は,同年3月8日,寄贈物件としてその所有権を取得した。(乙69の1ないし3)被告学園は,平成27年5月7日,本件物品5(代金21万0520円のPC)を購入し,その頃,これを原告Aの研究室に設置した。(乙7 0の1ないし4)エ原告Aは,本件懲戒解雇後である平成28年8月頃,被告学園に対し,本件物品5とは異なるPCを交付し,被告学園も,これを受領した。(乙70の5)本件懲戒解雇及びそれに至る経緯 ア被告学園の懲戒規程(平成28年9月30日まで施行されていたもの。 以下「旧規程」という。)には,次の定めがある。(甲3,乙2)(懲戒権者及び懲戒の手続)3条1項学校法人甲学園理事長(以下「理事長」という。)は,教職員に懲戒事由のあるときはこれを懲戒する。(後略) 2項教職員を,次条に規定する懲戒のうち諭旨解雇又は懲戒解雇に付するときは,第7条に規定する懲戒委員会の審議を経て,理事長が決定する。 (懲戒の種類)4条懲戒は,譴責,減俸,出勤停止,諭旨解雇及び懲戒解雇とし,内容 は次のとおりとする。 譴責は,始末書を取り将来を戒める。 減俸は,始末書を取り俸給月額の10分の1以内を限度として減ずる。 出勤停止は,始末書を取り1回につき14日以内の出勤を停止する。出勤停止の期間は,給与を支給しない。 諭旨解雇は,始末書を取り退職を勧告し,依願退職の扱いとする。 退職金については,減額することがある。ただし,退職勧告に応じない場合は,次号の懲戒解雇とする。 懲戒解雇は,即時解雇とし,退職金は支給しない。 (懲戒の事由) 5条教職員が次の各号のい 金については,減額することがある。ただし,退職勧告に応じない場合は,次号の懲戒解雇とする。 懲戒解雇は,即時解雇とし,退職金は支給しない。 (懲戒の事由) 5条教職員が次の各号のいずれかに該当する場合は,その情状に応じて前条に規定する懲戒処分を行う。 学校法人甲学園(以下「本法人」という。)の規則又は規程を無視し,又は上司の指示に違反して本法人の秩序を乱したとき正当な理由なく,無届又は虚偽の届出によって,引き続き2週間 以上欠勤したとき職務に関する諸手続を怠ったことにより,又は偽ったことにより業務に著しく支障が生じたとき本法人の金品を詐取,盗用又は不正に使用したとき刑法(明治40年法律第45号)その他の刑罰法規に触れる行為 をし,その犯罪事実が明らかなとき(諭旨解雇及び懲戒解雇の効果)6条教職員が諭旨解雇又は懲戒解雇された場合,解雇の日から教職員としての一切の権利を喪失するものとする。 (懲戒委員会) 7条1項第3条第2項及び第3項の懲戒委員会は,担当委員5人により 構成する。 2項前項の担当委員5人は,次の各号によりあらかじめ選任された懲戒委員のうちから,理事長が事案に応じて,各号より1人ずつ委嘱する。 学長,校長,園長又は各々の職務を代行する者 事務局長,事務長又は各々の職務を代行する者学部長又は研究科長を経験した者で学長が推薦するもの及び校長又は園長の推薦する者職場を代表する各教職員組合の推薦する者その他理事会の推薦する者 3項懲戒委員会の委員長は,委員の互選とする。委員長は,その議長となる。 (弁明の機会)8条懲戒に当たっては,懲戒の対象者又はその委任を受けた者に当該事案について,陳述の機会 者 3項懲戒委員会の委員長は,委員の互選とする。委員長は,その議長となる。 (弁明の機会)8条懲戒に当たっては,懲戒の対象者又はその委任を受けた者に当該事案について,陳述の機会を与える。 (再審査の請求)9条懲戒処分の内容について不服とする当事者は,十分な反証を有する場合に限り,本人への当該処分通知後1週間以内に理事長に対して再審査を請求することができる。 イ被告学園の懲戒規程(平成28年10月1日施行のもので,本件には適 用がない。以下「新規程」という。)は,懲戒委員会に関する7条2項以下を次のとおり定めている。(甲4)(懲戒委員会)7条2項前項の担当委員5人は,次の各号によりあらかじめ選任された懲戒委員のうちから,理事長が事案に応じて,各号より1人ずつ 委嘱する。 専務理事学長,校長,園長又は各々の職務を代行する者総務局長職場を代表する各教職員組合の推薦する者その他理事会の推薦する者 3項委員長は,前項に規定する委員の中から理事長が指名する。 4項委員会の議長は,委員長が当たる。 ウ被告学園の服務規程には,次の定めがある。(乙4)(服務心得)9条教職員は,本法人の建学の精神を体し,本法人の規則,規程を守り, 品位を重んじ,自己の職務に精励し,同僚相助け,自他の職責を尊重し,上司の命令に従い,本法人の秩序保持に協力し,本法人の向上発展に尽くさなければならない。 エ乙大学の賞与に関する内規には,次の定めがある。(甲38,乙63)(調整) 5条1項賞与支給後,当該賞与期間の途中において退職する者は,次の計算法により算定した額を本学園に返還するものとする。 (当該退職年度の賞与支給額)×{(12 38,乙63)(調整) 5条1項賞与支給後,当該賞与期間の途中において退職する者は,次の計算法により算定した額を本学園に返還するものとする。 (当該退職年度の賞与支給額)×{(12か月-賞与期間内の在職期間)/12か月}オ被告学園の給与規程には,次の定めがある。(甲32) (増担手当)22条所定の授業時間数を超えて授業を担当した教員には,別表3に定める増担手当を支給する。 カ被告学園は,遅くとも平成28年2月下旬までに,乙大学D副学長(以下「D副学長」という。)を委員長とする「教育・研究上の倫理的問題にか かわる調査委員会」を設置し,本件3事案について関係者に対する事情聴 取を含む調査を開始したが,原告Aは,事情聴取に応じなかった。 (甲25,26,118,乙26,27,56の1ないし3,乙62の1及び3)キ被告学園のB理事長は,平成28年6月21日,常任理事会が同月15日に改正した新規程(当時,教職員に周知されておらず,未施行であった。)7条2項に基づき,E専務理事(1号),乙大学F学長(以下「F学長」と いう。)(2号),G総務局長(以下「G局長」という。)(3号),H(4号)及びI理事(5号)の5人を選出して懲戒委員の任を委嘱し,F学長を委員長に指名した上で,同月21日,原告Aに対して同月24日13時30分に弁明の機会を設ける旨を通知した。上記5人による懲戒委員会は,同日,第1回委員会を開催して原告Aから事情聴取を行い,同月27日,第 2回委員会を開催した。懲戒委員会は,同月29日,改めて原告Aに対して同年7月1日9時30分から弁明の機会を設ける旨を通知し,同日,第3回委員会を開催して原告Aから事情を聴取した。第3回委員会においては,懲戒委員のHが,新規 員会は,同月29日,改めて原告Aに対して同年7月1日9時30分から弁明の機会を設ける旨を通知し,同日,第3回委員会を開催して原告Aから事情を聴取した。第3回委員会においては,懲戒委員のHが,新規程が未施行であることを指摘したことから,懲戒委員会は,自らを旧規程に基づいて選任されたこととして,改めてF学 長を委員長に選任した。被告学園常任理事会は,同月6日,懲戒委員会が旧規程を適用して設置され,各委員もその条項に従って変更することとしたことを承認し,B理事長も,同日,旧規程7条2項に基づき,F学長(1号),G局長(2号。総務局長は,同年3月31日まで事務局長という名称だった。),I理事(3号),H(4号)及びE専務理事(5号)の5人を改 めて同年6月22日付けで懲戒委員に選出し,その任を委嘱した。(甲147の1,乙28~30,58の1~乙62の4)懲戒委員会は,平成28年7月7日,B理事長に対し,原告Aを旧規程5条1号,3号,4号及び5号により諭旨解雇又は懲戒解雇とする旨の答申をした。(乙30) ク B理事長は,平成28年7月11日,原告Aに対し,本件3事案が旧規 程5条1号,3号,4号,5号及び17号の懲戒事由に該当し,服務規程9条に規定する被告学園教職員としてのあるべき服務態度から著しく逸脱し,かつ繰り返し行われており,改善の余地がない旨が記載された懲戒処分通知書を交付し,本件懲戒解雇とした。(甲1,乙31)被告学園作成の平成28年7月13日付け解雇理由証明書には,①本件 在外研究事案が旧規程5条1号,3号,4号,5号及び17号に,②本件PC紛失事案が懲戒規程5条1号に,③本件入試欠勤事案が懲戒規程5条1号及び4号にそれぞれ該当する旨の記載がある。(甲2,乙32)ケ被告学園は,原 5条1号,3号,4号,5号及び17号に,②本件PC紛失事案が懲戒規程5条1号に,③本件入試欠勤事案が懲戒規程5条1号及び4号にそれぞれ該当する旨の記載がある。(甲2,乙32)ケ被告学園は,原告Aに対し,平成28年4月1日から平成29年3月31日までの1年分の賞与として,平成28年7月8日に447万6940 円,同月19日に2万6730円の合計450万3670円を支給した。 (乙64の1及び2)本件懲戒解雇以降の経緯等ア原告Aは,平成28年7月18日,本件懲戒解雇について再審査請求をしたが,被告学園は,同月27日,原告Aに対して再審査をしない旨を通 知した。(乙33,34)イ原告Aは,平成28年12月27日,第1事件の訴えを提起したが,その際,本件労働契約に基づく本件懲戒解雇後の給与及び賞与等として,平成29年3月19日支払部分までである前記第1(原告Aの第1事件の請求)(なお,訴状において 部分は135万9000円とされていたが,その後,原告Aは,令和元年した。)。 原告Aは,令和元年6月26日,請求の趣旨の変更申立書を提出し,本件懲戒解雇後の給与及び賞与等として,訴状記載のものに加えて,前記第 1(原告Aの第1事件の請求) して請求し,さらに,同年8月26日,同同2遡らせて支払を拡張したほか,本件懲戒解雇が不法行為であるとの理解を前提に,本件懲戒解雇後の給与及び賞与等の相当額を損害とする不法行為に基づく損害賠償請求を選択的に追加した。 被告学園は,令和元年9月26日本件第12回弁論準備手続において, 原告Aの給与及び賞与等支払請求のうち,訴状で請求されていない部分であって,前記請求拡張の時点で2年間の消滅時効が完成していたものについて消滅時効を援用する意思表示 2回弁論準備手続において, 原告Aの給与及び賞与等支払請求のうち,訴状で請求されていない部分であって,前記請求拡張の時点で2年間の消滅時効が完成していたものについて消滅時効を援用する意思表示をした。 原告Aは,令和2年7月17日,請求の趣旨変更申立書を提出し,さらに前記第1(原告Aの第1事件の請求)2 求した。 ウ被告学園は,平成29年5月21日,第2事件の訴えを提起した。 原告Aの給与及び賞与等仮に本件懲戒解雇が無効である場合の原告Aの給与及び賞与等は,次のとおり算出される(前記第1(原告Aの第1事件の請求)2)。なお, 給与は,毎月19日を支払日として,月の初日から末日までの分が支払われるが,支払日が金融機関の休日となる場合はその前日とされている。 (甲32,36~38,108,109,152~154)ア通常給与部分a 本俸平成28年度月額64万6200円 平成29年度月額65万5900円平成30年度月額66万5200円平成31年度(令和元年度)月額67万2500円令和2年度月額67万9000円b 扶養手当月額2万2000円 c 住宅手当月額2万3000円 d 職務手当平成28年度月額9万円(小計)平成28年度月額78万1200円平成29年度月額70万0900円平成30年度月額71万0200円平成31年度(令和元年度)月額71万7500円 令和2年度月額72万4000円イ 9月と3月に半期分を通常給与と共に支払われる手当(ただし,被告学園は,原告Aに対する平成29年度以降の増担手当の支払義務を争っている。)d 増担手当月額1万8000円で半期5か月分9万円 e 大学院手当月額4万円で半年分24万円 し,被告学園は,原告Aに対する平成29年度以降の増担手当の支払義務を争っている。)d 増担手当月額1万8000円で半期5か月分9万円 e 大学院手当月額4万円で半年分24万円ウ一時金平成29年度 456万9050円(弁済期は平成29年7月10日)平成30年度 461万7990円(弁済期は460万4240円につき平成30年7月10日,1万375 0円につき平成31年3月19日)平成31年度(令和元年度) 466万7040円(弁済期は465万3150円につき令和元年7月10日,1万3890円につき令和2年3月19日)令和2年度 471万0720円(弁済期は令和2年7月1 0日)エ平成29年3月までの共済補助金月額8019円オ平成29年3月に支払われる複数担当手当 24万円カなお,被告学園は,原告Aに対し,平成28年7月分の給与のうち通勤手当の積算分1万6866円を控除した62万0355円を支払済みであ るから,通勤手当を除く支払済みの給与は,63万7221円となり,こ れを7月分給与78万9219円に充当すると,残額は,15万1998円となる(前記第1(原告Aの第1事件の請求) 3 当事者の主張本件懲戒解雇の有効性について(第1事件及び第2事件)ア本件懲戒解雇の有効性に関する当事者の主張は,別紙1記載のとおりで ある。 イ原告Aは,本件懲戒解雇が無効であることを前提として,原告Aが乙大学の教授として労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めている。 他方,被告学園は,仮に本件懲戒解雇が無効であるとしても,原告Aが 大学設置基準14条,学校教育法92条及び学則等に照らして教授としてふさわしい能力を有しているかどうかを 認を求めている。 他方,被告学園は,仮に本件懲戒解雇が無効であるとしても,原告Aが 大学設置基準14条,学校教育法92条及び学則等に照らして教授としてふさわしい能力を有しているかどうかを教育的観点から改めて慎重に検討することになるところ,原告Aが惹起した本件3事案の内容及びその責任を被告学園の職員に転嫁していることに照らすと,原告Aには被告学園の教授としての適格性が認められず,原告Aの教授としての地位があること の確認請求には確認の利益がないと主張して,当該部分の却下を求めている。 ウAは,本件懲戒解雇が不法行為に該当すると主張し,その損害賠償として,本件懲戒解雇以後の給与及び賞与等の相当額の損害賠償を選択的に追加請求している。 他方,被告学園は,原告Aの主張を争い,仮に本件懲戒解雇が不法行為に該当するとしても,原告Aには故意又は少なくとも重大な過失があるから,損害額を算定するに当たっては少なくとも8割の過失相殺がされるべきであると主張している。また,被告学園は,前記原告Aの給与及び賞与等支払請求のうち,平成29年4月19日支払部分から同年6月19日支 払部分までについて消滅時効を援用する意思表示をしているほか,増担手 当は現実に増担の割当てがされた場合に初めて支給されるものであるとして,平成29年度以降の増担手当の支払を争っている。 原告Aの不法行為に基づく損害賠償請求(慰謝料)について(第1事件)本件懲戒解雇が不法行為であるとする原告Aの損害賠償請求(慰謝料)に関する当事者の主張は,別紙2記載のとおりである。 被告学園の請求について(第2事件)第2事件に関するその余の当事者の主張は,別紙3記載のとおりである。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実当事者間に争 ,別紙2記載のとおりである。 被告学園の請求について(第2事件)第2事件に関するその余の当事者の主張は,別紙3記載のとおりである。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実当事者間に争いのない事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次 の事実を認めることができる。 本件在外研究事案についてア乙大学総合政策学部教授であった原告A(韓国籍)は,平成24年4月初め頃,同学部学部長に対して平成25年8月31日から平成26年9月1日までの期間,母校でもある韓国の延世大学で在外研究を行う旨の研究 計画書を提出して乙大学の在外研究員に応募した。同学部教授会は,平成24年4月11日,これを承認したことから,同学部学部長は,同月25日,乙大学国際センター長に対し,上記研究計画書を添付してその旨を報告した。被告学園の国際交流委員会は,同年6月27日,これを承認し,乙大学学長は,同年7月5日付けで総合政策学部長に対してその旨を通知 した。上記研究計画書には,要旨次の記載があり,延世大学丙学科及び丁科のJ学科長の招請状が添付されている。 (甲124,乙8の1~乙9の2,乙41,45,原告A本人)研究課題日韓における市民社会の現状と課題の比較 研究を希望する理由 日韓とも,市民社会と「新しい公共」はガバナンスを新しく構築し,さらに新たな雇用を生み出すための政策の基礎概念となっている。 「新しい公共」と関連する政策の先進国である韓国で研究を行うことで,日韓における市民社会の比較研究を行いたい。 研究機関名 韓国,延世大学研究期間a 出発予定日平成25年8月31日b 帰着予定日平成26年9月1日c 滞在日数 366日 イ原告Aは,本件在外研究 い。 研究機関名 韓国,延世大学研究期間a 出発予定日平成25年8月31日b 帰着予定日平成26年9月1日c 滞在日数 366日 イ原告Aは,本件在外研究期間中に米国の他の大学でも研究を行うことを検討していたところ,在外研究先となる延世大学のJ学科長から,ハワイ大学韓国研究センターでの研究も勧められたことから,平成25年2月末頃,同センターに対して研究計画書及びJ学科長の推薦状等を提出して在外研究を申請したところ,同年3月18日付けで同センターにより,同年 9月9日から平成26年2月28日までの期間,同センターの客員研究員として招待されるに至った。そこで,原告Aは,平成25年7月11日付けで,同センターに対し,当該期間に客員研究員として研究を行う旨の書簡を送った。(甲39の1~甲43の2,甲124,150,原告A本人)ウ他方,原告Aは,平成25年1月から2月頃,乙大学国際センターの 職員であるKに対し,本件在外研究の研究計画を一部変更し,期間の一部を韓国以外の国での研究に充てることについて相談したところ,Kは,上司と相談の上,延世大学を離れて研究することは可能だが,研究計画の変更手続が必要であると回答し,乙大学内外研究員規程に従って変更手続について説明した。また,原告Aは,同僚から,研究計画の変更手 続をとれば在外研究費が高くなるだけではなく,米国との間の往復航空 運賃も受領できる旨の助言を得たことから,同年6月下旬頃,改めてKに対して研究計画の一部変更について相談した。Kは,研究計画を変更した場合には在外研究費を計算し直す必要があるなどと述べた。 (甲124,148,150,乙6の7,乙62の1及び3,乙89,証人K,原告A本人) 原告Aは 相談した。Kは,研究計画を変更した場合には在外研究費を計算し直す必要があるなどと述べた。 (甲124,148,150,乙6の7,乙62の1及び3,乙89,証人K,原告A本人) 原告Aは,Kから研究計画の変更手続が煩雑であるから自分の判断でハワイ大学に行くよう説明を受けた旨供述する一方,Kは,平成25年1月頃に原告Aから相談を受けたことはあるが,変更手続が煩雑であるなどと説明したことはない旨供述する。 そこで検討するに,乙大学内外研究員規程5条1項によれば,研究計 画の著しい変更には教授会又は研究科委員会の議を経て,学長に届け出てその許可を受けなければならないとされているところ,韓国での在外研究の承認を受けていながら,その期間中にそれ以外の国で長期間の研究を行うことは,ここにいう「著しい変更」に該当するおそれがあり,そうである以上,Kが,国際センターの事務担当者としてその変更手続 を説明することは当然であるといえる。 しかしながら,Kは,国際センターの事務担当者であるにとどまるから,原告Aに対して変更手続の省略を求める趣旨でこれが煩雑であるなどとあえて説明する必要は乏しいことに加えて,原告Aに対して自分の判断でハワイ大学に行くよう説明することについては,事務担当者にす ぎないKにそのような判断ができるとは認め難く,不自然であるというほかない。したがって,変更手続に関するKの説明から原告Aが独自にそのような理解をするに至った可能性は否定できないものの,Kがそのような説明をしたとまでは認めることができない。 また,原告Aは,平成25年6月下旬頃に改めてKのもとに相談に赴 いた旨供述する一方,Kは,これを否認する。 そこで検討するに,原告Aは,韓国よりも物価水準の高い米国で6か月間に ,原告Aは,平成25年6月下旬頃に改めてKのもとに相談に赴 いた旨供述する一方,Kは,これを否認する。 そこで検討するに,原告Aは,韓国よりも物価水準の高い米国で6か月間にわたる研究生活を予定していたものであるから,より高額な在外研究費を得られることを期待して担当者であるKにその旨の相談をすることは,経済的に合理的な行動であるばかりか(乙16参照),相談を行った時期も,原告Aがハワイ大学韓国研究センターに客員研究員の招待 を承諾する書簡を作成した時期に比較的近接しており,かつ,その供述にも現れている国際交流委員会の開催時期(乙95の5参照)とも近接していることを指摘できる。他方,Kの上記供述は,相談がなかったことについて何らかの積極的な根拠があるというものでもなく,また,現に研究計画の変更手続などは行われなかったのであるから,原告Aの相 談が明確な記憶に残らなかったとしても不自然ではない。 エ乙大学総合政策学部L学部長(当時。以下「L学部長」という。)は,平成25年8月21日,原告Aの本件在外研究の壮行会を開催したが,L学部長や壮行会への招待を受けた原告Aと親しい同僚は,原告Aがハワイ大 学でも在外研究を行うことを知っていた。(甲106,110,124,原告A本人)。 オ原告Aは,平成25年8月23日,乙大学学長に対して出国届を提出して,同月31日,本件在外研究のため韓国に出国し,延世大学のJ学科長と面談した上で,同年9月5日,ハワイに渡航してハワイ大学韓国研究セ ンターで客員研究員として研究活動を開始した。また,原告Aは,同月13日,Kに対して「今年8月31日から,韓国で在外研究を行っている,総合政策学部のAです。」とした上で,緊急連絡表をメールに添付して送付した。上記緊急 して研究活動を開始した。また,原告Aは,同月13日,Kに対して「今年8月31日から,韓国で在外研究を行っている,総合政策学部のAです。」とした上で,緊急連絡表をメールに添付して送付した。上記緊急連絡表には,海外での住所としてソウル市内の住所が記載されており,研究先大学としては延世大学が記載されている。他方,L学 部長や,乙大学総合政策学部兼大学院経済学研究科M教授(以下「M教授」 という。)は,原告Aがハワイに滞在していることを前提として,メールのやりとりをしていた。(甲50の1及び2,112~114,124,150,乙10の1及び2,乙11,13~14の3,原告A本人)なお,原告Aがハワイ大学においても研究活動に従事していたことについては,具体的な裏付け(甲50の1及び2)があるからこれを認めるこ とができる。 カ原告Aは,平成26年2月28日までハワイ大学韓国研究センターで研究を行い,同年3月1日,再び韓国に渡航して延世大学での研究活動を開始し,同月3日から同年6月8日まで,同大学において,報酬を受ける前提で学生への単位付与の対象となる「IDEA & REALITYOFSOCIALMOVEMENTS」 と題する一連の講義を実施した。(甲50の1及び2,乙13,18の2,原告A本人)他方,原告Aは,平成26年4月19日,恩師である慶応義塾大学N教授(以下「N教授」という。)からメールを受領した。そこに添付された手紙には,原告Aが1年間延世大学で研究を行うという申請を出しながら, 実際にはハワイ大学にいたとなると虚偽の申請をしたことになり,「これはA君が総合政策学部開設前から助手で採用し,その後も何かにつけてA君に配慮してきたB家の信頼を損なうことになります。また,私もA君を信 ハワイ大学にいたとなると虚偽の申請をしたことになり,「これはA君が総合政策学部開設前から助手で採用し,その後も何かにつけてA君に配慮してきたB家の信頼を損なうことになります。また,私もA君を信頼してB家に推薦しましたが,その私の信頼も損なうことになります。一日も早く,B理事長,O学長,L学部長に対して,お詫びの手紙を文書で 郵送すべきと思います。事態は深刻です。」と記載されていた。 (甲115,124,原告A本人)そこで,原告Aは,平成26年4月23日,L学部長に対し,今からB理事長に詫び状を送る予定であるなどと記載したメールを送信した上で,同日付けで, B理事長に対し,次の記載のある書簡を送付した。 (甲45, 116,149) 「この度は,乙大学内外研究員の規定違反をしてしまいましたこと,誠に申し訳なく,謹んで深くお詫び申し上げます。韓国・延世大学で1年間研究を行うという申請をしていたにもかかわらず,6ヶ月間,ハワイ大学において研究を行っていたことにつきまして,深く反省する次第です。 今後はこのような過ちを二度とおかさぬよう,細心の注意を払う所存でございます。 今後,4ヶ月ほどの研究期間が残っておりますが,与えられた研究期間をより一層大切にさせていただき,在外研究の成果を来年3月の総合政策研究叢書の出版に反映させることができるよう,最善の努力を尽く してまいります。 今後とも変わらぬご指導,ご鞭撻を賜りますよう,何卒よろしくお願い申し上げます。甚だ略儀ではございますが,取り急ぎ書面にてお詫び申し上げます。」キ B理事長は,平成26年4月30日,原告Aに対して「ご無沙汰してお ります!」と題する次の内容のメールを送信した(以下「本件メール」という。)。(甲46)「 お詫び申し上げます。」キ B理事長は,平成26年4月30日,原告Aに対して「ご無沙汰してお ります!」と題する次の内容のメールを送信した(以下「本件メール」という。)。(甲46)「先日はご丁重なお手紙をいただきありがとうございました。 既に,この件についてはL先生を通じてご報告いただいておりましたので,かえって恐縮いたして居ります。 問題が大きくならなかったことは不幸中の幸いだったと思いますが,重大な手続きを失念されたことにつきましては,今後,同じミスを繰り返すことのないよう,お気を付けください。 学長へのお詫びについては,私からどうすべきかお伝えする立場にはありませんので,先生のご判断でお決めいただくことであると思います。 いずれにせよ,残りの在外研究期間,実りある研究生活となりますこ とを,心よりお祈り申し上げます。」ク原告Aは,平成26年5月26日,N教授に対し,「ハワイ大学の件については理事長からあたたかいお返事を頂き,落ち着くことができました。」と報告するメールを送付し,その頃,前記カの講義に関する報酬を延世大学に返却することになった。また,原告Aは,同年6月21日,ソウルを 訪れたB理事長に対し,改めてハワイ大学で研究を行っていたことを詫びたが,B理事長は,これを問題とするような発言をせず,また,その後も乙大学内外研究員規程11条1項に基づく内外研究員の資格はく奪の手続を指示することもなかった。(甲117,124,原告A本人)ケ原告Aは,平成26年9月1日,延世大学での在外研究を終えて韓国か ら日本に入国した。(乙12,13)原告Aは,平成27年3月31日,「P」との著書を,乙大学総合政策研究叢書第8号として刊行したが,ハワイにおける研究について乙大学 在外研究を終えて韓国か ら日本に入国した。(乙12,13)原告Aは,平成27年3月31日,「P」との著書を,乙大学総合政策研究叢書第8号として刊行したが,ハワイにおける研究について乙大学内外研究員規程施行細則5条2項が定める研究経過報告書を提出していない。 (甲51,乙62の1及び3) 本件PC紛失事案について原告Aは,平成27年4月1日に乙大学総合政策学部学部長に就任したが,乙大学個人情報保護に関する規程16条所定の個人情報管理者を置いていなかったところ,同年10月24日7時30分頃,ゼミ合宿出発前に乙大学構内において,私有のPCのほか,被告学園のインターネットに接続するため のID及びパスワードなどが記載されたシステム手帳を,それらを入れたキャリーバッグごと紛失した。上記PCは,原告Aのパスワードを用いないと使用できない設定がされていたが,そこには,原告Aのゼミの履修者名簿1期生から10期生まで121名分並びに同年度春学期の「C」の履修者の氏名及び学籍番号が記録されていた。そこで,原告Aは,被告学園のインター ネットシステムに接続する際のID及びパスワードを変更し,同月27日付 けで,乙大学個人情報保護委員会に対して履修者名簿に関するデータ紛失を報告し,同年11月26日,D副学長をリーダーとする同委員会調査チームから事情聴取を受けた。なお,上記PCは,その後も発見されていない一方,当該PCに記録されていた原告Aのゼミの履修者の個人情報が何らかの形で悪用されたという事案は発生していない。 (甲20,124,150,乙20, 21,85,100,証人D副学長,原告A本人)本件入試欠勤事案についてア原告Aは,乙大学総合政策学部学部長であったことから,乙大学2016年度入試 甲20,124,150,乙20, 21,85,100,証人D副学長,原告A本人)本件入試欠勤事案についてア原告Aは,乙大学総合政策学部学部長であったことから,乙大学2016年度入試に当たり,入試本部の一員として入学試験日である平成28年2月1日9時45分に入試本部に出勤することとされていた。(乙23) イしかし,原告Aは,平成28年2月1日,当日が入試日であることを失念していたため,9時45分に出勤しなかった。乙大学Q広報部入試センター課長(以下「Q課長」という。)は,原告Aが出勤しなかったことから原告Aの研究室に電話を架けたが,原告Aが不在であり,そのまま入試事務を開始せざるを得なくなった。Q課長は,10時30分頃に 原告Aの研究室に再度電話を掛けたが,やはり原告Aが不在であったことから,被告学園の関係者から原告Aの携帯電話番号を聴取し,11時30分頃及び13時頃にそちらに電話を架けたが,原告Aが電話に出なかったため,いずれも留守番電話に折り返し電話をもらえるよう録音を残した。Q課長は,試験終了まで残り10分となった14時30分頃, 改めて原告Aの携帯電話に電話を架けたところ,ようやく原告Aと話をすることができたが,当日の試験がほぼ終了に近づいていたため,同月4日には出勤してもらうように伝えた。このように,原告Aは,入試当日,入学試験実施中に出勤しなかったが,これによって入学試験の遂行上何らかの不都合が生じたという事実は認められない。(甲124,15 0,乙24,62の1及び3,乙88,証人Q課長,原告A本人) 原告Aは,平成28年2月1日11時から12時30分頃にQ課長から電話を受けたが,Q課長から出勤するに及ばないという趣旨のことを伝えられたために出勤しなかった 課長,原告A本人) 原告Aは,平成28年2月1日11時から12時30分頃にQ課長から電話を受けたが,Q課長から出勤するに及ばないという趣旨のことを伝えられたために出勤しなかったのであって,携帯電話についても留守番電話サービスに加入してなかった(甲97)旨供述する一方,Q課長は,供述する。 そこで検討するに,Q課長の供述は,入学試験の事務担当者として,原告Aの欠勤に対する対応を具体的に説明しており,その説明は,実際の入学試験の進行に照らしても合理的であるといえる。他方,Q課長は,入試事務の担当者ではあるものの,まだ入学試験が続行している午前11時から12時30分頃の時点において,欠勤した原告Aに対して出勤 に及ばないと述べるような権限を有していたとは到底考え難いことに加えて,原告Aが指摘する留守番電話サービスは,あくまでも有料のサービスであるにとどまり,そのようなサービスに加入していなかったからといって,直ちに原告Aの携帯電話には留守番電話機能が存在しなかったとは認めるに足りない。そうすると,Q課長の供述は,その内容が具 体的かつ合理的であって信用できる一方,原告Aの供述は,不自然であって的確な裏付けを欠くものとして信用できない。 本件懲戒解雇及びそれに至る経緯についてア乙大学では,平成27年当時,B理事長主導のもと長期計画「NEXT 10」の策定及び推進が行われていたところ,総合政策学部でも,I理事や学部長であった原告Aが参加する学部改組会議が行われていた。しかし,原告Aは,同年10月頃には学部改組の進め方などについてI理事やE専務理事(専務理事就任は,平成28年4月1日)と鋭く意見が対立するようになり,平成27年11月17日を最後に,立場を同じくするM教授と 共に 0月頃には学部改組の進め方などについてI理事やE専務理事(専務理事就任は,平成28年4月1日)と鋭く意見が対立するようになり,平成27年11月17日を最後に,立場を同じくするM教授と 共に学部改組会議への出席を拒否するようになっていた。(甲10,18, 124,150,原告A本人)イ他方,被告学園は,平成28年1月6日頃,原告Aとは別の教員の行為に関して,F学長の指示に基づきD副学長を委員長とする「教育・研究上の倫理的問題にかかわる調査委員会」を設置していたところ,当該委員会は,同年2月下旬頃までに,原告Aに関する本件3事案について調査を行 うこととなり,関係者に対する事情聴取を含む調査を開始し,同月26日,原告Aに対し,本件PC紛失事案及び本件入試欠勤事案について事情聴取を求めた。原告Aは,同月28日には本件在外研究事案も調査対象であることを知らされたが,当該委員会がいかなるものであるのかや,なぜそのような委員会が本件3事案について調査するのかについて納得のいく説明 を受けられず,また,本件3事案がいずれも解決済みと理解していたため,4回にわたる事情聴取の要望にいずれも応じなかった。そのため,上記委員会は,同年3月24日,F学長に対し,本件3事案について,「このような規程違反が頻繁に繰り返されていることから,A氏は学部長としての資質を欠くものと判断された。」とする報告書及び原告Aが事情聴取を拒否し た経緯に関する報告書を提出した。(甲25,26,118,119,124,126の1及び2,甲151,乙26,27,56の1ないし3,乙62の1及び3,乙85,証人D副学長,原告A本人)ウ被告学園のB理事長は,前記委員会の報告書や原告Aが事情聴取に応じなかったことなどを勘案し,平成28年6月 乙26,27,56の1ないし3,乙62の1及び3,乙85,証人D副学長,原告A本人)ウ被告学園のB理事長は,前記委員会の報告書や原告Aが事情聴取に応じなかったことなどを勘案し,平成28年6月21日,常任理事会が同月1 5日に改正した新規程(当時,教職員に周知されておらず,未施行であった。)7条2項に基づき,E専務理事(1号「専務理事」),F学長(2号「学長」),G局長(3号「総務局長」),H(4号「職場を代表する各教職員組合の推薦する者」)及びI理事(5号「その他理事会の推薦する者」)の5人を選出して懲戒委員の任を委嘱し,F学長を委員長に指名した上で,同 月21日,原告Aに対して同月24日13時30分に弁明の機会を設ける 旨を通知した。なお,Hは,原告Aも所属する労働組合からの推薦を受けた者である。上記5名による懲戒委員会は,同日,第1回委員会を開催して原告Aから事情聴取を行い,同月27日,第2回委員会を開催した。懲戒委員会は,同月29日,改めて原告Aに対して同年7月1日9時30分から弁明の機会を設ける旨を通知し,同日,第3回委員会を開催して原告 Aから事情を聴取した。第3回委員会においては,懲戒委員のHが,新規程が未施行であることを指摘したことから,懲戒委員会は,自らを旧規程に基づいて選任されたこととして,改めてF学長を委員長に選任した。被告学園常任理事会は,同月6日,懲戒委員会が旧規程を適用して設置され,各委員もその条項に従って変更することとしたことを承認し,B理事長も, 同日,旧規程7条2項に基づき,F学長(1号「学長」),G局長(2号。 「事務局長」),I理事(3号「学部長を経験した者で学長が推薦する者」),H(4号「職場を代表する各教職員組合の推薦する者」)及びE専務理事(5号「そ 基づき,F学長(1号「学長」),G局長(2号。 「事務局長」),I理事(3号「学部長を経験した者で学長が推薦する者」),H(4号「職場を代表する各教職員組合の推薦する者」)及びE専務理事(5号「その他理事会の推薦する者」)の5人を改めて同年6月22日付けで懲戒委員に選出し,その任を委嘱した。(甲124,147の1,甲150, 乙26~30,58の1~乙62の4,原告A本人)懲戒委員会は,平成28年7月7日,B理事長に対し,原告Aを旧規程5条1号,3号,4号及び5号により諭旨解雇又は懲戒解雇とする旨の答申をした。(乙30)エ B理事長は,平成28年7月11日,原告Aに対し,本件3事案が旧規 程5条1号,3号,4号,5号及び17号の懲戒事由に該当し,服務規程9条に規定する被告学園教職員としてのあるべき服務態度から著しく逸脱し,かつ繰り返し行われており,改善の余地がない旨が記載された懲戒処分通知書を交付し,本件懲戒解雇とした。(甲1,乙31)被告学園作成の平成28年7月13日付け解雇理由証明書には,次の記 載がある。(甲2,乙32) 2013年8月31日から2014年9月1日の期間,韓国・延世大学を研究機関として乙大学内外研究員規程に基づく在外研究員を申請,承認されたにもかかわらず,2013年9月5日から2014年2月28日の6か月にわたる長期の間,無断で韓国を離れハワイに滞在していた。この行為が懲戒規程第5条第1号,第3号,第4号,第 5号及び第17号に規定する懲戒事由に該当したこと。 2015年10月24日に学生の個人情報の入ったPCを紛失した。 この行為が懲戒規程第5条第1号に規定する懲戒事由に該当したこと。 2016年2月1日に行われた入学試験において,学部長として待機出勤義務 5年10月24日に学生の個人情報の入ったPCを紛失した。 この行為が懲戒規程第5条第1号に規定する懲戒事由に該当したこと。 2016年2月1日に行われた入学試験において,学部長として待機出勤義務があるにもかかわらず欠勤した。この行為が懲戒規程第5 条第1号及び第4号に規定する懲戒事由に該当したこと。」オ原告Aは,平成28年8月5日,被告学園に対して乙大学の研究室を明け渡した。(甲124,原告A本人) 2 本件3事案の懲戒事由該当性について本件在外研究事案について ア被告学園は,本件在外研究事案が旧規程5条1号(被告学園の規則又は規程を無視し,又は上司の指示に違反して被告学園の秩序を乱したとき),3号(正当な理由なく,無届又は虚偽の届出によって,引き続き2週間以上欠勤したとき),4号(職務に関する諸手続を怠ったことにより,又は偽ったことにより業務に著しく支障が生じたとき),5号(被告学園の金品を 詐取,盗用又は不正に使用したとき)及び17号(刑法その他の刑罰法規に触れる行為をし,その犯罪事実が明らかなとき)に該当し,これが原告Aの被告学園に対する詐欺行為であって不法行為に該当する旨主張する。 イそこで検討するに,本件在外研究事案は,原告Aが,本件在外研究に当たり,韓国の延世大学で1年間の研究を行う内容で在外研究を申請し,か つ,その内容で承認を得ておきながら,その半分に当たる6か月間をハワ イ大学韓国研究センターで過ごしたというものであり,しかも,このように長期間にわたる研究計画の変更は,乙大学内外研究員規程5条1項が定める「著しい変更」に該当することが明らかであるにもかかわらず,原告Aは,この点について取るべき変更手続を何ら経ていないばかりか,ハワイ渡航後も,担当者であるKに ,乙大学内外研究員規程5条1項が定める「著しい変更」に該当することが明らかであるにもかかわらず,原告Aは,この点について取るべき変更手続を何ら経ていないばかりか,ハワイ渡航後も,担当者であるKに対し,「今年8月31日から,韓国で在外研 究を行っている,総合政策学部のAです。」という,少なくともハワイ滞在を隠蔽したとの誤解を招くメールを送付しているところである。しかも,原告Aは,韓国の延世大学に拠点を移した後も,学長の許可を受けずに,報酬を受領する前提で学生への単位付与の対象となる講義を実施しているところ,このことは,同規程9条の兼職の禁止に抵触することが明らかで ある(なお,原告Aは,結果として報酬を受領していないが,このことによって,研究期間中に他の職務に従事しなかったことになるものではない。)。そして,原告Aは,延世大学での研究期間中にN教授から指摘されるまで,自分自身のこれらの作為及び不作為が有する問題点に気付いておらず,むしろ,L学部長や同僚に対し,ハワイ大学で長期間研究に従事す ることについて公然と話していたというのであるから,本件在外研究について乙大学内外研究員規程施行細則5条2項が定める研究経過報告書を提出していないことも併せ考えると,原告Aの本件在外研究事案における規律軽視の傾向は,無視し難いものであったというほかない。 なお,原告Aは,研究計画の変更手続が煩雑であると理解したことから 当該手続を取らなかったことがうかがわれるが,仮にそうであるとしても,自らの研究計画の半分が変更になっている以上,本来は変更手続が必要であることは,容易に理解できたはずである。また,原告Aは,L学部長らもハワイ大学での研究を知っていたなどと主張するものの,L学部長は,研究計画の変更を許可する権限を有するものでは は変更手続が必要であることは,容易に理解できたはずである。また,原告Aは,L学部長らもハワイ大学での研究を知っていたなどと主張するものの,L学部長は,研究計画の変更を許可する権限を有するものではない。したがって,これ らの事情は,原告Aによる変更手続の懈怠を何ら正当化するものではない。 以上によれば,本件在外研究事案は,旧規程5条1号に該当することが明らかである。 他方,学術研究の在り方の多様性を考慮すると,乙大学内外研究員規程9条は,研究期間中に他の職務に従事することを禁止しているにとどまり,在外研究先として承認された研究機関への毎日の出勤を義務付けているも のとまで解することはできない。そうすると,旧規程5条3号にいう無断欠勤は,これを在外研究員に適用する場合,職務や研究活動の放棄やそれに類する欠勤を想定しているものと解するのが相当である。そして,原告Aは,ハワイ大学韓国研究センターにおいて研究活動を行っていたのであり,職務や研究活動を放棄していたとは認められないから,6か月間のハ ワイ滞在をもって旧規程5条3号が定める無断欠勤と評価することはできない。 また,原告Aは,ハワイ大学韓国研究センターでの研究活動について研究計画の変更手続を怠ったことが明らかであるものの,本件の全証拠によっても,これによって被告学園の業務にいかなる支障が生じたのかは明ら かではない。したがって,本件在外研究事案は,旧規程5条4号には該当するとはいえない。 ウ前記認定のとおり,原告Aは,平成24年4月初め頃に延世大学での1年間の在外研究を申請し,同月11日に乙大学総合政策学部教授会からその承認を得たものの,平成25年2月末頃にハワイ大学韓国研究センター に対して在外研究を申請し,同年7月11日に同セ 学での1年間の在外研究を申請し,同月11日に乙大学総合政策学部教授会からその承認を得たものの,平成25年2月末頃にハワイ大学韓国研究センター に対して在外研究を申請し,同年7月11日に同センターからの6か月の客員研究員としての招待を承諾した上で,同年8月31日に日本を出国したものであって,これが研究計画の著しい変更に当たることは明らかであるから,遅くとも同日までには研究計画の変更手続に着手すべきであったのにこれを懈怠したものであって,本件在外研究事案は,旧規程5条1号 に該当する。 もっとも,①原告Aは,ハワイ大学韓国研究センターにおいて研究活動に従事していたのであって,その限りで,乙大学内外研究員規程の趣旨及び目的に反するところはないこと,②原告Aは,韓国よりも物価水準の高い米国で6か月間にわたる研究生活を予定していたものであるから,仮に研究計画の変更手続を経ていればより高額な在外研究費を得られたはずで あるのに,これをしていないというにとどまるから,上記懈怠により被告学園に何らかの経済的な損失が発生したとは評価できないこと,③他に原告Aにおいて,上記懈怠により何らかの不法な経済的利益を領得しようとする動機や意思が何ら認められないことに照らすと,上記懈怠ないし不作為を被告学園に対する欺罔行為などと評価することはできない。 そうすると,本件在外研究事案は,被告学園の規律違反であるとはいえるものの,被告学園の金品を詐取又は不正な使用とはいえず,まして刑罰法規に触れる行為ともいえないから,旧規程5条5号及び17号にはいずれも該当せず,原告Aは,本件在外研究事案によって,在外研究費,給与及び賞与を不法行為により不正に取得したと評価することもできない。 エ以上によれば,本件在外研究事案 号及び17号にはいずれも該当せず,原告Aは,本件在外研究事案によって,在外研究費,給与及び賞与を不法行為により不正に取得したと評価することもできない。 エ以上によれば,本件在外研究事案は,旧規程5条1号に該当するものの,被告学園が主張するその余の懲戒事由には該当せず,また,原告Aが研究計画の変更手続をせずにハワイ大学韓国研究センターに長期間滞在したことは,不法行為を構成するものとは評価できないから,第2事件における被告学園の原告Aに対する在外研究費,給与及び賞与等の相当額の損害賠 償を求める請求は,理由がない。 本件PC紛失事案についてア被告学園は,本件PC紛失事案が旧規程5条1号(被告学園の規則又は規程を無視し,又は上司の指示に違反して被告学園の秩序を乱したとき)に該当する旨主張する。 イそこで検討するに,本件PC紛失事案で原告Aが紛失した私有のPCに 記録されていた学生の氏名及び学籍番号は,いずれも乙大学個人情報保護に関する規程3条1項が定める個人情報に該当することが明らかであり,学部長でもあった原告Aは,置くべき個人情報管理者を置いていなかったのであるから,少なくとも自らが保有する個人情報の管理に当たって,不断に注意を払うべき義務があったのにこれを怠り,本件PC紛失事案を惹 起したものであって,この点について責任を負うべき立場にあるといえる。 しかしながら,①原告Aが個人情報管理者を置いていなかったことはともかくとして,上記PCの紛失自体は,多分に原告Aの過失によるものであって,これが被告学園の何らかの規則又は規程を無視し,あるいは上司の指示に違反したものであるとはいえないこと,②原告Aは,上記PCに ついてパスワードを用いないと使用できない設定をしており,個人情報 これが被告学園の何らかの規則又は規程を無視し,あるいは上司の指示に違反したものであるとはいえないこと,②原告Aは,上記PCに ついてパスワードを用いないと使用できない設定をしており,個人情報の漏洩について保護対策を講じていたこと,③現に,上記PCに記録されていた個人情報が何らかの形で悪用されたという事案は発生していないことに照らすと,本件PC紛失事案が旧規程5条1号に該当すると評価することはできない。 よって,被告学園の前記主張を採用することはできない。 本件入試欠勤事案についてア被告学園は,本件入試欠勤事案が旧規程5条1号(被告学園の規則又は規程を無視し,又は上司の指示に違反して被告学園の秩序を乱したとき)及び4号(職務に関する諸手続を怠ったことにより,又は偽ったことによ り業務に著しく支障が生じたとき)に該当する旨主張する。 イそこで検討するに,原告Aは,総合政策学部学部長であった以上,乙大学入学試験実施規程6条に基づき,入試本部の一員として,入試が完了するまでは,学長を補佐して入試を支障なく遂行する立場にあり,入試の実施に関して疑義を生じた場合には学長に協力しなければならなかったもの である。しかも,原告Aは,あらかじめ入試当日の所定時刻に出勤するよ う指示を受けていたにもかかわらず,これに反して出勤せず,Q課長から電話を受けるまでそれに気付いていなかったというのであるから,上司の指示に違反して被告学園の秩序を乱したとの評価を免れない。よって,本件入試欠勤事案は,旧規程5条1号に該当するものといえる。 他方,原告Aが入試日に欠席したことによって,入学試験の遂行上何ら かの不都合が生じたという事実は認められない以上,業務に著しく支障が生じたとはいえない。したがって,本件入 するものといえる。 他方,原告Aが入試日に欠席したことによって,入学試験の遂行上何ら かの不都合が生じたという事実は認められない以上,業務に著しく支障が生じたとはいえない。したがって,本件入試欠勤事案は,旧規程5条4号には該当しないものというべきである。 ウ以上によれば,本件入試欠勤事案は,旧規程5条1号に該当する一方,旧規程5条4号には該当しないものといえる。 3 本件懲戒解雇の有効性について前記のとおり,本件在外研究事案及び本件入試欠勤事案は,いずれも旧規程5条1号が定める懲戒事由に該当するから,原告Aは,これらの事案に基づいて何らかの懲戒を受け得る立場にあったといえる。他方,本件PC紛失事案は,懲戒事由に該当せず,本件在外研究事案は,旧規程5条3号,4号,5号及び 17号に,本件入試欠勤事案は,旧規程5条4号に,それぞれ該当するものではない。 以上に加えて,上記各懲戒事由となるべき各事案については,①原告Aは,ハワイ大学韓国研究センターにおいて研究活動に従事していたのであって,その限りで,乙大学内外研究員規程の趣旨及び目的に反するところはないこと, ②本件在外研究事案によって被告学園には経済的な損失が発生しているとはいえないこと,③原告Aは,本件在外研究事案についてN教授の指摘を受けるや,速やかにB理事長に対して謝罪の手紙を送っており,B理事長も,これに対して今後を戒める趣旨の本件メールを送付するにとどまっているばかりか,原告Aは,内外研究員の資格をはく奪されず,本件在外研究事案は,それから 約2年間にわたって問題とされていなかったこと,④本件入試欠勤事案によっ て,被告学園の入学試験の遂行上何らかの不都合が生じたという事実は認められないことを指摘することができる。 そう 2年間にわたって問題とされていなかったこと,④本件入試欠勤事案によっ て,被告学園の入学試験の遂行上何らかの不都合が生じたという事実は認められないことを指摘することができる。 そうすると,本件在外研究事案及び本件入試欠勤事案が懲戒事由に該当するとしても,その違反の程度は,必ずしも原告Aの職を失わせるに足りるほど深刻ないし重大なものであったとはいえない。しかも,これらの事案が時間的に 相当な間隔を置いて発生しており,原告Aが懲戒事由に該当する事実を頻繁に惹起していたとは評価できないことや,原告Aには過去に懲戒処分を受けた経歴がないことを併せ考えると,これらを理由とする原告Aに対する本件懲戒解雇は,その性質及び態様その他の事情に照らして,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められず,したがって,その余の点について論 ずるまでもなく解雇権を濫用したものとして無効である。 被告学園は,本件懲戒解雇が有効であるとして縷々主張するが,これらの主張はいずれも採用できない。 4 原告Aの各請求及び被告学園の各請求について原告Aの確認請求について(第1事件) 被告学園は,本件懲戒解雇が有効であると主張しているから,原告Aには労働契約上の権利を有する地位にあることについて確認の利益が認められるところ,本件懲戒解雇は,無効である。 また,被告学園は,仮に本件懲戒解雇が無効であるとしても,本件3事案の内容及びその責任を被告学園の職員に転嫁していることに照らすと,原告 Aには被告学園の教授としての適格性が認められないと主張しているから,原告Aの教授としての地位をも争っていることが明らかであって,原告Aの教授としての地位の確認請求には確認の利益を認めることができる。そして,被告学園は,平成23年4 認められないと主張しているから,原告Aの教授としての地位をも争っていることが明らかであって,原告Aの教授としての地位の確認請求には確認の利益を認めることができる。そして,被告学園は,平成23年4月1日,原告Aを教授に補すること(乙43)で,原告Aが大学設置基準14条及び学校教育法92条6項の要件を充たして いると判断していたところ,前記のとおり,本件在外研究事案及び本件入試 欠勤事案が懲戒事由に該当するとしても,被告学園の懲戒規程には懲戒処分として教授からの降格について規定が存在せず,他の降格に係る手続が取られたことについては主張も立証もないばかりか,本件訴訟において原告Aが被告学園の職員の認識とは異なる事実を主張したとしても,そのことから直ちに原告Aに教授としての適格性がないということはできない。 したがって,原告Aは,被告学園が設置する乙大学の教授として労働契約上の権利を有する地位にあり,このことについて確認の利益を有しているから,原告Aの当該地位にあることの確認請求は理由がある(主文第1項)。 原告Aの給与等支払請求(第1事件)並びに被告学園の不当利得返還請求及び損害賠償請求(第2事件)について 本件懲戒解雇は,無効であるから,原告Aは,被告学園に対し,本件懲戒解雇以降の給与及び賞与等の支払を受ける権利を有している。しかし,被告学園の給与規程22条(増担手当)は,「所定の授業時間数を超えて授業を担当した教員には,別表3に定める増担手当を支給する。」と定めているところ,原告Aは,平成29年度以降,所定の授業時間数を超えて授業を担当してい ないから,増担手当を受給する要件を欠く。また,原告Aは,平成29年4月支払部分から同年6月支払部分までの給与について2年間の消滅時効経過後に請求の拡 定の授業時間数を超えて授業を担当してい ないから,増担手当を受給する要件を欠く。また,原告Aは,平成29年4月支払部分から同年6月支払部分までの給与について2年間の消滅時効経過後に請求の拡張の対象としたものであって,被告学園が消滅時効を援用しているから,この部分の支払を請求することはできない。したがって,原告A を除いた金員及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで改正前民法所定の年5分(令和2年4月1日以降に支払期日が到来する金員については改正後民法所定の年3分)の割合による遅延損害金の支払を求めることができる(主文第2項及び第3項)。 他方,被告学園の原告Aに対する不当利得返還請求は,給与等の支払に法 律上の原因がないとは認められないことから理由がない のとおり,被告学園の原告Aに対する詐欺という不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない(主文第4項)。 原告Aの損害賠償請求(第1事件)について原告Aは,本件懲戒解雇が不法行為に該当する旨主張する。 そこで検討するに,本件懲戒解雇については,①本件メールによっていっ たん不問に付されたようにみえ,内外研究員の資格もはく奪されずに終わった本件在外研究事案が,約2年後になってから突如問題として浮上し,本件メールの作成者であるB理事長自身によって,懲戒委員会が組織されるに至っていること,②被告学園は,「教育・研究上の倫理的問題にかかわる調査委員会」で本件3事案の調査を実施するに当たり,原告Aに対して当該委員会 の成立ちなどを具体的に説明した形跡がないこと,③上記委員会は,本件3事案について,原告Aが学部長としての資質を欠くとする報告書を提出しているにとどまるのに,B理事長は,これを受けて教職員の諭旨解雇及び懲戒解雇に必要とされる懲 形跡がないこと,③上記委員会は,本件3事案について,原告Aが学部長としての資質を欠くとする報告書を提出しているにとどまるのに,B理事長は,これを受けて教職員の諭旨解雇及び懲戒解雇に必要とされる懲戒委員会を組織していること,④B理事長は,5人の懲戒委員会の委員として,かねてより原告Aと意見が対立していたE専務理 事及びI理事を選任していることなど,不可解な点が多々あることを指摘することができる。 他方,原告Aの本件在外研究事案における規律軽視の傾向は,無視し難いものであったというほかなく,その程度はともかくとして,これが旧規程5条1号に該当することは明らかであることに加えて,その選任手続に疑義は 残るものの,懲戒委員会は,原告Aが属する労働組合からの推薦を受けた委員であるHも参加しており,そのH自身が意思決定に加わった上で,原告Aを諭旨解雇又は懲戒解雇とする答申をしており,本件懲戒解雇は,当該答申に基づいてされていることを踏まえると,本件懲戒解雇が直ちに不法行為を構成するとは認めるに足りない。 よって,原告Aの被告学園に対する不法行為に基づく損害賠償請求は,前 記時効により消滅した給与相当額の支払を求める部分を含めていずれも理由がない(主文第3項)。 被告学園の本件物品返還請求(第2事件)についてア前記第2の取得していたことが明らかである。 原告Aは,本件物品1を平成24年から平成25年頃に廃棄済みである旨供述する(甲124,原告A本人)ところ,本件物品1の価格及び耐用年数を考慮すると,正規の返還手続を経ていないという問題はあるものの,この供述自体は,自然なものであるといえる。他方,被告学園は,原告Aが本件物品1を現在も占有していることを証明する証拠を何 ら提出していない 正規の返還手続を経ていないという問題はあるものの,この供述自体は,自然なものであるといえる。他方,被告学園は,原告Aが本件物品1を現在も占有していることを証明する証拠を何 ら提出していない。 よって,被告学園の本件物品1の返還請求は理由がない。 原告Aは,本件物品2を平成25年頃に返還済みである旨供述する(甲124,原告A本人)ところ,本件物品2の価格及び耐用年数を考慮すると,この供述自体は,自然なものであり,また,返還を証する書面等 が原告Aのもとに残されていないとしても不自然ではない。他方,被告学園は,原告Aが本件物品2を現在も占有していることを証明する証拠を何ら提出していない。 よって,被告学園の本件物品2の返還請求は理由がない。 原告Aは,本件物品3を平成27年春頃に返還済みである旨供述する (甲124,原告A本人)ところ,本件物品3は,被告学園が設置したものであって,原告Aがその取得に関与していないことや,その耐用年数を考慮すると,この供述自体は,自然なものであり,また,返還を証する書面等が原告Aのもとに残されていないとしても不自然ではない。 他方,被告学園は,原告Aが本件物品3を現在も占有していることを証 明する証拠を何ら提出していない。 よって,被告学園の本件物品3の返還請求は理由がない。 原告Aは,本件物品4を平成27年頃までには廃棄済みである旨供述する(甲124,原告A本人)ところ,本件物品4の価格及び耐用年数を考慮すると,正規の返還手続を経ていないという問題はあるものの,この供述自体は,自然なものであるといえる。他方,被告学園は,原告 Aが本件物品4を現在も占有していることを証明する証拠を何ら提出していない。 よって,被告学園の本件物品4の返還請求は理由が この供述自体は,自然なものであるといえる。他方,被告学園は,原告 Aが本件物品4を現在も占有していることを証明する証拠を何ら提出していない。 よって,被告学園の本件物品4の返還請求は理由がない。 原告Aは,本件物品5が故障していたため,本件懲戒解雇に伴って平成28年8月5日に研究室を明け渡す際に,代替品を交付しており,同 月29日には被告学園担当者の了解を得た旨供述する(甲124,原告A本人)ところ,あえて自らの負担で代替品を用意していること(乙70の5)に照らすと,この供述は,信用することができる。そして,被告学園は,原告Aが本件物品5を現在も占有していることを証明する証拠を何ら提出していないばかりか,本件物品5の価格及び耐用年数に加 えて,被告学園が上記代替品を現に受領していることを併せ考えると,仮に原告Aが本件物品5を占有しているとしても,被告学園は,本件物品5の返還義務を免除したものと評価することができる。 よって,被告学園の本件物品5の返還請求は理由がない。 ウしたがって,被告学園の本件物品返還請求はいずれも理由がない(主文 第4項)。 第4 結論以上によれば,原告Aの本件労働契約に基づく被告学園が設置する乙大学の教授としての労働契約上の権利を有する地位にあることの確認請求は,理由があり,原告Aの本件労働契約に基づく給与及び賞与等の支払請求は,平成29年度以降 の増担手当の支払を求める部分及び時効により債権が消滅した部分を除き理由が あるから認容し,当該各部分及び本件懲戒解雇が不法行為に該当するとの主張に基づく損害賠償請求は理由がないからいずれも棄却することとし,被告学園の不当利得返還請求,所有権に基づく本件物品返還請求及び不法行為に基づく損害賠償請求は理由がないか が不法行為に該当するとの主張に基づく損害賠償請求は理由がないからいずれも棄却することとし,被告学園の不当利得返還請求,所有権に基づく本件物品返還請求及び不法行為に基づく損害賠償請求は理由がないからいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する次第である。 名古屋地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官井上泰人 裁判官豊田里麻 裁判官伊藤達也 別紙物件目録(省略)
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